説明

耐火目地構造およびその施工方法

【課題】建物の床面、屋根、天井等に設置される二以上の耐熱パネルの側面同士により形成される目地部に耐火性を付与しつつ、施工性に優れる耐火目地構造を提供すること。
【解決手段】建物の床面、屋根および天井からなる群より選ばれる少なくとも一つに対して水平方向に設置される二以上の耐熱パネルと、前記目地部に設置されるT型ジョイナーとを備えた耐火目地構造であって、
前記T型ジョイナーは、前記耐熱パネルの上面に対し平行に形成された保持部と、前記保持部に対し垂直に形成された目地挿入部とを有すると共に熱膨張性耐火材を少なくとも含むものであり、
前記T型ジョイナーの保持部は、前記一方の耐熱パネルの上面と他方の耐熱パネルの上面とにより保持され、
前記T型ジョイナーの目地挿入部は、前記互いに対向する一方の耐熱パネルの側面と他方の耐熱パネルの側面とにより形成される目地部に挿入されていることを特徴とする、耐火目地構造。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は耐火目地構造およびその施工方法に関し、さらに詳細には耐熱パネルにより形成される目地部にT型ジョイナーを備えた耐火目地構造およびその施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の背景技術について以下に図面を参照しつつ説明する。
図1は建物の屋根に関する従来の目地構造を説明するための模式要部斜視図であり、建物の屋根を上方から見下ろした様子を図示したものである。
図1に示される通り、断面がH型の鋼材1の周囲を無機耐熱パネル2により覆った支持構造部材3が最下段に設置されている。
また前記支持構造部材の上をたるき4が、前記支持構造部材3に対して直交する様に等間隔に設置されている。なお前記たるき4は鋼材で形成されている。
前記たるき4の上に、鋼材からなるT型ジョイナー5が前記たるき4に対して直交する様に等間隔に設置されている。
さらに前記たるき4およびT型ジョイナー5により区画された長方形の空間に耐熱パネル6が設置されている。
前記耐熱パネル6の上には防水紙7が設置されていて、さらにその上には葺材8が設置されている。
図1に示されるように、前記T型ジョイナー5は、図1の隣接する前記耐熱パネル6同士の側面により形成される目地部に設置されている。ここで前記T型ジョイナー5は前記目地部の隙間を埋める役割を果たすと共に前記耐熱パネル6を前記たるき4に設置する際の位置を決めるガイドとしての役割を果たしている。
しかしながらこの従来の目地構造では前記無機耐熱パネル6の下で火災が発生した場合、熱による膨張により前記T型ジョイナー5が変形したり、熱による収縮により前記無機耐熱パネル6が反ったりしたりして、互いに隣接する前記無機耐熱パネル6の間に隙間が生じ、この隙間からさらに延焼が生じて建物全体に火が回る等の問題があった。
【0003】
一方、互いに隣接する前記無機耐熱パネルの目地部に熱膨張性耐火材を設置した外壁の耐火目地構造が提案されてる。
この外壁の耐火目地構造を図2により説明する。
図2は地面に対して垂直に設置された外壁としての耐熱パネル6を水平に切断し、その断面を上方から見た状態の前記耐火目地構造を示した模式要部断面図である。
図2に示される通り、熱膨張性耐火材10とフランジ板11とによりT型ジョイナーが形成されていて、互いに隣接する前記耐熱パネル6の側面により形成される目地部に熱膨張性耐火材が設置されている。また前記フランジ板11により前記熱膨張性耐火材10が支えられていて、前記熱膨張性耐火材10が前記目地部から脱落することを防止している。
この耐火目地構造であれば、外壁である前記耐熱パネル6の外側で火災が発生した場合でも前記目地部に設置された前記熱膨張性耐火材10が膨張して前記目地部を閉塞させるため、前記耐熱パネル6の内側、すなわち建物内部への延焼を防止することができるとされる(特許文献1)。
【特許文献1】特開2006−9428号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、先に説明した耐火目地構造では火災が発生した際、前記T型ジョイナーのフランジ板が熱により膨張して、前記目地部から前記T型ジョイナーが外れる等の理由により前記目地部に隙間が生じ、その隙間から延焼が生じる場合があった。
【0005】
本発明の目的は、建物の床面、屋根、天井等に設置される二以上の耐熱パネルの側面同士により形成される目地部に耐火性を付与しつつ、施工性に優れる耐火目地構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らが鋭意検討した結果、建物の床面、屋根、天井等に設置される二以上の耐熱パネルの側面同士により形成される目地部に、熱膨張性耐火材を含むT型ジョイナーを前記目地部の上方から設置した耐火目地構造が本発明の目的に適うことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち本発明は、
[1]建物の床面、屋根および天井からなる群より選ばれる少なくとも一つに対して水平方向に設置される二以上の耐熱パネルと、
互いに対向する一方の耐熱パネルの側面と他方の耐熱パネルの側面とにより形成される目地部と、
前記目地部に設置されるT型ジョイナーとを備えた耐火目地構造であって、
前記T型ジョイナーは、前記耐熱パネルの上面に対し平行に形成された保持部と、前記保持部に対し垂直に形成された目地挿入部とを有すると共に熱膨張性耐火材を少なくとも含むものであり、
前記T型ジョイナーの保持部は、前記一方の耐熱パネルの上面と他方の耐熱パネルの上面とにより保持され、
前記T型ジョイナーの目地挿入部は、前記互いに対向する一方の耐熱パネルの側面と他方の耐熱パネルの側面とにより形成される目地部に挿入されていることを特徴とする、耐火目地構造を提供するものである。
【0008】
また本発明は、
[2]前記T型ジョイナーが、熱膨張性耐火材および樹脂材料の少なくとも一方を含み、
前記T型ジョイナーの目地挿入部は、熱膨張性耐火材を含むことを特徴とする、上記[1]に記載の耐火目地構造を提供するものである。
【0009】
また本発明は、
[3]前記耐熱パネルが、セメント系パネル、無機セラミック系パネルおよび金属サイディング系パネルからなる群より選ばれる少なくとも一つであることを特徴とする、上記[1]または[2]に記載の耐火目地構造を提供するものである。
【0010】
また本発明は、
[4]熱膨張性耐火材が、熱膨張性層状無機物およびリン化合物の少なくとも一つを含むことを特徴とする、上記[1]〜[3]のいずれかに記載の耐火目地構造を提供するものである。
【0011】
また本発明は、
[5]建物の床面、屋根および天井からなる群より選ばれる少なくとも一つに対して水平方向に設置された二以上の耐熱パネルのうち、互いに対向する一方の耐熱パネルの側面と他方の耐熱パネルの側面とにより形成された目地部に対し、
前記耐熱パネルの上面に対し平行に形成された保持部および前記保持部に対し垂直に形成された目地挿入部を有すると共に、熱膨張性耐火材を少なくとも含むT型ジョイナー、
を設置する耐火目地構造の施工方法であって、
前記T型ジョイナーの目地挿入部を、前記互いに対向する一方の耐熱パネルの側面と他方の耐熱パネルの側面とにより形成された目地部に対して前記耐熱パネルの上面から挿入することを特徴とする、耐火目地構造の施工方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の耐火目地構造は、前記耐熱パネルを設置する前に前記T型ジョイナーを設置する必要がなく、前記たるきに対して前記T型ジョイナーを仮止めしたり固定したりする必要がないことに加え、前記耐熱パネルの側面同士により形成される目地部に対して上側から前記T型ジョイナーを挿入することにより耐火目地構造が得られることから施工性に優れる。
また本発明に使用するT型ジョイナーは前記耐熱パネルの上側から設置されているため、火災の熱による膨張により前記目地部から前記T型ジョイナーが脱落することが防止されている。これにより前記目地部に隙間が生じ、この隙間から延焼が生じることも防止することができることから耐火性に優れる。
さらには前記T型ジョイナーを建物の屋根や天井等に設置した場合、前記T型ジョイナーの保持部は室内側から見えない位置に設置されているため、天井や屋根に設置される前記T型ジョイナーの保持部を化粧板により覆ったり、綿密な仕上げの施工を行ったりして意匠性を高める必要がなく、単位時間当たりの生産性に優れる。
また火災が発生した場合でも、前記T型ジョイナーに含まれる熱膨張性耐火材が膨張して前記目地部を閉塞させるため、前記目地部を通じた延焼を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に図面を参照しつつ本発明の耐火目地構造について説明する。
図3は建物の屋根に耐熱パネル6を設置した状態を説明するための模式要部斜視図であり、建物の屋根を上方から見下ろした様子を図示したものである。
支持構造部材3およびたるき4の位置関係は先の図1の場合と同様である。
【0014】
前記支持構造部材3としては、例えば鋼材1の周囲を無機耐熱パネル2により覆ったもの、前記鋼材1の周囲をロックウールにより吹き付け処理したもの、前記鋼材1の周囲をモルタルにより覆ったもの等を挙げることができる。
【0015】
前記鋼材1としては、例えば日本工業規格(JIS G 3101)に規定される一般構造用の圧延鋼材等からなるものを使用することができる。前記鋼材1の形状はその断面がH型、C型、コの字型のもの等、目的や用途に応じて適宜選択することができる。
【0016】
また前記たるき4としては、例えば日本工業規格(JIS G 3350)に規定される一般構造用軽量形鋼等からなるもの等が挙げられる。前記たるき4の形状は前記鋼材1の場合と同様、その断面がH型、C型、コの字型のもの等、目的や用途に応じて適宜選択することができる。
【0017】
前記支持構造部材3とたるき4とは固定金具を用いて金属製のボルトおよびナットにより固定されている(図示せず)。
なお前記支持構造部材3およびたるき4の構造は公知であり、市販のものを入手して使用することができる。
【0018】
前記たるき4の上部には耐熱パネル6が水平方向に設置されている。なお、この水平方向は完全な水平を示すものに限定されず、屋根の雨水や雪を自然に落とす程度の傾きを持ったものであってもよい。
屋根や天井の形状に合わせて前記たるきの上に前記耐熱パネル6を同一平面上に設置する。前記耐熱パネル6はタッピングねじ等により前記たるき4に固定されている(図示せず)。
【0019】
前記耐熱パネルは、例えば、セメント系パネル、無機セラミック系パネル、金属サイディング系パネル等が使用される。
【0020】
前記セメント系パネル6としては、例えば、硬質木片セメント板、無機繊維含有スレート板、軽量気泡コンクリート板、モルタル板、プレキャストコンクリート板等が挙げられる。
【0021】
前記無機セラミック系パネルとしては、例えば、石膏ボード、けい酸カルシウム板、炭酸カルシウム板、ロックウール板、窯業系板等が挙げられる。
【0022】
ここで前記石膏ボードとしては、具体的には焼石膏に鋸屑やパーライトなどの軽量材を混入し、両面に厚紙を貼って成板したもので、例えば、普通石膏ボード(JIS A6901準拠:GB−R)、化粧石膏ボード(JIS A6911準拠:GB−D)、防水石膏ボード(JIS A6912準拠:GB−S)、強化石膏ボード(JIS A6913準拠:GB−F)、吸音石膏ボード(JIS A6301準拠:GB−P)等が挙げられる。
【0023】
また前記金属サイディング系パネルとしては、例えば、金属板の間に樹脂系断熱材、無機系断熱材等の少なくとも一つを有するもの等が挙げられる。
ここで前記樹脂系断熱材としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリイソシアネート、ポリイソシアヌレート、フェノール樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、塩化ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、シリコーン樹脂、各種ゴム等からなるものが挙げられる。自消性であって建築材として適合性がよいことから、ポリスチレン、ポリイソシアヌレート、フェノール樹脂等が好適である。
また、無機系断熱材としては、例えば、前記セメント系パネル、無機セラミック系パネルの他、ロックウール、セラミックウール、グラスウール等の無機繊維を含むもの等を挙げることができる。
また前記金属板としては、具体的には、鉄板、ステンレス板、亜鉛メッキ鋼板、アルミ亜鉛合金メッキ鋼板、アルミニウム板、アルミガラスクロス、アルミクラフト、錫箔、金箔等が挙げられる。
【0024】
前記耐熱パネルは一種もしくは二種以上を使用するこができる。
【0025】
前記耐熱パネルの形状は天井や屋根の形状に合わせて適宜設定されるが、長さおよび幅は通常0.3〜5mの範囲であり、厚みは5〜150mmの範囲である。
【0026】
図4は互いに対向する一方の耐熱パネル6aの側面60aと他方の耐熱パネル6bの側面60bとにより形成される目地部600にT型ジョイナー5が設置された状態を説明するための模式要部断面図であり、前記耐熱パネル6a、6bを垂直に切断した断面を例示したものである。
【0027】
図4(a)に例示する様に前記T型ジョイナー5は前記耐熱パネル6a、6bの上面に対し平行に形成された保持部51と、前記保持部51に対し前記保持部51の略中央から垂直に形成された目地挿入部52とを有するものであり、その断面がT字状となっている。
図4(b)に例示する様に前記T型ジョイナー5の保持部51は前記一方の耐熱パネル6aの上面と他方の耐熱パネル6bの上面とにより保持されている。この保持部51は前記目地部600の幅に対して十分な幅を有するため、前記耐熱パネル6a、6bの下で火災が発生した場合に前記耐熱パネル6a、6bが収縮し、前記目地部600の幅が広がった場合であっても前記目地部600から前記T型ジョイナー5が脱落落下することを防止することができる。
【0028】
また 前記T型ジョイナー5の目地挿入部52は前記目地部600に挿入されていて、前記目地部600を目止めしている。
【0029】
前記T型ジョイナー5の目地挿入部52には熱膨張性耐火材が含まれるため、前記耐熱パネル6a、6bの下で火災が発生した場合に前記耐熱パネル6a、6bが収縮して前記目地部600が広がった場合でも、火災の熱により前記熱膨張性耐火材が膨張して前記目地部600を閉塞するため、火災の熱や炎が前記耐火パネル6a、6bの上部へ広がることを防止することができる。
また逆に前記耐熱パネル6a、6bの上で火災が発生した場合にも、火災の熱により前記T型ジョイナー5の保持部が変形したり溶融したりする前に前記熱膨張性耐火材が膨張して前記目地部600を閉塞するため、火災の熱や炎が前記耐火パネル6a、6bの下部へ広がることも防止することができる。
【0030】
図5は前記T型ジョイナーを例示した模式斜視図である。
図5に例示される様に、前記T型ジョイナーはその長さが1〜8mの範囲であり、好ましくは2〜3mの範囲である。
【0031】
図6(a)〜(d)は前記T型ジョイナーの断面を例示した模式断面図である。
図6(a)は保持部51と目地挿入部52とが熱膨張性耐火材からなるT型ジョイナー5aを例示した模式断面図である。前記T型ジョイナー5aは全体が熱膨張性部材により一体成形されたものである。
【0032】
図6(b)は熱膨張性耐火材62を内部に含み、その外側を樹脂材61で覆ったT型ジョイナー5bを例示した模式断面図である。前記T型ジョイナー5bの目地挿入部に熱膨張性耐火材62が含まれる点に特徴がある。
前記T型ジョイナー5bは、前記熱膨張性耐火材62と前記樹脂61とを押出成形機により金型を用いて同時押出することにより得ることができる。
【0033】
図6(c)は保持部63が金属からなり、目地挿入部64が熱膨張性耐火材からなるT型ジョイナー5cを例示した模式断面図である。
前記目地挿入部64を金属からなる保持部63にはめ込むことにより、前記T型ジョイナー5cを得ることができる。
【0034】
図6(d)は保持部63が金属からなり、目地挿入部が熱膨張性耐火材65を樹脂材66でコートしたものからなるT型ジョイナー5dを例示した模式断面図である。
前記T型ジョイナー5dは、前記目地挿入部が熱膨張性耐火材65を樹脂材66でコートしたものからなる点が図6(c)の場合と異なる。
【0035】
図6に説明した前記樹脂材としては、例えば、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリ(1−)ブテン系樹脂、ポリペンテン系樹脂等のポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、フェノール系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリイソブチレン等の合成樹脂類等を挙げることができる。
【0036】
また前記金属としては、例えば、鉄板、ステンレス板、亜鉛メッキ鋼板、アルミ亜鉛合金メッキ鋼板、アルミニウム板を挙げることができる。
【0037】
前記樹脂材は一種もしくは二種以上を使用することができる。前記金属についても同様である。
【0038】
前記T型ジョイナーの保持部の長さは10〜100mmの範囲が好ましく、20〜60mmの範囲であればより好ましい。
【0039】
また前記T型ジョイナーの目地挿入部の長さは5〜40mmの範囲が好ましく、10〜20mmの範囲であればより好ましい。前記T型ジョイナーの目地挿入部の長さは前記耐熱パネルの厚みと一致していればさらに好ましい。
【0040】
前記T型ジョイナーの目地挿入部の幅は1〜3mmの範囲が好ましい。
【0041】
図7は前記T型ジョイナーを前記目地部に設置するための取付治具20を例示した模式斜視図である。
前記取付治具20は前記耐熱パネル6の側面に接して設置することのできる目地幅調整爪21を有している。前記目地幅調整爪21は前記耐熱パネル6の上面に接して設置することのできるコの字型治具本体22に対して垂直に連結されている。
【0042】
先の図3に戻って、前記たるき4の上に前記耐熱パネル6を設置した後、前記耐熱パネル6に前記取付治具20を設置する。次に前記取付治具20の目地幅調整爪21(図7参照)に接して別の耐熱パネルを設置する。その後、前記取付治具20を前記目地部から外すことにより、図4(a)に例示される一定幅を有する目地部600を形成することができる。この様にして簡便に前記たるきに対して効率よく前記耐熱パネルを設置することができる。
【0043】
なお、前記取付治具20の形状は前記コの字形状のものに限定されることはなく、目的や用途に応じて適宜設定することができる。
【0044】
図8は前記T型ジョイナーを前記目地部に挿入した状態を例示した模式斜視図である。
前記目地部に対して前記T型ジョイナー5の前記目地挿入部を前記耐熱パネル6の上側から挿入することにより(図4参照)、図8に例示した耐火目地構造を得ることができる。
【0045】
次に本発明のT型ジョイナーに使用する熱膨張性耐火材について説明する。
前記熱膨張性耐火材としては、例えば、具体的には熱可塑性樹脂やエポキシ樹脂等の樹脂成分、熱膨張性層状無機物、リン化合物、無機充填材等を含む樹脂組成物からなるもの等を挙げることができる。
【0046】
前記樹脂組成物の各成分のうち、まず前記樹脂成分について説明する。
【0047】
前記熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリ(1−)ブテン系樹脂、ポリペンテン系樹脂等のポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、フェノール系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリイソブチレン等の合成樹脂類、
天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、1,2−ポリブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、ブチルゴム、塩素化ブチルゴム、エチレン−プロピレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、アクリルゴム、エピクロルヒドリンゴム、シリコンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム等のゴム物質等が挙げられる。
【0048】
これらの合成樹脂類及び/又はゴム物質は、一種もしくは二種以上を使用することができる。
【0049】
前記合成樹脂類及び/又はゴム物質の中でも、ハロゲン化されたものは、それ自体難燃性が高く、熱による脱ハロゲン化反応により架橋が起こり、加熱後の残渣の強度が向上する点において好ましい。
【0050】
前記ポリエチレン系樹脂としては、例えば、エチレン単独重合体、エチレンを主成分とするエチレンと他のα−オレフィンとの共重合体、エチレンとα−オレフィン以外のモノマーとの共重合体及びこれらの共重合体や重合体の混合物等が挙げられる。
【0051】
前記エチレンを主成分とするエチレンと他のα−オレフィンとの共重合体におけるα−オレフィンとしては、例えば、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−ブテン、1−ペンテン等が挙げられる。
【0052】
また、前記エチレンとα−オレフィン以外のモノマーとの共重合体としては、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−メタクリレート共重合体等が挙げられる。
【0053】
前記エチレン単独重合体又はエチレンと他のα−オレフィンとの共重合体としては、例えば、チーグラー・ナッタ触媒、バナジウム触媒、4価の遷移金属を含むメタロセン化合物等を重合触媒として重合されたものが挙げられるが、中でも、4価の遷移金属を含むメタロセン化合物等を触媒として得られるポリエチレン系樹脂が好ましい。
【0054】
前記合成樹脂類及び/又はゴム物質には、更に、本発明における発泡断熱材の耐火性能を阻害しない範囲で、架橋や変性が施されてもよい。
【0055】
前記合成樹脂類及び/又はゴム物質の架橋や変性を行う時期については、特に限定されず、予め架橋、変性した前記合成樹脂類及び/又はゴム物質を用いてもよく、後述するリン化合物や無機充填材等の他の成分を配合する際に同時に架橋や変性を行ってもよい。
【0056】
また、前記合成樹脂類及び/又はゴム物質に他の成分を配合した後に架橋や変性してもよく、上記架橋や変性は、いずれの段階で行ってもよい。
【0057】
前記の架橋方法については特に限定されず、前記合成樹脂類及び/又はゴム物質について通常行われる架橋方法により実施することができる。例えば、各種架橋剤、過酸化物等を使用する架橋方法、電子線照射による架橋方法が挙げられる。
【0058】
また、本発明に使用する樹脂成分のうち、先に示したエポキシ樹脂としては、特に限定はないが、例えば、エポキシ基を持つモノマーと硬化剤とを反応させて得られる樹脂等を挙げることができる。
【0059】
前記エポキシ基を持つモノマーとしては、例えば、2官能のグリシジルエーテル型として、ポリエチレングリコール型、ポリプロピレングリコール型、ネオペンチルグリコール型、1,6−ヘキサンジオール型、トリメチロールプロパン型、プロピレンオキサイド−ビスフェノールA、水添ビスフェノールA型、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型等のモノマーが挙げられる。
【0060】
また、グリシジルエステル型として、ヘキサヒドロ無水フタル酸型、テトラヒドロ無水フタル酸型、ダイマー酸型、p−オキシ安息香酸型等のモノマーが挙げられる。
【0061】
更に多官能のグリシジルエーテル型として、フェノールノボラック型、オルトクレゾール型、DPPノボラック型、ジシクロペンタジエン、フェノール型等のモノマーが挙げられる。
【0062】
これらは、一種もしくは二種以上を使用することができる。
【0063】
また、前記硬化剤としては、例えば、重付加型硬化剤、触媒型硬化剤等が挙げられる。
前記重付加型硬化剤としては、例えば、ポリアミン、酸無水物、ポリフェノール、ポリメルカプタン等が挙げられる。
前記触媒型硬化剤としては、例えば三級アミン類、イミダゾール類、ルイス酸錯体等が挙げられる。
これらエポキシ樹脂の硬化方法は特に限定されず、公知の方法により行うことができる。
【0064】
なお、前記樹脂成分の溶融粘度、柔軟性、粘着性等の調整のため、二種以上の樹脂成分をブレンドしたものを使用することができる。
【0065】
次に前記樹脂組成物の各成分のうち、前記熱膨張性層状無機物について説明する。
【0066】
前記熱膨張性層状無機物は加熱時に膨張するものであるが、かかる熱膨張性層状無機物に特に限定はなく、例えば、バーミキュライト、カオリン、マイカ、熱膨張性黒鉛等を挙げることができる。
【0067】
前記熱膨張性黒鉛とは、従来公知の物質であり、天然鱗状グラファイト、熱分解グラファイト、キッシュグラファイト等の粉末を、濃硫酸、硝酸、セレン酸等の無機酸と、濃硝酸、過塩素酸、過塩素酸塩、過マンガン酸塩、重クロム酸塩、重クロム酸塩、過酸化水素等の強酸化剤とで処理してグラファイト層間化合物を生成させたものであり、炭素の層状構造を維持したままの結晶化合物の一種である。
【0068】
上記のように酸処理して得られた熱膨張性黒鉛は、更にアンモニア、脂肪族低級アミン、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物等で中和したものを使用するのが好ましい。
【0069】
前記脂肪族低級アミンとしては、例えば、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン等が挙げられる。
【0070】
前記アルカリ金属化合物および前記アルカリ土類金属化合物としては、例えば、カリウム、ナトリウム、カルシウム、バリウム、マグネシウム等の水酸化物、酸化物、炭酸塩、硫酸塩、有機酸塩等が挙げられる。
【0071】
前記熱膨張性黒鉛の粒度は、20〜200メッシュの範囲のものが好ましい。
【0072】
粒度が20メッシュより小さくなると、黒鉛の膨張度が小さく、充分な耐火断熱層が得られにくく、また、粒度が200メッシュより大きくなると、黒鉛の膨張度が大きいという利点はあるが、前記熱可塑性樹脂又はエポキシ樹脂と混練する際に分散性が悪くなり、物性が低下し易い。
【0073】
上記中和された熱膨張性黒鉛の市販品としては、例えば、UCAR CARBON社製の「GRAFGUARD#160」、「GRAFGUARD#220」、東ソー社製の「GREP−EG」等が挙げられる。
【0074】
次に先の樹脂組成物の各成分のうち、前記無機充填材について説明する。
【0075】
前記無機充填材としては、特に限定されないが、例えば、シリカ、珪藻土、アルミナ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化鉄、酸化錫、酸化アンチモン、フェライト類、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、塩基性炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、炭酸バリウム、ドーソナイト、ハイドロタルサイト、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、石膏繊維、ケイ酸カルシウム等のカリウム塩、タルク、クレー、マイカ、モンモリロナイト、ベントナイト、活性白土、セビオライト、イモゴライト、セリサイト、ガラス繊維、ガラスビーズ、シリカ系バルン、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、カーボンブラック、グラファイト、炭素繊維、炭素バルン、木炭粉末、各種金属粉、チタン酸カリウム、硫酸マグネシウム、チタン酸ジルコン酸鉛、アルミニウムボレート、硫化モリブデン、炭化ケイ素、ステンレス繊維、ホウ酸亜鉛、各種磁性粉、スラグ繊維、フライアッシュ、無機系リン化合物、シリカアルミナ繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維、ジルコニア繊維等が挙げられる。
【0076】
これらは、一種もしくは二種以上を使用することができる。
【0077】
前記無機充填材は骨材的役割を果たして、加熱後に生成する膨張断熱層強度の向上や熱容量の増大に寄与する。
【0078】
このため、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛で代表される金属炭酸塩、骨材的役割の他に加熱時に吸熱効果も付与する水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムで代表される含水無機物が好ましく、アルカリ金属、アルカリ土類金属、及び周期律表IIbの金属炭酸塩又はこれらと前記含水無機物との混合物が好ましい。
【0079】
また、リン化合物は、難燃性を向上させるため、または窒素化合物、アルコール類等と組み合わせて熱膨張性機能を発現するために用いられる。
【0080】
前記リン化合物としては、特に限定されず、例えば、赤リン;トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェート等の各種リン酸エステル;リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸マグネシウム等のリン酸金属塩;ポリリン酸アンモニウム類;化学式1で表される化合物等が挙げられる。
【0081】
これらのリン化合物は、一種もしくは二種以上を使用することができる。
【0082】
これらのうち、耐火性の観点から、赤リン、下記の化学式で表される化合物、及び、ポリリン酸アンモニウム類が好ましく、性能、安全性、費用等の点においてポリリン酸アンモニウム類がより好ましい。
【0083】
【化1】

上記化学式中、R及びRは、水素、炭素数1〜16の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又は、炭素数6〜16のアリール基を表す。
【0084】
は、水酸基、炭素数1〜16の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、炭素数1〜1
6の直鎖状若しくは分岐状のアルコキシル基、炭素数6〜16のアリール基、又は、炭素数6〜16のアリールオキシ基を表す。
【0085】
前記化学式で表される化合物としては、例えば、メチルホスホン酸、メチルホスホン酸ジメチル、メチルホスホン酸ジエチル、エチルホスホン酸、プロピルホスホン酸、ブチルホスホン酸、2−メチルプロピルホスホン酸、t−ブチルホスホン酸、2,3−ジメチル−ブチルホスホン酸、オクチルホスホン酸、フェニルホスホン酸、ジオクチルフェニルホスホネート、ジメチルホスフィン酸、メチルエチルホスフィン酸、メチルプロピルホスフィン酸、ジエチルホスフィン酸、ジオクチルホスフィン酸、フェニルホスフィン酸、ジエチルフェニルホスフィン酸、ジフェニルホスフィン酸、ビス(4−メトキシフェニル)ホスフィン酸等が挙げられる。
【0086】
中でも、t−ブチルホスホン酸は、高価ではあるが、高難燃性の点において好ましい。
【0087】
ポリリン酸アンモニウム類としては、特に限定されず、例えば、ポリリン酸アンモニウム、メラミン変性ポリリン酸アンモニウム等が挙げられるが、難燃性、安全性、コスト、取扱性等の点からポリリン酸アンモニウムが好適に用いられる。
【0088】
市販品としては、例えば、クラリアント社製の「商品名:EXOLIT AP422」及び「商品名:EXOLIT AP462」等が挙げられる。
【0089】
前記リン化合物は、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛等の金属炭酸塩と反応して、金属炭酸塩の膨張を促すと考えられ、特に、リン化合物として、ポリリン酸アンモニウムを使用した場合に、高い膨張効果が得られる。
【0090】
また、有効な骨材として働き、燃焼後に形状保持性の高い残渣を形成する。
【0091】
前記窒素化合物としては、特に限定はないが、メラミン系化合物等であれば好ましい。
また前記アルコール類としては、特に限定はないが、ペンタエリスリトール等の多価アルコール等であれば好ましい。
【0092】
本発明に使用する無機充填材が粒状の場合には、その粒径としては、0.5〜200μmの範囲のものが好ましく、より好ましくは、1〜50μmの範囲のものである。
【0093】
無機充填材の添加量が少ないときは、分散性が性能を大きく左右するため、粒径の小さいものが好ましいが、粒径0.5μm未満では二次凝集が起こり、分散性が悪くなることがある。
【0094】
また、無機充填材の添加量が多いときは、高充填が進むにつれて、樹脂組成物の粘度が高くなり成形性が低下するが、粒径を大きくすることによって樹脂組成物の粘度を低下させることができる点から、上記範囲の中でも粒径の大きいものが好ましい。
【0095】
なお、粒径が200μmを超えると、成形体の表面性、樹脂組成物の力学的物性が低下することがある。
【0096】
前記無機充填材の中でも、特に骨材的役割を果たす炭酸カルシウム、炭酸亜鉛等の金属炭酸塩;骨材的役割の他に加熱時に吸熱効果を付与する水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の含水無機物が好ましい。
【0097】
前記含水無機物及び金属炭酸塩を併用することは、燃焼残渣の強度向上や熱容量増大に大きく寄与すると考えられる。
【0098】
前記無機充填材の中で、特に水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の含水無機物は、加熱時の脱水反応によって生成した水のために吸熱が起こり、温度上昇が低減されて高い耐熱性が得られる点、及び、燃焼残渣として酸化物が残存し、これが骨材となって働くことで燃焼残渣の強度が向上する点で好ましい。
【0099】
また、水酸化マグネシウムと水酸化アルミニウムは、脱水効果を発揮する温度領域が異なるため、併用すると脱水効果を発揮する温度領域が広くなり、より効果的な温度上昇抑制効果が得られることから、併用することが好ましい。
【0100】
前記含水無機物の粒径は、小さくなると嵩が大きくなって高充填化が困難となるので、脱水効果を高めるために高充填するには粒径の大きなものが好ましい。
【0101】
具体的には、粒径が18μmでは、1.5μmの粒径に比べて充填限界量が約1.5倍程度向上することが知られている。
【0102】
さらに、粒径の大きいものと小さいものとを組み合わせることによって、より高充填化が可能となる。
【0103】
前記含水無機物の市販品としては、例えば、水酸化アルミニウムとして、粒径1μmの「商品名:ハイジライトH−42M」(昭和電工社製)、粒径18μmの「商品名:ハイジライトH−31」(昭和電工社製)等が挙げられる。
【0104】
前記炭酸カルシウムの市販品としては、例えば、粒径1.8μmの「商品名:ホワイトンSB赤」(白石カルシウム社製)、粒径8μmの「商品名:BF300」(備北粉化社製)等が挙げられる。
【0105】
冒頭に説明したとおり、本発明に使用する熱膨張性耐火材としては、上記に説明した熱可塑性樹脂やエポキシ樹脂等の樹脂成分、前記熱膨張性層状無機物、前記無機充填材等を含む樹脂組成物からなるもの等を挙げることができるが、次にこれらの配合について説明する。
【0106】
前記樹脂組成物は、前記熱可塑性樹脂やエポキシ樹脂等の樹脂成分100重量部に対し、前記熱膨張性層状無機物を20〜350重量部及び前記無機充填材を50〜400重量部の範囲で含むものが好ましい。
【0107】
また、前記熱膨張性層状無機物および前記無機充填材の合計は、200〜600重量部の範囲が好ましい。
【0108】
かかる樹脂組成物は加熱によって膨張し耐火断熱層を形成する。この配合によれば、前記熱膨張性耐火材は火災等の加熱によって膨張し、必要な体積膨張率を得ることができ、膨張後は所定の断熱性能を有すると共に所定の強度を有する残渣を形成することもでき、安定した防火性能を達成することができる。
【0109】
前記熱膨張性層状無機物の量が20重量部未満であると、膨張倍率が不足し、充分な耐火、防火性能が得られないことがある。
一方、熱膨張性層状無機物の量が350重量部を超えると、擬集力が不足するため、成形品としての強度が得られないことがある。
【0110】
また前記無機充填材の量が50重量部未満であると、燃焼後の残体積量が減少するため、充分な耐火断熱層が得られないことがある。
さらに可燃物の比率が増加するため、難燃性が低下することがある。
【0111】
一方、無機充填材の量が400重量部を超えると樹脂成分の配合比率が減少するため、凝集力が不足して成形品としての強度が得られにくい。
【0112】
前記樹脂組成物における熱膨張性層状無機物及び無機充填材の合計量は、200重量部未満では燃焼後の残渣量が不足して十分な耐火性能が得られにくく、600重量部を超えると機械的物性の低下が大きくなり、使用に耐えられなくなることがある。
【0113】
さらに本発明に使用する前記樹脂組成物は、それぞれ本発明の目的を損なわない範囲で、必要に応じて、フェノール系、アミン系、イオウ系等の酸化防止剤の他、金属害防止剤、帯電防止剤、安定剤、架橋剤、滑剤、軟化剤、顔料、粘着付与樹脂等の添加剤、ポリブテン、石油樹脂等の粘着付与剤を含むことができる。
また本発明に使用するT型ジョイナーの力学的強度向上のためにガラス繊維、シリカアルミナ繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維、ジルコニア繊維、ステンレス繊維、スラグ繊維等を使用することもできる。
【0114】
次に前記樹脂組成物の製造方法について説明する。
前記樹脂組成物の製造方法に特に限定はないが、例えば、前記樹脂組成物に含まれる前記樹脂分が熱可塑性樹脂である場合は、前記樹脂組成物の各成分を押出機、バンバリーミキサー、ニーダーミキサー等公知の混練装置に供給して溶融混練する方法や、前記樹脂組成物の各成分を有機溶剤に懸濁さたり、加温して溶融させたりして塗料状にしたり、溶剤に分散してスラリーを調製する等の方法により、前記樹脂組成物を得ることができる。
【0115】
また、前記樹脂組成物に含まれる前記樹脂分が前記エポキシ樹脂である場合は、例えば、前記樹脂組成物を有機溶剤に懸濁させたり、加温して溶融させたりして塗料状とする方法や、溶剤に分散してスラリーを調製する等の方法、また前記樹脂組成物を加熱下に溶融させる等の方法により前記樹脂組成物を得ることができる。
【0116】
前記樹脂組成物は、上記各成分を単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ニーダーミキサー、混練ロール、ライカイ機、遊星式撹拌機等公知の装置を用いて混練することにより得ることができる。
【0117】
また、エポキシ基をもつモノマーと硬化剤とに別々に充填材を混練しておき、成形直前にスタティックミキサー、ダイナミックミキサー等で混練して得ることもできる。
以上の様に混練した前記樹脂組成物は押出成形、射出成形、鋳型成形、プレス成形等の公知の成形技術により適宜必要な形状に成形することができる。
【0118】
以上説明した方法により、本発明に使用する前記熱膨張性耐火材を得ることができる。
【0119】
前記熱膨張性耐火材は市販品として入手可能であり、例えば、住友スリ―エム社製のファイアバリア(クロロプレンゴムとバーミキュライトを含有する樹脂組成物からなる熱膨張性耐火材、膨張率:3倍、熱伝導率:0.20kcal/m・h・℃)、三井金属塗料社のメジヒカット(ポリウレタン樹脂と熱膨張性黒鉛を含有する樹脂組成物からなる熱膨張性耐火材、膨張率:4倍、熱伝導率:0.21kcal/m・h・℃)、積水化学工業社製フィブロック(ブチルゴムを含む熱膨張性耐火材)等の熱膨張性耐火材等も挙げられる。
【0120】
前記熱膨張性耐火材は、火災時などの高温にさらされた際にその膨張層により断熱し、かつその膨張層の強度があるものであれば特に限定されないが、50kW/mの加熱条件下で30分間加熱した後の体積膨張率が3〜50倍のものであれば好ましい。前記体積膨張率が3倍を下回ると、膨張体積が前記樹脂成分の焼失部分を十分に埋めきれず防火性能が低下することがある。また50倍を超えると、膨張層の強度が下がり、火炎の貫通を防止する効果が低下することがある。より好ましくは、体積膨張率が5〜40倍の範囲であり、さらに好ましくは8〜35倍の範囲である。
【0121】
前記膨張層が自立するためには、前記膨張層は強度の大きいことが必要であり、その強度としては、圧縮試験器にて0.25cmの圧子を用いて、前記膨張層のサンプルを0.1m/sの圧縮速度で測定した場合の破断点応力が0.05kgf/cm以上であれば好ましい。破断点応力が0.05kgf/cmを下回ると、断熱膨張層が自立できなくなり防火性能が低下することがある。より好ましくは、0.1kgf/cm以上である。
【0122】
以下に実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0123】
図9は、たるきに耐熱パネルを設置した状態を例示した模式要部断面図であり、支持構造部材を垂直に切断した状態を表したものである。
支持構造部材3は日本工業規格 JIS G 3101に規定される一般構造用圧延鋼材1の周囲を無機耐熱パネル2で取り囲んだものである。
【0124】
前記支持構造部材3の一般構造用圧延鋼材1に一般構造用圧延鋼材からなるたるき取付金具40を電気溶接で取り付ける。前記たるき4は前記支持構造部材3に対して垂直に取り付けられていて、前記たるき4同士は平行に60cmの間隔に配置されている。
また前記たるき4は前記たるき取付金具40に対してボルトおよびナット42により固定されている。
【0125】
前記たるき4上部には耐熱パネル6が配置されている。前記耐熱パネル6として硬質木片セメント板が使用されている。前記硬質木片セメント板の規格は日本工業規格JIS A 5404に記載されている。
【0126】
前記耐熱パネル6を前記たるき4上部に配置する際には、図7により説明した取付治具20を使用することにより、効率よく前記耐熱パネル6を配置することができる。
前記耐熱パネル6は前記たるき4に対して耐熱パネル取付具30により固定されている。本実施例では、前記耐熱パネル取付具30としてドリリングタッピングネジを使用した。
【0127】
図10は、前記耐熱パネル6の側面同士により形成された目地部にT型ジョイナー5を上部から挿入した状態を例示した模式要部断面図であり、支持構造部材3の長手方向に沿って前記目地部を垂直に切断した状態を表したものである。
図10に示した通り、前記目地部にT型ジョイナー5が上部から挿入されている。
本発明の耐火目地構造は、この様に前記耐熱パネル6の側面同士により形成された目地部にT型ジョイナー5を上部から挿入するだけで施工することができるため施工性に優れる。
【0128】
本発明に使用したT型ジョイナーは図4(b)に例示したものと同様であり、目地挿入部に熱膨張性耐火材を有するものであって、全体が塩化ビニルで被覆された形状となっている。
【0129】
図9に戻り前記耐熱パネルの上に防水紙7を設置し、さらにその上に葺材8を葺材取付具32により固定することにより、屋根を形成することができる。
【0130】
なお、前記防水紙7として日本工業規格JIS A 6005に規定するアスファルトルーフィングを使用した。また、前記葺材取付具32としてドリリングタッピングネジを使用した。前記葺材8は亜鉛メッキ鋼板にアルミニウム蒸着紙を貼付した上に硬質ウレタンフォームを積層したものである。
【0131】
ところで本発明の目地部の場合、外壁の目地部とは異なり、床面、天井、屋根等に水平に設置される耐熱パネルの側面同士により形成された目地部の幅は1〜5mmの範囲であり非常に狭い点が問題となる。
このため従来技術の説明で述べた通り、従来の施工においては先にT型ジョイナーをたるきの上に設置しておき、その後、前記耐熱パネルを前記たるきの上に固定していた。
【0132】
また従来の施工では耐熱パネルの配置の前に、高所においてたるきに数ミリ単位で位置合わせを行いながらT型ジョイナーを前もって配置しておく工程が必要となるため、安全を確保しながら高所で精密な作業を行う必要があり、単位時間当たりの施工効率の向上にも限界があった。
【0133】
本発明の耐火目地構造の場合は、例えば屋根や天井に適用した場合には前記たるきに前記耐熱パネルを配置する際にT型ジョイナーを前もって設置しておく必要がないため、効率よく耐熱パネルを前記たるきの上に配置することができる。
また室内側から前記耐熱パネルを見上げたときに前記T型ジョイナーの保持部分は室内側から見えず意匠性に優れることから、前記T型ジョイナーの保持部分を隠すための化粧板の設置等の追加施工作業を必要とせず施工性に優れる。
【0134】
さらには建物内部で火災が発生した場合には前記目地部に挿入された前記T型ジョイナーの目地挿入部に含まれる熱膨張性耐火材が膨張して前記目地部を閉塞させるため、前記目地部を通じて延焼が生じることを防止することができる。
【0135】
また、本発明の耐火目地構造は、前記T型ジョイナーの保持部が耐熱パネルの上面に設置されているため、火災の炎や熱により前記保持部が膨張して、前記目地部から前記T型ジョイナーが脱落することも防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0136】
【図1】建物の屋根に関する従来の目地構造を説明するための模式要部斜視図である。
【図2】外壁としての耐熱パネルを水平に切断した状態の耐火目地構造を示した模式要部断面図である。
【図3】建物の屋根に耐熱パネルを設置した状態を説明するための模式要部斜視図である。
【図4】目地部にT型ジョイナーが設置された状態を説明するための模式要部断面図である。
【図5】T型ジョイナーを例示した模式斜視図である。
【図6】T型ジョイナーの断面を例示した模式断面図である。
【図7】T型ジョイナーを目地部に設置するための取付治具を例示した模式斜視図である。
【図8】T型ジョイナーを前記目地部に挿入した状態を例示した模式斜視図である。
【図9】たるきに耐熱パネルを設置した状態を例示した模式要部断面図である。
【図10】目地部にT型ジョイナーを上部から挿入した状態を例示した模式要部断面図である。
【符号の説明】
【0137】
1 鋼材
2 無機耐熱パネル
3 支持構造部材
4 たるき
5、5a、5b、5c、5d T型ジョイナー
6、6a、6b 耐熱パネル
7 防水紙
8 葺材
10 熱膨張性耐火材
11 フランジ板
20 取付治具
21 目地幅調整爪
22 治具本体
30 耐熱パネル取付具
32 葺材取付具
40 たるき取付金具
42 ナット
51、63 保持部
52、64 目地挿入部
60a、60b 耐熱パネルの側面
61、66 樹脂
62、65 熱膨張性耐火材
600 目地部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の床面、屋根および天井からなる群より選ばれる少なくとも一つに対して水平方向に設置される二以上の耐熱パネルと、
互いに対向する一方の耐熱パネルの側面と他方の耐熱パネルの側面とにより形成される目地部と、
前記目地部に設置されるT型ジョイナーとを備えた耐火目地構造であって、
前記T型ジョイナーは、前記耐熱パネルの上面に対し平行に形成された保持部と、前記保持部に対し垂直に形成された目地挿入部とを有すると共に熱膨張性耐火材を少なくとも含むものであり、
前記T型ジョイナーの保持部は、前記一方の耐熱パネルの上面と他方の耐熱パネルの上面とにより保持され、
前記T型ジョイナーの目地挿入部は、前記互いに対向する一方の耐熱パネルの側面と他方の耐熱パネルの側面とにより形成される目地部に挿入されていることを特徴とする、耐火目地構造。
【請求項2】
前記T型ジョイナーが、熱膨張性耐火材および樹脂材の少なくとも一方を含み、
前記T型ジョイナーの目地挿入部が、熱膨張性耐火材を含むことを特徴とする、請求項1に記載の耐火目地構造。
【請求項3】
前記耐熱パネルが、セメント系パネル、無機セラミック系パネルおよび金属サイディング系パネルからなる群より選ばれる少なくとも一つであることを特徴とする、請求項1または2に記載の耐火目地構造。
【請求項4】
熱膨張性耐火材が、熱膨張性層状無機物およびリン化合物の少なくとも一つを含むことを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の耐火目地構造。
【請求項5】
建物の床面、屋根および天井からなる群より選ばれる少なくとも一つに対して設置された二以上の耐熱パネルのうち、互いに対向する一方の耐熱パネルの側面と他方の耐熱パネルの側面とにより形成された目地部に対し、
前記耐熱パネルの上面に対し平行に形成された保持部および前記保持部に対し垂直に形成された目地挿入部を有すると共に、熱膨張性耐火材を少なくとも含むT型ジョイナー、
を設置する耐火目地構造の施工方法であって、
前記T型ジョイナーの目地挿入部を、前記互いに対向する一方の耐熱パネルの側面と他方の耐熱パネルの側面とにより形成された目地部に対して前記耐熱パネルの上面から挿入することを特徴とする、耐火目地構造の施工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−197477(P2009−197477A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−40130(P2008−40130)
【出願日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】