説明

耳障害治療のための組成物および方法

本発明は、化学物質誘発性耳毒性、音響外傷および老人性難聴に起因した聴力損失;ならびに微生物感染などの耳障害の治療のためのオリゴヌクレオチドを耳に局所的、非侵襲的送達するのに有用な医薬組成物および方法に関する。方法は、阻害性オリゴヌクレオチド、浸透エンハンサーおよび薬学的に許容可能な担体を含む医薬組成物を、それが必要な対象の耳へ局所投与することを含み、ここでオリゴヌクレオチドは対象の耳障害に関連した遺伝子の発現を軽減または阻害する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学物質誘発性耳毒性、音響外傷および老人性難聴に起因する聴力損失;腫瘍ならびに微生物感染などの耳障害の治療に有用なオリゴヌクレオチド化合物(siRNAなど)の耳の組成物ならびにそれを中耳および内耳へ送達するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトの耳
耳は3つの主要構成部分、すなわち外耳、中耳、および内耳からなり、これらは共同で機能し、音波を神経インパルスに変換して脳へ移動させ、神経インパルスはそこで音として認識される。内耳は平衡維持にも役立つ。
【0003】
中耳と内耳の解剖学的構造は当業者に周知である(例えば、Atlas of Sensory Organs: Functional and Clinical Analysis, Andrs Csillag, Humana Press (2005), pages 1−82(本明細書に参照により組み込まれる)を参照されたい)。簡単に述べると、中耳は、鼓膜と、空気で満たされた小さな空間(鼓膜と内耳を結ぶ、小骨として知られている3本の小さな骨の連なりを含む)からなる。
【0004】
内耳(迷路)は聴覚器官である蝸牛と、平衡器官である前庭系からなる複雑な構造を持つ。前庭系は位置感覚を決定する球形嚢および卵形嚢と、平衡維持に役立つ三半規管からなる。
【0005】
蝸牛にはコルチ器があり、このコルチ器は部分的に約20,000個の特殊な感覚細胞(「内耳有毛細胞」または「有毛細胞」と呼ばれる)からなる。これらの細胞は、蝸牛内液中へ伸びている極細の小突起(繊毛)を有する。音の振動は中耳の小骨から内耳の卵円窓へ伝わり、これらの液体と繊毛を振動させる。蝸牛の各所にある有毛細胞は異なる音の周波数に反応して振動し、その振動を神経インパルスに変換し、神経インパルスは脳に送られて処理および解釈される。内耳有毛細胞は内耳支持細胞に囲まれている。支持細胞は基底にあり、内耳の感覚有毛細胞を少なくとも部分的に囲んで物理的に支えている。支持細胞の代表例としては、内柱(柱細胞)、外柱(柱細胞)、内指節細胞、外指節細胞(ダイテルス)、Held細胞、ヘンセン細胞、クラウディウス細胞、ベッチャー細胞、歯間細胞および聴歯(フシュケ)が挙げられる。
【0006】
らせん神経節は、蝸牛から脳へ音の表現を送る神経細胞集団である。らせん神経節ニューロンの細胞体は蝸牛のらせん構造に見られ、中枢神経系の一部である。それらの樹状突起は有毛細胞基底とシナプス接触させ、それらの軸索は一緒に束になって第8脳神経(前庭蝸牛耳神経)の聴覚部分を形成する。
【0007】
聴力損失
聴覚反射による防御作用があってもなお、大騒音は有毛細胞を損傷および破壊し得る。不可逆的な有毛細胞死は、有毛細胞において活性酸素種(ROS)に関与する代謝的または生化学的変化によって誘発される。とりわけ、特定の薬物への曝露および大騒音への持続的曝露は、進行性損傷を引き起こし、最終的には耳鳴り(ringing in the ears)(耳鳴り(tinnitus))およびまたは聴力損失に至る。
【0008】
後天性聴力損失は、有害な騒音レベルへの曝露、耳毒性薬(シスプラチンおよびアミノグリコシド系抗生物質など)への曝露および加齢などのいくつもの要因に惹起され得る。
【0009】
国際公開特許第2008/050329号(本発明の譲受人に付与)は、プロアポトーシス遺伝子発現に関連する疾患および障害を治療するためのsiRNA化合物、siRNA化合物を含む組成物、ならびにそれらの使用方法に関する。米国特許出願第11/655,610号(本発明の譲受人に付与)は、プロアポトーシス遺伝子(全般的に、特にp53)を阻害することにより聴覚障害を治療する方法に関する。国際公開特許第2005/119251号は難聴を治療する方法に関する。国際公開特許第2005/055921号は耳障害治療のための発泡性組成物に関する。米国特許第7,087,581号は内耳性の疾患および障害を治療する方法に関する。
【0010】
とりわけ、耳保護、化学防御および聴力回復に有効で、使用し易く、コンプライアンスの高い薬物療法が依然として真に必要とされている。
【発明の概要】
【0011】
本発明は、耳障害(中耳および内耳障害など)を治療するのに有用な医薬組成物および方法を提供する。本発明は耳障害を非侵襲的に治療する方法(標的遺伝子へのオリゴヌクレオチドの局所投与を含み、ここで阻害性オリゴヌクレオチドは局所的、非侵襲的適用用に製剤化される)を提供することにより、先行技術における特定の制限を克服する。この方法は、驚くべきことに、オリゴヌクレオチドのサイズを考慮し、従来のオリゴヌクレオチド送達のための鼓膜内注射の使用を考慮する。この方法は、しばしば有害な全身系副作用を伴う経口療法の使用に関連した制限も克服する。
【0012】
1つの態様によると、本発明は、耳障害を呈するまたは耳障害の危険性がある対象を治療する方法を提供し、この方法は対象の外耳道へ医薬組成物(オリゴヌクレオチド阻害剤、浸透エンハンサーおよび薬学的に許容可能な賦形剤またはそれらの混合物を含む)を、対象を治療するのに有効な量で局所投与し、それにより対象の耳障害に関連した遺伝子の発現を低減することを含む。
【0013】
様々な実施形態では、この浸透エンハンサーはポリオールである。いくつかの実施形態では、このオリゴヌクレオチドはポリオールとの混合物中にある。いくつかの実施形態では、このポリオールはグリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ソルビトール、キシリトール、またはマルチトールから選択される。1つの実施形態によると、このポリオールはグリセロールである。様々な実施形態では、グリセロールは約0.1%〜約35%;約1%〜約30%;約5%〜約25%、好ましくは約10%〜約20%の最終濃度で存在する。いくつかの実施形態では、医薬組成物中のグリセロールの最終濃度は約2.5%、5%、10%、12.5%、15%、17.5%、20%、22.5%、25%、27.5%または約30%である。1つの好ましい実施形態では、医薬組成物中のグリセロールの最終濃度は約10%である。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、耳への適用前に対象の体温(約35℃〜38℃)に昇温される。
【0014】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、対象の頭を一方に傾け、治療する耳を上向きにして外耳道に適用される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、点耳剤用の容器(例えば点滴器(例えば、10〜100mL/点滴))または芯を用いて耳に適用される。
【0015】
いくつかの実施形態では、耳障害は、化学物質誘発性聴力損失;例えばとりわけシスプラチンおよびその類似体;アミノグリコシド系抗生物質、キニーネおよびその類似体;サリチル酸塩およびその類似体;ホスホジエステラーゼタイプ5(PDE5)阻害剤またはループ利尿薬により誘発された聴力損失に関する。いくつかの実施形態では、この耳障害は騒音性聴力損失を指す。他の実施形態では、この耳障害は加齢関連聴力損失である。
【0016】
様々な実施形態では、医薬組成物は点耳剤、耳クリーム剤、耳軟膏、耳発泡剤またはムースとして製剤化される。特定の好ましい実施形態では、医薬組成物は点耳剤として製剤化される。いくつかの実施形態では、方法はオリゴヌクレオチドの対象の片耳への投与を含む。
【0017】
いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドはアンチセンス、siRNA、shRNA、アプタマー、リボザイム、dsRNAまたはDNA化合物からなる群から選択される阻害性核酸化合物である。様々な好ましい実施形態では、オリゴヌクレオチドはsiRNAである。
【0018】
別の実施形態では、オリゴヌクレオチドは、標的遺伝子内に存在する核酸配列に十分相同な配列を有する連続するヌクレオチドの、対象の遺伝子の発現を低減または阻害するのに十分な数を含む。特定の実施形態では、siRNAは化学的に合成および化学的に修飾されている。この修飾は塩基修飾、糖修飾、ヌクレオチド間結合修飾またはそれらの組み合わせを含む。
【0019】
1つの実施形態では、本発明の方法および組成物は次の構造を有するsiRNA化合物を用いる:
5’ (N)x−Z 3’ (アンチセンス鎖)
3’ Z’−(N’)y−z” 5’ (センス鎖)
式中NとN’はそれぞれ修飾されていなくても修飾されていてもよいリボヌクレオチドか、または非定型的部分であり;
式中(N)xと(N’)yはそれぞれ、連続するNもしくはN’がそれぞれ次のNもしくはN’と共有結合により連結しているオリゴヌクレオチドであり;
式中ZとZ’は存在しても存在しなくてもよいが、存在する場合は、独立してそれが存在する鎖の3’末端で共有結合している1〜5個の連続するヌクレオチドであり;
式中z”は存在しても存在しなくてもよいが、存在する場合は、(N’)yの5’末端で共有結合しているキャッピング部分であり;
式中xとyはそれぞれ独立して18〜40の整数であり;
式中(N’)y配列は(N)x配列に実質的に相補的であり;ならびに式中(N)xは、耳障害に関連した標的遺伝子mRNA中の約18〜約40個の連続するリボヌクレオチドに実質的に相補的なアンチセンス配列を含むアンチセンス配列(N)xを含む。
【0020】
様々な実施形態では、(N)xは、2’−O−メチル(2’OMe)修飾および非修飾リボヌクレオチドを含み、式中(N)xの3’末端のNは2’OMe修飾リボヌクレオチドであり、(N)xは、3’末端で開始する少なくとも5個の交互の2’OMe修飾リボヌクレオチドと少なくとも9個の2’OMe修飾リボヌクレオチドを併せて含み、残りのNはそれぞれ非修飾リボヌクレオチドであり、(N’)yは少なくとも1個の鏡像体ヌクレオチド、または2’−5’ヌクレオチド間リン酸結合により隣接ヌクレオチドに連結するヌクレオチドを含む。
【0021】
追加の実施形態では、(N)xは、修飾リボヌクレオチドを交互の位置に含み、ここで5’末端と3’末端のNはそれぞれそれらの糖残基で修飾されており、中央リボヌクレオチドは修飾されていない(例えば19mer鎖10位のリボヌクレオチドなど)。様々な実施形態では、(N)xと(N’)yのヌクレオチドには2’OMe糖修飾リボヌクレオチドと非修飾リボヌクレオチドが交互にある。いくつかの実施形態では、(N)xの中央部にあるリボヌクレオチドは修飾されておらず、(N’)yの中央部にあるリボヌクレオチドは修飾された2’OMe糖である。
【0022】
すべての構造において、いくつかの実施形態では、それぞれ連続するNまたはN’を連結する共有結合はリン酸ジエステル結合である。様々な実施形態では、すべての共有結合がリン酸ジエステル結合である。
【0023】
様々な実施形態では、x=yであり、xとyはそれぞれ19、20、21、22または23である。いくつかの実施形態では、x=y=21である。他の実施形態では、x=y=19である。
【0024】
上の構造の1つの実施形態では、(N’)yは、一端もしくは両端または末端から2番目に少なくとも1個の鏡像体ヌクレオチドを含む。様々な実施形態では、(N’)yは3’末端から2番目に1個の鏡像体ヌクレオチドを含む。1つの好ましい実施形態では、x=y=19であり、(N’)yは18位にL−デオキシリボヌクレオチドを含む。1つの実施形態では、本発明のsiRNA化合物は、対象の内耳障害に関連したウイルス遺伝子、細菌遺伝子および哺乳類遺伝子から選択される標的遺伝子の発現を阻害する。いくつかの実施形態では、この標的遺伝子は、標的遺伝子mRNAのgi番号が表1に示される哺乳類遺伝子である。
【0025】
特定の実施形態では、標的遺伝子は:TP53BP2(ASPP2)、BNIP3、CASP2、NOX3、HRK、RAC1、DDIT4(REDD1)、DDIT4L(REDD2)、NOX4、HTRA2、CAPNS1(カルパイン)、ID3、HES1、HES5、およびCDKN1B(p27KIP)からなる群の1つ以上から選択される。
【0026】
理論に束縛されるものではないが、便宜上、標的遺伝子は次の2群に分類される:I群標的遺伝子は耳保護に関し、TP53BP2(ASPP2)、BNIP3、CASP2、NOX3、HRK、RAC1、DDIT4(REDD1)、DDIT4L(REDD2)、NOX4、HTRA2、CAPNS1(カルパイン)、ID3が挙げられ、II群標的遺伝子は細胞の再生および増殖に関し、ID3、HES1、HES5、およびCDKN1B(p27KIP)が挙げられる。
【0027】
様々な実施形態によると、本発明は、1つ以上の本発明のオリゴヌクレオチドを用いて、1つ以上の耳障害に関連した複数の標的遺伝子を阻害するための方法を提供する。
【0028】
したがって、1つの実施形態では、本発明の方法は、本明細書でI群標的遺伝子と指定された標的遺伝子を2つ以上阻害することにより耳障害を呈する対象を治療することに関する。非限定的な例として、それぞれ次の標的遺伝子:少なくとも1個のTP53BP2(ASPP2)、CASP2およびHTRA2を、任意にCAPNS1(カルパイン)との組み合わせ、任意に少なくとも1個のNOX3、NOX4およびRAC1との組み合わせ、任意に少なくとも1個のDDIT4、DDIT4LおよびID3との組み合わせ、および任意に少なくとも1個のHRKおよびBNIP3との組み合わせに対するsiRNA化合物を対象に投与する。理論に縛られることなく、少なくとも1個のこれらの標的遺伝子の阻害は、中毒性聴力損失に対する保護に関連する。
【0029】
別の実施形態では、本発明の方法は、本明細書でII群(少なくとも1個のCDKN1BおよびID3、任意に少なくとも1個のHES1およびHES5と併用)と指定した2個以上の標的遺伝子を阻害することにより耳障害を呈する対象を治療することに関する。理論に縛られることなく、少なくとも1個のこれらの標的遺伝子の阻害は、蝸牛の支持細胞または外有毛細胞もしくは内有毛細胞の増殖促進に関連している。
【0030】
好ましい実施形態では、方法は、少なくとも1個のHES1およびHES5に対するオリゴヌクレオチドを投与前に少なくとも1個のCDKN1BおよびID3に対するオリゴヌクレオチドを投与することを含む。別の実施形態では、すべてのオリゴヌクレオチドが併用投与される。
【0031】
さらなる実施形態では、ある群の標的遺伝子に対するオリゴヌクレオチドは他群の標的遺伝子に対するオリゴヌクレオチドと連続投与される。例えば、I群遺伝子を標的とするsiRNAは、II群遺伝子を標的とするsiRNAの投与前に対象に投与される。別の実施形態では、I群遺伝子に対するsiRNAはII群遺伝子に対するsiRNAと共に対象に投与される。様々な実施形態では、標的遺伝子は哺乳類遺伝子である。特定の実施形態では、哺乳類遺伝子はヒト遺伝子であり、このヒト遺伝子mRNA中のgi番号を表1に示す。
【0032】
第2の態様では、本発明は:(a)内耳性または中耳性耳障害に関連したヒト標的遺伝子の発現を阻害する、治療的有効量の少なくとも1個のオリゴヌクレオチド分子化合物、(b)浸透エンハンサー;ならびに(c)少なくとも1個の薬学的に許容可能な賦形剤もしくは担体またはそれらの混合物、を含む耳の医薬組成物を提供する。いくつかの実施形態では、浸透エンハンサーはグリセロール、プロピレングリコール、ソルビトール、キシリトールおよびマルチトールからなる群から選択されるポリオールである。
【0033】
好ましい実施形態では、このポリオールはグリセロールである。様々な実施形態では、グリセロールは約0.1%〜約35%;約1%〜約30%;約5%〜約25%、約7%〜約15%、好ましくは約10%〜約20%の最終濃度で存在する。いくつかの実施形態では、医薬組成物中のグリセロールの最終濃度は約2.5%、5%、10%、12.5%、15%、17.5%、20%、22.5%、25%、27.5%または約30%である。1つの好ましい実施形態では、医薬組成物におけるグリセロールの最終濃度は約10%である。
【0034】
いくつかの実施形態では、組成物はヒトの耳、好ましくは外耳道への非侵襲的適用用に製剤化される。様々な実施形態では、組成物はクリーム、発泡剤、ムース、泥膏、軟膏、エマルション、溶液、ゲル、スプレー、懸濁液、マイクロエマルション、ミクロ球体、マイクロカプセル、ナノ球体、ナノ粒子、脂質小胞、リポソーム、重合体小胞、パッチ、生体挿入剤として製剤化される。
【0035】
様々な実施形態では、医薬組成物は液体点耳剤、耳クリーム剤、耳軟膏、耳発泡剤またはムースとして製剤化される。好ましい実施形態では、医薬組成物は液体点耳剤として製剤化される。
【0036】
いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドはアンチセンス、非修飾siRNA、化学的に修飾されたsiRNA、shRNA、アプタマー、リボザイム、dsRNAまたはDNA化合物からなる群から選択される阻害性核酸化合物である。様々な好ましい実施形態では、オリゴヌクレオチドはsiRNAである。
【0037】
様々な実施形態では、このsiRNAは安定性を増大し、活性を増大し、オフターゲット効果を減らし、およびまたは自然免疫刺激を減らすために化学的に修飾されている。組成物中のsiRNA濃度は0.1mg/mL〜100mg/mL、好ましくは1mg/mL〜100mg/mL、およびより好ましくは5mg/mL〜20mg/mLである。
【0038】
好ましい実施形態では、標的遺伝子は1つ以上の:TP53BP2(ASPP2)、BNIP3、CASP2、NOX3、HRK、RAC1、DDIT4、DDIT4L、NOX4、HTRA2、CAPNS1(カルパイン)、ID3、HES1、HES5、CDKN1BおよびID3から選択される。
【0039】
いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドは中耳障害または内耳障害に関連した遺伝子の発現を軽減または阻害する。
【0040】
いくつかの実施形態では、本発明による医薬組成物は、本明細書に開示の構造(A)〜(P)の1つを含む化学的に修飾されたsiRNA化合物を含む。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】点耳剤適用から3日後の、コルチ器の頂回転のらせん神経節(コルチ神経節)におけるCy3標識DDIT4 siRNAである。
【図2】コルチ器の基底回転、第2回転、頂回転すべての外聴覚細胞、内聴覚細胞および支持細胞の3列におけるCy3標識DDIT4 siRNAを示す。
【図3】点耳剤(潅流および非潅流)投与から3日後の切開したラット蝸牛の聴覚上皮のすべての部分における蛍光を示す。
【図4】本発明の実践に有用な特定の標的遺伝子に対するsiRNA化合物調製に有用なアンチセンスとセンス配列を示す表A1〜A7を提示する。
【発明を実施するための形態】
【0042】
本発明は、概して、中耳および内耳障害の場合の治療に有用な組成物および方法に関する。
【0043】
本発明の遺伝子を阻害する方法、分子および組成物は本明細書で詳細に論じられ、任意の前記分子および/または組成物を任意の前記病態を呈する対象の治療において有益に使用してよい。
【0044】
本発明の阻害性核酸は、好ましくは非修飾化合物と比較して活性を増大し、安定性を増大し、および/または毒性を最小限に抑え得る修飾を保持するsiRNA化合物である。これらの化合物は、中耳および内耳へ核酸を送達する製薬学的ビヒクルと混合時、種々の耳障害を治療するのに有用であり、有効、安全で患者のコンプライアンスの高い治療化合物を提供する。化合物は耳障害に関連した標的遺伝子の発現を予防または軽減するために設計されている。特定の実施形態では、標的遺伝子は表1に示すmRNAポリヌクレオチドの任意の1つに転写される。好ましい実施形態では、標的遺伝子は1つ以上の:TP53BP2(ASPP2)、BNIP3、CASP2、NOX3、HRK、RAC1、DDIT4、DDIT4L、NOX4、HTRA2、CAPNS1(カルパイン)、ID3、HES1、HES5、CDKN1Bから選択される。
【0045】
理論に束縛されるものではないが、標的遺伝子は2つの群、すなわち耳保護に関連した遺伝子に関するI群(TP53BP2(ASPP2)、BNIP3、CASP2、NOX3、HRK、RAC1、DDIT4、DDIT4L、NOX4、HTRA2、CAPNS1(カルパイン)、ID3を包含する)と、内耳細胞再生に関連したII群(ID3、HES1、HES5、CDKN1Bを包含する)に分類される。一部の遺伝子では、明確な群説明はなく、本分類は便宜上としてのみ提示する。
【0046】
いくつかの標的遺伝子の詳細を下表1に提示する。この一覧は代表的かつ非限定的であることを意図している。
表1:聴力損失を治療するためのヒト標的遺伝子の非限定的な例
【表1】

表1は、上に示す特定の標的遺伝子mRNAのポリヌクレオチド配列のgi(GeneInfo identifier)番号および寄託番号を提示する。
【0047】
耳障害
本発明は、様々な耳障害を呈するまたは耳障害の危険性がある患者を治療するのに有用な組成物および方法に関する。耳障害としては、例えば耳毒性物質、過度の騒音または加齢に誘発された聴力損失が挙げられる。中耳および内耳障害は多くの同一症状を生じ、中耳障害は内耳に影響を及ぼし得、逆も同様である。
【0048】
聴力損失の他の耳障害としては、種々のウイルスおよび細菌により惹起される鼓膜炎、鼓膜感染;側頭骨折(例えば頭の殴打による);聴覚神経腫瘍(聴神経腫、聴神経鞘腫、前庭神経鞘腫、第8神経腫瘍)が挙げられる。
【0049】
様々な実施形態では、本発明の方法および組成物は聴力損失の様々な病態を治療するのに有用である。理論に縛られることなく、聴力損失はアポトーシス内耳有毛細胞の損傷または消失に起因し得(Zhang et al., Neuroscience 2003. 120:191−205; Wang et al., J. Neuroscience 23((24):8596−8607)、この損傷または消失は感染、機械的損傷、大きな音(騒音)、加齢(老人性難聴)、または化学物質誘発性耳毒性により惹起される。
【0050】
本発明に関して、「耳毒性物質」とは、その化学的作用を通じて、聴覚に関連する神経系の音受容器構成成分の活性を傷つけ、損なわせ、または阻害し、続いて聴覚(および/または平衡覚)を損なわせる物質を意味する。本発明に関して、耳毒性には、内耳有毛細胞に対する有害作用が包含される。耳毒性物質としては、治療薬(抗腫瘍薬、サリチル酸塩、ループ利尿薬、キニーネ、およびアミノグリコシド系抗生物質など)、食物もしくは薬剤中の汚染物質、および環境もしくは産業汚染物質が挙げられる。典型的に、治療は耳毒性(特に治療薬投与に起因したまたは起因したと予想される)を予防または軽減するために実施される。好ましくは本発明の化学的に修飾されたsiRNA化合物を治療的有効量含む組成物は、耳毒性作用を予防または軽減するために曝露直後に投与される。より好ましくは、耳毒性医薬品または耳毒性物質への曝露の前または同時のいずれかに本発明の医薬組成物を投与することにより予防的に治療が提供される。
【0051】
聴覚および平衡障害の詳細および診断に関するchapters 196, 197, 198 and 199 of The Merck Manual of Diagnosis and Therapy, 14th Edition, (1982), Merck Sharp & Dome Research Laboratories, N.J. and corresponding chapters in the most recent 16th edition, including Chapters 207 and 210)が本明細書に参照により組み込まれる。
【0052】
したがって、本発明の1つの態様は、哺乳動物(好ましくはヒト)の聴覚の障害(impairment)、障害(disorder)または不均衡、好ましくは中毒性聴覚病態を予防、軽減、または治療するため、かかる治療が必要な哺乳動物に本発明の化学的に修飾されたsiRNA化合物を投与することによる治療方法および医薬組成物を提供する。本発明の1つの実施形態は、治療的有効量の耳毒性医薬品投与に起因する耳毒性である聴覚の障害(disorder)または障害(impairment)を治療するための方法である。典型的な耳毒性薬は化学療法薬、例えば抗腫瘍薬、および抗生物質である。他の可能な候補としては、ループ利尿薬、キニーネもしくはキニーネ様化合物、PDE5阻害剤およびサリチル酸塩もしくはサリチル酸様化合物が挙げられる。
【0053】
耳毒性は、抗生物質投与の用量制限副作用である。1日当たり1gを1週間を越えて投与された患者の4〜15%が測定可能な聴力損失を発現し、治療を継続すると、この聴力損失は徐々に悪化して完全な永久難聴に至り得る。耳毒性アミノグリコシド系抗生物質としては、ネオマイシン、パロモマイシン、リボスタマイシン、リビドマイシン、カナマイシン、アミカシン、トブラマイシン、バイオマイシン、ゲンタマイシン、シソマイシン、ネチルミシン、ストレプトマイシン、ジベカシン、フォルチマイシン、およびジヒドロストレンプトマイシン、またはそれらの配合が挙げられるが、これらに限定されない。特定の抗生物質としては、ネオマイシンB、カナマイシンA、カナマイシンB、ゲンタマイシンC1、ゲンタマイシンC1a、およびゲンタマイシンC2、などが重篤な毒性(特に耳毒性および腎毒性)を有し、かかる抗菌剤の実用性を低下させることが知られている(Goodman and Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics, 6th ed., A. Goodman Gilman et al., eds; Macmillan Publishing Co., Inc., New York, pp.1169−71 (1980)を参照されたい)。
【0054】
耳毒性は抗癌剤の重篤な用量制限副作用でもある。耳毒性を有する腫瘍薬としては、ビンクリスチン、ビンブラスチン、シスプラチンおよびシスプラチン様化合物ならびにタキソールおよびタキソール様化合物が挙げられるが、これらに限定されない。シスプラチン様化合物としては、カルボプラチン(Paraplatin(商標登録))、テトラプラチン、オキサリプラチン、アロプラチンおよびトランスプラチン、とりわけ、および白金ベースの化学療法薬が挙げられる。
【0055】
耳毒性副作用が知られている利尿薬、特に「ループ」利尿薬としては、フロセミド、エタクリン酸、および水銀剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0056】
耳毒性キニーネとしては、典型的にはマラリア治療に用いられるキニーネの合成置換が挙げられるが、これに限定されない。いくつかの実施形態では、聴覚障害は、ホスホジエステラーゼタイプ5(PDE5)阻害剤(シルデナフィル(Viagra(商標登録))、バルデナフィル(Levitra(商標登録))およびタダラフィル(Cialis)など)の副作用である。
【0057】
サリチル酸塩(アスピリンなど)は、それらの抗炎症、鎮痛、解熱および抗血栓効果のために最も一般的に使用されている治療薬である。残念ながら、サリチル酸塩も耳毒性副作用を有する。それらはしばしば耳鳴り(tinnitus)(「耳鳴り(ringing in the ears)」)および一過性の聴力損失に至る。さらに、薬物を高用量で長期間使用すると、この聴覚障害は永久的かつ不可逆的になり得る。
【0058】
いくつかの実施形態では、アミノグリコシド系抗生物質の投与による哺乳動物の感染治療のための方法が提供され、この改善には、治療的有効量の1つ以上の、標的遺伝子の発現を下方制御する化学的に修飾されたsiRNA化合物を、かかる治療が必要な対象に投与して抗生物質に関連した中毒性聴覚障害を軽減または予防することが含まれる。
【0059】
本発明の方法および医薬組成物は、音響外傷または機械的外傷、好ましくは内耳有毛細胞消失に至る音響外傷または機械的外傷の治療にも有効である。より重度の曝露を伴うと、損傷は、隣接する支持細胞の消失からコルチ器の完全な崩壊へと進行し得る。感覚細胞の死は、進行性ワーラー変性および主要な聴覚神経線維の消失をもたらし得る。本発明の方法は、非常に大きな音への単回曝露により惹起されるもしくは85デシベル超の大きな音に連日長期間曝露後の音響外傷を治療するため、機械的内耳性外傷(例えば、電子機器の内耳への挿入に起因する)を治療するため、または手術に関連した内耳有毛細胞損傷を予防もしくは最小限に抑えるために有用である。
【0060】
別の種類の聴力損失は老人性難聴であり、これは大部分の個人において加齢に伴い徐々に発現する聴力損失である。65〜75歳の成人の約30〜35%および75歳以上の人の40〜50%が聴力損失を経験する。本発明の方法は、老人性難聴に関連した内耳障害および聴覚障害の発現および/または重症度を予防、低減または治療するのに有用である。
【0061】
定義
便宜上、本明細書、実施例および特許請求の範囲で使用される特定の用語についてここに記載する。
【0062】
本明細書で使用されるとき、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈から明らかにそうでないことが示されていなければ、複数形を含むことに留意されたい。
【0063】
本発明の態様または実施形態がマーカッシュ群または他の代替の群に関して記載されている場合、本発明は、それによりその群の任意の個々の要素または要素の亜群についても記載されることを当業者は認識するであろう。
【0064】
「ポリペプチド」とは、上に掲載した任意の遺伝子(スプライシング変異、アイソフォーム、オルソログ、またはパラログなど)によりコードされるアミノ酸配列を指す。
【0065】
「阻害剤」とは、遺伝子の発現またはかかる遺伝子の生成物の活性を所望の生物学的または生理的作用を成し遂げるのに十分な程度低減できる化合物である。「阻害剤」という用語は本明細書で使用されるとき、1個以上のオリゴヌクレオチドまたは核酸(アンチセンス、siRNA、shRNA、miRNAおよびリボザイムを包含する)を指す。阻害とは下方制御も指し得、RNAiの場合、サイレンシングも指し得る。
【0066】
「阻害する」という用語は、本明細書で使用されるとき、遺伝子の発現またはかかる遺伝子の生成物の活性を所望の生物学的または生理的作用を成し遂げるのに十分な程度低減することを指す。阻害は完全であっても部分的であってもよい。
【0067】
本明細書で使用されるとき、「ポリヌクレオチド」および「核酸」という用語は、同義的に使用してよく、デオキシリボ核酸(DNA)、およびリボ核酸(RNA)を含むヌクレオチド配列を指す。この用語は、同等物として、ヌクレオチド類似体からできているRNAまたはDNAのいずれかの類似体を包含することも理解されるべきである。本願全体でmRNA配列は対応遺伝子を示すものとして表される。「mRNAポリヌクレオチド配列」とmRNAという用語は同義的に使用される。
【0068】
「オリゴヌクレオチド」もしくは「オリゴマー」とは、約2〜約100個のヌクレオチド、好ましくは約15〜約60個、もしくは18〜約23個の1本鎖もしくは2本鎖のデオキシリボヌクレオチドもしくはリボヌクレオチド配列またはそれらのキメラを指す。オリゴヌクレオチドを構成するDNAもしくはRNAヌクレオチドは、それぞれ独立して天然であっても合成されていてもよく、およびまたは修飾されていても修飾されていなくてもよい。修飾としては、オリゴヌクレオチド中の糖部分、塩基部分およびまたはヌクレオチド間結合の変化が挙げられる。本発明のオリゴヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド化合物は、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、修飾デオキシリボヌクレオチド、修飾リボヌクレオチド、ならびにそれらの組み合わせを含む1本鎖もしくは2本鎖化合物である。
【0069】
「ヌクレオチド」または「ヌクレオチドモノマー」とは、天然であっても合成されていてもよく、およびまたは修飾されていても修飾されていなくてもよいデオキシリボヌクレオチドおよびリボヌクレオチドを包含することを意味する。修飾としては、糖部分、塩基部分ならびに/またはヌクレオチド間結合の変化および置換が挙げられる。
【0070】
ヌクレオチド/オリゴヌクレオチドの類似体または修飾は、前記類似体または修飾がこのヌクレオチド/オリゴヌクレオチドの機能に有害作用を実質的に及ぼさない限り、本発明に好ましく使用される。いくつかの実施形態では、化学修飾により、活性もしくは安定性が増大するか、またはオフターゲット効果もしくは自然免疫反応の誘発が低下する。許容可能な修飾としては、糖部分修飾、塩基部分修飾、ヌクレオチド間結合部における修飾およびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0071】
このヌクレオチドは天然または合成の修飾塩基から選択できる。天然塩基としては、アデニン、グアニン、シトシン、チミンおよびウラシルが挙げられる。ヌクレオチドの修飾塩基としては、イノシン、キサンチン、ヒポキサンチン、2−アミノアデニン、6−メチル、2−プロピルおよびその他のアルキルアデニン、5−ハロウラシル、5−ハロシトシン、6アザシトシンおよび6アザチミン、偽ウラシル、4−チオウラシル、8−ハロアデニン、8−アミノアデニン、8−チオールアデニン、8−チオールアルキルアデニン、8−ヒドロキシルアデニンおよびその他の8−置換アデニン、8−ハログアニン、8−アミノグアニン、8−チオールグアニン、8−チオアルキルグアニン、8−ヒドロキシルグアニンおよびその他の置換グアニン、他のアザおよびデアザアデニン、他のアザおよびデアザグアニン、5−トリフルオロメチルウラシルおよび5−トリフルオロシトシンが挙げられる。
【0072】
加えて、ヌクレオチド類似体を含む化合物は、1つ以上のヌクレオチド構造が根本的に改変されて治療または実験試薬としてより適合するように調製される。ヌクレオチド類似体の一例は、DNA(またはRNA)中のデオキシリボース(またはリボース)リン酸骨格がペプチドに見られるものに類似したポリアミド骨格と置換されているペプチド核酸(PNA)である。PNA類似体は、酵素による分解に耐性であること、ならびにインビボおよびインビトロで生存が延長されることが示されている。
【0073】
糖残基に可能な修飾は多様であり、2’−Oアルキル、固定化核酸(LNA)、グリコール核酸(GNA)、トレオース核酸(TNA)、アラビノシド、アルトリトール(ANA)およびその他の6員糖類(モルホリノ、およびシクロヘキシルなど)が挙げられる。
【0074】
LNA化合物は、国際公開特許第00/47599号、国際公開特許第99/14226号、および国際公開特許第98/39352号に開示されている。LNAヌクレオチドを含むsiRNA化合物の例は、Elmen et al.,(NAR 2005. 33(1):439−447)および国際公開特許第2004/083430号に開示されている。
【0075】
エチル(リン酸エチルトリエステルを生成);プロピル(リン酸プロピルトリエステルを生成);ならびにブチル(リン酸ブチルトリエステルを生成)などの骨格修飾も可能である。他の骨格修飾としては、ポリマー骨格、環式骨格、非環式骨格、チオリン酸−D−リボース骨格、アミデート、ホスホノアセテート誘導体が挙げられる。特定の構造としては、1つ以上の2’−5’ヌクレオチド間結合(架橋または骨格)を有するsiRNA化合物が挙げられる。
【0076】
本発明の分子に存在し得る追加の修飾としては、人工核酸、ペプチド核酸(PNA)、モルホリノおよび固定化核酸(LNA)、グリコール核酸(GNA)、トレオース核酸(TNA)、アラビノシド、ならびに鏡像体ヌクレオシド(例えば、β−D−デオキシヌクレオシドに代わるβ−L−デオキシヌクレオシド)などのヌクレオシド修飾が挙げられる。さらに、前記分子は糖修飾(2’−アルキル、2’−フルオロ(2’−デオキシ−2’−フルオロ)、2’O−アリル、2’アミンおよび2’アルコキシなど)をさらに含有してよい。追加の糖修飾については本明細書で論じられている。
【0077】
さらに、本発明の阻害性核酸分子は1つ以上のギャップおよび/または1つ以上のニックおよび/または1つ以上のミスマッチが入っていてよい。理論に束縛されるものではないが、ギャップ、ニックおよびミスマッチは内因性細胞機構(DICER、DROSHAまたはRISCなど)によってその阻害成分に容易に処理され得るように核酸/siRNAを部分的に不安定にさせる利点を持つ。
【0078】
本発明に関して、核酸中ギャップは、1本鎖中の1個以上の内部ヌクレオチドの欠如を指し、対して核酸中ニックは1本鎖中の2個の隣接するヌクレオチド間のヌクレオチド間結合の欠如を指す。本発明の分子のいずれも、1つ以上のギャップおよび/または1つ以上のニックが入っていてよい。
【0079】
siRNAおよびRNA干渉
RNA干渉(RNAi)は、2本鎖(ds)RNA依存性の遺伝子特異的転写後サイレンシングが関与する現象である。当初、この現象について研究し、哺乳類細胞を実験的に操作する試みは、長いdsRNA分子に反応して活性化された活性非特異的抗ウイルス防御機構によって失敗した(Gil et al. Apoptosis, 2000. 5:107−114)。その後、21個のヌクレオチドRNAの合成2本鎖が、一般の抗ウイルス防御機構を刺激せずに、哺乳類細胞において遺伝子特異的RNAiを媒介できることが発見された(Elbashir et al. Nature 2001, 411:494−498 and Caplen et al. PNAS USA 2001, 98:9742−9747を参照されたい)。その結果、短い2本鎖RNAである低分子干渉RNA(siRNA)は、遺伝子機能を理解する試みにおいて強力な手段となった。したがってRNA干渉(RNAi)とは、低分子干渉RNA(siRNA)(Fire et al, Nature 1998. 391, 806)またはマイクロRNA(miRNA)Ambros, Nature 2004 431:7006,350−55; and Bartel, Cell. 2004. 116(2):281−97)によって媒介される哺乳類における配列特異的な転写後遺伝子サイレンシングの過程を指す。植物における対応する過程は、一般に、特異的転写後遺伝子サイレンシングまたはRNAサイレンシングと呼ばれ、菌類ではクエリングと呼ばれる。
【0080】
siRNAは、その内因性もしくは細胞の対応遺伝子/mRNA、または外来遺伝子(ウイルス核酸など)の発現を部分的または完全に阻害する2本鎖RNA分子である。RNA干渉の機構は下に詳述する。
【0081】
何件もの試験により、siRNA治療法がインビボで哺乳類とヒトの両方に有効であることが明らかになった。Bitkoらは、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)ヌクレオカプシドN遺伝子を対象とする特定のsiRNA分子が鼻腔内投与時にマウスの治療に有効であることを示している(Bitko et al., Nat. Med. 2005, 11(1):50−55)。近年、siRNAは、霊長類における阻害のために成功的に使用されている(Tolentino et al., Retina 2004. 24(1):132−138)。siRNAの治療用途に関する概説については、例えばBarik(J. Mol. Med. 2005. 83: 764−773)またはDykxhoorn et al(2006. Gene Ther. 13:541−552)を参照されたい。
【0082】
siRNA構造
既知の遺伝子に対応するsiRNAの選択および合成については、広く報告されている(例えばUi−Tei et al., J Biomed Biotech. 2006; 2006: 65052; Chalk et al., BBRC. 2004, 319(1): 264−74; Sioud & Leirdal, Met. Mol Biol.; 2004, 252:457−69; Levenkova et al., Bioinform. 2004, 20(3):430−2; Ui−Tei et al., NAR. 2004, 32(3):936−48を参照されたい)。
【0083】
例えば、修飾siRNAの使用および産生については、例えば、Braasch et al., Biochem. 2003, 42(26):7967−75; Chiu et al., RNA, 2003, 9(9):1034−48;PCT国際公開特許第2004/015107号(atugen AG)および国際公開特許第02/44321号(Tuschl et al)を参照されたい。米国特許第5,898,031号および同第6,107,094号は化学的に修飾されたオリゴマーについて教示している。米国特許第2005/0080246号および同第2005/0042647号は、それぞれモチーフを交互に有するオリゴマー化合物および化学的に修飾されたヌクレオシド間結合を有するdsRNA化合物に関する。
【0084】
その他の修飾についても開示されている。5’−リン酸部分の含有物は、ショウジョウバエ(Drosophila)胚のsiRNA活性を増強し(Boutla, et al., Curr. Biol. 2001, 11:1776−1780)、ヒトHeLa細胞においてsiRNA機能のために必要であることが示された(Schwarz et al., Mol. Cell, 2002, 10:537−48)。Amarzguiouiら(NAR, 2003, 31(2):589−95)は、siRNA活性は2’−O−メチル修飾の位置付けに依存することを示した。Holenら(NAR. 2003, 31(9):2401−07)は、2’−O−メチル修飾ヌクレオシド数が少ないsiRNAは野生型と比較して良好な活性を生じたが、2’−O−メチル修飾ヌクレオシド数が増すにつれ活性は低下したことを報告している。ChiuおよびRana(RNA. 2003, 9:1034−48)は、センス鎖またはアンチセンス鎖における2’−O−メチル修飾ヌクレオシド(完全修飾鎖)の取り込みは非修飾siRNAと比較しsiRNA活性を大幅に低下させたことを教示している。アンチセンス鎖の5’末端の2’−O−メチル基の配置により活性が大幅に制限されたのに対し、アンチセンスの3’末端およびセンス鎖の両端の配置は許容されたことが報告されている(Czauderna et al., NAR. 2003, 31(11):2705−16;国際公開特許第2004/015107号)。本発明の分子は非毒性であり、様々な疾患治療のための医薬組成物として製剤化してよい点で利点を供する。
【0085】
国際公開特許第2008/050329号(本発明の譲受人に付与されており、それらの全体が本明細書に組み込まれる)は、プロアポトーシス遺伝子発現に関連する疾患および障害を治療するためのsiRNA化合物、siRNA化合物を含む組成物、ならびにそれらの使用方法に関する。米国特許出願第11/655610号は、プロアポトーシス遺伝子(全般的に、特にp53)を阻害することにより聴覚障害を治療する方法に関する。国際公開特許第2005/119251号は、難聴を治療する方法に関する。国際公開特許第2005/055921号は、耳障害治療のための発泡性組成物に関する。米国特許第7,087,581号は、内耳性の疾患および障害を治療する方法に関する。
【0086】
1つの態様によると、本発明は、化学的に修飾された阻害性オリゴヌクレオチド化合物;浸透エンハンサーおよび薬学的に許容可能な担体を含む組成物を投与することを含む、医薬組成物を投与する工程を含む耳障害の治療のための方法を提供する。化合物は、糖修飾、塩基修飾およびヌクレオチド間結合修飾からなる群から選択される少なくとも1個の修飾ヌクレオチドを含む。
【0087】
本発明は、様々な遺伝子の発現を下方制御する化合物、特に新規の低分子干渉RNA(siRNA)にも関し、これらの新規siRNAの聴力損失治療、内耳細胞再生および化学物質誘発性聴力損失の予防における使用にも関する。
【0088】
本発明に有用なヒト標的遺伝子の非限定的な一覧を、配列番号1〜36で表した表1に提示する。1つの好ましい実施形態では、標的遺伝子は1つ以上の:TP53BP2(ASPP2)、BNIP3、CASP2、NOX3、HRK、RAC1、DDIT4、DDIT4L、NOX4、HTRA2、CAPNS1(カルパイン)、ID3、HES1、HES5、CDKN1BおよびID3から選択される。これらの遺伝子に関するmRNAの参照番号を表1に示す。それぞれの遺伝子に関して、19mer、21merおよび23mer配列が生成され、それらは、ヒト遺伝子の発現を標的にする最良の配列として独自のアルゴリズムにおけるそれらの得点に基づき優先順位が付けられる。21または23mer siRNA配列は本明細書に開示の19mer配列の5’および/または3’の延長により生成することもできる。かかる延長は好ましくは対応するmRNA配列に相補的である。特定の23merオリゴマーを、優先順が対応19mer順であるこの方法により考案した。本発明の実践に有用であるsiRNAオリゴマーは米国特許出願第11/978,089号(本発明の譲受人に譲与されており、それらの全体が本明細書に参照により組み込まれる)の表Bに開示されており、出願中で配列番号97〜68654として示されている。本発明の組成物および方法に有用である特定のsiRNAオリゴマーは米国特許出願第11/207119号、同第11/811,112号、同第11/655636号、およびPCT国際公開特許/イスラエル特許第2008/000797号、PCT/イスラエル特許第2008/000874号、PCT/イスラエル特許第2009/000053号、PCT/イスラエル特許第2009/000302号(本発明の譲受人に譲与されており、それらの全体が本明細書に参照により組み込まれる)に開示されている。様々な長さのsiRNA化合物の調製に有用である特定の19merアンチセンスとセンスオリゴヌクレオチド配列を図4に示す。異種間配列の略記は次のとおりである:Chp:チンパンジー、Ms:マウス、Chn:チンチラ、GP:モルモット。
【0089】
いくつかの実施形態では、本発明は、細胞内で内因性細胞錯体(例えば上記のDROSHAおよびDICER)により1つ以上の低分子2本鎖オリゴヌクレオチド(siRNA)を産生するように処理されるステムおよびループ構造を含まないか、1つ以上含む長いオリゴヌクレオチド(典型的には、長さ約41〜500個のヌクレオチド)を含む組成物および方法を提供する。いくつかの実施形態では、この長いオリゴヌクレオチドは、1つ以上のステムおよびループ構造を含む(ステム領域はそれぞれセンスおよび対応するアンチセンスsiRNA配列を含む)1本鎖オリゴヌクレオチドである。本明細書に開示の阻害性配列を含む(好適な核酸修飾を有する)任意の分子(例えば、アンチセンスDNA分子など)が特に望ましく、対応するRNA/siRNAと同容量を本明細書に開示のすべての使用および方法に用いてよい。
【0090】
オリゴヌクレオチド
本発明は、所望の遺伝子の発現を下方制御する2本鎖オリゴヌクレオチド(例えばsiRNA)を提供する。本発明のsiRNAは、センス鎖が所望の遺伝子のmRNA配列から引き出され、アンチセンス鎖がそのセンス鎖に相補的である2本鎖オリゴリボヌクレオチドである。一般に、標的mRNA配列との多少のずれは許容範囲であり、siRNA活性は損なわれない(例えばCzauderna et al., NAR. 2003, 31(11):2705−2716を参照されたい)。本発明のsiRNAは、mRNAを破壊してまたは破壊せずに転写後レベルの遺伝子発現を阻害する。理論に縛られることなく、siRNAはmRNAを特定の切断および分解の標的とし得、および/または標的メッセージ由来の翻訳を阻害し得る。
【0091】
様々な実施形態では、このsiRNAは第1鎖と第2鎖を含むRNA2本鎖を含み、ここで第1鎖は、標的遺伝子からmRNA転写された標的核酸の約18〜約40個の連続するヌクレオチドと少なくとも部分的に相補的なリボヌクレオチド配列を含み、第2鎖は、第1鎖と少なくとも部分的に相補的なリボヌクレオチド配列を含み、前記第1鎖およびまたは前記第2鎖は、1個以上の化学的に修飾されたリボヌクレオチドおよびまたは非定型的部分を含む。
【0092】
1つの実施形態では、このsiRNA化合物は、糖部分の2’修飾(「2’糖修飾」)を含む少なくとも1個のリボヌクレオチドを含む。特定の実施形態では、化合物は、2’O−アルキルもしくは2’−フルオロもしくは2’O−アリルまたはその他の任意の2’修飾を、任意に交互の位置に含む。他の安定化修飾も可能である(例えば末端修飾)。いくつかの実施形態では、好ましい2’O−アルキルは2’O−メチル(メトキシ、2’OMe)糖修飾である。
【0093】
いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチド骨格は修飾されており、リン酸−D−リボース物質を含むが、チオリン酸−D−リボース物質、トリエステル、チオエート、2’−5’架橋骨格(5’−2’とも呼び得る)、PACEなどを含有してもよい。
【0094】
本明細書で使用されるとき、「非対合ヌクレオチド類似体」という用語は、非塩基対合部分(6デスアミノアデノシン(Nebularine)、4−Me−インドール、3−ニトロピロール、5−ニトロインドール、Ds、Pa、N3−MeリボU、N3−MeリボT、N3−Me dC、N3−Me−dT、N1−Me−dG、N1−Me−dA、N3−エチル−dC、N3−Me dCが挙げられるが、これらに限定されない)を含むヌクレオチド類似体を意味する。いくつかの実施形態では、非塩基対合ヌクレオチド類似体はリボヌクレオチドである。他の実施形態では、それはデオキシリボヌクレオチドである。加えて、ポリヌクレオチド類似体は、1つ以上のヌクレオチド構造が根本的に改変されて治療または実験試薬としてより適合するように調製し得る。ヌクレオチド類似体の一例は、DNA(またはRNA)中のデオキシリボース(またはリボース)リン酸骨格がペプチドに見られるものに類似したポリアミド骨格と置換されているペプチド核酸(PNA)である。PNA類似体は、酵素による分解に耐性であること、ならびにインビボおよびインビトロで安定性を増強することが示されている。他の有用な修飾としては、ポリマー骨格、環式骨格、非環式骨格、チオリン酸−D−リボース骨格、トリエステル骨格、チオエート骨格、2’−5’架橋骨格、人工核酸、モルホリノ核酸、グリコール核酸(GNA)、トレオース核酸(TNA)、アラビノシド、および鏡像体ヌクレオシド(例えば、β−D−デオキシリボヌクレオシドに代わるβ−L−デオキシリボヌクレオシド)が挙げられる。本発明の化合物は、1つ以上の逆ヌクレオチド(例えば逆チミジンまたは逆アデニン)を用いて合成できる(例えば、Takei, et al., 2002, JBC 277(26):23800−06を参照されたい)。
【0095】
追加の修飾としては、オリゴヌクレオチドの5’および/または3’部分の末端修飾(キャッピング部分としても知られている)が挙げられる。かかる末端修飾は、ヌクレオチド、修飾ヌクレオチド、脂質、ペプチド、糖および逆方向脱塩基部分から選択される。
【0096】
本発明において「脱塩基ヌクレオチド」または「脱塩基ヌクレオチド類似体」と時折呼ばれるものは、より好適には偽ヌクレオチドまたは非定型的部分と呼ばれる。ヌクレオチドは核酸のモノマー単位であり、リボースもしくはデオキシリボース糖、リン酸、ならびに塩基(DNAのアデニン、グアニン、チミン、またはシトシン;RNAのアデニン、グアニン、ウラシル、またはシトシン)からなる。修飾ヌクレオチドは1つ以上の糖、リン酸およびまたは塩基における修飾を含む。この脱塩基偽ヌクレオチドは塩基欠損であり、したがって厳密にはヌクレオチドではない。
【0097】
「非定型的部分」という用語は、本明細書で使用されるとき、脱塩基リボース部分、脱塩基デオキシリボース部分、デオキシリボヌクレオチド、修飾デオキシリボヌクレオチド、鏡像体ヌクレオチド、非塩基対合ヌクレオチド類似体および2’−5’ヌクレオチド間リン酸結合により隣接ヌクレオチドに連結しているヌクレオチド;架橋核酸(LNAおよびエチレン架橋核酸など)を指す。本発明のいくつかの実施形態では、好ましい非定型的部分は脱塩基リボース部分、脱塩基デオキシリボース部分、デオキシリボヌクレオチド、鏡像体ヌクレオチド、および2’−5’ヌクレオチド間リン酸結合により隣接ヌクレオチドに連結しているヌクレオチドである。
【0098】
脱塩基デオキシリボース部分としては、例えば脱塩基デオキシリボース−3’−リン酸;1,2−ジデオキシ−D−リボフラノース−3−リン酸;1,4−アンヒドロ−2−デオキシ−D−リビトール−3−リン酸が挙げられる。逆方向脱塩基デオキシリボース部分としては、逆デオキシリボ脱塩基;3’,5’逆デオキシ脱塩基5’−リン酸が挙げられる。
【0099】
「鏡像体」ヌクレオチドは、天然または一般に使用されるヌクレオチドと逆の対掌性を有するヌクレオチド、すなわち、天然体(D−ヌクレオチド)の鏡像(L−ヌクレオチド)(鏡像体リボヌクレオチドの場合はL−RNAとも呼ばれる)、および「シュピーゲルマー(spiegelmer)」である。ヌクレオチドはリボヌクレオチドまたはデオキシリボヌクレオチドでもあり得、さらに少なくとも1個の糖、塩基およびまたは骨格修飾を含む。米国特許第6,586,238号を参照されたい。また、米国特許第6,602,858号は核酸触媒(少なくとも1個のL−ヌクレオチド置換を含む)を開示している。鏡像体ヌクレオチドとしては、例えばL−DNA(L−デオキシリボアデノシン−3’−リン酸(鏡像体dA);L−デオキシリボシチジン−3’−リン酸(鏡像体dC);L−デオキシリボグアノシン−3’−リン酸(鏡像体dG);L−デオキシリボチミジン−3’−リン酸(鏡像dT))およびL−RNA(L−リボアデノシン−3’−リン酸(鏡像体rA);L−リボシチジン−3’−リン酸(鏡像体rC);L−リボグアノシン−3’−リン酸(鏡像体rG);L−リボウラシル−3’−リン酸(鏡像体dU)が挙げられる。
【0100】
本明細書で使用されるとき、「キャッピング部分」という用語としては、脱塩基リボース部分、脱塩基デオキシリボース部分、修飾脱塩基リボースおよび脱塩基デオキシリボース部分(2’Oアルキル修飾など);逆方向脱塩基リボースおよび脱塩基デオキシリボース部分およびそれらの修飾;C6−イミノ−Pi;鏡像体ヌクレオチド(L−DNAおよびL−RNAなど);5’O−Meヌクレオチド;ならびにヌクレオチド類似体(4’,5’−メチレンヌクレオチドなど);1−(β−D−エリトロフラノシル)ヌクレオチド;4’−チオヌクレオチド、カルボ環状ヌクレオチド;5’−アミノ−アルキルリン酸;1,3−ジアミノ−2−プロピルリン酸、3−アミノプロピルリン酸;6−アミノヘキシルリン酸;12−アミノドデシルリン酸;ヒドロキシプロピルリン酸;1,5−アンヒドロヘキシトールヌクレオチド;α−ヌクレオチド;トレオ−ペントフラノシルヌクレオチド;環状3’,4’−セコヌクレオチド;3,4−ジヒドロキシブチルヌクレオチド;3,5−ジヒドロキシペンチルヌクレオチド、5’−5’−逆方向脱塩基部分;1,4−ブタンジオールリン酸;5’−アミノ;ならびに架橋もしくは非架橋メチルホスホン酸および5’−メルカプト部分が挙げられる。
【0101】
特定の好ましいキャッピング部分は、脱塩基リボースまたは脱塩基デオキシリボース部分;逆方向脱塩基リボースまたは脱塩基デオキシリボース部分;C6−アミノ−Pi;鏡像体ヌクレオチド(L−DNAおよびL−RNAなど)である。
【0102】
さらなる末端修飾はビオチン基である。かかるビオチン基は、好ましくは、第1および/または第2鎖の5’最末端もしくは3’最末端ヌクレオチドのいずれかまたは両端に結合されてよい。より好ましい実施形態では、ビオチン基はポリペプチドまたはタンパク質に結合される。ポリペプチドまたはタンパク質が他の上記末端修飾のいずれかを介して結合されることも本発明の範囲内である。
【0103】
本明細書に開示の様々な末端修飾は、好ましくは、本発明による核酸のヌクレオチドのリボース部分に位置する。より詳細には、末端修飾は、リボース部分の任意のOH基(2’OH、3’OHおよび5’OH位が挙げられるが、これらに限定されない)に結合するかまたは置換されてもよく、ただしこのように修飾されたヌクレオチドは末端ヌクレオチドである。逆方向脱塩基または脱塩基は、核酸塩基部分を有さないデオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドのいずれかのヌクレオチドである(例えばSternberger, et al., (2002). Antisense Nucleic Acid Drug Dev, 12, 131−43を参照されたい)。
【0104】
修飾デオキシリボヌクレオチドとしては、例えば5’末端位(1位)のヌクレオチドとして有用であり得る5’OMe DNA(5−メチル−デオキシリボグアノシン−3’−リン酸);PACE(デオキシリボアデニン3’ホスホノアセテート、デオキシリボシチジン3’ホスホノアセテート、デオキシリボグアノシン3’ホスホノアセテート、デオキシリボチミジン3’ホスホノアセテートが挙げられる。
【0105】
架橋核酸としては、LNA(2’−O,4’−C−メチレン架橋核酸アデノシン3’一リン酸、2’−O,4’−C−メチレン架橋核酸5−メチル−シチジン3’一リン酸、2’−O,4’−C−メチレン架橋核酸グアノシン3’一リン酸、5−メチル−ウリジン(またはチミジン)3’一リン酸);ならびにENA(2’−O,4’−C−エチレン架橋核酸アデノシン3’一リン酸、2’−O,4’−C−エチレン架橋核酸5−メチル−シチジン3’一リン酸、2’−O,4’−C−エチレン架橋核酸グアノシン3’一リン酸、5−メチル−ウリジン(またはチミジン)3’一リン酸)が挙げられる。
【0106】
特定の実施形態では、前記第1鎖と標的核酸は完全に相補的である。いくつかの実施形態では、これらの鎖は実質的に相補的であり、すなわち前記第1鎖と標的核酸の間のミスマッチは1つ、2つまたは最大3つである。実質的に相補的とは、もう一方の配列に対して約84%超の相補性を指す。例えば19塩基対からなる2本鎖領域において、1つのミスマッチは94.7%の相補性となり、2つのミスマッチは約89.5%の相補性となり、3つのミスマッチは約84.2%の相補性となり、2本鎖領域は実質的に相補的であることが示される。したがって、実質的に同一とは、もう一方の配列に対して約84%超の同一性を指す。
【0107】
いくつかの実施形態では、化合物の第1鎖と第2鎖はループ構造により結ばれており、非核酸ポリマー(とりわけ、ポリエチレングリコールなど)を含む。あるいは、このループ構造は核酸(修飾および非修飾リボヌクレオチドならびに修飾および非修飾デオキシリボヌクレオチドなど)を含む。
【0108】
さらなる実施形態では、siRNAの第1鎖の5’末端は第2鎖の3’末端に結ばれているか、第1鎖の3’末端は第2鎖の5’末端に結ばれており、前記結合は典型的には長さ2〜100個の核塩基、好ましくは約2〜約30個の核塩基を有する核酸リンカーを介する。
【0109】
本発明の化合物の好ましい実施形態では、化合物のアンチセンス鎖とセンス鎖の少なくとも一方で修飾されたリボヌクレオチドを交互に有し、19merおよび23merオリゴマーにおいて、アンチセンス鎖の5’末端と3’末端のリボヌクレオチドの糖残基は修飾されており、センス鎖の5’末端と3’末端のリボヌクレオチドの糖残基は修飾されていない。21merオリゴマーにおいて、センス鎖の5’末端と3’末端のリボヌクレオチドの糖残基は修飾されており、アンチセンス鎖の5’末端と3’末端のリボヌクレオチドの糖残基は修飾されていないか、任意で3’末端に追加の修飾を有する。上述したように、アンチセンス鎖の中央ヌクレオチドは修飾されていないことが好ましい。
【0110】
本発明の1つの好ましい実施形態によると、オリゴヌクレオチド/siRNAのアンチセンス鎖とセンス鎖の3’末端はリン酸化されており、5’末端はリン酸化されていない。本発明の別の好ましい実施形態によると、アンチセンス鎖とセンス鎖はリン酸化されていない。本発明のさらに別の好ましい実施形態によると、センス鎖の5’最末端のリボヌクレオチドはインビボ5’−リン酸化のいかなる可能性も排除するために修飾されている。
【0111】
siRNA配列はいずれも本明細書に開示の任意の修飾/構造を有するように調製できる。配列と構造の組み合わせを含む化合物は本明細書に開示の病態治療に有用である。
【0112】
構造モチーフ
本発明によると、siRNA化合物は、構造(A)〜(P)またはタンデムsiRNAもしくはRNAスターとして表される次の修飾のうちの1つにより化学的およびまたは構造的に修飾されている。
【0113】
1つの態様では、本発明は構造(A)として表される化合物を提供する:
(A)5’ (N)x−Z 3’ (アンチセンス鎖)
3’ Z’−(N’)y 5’ (センス鎖)
式中NとN’はそれぞれ、非修飾リボヌクレオチド、修飾リボヌクレオチド、非修飾デオキシリボヌクレオチド、および修飾デオキシリボヌクレオチドから選択されるヌクレオチドであり;
式中(N)xと(N’)yはそれぞれ、連続するNもしくはN’がそれぞれ共有結合により次のNもしくはN’に連結しているオリゴヌクレオチドであり;
式中xとyはそれぞれ18〜40の整数であり;
式中ZとZ’はそれぞれ存在しても存在しなくてもよいが、存在する場合は、それが存在する鎖の3’末端で共有結合している1〜5個の連続するヌクレオチドであり;
式中(N’)y配列は(N)xと実質的に相補的な配列であり;ならびに式中(N)x配列は、耳障害に関連した標的遺伝子mRNA中の約18〜約40個の連続するリボヌクレオチドと実質的に相補的なアンチセンス配列を含む。
【0114】
特定の実施形態では、本発明は、構造(B)を有する化合物を提供し、
(B)5’ (N)x−Z 3’ (アンチセンス鎖)
3’ Z’−(N’)y 5’ (センス鎖)
式中(N)xと(N’)yはそれぞれ、連続するNもしくはN’がそれぞれ共有結合により次のNもしくはN’に連結している非修飾リボヌクレオチドもしくは修飾リボヌクレオチドであるオリゴマーであり;
式中ZとZ’はそれぞれ存在しても存在しなくてもよいが、存在する場合は、それが存在する鎖の3’末端で共有結合している1〜5個の連続するヌクレオチドであり;
式中xとyはそれぞれ19、21または23であり、(N)xと(N’)yは完全に相補的であり、
式中(N)xと(N’)yのそれぞれの交互のリボヌクレオチドはリボヌクレオチドの糖残基で2’−O−メチル修飾されており;
式中(N’)y配列は(N)xと実質的に相補的な配列であり;ならびに式中(N)x配列は、耳障害に関連した標的遺伝子mRNA中の約18〜約40個の連続するリボヌクレオチドと実質的に相補的なアンチセンス配列を含む。
【0115】
いくつかの実施形態では、(N)xと(N’)yはそれぞれ独立して3’末端と5’末端でリン酸化されているかまたはリン酸化されていない。
【0116】
特定の実施形態では、式中xとyはそれぞれ19または23であり、(N)xの5’末端と3’末端のNはそれぞれ修飾されており;ならびに(N’)yの5’末端と3’末端のN’はそれぞれ修飾されていない。
【0117】
特定の実施形態では、式中xとyはそれぞれ21であり、(N)xの5’末端と3’末端のNはそれぞれ修飾されておらず;ならびに(N’)yの5’末端と3’末端のN’はそれぞれ修飾されている。
【0118】
特定の実施形態では、xとyが19である場合、siRNAは、アンチセンス鎖(N)xの1、3、5、7、9、11、13、15、17および19番目のヌクレオチドに2’−O−メチル(2’−OMe)基が存在し、それにより、全く同一の修飾(すなわち2’−OMe基)がセンス鎖(N’)yの2、4、6、8、10、12、14、16および18番目のヌクレオチドに存在する。様々な実施形態では、これらの特定のsiRNA化合物の両端は平滑端である。
【0119】
いくつかの実施形態では、本発明は、構造(C)を有する化合物を提供する:
(C)5’ (N)x−Z 3’ アンチセンス鎖
3’ Z’−(N’)y 5’ センス鎖
式中NとN’はそれぞれ独立して非修飾リボヌクレオチド、修飾リボヌクレオチド、非修飾デオキシリボヌクレオチド、および修飾デオキシリボヌクレオチドから選択されるヌクレオチドであり;
式中(N)xと(N’)yはそれぞれ、連続するヌクレオチドがそれぞれ共有結合により次のヌクレオチドに連結しているオリゴマーであり、xとyはそれぞれ18〜40の整数であり;
式中(N)xのヌクレオチドは修飾されていないか、あるいは(N)xは、修飾リボヌクレオチドと非修飾リボヌクレオチドを交互に含み;修飾リボヌクレオチドはその糖上にそれぞれ2’−O−メチルを有するように修飾されており、(N)xの中央部にあるリボヌクレオチドは修飾されているか修飾されていないが、好ましくは修飾されておらず;
式中(N’)yは、非修飾リボヌクレオチドを含み、さらに末端もしくは末端から2番目に1個の修飾ヌクレオチドを含み、この修飾ヌクレオチドは、鏡像体ヌクレオチド、二環式ヌクレオチド、2’−糖修飾ヌクレオチド、アルトリトールヌクレオチド、あるいは2’−5’リン酸ジエステル結合、P−アルコキシ結合もしくはPACE結合から選択されるヌクレオチド間結合により隣接ヌクレオチドに連結しているヌクレオチドからなる群から選択され;
式中(N’)yの1つ以上のヌクレオチドが修飾されている場合、この修飾ヌクレオチドは連続していてよく;
式中ZとZ’はそれぞれ存在しても存在しなくてもよいが、存在する場合は、それが結合している任意のオリゴマーの3’末端で共有結合している1〜5個のデオキシリボヌクレオチドであり;
式中(N’)y配列は、(N)xと実質的に相補的な配列を含み;ならびに式中(N)xは、耳障害に関連した標的遺伝子mRNA中の約18〜約40個の連続するリボヌクレオチドと実質的に相補的なアンチセンス配列を含む。
【0120】
特定の実施形態では、x=y=19であり、(N)xの修飾リボヌクレオチドはそれぞれその糖上に2’−O−メチルを有するように修飾されており、(N)xの中央に位置するリボヌクレオチドは修飾されていない。したがって、式中x=19の化合物において、(N)xは、1、3、5、7、9、11、13、15、17および19位に2’−O−メチル糖修飾リボヌクレオチドを含む。他の実施形態では、(N)xは、2、4、6、8、11、13、15、17および19位に2’OMe修飾リボヌクレオチドを含み、さらに少なくとも1個の脱塩基または逆方向脱塩基の非定型的部分(例えば5位)を含んでよい。他の実施形態では、(N)xは2、4、8、11、13、15、17および19位に2’OMe修飾リボヌクレオチドを含み、さらに少なくとも1個の脱塩基または逆方向脱塩基の非定型的部分(例えば6位)を含んでよい。他の実施形態では、(N)xは、2、4、6、8、11、13、17および19位に2’OMe修飾リボヌクレオチドを含み、さらに少なくとも1個の脱塩基または逆方向脱塩基の非定型的部分(例えば15位)を含んでよい。他の実施形態では、(N)xは、2、4、6、8、11、13、15、17および19位に2’OMe修飾リボヌクレオチドを含み、さらに少なくとも1個の脱塩基または逆方向脱塩基の非定型的部分(例えば14位)を含んでよい。他の実施形態では、(N)xは1、2、3、7、9、11、13、15、17および19位に2’OMe修飾リボヌクレオチドを含み、さらに少なくとも1個の脱塩基または逆方向脱塩基の非定型的部分(例えば5位)を含んでよい。他の実施形態では、(N)xは、1、2、3、5、7、9、11、13、15、17および19位に2’OMe修飾リボヌクレオチドを含み、さらに少なくとも1個の脱塩基または逆方向脱塩基の非定型的部分(例えば6位)を含んでよい。他の実施形態では、(N)xは、1、2、3、5、7、9、11、13、17および19位に2’OMe修飾リボヌクレオチドを含み、さらに少なくとも1個の脱塩基または逆方向脱塩基の非定型的部分(例えば15位)を含んでよい。他の実施形態では、(N)xは、1、2、3、5、7、9、11、13、15、17および19位に2’OMe修飾リボヌクレオチドを含み、さらに少なくとも1個の脱塩基または逆方向脱塩基の非定型的部分(例えば14位)を含んでよい。他の実施形態では、(N)xは2、4、6、7、9、11、13、15、17および19位に2’OMe修飾リボヌクレオチドを含み、さらに少なくとも1個の脱塩基または逆方向脱塩基の非定型的部分(例えば5位)を含んでよい。他の実施形態では、(N)xは、1、2、4、6、7、9、11、13、15、17および19位に2’OMe修飾リボヌクレオチドを含み、さらに少なくとも1個の脱塩基または逆方向脱塩基の非定型的部分(例えば5位)を含んでよい。他の実施形態では、(N)xは、2、4、6、8、11、13、14、16、17および19位に2’OMe修飾リボヌクレオチドを含み、さらに少なくとも1個の脱塩基または逆方向脱塩基の非定型的部分(例えば15位)を含んでよい。他の実施形態では、(N)xは、1、2、3、5、7、9、11、13、14、16、17および19位に2’OMe修飾リボヌクレオチドを含み、さらに少なくとも1個の脱塩基または逆方向脱塩基の非定型的部分(例えば15位)を含んでよい。他の実施形態では、(N)xは、2、4、6、8、11、13、15、17および19位に2’OMe修飾リボヌクレオチドを含み、さらに少なくとも1個の脱塩基または逆方向脱塩基の非定型的部分(例えば7位)を含んでよい。他の実施形態では、(N)xは、2、4、6、11、13、15、17および19位に2’OMe修飾リボヌクレオチドを含み、さらに少なくとも1個の脱塩基または逆方向脱塩基の非定型的部分(例えば8位)を含んでよい。他の実施形態では、(N)xは2、4、6、8、11、13、15、17および19位に2’OMe修飾リボヌクレオチドを含み、さらに少なくとも1個の脱塩基または逆方向脱塩基の非定型的部分(例えば9位)を含んでよい。他の実施形態では、(N)xは2、4、6、8、11、13、15、17および19位に2’OMe修飾リボヌクレオチドを含み、さらに少なくとも1個の脱塩基または逆方向脱塩基の非定型的部分(例えば10位)を含んでよい。他の実施形態では、(N)xは2、4、6、8、13、15、17および19位に2’OMe修飾リボヌクレオチドを含み、さらに少なくとも1個の脱塩基または逆方向脱塩基の非定型的部分(例えば11位)を含んでよい。他の実施形態では、(N)xは、2、4、6、8、11、13、15、17および19位に2’OMe修飾リボヌクレオチドを含み、さらに少なくとも1個の脱塩基または逆方向脱塩基の非定型的部分(例えば12位)を含んでよい。他の実施形態では、(N)xは2、4、6、8、11、15、17および19位に2’OMe修飾リボヌクレオチドを含み、さらに少なくとも1個の脱塩基または逆方向脱塩基の非定型的部分(例えば13位)を含んでよい。
【0121】
さらに他の実施形態では、(N)xは、遺伝子の1つと比較し少なくとも1個のヌクレオチドのミスマッチを含む。特定の好ましい実施形態では、(N)xは、単ヌクレオチドの5、6、または14位にミスマッチを含む。構造(C)の1つの実施形態では、(N’)yの5’末端と3’末端の一端または両端の少なくとも2個のヌクレオチドは2’−5’リン酸ジエステル結合により連結している。特定の好ましい実施形態では、x=y=19またはx=y=23であり;(N)xのヌクレオチドに修飾リボヌクレオチドと非修飾リボヌクレオチドが交互にあり、それぞれの修飾リボヌクレオチドはその糖上に2’−O−メチルを有するように修飾されており、(N)xの中央に位置するリボヌクレオチドは修飾されておらず;ならびに(N’)yの3’末端の3個のヌクレオチドは2つの2’−5’リン酸ジエステル結合により連結している(本明細書で構造Iと表す)。他の好ましい実施形態では、x=y=19またはx=y=23であり、(N)xのヌクレオチドに修飾リボヌクレオチドと非修飾リボヌクレオチドが交互にあり、それぞれの修飾リボヌクレオチドがその糖上に2’−O−メチルを有するように修飾されており、(N)xの中央に位置するリボヌクレオチドは修飾されておらず;ならびに(N’)yの5’末端の4個の連続するヌクレオチドは3つの2’−5’リン酸ジエステル結合により連結している。さらなる実施形態では、(N)yの中央部にある追加のヌクレオチドはその糖上で2’−O−メチル修飾されていてよい。別の好ましい実施形態では、(N)xのヌクレオチドは2’−O−メチル修飾リボヌクレオチドと非修飾リボヌクレオチドが交互にあり、(N’)yの5’末端の4個の連続するヌクレオチドは3つの2’−5’リン酸ジエステル結合により連結しており、5’末端ヌクレオチドまたは5’末端の2個もしくは3個の連続するヌクレオチドは3’−O−メチル修飾を含む。
【0122】
構造Cの特定の好ましい実施形態では、x=y=19であり、(N’)yの少なくとも1つの位置に、脱塩基または逆方向脱塩基の非定型的部分を含み、好ましくは5位に脱塩基または逆方向脱塩基の非定型的部分を含む。様々な実施形態では、次の位置:1位および16〜19位、15〜19位、1〜2位および17〜19位、1〜3位および18〜19位、1〜4位および19位ならびに1〜5位に脱塩基または逆方向脱塩基を含む。(N’)yはさらに少なくとも1個のLNAヌクレオチドを含んでよい。
【0123】
構造Cの特定の好ましい実施形態では、x=y=19であり、(N’)yのヌクレオチドの少なくとも1つの位置に、鏡像体ヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチド、および2’−5’ヌクレオチド間結合により隣接ヌクレオチドに連結しているヌクレオチドを含む。
【0124】
構造Cの特定の好ましい実施形態では、x=y=19であり、(N’)yは、鏡像体ヌクレオチドを含む。様々な実施形態では、この鏡像体ヌクレオチドはL−DNAヌクレオチドである。特定の実施形態では、L−DNAはL−デオキシリボシチジンである。いくつかの実施形態では、(N’)yは18位にL−DNAを含む。他の実施形態では、(N’)yは、17位と18位にL−DNAを含む。特定の実施形態では、(N’)yは、2位ならびに17位と18位の一方もしくは両方にL−DNA置換を含む。特定の実施形態では、(N’)yはさらに、5’末端キャップヌクレオチド(5’−O−メチルDNAまたは脱塩基など)または(オーバーハングとして)逆方向脱塩基部分を含む。
【0125】
さらに他の実施形態では、(N’)yは15位にDNAを含み、17位と18位の一方または両方にL−DNAを含む。その構造において、2位にさらにL−DNAまたは脱塩基の非定型的部分を含んでよい。
【0126】
構造Cの他の実施形態は、式中x=y=21または式中x=y=23であることが予想され;これらの実施形態では、上で論じた(N’)y修飾が15、16、17、18位の代わりに21merの17、18、19、20位および23merの19、20、21、22位にあり;同様に17位と18位の一方もしくは両方の修飾は21merの19位もしくは20位の一方もしくは両方、23merの21位と22位の一方もしくは両方にある。19merのすべての修飾は21および23merにおいて同様に調節される。
【0127】
構造(C)の様々な実施形態によると、(N’)yの3’末端の2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13もしくは14個の連続するリボヌクレオチドは、2’−5’ヌクレオチド間結合により結ばれている。1つの好ましい実施形態では、(N’)yの3’末端の4個の連続するヌクレオチドは3つの2’−5’リン酸ジエステル結合により連結しており、ここで2’−5’リン酸ジエステル結合を形成する1つ以上の2’−5’ヌクレオチドは、さらに、3’−O−メチル糖修飾を含む。好ましくは(N’)yの3’末端ヌクレオチドは、2’−O−メチル糖修飾を含む。構造Cの特定の好ましい実施形態では、x=y=19であり、(N’)yの15、16、17、18および19位の2個以上の連続するヌクレオチドは2’−5’ヌクレオチド間結合により隣接ヌクレオチドに連結しているヌクレオチドを含む。様々な実施形態では、2’−5’ヌクレオチド間結合を形成しているヌクレオチドは、3’デオキシリボースヌクレオチドまたは3’メトキシヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、(N’)yの17位と18位のヌクレオチドは2’−5’ヌクレオチド間結合により連結している。他の実施形態では、(N’)yの16、17、18、16〜17、17〜18、または16〜18位のヌクレオチドは2’−5’ヌクレオチド間結合により連結している。
【0128】
特定の実施形態では、(N’)yの2位にL−DNAを含み、16〜17、17〜18、または16〜18位に2’−5’ヌクレオチド間結合を含む。特定の実施形態では、(N’)yの16〜17、17〜18、または16〜18位に2’−5’ヌクレオチド間結合を含み、5’末端にキャップヌクレオチドを含む。
【0129】
構造(C)の様々な実施形態によると、(N’)yのいずれかの末端の2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13もしくは14個の連続するヌクレオチドまたは5’末端と3’末端のそれぞれの2〜8個の修飾ヌクレオチドは独立して鏡像体ヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、この鏡像体ヌクレオチドはL−リボヌクレオチドである。他の実施形態では、この鏡像体ヌクレオチドはL−デオキシリボヌクレオチドである。鏡像体ヌクレオチドは糖もしくは塩基部分またはヌクレオチド間結合部でさらに修飾されてよい。
【0130】
構造(C)の1つの好ましい実施形態では、3’末端ヌクレオチドまたは(N’)yの3’末端の2もしくは3個の連続するヌクレオチドはL−デオキシリボヌクレオチドである。
【0131】
構造(C)の他の実施形態では、(N’)yのいずれかの末端の2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13もしくは14個の連続するリボヌクレオチドまたは5’末端と3’末端のそれぞれの2〜8個の修飾ヌクレオチドは独立して2’糖修飾ヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、2’糖修飾は、アミノ、フルオロ、アルコキシまたはアルキル部分の存在を含む。特定の実施形態では、2’糖修飾はメトキシ部分(2’−OMe)を含む。一連の好ましい実施形態では、(N’)yの5’末端の3、4または5個の連続するヌクレオチドは2’−OMe修飾を含む。別の好ましい実施形態では、(N’)yの3’末端の3個の連続するヌクレオチドは2’−O−メチル修飾を含む。
【0132】
構造(C)のいくつかの実施形態では、(N’)yの5’末端と3’末端のいずれかの2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13もしくは14個の連続するリボヌクレオチド、または5’末端と3’末端のそれぞれの2〜8個の修飾ヌクレオチドは独立して二環式ヌクレオチドである。様々な実施形態では、この二環式ヌクレオチドは固定化核酸(LNA)である。2’−O,4’−C−エチレン架橋核酸(ENA)はLNA種である(下を参照されたい)。
【0133】
様々な実施形態では、(N’)yは、5’末端または3’末端と5’末端の両端に修飾ヌクレオチドを含む。
【0134】
構造(C)のいくつかの実施形態では、(N’)yの5’末端と3’末端の一端または両端の少なくとも2個のヌクレオチドがP−エトキシ骨格修飾により連結している。特定の好ましい実施形態では、x=y=19またはx=y=23であり;(N)xのヌクレオチドに修飾リボヌクレオチドと非修飾リボヌクレオチドが交互にあり、それぞれの修飾リボヌクレオチドがその糖上に2’−O−メチルを有するように修飾されており、(N)xの中央部にあるリボヌクレオチドは修飾されておらず;ならびに(N’)yの3’末端または5’末端の4個の連続するヌクレオチドは3つのP−エトキシ骨格修飾により連結している。別の好ましい実施形態では、(N’)yの3’末端または5’末端の3個の連続するヌクレオチドは2つのP−エトキシ骨格修飾により連結している。
【0135】
構造(C)のいくつかの実施形態では、(N’)yの5’末端と3’末端のそれぞれの2、3、4、5、6、7または8個の連続するリボヌクレオチドは、独立して鏡像体ヌクレオチド、2’−5’リン酸ジエステル結合により連結しているヌクレオチド、2’糖修飾ヌクレオチドまたは二環式ヌクレオチドである。1つの実施形態では、(N’)yの5’末端と3’末端の修飾は同一である。1つの好ましい実施形態では、(N’)yの5’末端の4個の連続するヌクレオチドは3つの2’−5’リン酸ジエステル結合により連結しており、(N’)yの3’末端の3個の連続するヌクレオチドは2つの2’−5’リン酸ジエステル結合により連結している。別の実施形態では、(N’)yの5’末端の修飾は、(N’)yの3’末端の修飾と異なる。1つの具体的な実施形態では、(N’)yの5’末端の修飾ヌクレオチドは鏡像体ヌクレオチドであり、(N’)yの3’末端の修飾ヌクレオチドは2’−5’リン酸ジエステル結合により連結している。別の具体的な実施形態では、(N’)yの5’末端の3個の連続するヌクレオチドはLNAヌクレオチドであり、(N’)yの3’末端の3個の連続するヌクレオチドは2つの2’−5’リン酸ジエステル結合により連結している。(N)xのヌクレオチドに修飾リボヌクレオチドと非修飾リボヌクレオチドが交互にあり、それぞれの修飾リボヌクレオチドがその糖上に2’−O−メチルを有するように修飾されており、(N)xの中央に位置するリボヌクレオチドは修飾されていないか、または(N)xのリボヌクレオチドは修飾されていない。
【0136】
構造(C)の別の実施形態では、本発明は、式中x=y=19またはx=y=23である化合物を提供し;(N)xのヌクレオチドに修飾リボヌクレオチドと非修飾リボヌクレオチドが交互にあり、それぞれの修飾リボヌクレオチドがその糖上に2’−O−メチルを有するように修飾されており、(N)xの中央に位置するリボヌクレオチドは修飾されておらず;(N’)yの3’末端の3個のヌクレオチドは2つの2’−5’リン酸ジエステル結合により連結しており、(N’)yの5’末端の3個のヌクレオチドはLNA(ENAなど)である。
【0137】
構造(C)の別の実施形態では、(N’)yの5’末端の5個の連続するヌクレオチドは2’−O−メチル糖修飾を含み、(N’)yの3’末端の2個の連続するヌクレオチドはL−DNAである。
【0138】
さらに別の実施形態では、本発明は、式中x=y=19またはx=y=23である化合物を提供し;(N)xは非修飾リボヌクレオチドからなり;(N’)yの3’末端の3個の連続するヌクレオチドは2つの2’−5’リン酸ジエステル結合により連結しており、(N’)yの5’末端の3個の連続するヌクレオチドはLNA(ENAなど)である。
【0139】
構造(C)の他の実施形態によると、(N’)yの5’末端もしくは3’末端ヌクレオチド、またはいずれかの末端の2、3、4、5もしくは6個の連続するヌクレオチドまたは5’末端と3’末端のそれぞれの1〜4個の修飾ヌクレオチドは、独立してホスホノカルボキシレートまたはホスフィノカルボキシレートヌクレオチド(PACEヌクレオチド)である。いくつかの実施形態では、このPACEヌクレオチドはデオキシリボヌクレオチドである。(N’)yのいくつかの好ましい実施形態では、5’末端と3’末端のそれぞれの1または2個の連続するヌクレオチドはPACEヌクレオチドである。
【0140】
いくつかの実施形態では、本発明は、構造(D)を有する化合物を提供する:
(D)5’ (N)x−Z 3’ アンチセンス鎖
3’ Z’−(N’)y 5’ センス鎖
式中NとN’はそれぞれ、非修飾リボヌクレオチド、修飾リボヌクレオチド、非修飾デオキシリボヌクレオチドまたは修飾デオキシリボヌクレオチドから選択されるヌクレオチドであり;
式中(N)xと(N’)yはそれぞれ、連続するヌクレオチドがそれぞれ共有結合により次のヌクレオチドに連結しているオリゴマーであり、xとyはそれぞれ18〜40の整数であり;
式中(N)xは、3’末端もしくは末端から2番目に1個の修飾ヌクレオチドをさらに含む非修飾リボヌクレオチドを含み、この修飾ヌクレオチドは二環式ヌクレオチド、2’糖修飾ヌクレオチド、鏡像体ヌクレオチド、アルトリトールヌクレオチド、または2’−5’リン酸ジエステル結合、P−アルコキシ結合もしくはPACE結合から選択されるヌクレオチド間結合により隣接ヌクレオチドに連結しているヌクレオチドからなる群から選択され;
式中(N’)yは、5’末端もしくは末端から2番目に1個の修飾ヌクレオチドをさらに含む非修飾リボヌクレオチドを含み、この修飾ヌクレオチドは二環式ヌクレオチド、2’糖修飾ヌクレオチド、鏡像体ヌクレオチド、アルトリトールヌクレオチド、または2’−5’リン酸ジエステル結合、P−アルコキシ結合もしくはPACE結合から選択されるヌクレオチド間結合により隣接ヌクレオチドに連結しているヌクレオチドからなる群から選択され;
式中(N)xと(N’)yのそれぞれにおいて、修飾ヌクレオチドと非修飾ヌクレオチドは交互ではなく;
式中ZとZ’はそれぞれ存在しても存在しなくてもよいが、存在する場合は、それが結合している任意のオリゴマーの3’末端で共有結合している1〜5個のデオキシリボヌクレオチドであり;
式中(N’)y配列は(N)xと実質的に相補的な配列であり;ならびに式中(N)xは、耳障害に関連した標的遺伝子mRNA中の約18〜約40個の連続するリボヌクレオチドと実質的に相補的なアンチセンス配列を含む。
【0141】
構造(D)の1つの実施形態では、x=y=19またはx=y=23であり;(N)xは3’末端で2’−5’ヌクレオチド間結合により結ばれている2個の連続するヌクレオチドを含む非修飾リボヌクレオチドを含み;ならびに(N’)yは5’末端に1つの2’−5’ヌクレオチド間結合により結ばれている2個の連続するヌクレオチドを含む非修飾リボヌクレオチドを含む。
【0142】
いくつかの実施形態では、x=y=19またはx=y=23であり;(N)xは3’末端の3個の連続するヌクレオチドが2つの2’−5’リン酸ジエステル結合により連結している非修飾リボヌクレオチドを含み;ならびに(N’)yは5’末端で4個の連続するヌクレオチドが3つの2’−5’リン酸ジエステル結合により連結している非修飾リボヌクレオチドを含む(本明細書で構造IIと表す)。
【0143】
構造(D)の様々な実施形態によると、(N)xの3’最末端もしくは3’末端から2番目で開始する2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13もしくは14個の連続するリボヌクレオチド、ならびに(N’)yの5’最末端もしくは5’末端から2番目で開始する2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13もしくは14個の連続するリボヌクレオチドは2’−5’ヌクレオチド間結合により結ばれている。
【0144】
構造(D)の1つの好ましい実施形態によると、(N’)yの5’末端の4個の連続するヌクレオチドは3つの2’−5’リン酸ジエステル結合により連結しており、(N’)xの3’末端の3個の連続するヌクレオチドは2つの2’−5’リン酸ジエステル結合により連結している。(N’)yの5’末端の3個のヌクレオチドおよび(N’)xの3’末端の2個のヌクレオチドは3’−O−メチル修飾を含んでもよい。
【0145】
構造(D)の様々な実施形態によると、(N)xの3’最末端もしくは3’末端から2番目で開始する2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13もしくは14個の連続するヌクレオチド、ならびに(N’)yの5’最末端もしくは5’末端から2番目で開始する2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13もしくは14個の連続するリボヌクレオチドは、独立して鏡像体ヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、この鏡像体はL−リボヌクレオチドである。他の実施形態では、この鏡像体ヌクレオチドはL−デオキシリボヌクレオチドである。
【0146】
構造(D)の他の実施形態では、(N)xの3’最末端もしくは3’末端から2番目で開始する2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13もしくは14個の連続するリボヌクレオチド、ならびに(N’)yの5’最末端もしくは5’末端から2番目で開始する2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13もしくは14個の連続するリボヌクレオチドは、独立して2’糖修飾ヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、2’糖修飾は、アミノ、フルオロ、アルコキシまたはアルキル部分の存在を含む。特定の実施形態では、2’糖修飾は、メトキシ部分(2’−OMe)を含む。
【0147】
構造(D)の1つの好ましい実施形態では、(N’)yの5’末端の5個の連続するヌクレオチドは2’OMe糖修飾を含み、(N’)xの3’末端の5個の連続するヌクレオチドは2’OMe糖修飾を含む。構造(D)の別の好ましい実施形態では、(N’)yの5’末端の10個の連続するヌクレオチドは2’OMe糖修飾を含み、(N’)xの3’末端の5個の連続するヌクレオチドは2’OMe糖修飾を含む。構造(D)の別の好ましい実施形態では、(N’)yの5’末端の13個の連続するヌクレオチドは2’OMe糖修飾を含み、(N’)xの3’末端の5個の連続するヌクレオチドは2’−O−メチル修飾を含む。
【0148】
構造(D)のいくつかの実施形態では、(N)xの3’最末端もしくは3’末端から2番目で開始する2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、もしくは14個の連続するリボヌクレオチド、ならびに(N’)yの5’最末端もしくは5’末端から2番目で開始する2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13もしくは14個の連続するリボヌクレオチドは、独立して二環式ヌクレオチドである。様々な実施形態では、この二環式ヌクレオチドは固定化核酸(LNA)(2’−O,4’−C−エチレン架橋核酸(ENA)など)である。
【0149】
構造(D)の様々な実施形態では、(N’)yは二環式ヌクレオチド、2’糖修飾ヌクレオチド、鏡像体ヌクレオチド、アルトリトールヌクレオチド、または2’−5’リン酸ジエステル結合、P−アルコキシ結合もしくはPACE結合から選択されるヌクレオチド間結合により隣接ヌクレオチドに連結しているヌクレオチドから選択される修飾ヌクレオチドを含む。
【0150】
構造(D)の様々な実施形態では、(N)xは二環式ヌクレオチド、2’糖修飾ヌクレオチド、鏡像体ヌクレオチド、アルトリトールヌクレオチド、または2’−5’リン酸ジエステル結合、P−アルコキシ結合もしくはPACE結合から選択されるヌクレオチド間結合により隣接ヌクレオチドに連結しているヌクレオチドから選択される修飾ヌクレオチドを含む。
【0151】
同一鎖の3’末端と5’末端がそれぞれ修飾ヌクレオチドを含む実施形態では、5’末端と3’末端の修飾は同一である。別の実施形態では、5’末端の修飾は、同一鎖の3’末端の修飾と異なる。1つの具体的な実施形態では、5’末端の修飾ヌクレオチドは鏡像体ヌクレオチドであり、同一鎖の3’末端の修飾ヌクレオチドは2’−5’リン酸ジエステル結合により連結している。
【0152】
構造(D)の1つの具体的な実施形態では、(N’)yの5’末端の5個の連続するヌクレオチドは2’OMe糖修飾を含み、(N’)yの3’末端の2個の連続するヌクレオチドはL−DNAである。加えて、化合物はさらに(N’)xの3’末端に5個の連続する2’OMe糖修飾ヌクレオチドを含んでよい。
【0153】
構造(D)の様々な実施形態では、(N)xの修飾ヌクレオチドは(N’)yの修飾ヌクレオチドと異なる。例えば、(N)xの修飾ヌクレオチドは2’糖修飾ヌクレオチドであり、(N’)yの修飾ヌクレオチドは2’−5’ヌクレオチド間結合により結ばれているヌクレオチドである。別の例では、(N)xの修飾ヌクレオチドは鏡像体ヌクレオチドであり、(N’)yの修飾ヌクレオチドは2’−5’ヌクレオチド間結合により結ばれているヌクレオチドである。別の例では、(N)xの修飾ヌクレオチドは2’−5’ヌクレオチド間結合により結ばれているヌクレオチドであり、(N’)yの修飾ヌクレオチドは鏡像体ヌクレオチドである。
【0154】
追加の実施形態では、本発明は、構造(E)を有する化合物を提供する:
(E)5’ (N)x−Z 3’ アンチセンス鎖
3’ Z’−(N’)y 5’ センス鎖
式中NとN’はそれぞれ、非修飾リボヌクレオチド、修飾リボヌクレオチド、非修飾デオキシリボヌクレオチドまたは修飾デオキシリボヌクレオチドから選択されるヌクレオチドであり;
式中(N)xと(N’)yはそれぞれ、連続するヌクレオチドがそれぞれ共有結合により次のヌクレオチドに連結しているオリゴマーであり、xとyはそれぞれ18〜40の整数であり;
式中(N)xは、5’末端もしくは末端から2番目に1個の修飾ヌクレオチドをさらに含む非修飾リボヌクレオチドを含み、この修飾ヌクレオチドは二環式ヌクレオチド、2’糖修飾ヌクレオチド、鏡像体ヌクレオチド、アルトリトールヌクレオチド、または2’−5’リン酸ジエステル結合、P−アルコキシ結合もしくはPACE結合から選択されるヌクレオチド間結合により隣接ヌクレオチドに連結しているヌクレオチドからなる群から選択され;
式中(N’)yは3’末端もしくは末端から2番目に1個の修飾ヌクレオチドをさらに含む非修飾リボヌクレオチドを含み、この修飾ヌクレオチドは二環式ヌクレオチド、2’糖修飾ヌクレオチド、鏡像体ヌクレオチド、アルトリトールヌクレオチド、または2’−5’リン酸ジエステル結合、P−アルコキシ結合もしくはPACE結合から選択されるヌクレオチド間結合により隣接ヌクレオチドに連結しているヌクレオチドからなる群から選択され;
式中(N)xと(N’)yのそれぞれにおいて、修飾ヌクレオチドと非修飾ヌクレオチドは交互ではなく;
式中ZとZ’はそれぞれ存在しても存在しなくてもよいが、存在する場合は、それが結合している任意のオリゴマーの3’末端で共有結合している1〜5個のデオキシリボヌクレオチドであり;
式中(N’)y配列は(N)xと実質的に相補的な配列であり;ならびに式中(N)x配列は、耳障害に関連した標的遺伝子mRNA中の約18〜約40個の連続するリボヌクレオチドと実質的に相補的なアンチセンス配列を含む。
【0155】
特定の好ましい実施形態では、(N)xの5’末端の末端ヌクレオチドは修飾されていない。
【0156】
構造(E)の様々な実施形態によると、(N)xの5’最末端または5’末端から2番目で開始する、好ましくは5’末端から2番目で開始する2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13もしくは14個の連続するリボヌクレオチド、ならびに(N’)yの3’最末端もしくは3’末端から2番目で開始する2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13もしくは14個の連続するリボヌクレオチドは2’−5’ヌクレオチド間結合により結ばれている。
【0157】
構造(E)の様々な実施形態によると、(N)xの5’最末端または5’末端から2番目で開始する、好ましくは5’末端から2番目で開始する2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13もしくは14個の連続するヌクレオチド、ならびに(N’)yの3’最末端もしくは3’末端から2番目で開始する2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13もしくは14個の連続するヌクレオチドは独立して鏡像体ヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、この鏡像体はL−リボヌクレオチドである。他の実施形態では、この鏡像体ヌクレオチドはL−デオキシリボヌクレオチドである。
【0158】
構造(E)の他の実施形態では、(N)xの5’最末端または5’末端から2番目で開始する、好ましくは5’末端から2番目で開始する2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13もしくは14個の連続するリボヌクレオチド、ならびに(N’)yの3’最末端もしくは3’末端から2番目で開始する2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13もしくは14個の連続するリボヌクレオチドは、独立して2’糖修飾ヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、2’糖修飾は、アミノ、フルオロ、アルコキシまたはアルキル部分の存在を含む。特定の実施形態では、2’糖修飾は、メトキシ部分(2’−OMe)を含む。
【0159】
構造(E)のいくつかの実施形態では、(N)xの5’最末端または5’末端から2番目で開始する、好ましくは5’末端から2番目で開始する2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13もしくは14個の連続するリボヌクレオチド、ならびに(N’)yの3’最末端もしくは3’末端から2番目で開始する2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13もしくは14個の連続するリボヌクレオチドは、独立して二環式ヌクレオチドである。様々な実施形態では、この二環式ヌクレオチドは固定化核酸(LNA)(2’−O,4’−C−エチレン架橋核酸(ENA)など)である。
【0160】
構造(E)の様々な実施形態では、(N’)yは二環式ヌクレオチド、2’糖修飾ヌクレオチド、鏡像体ヌクレオチド、アルトリトールヌクレオチド、P−アルコキシ骨格修飾により隣接ヌクレオチドに連結しているヌクレオチド、または3’末端もしくは3’末端と5’末端のそれぞれで2’−5’リン酸ジエステル結合、P−アルコキシ結合もしくはPACE結合から選択されるヌクレオチド間結合により隣接ヌクレオチドに連結しているヌクレオチドから選択される修飾ヌクレオチドを含む。
【0161】
構造(E)の様々な実施形態では、(N)xは二環式ヌクレオチド、2’糖修飾ヌクレオチド、鏡像体ヌクレオチド、アルトリトールヌクレオチド、または5’末端もしくは3’末端と5’末端のそれぞれで2’−5’リン酸ジエステル結合、P−アルコキシ結合もしくはPACE結合から選択されるヌクレオチド間結合により隣接ヌクレオチドに連結しているヌクレオチドから選択される修飾ヌクレオチドを含む。
【0162】
同一鎖の3’末端と5’末端の両端に修飾ヌクレオチドを含む1つの実施形態では、5’末端と3’末端の修飾は同一である。別の実施形態では、5’末端の修飾は、同一鎖の3’末端の修飾と異なる。1つの具体的な実施形態では、5’末端の修飾ヌクレオチドは鏡像体ヌクレオチドであり、同一鎖の3’末端の修飾ヌクレオチドは2’−5’リン酸ジエステル結合により連結している。
【0163】
構造(E)の様々な実施形態では、(N)xの修飾ヌクレオチドは(N’)yの修飾ヌクレオチドと異なる。例えば、(N)xの修飾ヌクレオチドは2’糖修飾ヌクレオチドであり、(N’)yの修飾ヌクレオチドは2’−5’ヌクレオチド間結合により結ばれているヌクレオチドである。別の例では、(N)xの修飾ヌクレオチドは鏡像体ヌクレオチドであり、(N’)yの修飾ヌクレオチドは2’−5’ヌクレオチド間結合により結ばれているヌクレオチドである。別の例では、(N)xの修飾ヌクレオチドは2’−5’ヌクレオチド間結合により結ばれているヌクレオチドであり、(N’)yの修飾ヌクレオチドは鏡像体ヌクレオチドである。
【0164】
追加の実施形態では、本発明は、構造(F)を有する化合物を提供する:
(F)5’ (N)x−Z 3’ アンチセンス鎖
3’ Z’−(N’)y 5’ センス鎖
式中NとN’はそれぞれ、非修飾リボヌクレオチド、修飾リボヌクレオチド、非修飾デオキシリボヌクレオチドまたは修飾デオキシリボヌクレオチドから選択されるヌクレオチドであり;
式中(N)xと(N’)yはそれぞれ、連続するヌクレオチドがそれぞれ共有結合により次のヌクレオチドに連結しているオリゴマーであり、xとyはそれぞれ18〜40の整数であり;
式中(N)xと(N’)yはそれぞれ、(N)xと(N’)yがそれぞれ独立して3’末端もしくは末端から2番目に1個の修飾ヌクレオチドを含む非修飾リボヌクレオチドを含み、この修飾ヌクレオチドは二環式ヌクレオチド、2’糖修飾ヌクレオチド、鏡像体ヌクレオチド、P−アルコキシ骨格修飾により隣接ヌクレオチドに連結しているヌクレオチド、または2’−5’リン酸ジエステル結合により隣接ヌクレオチドに連結しているヌクレオチドからなる群から選択され;
式中(N)xと(N’)yのそれぞれにおいて、修飾ヌクレオチドと非修飾ヌクレオチドは交互ではなく;
式中ZとZ’はそれぞれ存在しても存在しなくてもよいが、存在する場合は、それが結合している任意のオリゴマーの3’末端で共有結合している1〜5個のデオキシリボヌクレオチドであり;
式中(N’)y配列は(N)xと実質的に相補的な配列であり;ならびに式中(N)x配列は、耳障害に関連した標的遺伝子mRNA中の約18〜約40個の連続するリボヌクレオチドと実質的に相補的なアンチセンス配列を含む。
【0165】
構造(F)のいくつかの実施形態では、x=y=19またはx=y=23であり;(N’)yは、3’末端の2個の連続するヌクレオチドが2個の連続する鏡像体デオキシリボヌクレオチドを含む非修飾リボヌクレオチドを含み;ならびに(N)xは、3’末端の1個のヌクレオチドが鏡像体デオキシリボヌクレオチドを含む非修飾リボヌクレオチドを含む(構造IIIと表す)。
【0166】
構造(F)の様々な実施形態によると、(N)xと(N’)yの3’最末端または3’末端から2番目で独立して開始する2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13または14個の連続するリボヌクレオチドは、2’−5’ヌクレオチド間結合により結ばれている。
【0167】
構造(F)の1つの好ましい実施形態によると、(N’)yの3’末端の3個の連続するヌクレオチドは2つの2’−5’リン酸ジエステル結合により連結しており、(N’)xの3’末端の3個の連続するヌクレオチドは2つの2’−5’リン酸ジエステル結合により連結している。
【0168】
構造(F)の様々な実施形態によると、(N)xと(N’)yの3’最末端または3’末端から2番目で独立して開始する2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13または14個の連続するヌクレオチドは、独立して鏡像体ヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、この鏡像体ヌクレオチドはL−リボヌクレオチドである。他の実施形態では、この鏡像体ヌクレオチドはL−デオキシリボヌクレオチドである。
【0169】
構造(F)の他の実施形態では、(N)xと(N’)yの3’最末端または3’末端から2番目で独立して開始する2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13または14個の連続するリボヌクレオチドは、独立して2’糖修飾ヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、2’糖修飾は、アミノ、フルオロ、アルコキシまたはアルキル部分の存在を含む。特定の実施形態では、2’糖修飾は、メトキシ部分(2’−OMe)を含む。
【0170】
構造(F)のいくつかの実施形態では、(N)xと(N’)yの3’最末端または3’末端から2番目で独立して開始する2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13または14個の連続するリボヌクレオチドは、独立して二環式ヌクレオチドである。様々な実施形態では、この二環式ヌクレオチドは固定化核酸(LNA)(2’−O,4’−C−エチレン架橋核酸(ENA)など)である。
【0171】
構造(F)の様々な実施形態では、(N’)yは二環式ヌクレオチド、2’糖修飾ヌクレオチド、鏡像体ヌクレオチド、アルトリトールヌクレオチド、または3’末端もしくは3’末端と5’末端の両端の2’−5’リン酸ジエステル結合、P−アルコキシ結合もしくはPACE結合から選択されるヌクレオチド間結合により隣接ヌクレオチドに連結しているヌクレオチドから選択される修飾ヌクレオチドを含む。
【0172】
構造(F)の様々な実施形態では、(N)xは二環式ヌクレオチド、2’糖修飾ヌクレオチド、鏡像体ヌクレオチド、アルトリトールヌクレオチド、または3’末端もしくは3’末端と5’末端のそれぞれで2’−5’リン酸ジエステル結合、P−アルコキシ結合もしくはPACE結合から選択されるヌクレオチド間結合により隣接ヌクレオチドに連結しているヌクレオチドから選択される修飾ヌクレオチドを含む。
【0173】
同一鎖の3’末端と5’末端がそれぞれ修飾ヌクレオチドを含む1つの実施形態では、5’末端と3’末端の修飾は同一である。別の実施形態では、5’末端の修飾は、同一鎖の3’末端の修飾と異なる。1つの具体的な実施形態では、5’末端の修飾ヌクレオチドは鏡像体ヌクレオチドであり、同一鎖の3’末端の修飾ヌクレオチドは2’−5’リン酸ジエステル結合により連結している。
【0174】
構造(F)の様々な実施形態では、(N)xの修飾ヌクレオチドは(N’)yの修飾ヌクレオチドと異なる。例えば、(N)xの修飾ヌクレオチドは2’糖修飾ヌクレオチドであり、(N’)yの修飾ヌクレオチドは2’−5’ヌクレオチド間結合により結ばれているヌクレオチドである。別の例では、(N)xの修飾ヌクレオチドは鏡像体ヌクレオチドであり、(N’)yの修飾ヌクレオチドは2’−5’ヌクレオチド間結合により結ばれているヌクレオチドである。別の例では、(N)xの修飾ヌクレオチドは2’−5’ヌクレオチド間結合により結ばれているヌクレオチドであり、(N’)yの修飾ヌクレオチドは鏡像体ヌクレオチドである。
【0175】
追加の実施形態では、本発明は、構造(G)を有する化合物を提供する:
(G)5’ (N)x−Z 3’ アンチセンス鎖
3’ Z’−(N’)y 5’ センス鎖
式中NとN’はそれぞれ、非修飾リボヌクレオチド、修飾リボヌクレオチド、非修飾デオキシリボヌクレオチドまたは修飾デオキシリボヌクレオチドから選択されるヌクレオチドであり;
式中(N)xと(N’)yはそれぞれ、連続するヌクレオチドがそれぞれ共有結合により次のヌクレオチドに連結しているオリゴマーであり、xとyはそれぞれ18〜40の整数であり;
式中(N)xと(N’)yはそれぞれ、(N)xと(N’)yがそれぞれ独立して5’末端もしくは末端から2番目に1個の修飾ヌクレオチドを含む非修飾リボヌクレオチドを含み、この修飾ヌクレオチドは二環式ヌクレオチド、2’糖修飾ヌクレオチド、鏡像体ヌクレオチド、P−アルコキシ骨格修飾により隣接ヌクレオチドに連結しているヌクレオチド、または2’−5’リン酸ジエステル結合により隣接ヌクレオチドに連結しているヌクレオチドからなる群から選択され;
式中(N)xの修飾ヌクレオチドは好ましくは5’末端から2番目にあり;
式中(N)xと(N’)yのそれぞれにおいて、修飾ヌクレオチドと非修飾ヌクレオチドは交互ではなく;
式中ZとZ’はそれぞれ存在しても存在しなくてもよいが、存在する場合は、それが結合している任意のオリゴマーの3’末端で共有結合している1〜5個のデオキシリボヌクレオチドであり;
式中(N’)y配列は(N)xと実質的に相補的な配列であり;ならびに式中(N)x配列は、耳障害に関連した標的遺伝子mRNA中の約18〜約40個の連続するリボヌクレオチドと実質的に相補的なアンチセンス配列を含む。
【0176】
構造(G)のいくつかの実施形態では、x=y=19またはx=y=23である。
【0177】
構造(G)の様々な実施形態によると、(N)xと(N’)yの5’最末端または5’末端から2番目で独立して開始する2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13または14個の連続するリボヌクレオチドは、2’−5’ヌクレオチド間結合により結ばれている。(N)xの修飾ヌクレオチドは好ましくは5’末端から2番目で開始する。
【0178】
構造(G)の様々な実施形態によると、(N)xと(N’)yの5’最末端または5’末端から2番目で独立して開始する2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13または14個の連続するリボヌクレオチドは、独立して鏡像体ヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、この鏡像体ヌクレオチドはL−リボヌクレオチドである。他の実施形態では、この鏡像体ヌクレオチドはL−デオキシリボヌクレオチドである。(N)xの修飾ヌクレオチドは好ましくは5’末端から2番目で開始する。
【0179】
構造(G)の他の実施形態では、(N)xと(N’)yの5’最末端または5’末端から2番目で独立して開始する2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13または14個の連続するリボヌクレオチドは、独立して2’糖修飾ヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、この2’糖修飾は、アミノ、フルオロ、アルコキシまたはアルキル部分の存在を含む。特定の実施形態では、この2’糖修飾は、メトキシ部分(2’−OMe)を含む。いくつかの好ましい実施形態では、この連続する修飾ヌクレオチドは好ましくは(N)xの5’末端から2番目で開始する。
【0180】
構造(G)の1つの好ましい実施形態では、(N’)yの5’末端の5個の連続するリボヌクレオチドは2’OMe糖修飾を含み、(N’)xの5’末端から2番目の1個のリボヌクレオチドは2’OMe糖修飾を含む。構造(G)の別の好ましい実施形態では、(N’)yの5’末端の5個の連続するリボヌクレオチドは2’OMe糖修飾を含み、(N’)xの5’末端位の2個の連続するリボヌクレオチドは2’OMe糖修飾を含む。
【0181】
構造(G)のいくつかの実施形態では、(N)xと(N’)yの5’最末端または5’末端から2番目で独立して開始する2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13または14個の連続するリボヌクレオチドは、二環式ヌクレオチドである。様々な実施形態では、この二環式ヌクレオチドは固定化核酸(LNA)(2’−O,4’−C−エチレン架橋核酸(ENA)など)である。いくつかの好ましい実施形態では、連続する修飾ヌクレオチドは好ましくは(N)xの5’末端から2番目で開始する。
【0182】
構造(G)の様々な実施形態では、(N’)yは、二環式ヌクレオチド、2’糖修飾ヌクレオチド、鏡像体ヌクレオチド、アルトリトールヌクレオチド、または5’末端もしくは3’末端と5’末端のそれぞれで2’−5’リン酸ジエステル結合、P−アルコキシ結合もしくはPACE結合から選択されるヌクレオチド間結合により隣接ヌクレオチドに連結しているヌクレオチドから選択される修飾ヌクレオチドを含む。
【0183】
構造(G)の様々な実施形態では、(N)xは二環式ヌクレオチド、2’糖修飾ヌクレオチド、鏡像体ヌクレオチド、アルトリトールヌクレオチド、または5’末端もしくは3’末端と5’末端のそれぞれで2’−5’リン酸ジエステル結合、P−アルコキシ結合もしくはPACE結合から選択されるヌクレオチド間結合により隣接ヌクレオチドに連結しているヌクレオチドから選択される修飾ヌクレオチドを含む。
【0184】
同一鎖の3’末端と5’末端がそれぞれ修飾ヌクレオチドを含む1つの実施形態では、5’末端と3’末端の修飾は同一である。別の実施形態では、5’末端の修飾は、同一鎖の3’末端の修飾と異なる。1つの具体的な実施形態では、5’末端の修飾ヌクレオチドは鏡像体ヌクレオチドであり、同一鎖の3’末端の修飾ヌクレオチドは2’−5’リン酸ジエステル結合により連結している。構造(G)の様々な実施形態では、(N)xの修飾ヌクレオチドは(N’)yの修飾ヌクレオチドと異なる。例えば、(N)xの修飾ヌクレオチドは2’糖修飾ヌクレオチドであり、(N’)yの修飾ヌクレオチドは2’−5’ヌクレオチド間結合により結ばれているヌクレオチドである。別の例では、(N)xの修飾ヌクレオチドは鏡像体ヌクレオチドであり、(N’)yの修飾ヌクレオチドは2’−5’ヌクレオチド間結合により結ばれているヌクレオチドである。別の例では、(N)xの修飾ヌクレオチドは2’−5’ヌクレオチド間結合により結ばれているヌクレオチドであり、(N’)yの修飾ヌクレオチドは鏡像体ヌクレオチドである。
【0185】
追加の実施形態では、本発明は、構造(H)を有する化合物を提供する:
(H)5’ (N)x−Z 3’ アンチセンス鎖
3’ Z’−(N’)y 5’ センス鎖
式中NとN’はそれぞれ、非修飾リボヌクレオチド、修飾リボヌクレオチド、非修飾デオキシリボヌクレオチドまたは修飾デオキシリボヌクレオチドから選択されるヌクレオチドであり;
式中(N)xと(N’)yはそれぞれ、連続するヌクレオチドがそれぞれ共有結合により次のヌクレオチドに連結しているオリゴマーであり、xとyはそれぞれ18〜40の整数であり;
式中(N)xは、3’の末端もしくは末端から2番目または5’の末端もしくは末端から2番目に1個の修飾ヌクレオチドをさらに含む非修飾リボヌクレオチドを含み、この修飾ヌクレオチドは二環式ヌクレオチド、2’糖修飾ヌクレオチド、鏡像体ヌクレオチド、アルトリトールヌクレオチド、または2’−5’リン酸ジエステル結合、P−アルコキシ結合もしくはPACE結合から選択されるヌクレオチド間結合により隣接ヌクレオチドに連結しているヌクレオチドからなる群から選択され;
式中(N’)yは、さらに内部に1個の修飾ヌクレオチドを含む非修飾リボヌクレオチドを含み、この修飾ヌクレオチドは二環式ヌクレオチド、2’糖修飾ヌクレオチド、鏡像体ヌクレオチド、アルトリトールヌクレオチド、または2’−5’リン酸ジエステル結合、P−アルコキシ結合もしくはPACE結合から選択されるヌクレオチド間結合により隣接ヌクレオチドに連結しているヌクレオチドからなる群から選択され;
式中(N)xと(N’)yのそれぞれにおいて、修飾ヌクレオチドと非修飾ヌクレオチドは交互ではなく;
式中ZとZ’はそれぞれ存在しても存在しなくてもよいが、存在する場合は、それが結合している任意のオリゴマーの3’末端で共有結合している1〜5個のデオキシリボヌクレオチドであり;
式中(N’)y配列は(N)xと実質的に相補的な配列であり;ならびに式中(N)x配列は、耳障害に関連した標的遺伝子mRNA中の約18〜約40個の連続するリボヌクレオチドに実質的に相補的なアンチセンス配列を含む。
【0186】
構造(H)の1つの実施形態では、(N)xの3’末端もしくは5’末端もしくは両端の最末端もしくは末端から2番目で独立して開始する2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13もしくは14個の連続するリボヌクレオチドは、独立して2’糖修飾ヌクレオチド、二環式ヌクレオチド、鏡像体ヌクレオチド、アルトリトールヌクレオチド、または2’−5’ホスホジエステル結合により隣接ヌクレオチドに連結しているヌクレオチドであり、(N’)yの2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13もしくは14個の連続するリボヌクレオチドは、独立して2’糖修飾ヌクレオチド、二環式ヌクレオチド、鏡像体ヌクレオチド、アルトリトールヌクレオチド、または2’−5’リン酸ジエステル結合により隣接ヌクレオチドに連結しているヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、2’糖修飾はアミノ、フルオロ、アルコキシまたはアルキル部分の存在を含む。特定の実施形態では、2’糖修飾はメトキシ部分(2’−OMe)を含む。
【0187】
構造(H)の別の実施形態では、3’末端もしくは5’最末端もしくは5’末端から2番目で独立して開始する2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13もしくは14個の連続するリボヌクレオチド、または(N’)yの5’末端と3’末端のそれぞれの2〜8個の連続するヌクレオチドは、独立して2’糖修飾ヌクレオチド、二環式ヌクレオチド、鏡像体ヌクレオチド、アルトリトールヌクレオチド、または2’−5’リン酸ジエステル結合により隣接ヌクレオチドに連結しているヌクレオチドであり、(N)xの2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13もしくは14個の連続する内部リボヌクレオチドは、独立して2’糖修飾ヌクレオチド、二環式ヌクレオチド、鏡像体ヌクレオチド、アルトリトールヌクレオチド、または2’−5’リン酸ジエステル結合により隣接ヌクレオチドに連結しているヌクレオチドである。
【0188】
同一鎖の3’末端と5’末端がそれぞれ修飾ヌクレオチドを含む1つの実施形態では、5’末端と3’末端の修飾は同一である。別の実施形態では、5’末端の修飾は、同一鎖の3’末端の修飾と異なる。1つの具体的な実施形態では、5’末端の修飾ヌクレオチドは鏡像体ヌクレオチドであり、同一鎖の3’末端の修飾ヌクレオチドは2’−5’リン酸ジエステル結合により連結している。
【0189】
構造(H)の様々な実施形態では、(N)xの修飾ヌクレオチドは(N’)yの修飾ヌクレオチドと異なる。例えば、(N)xの修飾ヌクレオチドは2’糖修飾ヌクレオチドであり、(N’)yの修飾ヌクレオチドは2’−5’ヌクレオチド間結合により結ばれているヌクレオチドである。別の例では、(N)xの修飾ヌクレオチドは鏡像体ヌクレオチドであり、(N’)yの修飾ヌクレオチドは2’−5’ヌクレオチド間結合により結ばれているヌクレオチドである。別の例では、(N)xの修飾ヌクレオチドは2’−5’ヌクレオチド間結合により結ばれているヌクレオチドであり、(N’)yの修飾ヌクレオチドは鏡像体ヌクレオチドである。
【0190】
構造(H)の1つの好ましい実施形態では、x=y=19であり;(N’)yの9〜11位の3個の連続するリボヌクレオチドヌクレオチドは2’OMe糖修飾を含み、(N’)xの3’末端位の5個の連続するリボヌクレオチドは2’OMe糖修飾を含む。
【0191】
上の構造(A)〜(H)のすべてにおいて、様々な実施形態では、x=yであり、xとyはそれぞれ19、20、21、22または23である。特定の実施形態では、x=y=19である。さらに他の実施形態では、x=y=23である。追加の実施形態では、化合物は修飾リボヌクレオチドを交互の位置に含み、(N)xの5’末端と3’末端のNはそれぞれそれらの糖残基にて修飾されており、中央リボヌクレオチドは修飾されていない(例えば19mer鎖の10位、21mer鎖の11位および23mer鎖の12位のリボヌクレオチドなど)。
【0192】
いくつかの実施形態では、x=y=21またはx=y=23であり、19merの修飾位置は21および23merのために調節される。ただし、アンチセンス鎖の中央ヌクレオチドは好ましくは修飾されていない。
【0193】
いくつかの実施形態では、(N)xも(N’)yも3’末端と5’末端はリン酸化されていない。他の実施形態では、(N)xと(N’)yのいずれかまたは両方の3’末端がリン酸化されている。さらに別の実施形態では、(N)xと(N’)yのいずれかまたは両方の3’末端が切断不能なリン酸基を用いてリン酸化されている。さらに別の実施形態では、(N)xと(N’)yのいずれかまたは両方の2’末端が切断可能または切断不能なリン酸基を用いてリン酸化されている。これらの特定のsiRNA化合物は平滑端でもあり、末端はリン酸化されていないが、比較実験により、3’末端の一端または両端がリン酸化されているsiRNA化合物はリン酸化されていない化合物と比較して類似したインビボ活性を有することが示されている。
【0194】
特定の実施形態では、上記構造のすべてにおいて、化合物は平滑端(例えば式中ZとZ’はいずれも不在)である。1つの代替実施形態では、化合物は少なくとも1個の3’オーバーハングを含み、式中ZまたはZ’の少なくとも1つが存在する。ZとZ’は独立して、1つ以上の共有で結ばれた修飾または非修飾ヌクレオチド(例えば逆dTまたはdA;dT、LNA、鏡像体ヌクレオチドなど)を含む。いくつかの実施形態では、ZとZ’はそれぞれ独立してdTおよびdTdTから選択される。Zおよび/またはZ’が存在するsiRNAは、ZとZ’が不在であるsiRNAと類似した活性および安定性を有する。
【0195】
特定の実施形態では、上記構造のすべてにおいて、化合物は1つ以上のホスホノカルボキシレートおよび/またはホスフィノカルボキシレートヌクレオチド(PACEヌクレオチド)を含む。いくつかの実施形態では、PACEヌクレオチドはデオキシリボヌクレオチドであり、ホスフィノカルボキシレートヌクレオチドはホスフィノアセテートヌクレオチドである。PACEヌクレオチドおよび類似体の例は米国特許第6,693,187号および7,067,641号(いずれも本明細書に参照により組み込まれる)に開示されている。
【0196】
特定の実施形態では、上記構造のすべてにおいて、化合物は1つ以上の固定化核酸(LNA)(架橋核酸としても定義される)または二環式ヌクレオチドを含む。好ましい固定化核酸は2’−O,4’−C−エチレンヌクレオシド(ENA)または2’−O,4’−C−メチレンヌクレオシドである。LNAとENAヌクレオチドの他の例は国際公開特許第98/39352号、国際公開特許第00/47599号および国際公開特許第99/14226号(すべて本明細書に参照により組み込まれる)に開示されている。
【0197】
特定の実施形態では、上記構造のすべてにおいて、化合物は1つ以上のアルトリトールモノマー(ヌクレオチド)(1,5アンヒドロ−2−デオキシ−D−アルトリトール−ヘキシトールとしても定義される)を含む(例えば、Allart, et al., 1998. Nucleosides & Nucleotides 17:1523−1526; Herdewijn et al., 1999. Nucleosides & Nucleotides 18:1371−1376; Fisher et al., 2007, NAR 35(4):1064−1074(すべて本明細書に参照により組み込まれる)を参照されたい)。
【0198】
本発明は、Nおよび/またはN’のそれぞれがデオキシリボヌクレオチド(D−A、D−C、D−G、D−T)である化合物を明確に除く。特定の実施形態では、(N)xと(N’)yは独立して1、2、3、4、5、6、7、8、9個または9個超のデオキシリボヌクレオチドを含んでよい。特定の実施形態では、本発明は、式中Nがそれぞれ非修飾リボヌクレオチドであり、3’末端ヌクレオチドまたは(N’)yの3’末端の2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13もしくは14個の連続するヌクレオチドがデオキシリボヌクレオチドである化合物を提供する。さらに他の実施形態では、Nはそれぞれ非修飾リボヌクレオチドであり、(N’)yの5’末端の5’末端ヌクレオチドまたは2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13もしくは14個の連続するヌクレオチドはデオキシリボヌクレオチドである。さらなる実施形態では、(N)xの5’末端の5’末端ヌクレオチドまたは2、3、4、5、6、7、8、もしくは9個の連続するヌクレオチドならびに3’末端の1、2、3、4、5、もしくは6個の連続するヌクレオチドはデオキシリボヌクレオチドであり、N’はそれぞれ非修飾リボヌクレオチドである。さらなる実施形態では、(N)xは非修飾リボヌクレオチド、5’末端と3’末端のそれぞれ独立した1または2、3または4個の連続するデオキシリボヌクレオチド、内部の1または2、3、4、5または6個の連続するデオキシリボヌクレオチドを含み;ならびにN’はそれぞれ非修飾リボヌクレオチドである。特定の実施形態では、(N’)yの3’末端の3’末端ヌクレオチドまたは2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13もしくは14個の連続するヌクレオチド、ならびに(N)xの5’末端の5’末端ヌクレオチドまたは2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13もしくは14個の連続するヌクレオチドはデオキシリボヌクレオチドである。本発明は、Nおよび/またはN’がそれぞれデオキシリボヌクレオチドである化合物を除く。いくつかの実施形態では、Nの5’末端ヌクレオチドまたは2もしくは3個の連続するNおよび1、2、もしくは3個のN’はデオキシリボヌクレオチドである。活性DNA/RNA siRNAキメラの特定の例は米国特許第2005/0004064号、およびUi−Tei, 2008 (NAR 36(7):2136−2151)(それらの全体が本明細書に参照により組み込まれる)に開示されている。
【0199】
特記しない限り、本明細書で論じられる構造の好ましい実施形態では、それぞれ連続するNまたはN’間の共有結合はリン酸ジエステル結合である。
【0200】
本発明に提供される追加の新規分子は、オリゴヌクレオチド(連続するヌクレオチドを含み、ここでかかるヌクレオチドの第1セグメントは第1の阻害性RNA分子をコードし、かかるヌクレオチドの第2セグメントは第2の阻害性RNA分子をコードし、およびかかるヌクレオチドの第3セグメントは第3の阻害性RNA分子をコードする)である。第1、第2および第3セグメントはそれぞれ2本鎖RNAの1本鎖を含んでよく、第1、第2および第3セグメントはリンカーにより連結していてよい。さらに、オリゴヌクレオチドは1つ以上のリンカーにより連結している3つの2本鎖セグメントを含んでよい。
【0201】
したがって、本発明に提供される1分子は、オリゴヌクレオチド(3つの阻害性RNA分子をコードする連続するヌクレオチドを含む)であり;前記オリゴヌクレオチドは、3つの2本鎖腕が1つ以上のリンカー(本明細書の上に提示した任意のリンカーなど)により結ばれるように3本鎖構造を保持してよい。この分子は「スター」様構造を形成し、本明細書でRNAスターとも呼び得る。かかる構造はPCT国際公開特許第2007/091269(本発明の譲受人に譲与されている)に開示されており、その全体が本明細書に参照により組み込まれる。
【0202】
共有結合とは、あるヌクレオチドモノマーを隣接ヌクレオチドモノマーと結ぶヌクレオチド間結合を指す。共有結合としては、例えば、リン酸ジエステル結合、ホスホロチオエート結合、P−アルコキシ結合、P−カルボキシ結合などが挙げられる。RNAとDNAの正常なヌクレオシド間結合は3’から5’方向のリン酸ジエステル結合である。特定の好ましい実施形態では、共有結合はリン酸ジエステル結合である。とりわけ、国際公開特許第2004/041924号に開示されているもののように、共有結合はリンを含有しないヌクレオシド間結合を抱合する。特記しない限り、本明細書で論じられる構造の好ましい実施形態では、それぞれ連続するNまたはN’間の共有結合はリン酸ジエステル結合である。
【0203】
上のすべての構造において、いくつかの実施形態では、(N)xのオリゴヌクレオチド配列は(N’)yのオリゴヌクレオチド配列に完全に相補的である。他の実施形態では、(N)xと(N’)yは実質的に相補的である。特定の実施形態では、(N)xは標的配列に対して完全に相補的である。他の実施形態では、(N)xは標的配列に対して実質的に相補的である。
【0204】
いくつかの実施形態では、(N)xも(N’)yも3’末端と5’末端はリン酸化されていない。他の実施形態では、(N)xと(N’)yのいずれかまたは両方の3’末端がリン酸化されている(3’Pi)。さらに別の実施形態では、(N)xと(N’)yのいずれかまたは両方の3’末端が切断不能なリン酸基を用いてリン酸化されている。さらに別の実施形態では、(N)xと(N’)yのいずれかまたは両方の2’末端が切断可能または切断不能なリン酸基を用いてリン酸化されている。さらに、本発明の阻害性核酸分子は、1つ以上のギャップおよび/または1つ以上のニックおよび/または1つ以上のミスマッチが入っていてよい。理論に束縛されるものではないが、ギャップ、ニックおよびミスマッチは、内因性細胞機構(DICER、DROSHAまたはRISCなど)によってその阻害成分に容易に処理され得るように核酸/siRNAを部分的に不安定にさせる利点を持つ。
【0205】
本発明に関して、核酸中ギャップは、1本鎖中の1個以上の内部ヌクレオチドの欠如を指し、対して核酸中ニックは1本鎖中の2個の隣接するヌクレオチド間のヌクレオチド間結合の欠如を指す。本発明の分子のいずれも1つ以上のギャップおよび/または1つ以上のニックが入っていてよい。
【0206】
1つの態様では、本発明は構造(I)を有する化合物を提供する:
(I)5’ (N)x−Z 3’ (アンチセンス鎖)
3’ Z’−(N’)y−z” 5’ (センス鎖)
式中NとN’はそれぞれ修飾されていなくても修飾されていてもよいリボヌクレオチドか、または非定型的部分であり;
式中(N)xと(N’)yはそれぞれ、連続するNもしくはN’がそれぞれ共有結合により次のNもしくはN’に連結しているオリゴヌクレオチドであり;
式中ZとZ’は存在しても存在しなくてもよいが、存在する場合は、独立してそれが存在する鎖の3’末端で共有結合している1〜5個の連続するヌクレオチドであり;
式中z”は存在しても存在しなくてもよいが、存在する場合は、(N’)yの5’末端で共有結合しているキャッピング部分であり;
式中x=18〜27であり;
式中y=18〜27であり;
式中(N)xは修飾および非修飾リボヌクレオチドを含み、修飾リボヌクレオチドはそれぞれその糖上に2’−O−メチルを有し、式中(N)xの3’末端のNは修飾リボヌクレオチドであり、(N)xは、3’末端で開始する少なくとも5個の交互の修飾リボヌクレオチドと少なくとも9個の修飾リボヌクレオチドを併せて含み、残りのNはそれぞれ非修飾リボヌクレオチドであり;
式中(N’)yに少なくとも1個の非定型的部分が存在し、この非定型的部分は脱塩基リボース部分、脱塩基デオキシリボース部分、修飾もしくは非修飾デオキシリボヌクレオチド、鏡像体ヌクレオチド、および2’−5’ヌクレオチド間リン酸結合により隣接ヌクレオチドに連結しているヌクレオチドでよく;ならびに
式中(N’)y配列は(N)xと実質的に相補的な配列であり;ならびに式中(N)x配列は、耳障害に関連した標的遺伝子mRNA中の約18〜約40個の連続するリボヌクレオチドと実質的に相補的なアンチセンス配列を含む。
【0207】
いくつかの実施形態では、x=y=19である。他の実施形態では、x=y=23である。いくつかの実施形態では、少なくとも1個の非定型的部分が(N’)yの15、16、17、または18位に存在する。いくつかの実施形態では、この非定型的部分は鏡像体ヌクレオチド、脱塩基リボース部分および脱塩基デオキシリボース部分から選択される。いくつかの好ましい実施形態では、非定型的部分は鏡像体ヌクレオチドであり、好ましくはL−DNA部分である。いくつかの実施形態では、L−DNA部分は17位、18位または17位と18位に存在する。
【0208】
他の実施形態では、この非定型的部分は脱塩基部分である。様々な実施形態では、(N’)yは、少なくとも5個の脱塩基リボース部分または脱塩基デオキシリボース部分を含む。
【0209】
さらに他の実施形態では、(N’)yは少なくとも5個の脱塩基リボース部分または脱塩基デオキシリボース部分を含み、少なくとも1個のN’はLNAである。
【0210】
いくつかの実施形態では、(N)xは9個の交互の修飾リボヌクレオチドを含む。構造(I)の他の実施形態では、(N)xは9個の修飾リボヌクレオチドを交互に含み、さらに2位の2’O修飾ヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、(N)xは奇数の1、3、5、7、9、11、13、15、17、19位に2’OMe修飾リボヌクレオチドを含む。他の実施形態では、(N)xはさらに2位と18位の一方または両方に2’OMe修飾リボヌクレオチドを含む。さらに他の実施形態では、(N)xは、2、4、6、8、11、13、15、17、19位に2’OMe修飾リボヌクレオチドを含む。
【0211】
様々な実施形態では、z”は存在し、脱塩基リボース部分、デオキシリボース部分;逆方向脱塩基リボース部分、デオキシリボース部分;C6−アミノ−Pi;鏡像体ヌクレオチドから選択される。
【0212】
別の態様では、本発明は、次に表す構造(J)を有する化合物を提供する:
(J)5’ (N)x−Z 3’ (アンチセンス鎖)
3’ Z’−(N’)y−z” 5’ (センス鎖)
式中NとN’はそれぞれ修飾されていなくても修飾されていてもよいリボヌクレオチドか、または非定型的部分であり;
式中(N)xと(N’)yはそれぞれ、連続するNもしくはN’がそれぞれ共有結合により次のNもしくはN’に連結しているオリゴヌクレオチドであり;
式中ZとZ’は存在しても存在しなくてもよいが、存在する場合は、独立してそれが存在する鎖の3’末端で共有結合する1〜5個の連続するヌクレオチドであり;
式中z”は存在しても存在しなくてもよいが、存在する場合は、(N’)yの5’末端で共有結合するキャッピング部分であり;
式中x=18〜27であり;
式中y=18〜27であり;
式中(N)xは修飾もしくは非修飾リボヌクレオチドを含み、任意に少なくとも1個の非定型的部分を含み;
式中(N’)yには少なくとも1個の非定型的部分が存在し、この非定型的部分は脱塩基リボース部分、脱塩基デオキシリボース部分、修飾もしくは非修飾デオキシリボヌクレオチド、鏡像体ヌクレオチド、非塩基対合ヌクレオチド類似体または2’−5’ヌクレオチド間リン酸結合により隣接ヌクレオチドに連結しているヌクレオチドでよく;ならびに
式中(N’)y配列は(N)xと実質的に相補的な配列であり;ならびに式中(N)x配列は耳障害に関連した標的遺伝子mRNA中の約18〜約40個の連続するリボヌクレオチドと実質的に相補的なアンチセンス配列を含む。
【0213】
いくつかの実施形態では、x=y=19である。他の実施形態では、x=y=23である。いくつかの好ましい実施形態では、(N)xは修飾および非修飾リボヌクレオチドを含み、少なくとも1個の非定型的部分を含む。
【0214】
いくつかの実施形態では、(N)xの3’末端のNは修飾リボヌクレオチドであり、(N)xは少なくとも8個の修飾リボヌクレオチドを含む。他の実施形態では、少なくとも8個の修飾リボヌクレオチドのうち少なくとも5個は3’末端で開始し、交互である。いくつかの実施形態では、(N)xは5、6、7、8、9、10、11、12、13、14または15位の1つに脱塩基部分を含む。
【0215】
いくつかの実施形態では、(N’)yの少なくとも1個の非定型的部分は15、16、17、または18位に存在する。いくつかの実施形態では、非定型的部分は鏡像体ヌクレオチド、脱塩基リボース部分および脱塩基デオキシリボース部分から選択される。いくつかの好ましい実施形態では、非定型的部分は鏡像体ヌクレオチド、好ましくはL−DNA部分である。いくつかの実施形態では、L−DNA部分は17位、18位または17位と18位に存在する。他の実施形態では、(N’)yの少なくとも1個の非定型的部分は脱塩基リボース部分または脱塩基デオキシリボース部分である。
【0216】
さらに別の態様では、本発明は次に表す構造(K)を有する化合物を提供する:
(K)5’ (N)x−Z 3’ (アンチセンス鎖)
3’ Z’−(N’)y−z” 5’ (センス鎖)
式中NとN’はそれぞれ修飾されていなくても修飾されていてもよいリボヌクレオチドか、または非定型的部分であり;
式中(N)xと(N’)yはそれぞれ、連続するNもしくはN’がそれぞれ共有結合により次のNもしくはN’に連結しているオリゴヌクレオチドであり;
式中ZとZ’は存在しても存在しなくてもよいが、存在する場合は、独立してそれが存在する鎖の3’末端で共有結合している1〜5個の連続するヌクレオチドであり;
式中z”は存在しても存在しなくてもよいが、存在する場合は、(N’)yの5’末端で共有結合しているキャッピング部分であり;
式中x=18〜27であり;
式中y=18〜27であり;
式中(N)xは修飾もしくは非修飾リボヌクレオチドと非定型的部分の組み合わせ、その糖上に2’−O−メチルを有する任意の修飾リボヌクレオチドを含み;
式中(N’)yは修飾もしくは非修飾リボヌクレオチドおよび任意に非定型的部分、その糖上に2’OMeを有する任意の修飾リボヌクレオチドを含み;
式中(N’)y配列は(N)xと実質的に相補的な配列であり;ならびに式中(N)x配列は耳障害に関連した標的遺伝子中の約18〜約40個の連続するリボヌクレオチドと実質的に相補的なアンチセンス配列を含む。
【0217】
いくつかの実施形態では、x=y=19である。他の実施形態では、x=y=23である。いくつかの好ましい実施形態では、前記少なくとも1個の好ましい非定型的部分が(N)xに存在し、脱塩基リボース部分または脱塩基デオキシリボース部分である。他の実施形態では、少なくとも1個の非定型的部分が(N)xに存在し、非塩基対合ヌクレオチド類似体である。様々な実施形態では、(N’)yは非修飾リボヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、(N)xは少なくとも5個の脱塩基リボース部分もしくは脱塩基デオキシリボース部分またはそれらの組み合わせを含む。特定の実施形態では、(N)xおよび/または(N’)yは(N’)yおよび/または(N)x中の対応する修飾もしくは非修飾リボヌクレオチドと塩基対合していない修飾リボヌクレオチドを含む。
【0218】
様々な実施形態では、本発明は、構造(L)に表すsiRNAを提供する:
(L)5’ (N)x−Z 3’ (アンチセンス鎖)
3’ Z’−(N’)y 5’ (センス鎖)
式中NとN’はそれぞれ、非修飾
リボヌクレオチド、修飾リボヌクレオチド、非修飾デオキシリボヌクレオチド、および修飾デオキシリボヌクレオチドから選択されるヌクレオチドであり;
式中(N)xと(N’)yはそれぞれ、連続するNもしくはN’がそれぞれ共有結合により次のNもしくはN’に連結しているオリゴヌクレオチドであり;
式中ZとZ’は不在であり;
式中x=y=19であり;
式中(N’)yにおいて、15、16、17、18および19位の少なくとも1つのヌクレオチドは、脱塩基の非定型的部分、鏡像体ヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチド、ならびに2’−5’ヌクレオチド間結合により隣接ヌクレオチドに連結しているヌクレオチドから選択されるヌクレオチドを含み;
式中(N)xは、(N)xの中央部に2’OMe糖修飾リボヌクレオチドを有するように2’OMe糖修飾リボヌクレオチドと非修飾リボヌクレオチドを交互に含み;ならびに
式中(N’)y配列は(N)xと実質的に相補的な配列であり;ならびに式中(N)x配列は、耳障害に関連した標的遺伝子mRNA中の約18〜約40個の連続するリボヌクレオチドと実質的に相補的なアンチセンス配列を含む。
【0219】
構造(L)のいくつかの実施形態では、(N’)yの17位と18位の一方または両方のヌクレオチドは、脱塩基の非定型的部分、鏡像体ヌクレオチド、および2’−5’ヌクレオチド間結合により隣接ヌクレオチドに連結しているヌクレオチドから選択される修飾ヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、この鏡像体ヌクレオチドはL−DNAおよびL−RNAから選択される。様々な実施形態では、この鏡像体ヌクレオチドはL−DNAである。
【0220】
様々な実施形態では、(N’)yは15位に修飾ヌクレオチドを含み、この修飾ヌクレオチドは鏡像体ヌクレオチドおよびデオキシリボヌクレオチドから選択される。
【0221】
特定の実施形態では、(N’)yはさらに2位に修飾ヌクレオチドまたは偽ヌクレオチドを含み、この偽ヌクレオチドは脱塩基の非定型的部分でよく、修飾ヌクレオチドは任意に鏡像体ヌクレオチドである。
【0222】
様々な実施形態では、アンチセンス鎖(N)xは奇数位置(5’から3’方向;1、3、5、7、9、11、13、15、17、19位)に2’O−Me修飾リボヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、(N)xはさらに2位と18位の一方または両方に2’O−Me修飾リボヌクレオチドを含む。他の実施形態では、(N)xは2、4、6、8、11、13、15、17、19位に2’OMe修飾リボヌクレオチドを含む。
【0223】
構造(L)の他の実施形態は、式中x=y=21または式中x=y=23であることが予想され;これらの実施形態では、上に論じた(N’)yの17位と18位に代わる修飾は21merオリゴヌクレオチドの19位と20位および23merオリゴヌクレオチドの21位と22位であり;同様に15、16、17、18または19位の修飾は21merオリゴヌクレオチドの17、18、19、20もしくは21位、および23merオリゴヌクレオチドの19、20、21、22、もしくは23位である。アンチセンス鎖上の2’OMe修飾は同様に調節される。いくつかの実施形態では、(N)xは奇数位置(5’から3’方向;21merオリゴヌクレオチドの1、3、5、7、9、12、14、16、18、20位[ヌクレオチド11位は非修飾]および23merオリゴヌクレオチドの1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23位[ヌクレオチド12位は非修飾]に2’OMe修飾リボヌクレオチドを含む。他の実施形態では、(N)xは2、4、6、8、10、12、14、16、18、20位[21merオリゴヌクレオチドの11位のヌクレオチドは修飾されておらず、23merオリゴヌクレオチドの2、4、6、8、10、13、15、17、19、21、23位[ヌクレオチド12位は非修飾]に2’OMe修飾リボヌクレオチドを含む。
【0224】
いくつかの実施形態では、(N’)yはさらに5’末端にキャップヌクレオチドを含む。様々な実施形態では、末端キャップ部分は脱塩基の非定型的部分、逆方向脱塩基の非定型的部分、L−DNAヌクレオチド、およびC6−イミンリン酸(末端にリン酸を有するC6アミノリンカー)から選択される。
【0225】
他の実施形態では、本発明は、次に表す構造(M)を有する化合物を提供する:
(M)5’ (N)x−Z 3’ (アンチセンス鎖)
3’ Z’−(N’)y 5’ (センス鎖)
式中NとN’はそれぞれ偽ヌクレオチドおよびヌクレオチドから選択され;
式中ヌクレオチドはそれぞれ、非修飾リボヌクレオチド、修飾リボヌクレオチド、非修飾デオキシリボヌクレオチド、および修飾デオキシリボヌクレオチドから選択され;
式中(N)xと(N’)yはそれぞれ、連続するNもしくはN’がそれぞれ共有結合により次のNもしくはN’に連結しているオリゴヌクレオチドであり;
式中ZとZ’は不在であり;
式中x=18〜27であり;
式中y=18〜27であり;
式中(N’)y配列は(N)xと実質的に相補的な配列であり;ならびに式中(N)x配列は、耳障害に関連した標的遺伝子mRNA中の約18〜約40個の連続するリボヌクレオチドと実質的に相補的なアンチセンス配列を含む。
【0226】
他の実施形態では、本発明は、次に表す構造(N)を有する2本鎖化合物を提供する:
(N)5’(N)x−Z 3’ (アンチセンス鎖)
3’ Z’−(N’)y 5’ (センス鎖)
式中NとN’はそれぞれ、非修飾リボヌクレオチド、修飾リボヌクレオチド、非修飾デオキシリボヌクレオチド、および修飾デオキシリボヌクレオチドから選択されるヌクレオチドであり;
式中(N)xと(N’)yはそれぞれ、連続するNもしくはN’がそれぞれ共有結合により次のNもしくはN’に連結しているオリゴヌクレオチドであり;
式中ZとZ’は不在であり;
式中xとyはそれぞれ18〜40の整数であり;
式中(N’)y配列は(N)xと実質的に相補的な配列であり;ならびに式中(N)x配列は耳障害に関連した標的遺伝子mRNA中の約18〜約40個の連続するリボヌクレオチドと実質的に相補的なアンチセンス配列を含み;
式中(N)x、(N’)y、または(N)xと(N’)yは(N)xと(N’)yが2本鎖化合物における15塩基対未満を形成するように、非塩基対合修飾ヌクレオチドを含む。
【0227】
他の実施形態では、本発明は、次に表す構造(O)を有する化合物を提供する:
(O)5’(N)x−Z 3’ (アンチセンス鎖)
3’ Z’−(N’)y 5’ (センス鎖)
式中Nはそれぞれ、非修飾リボヌクレオチド、修飾リボヌクレオチド、非修飾デオキシリボヌクレオチド、および修飾デオキシリボヌクレオチドから選択されるヌクレオチドであり;
式中N’はそれぞれ六員糖ヌクレオチド、七員糖ヌクレオチド、モルホリノ部分、ペプチド核酸およびそれらの組み合わせから選択されるヌクレオチド類似体であり;
式中(N)xと(N’)yはそれぞれ、連続するNもしくはN’がそれぞれ共有結合により次のNもしくはN’に連結しているオリゴヌクレオチドであり;
式中ZとZ’は不在であり;
式中xとyはそれぞれ18〜40の整数であり;
式中(N’)y配列は(N)xと実質的に相補的な配列であり;ならびに式中(N)x配列は、耳障害に関連した標的遺伝子mRNA中の約18〜約40個の連続するリボヌクレオチドと実質的に相補的なアンチセンス配列を含む。
【0228】
他の実施形態では、本発明は、次に表す構造(P)を有する化合物を提供する:
(P)5’ (N)x−Z 3’ (アンチセンス鎖)
3’ Z’−(N’)y 5’ (センス鎖)
式中NとN’はそれぞれ、非修飾リボヌクレオチド、修飾リボヌクレオチド、非修飾デオキシリボヌクレオチド、および修飾デオキシリボヌクレオチドから選択されるヌクレオチドであり;
式中(N)xと(N’)yはそれぞれ、連続するNもしくはN’がそれぞれ共有結合により次のNもしくはN’に連結しているオリゴヌクレオチドであり;
式中ZとZ’は不在であり;
式中xとyはそれぞれ18〜40の整数であり;
式中(N)xもしくは(N’)yの内部にあるNもしくはN’の1つ、または(N)xもしくは(N’)yの末端位にある1つ以上のNまたはN’は、脱塩基部分もしくは2’修飾ヌクレオチドを含み;
式中(N’)y配列は(N)xと実質的に相補的な配列であり;ならびに式中(N)x配列は、耳障害に関連した標的遺伝子mRNA中の約18〜約40個の連続するリボヌクレオチドと実質的に相補的なアンチセンス配列を含む。
【0229】
様々な実施形態では、(N’)yは、15位に修飾ヌクレオチドを含み、この修飾ヌクレオチドは鏡像体ヌクレオチドおよびデオキシリボヌクレオチドから選択される。
【0230】
特定の実施形態では、(N’)yはさらに、2位に修飾ヌクレオチドを含み、この修飾ヌクレオチドは鏡像体ヌクレオチドおよび脱塩基の非定型的部分から選択される。
【0231】
様々な実施形態では、アンチセンス鎖(N)xは奇数位置(5’から3’方向;1、3、5、7、9、11、13、15、17、19位)に2’O−Me修飾リボヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、(N)xはさらに2位と18位の一方または両方に2’O−Me修飾リボヌクレオチドを含む。他の実施形態では、(N)xは2、4、6、8、11、13、15、17、19位に2’OMe修飾リボヌクレオチドを含む。
【0232】
本発明に提供される追加の新規分子は、オリゴヌクレオチド(連続するヌクレオチドを含み、ここでかかるヌクレオチドの第1セグメントは第1の阻害性RNA分子をコードし、かかるヌクレオチドの第2セグメントは第2の阻害性RNA分子をコードし、およびかかるヌクレオチドの第3セグメントは第3の阻害性RNA分子をコードする)である。第1、第2および第3セグメントはそれぞれ2本鎖RNAの1本鎖を含んでよく、第1、第2および第3セグメントはリンカーにより連結していてよい。さらに、オリゴヌクレオチドは、1つ以上のリンカーにより連結している3つの2本鎖セグメントを含んでよい。
【0233】
したがって、本発明に提供される1分子は、オリゴヌクレオチド(3個の阻害性RNA分子をコードする連続するヌクレオチドを含む)であり;前記オリゴヌクレオチドは、3つの2本鎖腕が1個以上のリンカー(本明細書の上に提示した任意のリンカーなど)により結ばれるように3本鎖構造を保持してよい。この分子は「スター」様構造を形成し、本明細書でRNAスターとも呼び得る。
【0234】
前記3本鎖オリゴヌクレオチドは一般構造:
5’ オリゴ1(センス) リンカーA オリゴ2(センス) 3’
3’ オリゴ1(アンチセンス) リンカーB オリゴ3(センス) 5’
3’ オリゴ3(アンチセンス) リンカーC オリゴ2(アンチセンス) 5’
または
5’ オリゴ1(センス) リンカーA オリゴ2(アンチセンス) 3’
3’ オリゴ1(アンチセンス) リンカーB オリゴ3(センス) 5’
3’ オリゴ3(アンチセンス) リンカーC オリゴ2(センス) 5’
または
5’ オリゴ1(センス) リンカーA オリゴ3(アンチセンス) 3’
3’ オリゴ1(アンチセンス) リンカーB オリゴ2(センス) 5’
5’ オリゴ3(センス) リンカーC オリゴ2(アンチセンス) 3’
を有するオリゴリボヌクレオチドでよく、
ここで1個以上のリンカーA、リンカーBまたはリンカーCが存在し;鎖の極性および分子の一般構造をとどめる限り、2個以上のオリゴヌクレオチドと1個以上のリンカーA〜Cの任意の組み合わせが可能である。さらに、2個以上のリンカーA〜Cが存在する場合は、それらは同一でも異なっていてもよい。
【0235】
したがって、3本腕構造が形成され、ここでそれぞれの腕は、センス鎖と相補的アンチセンス鎖を含む(すなわちオリゴ1センスと塩基対合するオリゴ1アンチセンスなど)。この3本腕構造は、それによりそれぞれの腕が塩基対合を保持する3本鎖であり得る。
【0236】
さらに、上の3本鎖構造では1本以上の鎖にリンカーの代わりに1つのギャップが入っていてよい。1つのギャップが入っているかかる分子は厳密に言うと4本鎖であり、3本鎖ではない;さらなるギャップまたはニックを挿入すると、さらなる鎖を有する分子となる。本発明者らにより得られた予備結果により、前記ギャップ分子は特定の標的遺伝子の阻害において、類似するがギャップが入っていない分子よりも活性があることが示される。これは、ニック分子にも当てはまり得る。
【0237】
本発明の1つの好ましい実施形態によると、siRNAのアンチセンス鎖とセンス鎖は3’末端のみリン酸化され、5’末端はリン酸化されていない。本発明の別の好ましい実施形態によると、アンチセンス鎖とセンス鎖はリン酸化されていない。本発明のさらに別の好ましい実施形態によると、センス鎖の5’最末端のリボヌクレオチドはインビボ5’−リン酸化のいかなる可能性も排除するために修飾されている。
【0238】
本発明は、さらに、細胞における非修飾形態の任意の上記オリゴリボヌクレオチドを発現可能なベクターであり、後で好適な修飾を行ない得るベクターを提供する。好ましい実施形態では、細胞は哺乳類細胞であり、好ましくはヒト細胞である。
【0239】
医薬組成物
本発明者らは、治療オリゴヌクレオチドの中耳および内耳への送達のための組成物の開発における多くの障害を克服した。したがって本発明は、1個以上の阻害性オリゴヌクレオチド化合物;浸透エンハンサーおよび薬学的に許容可能なビヒクルもしくは担体を含む医薬組成物を提供する。いくつかの実施形態では、組成物は、2個以上の異なるオリゴヌクレオチド/siRNA化合物の混合物を含む。
【0240】
「浸透(penetration)エンハンサー」または「浸透(permeability)エンハンサー」としては、ポリオール(ポリエチレングリコール(PEG)、グリセロール(グリセリン)、マルチトール、ソルビトールなど);ジエチレングリコールモノエチルエーテル、アゾン、塩化ベンザルコニウム(ADBAC)、塩化セチルピリジニウム、臭化セチルメチルアンモニウム、硫酸デキストラン、ラウリン酸、メントール、メトキシサリチル酸、オレイン酸、ホスファチジルコリン、ポリオキシエチレン、ポリソルビン酸塩80、グリコール酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、サリチル酸ナトリウム、タウロコール酸ナトリウム、タウロデオキシコール酸ナトリウム、スルホキシド、デオキシコール酸ナトリウム、グリコデオキシコール酸ナトリウム、タウロコール酸ナトリウムおよび界面活性剤(ラウリル硫酸ナトリウム、ラウレス−9、塩化セチルピリジニウムおよびポリオキシエチレンモノアルキルエーテルなど)、安息香酸(サリチル酸ナトリウムおよびサリチル酸メトキシなど)、脂肪酸(ラウリン酸、オレイン酸、ウンデカン酸およびオレイン酸メチルなど)、脂肪族アルコール(オクタノールおよびノナノールなど)、ラウロカプラム、シクロデキストリン、チモール、リモネン、尿素、キトサンならびに他の天然および合成ポリマーが挙げられる。
【0241】
本発明の溶液中の封入に好適なポリオールとしては、グリセロールおよび糖アルコール(ソルビトール、マンニトールまたはキシリトールなど)、ポリエチレングリコールおよびその誘導体が挙げられる。いくつかの実施形態では、組成物はさらに、防腐剤を含む。本発明の組成物中に含まれる認められた防腐剤(塩化ベンザルコニウムおよびエデト酸2ナトリウム(EDTA)など)の有効な抗菌作用のために十分な濃度は、組成物の重量に基づき約0.0001〜0.1%である。
【0242】
本発明はさらに、上に開示の1つ以上の遺伝子を阻害する有効量の1つ以上の本発明の化合物と共有または非共有結合している少なくとも1個の本発明の化合物;ならびに薬学的に許容可能な担体を含む医薬組成物を提供する。いくつかの実施形態では、化合物は、内因性細胞錯体により細胞内で処理されて本発明の1つ以上のオリゴリボヌクレオチドを産生する。
【0243】
さらに、本発明は、標的遺伝子mRNA転写物を本発明の組成物と接触させることを含み、標的遺伝子の発現を対照と比較して少なくとも50%阻害する方法を提供する。いくつかの実施形態では、活性siRNA化合物は、遺伝子発現レベルを対照と比較して少なくとも50%、60%または70%阻害する。特定の好ましい実施形態では、阻害レベルは対照と比較して少なくとも75%、80%または90%である。いくつかの実施形態では、標的遺伝子は本明細書に開示のヒト遺伝子である。
【0244】
1つの実施形態では、オリゴリボヌクレオチドは本発明に開示の1つ以上の遺伝子を阻害し、この阻害は遺伝子機能の阻害、ポリペプチドの阻害およびmRNA発現の阻害を含む群から選択される。特定の実施形態では、標的遺伝子はウイルス性、細菌性または哺乳類遺伝子である。様々な実施形態では、標的遺伝子は哺乳類遺伝子であり、好ましくはヒト遺伝子である。いくつかの実施形態では、標的遺伝子は、配列番号1〜配列番号36のいずれか1つから選択されるmRNAを有する。
【0245】
1つの実施形態では、化合物は、標的遺伝子にコードされたポリペプチド発現を阻害し、この阻害は、機能阻害(とりわけ、天然遺伝子/ポリペプチドの既知の相互作用子を用いた酵素アッセイまたは結合アッセイにより検査してよい)、タンパク質阻害(とりわけ、ウエスタンブロット法、ELISA法または免疫沈降法により検査してよい)およびmRNA発現阻害(とりわけ、ノーザンブロット法、定量RT−PCR、インサイチュのハイブリッド形成またはマイクロアレイハイブリッド形成により検査してよい)を含む群から選択される。
【0246】
追加の実施形態では、本発明は、本発明の高値の遺伝子を伴う疾患を呈する対象を治療する方法を提供し、方法は治療有効量の本発明の化合物を対象に投与し、それにより対象を治療することを含む。
【0247】
送達
本発明のsiRNA分子は、外耳へ医薬組成物を直接適用することにより耳へ送達される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は外耳道に適用される。耳(ear)への送達は、siRNA;浸透エンハンサーおよび薬学的に許容可能なビヒクルを含む耳(aural)または耳(otic)への送達とも呼び得る。
【0248】
いくつかの実施形態では、本発明のsiRNA分子はリポソームまたはリポフェクチン剤形などの中で送達され、当業者に周知の方法により調製できる。かかる方法は例えば、米国特許第5,593,972号、同第5,589,466号、および同第5,580,859号(本明細書に参照により組み込まれる)に記載されている。
【0249】
siRNAの哺乳類細胞への増強かつ改善された送達を具体的に目的とした送達系が開発されている(例えば、Shen et al FEBS Let. 2003, 539:111−114; Xia et al., Nat. Biotech. 2002, 20:1006−1010; Reich et al., Mol. Vision 2003, 9: 210−216; Sorensen et al., J. Mol. Biol. 2003. 327: 761−766; Lewis et al., Nat. Gen. 2002, 32: 107−108 and Simeoni et al., NAR 2003, 31,11: 2717−2724を参照されたい)。siRNAは近年、霊長類における遺伝子発現の阻害のために成功的に使用されている(例えば、Tolentino et al., Retina 24(4):660を参照されたい。
【0250】
本明細書の目的のための「治療有効量」とはしたがって当該技術分野において知られている検討材料により決定される。この用量は、改善(改善された生存率またはより迅速な回復、または症状の改善もしくは除去ならびに当業者により好適な手段として選択される他の指標が挙げられるが、これらに限定されない)を成し遂げるために有効でなければならない。
【0251】
一般に、ヒトに対する化合物の活性用量は、1ng/kgから約20〜100mg/kg体重/日の範囲、好ましくは約0.01mgから約2〜10mg/kg体重/日の範囲(レジメン1回/日、または2回もしくは3回もしくは3回超/日、期間1〜4週間もしくは4週間超)である。様々な実施形態では、siRNAは安定性を増大し、活性を増大し、オフターゲット効果を減らす、およびまたは自然免疫刺激を減らすために化学的に修飾されている。耳への投与量は、とりわけ、オリゴヌクレオチドの活性、適応、および障害の重症度により決定し、約0.1ng〜約10mg、約1ng〜約1mg、または約10ng〜約1mgの用量で薬学的に許容可能な薬剤中の総オリゴヌクレオチドを投与することを含む。組成物中のsiRNA濃度は0.1mg/mL〜100mg/mL、好ましくは1mg/mL〜100mg/mLであり、より好ましくは5mg/mL〜20mg/mLである。
【0252】
本発明の化合物は局所投与により投与される。この化合物は化合物として、または薬学的に許容可能な塩として投与でき、単独で、または薬学的に許容可能な担体、溶媒、希釈剤、賦形剤、アジュバントおよびビヒクルの組み合わせにおける活性成分として投与できることに留意されたい。化合物は点耳剤、耳クリーム剤、耳軟膏、発泡剤、ムースまたは任意の上の組み合わせの送達デバイスとして投与される。化合物の移植も有用である。液体形態は点滴として調製される。液体組成物としては、水性溶液(有機共溶媒含有、もしくは非含有)、水性または油性懸濁液、食用油エマルション、ならびに類似した製薬学的ビヒクルが挙げられる。別の実施形態では、投与は、非侵襲的な局所的(topical)または局所(local)投与を含む。点耳剤(eardrop)は点耳剤(otic drop)または点耳剤(aural drop)とも呼び得る。好ましい実施形態では、この点耳剤は、液滴が外耳道から漏出するのを防ぐために約30分間外耳道にとどめる。したがってこの点滴を受ける対象は、液滴が外耳道から漏出するのを防ぐために、治療を受ける耳が上向きになる側に頭を保つことが好ましい。
【0253】
好ましい実施形態では、治療中の対象は温血動物であり、特に哺乳類(ヒトなど)である。
【0254】
治療方法
別の態様では、本発明は、標的遺伝子の異常発現に関連した耳の疾患または障害の治療が必要な対象の治療方法に関し、医薬組成物(オリゴヌクレオチド、浸透エンハンサーおよび薬学的に許容可能な担体を含む)中において、耳障害に関連した標的遺伝子の発現を軽減または阻害する量のオリゴヌクレオチドを対象に投与することを含む。いくつかの実施形態では、標的遺伝子を表1に掲載する。好ましい実施形態では、標的遺伝子は1つ以上の:TP53BP2(ASPP2)、BNIP3、CASP2、NOX3、HRK、RAC1、DDIT4、DDIT4L、NOX4、HTRA2、CAPNS1(カルパイン)、ID3、HES1、HES5、CDKN1BおよびID3から選択される。
【0255】
好ましい実施形態では、治療中の対象は温血動物であり、特に哺乳類(ヒトなど)である。
【0256】
本発明の方法は、耳障害に関連した遺伝子の発現を下方制御する1つ以上の阻害性化合物;ならびに薬学的に許容可能なビヒクルを含む医薬組成物を治療有効量で対象に投与し、それにより対象を治療することを含む。
【0257】
「処置」という用語は、治療的処置および予防(prophylactic)または予防(preventative)手段の両方を指し、ここで目的は耳障害を予防または遅延化(軽減)することである。処置が必要なものとしては、既に疾患もしくは病態を発現しているもの、疾患もしくは病態を呈する傾向があるもの、および疾患もしくは病態が予防されるべきものが挙げられる。本発明の化合物は、関連する疾患または病態または症状の発現前、発現中または発現後に投与してよい。処置が予防目的である場合、本発明は、疾患または障害の発達遅延化または発現回避方法に関する。いくつかの実施形態では、方法は、35℃〜約38℃に加温した点耳剤を対象の耳に投与することを含む。いくつかの実施形態では、方法は、本発明の組成物を片側に、例えば対象の片耳に投与することを含む。様々な実施形態では、組成物は対象の耳に約5分〜約60分間浸透させることができる。
【0258】
本発明の1つの態様は、併用療法に関する。併用療法を構成する活性成分は、単投与量形態を介して併用投与してもよいし、それぞれの活性剤を別々に投与してもよい。いくつかの実施形態では、この併用療法は、本発明による組成物および耳毒性物質を、それらが必要な対象に投与することを含む。例えば、本発明は、哺乳動物に耳毒性物質および治療的有効量の1つ以上の本発明の化合物を併用投与することを含む、哺乳動物における聴力損失治療のための改善された方法に関する。耳毒性薬としては、シスプラチンおよびシスプラチン様化合物、アミノグリコシド、ループ利尿薬、ならびにヒドロキノンおよびそれらの類似体が挙げられる。
【0259】
併用投与とは、2種以上の薬剤を投与すること(それぞれの薬剤を製剤化して別々に投与)、または単剤形態で2種以上の薬剤を投与することを含む。2種以上の薬剤を同時投与できるが、必須ではない。例えば、第1薬剤(または併用薬)は第2薬剤(または併用薬)投与の数分、数時間、数日、または数週間前に投与できる。したがって、2種以上の薬剤は互いに数分以内に、または互いに任意の時間内に、または互いに任意の日数または週内に投与できる。いくつかの事例では、より長い間隔でも可能である。
【0260】
本発明の遺伝子を阻害する方法、分子および組成物は、本明細書で詳細に論じられ、前記分子および/または組成物のいずれも、任意の前記病態を呈する対象の治療において有益に使用し得る。
【0261】
本発明は医薬組成物の調製過程も提供し、これには:
1つ以上の本発明の化合物を提供すること;ならびに
前記化合物を薬学的に許容可能な担体と混合すること
が含まれる。
【0262】
本発明は、医薬組成物の調製過程も提供し、これには1つ以上の本発明の化合物を薬学的に許容可能な担体と混合することも含まれる。
【0263】
好ましい実施形態では、医薬組成物の調製に用いられる化合物は製薬的有効量の担体と混合される。特定の実施形態では、本発明の化合物はステロイドまたは脂質または別の好適な分子(例えばコレステロール)と共役している。
【0264】
オリゴヌクレオチド合成
本発明の化合物は、リボヌクレオチドの(またはデオキシリボヌクレオチドの)オリゴヌクレオチド合成について当該技術分野において周知である任意の方法によって合成できる。かかる合成は、特に、Beaucage and Iyer, Tetrahedron 1992; 48:2223−2311; Beaucage and Iyer, Tetrahedron 1993; 49: 6123−6194 and Caruthers, et. al., Methods Enzymol. 1987; 154: 287−313に記載されており;チオエート合成は、特に、Eckstein, Annu. Rev. Biochem. 1985; 54: 367−402に記載されており、RNA分子合成はSproat, in Humana Press 2005 edited by Herdewijn P.; Kap. 2: 17−31に記載されており、それぞれの下流過程は、特に、Pingoud et. al., in IRL Press 1989 edited by Oliver R.W.A.; Kap. 7: 183−208に記載されている。
【0265】
他の合成手順は、例えばUsman et al., J. Am. Chem. Soc., 1987, 109:7845; Scaringe et al., NAR, 1990, 18:5433; Wincott et al., NAR 1995,. 23:2677−2684;およびWincott et al., Methods Mol. Bio., 1997, 74:59に記載されている手順のように当該技術分野において既知であり、これらの手順は一般的な核酸保護基および結合基を使用してよい(5’末端のジメトキシトリチルなど、および3’末端のホスホラミジトなど)。この修飾(例えば2′−O−メチル化)ヌクレオチドおよび非修飾ヌクレオチドは所望により組み込まれる。
【0266】
本発明のオリゴヌクレオチドは、例えば、ライゲーションにより(Moore et al., Science 1992, 256:9923;国際公開特許第93/23569号; Shabarova et al., NAR 1991, 19:4247; Bellon et al., Nucleosides & Nucleotides, 1997, 16:951; Bellon et al., Bioconjugate Chem 1997, 8:204)、または合成および/もしくは脱保護後のハイブリッド形成により別々に合成して合成後に、連結できる。
【0267】
市販の機器(とりわけ、Applied Biosystemsから入手可能の機器)を使用できることに留意されたい;このオリゴヌクレオチドは本明細書に開示の配列により調製される。化学的に合成された断片の重複対は、当該技術分野において周知の方法(例えば、米国特許第6,121,426号を参照されたい)を用いてライゲーションできる。この鎖は別々に合成されて、次いで管内で互いにアニーリングされる。次いで、この2本鎖siRNAは、HPLCにより(例えばそれらの1つが過剰であったために)アニーリングされなかった1本鎖オリゴヌクレオチドから分離される。本発明のsiRNAまたはsiRNA断片に関して、2つ以上のかかる配列を、本発明における使用のために、合成して結ぶことができる。
【0268】
本発明の化合物は、例えば米国特許第2004/0019001号(McSwiggen)に記載されているように、タンデム合成方法を介して合成することもでき、この方法では、ハイブリッド形成してsiRNA2本鎖の精製を可能にする別々のsiRNA断片または鎖を得るために後に切断される、切断可能なリンカーによって分離された単一の隣接するオリゴヌクレオチド断片または鎖として両siRNA鎖が合成される。このリンカーは、ポリヌクレオチドリンカーまたは非ヌクレオチドリンカーとすることができる。
【0269】
本発明はさらに、本明細書で述べた任意の疾患および病態の治療のための2つ以上のsiRNA分子を含む医薬組成物を提供し、前記2分子は医薬組成物内で同一でも有益な活性を生じる量で物理的に併せて混合してもよく、または共有結合していても非共有結合していてもよく、または長さ2〜100個、好ましくは2〜50個もしくは2〜30個の範囲のヌクレオチドの核酸リンカーにより連結していてもよい。
【0270】
したがって、このsiRNA分子は共有結合していても非共有結合していてもよく、またはリンカーにより連結してタンデムsiRNA化合物を形成していてもよい。2つのsiRNA配列を含むかかるタンデムsiRNA化合物は、典型的には長さ約38〜150個のヌクレオチド、より好ましくは長さ38個または40〜60個のヌクレオチドであり、タンデム分子に2つより多くのsiRNA配列が含まれている場合はそれに応じてより長い。細胞内プロセシング(例えば、長いdsRNA)を介して産生されたsiRNAをコードする2つ以上のより長い配列を含むより長いタンデム化合物は、2つ以上のshRNAをコードするタンデム分子として予想もされる。かかるタンデム分子も本発明の一部として考慮される。2つ以上の本発明のsiRNA配列を含むタンデム化合物が予想される。
【0271】
耳障害に関連した遺伝子を標的とするsiRNA分子は、医薬組成物中の主要活性成分であり得、または2つ以上のsiRNA(または2つ以上のsiRNAをコードもしくは内生的に産生する分子、分子の混合物、または2つ以上のsiRNAをコードする1つ以上のタンデム分子)を含む医薬組成物の一活性成分であり得、前記医薬組成物はさらに1つ以上の追加の遺伝子を標的とする1つ以上の追加のsiRNA分子を含む。前記追加の遺伝子(1つ以上)の同時阻害は、本明細書に開示の疾患治療のための相加効果または相乗効果を有する可能性が高い。
【0272】
さらに、本明細書に開示のsiRNA、またはかかるsiRNAを含有もしくはコードする核酸分子はいずれも、本明細書に開示の疾患治療用に増強した標的を成し遂げるために、標的細胞上で発現する細胞表面で内在化可能な分子に対する抗体(アプタマー分子など)と(共有または非共有で)結ばれるもしくは結合することができる。例えば、抗Fas抗体(好ましくは中和抗体)は、任意の他のsiRNAと(共有または非共有)結合できる。
【0273】
本発明の化合物は、例えば2本鎖化合物として、2本鎖ヘアピン化合物としてまたはタンデム化合物として送達できる。1つ以上のステムおよびループ構造を含み、ステム領域に本発明のオリゴヌクレオチド配列を含む長いオリゴヌクレオチド(典型的には長さ25〜500個のヌクレオチド)は、担体(好ましくは薬学的に許容可能な担体)中で送達し得、内因性細胞錯体により(例えば上記のようなDROSHAおよびDICERにより)細胞内で処理されて本発明のオリゴヌクレオチドである1つ以上の低分子2本鎖オリゴヌクレオチド(siRNA)を産生し得ると予想もされる。このオリゴヌクレオチドはタンデムshRNAコンストラクトと称することができる。この長いオリゴヌクレオチドは1本鎖オリゴヌクレオチド(1つ以上のステムおよびループ構造を含み、ここでそれぞれのステム領域は、本発明の遺伝子のセンスおよび対応するアンチセンスsiRNA配列を含む)であることが予想される。特に、このオリゴヌクレオチドは表1に示す群から選択される哺乳類遺伝子から転写されたmRNAに関連するアンチセンス配列(N)xを含むことが予想される。好ましい実施形態では、標的遺伝子は1つ以上の:TP53BP2(ASPP2)、BNIP3、CASP2、NOX3、HRK、RAC1、DDIT4、DDIT4L、NOX4、HTRA2、CAPNS1(カルパイン)、ID3、HES1、HES5、CDKN1BおよびID3から選択される。
【0274】
RNAi現象に関するいくつかのPCT出願が最近公開された。これらとしては:PCT国際公開特許第00/44895号;PCT国際公開特許第00/49035号;PCT国際公開特許第00/63364号;PCT国際公開特許第01/36641号;PCT国際公開特許第01/36646号;PCT国際公開特許第99/32619号;PCT国際公開特許第00/44914号;PCT国際公開特許第01/29058号;およびPCT国際公開特許第01/75164号が挙げられる。
【0275】
RNA干渉(RNAi)は、dsRNA種が細胞質タンパク質複合体に入る能力に基づき、次いで相補的細胞RNAに対する標的とされ、それを特異的に分解する。このRNA干渉反応は、siRNAを含むエンドヌクレアーゼ複合体を特徴とし、一般に、RNA誘導サイレンシング複合体(RISC)と呼ばれ、siRNA2本鎖のアンチセンス鎖に相補的な配列を有する1本鎖RNAの切断を媒介する。標的RNAの切断は、siRNA2本鎖のアンチセンス鎖に相補的な領域の中央で生じ得る(Elbashir et al., Genes Dev., 2001, 15(2):188−200)。より詳細には、より長いdsRNAは、III型RNアーゼにより、短い(17〜29bp)dsRNA断片(短い阻害RNA、「siRNA」とも呼ばれる)に消化される(DICER、DROSHAなど;Bernstein et al., Nature, 2001, 409(6818):363−6; Lee et al., Nature, 2003, 425(6956):415−9)。RISCタンパク質複合体は、これらの断片および相補的mRNAを認識する。全体の過程は、最終的に、標的mRNAのエンドヌクレアーゼ切断を生じる(McManus & Sharp, Nature Rev Genet, 2002, 3(10):737−47; Paddison & Hannon, Curr Opin Mol Ther. 2003, 5(3):217−24)。(これらの用語および提案される機構に関する追加情報については、例えばBernstein et al., RNA 2001, 7(11):1509−21; Nishikura, Cell 2001, 107(4):415−8およびPCT国際公開特許第01/36646号を参照されたい)。
【0276】
いくつもの集団が細胞内のsiRNAを発生可能なDNAベースのベクター開発について記載している。この方法は概して、細胞内siRNAを形成するために効率よく処理される短いヘアピンRNA転写に関与する(Paddison et al. PNAS USA 2002, 99:1443−1448; Paddison et al. Genes & Dev 2002, 16:948−958; Sui et al. PNAS USA 2002, 8:5515−5520;およびBrummelkamp et al. Science 2002, 296:550−553)。これらの報告は、幾多の体内外発現遺伝子を特異的に標的とできるsiRNAの生成方法を述べている。
【0277】
本発明は例証的に記載されており、使用される用語は、述べられる言葉の本質を意図するものであって、制限するものではないことが理解されるべきである。
【0278】
明らかに、上の教示に照らして本発明の多くの修正および変形が可能である。したがって、添付の特許請求の範囲内で本発明を明細記載したとおり以外にも実施できることが理解される。
【0279】
本願全体で、様々な刊行物(米国特許など)が、著者、年、および特許番号により参照される。これらの刊行物、特許および特許出願の開示は、本発明が関連する分野の状態をより詳細に述べるために、それらの全体が本願への本明細書に参照により組み込まれる。
【0280】
本発明は、実施例を参照しながら下に詳細に例証するが、それに限定されるものとは解釈されない。
【0281】
本明細書におけるいかなる文献の引用も、かかる文献が、好適な先行技術であること、または本願の特許請求の範囲の特許性に対して考慮される文献であることを承認することを意図しない。いかなる文献の内容または日付に関するいかなる記述も、出願の時点で出願人に入手可能な情報に基づいており、かかる記述の正確性に関する承認を構成するものではない。
【実施例】
【0282】
これ以上詳述しなくても、当業者は上記の本明細書を用いて、本発明を最大限に利用できると考えられる。したがって、下記の好ましい具体的な実施形態は、単に例証的に解釈されるべきであり、いかなる意味でも特許請求の範囲に規定された本発明を限定するものではない。
【0283】
材料および方法:概要
本明細書に特記していない当該技術分野において既知である標準分子生物学的プロトコールは概して基本的にSambrook et al., Molecular cloning: A laboratory manual, Cold Springs Harbor Laboratory, New−York (1989, 1992)のとおり、およびAusubel et al., Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley and Sons, Baltimore, Maryland (1988)、およびAusubel et al., Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley and Sons, Baltimore, Maryland (1989)のとおり、およびPerbal, A Practical Guide to Molecular Cloning, John Wiley & Sons, New York (1988)のとおり、およびWatson et al., Recombinant DNA, Scientific American Books, New YorkおよびBirren et al (eds) Genome Analysis: A Laboratory Manual Series, Vols. 1−4 Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York (1998)のとおりに従い、ならびに米国特許第4,666,828号;4,683,202号;4,801,531号;5,192,659号および5,272,057号に説明されている方法論に従い、これらは本明細書に参照により組み込まれる。ポリメラーゼ鎖反応(PCR)を概してPCRプロトコール: A Guide To Methods And Applications, Academic Press, San Diego, CA (1990)のように行なった。フローサイトメトリーと併用したインサイチュ法(細胞内)PCRを細胞(特異的DNAおよびmRNA配列を含む)検出に使用できる(Testoni et al., Blood 1996, 87:3822)。RT−PCRの実施方法も当該技術分野において周知である。
【0284】
細胞培養:
HeLa細胞(アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション)をCzauderna, et al. (NAR, 2003. 31:670−82)に記載されているように培養した。ヒトケラチノサイトを10%FCS含有ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)で37℃で培養した。マウス細胞系、B16V(アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション)を、10%FCS含有ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)で37℃で培養した。培養条件は(Methods Find Exp Clin Pharmacol. 1997 May; 19(4):231−9)に記載されているとおりとした。
【0285】
それぞれの場合において、これらの細胞を約50,000細胞/ウェルの集密度で本明細書に記載されているように実験に供し、本発明による2本鎖核酸を20nMで添加し、それによりこの2本鎖核酸を独自の脂質1μg/mLを用いて下記のとおり複合体化した。
【0286】
低酸素症様病態の誘発:
必要な場合、低酸素症様病態を誘発するために細胞をCoCl2で次のとおり処置した:siRNAトランスフェクションを10cmプレート(30〜50%密度)内でCzauderna et al., 2003; Kretschmer et al., 2003によって記載されているように行なった。簡単に述べると、血清非含有培地中のGBと脂質の複合体(10倍濃縮)を完全培地中の細胞に添加することによりsiRNAのトランスフェクションを行なった。総トランスフェクション容積は10mLであった。特に指示しない限り、脂質の最終濃度は1.0μg/mL;siRNAの最終濃度は20nMであった。溶解の24時間前に組織培養培地にCoCl2(100μM)を直接添加して低酸素反応の誘発を実行した。
【0287】
細胞抽出体の調製および免疫ブロット法
細胞抽出体の調製および免疫ブロット法分析を基本的に記載されているとおりに行なった(Klippel et al. Mol Cell Biol, 1998. 18:5699−711; Klippel, A., et al., Mol Cell Biol, 1996. 16:4117−27)。
【実施例1】
【0288】
siRNA化合物のインビトロ試験
6ウェルプレートに、ウェル当たり約1.5〜2×105試験細胞(ヒト遺伝子を標的とするsiRNAに対するHeLa細胞および/もしくは293T細胞、およびラット/マウス遺伝子を標的とするsiRNAに対するNRK52細胞および/もしくはNMUMG細胞)を播種した(70〜80%集密)。
【0289】
24時間後、5nMまたは20nMの最終濃度でLipofectamine(登録商標)2000試薬(Invitrogen)を使用して、細胞をsiRNA化合物と共にトランスフェクションした。この細胞を、CO2インキュベーターで37℃で72時間インキュベートした。
【0290】
トランスフェクションの陽性対照として、PTEN−Cy3標識siRNA化合物を使用した。使用した追加の陽性対照は平滑端19mer siRNA、すなわちx=y=19であり、式中ZとZ’はいずれも不在であった。このsiRNAはリン酸化されておらず、アンチセンス鎖とセンス鎖の両方の糖残基2位で修飾されたリボヌクレオチドを交互に有し、この2位部分はメトキシ(2’OMe)であり、このアンチセンス鎖の5’末端と3’末端のリボヌクレオチドの糖残基は修飾されており、センス鎖の5’末端と3’末端のリボヌクレオチドの糖残基は修飾されていない。
【0291】
siRNA活性の陰性対照としてGFP siRNA化合物を使用した。
【0292】
トランスフェクションの72時間後、細胞をハーベストし、細胞からRNAを抽出した。蛍光顕微鏡法により、トランスフェクション効率を試験した。
【0293】
特異的な好ましいsiRNA構造を用いた遺伝子発現の阻害%を、内在性遺伝子を発現する細胞における標的遺伝子の定量PCR分析を用いて測定する。概して、インビトロ試験用に選択された特異的配列を有するsiRNAは、ヒトおよび2種目(ラットまたはウサギ遺伝子など)に対して特異的であった。いくつかの実施例では、これらのRNA配列を有するsiRNAを用いて類似した結果が得られ、本明細書に記載されているように修正される。本明細書で試験したsiRNAオリゴマーは図4、米国特許出願第第11/978,089号(それらの全体が本明細書に参照により組み込まれる)の表Bのオリゴヌクレオチドを含むsiRNA化合物から選択され、配列番号97〜68654として表される。本明細書で試験したsiRNAオリゴマーは、米国特許出願第またはPCT国際公開特許第11/207119号、同第11/811,112号、同第11/655636号、PCT/イスラエル特許第2008/000797号、PCT/イスラエル特許第2008/000874号、PCT/イスラエル特許第2009/000053号、PCT/イスラエル特許第2009/000302号(それらの全体が本明細書に参照により組み込まれる)にも開示されている。
【実施例2】
【0294】
Cy3標識DDIT4_1 siRNAの中耳/内耳送達経路。
本試験の目的は次のとおりであった:治療オリゴヌクレオチドの中耳/内耳への局所的、非侵襲的送達手順を確立すること。
【0295】
医薬組成物をラット右外耳道(REAC)へ滴下後の、siRNA DDIT4−Cy3の蝸牛構造内分布の一時的パターンを推定すること。
【0296】
試験した物質はRTP801(DDIT4_1−Cy3)(センス鎖:GUGCCAACCUGAUGCAGCU;アンチセンス鎖:AGCUGCAUCAGGUUGGCAC)に対するCy3標識siRNAであった。
【0297】
試験材料の詳細:2本鎖Cy3標識19mer siRNA、Cy3はアンチセンス鎖3’末端にdTヌクレオチドを介して結ばれる。センス鎖とアンチセンス鎖の両鎖において2’−OMe修飾を交互に、アンチセンス鎖のすべての奇数ヌクレオチドとセンス鎖のすべての偶数ヌクレオチド上に組み込む。無菌条件下で、42.43mgのDDIT4_1−Cy3粉末剤(BioSpring)を2.1mL無菌再蒸留水中に溶解し、透明な20mg/mL(1.5mM)溶液を作製する。この溶液を使用時まで80℃で保存した。製剤化(製剤化化合物)無菌10mg/mL Cy3DDIT4_1のピロゲンを含まない20%無菌グリセロール溶液。
対照物質(1つ以上)(陽性/陰性対照およびビヒクルなど)
ビヒクル−ピロゲンを含まない20%無菌グリセロール溶液。
試験系:雄性ラット、10〜14週齢、体重200〜220g
【0298】
実験設計:本試験は、下表2に記載するように、5つの実験群を含んだ:実験群I〜IV群−(siRNA(DDIT4_1−Cy3)グリセロールベースの点耳剤/ラット3匹/時点で処置)およびV群(a;bおよびc)−ラット3匹/時点(20%グリセロールで処置した対照群)。ラットを単siRNA(DDIT4_1−Cy3)グリセロールベースまたは20%グリセロール単独の点耳剤(37℃に加温;片耳のみ処置:a.d.=aurio dexrta=右耳(右外耳道:REAC)/a.s. aurio sinister=左耳を非処置対照として使用)で次のように処置した。
【0299】
I〜IV群:用量レジーム:100μg/10μL/耳の20%グリセロール/時点、投与経路:REAC ラット3匹/時点。
【0300】
V群(a〜c):REAC 10μLの20%グリセロール単独処置対照。
表2:試験設計
【表2】

【0301】
投与用の試験物質と対照物質の調製:1mLの100%グリセロールと4mLピロゲン非含有水を30分間以上反転して混合した。
【0302】
麻酔:ラットをエクイセシン4mL/kg体重で麻酔した。
【0303】
右外耳道(REAC)送達:10μL試料容積(加温したグリセロールベースの点耳剤、37℃)をピペット鈍端を用いてゆっくりと外REACに滴下した。この容積をそれぞれの右耳に送達した(試験設計によるI〜IV群)。REAC滴下中および滴下後、ラットを観察し、意識回復後にケージに戻した。
【0304】
予定した安楽死:全群のラットを本試験設計により安楽死させた(表2、終了時点)。
【0305】
終了工程:心臓穿刺および採血により行なった;さらなるsiRNA血液検出分析(予備)用に血清/血漿を集めて保存した(−20℃)。
【0306】
組織収集:ラットを屠殺した。左右の側頭骨(蝸牛など)を全動物から穏やかにハーベストし;ならびに下記のとおり骨性蝸牛を調製して凍結切片用に処理した。
【0307】
凍結切片のための組織包埋プロトコール
せん孔した骨性蝸牛:蝸牛膜の蝸牛頂を固定剤(4%PFAのPBS溶液、pH7.2〜7.4)中に置き、ローター上で回転しながら、室温で1.5時間インキュベートした。この試料を回転しながらPBSで3回、各5分間洗浄した。この骨性蝸牛を10%EDTA/PBS(pH7.2〜7.4)中で一晩以上、4℃で回転しながら脱灰した。鉗子/シリンジ針により骨性蝸牛上で穏やかに押して脱灰を確定した。脱灰にさらに長い時間が必要とされる場合、脱灰溶液(新規の10%EDTAのPBS溶液)を変更した。
【0308】
浸透工程:10%および30%ショ糖のPBSストック溶液を調製した。この組織をPBS(pH7.2〜7.4)中で2回、各5分間リンス後、組織ローター上で回転しながら室温で10%ショ糖中で30分間洗浄した。この組織を室温で回転しながら10:30%ショ糖の2:1溶液中で30分間洗浄後、室温で回転しながら10:30%ショ糖の1:1溶液中で30分間洗浄し、次いで室温で回転しながら10:30%ショ糖の1:2溶液中で30分間、および最後に4℃で30%ショ糖中で回転しながら一晩洗浄した。
【0309】
この蝸牛をOCT脱気(デシケーター中で30分)して管内に移し、バイアルを4℃で一晩回転しながら維持した。
【0310】
この蝸牛をOCT中に置き、包埋用鋳型の底と平行な蝸牛軸を介して仮想平面を並べることにより配向してから、凍結切片化のためにクリオスタットに配置した。
【0311】
検討:
siRNA送達を蛍光顕微鏡法とデジタル画像を用いて検討した。組織学的(顕微鏡的)評価により特定の蝸牛構造内の明確な蛍光シグナルが示された場合のみ、組織断片(蝸牛)を陽性(すなわち、移入したCy3 DDIT4_1 siRNAの取り込みに成功した)とみなす。背景DAPI染色により、蝸牛組織(解剖学的または局所解剖学的)構造の同定を補助した。組織学的評価が群内で一貫性を示した場合(すなわち時点、経時変化など)、内耳送達を陽性とみなした。
【0312】
図1は、点耳剤(20%グリセロール中で製剤化されたCy3標識siRNAを含む)適用後の、コルチ器頂回転中らせん神経節(コルチ神経節)へのCy3標識DDIT4 siRNAの送達を示す。上パネルは40倍のファロイジン標識細胞(左パネル)、明視野(BF、右パネル)およびそのマージ(中央パネル、M)である。下パネルは60倍のファロイジン標識細胞(左パネル)、明視野(BF、右パネル)およびそのマージ(中央パネル、M)である。点耳剤適用(Cy3標識DDIT4 siRNAの20%グリセロール溶液10μLの100μg)から3日後、このラットを4%PFAで潅流した。側頭骨を除去し、骨性蝸牛を切開した。アクチンフィラメントに結合するAlexa488標識ファロイジンでコルチのホールマウントを調製した。siRNA送達を共焦点顕微鏡検査およびデジタル画像を用いて検討した。組織学的(顕微鏡的)評価により特定の細胞または構造内に明確な蛍光シグナルが示された場合のみ、組織断片を陽性(すなわち、移入したCy3 DDIT4 siRNAの細胞内取り込みに成功した)とみなした。
【0313】
図2はコルチ器の基底回転、第2回転および頂回転中の外有毛細胞、内有毛細胞および支持細胞の3列におけるCy3標識DDIT4 siRNA送達を示す。点耳剤適用(Cy3標識DDIT4 siRNAの20%グリセロール溶液10μLの100μg)から3日後、Cy3標識DDIT4 siRNA送達を決定した。
【0314】
図3はラット聴覚上皮へのCy3標識DDIT4 siRNA送達を示す。上パネルは切開した(4%PFA潅流)ラット骨性蝸牛である。下パネルは聴覚上皮の基底回転、第2回転および頂回転へのCy3標識DDIT4 siRNA送達を示す。
【実施例3】
【0315】
ラット内耳の製剤化したCy3−DDIT4_1 siRNAの非侵襲的送達評価
試験材料の詳細:2本鎖Cy3標識19mer DDIT4_1 siRNA、Cy3は余分な‘dT’ヌクレオチドを介してアンチセンス鎖の3’末端に結ばれている。センス鎖とアンチセンス鎖の両方が、アンチセンス鎖のすべての奇数ヌクレオチド上およびセンス鎖のすべての偶数ヌクレオチド上の2’OMe糖修飾リボヌクレオチドを交互に組み込む。
【0316】
3つの異なる製剤を試験した:
製剤1:100μg Cy3 DDIT4 siRNAの10μL 30%グリセロール溶液。
製剤2:100μg Cy3 DDIT4 siRNAの10μL PBS溶液。
製剤3:100μg Cy3 DDIT4 siRNAの10μL 20%鉱油(v/v)、40%プロピレングリコール(v/v)および10%エタノール(v/v)溶液。
【0317】
右外耳道(REAC)送達:10μL試料容積(製剤化し加温した点耳剤、37℃)をピペット鈍端を用いてゆっくりと外REACに滴下した。この容積を右耳に送達した。REAC滴下中および滴下後、ラットを反対側で40分間保ち、回復後にラットのケージに戻した。
【0318】
組織収集:ラットを断頭した。全動物から両側の頭骨を穏やかにハーベスト後、10%中性緩衝ホルマリンでさらに1時間固定した。その後、骨性蝸牛を切開してから、Alexa488−ファロイジン免疫染色、コルチ器のホールマウント調製およびDAPI染色を用いた反対側の染色を行なった。
【0319】
siRNA送達を蛍光顕微鏡法およびデジタル画像を用いて検討した。組織学的(顕微鏡的)評価により特定の蝸牛構造内で明確な蛍光シグナルが示された場合のみ、組織断片(コルチ器)を陽性(すなわち、Cy3 DDIT4_1 siRNA送達に成功した)とみなした。背景DAPI染色を用いて蝸牛組織構造を同定した。組織学的評価がコルチ器の全回転部分(基底回転、第2回転、頂回転)で一貫性があった場合、内耳送達を陽性とみなした。
【0320】
結果:30%グリセロール(製剤1)または20%鉱油(v/v)、40%プロピレングリコール(v/v)および10%エタノール(v/v)(製剤3)を点耳剤を用いて適用後、内耳蝸牛構造内へのsiRNA送達陽性を検出した。コルチ器の全回転部分およびらせん神経節が100μg量で標識されたが、鉱油製剤のシグナルはグリセロール製剤より弱かった。
【実施例4】
【0321】
シスプラチン投与後のラット内耳p53タンパク質発現レベルの誘発性ノックダウンの点耳剤によるQM5 siRNA処置
この実験の目的は、QM5 siRNA(ラットsiRNA標的ラットp53)含有点耳剤で処置したラット内耳(蝸牛)中のシスプラチン誘発性p53タンパク質のノックダウンを検討することであった。
【0322】
実験群I群:QM5 siRNA(センス鎖:GAAGAAAAUUUCCGCAAAA;アンチセンス鎖:UUUUGCGGAAAUUUUCUUC)で1回処置した:点耳剤(ErD)により用量100μg/30%グリセロール/10μLを送達、経路:REAC;1日目、シスプラチンの初回投与前にQM5 siRNA処置を実施した。反対側の横向きの耳(左)を未処置対照とした。アンチセンス鎖とセンス鎖の両方の糖残基2位で修飾された交互のリボヌクレオチド(この2位部分はメトキシ(2’OMe糖修飾)である)としてQM5 siRNAを設計した。
【0323】
実験群II群:未処置の正常な対照ラット
実験設計:
【表3】

【0324】
測定変数:体重、血清クレアチニンおよびELISAによるP53タンパク質シグナル。
【0325】
P53タンパク質シグナル
シスプラチン対照群(試料2)のP53タンパク質シグナルレベルは未処置群(試料1)と比較して49%上昇を示した。すなわち、シスプラチン処置ラットは、未処置ラットに対して蝸牛中p53レベル上昇を示した。QM5 siRNA処置によりp53シグナルが2.69に低下し、これは未処置群と比較して12%高いのみであった。
表3:シスプラチン投与後のラット内耳p53タンパク質発現レベルの誘発性ノックダウンの点耳剤によるQM5 siRNA処置
【表4】

【実施例5】
【0326】
ラットにおけるL−DNA構造における蛍光標識siRNAの内耳送達。
試験材料の詳細:無菌10mg/mL Cy3−AS−CASP2_4−Struc−L−DNA(アンチセンス鎖における交互の2−O−メチル化およびセンス鎖18位におけるL−DNAヌクレオチド;センス:GCCAGAAUGUGGAACUCCUアンチセンス:AGGAGUUCCACAUUCUGGC)またはDDIT4_1−Cy3.5(センス鎖およびアンチセンス鎖中の交互の2−O−メチル化)のピロゲンを含まない30%無菌グリセロール溶液。Cy3はアンチセンス鎖の3’末端に結ばれている。
【0327】
概要:本試験は表4に記載するように実験群4群を含んだ:実験群I〜IV群(siRNA(DDIT4_1−Cy3.5またはCy3−AS−CASP2_4−Struc−L−DNA)グリセロールベースの点耳剤で処置)。ラットを次のとおり単回のsiRNAの点耳剤(ErD)で処置した。
【0328】
I〜IV群:用量レジーム:100μg/10μL/耳の30%グリセロール投与経路:REAC(右外耳道))/片耳(I群およびIII群)およびREAC/LEAC(右/左外耳道)/両耳(II群およびIV群)。
表4:試験設計
【表5】

【0329】
右外耳道(REAC/片耳)送達:10μL試料容積(加温したグリセロールベースの点耳剤、37℃)をピペット鈍端を用いてゆっくりとREACに滴下した。この容積をそれぞれ右耳に送達した(試験設計によるI群およびIII群)。REAC滴下中および滴下後、反対側を下側にしてラットを横向きに寝かせ(左向き)、40分間保ち、次いで回復後にラットのケージに戻した
【0330】
左右両耳の外耳道(REAC/LEAC/両耳)送達:10μL試料容積(加温したグリセロールベースの点耳剤、37℃)をピペット鈍端を用いてゆっくりと外REACに滴下した。この容積をそれぞれの右耳(試験設計によるII群およびIV群)に送達した。REAC滴下中および滴下後、反対側を下側にしてラットを横向きに寝かせ(左向き)、30分間保った後、右向きに変えて、10μL試料容積(加温したグリセロールベースの点耳剤、37℃)をピペット鈍端を用いてLEAC内にゆっくりと滴下してさらに30分間保ち、回復後にラットのケージに戻した
【0331】
組織収集:ラットを断頭した。左右の側頭骨(蝸牛など)を集めて4%PFA固定後、コルチのホールマウント染色を実施した。
【0332】
検討:siRNA送達を光学顕微鏡検査およびデジタル画像を用いて検討した。組織学的(顕微鏡的)評価が特異的な蝸牛構造内で明確な蛍光シグナルを示した場合のみ、組織断片(蝸牛)を陽性(すなわち、siRNA送達に成功した)とみなした。背景DAPI染色を用いて蝸牛組織構造の同定を補助した。
【0333】
結果:点耳剤によるsiRNA適用後の内耳蝸牛構造へのsiRNA送達陽性が両siRNA分子(交互の構造のCy3.5標識DDIT4、およびL−DNA構造のCy3標識Casp2_4)において観察された。片耳適用(右耳)により送達されたsiRNAは濃度100μgの30%加温グリセロール溶液で、コルチ器の全回転部分およびらせん神経節において検出された。
【実施例6】
【0334】
siRNA定量化により決定した、点耳剤形態を用いたラット内耳組織へのsiRNA送達に対するグリセロール濃度の影響。
6−A:ラットを点耳剤(200μg siRNA/10μL PBS、5%、10%、20%または30%グリセロール含有)の片耳適用に供した。siRNA濃度は10mg/mLであり、試験したsiRNA分子はCASP2_mRNA(アンチセンス鎖中に2’OMe糖修飾リボヌクレオチドを交互に有し、センス鎖18位にL−DNAヌクレオチドを有するCASP_4 siRNA分子、センス配列:GCCAGAAUGUGGAACUCCUアンチセンス配列:AGGAGUUCCACAUUCUGGC)に特異的であった。点耳剤を適用してから4時間後に蝸牛組織を切開し、組織中siRNA量を定量PCRを用いて定量的に測定した。この実験で得られた定量結果を下表5に要約する。
【0335】
これらの結果により、点耳剤による蝸牛へのsiRNA送達は点耳剤形態が担体として5〜20%グリセロールを含有時に有効であったことが示された。点耳剤による蝸牛へのsiRNA送達は点耳剤形態が担体として10%グリセロールを含有時に最も有効であった。
表5:
【表6】

【0336】
6−B:上の実験を、動物のシスプラチン処置を除いて同一形式で行なう。10の実験群(各群ラット6匹)は次のとおりである:群を単回のsiRNA投与で処置する:用量100mg/10mLのPBS、5%、10%、20%、25%または30%グリセロール溶液を点耳剤(ErD)で経路:REACにより送達した。1日目(試験開始)、シスプラチン初回投与(シスプラチン用量レジーム:4mg/kg連日;投与経路:腹腔内投与;注射容積:250g体重ラットに対し1mL)の24時間前にsiRNA処置を実施する。ラットを3回の連続したシスプラチン腹腔内注射(ストック濃度:50mg/mL;LD50腹腔内用量6.4mg/kg)に供する。試験開始後5日目、最終シスプラチン投与から24時間後に終了工程を実施する。試験群と同一様式で、対照群をビヒクルErD 10μLの単回適用で処置する。1つの実験群は未処置インタクト対照である。予定した安楽死を本試験設計により実施する。SiRNAはTP53BP2(ASPP2)、BNIP3、CASP2、NOX3、HRK、RAC1、DDIT4、DDIT4L、NOX4、HTRA2、CAPNS1(カルパイン)、ID3、HES1、HES5、CDKN1BおよびID3遺伝子を標的とする。
【実施例7】
【0337】
聴力損失のチンチラモデル
(i)カルボプラチン誘発性またはシスプラチン誘発性の、蝸牛の有毛細胞死のチンチラモデル
チンチラの左耳に、5%、10%、12.5%、15%、20%、25%または30%グリセロール溶液または他の浸透エンハンサー中で特異的siRNAを直接投与することにより、各チンチラを前処置する。プラセボとして、各動物の右耳にグリセロールまたは他のビヒクル/薬剤(最終濃度は同一)を与える。本発明の特異的siRNA化合物の投与から2日後、動物を、カルボプラチン(75mg/kg腹腔内)またはシスプラチン(30分にわたる13mg/kgの腹腔内注入)で処置する。
これらのチンチラを屠殺後(カルボプラチン処置の2週間後)、左耳(siRNA処置)および右耳(生理食塩水処置)の、内有毛細胞(IHC)および外有毛細胞(OHC)の細胞死%を計数する。内有毛細胞(IHC)および外有毛細胞(OHC)の細胞死%は、右耳(ビヒクル対照)よりも、左耳(siRNA処置)の方が低いことが計数される。
【0338】
(ii)音響誘発性の蝸牛の有毛細胞死のチンチラモデル
音響外傷モデルにおける特異的siRNAの活性を、チンチラにおいて研究する。動物を、2時間半105dBで、4kHzを中心とした騒音のオクターブ帯域に曝露する。騒音に曝露させたチンチラの左耳を、10μLのグリセロール溶液中の30μgのsiRNAで前処置し(音響外傷の48時間前)、右耳は、ビヒクル(10%グリセロール)で前処置する。複合活動電位(CAP)は、蝸牛から伝達される神経活動を測定するための、便利かつ信頼性のある電気生理学的方法である。音刺激(クリック音またはトーンバーストなど)が突然作動するときに生成される局所電位を検出するために、電極を蝸牛の基底付近に設置して、CAPを記録する。音響外傷の2週間半後、それぞれの耳の機能状態を評価する。具体的には、siRNAで処置した耳の閾値が、未処置(ビヒクル対照)耳よりも低い(優れている)かどうかを決定するために、正円窓から記録された複合活動電位の平均閾値を、音響外傷の2週間半後に測定する。加えて、内外有毛細胞消失量を、siRNAで処置した耳および対照耳において測定する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)内耳および/または中耳における耳障害に関連したヒト標的遺伝子の発現を阻害する、治療に有効な量の少なくとも1個のオリゴヌクレオチド化合物と;
(b)0.1%〜約30%(v/v)グリセロールと;
(c)少なくとも1個の薬学的に許容可能な賦形剤もしくは担体、またはそれらの混合物と、
を含む耳用医薬組成物。
【請求項2】
前記標的遺伝子がTP53BP2(ASPP2)、BNIP3、CASP2、NOX3、HRK、RAC1、DDIT4、DDIT4L、NOX4、HTRA2、CAPNS1(カルパイン)、ID3、HES1、HES5、CDKN1B、およびID3のうちの1つ又は複数から選択される、請求項1に記載の耳用医薬組成物。
【請求項3】
グリセロールを最終濃度で前記組成物の約5体積%〜約25体積%含む、請求項1または2に記載の耳用医薬組成物。
【請求項4】
グリセロールを最終濃度で前記組成物の約7体積%〜約13体積%含む、請求項3に記載の耳用医薬組成物。
【請求項5】
グリセロールを最終濃度で前記組成物の約10体積%含む、請求項4に記載の耳用医薬組成物。
【請求項6】
前記オリゴヌクレオチド化合物がアンチセンス、非修飾siRNA、化学的に修飾されたsiRNA、shRNA、アプタマー、リボザイム、dsRNAまたはDNA化合物からなる群から選択される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の耳用医薬組成物。
【請求項7】
前記オリゴヌクレオチド化合物が化学的に修飾されたsiRNAである、請求項6に記載の耳用医薬組成物。
【請求項8】
前記siRNAの構造が:
5’ (N)x−Z 3’ (アンチセンス鎖)
3’ Z’−(N’)y−z” 5’ (センス鎖)
に表され
前記NとN’が、それぞれ修飾されていなくても修飾されていてもよいリボヌクレオチドであるか、または非定型的部分であり;
前記(N)xと(N’)yはそれぞれ、連続するNもしくはN’がそれぞれ共有結合により次のNもしくはN’に連結しているオリゴヌクレオチドであり;
前記ZとZ’は存在しても存在しなくてもよいが、存在する場合は、独立してそれが存在する鎖の3’末端で共有結合している1〜5個の連続するヌクレオチドであり;
前記z”は存在しても存在しなくてもよいが、存在する場合は、(N’)yの5’末端で共有結合しているキャッピング部分であり;
前記xとyがそれぞれ独立して18〜40の整数であり;
前記(N’)y配列が(N)x配列に実質的に相補的であり;
前記(N)xが耳障害に関連する標的遺伝子のmRNA中の約18〜約40個の連続するリボヌクレオチドに実質的に相補的であるアンチセンス配列を含む、
請求項7に記載の耳用医薬組成物。
【請求項9】
0.1mg/mL〜100mg/mLの少なくとも1個のオリゴヌクレオチド化合物を含む、請求項1に記載の耳用医薬組成物。
【請求項10】
1mg/mL〜50mg/mLの少なくとも1個のオリゴヌクレオチド化合物を含む、請求項9に記載の耳用医薬組成物。
【請求項11】
5mg/mL〜20mg/mLの少なくとも1個のオリゴヌクレオチド化合物を含む、請求項9に記載の耳用医薬組成物。
【請求項12】
前記組成物が局所的非侵襲的投与用に設計される、請求項1〜11のいずれか一項に記載の耳用医薬組成物。
【請求項13】
前記組成物が外耳道への滴下、沈着または噴霧用に設計される、請求項12による耳用医薬組成物。
【請求項14】
前記組成物がクリーム、発泡剤、泥膏、軟膏、エマルション、液体溶液、ゲル、スプレー、懸濁液、マイクロエマルション、ミクロ球体、マイクロカプセル、ナノ球体、ナノ粒子、脂質小胞、リポソーム、重合体小胞、パッチ、生体挿入剤として製剤化される、請求項13による耳用医薬組成物。
【請求項15】
前記組成物が点耳剤として製剤化される、請求項14による耳用医薬組成物。
【請求項16】
耳障害治療のための、請求項1〜15のいずれか一項に記載の耳用医薬組成物の使用。
【請求項17】
前記耳障害が中耳障害および/または内耳障害から選択される、請求項16に記載の使用。
【請求項18】
耳障害を患うまたは耳障害の危険性がある対象を治療する方法であって、前記方法は、
治療に有効な量の少なくとも1個のオリゴヌクレオチド化合物と、浸透エンハンサーと、薬学的に許容可能な賦形剤もしくは担体、またはそれらの混合物とを含む耳用医薬組成物を、対象の外耳道へ局所投与することを含み、
それにより対象の内耳および/または中耳障害に関連したヒト標的遺伝子の発現を低減させる方法。
【請求項19】
対象の聴力損失を軽減する方法であって、前記方法は、
(a)聴力損失に関連したヒト標的遺伝子の発現を阻害する、治療に有効な量の少なくとも1個のオリゴヌクレオチド化合物と、(b)浸透エンハンサーと、(c)薬学的に許容可能な賦形剤もしくは担体、またはそれらの混合物とを含む耳用医薬組成物を、対象の外耳道へ局所投与することを含み、
それにより対象の聴力損失を軽減させる方法。
【請求項20】
前記聴力損失が中毒性聴力損失、音響誘発性聴力損失、または加齢関連聴力損失から選択される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記耳毒性物質がシスプラチンまたはシスプラチン類似体である、請求項20による方法。
【請求項22】
前記標的遺伝子が、TP53BP2(ASPP2)、BNIP3、CASP2、NOX3、HRK、RAC1、DDIT4、DDIT4L、NOX4、HTRA2、CAPNS1(カルパイン)およびID3のうちの1つ又は複数から選択される、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
対象の耳における耳有毛細胞再生を誘導する方法であって、前記方法は、
(a)耳の有毛細胞消失に関連したヒト標的遺伝子の発現を阻害する、治療に有効な量の少なくとも1個のオリゴヌクレオチド化合物と、(b)浸透エンハンサーと、(c)薬学的に許容可能な賦形剤もしくは担体、またはそれらの混合物とを含む耳の医薬組成物を、対象の外耳道へ局所投与することを含み、
それにより対象の耳における有毛細胞再生を誘導する方法。
【請求項24】
前記標的遺伝子が1つ以上のHES1、HES5、CDKN1BおよびID3から選択される、請求項23による方法。
【請求項25】
前記耳有毛細胞が外有毛細胞および/または内有毛細胞である、請求項23による方法。
【請求項26】
前記浸透エンハンサーがグリセロールである、請求項18〜25のいずれか一項による方法。
【請求項27】
前記グリセロールが、前記組成物の約0.1〜30%(v/v)の最終濃度で存在する、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記グリセロールが、前記組成物の約5〜25%(v/v)の最終濃度で存在する、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記グリセロールが、前記組成物の約7%〜約13%(v/v)の最終濃度で存在する、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
前記グリセロールが、前記組成物の約10%(v/v)の最終濃度で存在する、請求項27に記載の方法。
【請求項31】
前記オリゴヌクレオチド化合物がアンチセンス、非修飾siRNA、化学的に修飾されたsiRNA、shRNA、アプタマー、リボザイム、dsRNAまたはDNA化合物からなる群から選択される、請求項18または30に記載の方法。
【請求項32】
前記オリゴヌクレオチド化合物が化学的に修飾されたsiRNAである、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記siRNAが次に表す構造:
5’ (N)x−Z 3’ (アンチセンス鎖)
3’ Z’−(N’)y−z” 5’ (センス鎖)
を有し、
前記NとN’がそれぞれ修飾されていなくても修飾されていてもよいリボヌクレオチドであるか、または非定型的部分であり;
前記(N)xと(N’)yがそれぞれ、連続するNもしくはN’がそれぞれ共有結合により次のNもしくはN’に連結しているオリゴヌクレオチドであり;
前記ZとZ’は存在しても存在しなくてもよいが、存在する場合は、独立してそれが存在する鎖の3’末端で共有結合している1〜5個の連続するヌクレオチドであり;
前記z”は存在しても存在しなくてもよいが、存在する場合は、(N’)yの5’末端で共有結合しているキャッピング部分であり;
前記xとyがそれぞれ独立して18〜40の整数であり;
前記(N’)y配列が(N)x配列に実質的に相補的であり;
前記(N)xが、耳障害に関連した標的遺伝子mRNA中の約18〜約40個の連続するリボヌクレオチドと実質的に相補的なアンチセンス配列を含む、
請求項31に記載の方法。
【請求項34】
前記組成物が0.1mg/mL〜100mg/mLの少なくとも1個の化学的に修飾されたsiRNAを含む、請求項32または33に記載の方法。
【請求項35】
前記組成物が1mg/mL〜50mg/mLの少なくとも1個の化学的に修飾されたsiRNAを含む、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記組成物が局所的非侵襲的投与用に設計される、請求項18〜35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記組成物が外耳道内への滴下、沈着または噴霧用に設計される、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記組成物がクリーム、発泡剤、泥膏、軟膏、エマルション、液体溶液、ゲル、スプレー、懸濁液、マイクロエマルション、ミクロ球体、マイクロカプセル、ナノ球体、ナノ粒子、脂質小胞、リポソーム、重合体小胞、パッチ、生体挿入剤として製剤化される、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記組成物が点耳剤として製剤化される、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記点耳剤が対象の耳への投与前に35℃〜約38℃に昇温される、請求項18〜36または39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記点耳剤が対象の片耳へ投与される、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記点耳剤が対象の耳に約5分間〜約60分間浸透することを可能にする、請求項41に記載の方法。

【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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【図47】
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【図48】
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【図49】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2011−522036(P2011−522036A)
【公表日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−512270(P2011−512270)
【出願日】平成21年6月7日(2009.6.7)
【国際出願番号】PCT/IL2009/000570
【国際公開番号】WO2009/147684
【国際公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【出願人】(509294070)クォーク ファーマシューティカルズ インコーポレーティッド (8)
【氏名又は名称原語表記】QUARK PHARMACEUTICALS,INC.
【住所又は居所原語表記】6501 Dumbarton Circle,Fremont,California U.S.A.
【Fターム(参考)】