説明

耐放射性カメラ装置

【課題】原子力施設に於ける原子炉の燃料交換機制御室、廃棄物処理場等の強放射線環境下に於いて、長期間の連続監視が可能であって、しかも安価かつ取り扱いの簡便な耐放射線カメラを提供することを目的とする。
【解決手段】内部に耐放射性カメラ4と第1の反射鏡6とを有し、側面に監視対象物の像を前記第1の反射鏡に導く開口部5を備えた角筒状の放射線遮蔽材からなるカメラケース1と、前記側面に軸支された回転軸10に支持部材3を介して回動自在に配置された角筒状の放射線遮蔽材からなる複数の反射鏡ケース2a〜2dと、を具備する耐放射性カメラ装置であって、前記各反射鏡ケースは、端面に設けられ監視対象物の像を導く開口部8aと、前記像の光路を変換する第2の反射鏡9aと、側面に設けられ前記第2の反射鏡からの像を前記第1の反射鏡に導く開口部5aとを有し、前記複数の反射鏡ケースを回動させることにより、前記複数の反射鏡ケースのうちの一つを前記監視対象物に対向させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば原子力施設に於ける原子炉の燃料交換機の作業監視等、高放射線環境下に於ける各種の作業監視、状態監視等に用いられる耐放射性カメラ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力施設に於ける、原子炉の燃料交換制御室、廃棄物処理場等、強放射線環境下に於いては、高速中性子やγ線の照射により損傷を受けるCCDやCMOSといった撮像素子を使用した工業用TVカメラ(ITV)を使用することができず、耐放射線用として特殊用途向けに開発された特殊撮像管(ビジコン)を用いた耐放射性カメラが用いられていた。
【0003】
しかしながら、従来この種の特殊撮像管(ビジコン)を用いた耐放射性カメラは、非常に高価であるとともに、撮像された画像がモノクロ画像で出力されることから色彩判別等による詳密な監視が行えず監視性能面で問題があった。また、耐放射線ITVにおいては、撮像素子やその他電子回路の耐放射線化だけでなく、光学系も耐放射線化する必要がある。さらに、光学系の材料として従来鉛ガラスが使用されていたが、近年、環境負荷の低減を考慮して鉛ガラスは使用されなくなってきている。
【0004】
このような問題を解決する手段として、CCDやCMOSといった撮像素子を高速中性子遮蔽材やγ線遮蔽材で覆い、ITVカメラにて撮影対象物を監視する場合を除いては、放射線源から直接放射線を浴びない位置に当該ITVカメラを退避させるようにしたもの(特許文献1、特許文献2)、凹反射鏡により像を監視することにより直接レンズや、撮像素子に直接放射線が照射されないようにしたもの(特許文献3)などが提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−289458号公報
【特許文献2】特開2004−343195号公報
【特許文献3】特開2001−285690号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1、特許文献2に記載のように撮影対象物の監視時以外にカメラを放射線源から退避させるようにしたものは、連続監視が必要なシステムにとっては採用できず、また特許文献3に記載のように凹反射鏡により、レンズなどの光学要素に放射線が照射されないようにしたものは、反射鏡の材質であるガラスなどが放射線の照射による電離作用によってガラス中に正孔/電子対を生じ、その正孔または電子が不純物イオンに捕獲されて結果として褐色の着色(ブラウニング)が生じることより、長期の使用には耐えられないという問題があった。
【0007】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、原子力施設に於ける原子炉の燃料交換機制御室、廃棄物処理場等の強放射線環境下に於いて、長期間の連続監視が可能であって、しかも安価かつ取り扱いの簡便な耐放射性カメラ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記課題を解決するためになされたもので、本発明に係る耐放射性カメラ装置は、内部に耐放射性カメラと第1の反射鏡とを有し、側面に監視対象物の像を前記第1の反射鏡に導く開口部を備えた角筒状の放射線遮蔽材からなるカメラケースと、前記側面に軸支された回転軸に支持部材を介して回動自在に配置された角筒状の放射線遮蔽材からなる複数の反射鏡ケースと、を具備する耐放射性カメラ装置であって、
前記各反射鏡ケースは、端面に設けられ監視対象物の像を導く開口部と、前記像の光路を変換する第2の反射鏡と、側面に設けられ前記第2の反射鏡からの像を前記第1の反射鏡に導く開口部とを有し、前記複数の反射鏡ケースを回動させることにより、前記複数の反射鏡ケースのうちの一つを前記監視対象物に対向させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、原子力施設に於ける原子炉の燃料交換機制御室、廃棄物処理場等の強放射線環境下に於いて、長期間の連続監視が可能であって、しかも安価かつ取り扱いの簡便な耐放射性カメラ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態に係る耐放射性カメラ装置の全体構成を示す図。
【図2】本発明の実施形態に係る耐放射性カメラ装置のカメラケースを示す図。
【図3】本発明の実施形態に係る耐放射性カメラ装置の反射鏡ケースを示す図。
【図4】本発明の実施形態に係る耐放射性カメラ装置の他の反射鏡ケースを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る実施形態について、図面を参照して説明する。
本発明の実施形態に係る耐放射性カメラ装置を、図1〜4を用いて説明する。
図1の耐放射性カメラ装置は、カメラケース1、一対の反射鏡ケース2a、2b及び、反射鏡ケース2a、2bをカメラケース1に支持する支持部材3を備えている。図2にはカメラケース1が示され、同ケース1は耐放射性カメラ4のレンズの光軸上(開口部5)を除いて高速中性子遮蔽材並びにγ線遮蔽材で覆われている。高速中性子遮蔽材としては黒鉛、酸化ガドリニウムなど、また、γ線遮蔽材としては鉛、タングステン、酸化タングステンあるいはこれらの混合物など公知の材料を用いることができる。カメラケース1の内部には、CCDやCMOS等の撮像素子を備えた耐放射性カメラ4及び反射鏡6が収納されており、耐放射性カメラ4と反射鏡6とは開口部11を介して対向配置されている。耐放射性カメラ4は、図示しない撮像信号を反転させる回路を介して、前記反射鏡6により、左右反転した映像を補正し、別途用意された監視モニタへの出力映像信号を送出する。なお、カメラケース1には支持部材3と対抗した面に支持部材3を取り付ける取付孔7が設けられている。
【0012】
図3には、前記支持部材3の両側面に接続された一対の反射鏡ケース2a、2bが示されている。支持部材3には、駆動機構(図示せず)により回転駆動される回転軸10が挿入される長孔12が設けられ、長孔12を中心にして左右対称に、反射鏡ケース2a、2bの反射鏡9a,9b、開口ガラス8a,8b、開口5a,5bがそれぞれ設けられた構造となっている。1組の反射鏡9a,9bは監視対象物に対し45度の角度をもって配置され、捕らえた監視対象物の像を、反射鏡6により直角方向に反射させて撮像素子の光軸上のレンズに導くようになっている。また、開口ガラス8a,8bは開口5a,5bと直交する反射鏡ケース2a、2bの側面にそれぞれ設けられている。なお開口5a,5bも開口ガラス8a,8bと同様に、雰囲気内の塵芥対策としてガラス板を設けても良い。
【0013】
このような耐放射性カメラ装置において、図1の矢印方向で示されるように、対象物近傍からの高速中性子並びにγ線などの放射線は、高速中性子遮蔽材並びにγ線遮蔽材で覆われていない反射鏡ケース2aの開口ガラス8a、反射鏡9aを透過することとなるが、反射鏡9aの像を撮像素子の光軸上のレンズに導くカメラケース1の反射鏡6には、カメラケース1の対象物に対向する側面が高速中性子遮蔽材並びにγ線遮蔽材で覆われており、ケース内部に進入せず反射鏡6は放射線の影響を受けることはない。
【0014】
しかしながら、対象物に対向する開口ガラス8a、反射鏡9aに使用しているガラス材は、一定の期間(例えば1〜2年)が経過すると放射線の照射による褐色の着色(ブラウニング)が生じる場合がある。この場合は、図示しない遠隔操作により回転軸10を操作し、反射鏡ケース2aを180度回転させることによって、ブラウニングの発生した反射鏡9aを、まだ放射線の影響を受けていない反射鏡9bを収納した反射鏡ケース2bに変更し、継続して監視対象物の監視が行える。
【0015】
図4には、反射鏡ケースの異なる実施例が示されている。すなわち図3の反射鏡ケースは、反射鏡の変更に際して反射鏡ケースを180度回転させるものであるが、図4の反射鏡ケースは90度回転するものでより長期にわたって反射鏡の変更が可能となる。この反射鏡ケース2は全体として十字形をなしており、図3の例と同じく、回転軸10が挿入される長孔12設けられ、長孔12を中心にして上下左右対称に、反射鏡9a〜9d、開口ガラス8a〜8d、開口5a〜5dがそれぞれ設けられた構造となっている。また、反射鏡と対象構造物との位置関係、反射鏡ケースにおける開口ガラスと開口との位置関係は図3のものと同様である。なお、ここでは反射鏡ケースが2個、4個の例について説明したが、反射鏡ケースと支持部材との配置形態に応じて、反射鏡ケースを、3個、5個以上でも実施でき、また、ここでは支持部材として箱状の部材の例について説明したが、回転軸に棒状部材を放射状に取付けたものであっても実施できる。
以上説明したように、本実施形態によれば、長期間の連続監視が可能であって、しかも安価かつ取り扱いの簡便な耐放射性カメラ装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0016】
1…カメラケース、2a〜2d…反射鏡ケース、3…支持部材、4…耐放射性カメラ、5,5a〜5b,11…開口部、6…反射鏡(第1の反射鏡)、7…取付孔、8a〜8d…開口ガラス(ガラス板)、9a〜9d…反射鏡(第2の反射鏡)、10…回転軸、12…長孔。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に耐放射性カメラと第1の反射鏡とを有し、側面に監視対象物の像を前記第1の反射鏡に導く開口部を備えた角筒状の放射線遮蔽材からなるカメラケースと、前記側面に軸支された回転軸に支持部材を介して回動自在に配置された角筒状の放射線遮蔽材からなる複数の反射鏡ケースと、を具備する耐放射性カメラ装置であって、
前記各反射鏡ケースは、端面に設けられ監視対象物の像を導く開口部と、前記像の光路を変換する第2の反射鏡と、側面に設けられ前記第2の反射鏡からの像を前記第1の反射鏡に導く開口部とを有し、前記複数の反射鏡ケースを回動させることにより、前記複数の反射鏡ケースのうちの一つを前記監視対象物に対向させることを特徴とする耐放射性カメラ装置。
【請求項2】
少なくとも前記開口部のうち前記反射鏡ケース端面に設けられた開口部にはガラス板を配設したことを特徴とする請求項1記載の耐放射性カメラ装置。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2011−71877(P2011−71877A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−222678(P2009−222678)
【出願日】平成21年9月28日(2009.9.28)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】