説明

耐震構造体、及び耐震工法

【課題】地震により建物が破損した場合にも、建物内に生存可能な空間や呼吸可能な空隙を確保することで、震災による犠牲者の発生を抑制できる耐震構造体、及び耐震工法を提供する。
【解決手段】建物の内部の間仕切り壁を撤去し、地震発生により建物の構造躯体が損壊した際に、上層の前記建物の自重を支持する金属製の書架や物品棚を、建物の専用部分に配置して各部屋に間仕切る。配置した金属製の書架や物品棚の配置形態を保持するために、複数の書架等を接続する形状保持材を取付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は建物の耐震構造体及び耐震工法に係り、特に、地震により建物が損壊した場合にも、その建物内に生存可能な空間や呼吸可能な空隙を必要な短期間だけ確保することができる構造体、及び工法に関する。
【背景技術】
【0002】
阪神淡路大震災において、死者の死因の大部分は、窒息、圧死であったと報告されている。このことから、地震の揺れにより建物が倒壊、損壊した後においても、その建物内に生存空間や呼吸可能な空隙などの最小限の空間が、地震時の生存可能限界といわれている72時間にわたって確保することできれば、人的被害が大きく抑制されると考えられている。
【0003】
近年、新耐震設計法以前に設計された既存建物の耐震診断により、強度不足が認められた建物の耐震補強に関して、種々の提案がなされている。しかしながら、既存建物の耐震補強は、1棟の建物全体を対象に補強する工法が一般的であり、補強のための構造設計から補強工事まで実施するとなると、規模も費用も大きくなることが多い。また、集合住宅においては、耐震補強工事を行うために各居住者の合意形成が必要である。そのため、特に集合住宅においては、耐震補強工事がスムーズに行われていないのが実情である。
【0004】
特許文献1には、鉄筋コンクリート造躯体の開口部内周面に沿わせて、四角形状の枠体を形成し、その枠体内にブレースを設けた鉄筋コンクリート造躯体開口部の耐震補強方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平2−128035号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示された鉄筋コンクリート造躯体開口部の耐震補強工法は、建物の躯体と枠体等の補強部材との一体化がアンカーボルト等で行われる工法であり、1棟の建物単位での施工が前提となる。また、枠体やブレース等の補強部材の設置により、
居住者の日常生活に支障が生じ、その結果、居住者に不快感を与えることもある。
【0007】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、地震により建物が倒壊、損壊した後においても、その建物内に生存空間や呼吸可能な空隙など、生存可能な最小限環境が確保でき、震災による犠牲者の発生を抑制する耐震構造体、及び耐震工法を提供することを目的とする。また、集合住宅において、例えば各住戸の専用部分単位で耐震工事が施工できる耐震構造体、及び耐震工法を提供することも他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の第1の観点に係る耐震構造体は、建物の専用部分に室内設備あるいは間仕切りとして複数箇所に配置され、地震発生により建物の構造躯体が損壊した際に、上層の建物の自重を支持する金属製鉛直支持材と、複数の金属製鉛直支持材間を接続し、該金属製鉛直支持材の配置形態を保持する形状保持材と、を備えることを特徴とする。
【0009】
また、上記目的を達成するため、本発明の第2の観点に係る耐震構造体は、建物の専用部分の内部の壁体に沿って配置され、地震発生により建物の構造躯体が損壊した際に、上層の建物の自重を支持する金属製鉛直支持材と、複数の金属製鉛直支持材間を接続し、該金属製鉛直支持材の配置形態を保持する形状保持材と、を備えることを特徴とする。
【0010】
鉛直支持材は、金属製の書架、物品棚、あるいは間仕切りから構成されていてもよい。
【0011】
また、建物の専用部分に配置されて、立体格子状に構築されて収納空間を形成するフレーム構造体をさらに備えてもよい。
【0012】
また、形状保持材は、間隔をあけて配置された複数の金属製鉛直支持材を連結する連結材を備えてもよい。
【0013】
また、形状保持材は、建物の室内空間を取り囲むように配置された複数の金属製鉛直支持材の配置形態を対角に横切るように設置されたブレース材をさらに備えてもよい。
【0014】
また、形状保持材は、隣接して配置された金属製鉛直支持材の交差部を補強するコーナー補強材をさらに備えてもよい。
【0015】
また、上記目的を達成するため、本発明の第1の観点に係る耐震工法は、建物の専用部分の間仕切りを撤去する工程と、地震発生により建物の構造躯体が損壊した際に、上層の建物の自重を支持する金属製鉛直支持材を、建物の専用部分に配置して各部屋に間仕切る工程と、金属製鉛直支持材の配置形態を保持するために、複数の金属製鉛直支持材を接続する形状保持材を取付ける工程と、を備えることを特徴とする。
【0016】
また、上記目的を達成するため、本発明の第2の観点に係る耐震工法は、地震発生により建物の構造躯体が損壊した際に、上層の建物の自重を支持する金属製鉛直支持材を、建物の間仕切りに沿って配置する工程と、金属製鉛直支持材の配置形態を保持するために、複数の金属製鉛直支持材を接続する形状保持材を取付ける工程と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
以上のように、本発明によれば、地震により建物が倒壊、損壊した後においても、その建物内に生存空間や呼吸可能な空隙など、生存可能な最小限環境が確保でき、震災による犠牲者の発生を抑制する耐震構造体、及び耐震工法を提供することができる。また、集合住宅において、各住戸の専用部分単位で耐震工事が施工できる耐震構造体、及び耐震工法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態に係る耐震構造体の斜視図。
【図2】本発明の実施形態に係る耐震構造体を構成するスチールラックの斜視図。
【図3】図2中の“III”で示した部位の拡大図。
【図4】本実施形態に係る耐震構造体を施工する前の集合住宅の一住戸の専用部分を示した平面図。
【図5】一住戸の専用部分全体に、本願実施形態に係る耐震構造体を施工した場合の一例を示した平面図。
【図6】一住戸の専用部分の一部に、本願実施形態に係る耐震構造体を施工した場合の一例を示した平面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態に係る耐震構造体の構成について、図1乃至図3を参照して説明する。図1は、本発明の実施形態に係る耐震構造体の斜視図を示している。なお、本実施形態では、集合住宅の一住戸の専用部分に耐震構造体を導入した場合について説明する。
【0020】
図1に示す耐震構造体1は、3基のスチールラック10と、間隔をあけて配置されたスチールラック10を接続する4本の連結材11と、複数の金属製の条材により組み立てられたフレーム構造体12と、耐震構造体1の上部および下部で交差するように、スチールラック10及びフレーム構造体12に端部が取り付けられた上ブレース材13及び下ブレース材14と、端部をスチールラック10の外面(背面)及びフレーム構造体12の外側面(耐震構造体1の背面)に対角に取付けられた背面ブレース材15と、平面視して矩形状に構築された耐震構造体1の隅角部を補強するコーナー補強材16と、を備えている。
【0021】
上述した耐震構造体1を構成するこれらの部材は、例えば、集合住宅等の間仕切り壁や、住宅用の部品などの、いわゆる集合住宅の内装部分として機能する。また、これらの部材は、導入される居住空間のおおよそ床から天井までの高さを有し、地震が発生し建物の柱等が圧壊した場合に、耐震構造体1の導入階よりも上層の建物の荷重を支持し、居住者の生存空間や呼吸可能な空隙を確保する。
【0022】
図2は、耐震構造体1を構成する金属製鉛直支持材としてのスチールラック10の斜視図を示している。スチールラック10は、例えば、JIS規格に適合した書架や物品棚であり、居住空間のおおよそ床から天井までの高さを有している。スチールラック10は、建物の壁体に沿って設置され、また、間仕切りとして利用できる。なお、既製のスチールラック10は、収納する物品に応じて多種多様なものが提供されている。居住者は、多種多様な既製のスチールラック10の中から、使用目的に応じて自由に選択することが可能である。また、スチールラック10以外にも、所定壁厚のパーティション(間仕切り壁)も金属製鉛直支持材として用いることができる。
【0023】
また、スチールラック10は、設置階の建物の柱等が地震により圧壊した場合に、上層の建物の荷重を支持する。この上層の建物の荷重は、主にスチールラック10の四隅に配された4本の支柱10a、スチールラック10を構成する側板10b、及びスチールラックの背板(不図示)により支持される。そのため、スチールラック10の選定にあたっては、居住者の使用目的に応じたスチールラックという条件だけではなく、スチールラックが上層の建物の荷重を支持した際に、少なくとも地震時の生存限界時間(72時間)の間、生存空間や呼吸可能な空隙が確保されることが条件となる。なお、地震により耐震構造体1には水平力が作用するが、上述した上ブレース材13やコーナー補強材16等が取り付けられることで、耐震構造体1の初期形状は保持される。そのため、居住者の生存空間等を確保するためには、上層の建物の自重に耐え得るスチールラックが選定される。
【0024】
なお、スチールラック10の天端と天井との間に隙間が生じる場合には、この隙間にゴム板17が挿入される。これにより、スチールラック10は、上層の建物の荷重がスチールラック10にスムーズに伝達されるとともに、隙間からの音漏れを防止することができる。
【0025】
上ブレース材13、及び下ブレース材14(以下、上ブレース材13及び下ブレース材14を区別しない場合は、単にブレース材と記載する)は、例えば、鋼より線製のワイヤーロープから構成されている。図1に示すように、2本の上ブレース材13は、矩形状に形成された耐震構造体1の上部で交差するように、それぞれの端部が耐震構造体1の上部固定部に取り付けられている。同様に2本の下ブレース材14は、耐震構造体1の下部で交差するように、それぞれの端部が耐震構造体1の下部固定部に取り付けられている。これらのブレース材は、地震の揺れにより両端部の距離を広げようとする引張力に抵抗して、矩形状に構築された耐震構造体1の形状を保持する。これにより、耐震構造体1は、初期形状の状態で上層の建物の荷重を支持することができる。なお、ブレース材の材質としては、鋼線ワイヤーロープの他、高強度合成樹脂ロープ、炭素繊維製ワイヤなど、所定強度が確保できる各種引張材が適用できる。
【0026】
本実施形態では、背面ブレース材15も、上述したブレース材と同様に、例えば、ワイヤーロープから構成されている。図1に示すように、2本の背面ブレース材15は、それぞれの端部がスチールラック10やフレーム構造体12の背面や側面(耐震構造体1の外面)の角部に取り付けられ、2本の背面ブレース材が交差するように取り付けられている。背面ブレース材15は、地震の揺れによるスチールラック10やフレーム構造体12の変形を防止する。
【0027】
連結材11は、例えば、JIS規格に適合した山形鋼や溝形鋼等の各種形鋼から構成されている。図1に示すように、連結材11は、間隔をあけて設置された2基のスチールラック10を上部で2本、下部で2本の合計4本で接続している。なお、スチールラック10には連結材11とボルト連結するためのボルト孔(不図示)が形成されている。このように、連結材11が2基のスチールラック10を連結することにより、矩形状に構築された耐震構造体1の形状が強固に保持される。そして、間隔をあけて配されたスチールラック間を連結材11で接続することで、耐震構造体1には出入用の開口25が形成される。この開口25にドア(不図示)を取り付けることで、耐震構造体1に囲まれた生存空間となる一居室を形成することができる。
【0028】
コーナー補強材16も、山形鋼や溝形鋼等の形鋼から構成されている。コーナー補強材16は、図2に示すように、矩形状に形成された耐震構造体1の隅角部に取り付けられ、矩形状に構築された耐震構造体1の形状を保持する。なお、コーナー補強材16は、設計上不要な場合には省略できる。
【0029】
フレーム構造体12は、例えば、山形鋼等の形鋼が立体格子状に組み立てられ、図示しない天板、背板、側板、及び棚板等が取り付けられている。このようにして組み立てられたフレーム構造体12の内部には空間が形成される。居住者は、この空間を布団や衣服等を収納するための収納空間として利用することができる。また、意匠上の観点から、フレーム構造体12や各棚には扉等を取付けることができる。なお、フレーム構造体12は、隣接するスチールラック10と、図示しないボルトで連結されている。そして、フレーム構造体12は、スチールラック10とともに、上層の建物の荷重を支持する。
【0030】
次に、本発明の実施形態に係る耐震構造体1の構造詳細について説明する。図3は、図2中の“III”で示した部位の拡大図を示している。図に示すように、スチールラック10の上面にはアイボルト18が取り付けられている。上ブレース材13の一端は、圧着スリーブ19によりアイボルト18の頭部孔に係止されている。また、上ブレース材13の他端も、スチールラック10の上面に取り付けられたアイボルト18の頭部孔に係止されている。このように、上ブレース材13は、耐震構造体1の略対角線上に取り付けられたアイボルト18間に張設されている。
【0031】
また、スチールラック10の上部には、コーナー補強材16を支持するガセットプレート20が取り付けられている。コーナー補強材16は、それぞれの端部をガセットプレート20とボルト21で連結され、耐震構造体1の隅角部を補強する。
【0032】
また、スチールラック10の下部にも、図示しないアイボルトが取り付けられており、下ブレース材14は、耐震構造体1を略対角線上に接続するように、アイボルト(不図示)間に張設されている。
【0033】
また、図2に示すように、スチールラック10の下部にはベースプレート23が取り付けられている。スチールラック10は、図示しないアンカーボルトにより固定されたベースプレート23を介して床に固定される。これにより地震が発生した場合にも、耐震構造体1を所定位置に止めておくことができる。
【0034】
次に、本実施形態に係る耐震構造体1の施工方法について、図4及び図5を参照して説明する。図4は、本実施形態に係る耐震構造体1を導入する前の集合住宅の一住戸の専用部分を示した平面図である。また、図5は、図4に示した専用部分全体に本実施形態に係る耐震構造体1を施工した場合の一例を示した平面図である。
【0035】
図4に示す住戸の専用部分は、柱31と壁体32とで区画されている。壁体32には、玄関口を形成するための玄関用開口32aと、窓を形成するための窓用開口32bとが形成されている。
【0036】
このような住戸の専用部分は、例えば間仕切り壁33a,33bにより部屋35が、間仕切り壁33c,33dにより収納空間36等が形成されている。一般に集合住宅では、耐震診断の結果により、建て替えや耐震補強の導入が検討される。しかしながら、住民の家族構成や収入等の違いにより、建て替えや耐震補強を導入するための合意形成が困難となることが多い。そのため、耐震補強の導入を望む居住者も、合意形成がなされなければ現状の集合住宅に住み続けなければならない。このような状況において、本発明の実施形態に係る耐震工法は、居住者が専有する住戸単位で施工することができ、さらに従来の工法と比べ簡易にかつ低コストで個々の住戸の安全性を高めることが可能となる。
【0037】
本実施形態に係る耐震構造体1を導入するに当たり、まず、図4に示された全ての間仕切り壁33a,33b・・・を撤去する。次に、耐震構造体1の構成部材(スチールラック10等)が所定位置に配置される。スチールラック10の一部を、図5に示すように、壁体32に沿わせて配置する。なお、集合住宅の構造躯体である梁部材(不図示)の下には、スチールラック10を配置するのが好ましい。これにより、耐震構造体1の導入階の柱が破壊した場合、スチールラック10は、上層の建物による荷重を梁部材を介して支持することができる。
【0038】
なお、居住者の往来や視野を妨げないように、玄関用開口32a及び窓用開口32bに対応する部分にはスチールラック10を配置せずに、代わりに、耐震構造体1の形状を保持する連結材11を設置する。また、連結材11は、耐震構造体1の一体化を図る目的で、ドアの設置箇所や、通路等に適宜取り付ける。
【0039】
居住空間に押入れ等の比較的大容量の収納スペースを確保する場合には、図5に示すように、形鋼等を立体格子状に組み立てたフレーム構造体12を居住空間に設置する。フレーム構造体12の寸法や形状、設置位置は、居住者の要望に応じて自由に設定することができる。
【0040】
このように設置されたスチールラック10、連結材11、及びフレーム構造体12等に、前述したブレース材13やコーナー補強材16を取り付け、地震による耐震構造体1の変形を防止する。
【0041】
以上のように、本発明の実施形態に係る耐震構造体、及び耐震工法を用いることで、次のような効果を得ることができる。
(1)前述したように、地震の発生により建物の柱等の鉛直部材が圧壊した場合、上層の建物の自重をスチールラック10やフレーム構造体12等で支持することができる。これらの部材は、少なくとも人間の生存限界に相当する時間にわたり、居住者の生存空間や呼吸可能な空隙が確保できるように選定され、それらの配置が決定される。そのため、地震による人的被害を抑制することができる。
(2)また、本発明の実施形態に係る耐震構造体1は、既製のスチールラック10や、汎用の形鋼等で構築することができるので、新たな部材の開発が不要である。そのため、本発明を速やかに実施できるとともに、施工コストを抑制することができる。
(3)また、本発明に係る耐震工法は、1棟の建物全体を対象に補強する工法ではなく、耐震工事を実施しようとする居住者の住戸単位での施工が可能である。そのため、集合住宅において各居住者の合意を得る必要がなく、耐震工事をスムーズに実施することができる。
(4)また、耐震構造体を構成するスチールラック10は、多種多様なもの中から居住者の要望に応じて自由に選択することができる。そのため、居住者は、希望の収納スペースを希望する場所に形成することができ、利便性が向上する。
(5)また、耐震構造体1を構成する各部材は、部屋の間仕切りとしても機能する。居住者は、耐震工事前の間取りから、現状の家族構成に合った間取りに比較的自由に変更することができる。
(6)さらに、スチールラック10等の各部材の連結はボルト連結により実現できるため、耐震構造体1を構築するにあたり、特別な技術を必要としない。そのため、居住者自身で、耐震構造体1を構築することも可能であり、耐震工事をスムーズに実施することが可能である。
【0042】
なお、本発明は上述した実施形態に限られず、様々な変形及び応用が可能である。上述した実施形態では、一住戸の専用部分全体に耐震構造体を構築する場合について説明したが、住戸の一部についてのみ耐震構造体1を構築することも可能である。図6は、このような一住戸の専用部分の一部に耐震構造体1を構築した場合の一例を示した平面図である。この実施例では、図4に示す間仕切り壁33e,33fが撤去された後に、耐震構造体1が構築されている。このような施工方法は、特に費用を低額に抑えたいと考えている居住者にとって特に有効である。
【0043】
また、図5及び図6に示すように、上述した実施形態では、間仕切り壁33a,33b・・・・を撤去した後に耐震構造体1を構築した。しかし、内装を全く撤去することなく、壁体32及び間仕切り壁33a,33b・・・・に沿わせてスチールラック10等を配置して、耐震構造体1を構築することができる。このような耐震工法は、間仕切り壁33等の内装撤去費用がかからないため、施工費用をさらに低額に抑えることができる。
【0044】
また、上述した実施形態では、本発明に係る耐震構造体及び耐震工法を集合住宅に適用する場合について説明したが、当然ながら、戸建住宅や、オフィスビル等においても適用することができる。
【0045】
1 耐震構造体
10 スチールラック
11 連結材
12 フレーム構造体
13 上ブレース材
14 下ブレース材
15 背面ブレース材
16 コーナー補強材
17 ゴム板
31 柱
32 壁体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の専用部分に室内設備あるいは間仕切りとして複数箇所に配置され、地震発生により前記建物の構造躯体が損壊した際に、上層の建物の自重を支持する金属製鉛直支持材と、
前記複数の前記金属製鉛直支持材間を接続し、該金属製鉛直支持材の配置形態を保持する形状保持材と、を備えることを特徴とする耐震構造体。
【請求項2】
建物の専用部分の内部の壁体に沿って配置され、地震発生により前記建物の構造躯体が損壊した際に、上層の建物の自重を支持する金属製鉛直支持材と、
前記複数の前記金属製鉛直支持材間を接続し、該金属製鉛直支持材の配置形態を保持する形状保持材と、を備えることを特徴とする耐震構造体。
【請求項3】
前記鉛直支持材は、金属製の書架、物品棚、あるいは間仕切りから構成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の耐震構造体。
【請求項4】
前記建物の専用部分に配置され、立体格子状に構築されて収納空間を形成するフレーム構造体をさらに備えることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の耐震構造体。
【請求項5】
前記形状保持材は、
間隔をあけて配置された複数の前記金属製鉛直支持材を連結する連結材を備えることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の耐震構造体。
【請求項6】
前記形状保持材は、
前記建物の室内空間を取り囲むように配置された複数の前記金属製鉛直支持材の配置形態を対角に横切るように設置されたブレース材をさらに備えることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の耐震構造体。
【請求項7】
前記形状保持材は、
隣接して配置された前記金属製鉛直支持材の交差部を補強するコーナー補強材をさらに備えることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の耐震構造体。
【請求項8】
建物の専用部分の間仕切りを撤去する工程と、
地震発生により前記建物の構造躯体が損壊した際に、上層の前記建物の自重を支持する金属製鉛直支持材を、前記建物の専用部分に配置して各部屋に間仕切る工程と、
前記金属製鉛直支持材の配置形態を保持するために、複数の前記金属製鉛直支持材を接続する形状保持材を取付ける工程と、を備えることを特徴とする耐震工法。
【請求項9】
地震発生により前記建物の構造躯体が損壊した際に、上層の前記建物の自重を支持する金属製鉛直支持材を、前記建物の間仕切りに沿って配置する工程と、
前記金属製鉛直支持材の配置形態を保持するために、複数の前記金属製鉛直支持材を接続する形状保持材を取付ける工程と、を備えることを特徴とする耐震工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−275711(P2010−275711A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−126876(P2009−126876)
【出願日】平成21年5月26日(2009.5.26)
【出願人】(509146920)
【Fターム(参考)】