説明

耐火パネルの連結部構造

【課題】複数の耐火パネルを連結して耐火間仕切壁を形成する場合に、耐火性能に優れた耐火パネルの連結部構造を提供する。
【解決手段】耐火パネル2を、金属製の表面板14間に耐火断熱性の芯材15が充填されたものとする一方、隣接する耐火パネル2の芯材15の連結側端面15aに凹溝18を形成し、該凹溝18に、隣接する両方の耐火パネル2の芯材15に亘り、且つ表面板14と平行状になるようにケイ酸カルシウム板19を嵌合すると共に、隣接する耐火パネル2の芯材15の連結側端面15a間に、ケイ酸カルシウム板19から表面板14に至るようセラミックファイバー20を介装した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐火間仕切壁等に用いられる耐火パネルの連結部構造の技術分野に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、耐火間仕切壁は、防火区画、排煙区画、避難区画等を形成するために広く活用されているが、この場合に、複数の耐火パネル同士を連結して耐火間仕切壁を構築することがある。この様な耐火間仕切壁に用いられる耐火パネルとして、例えば、二枚の金属製の表面板間に耐火断熱性の芯材を充填した耐火パネルが知られている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
ところで、前記二枚の金属製の表面板間に断熱性の芯材を充填した耐火パネルを用いて耐火間仕切壁を形成する場合には、耐火パネル同士の連結部の耐火性能が問題になる。つまり、火災等の高温下においては、熱により表面板と芯材との接着が剥がれると共に表面板が変形し、これにより耐火パネル同士の連結部に隙間が生じて該隙間から火炎や熱が漏れて延焼してしまう惧れがある。
そこで、前記特許文献1のものでは、耐火パネルの両端部に嵌合凸部と嵌合凹部とを形成し、これら嵌合凸部と嵌合凹部部分に無機質材を充填して不燃部を構成している。また、特許文献2のものでは、隣接する耐火パネルの表面板同士の連結を、嵌合凹部と嵌合突部との嵌合と、差込突部と差込受け部との嵌合の二重構造にすることにより、火災時でも表面板同士の連結を維持することを図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−8372号公報
【特許文献2】特開2008−121213号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記特許文献1のものは、火災時等の高温下において、熱により嵌合凸部、嵌合凹部の外殻を形成する金属製の表面板が変形してしまうと、嵌合凸部と嵌合凹部との嵌合を維持することができずにパネル同士の連結部に隙間が生じてしまう惧れがある。また、特許文献2のように耐火パネルの表面板同士の連結を二重構造にしても、高温下(例えば、500度以上)では金属製の表面板の熱膨張変形は大きく、表面板同士の連結が外れてしまう惧れを払拭できないという問題がある。さらに、特許文献2のものでは、耐火パネルの芯材の端縁に端縁ボード部及び目地部が貼着されているが、高温下では芯材と端縁ボード部及び目地部とを貼着する接着材の接着能力が低下して、芯材と端縁ボード部及び目地部との間に隙間が生じてしまう惧れがある。而して、特許文献1、2のものは何れも連結部に隙間が生じる惧れがあって、加熱側から非加熱側に火炎や熱が漏れてしまうことを確実に防止できないという問題があり、ここに本発明の解決すべき課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、請求項1の発明は、二枚の金属製の表面板間に耐火断熱性の芯材を充填してなる耐火パネル同士を連結するにあたり、隣接する耐火パネルの芯材の連結側端面に、表面板と平行状の凹溝を形成し、該凹溝に、隣接する両方の耐火パネルの芯材に亘り、且つ表面板と平行状になるようにケイ酸カルシウム板を嵌合せしめると共に、隣接する耐火パネルの芯材の連結側端面間に、前記ケイ酸カルシウム板に直交する状態で該ケイ酸カルシウム板から表面板に至るようセラミックファイバーを介装させたことを特徴とする耐火パネルの連結部構造である。
【発明の効果】
【0006】
請求項1の発明とすることにより、火災等の高温下において、熱により表面板が芯材から剥がれたり熱膨張変形したりしても、耐火パネルの連結部は、隣接する両方の耐火パネルの芯材に亘るように配されたケイ酸カルシウム板と、芯材の連結端面間に介装されたセラミックファイバーとによって、加熱側面から非加熱側面への火炎や熱の通過経路が確実に遮断されることになる。しかも、前記ケイ酸カルシウム板は、芯材の連結側端面に形成された凹溝に嵌合されることによって、隣接する両方の耐火パネルの芯材に亘るように配される構成であるから、高熱下であっても、ケイ酸カルシウム板が芯材から外れてしまったり、ケイ酸カルシウム板と芯材との間に隙間が生じてしまう惧れがなく、而して、耐火性能に優れた連結部構造とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】耐火間仕切壁の全体正面図である。
【図2】図1のX−X断面図である。
【図3】図1のY−Y断面図である。
【図4】耐火パネルの平面図である。
【図5】耐火間仕切壁の一部切欠き斜視図である。
【図6】一時間耐火試験の温度データを示すグラフ図である。
【図7】(A)、(B)は、連結部における表面板同士の係合の他例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。図において、1は耐火間仕切壁であって、該耐火間仕切壁1の壁面は、複数枚の耐火パネル2を該耐火パネル2の幅方向に並設して形成されていると共に、これら複数枚の耐火パネル2は、天井部3に配設される上部レール4と、床部5に配設される下部レール6と、壁面7に配設される壁レール8とに取付支持されている。
【0009】
前記上部レール4及び下部レール6は、耐火間仕切壁1により区画される一方の区画側から耐火パネル2を支持する一半側と、他方の区画側から耐火パネル2を支持する他半側とに二分割されている。そして、これら二分割された上部レール4及び下部レール6は、それぞれコンクリート用螺子9により天井部3及び床部5に固定されると共に、耐火パネル2の上端部及び下端部が螺子10により止着されるようになっている。尚、耐火パネル2の上端面と天井部3との間、耐火パネル2の下端面と床部5との間には、セラミックファイバー等から形成される耐火断熱材11が充填されている。
【0010】
また、壁レール8は、並設される耐火パネル2のうち両端側に配される耐火パネル2を取付支持するものであって、該壁レール8は、壁レール取付金具12を介して壁面7に固定される構成になっているが、これら壁レール8及び壁レール取付金具12も、前記上部レール4及び下部レール6と同様に、耐火間仕切壁1により区画される一方の区画側から耐火パネル2を支持する一半側と、他方の区画側から耐火パネル2を支持する他半側とに二分割されている。そして、壁レール8は、コンクリート用螺子9により壁面7に固定された壁レール取付金具12に螺子13により止着されると共に、耐火パネル2の壁面側端部が螺子10により止着されるようになっている。尚、該耐火パネル2の壁面側端面と壁面7との間には、セラミックファイバー等から形成される耐火断熱材11が充填されている。
【0011】
一方、前記耐火パネル2は、平行な二枚の金属製の表面板14間に、耐火断熱性の芯材15を充填して形成されるものであって、本実施の形態では、芯材15としてロックウールが用いられている。尚、表面板14と芯材15とは、図2、3、4に点線で示す接着材16により接着されている。
【0012】
17は前記耐火パネル2同士の連結部であって、該連結部17において、隣接する耐火パネル2の表面板14同士は雄雌状に係合するように構成されている。つまり、耐火パネル2の一方の連結側端部(図3、4において右側端部)における二枚の表面板14は、該耐火パネル2の芯材15の連結側端面15aよりも隣接する耐火パネル2に向けて直線状に延びてから芯材15の連結側端面15aに戻るように折り返されており、これにより、隣接する耐火パネル2に向けて突出する突出部14aが形成されている。また、耐火パネル2の他方の連結側端部(図3、4において左側端部)は、耐火パネル2の厚み方向の寸法が他の部分よりも若干狭くなるように設計されており、これにより他方の連結側端部において二枚の表面板14は、他の部分よりも厚み方向内側に凹んだ凹部14bに形成されている。そして、該凹部14bの厚み方向外側に隣接する耐火パネル2の突出部14aが係合することで、隣接する耐火パネル2の表面板14同士が雄雌状に係合するようになっている。
【0013】
さらに、前記連結部17において、隣接する耐火パネル2の芯材15の連結側端面15a同士は、表面板14に対して直交する状態で互いに対向していると共に、該芯材15の連結側端面15aには、表面板14と平行状の凹溝18が、耐火パネル2の厚み方向中央部に位置し、且つ耐火パネル2の上下方向全長に亘る状態で形成されている。そして、該凹溝18には、隣接する両方の耐火パネル2の芯材15に亘り、且つ表面板14と平行状になるようにしてケイ酸カルシウム板19が嵌合されている。ケイ酸カルシウム板は、周知のように、耐火性、断熱性、強度、安全性に優れた耐火断熱材である。
【0014】
さらに、隣接する耐火パネル2の芯材15の連結側端面15a間には、前記ケイ酸カルシウム板19に直交する状態で該ケイ酸カルシウム板19から両方の表面板14に至るようにセラミックファイバー20が介装されている。セラミックファイバーは、周知のように、耐火性、断熱性に優れると共に、圧縮性を有した耐火断熱材である。
【0015】
叙述の如く構成された本形態において、耐火間仕切壁1の壁面は、二枚の金属製の表面板14間に耐火断熱性の芯材15を充填した耐火パネル2同士を連結して形成されているが、このものにおいて、耐火パネル2の芯材15の連結側端面15aには、表面板14と平行状の凹溝18が形成されていると共に、該凹溝18には、隣接する両方の耐火パネル2の芯材15に亘り、且つ表面板14と平行状になるようにケイ酸カルシウム板19が嵌合されている。さらに、隣接する耐火パネル2の芯材15の連結側端面15a間には、前記ケイ酸カルシウム板19に直交する状態で該ケイ酸カルシウム板19から表面板14に至るようにセラミックファイバー20が介装されている。
【0016】
この結果、火災等の高温下において、熱により表面板14が芯材15から剥がれたり熱膨張変形したりしても、耐火パネル2同士の連結部17は、隣接する両方の耐火パネル2の芯材15に亘るように配されたケイ酸カルシウム板19と、芯材15の連結側端面15a間に介装されたセラミックファイバー20とによって、加熱側面から非加熱側面への火炎や熱の通過経路が確実に遮断されることになる。しかも、前記ケイ酸カルシウム板19は、隣接する耐火パネル2の芯材15の連結側端面15aに形成された凹溝18に嵌合されることによって、隣接する両方の耐火パネル2の芯材15に亘るように配される構成であるから、高熱下であっても、ケイ酸カルシウム板19が芯材15から外れてしまったり、ケイ酸カルシウム板19と芯材15との間に隙間が生じてしまう惧れがなく、而して、耐火パネル2同士の連結部17から火炎や熱が漏れてしまうことを確実に防止することができる。さらにこのものは、隣接する両方の耐火パネル2の芯材15に亘るように配されたケイ酸カルシウム板19によって、耐火パネル2同士の連結が強固になるという利点もある。
【0017】
さらに、本発明が実施された耐火間仕切壁1の耐火性能について、ISO834準拠の一時間耐火試験を行ったところ、図6に示す如く、非加熱側面を合格基準である200℃以下に維持できることが実証され、而して、本発明の有効性を確認することができた。尚、上記実験の際の仕様は、芯材15は80mm厚のロックウール(密度150kg/m)、ケイ酸カルシウム板19は12mm厚である。また、図6では、耐火試験装置の炉内、非加熱側面について各々1〜3の三箇所の測定温度のデータを示したが、実際の試験では多数箇所の温度を測定し、非加熱側面の全ての測定箇所において200℃以下であった。
【0018】
尚、本発明は上記実施の形態に限定されないことは勿論であって、例えば、隣接する耐火パネル2の連結部17において表面板14同士を係合するにあたり、図7(A)、(B)に示す如く、隣接する両方の耐火パネル2の表面板14の連結側端部に突出辺14c或いは14dを形成し、これら突出辺14c或いは14d同士を重ね合わせて螺子21或いは22で止着する構成にすることもできる。さらにこれらのものにおいて、螺子21或いは22の止着部分にジョイナー23或いは24を装着しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明は、耐火間仕切壁等に用いられる耐火パネル同士を連結する場合に、耐火性能に優れた耐火パネルの連結部構造として利用することができる。
【符号の説明】
【0020】
2 耐火パネル
14 表面板
15 芯材
15a 連結側端面
18 凹溝
19 ケイ酸カルシウム板
20 セラミックファイバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二枚の金属製の表面板間に耐火断熱性の芯材を充填してなる耐火パネル同士を連結するにあたり、隣接する耐火パネルの芯材の連結側端面に、表面板と平行状の凹溝を形成し、該凹溝に、隣接する両方の耐火パネルの芯材に亘り、且つ表面板と平行状になるようにケイ酸カルシウム板を嵌合せしめると共に、隣接する耐火パネルの芯材の連結側端面間に、前記ケイ酸カルシウム板に直交する状態で該ケイ酸カルシウム板から表面板に至るようセラミックファイバーを介装させたことを特徴とする耐火パネルの連結部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−72601(P2012−72601A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−218325(P2010−218325)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(307038540)三和シヤッター工業株式会社 (273)
【Fターム(参考)】