説明

耐熱アクリル樹脂の可塑化方法

【課題】 耐熱アクリル樹脂の押出し溶融、押出し混練時における剪断発熱を低減し、効率良く溶融可塑化して外観や物性に優れた成形体を提供する事。
【解決手段】 耐熱アクリル樹脂を溶融押出しする際、特定の条件を満たすスクリュー形状を選定する事により、生産性を落とさずに樹脂の剪断発熱による加熱分解を抑制し、充分な可塑化や混練を行なう。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明にかかる樹脂の可塑化方法は、耐熱アクリル樹脂の押出し溶融、押出し混練時における剪断発熱を低減し、効率良く溶融可塑化して外観や物性に優れた成形体を得る可塑化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
PMMAに代表されるアクリル樹脂は、光学性能に優れ、高い光線透過率や低複屈折率、低位相差の光学等方材料として各種光学材料への適応が成されていた。しかし近年、液晶表示装置やプラズマディスプレイ、有機EL表示装置等のフラットディスプレイや赤外線センサー、光導波路等の進歩に伴い、光学用透明高分子材料の耐熱性に対する要請が高まっている。
耐熱性を有するアクリル樹脂としては、分子鎖中に水酸基とエステル基とを有する重合体をラクトン環化縮合反応させることによって得られるラクトン環含有重合体(例えば、特許文献1、2、3、4参照)や、マレイミド類を共重合したマレイミド系共重合体(例えば、特許文献5参照)が知られている。
これら耐熱アクリル樹脂を押出し機を用いて溶融可塑化し、シートやフィルム、若しくは棒状やファイバー状に成形したり、他の相溶する熱可塑樹脂や各種添加剤と押出し混練する場合、一般に単軸押出し機や二軸押出し機が用いられてきた。しかしこれら耐熱アクリル樹脂の押出し可能な溶融粘度は、一般的なアクリル樹脂よりも高温であり、樹脂が分解する温度に近いものとなる為、過度の剪断発熱を与えず可塑化する必要があった。
【0003】
【特許文献1】特開2000−230016号公報
【特許文献2】特開2001−151814号公報
【特許文献3】特開2002−120326号公報
【特許文献4】特開2002−254544号公報
【特許文献5】特開H09−324016号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、耐熱アクリル樹脂の押出し溶融、押出し混練時における剪断発熱を低減し、効率良く溶融可塑化して外観や物性に優れた成形体を提供する事にある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記課題を解決するべく鋭意検討を行った。その結果、耐熱アクリル樹脂を押出し溶融する際、ある特定の条件を満たすスクリュー形状を選定する事により、生産性を落とさずに樹脂の剪断発熱による加熱分解を抑制し、しかも充分な可塑化や混練を行う事が可能である事を見出した。
すなわち本発明にかかる耐熱樹脂の可塑化方法は、ガラス転移温度が120℃以上かつ、剪断速度100(/s)で270℃での樹脂粘度が250Pa・s以上の耐熱アクリル樹脂の可塑化する際、単軸押出し機を用い、下記の一般式(1)を満たすような特殊スクリューを用いて押出し溶融する樹脂の可塑化方法である。
a≦0.97×b (1)
(ここで、同一シリンダー温度、同一吐出量におけるaは特殊スクリューを用いて押出した際の単位時間あたりの動力、bはフルフライト式のスクリューを用いて押し出した際の単位時間あたりの動力を表す)
若しくは、下記の一般式(2)を満たすような特殊スクリューを用いて押出し溶融する樹脂の可塑化方法であっても良い。
c≦d−3 (2)
(ここで、同一シリンダー温度、同一吐出量におけるcは特殊スクリューを用いて押出した際の樹脂温度、dはフルフライト式のスクリューを用いて押し出した際の樹脂温度を表す)
前記耐熱アクリル樹脂の可塑化方法は、押出し機の形状を特段規定するものではないが、押出し機が1個以上の開放ベント部を有し、減圧状態で発生する分解ガスを吸引する方が、残存揮発分の増加を抑制できる。
また耐熱アクリル樹脂の可塑化方法は、該耐熱アクリル樹脂が、ラクトン環含有重合体である場合に、特に効果を発揮することが可能となる。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、耐熱アクリル樹脂の押出し溶融、押出し混練時における剪断発熱を低減し、効率良く溶融可塑化して外観や物性に優れた成形体を得る事が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明について詳しく説明するが、本発明の範囲はこれらの説明に拘束されることはなく、以下の例示以外についても、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更実施し得る。

<耐熱アクリル樹脂>
本発明の可塑化方法は、ガラス転移温度が120℃以上である耐熱アクリル樹脂の押出し溶融の際に好適に用いられる。ここでガラス転移温度とはポリマー分子がミクロブラウン運動を始める温度であり、各種の測定方法があるが、本発明に於いては示差走査熱量計(DSC)によってASTM−D−3418に従って中点法で求めた温度と定義する。ガラス転移温度が120℃以上あるアクリル樹脂は一般に当該業者の間では耐熱アクリル樹脂として認められる。
また、本発明の可塑化方法は、耐熱アクリル樹脂の溶融粘度が、剪断速度100(/s)で270℃での樹脂粘度が250Pa・s以上の場合に特に好適に用いられる。
また、本発明にかかる耐熱アクリル樹脂の色相は特に問わないが、透明であり黄変度が小さい方がアクリル樹脂の本来の特徴を損なわない為、好適である。本発明にかかる耐熱アクリル樹脂は例えば3mm厚の成形体とした場合のヘイズ値が3以下、更に好ましくは2以下、最も好ましくは1以下である。また該成形体のYI(イエローインデックス)値が、10以下、好ましくは5以下である。
【0008】
本発明にかかる耐熱アクリル樹脂としては、(メタ)アクリレート単量体を共重合したガラス転移温度120℃以上の樹脂をいい、具体的には無水マレイン酸と(メタ)アクリレートの共重合体、N―置換マレイミドと(メタ)アクリレートの共重合体、(メタ)アクリレート共重合体を分子内環化反応によりラクトン環構造を導入した所謂、ラクトン化重合体、(メタ)アクリレート共重合体を分子内環化反応によりグルタルイミド環構造を導入した所謂、グルタルイミドポリマー等があげられる。
(メタ)アクリレート単量体としては、炭素数1〜18のアルキル基、シクロヘキシル基、およびベンジル基のうちのいずれかを有する(メタ)アクリル酸エステルが好適である。具体的には、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸アミル、(メタ)アクリル酸イソアミル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸2−フェノキシエチル、(メタ)アクリル酸3−フェニルプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシルエチル等が挙げられる。これらのうち、メタクリル酸メチルが特に好ましい。これら(メタ)アクリル酸エステルは、一種類のみを用いてもよく、また、二種類以上を適宜混合して用いてもよい。
また、これらは耐熱性を損なわない範囲で共重合可能なその他の単量体成分を共重合した単位を有していても良い。共重合可能なその他の単量体成分としては、具体的にはスチレン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル系単量体、アクリロニトリル等のニトリル系単量体、酢酸ビニル等のビニルエステル類等があげられる。
【0009】
更に、本発明の可塑化方法は、耐熱アクリル樹脂として(メタ)アクリレート共重合体を分子内環化反応によりラクトン環構造を導入した所謂、ラクトン環含有重合体において用いた場合が最も効果を奏する。
ラクトン環含有重合体は、好ましくは、下記一般式(3)で表されるラクトン環構造を有する。
【0010】
【化1】

【0011】
(式中、R、R、Rは、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜20の有機残基を表す。なお、有機残基は酸素原子を含んでいても良い。)
ラクトン環含有重合体構造中の一般式(3)で表されるラクトン環構造の含有割合は、好ましくは5〜90重量%、より好ましくは10〜70重量%、さらに好ましくは10〜60重量%、特に好ましくは10〜50重量%である。ラクトン環含有重合体構造中の一般式(3)で表されるラクトン環構造の含有割合が5重量%よりも少ないと、耐熱性、耐溶剤性、表面硬度が不十分になることがあり、好ましくない。ラクトン環含有重合体構造中の一般式(3)で表されるラクトン環構造の含有割合が90重量%よりも多いと、成形加工性に乏しくなることがあり、好ましくない。
ラクトン環含有重合体は、重量平均分子量が、好ましくは1000〜2000000、より好ましくは5000〜1000000、さらに好ましくは10000〜500000、特に好ましくは50000〜500000である。
【0012】
ラクトン環含有重合体は、ダイナミックTG測定における150〜300℃の間での重量減少率が1%以下であることが好ましく、より好ましくは0.5%以下上、さらに好ましくは0.3%以下である。
【0013】
ラクトン環含有重合体は、環化縮合反応率が高いので、成形後の成形品中に泡やシルバーストリークが入るという欠点が回避できる。さらに、高い環化縮合反応率によってラクトン環構造が重合体に十分に導入されるため、得られたラクトン環含有重合体が十分に高い耐熱性を有している。
【0014】
ラクトン環含有重合体は、15重量%のクロロホルム溶液中での着色度(YI)が6以下となるものが好ましく、より好ましくは3以下、さらに好ましくは2以下、最も好ましくは1以下である。着色度(YI)が6を越えると、着色により透明性が損なわれ、本来目的とする用途に使用できない場合がある。
【0015】
ラクトン環含有重合体は、熱重量分析(TG)における5%重量減少温度が、280℃以上であることが好ましく、より好ましくは290℃以上、さらに好ましくは300℃以上である。熱重量分析(TG)における5%重量減少温度は、熱安定性の指標であり、これが280℃未満であると、十分な熱安定性を発揮できないおそれがある。
ラクトン環含有重合体は、それに含まれる残存揮発分の総量が、好ましくは5000ppm以下、より好ましくは2000ppm以下である。残存揮発分の総量が5000ppmよりも多いと、成形時の変質等によって着色したり、発泡したり、シルバーストリークなどの成形不良の原因となる。
【0016】
〔押出し方法〕
本発明の可塑化方法に用いる押出し機は、通常の単軸押出し機であれば適応する事が可能であるが、充分な可塑化や混練状態を得る為に、L/D(Lは押出し機のシリンダー長さ、Dはシリンダー内径を表す)が、10以上100以下が好ましく、20以上50以下が更に好ましく、25以上40以下が最も好ましい。L/Dが10以下であれば、十分な可塑化や混練状態が得られにくく、100以上であれば、樹脂に過度な剪断発熱が加わり、樹脂が分解する可能性がある。
また、シリンダーの設定温度は好ましくは200℃以上、330℃以下であり、さらに好ましくは220℃以上300℃以下である。200℃以下では樹脂の溶融粘度が高くなるため、必要以上の高い動力や可塑化に必要なL/Dが必要となり生産性に支障をきたす。330℃を超えると樹脂が分解する恐れがある。
本発明の可塑化方法に二軸押出し機を用いた場合は、可塑化や混練状態は得られやすいが過度な剪断発熱が樹脂に加えられる為、好ましくない。
また本発明の可塑化方法は、押出し機の形状を特段規定するものではないが、押出し機が1個以上の開放ベント部を有し、減圧状態で発生する分解ガスを吸引する方が、残存揮発分の増加を抑制できる。開放ベント部を減圧状態にする場合、その減圧度は、931〜1.3hPa(700〜1mmHg)の範囲が好ましく、798〜13.3hPa(600〜10mmHg)の範囲がより好ましい。上記圧力が931hPaより高いと、溶融樹脂中の残存揮発分や樹脂分解により発生する単量体成分等が残存しやすい。また1.3hPaより低いと、工業的な実施が困難になっていくという問題がある。

〔押出しスクリュー〕
本発明の可塑化方法に用いる特殊スクリューは、本発明にかかる耐熱アクリル樹脂を押出し溶融し可塑化する際に、下記の一般式(1)を満たすようなスクリューであればどんな形状であっても良い。
a≦0.97×b (1)
(ここで、同一シリンダー温度、同一吐出量におけるaは特殊スクリューを用いて押出した際の単位時間あたりの動力、bはフルフライト式のスクリューを用いて押し出した際の単位時間あたりの動力を表す)
若しくは、下記の一般式(2)を満たすようなスクリューであれば、どんな形状であっても良い。
c≦d−3 (2)
(ここで、同一シリンダー温度、同一吐出量におけるcは特殊スクリューを用いて押出した際の樹脂温度、dはフルフライト式のスクリューを用いて押し出した際の樹脂温度を表す)
上記の一般式(1)若しくは(2)を満たすようなスクリューとしては、特公昭42−11505、実開昭53−96070、実開昭58−17122号公報、特開昭61−222706に記載されているような、主フライトにより構成されるスクリュー溝内に、該主フライトよりも高さが低い副フライトを有する(バリア)スクリュー(S1)が挙げられる。
また、特開昭58−108118、特開昭57−169337に記載、例示されているような、多条フライトを有するスクリューが(S2)挙げられる。
また、特開昭62−99130に記載、例示されているような、スクリュー先端部または途中にダルメージタイプスクリューを取り付けたスクリュー(S3)が挙がられる。
さらに、その他の上記の一般式(1)若しくは(2)を満たすようなスクリューとしては、特公昭54−19908に記載されているような、スクリュー軸の一部に、軸方向に直角な断面が多角形で軸方向に伸びる構造を有するスクリュー(S4)も上げられる。このスクリュー(S4)を用いた場合は、シリンダー形状もシリンダー内面に、軸方向に直角な断面が多角形で軸方向に伸びる部分を該スクリュー(S4)に相対する部分に有する方が好ましい。この構造のシリンダー及びスクリューを用いた場合は、樹脂ペレット間での高剪断を加える事が可能となり、速やかな昇温・可塑化が可能となる。従って、結果的に単位時間、押出し量あたりの動力は小さくなり、また溶融された樹脂温度は、通常のフルフライト型スクリューを用いた場合より低くする事が可能となる。
本発明の単位時間あたりの動力は、スクリューを回転させるのに要する動力(kw)を単位時間あたりの押出し量(kg/hr)で除した値(kw・hr/kg)である。この数値が大きい程、効率良く可塑化できていることになる。この数値は、本発明の耐熱アクリル樹脂の粘度や、分子量、スクリュー回転数やシリンダー温度によって変化するが、好ましい範囲としては、0.1〜0.4kw・hr/kgである。0.1より小さいと充分な可塑化が行われていない場合があり、0.4より大きいとスクリュー回転による剪断発熱で、樹脂の分解が促進されて好ましくない。
また、一般式(1)のa≦0.97×bを満たす場合は、可塑化が効率良く行われ、更に過度な剪断による樹脂分解は少ない。一般式(1)の範囲内で好ましくは、a≦0.95×bである。
本発明の樹脂温度は、押出し機の先端(ダイス)から空間部に流出した溶融樹脂の実温度を示す。この樹脂温度が一般式(2)のc≦d−3℃の範囲であれば、可塑化が効率良く行われ、更に過度な剪断による樹脂分解は少ない。一般式(2)の範囲内で好ましくは、c≦d−5℃である。

〔押出し溶融時の混練〕
本発明の可塑化方法は、押出し溶融時に押出し成形品の耐熱性や光学的性質、機械的物性を損なわない範囲で、その他の熱可塑性樹脂や添加剤を含んでもよい。その他の熱可塑樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)等のオレフィン系ポリマー;塩化ビニル、塩素化ビニル樹脂等の含ハロゲン系ポリマー;ポリメタクリル酸メチル等のアクリル系ポリマー;ポリスチレン、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンブロック共重合体等のスチレン系ポリマー;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル;ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610等のポリアミド;ポリアセタール;ポリカーボネート;ポリフェニレンオキシド;ポリフェニレンスルフィド;ポリエーテルエーテルケトン;ポリサルホン;ポリエーテルサルホン;ポリオキシベンジレン;ポリアミドイミド;ポリブタジエン系ゴム、アクリル系ゴムを配合したABS樹脂やASA樹脂等のゴム質重合体;などが挙げられる。
【0017】
ラクトン環含有重合体と熱力学的に相溶する熱可塑性樹脂としては、シアン化ビニル系単量体単位と芳香族ビニル系単量体単位とを含む共重合体、具体的にはアクリロニトリル−スチレン系共重合体やポリ塩化ビニル樹脂、メタクリル酸エステル類を50重量%以上含有する重合体が上げられる。それらの中でもアクリロニトリル−スチレン系共重合体が最も相溶性に優れ、耐熱性を損なわずに透明な成形体を得る事ができる。なお、ラクトン環含有重合体とその他の熱可塑性樹脂とが熱力学的に相溶することは、これらを混合して得られた熱可塑性樹脂組成物のガラス転移点を測定することによって確認することができる。具体的には、示差走査熱量測定器により測定されるガラス転移点がラクトン環含有重合体とその他の熱可塑性樹脂との混合物について1点のみ観測されることによって、熱力学的に相溶していると言える。
その他の熱可塑性樹脂としてアクリロニトリル−スチレン系共重合体を用いる場合、その製造方法は、乳化重合法や懸濁重合法、溶液重合法、バルク重合法等を用いる事が可能であるが、得られる光学フィルムの透明性や光学性能の観点から溶液重合法かバルク重合法で得られたものである事が好ましい。
添加剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系、リン系、イオウ系等の酸化防止剤;耐光安定剤、耐候安定剤、熱安定剤等の安定剤;ガラス繊維、炭素繊維等の補強材;フェニルサリチレート、(2,2´−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−ヒドロキシベンゾフェノン等の紫外線吸収剤;近赤外線吸収剤;トリス(ジブロモプロピル)ホスフェート、トリアリルホスフェート、酸化アンチモン等の難燃剤;アニオン系、カチオン系、ノニオン系の界面活性剤等の帯電防止剤;無機顔料、有機顔料、染料等の着色剤;有機フィラーや無機フィラー;樹脂改質剤;有機充填剤や無機充填剤;可塑剤;滑剤;帯電防止剤;難燃剤;などが挙げられる。
【0018】
本発明の可塑化方法における押出し混練時のその他の添加剤の含有割合は、好ましくは0〜5重量%、より好ましくは0〜2重量%、さらに好ましくは0〜0.5重量%である。
【実施例】
【0019】
以下に、実施例および比較例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下では、便宜上、「質量部」を単に「部」と、「リットル」を単に「L」と記すことがある。
【0020】
<重合反応率、重合体組成分析>
重合反応時の反応率および重合体中の特定単量体単位の含有率は、得られた重合反応混合物中の未反応単量体の量をガスクロマトグラフィー(島津製作所社製、装置名:GC17A)を用いて測定して求めた。
【0021】
<ダイナミックTG>
重合体(もしくは重合体溶液あるいはペレット)を一旦テトラヒドロフランに溶解もしくは希釈し、過剰のヘキサンもしくはメタノールへ投入して再沈殿を行い、取り出した沈殿物を真空乾燥(1mmHg(1.33hPa)、80℃、3時間以上)することによって揮発成分などを除去し、得られた白色固形状の樹脂を以下の方法(ダイナミックTG法)で分析した。
【0022】
測定装置:Thermo Plus2 TG−8120 Dynamic TG((株)リガク社製)
測定条件:試料量 5〜10mg
昇温速度:10℃/min
雰囲気:窒素フロー 200ml/min
方法:階段状等温制御法(60℃〜500℃の間で重量減少速度値0.005%/sec以下で制御)
<脱アルコール反応率とラクトン環構造の占める割合>
脱アルコール反応率を、重合で得られた重合体組成からすべての水酸基がメタノールとして脱アルコールした際に起こる重量減少量を基準にし、ダイナミックTG測定において重量減少が始まる前の150℃から重合体の分解が始まる前の300℃までの脱アルコール反応による重量減少から求めた。
【0023】
すなわち、ラクトン環構造を有した重合体のダイナミックTG測定において150℃から300℃までの間の重量減少率の測定を行い、得られた実測重量減少率を(X)とする。他方、当該重合体の組成から、その重合体組成に含まれる全ての水酸基がラクトン環の形成に関与するためアルコールになり脱アルコールすると仮定した時の理論重量減少率(すなわち、その組成上において100%脱アルコール反応が起きたと仮定して算出した重量減少率)を(Y)とする。なお、理論重量減少率(Y)は、より具体的には、重合体中の脱アルコール反応に関与する構造(水酸基)を有する原料単量体のモル比、すなわち当該重合体組成における前記原料単量体の含有率から算出することができる。これらの値(X、Y)を脱アルコール計算式:
1−(実測重量減少率(X)/理論重量減少率(Y))
に代入してその値を求め、%で表記すると、脱アルコール反応率が得られる。そして、この脱アルコール反応率だけ所定のラクトン環化が行われたものとして、ラクトン環化に関与する構造(水酸基)を有する原料単量体の当該重合体組成における含有量(重量比)に、脱アルコール反応率を乗じることで、当該重合体中のラクトン環構造の占める割合を算出することができる。
【0024】
<重量平均分子量>
重合体の重量平均分子量は、GPC(東ソー社製GPCシステム)のポリスチレン換算により求めた。展開液はクロロホルムを用いた。
【0025】
<樹脂の熱分析>
樹脂の熱分析は、試料約10mg、昇温速度10℃/min、窒素フロー50cc/minの条件で、DSC((株)リガク社製、装置名:DSC−8230)を用いて行った。なお、ガラス転移温度(Tg)は、ASTM−D−3418に従い、中点法で求めた。
【0026】
<メルトフローレート>
メルトフローレートは、JIS−K7210に基づき、試験温度240℃、荷重10kgで測定した。
【0027】
<MMA残揮成分の定量>
ペレットをジメチルアセトアミドに溶解して10質量%溶液を作成し、炭酸ジフェニルを内標としてガスクロマトグラフィーにて定量した。
【0028】
<イエローインデックス(YI)>
樹脂ペレットをバレル温度260℃に設定した射出成形機(日精樹脂工業(株)製 HM7型)を用いて直径40mm、厚さ3mmのディスク状成形品を得、得られたディスクを日本電色社製色差計Σ90システムを用いて透過法により測定した。
【0029】
<溶融粘度>
十分に乾燥したペレットをボーリンインストルメンツ社製キャピラリーレオメーターRH10を用いて測定した。

〔製造例〕
攪拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入管を付した1m2の反応釜に、136kgのメタクリル酸メチル(MMA)、34kgの2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル(MHMA)、166kgのトルエンを仕込み、これに窒素を通じつつ、105℃まで昇温し、還流したところで、開始剤として187gのターシャリーアミルパーオキシイソノナノエート(アトフィナ吉富製、商品名:ルパゾール570)を添加すると同時に、374gの開始剤と3.6kgのトルエンからなる溶液を2時間かけて滴下しながら、還流下(約105〜110℃)で溶液重合を行い、さらに4時間かけて熟成を行った。
【0030】
得られた重合体溶液に、170gのリン酸ステアリル/リン酸ジステアリル混合物(堺化学製、商品名:Phoslex A−18)を加え、還流下(約90〜110℃)で5時間、環化縮合反応を行った。次いで、上記環化縮合反応で得られた重合体溶液を、バレル温度250℃、回転数150rpm、減圧度13.3〜400hPa(10〜300mmHg)、リアベント数1個、フォアベント数4個のベントタイプスクリュー二軸押出し機(φ=42mm、L/D=42)に、樹脂量換算で13kg/時間の処理速度で導入し、該押出し機内で環化縮合反応と脱揮を行い、押出すことにより、透明なペレットを得た。
【0031】
得られたペレットをダイナミックTGで測定したところ0.15質量%の質量減少を検知した。また、このラクトン環含有重合体は質量平均分子量が147,000、メルトフローレートが11.0g/10min、ガラス転移温度が130℃、また270℃、せん断速度100(/s)における粘度は470Pa・sであった。
【0032】
〔実施例1〕
φ50mm、L/D=32を有するフルフライト型スクリューの圧縮部(可塑化ゾーン)に副フライトを有するバリヤタイプの単軸押出し機を用い、製造例で得られた耐熱アクリル樹脂ペレット90部、AS樹脂(旭化成ケミカルズ社製スタイラックAS783)10部をシリンダー設定温度280℃にて71kg/hの処理速度で溶融押出しをおこない、ペレット(1A)を作成した。
この時、吐出出口で計測された樹脂温度は281℃であり、押出し機の出力は15kwであるから、単位時間あたりの動力は0.21kw・h/kgとなる。得られたペレット(1A)のMFRは14、MMAの残揮量は440ppm、射出成形により得られたディスクのYI値は5.0であった。結果を表1に、得られたペレットの評価結果を表2に示す。
【0033】
〔比較例1〕
フルフライト型スクリューを用いた以外は実施例1と同様に行ないペレット(1B)を作成した。結果を表1に、得られたペレットの評価結果を表2に示す。
【0034】
〔実施例2〕
フルフライト型の第1ステージ、ダルメージ構造のミキシング部を有する第2ステージ、緩圧縮部にベント口を有するフルフライト型の第3ステージからなるφ50mm、L/D=32の単軸押出し機を用い、製造例で得られた耐熱アクリル樹脂ペレット90部、AS樹脂(旭化成ケミカルズ社製スタイラックAS783)10部をシリンダー設定温度280℃、ベント口から200hPa(150mmHg)にて吸引をおこないながら実施例1と同様に行ないペレット(2A)を作成した。結果を表1に、得られたペレットの評価結果を表2に示す。
【0035】
〔実施例3〕
フルフライト型の第1ステージ、多条フライト構造のミキシング部を有する第2ステージ、緩圧縮部にベント口を有するフルフライト型の第3ステージからなるφ50mm、L/D=36の単軸押出し機を用い、製造例で得られた耐熱アクリル樹脂ペレット90部、AS樹脂(旭化成ケミカルズ社製スタイラックAS783)10部をシリンダー設定温度280℃、ベント口から200hPa(150mmHg)にて吸引をおこないながら溶融押出しをおこない、ペレット(3A)を作成した。結果を表1に、得られたペレットの評価結果を表2に示す。
【0036】
〔比較例2〕
フルフライト型の第1ステージ、緩圧縮部にベント口を有するフルフライト型の第2ステージからなるφ50mm、L/D=36の単軸押出し機を用い、製造例で得られた耐熱アクリル樹脂ペレット90部、AS樹脂(旭化成ケミカルズ社製スタイラックAS783)10部をシリンダー設定温度280℃、ベント口から200hPa(150mmHg)にて吸引をおこないながら実施例3と同様に行ないペレット(3B)を作成した。結果を表1に、得られたペレットの評価結果を表2に示す。
【0037】
【表1】

【0038】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス転移温度が120℃以上かつ、剪断速度100(/s)で270℃での樹脂粘度が250Pa・s以上の耐熱アクリル樹脂の可塑化方法で、単軸押出し機を用い、下記の一般式(1)を満たすような特殊スクリューを用いて押出し溶融する樹脂の可塑化方法。
a≦0.97×b (1)
(ここで、同一シリンダー温度、同一吐出量におけるaは特殊スクリューを用いて押出した際の単位時間あたりの動力、bはフルフライト式のスクリューを用いて押し出した際の単位時間あたりの動力を表す)
【請求項2】
ガラス転移温度が120℃以上かつ、剪断速度100(/s)で270℃での樹脂粘度が250Pa・s以上の耐熱アクリル樹脂の可塑化方法で、単軸押出し機を用い、下記の一般式(2)を満たすような特殊スクリューを用いて押出し溶融する樹脂の可塑化方法。
c≦d−3 (2)
(ここで、同一シリンダー温度、同一吐出量におけるcは特殊スクリューを用いて押出した際の樹脂温度、dはフルフライト式のスクリューを用いて押し出した際の樹脂温度を表す)
【請求項3】
押出し機が1個以上の開放ベント部を有し、減圧状態で発生する分解ガスを吸引する請求項1または請求項2に記載の可塑化方法。
【請求項4】
耐熱アクリル樹脂が、ラクトン環構造を有する重合体である請求項1から3に記載の可塑化方法。

【公開番号】特開2007−76323(P2007−76323A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−270528(P2005−270528)
【出願日】平成17年9月16日(2005.9.16)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】