説明

耐衝撃性硬質塩化ビニル管

【課題】 優れた耐衝撃性と耐疲労性を有し、凍結耐久性にも優れた塩化ビニル系グラフト共重合体を用いた耐衝撃性硬質塩化ビニル管を提供することを目的とする。
【解決手段】 単独重合体のガラス転移温度が−140℃以上0℃未満である少なくとも1種類の(メタ)アクリレートモノマー及び必要に応じて添加されるその他のラジカル重合性モノマーからなる混合モノマー100重量部と、多官能性モノマー0.1〜10重量部とからなるアクリル系共重合体1〜50重量%に、塩化ビニル系モノマーを50〜99重量%グラフト共重合して得られ、平均重合度が1500〜6000である塩化ビニル系グラフト共重合体を用いた耐衝撃性硬質塩化ビニル管であって、内径20mmの上記耐衝撃性硬質塩化ビニル管に水を封入し、両端をキャップで封じた管路構成物を、−20℃にて凍結させ、20℃にて解凍する凍結耐久試験において、30回以上破損しないことを特徴とする耐衝撃性硬質塩化ビニル管。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、耐衝撃性に優れた硬質塩化ビニル管に関する。
【0002】
【従来の技術】本来、塩化ビニル系樹脂は機械的強度、耐薬品性に優れた特性を有する材料として多くの用途に用いられている。しかし、硬質用に用いると耐衝撃性に劣るという欠点を有しており、種々の改良方法が提案されている。特に、耐衝撃性を必要とする用途に、架橋したアクリル系共重合体に塩化ビニルをグラフト共重合させた塩化ビニル系グラフト共重合体(特開昭60−255813号公報)が提案されている。しかし、このような塩化ビニル系グラフト共重合体を用いる場合、アクリル系共重合体の平均粒子径を大きくすることで耐衝撃性は向上するが、耐久性の指標となる疲労強度が低下してしまうという問題があった。
【0003】例えば、特開平9−124749には、耐衝撃性を保持しながら機械的強度を向上させる方法として、二峰性の粒度分布を有する粒子を用いる方法が提案されているが、耐衝撃性と耐疲労性については明らかではなく、耐衝撃性を保持しながら耐疲労性に優れた塩化ビニル系樹脂組成物が要望されていた。
【0004】また、硬質塩化ビニル管が上水用配管に用いられる場合、冬季に凍結破損などが起きる事例があるため、保温材を巻いたり、夜間に水抜きをするなどの対策がとられているが、硬質塩化ビニル管そのものの凍結耐久性は不充分であった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記に鑑み、優れた耐衝撃性と耐疲労性を有し、凍結耐久性にも優れた塩化ビニル系グラフト共重合体を用いた耐衝撃性硬質塩化ビニル管を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】請求項1記載の発明(以下、発明1という)の耐衝撃性硬質塩化ビニル管は、単独重合体のガラス転移温度が−140℃以上0℃未満である少なくとも1種類の(メタ)アクリレートモノマー及び必要に応じて添加されるその他のラジカル重合性モノマーからなる混合モノマー100重量部と、多官能性モノマー0.1〜10重量部とからなるアクリル系共重合体1〜50重量%に、塩化ビニル系モノマーを50〜99重量%グラフト共重合して得られ、平均重合度が1500〜6000である塩化ビニル系グラフト共重合体を用いた耐衝撃性硬質塩化ビニル管であって、内径20mmの上記耐衝撃性硬質塩化ビニル管に水を封入し、両端をキャップで封じた管路構成物を、−20℃にて凍結させ、20℃にて解凍する凍結耐久試験において、30回以上破損しないことを特徴とする。
【0007】請求項2記載の発明(以下、発明2という)の耐衝撃性硬質塩化ビニル管は、単独重合体のガラス転移温度が−140℃以上0℃未満である少なくとも1種類の(メタ)アクリレートモノマー及び必要に応じて添加されるその他のラジカル重合性モノマーからなる混合モノマー100重量部と、多官能性モノマー0.1〜10重量部とからなり、平均粒子径が0.20μm以上であるアクリル系共重合体(A)と、単独重合体のガラス転移温度が−140℃以上0℃未満である少なくとも1種類の(メタ)アクリレートモノマー及び必要に応じて添加されるその他のラジカル重合性モノマーからなる混合モノマー100重量部と、多官能性モノマー0.1〜10重量部とからなり、平均粒子径が0.15μm未満であるアクリル系共重合体(B)の混合物(A+B)1〜50重量%に、塩化ビニル系モノマーを50〜99重量%グラフト共重合して得られ、かつA/B=1/99〜55/45(重量比)である塩化ビニル系グラフト共重合体を用いた耐衝撃性硬質塩化ビニル管であって、内径20mmの上記耐衝撃性硬質塩化ビニル管に水を封入し、両端をキャップで封じた管路構成物を、−20℃にて凍結させ、20℃にて解凍する凍結耐久試験において、30回以上破損しないことを特徴とする。
【0008】請求項3記載の発明(以下、発明3という)の耐衝撃性硬質塩化ビニル管は、発明2記載の塩化ビニル系グラフト共重合体を用いた耐衝撃性硬質塩化ビニル管であって、測定温度23℃におけるシャルピー衝撃試験で破壊されず、測定温度0℃におけるシャルピー衝撃強度が25kJ/m2以上であり、かつ引張疲労試験(測定温度23℃、応力0〜29.4MPa、周波数5Hz)における破断回数が3万回以上であることを特徴とする。
【0009】請求項4記載の発明(以下、発明4という)の耐衝撃性硬質塩化ビニル管は、発明2記載の塩化ビニル系グラフト共重合体を用いた耐衝撃性硬質塩化ビニル管であって、内径20mmの上記耐衝撃性硬質塩化ビニル管に水を封入し、両端をキャップで封じた管路構成物を、−20℃にて凍結させ、20℃にて解凍する凍結耐久試験において、30回以上破損せず、測定温度23℃におけるシャルピー衝撃試験で破壊されず、測定温度0℃におけるシャルピー衝撃強度が25kJ/m2以上であり、かつ引張疲労試験(測定温度23℃、応力0〜29.4MPa、周波数5Hz)における破断回数が3万回以上であることを特徴とする。
【0010】請求項5記載の発明(以下、発明5という)の耐衝撃性硬質塩化ビニル管は、平均重合度が1500〜6000である発明2記載の塩化ビニル系グラフト共重合体を用いた耐衝撃性硬質塩化ビニル管であって、内径20mmの上記耐衝撃性硬質塩化ビニル管に水を封入し、両端をキャップで封じた管路構成物を、−20℃にて凍結させ、20℃にて解凍する凍結耐久試験において、60回以上破損しないことを特徴とする。
【0011】請求項6記載の発明(以下、発明6という)の耐衝撃性硬質塩化ビニル管は、発明5記載の塩化ビニル系グラフト共重合体を用いた耐衝撃性硬質塩化ビニル管であって、測定温度23℃におけるシャルピー衝撃試験で破壊されず、測定温度0℃におけるシャルピー衝撃強度が25kJ/m2以上であり、かつ引張疲労試験(測定温度23℃、応力0〜29.4MPa、周波数5Hz)における破断回数が7万回以上であることを特徴とする。
【0012】請求項7記載の発明(以下、発明7という)の耐衝撃性硬質塩化ビニル管は、発明5記載の塩化ビニル系グラフト共重合体を用いた耐衝撃性硬質塩化ビニル管であって、内径20mmの上記耐衝撃性硬質塩化ビニル管に水を封入し、両端をキャップで封じた管路構成物を、−20℃にて凍結させ、20℃にて解凍する凍結耐久試験において、60回以上破損せず、測定温度23℃におけるシャルピー衝撃試験で破壊されず、測定温度0℃におけるシャルピー衝撃強度が25kJ/m2以上であり、かつ引張疲労試験(測定温度23℃、応力0〜29.4MPa、周波数5Hz)における破断回数が7万回以上であることを特徴とする。
【0013】請求項8記載の発明(以下、発明8という)の耐衝撃性硬質塩化ビニル管は、発明1〜7いずれかに記載の耐衝撃性硬質塩化ビニル管であって、この中の一辺が10μmの立方体体積中に含まれる上記アクリル系共重合体(A)と(B)の重量組成比が、(A)/(B)=1/99〜55/45(重量比)が保たれているアクリル系共重合体樹脂粒子の分散状態を有していることを特徴とする。
【0014】以下に本発明を詳述する。
【0015】本発明に用いられる(メタ)アクリレートモノマーは、アクリル系共重合体を形成し、製造される塩化ビニル系グラフト共重合体の耐衝撃性を向上させるために配合するものであり、室温での柔軟性を要するため、その単独重合体のガラス転移温度は−140℃以上0℃未満である。充分な柔軟性を塩化ビニル系グラフト共重合体に付与するため、0℃未満であれば特に種類は限定されないが、工業的に一般に使用されるポリマーのガラス転移温度を鑑みて−140℃以上が適当である。
【0016】上記(メタ)アクリレートモノマーとしては、単独重合体のガラス転移温度が−140℃以上0℃未満のものであれば特に限定されず、例えば、n−ブチルアクリレート(Tg=−54℃、以下かっこ内に温度のみを示す)、n−ヘキシルアクリレート(−57℃)、2−エチルヘキシルアクリレート(−85℃)、n−オクチルアクリレート(−85℃)、n−ノニルアクリレート、イソノニルアクリレート(−85℃)、n−デシルアクリレート(−70℃)、ラウリルアクリレート、ラウリルメタアクリレート(−65℃)、エチルアクリレート(−24℃)、n−プロピルアクリレート(−37℃)、n−ブチルアクリレート(−54℃)、イソブチルアクリレート(−24℃)、sec−ブチルアクリレート(−21℃)、n−ヘキシルアクリレート(−57℃)、n−オクチルメタクリレート(−25℃)、イソオクチルアクリレート(−45℃)、n−ノニルメタクリレート(−35℃)、n−デシルメタクリレート(−45℃)等が挙げられる。これらは単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、上記単独重合体のガラス転移温度が−140℃以上0℃未満である(メタ)アクリレートモノマーの単独重合体のガラス転移温度は、高分子学会編「高分子データ・ハンドブック(基礎編)」(1986年、培風館社)によった。
【0017】本発明に用いられるその他のラジカル重合性モノマーは、上記(メタ)アクリレートモノマーと共重合可能なラジカル重合性モノマーであれば特に限定はされず、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレートモノマー;酢酸ビニル等のアルキルビニルエステル類;塩化ビニリデン;スチレンなどが挙げられる。
【0018】本発明による混合モノマーにおいて、上記単独重合体のガラス転移温度が−140℃以上0℃未満である(メタ)アクリレートモノマーの、当該混合モノマー中での含有量は10〜100重量%が好ましく、70〜100重量%がより好ましい。含有量が10重量%未満では、得られる耐衝撃性硬質塩化ビニル管の耐衝撃性が低下することがある。
【0019】本発明に用いられる多官能性モノマーは、上記アクリル系共重合体を架橋し、上記アクリル系共重合体よりなる樹脂粒子の合着を抑制し、更に得られる塩化ビニル系グラフト共重合体の耐衝撃性を向上させる目的で添加される。
【0020】上記多官能性モノマーとしては、例えば、ジ(メタ)アクリレートとしては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート等が挙げられ、トリ(メタ)アクリレートとしては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリストールトリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。また、その他の多官能性モノマーとしては、ペンタエリストールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリストールヘキサ(メタ)アクリレート、ジアリルフタレート、ジアリルマレート、ジアリルフマレート、ジアリルサクシネート、トリアリルイソシアヌレート等のジもしくはトリアリル化合物、ジビニルベンゼン、ブタジエン等のジビニル化合物等が挙げられ、これらは単独または2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0021】上記アクリル共重合体における上記多官能性モノマーの配合量は、アクリル系共重合体を形成する上記混合モノマー成分100重量部に対して、0.1〜10重量部である。上記多官能性モノマーの配合量が、0.1重量部未満では、アクリル系共重合体が塩化ビニル系グラフト共重合体樹脂中で独立した粒子形状を保てなくなるため、塩化ビニル系グラフト共重合体樹脂の耐衝撃性が低下する。一方、10重量部を超えると、アクリル系共重合体の架橋密度が高くなり、有効な耐衝撃性が得られなくなるため上記範囲に限定される。
【0022】本発明において、上記(メタ)アクリレートモノマー及び上記その他のラジカル重合性モノマーと上記多官能性モノマーとの混合物(以下,モノマー混合物ともいう)を共重合させる方法としては、例えば、乳化重合法、懸濁重合法等が挙げられる。これらの中では、耐衝撃性の発現性がよく、アクリル系共重合体の粒子径の制御が行い易い点から乳化重合法が望ましい。なお、上記共重合とは、ランダム共重合、ブロック共重合、グラフト共重合等すべての共重合をいう。
【0023】上記乳化重合法は、従来公知の方法で行うことができ、例えば、必要に応じて、乳化分散剤、重合開始剤、pH調整剤、酸化防止剤等を添加してもよい。
【0024】上記乳化分散剤は、上記モノマー混合物の乳化液中での分散安定性を向上させ、重合を効率的に行うために用いるものである。上記乳化分散剤としては特に限定されず、例えば、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、部分ケン化ポリ酢酸ビニル、セルロース系分散剤、ゼラチン等が挙げられる。これらの中では、アニオン系界面活性剤が好ましく、上記アニオン系界面活性剤の具体例としては、例えば、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルサルフェート(第一工業製薬社製「ハイテノールN−08」)等が挙げられる。
【0025】上記重合開始剤としては特に限定されず、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素水等の水溶性重合開始剤、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド等の有機系過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ系開始剤等が挙げられる。
【0026】上記乳化重合法の種類は特に限定されず、例えば、一括重合法、モノマー滴下法、エマルジョン滴下法等が挙げられる。
【0027】上記一括重合法は、ジャケット付重合反応器内に純水、乳化分散剤、及び、モノマー混合物を一括して添加し、窒素気流加圧下で撹拌して充分乳化した後、反応器内をジャケットで所定の温度に昇温し、その後重合させる方法である。
【0028】上記モノマー滴下法は、ジャケット付重合反応器内に純水、乳化分散剤、及び、重合開始剤を入れ、窒素気流下による酸素除去及び加圧を行い、反応器内をジャケットにより所定の温度に昇温した後、モノマー混合物を一定量ずつ滴下して重合させる方法である。
【0029】上記エマルジョン滴下法は、モノマー混合物、乳化分散剤、及び、純水を撹拌して乳化モノマーを予め調製し、次いで、ジャケット付重合反応器内に純水、及び、重合開始剤を入れ、窒素気流下による酸素除去及び加圧を行い、反応器内をジャケットにより所定の温度に昇温した後、上記乳化モノマーを一定量ずつ滴下して重合させる方法である。
【0030】また、上記エマルジョン滴下法では、重合初期に上記乳化モノマーの一部を一括添加(以下、シードモノマーという)し、その後残りの乳化モノマーを滴下する方法を用いれば、シードモノマーの量を変化させることにより、生成するアクリル系共重合体の粒径を容易に制御することができる。さらに、シードモノマー及び滴下する乳化モノマーの種類及び組成を順次、変更、区別することにより、コアシェルなどの多層構造を形成することも可能である。
【0031】上述したような重合方法において、反応終了後に得られるアクリル系共重合体の固形分比率は、アクリル系共重合体の生産性、重合反応の安定性の点から10〜60重量%が好ましい。また、上述したような重合方法においては、反応終了後のアクリル系共重合体の機械的安定性を向上させる目的で保護コロイド等を添加しても良い。
【0032】本発明においては、上記アクリル系共重合体に、塩化ビニル系モノマーをグラフト共重合することにより塩化ビニル系共重合体を得る。上記塩化ビニル系モノマーとは、塩化ビニル単独、もしくは塩化ビニルを主成分とするビニルモノマーを意味し、また、上記塩化ビニルを主成分とするビニルモノマーとは、50重量%以上の塩化ビニルとこれと共重合可能な他のビニルモノマーとの混合物を意味する。上記塩化ビニルと共重合可能なモノマーとしては、通常公知のビニルモノマーであればよく、例えば、エチレン、プロピレン、ブチレン等のα−オレフィン類:酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類:エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類:メチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類などが挙げられる。これらは単独または2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0033】上記塩化ビニル系グラフト共重合体を得る方法としては特に限定されず、例えば、乳化重合法、懸濁重合法等が挙げられ、なかでも、懸濁重合法が好ましい。
【0034】上記懸濁重合法においては、上記アクリル系共重合体の分散安定性を向上させ、塩化ビニル系モノマーのグラフト共重合を効率的に行う目的で、分散剤及び油溶性開始剤が使用される。上記分散剤としては、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸塩、(メタ)アクリル酸塩−アルキルアクリレート共重合体、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリエチレングリコール、ポリ酢酸ビニル及びその部分ケン化物、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、デンプン、無水マレイン酸−スチレン共重合体等が挙げられ、これらは単独または2種類以上組み合わせて用いることができる。
【0035】上記油溶性開始剤としては、グラフト共重合に有利であるという理由からラジカル重合開始剤が好適に用いられ、例えば、ラウロイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシピバレート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジオクチルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシネオデカノエートα−クミルパーオキシネオデカノエート等の有機パーオキサイド類、2,2−アゾビスイソブチロニトリル2,2−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル等のアゾ化合物等が挙げられる。上記懸濁重合法では、必要に応じてpH調整剤、酸化防止剤等が添加されてもよい。
【0036】本発明による塩化ビニル系グラフト共重合体の具体的な製造方法としては、例えば、撹拌機及びジャケットを備えた反応容器に、純水、上記アクリル系共重合体ラテックス、分散剤、疎水性重合開始剤及び水溶性増粘剤、必要に応じて重合度調節剤を投入し、その後、真空ポンプで重合器内の空気を排出し、更に撹拌条件下で塩化ビニル及び必要に応じて他のビニルモノマーを投入した後、反応容器内をジャケットにより加熱し、塩化ビニルのグラフト共重合を行う方法が挙げられる。上記塩化ビニルのグラフト共重合は発熱反応のため、ジャケット温度を変えることにより反応容器内の温度つまり重合温度を制御することが可能である。反応終了後は、未反応の塩化ビニルを除去しスラリー状にし、更に脱水乾燥することにより塩化ビニル系グラフト共重合体が製造される。
【0037】発明1による塩化ビニル系グラフト共重合体の平均重合度は、JIS K 6721に準拠して測定され、1500〜6000の範囲に限定される。平均重合度が1500未満では、耐疲労性(疲労強度)が不充分であり、6000を超えると、得られる塩化ビニル系グラフト共重合体の成形が困難となる。
【0038】上記塩化ビニル系グラフト共重合体中のアクリル系共重合体の含有量は1〜50重量%に限定される。1重量%未満であると、最終的に得られる硬質塩化ビニル管の耐衝撃性が充分に発現せず、50重量%を超えると引張強度などの機械的物性が著しく低下するため上記範囲に限定される。好ましくは4〜20重量%である。
【0039】発明2において、平均粒子径が0.20μm以上であるアクリル系共重合体(A)は、平均粒子径0.15μm未満であるアクリル系共重合体(B)を二峰性化して最終的に得られる硬質塩化ビニル管の耐衝撃性、耐疲労性を向上させる目的で配合される。
【0040】上記アクリル系共重合体(A)の平均粒子径は0.20μm以上である。平均粒子径が0.20μm未満であると、上記アクリル系共重合体(B)との粒子径の差異が明確ではなく、ゴム成分の二峰性化による硬質塩化ビニル管の耐衝撃性、耐疲労性向上効果が発揮され難い。また、平均粒子径が大きすぎても耐衝撃性、耐疲労性が低下するため、好ましい範囲としては、0.25〜5μmである。
【0041】上記アクリル系共重合体(A)と(B)との重量比は、(A)/(B)=1/99〜55/45である。アクリル系共重合体(A)の含有量が1重量%未満であると、ゴム成分の二峰性化による耐衝撃性、耐疲労性向上効果が発揮され難く、60重量%を超えると耐衝撃性、抗張力とが共に低下するので、好ましくは、(A)/(B)=5/95〜50/50である。
【0042】上記アクリル系共重合体(A)と(B)は、それぞれを別に重合し、アクリル系共重合体を重合した後のラテックス液の状態にて、上記の(A)/(B)重量組成比率となるよう混合する。このアクリル系共重合体の混合液を用い、このアクリル系共重合体に塩化ビニル系モノマーをグラフト共重合することにより塩化ビニル系グラフト共重合体を得る。これにより、得られる塩化ビニル系グラフト共重合体に上記アクリル系共重合体が、上記の(A)/(B)重量組成比率で含有される。ついては、後の硬質塩化ビニル管中においても、その中の一辺が10μmの立方体体積中に含まれる、アクリル系共重合体(A)と(B)の重量組成比も、(A)/(B)=1/99〜55/45(重量比)が保たれているアクリル系共重合体樹脂粒子の分散状態を得る。
【0043】発明2において、塩化ビニル系グラフト共重合体中のアクリル系共重合体からなる混合物(A+B)の含有量は1〜50重量%である。1重量%未満であると、最終的に得られる硬質塩化ビニル管の耐衝撃性が充分に発現せず、50重量%を超えると引張強度などの機械的物性が低下するため、好ましくは4〜20重量%である。
【0044】上記の製造方法で得られた塩化ビニル系グラフト共重合体は、アクリル系共重合体にポリ塩化ビニルの一部が直接結合しているので、耐衝撃性に優れるとともに機械的強度や疲労強度(耐疲労性)にも優れる。
【0045】このような塩化ビニル系グラフト共重合体は、上記特性を有しているため、耐衝撃性、疲労強度を要する硬質塩化ビニル管等の成形品に好適に用いられる。
【0046】上記塩化ビニル系グラフト共重合体を成形することにより、本発明の硬質塩化ビニル管を得る場合には、必要に応じて熱安定剤、安定化助剤、滑剤、加工助剤、酸化防止剤、光安定剤、顔料、充填剤等を添加してもよい。
【0047】上記熱安定剤としては特に限定されず、例えば、ジメチル錫メルカプト、ジブチル錫メルカプト、ジオクチル錫メルカプト、ジブチル錫マレート、ジブチル錫マレートポリマー、ジオクチル錫マレート、ジオクチル錫マレートポリマー、ジブチル錫ラウレート、ジブチル錫ラウレートポリマー等の有機錫安定剤、ステアリン酸鉛、二塩基性亜リン酸鉛、三塩基性硫酸鉛等の鉛系安定剤、カルシウム−亜鉛系安定剤、バリウム−亜鉛系安定剤、バリウム−カドミウム系安定剤等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0048】上記安定化助剤としては特に限定されず、例えば、エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ豆油、エポキシ化テトラヒドロフタレート、エポキシ化ポリブタジエン、リン酸エステル等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0049】上記滑剤としては、内部滑剤、外部滑剤等が挙げられる。上記内部滑剤は、成形加工時の溶融樹脂の流動粘度を下げ、摩擦発熱を防止する目的で使用される。上記内部滑剤としては特に限定されず、例えば、ブチルステアレート、ラウリルアルコール、ステアリルステアレート、エポキシ化大豆油、グリセリンモノステアレート、ステアリン酸、ビスアミド等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0050】上記外部滑剤は、成形加工時の溶融樹脂と金属面との滑り効果を上げる目的で使用される。上記外部滑剤としては特に限定されず、例えば、モンタン酸ワックス、パラフィンワックス、ポリオレフィンワックス、エステルワックス等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0051】上記加工助剤としては特に限定されず、例えば、重量平均分子量10万〜200万のアルキルアクリレート/アルキルメタクリレート共重合体であるアクリル系加工助剤が挙げられ、具体例としては、n−ブチルアクリレート/メチルメタクリレート共重合体、2−エチルヘキシルアクリレート/メチルメタクリレート/ブチルメタクリレート共重合体等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0052】上記酸化防止剤としては特に限定されず、例えば、フェノール系抗酸化剤等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。上記光安定剤としては特に限定されず、例えば、サリチル酸エステル系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、シアノアクリレート系等の紫外線吸収剤、あるいはヒンダードアミン系の光安定剤等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0053】上記顔料としては特に限定されず、例えば、アゾ系、フタロシアニン系、スレン系、染料レーキ系等の有機顔料、酸化物系、クロム酸モリブデン系、硫化物・セレン化物系、フェロシアン化物系等の無機顔料等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。上記充填剤としては特に限定されず、例えば、炭酸カルシウム、タルク等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0054】また、上記硬質塩化ビニル管等の成形品を得る場合には、成形時の加工性を向上させる目的で、上記塩化ビニル系グラフト共重合体に可塑剤を添加してもよい。上記可塑剤としては特に限定されず、例えば、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルアジペート等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0055】上記した各種配合剤や可塑剤を、上記塩化ビニル系グラフト共重合体に混合する方法としては、特に限定されず、例えば、ホットブレンドによる方法、コールドブレンドによる方法等が挙げられる。また、本発明の耐衝撃性硬質塩化ビニル管の成形方法としては、特に限定されず、例えば、押出成形法、射出成形法等が挙げられる。
【0056】一般に、硬質塩化ビニル管を用いた上水用配管においては、水が満水状態であることが通常である。水は凍ると体積が約1.09倍になり、この体積膨張により発生する応力によって、冬季、特に夜間に0℃を下回るような凍結環境下で、硬質塩化ビニル管の破裂、割れが発生することがある。
【0057】ところが、上記体積膨張が単純にパイプ周方向への均一膨張と仮定すると、呼び径20mmのパイプの場合、発生する応力は約30MPaであり、これは水道用硬質塩化ビニル管のJIS K 6742に準拠した0℃における引張降伏強度の約半分の応力に相当する。即ち、凍結膨張により発生する応力レベルでは、上水用硬質塩化ビニル管は降伏せず、凍結環境下における破壊現象は、凍結融解により発生する繰り返し応力による疲労破壊に由来すると考えられる。実際、硬質塩化ビニル管は上述した凍結耐久試験において1回の凍結では破壊せず、複数回の凍結融解の後、破壊する。このことから、硬質塩化ビニル管の凍結耐久性は、塩化ビニル系樹脂の疲労強度(耐疲労性)に依存すると考えられるため、本発明における耐衝撃性硬質塩化ビニル管は、耐疲労性に優れるので凍結耐久性にも優れるのである。
【0058】
【発明の実施の形態】以下に実施例を挙げて、具体的に本発明の効果を説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0059】(実施例1〜8、比較例1〜2)[アクリル系共重合体ラテックスの作製]表1に示した重合処方により、下記の操作手順でアクリル系共重合体を得た。表1に示した、コア層、及びシェル層を形成するためのモノマー(以下、それぞれをコア層形成用モノマー、シェル層形成用モノマーという)をそれぞれ、所定量の純水、多官能性モノマー、及び、乳化分散剤と混合、撹拌し、それぞれの乳化モノマー液を調製した。
【0060】次に撹拌機及び還流冷却器を備えた反応器に、所定量の純水を入れ、容器内の酸素を窒素により置換した後、窒素雰囲気下で撹拌しながら反応温度を70℃まで昇温した。昇温終了後、反応器に開始剤、及び、コア層形成用乳化モノマー液を表1の比率分、一括して投入し、重合を開始した。続いて、コア層形成用乳化モノマー液の残りを滴下した。更に、コア層形成用乳化モノマー液の滴下が終了次第、シェル層形成用乳化モノマー液を順次滴下した。全ての乳化モノマー液の滴下を表1に示した時間で終了し、その後、1時間の熟成期間をおいた後、重合を終了して固形分濃度約30重量%のアクリル系共重合体の粒子を得た。得られたアクリル系共重合体の粒子の平均粒子径を光散乱粒度計(光散乱粒度計DLS−7000:大塚電子社製)にて測定し、結果を表1に示した。
【0061】[塩化ビニル系グラフト共重合体の製造]表2の配合組成に基づいて、撹拌機及びジャケットを備えた重合器に、純水170重量部、上記アクリル系共重合体ラテックス液21.3重量部(アクリル系共重合体固形分6.4重量部)、部分けん化ポリビニルアルコール(クラレ社製、クラレポバールL−8)の3%水溶液5重量部、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(信越化学社製、メトローズ60SH50)の3%水溶液2.5重量部、t−ブチルパーオキシピバレート0.03重量部、アクリル系共重合体固形分6.4重量部に対してアルミニウムイオンが3000ppmとなるように硫酸アルミニウムを一括投入し、その後、真空ポンプで重合器内の空気を排出し、更に攪拌条件下で塩化ビニル125重量部を投入した。その後、ジャケット温度の制御により、表2に示した重合温度にてグラフト重合を開始した。
【0062】重合器内の圧力が、実施例1〜4では0.37MPa、実施例5〜8及び比較例1〜2では0.58MPaの圧力まで低下したところで塩化ビニルモノマーの重合率が80%になるので反応終了を確認し、消泡剤(東レ社製、東レシリコンSH5510)を加圧添加した後に反応を停止した。その後、未反応の塩化ビニルモノマーを除去し、更に脱水乾燥することにより塩化ビニル系グラフト共重合体を得た。得られた塩化ビニル系グラフト共重合体中のアクリル系共重合体重量比率、重合度、及び成形体中のアクリル系共重合体の分散状態を下記の評価方法により測定し、結果を表2に示した。
【0063】[評価方法]
・アクリル系共重合体重量比率塩化ビニル系グラフト共重合体の塩素重量含有率(Cl%)をJIS K 7229に準拠し測定する。この塩素重量含有率(C=Cl%/100)から次式によりアクリル系共重合体重量比率を算出した。
アクリル系共重合体重量比率(重量%)=(1−1.762×C)×100
【0064】・重合度上記塩化ビニル系グラフト共重合体5gをテトラヒドロフラン100gに溶解し、可溶部のみをメタノールで析出させ、濾過後乾燥させた。乾燥終了後、不溶成分につき、JIS K 6721に準拠して重合度を測定した。
【0065】・成形体のアクリル系共重合体の分散状態上記アクリル系共重合体の分散状態の測定は、透過式電子顕微鏡を用いて行った。塩化ビニル系グラフト共重合体を用いた成形品もしくは塩化ビニル系グラフト共重合体樹脂のアクリル埋包サンプルを酸化ルテニウムで染色し、超薄切片を作成する。これを透過式電子顕微鏡(JEM−1010:日本電子社製)で観察し、アクリル系共重合体の(A)(粒径の大きい粒子)の比較的集中している部分の、縦横10μm、深さ0.09μmの体積中に含まれる、アクリル系共重合体粒子の(A)と(B)の個数を計測し、一辺が10μmの立方体体積中に含まれる、アクリル系共重合体粒子の(A)と(B)の重量組成比を算出した。
【0066】[塩化ビニル系グラフト共重合体組成物の作成]得られた塩化ビニル系グラフト共重合体100重量部に、有機錫系安定剤(三共有機合成社製、商品名:SNT−461K)0.8重量部、ポリエチレン系滑剤(三井化学社製、商品名:Hiwax220RKT)0.5重量部、ステアリン酸カルシウム(堺化学社製、商品名:SC−100)0.5重量部をスーパーミキサー(100L、カワタ社製)にて攪拌混合して塩化ビニル系グラフト共重合体組成物を得た。
【0067】(比較例3)塩化ビニル樹脂(徳山積水社製、商品名:TS1000R、重合度1000)100重量部に、耐衝撃性改質剤MBS(鐘淵化学工業社製、商品名:カネエースB561)6重量部と、有機錫系安定剤(三共有機合成社製、商品名:SNT−461K)0.8重量部、ポリエチレン系滑剤(三井化学社製、商品名:Hiwax220RKT)0.5重量部、ステアリン酸カルシウム(堺化学社製、商品名:SC−100)0.5重量部を、スーパーミキサー(100L、カワタ社製)にて攪拌混合して塩化ビニル系樹脂組成物を得た。
【0068】(比較例4)塩化ビニル樹脂(徳山積水社製、商品名:TS1000R、重合度1000)100重量部に、炭酸カルシウム(白石カルシウム社製、商品名:ホワイトン305S)6重量部と、有機錫系安定剤(三共有機合成社製、商品名:SNT−461K)0.8重量部、ポリエチレン系滑剤(三井化学社製、商品名:Hiwax220RKT)0.5重量部、ステアリン酸カルシウム(堺化学社製、商品名:SC−100)0.5重量部を、スーパーミキサー(100L、カワタ社製)にて攪拌混合して塩化ビニル系樹脂組成物を得た。
【0069】(比較例5)塩化ビニル樹脂(信越化学社製、商品名:TK−2500PE、重合度3000)100重量部に、耐衝撃性改質剤MBS(鐘淵化学工業社製、商品名:カネエースB561)6重量部と、有機錫系安定剤(三共有機合成社製、商品名:SNT−461K)0.8重量部、ポリエチレン系滑剤(三井化学社製、商品名:Hiwax220RKT)0.5重量部、ステアリン酸カルシウム(堺化学社製、商品名:SC−100)0.5重量部を、スーパーミキサー(100L、カワタ社製)にて攪拌混合して塩化ビニル系樹脂組成物を得た。
【0070】(比較例6)塩化ビニル樹脂(信越化学社製、商品名:TK−2500PE、重合度3000)100重量部に、炭酸カルシウム(白石カルシウム社製、商品名:ホワイトン305S)6重量部と、有機錫系安定剤(三共有機合成社製、商品名:SNT−461K)0.8重量部、ポリエチレン系滑剤(三井化学社製、商品名:Hiwax220RKT)0.5重量部、ステアリン酸カルシウム(堺化学社製、商品名:SC−100)0.5重量部を、スーパーミキサー(100L、カワタ社製)にて攪拌混合して塩化ビニル系樹脂組成物を得た。
【0071】[塩化ビニル系樹脂管の成形]上記実施例1〜8及び比較例1〜6で得られた塩化ビニル系樹脂樹脂組成物を押出成形機(長田製作所社製、商品名:SLM−50)に投入し、押出樹脂温度が実施例1〜4で210℃、実施例5〜8及び比較例1〜6で210℃、スクリュー回転数が30rpmの条件下にて押出成形し、呼び径20mmの塩化ビニル系樹脂管を得た。
【0072】[塩化ビニル系樹脂管の物性評価]上記で得られた塩化ビニル系樹脂管について、物性(耐衝撃性、凍結耐久性、耐疲労性)を以下の方法で評価し、その結果を表2に示した。
・耐衝撃性硬質プラスチックのシャルピー衝撃試験方法(JIS K 7111)に準拠し、上記塩化ビニル系樹脂管から切削して作製したノッチ付きの試験片を用い、23℃と0℃においてシャルピー衝撃強度を測定した。
【0073】・凍結耐久性上記塩化ビニル系樹脂管(内径20mm、長さ1m)に水を封入して満水にし、両端をキャップ(積水化学工業社製、商品名:HI−C20)にて接着固定して封じた管路構成物を作製する。この管路構成物を、−20℃にて、地面に平行に横置で静置し、一晩かけて凍結させる。この凍結体を20℃の恒温室にて解凍する。このような凍結融解を繰り返す凍結耐久試験を行い、管が破損する回数を測定した。
【0074】・耐疲労性JIS K 6742に準拠した引張試験片を、上記塩化ビニル系樹脂管から切削し、これを用いて引張疲労試験を行った。試験条件は、23℃、最大応力29.4MPa 、周波数5Hzの条件で繰り返し引張り荷重(29.4MPa→0MPa→29.4MPa)をかけ、破断するまでの繰り返し回数を測定した。
【0075】
【表1】


【0076】
【表2】


【0077】
【発明の効果】以上述べたように、本発明により、優れた耐衝撃性と耐疲労性を有し、凍結耐久性にも優れた耐衝撃性硬質塩化ビニル管を得ることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 単独重合体のガラス転移温度が−140℃以上0℃未満である少なくとも1種類の(メタ)アクリレートモノマー及び必要に応じて添加されるその他のラジカル重合性モノマーからなる混合モノマー100重量部と、多官能性モノマー0.1〜10重量部とからなるアクリル系共重合体1〜50重量%に、塩化ビニル系モノマーを50〜99重量%グラフト共重合して得られ、平均重合度が1500〜6000である塩化ビニル系グラフト共重合体を用いた耐衝撃性硬質塩化ビニル管であって、内径20mmの上記耐衝撃性硬質塩化ビニル管に水を封入し、両端をキャップで封じた管路構成物を、−20℃にて凍結させ、20℃にて解凍する凍結耐久試験において、30回以上破損しないことを特徴とする耐衝撃性硬質塩化ビニル管。
【請求項2】 単独重合体のガラス転移温度が−140℃以上0℃未満である少なくとも1種類の(メタ)アクリレートモノマー及び必要に応じて添加されるその他のラジカル重合性モノマーからなる混合モノマー100重量部と、多官能性モノマー0.1〜10重量部とからなり、平均粒子径が0.20μm以上であるアクリル系共重合体(A)と、単独重合体のガラス転移温度が−140℃以上0℃未満である少なくとも1種類の(メタ)アクリレートモノマー及び必要に応じて添加されるその他のラジカル重合性モノマーからなる混合モノマー100重量部と、多官能性モノマー0.1〜10重量部とからなり、平均粒子径が0.15μm未満であるアクリル系共重合体(B)の混合物(A+B)1〜50重量%に、塩化ビニル系モノマーを50〜99重量%グラフト共重合して得られ、かつA/B=1/99〜55/45(重量比)である塩化ビニル系グラフト共重合体を用いた耐衝撃性硬質塩化ビニル管であって、内径20mmの上記耐衝撃性硬質塩化ビニル管に水を封入し、両端をキャップで封じた管路構成物を、−20℃にて凍結させ、20℃にて解凍する凍結耐久試験において、30回以上破損しないことを特徴とする耐衝撃性硬質塩化ビニル管。
【請求項3】 請求項2記載の塩化ビニル系グラフト共重合体を用いた耐衝撃性硬質塩化ビニル管であって、測定温度23℃におけるシャルピー衝撃試験で破壊されず、測定温度0℃におけるシャルピー衝撃強度が25kJ/m2以上であり、かつ引張疲労試験(測定温度23℃、応力0〜29.4MPa、周波数5Hz)における破断回数が3万回以上であることを特徴とする耐衝撃性硬質塩化ビニル管。
【請求項4】 請求項2記載の塩化ビニル系グラフト共重合体を用いた耐衝撃性硬質塩化ビニル管であって、内径20mmの上記耐衝撃性硬質塩化ビニル管に水を封入し、両端をキャップで封じた管路構成物を、−20℃にて凍結させ、20℃にて解凍する凍結耐久試験において、30回以上破損せず、測定温度23℃におけるシャルピー衝撃試験で破壊されず、測定温度0℃におけるシャルピー衝撃強度が25kJ/m2以上であり、かつ引張疲労試験(測定温度23℃、応力0〜29.4MPa、周波数5Hz)における破断回数が3万回以上であることを特徴とする耐衝撃性硬質塩化ビニル管。
【請求項5】 平均重合度が1500〜6000である請求項2記載の塩化ビニル系グラフト共重合体を用いた耐衝撃性硬質塩化ビニル管であって、内径20mmの上記耐衝撃性硬質塩化ビニル管に水を封入し、両端をキャップで封じた管路構成物を、−20℃にて凍結させ、20℃にて解凍する凍結耐久試験において、60回以上破損しないことを特徴とする耐衝撃性硬質塩化ビニル管。
【請求項6】 請求項5記載の塩化ビニル系グラフト共重合体を用いた耐衝撃性硬質塩化ビニル管であって、測定温度23℃におけるシャルピー衝撃試験で破壊されず、測定温度0℃におけるシャルピー衝撃強度が25kJ/m2以上であり、かつ引張疲労試験(測定温度23℃、応力0〜29.4MPa、周波数5Hz)における破断回数が7万回以上であることを特徴とする耐衝撃性硬質塩化ビニル管。
【請求項7】 請求項5記載の塩化ビニル系グラフト共重合体を用いた耐衝撃性硬質塩化ビニル管であって、内径20mmの上記耐衝撃性硬質塩化ビニル管に水を封入し、両端をキャップで封じた管路構成物を、−20℃にて凍結させ、20℃にて解凍する凍結耐久試験において、60回以上破損せず、測定温度23℃におけるシャルピー衝撃試験で破壊されず、測定温度0℃におけるシャルピー衝撃強度が25kJ/m2以上であり、かつ引張疲労試験(測定温度23℃、応力0〜29.4MPa、周波数5Hz)における破断回数が7万回以上であることを特徴とする耐衝撃性硬質塩化ビニル管。
【請求項8】 請求項1〜7いずれかに記載の耐衝撃性硬質塩化ビニル管であって、この中の一辺が10μmの立方体体積中に含まれる上記アクリル系共重合体(A)と(B)の重量組成比が、(A)/(B)=1/99〜55/45(重量比)が保たれているアクリル系共重合体樹脂粒子の分散状態を有していることを特徴とする請求項1〜7いずれかに記載の耐衝撃性硬質塩化ビニル管。

【公開番号】特開2003−148660(P2003−148660A)
【公開日】平成15年5月21日(2003.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2001−307794(P2001−307794)
【出願日】平成13年10月3日(2001.10.3)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】