説明

耐摩耗性に優れた布帛、複合布帛、および、繊維製品、ならびに、その製造方法

【課題】本発明は、着衣製品などの繊維製品に使用される布帛または複合布帛の外観を低下することなく、耐摩耗性を向上する技術を提供することを第一の目的とし、さらには、布帛または複合布帛の外観および風合いを低下することなく、耐摩耗性と軽量性とを両立する技術を提供することを第二の目的とする。
【解決手段】布帛の表面を、摩耗抵抗性樹脂としてポリマードットで被覆するとともに、そのポリマードットの平均最大径が0.5mm以下になるようにすれば、布帛の外観を低下させることなく、布帛の耐摩耗性を向上させることができる。また、前記ポリマードットの表面被覆量は、0.2g/m〜3.0g/mとすることによって、耐摩耗性と軽量性とを両立できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着衣製品およびシート材などの繊維製品に使用される布帛および複合布帛の耐摩耗性を飛躍的に向上させる技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
スポーツ衣料、コート、防護服、作業服、帽子、手袋、履物などの着衣製品、テント、布団、カバン、椅子などの生地に用いられる布帛には、使用に応じて様々の擦れや引っ掛かりが発生するため、耐摩耗性が要求されている。また、レインウェアなど、防水性が要求される製品には、長期間の使用で布帛表面の撥水性が低下するため、撥水耐久性が要求されている。布帛の耐摩耗性を向上させる技術として、例えば、特許文献1がある。特許文献1は、優れた耐摩耗性を有する布帛の加工方法に関するものであり、摩耗抵抗性ポリマーとして、ホットメルト樹脂を布帛の表面に溶融スプレー法などの手法により配置させて、次いで熱処理することで、摩耗抵抗性ポリマー同士、および、摩耗抵抗性ポリマーと布帛とを融合させて、布帛の表面上に目付質量が5g/m〜40g/mである不連続な摩耗抵抗性ポリマー層を形成する耐摩耗性を有する布帛の加工方法が開示されている(図21参照)。
【特許文献1】WO01/12889号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1に開示されている様に、摩耗抵抗性ポリマーとして、ホットメルト樹脂を布帛の表面に溶融スプレー法により配置させる方法は、十分な耐摩耗性を発現させるために、摩耗抵抗性ポリマーの被覆量を5g/m以上としている。そのため、布帛の外観や風合い、軽量性が著しく損なわれるという問題があった。特に、被服などに使用される生地のように外観や風合いを重視する用途では、実用化を妨げる大きな問題となっていた。また、ポリマーの被覆面積が大きいため、撥水耐久性を向上させる効果はほとんど得られなかった。
【0004】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、布帛表面に配置されるポリマードットが目視で確認できないほど微量であるにもかかわらず、布帛の耐摩耗性が顕著に向上するという驚くべき知見に基づき完成されたものである。
【0005】
本発明は、被服などの繊維製品に使用される布帛または複合布帛の外観を低下することなく、耐摩耗性を向上する技術を提供することを第一の目的とする。本発明の第二の目的は、被服などの繊維製品に使用される布帛または複合布帛の外観および風合いを低下することなく、耐摩耗性と軽量性とを両立する技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の布帛は、布帛の表面がポリマードットで被覆されている布帛であって、前記ポリマードットの大きさは、平均最大径が、0.5mm以下であることを特徴とする。すなわち、布帛の表面を、摩耗抵抗性樹脂としてポリマードットで被覆するとともに、そのポリマードットの平均最大径が0.5mm以下になるようにすれば、布帛の外観を低下させることなく、布帛の耐摩耗性を向上させることができる。前記ポリマードットのより好ましい大きさは、平均最大径が0.03mm以上、0.3mm以下である。
【0007】
前記ポリマードットの布帛表面被覆量は、0.2g/m〜3.0g/mであることが好適である。本発明によれば、布帛表面のポリマードットの表面被覆量が、3.0g/m以下という極めて少量であっても、優れた耐摩耗性が得られる。その結果、布帛の軽量化と耐摩耗性の向上を両立することができる。また、布帛表面のポリマードットの表面被覆量を0.2g/m以上とすることによって、耐摩耗性の向上効果が顕著になる。
【0008】
前記ポリマードット間の平均ピッチが、1mm以下であることも好ましい。ポリマードット間の平均ピッチを1mm以下とすることによって、布帛の表面にポリマードットが均一に配置されるので、布帛表面の耐摩耗性を均一に向上することができる。
【0009】
本発明の布帛は、表面に凹凸を有するものであって、布帛表面の凸部の少なくとも一部が、前記ポリマードットで被覆されていることが好ましい。布帛の摩耗は、布帛表面の凸部から生じると考えられ、布帛表面の凸部の少なくとも一部を、ポリマードットで被覆することによって、布帛の耐摩耗性を向上させることができる。例えば、表面に凹凸を有する布帛が織物の場合、経糸が緯糸上に積層してなる交差部、または、緯糸が経糸上に積層してなる交差部の少なくとも一方が、織物表面の凸部を形成する。また、表面に凹凸を有する布帛が編物の場合、糸交差部または糸ループ部の少なくとも一方が、編物表面の凸部を形成する。いずれの場合も、表面の凸部の少なくとも一部が、前記ポリマードットで被覆されるようにすることによって、耐摩耗性を向上することができる。
【0010】
布帛の凸部は、その40%〜100%が前記ポリマードットで被覆されていることが好ましい。凸部の40%〜100%が、前記ポリマードットで被覆されていれば、耐摩耗性の向上効果が一層顕著になるからである。
【0011】
本発明では、布帛表面の凹部が、前記ポリマードットで実質的に被覆されていないことが好ましい。布帛の摩耗は、布帛表面の凸部で生じると考えられるため、表面の凹部をポリマードットで被覆することは、耐摩耗性向上への寄与が小さく、かえって布帛の軽量化が損なわれたり、風合いが硬くなる原因となるからである。
【0012】
本発明では、ポリマードットのポリマーと、布帛を構成するポリマーは、同一種類のポリマーからなるものであることが好ましい。ポリマードットのポリマーと、布帛を構成するポリマーが同一種類のポリマーからなれば、布帛に対するポリマードットの接着性が高まり、ポリマードットが摩耗によって布帛から剥離することが抑制される。その結果、布帛の耐摩耗性が向上する。前記布帛を構成するポリマーとしては、例えば、ポリアミドが好ましく、前記ポリマードットとしては、例えば、ポリアミドの架橋体を含有するものが好ましい。
【0013】
本発明の繊維製品および着衣製品は、前記布帛を用いることを特徴とする。前記布帛は、着衣製品の肩、肘、膝、袖、または、裾の部分の少なくとも一部に使用され、ポリマードットで被覆されている面が表側になるように設けられていることが好ましい。
【0014】
本発明の布帛の製造方法は、表面に凹セルを有するグラビアパターンロールにポリマー組成物を塗布する工程と、前記グラビアパターンロールのポリマー組成物を布帛の表面に転写して、前記布帛の表面をポリマードットで被覆する工程とを有することを特徴とする。かかる製造方法によって、布帛表面の凸部に主にポリマードットを被覆し、布帛表面の凹部は、前記ポリマードットで実質的に被覆されないようにすることができる。
【0015】
本発明の複合布帛は、可撓性フィルムと前記可撓性フィルムに積層された本発明の布帛とを有し、前記可撓性フィルムは、前記布帛のポリマードットで被覆されている面の反対側に積層されていることを特徴とする。前記可撓性フィルムとしては、例えば、防水性フィルムや防水透湿性フィルムを用いることができる。防水性フィルムや防水透湿性フィルムを使用することによって、複合布帛に防水性や防水透湿性を付与することができる。
【0016】
前記防水透湿性フィルムとしては、例えば、疎水性樹脂からなる多孔質フィルムが好ましく、疎水性樹脂からなる多孔質フィルムとしては、例えば、多孔質ポリテトラフルオロエチレンフィルムが好適である。前記疎水性樹脂からなる多孔質フィルムは、ポリマードットで被覆されている布帛が積層されている側の反対側に親水性樹脂層を有することが好ましい。
【0017】
前記可撓性フィルムは、さらに第2の布帛を有し、前記第2の布帛は、前記可撓性フィルムのポリマードットで被覆された布帛が積層されている側の反対側に積層されていることが好ましい。
【0018】
本発明には、上述した本発明の複合布帛を用いる繊維製品および着衣製品が含まれる。本発明の複合布帛は、着衣製品の肩、肘、膝、袖、または、裾の部分の少なくとも一部に使用され、ポリマードットで被覆されている面が表側になるように設けられていることが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、着衣製品などの繊維製品に使用される布帛または複合布帛の外観を低下させることなく、耐摩耗性を向上することができる。
【0020】
本発明によれば、着衣製品などの繊維製品に使用される布帛または複合布帛の外観および風合いを低下することなく、耐摩耗性と軽量性とを両立することができる。
【0021】
本発明によれば、着衣製品などの繊維製品に使用される布帛または複合布帛の撥水耐久性が顕著に向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明の布帛は、布帛の表面がポリマードットで被覆されている布帛であって、前記ポリマードットの大きさは、平均最大径が、0.5mm以下であることを特徴とする。
【0023】
(1)ポリマードットについて
ポリマードットとは、ドット状(突起物状)のポリマーであり、布帛の表面をポリマードットで被覆することによって、ポリマードットが繊維を固定して、繊維のほつれを防止し、布帛が使用に際して摩擦にさらされた場合には、まずポリマードットが摩耗されることによって、布帛全体の耐摩耗性が向上する。また、ポリマードットの平均最大径を0.5mm以下になるようにすれば、ポリマードットは目視によっても目立ちにくくなり、得られる布帛の外観を低下することなく、耐摩耗性を向上することができる。ポリマードットの平均最大径が、0.5mmを超えると、ポリマードットが目視で容易に見えるようになり、布帛にテカリ感や凹凸感が生ずる場合がある。前記ポリマードットのより好ましい大きさは、平均最大径が0.03mm以上、0.3mm以下である。
【0024】
本発明において、ポリマードットの「平均最大径」とは、電子顕微鏡にて、ポリマードットを配置した布帛表面を20倍以上の倍率にて観察し、得られた視野における個々のポリマードットの最大径を測定し、これを(数)平均して得られるものである。尚、「最大径」は、電子顕微鏡にて観察した場合、個々のポリマードットの最大さしわたし長さである。ポリマードットの形状が例えば真円の場合であれば、その直径であり、正方形や長方形であれば、その対角線の長さというように、ポリマードットの任意の2点の端点間の最大直線距離を意味する。
【0025】
また、ポリマードットの「面積」は、電子顕微鏡にて、ポリマードットを配置した布帛表面を20倍以上の倍率にて観察し、得られた視野において確認される各ポリマードットの面積を測定し、その平均値が0.001mm以上、より好ましくは0.005mm以上であって、0.3mm以下、より好ましくは0.1mm以下であることが望ましい。ポリマードットの面積が小さすぎると、ポリマードットの高さを高くできないため、耐摩耗性が十分に得られない。この場合、十分な耐摩耗性を得るために被覆面積率を高める方法も考えられるが、透湿度、風合いへの悪影響が生じる虞れがある。他方、ポリマードットの面積が大きすぎると、ドットが目立ち、布帛の外観が低下するほか、ポリマードットのエッジ部分のみで折れ曲がりが発生し、しなやかさが失われてしまうと共に、折れ曲がり部での基材の損傷が起こり易くなる。また、ポリマードットの表面は平滑性が高いため、布帛を撥水処理した際に撥水の効果が得られにくくなる。前記ポリマードットの面積は、例えば電子顕微鏡で得られる電子画像を適時コンピューター画像処理ソフト(例えば、Microsoft社製の表計算ソフトウェア「Excel」上で動作する、画像の長さ・面積を計測可能なフリーソフト「lenaraf200」)を用いて個々のドットについての解析を行うことで算出できる。
【0026】
本発明において、布帛表面を被覆するポリマードットの最大高さは、0.3mm以下であることが好ましい。ポリマードットの最大高さが、0.3mm以下であれば、ポリマードットは目視によっても目立ちにくく、また、手触りでも比較的感知されにくくなる。一方、前記最大高さが0.3mmよりも大きいと、ポリマードットの形状が目視で容易に見えるようになり、また布帛の触感にも凹凸感が感知されやすくなる。本発明において、「ポリマードットの最大高さ」とは、ポリマードットを配置する前と後のそれぞれの布帛の厚さを測定し、その差を算出した値である。
【0027】
本発明において、ポリマードットの表面被覆量は、0.2g/m以上、より好ましくは0.5g/m以上であって、3.0g/m以下、より好ましくは2.0g/m以下である。ポリマードットの表面被覆量が、0.2g/mを下回ると、耐摩耗性が十分に得られない。他方、ポリマードットの表面被覆量が、3.0g/mを超えると、布帛の風合いが硬くなるとともに、ポリマードットが目視で容易に見えるようになり、布帛にテカリ感や凹凸感が生ずる場合がある。
【0028】
本発明においては、布帛の外観でポリマードットが目立たないことが好ましい。着衣製品や、テント、布団、カバン、椅子などに用いられる布帛では、美観が特に重要視される。ポリマードットが目立つと、布帛にテカリ感や凹凸感が生じ、布帛表面が汚れているように見える。またポリマードットが摩擦負荷にさらされると、ポリマードットが摩耗により部分的に(摩擦負荷を受けた箇所で)変色することがあり、一層の美観低下を招く場合がある。布帛の外観は、後述する外観評価方法により、その外観の違いの度合いに応じて、次の4段階に分ける。
1級:外観に差が見られる
2級:僅かに外観に差が見られる
3級:殆ど外観に差が見られない
4級:外観に差が見られない
ここで、3級または4級であれば、外観上差が小さいと判断することができる。本発明において、布帛表面の外観は3級以上であることが好ましい。
【0029】
本発明において、ポリマードット間の平均ピッチは、1.0mm以下、より好ましくは0.5mm以下である。平均ピッチが1.0mmを超えるとドット間のスペースが広すぎ、布帛が摩耗に晒されてしまい、ポリマードットによる耐摩耗性の向上が得られにくい。
【0030】
本発明において使用するポリマードットの素材は、室温で固体状の耐摩耗性を有するポリマーであれば、特に限定されるものではなく、例えば、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリオレフィン樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂などを挙げることができる。これらの中でも、耐摩耗性、布帛との接着性、耐ドライクリーニング性を考慮した場合、ポリアミド樹脂が好ましく、ポリアミド樹脂の架橋体がより好ましい。かかる素材を採用することで、摩耗抵抗性ポリマードットと、前記ポリマードットと接触するもの(人体側に重ね着される肌着など)との滑り性を向上させ得る。また、ポリアミド樹脂の分子中には、極性基(アミド基など)が多量に含まれることから、布帛が極性基を含むポリマーによって構成されている場合には、ポリマードットと布帛との親和性が高くなる。このため、摩耗抵抗性ポリマードットと布帛との密着性が高く、摩耗抵抗性ポリマードットの脱落が高度に抑制できる。さらに、ポリアミド樹脂は、融点以上に加熱することで急激に溶融粘度が低下するため、加工性に富むといった特徴もある。
【0031】
前記ポリアミド樹脂は、ホットメルト性を有するものであれば、特に制限はなく、例えば、ジアミン(A)とジカルボン酸(C)との重縮合によって生成されるナイロン46(A:ジアミノブタン、C:アジピン酸)、ナイロン66(A:へキサメチレンジアミン、C:アジピン酸)、ナイロン610(A:ヘキサメチレンジアミン、C:セバシン酸)など;あるいは環状ラクタムの開環重合によって生成されるナイロン6(ε−カプロラクタム)、ナイロン12(ω−ラウロラクタム)など;あるいはアミノカルボン酸の重縮合によって生成されるナイロン11(アミノウンデカン酸)など;あるいは2種類以上のホモナイロンの原料(ジアミン、ジカルボン酸、アミノカルボン酸、環状ラクタムなど)を共重合して生成されるナイロンコポリマー(ナイロン6/11、ナイロン6/12、ナイロン66/10、ナイロン6/66/12、ナイロン6/69/12、ナイロン6/610/12、ナイロン6/612/12、ナイロン6/66/11、ナイロン6/66/69/12、ナイロン6/66/610/12、ナイロン6/66/612/12、ナイロン6/66/11/12、ナイロン6/69/11/12);あるいは、前記これら例示のナイロンのアミド基の水素の一部をアルコキシメチル化して得られる変性ポリアミド(N−アルコキシメチル化変性ポリアミド)などが挙げられる(括弧内は原料モノマー)。中でも、融点を容易に低く調整でき、加工性を良好にできることから、ナイロン12のホモポリマーまたはコポリマー(特にナイロン12のコポリマー)が好適である。これらのポリアミド樹脂は、各ポリアミド樹脂供給メーカーから提供されている市販品を用いることができる。なお、前記のポリアミド樹脂には、例えば、柔軟性や融点の調整を目的として、公知の可塑剤を、本発明の効果を損なわない範囲で添加してもよい。
【0032】
本発明で使用するポリマードットを構成するポリアミド樹脂は、架橋体であることが好ましい。架橋体であれば、摩耗抵抗性ポリマードットの耐熱性や布帛との密着性が向上するため、例えば、ドライクリーニングやアイロンがけなど、有機溶剤や高温に曝される状況下に置かれても、摩耗抵抗性ポリマードットの溶解、変形や熱劣化が抑制される。前記架橋体としては、前記例示のポリアミド樹脂を、架橋剤を用いて架橋したものが挙げられる。ポリアミド樹脂は、分子内に活性水素を有するため、この活性水素と反応し得る官能基を少なくとも2つ有する化合物を架橋剤として利用できる。このような架橋剤としては、例えば、ポリイソシアネートが好適である。
【0033】
前記ポリイソシアネートとしては、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、キシレンジイソシアネート(XDI)、水素添加XDI、1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、トリジンジイソシアネート(TODI)、リジンジイソシアネート(LDI)、p−フェニレンジイソシアネート、トランスシクロヘキサン1,4−ジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水添MDI)などのジイソシアネートを挙げることができる。また、これらのジイソシアネートのカルボジイミド変性体、ポリメリック変性体、イソシアヌレート変性体、ビュレット変性体、アダクト化合物(ポリイソシアネートと単量体ポリオールとの反応物)などを用いることもできる。前記ポリイソシアネートは、単独あるいは2種以上の混合物として使用することができる。
【0034】
また、これらのポリイソシアネートのイソシアネート基を公知のブロック剤(オキシム類、ラクタム類、フェノール類、アルコール類など)によりブロックしたブロック体も用いることができる。これらのポリイソシアネート(ブロック体を含む)は、各供給メーカーから提供されている市販品を用いることができる。特にポリイソシアネートのブロック体としては、水を分散媒とするエマルジョンタイプのものが、安全性が高く好適である。
【0035】
前記架橋剤の配合量は、架橋剤が1分子当たりに有する官能基数(活性水素と反応し得る官能基)に応じて適宜変更することが好ましく、例えば、架橋剤が1分子当たりに有する官能基数が2の場合、ポリアミド樹脂100質量部に対し、1質量部以上、より好ましくは3質量部以上であって、30質量部以下、より好ましくは10質量部以下とすることが望ましい。架橋剤の配合量が少なすぎると、十分な架橋が形成されず、摩耗抵抗性ポリマードットの耐熱性や耐溶剤性が不十分となることがある。他方、架橋剤の使用量が多すぎると、摩耗抵抗性ポリマードットの樹脂が脆くなったり、耐光性低下による劣化を招く虞れがある。
【0036】
前記ポリマードットには、ポリアミド樹脂(ポリアミド樹脂の架橋体)に加えて、撥水撥油剤、難燃剤、着色剤、艶消し剤、消臭剤、抗菌剤、酸化防止剤、充填剤、可塑剤、紫外線遮蔽剤、蓄光剤などの公知の各種添加剤を、必要に応じて添加してもよい。
【0037】
摩耗抵抗性ポリマードットは、複数の突起物(ドット)が個々独立に存在する形態が挙げられる。ただし、摩耗抵抗性ポリマードットが外観上連続層であっても、部分的に摩耗抵抗性ポリマードットを構成する樹脂の量や面積を小さくしたものは、可撓性の確保が可能であり、本発明の不連続層に含まれる。摩耗抵抗性ポリマードットを構成するポリアミド樹脂は、一般に硬質なものが多く、例えばポリウレタン樹脂と比較すると、柔軟性に劣るのが通常であるが、本発明の布帛では、摩耗抵抗樹脂として、不連続のポリマードットをごく少量設けることで、ポリマードットが設けられていない箇所での屈曲を可能としており、これによって、比較的硬質な樹脂で構成される不連続な摩耗抵抗性樹脂層を設けても、可撓性基材が本来有する柔軟性をほぼ維持できる。
【0038】
(2)本発明で使用する布帛について
本発明で使用する布帛は、特に限定されるものではないが、例えば、織物および編物が好適である。織物としては、例えば、平織、斜文織、朱子織およびそれらを基本とした変化組織、ジャガード組織などの組織を有する織物を挙げることができ、本発明では、平織組織を有する織物が好適である。平織組織を有する織物は、スポーツ衣料、コート、防護服、作業服、帽子、手袋、履物、テント、布団、カバン、椅子などの耐摩耗性が要求される用途に好適に使用されているからである。編物としては、その組織については特に制限はなく、例えば、丸編、経編などの組織を有する編物を挙げることができる。
【0039】
また、布帛を構成するフィラメントについても、特に制限はなく、モノフィラメントからなる布帛、マルチフィラメントからなる布帛のいずれであっても良い。モノフィラメントからなる織物および編物は、マルチフィラメントからなる織物および編物と比較して耐摩耗性に優れており、風合いは硬くなる傾向がある。本発明を、耐摩耗性の低いマルチフィラメントからなる織物や編物に適用すれば、耐摩耗性の向上効果が顕著となるうえに、摩耗抵抗性ポリマードットの一部がマルチフィラメントの隙間に含浸することでよりポリマードットと布帛間の接合強度が高まる。特に、スポーツ衣料、コート、防護服、作業服、帽子、手袋、履物、テント、布団、カバン、椅子に適用される布帛は、ほとんどがマルチフィラメントからなる織物または編物であり、本発明は、これらの用途に使用されるマルチフィラメントからなる織物または編物に好適に適用できる。
【0040】
布帛を構成する繊維の材質としては、天然繊維や化学繊維の他、金属繊維、セラミックス繊維などが挙げられる。天然繊維としては、綿、羊毛、麻、獣毛、絹など一定の耐熱性と強度を備えている繊維であれば、特に制限はない。また、化学繊維としては、レーヨンなどの再生繊維、アセテートなどの半合成繊維、ナイロン(ポリアミド)繊維、ポリエステル繊維、アクリル繊維、ポリウレタン繊維、ビニロン繊維、ポリプロピレン繊維などの一定の耐熱性と強度を備えている繊維であれば良い。スポーツ・アウトドア用の製品や作業服などの用途に利用する場合には、しなやかさ、強度、耐久性、コスト、軽量性などの観点から、ナイロン(ポリアミド)繊維、ポリエステル繊維などで構成される織物が好適である。なお、耐熱性のないポリエチレン繊維などは、使用するポリマードットの材質によっては、本発明に適用することが難しい。なぜなら、摩耗抵抗性ポリマードットを配置する際には、熱処理を施すからである。
【0041】
布帛を構成する繊維の糸種としては、長繊維または短繊維のいずれであっても良い。長繊維の糸種としては、さらに例えば、加工糸および生糸を挙げることができる。加工糸を用いた布帛は、その構造上フィラメント内にスペースができやすく、突起物などに引っ掛かって繊維がほつれやすい構造を有しているが、本発明を適用することによって、繊維間をポリマードットで固定することができるため、繊維のほつれを低減することができる。
【0042】
本発明で使用する布帛をレインウェアなどの防水性が要求される用途で使用する場合は、布帛に撥水処理を施すことが好ましい。布帛に、後述する防水性フィルムや防水透湿性フィルムを積層して複合布帛とした場合でも、布帛が水で濡れると、布帛表面に水膜が形成されるため、保温性や透湿性が損なわれるとともに、布帛が重くなるなどして快適性が低下する。本発明によれば、布帛、または、これを用いた複合布帛の撥水耐久性が顕著に向上する。撥水性は、撥水剤の繊維への付着状態や、布帛を構成する繊維の集束状態などの影響を受けると考えられる。撥水処理がされた布帛であっても、布帛を構成している繊維が摩擦されると、撥水剤の分子配向が乱れたり、撥水剤が繊維表面から脱落したり、あるいは繊維がほつれて繊維間の隙間に水が浸入しやすくなるため、撥水性は低下する傾向にある。本発明によれば、布帛表面に設けられたポリマードットが、撥水処理が施された繊維の摩擦負荷を軽減できるため、また、布帛を構成する繊維を固定し、繊維の集束状態を維持することができるため、撥水耐久性が顕著に向上したものと考えられる。
【0043】
また、本発明者は、布帛表面を被覆するポリマードットの面積が大きいと、撥水耐久性が低下する傾向にあることを見出した。これは、ポリマードットの表面が、布帛表面と比較して平滑であること、摩擦によってポリマードット表面の撥水剤が脱落しやすいことに起因していると考えられる。本発明によれば、布帛表面を被覆するポリマードットが目視で確認できないほど微量であるため、ポリマードット自体による上記撥水耐久性の低下を抑制することができたことも、撥水耐久性が顕著に向上した一因と考えられる。
【0044】
撥水剤については、水または有機溶剤を溶媒とするフッ素系、シリコン系、パラフィン系などがあるが、安全性が高く、耐久性、撥油性などを有する水ベースのパーフルオロアルキルアクリレートを含有する共重合体を主成分とするフッ素系撥水剤を用いることが好ましい。具体例をあげると、ダイキン工業社製の撥水撥油剤、ユニダインTG−571Gや、旭硝子社製撥水撥油剤、アサヒガードAG−7000等を1〜10wt%に希釈した水溶液を用いる。また、より撥水耐久性を高めるために、架橋剤を併用することが好ましい。架橋剤としては、メラミン樹脂、ブロックドイソシアネート、グリオキザール樹脂などがあり、これらの架橋剤を単独または併用することで、洗濯や、摩耗に対する撥水耐久性が向上する。具体例をあげると、大日本インキ化学工業社製メラミン樹脂、ベッカミンM−3や、明成化学工業社製ブロックドイソシアネート、メイカネート−MFなどを、およそ0.1〜1wt%撥水浴中に混合し、布帛に塗工後は架橋反応が起こる温度まで適宜加熱する。
【0045】
また、前記撥水剤を混合した水溶液をよりよく布帛中に浸透させるため、適宜浸透助剤を用いることが好ましい。浸透助剤としては、水溶性アルコールや界面活性剤が挙げられる。また、撥水浴中に撥水性を損ねない程度の柔軟剤を添加することで、布帛の風合いを改善することも可能である。さらには必要に応じて、消泡剤、pH調整剤、乳化安定剤、帯電防止剤など適宜選定して用いることができる。
【0046】
撥水処理については、ポリマードットを被覆した布帛あるいは、これに後述する防水性フィルムや防水透湿性フィルムを積層したものに適正な濃度に希釈した水ベースの撥水剤分散液をコーティングし、次いで余分な液をロール間で絞り、オーブンで乾燥・熱処理させる方法を用いることができる。撥水処理した後の布帛の表面にポリマードットを被覆することも可能であるが、この方法ではドットが十分な強度で布帛と接着しない虞があることと、ドットの表面に撥水剤がコーティングされないため布帛の撥水性が十分に発現しない虞がある。撥水剤のコーティング方法としては、キスコーティング、パッドへの浸漬、スプレーコーティングなど一般的な方法を用いることができる。レインウェアなど、防水性が要求される製品として使用する場合、布帛に撥水処理しても、長時間使用すると、布帛表面が摩擦されることにより布帛の撥水性が低下することが大きな技術課題であったが、本発明によれば、布帛の撥水耐久性も飛躍的に高まる。
【0047】
本発明で使用する布帛は、適宜染色することができる。染色方法についても、特に制限はなく、繊維を構成する素材に応じて、染料および染色方法を適宜選択すれば良い。
【0048】
(3)ポリマードットの被覆態様について
本発明の布帛は、表面に凹凸を有するものである場合、布帛表面の凸部の少なくとも一部が、前記ポリマードットで被覆されているものであることが好ましい。布帛の摩耗は、布帛表面の凸部から生じると考えられ、布帛表面の凸部の少なくとも一部を、ポリマードットで被覆することによって、布帛の耐摩耗性を向上させることができる。
【0049】
本発明において、「布帛の凸部」は、厳密に定義されるものではないが、布帛を構成する繊維によって形成される部分であって、周囲の部分と比較したときに、周囲の部分よりある程度高さのある部分である。例えば、表面に凹凸を有する布帛が織物の場合、経糸が緯糸上に積層してなる交差部、または、緯糸が経糸上に積層してなる交差部の少なくとも一方が、織物表面の凸部を形成する。すなわち、織物には、経糸が緯糸上に積層してなる交差部と緯糸が経糸上に積層してなる交差部があるが、この2種類の交差部が、いずれも凸部を形成する場合と、いずれか一方のみが凸部を形成する場合がある。2種類の交差部がいずれも凸部を形成する場合とは、例えば、平織であって、経糸と緯糸が類似した繊度、剛直性、織密度を有する場合である。経糸の繊度が緯糸の繊度と比較して大きい場合、経糸の織密度が緯糸の織密度より高い場合、あるいは、緯糸が経糸と比較して剛直である場合は、経糸が緯糸上に積層してなる交差部が織物の凸部を形成する。また、繊度、織密度、糸の剛直性が逆の場合は、緯糸が経糸上に積層してなる交差部が凸部を形成する。例えば、図9は、平織り織物表面の電子顕微鏡写真である。織物表面の凸部を「○」で示した。経糸の繊維密度が緯糸より高いために、経糸が緯糸上に積層してなる交差部が織物表面の凸部を形成している。また、図12は、丸編の編物表面の電子顕微鏡写真である。編物表面の凸部を「○」で示した。表面に凹凸を有する布帛が編物の場合、糸交差部または糸ループ部の少なくとも一方が、編物表面の凸部を形成する。いずれの場合においても、表面の凸部の少なくとも一部が、前記ポリマードットで被覆されていることによって、耐摩耗性が向上する。布帛が、織物あるいは編物のいずれの場合も、表面の凸部の少なくとも一部が、前記ポリマードットで被覆されていることによって、得られる布帛の耐摩耗性が向上する。
【0050】
布帛表面の凸部がポリマードットで被覆されている被覆率は、40%以上が好ましく、60%以上がより好ましく、80%以上であることが特に好ましい。布帛表面の凸部の被覆率を40%以上とすることによって、耐摩耗性の向上効果が一層向上するからである。布帛表面の凸部の被覆率の上限は特に限定されず、100%であっても良い。100%の場合には、極めて優れた耐摩耗性を有する布帛が得られる。なお、布帛表面の凸部がポリマードットで被覆されている被覆率は、ポリマードット処理後の布帛を電子顕微鏡で20倍以上の倍率にて観察し、観察結果に基づいて、下記式で算出される。
凸部被覆率(%)=100×(ポリマードットで被覆されている凸部の数/凸部の総数)
【0051】
また本発明では、布帛表面の凹部が、前記ポリマードットで被覆されている被覆率は、40%以下が好ましく、30%以下がより好ましい。また布帛表面の凹部が、前記ポリマードットで実質的に被覆されていないことが望ましい。布帛の摩耗は、布帛表面の凸部で生じる。そのため、表面の凹部をポリマードットで被覆することは、耐摩耗性向上への寄与が小さく、凹部の被覆率が40%を超えてしまうと、かえって布帛の軽量化が損なわれる原因となるからである。布帛の凹部とは、布帛を構成する繊維によって形成される部分であって、周囲の部分と比較したときに、周囲の部分よりある程度高さの低い部分であり、上述した布帛の凸部ではない部分である。
【0052】
なお、布帛表面の凹部がポリマードットで被覆されている被覆率は、ポリマードット処理後の布帛を電子顕微鏡で20倍以上の倍率にて観察し、観察結果に基づいて、下記式で算出される。
凹部被覆率(%)=100×(ポリマードットで被覆されている凹部の数/凹部の総数)
【0053】
また、布帛が織物の場合、隣接する2本の経糸と隣接する2本の緯糸との非交差部を含む部分が、前記ポリマードットで実質的に被覆されないことが好ましい。前記非交差部を含む部分がポリマードッドで被覆されてしまうと、ポリマードットによって、隣接する2本の経糸と隣接する2本の緯糸が固定されてしまうので、得られる布帛の風合いが悪くなるからである。
【0054】
本発明では、ポリマードットのポリマーと、布帛を構成するポリマーとは、親和性の高いポリマー同士であることが好ましい。ポリマードットのポリマーと、布帛を構成するポリマーとが親和性の高いポリマー同士からなれば、ポリマードットと布帛との密着性が高まり、摩耗時にポリマードットが布帛から脱落することが抑制される。その結果、耐摩耗性の耐久性が向上する。具体的には、親和性の高いポリマー同士とは、例えば同一種類のポリマー同士であり、布帛を構成するポリマーがポリアミド樹脂(ナイロン)であれば、前記ポリマードットが、ポリアミド樹脂を含有するものであることが好ましい。また、布帛とポリマードットの間にイオン結合や共有結合などの化学的結合を取り入れることにより、密着性を高めることも好ましい。このために適宜架橋剤などを用いてもよい。
【0055】
(4)布帛の製造方法について
本発明の布帛の製造方法は、ポリマー組成物を布帛の表面に配置して、前記布帛の表面をポリマードットで被覆する工程と、前記布帛の表面に形成したポリマードットを固定する工程とを有することを特徴とする。
【0056】
本発明の布帛は、上記製造方法により製造することができる。すなわち、液状のポリマー組成物を表面に凹セルを有するグラビアパターンロールに塗布し、これを布帛表面に直接転写することによって、布帛表面を不連続のポリマードットで被覆するダイレクトグラビア法や、一旦別のフラットなロールを介してドットを布帛表面に転写するオフセットグラビアプリント法などを用いることができる。あるいは、同様のポリマー組成物をロータリースクリーンやフラットスクリーン上に配置し、スキージーにて布帛表面に転移させ、不連続のポリマードットで被覆する方法も用いることができる。この際、布帛の表面に形成されるポリマードットの平均最大径、大きさ、平均ピッチ、面積被覆率などは、グラビアロールの凹セルや、スクリーンに設けられた孔の大きさ、ピッチ、パターン、および液状化させたポリマーの粘度などを適宜設定することにより制御することができる。また、例えば、凹セルに充填されているポリマー組成物を布帛表面に転写させる圧力を制御することによって、布帛表面の凸部をポリマードットで被覆することができる。上述の方法の他にも布帛表面の凸部にポリマードットを形成するために汎用のプリントまたは不連続なコーティング方法を適宜用いることができる。また、ポリマー組成物が固形である場合、それを細かく粉砕した粉体とし、パウダーコーターにて布帛上にばら撒くことにより一定量のポリマー組成物を布帛上に配置する方法もあるが、ポリマーはランダムな配置となるため、本発明において、布帛の凸部により多くのポリマードットを配置する方法としては不適切である。
【0057】
本発明の製造方法で使用するポリマー組成物とは、例えば、ポリマードットの原料である基材樹脂を加熱溶融させたもの、または、溶媒若しくは分散媒を含有することにより液状(ペースト状を含む)とした組成物である。ポリマードットの原料である基材樹脂は、上述したポリマードットの素材として挙げたものを使用することができる。
【0058】
前記溶媒または分散媒としては、例えば、水、トルエン、キシレン、ジメチルホルムアミド、メタノール、エタノールなど、あるいはそれらの混合物などを挙げることができる。これらの中でも、安全性および環境保全の観点から、溶媒または分散媒として水を主成分として使用することが好ましい。
【0059】
前記ポリマー組成物には、必要に応じてさらに、界面活性剤、架橋剤および増粘剤などの添加剤を含有することができる。界面活性剤は、分散媒中にポリマーを安定して分散させたり、ポリマー組成物の表面張力を下げることにより布帛表面への転写性などを改良するものである。前記界面活性剤としては、ノニオン系、アニオン系、カチオン系、アンホテリック系などがあり、ポリマードットの原料である基材樹脂の種類や添加剤との相性により適宜選定される。増粘剤は、ポリマー組成物の粘度を調整して、ポリマー組成物のグラビアパターンロールへの塗布性や、布帛表面への転写性などを改良するものである。前記増粘剤としては、例えば、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸ナトリウム、などの水溶性高分子タイプや、ゼラチン、アルギン酸、ヒアルロン酸などの天然高分子あるいはその誘導体からなるものなどを挙げることができる。
【0060】
前記布帛の表面に形成したポリマードットは、冷却、加熱乾燥、あるいは、加熱による架橋反応等により液体状から固体状に変化させることができる。ポリマードットが加熱溶融したホットメルト樹脂からなる液体であれば、冷却し室温に戻すことにより固体状に変化する。また、溶媒や分散媒を含んだ液状ポリマーであれば、加熱乾燥等により脱溶媒することで固体状のポリマーに変化する。液状ポリマーが粉体状のポリマーを分散媒に分散した液であった場合は、脱分散媒後に更にポリマーの融点以上に加熱することで、粉体状のポリマー同士が融合し、塊状となりポリマードットを形成する。この時、溶融したポリマーはその一部が布帛の表面から浸透し、布帛を形成するフィラメントの隙間に入り込むことにより、より強固に布帛に結合する。また液状ポリマー中に光、熱、水分などにより励起し化学的に反応する反応基をもたせることにより液状から固体状に硬化させることができる。たとえば、エポキシ基を導入することにより熱硬化反応を起こさせたり、イソシアネート基を導入することにより付加反応を起こさせたりして硬化させることができる。このような化学反応は、ポリマードット内だけでなく、ポリマードットと布帛表面の間の界面でも起こすことができ、それによりポリマードットと布帛との間により強固な結合力が付与できる。
【0061】
(5)複合布帛について
本発明の複合布帛は、可撓性フィルムと前記可撓性フィルムに積層された本発明の布帛とを有し、前記可撓性フィルムは、前記布帛のポリマードットで被覆されている面の反対側に積層されていることを特徴とする。
【0062】
前記可撓性フィルムとしては、可撓性を有するフィルムであれば特に限定されず、例えば、ポリウレタン樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレン、ポリオレフィンなどのポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、塩化ビニル樹脂、合成ゴム、天然ゴム、含フッ素系樹脂などのフィルムを挙げることができる。
【0063】
前記可撓性フィルムの厚さは、5μm以上、より好ましくは10μm以上であって、300μm以下、より好ましくは100μm以下が適当である。可撓性フィルムの厚さが5μmより薄いと製造時の取扱性に問題が生じ、300μmを超えると可撓性フィルムの柔軟性が損なわれてしまうからである。可撓性フィルムの厚さの測定は、ダイヤルシックネスゲージで測定した平均厚さ(テクロック社製1/1000mmダイヤルシックネスゲージを用い、本体バネ荷重以外の荷重をかけない状態で測定した)による。
【0064】
前記可撓性フィルムとしては、例えば、防水性、防風性、または防塵性を有するフィルムを使用することが好ましい。前記可撓性フィルムとして、防水性フィルムを使用すれば、得られる複合布帛に防水性を付与することができ、防水透湿性フィルムを使用すれば、得られる複合布帛に防水透湿性を付与することができる。なお、防水性または防水透湿性を有するフィルムは、一般に防風性および防塵性を兼ね備えている。
【0065】
レインウェアなどのように、特に防水性が要求される用途では、JIS L 1092 A法により測定される耐水度(防水性)で、100cm以上、より好ましくは200cm以上の防水性を有する可撓性フィルムを使用することが好ましい。
【0066】
また本発明では、前記可撓性フィルムとして、防水透湿性フィルムを使用することが好ましい態様である。防水透湿性フィルムとは、「防水性」と「透湿性」とを有する可撓性フィルムである。すなわち本発明の複合布帛に、上記「防水性」に加えて「透湿性」を付与することがでる。例えば、本発明の複合布帛を着衣製品に加工して用いた場合に、着用者の人体から発生する汗の水蒸気が積層体を透過して外部に発散されるため、着用時の蒸れ感を防ぐことが可能になる。ここで、「透湿性」とは、水蒸気を透過する性質であり、例えば、JIS L 1099 B−2法により測定される透湿度で、50g/m・h以上、より好ましくは100g/m・h以上の透湿性を有することが望ましい。
【0067】
前記防水透湿性フィルムとしては、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂などの親水性樹脂フィルムや、ポリエステル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂、含フッ素系樹脂、撥水処理を施したポリウレタン樹脂などの疎水性樹脂からなる多孔質フィルム(以下、単に「疎水性多孔質フィルム」という場合がある)を挙げることができる。ここで、「疎水性樹脂」とは、樹脂を用いて滑らかな平坦な板を成形し、斯かる板の表面に置かれた水滴の接触角が60度以上(測定温度25℃)、より好ましくは、80度以上の樹脂を意味する。
【0068】
前記疎水性多孔質フィルムは、内部に細孔(連続気孔)を有する多孔質構造によって透湿性を維持しつつ、フィルム基材を構成する疎水性樹脂が、該細孔内への水の浸入を抑制し、フィルム全体として防水性を発現する。これらの中でも、前記防水透湿性フィルムとして、含フッ素系樹脂からなる多孔質フィルムが好適であり、多孔質ポリテトラフルオロエチレンフィルム(以下、「多孔質PTFEフィルム」と称する場合がある)がより好適である。特に、多孔質PTFEフィルムは、フィルム基材を構成する樹脂成分であるポリテトラフルオロエチレンの疎水性(撥水性)が高いために、優れた防水性と透湿性とを両立できる。
【0069】
前記多孔質PTFEフィルムとは、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)のファインパウダーを成形助剤と混合することにより得られるペーストの成形体から、成形助剤を除去した後、高温高速度で平面状に延伸することにより得られるもので、多孔質構造を有している。すなわち、多孔質PTFEフィルムは、微小な結晶リボンで相互に連結されたポリテトラフルオロエチレンの一次粒子の凝集体であるノードと、これら一次粒子から引き出されて伸びきった結晶リボンの束であるフィブリルとからなり、そして、フィブリルと該フィブリルを繋ぐノードで区画される空間が空孔となっている。後述する多孔質PTFEフィルムの空孔率、最大細孔径などは、延伸倍率などによって制御できる。
【0070】
前記疎水性多孔質フィルムの最大細孔径は、0.01μm以上、より好ましくは0.1μm以上であって、10μm以下、より好ましくは1μm以下であることが望ましい。最大細孔径が0.01μmよりも小さいと製造が困難になり、逆に10μmを超えると、疎水性多孔質フィルムの防水性が低下することと、フィルム強度が弱くなるため、積層などの後工程での取扱いが困難になりやすい。
【0071】
前記疎水性多孔質フィルムの空孔率は、50%以上、好ましくは60%以上であって、98%以下、より好ましくは95%以下であることが望ましい。疎水性多孔質フィルムの空孔率を50%以上とすることによって、透湿性を確保することができ、98%以下とすることによって、フィルムの強度を確保することができる。
【0072】
なお、最大細孔径は、ASTM F−316の規定に従って(使用薬剤:エタノール)測定した値である。空孔率は、JIS K 6885の見掛け密度測定に準拠して測定した見掛け密度(ρ)より次式で計算して求める。
空孔率(%)=(2.2−ρ)/2.2×100
【0073】
前記疎水性多孔質フィルムの厚さは、5μm以上、より好ましくは10μm以上であって、300μm以下、より好ましくは100μm以下が適当である。疎水性多孔質フィルムの厚さが5μmより薄いと製造時の取扱性に問題が生じ、300μmを超えると疎水性多孔質フィルムの柔軟性が損なわれるとともに透湿性が低下してしまう。疎水性多孔質フィルムの厚さの測定は、ダイヤルシックネスゲージで測定した平均厚さ(テクロック社製1/1000mmダイヤルシックネスゲージを用い、本体バネ荷重以外の荷重をかけない状態で測定した)による。
【0074】
前記疎水性多孔質フィルムは、その細孔内表面に撥水性および撥油性ポリマーを被覆させて用いるのが好ましい。疎水性多孔質フィルムの細孔内表面を撥水性および撥油性ポリマーで被覆しておくことによって、体脂や機械油、飲料、洗濯洗剤などの様々な汚染物が、疎水性多孔質フィルムの細孔内に浸透若しくは保持されるのを抑制できる。これらの汚染物質は、疎水性多孔質フィルムに好適に使用されるPTFEの疎水性を低下させて、防水性を損なわせる原因となるからである。
【0075】
この場合、そのポリマーとしては、含フッ素側鎖を有するポリマーを用いることができる。このようなポリマーおよびそれを多孔質フィルムに複合化する方法の詳細についてはWO94/22928公報などに開示されており、その一例を下記に示す。
前記被覆用ポリマーとしては、下記一般式(1)
【0076】
【化1】

【0077】
(式中、nは3〜13の整数、Rは水素またはメチル基である)
で表されるフルオロアルキルアクリレートおよび/またはフルオロアルキルメタクリレートを重合して得られる含フッ素側鎖を有するポリマー(フッ素化アルキル部分は4〜16の炭素原子を有することが好ましい)を好ましく用いることができる。このポリマーを用いて多孔質フィルムの細孔内を被覆するには、このポリマーの水性マイクロエマルジョン(平均粒径0.01〜0.5μm)を含フッ素界面活性剤(例、アンモニウムパーフルオロオクタネート)を用いて作製し、これを多孔質フィルムの細孔内に含浸させた後、加熱する。この加熱によって、水と含フッ素界面活性剤が除去されるとともに、含フッ素側鎖を有するポリマーが溶融して多孔質フィルムの細孔内表面を連続気孔が維持された状態で被覆し、撥水性・撥油性の優れた疎水性多孔質フィルムが得られる。
【0078】
また、他の被覆用ポリマーとして、「AFポリマー」(デュポン社の商品名)や、「サイトップ」(旭硝子社の商品名)なども使用できる。これらのポリマーを疎水性多孔質フィルムの細孔内表面に被覆するには、例えば「フロリナート」(3M社の商品名)などの不活性溶剤に前記ポリマーを溶解させ、多孔質PTFEフィルムに含浸させた後、溶剤を蒸発除去すればよい。
【0079】
本発明において、前記疎水性多孔質フィルムは、ポリマードットで被覆されている本発明の布帛が積層されている側の反対側に親水性樹脂層を有することが好ましい。斯かる親水性樹脂層を有する態様は、ポリマードットで被覆されている布帛を表地とする着衣製品などに加工する場合に特に有用である。すなわち、前記親水性樹脂は、人体から発生する汗などの水分を吸収し、外部へと発散させるとともに、疎水性多孔質フィルムの細孔内に体脂や整髪油などの様々な汚染物が人体側から侵入するのを抑制する。上述したように、これらの汚染物質は、疎水性多孔質フィルムに好適に使用されるPTFEの疎水性を低下させ、防水性を損なわせる原因となるからである。また、親水性樹脂層を形成しておくことによって、疎水性多孔質フィルムの機械的強度も向上するため、耐久性に優れる疎水性多孔質フィルムが得られる。この親水性樹脂層は、疎水性多孔質フィルムの表面に形成されていればよいが、親水性樹脂が疎水性多孔質フィルムの表層部分に含浸されていることが好ましい。親水性樹脂が、疎水性多孔質フィルム表層の細孔内に含浸されることによってアンカー効果が働くため、親水性樹脂層と疎水性多孔質フィルムとの接合強度が強固なものとなる。なお、疎水性多孔質フィルムの厚さ方向を全体に亘って親水性樹脂で含浸してしまうと透湿性が低下してしまう。
【0080】
前記親水性樹脂としては、水酸基、カルボキシル基、スルホン酸基、アミノ酸基などの親水性基を持つ高分子材料であって、水膨潤性で且つ水不溶性のものが好ましく用いられる。具体的には、少なくとも一部が架橋された、ポリビニルアルコール、酢酸セルロース、硝酸セルロースなどの親水性ポリマーや、親水性ポリウレタン樹脂を例示することができるが、耐熱性、耐薬品性、加工性、透湿性などを考慮すると親水性ポリウレタン樹脂が特に好ましい。
【0081】
前記親水性ポリウレタン樹脂としては、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、スルホン基、オキシエチレン基などの親水基を含むポリエステル系あるいはポリエーテル系のポリウレタンやプレポリマーが用いられ、樹脂としての融点(軟化点)を調整するために、イソシアネート基を2個以上有するジイソシアネート類、トリイソシアネート類、それらのアダクト体を単独あるいは混合して架橋剤として使用することができる。また、末端がイソシアネートであるプレポリマーに対してはジオール類、トリオール類などの2官能以上のポリオールやジアミン類、トリアミン類などの2官能以上のポリアミンを硬化剤として用いることができる。透湿性を高く保つためには2官能の方が3官能より好ましい。
【0082】
疎水性多孔質フィルムの表面に親水性ポリウレタン樹脂などの親水性樹脂層を形成させる方法としては、ポリウレタン樹脂などを溶剤によって溶液化したり、加熱によって融液化するなどの方法により塗布液を作り、それをロールコーターなどで疎水性多孔質フィルムに塗布する。親水性樹脂を疎水性多孔質フィルムの表層まで含浸させるのに適した塗布液の粘度は、塗布温度において20,000cps(mPa・s)以下、より好ましくは10,000cps(mPa・s)以下である。溶剤による溶液化を行った場合は、その溶剤組成にもよるが、粘度が低下しすぎると塗布後、溶液が疎水性多孔質フィルム全体に拡散するため、疎水性多孔質フィルム全体が親水化されるとともに、疎水性多孔質フィルムの表面に均一な樹脂層が形成されない虞があり、防水性に不具合を生じる可能性が高くなるので、500cps(mPa・s)以上の粘度を保つことが望ましい。粘度は、東機産業社製のB型粘度計を用いて測定することができる。
【0083】
可撓性フィルムとポリマードットで被覆された布帛の積層には、従来公知の接着剤を用いることができる。このような接着剤には、熱可塑性樹脂接着剤の他、熱や光、水分との反応などにより硬化し得る硬化性樹脂接着剤が含まれる。例えば、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリウレタン系、シリコーン系、ポリアクリル系、ポリ塩化ビニル系、ポリブタジエン系、ポリオレフィン系、その他のゴム系などの各種樹脂接着剤が挙げられる。中でも、好適なものとしてポリウレタン系接着剤が挙げられる。ポリウレタン系接着剤としては、特に、硬化反応型のホットメルト接着剤が特に好適である。硬化反応型ホットメルト接着剤とは、常温で固体状であり、加熱により溶融して低粘度の液体となるが、加熱状態を保持すること、あるいは更に昇温すること、あるいは水分やその他の活性水素を有する多官能化合物との接触により硬化反応が生じて高粘度の液体または固化物となる接着剤である。硬化反応は、空気中の水分の他、硬化触媒や硬化剤が存在することで進行する。
可撓性フィルムと布帛の接着に用いる硬化反応型ポリウレタン系ホットメルト接着剤としては、例えば、加熱により溶融して低粘度の液体となった際(すなわち、接着のために塗布する際)の粘度が、500〜30,000mPa・s(より好ましくは3000mPa・s以下)のものが好ましい。ここでいう粘度は、RESEARCH EQUIPMENT LTD.社製「ICIコーン&プレートビスコメータ」にて、回転子をコーンタイプ、設定温度を125℃にして測定した値である。
【0084】
このような硬化反応型ポリウレタン系ホットメルト接着剤としては、湿気(水分)によって硬化反応し得る公知のウレタンプレポリマーが好適である。例えば、ポリオール成分(ポリエステルポリオールやポリエーテルポリオールなど)と、ポリイソシアネート(TDI、MDI、XDI(キシリレンジイソシアネート)、IPDI(イソホロンジイソシアネート)などの脂肪族または芳香族ジイソシアネート;トリイソシアネートなど)を、末端にイソシアネート基が残存するように付加反応させることで得ることができる。こうしたウレタンプレポリマーでは、末端のイソシアネート基の存在により、空気中の湿気によって硬化反応を生じる。かかるウレタンプレポリマーにおいて、その溶融温度は、室温よりも若干高い50℃以上、より好ましくは80〜150℃である。上記のウレタンプレポリマーとしては、例えば、日本エヌエスシー社が市販している「ボンドマスター」が挙げられる。このウレタンプレポリマーは、70〜150℃に加熱することで、布帛などに塗布可能な粘度の融液となり、この融液を介して防水透湿性フィルムと布帛とを貼り合わせた後、室温程度に冷却することで半固体状になり、布帛などへの過剰な浸透拡散が抑制される。そして、空気中の湿気で硬化反応が進行し、ソフト且つ強固な接着を得ることができる。
【0085】
接着剤の塗布方法は特に限定されず、公知の各種手法(ロール法、スプレー法、刷毛塗り法など)を採用すればよい。なお、複合布帛に透湿性をもたせる場合は、上記接着剤の塗布を点状や線状とすることが推奨される。接着面積(接着剤の塗布面積)は、布帛面の全面積中、5%以上とすることが好ましく、15%以上とすることがより好ましく、95%以下とすることが好ましく、50%以下とすることがより好ましい。また、接着剤の適用量については、布帛表面の凹凸・繊維密度、要求される接着性・耐久性などを考慮して設定すればよい。例えば、2g/m以上とすることが好ましく、5g/m以上とすることがより好ましく、50g/m以下とすることが好ましく、20g/m以下とすることがより好ましい。接着剤の適用量が少なすぎると、接着性が不十分となり、例えば、洗濯に耐え得るだけの耐久性が得られないことがある。他方、接着剤の適用量が多すぎると、複合布帛の風合いが硬くなりすぎることがあり、好ましくない。好ましい接着方法としては、例えば、可撓性フィルムに、上記硬化反応型ポリウレタン系接着剤の融液をグラビアパターンロールで転写するか、または、スプレーし、その上に布帛を重ねてロールで圧着する方法が挙げられる。特に、グラビアパターンを有するロールによる転写法を採用した場合には、良好な接着力を確保できると共に、得られる生地の風合いもよく、また、歩留まりも良好となる。
【0086】
本発明の複合布帛は、さらに第2の布帛を有し、前記第2の布帛は、前記可撓性フィルムのポリマードットで被覆された布帛が積層されている側の反対側に積層されていることが好ましい。第2の布帛を積層することによって、可撓性フィルムが摩擦などの物理的負荷から保護され、得られる複合布帛の物理的強度が高まるからである。また、可撓性フィルムに肌が直接接触した際のべたつき感がなく、肌触りが向上するとともに、意匠性も高まる。前記第2の布帛としては、特に限定されず、例えば、織布、編布、ネット、不織布、フェルト、合成皮革、天然皮革などを挙げることができる。また、布帛を構成する材料としては、綿、麻、獣毛などの天然繊維、合成繊維、金属繊維、セラミックス繊維などを挙げることができ、複合布帛が使用される用途に応じて適宜選択することができる。例えば、本発明の複合布帛をアウトドア用の製品に利用する場合には、しなやかさ、強度、耐久性、コスト、軽量性などの観点から、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維などから構成された織布を使用することが好ましい。また、前記布帛には、必要に応じて、従来公知の撥水処理、柔軟処理、制電処理などを施すことができる。
【0087】
(6)本発明の繊維製品
本発明の繊維製品は、繊維製品を構成する生地として、上述した本発明の布帛または複合布帛を用いることを特徴とする。例えば、本発明の繊維製品としては、着衣製品、テント、布団、カバン、椅子などを挙げることができる。前記着衣製品としては、例えば、アウトドアジャケット、レインウェア、ウインドブレーカー、スラックス、チノパンツ、ジーンズ、帽子、手袋、履物などが挙げられる。これらの繊維製品を構成する生地として本発明の布帛または複合布帛を一部または全体に用いることによって、得られる繊維製品の耐摩耗性が向上する。
【0088】
これらの中でも、本発明の布帛または複合布帛のポリマードットで被覆されている側を表地、または、裏地とした着衣製品が好ましい。表地として使用する場合には、例えば、リュックやバッグを背負った場合の肩ベルトとの摩擦に対しても優れた耐性を発揮する。バックパッキングでは、レインウェアがリュックの肩ベルトと擦れて肩部分の撥水性が早期に低下することが問題となっていたが、本発明の布帛を使用すると、肩部分での撥水性の低下を高度に防止できる。また、裏地として使用する場合には、内側にさらに着用している着衣製品あるいはベルクロファスナーのような付属物品との摩擦に対して優れた耐性を発揮する。レインウェアの裏地では、裏地からの雨水の回りこみ(ウィッキング)を防ぐために撥水処理が行われる場合があるが、本発明の布帛を裏地に使用すれば、撥水耐久性が向上するため、長期間に亘ってウィッキングを防止できる。
【0089】
本発明の布帛または複合布帛は、着衣製品の少なくとも一部に使用されればよく、例えば、肩、肘、膝、袖、または、裾の部分の少なくとも一箇所に使用されることが好ましい態様である。肩、肘、膝、袖、または、裾などの部分は、屈曲や接触などにより摩擦を受けやすい部分であり、本発明を好適に適用することができるからである。
【0090】
本発明の布帛または複合布帛を用いた繊維製品であって、防水性が必要とされるものは、生地同士の縫着部を目止めテープによって防水加工を施すことが好ましい。縫着部の防水加工を施すための目止めテープとしては、高融点樹脂の基材フィルムと低融点の接着剤とを積層してなるテープ等が適宜用いられ、好ましくは、高融点樹脂の基材フィルムとホットメルト接着剤とを積層したものを挙げることができる。前記高融点樹脂の基材フィルムの表面にはニットやメッシュ等がさらに積層されていてもよい。
【0091】
前記目止めテープのホットメルト接着剤としては、ポリエチレン樹脂およびそのコポリマー、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ブチラール樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂およびその共重合体系、セルロース誘導体、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルエーテル樹脂、ポリウレタン、ポリカーボネート樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂などを適宜用いることができるが、好ましくは、ポリウレタン樹脂を用いる。これは、衣類としてドライクリーニング耐久性や、洗濯耐久性が必要とされることと、柔軟な風合いが必要であることからである。またホットメルト接着剤樹脂層の厚みは、25μm以上が好ましく、50μm以上がより好ましく、400μm以下が好ましく、200μm以下がより好ましい。ホットメルト接着剤層が25μm未満では接着剤樹脂の絶対量が少なすぎて、十分な接着強度で接着することが難しい。また、縫着部の糸の凹凸部を接着剤で完全に埋めることができず、目止め部の防水性が不十分となる。一方、ホットメルト接着剤層が400μmを超える厚さになると、テープを熱圧着する際、十分に溶解するまでに時間がかかり、加工性が低下したり、接着される防水生地側に熱的なダメージが発生する可能性が生ずる。また、熱圧着時間を短縮すると、シートが十分に溶解せず、十分な接着強度が得られなくなってしまう。また、接着加工後の目止め部の風合いが硬くなり、例えば衣料に適用した場合、目止め部でごわつき感が出てしまう。
【0092】
前記目止めテープの具体例としては、例えば、高融点のポリウレタン樹脂のフィルムと、低融点のポリウレタンホットメルト接着剤とを積層したSAN CHEMICAL社製のT−2000、FU−700などの目止めテープ、日清紡績社製のMF−12T、MF−12T2、MF−10Fなどの目止めテープ、高融点の多孔質ポリテトラフルオロエチレン樹脂のフィルムと低融点のポリウレタンホットメルト接着剤とを積層したジャパンゴアテックス社製のGORE−SEAMTAPE等を挙げることができる。
【0093】
これらの目止めテープは、テープのホットメルト樹脂側に熱風をあて、樹脂を溶融させた状態で非接着体に加圧ロールで圧着する既存のホットエアシーラで融着加工することができる。例えば、クインライト電子精工社製のクインライト Model QHP−805や、W.L.GORE & ASSOCIATES社製のMODEL 5000E等を使用することができる。また、短い縫着部をより簡便に融着加工するためには、市販の熱プレス機やアイロンで目止め加工を行ってもよい。この際は、目止めテープを縫着部に重ねた状態でその上から熱を加える。前記目止めテープの熱圧着条件は、テープに使用されるホットメルト接着剤の融点、防水生地の厚さ、材質、融着スピード等によって適宜設定されればよい。その目止めテープの熱圧着の一例を挙げると、目止めテープ(好ましくは、ポリエステルウレタン系ホットメルト、流動値が180℃において40〜200×10−3cm3/s、より好ましくは、100×10−3cm3/s、厚さが25〜200μm、より好ましくは50〜150μm)をホットエアシーラに装着し、ホットメルト樹脂の表面温度が150℃から180℃、より好ましくは、160℃になるよう設定して熱圧着する。ついで、そのまま加熱部分が室温に戻るまで放冷して熱圧着を完了させる。ホットメルトの流動値は、低すぎると接着力が不足し、高すぎると縫製穴やテープエッジ部から樹脂の染み出しが起こり加圧ロール等に付着してしまう。またホットメルト樹脂の表面温度は、低すぎると十分に融解せず、接着力の不足を招き、高すぎると流動性が高くなりすぎ、縫着部からの樹脂染み出しの問題が起こるとともに、ホットメルト樹脂自体が熱分解をおこし、接着強度が低下する恐れがある。
【実施例】
【0094】
[評価方法]
<布帛の外観評価>
布帛の外観は、ポリマードットを配置する前の布帛の外観と配置後の布帛の外観を比較したとき、その表面の光沢感や、凹凸感において差があるかどうかで判定する。布帛を水平なテーブルの上に置き、40Wの白熱ランプを前方の約60°の角度から照射し、400万画素以上のデジタルカメラにて布帛の表面を手前約60°の角度から撮影し、そのモノクロ画像をモニタ上で観察したときに、目視にて差があれば、外観に違いがあると判定する。撮影は、Sony社製のデジタルカメラ「Cyber−shot DSC−T5」を用いて5.1メガピクセルの解像度にて布帛の縦60mm、横70mmの範囲をモノトーンモードで行った。判定の基準は、その外観の違いの度合いにより次の4段階に分ける。
1級:外観に差が見られる
2級:僅かに外観に差が見られる
3級:殆ど外観に差が見られない
4級:外観に差が見られない
【0095】
<ポリマー組成物粘度測定方法>
ペースト状のポリマー組成物の粘度は、東機産業製粘度計 TV−10にM4型ロータを装着し、回転数30rpm、測定時間10秒の条件にて測定した。
【0096】
<布帛の厚さ>
JIS L 1096に基づき、布帛の厚さを測定した。測定はテクロック社製シックネスゲージPF−15にて、本体バネ荷重以外の荷重をかけない状態で行った。
【0097】
<(複合)布帛の単位面積あたりの質量(目付)>
JIS L 1096に基づき、(複合)布帛の単位面積当りの質量(g/m)を測定した。
【0098】
<透湿度>
JIS L 1099 B−2法に基づき、(複合)布帛の透湿度(g/m・h)を測定した。
【0099】
<ポリマードット凸部被覆率>
電子顕微鏡を用いて拡大倍率50倍にて、ポリマードット処理後の布帛表面の観察を行った。電子顕微鏡は、日立製作所製日立走査電子顕微鏡S−3000Hを使用した。この時の視野はおよそ、2.6mm×1.2mmであった。この範囲の視野において、布帛表面の凸部の数を数え、それを凸部の総数とし、そのうち、ポリマードットで被覆された凸部の数を数えて、次式により算出した。
ポリマードット凸部被覆率(%)=100×(ポリマードットで被覆されている凸部の数/凸部の総数)
【0100】
<ポリマードットの凹部被覆率>
前記と同様にして、電子顕微鏡を用いて布帛表面の観察をおこなった。この時の視野はおよそ、2.6mm×1.2mmであった。この範囲の視野において、布帛表面の凹部の数を数え、それを凹部の総数とし、そのうち、ポリマードットで被覆された凹部の数を数えて、次式により算出した。
ポリマードット凹部被覆率(%)=100×(ポリマードットで被覆されている凹部の数/凹部の総数)
【0101】
<面ファスナーによる(複合)布帛の摩耗耐久性試験>
JISに規定の摩擦試験機II形(学振形)の摩耗子に面ファスナーのフック側(YKK社製、商品名クイックロン1QNN-N)を装着し、試験片台には試料を装着し、200gの荷重で500回摩擦し、外観の毛羽立ち具合を判定する。試験は縦および横方向にそれぞれ行い、その平均値を試験結果とする。毛羽立ち具合は、以下の判定基準に基づく。
1級: 著しく毛羽立ちが認められる
2級: 10箇所以上の毛羽立ちが認められる
3級: 10箇所未満の毛羽立ちが認められる
4級: 3箇所以内の毛羽立ちが認められる
5級: 毛羽立ちは認められない
【0102】
<摩耗後の撥水度試験方法>
JIS L 1096 E法に記載のマーチンデール摩耗試験機の試料ホルダに、JIS L 0803に規定する3号綿布を装着し、標準摩耗布装着側には標準摩耗布の代りに試料を装着し、押圧荷重12kPaにて500回摩耗処理を行う。このとき、試料ホルダの綿布には2cm3のイオン交換水を付着させ湿潤状態の下で摩耗処理を行う。摩耗処理を行った試料は室温で1日以上風乾させ、ついでJIS L 1092に記載のスプレー撥水試験を行う。
【0103】
<風合い値>
各試料の風合いに関わる物理特性について、曲げ特性の評価を純曲げ試験機(KATO TECH社製、KES−FB2、PURE BENDING TESTER)にて行い、布帛の幅1cmあたりの曲げ剛性を比較した。試験は(複合)布帛の縦方向と横方向それぞれに対して行った。曲げ剛性値が高いほど、風合いが硬くなることを意味している。
【0104】
<摩耗堅牢度試験>
JIS L 0849に基づき、湿潤の条件にて摩耗堅牢度の試験を行った。
【0105】
(1)摩耗抵抗性ポリマー未処理布帛の作製
布帛A
経糸、緯糸の繊度がともに、78dtex、フィラメント数が34本のセミダルの仮撚り加工糸(ポリアミド(ナイロン6,6)100%)からなる格子織組織で、経糸、緯糸をそれぞれ格子部は2本ひきそろえ、約2.5mm間隔の格子とした織物を作製し、液流染色により染色し、布帛Aを準備した。この織物の密度は経糸が120本/2.54cm、緯糸が80本/2.54cmであった。この織物の目付は、75.0g/mであった。
【0106】
布帛B
経糸、緯糸の繊度がともに、83dtex、フィラメント数が72本のセミダルの仮撚り加工糸(ポリエステル100%)からなる平織組織の織物を作製し、液流染色により染色し、布帛Bを準備した。この織物の密度は経糸が119本/2.54cm、緯糸が95本/2.54cmであった。この織物の目付は、79.0g/mであった。
【0107】
布帛C
経糸、緯糸の繊度がともに、74dtex(80番手)の2本ひきそろえ糸の綿からなる2/2綾織物の生地を作製し、ジッカー染色により染色し、布帛Cを準備した。この織物の密度は経糸が190本/2.54cm、緯糸が90本/2.54cmであった。この織物の目付は、176.2g/mであった。
【0108】
布帛D
繊度が83dtex、フィラメント数が36本のセミダルの仮撚り加工糸(ポリエステル100%)からなる丸編のスムース編物を作製し、液流染色により染色し、布帛Dを準備した。この編物の密度は、ウェールが42本/2.54cm、コースが45本/2.54cmであった。この編物の目付は127.1g/mであった。
【0109】
布帛E
経糸、緯糸の繊度がともに、44dtex、フィラメント数が34本のセミダルの仮撚り加工糸(ポリアミド(ナイロン6,6)100%)からなる平織組織の織物を作製し、液流染色により染色し、布帛Eを準備した。この織物の密度は経糸が165本/2.54cm、緯糸が120本/2.54cmであった。この織物の目付は、54.5g/mであった。
【0110】
布帛F
経糸、緯糸の繊度がともに、22dtex、フィラメント数が20本のセミダルの仮撚り加工糸(ポリアミド(ナイロン6,6)100%)からなる格子織組織で、経糸、緯糸をそれぞれ格子部は2本ひきそろえ、経糸約1.5mm、緯糸約2mm間隔の格子とした織物を作製し、液流染色により染色し、布帛Fを準備した。この織物の密度は経糸が177本/2.54cm、緯糸が157本/2.54cmであった。この織物の目付は、37.1g/mであった。
布帛A〜Fの性状を表1に示した。
【0111】
【表1】

【0112】
(2)ポリマードット形成用ポリマー組成物の調製
表2に示す組成の材料を十分に混合し、ペースト状のポリマードット形成用ポリマー組成物を得た。このポリマー組成物の粘度は室温で、24,000mPa・sであった。
【0113】
【表2】

【0114】
(3)摩耗抵抗性ポリマーを設けた布帛の作製
布帛1
上記のようにして得たポリマー組成物を、100線/2.54cmの線数で、開口面積率が80%(一辺の寸法が0.227mmの正方形の孔が0.254mmの間隔で縦、横に配列された形状)で、深さが0.06mmのピラミッド状の凹セルを有するグラビアロールを用いて、布帛Aの片面に室温にてグラビアプリント法により転写した。次に転写されたポリマー組成物中の水分を除去するとともに、架橋反応を促進させる目的で、ポリマー組成物が転写された布帛をピンテンターにかけ、160℃に設定された熱風式乾燥オーブンの中に入れ、1分間、乾燥熱処理を施し、不連続なポリマードットを片面に設けた布帛1を得た。
【0115】
布帛2
上記のようにして得たポリマー組成物を、55線/2.54cmの線数で、開口面積率が60%(一辺の寸法が0.386mmの正方形の孔が0.462mmの間隔で縦、横に配列された形状)で、深さが0.160mmのピラミッド状の凹セルを有するグラビアロールを用いて、布帛Bの片面に、布帛1のグラビアプリントおよび乾燥工程と同様の方法により、不連続なポリマードットを片面に設けた布帛2を得た。
【0116】
布帛3
上記のようにして得たポリマー組成物を、布帛Cの片面に、布帛1のグラビアプリントおよび乾燥工程と同様の方法により、不連続なポリマードットを片面に設けた布帛3を得た。
【0117】
布帛4
上記のようにして得たポリマー組成物を、布帛Dの片面に、布帛1のグラビアプリントおよび乾燥工程と同様の方法により、不連続なポリマードットを片面に設けた布帛4を得た。
【0118】
布帛5
上記のようにして得たポリマー組成物を、布帛Eの片面に、布帛1のグラビアプリントおよび乾燥工程と同様の方法により、不連続なポリマードットを片面に設けた布帛5を得た。
【0119】
布帛6
上記のようにして得たポリマー組成物を、布帛Fの片面に、布帛1のグラビアプリントおよび乾燥工程と同様の方法により、不連続なポリマードットを片面に設けた布帛6を得た。
【0120】
布帛7(比較例)
実施例2における布帛Bの表面に、米国特許出願WO01/12889号公報に記載の不連続なホットメルト樹脂を形成するために以下の処理を行った。4、4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)/ポリカプロラクトンジオール(ダイセル化学工業社製、商品名プラクセル 210CP)/1,4−ブタンジオールをモル比がそれぞれ2:1:1.12となる割合で一般的なポリウレタン樹脂の重合プロセスを用いて反応させ、ポリエステル系ホットメルト樹脂のペレットを作製した。この樹脂の流動値(島津製作所社製フローテスター「CFT−500」を用い、180℃で測定した)は、30.3mm/sであった。
【0121】
次に、前記ペレットをエクストルーダーにて溶融させ、直径0.36mmの単列の開口部を有し、2.54cmあたり30個の噴き出し部を有する1m幅のメルトブロー装置に送り、布帛Bの表面に不織布状のホットメルト樹脂を形成させた。一旦冷却後、不織布状ホットメルト樹脂が形成された布帛Bをピンテンターにかけ、140℃に設定された熱風式乾燥オーブンの中に入れ、1分間、乾燥熱処理を施し、不織布状の摩耗抵抗性ポリマーを片面に設けた布帛7を得た。
【0122】
布帛8(比較例)
上記のようにして得たポリマー組成物を、グラビアプリント工程において使用するグラビアロールとして、28線/2.54cmの線数で、開口面積率が41%(一辺の寸法が0.58mmの正方形の孔が0.907mmの間隔で縦、横に配列された形状)で、深さが0.220mmの断面が台形状の凹セルを有するグラビアロールを用いて、布帛Fの片面に、布帛1のプリントおよび乾燥工程と同様の方法により、不連続なポリマードットを片面に設けた布帛8を得た。
【0123】
布帛1〜8について、ポリマードットの最大径の平均値、被覆量、平均ピッチ、ポリマードットの凸部、凹部へのそれぞれの被覆率、目付、厚さをそれぞれ測定し、その結果を表3に示した。耐摩耗性および外観などについて評価した結果を表3に示した。また、基材として用いたポリマードット未処理の布帛について評価した結果も併せて表3に示した。
【0124】
【表3】

【0125】
<ポリマードット被覆量・厚さ>
布帛1から6において、ポリマードットの被覆量は0.3〜2.2g/mであり、元の布帛の目付に対する重量増加率としては、0.4〜2.8%と極めて低い比率であり、本発明におけるポリマードットが布帛の軽量性を阻害していないことが分る。一方、従来技術である布帛7では、およそ17%の重量増加率となっており、軽量性が損なわれていることが分る。同様のことは、布帛の厚さにも現れており、布帛1から6の厚さは元の布帛AからFの厚さからほとんど変化が無いのに対し、布帛7では0.05mmの厚さの変化が見られた。
【0126】
<ポリマードット被覆率>
SEMの画像から算出したポリマードットの被覆率を見ると、布帛1〜6においては、いずれも凸部の被覆率が40%以上と高く、凹部の被覆率は40%以下で低く抑えられており、凸部がポリマードットで効果的に被覆されていることが分る。一方、布帛7を見ると、凸部の被覆率は97.8%と高い値であるものの、凹部の被覆率も86%であり、布帛表面が全体的に摩耗抵抗性ポリマーで被覆されていることが分る。また布帛8では、大きなポリマードットがまばらに点在することで、凸部が摩耗抵抗性ポリマーで効果的に被覆されていないことが分る。
【0127】
<面ファスナー摩耗耐久性>
面ファスナー摩耗耐久性試験結果を見ると、ポリマードットを有する布帛1〜6の級数は、ポリマードット未処理の布帛A〜Fの結果と比較してそれぞれ1〜2級の改善効果があることが分る。布帛8のポリマードット被覆量は、3.1g/mであり、布帛6よりも多いが、前述の通り効果的に凸部が被覆されていないため改善効果は布帛6と比較してやや劣る結果となっている。
【0128】
<外観>
布帛1、3〜6の外観は4級で、ポリマードット未処理の布帛A、C〜Fの外観と目視では全く区別がつかなかった。布帛2の外観は3級で、布帛Bと比較すると、殆ど外観に差が見られなかった。一方、布帛7の外観は1級で、ポリマードット未処理の布帛Bと比較して、明らかに不織布状のポリマーが布帛上に被覆されているのが分り、外観上の違いが見られた。これは、ポリマーの被覆量が非常に多いことと、被覆している摩耗抵抗性ポリマーの形状が繊維状で連続して長いためだと考えられる。また、布帛8の外観は2級で、ポリマードット未処理の布帛Fと比較して、ポリマードットによる光沢感、テカリ感が認められ、僅かに外観に違いが見られた。これはドットのサイズが大きすぎ、容易に目視でも見えてしまうためである。
【0129】
(4)摩耗抵抗性ポリマーを設けた複合布帛の作製
複合布帛1
可撓性フィルムとして、防水透湿性を有する延伸多孔質ポリテトラフルオロエチレンフィルム(ジャパンゴアテックス社製、単位面積当りの質量が20g/m、空孔率80%、最大細孔径0.2μm、平均厚さ30μm)を用い、米国特許第4194041号に記載の方法にて以下の処理を行った。末端基にイソシアネート基を有する親水性ポリウレタンプレポリマー(ダウケミカル社製、商品名ハイポール2000)にNCO/OHの当量比が1/0.8になる割合でエチレングリコールを加え、混合攪拌し親水性ポリウレタンプレポリマーの塗布液を作製した。この塗布液を前記可撓性フィルムの片面にロールコーターで塗布した。この時の塗布量は10g/mであった。次いで温度80℃、湿度80%RHに調整したオーブンに1時間入れて水分と反応させ、親水性ポリウレタン樹脂層を有する多孔質ポリテトラフルオロエチレンフィルムを作製した。
【0130】
この多孔質ポリテトラフルオロエチレンフィルムの親水性ポリウレタン層を設けた面には、ウェール、コースともに繊度22dtexで、ウェール密度36本/2.54cm、コース密度50本/2.54cm、単位面積あたりの質量:33g/mのナイロン66繊維からなるトリコットニットを積層し、親水性ポリウレタン樹脂層を設けた面の反対側には、ポリマードットを片面に設けた布帛1を、ポリマードットが被覆されていない面が可撓性フィルムに重なるように積層して複合布帛1を得た。
【0131】
なお、布帛1と可撓性フィルムとの接着には、ポリウレタン系湿気硬化反応型ホットメルト接着剤(日立化成ポリマー社製ハイボン4811)を使用した。接着剤温度を120℃とし、接着剤転写量が5g/mとなるようにフィルム上にその溶融液をカバー率40%のグラビアロールにて点状に塗布した後、ロールで圧着した。ロール圧着後、複合布帛は60℃、80%RHの恒温恒湿チャンバーに24時間放置し、反応型ホットメルト接着剤を硬化させて、3層構造の複合布帛を得た。
【0132】
次に、撥水処理を行った。撥水剤(明成化学工業社製「アサヒガード AG7000」)を3質量%、水97質量%を混合した分散液を調製し、これを布帛1の表面にキスコーターで飽和量以上に塗布し、次いでマングルロールで余分な分散液を搾った。このときの生地に吸収された分散液の塗布量は約70g/mであった。さらにこの生地を熱風循環式オーブンを用い、140℃、30秒の条件で乾燥熱処理を行い、3層構造の防水透湿性の複合布帛1を得た。
【0133】
複合布帛2
複合布帛1における布帛1の代わりに布帛2を用い、かつ、トリコットニットを積層しない以外は、複合布帛1と同じ条件で加工を行い2層構造の複合布帛を得た。なお、撥水剤分散液の塗布量は複合布帛1と同様に約70g/mであった。
【0134】
複合布帛3
複合布帛1における布帛1の代わりに布帛3を用い、かつ、トリコットニットを積層しない以外は複合布帛1と同じ条件で加工を行い2層構造の複合布帛を得た。なお、撥水剤分散液の塗布量は約87g/mであった。
【0135】
複合布帛4
複合布帛1における布帛1の代わりに布帛4を用い、かつ、トリコットニットを積層しない以外は複合布帛1と同じ条件で加工を行い2層構造の複合布帛を得た。なお、撥水剤分散液の塗布量は約90g/mであった。
【0136】
複合布帛5
複合布帛1における布帛1の代わりに布帛5を用い、かつ、トリコットニットを積層しない以外は複合布帛1と同じ条件で加工を行い2層構造の積層布帛を得た。なお、撥水剤分散液の塗布量は約40g/mであった。
【0137】
複合布帛6
複合布帛1における布帛1の代わりに布帛6を用いる以外は布帛1と同じ条件で加工を行い、3層構造の複合布帛を得た。なお、撥水剤分散液の塗布量は約20g/mであった。
【0138】
複合布帛7(比較例)
複合布帛1における布帛1の代わりに布帛Aを用いる以外は複合布帛1と同じ条件で加工を行い3層構造の複合布帛7を得た。なお、撥水剤分散液の塗布量は約70g/mであった。
【0139】
複合布帛8(比較例)
複合布帛1における布帛1の代わりに布帛Bを用い、かつ、トリコットニットは積層しない以外は複合布帛1と同じ条件で加工を行い2層構造の複合布帛8を得た。なお、撥水剤分散液の塗布量は約75g/mであった。
【0140】
複合布帛9(比較例)
複合布帛1における布帛1の代わりに布帛Cを用い、かつ、トリコットニットは積層しない以外は複合布帛1と同じ条件で加工を行い2層構造の複合布帛9を得た。なお、撥水剤分散液の塗布量は約90g/mであった。
【0141】
複合布帛10(比較例)
複合布帛1における布帛1の代わりに布帛Dを用い、かつ、トリコットニットは積層しない以外は複合布帛1と同じ条件で加工を行い2層構造の複合布帛10を得た。なお、撥水剤分散液の塗布量は約90g/mであった。
【0142】
複合布帛11(比較例)
複合布帛1における布帛1の代わりに布帛Eを用い、かつ、トリコットニットは積層しない以外は複合布帛1と同じ条件で加工を行い2層構造の複合布帛を得た。なお、撥水剤分散液の塗布量は約40g/mであった。
【0143】
複合布帛12(比較例)
複合布帛1における布帛1の代わりに布帛Fを用い、かつ、トリコットニットは積層しない以外は複合布帛1と同じ条件で加工を行い2層構造の複合布帛12を得た。なお、撥水剤分散液の塗布量は約20g/mであった。
【0144】
複合布帛13(比較例)
複合布帛1における布帛1の代わりに布帛7を用いかつ、トリコットニットは積層しない以外は複合布帛1と同じ条件で加工を行い2層構造の積層布帛を得た。なお、撥水剤分散液の塗布量は約65g/mであった。
【0145】
複合布帛14(比較例)
複合布帛1における布帛1の代わりに布帛8を用いた以外は複合布帛1と同じ条件で加工を行い3層構造の複合布帛14を得た。なお、撥水剤分散液の塗布量は約18g/mであった。
【0146】
得られた複合布帛について、透湿度、初期および摩耗後の撥水度、および、摩耗堅牢度について評価した結果を表4に示した。
【0147】
【表4】

【0148】
<複合布帛の風合い>
表4の風合い値(曲げ剛性)の測定結果から、複合布帛1〜6の風合い値は、複合布帛7〜12に対してやや数値が大きくなり風合いが硬くなっているものの、その数値の変化は小さく許容の範囲であることがわかる。一方、複合布帛13は複合布帛8の風合い値から大きく変化しており、明らかに手触りが異なるものであった。
【0149】
<複合布帛の透湿度>
表4の透湿度の測定結果から明らかなように、複合布帛1〜6の透湿度は、複合布帛7〜12に対してそれぞれ数%程度の低下にとどまっており、測定誤差も考慮するとその違いはほとんどないといっても良い程度の極めて小さいものである。一方、複合布帛13の透湿度は12%程度の透湿度低下を招いており、ややその下落が大きいと言える。これは不織布状の摩耗抵抗性ポリマーの布帛への被覆率が高いことや、複合布帛の厚さが厚くなったことにより空気層の透湿抵抗が増すことにより、布帛の透過性を低下させているためと考えられる。複合布帛14についても同様の傾向が見られた。
【0150】
<複合布帛の撥水度>
表4において、初期撥水度はいずれの複合布帛も良好な撥水性を示しているが、摩耗後の撥水度の測定結果から明らかなように、複合布帛1〜6の摩耗後の撥水度は、複合布帛7〜12に対して1ランク良い結果が得られている。撥水性能の低下は、撥水剤のフッ素基の配向の乱れや、撥水剤の脱落、繊維のほつれなどに起因するが、摩耗抵抗性のポリマードットがそれらの要因に対して低下を抑制する働きがあることが分る。一方、複合布帛13では、複合布帛8からの改善効果が見られないが、これは摩耗抵抗性ポリマーの表面付着量が多すぎると、ポリマー表面の平滑性が高いため、撥水剤の効果が低下すること、ポリマー表面の撥水剤が摩耗により脱落しやすいことが起因している可能性が考えられる。
【0151】
<湿摩耗堅牢度>
表4の複合布帛3と複合布帛9との比較から明らかなように、ポリマードットは、綿繊維の湿摩耗堅牢度を改善する働きがあることが分る。綿製品では特に湿摩耗に対する堅牢度が出にくいという問題があるが、摩耗抵抗性ポリマードットがそれを改善する働きがあると言える。このことは、綿製品のみならず、たとえば顔料プリントなど特に摩耗堅牢度の得られにくい布帛であっても問題無いレベルまで堅牢度を高められる可能性が高いことを示すものである。
【0152】
(5)複合布帛を用いた繊維製品の作製
複合布帛1および複合布帛7を用いて防水透湿性を有するジャケットを作製した。ここで複合布帛1を右身頃に用い、複合布帛7を左身頃にそれぞれ用いたものを2着、複合布帛7を右身頃に用い、複合布帛1を左身頃にそれぞれ用いたものを2着の合計4着を作製した。この様にして着用に伴うそれぞれの布帛の摩耗度合いや撥水性能の変化を比較することができるようにした。ジャケットは、3ヶ月間にわたって登山に用いられ、その間の着用時間が記録された。なお、この間にジャケットの洗濯やタンブル乾燥は行わなかった。
【0153】
着用後のジャケットを軽く水ですすぎ、風乾したのち、JIS L 1092に記載された撥水度試験に供した。試験は、ジャケットの上腕部、背中上部でそれぞれ行った。また、各部の表面の摩耗状態を目視で観察した。その結果を表5に示した。
【0154】
【表5】

【0155】
図15は、ジャケット着用後の撥水試験結果を示す図面代用写真である。左側が複合布帛1の部分であり、右側が複合布帛7の部分である。表5および図15から明らかなように、複合布帛1の部分は、撥水度が複合布帛7よりも優れていることがわかる。また、背中上部の撥水性が上腕部よりも劣る撥水性を示しているが、これは、着用中にザックを背負って歩行するため、その肩ベルトが背中上部に擦れることで上腕部よりもより強い摩耗の負荷がかかるためであると考えられる。
【0156】
毛羽立ちについて観察した結果でも複合布帛1と複合布帛7との違いは明瞭である。図16は、ジャケット着用後の面ファスナーによる摩耗状態を示す図面代用写真である。右側が複合布帛1の部分であり、左側が複合布帛7の部分である。背中上部の毛羽立ちは前述の通りザックの肩ベルトと擦れることで発生しやすいが、複合布帛1では布帛に毛羽立ちは全く認められなかった。また、フードの位置を調整する面ファスナーとの摩擦による毛羽立ちについても明瞭な差が見られ、複合布帛7では著しい毛羽立ちが発生していた。
【産業上の利用可能性】
【0157】
本発明は、耐摩耗性や撥水耐久性と良好な外観、風合いを必要とする繊維製品に好適に適用することができ、登山などにおいて防水透湿性を必要とするレインウェアなどの着衣製品に好適に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0158】
【図1】布帛1の電子顕微鏡写真である。
【図2】布帛2の電子顕微鏡写真である。
【図3】布帛3の電子顕微鏡写真である。
【図4】布帛4の電子顕微鏡写真である。
【図5】布帛5の電子顕微鏡写真である。
【図6】布帛6の電子顕微鏡写真である。
【図7】布帛7の電子顕微鏡写真である。
【図8】布帛8の電子顕微鏡写真である。
【図9】布帛Aの電子顕微鏡写真である。
【図10】布帛Bの電子顕微鏡写真である。
【図11】布帛Cの電子顕微鏡写真である。
【図12】布帛Dの電子顕微鏡写真である。
【図13】布帛Eの電子顕微鏡写真である。
【図14】布帛Fの電子顕微鏡写真である。
【図15】ジャケット着用後の撥水試験結果を示す図面代用写真である。
【図16】ジャケット着用後の面ファスナー摩耗試験結果を示す図面代用写真である。
【図17】布帛外観評価4級の状態を例示する図面代用写真である。
【図18】布帛外観評価3級の状態を例示する図面代用写真である。
【図19】布帛外観評価2級の状態を例示する図面代用写真である。
【図20】布帛外観評価1級の状態を例示する図面代用写真である。
【図21】摩耗抵抗性ポリマーを形成した従来の布帛の電子顕微鏡写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
布帛の表面がポリマードットで被覆されている布帛であって、
前記ポリマードットの大きさは、平均最大径が、0.5mm以下であることを特徴とする布帛。
【請求項2】
前記ポリマードットの表面被覆量は、0.2g/m〜3.0g/mである請求項1に記載の布帛。
【請求項3】
前記ポリマードット間の平均ピッチが、1mm以下である請求項1または2に記載の布帛。
【請求項4】
前記ポリマードットの大きさは、平均最大径が、0.03mm以上、0.3mm以下である請求項1〜3のいずれか一項に記載の布帛。
【請求項5】
前記布帛は、表面に凹凸を有するものであって、布帛表面の凸部の少なくとも一部が、前記ポリマードットで被覆されているものである請求項1〜4のいずれか一項に記載の布帛。
【請求項6】
前記布帛は、表面に凹凸を有する織物であって、経糸が緯糸上に積層してなる交差部、または、緯糸が経糸上に積層してなる交差部の少なくとも一方が、織物表面の凸部を形成し、前記織物表面の凸部の少なくとも一部が、前記ポリマードットで被覆されているものである請求項1〜5のいずれか一項に記載の布帛。
【請求項7】
前記布帛は、表面に凹凸を有する編物であって、糸交差部または糸ループ部の少なくとも一方が、編物表面の凸部を形成し、前記編物表面の凸部の少なくとも一部が、前記ポリマードットで被覆されているものである請求項1〜5のいずれか一項に記載の布帛。
【請求項8】
前記凸部の40%〜100%が、前記ポリマードットで被覆されているものである請求項5〜7のいずれか一項に記載の布帛。
【請求項9】
前記布帛表面の凹部が、前記ポリマードットで実質的に被覆されていないものである請求項5〜8のいずれか一項に記載の布帛。
【請求項10】
前記ポリマードットのポリマーと、布帛を構成するポリマーは、同一種類のポリマーからなるものである請求項1〜9のいずれか一項に記載の布帛。
【請求項11】
前記布帛を構成するポリマーが、ポリアミドであって、前記ポリマードットが、ポリアミドの架橋体を含有するものである請求項1〜10のいずれか一項に記載の布帛。
【請求項12】
前記布帛の摩耗後の撥水度が、前記ポリマードット被覆前の布帛の摩耗後の撥水度よりも1級以上高いものである請求項1〜11のいずれか一項に記載の布帛。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか一項に記載の布帛を用いた繊維製品。
【請求項14】
請求項1〜12のいずれか一項に記載の布帛を用いた着衣製品。
【請求項15】
前記布帛は、着衣製品の肩、肘、膝、袖、または、裾の部分の少なくとも一部に使用され、ポリマードットで被覆されている面が表側になるように設けられている請求項14に記載の着衣製品。
【請求項16】
前記布帛は、着衣製品の裏地の少なくとも一部に使用され、ポリマードットで被覆されている面が裏側(身体側)になるように設けられている請求項14に記載の着衣製品。
【請求項17】
表面に凹セルを有するグラビアパターンロールにポリマー組成物を塗布する工程と、
前記グラビアパターンロールのポリマー組成物を布帛の表面に転写して、前記布帛の表面をポリマードットで被覆する工程とを有することを特徴とする布帛の製造方法。
【請求項18】
可撓性フィルムと
前記可撓性フィルムに積層された請求項1〜12のいずれか一項に記載の布帛とを有し、
前記可撓性フィルムは、前記布帛のポリマードットで被覆されている面の反対側に積層されていることを特徴とする複合布帛。
【請求項19】
前記可撓性フィルムが、防水性フィルムである請求項18に記載の複合布帛。
【請求項20】
前記可撓性フィルムが、防水透湿性フィルムである請求項18に記載の複合布帛。
【請求項21】
前記防水透湿性フィルムが、疎水性樹脂からなる多孔質フィルムである請求項20に記載の複合布帛。
【請求項22】
前記疎水性樹脂からなる多孔質フィルムが、多孔質ポリテトラフルオロエチレンフィルムである請求項21に記載の複合布帛。
【請求項23】
前記疎水性樹脂からなる多孔質フィルムは、ポリマードットで被覆されている布帛が積層されている側の反対側に親水性樹脂層を有するものである請求項21または22に記載の複合布帛。
【請求項24】
前記可撓性フィルムは、さらに第2の布帛を有し、前記第2の布帛は、前記可撓性フィルムのポリマードットで被覆された布帛が積層されている側の反対側に積層されているものである請求項18〜23のいずれか一項に記載の複合布帛。
【請求項25】
請求項18〜24のいずれか一項に記載の複合布帛を用いた繊維製品。
【請求項26】
請求項18〜24のいずれか一項に記載の複合布帛を用いた着衣製品。
【請求項27】
前記複合布帛は、着衣製品の肩、肘、膝、袖、または、裾の部分の少なくとも一部に使用され、ポリマードットで被覆されている面が表側になるように設けられている請求項26に記載の着衣製品。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate


【公開番号】特開2008−69487(P2008−69487A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−250083(P2006−250083)
【出願日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【出願人】(000107387)ジャパンゴアテックス株式会社 (121)
【Fターム(参考)】