説明

耐食性及び溶接性に優れたプレシールド鋼板及びこれの製造方法

【課題】本発明は耐食性及び溶接性に優れたプレシールド鋼板及びこれの製造方法に関する。
【解決手段】本発明により、(a)金属基材と、(b)上記金属基材の少なくとも一面にクロムフリー前処理溶液を塗布して形成されたクロムフリー前処理被膜層と、(c)上記クロムフリー前処理コーティングの少なくとも一面に溶接性樹脂溶液を塗布して形成されたプレシールド樹脂被膜層と、から成る耐食性及び溶接性に優れたプレシールド鋼板が提供される。本発明により提供されるプレシールド鋼板は人体に有害なクロムなどの重金属を含まないため環境にやさしく、改善された溶接性は勿論、優れた耐食性、耐化学性、加工性、電着塗装性及び加工後密着性を表す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐食性及び溶接性に優れたプレシールド鋼板及びこれの製造方法に関するもので、より詳しくは、溶接性は勿論、耐食性、加工性及び電着塗装性に優れたプレシールド鋼板、その製造方法及び上記プレシールド鋼板に塗布される組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄鋼メーカから製造された鋼板は、自動車メーカで車体を組み立てた後リン酸塩処理と塗装を経ることになる。この際、車体を組み立てる中で鋼板が重なる部分が何ヶ所か発生することになるが、代表的には自動車ドアのヘム(Hem)部分が挙げられる。このように車体中鋼板が重なる部分にはリン酸塩処理溶液や塗料が浸透し難いため耐食性に弱くなる。このような問題を解決するため自動車メーカでは鋼板が重なる部分にシーリング(Sealing)処理をして腐食因子がその部分に接近することを遮断する方法が使用される。しかし、これは生産性の低下及びコスト上昇を引き起こすためシーリング工程を省くことの出来る表面処理鋼板が求められる。
【0003】
これにより、欧米の鉄鋼メーカは鋼板に亜鉛メッキをした後クロメートまたはクロムフリー前処理溶液を処理し、その上部に約2〜8μm厚さの有機被膜を塗布した鋼板を生産しており、これはリン酸塩被膜や塗装処理を施していない部分にも耐食性を確保することが出来るもので、シーリング工程を省くことが可能で、従って、これをプレシールド(Pre−sealed)鋼板と言う。しかし、上記プレシールド鋼板には耐食性を確保するため厚い樹脂被膜が形成されるため電気抵抗溶接性(スポット溶接)が低下する。このような問題を解決するため電気伝導性に優れた金属粉末を混合するが、これにより樹脂被膜が厚くなり溶接性が不良になるという問題が発生する。
【0004】
一方、EU及び日本などを中心に自動車、家電用鋼板などにクロム、鉛、水銀、カドミウムなどの重金属、特に6価クロムのように人体に有害な物質の使用が規制されており、このような有害重金属を含まないながら耐食性、溶接性、加工性、密着性、及び塗装性などの要求品質を満たす環境にやさしい樹脂被覆鋼板が求められている。
【0005】
一般的に樹脂を鋼板に直接被覆する場合には鋼板と樹脂層との親和力の低下により耐食性及び樹脂密着性が低下するため、鋼板と樹脂を密着させるためには樹脂を被覆する前にメッキ鋼板の上部に前処理層の処理が求められ、このような前処理層に求められる特性としては、耐食性、樹脂密着性、鋼板密着性及び溶接性などの物性が求められ、現在、環境規制の傾向によりクロムが含まれない前処理層の適用が求められる。現在、欧米などで開発されたプレシールド鋼板用前処理溶液はPMT80℃の低温焼付無水洗型(no−rinse)で、殆どが酸性溶液で化学的不安定性に起因して2液型で構成され、製造前に生産ラインで混合されて使用されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、耐食性は勿論、溶接性、樹脂密着性、加工性及び電着塗装性が改善されたプレシールド鋼板及びこれの製造方法を提供することである。
【0007】
また、本発明の目的はクロムを含まない前処理溶液及び溶接性樹脂溶液を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によると、
全体溶液を基準に、数平均分子量が5,000〜15,000の水分散性アクリルまたはエポキシ樹脂から選択された1種以上の樹脂1.0〜15.0重量%、ベントナイトまたはモンモリロナイト系から選択された1種以上のナノクレイ0.05〜5.0重量%、硬化剤としてメラミン樹脂から選択された1種以上の樹脂0.1〜5.0重量%、pHが7.0以上のコロイダルシリカまたは金属シリケート化合物から選択された1種以上のシリケート1.0〜25.0重量%、有機チタネートまたは有機ジルコネート系から選択された1種以上の有機−金属酸化物0.1〜10.0重量%、及び残部の水から成ることを特徴とするプレシールド鋼板用クロムフリー前処理溶液組成物が提供される。
【0009】
また、本発明により、
全体溶液を基準に、数平均分子量が150〜500のエポキシ樹脂10.0〜25.0重量%、硬化剤としてメラミン樹脂5.0〜10.0重量%、ヘキサメチレンブロックジイソシアネートウレタン樹脂1.0〜5.0重量%、Ni、Al、Zn、FeP、FeP、Ti及びSnで構成されるグループから選択された1種以上の金属粉末40〜60重量%、カルシウムイオン交換非晶質シリコンジオキサイド5.0〜15.0重量%、及び残部の溶剤から成ることを特徴とするプレシールド鋼板用溶接性樹脂溶液が提供される。
【0010】
さらに、本発明により、
金属基材の少なくとも一面に本発明によるクロムフリー前処理溶液を乾燥被膜厚さが0.05〜1.0μmになるよう塗布する段階と、
上記塗布されたクロムフリー前処理溶液を60〜298℃の温度で焼付し冷却してクロムフリー前処理被膜層を形成する段階と、
を含むプレシールド鋼板の製造方法が提供され、これに
上記乾燥されたクロムフリー前処理被膜層上に本発明による溶接性樹脂溶液を乾燥被膜の厚さが2.0〜5.0μmになるよう塗布する段階と、
上記溶接性樹脂溶液が塗布された鋼板を220〜298℃に焼付した後空冷または水冷してプレシールド樹脂被膜層を形成する段階と、
がさらに含まれるプレシールド鋼板の製造方法が提供される。
【0011】
さらに、本発明により、
(a)金属基材と、
(b)上記金属基材の少なくとも一面に本発明によるクロムフリー前処理溶液を塗布して形成されたクロムフリー前処理被膜層と、
を含む耐食性及び溶接性に優れたプレシールド鋼板が提供され、これに
(c)上記クロムフリー前処理被膜層の少なくとも一面に本発明による溶接性樹脂溶液を塗布して形成されたプレシールド樹脂被膜層と、
がさらに含まれる耐食性及び溶接性に優れたプレシールド鋼板が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によるプレシールド鋼板は優れた耐食性、溶接性、耐チッピング性、密着性、溶液安定性及び加工性を奏し、自動車の車体中の隅の部分や、ヘム(Hem)の部分のようにリン酸塩被膜或いは電着塗膜を形成することが困難な部分に使用するのに適合する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明について詳しく説明する。
本発明のプレシールド鋼板の物性は主に前処理層と樹脂層により大きく影響を受け、鋼板上層部にある樹脂は腐食因子に対する1次的な遮蔽効果と下層前処理層の急激な溶出や損失を防ぐ2次的な遮蔽効果により樹脂被覆鋼板の耐食性を確保する役割をする。鋼板の下層部を構成する前処理層被膜は腐食因子に対する遮蔽効果で鋼板の耐食性を確保し、鋼板との密着力確保及び上部樹脂層との密着力確保効果により耐食性を向上させ加工時樹脂層の脱膜を防ぐ役割をするため、前処理層がこのような要求特性を確保できないと鋼板から意図する耐食性と加工性のような物性が達成されない。
【0014】
前処理層被膜が上記列挙した密着力確保に有利な構造を有するためには、エポキシまたはアクリル樹脂の中から選択された少なくとも1種以上の樹脂が添加され、このような樹脂は水酸基(−OH)などの親水性基を有するため、前処理層の上部に樹脂層の塗装が有利で乾燥温度を低くし、他の添加剤を結合させるバインダーの役割をする。このような樹脂は全体溶液を基準に1.0〜15.0重量%で添加されることが出来る。この際、樹脂が1.0重量%未満であると鋼板及び上部に被覆される樹脂被覆層との密着力を確保することが出来ず、他の添加剤を効果的に結束させることが出来ず、樹脂が15.0重量%を超えると耐食性と密着性は向上するが溶接性は低下する。
【0015】
本発明の前処理溶液に使用される樹脂は、数平均分子量が5,000〜15,000のもので、樹脂の数平均分子量が5,000未満であると硬化剤のメラミン樹脂と反応するよりはアミンと反応して樹脂の沈降が発生したり塗膜が緻密過ぎてしまい脱膜されやすく、数平均分子量が15,000を超える場合には組成物の粘度が上昇して均一な被膜の形成が難しく、乾燥温度が上昇して生産の際に作業性が低下して生産設備の掃除費用が増加するだけでなく、製造コストも上昇するという問題がある。また、円滑な作業性を確保するためには上記樹脂を単独で使用するよりは水に10〜30重量%で分散させたものを使用することが好ましい。
【0016】
上記エポキシまたはアクリル樹脂の硬化剤としてはメラミン樹脂が使用されることが出来る。特に好ましいメラミン樹脂は末端がアルキル基に置換されたメラミン−ホルムアルデヒド樹脂が好ましく、これは全体溶液を基準に0.1〜5.0重量%で投入される。硬化剤の含量が0.1重量%未満であると塗膜の硬化反応が十分ではないため所望の物性を確保することが出来ず、5.0重量%を超えると追加添加による硬化反応の増大効果がないだけでなく多量投入された硬化剤自体の縮合反応により、かえって溶液安定性と樹脂被膜の物性を低下させる恐れがある。
【0017】
また、前処理層の耐食性向上のためにベントナイト系またはモンモリロナイト系から選択された1種以上の水分散性ナノクレイが添加されることが出来る。このようなナノクレイは高いアルカリ性を有し水を吸収する場合、最初の体積の数倍以上に膨張して強力な粘性を発揮し、長時間放置しても沈殿が無く、滑らかな膜を作りやすい性質を有するため、ペイントやコーティング剤に用いられている。また、水分散性ナノクレイは珪酸−アルミニウム−珪酸の3重板状構造を成しているため、酸素や二酸化炭素、塩素化合物などのようなガスに対する前処理層の遮断機能性を向上させて優れた耐食性を達成することができ、さらに強い吸湿性を有するため全体溶液の分散性を向上させることが出来る。
【0018】
ナノクレイは全体前処理溶液に対して0.05〜5.0重量%で投入される。含量が0.05重量%未満の場合は遮蔽効果が少な過ぎて耐腐食性の向上に大きい効果が無く、5.0重量%を超える場合には全体溶液の粘度が大きく上昇し焼付後前処理被膜の硬度が上昇して塗膜の膨らみが発生し、被膜が不均一で、不完全に被覆された斑点が発生し上層部樹脂との密着力を低下させ脱膜されるため好ましくない。
【0019】
上記ナノクレイは0.5〜15.0重量%で水に単独で分散させるか、少量の2−アミノ−2−メチル−1−プロパノールで剥離させた溶液を投入して使用することが好ましい。ナノクレイを前処理溶液にそのまま添加するとナノクレイが液状成分を吸収して粘度が急激に上昇して溶液凝固現象が発生することがあるため、水内に予め分散させた溶液を投入することが好ましい。
【0020】
また、鋼板の耐食性及び素地鋼板との密着性を向上させるためpH7.0以上のコロイダルシリカまたはLi、Naなどから選択された金属シリケート化合物から選択された1種以上のシリケートを全体前処理溶液に対して1.0〜25.0重量%で添加する。この際添加量が1.0重量%未満の場合は密着性及び耐食性の向上が無く、25.0重量%を超えてもシリカ投入による耐食性及び密着性向上に効果が無い。また、これらシリケート化合物は水に10〜30重量%の程度で分散されたものを使用することが分散性の側面で好ましい。
【0021】
本発明の前処理溶液に添加される有機チタネートまたは有機ジルコネート系から選択された1種以上の有機−金属酸化物はコロイダルシリカの結合力を向上させる触媒の役割をし、自体的に耐食性及び溶接性の向上に寄与し、その量は全体前処理溶液に対して0.1〜10.0重量%で投入される。この際有機金属化合物が0.1重量%未満の場合はシリカ結合触媒の役割を期待できず、10.0重量%を超えて投入されても触媒の役割及び耐食性の向上に影響が無く溶液ゲル化が起きることがあり、コストが大きく上昇するという問題がある。これら有機金属化合物は水の中に40〜60重量%の程度で分散されたものを使用することが好ましい。
【0022】
さらに他の素地鋼板と樹脂層との密着性向上のための見地において選択的にカップリング剤が使用されることがあり、Al−Zr系化合物または3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランから選択された1種以上のカップリング剤が好ましく、これは全体前処理溶液を基準に3.0重量%以下で添加されることが出来る。3.0重量%を超えると結合促進剤と樹脂との反応により密着性が低下して上部樹脂層が脱膜されることがある。
【0023】
上記溶液のウェット性を向上させるためポリシロキサン系(好ましくはポリエーテル改質されたポリジメチルシロキサン)またはカルボキシ酸系(好ましくは水酸化カルボキシ酸エステル)から選択された1種以上の分散剤が全体前処理溶液に対して0.1〜3.0重量%で選択的に添加されることが出来る。分散剤が0.1重量%未満であると溶液の分散効果が少なすぎてウェット性が無く、3.0重量%を超えて投入されると溶液のウェット性が増加し過ぎて前処理溶液のコーティング時に付着量の調節が難しい。
【0024】
さらに、耐食性向上のために選択的にアミノカルボキシレート系耐食向上剤が全体前処理溶液に対して5.0重量%以下で添加されることが出来る。5.0重量%を超えて添加されると耐食性向上の効果は無く価格のみ上昇するという問題がある。
【0025】
このように本発明により提供される前処理溶液の全体固形分含量は、重量を基準に3〜20%で維持することが好ましい。固形分が3%未満では所望の乾燥被膜の厚さを得るために湿度膜の厚さが大きく増加するため乾燥が円滑に行われず表面が均一ではなく乾燥温度を上昇させなければならないという短所があり、固形分が20%を超えた場合溶液の沈降速度が増加して溶液の安定性が低下することがある。
【0026】
一方、プレシールド鋼板の上層部を構成する樹脂被膜は下層の前処理層を保護し、同時に耐アルカリ性と耐溶剤性に優れた堅固な被膜で形成されなければならない。樹脂被膜が堅固ではないと自動車の車体などに適用した際脱脂及びリン酸塩の処理工程でアルカリ性の脱脂溶液と酸性のリン酸塩溶液に樹脂被膜が耐えられず剥離または損傷が起きてプレシールド鋼板から意図する耐食性のような物性が達成されない。
【0027】
また、樹脂溶液はプレシールド鋼板が適用される自動車の車体中電着塗装されないヘム(Hem)部分などから耐食性が発揮され、他の部分では自動車用メッキ鋼板や冷延鋼板のように自動車電着塗装が順調に行われるよう適合しなければならない。このように樹脂被膜が電着塗膜に有利な構造を有するためには樹脂の構造が水酸基(−OH)またはアミド基(−NH)を含むことが好ましく、これにより、本発明では溶接性樹脂溶液の主剤樹脂としてエポキシ樹脂が使用される。
【0028】
本発明の溶接性樹脂溶液に使用されるエポキシ樹脂は数平均分子量が150〜500のエポキシ樹脂で、特にジグリシジルエーテルまたはエピクロロヒドリンビスフェノールAタイプのエポキシ樹脂が使用されることが出来る。この際、エポキシ樹脂の数平均分子量が150未満であると低い粘度により溶液内に含まれた金属粒子を浮遊させることが難しく、樹脂の沈降が発生し硬化剤と反応後の塗膜が緻密過ぎてしまい脱膜されやすく、数平均分子量が500を超える場合には、組成物の粘度が上昇して均一な被覆が難しく、生産時の作業性が低下し生産設備の掃除費用が増加し製造コストが上昇するという問題が発生する。
【0029】
上記エポキシ樹脂の添加量は全体溶接性樹脂溶液を基準に10.0〜25.0重量%に添加され、添加量が10.0重量%未満の場合は金属粉末と添加剤を効果的に結合させず耐食性が低下し金属粉末が溶出され密着性が低下し、添加量が25.0重量%を超えた場合には全体組成物で金属粉末の割合が減るため溶接性が大きく低下し溶液が固まりやすいなど溶液安定性が減少する。
【0030】
上記エポキシ樹脂の硬化剤としてはメラミン樹脂が使用されることが出来る。メラミン樹脂は特に末端がメチル基に置換されたメチル化メラミン−ホルムアルデヒド樹脂が使用されることが好ましく、全体溶接性樹脂溶液を基準に5.0〜10.0重量%で投入される。硬化剤の含量が5.0重量%未満であると塗膜の硬化反応が十分ではないため所望の物性を確保できず、10.0重量%を超えると追加添加による硬化反応の増大効果が無いだけでなく多量投入された硬化剤自体の縮合反応により、かえって溶液安定性と樹脂被膜の物性が低下する。
【0031】
自動車鋼板の特性上、外部衝撃による塗装膜脱膜を防ぐためには耐チッピング性が求められる。これによりウレタン樹脂が添加され、これはエポキシ樹脂の硬化剤としても使用されることが出来る。本発明の樹脂溶液に添加される好ましいウレタン樹脂はNCOを基準に当量が350〜400のヘキサメチレンブロックジイソシアネートウレタン樹脂で、これは全体溶接性樹脂溶液を基準に1.0〜15.0重量%で添加される。ジイソシアネートは常温で多価アルコール及びエポキシ基の水酸基と急激に反応するため、末端がブロック化したジイソシアネートを使用すべきである。ウレタン樹脂の含量が1.0重量%未満の場合は所望の耐チッピング性が達成できず、15.0重量%を超えて投入されると硬化反応に影響を与えて所望の塗膜物性があらわれない。
【0032】
また、自動車用樹脂被覆鋼板の必須要求特性の一つである溶接性の向上のために金属粉末が投入される。金属粉末の形態は溶液塗布時に円滑に広がるよう球形であることが好ましい。金属粉末の粒子サイズは平均1.5〜3.5μmであることが好ましく、金属粒子の粒子サイズが1.5μm未満であると価格が高価で、樹脂被膜内で金属粉末同士が連結される環状構造を形成し難いため溶接時に電流の流れが容易ではなく、粒子サイズが3.5μmを超えると樹脂塗膜上に粒子が突出して表面の外観が損傷し電着塗装が不均一で耐食性が低下する。
【0033】
金属粉末は、Ni、Al、Zn、FeP、FeP、Ti及びSnで構成されるグループから選択され、これは単独或いは混合して添加されることが出来る。金属粉末としては軟らかい金属よりは硬い金属が溶接性の側面で有利であるが、自動車メーカでの加工時にプレスを損傷させる恐れがあるため、軟らかい金属を単独で、または硬い金属を使用しても20%以内の少量を軟らかい金属と混合して使用することが好ましい。
【0034】
上記金属粉末の含量は全体溶接性樹脂溶液に対して40〜60重量%である。金属粉末の含量が40重量%未満であると金属粉末の含量が少な過ぎて溶接されず、60重量%を超えると、樹脂被膜内に金属量が多すぎてちょっとした加工でも金属粉末の粒子がパウダー形態で剥離されるためである。
【0035】
耐食性の向上のためカルシウム(Ca)イオン交換非晶質シリコンジオキサイドが全体溶接性樹脂溶液を基準に、5.0〜15.0重量%で添加される。その添加量が5.0重量%未満であると耐食性向上の効果が少なく、15.0重量%を超えると溶接性が低下し溶液の粘度が上昇する。この際、シリコンジオキサイドの粒子サイズは平均2.3〜3.6μmであることが好ましく、そのサイズが2.3μm未満であると表面積の増加により溶液の粘度が大きく上昇しチクソ性(Thixotrophy)が増加するため好ましくなく、粒子サイズが3.6μmを超えると樹脂内に均一に混合され難いため耐食性の向上が期待できず、塗装が不均一になるため耐食性が低下する。
【0036】
本発明の溶接性樹脂溶液に添加される溶剤としては、キシレン、アセテート、グリコールエーテル類及びジアセトンアルコールで構成されるグループから選択された少なくとも1種の溶剤が使用されることが出来る。
【0037】
選択的に、シリコンジオキサイドと樹脂の結合力を向上させる触媒の役割をし、自体的に耐食性及び溶接性の向上にも寄与する有機チタネートまたは有機ジルコネート系から選択された1種以上の有機−金属酸化物を全体溶接性樹脂溶液を基準に0.1〜10.0重量%で投入することが出来る。有機金属化合物の添加量が0.1重量%未満の場合はシリカを結合する触媒の役割が期待できず、10.0重量%を超えて投入されても触媒の役割及び耐食性の向上に影響が無く溶液のゲル化が起こることがあり、コストが大きく上昇することになる。
【0038】
さらに、上記クロムフリー前処理層との密着性及び電着塗装膜との密着力の向上のため分子量が150〜250の水溶性骨格を有するエーテル系付着増進剤のソルビトールポリグリシジルエーテルを全体溶接性樹脂溶液を基準に、1.0〜5.0重量%で投入することが出来る。この際エーテル系付着増進剤の添加量が1.0重量%未満であると密着力向上に対する効果が無く、5.0重量%を超えて投入されると組成物内でエポキシ樹脂などと反応して所望の物性を得ることが出来ない。
【0039】
素地鋼板と樹脂層の密着性の向上のためのさらに他の見地として、カップリング剤が本発明の樹脂溶液に添加されることが出来る。カップリング剤はAl−Zr系化合物または3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランから選択された1種以上のカップリング剤が全体溶接性樹脂溶液を基準に、3.0重量%以下に添加されることが出来る。添加量が3.0重量%を超えると結合促進剤と樹脂との反応により樹脂自体のもつれが発生して密着性が低下し上部樹脂層が脱膜されるという問題がある。
【0040】
また、プレシールド鋼板の成形中樹脂塗膜の脱膜を防ぐため選択的にワックスが添加される。上記ワックスはポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、カルナバ系ワックスの中から選択された1種以上のワックスが添加され、PE−PTFE(ポリエチレン−ポリテトラフルオロエチレン)が混合または変性されたワックスが使用可能である。全体溶接性樹脂溶液に対して添加されるワックスの量は1.0〜3.0重量%である。
【0041】
ワックスが1.0重量%未満であると表面摩擦力が大きく作用して加工時に樹脂塗膜が脱膜され所望の加工性を得ることが出来ず、3.0重量%を超えて添加されても摩擦力の低下に効果が少ないだけでなく、ワックス成分が塗膜乾燥中に表面から溶出され、これにより腐食因子の浸透により耐食性が低下する。本発明において好ましく使用されるワックスは、塗膜形成後潤滑性を与えることができ、溶液の製造時に作業の便宜性の側面で融点が100℃以上で、グリコールエーテルなどにワックスが30〜40重量%で溶解されているものが好ましい。
【0042】
硬化促進剤として、p−トルエンスルホン酸、またはジブチルスズジラウレートが全体樹脂溶液を基準に0.1乃至3.0重量%で添加されることが出来る。この際添加量が0.1重量%未満の場合は硬化反応を促進させることが出来ず、添加量が3.0重量%を超える場合は硬化速度が急激に増加して硬化度を調節することが難しく、これにより表面に溶剤などの蒸発による未塗装部またはピンホールが発生する。
【0043】
また、上記溶接性樹脂溶液のウェット性を向上させるためポリシロキサン系(好ましくはポリエーテル改質されたポリジメチルシロキサン)またはカルボキシ酸系(好ましくは水酸化カルボキシ酸エステル)から選択された1種以上の分散剤が溶接性樹脂溶液に対して0.1〜3.0重量%で選択的に添加されることが出来る。分散剤が0.1重量%未満であると樹脂溶液の分散効果が少な過ぎてウェット性が無く、3.0重量%を超えて投入されると樹脂溶液のウェット性が増加し過ぎて前処理溶液のコーティング時に付着量の調節が難しい。
【0044】
以下、上記クロムフリー前処理溶液及び溶接性樹脂溶液を用いたプレシールド鋼板の製造方法について詳しく説明する。
【0045】
本発明の一見地において、金属基材に上記クロムフリー前処理溶液を乾燥被膜の厚さが0.05〜1.0μmになるよう塗布し、これを60〜298℃の温度で焼付して冷却させ、クロムフリー前処理被膜層溶液を形成するプレシールド鋼板の製造方法が提供される。
【0046】
本発明で使用される金属素材としてメッキ鋼板が使用されることができ、メッキ鋼板としては、これに制限はされないが、冷延鋼板、亜鉛メッキ鋼板或いは亜鉛合金メッキ鋼板が使用されることができ、素地鋼板に亜鉛或いは亜鉛に鉄やニッケル、コバルトなどのように他の金属が混合された亜鉛合金をメッキする方法としては電気メッキ、溶融メッキ及び真空蒸着などの多様な方法が使用可能である。
【0047】
先ず、上記メッキ鋼板に本発明のクロムフリー前処理溶液を乾燥塗膜の厚さが0.05〜1.0μmになるよう塗布した後、60℃以上の鋼板温度で焼付させた後冷却する。冷却は空冷または水冷して行うことが出来る。この際、焼付温度が60℃未満であると塗膜の焼付が不完全になり脱膜されるという問題があり、298℃を超えると膜成分が燃焼または分解して本発明の目的が達成できないという問題がある。一方、乾燥塗膜の厚さが0.05μm未満の場合には耐食性、樹脂密着性などが低下し、1.0μmを超える場合には生産費用が上昇し溶接性を大きく低下させる。
【0048】
このようにメッキ鋼板の少なくとも一面に本発明によるクロムフリー前処理溶液を被覆することにより、金属基材及び金属基材の少なくとも一面上に形成されたクロムフリー被膜層を有するプレシールド鋼板が提供される。
【0049】
さらに、上記クロムフリー溶液が前処理されたメッキ鋼板に本発明のプレシールド鋼板用溶接性樹脂溶液を乾燥塗膜の厚さが2.0〜5.0μm(樹脂量6.0〜15.0g/m)になるよう塗布してプレシールド樹脂被膜層を形成する。乾燥塗膜の厚さが2.0μm未満の場合には耐食性などの物性が低下し、5.0μmを超える場合には樹脂の厚さが厚いため溶接に問題があるためである。
【0050】
このように、溶接性樹脂溶液を塗布した後、220〜298℃の鋼板温度で焼付する。焼付温度が220℃未満であると樹脂の硬化反応が十分ではないため塗膜の物性が低下し、298℃を超えると素地鋼板の材質上の変化と共に硬化反応がそれ以上進行せず熱量だけ消費するため好ましくない。焼付後には冷却してプレシールド樹脂被膜層を形成することにより、プレシールド鋼板を完成することが出来る。冷却は水冷または空冷などの通常の方法により行うことが出来る。
【0051】
このように製造されたプレシールド鋼板は優れた耐食性、溶接性、耐チッピング性、密着性及び加工性を表し、自動車の車体中隅の部分や、ヘム(Hem)の部分のようにリン酸塩被膜或いは電着塗膜を形成することが困難な部分に使用するのに適合する。
【実施例】
【0052】
以下、実施例を通して本発明をさらに詳しく説明するが、このような実施例により本発明を限定するものではない。
【0053】
実施例1(クロムフリー前処理溶液関連)
[実施例1−1]
本実施例ではクロムフリー前処理溶液の樹脂含量と硬化剤の含量変化及び水分散性ナノクレイの含量による樹脂溶液の溶液安定性、樹脂コーティング物の物性を評価した。
【0054】
エポキシまたはアクリル樹脂から選択された1種以上の樹脂と硬化剤としてアミド樹脂とメラミン樹脂及びベントナイト系ナノクレイを下記の表1−1に表した含量で配合し、pHが9.0のコロイダルシリカ15.0重量%、アミノカルボキシレート系耐食向上剤0.5重量%、ポリシロキサン分散剤1.0重量%、Al−Zr系化合物カップリング剤0.5重量%、有機Ti化合物0.5重量%及び残部の水を配合して発明例1〜4(発明例1〜2はエポキシ樹脂を、発明例3〜4はアクリル樹脂を使用)及び比較例1〜20(比較例1〜10はエポキシ樹脂を、比較例11〜20はアクリル樹脂を使用)の溶液を製造した。
【0055】
その後、上記溶液に対する溶液安定性、耐食性、溶接性、樹脂塗装後密着性を評価した。
【0056】
溶液安定性は実際に使用できる十分な時間を考慮して常温で7日が経過した後、沈殿物の体積分率及び常温で30日経過した後に溶液のゲル形成の有無により評価した。
【0057】
沈殿物が発生せずゲルが形成されない場合を◎、沈殿物が2vol%以上発生したりゲルが形成される場合を△、沈殿物が5vol%以上発生しゲルが形成される場合をXと表した。
【0058】
耐食性及び溶接性は試験に使用するため40〜60g/mのメッキ付着量で製造された厚さが0.65〜0.75mmの電気亜鉛メッキ及び亜鉛合金化メッキ鋼板に上記溶液をそれぞれ0.2μmの乾燥被膜の厚さになるようバーコーター(Bar coater)を用いて塗布した後90℃の鋼板温度で焼付した後空冷して試片を製造した。
【0059】
耐食性は塩水噴霧試験機(SST:Saltwater Spray Tester)を用いて35℃で実施した後、経過時間による白錆及び赤錆の5%以上発生時間を測定して腐食状態を調査し、評価基準は次の通りである。
【0060】
◎:赤錆発生:96時間以上、白錆発生48時間以上
○:赤錆発生:72〜96時間、白錆発生24〜48時間
□:赤錆発生:48〜72時間、白錆発生12〜24時間
△:赤錆発生:24〜48時間、白錆発生12時間以内
×:赤錆発生:24時間以内
【0061】
溶接性を評価するためAC空圧式点溶接器を使用して溶接電流8kAで加圧力250kgf、通電時間16サイクルの条件で各試片を溶接した。溶接電極としてはCu−Cr合金のRWMA Class IIを使用した。溶接性は連続打点性で評価した。評価用試片は長さ80mm、幅20mmに切断された試片2枚を端から20mmとなる地点まで重ねた後、重ねた部分の真ん中に一点溶接をした後、引張試験機を用いて溶接部が落ちる打点数を調査した。この打点数を連続打点数として評価し、評価基準は次の通りである。
【0062】
◎:連続打点数1,200以上
○:連続打点数1,000〜1,200
□:連続打点数800〜1,000
△:連続打点数800以下
×:溶接不可
【0063】
密着性を評価するため製造された前処理層の上部にプレシールド樹脂溶液(ドイツHenkel社Granocoat ZE製)をバーコーターを用いて乾燥被膜の厚さが2.5〜4.5μmの厚さになるようコーティングした後、230〜280℃で焼付させた後水冷し乾燥した試片を30mm×50mmのサイズで採取した後、沸騰水に30分間浸漬してから乾燥させた後、セロハンテープを使用して剥離の程度を測定した。テープに付いた樹脂の程度により評価し、評価基準は次の通りである。
【0064】
◎:テープ面に剥離が全くない
□:テープ面に面積比対比5%以内の剥離発生
△:テープ面に面積比対比5%以上の剥離発生
×:テープ面に全面剥離発生
【0065】
【表1−1】

【0066】
[実施例1−2]
分子量が10000のアクリル樹脂10重量%、メラミン樹脂5重量%、ベントナイト系ナノクレイ0.5重量%とpH9.0のコロイダルシリカ、アミノカルボキシレート耐食向上剤、カルボキシ酸エステル分散剤、シランカップリング剤、有機Ti酸化物の含量を表1−2に表した含量でそれぞれ配合して、比較例21〜36及び発明例5〜10の前処理溶液を製造した後、これら添加剤の含量変化による溶液安定性を評価し、上記比較例21〜36及び発明例5〜10の前処理溶液を上記実施例1−1のような方法で鋼板にコーティングした後、耐食性、加工後密着性、樹脂密着性及び溶接性について評価した。比較例21〜36及び発明例5〜10の前処理溶液において残部は水である。
【0067】
加工後密着性は、直径が95mmの円形の試片を採取して25mmの高さにカップを成形した後、加工が最も激しく施された側面部分をセロハンテープを用いて剥離面積により評価し、評価基準は次の通りである。
【0068】
◎:テープ面に剥離が全くない
□:テープ面に面積比対比5%以内の剥離発生
△:テープ面に面積比対比5%以上の剥離発生
×:テープ面に全面剥離発生
【0069】
溶液安定性、耐食性、樹脂密着性及び溶接性は上記実施例1−1と同様の方法により評価した。
【0070】
【表1−2】

【0071】
[実施例1−3]
本実施例では上記実施例1−2の発明例5の組成により製造された溶液を厚さが0.7mmの40〜60g/mのメッキ付着量で亜鉛合金メッキまたは電気メッキされた鋼板の素地鋼板に下記の表1−3に表した焼付温度及び乾燥塗膜の厚さでコーティングして、比較材(1〜5)及び発明材(1〜6)のプレシールド鋼板を製造した。その後、前述の実施例と同様の方法で耐食性、樹脂密着性、加工後密着性、及び溶接性を評価した。
【0072】
【表1−3】

【0073】
上記表のように、本発明により提供されるクロムフリー前処理溶液をプレシールド鋼板の前処理層として使用する場合には、樹脂成分の耐食性、樹脂密着性及び乾燥温度の減少、シリカによる耐食性、密着性向上、ナノクレイの遮断効果による耐食性向上及び溶液安定性の確保、有機Ti成分による耐食性、溶接性向上及び付着量分析の容易性、カップリング剤による素地鋼板との密着力確保及び分散剤によるコーティング作業容易性及び樹脂塗装性が具現されることが分かる。
【0074】
実施例2(溶接性樹脂溶液関連)
[実施例2−1]
本実施例では溶接性樹脂溶液の樹脂の含量、金属粉末含量と硬化剤の含量による樹脂溶液の溶液安定性、樹脂コーティング物の物性を評価した。
【0075】
エポキシ樹脂、硬化剤としてメチル化メラミン樹脂またはアミド樹脂、NCOに対する当量が約375のウレタン樹脂及び金属粉末を下記の表2−1に表した含量で配合し、カルシウムイオン交換非晶質シリコンジオキサイド10.0重量%、ポリシロキサン分散剤1.0重量%、有機Ti化合物1.0重量%及び残部溶剤としてキシレンを配合して発明例1〜4及び比較例1〜20の溶液を製造した。
【0076】
その後、上記溶液に対する溶液安定性、耐食性、密着性及び溶接性を評価した。
【0077】
溶液安定性は実際に使用できる十分な時間を考慮して常温で30日間経過した後溶液からゲル形成の有無により評価した。
【0078】
沈殿物が発生せずゲルが形成されない場合を◎、沈殿物が5vol%以下発生したり部分的にゲルが形成される場合を△、沈殿物が5vol%以上発生しゲルが形成される場合をXと表した。
【0079】
耐食性、密着性及び溶接性を評価するため、まずクロムフリー前処理溶液を乾燥被膜の厚さが0.2μmになるように、厚さが0.65〜0.75mmでメッキ付着量が40〜60g/mの電気亜鉛メッキ又は亜鉛合金化メッキ鋼板に塗布し、その上に、それぞれの溶接性樹脂溶液を乾燥被膜の厚さが2.5〜3.5μmになるようコーティングした後、240℃の鋼板温度で焼付した後空冷し乾燥して試片を製造した。
【0080】
耐食性は塩水噴霧試験機(SST:Saltwater Spray Tester)を用いて35℃で実施した後、経過時間による白錆及び赤錆の発生時間を測定して腐食状態を調査し、評価基準は次の通りである。
【0081】
◎:赤錆発生:1200時間以上、白錆発生800時間以上
○:赤錆発生:1000時間以上、白錆発生600〜800時間
□:赤錆発生:800〜1000時間、白錆発生400〜600時間
△:赤錆発生:600〜800時間、白錆発生400時間以内
×:赤錆発生:600時間以内
【0082】
密着性は試片を30mm×50mmのサイズで採取した後、沸騰水に30分間浸漬して乾燥させ、セロハンテープを使用して剥離の程度を測定した。テープに付いた樹脂の程度により評価し、評価基準は次の通りである。
【0083】
◎:テープ面に剥離が全くない
□:テープ面に面積比対比5%以内の剥離発生
△:テープ面に面積比対比5%以上の剥離発生
×:テープ面に全面剥離発生
【0084】
溶接性を評価するためAC空圧式点溶接器を使用して溶接電流8kAで加圧力250kgf、通電時間16サイクルの条件で各試片を溶接した。溶接電極としてはCu−Cr合金のRWMA Class IIを使用した。溶接性は連続打点性で評価した。評価用試片は長さ80mm、幅20mmに切断された試片2枚を端から20mmとなる地点まで重ねた後、重ねた部分の真ん中に一点溶接をした後、引張試験機を用いて溶接部が落ちる打点数を調査した。この打点数を連続打点数として評価し、評価基準は次の通りである。
【0085】
◎:連続打点数1,200以上
○:連続打点数1,000〜1,200
□:連続打点数800〜1,000
△:連続打点数800以下
×:溶接不可
【0086】
【表2−1】

【0087】
[実施例2−2]
分子量500のエポキシ樹脂10重量%、メチル化メラミン樹脂6重量%、ブロックイソシアネートウレタン樹脂2重量%、平均粒子直径が3.0μmのZn粉末40重量%と平均粒子直径が約3.0μmのカルシウムイオン置換非晶質シリコンジオキサイド、ポリシロキサン系分散剤、有機ジルコネート酸化物、分子量が約200のソルビトールポリグリシジルエーテル付着増進剤、シラン化合物及びポリテトラフルオロエチレン変性ポリエチレンワックスの含量を表2−2に表したようにそれぞれ配合して、比較例21〜39及び発明例5〜8の樹脂溶液を製造した後、これら添加剤の含量変化による溶液安定性を評価し、上記比較例21〜39及び発明例5〜8の樹脂溶液を上記実施例2−1のような方法で鋼板にコーティングした後、耐食性、加工性、加工後密着性、樹脂密着性及び溶接性について評価した。残部はキシレン溶剤である。
【0088】
加工性は無塗油状態で3つの試片をドロービード(Draw Bead)方式で片面摩擦係数を測定して平均値を用いて評価し、その基準は次の通りである。
【0089】
◎:片面摩擦係数が0.15未満
□:片面摩擦係数が0.15以上0.18未満
△:片面摩擦係数が0.18以上0.20未満
×:片面摩擦係数が0.20以上
【0090】
加工後密着性は直径が95mmの円形の試片を採取して25mmの高さでカップを成形した後、加工が最も激しく施された側面部分をセロハンテープを用いて剥離面積で評価し、評価基準は次の通りである。
【0091】
◎:テープ面に剥離が全くない
□:テープ面に面積比対比5%以内の剥離発生
△:テープ面に面積比対比5%以上の剥離発生
×:テープ面に全面剥離発生
【0092】
溶液安定性、耐食性、樹脂密着性及び溶接性は上記実施例2−1と同様の方法で評価した。
【0093】
【表2−2】

【0094】
[実施例2−3]
本実施例では上記実施例2−2の発明例5の組成により製造された溶液をクロムフリー層の乾燥被膜の厚さが0.2μm処理され、鋼板の厚さが0.7mmで、40〜60g/mの付着量で亜鉛合金メッキまたは電気メッキされた鋼板の素地鋼板に上記樹脂溶液を下記の表2−3に表した焼付温度及び乾燥塗膜の厚さで樹脂コーティングした後、比較材(1〜10)及び発明材(1〜4)を用いて耐食性、樹脂密着性、加工後密着性、及び溶接性を評価した。
【0095】
【表2−3】

【0096】
上記表に表したように、本発明により提供される溶接性樹脂溶液をプレシールド鋼板の製造に使用した場合、樹脂成分、防錆剤による耐食性、ウレタン樹脂による耐チッピング性、金属粉末による溶接性確保、シラン、エーテル化合物による樹脂密着性向上、分散剤による溶液安定性の確保、有機ジルコニウム化合物による耐食性、溶接性向上、分散剤によるコーティング作業の容易性、ワックスによる加工容易性が具現されることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】本発明の一具現によるプレシールド鋼板の側断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
全体溶液を基準に、数平均分子量が5,000〜15,000の水分散性アクリル、またはエポキシ樹脂から選択した1種以上の樹脂1.0〜15.0重量%、ベントナイト、またはモンモリロナイト系から選択した1種以上のナノクレイ0.05〜5.0重量%、硬化剤としてメラミン樹脂から選択した1種以上の樹脂0.1〜5.0重量%、pHが7.0以上のコロイダルシリカ、または金属シリケート化合物から選択した1種以上のシリケート1.0〜25.0重量%、有機チタネート、または有機ジルコネート系から選択した1種以上の有機−金属酸化物0.1〜10.0重量%、及び残部の水から成ることを特徴とするプレシールド鋼板用クロムフリー前処理溶液組成物。
【請求項2】
前記クロムフリー前処理溶液組成物は、ポリシロキサン系、またはカルボキシ酸系から選択した1種以上の分散剤を3.0重量%以下でさらに含むことを特徴とする請求項1に記載のプレシールド鋼板用クロムフリー前処理溶液組成物。
【請求項3】
前記クロムフリー前処理溶液組成物は、Al−Zr系化合物、または3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランから選択した1種以上のカップリング剤3.0重量%以下をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載のプレシールド鋼板用クロムフリー前処理溶液組成物。
【請求項4】
前記クロムフリー前処理溶液組成物は、アミノカルボキシレート系耐食向上剤5.0重量%以下をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載のプレシールド鋼板用クロムフリー前処理溶液組成物。
【請求項5】
全体溶液を基準に、数平均分子量が150〜500のエポキシ樹脂10.0〜25.0重量%、硬化剤としてメラミン樹脂5.0〜10.0重量%、ヘキサメチレンブロックジイソシアネートウレタン樹脂1.0〜15.0重量%、Ni、Al、Zn、FeP、FeP、Ti及びSnで構成されるグループから選択した1種以上の金属粉末40〜60重量%、カルシウムイオン交換非晶質シリコンジオキサイド5.0〜15.0重量%及び残部の溶剤から成ることを特徴とするプレシールド鋼板用溶接性樹脂溶液。
【請求項6】
前記溶接性樹脂溶液は、有機チタネート、または有機ジルコネート系から選択した1種以上の有機金属酸化物0.1〜10.0重量%をさらに含むことを特徴とする請求項5に記載のプレシールド鋼板用溶接性樹脂溶液。
【請求項7】
前記溶接性樹脂溶液は、分子量が150〜250のソルビトールポリグリシジルエーテル系付着増進剤1.0〜5.0重量%をさらに含むことを特徴とする請求項5に記載のプレシールド鋼板用溶接性樹脂溶液。
【請求項8】
前記溶接性樹脂溶液は、Al−Zr系化合物、または3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランから選択した1種以上のカップリング剤3.0重量%以下をさらに含むことを特徴とする請求項5に記載のプレシールド鋼板用溶接性樹脂溶液。
【請求項9】
前記溶接性樹脂溶液にポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、カルナバ系ワックス及びPE−PTFEが混合、または変性されたワックスで構成されるグループから選択した1種以上のワックス1.0〜3.0重量%をさらに含むことを特徴とする請求項5に記載のプレシールド鋼板用溶接性樹脂溶液。
【請求項10】
前記溶接性樹脂溶液は、p−トルエンスルホン酸、またはジブチルスズジラウレートの中から選択した1種以上の硬化促進剤0.1〜3.0重量%をさらに含むことを特徴とする請求項5に記載のプレシールド鋼板用溶接性樹脂溶液。
【請求項11】
前記溶接性樹脂溶液は、ポリシロキサン系、またはカルボキシ酸系から選択された1種以上の分散剤を3.0重量%以下でさらに含むことを特徴とする請求項5に記載のプレシールド鋼板用溶接性樹脂溶液。
【請求項12】
金属基材のいずれか一面に請求項1乃至4のいずれか1項のクロムフリー前処理溶液を乾燥被膜の厚さが0.05〜1.0μmになるよう塗布する段階と、
前記塗布されたクロムフリー前処理溶液を60〜298℃の温度で焼付し冷却してクロムフリー前処理被膜層を形成する段階を含むプレシールド鋼板の製造方法。
【請求項13】
乾燥した前記クロムフリー前処理被膜層に請求項5乃至11のいずれか1項の溶接性樹脂溶液を乾燥被膜の厚さが2.0〜5.0μmになるよう塗布する段階及び
前記溶接性樹脂溶液が塗布された鋼板を220〜298℃に焼付した後、空冷、または水冷してプレシールド樹脂被膜層を形成する段階をさらに含む請求項12に記載のプレシールド鋼板の製造方法。
【請求項14】
前記金属基材は、冷延鋼板、亜鉛メッキ鋼板、または亜鉛合金メッキ鋼板であることを特徴とする請求項12に記載の耐食性及び溶接性に優れたプレシールド鋼板の製造方法。
【請求項15】
(a)金属基材;及び
(b)前記金属基材の少なくとも一面に、請求項1乃至4のいずれか1項のクロムフリー前処理溶液を塗布して形成されたクロムフリー前処理被膜層:
を含むことを特徴とする耐食性及び溶接性に優れたプレシールド鋼板。
【請求項16】
前記クロムフリー前処理被膜層の少なくとも一面に請求項5乃至10のいずれか1項の溶接性樹脂溶液を塗布して形成されたプレシールド樹脂被膜層をさらに含むことを特徴とする請求項15に記載の耐食性及び溶接性に優れたプレシールド鋼板。
【請求項17】
前記金属基材は、冷延鋼板、亜鉛メッキ鋼板、または亜鉛合金メッキ鋼板であることを特徴とする請求項11に記載の耐食性及び溶接性に優れたプレシールド鋼板。

【図1】
image rotate


【公表番号】特表2009−503253(P2009−503253A)
【公表日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−523794(P2008−523794)
【出願日】平成18年7月25日(2006.7.25)
【国際出願番号】PCT/KR2006/002930
【国際公開番号】WO2007/013761
【国際公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【出願人】(502258417)ポスコ (73)
【出願人】(508026489)ブンウー インスティチュート オブ テクノロジー リサーチ (1)
【Fターム(参考)】