説明

耐熱絶縁紙及びその製造方法

【課題】 耐熱絶縁性、平滑性、耐水性、耐絶縁油性に優れ、電気自動車や高電圧送電用トランスなどに用いられる安価な電気絶縁紙を提供する。
【解決手段】 複数の層から形成された絶縁紙であって、少なくとも一つの外層はガラス転移温度が200℃以上のポリアミドイミド樹脂層であることを特徴とする耐熱絶縁紙に関する。好ましくはガラス転移温度が200℃以上のポリアミドイミド樹脂層以外がポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、芳香族ポリアミド、芳香族ポリイミド及び上記ポリアミドイミド以外のポリアミドイミドからなる群のうち少なくとも1種以上のフィルム又は不織布であることを特徴とする上記の耐熱絶縁紙に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は新規な耐熱絶縁紙に関する。更に詳しくは、耐熱性のポリアミドイミド樹脂を外層に用いた複層構造を有し、高温下でも優れた電気絶縁性を示し、耐水性、表面平滑性の優れた耐熱絶縁紙に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、絶縁紙にはセルロース系や芳香族ポリアミドであるアラミド系不織布やポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートフィルムなどが使われてきた。特に耐熱用途ではアラミド系の不織布やポリエチレンナフタレートフィルムが使われてきたが、アラミド系不織布は吸水性や表面平滑性の点で、ポリエチレンナフタレートフィルムでは耐熱性が不十分な場合があった。これらの改良として、ポリエチレンテレフタレートフィルムやポリエチレンナフタレートフィルムの表裏にアラミド不織布を張り合わせた材料も市販されているようだが、吸水性や表面平滑性は改良されていない。また、無機または有機繊維で強化されたプラスチック基材にポリエチレンテレフタレートなどの絶縁材料を積層した複合絶縁紙も提案されているが、本質的な耐熱性改良には至っておらずカールなどの問題も懸念される(例えば特許文献1参照)。更にはポリイミド繊維からなる不織布も検討されているが、不織布系では厚み斑や表面平滑性が悪く、価格が高いという問題がある。(例えば特許文献2参照)特に高電圧送電に用いられる絶縁紙においては、表面の毛羽や厚み斑は局所的絶縁破壊を起こす可能性がある。
本発明の目的は、高電圧の用途にも対応できる平滑で表面の毛羽が少なく、耐水性、耐熱性の電気絶縁紙を安価に提供することにある。
【0003】
【特許文献1】特開2004−146093号公報
【特許文献2】特開2003−96698号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、耐熱絶縁性、平滑性、耐水性、耐絶縁油性に優れ、電気自動車や高電圧送電用トランスなどに用いられる安価な電気絶縁紙を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは上記課題に鑑み鋭意検討した結果、本発明に到達した。すなわち、本発明は以下の耐熱絶縁紙及びその製造方法に関する。
【0006】
(1)複数の層から形成された絶縁紙であって、少なくとも一つの外層はガラス転移温度が200℃以上のポリアミドイミド樹脂層であることを特徴とする耐熱絶縁紙。
【0007】
(2)ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、芳香族ポリアミド、芳香族ポリイミド並びにポリアミドイミドからなるフィルム又は不織布の片面又は両面に、ガラス転移温度が200℃以上のポリアミドイミド樹脂溶液を塗布又は含浸した後、乾燥することを特徴とする耐熱絶縁紙の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明はガラス転移温度が200℃以上のポリアミドイミド樹脂を外層に用いて複層構造にすることによって耐熱絶縁性、機械的強度、耐水性、耐絶縁油性、表面平滑性に優れた絶縁紙を提供する。本発明の耐熱絶縁紙は自動車や高電圧送電用トランスなどの絶縁紙を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明は従来用いられてきた絶縁紙の片面または両面に耐熱性のポリアミドイミド樹脂層を形成させることが大きな特徴である。
この場合のポリアミドイミド樹脂としては耐熱性が高いことが重要であり、その目安としてガラス転移温度が200℃以上、好ましくは250℃以上必要である。ガラス転移温度が200℃以下では、高温で長時間使用した場合熱収縮や寸法変化などにより樹脂が劣化して機械的強度や絶縁性が低下するからである。ガラス転移温度の上限は特に限定されないが、ワニス製造安定性等の観点から400℃以下であることが好ましい。
【0010】
一般に、ポリアミドイミド樹脂はトリメリット酸無水物とジイソシアネートまたはトリメリット酸クロリドとジアミンとから非プロトン性極性溶剤中で加熱、攪拌することによって合成される。この場合、重合のしやすさやコストの点からトリメリット酸無水物とジイソシアネートから合成する方法が有利である。本発明明細書ではアミン成分については対応するジイソシアネート成分として記載するが、当然のことながらジイソシアネート化合物には対応するジアミン化合物を包含する。
【0011】
本発明に用いるガラス転移温度が200℃以上のポリアミドイミド樹脂の製造に用いられる酸成分としては上記のトリメリット酸及びこれの無水物の他にピロメリット酸、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ビフェニルスルホンテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸、エチレングリコールビスアンヒドロトリメリテート、プロピレングリコールビスアンヒドロトリメリテート等のテトラカルボン酸及びこれらの無水物、シュウ酸、アジピン酸、マロン酸、セバチン酸、アゼライン酸、ドデカンジカルボン酸、ジカルボキシポリブタジエン、ジカルボキシポリ(アクリロニトリルーブタジエン)、ジカルボキシポリ(スチレン−ブタジエン)等の脂肪族ジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジカルボン酸、ダイマー酸等の脂環族ジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸があげられこれらの中では反応性、耐熱性、溶解性などの点からトリメリット酸無水物が最も好ましく、その一部が3,3’、4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物に変わったものが寸法安定性の点から好ましい。3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を用いる場合、これらの共重合量は酸成分を100モル%としたときに、各々5〜40モル%である事が好ましい。共重合量が5モル%以下では共重合の効果が十分発揮されないし、40モル%以上ではN−メチル−2−ピロリドンやN,N’−ジメチルアセトアミドなどの重合溶剤に溶解しにくくなるためである。
【0012】
本発明に用いられるガラス転移温度が200℃以上のポリアミドイミド樹脂の製造に用いられるジイソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ジイソシアネートジフェニル、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、キシリレンジジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、1,8−ナフタレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネートが挙げられ、これらの中では耐熱性、機械的特性、溶解性などから4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ジイソシアネートジフェニル、1,5−ナフタレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等が好ましい。とりわけ寸法安定性の点からは3,3’−ジメチル−4,4’−ジイソシアネートジフェニルと1,5−ナフタレンジイソシアネートが好ましい。これらの成分は全ジアミン成分を100モル%としたときに、各々20モル%以上共重合されていることが好ましく、40モル%以上がより好ましい。上限は100モル%であっても良い。
【0013】
本発明に用いるガラス転移温度が200℃以上のポリアミドイミド樹脂はN,N’−ジメチルアセトアミドやN−メチル−2−ピロリドン,N,N’−ジメチルホルムアミド、γ−ブチロラクトン等の極性溶剤中、60〜200℃に加熱しながら攪拌することで容易に製造する事ができる。該ポリアミドイミド樹脂の分子量は対数粘度で0.3dl/g以上、好ましくは0.5dl/g以上、更に好ましくは0.7dl/g以上である。対数粘度が0.3dl/g以下ではポリアミドイミド樹脂の塗膜が脆くなり高温、長期間使用中の耐熱性や機械的強度が低下する。対数粘度の上限は特にはないが、作業性などの点から2.0dl/g以下が好ましい。これらの対数粘度は酸成分とジイソシアネート成分の仕込みモル比を調節する事が制御でき、その範囲は酸成分/ジイソシアネート成分が0.7〜1.2が好ましい。
この場合、必要に応じてトリエチルアミン、ジエチレントリアミン、ジアザビシクロウンデセン等の有機アミン化合物やフッ化カリウム、フッ化ナトリウム、フッ化セシウム、ナトリウムメトキシド等の金属化合物を触媒に用いることが出来る。
【0014】
本発明の耐熱絶縁紙はガラス転移温度が200℃以上のポリアミドイミド樹脂と従来から用いられてきた絶縁紙との複合絶縁紙である。複合化することによって、ポリアミドイミド層を薄くすることが出来、且つポリアミドイミド特有の耐熱性や電気絶縁性、耐湿性、機械的強度が十分発揮でき、安価に製造できるからである。
本発明に用いることの出来る従来の絶縁紙は特に高耐熱である必要はなくポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのフィルムや不織布、セルロース系不織布、芳香族ポリアミドや芳香族ポリイミドのフィルムや不織布などが用いられる。これらの中で、平滑性や毛羽のてんから不織布よりはフィルムのほうが好ましく、なかでもポリエチレンナフタレートが価格や加工性から好ましい。従って本発明において絶縁紙とは必ずしも紙の層を必要とせず、電気絶縁の目的で使用する複合フィルムでも良い。
【0015】
本発明の複合耐熱絶縁紙の層構成は外層にガラス転移温度が200℃以上のポリアミドイミド樹脂層を設ける以外に特に制限はなく、2層以上であればよい。但し、ポリアミドイミドの特性を十分発揮させるには両外層がポリアミドイミドからなる3層構造が好ましい。この場合、ガラス転移温度が200℃以上のポリアミドイミド樹脂層の厚みは3〜100μm、好ましくは5〜50μmである。ポリアミドイミド樹脂層の厚みが3μm以下ではポリアミドイミド樹脂の特性が発揮されないことがあり、100μm以上では塗布、乾燥の作業性が悪くなる恐れがある。
【0016】
本発明の複合耐熱絶縁紙の製造に制限はないが、以下の方法が挙げられる。
(1)ガラス転移温度が200℃以上のポリアミドイミドのフィルムと従来絶縁紙のフィルムまたは不織布を、接着剤を介して或いは直接加熱圧着させる。
(2)絶縁紙のフィルムまたは不織布にガラス転移温度が200℃以上のポリアミドイミド樹脂溶液を塗布、または含浸させた後、乾燥する。
これらの中では、加工の容易さ、コストの点から(2)の方法が好ましい。
この場合、ガラス転移温度が200℃以上のポリアミドイミド樹脂溶液には耐熱絶縁紙としての特性を損なわない範囲で着色剤、分散剤、無機フィラー、レベリング剤、消泡剤、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン等の他樹脂、シリコーン系離型剤、架橋剤等を配合することができる。架橋剤としては2官能以上のエポキシ樹脂、メラミン樹脂、イソシアネート化合物が挙げられる。
【0017】
本発明の絶縁紙はコンデンサー、ケーブル、コイル、トランスの用途に用いることが出来る。従って本発明の耐熱絶縁紙を用いることにより高温絶縁性、機械的強度、耐水、耐絶縁油性に優れたコンデンサー、ケーブル、コイル、トランスを製造することが可能となる。
【実施例】
【0018】
以下実施例を示して具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例よって何ら制限されるものではない。尚、実施例中の測定値は以下の方法で測定した値である。
1.対数粘度
ポリマー0.5gを100mlのNMP(N−メチル−2−ピロリドン)に溶解した溶液を25℃でウベローデ粘度管を用いて測定した。
2.耐熱性
4cm四方のサンプルを5cm四方のガラス板2枚の間に挟み、4辺をクリップで固定した後、200℃のオーブン中に1時間静置した後の面積収縮率を測定して以下の基準で判定した。
○:収縮率が5%以下
×:収縮率が5%以上
3.絶縁破壊電圧
ASTM D149に記載の方法に従って測定した。
油中の試験片の厚み方向に、60Hzの電圧を0.5kV/秒の速度で印加したときの破壊電圧を読み取った。単位はkVである。
4.表面平滑性
絶縁紙表面を目視で表面凹凸と毛羽の状態を観察して以下の基準で判定した。
○:表面が平滑で毛羽が全く見られない。
△:表面に凹凸は見られるが毛羽が見られない。
×:毛羽が多数見られる。
5.吸水率
各絶縁紙5cm×5cmのサンプルを25℃のイオン交換水中に24時間浸漬して、表面の水滴を十分ふき取った後電子天秤で精秤する。(W1)次いで、同じサンプル を120℃の熱風乾燥機中で1時間乾燥させ、乾燥デシケータ中に30分以上静置した後、再度精秤する。(W0)吸水率は次式によって求めた。
吸水率(%)=100×(W1−W0)/W1
単位は%である。
6.ガラス転移温度
ポリアミドイミド樹脂溶液を100μmポリエステルフィルム上に膜厚が約30μmとなるように塗布、100℃で10分乾燥した後ポリエステルフィルから剥離して金枠に固定して、更に250℃で1時間乾燥したフィルムをアイテイ計測制御社製動的粘弾性測定装置を用い、昇温速度5℃/分、周波数110Hzの条件で測定した損失弾性率の変局点をガラス転移温度とした。
単位は℃である。
【0019】
(ポリアミドイミド樹脂Aの合成)
冷却管と窒素ガス導入口のついた4ツ口フラスコにトリメリット酸無水物(TMA)0.98モルとジフェニルメタン4,4’−ジイソシアネート(MDI)1モルを固形分濃度が20%となるようにN−メチル−2−ピロリドン(NMP)と共に仕込み、攪拌しながら120℃に昇温して約3時間反応させた。このポリアミドイミド樹脂の対数粘度は0.65dl/g、ガラス転移温度は280℃であった。
【0020】
(ポリアミドイミド樹脂Bの合成)
実施例1と同じ装置を用いて、TMA0.99モル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジイソシアネートビフェニル(TODI)0.8モル、2,4−トリレンジイソシアネート(TDI)0.2モルを固形分濃度が20%となるようにNMPと共に仕込み、攪拌しながら90℃で約1時間反応させた。得られたポリアミドイミド樹脂の対数粘度は0.86dl/g、ガラス転移温度は310℃であった。
【0021】
(ポリアミドイミド樹脂Cの合成)
冷却管と窒素ガス導入口のついた4ツ口フラスコにTMA0.85モル、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物0.15モル、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物0.1モルとTODIを1モル、ジアザビシクロウンデセン0.01モルを固形分濃度が15%となるようにNMPと共に仕込み、攪拌しながら80℃に昇温して約2時間反応させた。得られたポリアミドイミド樹脂の対数粘度は0.78dl/g、ガラス転移温度は330℃であった。
【0022】
(ポリアミドイミド樹脂Dの合成)
冷却管と窒素導入口のついた4ツ口フラスコにTMA0.7モル、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物0.30モル、1,5−ナフタレンジイソシアネート1モルとジアザビシクロウンデセン0.01モルを固形分濃度が15%となるようにN−メチル−2−ピロリドンとともに仕込み、80℃で約2時間反応させた。得られたポリアミドイミド樹脂の対数粘度は0.85dl/g、ガラス転移温度は375℃であった。
【0023】
(ポリアミドイミド樹脂Eの合成)
冷却管と窒素導入口のついた4ツ口フラスコにTMA0.6モル、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物0.3モル、ビフェニルテトラカルボン酸無水物0.1モル、1,5−ナフタレンジイソシアネート0.9モル、トリレンジイソシアネート0.1モル、ジアザビシクロウンデセン0.01モルを固形分濃度が15%となるようにN−メチル−2−ピロリドンとともに仕込み、80℃で約2時間反応させた。このポリアミドイミド樹脂の対数粘度は0.88dl/g、ガラス転移温度は367℃であった。
【0024】
(耐熱絶縁紙の実施例−1、2、3、4、5)
上記で合成したポリアミドイミド樹脂A、B、C、D、E各溶液をポリエチレンナフタレートフィルム(帝人製188μm)の片面に膜厚が10μmとなるように塗布後、100℃で10分乾燥させ、更にその裏面に膜厚が10μmとなるように塗布、100℃で10分乾燥させた後、150℃で30分熱処理を行った。得られた各耐熱絶縁紙の特性を表1に示す。
【0025】
(耐熱絶縁紙の実施例−6)
ポリアミドイミド樹脂Aを用いて、基材をポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡製188μm)として耐熱絶縁紙の製造例1と同じ条件で塗布、乾燥、熱処理を行った。得られた耐熱絶縁紙の特性を表1に示す。
【0026】
(耐熱絶縁紙の実施例−7)
ポリアミドイミド樹脂A溶液にアラミド不織布(ノーメックス:5mil)を含浸、絞りロールで絞って100g/m2付着させ、100℃で10分乾燥させた後150℃のカレンダーロールで圧着し、更に200℃で30分乾燥させた。得られた耐熱絶縁紙の特性を表1に示す。
【0027】
(比較例−1、2、3)
ポリアミドイミド樹脂を塗布または含浸させていないポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルムおよびアラミド不織布の特性を表1に示す。
【0028】
(比較例4)
バイロマックスHR85ET(東洋紡製ポリアミドイミド樹脂溶液:ガラス転移温度85℃)を用いて実施例1と同じ方法で複合絶縁紙を作成した。得られた絶縁紙の特性を表1に示す。
【表1】

表中の略号は以下の通りである。
PAI:ポリアミドイミド
PET:ポリエチレンテレフタレート
PEN:ポリエチレンナフタレート
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明はガラス転移温度が200℃以上のポリアミドイミド樹脂層を外層に用いることで、高温絶縁性、機械的強度、耐水、耐絶縁油性に優れた耐熱絶縁紙に関し、高電圧伝送トランスや自動車などに有用な耐熱絶縁紙を提供できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の層から形成された絶縁紙であって、少なくとも一つの外層はガラス転移温度が200℃以上のポリアミドイミド樹脂層であることを特徴とする耐熱絶縁紙。
【請求項2】
ガラス転移温度が200℃以上のポリアミドイミド樹脂層以外がポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、芳香族ポリアミド、芳香族ポリイミド及び上記ポリアミドイミド以外のポリアミドイミドからなる群のうち少なくとも1種以上のフィルム又は不織布であることを特徴とする請求項1に記載の耐熱絶縁紙。
【請求項3】
ポリエチレンナフタレートフィルムの両面に、ガラス転移温度が200℃以上のポリアミドイミド樹脂層が形成された3層構造の耐熱絶縁紙。
【請求項4】
ガラス転移温度が200℃以上のポリアミドイミド樹脂が、ジイソシアネート成分として3,3’−ジメチル−4,4’−ジイソシアネートビフェニル及び/又は1,5−ナフタレンジイソシアネートを含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の耐熱絶縁紙。
【請求項5】
ガラス転移温度が200℃以上のポリアミドイミド樹脂が、酸成分として3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物及び/または3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の耐熱絶縁紙。
【請求項6】
ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、芳香族ポリアミド、芳香族ポリイミド並びにポリアミドイミドからなるフィルム又は不織布の片面又は両面に、ガラス転移温度が200℃以上のポリアミドイミド樹脂溶液を塗布又は含浸した後、乾燥することを特徴とする耐熱絶縁紙の製造方法。

【公開番号】特開2007−130898(P2007−130898A)
【公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−326461(P2005−326461)
【出願日】平成17年11月10日(2005.11.10)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】