説明

耐衝撃性に優れたエチレン共重合体

本発明は耐衝撃性に優れたエチレン共重合体に関し、具体的には、落球衝撃強度F値または高速耐衝撃破断エネルギーE及びビカット軟化点との相関関係を満足するエチレン共重合体に関し、フィルム、射出、コンパウンド、シート、中空成形などに適用される衝撃性能が向上されたエチレン共重合体に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエチレン共重合体に関し、具体的には、製品の固有特性である軟化点変化により向上された耐衝撃性との相関関係を示すエチレン共重合体及びその応用に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレン樹脂は分子量及び分子量分布によって機械的特性が影響を受けて、これによりその適用分野も変わる。一般的に、ポリエチレン樹脂の分子量が高いほど機械的特性はより良好になるが、高分子量のポリエチレンは流動性が低いため、加工工程に困難がある。従って、高い剪断率で早い変形が必要な圧出または射出成形においては、深刻な欠点となる可能性がある。
【0003】
従って、ポリエチレン製品の流動的特性を維持しながらも、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテンなどのα−オレフィンとの共重合により衝撃強度及びクリープ特性などの機械的特性を向上させる方法に対する研究が行われてきた。特に、市場で要求される製品は耐衝撃性に対するニーズが高く、一般的に耐衝撃性は、フィルムや射出などの加工方法によって落下衝撃強度及び高速衝撃強度で特性を評価する。このような耐衝撃性などの機械的強度を向上させるためにα−オレフィンとの共重合を行う場合、比較的低い密度の共重合体が製造されるため、剛性が低下するという問題が発生する。また、軽量化、薄膜化のための製品において、製品を曲げたり積層する時、剛性の低下により変形されてしまうという問題がある。
【0004】
これにより、日本特許公開第2000−72819号において、エチレン単独重合体、または、エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンとからなりα−オレフィン含有量が10重量%以下である(1)極限粘度[η]が2〜6dl/g、(2)密度が0.945〜0.970g/cm、(3)190℃におけるゼロシアー粘度η0が2×107〜3×108poise、(4)溶融張力(MT)と21.6kg荷重のメルトインデックス(HLMI)の関係が、MT≧−12.4logHLMI+20.5、(5)−30℃で測定した高速衝撃強度(HRI−IZOD)とHLMIの関係が、HRI−IZOD≧−logHLMI+1.15であるエチレン系重合体で、中空成形によって製造される燃料タンク用に限定されるエチレン系重合体が提案された。
【0005】
また、アメリカ公開特許第2006−0235147号において、優れた光学特性と低い抽出物含量及び落球衝撃強度と高速衝撃強度に優れた0.914〜0.945の密度を有するポリエチレンが、食品包装フィルム、バッグ、ポーチなどの用途として提案された。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は加工性に優れ、高い剛性により優れた耐衝撃性を有するエチレン共重合体を提供することを目的とする。
【0007】
また、本発明は耐衝撃性に優れたエチレン共重合体を製造するための加工条件を確立するために、加工条件を調節する要因として樹脂の溶融が始まる軟化点などの樹脂自体の結晶化程度に依存するようになるが、このような軟化点変化により向上された耐衝撃性との相関関係を示すエチレン共重合体及びその応用を提供することをまた他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の目的を果たすための本発明は、0.900〜0.940g/cmの密度、数学式1及び数学式2で表されたビカット(Vicat)軟化点との関係を満足する落球衝撃強度F値を有し、エチレンと(C3〜C18)のα−オレフィンコモノマーが重合されたエチレン共重合体を提供する。
【0009】
【数1】

【0010】
【数2】

【0011】
前記VはASTM D 1525によって測定されたビカット軟化点であり、Fは落球衝撃強度である。
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0013】
前記数学式1は、高い剛性により優れた耐衝撃性を有するエチレン共重合体の落球衝撃強度と軟化点との関係を数式で示したものである。落球衝撃強度は軟化点などの樹脂自体の結晶化程度に依存するようになるが、通常的なジグラ−ナッタ触媒を利用して製造したエチレン共重合体では高剛性の耐衝撃性の製品を製造することができず、従って、前記数学式1を満足することができなくなる。数学式1を満足する本発明のエチレン共重合体は軽量化及び薄膜化を要求する製品への適用が可能である。
【0014】
本発明はエチレンと(C3〜C18)のα−オレフィンコモノマーが重合されたエチレン共重合体を提供する。前記(C3〜C18)のα−オレフィンコモノマーは、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン及びこれらの混合物から選択されることができる。前記α−オレフィンコモノマーを用いることにより、エチレン単独重合体に流動性を与えながらも高分子量のエチレン共重合体を製造するようになり、耐衝撃性などの機械的性質を向上させる役割をする。本発明のエチレン共重合体100重量%に含まれるα−オレフィンの含量は、1〜40重量%、好ましくは1〜30重量%であり、さらに好ましくは1〜20重量%で用いることができる。前記α−オレフィンの含量が1重量%未満の場合、エチレン重合体の剛性は増加するが耐衝撃性が低下するため、耐衝撃性を要するフィルム、射出、コンパウンド、シート、中空成形などへの利用が困難であり、20重量%を超過する場合、エチレン重合体の耐衝撃性は増加するが剛性が低下するため、フィルム、射出、コンパウンド、シート、 中空成形などの成形体への単独適用が困難になる。
【0015】
また、本発明は密度が0.900〜0.940g/cm、好ましくは0.910〜0.930g/cmのエチレン共重合体を提供する。前記密度はエチレン共重合体の耐衝撃性を含む機械的強度を決定する要因である。上述の密度範囲を有するエチレン共重合体は、耐衝撃性を要するフィルム、射出、コンパウンド、シート、中空成形などに適用することにおいて有用である。
【0016】
また、本発明は数学式1及び数学式2で表されたビカット軟化点との関係を満足する落球衝撃強度F値を有するエチレン共重合体を提供する。
【0017】
【数1】

【0018】
【数2】

【0019】
前記VはASTM D 1525によって測定されたビカット軟化点であり、Fは落球衝撃強度である。
【0020】
また、前記数学式1、数学式2及び下記数学式3を満足するエチレン共重合体を提供する。
【0021】
【数3】

【0022】
前記VはASTM D 1525によって測定されたビカット軟化点であり、Fは落球衝撃強度である。
【0023】
さらに好ましくは、前記エチレン共重合体は前記数学式1から数学式3及び下記数学式4を満足するエチレン共重合体を提供する。
【0024】
【数4】

【0025】
前記VはASTM D 1525によって測定されたビカット軟化点であり、Fは落球衝撃強度である。
【0026】
前記落球衝撃強度F値が前記範囲を外れると、耐衝撃性が低く、製品に適用するための十分な機械的強度を有しないため、多様な用途への応用が制限されるようになる。
【0027】
また、本発明の耐衝撃性に優れたエチレン共重合体は、耐衝撃破断エネルギーの値Eが下記数学式5及び数学式6を満足するエチレン共重合体を提供する。
【0028】
【数5】

【0029】
【数6】

【0030】
前記VはASTM D 1525によって測定されたビカット軟化点であり、Eは高速耐衝撃破断エネルギー値である。
【0031】
前記高速耐衝撃破断エネルギー値Eが前記範囲を外れると、本発明のエチレン共重合体の耐衝撃性が低くなることにより、機械的性質または剛性が低下する。
【0032】
従って、本発明の前記落球衝撃強度Fまたは高速耐衝撃破断エネルギー値Eは、エチレン共重合体の軟化点によって左右される要因であり、本発明で製造されるエチレン共重合体の軟化点を調節することにより、優れた耐衝撃性を有するエチレン共重合体の製造が可能である。
【0033】
また、本発明はヘイズ(Haze)が2〜16であるエチレン共重合体を提供する。前記ヘイズはフィルムや成形体への適用時の製品特性の決定に、また他の重要な要因となる。通常的なジグラ−ナッタ触媒で製造した高剛性のエチレン共重合体は、ヘイズ値が高く、可視光線の透過度が低くて、透明な製品を製造することが困難である。本発明のエチレン共重合体は、ヘイズ値が低く、透明性が高いため、高透明性、高い剛性の優れた耐衝撃性を有する製品の適用が可能である。
【0034】
本発明の前記エチレン共重合体は、揮発分成分に基づいて決定された抽出物含量は無いかあるいは3.0重量%以下であることが好ましく、0.1〜2.0重量%であるエチレン共重合体を提供する。前記揮発分測定は、温度上昇溶離分別(Temperature Rising Elution Fractionation)分析法によって得られたデータから測定されることができ、35℃の温度で10分間溶出されて発生する揮発分(Soluble Fraction)ピークの全体結晶化ピークに対する分率で測定可能である。前記抽出物の含量は、共重合後に抽出されて残留された物質がエチレン共重合体の耐衝撃性を含む物性を低下させる要因となるため、3.0重量%以下で含まれるように製造することが好ましい。
【0035】
本発明は前記の条件を満足するエチレン共重合体がフィルムに適用時、単層に含まれることができ、多層フィルムの一層または複数の層に含まれることができる。
【0036】
また、フィルムの他にも、本発明のエチレン共重合体が適用されることができる分野であれば応用が可能であり、本発明のエチレン共重合体を含む射出製品や、これを応用したコンパウンド製品、シート(Sheet)、中空成形製品にも適用が可能であり、用途においてはこれに限定されない。
【0037】
以下、本発明のエチレン共重合体の製造方法の例を説明するが、以下の製造方法に限定されるのではない。
【0038】
1.用いられた触媒に対する詳細な説明
【0039】
本発明で用いられた触媒は、下記化学式1の遷移金属触媒及び助触媒が含まれた触媒組成物である。前記助触媒には、ホウ素化合物及びアルミニウム化合物、またはこれらの混合物から選択されることができる。
【0040】
まず、下記化学式1は遷移金属の周りにシクロペンタジエン誘導体及びオルト(ortho−)位にアリール誘導体が置換されたアリールオキサイドリガンドを少なくとも一つ以上含み、リガンドは互いに架橋されない4族遷移金属触媒である。
【0041】
[化学式1]

【0042】
前記式において、Mは周期律表上の4族の遷移金属であり;
【0043】
Cpは中心金属Mとη−結合することができるシクロペンタジエニル環またはシクロペンタジエニル環を含む融合環であり、前記シクロペンタジエニル環またはシクロペンタジエニル環を含む融合環は、(C1−C20)アルキル、(C6−C30)アリール、(C2−C20)アルケニル、及び(C6−C30)アル(C1−C20)アルキルから選択される一つ以上がさらに置換されることができ;
【0044】
乃至Rは、互いに独立的に水素原子、ハロゲン原子、(C1−C20)アルキル、(C3−C20)シクロアルキル、(C6−C30)アリール、(C6−C30)アル(C1−C10)アルキル、(C1−C20)アルコキシ、(C3−C20)アルキルシロキシ、(C6−C30)アリールシロキシ、(C1−C20)アルキルアミノ、(C6−C30)アリールアミノ、(C1−C20)アルキルチオ、(C6−C30)アリールチオまたはニトロ、または前記R乃至Rは隣接した置換体と融合環を含むかもしくは含まない(C3−C12)アルキレンまたは(C3−C12)アルケニレンで連結されて、脂環族環及び単環または多環の芳香族環を形成することができ;
【0045】
Arは(C6−C30)アリールまたはN、O及びSから選択された一つ以上を含む(C3−C30)ヘテロアリールであり;
【0046】
及びXは、互いに独立的にハロゲン原子、(C1−C20)アルキル、(C3−C20)シクロアルキル、(C6−C30)アル(C1−C20)アルキル、(C1−C20)アルコキシ、(C3−C20)アルキルシロキシ、(C6−C30)アリールシロキシ、(C1−C20)アルキルアミノ、(C6−C30)アリールアミノ、(C1−C20)アルキルチオ、(C6−C30)アリールチオまたは
【化1】

であり;
【0047】
11乃至R15は、互いに独立的に水素原子、ハロゲン原子、(C1−C20)アルキル、(C3−C20)シクロアルキル、(C6−C30)アリール、(C6−C30)アル(C1−C10)アルキル、(C1−C20)アルコキシ、(C3−C20)アルキルシロキシ、(C6−C30)アリールシロキシ、(C1−C20)アルキルアミノ、(C6−C30)アリールアミノ、(C1−C20)アルキルチオ、(C6−C30)アリールチオまたはニトロ、または前記R11乃至R15は隣接した置換体と融合環を含むかもしくは含まない(C3−C12)アルキレンまたは(C3−C12)アルケニレンで連結されて、脂環族環及び単環または多環の芳香族環を形成することができ;
【0048】
前記R乃至R、R11乃至R15、X及びXのアルキル、アリール、シクロアルキル、アラルキル、アルコキシ、アルキルシロキシ、アリールシロキシ、アルキルアミノ、アリールアミノ、アルキルチオ、アリールチオ;R乃至RまたはR11乃至R15が隣接した置換体とアルキレンまたはアルケニレンで連結されて形成された環;及び前記ArとAr11のアリールまたはヘテロアリールはハロゲン原子、(C1−C20)アルキル、(C3−C20)シクロアルキル、(C6−C30)アリール、(C6−C30)アル(C1−C10)アルキル、(C1−C20)アルコキシ、(C3−C20)アルキルシロキシ、(C6−C30)アリールシロキシ、(C1−C20)アルキルアミノ、(C6−C30)アリールアミノ、(C1−C20)アルキルチオ、(C6−C30)アリールチオ、ニトロ及びヒドロキシから選択される一つ以上がさらに置換されることができる。
【0049】
一方、前記化学式1の遷移金属触媒は、オレフィン重合に用いられる活性触媒成分になるために、好ましくは、本発明による遷移金属化合物中のXリガンドを抽出して中心金属を陽イオン化させながら弱い結合力を有した反対イオン、即ち、陰イオンで作用することができるアルミニウム化合物またはホウ素化合物、またはこれらの混合物が助触媒として用いられる。この際、用いられる有機アルミニウム化合物は、反応溶媒内で触媒毒として作用する微量の極性物質を除去するためのものであるが、Xリガンドがハロゲンである場合には、アルキル化剤として作用することもできる。
【0050】
本発明における助触媒として用いられることができるホウ素化合物は、アメリカ特許第5、198、401号で開示されているように、下記化学式2、化学式3または化学式4で表示される化合物のうち選択されることができる。
【0051】
[化学式2]
B(R31
【0052】
[化学式3]
[R32[B(R31
【0053】
[化学式4]
[(R33ZH][B(R31
【0054】
前記化学式2乃至化学式4において、Bはホウ素原子;R31はフェニルであり、前記フェニルは、フッ素原子、フッ素原子によって置換もしくは非置換の(C1−C20)アルキル、またはフッ素原子によって置換もしくは非置換の(C1−C20)アルコキシから選択された3から5個の置換基にさらに置換されることができ;R32は(C5−C7)シクロアルキルラジカルまたは(C1−C20)アルキル(C6−C20)アリールラジカル、(C6−C30)アル(C1−C20)アルキルラジカル、例えばトリフェニルメチルラジカル;Zは窒素または燐原子;R33は(C1−C20)アルキルラジカルまたは窒素原子とともに2個の(C1−C4)アルキル基に置換されたアニリニウムラジカル;qは2または3の整数である。
【0055】
また、中心金属M:ホウ素原子のモル比は、好ましくは1:0.1〜50、より好ましくは1:0.5〜15である。
【0056】
本発明で用いられるアルミニウム化合物は、化学式5または化学式6のアルミノキサン化合物、化学式7の有機アルミニウム化合物、または化学式8または化学式9の有機アルミニウムハイドロカルビルオキサイド化合物が用いられることができる。
【0057】
[化学式5]
(−Al(R41)−O−)
【0058】
[化学式6]
(R41Al−(−O(R41)−)−(R41
【0059】
[化学式7]
(R42Al(E)3−r
【0060】
[化学式8]
(R43AlOR44
【0061】
[化学式9]
43Al(OR44
【0062】
前記化学式5乃至化学式9において、R41は線形または非線形の(C1−C20)アルキルであり、好ましくは、メチルまたはイソブチルであり、mとpは5から20の整数であり;R42、R43は(C1−C20)アルキル;Eは水素原子またはハロゲン原子;rは1から3の整数;R44は(C1−C20)アルキルまたは(C6−C30)アリールのうち選択されることができる。
【0063】
また、中心金属であるM:アルミニウム原子のモル比は、好ましくは1:1〜1:2、000、より好ましくは1:5〜1:1、000である。
【0064】
また、中心金属M:ホウ素原子:アルミニウム原子のモル比は、好ましくは1:0.1〜50:1〜1、000、より好ましくは1:0.5〜15;5〜500である。
【0065】
2.溶液重合工程
【0066】
本発明のエチレン重合工程は、少なくとも二つ以上の段階により重合が行われるため、二つ以上の反応器を要する。従って、前記段階が二つまたは三つの重合段階からなり、広い分子量分布を有するようにする。
【0067】
本発明は、(a)一つ以上の反応器で、前記化学式1に示す遷移金属触媒を含む触媒組成物の存在下で、エチレン及び一つ以上のC3−C18のα−オレフィンコモノマーを重合させて第1共重合体を製造する段階;及び(b)前記(a)段階で製造された第1共重合体を、前記(a)段階の触媒組成物と同一の触媒組成物の存在下で、前記(a)段階の反応温度より高い温度で前記エチレンまたはエチレン及び一つ以上のC3−C18のα−オレフィンを含む一つ以上の他の反応器中に通過させることにより、エチレン及びC3−C18のα−オレフィン共重合体組成物を含む高温の重合体を製造する段階;を含むエチレン共重合体の製造方法を提供する。
【0068】
また、本発明は、(a)一つ以上の反応器で、前記化学式1の遷移金属触媒を含む触媒組成物の存在下で、エチレン及び一つ以上のC3−C18のα−オレフィンコモノマーを重合させて第1共重合体を製造する段階;(b)一つ以上の他の反応器で、前記(a)段階の触媒組成物と同一の触媒組成物の存在下で、前記(a)段階の反応温度より高い温度で前記エチレンまたはエチレン及び一つ以上のC3−C18のα−オレフィンを反応させて第2共重合体を製造する段階;及び(c)前記第1共重合体を前記第2共重合体と混合する段階;を含むエチレン共重合体の製造方法を提供する。
【0069】
また、本発明は、反応温度が(a)段階は80〜210℃及び(b)段階は90〜220℃であり、各段階の圧力が20〜500atmであるエチレン共重合体が製造されることを特徴とする。
【0070】
(a)段階で、前記触媒または触媒組成物下で、80〜210℃、さらに好ましくは80〜150℃、圧力は20〜500atm、さらに好ましくは30〜200atmで重合される。前記反応温度が80℃未満の場合、反応物の析出や不十分な分散により反応が起きないため、重合物の生成が困難であり、210℃を超過すると、予め設計された分子量を有した重合体の製造が不可能になる。また、前記圧力が前記範囲を外れる場合にも、要求される分子量を有した重合体の製造が困難になる。
【0071】
その後、(b)段階で、前記(a)段階で用いられた同一の触媒または触媒組成物下で、90〜220℃、さらに好ましくは120〜200℃で前記(a)段階と同一の圧力下で、前記(a)段階で製造された重合体とともに重合される。前記温度が90℃未満の場合、重合物が析出される可能性があり、前記(a)段階と類似の重合体が製造されるため多段階の重合の効果がなく、220℃を超過すると、重合体の分子量が低すぎるようになり、物性が低下する恐れがある。また、前記圧力の場合にも前記(a)段階の理由と同一である。
【0072】
一方、前記(a)または(b)段階に投入されるエチレンの量、水素の量、転換率などの工程条件を相異なるようにして、均一分子量及び多峰密度分布を有するエチレン共重合体の物性を制御することを本発明の目的とする。特に、(a)段階での高分子量、低密度の重合体を予め設計された割合で製造し分子構造で結合分子(Tie Molecule)を最適化することにより、引張強度、衝撃強度などの最終樹脂物性を改善しようとし、(a)段階の後、(b)段階でも、同一の触媒または触媒組成物を用いて(a)段階よりさらに高い温度で重合し、(a)段階で製造された重合体と相異なる範囲の分子量と密度を有するエチレン共重合体が製造される。本発明の遷移金属触媒の特性上、その結果物が狭い分子量分布及び密度分布を表すが、多段階の反応によって生産者が求める広い分子量及び密度分布を有するように制御することができる。
【0073】
上述の多段階反応において、反応器の配列は直列または並列連結が可能である。
【0074】
図1は本発明の好ましい一実施例による直列反応器の概路図である。図1を参照すると、本発明の直列反応器は、1段階フィードポンプ11、1段階フィードクーラー12、1段階反応器フィードヒーター13、1段階低温反応器14、1段階低温反応器触媒フィード15、直列2段階高温反応器16、2段階高温反応器触媒フィード17、2段階反応器フィードポンプ18、2段階反応器フィードクーラー19、2段階反応器フィードヒーター20、2段階反応器フィード21及び水素フィード22が含まれる。
【0075】
従って、本発明の直列反応は、1段階反応器フィードポンプ11を介して触媒を除いた反応物を1段階反応器フィードクーラー12及び1段階反応器フィードヒーター13が備えられた1段階低温反応器14に投入して、1段階低温反応器触媒フィード15を介して触媒を投入し、2段階より低い温度で(a)段階を進行させる。前記(a)段階を経た重合物を2段階反応器フィードクーラー19及び2段階反応器フィードヒーター20が備えられた直列2段階高温反応器16に直接に投入し、2段階高温反応器触媒フィード17を介して触媒を添加した後、2段階反応器フィードポンプ18を介して2段階反応器フィード21に反応物を、また水素フィード22を介して水素を注入し、前記(a)段階でより高い温度で(b)段階の重合反応を進行させる。このような直列反応器の場合、1段階反応でのエチレン転換率及び触媒活性などを考慮して、全体的な反応器システムを設計及び制御しなければならない。
【0076】
図2は本発明の好ましい一実施例による並列反応器の概路図である。図2を参照すると、本発明の並列反応器は、低温反応器フィードポンプ31、高温反応器フィードポンプ32、低温反応器フィードクーラー33、低温反応器フィードヒーター34、高温反応器フィードクーラー35、高温反応器フィードヒーター36、低温反応器37、低温反応器触媒フィード38、高温反応器触媒フィード39、高温反応器40、インラインミキサー41、高温反応器フィード42及び水素フィード43が含まれる。
【0077】
従って、本発明の並列反応は、低温反応器フィードポンプ31を介して触媒を除いた反応物を低温反応器フィードクーラー33及び低温反応器フィードヒーター34によって温度調節される低温反応器37に投入し、低温反応器触媒フィード38を介して触媒を添加した後、(a)段階反応を進行させる。前記(a)段階とは別途に、高温反応器フィードポンプ32を介して触媒を除いた反応物を高温反応器フィード42を介して高温反応器フィードクーラー35及び高温反応器フィードヒーター36によって温度調節される高温反応器40に水素フィード43とともに投入して、高温反応器触媒フィード39を介して触媒を添加した後、前記(a)段階より高い温度で反応を進行させる。前記低温及び高温反応物をインラインミキサー41で混合して、均質の共重合体を製造する。このような並列反応器での反応の場合、均一な共重合体の物性を与えるために、各反応器からの溶液を均一に混合するためのインラインミキサーが用いられる。均質の共重合体を製造するために、インラインミキサーの他に、撹拌槽などの装置が用いられることができる。
【0078】
本発明の前記(a)及び(b)段階で、エチレン及び一つ以上のC3−C18のα−オレフィンコモノマーは、エチレン60〜99重量%及びα−オレフィンコモノマー1〜40重量%であることが好ましい。前記エチレンの含量が60重量%未満の場合、低いエチレンの含量によりエチレンの特性が発揮されないため、物性が低下するようになり、99重量%を超過すると共重合体の効果が低下する。
【0079】
また、前記(a)及び(b)段階で、前記C3−C18のα−オレフィンコモノマーは、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン及び1−ドデセンまたはこれらの混合物であり、このうちさらに好ましくは、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、または1−デセンである。
【0080】
また、前記(a)及び(b)段階で、重合に用いられる好ましい有機溶媒はC30−C20の炭化水素であり、その具体的な例としては、ブタン、イソブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、ノナン、デカン、ドデカン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレンなどが挙げられ、商業的に販売されている有機溶媒のうち、本工程に用いるに適する溶媒の例としては、イソパラフイン系列溶媒であるSK−ISOL系列溶媒が挙げられる。例えば、SK−ISOL E(SKエネルギー株式会社)はC8〜C12の脂肪族炭化水素溶剤であり、蒸溜範囲は117〜137℃である。
【0081】
本発明の製造方法により製造されたエチレン共重合体は、(a)段階で製造された重合体10〜70重量%及び(b)段階で製造された重合体30〜90重量%を含み、前記(a)段階で製造された重合体はMIが0.001〜2.0g/10minであり、密度が0.860〜0.925g/cmであり、前記(b)段階で製造された重合体はMIが0.1〜100.0g/10minであり、密度が0.900〜0.970g/cmであることを特徴とする。
【0082】
まず、前記(a)段階で製造された重合体は、10〜70重量%、さらに好ましくは20〜60重量%が含まれ、前記(a)段階で製造された重合体の含量が10重量%未満の場合、衝撃強度改善の効果がなく、70重量%を超過すると、フィルムに加工された時に透明度が顕著に低下するため、加工時に高いエネルギーが必要であり、生産性が低下する。
【0083】
また、(a)段階で製造された重合体の分子量は、ASTM D2839に基いたMI(溶融指数、Melt Index)測定法を用いてMIが0.001〜2.0g/10min、さらに好ましくは0.005〜1.0g/10minである。前記(a)段階で製造された重合体のMIが0.001g/10min未満の場合、重合体が堅すぎて加工性が低下する恐れがあり、2.0g/10minを超過すると、引張強度、衝撃強度などの全体的な物性に顕著な改善が表れない。また、(a)段階で生成される重合体の密度は0.860〜0.925g/cm、さらに好ましくは0.880〜0.915g/cmである。前記密度が0.860g/cm未満の場合、フィルムに製造時に物性が低くなりすぎる恐れがあり、0.925g/cmを超過すると、フィルムが堅すぎるようになる。前記(a)段階で製造される重合体は低い領域の密度範囲を有する樹脂が重合される。これは、高分子鎖で不均一な共重合体の分布を表すジグラ−ナッタ触媒とは異なって、本発明の単一活性点を有する遷移金属触媒を用いて高分子鎖で均一な共重合コモノマー分布を有する樹脂を合成して、最終的に製造される樹脂の物性を改善するためである。
【0084】
一方、前記(b)段階で製造された重合体は30〜90重量%、さらに好ましくは40〜80重量%が含まれる。前記(b)段階で製造された重合体の含量が30重量%未満の場合、前記(a)段階で製造された高分子量、低密度のエチレン共重合体によって最終樹脂の加工性及びフィルムの透明度が低下し、90重量%を超過すると、高い物性を提供する(a)段階で製造された重合体の含量が低くなるため、樹脂の耐環境性の低下及び衝撃強度、引張強度などの物性が低下する。
【0085】
また、(b)段階で製造された重合体の分子量は、ASTM D2839に基づいたMI(溶融指数、Melt Index)測定法を用いて、MIが0.1〜100.0g/10min、さらに好ましくは0.3〜50.0g/10minである。前記(b)段階で製造された重合体のMIが0.1g/10min未満の場合、前記(a)段階で製造された重合体と分子量範囲が重なるため、分子量分布が狭くて多段階反応の長所が発揮されなくなり、100g/10minを超過すると、低い分子量によって物性が低下する。
【0086】
また、(b)段階で生成される重合体の密度は0.900〜0.970g/cmであることが好ましい。前記密度が0.900g/cm未満の場合、前記(a)段階で製造された重合体の密度範囲と重なり、段階別重合の効果がなくなり、0.970g/cmを超過する場合、フィルムなどの用途に用いる時に、堅くなりすぎる問題点がある。従って、前記(a)段階で製造された重合体と前記(b)段階で製造された重合体の密度範囲は、樹脂の物性を最適化することができる密度範囲に調節しなければならない。
【0087】
その他に、本発明の方法によって製造されたエチレン共重合体は、密度が0.910〜0.940g/cmの直鎖状低密度ポリエチレン共重合体(LLDPE)であるエチレン共重合体、密度が0.900g/cm〜0.910g/cmの超低密度エチレン共重合体(VLDPEまたはULDPE)であるエチレン共重合体が含まれる。
【0088】
上述の製造方法によって製造されたエチレン共重合体は分子量分布指数が2.3〜30であることを特徴とする。
【0089】
本発明は、狭い分子量分布を特徴とする一般的な単一活性点触媒によるエチレン共重合体の加工性を改善するために、前記多段階の反応工程を用いて、少なくとも双峰分子量分布を有するように考案された。
【0090】
これにより、本発明の工程及び触媒によって製造されるエチレン共重合体の分子量分布指数(質量平均分子量を数平均分子量で分けた値)が2.3〜30になるように制御して、加工性及び物性を同時に向上させることができるようになる。
【0091】
従って、前記(a)及び(b)段階を経て製造されたエチレン共重合体は、分子量分布指数が2.3〜30であることが好ましい。前記分子量分布指数が2.3未満の場合、単一反応器及び単一活性点触媒を用いた場合と大きい差がなく、密度及び分子量分布の制御の効果がなくなり、加工性及び物性の改善効果が低下する問題点がある。
【0092】
本発明で前記(a)から(b)段階に投入されるエチル、C3−C18のα−オレフィンコモノマーは、反応器に投入される前、溶媒に溶解させる工程を経るようになる。この際、溶媒と混合して溶解させる前に、エチレン、コモノマー及び溶媒は精製工程を経て、触媒の毒になる可能性がある水分、酸素、一酸化炭素及びその他の金属不純物を除去するようになる。このような精製工程に用いられる物質は、該当分野に公知されたように、分子篩や活性化アルミニウム、またはシリカゲルなどを用いる。
【0093】
また、前記(a)から(b)段階に投入される原料は、投入される前に熱交換工程を経て冷却または加熱され、これによって反応器内の温度を制御するようになる。従って、反応器の温度制御は反応器壁を介した熱交換がない断熱(adiabatic)反応器工程であり、反応熱の制御は、反応器に流入される溶媒とモノマーの流れの温度を変化させて反応器内の温度を制御する。
【0094】
本発明では前記(b)段階の後、追加的にエチレン及びコモノマー、触媒、溶媒などが供給されることができ、これも熱交換工程を経て予め設計された温度に制御される。一般的に触媒は各段階に投入される時、他の原料とは独立的に供給されて、この際、溶媒と予め混合または溶解されて準備することが好ましい。
【0095】
ここで、重合体が2段階または多段階反応を経て製造される時、この段階の分子量及び密度は(b)段階の後に分析されたり、追加的な段階を経て製造された重合体の物性は(a)段階の後に樹脂をサンプリングすることにより分析されて、(b)段階の後に最終的に製造された重合体の分子量及び密度が分析されて、各段階別に重合体の密度、分子量などが計算される。
【0096】
また、物性測定は、単一反応器で、同一の反応温度及び圧力、溶媒、反応物、触媒及び反応時間などの同一の重合条件で(a)または(b)各段階の反応を進行させて得られた高分子によってその物性を類推したり、文献(B.Hagsroem Conference on Polymer Processing、1977)に開示されているように、多段階反応の各段階に該当する値を計算して分析することができる。
【0097】
一方、前記(a)から(b)段階での滞留時間は各段階での設計容量と時間あたり生産量によって決定される。前記(a)から(b)段階での適切な撹拌によって物質が均一になるように、運転条件を維持できるようにし、最終的に製造されたエチレン重合体またはエチレン共重合体は適切な溶媒除去工程を経て回収される。
【発明の効果】
【0098】
上述したように、本発明のエチレン共重合体は、エチレン及びα−オレフィンの多段階合成により、多峰の分子量分布を有するエチレン共重合体を製造して、耐衝撃性を含む物性及び加工性が同時に改善される効果がある。
【0099】
また、軟化点を調節することにより、多様な耐衝撃性を有したエチレン共重合体の製造が可能であり、生産性が高く、このような物性を調節することにより多様な用途に適用されることができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】本発明の好ましい一実施例による直列反応器の概路図である。
【図2】本発明の好ましい一実施例による並列反応器の概路図である。
【図3】本発明の好ましい一実施例による落球衝撃強度グラフである。
【図4】本発明の好ましい一実施例による高速衝撃強度グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0101】
以下、実施例を通じて本発明を具体的に説明するが、下記の実施例によって本発明の範囲が限定するのではない。
【0102】
別途に言及される場合を除いて、全てのリガンド及び触媒合成実験は窒素雰囲気下で標準シュレンク(Schlenk)またはグローブボックス技術を用いて行われ、反応に用いられる有機溶媒はナトリウム金属とベンゾフェノン下で還流させて水分を除去し、使用直前に蒸溜して用いた。合成されたリガンド及び触媒のH−NMR分析は周囲温度(ambient temperature)でVarian Mercury 300 MHzスペクトロメーターを用いて行った。
【0103】
重合溶媒であるシクロヘキサンは、Q−5触媒(BASF社)、シリカゲル及び活性アルミナが充填された管を順に通過させて高純度の窒素でバブリングさせ、水分、酸素及びその他の触媒毒を十分に除去させた後用いた。
【0104】
重合された重合体を用いてブローンフィルム成形装備で加工されたフィルムを製造し、圧縮成形装備(Compression Molding Machine)でシートを製造し、加工されたフィルムと圧縮シートは以下に説明された方法によって分析された。
【0105】
1.メルトフローインデックス(MI)
【0106】
ASTM D 2839に基づいて測定した。
【0107】
2.密度
【0108】
ASTM D 1505に基づいて、密度勾配管を用いて測定した。
【0109】
3.溶融点(Tm)分析
【0110】
DuPont DSC2910を利用して窒素雰囲気下で10℃/minの速度で二次加熱条件で測定した。
【0111】
4.分子量及び分子量分布
【0112】
PL Mixed−BX2+preColが装着されたPL210 GPCを用いて、135℃で1.0mL/minの速度で1、2、3−卜リクロロベンゼン溶媒下で測定し、PLポリスチレン標準物質を用いて分子量を補正した。
【0113】
5.引張強度
【0114】
ASTM D638方法で測定した。
【0115】
6.落球衝撃強度
【0116】
ASTM D1709方法で測定した。
【0117】
7.ヘイズ(Haze)
【0118】
ASTM D1003方法で測定した。
【0119】
8.エルメンドルフ(Elmendorf)引裂強度
【0120】
ASTM D1922方法で測定した。
【0121】
9.抽出物含量
【0122】
揮発分成分に基づいて決定された温度上昇溶離分別(Temperature Rising Elution Fractionation)分析法により得られたデータから測定されることができ、35℃の温度で10分間溶出されて発生する揮発分(Soluble Fraction)ピークの全体結晶化ピークに対する分率で測定した。
【0123】
10.高速衝撃強度(High Speed Puncture Test)
【0124】
外部から加えられる衝撃の速度変化を任意に調節して、これによる変形(Deformation)を測定することができる方法(McVan社 Instrumented Impact Tester Model No.ITR2000)で、ASTM D3763方法で測定した。本実験では、400kGの圧力、試料から165mmの距離で2mm厚さの圧出成形シートを製造して評価した。
【0125】
<製造例1>
【0126】
ビス(2−フェニル−4−フルオロフェノキシ)(ペンタメチルシクロペンタジエニル)チタン(IV)クロライドの合成
【0127】
1.90g(10.09mmol)の2−フェニル−4−フルオロフェノールを80mlジエチルエ-テルに溶かした後、4.8mlのブチルリチウム(2.5Mヘキサン溶液)を0℃で徐々に滴下した。周囲温度で5時間反応させた後、(卜リクロロ)(ペンタメチルシクロペンタジエニル)チタン(IV)(1.64g、5.5mmol)を10mlのジエチルエ-テルに溶かした溶液を−78℃で徐々に滴下させた。混合物は周囲温度(ambient temperature)で12時間撹拌させた後、揮発物質を除去するために濾過及び蒸発させ、トルエン/ヘキサン混合物から−35℃で再結晶して、オレンジ色の固体成分2.54gを得た。
【0128】
収率:85%、H NMR(C)δ=1.46(s、15H)、6.65〜7.57(m、8H)。
【0129】
全ての実施例に係る実験は以下に説明された連続溶液重合工程を利用して行った。
【0130】
<実施例1〜7>
【0131】
直列で連結された1段階及び2段階反応器に,単一活性点触媒として製造例1により合成されたビス(ペンタメチルシクロペンタジエニル)(2−フェニル−4−フルオロフェノキシ)チタン(IV)クロライドが用いられた。触媒使用量は表1に示した通りである。Tiは単一活性点触媒、Alは助触媒であるトリイソブチルアルミニウム、Bはトリフェニルメチルリニウムテトラキスペンタフルオロフェニルボレートを夫々表す。各触媒は、キシレンに夫々0.2g/l、5.0g/l、1.5g/lの濃度で溶解させて注入した。各反応器別にエチレン投入比を4:6にして、コモノマーとして1−オクテンを用いて合成を実施した。但し、2段階反応器に投入されるエチレン量の場合、第1反応器からの重合体密度及び分子量を合わせるために、転換率が低い場合、第2反応器に流入される未反応エチレンを考慮して決定される。各反応器の転換率は、夫々の反応条件で一つの重合体に重合する時の反応条件及び反応器内の温度勾配によって推測することができる。2段階反応器で相対的に高いMIの共重合体を生成するために、適量の水素を注入して分子量を制御した。また、各反応器内での分子量は、単一活性点触媒の場合、反応器温度及び1−オクテン含量の関数で制御し、下記表1にその条件が示されている。
【0132】
各実施例に用いたエチレン共重合体は同一の触媒系と工程によって多様な密度構造に製造し、最終エチレン共重合体のMIは0.8〜1.3の間で出来るだけ同一の分子量を有するように重合し、その条件は表1に示した。前記製造されたエチレン共重合体を用いて、バレル温度160−170−170℃、ダイ温度(Die temperature)175℃で圧出し、厚さ40μm、幅530mmのブローンフィルムを製造した。
【0133】
<実施例8〜14>
【0134】
前記実施例1〜7によって製造された夫々のエチレン共重合体を金型温度(mold temperature)190℃で0.5トンの圧力下で5分間予熱(Pre-heating)した後、15トンの圧力で1分間溶かした後、再び周囲温度の水冷式のモールドで15トンの圧力で2分間冷却する圧縮成形モールディング条件で2mm厚さのシートを製作した。
【0135】
<比較例1>
【0136】
単峰(monomodal)分子量分布を有する1−オクテン共重合体(SKエネルギー製のFN810 Grade)の物性は表2の通りであり、前記エチレン共重合体を用いてバレル温度160−170−170℃、ダイ温度175℃で圧出して、厚さ40μm、幅530mmのブローンフィルムに加工した後、物性を比較した。
【0137】
<比較例2>
【0138】
単峰分子量分布を有する1−オクテン共重合体(SKエネルギー製のFH811U Gradeのうち低密度であるがLDPEとブレンディングしていないロト(lot))の物性は表2の通りであり、前記エチレン共重合体を用いて比較例1と同一にブローンフィルムに加工した後、物性を比較した。
【0139】
<比較例3>
【0140】
単峰分子量分布を有する1−オクテン共重合体(SKエネルギー製のFH811U GradeのうちLDPEとブレンディングしていない製品)の物性は表2の通りであり、前記エチレン共重合体を用いて比較例1と同一にブローンフィルムに加工した後、物性を比較した。
【0141】
<比較例4>
【0142】
単峰分子量分布を有する1−オクテン共重合体(SKエネルギー製のFN800 Grade)の物性は表2の通りであり、前記エチレン共重合体を用いて比較例1と同一にブローンフィルムに加工した後、物性を比較した。
【0143】
<比較例5〜8>
【0144】
前記比較例1〜4で準備した夫々のエチレン共重合体を実施例8〜14と同一に圧縮成形モールディングで2mm厚さのシートに加工した後、物性を比較した。
【0145】
【表1】

【0146】
−エチレン投入比=第1反応器:第2反応器
【0147】
−Ti:単一活性点触媒中のTiを意味する。
【0148】
−Al:助触媒トリイソブチルアルミニウムを表す。
【0149】
−B:助触媒トリフェニルメチルリニウムテトラキスペンタフルオロフェニルボレートを表す。
【0150】
【表2】

【0151】
【表3】

【0152】
前記表1及び2は実施例1から14及び比較例1から8の重合条件と各条件による重合体の物性結果である。前記表3は実施例1から7及び比較例1から4で製造されたフィルムと実施例8から14及び比較例5から8で製造された圧縮成形シートの物性結果である。前記表3に表すように、類似なMI、密度規格にも関わらず、殆どの物性が向上したことを確認することができる。全ての実施例と比較例の重合体は、類似なMIを有するが、相異なる密度を有するように製造された。表3に表すように、ビカット軟化点によって測定された物性値を比較すると、落下衝撃強度が軟化点に比例して向上することが分かり、比較例1から4に比べて実施例1から7の重合体は、優れた耐衝撃性を有することが分かる。これに対するグラフを図3に示した。図3は本発明の好ましい一実施例による落球衝撃強度グラフであり、軟化点による落球衝撃強度との関係を示す。
【0153】
また、圧縮成形シートで評価した高速衝撃エネルギーの場合にも、実施例8から14が比較例5から8より優れた結果を表すことが分かる。これに対するグラフを図4に示した。図4は本発明の好ましい一実施例による高速衝撃強度グラフであり、軟化点による高速衝撃エネルギーとの関係を示す。
【0154】
一方、実施例1から7の重合体は軟化点変化に関わらずに透明性(ヘイズ;Haze)で優れた特性を表していることが分かる。抽出物含量も同一の長所が表れている。
【0155】
以上で説明した本発明は、上述の実施例及び添付された図面によって限定されず、本発明の技術的思想を外れない範囲内で、様々な置換、変形及び変更が可能であることは、本発明が属する技術分野にて通常の知識を有した者において明白であろう。
【産業上の利用可能性】
【0156】
従って、(a)及び(b)段階、または(a)から(c)段階を経て製造されたエチレン共重合体を利用して、単層または多層フィルム、射出製品、コンパウンド製品、シート製品、中空成形製品、ブローンフィルム(Blown Film)、キャスティングフィルム、射出成形またはパイプに用いられるエチレン共重合体成形物を得ることができる。
【0157】
特に、前記フィルム用としては、ブローンフィルム、キャスティングフィルムに成形されて単層または多層に形成された包装用フィルムが製造されることができ、収縮フィルム、重包装フィルム、冷凍包装フィルム、自動包装フィルム、ストレッチラップ、バッグ(bag)などの用途に適用されることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
0.900〜0.940g/cmの密度及び数学式1及び数学式2で表されたビカット軟化点との関係を満足する落球衝撃強度F値を有する、エチレンと(C3〜C18)のα−オレフィンコモノマーが重合されたエチレン共重合体。
【数1】


【数2】


前記VはASTM D1525によって測定されたビカット軟化点であり、Fは落球衝撃強度である。
【請求項2】
前記(C3〜C18)のα−オレフィンコモノマーは、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン及びこれらの混合物から選択される請求項1に記載のエチレン共重合体。
【請求項3】
前記α−オレフィンコモノマーの含量は1〜40重量%である請求項2に記載のエチレン共重合体。
【請求項4】
前記α−オレフィンコモノマーの含量は1〜30重量%である請求項3に記載のエチレン共重合体。
【請求項5】
揮発分成分に基づいて決定された抽出物含量が0.1〜3.0重量%である請求項4に記載のエチレン共重合体。
【請求項6】
前記数学式1、数学式2及び下記数学式3を満足する請求項5に記載のエチレン共重合体。
【数3】


前記VはASTM D1525によって測定されたビカット軟化点であり、Fは落球衝撃強度である。
【請求項7】
前記数学式1から数学式3及び下記数学式4を満足する請求項6に記載のエチレン共重合体。
【数4】


前記VはASTM D1525によって測定されたビカット軟化点であり、Fは落球衝撃強度である。
【請求項8】
ヘイズが2〜16である請求項7に記載のエチレン共重合体。
【請求項9】
高速耐衝撃破断エネルギーの値Eが下記数学式5及び数学式6を満足する請求項5に記載のエチレン共重合体。
【数5】


【数6】


前記VはASTM D1525によって測定されたビカット軟化点であり、Eは高速耐衝撃破断エネルギー値である。
【請求項10】
密度が0.910〜0.940g/cmである直鎖状低密度ポリエチレン共重合体であることを特徴とする請求項1に記載のエチレン共重合体。
【請求項11】
密度が0.900〜0.910g/cmである超低密度エチレン共重合体であることを特徴とする請求項1に記載のエチレン共重合体。
【請求項12】
請求項1〜9の何れか1項によるエチレン共重合体を利用して製造された単層または多層フィルム、射出製品、コンパウンド製品、シート製品または中空成形製品。
【請求項13】
請求項10または11によるエチレン共重合体を利用して製造された単層または多層フィルム、射出製品、コンパウンド製品、シート製品または中空成形製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2012−505960(P2012−505960A)
【公表日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−533098(P2011−533098)
【出願日】平成21年10月20日(2009.10.20)
【国際出願番号】PCT/KR2009/006037
【国際公開番号】WO2010/062036
【国際公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【出願人】(308007044)エスケー イノベーション  カンパニー リミテッド (53)
【氏名又は名称原語表記】SK INNOVATION CO.,LTD.
【Fターム(参考)】