説明

肛門又は陰部周辺清浄用シート

【課題】便と便の色の拭き取り性を向上させ、且つ泡を発生させにくい肛門又は陰部周辺清浄用シートを提供すること。
【解決手段】本発明の肛門又は陰部周辺清浄用シート1Aは、不織布で構成され、不織布全体に凸部2および凹部3が形成されている。肛門又は陰部周辺清浄用シート1Aは、非イオン性界面活性剤0.1〜1重量%、シリコーンオイル0.001〜0.1重量%及び水80〜99.9重量%を含有し、前記非イオン性界面活性剤がポリアルキレンオキサイド骨格を主鎖に有する非イオン性界面活性剤を90%以上含有する水系洗浄剤が、不織布1重量部に対し1〜10重量部になるように含浸されている。前記不織布は、セルロース系繊維20〜70重量%を含む不織布であり、坪量が20〜100g/m2、ウエット時の厚みが0.45〜1.0mm、ウエット時の空隙率が0.02〜0.2g/cm3である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不織布に水系洗浄剤が含浸された肛門又は陰部周辺清浄用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
赤ちゃんや被介護者の使い捨ておむつ等の交換時に、おしりや排泄部に付いた便や尿等の汚れを拭き取るため、ウェットタイプの使い捨てのシートである所謂おしり拭き用シートが汎用されている。また、生理用ナプキン交換時に排泄部の清浄用として、ウェットタイプの使い捨てのシートも知られている。
【0003】
特許文献1には、便等の拭き取り性向上のために、レーヨン繊維と親水化ポリエチレンテレフタレート繊維及び熱溶融性樹脂からなる繊維ウェブとが三次元的に交絡された不織布に、水中油分散型エマルジョンを含浸させたウェットティッシュが開示されている。
【0004】
しかしながら、引用文献1のウェットティッシュを、例えば、使い捨ておむつの交換時に使用した場合、ベタベタの軟便や水様便、下痢便では便の色が肌につき、何回拭いても色が取りきれず、便の拭き取り性ついて改善の余地があった。ここで、便の色の主原因は、ヘモグロビン代謝物であるビリルビンであり、これまで、便の色、即ちビリルビンに作用して便を拭き取ることに関して、満足すべきものは提供されていない。
【0005】
引用文献2には、水流交絡の不織布に、水系洗浄剤組成物を含浸させてなる皮膚洗浄用シートであって、該水系洗浄剤組成物は、非イオン性界面活性剤及び油分を含有したメイクアップや皮脂汚れを除去する、特に顔洗浄用の皮膚洗浄用シートが開示されている。引用文献2で洗浄性能の優れたシート材として具体的に開示された実施例では、シートとしてはメイクアップ汚れへの高い洗浄力を得るために、繊度が非常に細い0.5d以下の合成繊維が用いられ、また、シートに浸透される水系洗浄剤成分中の非イオン性界面活性剤量は多く配合されている。
【0006】
しかしながら、引用文献2のシートを肛門又は陰部周辺の便の拭き取りに使用した場合、繊度が細い合成繊維でシートが構成されているため、ウェット時の繊維間空隙が小さく、便の様な多量の排泄物がシーと内に取り込まれにくく、容易に拭き取ることができない。また、界面活性剤が多く配合されているため、使用感触が良くなく、また泡立ちを多く発生させてしまう。メイクアップ汚れ落としでは泡立てて使用するタイプのものもあり、泡立ちに関しては課題とならないし、大抵は洗浄対象とするメイクアップが強い油性であることから、泡も立ちにくい。しかし、おしり拭き用シートとしては、赤ちゃんの肌の中でも特にデリケートな肛門又は陰部周辺を、洗剤で洗い落とすというイメージを母親に抱かせてしまう恐れがあり、泡立ちは好ましくない。
【0007】
【特許文献1】特開2006−345997号公報
【特許文献2】特開2001−314342号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明の目的は、便と便の色の拭き取り性を向上させ、且つ泡を発生させにくい肛門又は陰部周辺清浄用シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、水系洗浄剤が、不織布1重量部に対し1〜10重量部含浸された肛門又は陰部周辺清浄用シートであって、前記水系洗浄剤は、非イオン性界面活性剤0.1〜1重量%、シリコーンオイル0.001〜0.1重量%及び水80〜99.9重量%を含有し、前記非イオン性界面活性剤がポリアルキレンオキサイド骨格を主鎖に有する非イオン性界面活性剤を90%以上含み、前記不織布は、セルロース系繊維20〜70重量%を含む不織布であり、該不織布の坪量が20〜100g/m2、ウエット時の厚みが0.45〜1.0mm、ウエット時の空隙率が0.02〜0.2g/cm3であり、該不織布は凹凸又は開孔部を有する肛門又は陰部周辺清浄用シートを提供することにより前記目的を達成したものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の肛門又は陰部周辺清浄用シートによれば、ビリルビンに作用して便を拭き取ることにより、便の拭き取り性が向上すると共に、肛門又は陰部周辺清浄用シートに泡が発生しにくいので、赤ちゃんのデリケートな肌を洗剤で洗い落とすというイメージを母親に抱かせてしまう恐れもない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の肛門又は陰部周辺清浄用シートの好ましい一実施形態について、図1,図2に基づいて説明する。
【0012】
第1実施形態の肛門又は陰部周辺清浄用シート1Aは、図1,図2に示すように、不織布で構成され、不織布全体に凸部2および凹部3が形成されている。
第1実施形態の肛門又は陰部周辺清浄用シート1Aには、非イオン性界面活性剤0.1〜1重量%、シリコーンオイル0.001〜0.1重量%及び水80〜99.9重量%を含有し、前記非イオン性界面活性剤がポリアルキレンオキサイド骨格を主鎖に有する非イオン性界面活性剤を90%以上含む水系洗浄剤が、不織布1重量部に対し1〜10重量部になるように含浸されている。
尚、第1実施形態の肛門又は陰部周辺清浄用シート1Aにおいては、水系洗浄剤は、シリカ0.0001〜0.01重量%を、更に含有している。
【0013】
水系洗浄剤に含有させる非イオン性界面活性剤としては、水系での使用であること及び肌に付いた便の色の拭き取り性を考慮すると、HLB8〜16のものが好ましい。HLB12〜15のものであると、該水系洗浄剤が良好な洗浄性能と安定性を両立し易くなるのでより好ましい。
【0014】
尚、HLBとは、親水性−親油性のバランス(Hydrophile−Lypophile Balance)を示す指標であり、本発明においては小田・寺村らによる次式を用いて算出した値を用いている。
【0015】
HLB=(Σ無機性値/Σ有機性値)×10
【0016】
上記非イオン性界面活性剤としては、ポリアルキレンオキサイド骨格を主鎖に有するものが全非イオン活性剤中90重量%以上含まれており、好ましくは95重量%以上、特に好ましくは100重量%である。特に、次の一般式(1)で表されるポリエチレングリコール高級脂肪酸エステル、次の一般式(2)で表されるポリオキシエチレンアルキルエーテル、次の一般式(3)で表されるポリオキシアルキレンアルキルエーテルが、皮膚に対する刺激がより低く、肌に付いた便の色の拭き取り性が高いため、好ましい。
【0017】
R1COO-(CH2CH2O)n-H (1)
(式中、R1COは炭素数4〜30の飽和又は不飽和のアシル基を示し、nは重量平均で1〜50の数を示す)
【0018】
式中、R1COは炭素数4〜30の飽和又は不飽和のアシル基を示し、特に炭素数10〜22のもの、例えばカプリノイル基、ラウロイル基、ミリストイル基、パルミトイル 基、ステアロイル基が好ましい。また、nは重量平均で1〜50の数を示し、特に10〜30が、肌に付いた便の色の拭き取り性がより高くなるので好ましい。
一般式(1)で表されるポリエチレングリコール高級脂肪酸エステルの例としては、ポリオキシエチレン(n=12)モノラウレート等が挙げられる。
【0019】
R2O-(CH2CH2O)n-H (2)
(式中、R2は炭素数4〜30の飽和又は不飽和のアルキル基を示し、R2は1級または2級アルコール、nは重量平均で1〜50の数を示す)
【0020】
式中、R2は炭素数4〜30の飽和又は不飽和のアルキル基を示し、特に炭素数12〜18のもの、例えばラウリル基、ミリスチル基、パルミチル基、ステアリル基、オレイル基が好ましい。また、nは重量平均で1〜50の数を示し、特に4〜10が、肌に付いた便の色の拭き取り性がより高くなるので好ましい。
一般式(2)で表されるポリオキシエチレンアルキルエーテルの例としては、ポリオキシエチレン(n=9)ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン(n=5)ラウリルエーテル等が挙げられる。
【0021】
R3O-(CH2CH2O)n-(CH2CH(CH3)O)m-H (3)
(式中、R3は炭素数4〜30の飽和又は不飽和のアルキル基を示し、R3は1級または2級アルコール、nは重量平均で0〜50の数を示し、mは重量平均で1〜50の数を示す)
【0022】
式中、R3は炭素数4〜30の飽和又は不飽和のアルキル基を示し、特に炭素数12〜22のもの、例えばラウリル基、ミリスチル基、パルミチル基、ステアリル基、オレイル基が好ましい。また、nは重量平均で0〜50の数を示し、特に4〜12が、肌に付いた便の色の拭き取り性がより高くなるので好ましい。また、mは重量平均で1〜50の数を示し、特に1〜10が、肌に付いた便の色の拭き取り性がより高くなるので好ましい。
一般式(3)で表されるポリオキシアルキレンアルキルエーテルの例としては、ポリオキシエチレン(n=7)ポリオキシプロピレン(n=2.5)ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン(n=7)ポリオキシプロピレン(n=4.5)ラウリルエーテル等が挙げられる。
【0023】
非イオン性界面活性剤は、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができ、組み合わせる場合には、特に式(1)〜(3)で示された構造のもののみで組合せることが好ましい。また、本発明の水系洗浄剤中にはイオン性界面活性剤を少量(例えば、0.5重量%以下)含めても良いが、非イオン性界面活性剤のみであることが、洗浄性と泡立ち抑制両立の観点から好ましい。
【0024】
上記シリコーンオイルは、消泡効果を付与するためのものであり、シリコーンオイルとしては、オイル型、オイルコンパウンド型、溶液型、粉末型、固形型、エマルジョン型及び自己乳化型等が挙げられ、特に、安全性の点から、食品添加物としても利用可能なエマルジョン型のシリコーンオイルが好ましい。また、上記シリコーンオイルとしては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル及びメチルハイドロジェンシリコーンオイル等のストレートシリコーンオイル並びに反応性シリコーンオイル及び非反応性シリコーンオイル等の変形シリコーンオイル等が挙げられ、安全性の点から、ノニオン系活性剤(例えば、ソルビタン脂肪酸エステル)で乳化したシリコーンオイルが好ましい。
【0025】
上記シリコーンオイルは、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0026】
上記シリカは、上記シリコーンオイルの消泡効果を安定させるためのものであり、シリカとしては、99%以上が二酸化珪素からなり、緻密な構造のA型シリカと、緩やかな構造のB型シリカが挙げられる。
【0027】
上記水系洗浄剤には、使用感触と肌に付いた便の色の拭き取り性を向上させる目的で多価アルコール又はグリコールエーテルを配合することができる。多価アルコールとしては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、イソプレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等が挙げられ;グリコールエーテルとしては、例えばエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコー ルモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル等が挙げられる。
【0028】
これらのうち、特にエチレングリコール、プロピレングリコール、イソプレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、1,3−ブチレングリコール、ソルビトール、ジエチレングリコールモノエチルエーテルが、使用感触の点から好ましく、更にプロピレングリコール、ジプロピレングリコールが、洗浄力(肌に付いた便の色の拭き取り性)及び低刺激性の点から好ましい。
【0029】
これらの多価アルコール及びグリコールエーテルは、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0030】
上記水系洗浄剤には、前記必須成分のほか、通常の洗浄剤組成物に用いられる成分、例えば保湿剤、殺菌剤、防腐剤、キレート剤、電解質物質、薬効剤、色素、香料、酸化防止剤、pH調整剤等を、本発明の効果を損なわない範囲で適宜配合することができる。
【0031】
また、上記水系洗浄剤には、スキンケア剤として、ショウキョウエキス、ユーカリエキス、チューベロースエキス、チョウジエキス、ユズエキス、メマツヨイグサエキス、サクラエキス、オクラエキス、ハマメリスエキス、アロエエキス、ヨーグルトエキス、ダイズエキス、シャクヤクエキス、カミツレエキス、クロレラエキス、キイチゴエキス、グレープフルーツエキス、アボガドエキス、ビルベリー葉エキス、オドギリソウエキス、ももの葉エキス、トレハロース、タンニン酸、ヒアルロン酸ナトリウム、ポリグルタミン酸、合成セラミド、等を使用することができる。
【0032】
上記水系洗浄剤における非イオン性界面活性剤の濃度は、0.1〜1重量%であり、0.2〜1重量%、特に0.3〜1重量%とするのが、肌に付いた便の色の拭き取り性や、べたつき、ヌメリ感等の使用感触の観点で好ましい。また、シリコーンオイルの濃度は、消泡性、使用感触及び系の安定性の面から、0.001〜0.1重量%であり、0.002〜0.1重量%、特に0.03〜0.08重量%とするのが好ましい。また、シリカの濃度は、消泡性を向上させるために、0.0001〜0.01重量%であり、0.0002〜0.01重量%、特に0.003〜0.008重量%とするのが好ましい。また、多価アルコール又はグリコールエーテルの濃度は、洗浄力(肌に付いた便の色の拭き取り性)、使用感触及び系の安定性の面から、1〜30重量%であり、2〜20重量%、特に5〜15重量%とするのが好ましい。また、水の濃度は、べたつき、 ヌメリ等の感等の使用感触の観点から、好ましくは、80〜99.9重量%、特に好ましくは85〜99.7重量%、更に好ましくは90〜99.5重量%である。
【0033】
上記不織布は、セルロース系繊維20〜70重量%を含むスパンレース不織布である。
尚、第1実施形態の肛門又は陰部周辺清浄用シート1Aにおいては、ポリエステル系繊維又はポリアセタール繊維15〜60重量%、及び熱融着性繊維10〜30重量%を、更に含んでいる。
上記不織布の坪量は20〜100g/m2、ウエット時の厚みは0.45〜1.0mm、ウエット時の空隙率は0.02〜0.2g/cm3である。
【0034】
上記不織布は、第1実施形態においては、セルロース系繊維、ポリエステル系繊維又はポリアセタール繊維、熱融着性繊維を混合してウェブを形成し、このウェブに水流交絡法により繊維同士の交絡をさせて得られる不織布であり、スパンレース不織布が好適に使用できる。上記不織布には、親水性や不織布強度、風合い等を考慮として、その他の繊維を含ませても良い。
【0035】
上記不織布に含まれるセルロース系繊維は、水系洗浄剤を良好に保持できる点から、不織布を構成する繊維として20〜70重量%含まれており、30〜60重量%含まれていることが充分な水系洗浄剤保持性の点から好ましい。セルロース系繊維としては、例えば、コットン、パルプ、麻等の天然セルロース系繊維や、レーヨン、リヨセル、テンセル、キュプラ等の再生セルロース系繊維などが挙げられる。スパンレース法での水流交絡による凹凸の形成性やシートの嵩高性を付与する点から、リヨセル繊維又はテンセル繊維を用いることが好ましい。
【0036】
肛門又は陰部周辺清浄用シート1Aに含まれるポリエステル系繊維又はポリアセタール繊維は、不織布に強度を付与する点から、不織布を構成する繊維として15〜60重量%含まれており、20〜50重量%含まれていることが好ましい。
ポリエステル系繊維としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどが挙げられる。ポリエステル系繊維及びポリアセタール繊維は、弾性や回復(復元)性があるため、水流により繊維を曲げて交絡させる過程で水流による曲げに対し戻ろうとする力が強く働き、結果として嵩高で空隙の大きな構造を作ることができる。ポリエステル系繊維又はポリアセタール繊維は、スパンレース法での水流交絡による凹凸の形成性及び水系洗浄剤の保持の点から、親水性であることが好ましい。繊維に親水性を付与する方法として、親水性の油剤をスプレーや浸漬法、ロールコート法により繊維表面に付着させることや、繊維の紡糸前の樹脂に親水性の成分を添加して練り込み、紡糸することで付与できる。親水油剤としては、アニオン系、カチオン系、両性系、ノニオン系の界面活性剤の様々な分子量のものを単独又は組み合わせて用いることができるが、特にスパンレース法により不織布を形成する場合は通常の親水化油剤は流れ落ちてしまうので、ウェットシートに用いる場合に含浸液の保持性や分散性が低下する。親水化の好ましい技術の例としては特開2007−31906号公報や特開2005−344260公報、特開2005−154975公報、特開2001−303450公報など水溶液に対して耐久性が付与した方法が挙げられる。
【0037】
上記不織布は、特に水系洗浄剤を良好に保持できる点から、セルロース系繊維の含有量の方が、ポリエステル系繊維又はポリアセタール繊維の含有量に比べて、多いことが好ましい。
【0038】
肛門又は陰部周辺清浄用シート1Aに含まれる熱融着性繊維は、スパンレース法での水流交絡による凹凸形成性と水系洗浄剤の分散性の点から、不織布を構成する繊維として10〜30重量%含まれ、5〜20重量%含まれることが好ましい。
熱融着性繊維としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル等の単一繊維やそれらの複合繊維、アクリル、ナイロン、ビニロン等が挙げられ、半合成繊維としてはアセテートとタンパク繊維等が挙げられる。洗浄剤含浸時の空隙の維持、厚みの維持の点ではポリプロピレン・ポリエチレン芯鞘型複合繊維が好ましい。
【0039】
上記不織布の坪量は、20〜100g/m2、特に20〜80g/m2、更には30〜60g/m2が、拭き取り性や肌触りが良好である点、またコストの点から好ましい。この平均
坪量は、常法により一定面積(1m2)あたりの重量を測定することにより、求めることができる。
【0040】
上記不織布のウエット時の厚みは、0.45〜1.0mm、特に0.5〜1.0mm、更には0.55〜1.0mmが、拭き取り性や肌触りが良好である点から好ましい。このウエット時の厚みは、36Paの圧力下で、ダイヤルゲージ式又はレーザー式変位計により測定される。
【0041】
上記不織布のウエット時の空隙率は0.02〜0.2g/cm3、特に0.02〜0.15g/cm3、更には0.02〜0.1g/cm3が、便の拭き取り性、肌触りが良好である点から好ましい。このウエット時の空隙率(密度)は、前記不織布の坪量とウェット時の厚み測定より、次式によって計算される。
【0042】
【数1】

【0043】
上記不織布を構成する各繊維の繊度は肌触りや軟便の拭き取り性、拭き取った便の保持性の点から4dtex以下であり、特に2.5dtex〜0.7dtexが好ましい。
繊度の測定は、構成繊維をボーケンステイン試薬により染色識別し、構成繊維の種類を確認した後、実体顕微鏡又は電子顕微鏡にて150倍〜500倍に拡大して繊維の断面形状を観察することにより行う。断面が概略円形であれば、繊維の幅を数箇所実測する。各繊維種ごとに密度と繊維の断面積から繊度を計算し、平均繊度を求める。また、異型断面繊維の場合は、前述同様断面形状を幾何学形状に近似し、断面積を求め、平均繊度を計算する。
【0044】
上記不織布の構成繊維の平均繊維長は、凹凸の形成性及び肌触り等の点から、20〜80mmが好ましく、30〜70mmがより好ましい。この平均繊維長は、実体顕微鏡又は電子顕微鏡で20倍〜50倍に拡大して観察し、繊維1本の長さを測定する。2本以上の繊維を測定して平均を求める。
【0045】
第1実施形態の肛門又は陰部周辺清浄用シート1Aにおける上記不織布は、図1のように、その表面に無数個の凸部2及び無数個の凹部3からなる凹凸を有しており、便の拭き取り性および保持性に優れている。 凸部の高さhは、0.1〜1.2mmであることが好ましく、0.2〜0.8mmであることがより好ましい。1つの凸部2の平面視の面積は、0.1〜10mm2であることが好ましく、0.3〜5mm2であることがより好ましい。凸部2とそれに隣り合う凸部2の間隔pは、1〜10mmであることが好ましく、凹部3と凹部3の間隔も同様である。凸部は平面視で円形であり、千鳥状に配置されている。なお、凸部2の形状や配置はこれに制限されず、 四角形や三角形や花形でもよく、筋状に配置されていてもよい。凸部の高さや凸部の平面視の面積は実態顕微鏡で拡大して10個測定し、その平均より求める。
【0046】
上記不織布の凹凸の形成方法は、特に制限がなく、不織布製造の後工程で凹凸を有するロールで挟圧することにより形成することができる。特にウェット時の空隙率を維持し、汚れの取り込み及び保持性を良好にする点並びに肌触りの点から、スパンレース法の水流交絡工程において形成することが好ましい。スパンレース法の水流交絡工程において形成するには、ネットのメッシュサイズやパターンを変更することにより凹凸を設けることができる。
【0047】
上記不織布の凸部での繊維空隙は、便の拭き取り及び保持性を良好にする点で、平均繊維距離は5〜80μmが好ましく、特に25〜70μmが好ましい。この平均繊維距離は、特開2006-045096号公報に記載の方法により求められる。
【0048】
上記不織布に上記水系洗浄剤を含浸させる方法は、グラビアコーターやダイコーター、ノズルからの塗出塗布、スプレー塗布により含浸させることができる。
【0049】
上述した本発明の第1実施形態の肛門又は陰部周辺清浄用シート1Aを使用した際の作用効果について説明する。
【0050】
第1実施形態の肛門又は陰部周辺清浄用シート1Aは、水系洗浄剤に、ポリアルキレンオキサイド骨格を主鎖に有する非イオン性界面活性剤を含むことにより、便の色、即ちビリルビンに作用して便を拭き取ることができる。そのため、軟便等による肌に付いた便の色の拭き取り性が良好となる。従って、おしり拭き用シートで何度もこすらずに清浄を終了することが可能となり、肌へのダメージが生じ難くなる。
尚、便の拭き取り状態を確認する際は、主に肌に付いた便の色及びおしり拭き用シートに付いた便の色を目安とする。
【0051】
便の色(ビリルビン)の拭き取り性は、次のように確認する。
便の色(ビリルビン)の拭き取り性評価は、成人の前腕部内側にビリルビンを付着させて行う。まず、前腕部内側の測定部位の色差を測定する。その時のb*をbb*とする。色差は日本電色工業製のハンディ型簡易分光色差計NF333を用いて測定する。次に、測定部位にビリルビンを約2mg耳掻き状の匙を用い、直径20mm程度の範囲で擦り付けて付着させる。ビリルビンは和光純薬工業から試薬として入手したものを用いる。ビリルビンの付着量は、付着後の色差測定値b0*、Δb0=b0*−bb*とした時、Δb0が、15〜20となるように調整する。次に評価するおしり拭き用シートを準備し、そのカット長を200mm×150mmとし、これを8つ折り(50mm× 75mm)に折り畳む。次いで、前腕部のビリルビン付着部位の脇に8つ折りのシートを置き、その上に30mm×60mmの錘を載せる。錘は0.5kPaとなるようにする。そして、錘を載せたシートを手で前腕部に対し水平方向に引っ張り、ビリルビン付着部位の拭き取りを行う。引張は長手方向(サンプル 75mm長さの方向)に行う。拭き取り後に色差計を用い、色差を測定してその時の値をb1*とする。Δb1=b1*−bb*とし、このΔb1が5以下になれば、拭き取り性が良好なものと判断される。
【0052】
また、第1実施形態の肛門又は陰部周辺清浄用シート1Aは、その表面に凹凸が形成されており、便の拭き取り性や保持性が良好であり、肌触りも良好である。特に、凸部3は繊維空隙が大きく嵩高に形成されている点から、軟便の保持性が良好である。便の拭き取り性が良好であることから、何度もおしりを擦る必要がなく、肌にもやさしい。
【0053】
また、第1実施形態の肛門又は陰部周辺清浄用シート1Aは、シリコーンオイルを含む水系洗浄剤が含浸されているので、表面に凹凸を有する不織布に泡を発生させにくく、赤ちゃんのデリケートな肌を洗剤で洗い落とすようなイメージを、母親に抱かせてしまう恐れがない。
【0054】
次に、本発明の第2実施形態の肛門又は陰部周辺清浄用シートについて、図3,図4に基づいて説明する。
第2実施形態の肛門又は陰部周辺清浄用シート1Bについては、第1実施形態の肛門又は陰部周辺清浄用シート1Aと異なる点について説明する。特に説明しない点は、第1実施形態の肛門又は陰部周辺清浄用シート1Aと同様であり、第1実施形態の肛門又は陰部周辺清浄用シート1Aの説明が適宜適用される。
【0055】
第2実施形態の肛門又は陰部周辺清浄用シート1Bを構成する不織布は、図3のように、無数個の開孔部4を有し、これにより便の拭き取り性および保持性に優れる。開孔部4は、不織布の縦方向又は横方向に同じ形状で形成されている開孔部を、実体顕微鏡で拡大して10個測定し、平均を求めて平均開孔面積とする。平均開孔面積は0.1〜10mm2であることが好ましく、0.3〜5mm2であることがより好ましい。開孔部4とそれに隣り合う開孔部4との間隔pは、1.5〜3mmであることが好ましい。開孔部4は平面視で円形又は楕円形であり、千鳥状に配置されている。なお、無数個の開孔部4の形状や配置はこれに制限されず、四角形や三角形や花形でもよい。また、無数個の開孔部4は前記範囲において幾つか異なる開孔径や形状が組み合わされていても良い。
【0056】
第2実施形態の肛門又は陰部周辺清浄用シート1Bの無数個の開孔部4の形成方法には、特に制限がなく、不織布製造の後工程で凹凸を有するロールで挟圧/開孔することにより形成することができる。開孔部の明瞭性や形状保持性の点及び肌触りの点で、スパンレース法の水流交絡工程において形成することが好ましい。これにより、汚れの取り込み及び保持性を良好にすることができる。スパンレース法の水流交絡工程において形成するには、ネットのメッシュサイズやパターンを変更することにより開孔部を調整することができる。
【0057】
上述した本発明の第2実施形態の肛門又は陰部周辺清浄用シート1Bを使用した際の作用効果について説明する
【0058】
第2の実施形態である肛門又は陰部周辺清浄用シート1Bは、第1実施形態の肛門又は陰部周辺清浄用シート1Aと同様の効果が得られる。即ち、ポリアルキレンオキサイド骨格を主鎖に有する非イオン性界面活性剤を含む水系洗浄剤が含浸されており、便の拭き取り性、特に、肌に付いた便の色の拭き取り性が良好となる。また、第2の実施形態である肛門又は陰部周辺清浄用シート1Bは、開孔部4が形成されており、便の拭き取り性や保持性が良好であり、肌触りも良好である。
【0059】
以上、本発明の肛門又は陰部周辺清浄用シートは、上述の第1、第2実施形態の肛門又は陰部周辺清浄用シートに何ら制限されるものではなく、適宜変更可能である。
【0060】
例えば、上述の第1、第2実施形態の肛門又は陰部周辺清浄用シート1A,1Bにおいては、スパンレースを形成する際に、セルロース系繊維、ポリエステル系繊維又はポリアセタール繊維、及び熱融着生繊維を混合したが、それぞれの繊維からなるウェブを形成し、それらを積層して3層のウェブを形成した後に、水流交絡法によりウェブの繊維同士及び層間の繊維同士を交絡させて不織布化してもよい。また、2種類の繊維を混合したウェブを形成し、もう1種類の繊維のウェブに積層して、水流交絡法により不織布化してもよい。
例えば、セルロース系繊維を中央の層とし、ポリエステル系繊維又はポリアセタール繊維、及び熱融着生繊維を混合して形成したウェブを上下層として積層し、水流交絡法により不織布化した場合、不織布の表面のウエット感が少なく、加圧によって含浸液が不織布中からにじみ出てくるという構造のシートを得ることができる。
【0061】
また、上述の第1、第2実施形態の肛門又は陰部周辺清浄用シート1A,1Bにおける不織布は、単層スパンレース不織布であったが、既に形成された他の不織布上に、セルロース系繊維と、ポリエステル系繊維又はポリアセタール繊維と、熱融着生繊維とを含むウェブを積層し、水流交絡法により不織布とウェブとを一体化し、スパンレース不織布を得てもよい。
【0062】
本発明の肛門又は陰部周辺清浄用シートは、赤ちゃんや被介護者のおしりや排泄部に付いた便や尿等の汚れを拭き取るため以外にも、例えば、生理用ナプキン交換時に排泄部の経血清浄等に好適に用いることができる。
【実施例】
【0063】
以下、本発明を実施例及び比較例により更に具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下の例中、特に断らない限り「%」は、「重量%」を意味する。
【0064】
〔実施例1〕
リヨセル繊維(繊度1.7dt、繊維長38mm)、親水化PET繊維(繊度1.6dt、繊維長51mm)及びポリプロピレン・ポリエチレン芯鞘型複合繊維(繊度1.7dt、繊維長51mm)を、60%、30%、10%の重量割合で混合し、カードウェブを作製した。次に水流交絡法によりウェブの繊維同士を交絡させ、不織布化し、その後凹凸エンボス加工処理を行い凹凸形状を付与し、坪量50g/m2の凹凸のあるスパンレース不織布を得た。凸部の平面視の形状は円状で、その大きさは直径2.5mm、凸部の高さhは0.6mm、凸部の間隔pは、MD方向が9mm、CD方向が7mmで千鳥状に配列されている(パターン1)。
【0065】
次に、表1に示すように、ポリアルキレンオキサイド骨格を主鎖に有する非イオン界面活性剤としてポリオキシエチレン(n=9)ラウリルエーテル(HLB=14)を0.5%、シリコーン系消泡剤KM−72(信越化学、シリコーン30%、シリカ3%)を0.02%の重量割合で配合し、水系洗浄剤を得た。上記不織布1重量部に対し、水系洗浄剤を2.2重量部の割合でスプレー塗布し、肛門又は陰部周辺清浄用シートを得た。
【0066】
〔実施例2〕
実施例2は、実施例1と同様にカードウェブを作製した。次に水流交絡法によりウェブの繊維同士を交絡させ、不織布化し、続いて1インチ当たり縦12本横12本の平織り凹凸ネット上で再度水流処理を行い、坪量50g/m2の開孔部のあるスパンレース不織布を得た。パターン形状は、開孔部の大きさはMD方向の長さ1.5mm、CD方向の長さ0.8mmの楕円状で、各開孔部の間隔pは、MD方向が5.6mm、CD方向が4mmで千鳥状に配列されている(パターン2)。
次に、表1に示す様に、実施例1と同様にして水系洗浄剤を配合し、不織布に塗布し、皮膚洗浄用シートを得た。
【0067】
〔実施例3〕
実施例3は、実施例1と同様にカードウェブを作製した。次に水流交絡法によりウェブの繊維同士を交絡させ、不織布化し、続いて1インチ当たり縦25本横17本の平織り凹凸ネット上で再度水流処理を行い、坪量50g/m2の開孔部のあるスパンレース不織布を得た。パターン形状は、開孔部の大きさはMD方向の長さ1mm、CD方向の長さ0.6mmの楕円状で、各開孔部の間隔pは、MD方向が3mm、CD方向が2mmで千鳥状に配列されている(パターン3)。
次に、表1に示す様に、実施例1と同様にして水系洗浄剤を配合し、不織布に塗布し、皮膚洗浄用シートを得た。
【0068】
〔実施例4〜9〕
表1に示す様に、実施例3と同様の組成、製法にて、スパンレース不織布を得た。次に、表1に示す材料及び配合量で水系洗浄剤を配合し、不織布にスプレー塗布し、皮膚洗浄用シートを得た。
【0069】
〔実施例10〕
レーヨン繊維(繊度1.7dt、繊維長51mm)、ポリアセタール繊維(繊度2.2dt、繊維長51mm)及びポリプロピレン・ポリエチレン芯鞘型複合繊維(繊度1.7dt、繊維長 51mm)を、60%、30%、10%の重量割合で混合し、カードウェブを作製した。それ以外は、実施例3と同様にして、スパンレース不織布を得て、表1に示す材料及び配合量で水系洗浄剤を塗布し、肛門又は陰部周辺清浄用シートを得た。
【0070】
〔実施例11〕
リヨセル繊維(繊度1.7dt、繊維長38mm)、親水化PET繊維(繊度1.6dt、繊維長51mm)及びポリプロピレン・ポリエチレン芯鞘型複合繊維(繊度1.7dt、繊維長51mm)を、50%、40%、10%の重量割合で混合し、カードウェブを作製した。それ以外は、実施例3と同様にして、スパンレース不織布を得て、表1に示す材料及び配合量で水系洗浄剤を塗布し、肛門又は陰部周辺清浄用シートを得た。
【0071】
〔実施例12〕
テンセル繊維(繊度1.7dt、繊維長38mm)、PET繊維(繊度1.6dt、繊維長51mm)及びポリプロピレン・ポリエチレン芯鞘型複合繊維(繊度1.7dt、繊維長51mm)を、60%、30%、10%の重量割合で混合し、カードウェブを作製した。それ以外は、実施例3と同様にして、スパンレース不織布を得て、表1に示す材料及び配合量で水系洗浄剤を塗布し、肛門又は陰部周辺清浄用シートを得た。
【0072】
〔実施例13〕
テンセル繊維(繊度1.7dt、繊維長38mm)、PET繊維(繊度1.6dt、繊維長51mm)及びポリプロピレン・ポリエチレン芯鞘型複合繊維(繊度1.7dt、繊維長51mm)を、50%、40%、10%の重量割合で混合し、カードウェブを作製した。それ以外は、実施例3と同様にして、スパンレース不織布を得て、表1に示す材料及び配合量で水系洗浄剤を塗布し、肛門又は陰部周辺清浄用シートを得た。
【0073】
〔比較例1〜2〕
レーヨン繊維(繊度1.7dt、繊維長51mm)、PET繊維(繊度1.6dt、繊維長51mm)を60%、40%の重量割合で混合し、カードウェブを作製する。次に水流交絡法によりウェブの繊維同士を交絡させ、坪量40g/m2のスパンレース不織布を得た。
次に、表2に示す材料及び配合量で水系洗浄剤を配合し、不織布にスプレー塗布し、皮膚洗浄用シートを得た。
【0074】
〔比較例3、5〜10〕
実施例3と同様にして、スパンレース不織を得た。
次に、表2に示す材料及び配合量で水系洗浄剤を配合し、不織布にスプレー塗布し、皮膚洗浄用シートを得た。
【0075】
〔比較例4〕
リヨセル繊維(繊度1.7dt、繊維長38mm)、親水化PET繊維(繊度1.6dt、繊維長51mm)及びポリプロピレン・ポリエチレン芯鞘型複合繊維(繊度1.7dt、繊維長 51mm)を、60%、30%、10%の重量割合で混合し、カードウェブを作製した。次に水流交絡法によりウェブの繊維同士を交絡させ、坪量50g/m2のスパンレース不織布を得た。
次に、表2に示す材料及び配合量で水系洗浄剤を配合し、不織布にスプレー塗布し、皮膚洗浄用シートを得た。
【0076】
〔評価〕
作製した肛門又は陰部周辺清浄用シートについて、以下の方法により、便色(ビリルビン)の拭き取り性、泡立ち性、便の拭き取り性、使用感触、水系洗浄剤の安定性をそれぞれ評価した。これらの結果を下記表1及び表2に示す。なお、これらの評価は、23±2℃、相対湿度50±10%の環境で行った。
【0077】
(1)便色(ビリルビン)の拭き取り性
評価方法は前述した方法によって行い、1回拭き取り後のΔb1を算出し、以下の基準
に従って評価した。
◎:3.5未満
○:3.5以上5未満
△:5以上7未満
×:7以上
【0078】
(2)泡立ち評価(液)
泡立ち評価は、水系洗浄剤10mlを、30mlの試験管に入れ、試験管の口を塞ぎ、水系洗浄剤10mlの高さh1を読み取り、その後、試験管を上下に30回(10秒間)振る。30回振った後の高さh2からh1を差し引き、その差を、泡の高さとする。
泡の高さが高くなれば、泡立ち評価が悪いと判断し、以下の基準に従って評価した。
尚、既に水系洗浄剤が不織布に塗布されている場合には、その不織布から水系洗浄剤を絞ることにより、水系洗浄剤10mlを抽出する。
◎:15mm未満
○:15mm以上30mm未満
△:30mm以上50mm未満
×:50mm以上
【0079】
(3)泡立ち評価(シート)
肛門又は陰部周辺清浄用シートをテルモシリンジ(20ml、横口)に折り畳んで詰め込み、液およそ1gをシャーレーに絞り出す。その時の液の状態を観察し、下記基準に従って、評価した。
◎:泡が立たない。
○:泡がわずかに立つが、すぐに消える。
△:泡立ちし、しばらくすると泡が消える。
×:泡立ちし、泡がすぐに消えない。
【0080】
(4)便の拭き取り性
便の拭き取り性は、水性絵の具を便の代用として評価した。アクリル板(7cm×10cm)上の長手方向の上端部より20mmの位置を中心にした直径 25mmの円状に、水性絵の具(ギターペイント製、粘度4Pa・s、青色)0.5gを均一に塗る。1分放置後、その上に二つ折りした皮膚洗浄用シートをその一端をアクリル板の長手方向上端部に合わせて置き、その絵の具を塗った位置に直径25mmの錘を載せる。錘は1.8kPaとする。皮膚洗浄用シートは絵の具を塗った面積より充分に大きいものであればよい。そして、錘を載せたシートを長手方向(上端部から下端部に向けて)に一定速度で6cm引っ張る。そのとき、シートに付着した絵の具量を測定し、以下の基準に従って評価した。
◎:0.30g以上
○:0.26g以上0.30g未満
△:0.23g以上0.26g未満
×:0.23g未満
【0081】
(5)使用感触
育児経験のある母親などの専門パネラーに各皮膚洗浄用シートで前腕部内側を拭き、30秒放置後の肌のぬるつき感、さっぱり感などの使用感触を、以下の基準に従って官能評価した。
◎:非常によい(好き)。
○:よい(好き)。
△:ふつう。
×:悪い(きらい)。
【0082】
(6)水系洗浄剤の安定性
液を50℃、23℃、−5℃の環境下に1ヶ月保存し、その時の液の状態を観察し、以下の基準に従って評価した。
○:透明である。
×:白濁、分離する。
【0083】
【表1】

【0084】
【表2】

【0085】
表1及び表2に示す結果から明らかなように、実施例の皮膚清浄用シート(おしり拭きシート)は、本発明の非イオン性界面活性剤等を含む洗浄剤および/又は不織布を用いていない比較例と比較して、肌に付いた便色(ビリルビン)の拭き取り性、泡立ち評価、便の拭き取り性、使用した後の肌のべたつきやぬるつきといった使用感触のいずれについても良好であった。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】図1は、本発明の皮膚清浄用シートの一実施形態を示す斜視図である。
【図2】図2は、図1におけるII−II線断面の一部拡大図である。
【図3】図3は、本発明の皮膚清浄用シートの他の実施形態を示す斜視図である。
【図4】図4は、図3におけるIV−IV線断面の一部拡大図である。
【符号の説明】
【0087】
1A,1B 皮膚清浄用シート(おしり拭きシート)
2 凸部
3 凹部
4 開孔部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水系洗浄剤が、不織布1重量部に対し1〜10重量部含浸された肛門又は陰部周辺清浄用シートであって、
前記水系洗浄剤は、非イオン性界面活性剤0.1〜1重量%、シリコーンオイル0.001〜0.1重量%及び水80〜99.9重量%を含有し、前記非イオン性界面活性剤がポリアルキレンオキサイド骨格を主鎖に有する非イオン性界面活性剤を90%以上含み、
前記不織布は、セルロース系繊維20〜70重量%を含む不織布であり、該不織布の坪量が20〜100g/m2、ウエット時の厚みが0.45〜1.0mm、ウエット時の空隙率が0.02〜0.2g/cm3であり、該不織布は凹凸又は開孔部を有する
肛門又は陰部周辺清浄用シート。
【請求項2】
前記水系洗浄剤は、更にシリカ0.0001〜0.01重量%を含有する請求項1に記載の肛門又は陰部周辺清浄用シート。
【請求項3】
前記不織布はスパンレース不織布であり、ポリエステル系繊維又はポリアセタール繊維15〜60重量%、及び熱融着性繊維10〜30重量%を含むスパンレース不織布である請求項1又は2に記載の肛門又は陰部周辺清浄用シート。
【請求項4】
前記凹凸又は開孔部は、スパンレース法における水流交絡工程において形成された凹凸又は開孔部である請求項1〜3の何れかに記載の肛門又は陰部周辺清浄用シート。
【請求項5】
前記セルロース系繊維は、リヨセル繊維又はテンセル繊維である請求項1〜4の何れかに記載の肛門又は陰部周辺清浄用シート。
【請求項6】
前記非イオン性界面活性剤は、HLB8〜16である請求項1〜5の何れかに記載の肛門又は陰部周辺清浄用シート。
【請求項7】
前記ポリエステル系繊維又はポリアセタール繊維は、親水性である請求項3〜6の何れかに記載の肛門又は陰部周辺清浄用シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−1229(P2010−1229A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−159724(P2008−159724)
【出願日】平成20年6月18日(2008.6.18)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】