説明

耐酸化性高架橋UHMWPE

本発明は、向上された耐酸化性を有する高架橋UHMWPEと、その製造法に関する。本発明のUHMWPE材料は、形成する前に抗酸化性化合物又はフリーラジカル捕捉剤が組み込まれる。ひとたびその添加物質を伴うUHMWPEが形成され、ガンマ線又は電子線で処理されると、それは向上した耐摩耗性とさらには酸化に対する良好な耐性を示す。そのような材料は、関節置換インプラントを製造する分野に特に興味がもたれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
耐酸化性高架橋UHMWPE
【背景技術】
【0002】
超高分子量ポリエチレン(ultra-high molecular weight polyethylene, UHMWPE)は、全関節置換術において最も一般的に用いられる軸受け材であり、1960年代初めにJohn Charnleyによって導入された(UHMWPEハンドブック, S. Kurtz編, Elsevier, 2004)。それ以来、この材料の高い強靱性と良好な機械特性の結果として、広範な用途が全関節形成術において開発されてきている。「従来の」UHMWPEは優れた臨床記録をもっているが、インプラントシステムの最長寿命はUHMWPE軸受け表面から離れた摩耗粒子のせいで限定されている(Willert H.G., Bertram H., Buchhorn G.H., Clin Orthop 258, 95, 1990)。これらの摩耗粒子はヒトの体内で骨溶解性応答を引き起こして、局所的骨再吸収をもたらし、ついには人工関節の無菌性の緩み(aseptic loosening)をもたらしうる。従来のガンマ線滅菌されたUHMWPEに伴う第二の問題は、貯蔵老化時に起こる酸化分解である。ガンマ線のエネルギーは、ポリエチレン鎖の炭素−炭素、又は炭素−水素結合のいくらかを切断し、フリーラジカルの形成をもたらすのに充分である。これらのラジカルは一部は再結合するが、それらのいくらかは長い寿命をもち、そのインプラントの周りの包装中に存在し、あるいは包装中に拡散してくる酸素と反応しうる(Costa L., Jacobson K., Bracco P., Brach del Prever. E.M., Biomaterials 23, 1613, 2002)。この酸化分解反応はその材料の脆化をもたらし、それによってその材料の機械特性を低下させ、そのインプラントの破砕をもたらすおそれがある(Kurtz S.M., Hozack W., Marcolongo M., Turner J., Rimnac C., Edidin A., J Arthroplasty 18, 68-78, 2003)。
【0003】
1970年代には、高架橋UHMWPEが、材料の耐摩耗性を向上させることを意図して導入されている(Oonishi H., Kadoya Y., Masuda S., Journal of Biomedical Materials Research, 58, 167, 2001; Grobbelaar C.J., du Plessis T.A., Marais F., The Journal of Bone and Joint Surgery, 60-B, 370, 1978)。このUHMWPE材料は材料中の架橋過程を進めるために高用量でガンマ線照射され(最大100Mrad、これは約2.5Mradでのガンマ線滅菌とは対照的である)、それによって耐摩耗性を増大させる。ポリエチレン鎖上のフリーラジカル量はしかしながら低下せず、あるいは局所的にしか低下せず、したがって、これらの材料は貯蔵老化時又は生体内使用時に酸化分解を受けやすい。
【0004】
さらに最近では、この照射架橋過程が、フリーラジカルの数を低減しあるいは除くための熱処理によって拡張されている。これらの工程は以下の3つのグループに細分化できる。
- 融点未満での照射とそれに続く融点未満でのアニーリング(米国特許第5414049号明細書、EP0722973)。この経路の主要な欠点は、UHMWPE鎖が残存フリーラジカルをなお含んでおり、これが酸化分解をもたらすという事実である(Wannomae K.K., Bhattacharyya S., Freiberg A., Estok D., Harris W.H., Muratoglu O.J., Arthroplasty, 21, 1005, 2006)。
- 融点未満での照射とそれに続く融点より上での再溶融(米国特許第6228900号)。この処理スキームの主な欠点は、アニーリング法と比較して、機械特性が再溶融ステップによって低下することである(Ries M.D., Pruitt L., Clinical Orthopaedics and Related Research, 440, 149, 2005)。
- 溶融中の照射(米国特許第5879400号、Dijkstra D.J., PhD Thesis, University of Groningen, 1988)。この方法の欠点は、結晶性が大幅に低下し、それとともに機械性能が大幅に低下することである。
【0005】
次のステップとして、化学抗酸化剤が医療グレードのUHMWPEに導入されて、酸化に対する良好な安定性を充分な機械特性と組み合わせた耐摩耗性材料を得ている。一般的な抗酸化剤の多くは、低い生体適合性を示すか、又は生体適合性を全く示さず、したがって、人体中に、又は栄養製品中に既に存在している化学物質が求められていた。1982年にDolezel及びAdamirovaは、生きている生物中での生物学的分解に抗して、医療用移植片(メディカルインプラント)用のポリオレフィンの安定性を増大させるための手段を記載した(CZ221404)。彼らは、ポリエチレン樹脂にアルファ-、ベータ-、ガンマ-、もしくはデルタ-トコフェロール(ビタミンE)、又はそれらの混合物を添加し、得られた混合物を次に加工した。ビタミンEのほか、別の群の生物学的に無害な物質をポリエチレン中の酸化安定化剤として導入した:Hahnは、安定且つ耐酸化性の医療用移植片を製造するための、カロテノイド類(例えば、β-カロテン)を用いたUHMWPEのドーピングを記載している(米国特許第5827904号)。しかし、照射架橋したβ-カロチン含有生成物の摩耗及び酸化特性は今まで調べられていない。
【0006】
最近、いくつかのグループが、材料の耐摩耗性を向上させるために、様々な加工手段を確立し、ビタミンEの添加を照射架橋ステップと組み合わせた(WO2005/074619)。いく人かの探求者は、UHMWPE粉末の圧密化の前にビタミンEを添加した(特開平11−239611号公報、米国特許第6277390号明細書、米国特許第6448315号明細書、国際公開WO01/80778号)。他の人々は、時々昇温の助けを借りて、機械加工された製品中に液体ビタミンEを拡散させた(CA256129、国際公開WO2004/064618号、国際公開WO2005/110276号)。
【0007】
これらの手法の最初のものの欠点は、安定化されていないUHMWPEと比較して、実際の架橋工程時に添加されたビタミンEのラジカル吸収特性による、より低い架橋密度をもつ材料が生産されることである。国際公開WO01/80778号の方法の別の欠点は、インプラントがビタミンEを含有するプリフォームから機械加工され、このインプラントが包装され、次に比較的高い照射量(>4Mrad)で照射され、このことがインプラントの増大した密度をもたらし、それによって、そのインプラントの寸法安定性に悪い影響を及ぼすという事実である。さらに、この包装材料はより高い照射量に曝され、これがその包装の長期の機械特性又は遮断特性を低下させるかもしれない。より好ましくは、プリフォーム成形されたブロック又は棒は、より高い照射量で照射され、次にこの材料から高い精度でインプラントが機械加工され、最後に包装される。さらに、UHMWPE粉末及び液状の高粘度ビタミンEを用いての均一な生成物の作製は困難なままである。
【0008】
その第二の方法はいくつかの欠点をも含んでいる:UHMWPE生成物の、拡散によって制御されたドーピングのため、ビタミンEレベルの深さは、その空間的寸法において、制御されず、不均一であり、限定されたままである。実際のドーピング工程後のアニーリング工程(これも昇温して行われる)が濃度勾配の問題を部分的には解決しているが、完成した製品中のビタミンEの最終的な量は未知のまま残っている。
【0009】
ポリオレフィンの安定化は、人工関節用途に限定されない。用途はまた、注射器(シリンジ)、血液バッグ、薬瓶、医療用包装などのその他の医療デバイスにもある。さらに、食品包装、プラスチック皿、又は温室、食品容器のためのライナー、及びその他の消費者用耐久消費財などの農業及び栄養学上の用途などの食品に接触する用途も可能である。配管、ファイバー、単繊維、又は繊維工業のための製品などのその他の用途だけでなく、ビルディング、自動車、又は電気産業における用途も、様々な安定剤を含む。これらの製品においては、ポリオレフィン、例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、及びポリプロピレンが広く用いられ、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、イルガノックス 1010、イルガノックス B 215、あるいは同様のものを用いて安定化される。これらの添加剤は、ポリマーシステムを、例えば、UV又は可視光、化学的、物理的、機械的、又は熱による分解、あるいはその他の環境からの影響、例えば湿度による老化から防ぐ。これらの用途のためには、この添加剤を含むポリオレフィンはガンマ線又は電子線架橋工程を必ずしも受ける必要はなく、また、非架橋添加剤含有材料も用いられうる。その他の用途のためには、しかし、天然抗酸化剤を含むポリオレフィンを架橋することは有用でありうる。そのような用途の例は、向上した熱安定性を必要とするチューブ又は熱収縮チューブである。もちろん、多くのその他の用途が可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第5414049号明細書
【特許文献2】EP0722973
【特許文献3】米国特許第6228900号明細書
【特許文献4】米国特許第5879400号
【特許文献5】CZ221404
【特許文献6】米国特許第5827904号明細書
【特許文献7】国際公開第2005/074619号
【特許文献8】特開平11−239611号公報
【特許文献9】米国特許第6277390号明細書
【特許文献10】米国特許第6448315号明細書
【特許文献11】国際公開WO01/80778号
【特許文献12】CA256129
【特許文献13】国際公開WO2004/064618号
【特許文献14】国際公開WO2005/110276号
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Willert H.G., Bertram H., Buchhorn G.H., Clin Orthop 258, 95, 1990
【非特許文献2】Costa L., Jacobson K., Bracco P., Brach del Prever. E.M., Biomaterials 23, 1613, 2002
【非特許文献3】Kurtz S.M., Hozack W., Marcolongo M., Turner J., Rimnac C., Edidin A., J Arthroplasty 18, 68-78, 2003
【非特許文献4】Oonishi H., Kadoya Y., Masuda S., Journal of Biomedical Materials Research, 58, 167, 2001
【非特許文献5】Grobbelaar C.J., du Plessis T.A., Marais F., The Journal of Bone and Joint Surgery, 60-B, 370, 1978
【非特許文献6】Wannomae K.K., Bhattacharyya S., Freiberg A., Estok D., Harris W.H., Muratoglu O.J., Arthroplasty, 21, 1005, 2006
【非特許文献7】Ries M.D., Pruitt L., Clinical Orthopaedics and Related Research, 440, 149, 2005
【非特許文献8】Dijkstra D.J., PhD Thesis, University of Groningen, 1988
【非特許文献9】Sutalaら、Clinical Orthopaedics and Related Research, 1995, 319, pp 29
【非特許文献10】Edidinら、46th ORS Annual Meeting, 2000, 0001
【非特許文献11】Currierら、Journal of Biomedical Materials Research, 2000, 53, pp 143
【非特許文献12】Sutulaら、Clinical Orthopaedics and Related Research, 1995, 319, pp 29
【非特許文献13】UHMWPEハンドブック(S. Kurtz編、Elsevier Academic press, 2004, 38頁)
【非特許文献14】Currierら、The Journal of Arthroplasty, 2007, 22(5), p. 721
【非特許文献15】Currierら、Clinical Orthopaedics and Related Research, 1992, 342
【非特許文献16】UHMWPE Handbook, S. Kurtz編, Elsevier Academic Press, 2004, 11章
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
[本発明のまとめ]
増大した架橋をもつUHMWPE材料に関連する上述した問題を考えると、本発明の目的は、それらに通常伴う増大した酸化特性によって悩まされることのない、改善された高度に架橋されたUHMPWE材料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の材料を形成する方法は請求項1に従って与えられ、請求項21で検討しているように、UHMWPE及び添加物の均一混合物を含む高度に架橋された材料をもたらす。特に、本方法は、通常のガンマ線滅菌されたUHMWPE標準材料のものと比較したときに、人工的老化後に、低減された酸化指数をもつ材料を生み出す。そのようなガンマ線滅菌された標準UHMWPE材料は、埋込手術(インプラント手術)における関節の置き換えのための医療分野において典型的に用いられるものである。
【0014】
請求項1の方法は、ある量の添加物質、典型的には抗酸化剤又はラジカル捕捉剤をUHMWPE粉末と混合する工程を含む。そのような混合物を、UHMWPE粉末の融点よりも高い温度をかけることによって次に成形してプリフォームを作り出す。プリフォーム材料が成形されたら、プリフォームは2〜20Mradの照射量でガンマ線又は電子線照射のいずれかで照射をうける。そのような照射はUHMWPE材料のポリマー間の架橋の数を増大させることをもたらし、これが次に最終製品の増大した耐摩耗性をもたらす。成形前にUHMWPE粉末に含まされた添加物質のおかげで、この方法によって形成された材料は、ガンマ線滅菌された標準UHMWPE材料の酸化指数と同じか又はそれより低い酸化指数を有する。
【0015】
好ましくは、本方法は、酸化指数を向上させるために、照射されたプリフォーム材料を加熱する工程を含まず、むしろ上記添加物質の存在に頼っている。
【0016】
過去には、化学合成された抗酸化剤のいくつかは、ヒトの代謝へのそれらの影響に関する懸念を引き起こしてきた。これらの物質のいくつかは癌又はその他の疾患と関連付けられ、いくつかの合成で作られた物質は最近、ヒトのホルモン系における変化と関連づけられた。したがって、特に医療デバイス又は食品接触用途のために、またそればかりでなく全てのその他の用途のために、天然の抗酸化剤が、実験室で合成された物質よりも好まれている。その他の化学的に合成した添加剤は、上述した問題によって、ヒト又は食品接触用途には許可さえされていない。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[解説]
本発明のUHMWPE材料の製造方法は、UHMWPEのプリフォームを製造する標準法に密接に従っている。「プリフォーム(preform)」の用語は、本明細書を通じて、固められたブロック状、シート状、又は棒(ロッド)状のUHMWPE材料、特に次にさらなる加工を受けて最後にはそれから最終製品を得ることができるものを意味するために用いられる。プリフォームから最終製品を得ることは、公知の標準的方法のいずれかによって行われ、最も典型的にはプリフォームの不要な部分を除去又は機械加工して最終的な形状付与した製品を得ることによって達成される。そのように、プリフォームの用語は、固められたUHMWPE材料の広範囲の一般的形状の全てを含むことが意図されており、おそらくは最良には単純な直方体ブロックと考えられる。このプリフォームはISO5834−2規格に述べられている応力緩和アニーリング法を受けることができる。
【0018】
本発明によるUHMWPE材料の形成は、所望量の添加物質をUHMWPE粉末と混合することで始まる。以下に記載する例では、UHMWPE粉末はTicona GUR(登録商標)1020医療用グレードUHMWPEである。そのような粉末は周知であり、市販され入手可能である。もちろん、任意のその他のUHMWPE粉末も用いることができる(例えば、Ticona GUR(登録商標)1050、DSM UH210、Basell 1900、高純度のUHMWPE粉末)。UHMWPEの他に、その他のポリオレフィン、例えば、HDPE、LDPE、LLDPE、又はポロプロピレンばかりでなく、その他のポリマー、例えば、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリエステル類、ポリカーボネート(PC)又はポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリアミド、ポリオキシメチレン(POM)、ポリフェニルエーテル(PPE)、ポリウレタン(PUR)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリイミド、ポリアリールスルホン(PSU、PPSU)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、あるいはシリコーン、例えば、ポリジメチルシロキサン(PDMS)も用いることができる。UHMWPE粉末と混合される添加物質は、抗酸化剤又はラジカル捕捉剤であることが好ましい。添加物質とUHMWPE粉末との混合工程において、完全に均一な混合物が得られることが好ましい。疑いなく、均一な出発混合物が用いられた場合には、添加物質は最終的なUHMWPEプリフォーム全体に均一に分配される。
【0019】
ひとたび添加物質とUHMWPE粉末が混合されれば、それらはそのUHMWPE粉末の融点よりも高い温度にてプリフォームへと成形される。この段階では、温度は成形工程に対して特に重要ではなく、温度がUHMWPE粉末の融点よりも高ければ充分である。当分野で周知のとおり、高温は材料のプリフォームへのより迅速な成形をもたらす。
【0020】
典型的には、添加物質及びUHMWPE粉末の成形は、UHMWPE粉末の融点より高い温度であるが、さらには添加物質の分解温度よりも下であることが好ましい。明らかに温度はほとんどの化合物に影響を及ぼし、実際に同じことは添加物質である抗酸化剤又はラジカル捕捉剤にとっても事実である。必須ではないが、成形工程の温度をこの添加物質の分解温度よりも低く保つことが好ましく、なぜならこれが改善された最終製品をもたらすからである。本発明の一つの側面では、UHMWPE粉末の成形は、不活性雰囲気、例えば、アルゴン又は窒素中で行われる。
【0021】
当分野で周知のとおり、ガンマ線又は電子線によるUHMWPEプリフォームの照射は、個々のUHMWPEポリマー間の架橋密度の増大をもたらす。材料の架橋の密度と同等の尺度は、架橋間の分子量である。明らかに、個々のUHMWPEポリマー間の架橋密度が高いほど、架橋間の分子量は小さくなる。明らかに、その逆もまた正しく、架橋密度の低下は、架橋間の分子量の低下によって代表される。好ましくは、ガンマ線又は電子線での照射は2〜20Mradの照射量であり、この値は必要とされるUHMWPE材料の最終特性に応じて選択することができる。照射量を変えることは、架橋間の分子量に違いをもたらし、所望の最終製品に基づいて選択されることが意図される。
【0022】
この段階では、架橋間の低下した分子量を有するUHMWPEプリフォームが作られる。この低下した分子量は、当分野で周知のように、向上した耐摩耗特性を有する材料の指標である。架橋の数のこの増加は、より大きな耐摩耗性の最終製品をもたらし、なぜなら個々のポリマーがその周囲のものとより充分に結合されているからである。しかしながら当分野で周知のように、UHMWPE材料の架橋の数の増加には、フリーラジカルの形成の増大が伴う傾向がある。このことは、架橋反応を引き起こし、架橋の形成をもたらすガンマ線又は電子線照射の明らかな結果である。
【0023】
UHMWPEプリフォーム材料内でのフリーラジカルの発生は一般に好ましくない。酸素への長期の曝露時、又はASTM F2003によって説明されている加速老化条件下でのフリーラジカル含有量の増大には、UHMWPE材料の酸化の増大が通常伴う。これは、材料中に存在するフリーラジカルが、プリフォームの環境中に存在する酸素とより容易に反応することに起因し、これがその材料の最終特性における望ましくない低下をもたらす。
【0024】
過去においては、UHMWPE部材は、照射処理の前に空気中で包装されていた。しかし、空気中で照射された材料が、人工的老化後(Sutalaら、Clinical Orthopaedics and Related Research, 1995, 319, pp 29)又は実時間の貯蔵老化後(Edidinら、46th ORS Annual Meeting, 2000, 0001)に、酸化の増大を示した。この酸化には、機械特性の望ましくない低下が伴う(Edidinら、46th ORS Annual Meeting, 2000, 0001; Currierら、Journal of Biomedical Materials Research, 2000, 53, pp 143)。後で、滅菌工程が、より高い照射量を用いた架橋と並んで不活性ガス又は真空環境中で行われ、これがUHMWPEの有害な酸化の低下をもたらした(Edidinら、46th ORS Annual Meeting, 2000, 0001; Sutulaら、Clinical Orthopaedics and Related Research, 1995, 319, pp 29)が、より複雑且つ費用のかかる照射工程をももたらした。
【0025】
それに反して、本発明による材料は、ガンマ線又は電子線照射工程によって生じる酸化の増大による困難を受けない。添加物質の存在は、空気中での照射にもかかわらず、UHMWPEプリフォームの酸化を劇的に低下させる。したがって、本発明による材料は、容易且つ安価な照射法と組み合わされた非常に低い酸化を示す。実際に、5気圧の酸素圧での酸素ボンベ中且つ70℃で14日間のASTM F 2003に規定されている人工的老化過程の後、本発明のUHMWPEプリフォームは、バルク形態(プリフォームとして)又はそれが埋込部材(インプラント)に成形された後のいずれかにおいて、通常のガンマ線滅菌された(不活性ガス、例えば、窒素又はアルゴン中で処理した)標準的UHMWPEサンプル材料のものよりも、少なくとも同じか又はより一般的にはより低い酸化指数を示す。
【0026】
ガンマ線滅菌された(不活性ガス、例えば、窒素又はアルゴン)標準的UHMWPEサンプルは、本発明における比較の手段のための標準サンプルであると考えられる。この標準サンプルは上述したものと同じUHMWPE粉末から調製されるが、添加物質を含まず、且つ高用量のガンマ線又は電子線照射による照射はされないけれども、照射量レベルはUHMWPEハンドブック(S. Kurtz編、Elsevier Academic press, 2004, 38頁)に記載されているように2.5〜4.0Mradに制限される。その融点よりも高い温度での成形によるUHMWPE粉末の固化の後、この材料はある用量のガンマ線照射を用いて滅菌される。典型的には、この滅菌照射工程は約3Mradの照射量である。また、UHMWPEハンドブック(S. Kurtz編、Elsevier Academic press, 2004, 38頁)に記載されているように、UHMWPEサンプルはガンマ線照射の前に不活性雰囲気中で包装されることができる。そのような滅菌工程は人体中への埋込部材(インプラント)として用いることを意図されているサンプルに対して行われ、このサンプルはそれらを使用する前に滅菌されなければならない。加えて、上記から明らかなように、そのようなガンマ線滅菌されたサンプルは、滅菌工程の前に、必要とされるインプラントの形状に通常は成形される。インプラントの形状へのこの成形は、材料の関連特性、特に酸化指数に関する関連特性に有意な影響を及ぼさない。
【0027】
1995年より前は、ポリエチレンは空気透過性の包装中でのガンマ線照射によって一般には滅菌されていたが、これは照射工程中及びその後の両方でインプラントに酸素が接触することを可能にしていた。このことが、貯蔵及びインビボの両方でのひどい酸化と、その結果、埋め込んだ関節の早期の不具合をもたらした(Currierら、The Journal of Arthroplasty, 2007, 22(5), p. 721; Currierら、Clinical Orthopaedics and Related Research, 1992, 342)。その後すぐに、結果として、人工関節用途に用いられるUHMWPEは、真空を適用することによって排気されているか又は不活性ガスでフラッシュし、酸素を除去した遮蔽包装(バリアパッケージ)中でガンマ線照射された。これが、照射中及び貯蔵時の酸化の著しい低下をもたらした。しかし、酸化は体内でも起こるため、ガンマ線遮蔽性の又はガンマ線不活性の滅菌部材は酸化過程を有意に遅延させるだけであり、完全には抑制しなかった(Currierら、The Journal of Anthroplasty, 2007, 22(5), p. 721)。
【0028】
本明細書の最後に提供した比較の例からみれば、本発明による材料のいくつかの例が示されている。加えて、実施例は、製造工程の様々な段階における本発明の材料の特性を詳細に示している。これらの比較の例においては、サンプルは、いかなる添加物質もなし、α−トコフェロール、クルクミン、及びナリンゲニンの添加ありで示されている。これらの添加化合物のそれぞれは抗酸化物質と考えることができ、実際に人体または典型的な栄養物中のいずれかに見ることができる天然抗酸化物質である。
【0029】
例4に示したデータ、特にその中の表4に示されたデータを見ると、添加物質あり及びなしの、そして様々な照射量での多くのサンプルの架橋間の分子量Mcの比較が、ガンマ線滅菌されたUHMWPEサンプルとの比較のために示されている。直ちに明らかなとおり、表4に示したように7又は14Mradの照射量でサンプルに照射する工程は、架橋間の分子量の大きな低下をもたらす。明らかに、架橋間の分子量のこの低下は照射の結果であり、架橋密度の増大(これは耐摩耗性の増大を伴う)を示している。すなわち、本発明による材料は、標準的ガンマ線滅菌サンプル(PE Steri)よりも顕著に向上した耐摩耗性を有する。わずか7及び14Mradの照射量が表4に示されているとはいえ、架橋密度の増大の同じ傾向は広範囲の照射量について対して見られ、照射量の増大が架橋密度の増大を、その結果として架橋間の分子量の低下を、そして最終材料の耐摩耗性の増大をもたらすという一般的傾向が続く。そうして、本発明による材料が、標準的UHMWPE材料よりも実質的にさらに耐摩耗性であることは、この例から明らかである。この向上した摩耗に鑑みれば、そのような材料は、体の埋込部材(インプラント)、例えば、膝、腰、肩、足関節、手首、足指、又は手指のための全関節置換に利用した場合には、非常に弾力性があることが予期される。
【0030】
例3のほうをみると、例4に示したものと同じ材料が、人工的老化後の最大酸化指数とともに示されている。この人工的老化は上述したように行なわれる。このガンマ線滅菌されたUHMWPEサンプルが、高い照射量のガンマ線又は電子線照射工程をとったが本発明による添加物質を備えていないUHMWPEプリフォームと同等又は実際にそれより低い最大酸化指数を有することは、直ちに明らかである。すなわち、サンプルPE16及びPE23は本発明の材料について上述したのと同じ方法で処理されているが、成形工程の前に組み込まれた添加物質を有していない。これらの材料を電子線又はガンマ線照射工程で処理し、その最大酸化指数を表3に示している。明らかに、7又は14Mradで照射され、いかなる添加物質も含まないサンプルは、表4に見ることができるように増大した耐摩耗特性を有するが、それらはまた増大した照射量の結果として増大した酸化指数をも有する。上で論じているように、この増大した酸化指数は望ましくなく、なぜなら、それは、そのUHMWPEプリフォームが貯蔵時又はインプラントとしての使用中により容易に酸化され、それが材料の脆化と重大な厄介な問題、例えば、そのインプラントの大きな摩耗又は疲労破壊をもたらすことを意味するからである。
【0031】
プリフォームの成形前に添加物質がUHMWPE粉末と組み合わされた4つのサンプルについてみると、老化後の酸化指数はα−トコフェロール、クルクミン、及びナリンゲニンのサンプルについて顕著に低下していることがわかる。実際に、人工的老化後の酸化指数は、最良で、ガンマ線滅菌されたサンプルのものよりも約5倍低い。これは非常に有意な結果であり、なぜなら、本発明のUHMWPE材料が、標準的なガンマ線滅菌されたUHMWPE材料と比較して顕著に向上した耐摩耗特性と、さらには貯蔵又は使用時の酸化へのずっと良好な耐性の両方を有していることを示しているからである。これらの特性の両方とも、インプラント部材の形成においてかなり有利である。すなわち、使用前のインプラント部材の貯蔵時間における明らかな改善、並びに酸化特性の改善がある一方、使用時には、これが使用においては改善された耐摩耗性と結びついて、インプラントの寿命を延ばすことにつながる。
【0032】
この材料の多くの機械特性を例5に示しており、その中の表5に提示している。この表から分かるように、本発明の材料の降伏応力、引張強度、破断伸び、破壊靭性を、添加物質を全く有しない標準材料と比較している。この例とその中の結果は、少量の添加物質の添加は、添加剤を含むUHMWPE材料の最終的機械特性にいかなる顕著な悪影響も及ぼさないことを明白に示している。したがって、本発明の材料が、添加物質を含まない材料と比較して酸化特性の向上を示すだけでなく、その添加物質を備えることが最終的機械特性に顕著な影響を及ぼすこともない。ここでも、このことは、この材料がインプラントとして用いられる場合に大いに有利であり、なぜなら、それは材料がその完全性を維持しており、インプラントとしてなお役に立つことを示しているからである。
【0033】
例5の表5並びに例1の表1に見ることができるように、材料の加工温度は170℃又は210℃のいずれかである。これらの値は、それらがUHMWPEの融点よりも高く、それによって粉末のプリフォームへの成形を可能にするが、純粋な添加物質の分解温度よりも低くなるように通常は選択される。これらの温度値は純粋に例として示しており、成形時にUHMWPE粉末及び添加物質に適用されうる温度の範囲を限定することを、いかなる意味でも意図していない。実際に、プリフォームを作製するために、成形工程で、より低い温度と延長した時間、あるいはより高い温度と短くした時間を用いることが考えられる。加えて、温度を純粋な添加物質の分解温度よりも低く保つことが望ましいがその一方、成形工程時に分解温度よりも高い温度を適用しても、添加物質を有するUHMWPEのプリフォームの耐酸化性の有意な向上をもたらす。
【0034】
さらに、5つの比較の例のそれぞれにおいて添加物として示した物質は、物質の選択のための特定の制限を意図しているのでもない。実際に、広範囲の抗酸化剤又はフリーラジカル捕捉物質から選択することが全く可能である。好ましくは、これらの抗酸化物質は、それらが水溶性ではなく、新生子ウシ血清に不溶性であり、親油性、生体適合性であり、且つ、一般的にはヒトの栄養分中に存在する天然の抗酸化物質であるように選択される。さらに、抗酸化剤の前駆体を形成し且つ人体によって抗酸化剤に変換されうる物質も、可能な代替物と考えられる。
【0035】
上記の範疇に入る適当な物質は、カロテノイドファミリー、またはフラボノイドファミリーの物質群から選択される物質である。カロテノイドの例は、β−カロテン及びリコペンのファミリーであり、フラボノイドの例はナリンゲニン、ヘスペレチン、及びルテオリンである。上記添加物質として好適でもあるさらなる化合物は、没食子酸プロピル(プロピルガレート)、没食子酸オクチル(オクチルガレート)、没食子酸ドデシル(ドデシルガレート)、メラトニン、オイゲノール、及びコエンザイムQ10である。比較の例1〜5には具体的データを示していないが、上述した化合物は全て活性な抗酸化剤であり、本発明のUHMWPE材料の添加物質のための選択肢として好適である。
【0036】
上記からわかるように、本発明によるUHMWPE材料の形成方法は、優れた耐酸化性をも有する耐摩耗性のUHMWPEを提供するために適している。本材料及び製造方法のさらなる追加の利点は、材料の向上した酸化特性が、照射を受けたプリフォームに対して特別なアニーリング工程を行うことなしに達成されることである。すなわち、酸化特性を向上させるために、照射されたプリフォーム材料をアニーリングさせる必要性がなく、なぜなら、上記添加物質がそれら所望の特性をもたらすからである。
【0037】
本発明の材料のさらなる特性は、照射後のフリーラジカル含有量の特性である。例2は表2にESRシグナルとして、照射した材料のフリーラジカル含有量を示している。すなわち、フリーラジカル含有量は室温において、照射工程後の1〜4週間の間に、材料の電子スピン共鳴法によって測定される。ここでも、材料は例3〜5に見られるものと同じであり、ガンマ線滅菌サンプルと比較して提供されている。表2のデータから直ぐに明らかなことは、添加物質含有材料のフリーラジカル含有量は、ESRシグナルによって判定して、ガンマ線滅菌されたプリフォーム標品のものよりも実際により高いことである。上で議論してきているように、サンプルを照射する工程は架橋密度を増大させる一方で、生じたフリーラジカルの数も増大させる。このことに鑑みると、ガンマ線滅菌された標準プリフォームが過度の数のフリーラジカルを生み出さないことが予期され、なぜならそれが増加した数の架橋を形成するためのそのような高い照射量を有していないからである。本発明の材料のフリーラジカル含有量は、ガンマ線滅菌された標準UHMWPEプリフォームのものよりも高い一方で、材料の酸化特性に影響を及ぼさないことを指摘することは特に興味深い。すなわち、本発明による材料のESRシグナルは、ガンマ線滅菌された標準プリフォームのものよりも一般に高いが、そのサンプルの酸化指数はガンマ線滅菌された標準材料のものよりも低い。増大したフリーラジカル含有量がUHMWPE材料のより増大した酸化をもたらすことは当分野で周知であるが(UHMWPE Handbook, S. Kurtz編, Elsevier Academic Press, 2004, 11章)、これは本発明の材料には事実ではない。このことは、例2及び3による表2及び3の比較で明らかに示されている。
【0038】
どうして、本発明による材料が酸化に対する高い耐性を有することができる一方で、ガンマ線滅菌された標準サンプルのものよりも高いフリーラジカル含有量を有するのかについての2つ可能な機構を示す。
【0039】
第一の可能性は、添加物質が、材料中に含まれるフリーラジカルのための活性な結合部位を実際に提供しているということである。すなわち、フリーラジカルは本発明による材料中になお明らかに存在しているが、いかなる酸化反応にも関与することができない。これは、高いESRシグナルと低い酸化指数値によって裏付けられている。したがって、添加物質の存在が、フリーラジカルがUHMWPE材料の近傍に存在する酸素と反応する能力に対して大きな影響をもっていることは極めて明らかである。添加物質が何らかの方法でそれ自身と又はポリマー構造中でフリーラジカルと結合し、それによってフリーラジカルは、存在するどの酸素とも反応できず、このことが材料の酸化特性の顕著な向上をもたらすと考えられる。
【0040】
なぜ本発明による材料が、高いフリーラジカル含有量にもかかわらず低い酸化指数を有するかについての第二の可能性は、添加物質と、プリフォームの近傍に存在する酸素との特異的な反応である。このシナリオでは、フリーラジカルはUHMWPE材料内になお存在しているが、それらは添加物質自体よりも、環境中の酸素との反応性がより小さい。すなわち、抗酸化剤又はフリーラジカル捕捉剤である添加剤は、フリーラジカルよりも酸素とのより高い反応性を有しており、その結果、フリーラジカルよりも前に酸素と反応する。これは、なぜ高いフリーラジカル含有量が本発明のUHMWPE材料中に許容される一方で、顕著に向上した酸化特性を備えてもいるかを説明するだろう。すなわち、そこに含まれるフリーラジカルの反応によるUHMWPE材料の酸化は、添加物質と反応することがより有利であるので、起こらないだけである。
【0041】
上の2つのシナリオは独立に存在するが、両方が本材料の特性に役割を果たしていることも全くありそうである。すなわち、フリーラジカルはある程度添加物質に結合することができ、加えて、添加物質はエネルギー的に、サンプルの周囲に存在する酸素とより反応しやすい。
【0042】
例4の表4の架橋間の分子量をみると、本発明にしたがって調製したサンプルに対する値は、ガンマ線照射した標準UHMWPEプリフォームのものよりも低い値を有する。実際に、本発明による材料は、ガンマ線滅菌された標準UHMWPEプリフォームのものよりも10〜60%低い、プリフォームの照射後の架橋間分子量を有することが予期される。明らかに、これらは有利な値であり、なぜならそれらは顕著に向上した耐摩耗性をもつ材料を示しているからである。好ましくは、架橋間分子量は6000g/モル未満である。
【0043】
例3の表3に示したデータからさらに明らかなとおり、また、上で議論したように、本発明による材料は、ガンマ線滅菌されたUHMWPEサンプルのものよりも低い人工的老化後最大酸化指数を有する。実際に、本発明による材料は、ガンマ線滅菌されたUHMWPEサンプルのものの5〜75%の人工的老化後最大酸素指数を有する。すなわち、この材料は0.35未満の人工的老化後酸素指数を有することが予期される。
【0044】
例2の表2に見ることができるように、本発明によるUHMWPE材料のフリーラジカル含有量を表しているESRシグナルは、ガンマ線照射された標準サンプルのものよりも高い。本発明による照射したプリフォームのフリーラジカル含有量は、ガンマ線滅菌された標準UHMWPEサンプルのものの110〜700%の間にあることが予期される。
【0045】
1〜5の比較の例の全ては0.1%w/wとなる添加剤量を記載しているが、これは純粋に例として示している。0.001〜0.5質量%の範囲に入る添加物質量が本発明による有効量であることが予期される。好ましくは、添加物質の量は0.02〜0.2質量%の範囲にある。そのような添加物質量は、高架橋UHMWPE材料の機械特性を大きく弱め且つ低下させることなく、酸化特性に所望の向上をもたらす。
【0046】
上で議論したように、比較の例は、照射のためのわずか2つの照射量、7及び14Mradの照射量しか示していない。ガンマ線又は電子線のいずれかの2〜20Mradの照射量が、最終サンプルの向上された耐摩耗性のための、向上された架橋密度を与えるために充分であることが予期される。照射工程で適用される照射量は約4〜15Mradの範囲内にあることが好ましく、なぜならこれがさらなるサンプルの損傷なしに充分な架橋をもたらすからである。
【0047】
上で議論したように、本発明による材料は、埋込用部材(インプラント部材)を製造するために適していると考えられる。したがって、照射をされたプリフォームはそれをインプラント材料のための関連する形状に形作ることによってさらに処理されることができる。インプラントの成形後、その材料は滅菌されることが必要であり、そうしてそれは貯蔵され、次に容易に手術時に用いられることができる。インプラント部材を滅菌するためには、このインプラントは保護雰囲気、例えば、窒素又はアルゴンを用いるガスバリア包装中に貯蔵され、2〜4Mradでのさらなる照射工程で滅菌されることができる。インプラントはガス透過性包装中に包装され、次にエチレンオキシド又はガスプラズマを用いて滅菌することもできる。ひとたびそのようなインプラントが包装され且つ滅菌されていれば、それは手術時に必要とされるまで安全に貯蔵することができる。本発明による材料から作ったインプラントの顕著な利点は、その材料の酸化が、標準のUHMWPE材料のものよりも低減され、それが実質的に増大した有効期間を可能にすることである
【0048】
〔比較のための例〕
全てのサンプルについて、以下の製品を用いた。GUR(登録商標)1020医療用グレードUHMWPE(Ticona GmbH, ドイツ国)、(±)-α-トコフェロール(ビタミンE、BioChemika、Sigma-Aldrich Chemie GmbH、スイス国)、クルクミン(ウコン由来、粉末、Sigma-Aldrich Chemie GmbH、スイス国)、及び(±)-ナリンゲニン(Sigma-Aldrich Chemie GmbH、スイス国)。
【0049】
[例1]
サンプルは「準工業」サイズ、225×225×45mmで製造した。UHMWPEであるGUR(登録商標)1020を、添加剤なし、及びα-トコフェロール、クルクミン、及びナリンゲニンをそれぞれ添加して、加工した。次に、サンプルを、空気中(酸素が存在する周囲大気条件)で室温にて、包装のあり又はなしで、しかし好ましくは包装なしで、それぞれ2つの異なる照射量7及び14Mrad±10%でガンマ線を用いて架橋させた。熱による後処理は行わなかった。参照として、非照射材料(0Mrad)を用いた。例1のサンプルの加工方法を表1に示している。
【0050】
【表1】

【0051】
この試験は、UHMWPE粉末といくつかの様々な抗酸化剤との混合物によって「準工業」サイズの完全に均一なサンプルを得ることができることを示している。さらに、このサンプルは、170℃(これはUHMWPEの融点より35℃高い)の比較的低い温度でその混合物の加工をすることができることを示している。
【0052】
[例2]
例1の全ての照射されたサンプルのフリーラジカル含有量を測定した。フリーラジカル含有量の決定は、ガンマ線照射後1〜4週間で、室温にて電子スピン共鳴(ESR)を用いて行った。ESRシグナルはサンプルの中央から切った円柱について測定した(長さ15mm、直径4mm)。これらの円柱を試験管に挿入し、これをESR装置(Bruker)内に配置した。磁場は一定のマイクロ波周波数で変えて、磁場の強さの関数として吸収シグナル(一次導関数)を得た。任意単位(arbitrary unit [a.u.])の最終的なESRシグナルは、一次吸収シグナルの二重積分によって得られる(Gerson F., Huber W., Electron Spin Resonance Spectroscopy of organic radicals, Wiley VCH, 2007; Weil J.A., Bolton J.R. Electron Paramagnetic Resonance, John Wiley & Sons, 2007)。パーセント単位のESRシグナルは、二重積分後の値から導かれる。
結果を表2に示す。
【0053】
【表2】

【0054】
例2は、UHMWPEへのα-トコフェロールの添加が、架橋後のフリーラジカルの数を低減するが、クルクミンはフリーラジカル計数を高めることを示している。焼結させ、架橋させたUHMWPE製品中のフリーラジカルの数へのナリンゲニンの影響は、穏やかなにすぎないようにみえる。PE steriは、ガンマ線滅菌されたUHMWPE標準サンプルに関連するデータを示している。
【0055】
[例3]
例2と同じサンプルセットを用いて、UHMWPEコンパウンドの酸化安定性に対するクルクミンとナリンゲニンの影響を試験した。全てのサンプルは、ASTM F 2003に準拠して、酸素ボンベ中、5気圧の酸素圧及び70℃で14日間加速老化させた。老化させた部材の酸化指数は、ASTM F 2102−06に準拠してFTIRを使用して測定した。この規格に準拠して酸化指数の測定をするための方法は、以下のとおりである:サンプルの150μm厚さのスライスを作り、試験して、酸化指数の深さプロファイル(デプスプロファイル)を得る。サンプルからとったミクロスライスから、赤外スペクトルをFTIRで4cm−1の分解能で測定する。酸化指数は、1680〜1765cm−1の領域のピークの強度(これはカルボニルピークに関連する)を、1330〜1396cm−1にある参照バンドの強度で割り算したものとして定義される。
【0056】
老化後の最大酸化指数(max.OI)を表3に示している。
【0057】
【表3】

【0058】
この例は、後照射熱処理なしのサンプルであってクルクミン(PE19、PE26)又はナリンゲニン(PE20、PE27)を含むサンプルが、照射をされた純粋なUHMWPE材料(PE6、PE23)と比較して、人工的老化後に最小の酸化を示すか又はいかなる酸化も示さないことを実証している。クルクミン又はナリンゲニンを含有する照射を受けたサンプルは、添加剤なしの材料と等しいか又はそれより多いフリーラジカルを含む(表2を参照されたい)が、それにもかかわらず、人工的老化後にほとんど全く酸化が観測されない。
結論:老化手順前に多数のフリーラジカルをもって始まるUHMWPEサンプルを用いて、人工的老化後の非常に低い酸化指数を得ることができる。
【0059】
[例4]
先の例におけるものと同じ組のサンプルを用いて、架橋密度と膨潤比をASTM D 2765−95 C法(1サンプル当たり3つの試験片)に準拠して測定した。結果は、架橋間の分子量Mによって表し、表4に示している。
【0060】
加えて、参照ピーク(1900cm−1)の面積を用いて、トランス−ビニレンピーク(965cm−1)の面積を規格化することによって、FTIRを使用してトランス−ビニレン指数(TVI)を測定した。4つのミクロトーム断面を2.5mmの最大深さまで測定し平均して、実際のガンマ線照射量(その他のサンプルに関連するガンマ線照射量)についての定性的情報を得た。
【0061】
【表4】

【0062】
試験4は、全ての添加物質が架橋工程の間に照射を消費して、純粋なUHMWPEサンプル(PE16)と比較して低い架橋密度をもたらすことを明らかに実証している。対応するTVI指数と関連してMを考慮すると、α-トコフェロールと比較して、クルクミンはわずかに、ナリンゲニンは明らかにより効率的な架橋性添加剤であると思われる。しかし、7Mradの照射量で照射された抗酸化剤含有サンプルの全ては、標準の滅菌されたUHMWPEサンプルよりも低い架橋間分子量を示している。
【0063】
[例5]
例1のいくつかのサンプルの機械特性を測定した。降伏応力、引張強度、及び破断伸びを、ASTM D 638(1サンプル当たり5つの試験片)に準拠して測定し、DIN EN ISO 11542−2(1サンプル当たり4つの試験片)に準拠して破壊靭性を測定した。機械的試験の結果は表5に示している。
【0064】
【表5】

【0065】
この例は、材料が、優れた機械特性をもって170℃で加工できることを示している。さらに、例5は、クルクミン又はナリンゲニンの添加が、焼結したUHMWPE製品の機械特性に悪影響を及ぼさないことを実証している。全ての非照射サンプルは、ISO 5834−2タイプ1規格に適合している(YS>21.0MPa、TS>35.0MPa、EAB>300.0%、FT>180kJ/m)が、型の温度は加工時に170℃を超えなかった。全ての架橋したサンプルは、ISO 5834−2タイプ2規格(YS>19.0MPa、TS>27.0MPa、EAB>300.0%、FT>90kJ/m)に適合する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐酸化性UHMWPE材料の製造方法であって、以下の工程:
添加物質として所定量の抗酸化剤及び/又はラジカル捕捉剤をUHMWPE粉末と混合する工程;
前記UHMWPE粉末の融点よりも高い温度をかけることによって、UHMWPE粉末と添加物質との前記混合物を成形してプリフォームを作る工程;
空気中、周囲大気条件下で、2〜20Mradの照射量でガンマ線照射又は電子線照射のいずれかで前記プリフォームに照射を行う工程;
を含み、
前記添加物質を有し、照射を受けたプリフォームが、ガンマ線滅菌された標準UHMWPE材料の酸化指数と同じか又はそれより低い人工的老化後の酸化指数を有する、製造方法。
【請求項2】
前記添加物質を有し、照射を受けた前記プリフォームが、ガンマ線滅菌された標準UHMWPE材料よりも大きなフリーラジカル含有量を有する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記プリフォームの照射工程が前記プリフォーム中の架橋を増大させ、それにより前記の照射を受けた材料が、ガンマ線滅菌された標準UHMWPE材料のものよりも小さな架橋間分子量を有する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記の照射を受けたプリフォームの架橋間分子量が、ガンマ線滅菌された標準UHMWPE材料のものよりも10〜60%低い、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
いかなるアニーリングもさらなる加熱も、前記の照射を受けたプリフォームに行わない、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記の添加物質とUHMWPE粉末との混合物にかける温度が、好ましくは、UHMWPEの融点よりも高く、また前記添加物質の分解温度よりも低い、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記添加物質が好ましくは以下の:
カロテノイド類、例えば、β−カロテン及びリコペン、フラボノイド類、例えば、ナリンゲニン、ヘスペレチン、及びルテオリン、アミノ酸系化合物、例えば、システイン、グルタチオン、チロシン、トリプトファン、あるいは、物質であるクルクミン、没食子酸プロピル、没食子酸オクチル、没食子酸ドデシル、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、メラトニン、オイゲノール、及びコエンザイムQ10、並びにビタミンE、
の1種以上である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記添加物質と前記UHMWPE粉末を混合する工程が均一な混合物を形成する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記UHMWPE粉末と混合された添加物質の量が0.001〜0.5質量%の範囲に入る、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記UHMWPE粉末と混合された添加物質の量が0.02〜0.2質量%の範囲に入る、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記ガンマ線照射又は電子線照射が、好ましくは、4〜15Mradの照射量で行われる、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
人工的老化後の、前記の照射を受けたプリフォームの最大酸化指数が、ガンマ線滅菌された標準UHMWPE材料のものよりも低い、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
人工的老化後の、前記の照射を受けたプリフォームの最大酸化指数が、ガンマ線滅菌された標準UHMWPE材料の5〜75%である、請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
人工的老化後の、前記の照射を受けたプリフォームの最大酸化指数が、ガンマ線滅菌された標準UHMWPE材料の10〜50%である、請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
人工的老化後の、前記の照射を受けたプリフォームの最大酸化指数が、ガンマ線滅菌された標準UHMWPE材料の15〜30%である、請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記フリーラジカル含有量がESRによって測定され、前記の照射を受けたプリフォームのフリーラジカル含有量が、ガンマ線滅菌された標準UHMWPE材料のものよりも高い、請求項1〜15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
前記フリーラジカル含有量がESRによって測定され、前記の照射を受けたプリフォームのフリーラジカル含有量が、ガンマ線滅菌された標準UHMWPE材料のものの110〜700%である、請求項1〜16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記フリーラジカル含有量がESRによって測定され、前記の照射を受けたプリフォームのフリーラジカル含有量が、ガンマ線滅菌された標準UHMWPE材料のものの120〜600%である、請求項1〜17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記フリーラジカル含有量がESRによって測定され、前記の照射を受けたプリフォームのフリーラジカル含有量が、ガンマ線滅菌された標準UHMWPE材料のものの130〜500%である、請求項1〜18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
以下の工程:
前記プリフォームの照射後、照射を受けたプリフォームをインプラントに成形する工程;
前記インプラントを包装し、2〜4Mradでのさらなるガンマ線照射によって滅菌するか、あるいは前記インプラントをエチレンオキシド又はガスプラズマに曝して滅菌する工程、
のうち一つ以上をさらに含む、請求項1〜19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
UHMWPEと、添加物質としての抗酸化剤又はフリーラジカル捕捉剤との混合物を含み、空気中、周囲大気条件下で2〜20Mradの照射量でガンマ線照射又は電子線照射での照射を受けている、プリフォームとしての耐酸化性UHMWPE材料であって、
前記のUHMWPEと添加物質との照射を受けた混合物が、人工的老化後に、ガンマ線滅菌された標準UHMWPE材料のものと同じか又はそれより低い酸化指数を有する、
プリフォームとしての耐酸化性UHMWPE材料。
【請求項22】
前記材料が、ガンマ線滅菌された標準UHMWPE材料よりも大きなフリーラジカル含有量を有する、請求項21に記載の材料。
【請求項23】
前記の照射を受けたプリフォームが、ガンマ線滅菌された標準UHMWPE材料のものよりも低い架橋密度を有する、請求項21に記載の材料。
【請求項24】
前記の照射を受けたプリフォームの架橋間分子量が、ガンマ線滅菌された標準UHMWPE材料のものよりも10〜60%低い、請求項23に記載の材料。
【請求項25】
前記の照射を受けたプリフォームがアニーリング又はさらなる加熱に曝されていない、請求項21〜24のいずれか一項に記載の材料。
【請求項26】
前記添加物質が、好ましくは、
カロテノイド類、例えば、β−カロテン及びリコペン、フラボノイド類、例えば、ナリンゲニン、ヘスペレチン、及びルテオリン、アミノ酸系化合物、例えば、システイン、グルタチオン、チロシン、トリプトファン、あるいは、物質であるクルクミン、没食子酸プロピル、没食子酸オクチル、没食子酸ドデシル、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、メラトニン、オイゲノール、コエンザイムQ10、及びビタミンE、の一種以上である、請求項21〜25のいずれか一項に記載の材料。
【請求項27】
前記添加物質が前記UHMWPE材料全体に均一に分配されている、請求項21〜26に記載の材料。
【請求項28】
前記UHMWPE材料中の添加物質の量が0.001〜0.5質量%の範囲に入る、請求項21〜27のいずれか一項に記載の材料。
【請求項29】
前記UHMWPE材料中の添加物質の量が0.02〜0.2質量%の範囲に入る、請求項21〜28のいずれか一項に記載の材料。
【請求項30】
人工的老化後の、前記照射を受けたプリフォームの最大酸化指数が、ガンマ線滅菌された標準UHMWPE材料のものよりも低い、請求項21〜29のいずれか一項に記載の材料。
【請求項31】
人工的老化後の、前記照射を受けたプリフォームの最大酸化指数が、ガンマ線滅菌された標準UHMWPE材料の5〜75%である、請求項30に記載の材料。
【請求項32】
人工的老化後の、前記照射を受けたプリフォームの最大酸化指数が、ガンマ線滅菌された標準UHMWPE材料の10〜50%である、請求項30に記載の材料。
【請求項33】
人工的老化後の、前記照射を受けたプリフォームの最大酸化指数が、ガンマ線滅菌された標準UHMWPE材料の15〜30%である、請求項30に記載の材料。
【請求項34】
前記フリーラジカル含有量がESRによって測定され、前記の照射を受けたプリフォームのフリーラジカル含有量が、ガンマ線滅菌された標準UHMWPE材料のものよりも高い、請求項21〜33のいずれか一項に記載の材料。
【請求項35】
前記フリーラジカル含有量がESRによって測定され、前記の照射を受けたプリフォームのフリーラジカル含有量が、ガンマ線滅菌された標準UHMWPE材料の110〜700%である、請求項34に記載の材料。
【請求項36】
前記フリーラジカル含有量がESRによって測定され、前記の照射を受けたプリフォームのフリーラジカル含有量が、ガンマ線滅菌された標準UHMWPE材料の120〜600%である、請求項34に記載の材料。
【請求項37】
前記フリーラジカル含有量がESRによって測定され、前記の照射を受けたプリフォームのフリーラジカル含有量が、ガンマ線滅菌された標準UHMWPE材料の130〜500%である、請求項34に記載の材料。
【請求項38】
UHMWPEと添加物質としての抗酸化剤又はフリーラジカル捕捉剤との混合物を含む、プリフォームとしての材料であって、空気中、周囲大気条件下で2〜20Mradの照射量でガンマ線照射又は電子線照射での照射を受けており、人工的老化後に0.35未満の酸化指数を有する、プリフォームとしての材料。
【請求項39】
人工的老化後の酸化指数が0.25未満である、請求項38に記載の材料。
【請求項40】
人工的老化後の酸化指数が0.15未満である、請求項38に記載の材料。
【請求項41】
UHMWPEと添加物質としての抗酸化剤又はフリーラジカル捕捉剤との混合物を含む、プリフォームとしての材料であって、2〜20Mradの照射量でガンマ線照射又は電子線照射での照射を受けており、6000g/モル未満の架橋間分子量を有する、プリフォームとしての材料。
【請求項42】
前記の架橋間分子量が5000g/モル未満である、請求項41に記載の材料。
【請求項43】
前記の架橋間分子量が4500g/モル未満である、請求項41に記載の材料。
【請求項44】
UHMWPEと添加物質としての抗酸化剤又はフリーラジカル捕捉剤との混合物を含む、プリフォームとしての材料であって、空気中、周囲大気条件下で2〜20Mradの照射量でガンマ線照射又は電子線照射での照射を受けており、ガンマ線滅菌された標準UHMWPEプリフォームのものよりも高いフリーラジカル含有量を有する材料。
【請求項45】
UHMWPEと添加物質としての抗酸化剤又はフリーラジカル捕捉剤との混合物を含む、プリフォームとしての材料であって、空気中、周囲大気条件下で2〜20Mradの照射量でガンマ線照射又は電子線照射での照射を受けており、0.35未満の人工的老化後の酸化指数と、6000g/モル未満の架橋間分子量とを有する材料。
【請求項46】
UHMWPEと添加物質としての抗酸化剤又はフリーラジカル捕捉剤との混合物を含む、プリフォームとしての材料であって、空気中、周囲大気条件下で2〜20Mradの照射量でガンマ線又は電子線照射での照射を受けており、0.35未満の人工的老化後の酸化指数と、ガンマ線滅菌された標準UHMWPE材料のものよりも高いフリーラジカル含有量とを有する材料。
【請求項47】
UHMWPEと添加物質としての抗酸化剤又はフリーラジカル捕捉剤との混合物を含む、プリフォームとしての材料であって、空気中、周囲大気条件下で2〜20Mradの照射量でガンマ線又は電子線照射での照射を受けており、6000g/モル未満の架橋間分子量と、ガンマ線滅菌された標準UHMWPE材料のものよりも高いフリーラジカル含有量とを有する材料。
【請求項48】
UHMWPEと添加物質としての抗酸化剤又はフリーラジカル捕捉剤との混合物を含む、プリフォームとしての材料であって、空気中、周囲大気条件下で2〜20Mradの照射量でガンマ線照射又は電子線照射での照射を受けており、0.35未満の人工的老化後の酸化指数と、6000g/モル未満の架橋間分子量と、ガンマ線滅菌された標準UHMWPE材料のものよりも高いフリーラジカル含有量とを有する材料。

【公表番号】特表2011−521023(P2011−521023A)
【公表日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−508796(P2011−508796)
【出願日】平成20年5月13日(2008.5.13)
【国際出願番号】PCT/EP2008/003834
【国際公開番号】WO2009/138103
【国際公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【出願人】(510059882)スミス・アンド・ネフュー・オルソペディクス・アーゲー (8)
【Fターム(参考)】