耐火物成型品を得る方法、および耐火物成型品
【課題】あらゆる物質に混合できるアルカリ金属イオンまたはアルカリ土類金属の還元・触媒反応を有する組成物を用いた、耐火物成型品を提供する。
【解決手段】周期律表4A族の金属アルコキシド、周期律表4B族(炭素を除く)の金属アルコキシド、周期律表3A族の金属アルコキシド、周期律表3B族の金属アルコキシド、およびこれらの部分加水分解物の群から選ばれた少なくとも1種の金属アルコキシド類と、アルカリ金属のアルカリ化合物および/またはアルカリ土類金属のアルカリ化合物とを含むアルコール溶液と、耐火物粒とを混合し、次いでバインダーとしての有機高分子材料を混合して成型し、加熱して、耐火物成型品を得る。
【解決手段】周期律表4A族の金属アルコキシド、周期律表4B族(炭素を除く)の金属アルコキシド、周期律表3A族の金属アルコキシド、周期律表3B族の金属アルコキシド、およびこれらの部分加水分解物の群から選ばれた少なくとも1種の金属アルコキシド類と、アルカリ金属のアルカリ化合物および/またはアルカリ土類金属のアルカリ化合物とを含むアルコール溶液と、耐火物粒とを混合し、次いでバインダーとしての有機高分子材料を混合して成型し、加熱して、耐火物成型品を得る。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、常温、常圧下においてアルカリ金属の還元能、触媒能を維持する組成物を用い、耐火物成型品を得る方法、およびこれにより得られる耐火物成型品に関する。
上記組成物は、強便な還元剤としてあらゆる物質と混合することができ、常温で強い反応性を有するアルカリ金属の輸送手段としても安全である。
上記組成物は、アルカリ金属の反応性と、セラミックスの特性である耐蝕性、耐熱性、絶縁性を有し、さらに、有機高分子材料との結合により、複合物を生成し、有機高分子材料の耐熱性を改善することが可能である。また、上記組成物は、あらゆる物質と混合し、物質に耐熱性等の新たな機能を付加する基盤材料として産業に貢献できるものである。さらに、上記組成物は800℃以上の高温域で、シリカが還元され、酸化アルカリを生成して溶融状態になり、生成した酸化アルカリを硬化剤として、トリジマイト結晶に転移して、耐酸化性、耐食性に優れた組成物が得られる。
高温で得られる溶融した上記組成物は、あらゆる物質に耐酸化性、耐食性に優れた丈夫な皮膜を形成し、排気ガスによる腐食を阻止することができる。
【背景技術】
【0002】
周期律表のI族のアルカリ金属及びアルカリ土類金属の合金は、金属状態、中性状態では、非常に高い反応性を示し、空気や湿気に曝されると自然発火する。このため、真空中や、不活性液体中に保管する。例えば金属ナトリウムは、灯油等に保管され、また使用時には不純物を除去しなければならない。このことは、上記金属の用途と輸送に重大な制約要因となっている。
【0003】
NaのCarrierとしての組成物は、特許文献1(特表2007−520407号公報)で、「液状アルカリ金属を不活性雰囲気下又は真空下において、常温または、高温でシリカゲルに含浸させる方法」が記載されているが、製造工程が原料として金属ナトリウムを使用するため、取り扱いは変わらず、不活性ガス、真空中の加熱工程が伴う。また、シリカゲルの粒度が大きい。
【0004】
シリカのトリジマイトの結晶化は、アルカリ酸化物を融剤することは知られているが、実在するトリジマイト結晶は、隕石や、火山の噴出岩等、超高温超高圧下から急激な環境変化で形成されているので、人工的に直接溶液から短時間で昌出する方法はこれまでに考えられていなかった。
【0005】
自動車の軽量化、産業機器の小型化に伴い有機高分子材料の耐熱性の向上が求められている。ガラス繊維、骨材等のフィラーの添加による複合材料が提唱されてきたが、有機高分子材料自身の耐熱性、およびリサイクル性が解決されていない。
【0006】
自動車の軽量化に伴い軽くて丈夫な高張力鋼板の採用が急務であるが、熱間成形によるため、スケールの発生に対する対策、及び新たな防錆方法が求められている。
【0007】
自動車の燃焼温度の上昇に伴い、また、排ガスを循環利用するEGR等、表面の耐酸化性が求められている、しかし、対応するステンレス材料は、Ni等の材料の高騰によるコスト上昇が激しい。
【0008】
近年、コ―ジェネレーターの発電が多く使用されているが、排ガスが利用され、タービンの腐食が激しい。このため、クロム拡散処理(MCrAlYまたはCoNiCrAlY)等の高温耐熱皮膜(Thermal Barrier Coat)が使用されている。しかし、Alの減耗が寿命となっている。
【0009】
近年、低温形成セラミックス皮膜の生成法としてSol−Gel(ゾル−ゲル)法が用いられている。しかし、ゾル−ゲル法においては、ゾルのライフタイムが非常に短く、さらにゲル生成後に加熱工程が加わるため、基材の収縮が伴い好ましくない。上記組成物の構成溶液のライフは数年にも及び半永久的である。
【0010】
近年に至り、骨材と有機バインダーによって成形品素体を成形し、これに、アルコキシシラン類を含浸させて、次いで、これを乾燥させて高温焼成して、耐火物成形品を得る有機バインダーが提案されている(特許文献2:特許第3139918号公報)。
しかしながら、この方法では、アルコキシラン類溶液を成型品素体に含浸する工程を必要とし、工程が複雑となるという問題がある。
【0011】
さらに、骨材と有機バインダーによって成形品素体を成形し、成形品表面にアルコキシシランを塗布、含浸し、乾燥し、鋳物を鋳造する方法が提案されている(特許文献3:特開2002−143983号公報)。
一方、特許文献4(特開2006−82413号公報)には、基板上に、ケイ素などのアルコキシドおよび/またはその部分重縮合物(A)を主体とする表面皮膜と、(A)と反応する官能基を持つウレタン樹脂などのバインダー樹脂(B)を主体とする下層皮膜を有する耐汚染性に優れた塗装膜が提案されているが、この塗装膜はあくまでも、二層からなるものであって、無機−有機複合ハイブリッド皮膜ではない。
また、特許文献5(特開平7−68217号公報)には、アルコキシシランの加水分解物とポリエステル樹脂とを含む液状配合物を金属表面に塗布し、次いで乾燥する、金属表面のコーティング方法が提案されている。しかしながら、このコーティング方法も、既にポリマー化されたポリエステル樹脂とアルコキシシランの加水分解物の有機溶剤系の溶液を用いるものであり、得られる皮膜は、アルコキシシランの縮合物とポリエステル樹脂との単なるブレンド物であって、無機−有機ハイブリッド皮膜ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特表2007−520407号公報
【特許文献2】特許第3139918号公報
【特許文献3】特開2002−143983号公報
【特許文献4】特開2006−82414号公報
【特許文献5】特開平7−68217号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、このような事情に鑑み、以下の目的を達成することができる、あらゆる物質に混合できるアルカリ金属イオンまたはアルカリ土類金属の還元・触媒反応を有する組成物を用いた、耐火物成型品を提供することを目的とする。
(a)高分子材料のモノマー、またはポリマーに上記組成物を粉状で混合して、高分子材料の300℃以上の耐熱特性、物性を改善し、新たな機能材料が得る。
(b)上記組成物をあらゆる物体に混合し、親水性、結露防止、耐熱性等を改善する(物体は紙、木材などの有機物であってもよい)。
(c)アルミニウム合金の溶湯に、上記組成物を添加し、アルカリ金属イオンまたはアルカリ土類金属による改良処理を行う。
(d)上記組成物を混合した物体のアルカリ金属イオンまたはアルカリ土類金属をハロゲンガスにより除去し、組成物の絶縁特性、耐食性、耐候性を得る。
(e)上記組成物を約800℃に加熱し、上記組成物を液状化し、物質に溶融コーティングすることにより、耐熱、耐食皮膜を得る。
(f)上記組成物を、金属表面に付着させ、800℃以上の高温で加熱し、還元性皮膜を生成させ熱間成形、熱処理の作業中におけるスケール発生を防止する。
(g)上記組成物を、金属表面に付着させ、大気中、真空、不活性ガスのいずれかの雰囲気で800℃以上の高温に焼成し、アルカリ金属イオンまたはアルカリ土類金属を除去し、トリジマイト結晶を得て、Thermal Barrier Coatを得る。
(h)上記組成物と高分子材料の複合物をバインダーとして骨材を成形し、上記組成物の耐火物を得る。
(i)上記組成物を混合した高分子材料をバインダーとして骨材を成形し、800℃以上に加熱焼成して得た耐火物を得る。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、(イ)周期律表4A族の金属アルコキシド、周期律表4B族(炭素を除く)の金属アルコキシド、周期律表3A族の金属アルコキシド、周期律表3B族の金属アルコキシド、およびこれらの部分加水分解物の群から選ばれた少なくとも1種の金属アルコキシド類と、アルカリ金属のアルカリ化合物および/またはアルカリ土類金属のアルカリ化合物とを含むアルコール溶液と(ロ)耐火物粒とを混合し、次いで(ハ)バインダーとしての有機高分子材料を混合して成型し、加熱して、耐火物成型品を得る方法に関する。
ここで、上記(イ)アルコール溶液を構成する金属アルコキシド類は、一般式RmSi(OR)4−m(ただし、式中Rは互いに同じかあるいは異なる炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜8のアリール基、炭素数2〜6のアルコキシアルキル基または炭素数7〜12のアリールオキシアルキル基であり、mは0〜3の整数である)で表される珪酸エステルおよびアルキル珪酸エステル、ならびにこれらの部分加水分解物から選ばれた1種または2種以上の珪酸エステル類であることが望ましい。
アルカリ金属のアルカリ化合物として、ナトリウムアルコラートまたはその水酸化物が望ましい。
上記アルコール溶液中のアルカリ金属のアルカリ化合物および/またはアルカリ土類金属のアルカリ化合物の含有量は、アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属換算で、6〜20重量%であることが望ましい。
上記アルコール溶液中の金属アルコキシド類の含有量が、金属酸化物換算で、2〜30重量%であることが望ましい。
さらに、本発明の組成物を形成するアルコール溶液に、硬化促進剤として、有機アミン化合物が、金属アルコキシド類に対して1〜10重量%添加されていても良い。
【0015】
上記(B)耐火物粒としては、珪砂などの砂およびムライトから選ばれた少なくとも1種が挙げられる。
また、上記(C)バインダーとしての有機高分子材料としては、フェノール樹脂、アルカリフェノール樹脂、およびフェノールウレタン樹脂から選ばれた少なくとも1種が挙げられる。
上記(ロ)耐火物粒の配合量は、(イ)アルコール溶液100重量部に対し、15〜25重量部であり、(ハ)有機高分子材料の配合量は(ロ)耐火物粒に対して1.0〜3.0重量%である。
本発明では、(イ)アルコール溶液と(ロ)耐火物粒とを混合したのち、この混合物からアルコールを乾燥除去することが好ましい。
さらに、上記加熱温度は800℃以上である。
次に、本発明は、以上の耐火物成型品を得る方法によって得られる耐火物成型品に関する。
以上の耐火物成型品の具体例としては、鋳型が挙げられる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の反応性、例えば還元能または触媒能を維持する組成物は、あらゆる物質と物理的に混合して、無機−有機ハイブリッドの機能性材料が得られ、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の還元反応性を常温、常圧下で活用でき工程が簡素化される。さらに、上記組成物は、800℃以上の高温で、黒色の溶融状態の組成物を形成して、物体表面に耐酸化性、耐食性の皮膜を形成する。さらに、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の沸点以上では、アルカリ金属またはアルカリ土類金属が除去され、白色、半透明のトリジマイト結晶が得られる。
したがって、上記(イ)アルコール溶液に(ロ)耐火物粒を混合したのち、次いで(ハ)バインダーとしての有機高分子材料を配合して成形し、焼成すると、鋳型などの耐火性の成型品が得られる。本発明により得られる耐火物成型品は、無機−有機ハイブリッドの耐火性の機能性材料であり、耐火物の製造工程を簡素化することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】シリカ結晶空隙内のNaイオンの挙動を示した概略図である。
【図2】Naイオンがシリカを還元し、酸化してNa2Oを生成し、融体化したシリカ組成物の外観写真である。
【図3】シリカ組成物の熱分析結果(778.91℃:シリカの還元、882.91℃。酸化アルカリの生成、1044.96℃:Naイオンの蒸発)を示したグラフである。
【図4】シリカ組成物のクリストバライト、β−トリジマイト転移のX線回折の結果を示した図である。
【図5】EPMAによるシリカ組成物の拡大写真である。
【図6】上記組成物と高分子化合物の反応による有機シリカ化合物の熱分析の結果を示す図である。
【図7】有機シリカ化合物を生成した高分子材料の耐熱性を示す図である。
【図8】1600℃における耐熱性皮膜を示す図である。
【図9】950℃における低炭素鋼のスケール防止機能を示す図である。
【図10】硫化水素雰囲気下における腐食防止効果を示す図である。
【図11】MX溶液を塗布しなかった鋳型表面に黒い煤が付着した状態を示す図(左図)及び、MX溶液を塗布した鋳型表面に白い煤が付着した状態並びにその白い煤が剥がれ落ちた状態を示す図(左図)である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
結晶核空隙に、アルカリ金属またはアルカリ土類金属を保持する上記組成物は、周期律表4A族の金属アルコキシド、周期律表4B族(炭素を除く)の金属アルコキシド、周期律表3A族の金属アルコキシド、周期律表3B族の金属アルコキシド、およびその部分加水分解物から選ばれた少なくとも1種の金属アルコキシド類と、アルカリ金属のアルカリ化合物および/またはアルカリ土類金属のアルカリ化合物を含むアルコール溶液を主成分とする溶液のアルコールを乾燥除去することにより得られる。
本発明の上記組成物は、アルコールの沸点下において、アルコールの存在中に、アルカリ金属またはアルカリ土類金属を酸化することなしに、アルカリ金属またはアルカリ土類金属を核としてα―トリジマイト結晶核として生成し、この結晶核空隙中にアルカリ金属またはアルカリ土類金属を取り込んだ組成物である。
【0019】
本発明の組成物を形成するアルコール溶液は、アルコール溶剤中に成分として、一般式RmM1(OR)4―mまたはM2(OR)3(ただし、式中M1は周期律表4A族または炭素以外の4B族の金属を示し、M2は周期律表3A族または3B族の金属を示し、Rは互いに同じかあるいは異なる炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜8のアリール基、炭素数2〜6のアルコキシアルキル基または炭素数7〜12のアリールオキシアルキル基であり、M1がSiの場合にはm=0〜3の整数であって、M1がSi以外の場合にはm=0である)で表されるアルコール可溶性の金属アルコキシドおよびその部分加水分解物から選ばれた少なくとも1種の金属アルコキシド類と、下記一般式M3OR´またはM4(OR)2(ただし、式中M3はアルカリ金属を示し、M4はアルカリ土類金属を示し、R´は水素または炭素数1〜6のアルキル基を示す。Rは、上記と同様である。)で表されるアルコール可溶性のアルカリ化合物とを含有するものである。
【0020】
本発明において、上記組成物の成分を構成する金属アルコキシドは、周期律表4A族または炭素以外の4B族の金属M1または周期律表3A族または3B族の金属M2の金属アルコキシドまたはそれらの部分加水分解物である。ここで、金属アルコキシドを形成する金属M1としては、周期律表4A族金属としてTi、Zrなどを挙げることができ、また、炭素以外の周期律表4B族金属としてSi、Ge、Sn、Pbなどを挙げることができ、そしてM2としては、周期律表3A族金属としてSc、Yなどを挙げることができ、さらに、3B族金属としてB、Al、Gaなどを挙げることができる。
【0021】
また、上記金属アルコキシドを形成するRは、互いに同じかあるいは異なる炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜8のアリール基、炭素数2〜6のアルコキシアルキル基または炭素数7〜12のアリールオキシアルキル基である。具体的には、アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、アミル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、s−ブチル基などを、また、アリール基としては、フェニル基、トリル基、キシリル基などを、さらに、アルコキシアルキル基としては、メトキシエチル基、メトキシイソプロピル基、メトキシプロピル基、メトキシブチル基、エトキシエチル基、エトキシプロピル基、エトキシブチル基などを、またアリールオキシアルキル基としては、フェノキシメチル基、フェノキシエチル基、フェノキシプロピル基、フェノキシブチル基、トリロキシメチル基、トリロキシエチル基、トリロキシプロピル基、トリロキシブチル基などを挙げることができる。
【0022】
そして、このような金属アルコキシドの部分加水分解物としては、それが加水分解率0%以上であってアルコール溶剤に溶解すれば特に制限はなく、直鎖状部分加水分解物であっても、網目状部分加水分解物であっても、また、環状部分加水分解物であっても良い。
さらに、これら金属アルコキシドおよびその部分加水分解物からなる金属アルコキシド類は、その1種のみを単独で使用してもよく、また、2種以上の混合物として使用することもできる。
【0023】
本発明において、上記金属アルコキシド類として最も好ましいものは、一般式RmSi(OR)4-m(ただし、式中Rは互いに同じかあるいは異なる炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜8のアリール基、炭素数2〜6のアルコキシアルキル基または炭素数7〜12のアリールオキシアルキル基であり、mは0〜3の整数である)で表される珪酸エステルおよびアルキル珪酸エステル、ならびにこれらの部分加水分解物から選ばれた1種または2種以上の珪酸エステル類である。
【0024】
具体的には、テトラアルコキシシランとして、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、メトキシトリエトキシシラン、ジメトキシジエトキシシラン、エトキシトリメトキシシラン、メトキシトリイソプロポキシシラン、ジメトキシジイソプロポキシシラン、メトキシトリプトキシシランなどを挙げることができ、また、アルキルトリアルコキシシランとして、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、メチルトリプトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリイソプロポキシシランなどを挙げることができる。
【0025】
また、ジアルキルジアルコキシシランとして、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジプロポキシシラン、ジメチルジイソプロポキシシラン、ジメチルジブトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジエチルジイソプロポキシシランなどを挙げることができ、また、トリアルキルアルコキシシランとして、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリメチルプロポキシシラン、トリメチルイソプロポキシシラン、トリメチルブトキシシラン、トリエチルメトキシシラン、トリエチルエトキシシラン、トリエチルイソプロポキシシランなどを挙げることができる。
【0026】
さらに、アリールオキシシランとして、テトラフェノキシシラン、テトラトリロキシシランなどを挙げることができ、また、アルキルアリールオキシシランとして、メチルトリフェノキシシラン、エチルトリフェノキシシラン、ジメチルジフェノキシシラン、ジエチルジフェノキシシラン、メチルトリトリロキシシランなどを挙げることができる。
【0027】
さらにまた、アルコキシアルキルシランとして、テトラメトキシメチルシラン、テトラメトキシエチルシラン、テトラメトキシイソプロピルシラン、テトラエトキシメチルシラン、テトラエトキシエチルシラン、テトラエトキシイソプロピルシランなどを挙げることができ、また、アリールオキシアルキルシランとして、テトラフェノキシメチルシラン、テトラフェノキシエチルシラン、テトラフェノキシプロピルシラン、テトラフェノキシイソプロピルシラン、テトラトリロキシエチルシランなどを挙げることができる。
【0028】
そして、その他の好ましい金属アルコキシド類としては、テトラブトキシチタン、テトラブトキシジルカン、トリイソプロポキシアルミンなどが挙げられる。
【0029】
本発明の組成物を形成するアルコール溶液中における、これらの金属アルコキシド類の含有量については、金属酸化物換算(例えば、金属アルコキシド類が珪酸エステル類の場合はSiO2換算)で、好ましくは2〜50重量%、さらに好ましくは2〜30重量%、最も好ましくは10〜30重量%の範囲であるのがよい。2重量%未満では、組成物にした際にこの金属アルコキシド類由来の金属酸化物の含有量が不足し、組成物を形成することができない場合があり、一方、50重量%を超えると、溶解度の点からアルカリ化合物の溶解量が0.5重量%未満になり上記組成物の目的を満たさない場合がある。金属酸化物を「金属アルコキシド類の完全加水分解縮合物である金属酸化物」と呼ぶ場合がある。また、15〜25重量%の範囲であっても良い。
【0030】
また、上記アルコール溶液中の他の成分であるアルカリ化合物については、金属M3としては、リチウム、ナトリウム、カリウムなどを挙げることができ、好ましくはナトリウム、カリウムを挙げることができる。金属M4としては、Ca,Sr,Ba,Raを挙げることができる。また、このアルカリ金属アルコキシドを形成する置換基R´としては、水素またはメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基などの炭素数1〜6のアルキル基、またはフェノキシ基、トリロキシ基、またはアルコキシアルキル基またはアリールオキシアルキル基などを挙げることができる。これらのアルカリ化合物は、その1種のみを単独で用いてもよく、また、2種以上の混合物として用いても良い。
【0031】
このように、本発明に用いられる溶液は、アルコール溶剤中にアルキルシリケートまたはアリルシリケートの部分加水分解物の中にアルカリ化合物、例えばナトリウムアルコラートまたはその水酸化物などを添加して使用することを特徴とする。ナトリウムアルコラートは、強アルカリであるが、アルキルシリケートまたはアリルシリケートなどの金属アルコキシド類を加水分解させることなく、均一に溶解させることができる。本発明の組成物の硬化機構は以下のように推察される。
【0032】
すなわち、ナトリウムアルコラートとして、例えばナトリウムエチラート(C2H5ONa)、アルキルシリケートとして例えばエチルシリケートが部分加水分解されアルコールに混合した溶液のアルコールを除去する過程で、アルコールの沸点付近で、アルコールの存在の下で、Naが酸化することなしに、Naイオンを核としてSiO2は結晶化する。
【0033】
本発明の組成物中における、このアルカリ化合物の含有量については、金属換算(例えば、アルカリ化合物の金属がナトリウムの場合はNa換算)で、好ましくは1〜25重量%、より好ましくは5〜25重量%、最も好ましくは6〜20重量%の範囲である。1重量%未満では、溶液が酸性となりシリカゲルとなり、このアルカリ金属アルコキシド由来の金属酸化物の含有量が不足し、所望の上記組成物を形成しない場合があり、一方、25重量%を超えると、金属アルコキシド由来の金属が形成する結晶の空隙の容量をアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属の体積が超過して、アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属を核とした上記組成物を形成しない場合がある。また6〜10重量%の範囲であっても良い。
【0034】
さらに、上記溶液の成分の金属アルコキシド類およびアルカリ化合物を溶解するアルコール溶剤としては、例えばメチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、イソブチルアルコール、アミルアルコール、ヘキシルアルコール、シクロヘキシルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、エチルセロソルブ、メチルセロソルブ、プロピルセロソルブ、ブチルセロソルブ、フェニルメチルセロソルブ、フェニルエチルセロソルブなどを挙げることができる。
【0035】
また、本発明による上記組成物を有機高分子材料に混合することにより、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の還元反応によるダンブリングボンドにより、上記組成物と有機高分子材料との複合物を生成して従来の有機高分子材料とは異なる耐候性、耐熱性の物性を付加することができる。
【0036】
本発明の上記組成物を混合する有機高分子材料として2液性樹脂を用いる場合は、モノマーに混合する。混合する比率は用途により調整する。熱可塑性樹脂への添加は、モノマーに対する混合、または、ポリマーに対する練り込みでもよい。
本発明の上記組成物は、有機高分子材料との複合物を生成し、基材の耐熱性並びに耐候性、機械的物性を改善する。
【0037】
有機高分子材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンなどのオレフィン系樹脂、ナイロン6、ナイロン6,6などのポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂、エチレン−α−オレフィン系共重合体[EP(D)M]などが挙げられ、本発明の上記組成物を混合することにより、耐熱強度が改善される。
2液性樹脂としては、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂等を用いることができる。
【0038】
なお、本発明の上記組成物のアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属の還元性を増すため、アルコール溶液に、アミノ有機化合物を添加することができる。アミノ有機化合物としては、アミノシラン、ウレイドシラン、エポキシシランなどのシランカップリング剤が挙げられる。ここで、シランカップリング剤を使用する場合には、2点架橋シラン(ジメチルエトキシシランなど)と3点架橋シラン(トリメトキシシランなど)とにより架橋点をコントロールすることにより、塗布、重合時の収縮にともなう亀裂の発生を防止することが好ましい。上記シランカップリング剤を水および/または有機溶剤に溶解または分散させて、溶液に添加して使用することが好ましい。
上記の目的で使用される有機溶剤としては、アルコール溶剤などが挙げられる。上記、シランカップリング剤の使用量は、溶液に対して、2点架橋シランと3点架橋シランを、上記金属アルコキシド類に対し、通常、合計で1〜10重量%程度、好ましくは3点架橋シランを1〜5重量%および2点架橋シランを1〜3重量%で制御することが好ましい。
【0039】
また、上記組成物を形成する溶液は、種々の目的で上記以外の添加物を添加することができ、例えば、ジアルコキシシランおよび/またはシリコーンオイルを添加することにより、物体の表面張力の調整、物体の粘結性の向上が可能となる。ジアルコキシシランとしては、3−アミノプロピルメチルジメトキシシランなどが挙げられる。
ジアルコキシシランおよび/またはシリコーンオイルの添加量は、本発明の溶液の上記金属アルコキシド類に対して、好ましくは合計で1〜5重量%である。
【0040】
さらに、本発明の上記組成物を形成する溶液には、有機物、無機質微粒子(以下、「微粒子」ともいう)を添加することができる。
添加可能な有機物としては、ポリエチレングリコール、無機物微粒子としては、ヒュームドシリカ、ZrO2、TiO2、Al2O3が好ましい。これらの添加量は、本発明の溶液の上記金属アルコキシド類に対し、添加物の比重と粒度によるが、1〜10重量%、好ましくは1〜5重量%である。
【0041】
上記アルコール溶液からアルコールを除去するために、大気中、真空下、不活性ガス中のいずれかの雰囲気にて常温からアルコールの沸点まで間の任意の温度で乾燥処理を行うことができるが、好ましくは40〜60℃である。さらに結晶核を得るために120〜150℃にて40〜60分間加熱することができる。このようにして得られたフレーク状の組成物はそれぞれの用途に適した粒度に粉砕されるが、樹脂への練り込みの用途に用いるためには120メッシュ以上が好ましい。
本発明の粉末状組成物は、アルコール溶液を空気混合アトマイズにより超微粒化することにより、乾燥と粉状化を同時に行い、緻密な粉状組成物を形成しても良い。また、プラズマなどの高温溶射により微粒状に形成しても良い。形成された粉末もしくは粉状皮膜は、金属表面に高温耐酸化性を付与することができる。
【0042】
アルコールの乾燥除去の過程で、上記組成物のアルカリ金属あるいはアルカリ土類金属は、金属の結晶核内部に取り込まれる。アルカリ金属あるいはアルカリ土類金属と、結晶核を形成する金属がNaとSiO2の組み合わせの場合、Na/SiO2=0.3〜1.0の配合比率が、組成物の生成時に還元剤としての反応性を維持するため、好ましい。
【0043】
また、上記組成物中のアルカリ金属あるいはアルカリ土類金属は、780〜850℃にて30〜60分間加熱処理すること、昇温過程で結晶空隙の拡大と、アルカリ金属あるいはアルカリ土類金属の膨張により、結晶から漏出し、酸化アルカリを生成し、図2に示す黒色の融体となる。アルカリ金属としてNaを用いた場合に、上記融体が生成する過程を図1に示す。この溶融した組成物を、プラズマ溶融コーティングにより、アルミ合金、鋳鉄、鋼などの金属表面に塗布することにより、耐酸化性、耐食性皮膜を形成することができる。組成物を金属に塗布する場合、好ましい塗布量は、乾燥膜厚で、通常、50〜100μmである。
【0044】
上記の溶融状態の黒色の組成物をさらに加熱すると、アルカリ金属あるいはアルカリ土類金属は沸点に達し、沸騰、蒸発を開始する。図3に上記反応の熱分析の一例を示す。アルカリ金属あるいはアルカリ土類金属は急激な沸騰により蒸発し、除去され、図5に示す白色、半透明のトリジマイト結晶になる。
さらに、このα−トリジマイト結晶は900℃以上でβ−トリジマイト結晶へと変化し(図4)、1600℃の高温領域までセラミックスの特性である耐熱性、耐食性、絶縁性を有する組成物を形成する。
【0045】
この特徴を活かし、金属のワークを150〜200℃に加熱して上記組成物をスプレーによって鋳鉄や鋼などの金属表面に0.1〜2μmの厚みに塗布し、該金属を上記条件にて加熱すると、金属表面で組成物中のアルカリ金属あるいはアルカリ土類金属が除去され、耐酸化性、耐食性の皮膜を形成することができる。
【0046】
本発明の上記組成物は、あらゆる物体中に常温で混合することができる。上記物体は、金属のほか、有機高分子材料、紙、木材などの有機物であっても良い。本発明の上記組成物を混合し整形された物体は親水性のため、結露の防止、帯電防止などの耐熱セラミックスのハイブリッド物体を生成する。
本発明の上記組成物を、これらの物体と混合する際の混合量は、上記組成物の粒度、物体の粘性に左右されるが、上記組成物の粒度が200メッシュ程度で、物体の粘度が3000cp程度の場合は最大で45重量%、物体の粒度が325メッシュ以上の場合では最大10%程度が好ましい。
【0047】
また、上記組成物を耐火物粒に混合し、バインダーとしての有機高分子材料を形成するモノマーおよび/またはポリマーを添加して成形し、焼成すると耐火性のある成形品が得られる。従来の耐火物成型法では、成型品を有機バインダーに浸漬し、焼成していたため、バインダーが乾燥時に表面に移動して、均一な強度が得られないという問題点があった。本発明の組成物を混合して製造した成形品は、無機−有機ハイブリッドの機能性材料であり、また、粉末状であるため直接耐火物に混合し、成形・焼成することが可能であるので、耐火物の製造工程を簡素化することができる。
上記の耐火物粒としては、珪砂やムライトが挙げられる。また、添加するバインダーとしての有機高分子材料はフェノール樹脂、アルカリフェノール樹脂、フェノールウレタン樹脂が望ましく、骨材である耐火物粒に対して1.0〜3.0重量%添加することができる。
【0048】
また、本発明の組成物を形成するアルコール溶液に砂を配合し、その後アルコールを除去することにより、組成物がコーティングされた砂が得られる。砂を配合した場合の乾燥条件は、大気中、真空下、不活性ガス中のいずれかの雰囲気にて常温からアルコールの沸点まで間の任意の温度で乾燥処理を行うことができるが、好ましくは40〜60℃である。さらに結晶核を得るために120〜150℃にて40〜60分間加熱することができる。配合する砂の比率は、砂を配合する前のアルコール溶液100重量部に対して、砂15〜25重量部であることが好ましい。砂は、本発明の組成物に添加してもよい。
【0049】
さらに、上記コーティングされた砂にバインダーとして有機高分子材料を添加し、成形して鋳型とすることができる。このように成形された鋳型は、溶湯に接すると、瞬時にトリジマイト結晶に転移し、1470℃までの安定した耐熱性を有する鋳型を得ることができる。鋳型は成形後、焼成することもできる。使用するバインダーとしてはフェノール樹脂、フェノールウレタン樹脂、アルカリフェノール樹脂が挙げられ、添加量は砂に対し1.5〜2.2重量%であることが望ましい。
なお、成型後の加熱温度は、通常、800℃以上である。
【0050】
なお、本発明の上記組成物を混合した物体の表面には本発明に用いられるアルカリ化合物に起因するアルカリ金属あるいはアルカリ土類金属が残存しているので、必要であれば、水、あるいはエタノールアミン水溶液で洗浄することが好ましい。この洗浄により、例えばアルカリ金属がナトリウムの場合、水酸化ナトリウム水溶液あるいは炭酸ナトリウム水溶液として、物体表面からナトリウム原子を除去することができる。
【0051】
本発明は、芳香族化合物を繰り返し単位とする重合物を含む素材を、酸素存在下、高温加熱した際に生じる黒色の煤状物質または黒色タール状物質の発生を抑制する抑制方法であって、(A)素材を加熱する前に、周期律表4A族の金属アルコキシド、周期律表4B族(炭素を除く)の金属アルコキシド、周期律表3A族の金属アルコキシド、周期律表3B族の金属アルコキシド、およびこれらの部分加水分解物の群から選ばれた少なくとも1種の金属アルコキシド類と、アルカリ金属のアルカリ化合物および/またはアルカリ土類金属のアルカリ化合物とを含むアルコール溶液のアルコールを乾燥除去して得られる組成物を、(a1)素材に添加する、または(a2)素材の表面に付着させる、または(B)素材を加熱する前に、周期律表4A族の金属アルコキシド、周期律表4B族(炭素を除く)の金属アルコキシド、周期律表3A族の金属アルコキシド、周期律表3B族の金属アルコキシド、およびこれらの部分加水分解物の群から選ばれた少なくとも1種の金属アルコキシド類と、アルカリ金属のアルカリ化合物および/またはアルカリ土類金属のアルカリ化合物とを含むアルコール溶液を、(b1)素材に添加する、または(b2)素材の表面に付着させ、その後、該アルコール溶液のアルコールを乾燥除去する、処理を施す抑制方法を提供する。
本発明は、上記抑制方法であり、芳香族化合物を繰り返し単位とする重合物が、フェノール樹脂またはフェノールウレタン樹脂であり、素材中の芳香族化合物を繰り返し単位とする重合物の含有量が、10質量%以下であり、高温加熱が400℃以上の加熱であり、
前記(B)の(b2)処理を施す抑制方法を提供する。
【0052】
芳香族化合物を繰り返し単位とする重合物は特に規定はないが、例えばフェノール樹脂、フェノールウレタン樹脂、アルカリフェノール樹脂などが挙げられ、いずれか一つを含めば良い。
素材を高温加熱する際の温度は、加熱した際に黒色の煤状物質または黒色タール状物質が発生する温度であれば特に規定はないが、例えば400℃以上が挙げられる。
素材中の芳香族化合物を繰り返し単位とする重合物の含有量は特に規定はないが、10質量%以下が挙げられる。
上記組成物または上記アルコール溶液を「素材に添加する」とは、素材の状態にかかわらず、その素材の中に加えれば良い。例えば、熱可塑性樹脂の中に入れ、その後、硬化させても良い。また、油状で、粘性が高い液体やゲル状組成物に加えて、混合することが挙げられる。
【0053】
上記組成物または上記アルコール溶液を「素材の表面に付着させる」とは、素材が固体の場合、その固体の表面に付着していれば良く、例えば、塗布しても、スプレーしても、素材を上記組成物を含む溶液や上記アルコール溶液の中に浸漬させてもよい。
上記抑制方法の課題は、ベンゼン環を有する高分子化合物を含む素材から、ベンゼン環を有する高分子化合物だけを除去するために、1000℃以上に加熱しても、黒い煤状物質や黒いタール状物質が生じ、この黒い煤状物質や黒いタール状物質を簡単に除去できないという問題点を克服することにある。
【0054】
上記抑制方法の効果は、ベンゼン環を有する高分子化合物を含む素材から、ベンゼン環を有する高分子化合物だけを除去する際、黒い煤状物質や黒いタール状物質の発生を抑制し、または簡単に除去できるようにして、ベンゼン環を有する高分子化合物を含む素材からベンゼン環を有する高分子化合物を含まない素材を提供することにある。また、黒い煤状物質や黒いタール状物質の発生を抑制し、または簡単に除去できるため、鋳型として用いた場合、使用後の鋳型が汚れず、きれいな鋳造品を提供することにある。
このような効果は、ナトリウムイオンの触媒効果よるものと考えられ、本発明においては、ナトリウムイオンを安全に簡単に供給、保存、使用を可能とする。
【実施例】
【0055】
以下、実施例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明する。
【0056】
参考例1
テトラエトキシシラン(ワッカー社製、エチルシリケート40)200gを内容量2リットルの密閉可能な混合容器に分取し、これにi−プロピルアルコール100gを添加し、スターラーを用いて密閉状態で室温で10分間撹拌し、次に25℃で30分間攪拌することによりテトラエトキシシランの加水分解を行い、さらにその後、25℃で6時間密閉状態で保持し、加水分解率30%のテトラエトキシシラン加水分解溶液を調製した。
次に、このテトラエトキシシラン加水分解溶液に21重量/重量%濃度のC2H5ONaのエタノール溶液35.1gとi−プロピルアルコール344.9gとを添加し、スターラーを用いて密閉状態で25℃で30分間撹拌し、溶液を調製した。この溶液をMX溶液と称する。このMX溶液は、金属アルコキシド類の含有量はSiO2換算で20重量%、アルカリ金属のアルカリ化合物の含有量はNa換算で6重量%のアルコール(i−プロピルアルコール)溶液である。
このMX溶液を空気中で60℃で24時間乾燥し、次いで80℃で60分間の加熱処理を行い、アルコール溶液を完全に除去し、さらに低温型トリジマイト結晶を得るために200℃で60分間の加熱処理を行い、フレーク状の上記組成物を得た。さらに粉砕して、上記組成物を約150メッシュの粉末状とした。
【0057】
粉末状の上記組成物8重量%を、耐火物粒として7号珪砂に混合して、有機高分子材料としてフェノールウレタン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂のいずれかを2重量%添加し、100重量%となるように混合し、10×10×50mmの大きさの3種類のテストピースを形成した。上記テストピースを、100℃毎、1,000℃まで60分間加熱し、各温度での熱間抗折試験を行った。
試験の結果、図7に示すように、本発明の組成物を配合したテストピースは、本発明の組成物を配合していない従来の樹脂のみを添加したテストピースと比較すると、200℃〜300℃において高い強度を示した。このように、本発明の組成物は、耐火物粒とバインダーとしての有機高分子材料からなる成形品に、高温下での抗折強度を付加することが確認された。
また、本発明の組成物と珪砂、フェノール樹脂を配合した上記のテストピースを用いた示差熱試験(図6)では、200℃における有機シリカ化合物の生成と、400℃における有機シリカ化合物の熱分解が確認された。
【0058】
参考例2
300×400×20mmの304ステンレス金属片表面に、参考例1のMX溶液をスプレーし、次いでアルコールを乾燥除去することにより皮膜を形成し、上記組成物を含む厚さ約2μmの皮膜を有する金属片を得た。この金属片を冷や金として、鋳型にセットして、1600℃以上の溶融高マンガン鋼を鋳造した。
その結果、図8に示すように、溶融金属と冷や金の溶着が見られず、さらに結露から発生する欠陥も見られなかった。皮膜が、常温で結露を防止し、さらに皮膜に含まれる本発明の組成物が溶融高マンガンとの接触により高温に晒されて、シリカの結晶形がβ−トリジマイト結晶に転移したことにより、皮膜に耐熱性を付与したと考えられる。このように本発明の組成物を鋳型に用いると、煩雑な処理を必要とせずに、欠陥のない良好な鋳造物が得られることが確認された。
【0059】
参考例3
組成物を100×100×5mmの低炭素鋼金属片の表面の一部に、MX溶液をスプレーし、次いでアルコールを乾燥除去することにより、2μmの皮膜を形成した。この金属片を、950℃で60分間加熱処理し、耐酸化性の試験を行った。
試験の結果、図9に示すように、塗布していないところは、多量のスケールが発生したが、塗布部については、全く酸化は見られなかった。本発明の組成物を皮膜とすることにより、金属に高温耐酸化性を付与できることが確認された。
【0060】
参考例4
30Φ×50mmの304ステンレス金属片に、MX溶液をスプレーし、次いでアルコールを乾燥除去することにより皮膜を形成した。上記処理をしていない304ステンレス金属片とともに、硫化水素雰囲気において700℃で36時間加熱した。
その結果、図10に示すように、本発明の組成物を塗布しない試験片は、激しく表面が腐食され、一方、塗布した試験片は腐食せず、高温下での耐腐食性が高いことを示した。上記組成物のナトリウムによる還元作用の効果と考えられる。
【0061】
実施例1
MX溶液に7号珪砂を加え、大気中、40℃で60分間乾燥させ、上記組成物で被覆された鋳物砂を成形した。上記鋳物砂に、フェノールウレタン樹脂を有機バインダーとして鋳物砂の2%添加し、10×10×50mmの大きさのテストピースを形成した。上記テストピースについて、参考例1と同様の熱間抗折試験を行った。従来の有機鋳型は温度上昇に伴い急速に強度が減少するが、上記方法で形成したテストピースは、参考例1と同様に高温下での抗折強度が向上することが確認された。
【0062】
参考例5
〔試験方法〕
7号珪砂98重量%、フェノール樹脂1重量%、イソシアナート1重量%となるように3成分を混合した。前記成分同士が化学反応することにより発生するアミンが気化されるような通気下で、混練し、造形し、常温で硬化させ、コールドボックス鋳型を作製した。
このコールドボックス鋳型の表面の一部に、MX溶液を塗布し、40〜60℃で加熱してアルコールを乾燥除去した。次に、このコールドボックス鋳型に700℃の溶融アルミニューム合金を入れ、鋳造し、鋳造品を得た。
得られた鋳造品の表面の状況及び、使用後のコールドボックス鋳型の表面に生成した煤の生成状況を目視にて観察した。
〔結果、考察〕
【0063】
結果を図11に示す。
MX溶液を塗布していないコールドボックス鋳型の表面は、黒い煤が付着し(図11の左図)、MX溶液を塗布していないコールドボックス鋳型の表面部分により鋳造した鋳造品(アルミニューム合金)の表面は、くすんでいた。この黒い煤は強く付着しており、擦っても剥がすことはできなかった。
一方、MX溶液を塗布したコールドボックス鋳型の表面は、白い煤が付着し(図11の右図)、MX溶液を塗布したコールドボックス鋳型の表面部分により鋳造した鋳造品(アルミニューム合金)の表面は、白色に輝いていた。この白い煤は、軽く擦っただけでボロボロと剥がれた(図11の右図)。この作用は、MX溶液のアルコールを乾燥除去した組成物中に含まれるナトリウムイオンの触媒効果により、樹脂中のベンゼン環やベンゼン環が酸化して生じる炭素繊維を、さらに酸化させ、(MX溶液を使用しなかったときに生じる黒い煤の分子量よりも)低分子化させることにより得られるものと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0064】
アルカリ金属およびアルカリ土類金属は、還元・触媒の有力な材料として知られているが、常温、常圧下における激しい反応性と、貯蔵、移動に危険が伴い非常に制約の多い扱いにくい材料とされている。常温から800℃付近までアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属の反応性を維持する該組成物は、安定な粉状組成物でありあらゆる物体に容易に混合できるため、従来の物体に混合、塗布することによりアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属の還元反応性を、また、物体に混合することにより、新たな機能を付加することができる。近年、材料技術は、燃料電池、太陽光発電等、新たな機能が要求されている。多くの機能部品はレアメタルなどの稀少材料に頼っている。特に、アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属の還元・触媒としての反応性を活かして、当発明により、レアメタルなどの稀少材料に代わる新たな機能性材料の原料となることが期待できる。さらに、該組成物と有機高分子材料と混合することによって、Naイオンのダンブリングボンドの効果と、還元反応により300℃以上の耐熱性を有する複合物を生成して300℃以上の耐熱性を付加することが可能である。さらに、400℃〜700℃の温度域でNaイオンの触媒効果によるベンゼン環のカーボンの分離が可能であることは、バイオマスの燃料利用、排ガスの処理等が低温で可能となり、従来の産業分野においても、化学的に整備されていない300℃〜700℃の温度域における機能の要求を満たすものである。従って、本発明のアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属を結晶核に保持する該組成物は、常温から800℃までアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属の反応性を利用するあらたな材料技術を提供することができ、具体的には、高分子材料の高温特性の改善により、電子機器産業における絶縁膜、導電膜、機能性材料、自動車産業における構造部品、住宅産業における耐熱素材、結露防止材料、金属材料におけるアルミニウムなどの改良処理などの用途に有用である。さらに、800℃でこの該組成物は黒色の液状となり、この状態における該組成物を物体表面に溶融コーティングを施すことにより、アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属の反応性を活用できる脱臭、脱硫、耐酸化性、耐熱性などの機能を有する皮膜が得られる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、常温、常圧下においてアルカリ金属の還元能、触媒能を維持する組成物を用い、耐火物成型品を得る方法、およびこれにより得られる耐火物成型品に関する。
上記組成物は、強便な還元剤としてあらゆる物質と混合することができ、常温で強い反応性を有するアルカリ金属の輸送手段としても安全である。
上記組成物は、アルカリ金属の反応性と、セラミックスの特性である耐蝕性、耐熱性、絶縁性を有し、さらに、有機高分子材料との結合により、複合物を生成し、有機高分子材料の耐熱性を改善することが可能である。また、上記組成物は、あらゆる物質と混合し、物質に耐熱性等の新たな機能を付加する基盤材料として産業に貢献できるものである。さらに、上記組成物は800℃以上の高温域で、シリカが還元され、酸化アルカリを生成して溶融状態になり、生成した酸化アルカリを硬化剤として、トリジマイト結晶に転移して、耐酸化性、耐食性に優れた組成物が得られる。
高温で得られる溶融した上記組成物は、あらゆる物質に耐酸化性、耐食性に優れた丈夫な皮膜を形成し、排気ガスによる腐食を阻止することができる。
【背景技術】
【0002】
周期律表のI族のアルカリ金属及びアルカリ土類金属の合金は、金属状態、中性状態では、非常に高い反応性を示し、空気や湿気に曝されると自然発火する。このため、真空中や、不活性液体中に保管する。例えば金属ナトリウムは、灯油等に保管され、また使用時には不純物を除去しなければならない。このことは、上記金属の用途と輸送に重大な制約要因となっている。
【0003】
NaのCarrierとしての組成物は、特許文献1(特表2007−520407号公報)で、「液状アルカリ金属を不活性雰囲気下又は真空下において、常温または、高温でシリカゲルに含浸させる方法」が記載されているが、製造工程が原料として金属ナトリウムを使用するため、取り扱いは変わらず、不活性ガス、真空中の加熱工程が伴う。また、シリカゲルの粒度が大きい。
【0004】
シリカのトリジマイトの結晶化は、アルカリ酸化物を融剤することは知られているが、実在するトリジマイト結晶は、隕石や、火山の噴出岩等、超高温超高圧下から急激な環境変化で形成されているので、人工的に直接溶液から短時間で昌出する方法はこれまでに考えられていなかった。
【0005】
自動車の軽量化、産業機器の小型化に伴い有機高分子材料の耐熱性の向上が求められている。ガラス繊維、骨材等のフィラーの添加による複合材料が提唱されてきたが、有機高分子材料自身の耐熱性、およびリサイクル性が解決されていない。
【0006】
自動車の軽量化に伴い軽くて丈夫な高張力鋼板の採用が急務であるが、熱間成形によるため、スケールの発生に対する対策、及び新たな防錆方法が求められている。
【0007】
自動車の燃焼温度の上昇に伴い、また、排ガスを循環利用するEGR等、表面の耐酸化性が求められている、しかし、対応するステンレス材料は、Ni等の材料の高騰によるコスト上昇が激しい。
【0008】
近年、コ―ジェネレーターの発電が多く使用されているが、排ガスが利用され、タービンの腐食が激しい。このため、クロム拡散処理(MCrAlYまたはCoNiCrAlY)等の高温耐熱皮膜(Thermal Barrier Coat)が使用されている。しかし、Alの減耗が寿命となっている。
【0009】
近年、低温形成セラミックス皮膜の生成法としてSol−Gel(ゾル−ゲル)法が用いられている。しかし、ゾル−ゲル法においては、ゾルのライフタイムが非常に短く、さらにゲル生成後に加熱工程が加わるため、基材の収縮が伴い好ましくない。上記組成物の構成溶液のライフは数年にも及び半永久的である。
【0010】
近年に至り、骨材と有機バインダーによって成形品素体を成形し、これに、アルコキシシラン類を含浸させて、次いで、これを乾燥させて高温焼成して、耐火物成形品を得る有機バインダーが提案されている(特許文献2:特許第3139918号公報)。
しかしながら、この方法では、アルコキシラン類溶液を成型品素体に含浸する工程を必要とし、工程が複雑となるという問題がある。
【0011】
さらに、骨材と有機バインダーによって成形品素体を成形し、成形品表面にアルコキシシランを塗布、含浸し、乾燥し、鋳物を鋳造する方法が提案されている(特許文献3:特開2002−143983号公報)。
一方、特許文献4(特開2006−82413号公報)には、基板上に、ケイ素などのアルコキシドおよび/またはその部分重縮合物(A)を主体とする表面皮膜と、(A)と反応する官能基を持つウレタン樹脂などのバインダー樹脂(B)を主体とする下層皮膜を有する耐汚染性に優れた塗装膜が提案されているが、この塗装膜はあくまでも、二層からなるものであって、無機−有機複合ハイブリッド皮膜ではない。
また、特許文献5(特開平7−68217号公報)には、アルコキシシランの加水分解物とポリエステル樹脂とを含む液状配合物を金属表面に塗布し、次いで乾燥する、金属表面のコーティング方法が提案されている。しかしながら、このコーティング方法も、既にポリマー化されたポリエステル樹脂とアルコキシシランの加水分解物の有機溶剤系の溶液を用いるものであり、得られる皮膜は、アルコキシシランの縮合物とポリエステル樹脂との単なるブレンド物であって、無機−有機ハイブリッド皮膜ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特表2007−520407号公報
【特許文献2】特許第3139918号公報
【特許文献3】特開2002−143983号公報
【特許文献4】特開2006−82414号公報
【特許文献5】特開平7−68217号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、このような事情に鑑み、以下の目的を達成することができる、あらゆる物質に混合できるアルカリ金属イオンまたはアルカリ土類金属の還元・触媒反応を有する組成物を用いた、耐火物成型品を提供することを目的とする。
(a)高分子材料のモノマー、またはポリマーに上記組成物を粉状で混合して、高分子材料の300℃以上の耐熱特性、物性を改善し、新たな機能材料が得る。
(b)上記組成物をあらゆる物体に混合し、親水性、結露防止、耐熱性等を改善する(物体は紙、木材などの有機物であってもよい)。
(c)アルミニウム合金の溶湯に、上記組成物を添加し、アルカリ金属イオンまたはアルカリ土類金属による改良処理を行う。
(d)上記組成物を混合した物体のアルカリ金属イオンまたはアルカリ土類金属をハロゲンガスにより除去し、組成物の絶縁特性、耐食性、耐候性を得る。
(e)上記組成物を約800℃に加熱し、上記組成物を液状化し、物質に溶融コーティングすることにより、耐熱、耐食皮膜を得る。
(f)上記組成物を、金属表面に付着させ、800℃以上の高温で加熱し、還元性皮膜を生成させ熱間成形、熱処理の作業中におけるスケール発生を防止する。
(g)上記組成物を、金属表面に付着させ、大気中、真空、不活性ガスのいずれかの雰囲気で800℃以上の高温に焼成し、アルカリ金属イオンまたはアルカリ土類金属を除去し、トリジマイト結晶を得て、Thermal Barrier Coatを得る。
(h)上記組成物と高分子材料の複合物をバインダーとして骨材を成形し、上記組成物の耐火物を得る。
(i)上記組成物を混合した高分子材料をバインダーとして骨材を成形し、800℃以上に加熱焼成して得た耐火物を得る。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、(イ)周期律表4A族の金属アルコキシド、周期律表4B族(炭素を除く)の金属アルコキシド、周期律表3A族の金属アルコキシド、周期律表3B族の金属アルコキシド、およびこれらの部分加水分解物の群から選ばれた少なくとも1種の金属アルコキシド類と、アルカリ金属のアルカリ化合物および/またはアルカリ土類金属のアルカリ化合物とを含むアルコール溶液と(ロ)耐火物粒とを混合し、次いで(ハ)バインダーとしての有機高分子材料を混合して成型し、加熱して、耐火物成型品を得る方法に関する。
ここで、上記(イ)アルコール溶液を構成する金属アルコキシド類は、一般式RmSi(OR)4−m(ただし、式中Rは互いに同じかあるいは異なる炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜8のアリール基、炭素数2〜6のアルコキシアルキル基または炭素数7〜12のアリールオキシアルキル基であり、mは0〜3の整数である)で表される珪酸エステルおよびアルキル珪酸エステル、ならびにこれらの部分加水分解物から選ばれた1種または2種以上の珪酸エステル類であることが望ましい。
アルカリ金属のアルカリ化合物として、ナトリウムアルコラートまたはその水酸化物が望ましい。
上記アルコール溶液中のアルカリ金属のアルカリ化合物および/またはアルカリ土類金属のアルカリ化合物の含有量は、アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属換算で、6〜20重量%であることが望ましい。
上記アルコール溶液中の金属アルコキシド類の含有量が、金属酸化物換算で、2〜30重量%であることが望ましい。
さらに、本発明の組成物を形成するアルコール溶液に、硬化促進剤として、有機アミン化合物が、金属アルコキシド類に対して1〜10重量%添加されていても良い。
【0015】
上記(B)耐火物粒としては、珪砂などの砂およびムライトから選ばれた少なくとも1種が挙げられる。
また、上記(C)バインダーとしての有機高分子材料としては、フェノール樹脂、アルカリフェノール樹脂、およびフェノールウレタン樹脂から選ばれた少なくとも1種が挙げられる。
上記(ロ)耐火物粒の配合量は、(イ)アルコール溶液100重量部に対し、15〜25重量部であり、(ハ)有機高分子材料の配合量は(ロ)耐火物粒に対して1.0〜3.0重量%である。
本発明では、(イ)アルコール溶液と(ロ)耐火物粒とを混合したのち、この混合物からアルコールを乾燥除去することが好ましい。
さらに、上記加熱温度は800℃以上である。
次に、本発明は、以上の耐火物成型品を得る方法によって得られる耐火物成型品に関する。
以上の耐火物成型品の具体例としては、鋳型が挙げられる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の反応性、例えば還元能または触媒能を維持する組成物は、あらゆる物質と物理的に混合して、無機−有機ハイブリッドの機能性材料が得られ、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の還元反応性を常温、常圧下で活用でき工程が簡素化される。さらに、上記組成物は、800℃以上の高温で、黒色の溶融状態の組成物を形成して、物体表面に耐酸化性、耐食性の皮膜を形成する。さらに、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の沸点以上では、アルカリ金属またはアルカリ土類金属が除去され、白色、半透明のトリジマイト結晶が得られる。
したがって、上記(イ)アルコール溶液に(ロ)耐火物粒を混合したのち、次いで(ハ)バインダーとしての有機高分子材料を配合して成形し、焼成すると、鋳型などの耐火性の成型品が得られる。本発明により得られる耐火物成型品は、無機−有機ハイブリッドの耐火性の機能性材料であり、耐火物の製造工程を簡素化することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】シリカ結晶空隙内のNaイオンの挙動を示した概略図である。
【図2】Naイオンがシリカを還元し、酸化してNa2Oを生成し、融体化したシリカ組成物の外観写真である。
【図3】シリカ組成物の熱分析結果(778.91℃:シリカの還元、882.91℃。酸化アルカリの生成、1044.96℃:Naイオンの蒸発)を示したグラフである。
【図4】シリカ組成物のクリストバライト、β−トリジマイト転移のX線回折の結果を示した図である。
【図5】EPMAによるシリカ組成物の拡大写真である。
【図6】上記組成物と高分子化合物の反応による有機シリカ化合物の熱分析の結果を示す図である。
【図7】有機シリカ化合物を生成した高分子材料の耐熱性を示す図である。
【図8】1600℃における耐熱性皮膜を示す図である。
【図9】950℃における低炭素鋼のスケール防止機能を示す図である。
【図10】硫化水素雰囲気下における腐食防止効果を示す図である。
【図11】MX溶液を塗布しなかった鋳型表面に黒い煤が付着した状態を示す図(左図)及び、MX溶液を塗布した鋳型表面に白い煤が付着した状態並びにその白い煤が剥がれ落ちた状態を示す図(左図)である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
結晶核空隙に、アルカリ金属またはアルカリ土類金属を保持する上記組成物は、周期律表4A族の金属アルコキシド、周期律表4B族(炭素を除く)の金属アルコキシド、周期律表3A族の金属アルコキシド、周期律表3B族の金属アルコキシド、およびその部分加水分解物から選ばれた少なくとも1種の金属アルコキシド類と、アルカリ金属のアルカリ化合物および/またはアルカリ土類金属のアルカリ化合物を含むアルコール溶液を主成分とする溶液のアルコールを乾燥除去することにより得られる。
本発明の上記組成物は、アルコールの沸点下において、アルコールの存在中に、アルカリ金属またはアルカリ土類金属を酸化することなしに、アルカリ金属またはアルカリ土類金属を核としてα―トリジマイト結晶核として生成し、この結晶核空隙中にアルカリ金属またはアルカリ土類金属を取り込んだ組成物である。
【0019】
本発明の組成物を形成するアルコール溶液は、アルコール溶剤中に成分として、一般式RmM1(OR)4―mまたはM2(OR)3(ただし、式中M1は周期律表4A族または炭素以外の4B族の金属を示し、M2は周期律表3A族または3B族の金属を示し、Rは互いに同じかあるいは異なる炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜8のアリール基、炭素数2〜6のアルコキシアルキル基または炭素数7〜12のアリールオキシアルキル基であり、M1がSiの場合にはm=0〜3の整数であって、M1がSi以外の場合にはm=0である)で表されるアルコール可溶性の金属アルコキシドおよびその部分加水分解物から選ばれた少なくとも1種の金属アルコキシド類と、下記一般式M3OR´またはM4(OR)2(ただし、式中M3はアルカリ金属を示し、M4はアルカリ土類金属を示し、R´は水素または炭素数1〜6のアルキル基を示す。Rは、上記と同様である。)で表されるアルコール可溶性のアルカリ化合物とを含有するものである。
【0020】
本発明において、上記組成物の成分を構成する金属アルコキシドは、周期律表4A族または炭素以外の4B族の金属M1または周期律表3A族または3B族の金属M2の金属アルコキシドまたはそれらの部分加水分解物である。ここで、金属アルコキシドを形成する金属M1としては、周期律表4A族金属としてTi、Zrなどを挙げることができ、また、炭素以外の周期律表4B族金属としてSi、Ge、Sn、Pbなどを挙げることができ、そしてM2としては、周期律表3A族金属としてSc、Yなどを挙げることができ、さらに、3B族金属としてB、Al、Gaなどを挙げることができる。
【0021】
また、上記金属アルコキシドを形成するRは、互いに同じかあるいは異なる炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜8のアリール基、炭素数2〜6のアルコキシアルキル基または炭素数7〜12のアリールオキシアルキル基である。具体的には、アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、アミル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、s−ブチル基などを、また、アリール基としては、フェニル基、トリル基、キシリル基などを、さらに、アルコキシアルキル基としては、メトキシエチル基、メトキシイソプロピル基、メトキシプロピル基、メトキシブチル基、エトキシエチル基、エトキシプロピル基、エトキシブチル基などを、またアリールオキシアルキル基としては、フェノキシメチル基、フェノキシエチル基、フェノキシプロピル基、フェノキシブチル基、トリロキシメチル基、トリロキシエチル基、トリロキシプロピル基、トリロキシブチル基などを挙げることができる。
【0022】
そして、このような金属アルコキシドの部分加水分解物としては、それが加水分解率0%以上であってアルコール溶剤に溶解すれば特に制限はなく、直鎖状部分加水分解物であっても、網目状部分加水分解物であっても、また、環状部分加水分解物であっても良い。
さらに、これら金属アルコキシドおよびその部分加水分解物からなる金属アルコキシド類は、その1種のみを単独で使用してもよく、また、2種以上の混合物として使用することもできる。
【0023】
本発明において、上記金属アルコキシド類として最も好ましいものは、一般式RmSi(OR)4-m(ただし、式中Rは互いに同じかあるいは異なる炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜8のアリール基、炭素数2〜6のアルコキシアルキル基または炭素数7〜12のアリールオキシアルキル基であり、mは0〜3の整数である)で表される珪酸エステルおよびアルキル珪酸エステル、ならびにこれらの部分加水分解物から選ばれた1種または2種以上の珪酸エステル類である。
【0024】
具体的には、テトラアルコキシシランとして、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、メトキシトリエトキシシラン、ジメトキシジエトキシシラン、エトキシトリメトキシシラン、メトキシトリイソプロポキシシラン、ジメトキシジイソプロポキシシラン、メトキシトリプトキシシランなどを挙げることができ、また、アルキルトリアルコキシシランとして、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、メチルトリプトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリイソプロポキシシランなどを挙げることができる。
【0025】
また、ジアルキルジアルコキシシランとして、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジプロポキシシラン、ジメチルジイソプロポキシシラン、ジメチルジブトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジエチルジイソプロポキシシランなどを挙げることができ、また、トリアルキルアルコキシシランとして、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリメチルプロポキシシラン、トリメチルイソプロポキシシラン、トリメチルブトキシシラン、トリエチルメトキシシラン、トリエチルエトキシシラン、トリエチルイソプロポキシシランなどを挙げることができる。
【0026】
さらに、アリールオキシシランとして、テトラフェノキシシラン、テトラトリロキシシランなどを挙げることができ、また、アルキルアリールオキシシランとして、メチルトリフェノキシシラン、エチルトリフェノキシシラン、ジメチルジフェノキシシラン、ジエチルジフェノキシシラン、メチルトリトリロキシシランなどを挙げることができる。
【0027】
さらにまた、アルコキシアルキルシランとして、テトラメトキシメチルシラン、テトラメトキシエチルシラン、テトラメトキシイソプロピルシラン、テトラエトキシメチルシラン、テトラエトキシエチルシラン、テトラエトキシイソプロピルシランなどを挙げることができ、また、アリールオキシアルキルシランとして、テトラフェノキシメチルシラン、テトラフェノキシエチルシラン、テトラフェノキシプロピルシラン、テトラフェノキシイソプロピルシラン、テトラトリロキシエチルシランなどを挙げることができる。
【0028】
そして、その他の好ましい金属アルコキシド類としては、テトラブトキシチタン、テトラブトキシジルカン、トリイソプロポキシアルミンなどが挙げられる。
【0029】
本発明の組成物を形成するアルコール溶液中における、これらの金属アルコキシド類の含有量については、金属酸化物換算(例えば、金属アルコキシド類が珪酸エステル類の場合はSiO2換算)で、好ましくは2〜50重量%、さらに好ましくは2〜30重量%、最も好ましくは10〜30重量%の範囲であるのがよい。2重量%未満では、組成物にした際にこの金属アルコキシド類由来の金属酸化物の含有量が不足し、組成物を形成することができない場合があり、一方、50重量%を超えると、溶解度の点からアルカリ化合物の溶解量が0.5重量%未満になり上記組成物の目的を満たさない場合がある。金属酸化物を「金属アルコキシド類の完全加水分解縮合物である金属酸化物」と呼ぶ場合がある。また、15〜25重量%の範囲であっても良い。
【0030】
また、上記アルコール溶液中の他の成分であるアルカリ化合物については、金属M3としては、リチウム、ナトリウム、カリウムなどを挙げることができ、好ましくはナトリウム、カリウムを挙げることができる。金属M4としては、Ca,Sr,Ba,Raを挙げることができる。また、このアルカリ金属アルコキシドを形成する置換基R´としては、水素またはメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基などの炭素数1〜6のアルキル基、またはフェノキシ基、トリロキシ基、またはアルコキシアルキル基またはアリールオキシアルキル基などを挙げることができる。これらのアルカリ化合物は、その1種のみを単独で用いてもよく、また、2種以上の混合物として用いても良い。
【0031】
このように、本発明に用いられる溶液は、アルコール溶剤中にアルキルシリケートまたはアリルシリケートの部分加水分解物の中にアルカリ化合物、例えばナトリウムアルコラートまたはその水酸化物などを添加して使用することを特徴とする。ナトリウムアルコラートは、強アルカリであるが、アルキルシリケートまたはアリルシリケートなどの金属アルコキシド類を加水分解させることなく、均一に溶解させることができる。本発明の組成物の硬化機構は以下のように推察される。
【0032】
すなわち、ナトリウムアルコラートとして、例えばナトリウムエチラート(C2H5ONa)、アルキルシリケートとして例えばエチルシリケートが部分加水分解されアルコールに混合した溶液のアルコールを除去する過程で、アルコールの沸点付近で、アルコールの存在の下で、Naが酸化することなしに、Naイオンを核としてSiO2は結晶化する。
【0033】
本発明の組成物中における、このアルカリ化合物の含有量については、金属換算(例えば、アルカリ化合物の金属がナトリウムの場合はNa換算)で、好ましくは1〜25重量%、より好ましくは5〜25重量%、最も好ましくは6〜20重量%の範囲である。1重量%未満では、溶液が酸性となりシリカゲルとなり、このアルカリ金属アルコキシド由来の金属酸化物の含有量が不足し、所望の上記組成物を形成しない場合があり、一方、25重量%を超えると、金属アルコキシド由来の金属が形成する結晶の空隙の容量をアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属の体積が超過して、アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属を核とした上記組成物を形成しない場合がある。また6〜10重量%の範囲であっても良い。
【0034】
さらに、上記溶液の成分の金属アルコキシド類およびアルカリ化合物を溶解するアルコール溶剤としては、例えばメチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、イソブチルアルコール、アミルアルコール、ヘキシルアルコール、シクロヘキシルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、エチルセロソルブ、メチルセロソルブ、プロピルセロソルブ、ブチルセロソルブ、フェニルメチルセロソルブ、フェニルエチルセロソルブなどを挙げることができる。
【0035】
また、本発明による上記組成物を有機高分子材料に混合することにより、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の還元反応によるダンブリングボンドにより、上記組成物と有機高分子材料との複合物を生成して従来の有機高分子材料とは異なる耐候性、耐熱性の物性を付加することができる。
【0036】
本発明の上記組成物を混合する有機高分子材料として2液性樹脂を用いる場合は、モノマーに混合する。混合する比率は用途により調整する。熱可塑性樹脂への添加は、モノマーに対する混合、または、ポリマーに対する練り込みでもよい。
本発明の上記組成物は、有機高分子材料との複合物を生成し、基材の耐熱性並びに耐候性、機械的物性を改善する。
【0037】
有機高分子材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンなどのオレフィン系樹脂、ナイロン6、ナイロン6,6などのポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂、エチレン−α−オレフィン系共重合体[EP(D)M]などが挙げられ、本発明の上記組成物を混合することにより、耐熱強度が改善される。
2液性樹脂としては、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂等を用いることができる。
【0038】
なお、本発明の上記組成物のアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属の還元性を増すため、アルコール溶液に、アミノ有機化合物を添加することができる。アミノ有機化合物としては、アミノシラン、ウレイドシラン、エポキシシランなどのシランカップリング剤が挙げられる。ここで、シランカップリング剤を使用する場合には、2点架橋シラン(ジメチルエトキシシランなど)と3点架橋シラン(トリメトキシシランなど)とにより架橋点をコントロールすることにより、塗布、重合時の収縮にともなう亀裂の発生を防止することが好ましい。上記シランカップリング剤を水および/または有機溶剤に溶解または分散させて、溶液に添加して使用することが好ましい。
上記の目的で使用される有機溶剤としては、アルコール溶剤などが挙げられる。上記、シランカップリング剤の使用量は、溶液に対して、2点架橋シランと3点架橋シランを、上記金属アルコキシド類に対し、通常、合計で1〜10重量%程度、好ましくは3点架橋シランを1〜5重量%および2点架橋シランを1〜3重量%で制御することが好ましい。
【0039】
また、上記組成物を形成する溶液は、種々の目的で上記以外の添加物を添加することができ、例えば、ジアルコキシシランおよび/またはシリコーンオイルを添加することにより、物体の表面張力の調整、物体の粘結性の向上が可能となる。ジアルコキシシランとしては、3−アミノプロピルメチルジメトキシシランなどが挙げられる。
ジアルコキシシランおよび/またはシリコーンオイルの添加量は、本発明の溶液の上記金属アルコキシド類に対して、好ましくは合計で1〜5重量%である。
【0040】
さらに、本発明の上記組成物を形成する溶液には、有機物、無機質微粒子(以下、「微粒子」ともいう)を添加することができる。
添加可能な有機物としては、ポリエチレングリコール、無機物微粒子としては、ヒュームドシリカ、ZrO2、TiO2、Al2O3が好ましい。これらの添加量は、本発明の溶液の上記金属アルコキシド類に対し、添加物の比重と粒度によるが、1〜10重量%、好ましくは1〜5重量%である。
【0041】
上記アルコール溶液からアルコールを除去するために、大気中、真空下、不活性ガス中のいずれかの雰囲気にて常温からアルコールの沸点まで間の任意の温度で乾燥処理を行うことができるが、好ましくは40〜60℃である。さらに結晶核を得るために120〜150℃にて40〜60分間加熱することができる。このようにして得られたフレーク状の組成物はそれぞれの用途に適した粒度に粉砕されるが、樹脂への練り込みの用途に用いるためには120メッシュ以上が好ましい。
本発明の粉末状組成物は、アルコール溶液を空気混合アトマイズにより超微粒化することにより、乾燥と粉状化を同時に行い、緻密な粉状組成物を形成しても良い。また、プラズマなどの高温溶射により微粒状に形成しても良い。形成された粉末もしくは粉状皮膜は、金属表面に高温耐酸化性を付与することができる。
【0042】
アルコールの乾燥除去の過程で、上記組成物のアルカリ金属あるいはアルカリ土類金属は、金属の結晶核内部に取り込まれる。アルカリ金属あるいはアルカリ土類金属と、結晶核を形成する金属がNaとSiO2の組み合わせの場合、Na/SiO2=0.3〜1.0の配合比率が、組成物の生成時に還元剤としての反応性を維持するため、好ましい。
【0043】
また、上記組成物中のアルカリ金属あるいはアルカリ土類金属は、780〜850℃にて30〜60分間加熱処理すること、昇温過程で結晶空隙の拡大と、アルカリ金属あるいはアルカリ土類金属の膨張により、結晶から漏出し、酸化アルカリを生成し、図2に示す黒色の融体となる。アルカリ金属としてNaを用いた場合に、上記融体が生成する過程を図1に示す。この溶融した組成物を、プラズマ溶融コーティングにより、アルミ合金、鋳鉄、鋼などの金属表面に塗布することにより、耐酸化性、耐食性皮膜を形成することができる。組成物を金属に塗布する場合、好ましい塗布量は、乾燥膜厚で、通常、50〜100μmである。
【0044】
上記の溶融状態の黒色の組成物をさらに加熱すると、アルカリ金属あるいはアルカリ土類金属は沸点に達し、沸騰、蒸発を開始する。図3に上記反応の熱分析の一例を示す。アルカリ金属あるいはアルカリ土類金属は急激な沸騰により蒸発し、除去され、図5に示す白色、半透明のトリジマイト結晶になる。
さらに、このα−トリジマイト結晶は900℃以上でβ−トリジマイト結晶へと変化し(図4)、1600℃の高温領域までセラミックスの特性である耐熱性、耐食性、絶縁性を有する組成物を形成する。
【0045】
この特徴を活かし、金属のワークを150〜200℃に加熱して上記組成物をスプレーによって鋳鉄や鋼などの金属表面に0.1〜2μmの厚みに塗布し、該金属を上記条件にて加熱すると、金属表面で組成物中のアルカリ金属あるいはアルカリ土類金属が除去され、耐酸化性、耐食性の皮膜を形成することができる。
【0046】
本発明の上記組成物は、あらゆる物体中に常温で混合することができる。上記物体は、金属のほか、有機高分子材料、紙、木材などの有機物であっても良い。本発明の上記組成物を混合し整形された物体は親水性のため、結露の防止、帯電防止などの耐熱セラミックスのハイブリッド物体を生成する。
本発明の上記組成物を、これらの物体と混合する際の混合量は、上記組成物の粒度、物体の粘性に左右されるが、上記組成物の粒度が200メッシュ程度で、物体の粘度が3000cp程度の場合は最大で45重量%、物体の粒度が325メッシュ以上の場合では最大10%程度が好ましい。
【0047】
また、上記組成物を耐火物粒に混合し、バインダーとしての有機高分子材料を形成するモノマーおよび/またはポリマーを添加して成形し、焼成すると耐火性のある成形品が得られる。従来の耐火物成型法では、成型品を有機バインダーに浸漬し、焼成していたため、バインダーが乾燥時に表面に移動して、均一な強度が得られないという問題点があった。本発明の組成物を混合して製造した成形品は、無機−有機ハイブリッドの機能性材料であり、また、粉末状であるため直接耐火物に混合し、成形・焼成することが可能であるので、耐火物の製造工程を簡素化することができる。
上記の耐火物粒としては、珪砂やムライトが挙げられる。また、添加するバインダーとしての有機高分子材料はフェノール樹脂、アルカリフェノール樹脂、フェノールウレタン樹脂が望ましく、骨材である耐火物粒に対して1.0〜3.0重量%添加することができる。
【0048】
また、本発明の組成物を形成するアルコール溶液に砂を配合し、その後アルコールを除去することにより、組成物がコーティングされた砂が得られる。砂を配合した場合の乾燥条件は、大気中、真空下、不活性ガス中のいずれかの雰囲気にて常温からアルコールの沸点まで間の任意の温度で乾燥処理を行うことができるが、好ましくは40〜60℃である。さらに結晶核を得るために120〜150℃にて40〜60分間加熱することができる。配合する砂の比率は、砂を配合する前のアルコール溶液100重量部に対して、砂15〜25重量部であることが好ましい。砂は、本発明の組成物に添加してもよい。
【0049】
さらに、上記コーティングされた砂にバインダーとして有機高分子材料を添加し、成形して鋳型とすることができる。このように成形された鋳型は、溶湯に接すると、瞬時にトリジマイト結晶に転移し、1470℃までの安定した耐熱性を有する鋳型を得ることができる。鋳型は成形後、焼成することもできる。使用するバインダーとしてはフェノール樹脂、フェノールウレタン樹脂、アルカリフェノール樹脂が挙げられ、添加量は砂に対し1.5〜2.2重量%であることが望ましい。
なお、成型後の加熱温度は、通常、800℃以上である。
【0050】
なお、本発明の上記組成物を混合した物体の表面には本発明に用いられるアルカリ化合物に起因するアルカリ金属あるいはアルカリ土類金属が残存しているので、必要であれば、水、あるいはエタノールアミン水溶液で洗浄することが好ましい。この洗浄により、例えばアルカリ金属がナトリウムの場合、水酸化ナトリウム水溶液あるいは炭酸ナトリウム水溶液として、物体表面からナトリウム原子を除去することができる。
【0051】
本発明は、芳香族化合物を繰り返し単位とする重合物を含む素材を、酸素存在下、高温加熱した際に生じる黒色の煤状物質または黒色タール状物質の発生を抑制する抑制方法であって、(A)素材を加熱する前に、周期律表4A族の金属アルコキシド、周期律表4B族(炭素を除く)の金属アルコキシド、周期律表3A族の金属アルコキシド、周期律表3B族の金属アルコキシド、およびこれらの部分加水分解物の群から選ばれた少なくとも1種の金属アルコキシド類と、アルカリ金属のアルカリ化合物および/またはアルカリ土類金属のアルカリ化合物とを含むアルコール溶液のアルコールを乾燥除去して得られる組成物を、(a1)素材に添加する、または(a2)素材の表面に付着させる、または(B)素材を加熱する前に、周期律表4A族の金属アルコキシド、周期律表4B族(炭素を除く)の金属アルコキシド、周期律表3A族の金属アルコキシド、周期律表3B族の金属アルコキシド、およびこれらの部分加水分解物の群から選ばれた少なくとも1種の金属アルコキシド類と、アルカリ金属のアルカリ化合物および/またはアルカリ土類金属のアルカリ化合物とを含むアルコール溶液を、(b1)素材に添加する、または(b2)素材の表面に付着させ、その後、該アルコール溶液のアルコールを乾燥除去する、処理を施す抑制方法を提供する。
本発明は、上記抑制方法であり、芳香族化合物を繰り返し単位とする重合物が、フェノール樹脂またはフェノールウレタン樹脂であり、素材中の芳香族化合物を繰り返し単位とする重合物の含有量が、10質量%以下であり、高温加熱が400℃以上の加熱であり、
前記(B)の(b2)処理を施す抑制方法を提供する。
【0052】
芳香族化合物を繰り返し単位とする重合物は特に規定はないが、例えばフェノール樹脂、フェノールウレタン樹脂、アルカリフェノール樹脂などが挙げられ、いずれか一つを含めば良い。
素材を高温加熱する際の温度は、加熱した際に黒色の煤状物質または黒色タール状物質が発生する温度であれば特に規定はないが、例えば400℃以上が挙げられる。
素材中の芳香族化合物を繰り返し単位とする重合物の含有量は特に規定はないが、10質量%以下が挙げられる。
上記組成物または上記アルコール溶液を「素材に添加する」とは、素材の状態にかかわらず、その素材の中に加えれば良い。例えば、熱可塑性樹脂の中に入れ、その後、硬化させても良い。また、油状で、粘性が高い液体やゲル状組成物に加えて、混合することが挙げられる。
【0053】
上記組成物または上記アルコール溶液を「素材の表面に付着させる」とは、素材が固体の場合、その固体の表面に付着していれば良く、例えば、塗布しても、スプレーしても、素材を上記組成物を含む溶液や上記アルコール溶液の中に浸漬させてもよい。
上記抑制方法の課題は、ベンゼン環を有する高分子化合物を含む素材から、ベンゼン環を有する高分子化合物だけを除去するために、1000℃以上に加熱しても、黒い煤状物質や黒いタール状物質が生じ、この黒い煤状物質や黒いタール状物質を簡単に除去できないという問題点を克服することにある。
【0054】
上記抑制方法の効果は、ベンゼン環を有する高分子化合物を含む素材から、ベンゼン環を有する高分子化合物だけを除去する際、黒い煤状物質や黒いタール状物質の発生を抑制し、または簡単に除去できるようにして、ベンゼン環を有する高分子化合物を含む素材からベンゼン環を有する高分子化合物を含まない素材を提供することにある。また、黒い煤状物質や黒いタール状物質の発生を抑制し、または簡単に除去できるため、鋳型として用いた場合、使用後の鋳型が汚れず、きれいな鋳造品を提供することにある。
このような効果は、ナトリウムイオンの触媒効果よるものと考えられ、本発明においては、ナトリウムイオンを安全に簡単に供給、保存、使用を可能とする。
【実施例】
【0055】
以下、実施例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明する。
【0056】
参考例1
テトラエトキシシラン(ワッカー社製、エチルシリケート40)200gを内容量2リットルの密閉可能な混合容器に分取し、これにi−プロピルアルコール100gを添加し、スターラーを用いて密閉状態で室温で10分間撹拌し、次に25℃で30分間攪拌することによりテトラエトキシシランの加水分解を行い、さらにその後、25℃で6時間密閉状態で保持し、加水分解率30%のテトラエトキシシラン加水分解溶液を調製した。
次に、このテトラエトキシシラン加水分解溶液に21重量/重量%濃度のC2H5ONaのエタノール溶液35.1gとi−プロピルアルコール344.9gとを添加し、スターラーを用いて密閉状態で25℃で30分間撹拌し、溶液を調製した。この溶液をMX溶液と称する。このMX溶液は、金属アルコキシド類の含有量はSiO2換算で20重量%、アルカリ金属のアルカリ化合物の含有量はNa換算で6重量%のアルコール(i−プロピルアルコール)溶液である。
このMX溶液を空気中で60℃で24時間乾燥し、次いで80℃で60分間の加熱処理を行い、アルコール溶液を完全に除去し、さらに低温型トリジマイト結晶を得るために200℃で60分間の加熱処理を行い、フレーク状の上記組成物を得た。さらに粉砕して、上記組成物を約150メッシュの粉末状とした。
【0057】
粉末状の上記組成物8重量%を、耐火物粒として7号珪砂に混合して、有機高分子材料としてフェノールウレタン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂のいずれかを2重量%添加し、100重量%となるように混合し、10×10×50mmの大きさの3種類のテストピースを形成した。上記テストピースを、100℃毎、1,000℃まで60分間加熱し、各温度での熱間抗折試験を行った。
試験の結果、図7に示すように、本発明の組成物を配合したテストピースは、本発明の組成物を配合していない従来の樹脂のみを添加したテストピースと比較すると、200℃〜300℃において高い強度を示した。このように、本発明の組成物は、耐火物粒とバインダーとしての有機高分子材料からなる成形品に、高温下での抗折強度を付加することが確認された。
また、本発明の組成物と珪砂、フェノール樹脂を配合した上記のテストピースを用いた示差熱試験(図6)では、200℃における有機シリカ化合物の生成と、400℃における有機シリカ化合物の熱分解が確認された。
【0058】
参考例2
300×400×20mmの304ステンレス金属片表面に、参考例1のMX溶液をスプレーし、次いでアルコールを乾燥除去することにより皮膜を形成し、上記組成物を含む厚さ約2μmの皮膜を有する金属片を得た。この金属片を冷や金として、鋳型にセットして、1600℃以上の溶融高マンガン鋼を鋳造した。
その結果、図8に示すように、溶融金属と冷や金の溶着が見られず、さらに結露から発生する欠陥も見られなかった。皮膜が、常温で結露を防止し、さらに皮膜に含まれる本発明の組成物が溶融高マンガンとの接触により高温に晒されて、シリカの結晶形がβ−トリジマイト結晶に転移したことにより、皮膜に耐熱性を付与したと考えられる。このように本発明の組成物を鋳型に用いると、煩雑な処理を必要とせずに、欠陥のない良好な鋳造物が得られることが確認された。
【0059】
参考例3
組成物を100×100×5mmの低炭素鋼金属片の表面の一部に、MX溶液をスプレーし、次いでアルコールを乾燥除去することにより、2μmの皮膜を形成した。この金属片を、950℃で60分間加熱処理し、耐酸化性の試験を行った。
試験の結果、図9に示すように、塗布していないところは、多量のスケールが発生したが、塗布部については、全く酸化は見られなかった。本発明の組成物を皮膜とすることにより、金属に高温耐酸化性を付与できることが確認された。
【0060】
参考例4
30Φ×50mmの304ステンレス金属片に、MX溶液をスプレーし、次いでアルコールを乾燥除去することにより皮膜を形成した。上記処理をしていない304ステンレス金属片とともに、硫化水素雰囲気において700℃で36時間加熱した。
その結果、図10に示すように、本発明の組成物を塗布しない試験片は、激しく表面が腐食され、一方、塗布した試験片は腐食せず、高温下での耐腐食性が高いことを示した。上記組成物のナトリウムによる還元作用の効果と考えられる。
【0061】
実施例1
MX溶液に7号珪砂を加え、大気中、40℃で60分間乾燥させ、上記組成物で被覆された鋳物砂を成形した。上記鋳物砂に、フェノールウレタン樹脂を有機バインダーとして鋳物砂の2%添加し、10×10×50mmの大きさのテストピースを形成した。上記テストピースについて、参考例1と同様の熱間抗折試験を行った。従来の有機鋳型は温度上昇に伴い急速に強度が減少するが、上記方法で形成したテストピースは、参考例1と同様に高温下での抗折強度が向上することが確認された。
【0062】
参考例5
〔試験方法〕
7号珪砂98重量%、フェノール樹脂1重量%、イソシアナート1重量%となるように3成分を混合した。前記成分同士が化学反応することにより発生するアミンが気化されるような通気下で、混練し、造形し、常温で硬化させ、コールドボックス鋳型を作製した。
このコールドボックス鋳型の表面の一部に、MX溶液を塗布し、40〜60℃で加熱してアルコールを乾燥除去した。次に、このコールドボックス鋳型に700℃の溶融アルミニューム合金を入れ、鋳造し、鋳造品を得た。
得られた鋳造品の表面の状況及び、使用後のコールドボックス鋳型の表面に生成した煤の生成状況を目視にて観察した。
〔結果、考察〕
【0063】
結果を図11に示す。
MX溶液を塗布していないコールドボックス鋳型の表面は、黒い煤が付着し(図11の左図)、MX溶液を塗布していないコールドボックス鋳型の表面部分により鋳造した鋳造品(アルミニューム合金)の表面は、くすんでいた。この黒い煤は強く付着しており、擦っても剥がすことはできなかった。
一方、MX溶液を塗布したコールドボックス鋳型の表面は、白い煤が付着し(図11の右図)、MX溶液を塗布したコールドボックス鋳型の表面部分により鋳造した鋳造品(アルミニューム合金)の表面は、白色に輝いていた。この白い煤は、軽く擦っただけでボロボロと剥がれた(図11の右図)。この作用は、MX溶液のアルコールを乾燥除去した組成物中に含まれるナトリウムイオンの触媒効果により、樹脂中のベンゼン環やベンゼン環が酸化して生じる炭素繊維を、さらに酸化させ、(MX溶液を使用しなかったときに生じる黒い煤の分子量よりも)低分子化させることにより得られるものと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0064】
アルカリ金属およびアルカリ土類金属は、還元・触媒の有力な材料として知られているが、常温、常圧下における激しい反応性と、貯蔵、移動に危険が伴い非常に制約の多い扱いにくい材料とされている。常温から800℃付近までアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属の反応性を維持する該組成物は、安定な粉状組成物でありあらゆる物体に容易に混合できるため、従来の物体に混合、塗布することによりアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属の還元反応性を、また、物体に混合することにより、新たな機能を付加することができる。近年、材料技術は、燃料電池、太陽光発電等、新たな機能が要求されている。多くの機能部品はレアメタルなどの稀少材料に頼っている。特に、アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属の還元・触媒としての反応性を活かして、当発明により、レアメタルなどの稀少材料に代わる新たな機能性材料の原料となることが期待できる。さらに、該組成物と有機高分子材料と混合することによって、Naイオンのダンブリングボンドの効果と、還元反応により300℃以上の耐熱性を有する複合物を生成して300℃以上の耐熱性を付加することが可能である。さらに、400℃〜700℃の温度域でNaイオンの触媒効果によるベンゼン環のカーボンの分離が可能であることは、バイオマスの燃料利用、排ガスの処理等が低温で可能となり、従来の産業分野においても、化学的に整備されていない300℃〜700℃の温度域における機能の要求を満たすものである。従って、本発明のアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属を結晶核に保持する該組成物は、常温から800℃までアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属の反応性を利用するあらたな材料技術を提供することができ、具体的には、高分子材料の高温特性の改善により、電子機器産業における絶縁膜、導電膜、機能性材料、自動車産業における構造部品、住宅産業における耐熱素材、結露防止材料、金属材料におけるアルミニウムなどの改良処理などの用途に有用である。さらに、800℃でこの該組成物は黒色の液状となり、この状態における該組成物を物体表面に溶融コーティングを施すことにより、アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属の反応性を活用できる脱臭、脱硫、耐酸化性、耐熱性などの機能を有する皮膜が得られる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(イ)周期律表4A族の金属アルコキシド、周期律表4B族(炭素を除く)の金属アルコキシド、周期律表3A族の金属アルコキシド、周期律表3B族の金属アルコキシド、およびこれらの部分加水分解物の群から選ばれた少なくとも1種の金属アルコキシド類と、アルカリ金属のアルカリ化合物および/またはアルカリ土類金属のアルカリ化合物とを含むアルコール溶液と(ロ)耐火物粒とを混合し、次いで(ハ)バインダーとしての有機高分子材料を混合して成型し、加熱して、耐火物成型品を得る方法。
【請求項2】
上記金属アルコキシド類が一般式RmSi(OR)4−m(ただし、式中Rは互いに同じかあるいは異なる炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜8のアリール基、炭素数2〜6のアルコキシアルキル基または炭素数7〜12のアリールオキシアルキル基であり、mは0〜3の整数である)で表される珪酸エステルおよびアルキル珪酸エステル、ならびにこれらの部分加水分解物から選ばれた1種または2種以上の珪酸エステル類である請求項1に記載の耐火物成型品を得る方法。
【請求項3】
上記アルカリ金属のアルカリ化合物が、ナトリウムアルコラートまたはその水酸化物である請求項1または2記載の耐火物成型品を得る方法。
【請求項4】
上記アルコール溶液中のアルカリ金属のアルカリ化合物および/またはアルカリ土類金属のアルカリ化合物の含有量が、アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属換算で、6〜20重量%である請求項1〜3のいずれかに記載の耐火物成型品を得る方法。
【請求項5】
上記アルコール溶液中の金属アルコキシド類の含有量が、金属酸化物換算で、2〜30重量%である請求項1〜4のいずれかに記載の耐火物成型品を得る方法。
【請求項6】
上記アルコール溶液中に有機アミン化合物を含み、有機アミン化合物の含有量が、金属アルコキシド類に対して、1〜10重量%添加された請求項1〜5のいずれかに記載の耐火物成型品を得る方法。
【請求項7】
上記(ロ)耐火物粒が、珪砂およびムライトから選ばれた請求項1〜6のいずれかに記載の耐火物成型品を得る方法。
【請求項8】
(ハ)バインダーとしての有機高分子材料が、フェノール樹脂、アルカリフェノール樹脂、およびフェノールウレタン樹脂から選ばれた請求項1〜7のいずれかに記載の耐火物成型品を得る方法。
【請求項9】
上記(ロ)耐火物粒の配合量が、(イ)アルコール溶液100重量部に対し、15〜25重量部であり、(ハ)有機高分子材料の配合量が(ロ)耐火物粒に対して1.0〜3.0重量%である、請求項1〜8のいずれかに記載の耐火物成型品を得る方法。
【請求項10】
(イ)と(ロ)とを混合したのち、混合物からアルコールを乾燥除去する請求項1〜9いずれかに記載の耐火物成型品を得る方法。
【請求項11】
上記加熱温度が800℃以上である、請求項1〜10のいずれかに記載の耐火物成型品を得る方法。
【請求項12】
耐火物成型品が鋳型である、請求項1〜11いずれかに記載の耐火物成型品を得る方法。
【請求項13】
請求項1〜12いずれかに記載の耐火物成型品を得る方法によって得られる耐火物成型品。
【請求項14】
鋳型である、請求項13に記載の耐火物成型品。
【請求項1】
(イ)周期律表4A族の金属アルコキシド、周期律表4B族(炭素を除く)の金属アルコキシド、周期律表3A族の金属アルコキシド、周期律表3B族の金属アルコキシド、およびこれらの部分加水分解物の群から選ばれた少なくとも1種の金属アルコキシド類と、アルカリ金属のアルカリ化合物および/またはアルカリ土類金属のアルカリ化合物とを含むアルコール溶液と(ロ)耐火物粒とを混合し、次いで(ハ)バインダーとしての有機高分子材料を混合して成型し、加熱して、耐火物成型品を得る方法。
【請求項2】
上記金属アルコキシド類が一般式RmSi(OR)4−m(ただし、式中Rは互いに同じかあるいは異なる炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜8のアリール基、炭素数2〜6のアルコキシアルキル基または炭素数7〜12のアリールオキシアルキル基であり、mは0〜3の整数である)で表される珪酸エステルおよびアルキル珪酸エステル、ならびにこれらの部分加水分解物から選ばれた1種または2種以上の珪酸エステル類である請求項1に記載の耐火物成型品を得る方法。
【請求項3】
上記アルカリ金属のアルカリ化合物が、ナトリウムアルコラートまたはその水酸化物である請求項1または2記載の耐火物成型品を得る方法。
【請求項4】
上記アルコール溶液中のアルカリ金属のアルカリ化合物および/またはアルカリ土類金属のアルカリ化合物の含有量が、アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属換算で、6〜20重量%である請求項1〜3のいずれかに記載の耐火物成型品を得る方法。
【請求項5】
上記アルコール溶液中の金属アルコキシド類の含有量が、金属酸化物換算で、2〜30重量%である請求項1〜4のいずれかに記載の耐火物成型品を得る方法。
【請求項6】
上記アルコール溶液中に有機アミン化合物を含み、有機アミン化合物の含有量が、金属アルコキシド類に対して、1〜10重量%添加された請求項1〜5のいずれかに記載の耐火物成型品を得る方法。
【請求項7】
上記(ロ)耐火物粒が、珪砂およびムライトから選ばれた請求項1〜6のいずれかに記載の耐火物成型品を得る方法。
【請求項8】
(ハ)バインダーとしての有機高分子材料が、フェノール樹脂、アルカリフェノール樹脂、およびフェノールウレタン樹脂から選ばれた請求項1〜7のいずれかに記載の耐火物成型品を得る方法。
【請求項9】
上記(ロ)耐火物粒の配合量が、(イ)アルコール溶液100重量部に対し、15〜25重量部であり、(ハ)有機高分子材料の配合量が(ロ)耐火物粒に対して1.0〜3.0重量%である、請求項1〜8のいずれかに記載の耐火物成型品を得る方法。
【請求項10】
(イ)と(ロ)とを混合したのち、混合物からアルコールを乾燥除去する請求項1〜9いずれかに記載の耐火物成型品を得る方法。
【請求項11】
上記加熱温度が800℃以上である、請求項1〜10のいずれかに記載の耐火物成型品を得る方法。
【請求項12】
耐火物成型品が鋳型である、請求項1〜11いずれかに記載の耐火物成型品を得る方法。
【請求項13】
請求項1〜12いずれかに記載の耐火物成型品を得る方法によって得られる耐火物成型品。
【請求項14】
鋳型である、請求項13に記載の耐火物成型品。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−236230(P2012−236230A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−170870(P2012−170870)
【出願日】平成24年8月1日(2012.8.1)
【分割の表示】特願2009−168627(P2009−168627)の分割
【原出願日】平成21年7月17日(2009.7.17)
【出願人】(505041726)株式会社キャディック (4)
【出願人】(506070279)テクノメタル株式会社 (7)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年8月1日(2012.8.1)
【分割の表示】特願2009−168627(P2009−168627)の分割
【原出願日】平成21年7月17日(2009.7.17)
【出願人】(505041726)株式会社キャディック (4)
【出願人】(506070279)テクノメタル株式会社 (7)
【Fターム(参考)】
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