説明

肝細胞増殖因子産生促進剤

【課題】高いHGF産生促進効果を有する肝細胞増殖因子産生促進剤を提供する。
【解決手段】蒲公英から得られる抽出物を有効成分とする肝細胞増殖因子産生促進剤である。下記一般式


(式中、R〜Rは、各々独立に、水素原子または炭素数1〜3のアルキル基を示し、XおよびXは、各々独立に、エチレン基またはビニレン基を示す)で表される骨格を有する化合物を有効成分とする肝細胞増殖因子産生促進剤である。血小板由来成長因子もしくは血小板由来成長因子様作用物質の存在下でHGF産生促進を増強することが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肝細胞増殖因子(Hepatocyte growth factor、以下、「HGF」とも称す)産生促進剤に関する。
【背景技術】
【0002】
蒲公英(以下、「ホコウエイ」とも記す)は、キク科のモウコタンポポ(Taraxacum mongolicum)等の各種 Taraxacum 属植物の根つき全草であり、特許文献1には、ホコウエイを有効成分とする5α−リダクターゼ阻害剤が開示されている。
【0003】
一方、HGFは、当初肝細胞に対する最も強力な増殖促進因子として同定されていたが、腎尿細管や気管支上皮、ケラチノサイトなど様々な上皮系細胞に対しても増殖促進因子(mitogen)として機能することが知られている(非特許文献1)。また、最近では、血管内皮細胞や軟骨細胞、造血幹細胞などの間葉系細胞の増殖を促進させることも明らかにされている(非特許文献1)。さらに、毛髪の成長期移行シグナルであるSTAT3(Signal transducer and activator of transcription)は、HGFにより活性化されることが知られている(非特許文献2)。
【0004】
そのため、肌荒れの改善や育毛効果を目的として、HGF産生促進剤を化粧品、育毛剤等の外用剤に配合することが提案されている。例えば、特許文献2には、HGF産生促進剤として米抽出物を配合した化粧品が開示されている。
【0005】
また、特許文献3には、キク科の植物由来の成長因子産生増強物質を有効成分として含有している成長因子産生増強用組成物が、開示されている。さらに、特許文献4には、セイヨウタンポポから得られた抽出物を含有する繊維芽細胞増殖促進剤が、開示されている。
【特許文献1】特開2000−95648号公報
【特許文献2】特開2004−99503号公報
【特許文献3】国際公開第2001/076614号パンフレット
【特許文献4】特開平10−36279号公報
【非特許文献1】実験医学,Vol.15 No.9 p78(1997)
【非特許文献2】フレグランスジャーナル, No.12 p13(2007)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2に記載の方法では、十分なHGF産生促進効果が得られず、よりHGF産生促進効果の高いHGF産生促進剤が求められている。また、米抽出物を配合しているためアレルギーを発症する場合もあり、より安全性の高いHGF産生促進剤が求められている。
【0007】
さらに、特許文献1は、ホコウエイに関して5α−リダクターゼ阻害効果については開示されているものの、HGF産生促進効果については考慮されていない。さらにまた、特許文献3は、キク科の植物としてタンポポが記載されているものの、キク科のヨモギ中のクロロゲン酸等の成分について注目したものであり、Taraxacum 属に属するホコウエイに関しては開示されておらず、その効果については不明である。また、特許文献4には、セイヨウタンポポの繊維芽細胞増殖促進効果については記載があるものの、ホコウエイのHGF産生促進効果については不明である。
【0008】
そこで、本発明の目的は、高いHGF産生促進効果を有するHGF産生促進剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、キク科の特定の抽出物に高いHGF産生促進効果を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明のHGF産生促進剤は、ホコウエイから得られる抽出物(以下、「ホコウエイ抽出物」とも称す)を有効成分とすることを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明のHGF産生促進剤は、前記抽出物を酢酸エチル/水で分配処理し、得られた水可溶画分をn−ブタノール/水で分配処理して得られた水可溶画分であることが好ましく、前記抽出物が、前記n−ブタノール/水で分配処理して得られた水可溶画分を、樹脂吸着クロマトグラフィーにかけ得られたメタノール溶出画分であることが好ましい。
【0012】
さらに、本発明のHGF産生促進剤は、下記一般式(1)、

(式中、R〜Rは、各々独立に、水素原子または炭素数1〜3のアルキル基を示し、XおよびXは、各々独立に、エチレン基またはビニレン基を示す)で表される骨格を有する化合物を有効成分とすることを特徴とするものである。
【0013】
さらにまた、本発明のHGF産生促進剤は、血小板由来成長因子(Platelet−Derived growth factor、以下、「PDGF」とも称す)もしくはPDGF様作用物質の存在下でHGF産生促進を増強することが好ましい。ここで言うPDGF様作用物質とは、PDGFのレセプターに結合して、PDGFと同様の作用を細胞に起こす物質のことである。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、高いHGF産生促進効果を有するHGF産生促進剤を提供することが可能である。また、本発明は、細胞等に直接作用しHGF産生促進効果を発揮するとともに、PDGFもしくはPDGF様作用物質の存在下でHGF産生誘導能を増強する効果を有するものである。さらに、本発明により、十分なHGF産生促進効果を発揮し、上皮細胞を増殖し、傷ついた上皮組織の再生を促進することができる。よって、HGFの形態形成誘導作用や血管新生作用により血管、皮膚や胃腸などの創傷治癒の効果を期待できる。また、肝炎などの肝障害、腎炎などの腎障害、肺炎などの肺障害などの各種炎症に対して著しい防止作用の効果を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の好適実施形態につき具体的に説明する。
本発明においては、ホコウエイは、キク科のモウコタンポポ Taraxacum mongolicum等の各種 Taraxacum 属植物の根つき全草のことを指し、セイヨウタンポポ、モウコタンポポ等が例示される。これらの中でも植物としてはモウコタンポポが好ましく、使用する部位としては根が好ましい。また、本発明で用いるホコウエイ抽出物とは、かかる全草等を乾燥し又は乾燥することなく粉砕した後、常温又は加温下に、溶剤により抽出するか又はソックスレー抽出器等の抽出器具を用いて抽出することにより得られる各種溶媒抽出液、その希釈液、その濃縮液、あるいはその乾燥末を意味するものである。
【0016】
ここで、ホコウエイの抽出に使用される溶媒は特に限定されず、例えば、水、メチルアルコール、エチルアルコール等の低級アルコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール等の液状多価アルコール、酢酸エチル等の低級アルキルエステル、ベンゼン、ヘキサン等の炭化水素、ジエチルエーテル、アセトン等の公知の溶媒が挙げられ、これらの溶媒は、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でもエタノール水溶液が好ましく、70%エタノール水溶液が特に好ましい。なお、ホコウエイの抽出は常法で行ない、得られたホコウエイ抽出物はそのまま用いてもよいが、さらに必要により濃縮、濾過等の処理したものを用いることができる。
【0017】
本発明のHGF産生促進剤は、ホコウエイ抽出物を有効成分とするものであり、優れたHGF産生促進効果を有し、かつ安全性も高いので、剤型としては錠剤、カプセル剤、散剤、内服液、細粒剤、顆粒剤等の経口投与剤の形態となすことができ、また、適当な基剤、薬剤などと混合した皮膚外用剤や頭髪化粧料等の外用形態とすることができる。具体的には、ローション、乳液、軟膏、クリーム、ジェル、オイル、パック、シャンプー、リンス、トリートメント、ヘアートニック、ヘアーリキッド等の形態を採ることができる。さらに上記のような外用剤の他にも、例えば、石鹸、入浴剤といったものに配合して用いてもよい。
【0018】
また、本発明において、ホコウエイ抽出物を処理したものとしては、例えば、ホコウエイの根からの抽出物を酢酸エチル/水で分配処理し、処理して得られた水可溶画分をn−ブタノール/水で分配処理して得られた水可溶画分(以下、「水画分」と称す)があり、さらに、n−ブタノール/水で分配処理して得られた水画分を、樹脂吸着クロマトグラフィーにかけ得られたメタノール溶出画分(以下、「メタノール画分」)等が挙げられる。
【0019】
さらに、本発明のHGF産生促進剤は、下記一般式(1)、

(式中、R〜Rは、各々独立に、水素原子または炭素数1〜3のアルキル基を示し、XおよびXは、各々独立に、エチレン基またはビニレン基を示す)で表される骨格を有する化合物を有効成分とするものである。ここで、R〜Rで表される炭素数1〜3のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基が挙げられる。
【0020】
上記一般式(1)の化合物は、植物からの抽出、単離、または既知の方法による合成により得ることができる。特に、上記の方法によりホコウエイの根からホコウエイ根抽出物を得た後、単離することにより、好適に得ることができる。単離方法は特に制限されるものではないが、液−液分配、各種クロマトグラフィー、再結晶化などの手法により好適に単離することができる。
【0021】
また、本発明において、上記一般式中のR〜Rが水素原子で、XおよびXがビニレン基である下記式、

で表されるチコリ酸(chicoric acid)であることが好ましい。チコリ酸は、ホコウエイ抽出物から定法により単離することもできるし、SYNTHETIC COMMUNICATIONS, 28(4), 737(1998)記載の方法等により合成することもできる。
【0022】
本発明において、ホコウエイ抽出物の配合量は、添加形態および投与形態によっても異なるが、外用剤の場合には、全組成物中0.0001〜90質量%配合することが好ましく、0.001〜50質量%配合することがより好ましく、0.001〜10質量%配合することがさらにより好ましい。また、経口投与剤の場合には、成人1日あたり0.001〜100gになるようにするのが好ましい。
【0023】
また、本発明のHGF産生促進剤は、PDGFもしくはPDGF様作用物質の存在下でHGF産生促進を増強することが好ましい。これにより、より高いHGF産生促進効果を得ることができる。
【0024】
本発明のHGF産生促進剤には、さらに必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、化粧品や医薬品等に一般に用いられている保湿剤、油性成分、界面活性剤、ビタミン類、蛋白分解酵素、増粘剤、防腐剤、粉体、酸化防止剤、紫外線吸収剤、乳化剤、アルコール類、色素、水性成分、脂肪酸類、香料、キレート剤、pH調整剤、精製水等の添加成分を配合することができる。
【0025】
保湿剤としては、例えば、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、1,3−ブチレングリコール等の多価アルコール、ソルビット、マンニット等の糖アルコール、ヒアルロン酸塩、コンドロイチン硫酸塩、キトサン等の水溶性高分子、尿素、乳酸ナトリウム、ピロリドンカルボン酸塩等が挙げられる。
【0026】
油性成分としては、例えば、大豆油、コメヌカ油、アボカド油、アーモンド油、オリーブ油、カカオ脂、ゴマ油、パーシック油、ヒマシ油、ヤシ油、ミンク油、牛脂、豚脂等の天然油脂、これらの天然油脂を水素添加して得られる硬化油及びミリスチン酸グリセリド、2−エチルヘキサン酸グリセリド等の合成グリセリド、ジグリセリド等の油脂類、ホホバ油、カルナウバロウ、鯨ロウ、ミツロウ、ラノリン等のロウ類、流動パラフィン、ワセリン、パラフィン、マイクロクリスタリンワックス、セレシン、スクワラン、プリスタン等の炭化水素類、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ラノリン酸、イソステアリン酸等の高級脂肪酸類、ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、コレステロール、2−ヘキシルデカノール、ホホバアルコール等の高級アルコール類、オクタン酸セチル、乳酸ミリスチル、乳酸セチル、ミリスチン酸ミリスチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、アジピン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、オレイン酸デシル、イソステアリン酸コレステロール等のエステル類、精油類およびシリコーン油類が挙げられる。
【0027】
界面活性剤としては、例えば、グリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリグリセリン脂肪酸エステル、脂肪酸モノグリセライド、ショ糖脂肪酸エステル、高級脂肪酸アルカノールアミド等の非イオン性界面活性剤、α−オレフィンスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、セチル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリル硫酸ナトリウム、スルホコハク酸ラウリル二ナトリウム、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩、分岐鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸塩、アルケニル硫酸塩、エチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイドを付加したアルキルエーテルカルボン酸塩又はアルケニルエーテルカルボン酸塩、α−スルホ脂肪酸エステル、アミノ酸型界面活性剤、リン酸エステル型界面活性剤、タウリン型界面活性剤、アマイドエーテルサルフェート型界面活性剤等の陰イオン性界面活性剤、カルボキシベタイン型、アミノカルボン酸、スルホベタイン型等の両性界面活性剤および4級アンモニウム塩等の陽イオン性界面活性剤が挙げられる。
【0028】
ビタミン類としては、例えば、ビタミンA、ビタミンB、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンF、ビタミンK、ビタミンP、ビタミンU、カルニチン、フェルラ酸、γ−オリザノール、リポ酸、オロット酸及びその誘導体等が挙げられる。蛋白分解酵素としては、例えば、ペプシン、トリプシン、キモトリプシン、カテプシン、パパイン、ブロメライン、フィシン及び細菌、酵母、カビ由来のプロテアーゼ等が挙げられる。
【0029】
増粘剤としては、例えば、カルボキシビニルポリマー、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、カラギーナン、ゼラチン、キサンタンガム、ポリアクリル酸塩等の水溶性高分子化合物、塩化ナトリウム、塩化カリウム等の無機塩が挙げられる。防腐剤としては、例えば、フェノキシエタノール、メチルパラベン、エチルパラベン、ブチルパラベン、安息香酸ナトリウム等が挙げられる。粉体としては、例えば、タルク、セリサイト、マイカ、カオリン、シリカ、ベントナイト、バーミキュライト、亜鉛華、雲母、雲母チタン、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、ベンガラ、酸化鉄、群青等が挙げられる。その他の成分としては、香料、色素、殺菌剤等を挙げることができる。
【0030】
また、本発明のHGF産生促進剤は、他の成分を併用せずにホコウエイ抽出物だけで用いてもよいが、さらに脱毛防止、養毛・育毛効果を増強する目的で血行促進剤、局所刺激剤、角質溶解剤、抗脂漏剤、抗菌剤、抗炎症剤、毛包賦活剤、抗男性ホルモン剤、保湿剤等の他の成分と併用してもよい。
【0031】
さらに、本発明のHGF産生促進剤は、ホコウエイ抽出物および任意成分を組み合わせて、常法に従って製造することができる。
【実施例】
【0032】
以下、本発明を実施例に従い、詳細に説明する。
(ホコウエイ抽出物の調製例)
モウコタンポポ根(乾燥品)1kgに70%エタノール10Lを加えて2時間加熱還流抽出を行った。濾過により、必要に応じオリ(沈殿物)を除き、濾液を減圧濃縮し、その後凍結乾燥を行い、約270gのホコウエイ抽出物(ホコウエイ根エキス末)を得た。
【0033】
(水画分の調製例)
得られたホコウエイ抽出物200gに酢酸エチルおよび水を加え分配処理し、得られた水層部分にn−ブタノールを加え分配処理した。得られた水層部分を減圧濃縮し、水画分を得た。
【0034】
(メタノール画分の調製例)
水画分170gを、DIAION HP20(三菱化学(株)製)を用いたカラムクロマトグラフィーに付し、メタノール溶出部分を濃縮し、水画分のメタノール画分5.5gを得た。
【0035】
(チコリ酸の調製例)
メタノール画分360mgを下記条件でODS−AMおよびODSゲルを用いたカラムクロマトグラフィーに順次付することにより分離精製し、下記式で示すチコリ酸35mgを得た。
カラム:ODS S−343 (μm,20mm I.D.×250mm)
カラム温度 : 室温
移動相 : 0.1%HPO/MeOH(67:33)
目的ピークを確認後、MeOHで溶出流速: 3mL/min
検出器 : UV 254nm
【0036】
チコリ酸

【0037】
(HGF産生促進効果の評価)
指定の濃度の試験試料を含有した0.5%仔牛血清(FBS)含有ダルベッコ変法MEM(DMEM)、および指定の濃度の試験試料に20ng/mLのPDGF(血小板由来成長因子)を含有した0.5%FBS含有DMEMを使用して、正常ヒト線維芽細胞を、それぞれ24時間培養した。培養後、上清を回収してサンドイッチELISAに供した。培地中のHGF量は、全細胞のタンパク量で培地中のHGF量を除することによって、単位タンパク量あたりのHGF産生量(pg/μg protein)として算出した。試験試料として、ホコウエイ抽出物、水画分、メタノール画分およびチコリ酸を使用し、各試験試料のHGF産生促進効果を、PDGF未添加のHGF産生量、およびPDGF添加細胞のHGF量よりPDGF未添加のHGF量を差し引いたΔHGF値(pg/μg protein)により評価した。それぞれの試験試料のHGF産生量の結果を表1〜8および図1〜8に示し、表中PDGFを含有する場合を「+」、含有しない場合を「−」で示す。さらに、ΔHGF値の結果を表9〜12および図9〜12に示す。なお、表中及び図中の試験試料の「0」は各試験試料が無添加であることを示す。
【0038】
【表1】

【0039】
【表2】

【0040】
【表3】

【0041】
【表4】

【0042】
【表5】

【0043】
【表6】

【0044】
【表7】

【0045】
【表8】

【0046】
【表9】

【0047】
【表10】

【0048】
【表11】

【0049】
【表12】

【0050】
表1〜8および図1〜8の結果から、ホコウエイ抽出物、水画分、メタノール画分およびチコリ酸は、いずれも優れたHGF産生促進効果を示した。また、表9〜12および図9〜12の結果から、PDGFを添加することにより、より優れたHGF産生促進効果を示した。
【0051】
処方例1 育毛剤
上記調製例で得られたホコウエイ根抽出末を、50%エタノール水溶液に溶解し、2.7%ホコウエイ根抽出液(以下、「2.7%ホコウエイ根抽出液」と称す)を得た。これを使用し、下記表13記載の成分と混合し、ホコウエイ根抽出液配合育毛剤を調製した。
【0052】
【表13】

【0053】
上記育毛剤は、ホコウエイ根エキスを配合していない育毛剤と比較して、HGF産生促進効果により、育毛および発毛効果において優れるものであった。
【0054】
処方例2 トニック
下記表14の処方(質量%)に従い、まず、酢酸dl−α−トコフェロール、イソプロピルメチルフェノール、パントテニルアルコール、グリチルレチン酸、エタノール(99.5%)、ミリスチン酸オクチルドデシル、2−エチルヘキサン酸オクチル、香料、メントールを均一に混合した。次に、センブリ抽出液、ニンジン抽出液、1,3−ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、アスコルビン酸リン酸エステルナトリウム、エデト酸4ナトリウム、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(50E.O)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(20E.O)、2.7%ホコウエイ根抽出液、精製水を均一に混合した。最後に両者を混合し、濾過して充填することによりホコウエイ根抽出液配合液状型トニックを調製した。
【0055】
【表14】

【0056】
処方例3 トニック
下記表15の処方(質量%)に従い、まず、酢酸dl−α−トコフェロール、イソプロピルメチルフェノール、パントテニルアルコール、エタノール(99.5%)、香料、メントールを均一に混合した。次に、センブリ抽出液、ニンジン抽出液、ジプロピレングリコール、3−メチル−1,3−ブタンジオール、アスコルビン酸リン酸エステルナトリウム、エデト酸4ナトリウム、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、モノラウリン酸デカグリセリル、2.7%ホコウエイ根抽出液、精製水を均一に混合した。次に両者を混合し、濾過して原液とし、最後に、原液と噴射剤を充填処方に合わせて、缶に充填することによりホコウエイ根抽出液配合エアゾール型トニックを調製した。
【0057】
【表15】

【0058】
処方例2、3は、HGF産生促進効果により、育毛効果が期待できる。
【0059】
処方例4 ハンドクリーム
下記表16の処方(質量%)に従い、下記の製造例に準拠し、ホコウエイ根抽出液配合ハンドクリーム製剤(以下、「ホコウエイ配合クリーム」という)を調製した。
【0060】
まず、流動パラフィン、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸、セタノール、モノステアリン酸グリセリン、ジメチルポリシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、ブチルパラベン、モノステアリン酸デカグリセリル、酢酸トコフェロールを混合し、加熱した。次に、メチルパラベン、1,3−ブチレングリコール、1,2−ペンタンジオール、濃グリセリン、エデト酸2ナトリウム、トリエタノールアミン、精製水を混合し加熱し、先の混合物に加え乳化させた。冷却後、フェノキシエタノール、グリチルリチン酸ジカリウム、香料、2.7%ホコウエイ根抽出液を添加することによりハンドクリームを調製した。
【0061】
【表16】

【0062】
処方例5 ボディクリーム
下記表17の処方(質量%)に従い、油相と水相をそれぞれ70℃に加熱し、完全溶解させた。水相に油相を添加して乳化させた後、冷却後、添加相を添加することによりpH6.1のホコウエイ根抽出末配合ボディクリーム(1)を調製した。
【0063】
【表17】

【0064】
処方例6 ボディクリーム
下記表18の処方(質量%)に従い、油相と水相をそれぞれ70℃に加熱し、完全溶解させた。水相に油相を添加して乳化させた後、冷却後、添加相を添加することによりpH7.5のホコウエイ根抽出末配合ボディクリーム(2)を調製した。
【0065】
【表18】

【0066】
処方例7 日焼け止めクリーム
下記表19の処方(質量%)に従い、油相と水相をそれぞれ70℃に加熱し、完全溶解させた。水相に油相を添加して乳化させた後、冷却後、微細に粉砕した粉体相および添加相を添加することによりSPF20のホコウエイ根抽出末配合日焼け止めクリームを調製した。
【0067】
【表19】

【0068】
処方例8 粉体入浴剤
上記調製例で得られたホコウエイ根抽出末を、50%エタノール水溶液に溶解し、2%ホコウエイ根抽出液(以下、「2%ホコウエイ根抽出液」と称す)を得た。これを使用し、下記表20の処方(質量%)に従い、すべての原料を均一に混合することによりホコウエイ根抽出液配合粉体入浴剤を調製した。
【0069】
【表20】

【0070】
処方例9 液体入浴剤
上記調製例で得られたホコウエイ根抽出末を、50%エタノール水溶液に溶解し、3%ホコウエイ根抽出液(以下、「3%ホコウエイ根抽出液」と称す)を得た。これを使用し、下記表21の処方(質量%)に従い、A相およびB相を70℃に加熱し完全溶解させ、A相をB相に添加後、30℃まで冷却することによりホコウエイ根抽出液配合液状入浴剤を調製した。
【0071】
【表21】

【0072】
処方例10 化粧水
下記表22の処方(質量%)に従い、水相にアルコール相を添加し原液を調整し、その原液を缶に入れ、LPG、ブタン等のガスを充填することによりホコウエイ根抽出末配合化粧水(エアゾール製品)を調製した。
【0073】
【表22】

【0074】
処方例11 化粧水
下記表23の処方(質量%)に従い、水相にアルコール相を添加し、可溶化させることによりpH5.5のホコウエイ根抽出液配合弱酸性化粧水(透明タイプ)を調製した。
【0075】
【表23】

【0076】
処方例12 化粧水
下記表24の処方(質量%)に従い、水相にアルコール相を添加し、乳化させることによりpH7.5のホコウエイ根抽出液配合化粧水(白濁タイプ)を調製した。
【0077】
【表24】

【0078】
処方例13 化粧水
下記表25の処方(質量%)に従い、水相にアルコール相を添加して可溶化させた後、粉体相を添加することによりpH6.2の3層型のホコウエイ根抽出液配合化粧水(分離型タイプ)を調製した。
【0079】
【表25】

【0080】
処方例4〜13は、ホコウエイ根エキスのHGF産生促進効果により、皮膚における各種炎症の緩解が期待でき、肌荒れ等に有効である。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】PDGFを含まないホコウエイ抽出物のHGF産生量を示すグラフである。
【図2】PDGFを含むホコウエイ抽出物のHGF産生量を示すグラフである。
【図3】PDGFを含まない水画分のHGF産生量を示すグラフである。
【図4】PDGFを含む水画分のHGF産生量を示すグラフである。
【図5】PDGFを含まないメタノール画分のHGF産生量を示すグラフである。
【図6】PDGFを含むメタノール画分のHGF産生量を示すグラフである。
【図7】PDGFを含まないチコリ酸のHGF産生量を示すグラフである。
【図8】PDGFを含むチコリ酸のHGF産生量を示すグラフである。
【図9】ホコウエイ抽出物のΔHGF値を示すグラフである。
【図10】水画分のΔHGF値を示すグラフである。
【図11】メタノール画分のΔHGF値を示すグラフである。
【図12】チコリ酸のΔHGF値を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒲公英から得られる抽出物を有効成分とすることを特徴とする肝細胞増殖因子産生促進剤。
【請求項2】
下記一般式(1)、

(式中、R〜Rは、各々独立に、水素原子または炭素数1〜3のアルキル基を示し、XおよびXは、各々独立に、エチレン基またはビニレン基を示す)で表される骨格を有する化合物を有効成分とすることを特徴とする肝細胞増殖因子産生促進剤。
【請求項3】
血小板由来成長因子もしくは血小板由来成長因子様作用物質の存在下でHGF産生促進を増強する請求項1または2記載の肝細胞増殖因子産生促進剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−43013(P2010−43013A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−206827(P2008−206827)
【出願日】平成20年8月11日(2008.8.11)
【出願人】(308040638)ツムラライフサイエンス株式会社 (12)
【Fターム(参考)】