説明

肝細胞成長因子の2以上の異型体を利用した心臓疾患の治療及び予防

本発明は肝細胞成長因子(HGF)の2以上の異型体を対象に投与することを含む、対象における心臓疾患を治療又は予防する方法に関するものである。本発明はまた、肝細胞成長因子(HGF)の2以上の異型体を血管に投与することを含む、血管における内皮細胞の成長を促進する方法に関するものである。一具体例において、HGFの2以上の異型体は前記異型体をコードするポリヌクレオチドとして投与される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肝細胞成長因子(hepatocyte growth factor, HGF)の2以上の異型体(isoforms)を対象(subject)に投与することを含む、対象における心臓疾患を治療又は予防する方法に関するものである。また、本発明は、肝細胞成長因子の2以上の異型体を血管に投与することを含む、血管における内皮細胞の成長を促進する方法に関するものである。一具体例において、HGFの2以上の異型体は、前記異型体をコードする少なくとも一つのポリヌクレオチドとして投与される。
【背景技術】
【0002】
肝細胞成長因子(HGF)は、分散因子(scatter factor)又はヘパトポイエチン-A(hepatopoietin-A)としても知られているヘパリン結合糖蛋白質である。強力な肝栄養性(hepatotrophic)成長因子として初めて確認された(Nakamuraet al., Nature 342:440 (1989))HGFは、多様な形態の細胞であるミトジェネシス(mitogenesis)、モトジェネシス(motogenesis)及び形態発生(morphogenesis)のような多数の生物学的効果を有する肝葉由来のヘパリン結合蛋白質である。HGFをコードする遺伝子は染色体7q21.1に位置し、18個のエクソン(exon)及び17個のイントロン(intron)を含み、配列番号1のヌクレオチド配列を有する(SekiT., et al., Gene 102:213-219 (1991))。前記HGF遺伝子から約6kbの転写体が転写された後、これから下記のドメイン:N−末端ヘアピンループ(hairpinloop)-クリングル(kringle)1-クリングル2-クリングル3-クリングル4-不活性化されたセリン蛋白分解酵素ドメインを含む、728個のアミノ酸からなる全長ポリペプチドHGF前駆体(flHGF)が合成される。同時に、前記HGF遺伝子の選択的スプライシング(alternativesplicing)により何種類かの別のHGFポリペプチド異型体が合成される。公知の異型体には、欠損した変形(deleted variant)HGF(全長HGFのクリングル1における5個のアミノ酸が欠損した形態)、NK1(N-末端ヘアピンループ-クリングル1)、NK2(N-末端ヘアピンループ-クリングル1-クリングル2)、及びNK4(N-末端ヘアピンループ-クリングル1-クリングル2-クリングル3-クリングル4)が含まれる。また、各異型体の対立形質変形体(alleicvariant)が存在する。前記生物学的に不活性である前駆体は、血清内蛋白質分解酵素により活性化された形態の二硫化結合された異種へテロダイマー(disulfide-linkedheterodimer)に変換され得る。前記異種へテロダイマーにおいて、高分子量を有するα鎖は4個のクリングルドメイン及びプラスミノーゲン(plasminogen)の前活性化された(preactivated)ペプチド部分と類似したN−末端ヘアピンループを形成する。約80個のアミノ酸から構成された三重二硫化結合されたループ(tripledisulfide-bonded loop)構造のクリングルドメインは、蛋白質-蛋白質相互作用において重要な役割を果たすことができる。低分子量β鎖は不活性化であるセリン蛋白分解酵素-類似ドメインを形成する。723個のアミノ酸からなるdHGFはエクソン4とエクソン5の間の選択的スプライシングに因りα鎖の一番目のクリングルドメイン内の5個のアミノ酸、すなわちF、L、P、S、及びSが欠損したポリペプチドである。
【0003】
生体内(in vivo)において、HGFの二種類の異型体(728個のアミノ酸を有するflHGF及び723個のアミノ酸を有するdHGF)はエクソン4とエクソン5の間の選択的スプライシングを通じて生成される。flHGF及びdHGFはいずれも何種類かの生物学的機能が同一であるにも拘らず、免疫学的特性及びいくつかの生物学的特性の観点において異なる。
【0004】
HGFは内皮細胞(endothelial cell)の成長及び血管平滑筋細胞(vascularsmooth muscle cell)の移動を調節することにより、血管新生(angiogenesis)を刺激するものと示された。その血管新生の活性により、HGFは血管新生治療において有望な候補物質のうちの一つと見なされる。“血管新生治療(therapeuticangiogenesis)”は、冠状動脈疾患(coronary artery disease, CAD)又は末梢動脈疾患(peripheral arterydisease, PAD)のような虚血性疾患(ischemic disease)の治療のために、組換え蛋白質や遺伝子として血管新生因子を利用する介入(intervention)を意味する。HGFは内皮細胞の成長だけでなく移動を刺激するということでも知られている。(Bussolinoet al., J Cell Biol, 119;629(1992); Nakamura et al., J Hypertens 14:1067(1996))、再-内皮細胞化刺激体(re-endothelializationstimulating agent)としての役割も試験されてきた(Yasuda et al., Circulation 101:2546(2000);Hatashi et al., Gene Ther 7:1664(2000))。
HGFは血管新生治療用製剤として使用されてきた。森下(Morishita)及び同僚たちはPAD及びCAD治療のためにHGF遺伝子を使用してきた。彼らは、HGF遺伝子を投与した後、PADに対するいくつかの治療的反応を観察するにはしたものの、HGF遺伝子の伝達がCADを治療するのに効果的であるか否かは確実でない。現在まで、HGF遺伝子の伝達がCADのための多様な動物モデルにおいて試験されている(Miyagawaet al., Circulation 105:2556(2002); Azuma et al., Gene Ther 13:1206(2006); Aoki et al., Gene Ther 7:417(2000); Funatsu et al., JThoracic Cardiovasc. Sung. 124:1099(2002))。しかし、HGF遺伝子の伝達がCADに有益な効果があるか否かは未だに論争が多い。例えば、宮川とその同僚たちはヒトHGFの伝達がラット心筋梗塞(myocardialinfarction)モデルに投与8週後に梗塞した心臓の左心室拍出係数(left ventricle ejection fraction, LVEF)を増加させられなかったとのことを示した(Miyagawaet al., Circulation 105:2556(2002)、図2)。さらに、HGFの遺伝子の伝達は、同一のモデルに投与8週後に分画短縮百分率(percentfractional shortening)及び左心室前壁厚さ(LV anterior wall thickness)にほとんど影響を与えなかった(Miyagawaet al., Circulation 105:2556(2002、図3、図5)。
【0005】
HGFは再狭窄症を抑制する製剤としても使用されてきた。狭くなった(obscured)血管の治療方法として、冠状動脈成形術(Coronaryangioplasty procedure)、例えばバルーン(balloon)やステント(stent)が広く使用される。しかし、成形術を使用するとき、内膜肥厚(intimalthickening)、例えば冠状動脈再狭窄症(artery restenosis)が相当な問題を引き起こす。再挟着症の原因のうちの一つは血管損傷に対する反応から引き起こされる、細胞外基質の合成を伴う血管平滑筋細胞の過多増殖(hyper-proliferation)及び移動(migration)である。迅速な内皮再表面化(resurfacing)が平滑筋細胞の増殖を抑制し、これにより再狭窄症を抑制することができるとの証拠がある(e.g.,Bauters et al., Prog Cardiovasc Dis. 40;107(1997))。狭窄症を予防するための一つの方法として、血管内皮成長因子(VEGF)又は肝細胞成長因子のような内皮成長因子を損傷した血管に局所伝達することが試みられ、再狭窄症の弱化に効果を示した(Asaharaet al., Circulation 94:3291(1996); Yasuda et al., Circulation 101:2546(2000);Hayashi et al., Gene Ther 7:1664(2000); Walter et al., Circulation110:36(2004))。
前記で記述されたHGF遺伝子の治療法に関する全ての研究は、723個のアミノ酸をコードするdHGF cDNAでない、728個のアミノ酸をコードするflHGFcDNAを利用して行われてきた(Miyagawa et al.; Azuma et al.; Aoki et al.;Funatsu et al.; Yasuda et al.; and Hayashi et al.)。本発明は、HGFの多数の異型体(例えばflHGF及びdHGF)を発現するヌクレオチド配列の伝達が、大部分の従来報告において試験されていたflHGFに対するcDNAと比較してみたとき、動物及びヒトにおいてCADを効果的に治療することができるという最初の証明を提供する。また、本発明はHGFの多数の異型体を発現するヌクレオチド配列の伝達が血管の再-内皮細胞化の過程を加速化し得るという最初の証明を提供する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明の目的はHGFの2以上の異型体を含む組成物の使用を提供することである。
【0007】
本発明の一実施形態は、HGFの2以上の異型体又は前記異型体をコードする少なくとも一つのポリヌクレオチドを含む組成物の、対象における心臓疾患を治療又は予防するための薬剤を製造するための使用に関するものである。
【0008】
本発明のまた別の実施形態は、HGFの2以上の異型体又は前記異型体をコードする少なくとも一つのポリヌクレオチドを含む組成物の、血管における内皮細胞の成長を促進するための薬剤を製造するための使用に関するものである。
本発明のまた別の目的は、HGFの2以上の異型体を投与することにより、心臓疾患を治療又は予防する方法を提供することである。
本発明のまた別の実施形態は、HGFの2以上の異型体を含む組成物を対象に投与することを含む、対象における心筋で虚血性心臓組織の潅流を増加させたり血管密度を増加させる方法に関するものである。
本発明のまた別の実施形態は、HGFの2以上の異型体を含む組成物を対象に投与することを含む、対象における心臓疾患を治療する方法に関するものである。
本発明のさらなる実施形態は、HGFの2以上の異型体を含む組成物を対象に投与することを含む、内皮回復(endothelial repair)を向上させたり対象の血管損傷部位又は病にかかった血管に治療を提供する方法に関するものである。
本発明のさらなる目的は、HGFの2以上の異型体を含む組成物を血管に投与することを含む、血管における内皮細胞の成長を促進する方法に関するものである。一具体例において、前記血管は損傷している。さらなる具体例において、前記血管の再-内皮細胞化が促進される。
一具体例において、前記HGFの2以上の異型体は全長(full length)HGF(本明細書においてflHGFとする)及び欠損した変形(deletedvariant)HGF(本明細書においてdHGFとする)を含む。また、別の具体例において、前記HGFの2以上の異型体はまた、NK1を含む。
さらなる具体例において、前記HGFの2以上の異型体は、前記異型体をコードするポリヌクレオチドの形態で投与される。
本発明の一実施形態において、前記組成物は注射(injection)により投与される。
本発明のまた別の実施形態において、前記組成物は伝達装置(delivery device)を利用して投与される。一具体例において、前記伝達装置はステントである。さらなる具体例において、前記ステントは非重合体基盤の(non-polymer-based)ステンレススチールステント、重合体基盤のステンレススチールステント、非重合体基盤のコバルトクロムステント及び重合体基盤のコバルトクロムステントからなる群から選ばれる。
本発明の一実施形態において、前記HGFの2以上の異型体は、対象内の虚血性心臓組織に直接投与される。
本発明のさらなる実施形態は、HGFの2以上の異型体を含む組成物に関するものである。
一具体例において、前記組成物はHGFの2以上の異型体をコードするポリヌクレオチドを含む。
本発明のさらなる実施形態は、HGFの2以上の異型体を含む、対象における虚血性心臓組織の潅流を増加させるための組成物に関するものである。
本発明のさらなる実施形態は、HGFの2以上の異型体を含む、対象の血管において内皮細胞の成長を促進させるための組成物に関するものである。
一具体例において、前記組成物の対象の血管への投与は、血管の内皮細胞化(endothelialization)を促進する。また別の具体例において、前記組成物の対象の血管への投与は、血管の再-内皮細胞化(re-endothelialization)を促進及び/又は加速化する。
さらなる具体例において、前記対象は再挟着症の予防又は治療を必要とする。
【0009】
本発明の前記及びその他の目的と特徴は、添付の図面とともに考慮すると、本発明の下記の説明から明確になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】HUVEC移動に対するHGF異型体の効果を示す。
【図2】C2C12細胞移動に関するHGF異型体の効果を示す。
【図3】H9C2細胞移動に関するHGF異型体の効果を示す。
【図4】HUVEC増殖に関するHGF異型体の効果を示す。
【図5】ラット虚血性心臓疾患モデルにおいてHGFの薬理学的効能を評価する実験過程の模式図を示す。
【図6】左心室拍出係数の機能に関するHGFの効果を示す。
【図7】収縮-心室中隔(systolic-interventricularseptum)の機能に関するHGFの効果を示す。
【図8】血管密度に関する虚血性心筋内へのHGF注射の効果を示す。
【図9】心筋線維症(myocardial fibrosis)に関する虚血性心筋内へのHGF注射の効果を示す。
【図10】MIBI-SPECTの20分割モデル上の冠状動脈領域を示す。
【図11】pCK-HGF-X7注射に関する心筋領域の選択性を示す。pCK-HGF-X7は、MIBI-SPECT評価による潅流が減少した心筋領域内の冠状動脈の両側面に心筋内注射により投与される。
【図12】MIBI-SPECT下に心筋潅流に関するpCK-HGF-X7の効果を示す。
【図13】造影負荷心超音波図(contrast stressechocardiogram)により評価された心筋潅流(k)を示す。
【図14】OCT上のHGFプラスミド溶出性ステントによる再-内皮細胞化の加速化を示す。
【図15】SEM上のHGFプラスミド溶出性ステントによる再-内皮細胞化の加速化を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、CADのような心臓疾患を患っている対象に、HGFの2以上の異型体を投与することが虚血性心臓組織の潅流を増加させ、これにより心臓疾患を治療又は予防するのに効果的であるという発見に基づいている。本発明のさらなる実施形態は、HGFの2種類の異型体を投与することが、例えば血管の迅速な再-内皮細胞化を通じて再挟着症を弱化させるために、血管の内皮細胞化を促進するという発見に関するものである。したがって、本発明の目的は、HGFの2以上の異型体を投与することによって心臓疾患、例えばCAD又は冠状動脈の再狭窄症を治療又は予防する方法を提供するものである。本発明のまた別の目的は、血管において例えば損傷した血管において、内皮細胞の成長を促進する方法を提供することである。
【0012】
本発明の一実施形態は、HGFの2以上の異型体又は前記異型体をコードする少なくとも一つのポリヌクレオチドを含む組成物の、対象における心臓疾患を治療又は予防するための薬剤製造の使用に関するものである。
【0013】
本発明のまた別の実施形態は、HGFの2以上の異型体又は前記異型体をコードする少なくとも一つのポリヌクレオチドを含む組成物の、血管において内皮細胞の成長を促進するための薬剤を製造するための使用に関するものである。
【0014】
本発明のまた別の実施形態は、HGFの2以上の異型体を含む組成物を対象に投与することを含む、対象における心筋内虚血性心臓組織の潅流を増加させたり、血管密度を増加させる方法に関するものである。
【0015】
本発明のまた別の実施形態は、HGFの2以上の異型体を含む組成物を対象に投与することを含む、対象における心臓疾患を治療する方法に関するものである。
【0016】
本発明のさらなる実施形態は、HGFの2以上の異型体を含む組成物を対象に投与することを含む、内皮回復を向上させたり対象の血管損傷部位又は病にかかった血管に治療を提供する方法に関するものである。
【0017】
本発明のまた別の目的は、HGFの2以上の異型体を含む組成物を血管に投与することを含む、血管における内皮細胞の成長を促進する方法に関するものであり、ここで前記血管における内皮細胞の成長が促進される。
【0018】
一具体例において、前記方法はHGFの3個以上の異型体、例えばHGFの4個以上の異型体を含む組成物を投与することを含む。一具体例において、前記組成物はflHGF、dHGF、NK1、NK2及びNK4からなる群より選ばれるHGFの2以上の異型体を含む。また別の具体例において、前記組成物はflHGF、dHGF、NK1及びNK2からなる群より選ばれるHGFの2以上の異型体を含む。また別の具体例において、前記組成物はflHGF、dHGF及びNK1からなる群より選ばれるHGFの2以上の異型体を含む。さらなる具体例において、前記HGFの2以上の異型体はflHGF、及びdHGFを含む。さらなる具体例において、前記HGFの2以上の異型体はflHGF、及びdHGFからなる。また別の具体例において、HGFの2以上の異型体は前記異型体をコードするポリヌクレオチドの形態で投与される。
【0019】
本発明において、治療又は予防される心臓疾患は心臓、大動脈(aorta)、又は心臓内の冠状動脈或いは虚血性組織における減少した血流と関連した任意の疾患である。心臓疾患の例には、冠状動脈閉鎖(occlusion)(例えば、痔/コレステロール沈着(deposition)、大食細胞/感染細胞粘症(recruitment)、プラク破裂(plaquerupture)、血栓症(thrombosis)、血小板沈着又は新生内膜増殖(neointimal proliferation)から引き起こされたり、これと関連する);虚血症候群(例えば、心筋梗塞、安定性狭心症(stableangina)、不安定性狭心症、冠状動脈再狭窄症又は再潅流損傷から引き起こされたり、これと関連する);心筋病症(cardiomyopathy)(例えば、虚血症候群、心臓毒(cardiotoxin)、感染、高血圧、代謝性疾患(例えば尿毒症(uremia)、脚気病(beriberi)、又は糖原病(glycogenstorage disease))、放射線、神経筋肉疾患(neuromuscular disease)、浸潤性疾患(例えば類肉腫症(sarcoidosis)、血色素沈着症(hemochromatosis)、アミロイド症(amyloidosis)、ファブリー病(Fabry’sdisease)、又はハーラー症候群(Hurler’s syndrome)、外傷(trauma)、又は突発性原因(idiopathic cause);不整脈(arrhythmia又はdysrrhythmia)(例えば、虚血症候群、心臓毒、感染、高血圧、代謝性疾患、放射線、神経筋肉疾患、浸潤性疾患、外傷又は特発性の原因から引き起こされたり、関連する);感染(例えば、細菌、ウイルス、カビ又は寄生虫)のような病原性製剤により引き起こされる);及び炎症疾患(例えば心筋炎(myocarditis)、心嚢炎(pericarditis)、心臓内膜炎(endocarditis)、免疫心臓拒否(immunecardiac rejection)又は特発性、自家免疫或いは結滞組織疾患(connective tissue disease)、のうち一つから引き起こされる炎症疾患と関連する)が含まれるが、これに制限される訳ではない。
【0020】
一具体例において、本発明の方法は(例えば大動脈又は冠状動脈において)、アテローム性動脈硬化症(atherosclerosis)を治療又は予防するために、アテローム性動脈硬化症と関連する合併症(例えば、狭心症(anginapectoris)、心筋梗塞、不整脈、心不全、肝硬変(liver cirrhosis)、小児性大腿骨頭無血性壊死症(Legg-Calve-Perthesdisease)、虚血性脳卒中(ischemic stroke)、抹消血管閉塞(peripheral artery occlusion)、動脈瘤(aneurysm)、塞栓症(embolism))を予防するために、又はアテローム性動脈硬化症の初期症候群及び信号(例えば、狭心症(angina)、激しい運動(exertion)、又は間欠性跛行(intermittent claudication)における場合のように、需要に応じて増加する影響を受けた組織への血流の不能)を減少させるために使用され得る。
【0021】
また別の具体例において、本発明の方法は、血管成形術(例えば、経皮的冠動脈拡張成形術(percutaneoustransluminal coronary angioplasty)、頚動脈経皮的拡張成形術(carotid percutaneoustransluminal angioplasty)、ステント移植を有する冠動脈拡張成形術)、ステント挿入(stenting)、
1284433187307_0
(atherectomy)、又は移植(例えば、冠状動脈迂回術(coronary bypass grafting)を含む血管の外科的介入により引き起こされる心臓疾患を治療又は予防するのに使用され得る。本具体例において、前記本発明の方法は、外科的介入以前、中、及び/又は後に行うことができる。特定の具体例において、前記心臓疾患は冠状動脈再狭窄症である。
【0022】
本発明の一実施形態において、HGFの2以上の異型体は冠状動脈疾患を有する対象に投与される。一具体例において、前記対象は少なくとも一つの冠状動脈の一部又は全部が塞がっている。また、別の実施例において、前記対象は心筋梗塞を起こしていたか、起こしているか、又は危険状態にある。さらなる具体例において前記対象は、例えば血管撮影図(angiogram)、心電図(electrocardiogram)、心超音波図(echocardiogram)又はその他の過程に基づいて、虚血性心臓組織を有するものと定められてきたか、有するものと疑われる。一具体例において、前記対象は冠状動脈迂回術(CABG)のための候補である。また別の具体例において、前記対象は部分的に又は完全に遮断されたもののCABGに適合しない少なくとも一つの冠状動脈を有する。更なる具体例において、前記対象はCABGを有しているものの、これまで心筋の不完全な再潅流術(revascularization)があった。
【0023】
本発明の一実施形態において、HGFの2以上の異型体は、血管に投与されて内皮細胞の成長を促進する。一具体例において、前記血管は混濁又は損傷している。特定の具体例において、前記混濁した血管は血管の内腔が狭くなり、血管を介した血流が減少した動脈又は静脈を含むことがある。一具体例において、HGFの2以上の異型体の投与は、例えば血管成形術の過程のうち、例えば血管壁の損傷後、血管の再-内皮細胞化を促進する。特定の具体例において、再-内皮細胞化はHGFの2以上の異型体が存在しないとき内皮細胞の成長と比較して、例えば増加した内皮細胞の成長速度のように促進及び/又は加速化され得る。また別の具体例において、例えば再狭窄賞の予防又は治療を必要とする対象にHGFの2以上の異型体を投与することは血管において平滑筋細胞の増殖を抑制する。
【0024】
本明細書に使用された用語、疾患、例えば心臓疾患又は混濁したり損傷した血管の“treat”、“treating”又は“treatment”は、例えば血管新生或いは内皮細胞の成長促進に因る、前記疾患の少なくとも一つの症候群を改善させたり、前記疾患の進行を予防したり、又は前記疾患の退行を引き起こすのに十分な量で対象に投与することを意味する。例えば、心臓疾患症候群の改善と関連して、治療は少なくとも5%、好ましくは少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は少なくとも100%の症候群における注目に値する減少を引き起こす。治療を確定するために検出又は測定され得る心臓疾患の治療と関連した生理的効果には、心臓効率の増加(心拍出量(cardiacoutput)、肺動脈及び中心静脈圧(central venous pressure)又は心室拍出係数のような少なくとも一つの心臓機能の臨床指数により測定されたとおりである)、休息時又は負荷(stress)状態下の心筋における経心壁(transmural)血流、心筋組織の再生、形成、成熟、及び/又は側部(collateral)血管の成長(例えば、局所的新生血管形成(localneoangiogenesis)、血管密度増加、動脈新生(arteriogenesis)、リンパ管新生(lymphangiogenesis)、血管形成(vasculogenesis))、心筋生成(cardiomyogenesis)(例えば、横紋(striated)、平滑(smooth)又は筋上皮細胞(myoepithelialcell))、心筋組織の血管新生(vascularization)、心臓の収縮機能、左心室拍出係数、又は心室中隔;或いは心筋線維症の減少、内膜肥厚(新生内膜(neointimal)増殖/肥大症(hyperplasia))、内皮又は平滑筋細胞増殖、胸部痛又は息切れ(shortnessof breath)が含まれるが、これに制限される訳ではない。
【0025】
本明細書に使用された用語、“prevent”、“preventing”及び“prevention”は、動物において疾病の少なくとも一つの症候群(例えば、混濁したり損傷した血管に因る心臓機能の変化、又は血流の減少)の発生の減少を指す。前記予防は完全な、例えば対象における症状が完全になくなることがある。前記予防はまた、対象における症状の発生が、本発明がなければ発生していたものより少ないもののような、部分的であり得る。
【0026】
一具体例において、HGF異型体又は前記HGF異型体をコードするポリヌクレオチドは対象の脈管構造(vasvulature)又は心臓、例えば損傷した血管、部分的又は全体的に遮断された動脈、虚血性心筋組織、心膜腔(pericardialspace)、又は冠状静動脈(coronary sinus)に投与される。
【0027】
HGF異型体又は前記HGF異型体をコードするポリヌクレオチドは、本技術分野に知られている任意の手段を利用して所望の部位に伝達され得る。使用することができる伝達装置の例には、カテーテル(例えば、バルーンカテーテル、注入カテーテル、スタイレット(stiletto)カテーテル)、針、針がない注射器、ステント、注入カニューレ(cannula)、メッシュ、心臓ハーネス(harness)、シャント(shunt)、心臓ペースメーカー(cardiacpacemakers)、挿入型除細動器(implantable defibrillator)、縫合(suture)、ステープル(staple)、血管周囲ラップ(perivascularwrap)、傷部位、チャンネリング装置、移植片(graft)、及びポンプの輪郭(contour)に相当一致する柔軟性シート(pliable sheets)又は膜が含まれるが、これに限られる訳ではない。HGF異型体の伝達方法の特定例には冠状静脈洞(coronarysinus)(例えば、大心臓静脈、中心臓静脈、左心室の後静脈又は前心室静脈(anterior interventricular vein)又はこれらの分枝の一つ)に流れる静脈内に位置するバルーンカテーテルを通じた伝達;その部位において膨張したりカテーテルの端部から注入されるバルーン上にHGF異型体がコーティングされた、少なくとも一つの冠状動脈(例えば、右又は左冠状動脈)の内腔に案内されるカテーテルを通じた伝達;開心術(openheart surgery)又は(例えば、左又は右心房、又は左又は右心室への)心臓移植のうち、針を介した伝達;左心房、右心室又は左心室を通じた内部導入を利用するか、又は注射、カテーテル法(catheterization)、レーザ形成-潅流チャンネルの生成、カニューレ挿入(cannulization)、粒子銃(particlegun)の使用又はポンプの使用により達成される開胸手術(open chest procedure)、最小浸湿手術(minimally invasivesurgery)又は経皮的導入を利用した心膜腔への伝達;血液を組織に伝達する導管内に位置したカテーテルからの先行性潅流(anterogradeperfusion)による伝達、又は組織から血液を受ける導管内に位置したカテーテルからの後行性潅流(retrograde perfusion)による伝達、或いは血管開通性(vascularpatency)を維持するための内腔装置(intraluminal device)又は血管内補綴物(prosthesis)(例えば、ステント、移植片、ステント-移植片、下大静脈フィルター(venacavafilter))を介した伝達が含まれるが、これに限られる訳ではない。一具体例において、前記装置はこれ以上必要でなくなった後に除去される必要がないようにするために生分解される。特定の具体例において、前記二種類のHGF異型体は、ステントを利用して伝達される。さらなる具体例において、前記ステントは非重合体基盤のステンレススチールステント、重合体基盤のステンレススチールステント、非重合体基盤のコバルトクロムステント及び重合体基盤のコバルトクロムステントからなる群より選ばれる。
【0028】
一具体例において、前記HGF異型体をコードするポリヌクレオチドは、ポリヌクレオチドを含み、HGFポリペプチドを発現する細胞の形態で伝達される。前記細胞は、自家組織(autologous)又は非-自家組織(例えば、同種異系(aloogeneic)又は異種(xenogeneic))細胞であり得る。例えば、線維芽細胞、心筋細胞、内皮細胞又は幹細胞(例えば、胚芽幹細胞、造血母幹細胞、間葉幹細胞)を含む、移植後に生存可能な任意の細胞が使用され得る。前記ポリヌクレオチドを含む細胞は、例えば損傷した心筋に又は静脈内への注射のために、注射可能な液状懸濁液の製剤として導入され得る。細胞は傷口形成の程度を減少させ、心室機能を増大させるために梗塞領域(infarct zone)に導入され得る。前記ポリヌクレオチドが生体外(exvivo)細胞に導入されるとき、前記細胞は生体検査、スクラッピング及び外科的組織除去を含む本技術分野に知られている任意の技術により対象から得られる。前記分離された細胞は、ポリヌクレオチドが細胞内に導入されるのに十分な時間、例えば2、4、6、8、10、12、18、24、36、48時間以上の間、培養され得る。短時間の間一次細胞を培養する方法は、本技術分野においてよく知られている。例えば、細胞を付着したり、懸濁させてプレート(例えば、マイクロウェルプレート)において培養することができる。一具体例において、細胞内ポリヌクレオチドが存在するか否かは細胞を再度対象に導入する前に決定される。また、別の具体例において、前記ポリヌクレオチドを含有する細胞が選別され(例えば、ポリヌクレオチド内の選別マーカーの存在に基づいて)、前記ポリヌクレオチドを含有する細胞のみが対象内に再導入される。
【0029】
HGF異型体又は前記HGF異型体をコードするポリヌクレオチドが注射により伝達されるとき、前記注射は心臓内注射(intracardiacinjection)、例えば心房内(intraatrial)(左及び/又は右)或いは心室内(intraventricular)(左及び/又は右)注射であり得る。前記注射はまた心筋内注射(intramyocardialinjection)であり得る。注射の部位は虚血性/低酸素性領域又は近傍、正常組織及び虚血性/低酸素性領域の境界、或いは正常組織内であり得る。注射の部位は少なくとも一つの冠状動脈、例えば閉塞した冠状動脈の部分であり得る。注射は、心外膜(transepicardial)又は心内膜(transendocardial)注射であり得る。伝達は少なくとも一つの部位に一回の注射又は多数の注射により行われる。伝達は、心膜内(intrapericardial)注射により行われる。血管部位への伝達は、血管内注射、例えば静脈内又は動脈内(冠状動脈内、大動脈内)注射によることが可能である。少なくとも二つの冠状動脈、例えば少なくとも一つの左及び一つの右冠状動脈に、例えば冠状動脈の内腔に少なくとも約1cm部位に伝達され得る。血管注射は、例えば虚血性組織や病にかかった組織付近の部位、血管損傷の部位又は狭窄症部位に行われる。
【0030】
HGF異型体の投与は、例えば0.5、1、2、3、4、5、6、7日以上の間隔の後に、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10週以上の間隔の後に一回を超過して繰り返される。一具体例において、HGF異型体をそれぞれ投与した後、対象の心臓潅流状態又は血管の健康を、例えば血管撮影図(angiogram)、心電図(electrocardiogram)、心超音波図(echocardiogram)又はその他の過程により追跡観察し、必要な場合さらに投与する。
【0031】
本発明の一具体例において、HGFの2以上の異型体は、現在虚血事例(ischemicevent)を経験している対象に投与される。また別の具体例において、HGFの2以上の異型体は、虚血事例が発生した後、可能な限り早く、例えば虚血性事例の0.5、1、2、3、4、5、6、12、18、24、36、48又は72時間内に投与される。
前記HGFの2以上の異型体は、治療的有効投与量、例えば対象の心臓及び/又は血管状態に注目するに値する改善、例えば、虚血性心臓組織の潅流の増加、虚血性心臓組織における血管密度の増加、虚血性心臓組織における線維症(fibrosis)の減少、血管損傷部位の減少、内皮細胞化の増加等を引き起こす投与量で投与される。前記有効投与量は、疾患の程度及び/又は内皮細胞化の必要性、選択された投与経路、年齢、性別及び各対象の体重、対象の健康状態、及び対象の症状の深刻度によって対象ごとに異なるのであり、一日の投与量又は個別投与量で投与され得る。したがって、前記一日の投与量はどのような方式であっても本発明の範疇は制限されるものと理解されてはならない。例えば、前記HGFの2以上の異型体が蛋白質として投与されるとき、治療としての有効投与量は、各蛋白質の約1μg乃至約100mg、例えば約10μg乃至約10mgの範囲であり得る。前記HGFの2以上の異型体がポリヌクレオチドとして投与されるとき、治療としての有効投与量は約1μg乃至約10mg、例えば約5μg乃至約5mg、例えば約10μg乃至約2mg、100μg乃至約1mgの範囲であり得る。前記HGF異型体の投与が一回を超過して繰り返される場合には、投与量は毎回同一であるか、異なることもある。
一具体例において、前記方法は心臓及び/又は血管の疾患を治療するのに効果的なものと知られているさらなる治療剤又は過程(例えば、血管成形術)を対象に投与することをさらに含む。治療剤の例には、血管新生促進剤(例えば、血管内皮成長因子、酸化窒素の放出、又は生成剤、線維芽細胞成長因子、血小板由来成長因子、インターロイキン-6、単核細胞走化性蛋白質-1(monocytechemotactic protein-1)、顆粒球-大食細胞群落刺激因子(granulocyte-macrophage colony stimulatingfactor)、転換成長因子-β(transforming growth factor-β)、抗血栓製剤(anti-thrombotic agent)(例えば、アスピリン、ヘパリン、PPACK、エノキサパリン(enoxaparin)、ヒルジン)、抗凝固剤、抗生剤、抗血小板剤、血栓溶解剤(thrombolytics)(例えば、組織プラスミノーゲン活性剤)、抗増殖剤、抗炎症剤、肥大症(hyperplasia)を抑制する製剤、再狭窄症を抑制する製剤、平滑筋細胞抑制剤、成長因子、成長因子抑制剤、細胞付着抑制剤、化学治療剤、及びこの組合せを含むが、これに限られる訳ではない。
下記の定義が提供され、本発明の範疇及び実行を理解するのに役立つべきである。
本発明のための用語“分離された(isolated)”は、元来の環境(自然に存在する環境)から除かれた生物学的物質(細胞、核酸又は蛋白質)を表す。例えば、植物又は動物内に自然の状態で存在するポリヌクレオチドは分離されたものでないものの、自然に存在する隣接した核酸から分離された同一のポリヌクレオチドは“分離された”ものと見なされる)
“核酸”、“核酸分子”、“オリゴヌクレオチド”及び“ポリヌクレオチド”は、相互交換的に使用され、単一筋の形態や二重筋の螺旋(helix)としてのリボヌクレオシド(アデノシン、クアノシン、ウリジン又はシチジン;“RNA分子”)又はデオキシリボヌクレオシド(デオキシアデノシン、デオキシクアノシン、デオキシチミン又はデオキシシチジン;“DNA分子”)のリン酸エステルの重合体の形態又はフォスフォロチオエート(phosphorothioate)及びチオエステルのような、この任意のリン酸エステル類似体を指す。このうち、螺旋DNA-DNA、DNA-RNA、及びRNA-RNA螺旋が可能である。用語、核酸分子、及び特にDNA又はRNA分子は前記分子の一次及び二次構造のみを指し、ある特定の三次形態に制限しはしない。したがって、この用語はその中でも線状又は環状DNA分子(例えば制限酵素の断片)、プラスミド、超螺旋形(supercoiled)DNA及び染色体として発現する二重螺旋DNAを含む。特定二重筋DNA分子の構造を論じるとき、配列が転写されないDNA筋(すなわち、mRNAに一致する配列を有する筋)に従って5’から3’方向にのみ提示する一般的な規約に従って本明細書に配列が記述される。“組換えDNA分子”は分子生物学的操作を経たDNA分子である。DNAはcDNA、ゲノムDNA、プラスミドDNA、合成DNA及び半合成DNAを含むが、これに制限されない。
ポリヌクレオチド配列に適用される用語“断片(fragment)”は、言及した核酸に比して長さが減少した核酸の配列を指し、前記言及された核酸と同一のヌクレオチド配列を共通の部分以上に含む。このような本発明による核酸断片は、適切な場合、構成成分としてより大きいポリヌクレオチド内に含まれ得る。このような断片は、本発明による核酸の少なくとも6、8、9、10、12、15、18、20、21、22、23、24、25、30、39、40、42、45、48、50、51、54、57、60、63、66、70、75、78、80、90、100、105、120、135、150、200、300、500、720、900、1000、1500、2000、3000、4000、5000以上の連続したヌクレオチド範囲の長さのオリゴヌクレオチドを含むか、そうでなければ構成する。
“遺伝子”は転写によってのみ生成される機能性分子(例えば、生活性RNA種)又は転写及び翻訳により生成される機能性分子(例えば、ポリペプチド)を含む機能性分子をコードするヌクレオチドを含むポリヌクレオチドを指す。前記用語“遺伝子”はcDNA及びゲノムDNA核酸を含む。“遺伝子”はコード領域に先行する調節配列(5’-非コード配列)及び後行する調節配列(3’-非コード配列)を含む、特定RNA、蛋白質又はポリペプチドを発現する核酸の断片を指したりもする。“天然性(native)遺伝子”は自己の調節配列を有する、自然において発見される遺伝子を指す。“キメリック遺伝子”は自然では共に発見されない調節及び/又はコード配列を含む、天然遺伝子でない任意の遺伝子を指す。したがって、キメリック遺伝子は別の供給源から由来した調節配列及びコード配列を含むか、又は同一の供給源から由来したものの、自然において発見されるものとは異なる方式で配列された調節配列及びコード配列を含み得る。キメリック遺伝子は別の供給源から由来したコード配列及び/又は別の供給源から由来した調節配列を含み得る。“内生的(endogenous)遺伝子”は生物のゲノム内に元来の位置にある天然型遺伝子を指す。“外来(foreign)”遺伝子又は“異種(heterologous)”遺伝子は正常では宿主生物において発見されないが、遺伝子伝達によって宿主生物に伝達された遺伝子を指す。外来遺伝子は、非天然型生物内に挿入された天然型遺伝子、又はキメリック遺伝子を含み得る。“移植遺伝子(transgene)”は遺伝子伝達過程により細胞内に導入された遺伝子である。
【0032】
“異種DNA”は細胞内又は細胞の染色体部位に自然に位置しないDNAを指す。前記異種DNAは細胞に異質的な遺伝子を含み得る。
【0033】
用語“ゲノム”はミトコンドリア、染色体及びウイルスDNA又はRNAだけでなく染色体DNA又はRNAを含む。
【0034】
単一筋形態の核酸分子が適切な温度及び溶液イオン強度の条件下で別の核酸分子に結合することができるとき、核酸分子がcDNA、ゲノムDNA又はRNAのようなまた別の核酸分子に“混成化”され得る。混成化及び洗浄条件は広く公知にされており、Sambrooket al. in Molecular Cloning:A Laboratory Manual, Second Edition, ColdSpring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor (1989)、特に11章及び表11.1(本明細書に参照として統合されている)に例示されている。温度及びイオン強度条件が混成化の“厳格性(stringency)”を決定する。
厳格性条件は、関連性が遠い生物からの相同配列のように、適当に類似した断片ないし関連性が近い生物からの機能性酵素を複製する遺伝子のように非常に類似した断片を選別するために調整され得る。相同核酸を予備選別する場合、55℃の溶解点(Tm)に該当する厳格性が低い混成化条件、例えば5X SSC、0.1% SDS、0.25%の牛乳、及びホルムアミドなし; 又は30%ホルムアミド、5X SSC、0.5% SDSが使用され得る。普通の厳格性混成化条件は高い溶解点に該当し、例えば5X又は6X SSCを有する40%ホルムアミドに該当する。高い厳格性混成化条件は、最も高い溶解点、例えば50%ホルムアミド、5X又は6XSSCに該当する。
【0035】
混成化の厳格性に応じて塩基間に不一致(mismatch)が可能であるにも拘らず、混成化は2個の核酸が相補的な配列を含有することが要求される。用語“相補的な(complementary)”は互いに混成化することができるヌクレオチド塩基間の関係を記述するのに使用される。例えば、DNAと関連して、アデノシンはチミンに相補的であり、シトシンはグアニンに相補的である。したがって、本発明は明細書に開示されたり使用された全体配列に相補的な、分離された核酸断片だけでなく、実質的に類似した核酸配列も含む。
【0036】
本発明の一具体例において、ポリヌクレオチドは55℃の溶解点における混成化段階を含む混成化条件を利用し、前記言及した条件を利用することによって検出される。別の具体例において、前記溶解点は60℃、63℃又は65℃である。
【0037】
混成化後の洗浄もまた、厳格性の条件を決定する。一種類のセットの条件は6XSSC、0.5% SDSで常温において15分間始めてから、2X SSC、0.5% SDSで45℃において30分間繰り返した後、0.2X SSC、0.5%SDSで50℃において30分間、2回繰り返す一連の洗浄過程を利用する。厳格化条件の好ましいセットは、より高い温度を利用するが、2X SSC、0.5% SDSにおいて最後の2回の30分間の洗浄温度が60℃に上昇したことを除いては前記と同様に洗浄する。非常に厳格な条件のまた別の好ましいセットは、0.1XSSC、0.1% SDSで65℃において最後の2回の洗浄を利用する。
【0038】
核酸を混成化させるための適切な厳格性は、核酸の長さ及び相補性の程度のような本技術分野に広く知られている変数によって異なる。2個のヌクレオチド配列間の類似性又は相同性の程度が大きければ大きいほど前記配列を有する核酸の混成体に対する溶解点の数値が高くなる。核酸混成化の相対的安定性(さらに高い溶解点に該当)は、次の順序に減少する(RNA:RNA、DNA:RNA、DNA:DNA)。長さが100個のヌクレオチドよりも大きい混成体の場合、溶解点を計算するための方程式が導き出された(Sambrooket al., supra, 9.50-0.51 参照)。さらに短い核酸、すなわちオリゴヌクレオチドの混成化の場合、不一致位置がより重要になり、前記オリゴヌクレオチドの長さがその特異性を決定する(Sambrooket al., supra, 11.7-11.8 参照)。
【0039】
本発明の一具体例において、ポリヌクレオチドは500mM未満の塩及び少なくとも37℃における混成化段階及び少なくとも63℃の温度において2XSSPEでの洗浄段階を含む混成化条件を使用して検出される。また別の具体例において、前記混成化条件は、混成化段階のための200mM未満の塩及び少なくとも37℃を含む。さらなる具体例において、前記混成化条件は、混成化及び洗浄段階のすべての場合、2XSSPE及び63℃を含む。
【0040】
また別の具体例において、混成化され得る核酸の長さは、少なくとも約10個のヌクレオチドである。好ましくは、混成化され得る核酸の最小長さは少なくとも約15個のヌクレオチド;例えば、少なくとも約20個のヌクレオチド;例えば少なくとも30個のヌクレオチドである。さらに、熟練の当業者であれば、前記温度及び洗浄溶液の塩濃度がプローブの長さと同じ因子に応じて必要な場合、調節され得ることを認識するはずである。
【0041】
用語“プローブ”は、相補的な単一筋の標的核酸と塩基対をなして二重螺旋分子を形成することができる単一筋の核酸分子を指す。
【0042】
本明細書に使用されているように、用語“オリゴヌクレオチド”はゲノムDNA分子、cDNA分子、プラスミドDNA又はmRNA分子に混成化され得る短い核酸を指す。オリゴヌクレオチドは、例えばバイオチンのような標識(label)が共有結合された32P-ヌクレオチド又はヌクレオチドで標識化され得る。標識化されたオリゴヌクレオチドは、核酸の存在を検出するプローブとして使用することができる。オリゴヌクレオチド(このうち、一つ又は全てが標識化され得る)は核酸の全長又は断片をクローニングするために、DNA配列分析のために、又は核酸の存在を検出するために、PCRプライマーとして使用され得る。オリゴヌクレオチドはまた、DNA分子と三重螺旋(triplehelix)を形成するのに使用され得る。一般的に、オリゴヌクレオチドは合成的に、好ましくは核酸合成機上で製造される。したがって、オリゴヌクレオチドはチオエステル結合等のような非-自然的に発生するフォスフォエステル類似体結合を利用して製造することができる。
【0043】
“プライマー”は標的核酸と混成化して、適切な条件下でDNA合成のための開始点として作用し得る二重螺旋核酸領域を形成するオリゴヌクレオチドを指す。このようなプライマーはポリメラーゼ連鎖反応において使用されたりDNA配列分析のために使用されることがある。
【0044】
“ポリメラーゼ連鎖反応”は、PCRに縮約され、特定の核酸配列を酵素的に増幅させる試験管内(invivo)方法を指す。PCRは三段階:標的分子の筋を分離させるための鋳型核酸の変性(denaturation)、単一筋のPCRオリゴヌクレオチドプライマーを前記鋳型核酸に結合させること(annealing)、及び前記結合されたプライマーのDNAポリメラーゼによる拡張(extension)を含む各サイクルを有する、繰り返された一連の温度サイクルを含む。PCRは標的分子の存在を検出する手段及び定量的又は半定量的条件下において利用可能な核酸内における標的分子の相対的な量を決定するための手段を提供する。
【0045】
“逆転写-ポリメラーゼ連鎖反応”は、RT-PCRに縮約され、RNA分子又は分子から標的cDNA分子又は分子を酵素として生成した後、前記で記述されているように前記標的cDNA分子又は分子内の特定核酸配列を酵素として増幅させる試験管内(invivo)方法を指す。RT-PCRはまた、前記標的分子の存在を検出し、定量的又は反定量的条件下で利用可能な核酸内標的分子の相対的な量を決定するための手段を提供する。
【0046】
DNA“コード配列”は、ポリペプチドをコードし、適切な調節配列の統制下に置かれたとき試験管内(invivo)又は生体内(in vivo)細胞においてポリペプチドに転写及び翻訳され得る二重筋DNA配列を指す。“適切な調節配列”はコード配列の上流(5’非コード配列)、内部、又は下流(3’非コード配列)に位置するヌクレオチド配列を指し、これは連関したコード配列の転写、RNA加工又は安定性或いは翻訳に影響を及ぼす。調節配列にはプロモーター、翻訳リーダ配列、イントロン、ポリアデニレーション認識配列、RNA加工部位、作動子(effector)結合部位及び幹-ループ(stem-loop)構造が含まれる。前記コード配列の境界は、5’(アミノ)末端の開始コドン及び3’(カルボキシル)末端の翻訳終結コドンにより決定される。コード配列は原核配列、mRNAからのcDNA、ゲノムDNA配列及び、さらには合成DNA配列を含み得るが、これに制限されない。もし、前記コード配列を真核細胞において発現させようとするのであれば、ポリアデニレーションシグナル及び転写終結配列が一般的に前記コード配列の3’側に位置するはずである。
【0047】
“オープンリーデイングフレーム(Open reading frame)”はORFに縮約され、ATG又はAUGのような翻訳の出発又は開始コドン及び終結コドンを含み、潜在的にポリヌクレオチド配列に翻訳され得る長さの核酸配列、DNA、cDNA又はRNAを指す。
【0048】
用語“下流(downstream)”は言及された核酸配列において、3’側に位置したヌクレオチド配列を指す。特に、下流ヌクレオチド配列は一般的に転写出発点に後行する配列に関するものである。例えば、遺伝子の翻訳開始コドンは転写の出発部位の下流に位置する。
【0049】
用語“上流(upstream)”は言及された核酸配列の5’側に位置するヌクレオチド配列を指す。特に、上流ヌクレオチド配列は一般的にコード配列又は転写出発点の5’側に位置した配列に関するものである。例えば、大部分のプロモーターは転写出発部位の上流に位置する。
【0050】
“相同組換え(homologous recombination)”はまた別のDNA分子内への外来DNA配列の挿入、例えば染色体内におけるベクターの挿入を指す。好ましくは、前記ベクターは相同組換えのための特定の染色体部位を標的とする。特定の相同組換えの場合、前記ベクターは染色体配列に相同性がある十分に長い領域を含有して相補的結合及び染色体内へのベクターの混入を可能にするのである。相同性がある領域が長ければ長いほど配列類似性の程度が大きくなり、相同組換えの効率を増加させることができる。
【0051】
“ベクター”は、核酸のクローニング及び/又は宿主細胞へ伝達するための任意の運搬体を指す。ベクターは付着された切片を増幅させるために、また別のDNA切片が付着されたレプリコン(replicon)であり得る。“レプリコン”は生体内(invivo)DNA複製の自律単位として作用し得る、すなわちそれ自身の統制下に複製することができる、任意の遺伝要素(例えば、プラスミド、ファージ、コスミド、染色体、ウイルス)を指す。用語“ベクター”は核酸を試験管内(invivo)、生体外(ex vivo)又は生体内(in vivo)細胞に導入するためのウイルス性運搬体だけでなく、非ウイルス性運搬体のすべてを含む。本技術分野において知られている相当数のベクターが核酸を操作し、反応要素(responseelement)及びプロモーターを遺伝子として混入する等に使用することができる。好ましいベクターには、例えばプラスミド又は、例えばアデノウイルス、レトロウイルス、アデノ-関連ウイルス、ヘルペスウイルス又はpBR322又はpUCプラスミド誘導体或いはブルースクリプト(Bluescript)ベクターのようなプラスミドを含む変形したウイルスを含む。例えば、反応要素及びプロモーターに該当するDNA断片の適切なベクターへの挿入は、前記適切なDNA断片を相補的な接着末端(cohesivetermini)を有する選択されたベクターと結合させることにより達成することができる。そうでなければ、DNA分子の末端が酵素として変形されたり、又はヌクレオチド配列(リンカー)をDNA末端と結合させることによって任意の部位が生成され得る。そのようなベクターは、細胞ゲノムにマーカーを混入した細胞を選別するための選別マーカー遺伝子を含有するように操作することができる。このようなマーカーはマーカーによりコードされた蛋白質を混入して発現する宿主細胞を確認及び/又は選別することができるようにする。
【0052】
ウイルスベクターは、生きている動物が対象であるだけでなく、細胞における広範囲な遺伝子伝達の適用分野に使用されてきた。使用され得るウイルスベクターは、アデノウイルス、レトロウイルス、バクシニア(vaccinia)ウイルス、水痘ウイルス(poxvirus)、アデノ関連ウイルス、単純ヘルペスウイルス(herpes simplexvirus)、レンチウイルス(lentivirus)、バキュロウイルス(baculovirus)、センダイウイルス(sendai virus)、麻疹ウイルス(measlesvirus)、シミアンウイルス(simian virus)40及びエプスタイン-バール (Epstein-Barr)ウイルスベクターを含むが、これに制限されない。非-ウイルス性ベクターはプラスミド、リポプレックス(lipoplex)(陽イオンリポソームDNA複合体)、ポリプレックス(polyplex)(陽イオン重合体-DNA複合体)及び蛋白質-DNA複合体を含む。核酸以外に、ベクターは核酸伝達結果(組織としての伝達、発現持続性等)を選別、測定及び追跡観察するのに有用な少なくとも一つの調節領域及び/又は選別マーカーを含むことがある。
【0053】
用語“プラスミド”はしばしば細胞の中心代謝(centralmetabolism)の一部でない遺伝子を有する染色体外の要素を指し、一般的に環状二重螺旋DNA分子の形態である。このような要素は、任意の供給源から由来した単一又は二重筋DNA或いはRNAの、自家複製(autologousreplicating)配列、ゲノム挿入(genome integrating)配列、ファージ又はヌクレオチド配列、線形、環状又は超螺旋形であり得、これに数多くのヌクレオチド配列が結合されるか組換えされ、プロモーター断片及び選択された遺伝子生成物用DNA配列を適切な3’非翻訳された配列とともに細胞内に導入させることができる独特な構造体を形成する。
【0054】
“クローニングベクター”はプラスミド、ファージ又はコスミドのように、連続的に複製し、複製原点を含む単位長さの核酸、好ましくはDNAである“レプリコン”を指し、これに付着された切片を複製させるために、また別の核酸切片が付着され得る。クローニングベクターは、一つの細胞型において複製することができ、また別の細胞型において発現することができる(シャトルベクター)。クローニングベクターは前記ベクターを含む細胞を選別するのに使用され得る少なくとも一つの配列及び/又は所望の配列を挿入するための複数クローニング部位(multiplecloning site)を含むことが可能である。
【0055】
用語“発現ベクター”は挿入された核酸配列を発現した後、宿主を形質転換させることができるように考案されたベクター、プラスミド又は運搬体を指す。クローンされた遺伝子、すなわち挿入された核酸配列は、一般的にプロモーター、最小プロモーター、エンハンサー等のような調節要素の統制下に置かれる。所望の宿主細胞における核酸の発現を誘導するのに有用な開始調節領域又はプロモーターは無数に多く、本技術分野の熟練者によく知られている。実質的にこれら遺伝子の発現を誘導することができる任意のプロモーターは、ウイルスプロモーター、バクテリアプロモーター、動物プロモーター、哺乳動物プロモーター、合成プロモーター、構成プロモーター、組織特異的プロモーター、発病(pathogenesis)又は疾病関連プロモーター、発生特異的プロモーター(development specificpromoter)、誘導性プロモーター(inducible promoter)、弱く調節されたプロモーター(light regulated promoter)を含むが、これに制限されるのではなく;SV40初期(SV40)プロモーター領域、ラウス肉腫ウイルス(Roussarcoma virus, RSV)の3’長い末端反復(LTR)に含有されたプロモーター、アデノウイルス(Ad)のE1A又は主要後期プロモーター(majorlate promoter, MLP)、ヒトサイトメガロウイルス(human cytomegalovirus, HCMV)すなわち初期プロモーター(immediateearly promoter)、単純ヘルペスウイルス(HSV)チミジンキナーゼ(TK)プロモーター、バキュロウイルスIE1プロモーター、伸長因子(elongationfactor)1α(EF1)プロモーター、グリセルアルデヒド-3-ホスフェート脱水素酵素(GSPDH)プロモーター、フォスフォグリセレートキナーゼ(PGK)プロモーター、ユビキチンC(Ubc)プロモーター、アルブミンプロモーター、マウスメタロチオネイン(metallothionein)-Lプロモーター及び転写調節領域の調節配列、ユビキタスプロモーター(HPRT、ビメンチン(vimentin)、β-アクチン、チューブリン等)、中間フィラメント(intermediatefilament)(デスミン(desmin)、神経微細線維、ケラチン、GFAP等)、治療遺伝子のプロモーター(MDR、CFTR又は因子VIII形態等の)、発病又は疾病関連プロモーター、及び膵臓腺房細胞(pancreatic acinar cell)において活性であるエラスターゼ(elastase)I遺伝子調節領域のような組織特異性を示し、形質転換動物において利用されてきたプロモーター;膵臓β細胞において活性であるインシュリン遺伝子調節領域、リンパ系(lymphoid)細胞において活性である免疫グロブリン遺伝子調節領域、睾丸、乳房、リンパ系及び大食細胞において活性であるマウス乳癌ウイルス調節領域;肝において活性であるアルブミン遺伝子、ApoAI及びApo AII調節領域、肝において活性であるα-胎児蛋白質(fetoprotein)遺伝子調節領域、肝において活性であるα-1アンチトリプシン遺伝子調節領域、骨髄細胞において活性であるβ-グロビン遺伝子調節領域、脳における希突起膠細胞(oligodendrocytecell)において活性であるミエリン塩基性蛋白質(myelin basic protein)調節領域、骨格筋において活性であるミオシン経鎖-2遺伝子調節領域及び視床下部において活性である生殖腺刺激ホルモン放出ホルモン(gonadotropicreleasing hormone)、ピルビン酸キナーゼプロモーター、ビリン(villin)プロモーター、脂肪酸結合腸内蛋白質のプロモーター、平滑筋細胞β-アクチンのプロモーター等を含むが、これに制限されない。
【0056】
前記製造された発現ベクターは、その後薬剤学的組成物の形態で対象に投与される。HGFの2以上の異型体は分離して投与することができるが、連続的に又は同時に、すなわち併用投与することができ;前記HGFの2以上の異型体に対するそれぞれのプラスミドが投与されたり併用投与されるか、又は前記HGFの2以上の異型体に対する遺伝子を含有し、前記HGFの2以上の異型体に対する遺伝子を発現することができる単一発現プラスミドが投与され得る。例えば、2種類の異型体f1HGF及びdHGFが2個の別途のプラスミドを利用して投与され得る。その代わりに、f1HGF及びdHGFに対する遺伝子を含有する2種類の別途のプラスミドが併用投与のために使用され得る。最後に、f1HGF及びdHGFのすべてに対する遺伝子を含有する単一発現プラスミドが投与され得る。本発明の特定の実施形態において、単一発現プラスミド上のf1HGF及びdHGFは同一のポリヌクレオチドによりコードされるか、個別のポリヌクレオチドによりコードされる。単一プラスミド上にHGF異型体を発現することができる2以上のポリヌクレオチドを含む数多くの接近法がある。これらは、例えば内部リボソーム導入部位(InternalRibosome Entry Site, IRES)配列、二重プロモーター/発現カセット及び融合蛋白質の使用を含む。前記において論議したように、同一のプラスミドから発現したり2個の個別のプラスミド上において発現された2以上の異型体はf1HGF、dHGF、NK1及びNK2からなる群より選ばれるか、又は配列番号2-5及び11-12からなる群より選ばれる。前記2以上の異型体は、本技術分野の熟練者に知られているさらなるHGF異型体を含むこともある。
【0057】
ベクターは本技術分野において知られている方法、例えば注射、形質感染、電気穿孔法、微細注射(microinjection)、形質導入、細胞融合、リポフェクション(lipofection)、遺伝子銃の使用又はDNAベクター伝達体(DNAvector transporter)により、所望の宿主細胞に導入することができる(e.g., Wu et al., J. Biol. Chem. 267:963 (1992); Wu etal., J. Biol. Chem. 263:14621 (1988); and Hartmut et al., CanadianPatent Application No. 2,012,311, 参照)。
【0058】
本発明に伴うポリヌクレオチドは、リポフェクションにより生体内において導入され得る。過去の数十年の間、試験管内(in vivo)核酸のカプセル化及び形質感染のためにリポソームの使用が増加してきた。リポソーム媒介形質感染が当面した困難と危険を制限しようとして考案された合成陽イオン性脂質(syntheticcationic lipid)が遺伝子の生体内(in vivo)形質感染のためのリポソームを製造するのに使用され得る(Felgner etal., Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 84:7413 (1987); Mackey et al., Proc.Natl. Acad. Sci. USA 85:8027 (1988); and Ulmer et al., Science 259:1745(1993))。陽イオン性脂質の使用は、陰性の電荷を帯びた核酸のカプセル化を促進することができ、また陰性の電荷を帯びた細胞膜との融合を促進することができる(Felgneret al., Science 337:387 (1989))。核酸を伝達するための特に有用な脂質化合物及び組成物がWO95/18863,WO96/17823 及び U.S. 5,459,127に記述されている。外因性(exogenous)遺伝子を生体内(invivo)特定組織内に導入するためのリポフェクションの使用は、いくつかの実用的な長所がある。リボソームの特定細胞への分子標的化は、一つの種類の領域の利点を提示する。特定の細胞型への直接的な形質感染が、膵臓、肝、腎臓及び脳のように細胞異質性を有する組織に特に好ましいものであることが明らかである。脂質は、標的化のために別の分子と化学的に結合することができる(Mackyet al. 1988)。標的化されたペプチド、例えば、ホルモン又は神経伝達物質及び抗体のような蛋白質、又は非-ぺプチド性分子が化学的にリボソームに結合され得る。
【0059】
陽イオン性オリゴペプチド(例えば、W095/21931)、DNA結合蛋白質から由来したペプチド(例えば、W096/25508)、又は陽イオン性重合体(例えば、W095/21931)のような、別の分子がまた生体内核酸の形質感染を容易にするのに有用である。
【0060】
生体内(in vivo)ベクターを純粋な(naked)DNAプラスミドとして導入することもまた可能である(米国特許番号第5,693,622号、5,589,466号及び第5,580,859号参照)。受容体-媒介DNA伝達法が使用されることもある(Curielet al., Hum. Gene Ther. 3:147 (1992); and Wu et al., J. Biol. Chem.262:4429 (1987))。
【0061】
用語“形質感染(transfection)”は、細胞による外因性又は異種(heterologous)RNA又はDNAの吸収(uptake)を指す。外因性又は異種RNA或いはDNAが細胞内部に導入されるとき、このようなRNA又はDNAにより細胞が“形質感染”される。前記形質感染されたRNA又はDNAが表現型(phenotypic)の変化をもたらすとき、外因性又は異種RNA或いはDNAにより細胞は“形質転換”される。前記形質転換させるRNA又はDNAは、染色DNA内に挿入(共有結合)されて細胞のゲノムを構成することができる。
【0062】
“形質転換(transformation)”は、核酸断片を宿主生物内に伝達して遺伝学的に安定的な遺伝(inheritance)を引き起こすことを指す。形質転換された核酸の断片を含有する宿主生物は、“形質転換(transgenic)”又は“組換え”或いは“形質転換された(transformed)”生物と称される。
【0063】
さらに、ポリヌクレオチドを含む組換えベクターは、増幅又は発現させようとする細胞宿主における複製のための少なくとも一つの原点(origin)、マーカー又は選別マーカーを含み得る。
【0064】
用語“選別マーカー”はマーカー遺伝子の効果、すなわち抗生剤の抵抗性、除草剤の抵抗性、比色(colorimetric)マーカー、酵素、蛍光マーカー等に基づいて選別され得る確認因子、一般的に抗生剤又は化学的抵抗性遺伝子であり、ここで前記効果は所望の核酸の遺伝を追跡及び/又は所望の核酸の遺伝させた細胞又は生物を確認するのに使用される。本技術分野に知られていて使用される選別マーカー遺伝子の例には、アンピシリン、ストレプトマイシン、ゲンタマイシン、カナマイシン、ハイグロマイシン、ビアラホス(bialaphos)除草剤、スルホンアミド等;及び表現型マーカー、すなわちアントシアニン調節遺伝子、イソペンタニル伝達酵素遺伝子等を含む。
【0065】
用語“レポーター遺伝子”はレポーター遺伝子の効果に基づいて確認され得る確認因子をコードする核酸を指し、ここで、前記効果は所望の核酸の遺伝を追跡し、所望の核酸を遺伝させた細胞又は生物を確認及び/又は遺伝子の発現誘導又は転写を測定するのに使用される。本技術分野に知られて使用されるレポーター遺伝子の例には、ルシフェラーゼ(Luc)、緑色蛍光蛋白質(GFP)、クロラムフェニコール、アセチルトランスファラーゼ(CAT)、β-ガラクトシダーゼ(LacZ)、β-グルクロニダーゼ(Gus)等が含まれる。選別マーカー遺伝子もまたレポーター遺伝子として考慮され得る。
【0066】
“プロモーター”及び“プロモーター配列”は相互交換的に使用され、コード配列又は機能的RNAの発現を調節することができるDNA配列を指す。一般的にコード配列は、プロモーター配列の3’側に位置する。プロモーターはそれ全体が天然型遺伝子から由来するか、自然において発見される異なるプロモーターから由来した異なる要素から構成されるか、又は合成DNA切片を含み得る。異なるプロモーターが異なる組織又は細胞型内の遺伝子、或いは異なる発展段階にある遺伝子、又は異なる環境的或いは生理的条件に反応する遺伝子の発現を誘導することができる。大部分の細胞型において、大部分の時間に遺伝子が発現されるようにするプロモーターは、一般的に“構成(constitutive)プロモーター”と称される。特定の細胞型において遺伝子が発現されるようにするプロモーターは“細胞-特異的プロモーター”、又は“組織-特異的プロモーター”と称される。特定の発展段階又は細胞分化において遺伝子が発現されるようにするプロモーターは、一般的に“発達-特異的プロモーター”又は“細胞分化-特異的プロモーター”と称される。プロモーターを誘導する製剤、生物学的物質、化学物質、リガンド、及び光等に細胞が露出したり、これらで処理された後に誘導され、遺伝子が発現されるようにするプロモーターは、一般的に“誘導性プロモーター”又は“調節可能なプロモーター(regulatablepromoter)”と称される。また、大部分の場合、調節配列の正確な境界が完璧に示されていないために異なる長さのDNA断片が同一のプロモーター活性を有することができることが認識される。
【0067】
プロモーター配列は一般的に3’末端において転写開始部位により境界をなし、上流(5’方向)に拡張されてバックグラウンド以上の検出可能な水準で転写を開始するのに必要な最小限の個数の塩基又は要素を含む。前記プロモーター配列内にはRNAポリメラーゼの結合を受け持つ蛋白質結合ドメイン(共通配列(consensussequence)だけでなく転写開始部位(例えば、ヌクレアーゼS1を利用したマッピング(mapping)により簡便に定義される)が発現されるのである。
【0068】
RNAポリメラーゼがコード配列をmRNAで転写するとき、コード配列が細胞内転写及び翻訳調節配列の“統制下”にあるようになり、そうしてからトランス-RNAスプライシング(trans-RNAsplicing)され(コード配列がイントロンを含有する場合)、前記コード配列によりコードされた蛋白質に翻訳される。
【0069】
“転写及び翻訳調節配列”はプロモーター、エンハンサー、終結子(terminator)等のように、宿主細胞においてコード配列の発現のために提供されるDNA調節配列を指す。真核細胞において、ポリアデニレーションシグナルが調節配列である。
【0070】
用語“反応因子(response element)”は転写因子のDNA結合ドメインとの相互作用を介して媒介されるプロモーターに対する反応性に寄与する、少なくとも一つの作用位置DNA要素(cis-actingDNA element)を指す。このDNA要素は回文式(palindromic)配列であるか、多様な数のヌクレオチドにより分離された配列モチーフ又は半部位(halfsite)から構成され得る。前記半部位は類似するか同一であり得、同方向反復(direct repeat)又は逆方向反復(inverted repeat)或いは単一反部位又は一列の隣接した反部位の多量体(multimer)に配列され得る。前記反応因子は、反応因子が混入される細胞又は生物の特性に応じて別の生物から分離した最小限のプロモーターを含み得る。転写因子のDNA結合ドメインは、リガンドの存在又は非存在時、この反応要素の調節下に下流遺伝子の転写を開始又は抑制する反応因子のDNA配列に結合する。
【0071】
用語“作動可能に連結された(operably linked)”は一つの機能が別のものにより影響を受けるようにするために、単一核酸断片上の核酸配列の会合(association)を指す。例えば、プロモーターはコード配列の発現に影響を与えることができるとき(すなわち、コード配列がプロモーターの転写調節下にあること)、コード配列に作動可能に連結される。コード配列はセンス又はアンチセンス配向で調節配列に作動可能に連結され得る。
【0072】
本明細書に使用されている用語“発現”は、核酸又はポリヌクレオチドから由来したセンス(mRNA)又はアンチセンスRNAの転写及び安定的な蓄積(accumulation)を指す。発現はmRNAの蛋白質又はポリペプチドへの翻訳を指すこともある。
【0073】
用語“カセット(cassette)”、“発現カセット”及び“遺伝子発現カセット”は特定の制限酵素部位において、又は相同組換えにより核酸或いはポリヌクレオチドに挿入され得るDNAの切片を指す。前記DNAの切片は、所望のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含み、前記カセット及び制限酵素部位は転写及び翻訳のための適切なリーディングフレーム(readingframe)においてカセットの挿入を保障するように考案された。“形質転換カセット”は所望のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含み、特定の宿主細胞の形質転換を容易にするポリヌクレオチド以外の要素を有する特定ベクターを指す。カセット、発現カセット、遺伝子発現カセット及び形質転換カセットは宿主内の所望のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの発現を向上させる要素を含み得る。このような要素にはプロモーター、最小限のプロモーター、エンハンサー、反応因子、終結子配列、ポリアデニレーション配列等が含まれるが、これに制限されない。
【0074】
用語“遺伝子スイッチ(gene switch)”はプロモーター、及び少なくとも一つのリガンド存在時に反応因子及びプロモーターが混入された遺伝子の発現を調節するリガンド-依存性転写因子-系列システムと結合された反応因子の組合せを指す。
【0075】
用語“調節する”は核酸又は遺伝子発現を誘導、減少或いは抑制してそれぞれ蛋白質又はポリペプチド生産の誘導、減少、又は抑制を引き起こすことを意味する。
【0076】
本発明の具体例に使用され得るエンハンサーには、SV40エンハンサー、サイトメガロウイルス(CMV)エンハンサー、伸長因子1(EF1)エンハンサー、酵素エンハンサー、ウイルス遺伝子エンハンサー等が含まれるが、これに制限されない。
【0077】
終結調節領域、すなわち終結子又はポリアデニレーション配列はまた好ましい宿主で得られた多様な遺伝子から由来し得る。選択的に終結部位が不必要であり得るが、含まれる場合が最も好ましい。本発明の一具体例において、前記終結調節領域は合成配列、合成ポリアデニレーションシグナル、SV40後期ポリアデニレーションシグナル、SV40ポリアデニレーションシグナル、ウシ成長ホルモン(BGH)ポリアデニレーションシグナル、ウイルス終結子配列等を含むか、これより由来し得る。
【0078】
用語“3’非コード配列(3’non-coding sequence)”又は“3’非翻訳領域(3’untranslatedregion、UTR)”はコード配列の下流(3’)に位置したDNA配列を指し、ポリアデニレーション[poly(A)]認識配列及びmRNA加工又は遺伝子発現に影響を及ぼし得る調節信号をコードするその他の配列を含み得る。前記ポリアデニレーションシグナルは一般的にmRNA前駆体の3’末端にポリアデニル酸系列が添加されることに影響を及ぼすのに特徴がある。
【0079】
“調節領域(regulatory region)”は二次核酸配列の発現を調節する核酸配列を指す。調節領域は、特定の核酸を発現するのに先天的に責任を負っている配列(同種領域)を含むことがあり、異なる蛋白質やさらには合成蛋白質を発現する責任を負っている、由来が異なる配列(異種領域)を含み得る。特に前記配列は、特定又は非特定方式及び誘導性又は非誘導性方式で遺伝子の転写を促進又は抑制する、原核、真核又はウイルス遺伝子の配列或いはそれから由来した配列であり得る。調節領域は複製原点、RNAスプライス部位、プロモーター、エンハンサー、転写終結配列、及びポリペプチドの標的細胞の分泌経路に誘導する分泌シグナルを含む。
【0080】
“異種供給源(heterologous source)”からの調節領域は、発現された核酸と先天的に関連しない調節領域を指す。前記異種調節領域中には異なる種からの調節領域、異なる遺伝子からの調節領域、ハイブリッド調節配列及び自然では現れないものの、本技術分野において通常の技術を有する者により考案された調節配列を含む。
【0081】
“RNA転写体”はDNA配列のRNAポリメラーゼ-触媒された転写から引き起こされた生成物を指す。RNA転写体がDNA配列の完璧かつ相補的な複写体であるとき、これは一次転写体と称されたり前記一次転写体の転写後、加工から由来したRNA配列であり得、これは成熟したRNAと称される。“メッセンジャーRNA(mRNA)”はイントロンがなく、細胞により蛋白質に翻訳され得るRNAを指す。“cDNA”はmRNAに相補的であり、mRNAから由来した二重螺旋DNAを指す。“センス”RNAはmRNAを含み、細胞により蛋白質に翻訳され得るRNA転写体を指す。“インハンスRNA”は標的一次転写体の全部又は一部分に相補的であり、標的遺伝子の発現を遮断するRNA転写体を指す。エンハンスRNAの相補性は、すなわち5’非-コード配列、3’非-コード配列又はコード配列にある特定遺伝子転写体の任意の部分に因るものであり得る。“機能的RNA”はエンハンスRNA、リボザイムRNA、又は翻訳されはしないものの細胞加工に影響を及ぼすその他のRNAを指す。
【0082】
“ポリペプチド”、“ペプチド”及び“蛋白質”は相互交換的に使用され、共有結合されたアミノ酸残基から構成された重合体化合物を指す。
【0083】
“分離されたポリペプチド”、“分離されたペプチド”又は“分離された蛋白質”は自然状態において正常に結合する化合物(例えば、他の蛋白質又はポリペプチド、核酸、炭水化物、脂質)が実質的にないポリペプチド又は蛋白質を指す。“分離された”は他の化合物との人工的又は合成混合物を除くか、生物学的活性を干渉しない不純物の存在を除くか、例えば不完全な錠剤、安定剤の添加又は薬学的に許容可能な製剤への調製により存在し得る不純物の存在を除くことを意味しない。
【0084】
突然変異は、試験管内(in vivo)特定位置突然変異(site-directed mutagenesis)(Hutchinson et al.,J. Biol. Chem. 253:6551 (1978); Zoller et al., DNA 3:479 (1984);Oliphant et al., Gene 44:177 (1986); Hutchinson et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 83:710 (1986)); TAB(R) リンカー(Pharmacia)の使用、制限酵素エンドヌクレアーゼ分解/断片欠損及び置換、PCR-媒介/オリゴヌクレオチド指定突然変異等を含むが、これに制限されない、本技術分野に知られている任意の突然変異生成(mutagenesis)技術によりなされることがある。特定位置突然変異生成のためにPCR基盤の技術が好ましい(Higuchi,1989, “Using PCR to Engineer DNA”, in PCR Technology: Principles andApplications for DNA Amplification, H. Erlich, ed., Stockton Press, Chapter 6,pp. 61-70, 参照)。
【0085】
ポリペプチド又は蛋白質の“変形体(variant)”は、ポリペプチド又は蛋白質から由来し、前記ポリペプチド又は蛋白質の少なくとも一つの生物学的特性を維持している任意の類似体、断片、誘導体又は突然変異を指す。前記ポリペプチド又は蛋白質の異なる変形体が自然内に存在し得る。これら変形体は蛋白質をコードする構造遺伝子のヌクレオチド配列が異なることに特徴がある対立遺伝子の変異であり得るか、差別的スプライシング又は翻訳後、修飾(modification)を含むことがある。熟練した当業者は、一つ又は複数のアミノ酸置換、欠損、付加又は代替を有する変形体を生成することができる。これら変形体は、その中でも:(a)少なくとも一つのアミノ酸残基が保存的又は非保存的アミノ酸に置換された変形体、(b)少なくとも一つのアミノ酸がポリペプチド又は蛋白質に付加された変形体、(c)アミノ酸の中、少なくとも一つの置換基を含む変形体、及び(d)ポリペプチド又は蛋白質が血清アルブミンのようなまた別のポリペプチドと融合した変形体を含み得る。遺伝子(抑制、欠損、突然変異等)、化学的及び酵素的技術を含む、このような変形体を得る技術が本技術分野において通常の技術を有する者に知られている。
【0086】
用語“相同性(homology)”は2個のポリヌクレオチド又は2個のポリペプチド部分間の同一性(identity)の百分率を指す。一つの部分乃至他の部分の配列間の関連性(correspondence)は、本技術分野に知られている技術により決定され得る。例えば、相同性は配列情報を整列し、また即時に利用可能なコンピュータプログラムを利用して二つのポリペプチド分子間の配列情報を直接的に比較することにより決定され得る。そうでなければ、相同性は同種領域間に安定的な二重体(duplex)を形成する条件下でポリヌクレオチドを混成化した後、単一筋の特異的ヌクレオチドを利用して切断し、切断された断片の大きさの決定により決定され得る。
【0087】
本明細書に使用されているように、全ての文法的形態及び綴字変形された用語“相同の”はスーパーファミリー(例えば、免疫グロブリンスーパーファミリー)からの蛋白質及び別種(例えば、ミオシン経鎖等)からの同種蛋白質を含む、“共通の進化起源(commonevolutionary origin)”を有する蛋白質間の関連性を指す(Reeck et al., Cell 50:667 (1987))。このような蛋白質(及びこれらのコード遺伝子)はこれらの高い配列の類似程度に照らして見たとき、配列の相同性を有する。しかしながら、一般的な使用において、及び本出願において、“非常に”のような副詞を利用して変形される場合、用語“相同の”は配列相同性を指し、共通の進化起源を指しはしない。
【0088】
したがって、全ての文法的形態の用語“配列類似性”は共通の進化的起源を有するか、又は有し得ない核酸或いはアミノ酸配列間の同一性又は関連性の程度を指す(Reeck et al., Cell 50:667 (1987)参照)。一具体例において、ヌクレオチドの約50%(例えば、少なくとも約75%、90%又は95%)が定義された長さのDNA配列以上一致するとき、2個のDNA配列は“実質的に相同”又は“実質的に類似”する。実質的に相同である配列は、配列データバンク又は、例えば特定システムのために定義されたような厳格な条件下におけるサード混成化実験において利用可能な標準ソフトウェアを利用して配列を比較することにより確認することができる。適切な混成化条件を定義することは、本技術分野の技術範疇内である(例えば、Sambrooket al., 1989, 参照)。
【0089】
本明細書に使用されているように、“実質的に類似”は少なくとも一つのヌクレオチド塩基の変化が少なくとも一つのアミノ酸の置換を引き起こすものの、前記DNA配列によりコードされる蛋白質の機能的特性には影響を及ぼさない核酸断片を指す。“実質的に類似”はまた、少なくとも一つのヌクレオチド塩基の変化がアンチセンス又は同時抑制(co-suppression)技法により遺伝子発現の変化を媒介する核酸断片の能力に影響を及ぼさない核酸断片を指す。“実質的に類似”はまた、得られる転写体の機能的特性には実質的に影響を及ぼさない少なくとも一つのヌクレオチド塩基の欠損又は挿入のような、本発明の核酸断片の変形を指す。したがって、本発明は例示された特定配列よりもさらに含むものと理解される。提案されたそれぞれの変形は、コードされた生成物の生物学的活性の維持(retention)を決定することのように、本技術分野において通常の技術内に属する。
【0090】
さらに、熟練した当業者は、厳格な条件(0.1X SSC, 0.1%SDS, 65℃及び2X SSC, 0.1% SDSで洗浄した後、0.1X SSC, 0.1% SDS)下において本明細書に例示された配列と混成化する能力により、本発明によって含まれた実質的に類似した配列が定義されるということを認識する。実質的に類似した本発明の核酸断片は、DNA配列が本明細書に報告された核酸断片のDNA配列と少なくとも約70%、80%、90%又は95%同一な核酸断片である。
【0091】
2個のアミノ酸配列は、アミノ酸のうち40%超が同一であるか、又は60%超が類似するとき(機能的に同一)、“実質的に相同”であるか“実質的に類似”する。好ましくは前記類似した、又は相同の配列は、例えばGCG(GeneticsComputer Group, Program Manual for GCG Package, Version 7, Madison Wisconsin)重畳(pileup)プログラムを利用した整列により確認される。
【0092】
本明細書に使用された用語“〜に該当する”は、正確な位置が類似性又は相同性が測定された分子と同一であるか、或いは相違するとしても類似又は相同である配列を指す。核酸又はアミノ酸配列の配列は、空間(space)を含み得る。したがって、用語“〜に該当する”はアミノ酸残基又は核酸塩基の数でない、配列の類似性を指す。
【0093】
アミノ酸又はヌクレオチド配列の“実質的な部分(substantialportion)”は本技術分野の熟練者による配列の手動評価(manual evaluation)により、又はBLAST(Basic LocalAlignment Search Tool; Altschul et al., J. Mol. Biol. 215:403(1993)); ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/ において利用可能)のようなアルゴリズムを利用したコンピュータ-自動化配列比較及び確認により、推定上でポリペプチド又は遺伝子を確認するために十分なポリペプチドのアミノ酸配列又は遺伝子のヌクレオチド配列を含む。一般的に、ポリペプチド又は核酸配列が知られている蛋白質又は遺伝子に相同するものと推定上、確認するためには、10個以上の隣接したアミノ酸又は30個以上のヌクレオチドの配列が必要である。さらに、ヌクレオチド配列と関連して、20-30個の隣接したヌクレオチドを含む遺伝子特異的オリゴヌクレオチドプローブが遺伝子確認の配列-依存的方法(例えば、サード混成化)及び分離(例えば、細菌群落又はバクテリオファージプラクの原位置混成化(in situ hybridization)に使用され得る。また、12-15個の塩基の短いオリゴヌクレオチドが前記プライマーを含む特定の核酸断片を得るために、PCRにおいて増幅プライマーとして使用され得る。したがって、ヌクレオチド配列の“実質的な部分”は、前記配列を含む核酸断片を特異的に確認及び/又は分離する十分な配列を含む。
本技術分野において知られているように、用語“百分率同一性(percent identity)”は、配列を比較することによって決定されたように、2以上のポリペプチド配列又は2以上のポリヌクレオチド配列間の関係である。また、本技術分野において“同一性”は場合によって前記配列の文字列間の一致により決定されるように、ポリペプチド又はポリヌクレオチド配列間の配列関連の程度を意味する。“同一性”及び“類似性”はComputationalMolecular Biology((Lesk, A. M., ed.) Oxford University Press, New York (1988);Biocomputing: Informatics andGenome Projects (Smith, D. W., ed.) Academic Press, New York (1993); ComputerAnalysis of Sequence Data, Part I (Griffin, A. M., and Griffin, H. G., eds.)Humana Press, New Jersey (1994); Sequence Analysis in Molecular Biology (vonHeinje, G., ed.) Academic Press (1987); and Sequence Analysis Primer (Gribskov,M. and Devereux, J., eds.) Stockton Press, New York (1991)に記述されたものを含むが、これに制限されない公知の方法により容易に計算され得る。同一性を決定する好ましい方法は、試験した配列間の最適の一致を提供するように考案された。同一性及び類似性を決定する方法は、公共が利用可能なコンピュータプログラムにおいて成文化される。配列整列及び百分率同一性の計算は、、レーザージーンバイオインフォマティクスコンピューティングスイート(LASERGENE bioinformatics computing suite, DNASTAR Inc., Madison,WI)のメガリン(Megalign)プログラムのような配列分析ソフトウェアを利用して遂行することができる。配列の多重整列(multiplealignment)は基本の媒介変数(default parameter)(GAP PENALTY=10, GAP LENGTH PENALTY=10)を有するクラスター(Clustal)整列方法(Higgins et al., CABIOS. 5:151 (1989))を利用して遂行することができる。クラスター方法を利用したペアワイズ・アライメント(pairwise alignment)のための基本媒介変数は、KTUPLE 1、GAP PENALTY=3、WINDOW=5及びDIAGONALSSAVED=5から選ばれる。
用語“配列分析ソフトウェア”はヌクレオチド又はアミノ酸配列を分析するのに有用な任意のコンピュータアルゴリズム又はソフトウェアプログラムである。“配列分析ソフトウェア”は商業的に利用可能であるか、独立して開発することができる。典型的な配列分析ソフトウェアは、GCGプログラム集(Wisconsin Package Version 9.0, Genetics Computer Group(GCG), Madison, WI)、BLASTP、BLASTN、BLASTX(Altschul et al., J. Mol. Biol. 215:403(1990))及びDNASTAR(DNASTAR, Inc. 1228 S. Park St. Madison, WI 53715 USA)を含むが、これに制限されない。本出願の文脈内において、配列分析ソフトウェアが分析のために使用される場合、別途に特定しない限り分析結果は表示されたプログラムの“基本媒介変数”に基づくものと理解されるのである。本明細書に使用された“基本数値(defaultvalue)”は最初に始めるとき、本来ソフトウェアに含まれている任意のセットの数値又は媒介変数を意味するのである。
【0094】
DNA配列と関連して、“化学的に合成された”は、構成要素であるヌクレオチドが試験管内において(in vivo)組替えられたことを意味する。DNAの手動化学的合成は、十分に確立された過程を利用して達成され得るか、又は自動化された化学的合成は商業的に利用可能な数多くの機械のうちの一つを利用して遂行することができる。したがって、前記遺伝子は宿主細胞のコドン偏向(bias)を反映するために、ヌクレオチド配列の最適化に基づいて最適の遺伝子発現のために調整され得る。熟練の当業者は、もしコドンの使用が宿主により選好されるコドンに向かって偏向されると、成功的な遺伝子発現の可能性を認識する。好ましいコドンの決定は、配列情報が利用可能な宿主細胞から由来した遺伝子の調査に基づく。
【0095】
用語“外因性(exogenous)遺伝子”は対象に異質的な(外来の)遺伝子、すなわち形質転換過程を通じて対象内に導入された遺伝子、内生的突然変異した遺伝子の突然変異しない形態、又は内生的突然変異されない遺伝子の突然変異した形態を意味する。形質転換方法は本発明の核心ではなく、本技術分野の熟練者にとって知られている対象に適合した任意の方法であり得る。外因性遺伝子は、逆転写酵素によるように、DNA中間体を通じて機能し得るDNA又はRNAの形態で対象内に導入される天然又は合成遺伝子であり得る。そのような遺伝子は標的細胞に導入されたり、対象に直接導入されたり、形質転換された細胞により対象に間接的に導入され得る。
【0096】
用語“対象(subject)”は完全な動物、好ましくは脊椎動物、最も好ましくは哺乳動物を意味する。
【0097】
用語“HGFの異型体”は全ての対立遺伝子変形体を含む、動物において自然に生成されるHGFアミノ酸配列と少なくとも80%同一な(例えば少なくとも90%又は95%同一な)アミノ酸配列を有するHGFポリペプチドを指す。一具体例において、前記用語は細胞増殖活性を有するものと知られている異型体を指す。HGFの異型体はf1HGF、dHGF、NK1、NK2及びNK4を含むが、これに制限されない。
【0098】
用語“f1HGF”は動物、例えば、哺乳動物の全長HGF蛋白質、例えば、ヒトHGFのアミノ酸1-728を指す。
【0099】
用語“dHGF”は動物、例えば、哺乳動物においてHGF遺伝子の選択的スプライシングにより生成されるHGF蛋白質の欠損した変形体、例えば、全長HGF配列からα鎖の第一番目のクリングルのドメインにおいて5個のアミノ酸(F、L、P、S及びS)が欠損した723個のアミノ酸からなるヒトHGFを指す。
【0100】
用語“NK1”はN-末端ヘアピンループ及びクリングル1ドメインからなる動物例えば哺乳動物、例えばヒトからのHGFの異型体を指す。
【0101】
用語“NK2”はN-末端ヘアピンループ、クリングル1及びクリングル2ドメインからなる動物、例えば哺乳動物、例えばヒトからのHGFの異型体を指す。
【0102】
用語“NK4”はN-末端ヘアピンループ、クリングル1、クリングル2、クリングル3及びクリングル4ドメインからなる、動物、例えば哺乳動物、例えばヒトからのHGFの異型体を指す。
【0103】
本発明の方法は、HGFの2以上の異型体を含む組成物を心臓及び/又は血管疾患を有する対象に投与することを含む。一具体例において、前記HGFの2以上の異型体は哺乳動物のHGF、例えばヒトHGFの異型体である。多様な種からのHGFアミノ酸配列は本技術分野に広く知られており、GenBankのような配列データベースにおいて発見することができる(本明細書に参照として統合された、登録番号BAA14348を有するヒトHGFのアミノ酸配列)。一具体例において、HGF異型体のうち一つはヒトf1HGF(配列番号2)である。また、他の具体例において、HGF異型体のうち一つはヒトdHGF(配列番号3)である。また、他の具体例において、HGF異型体のうち一つはヒトNK1(配列番号4)である。また、他の具体例において、HGF異型体のうち一つはヒトNK2(配列番号5)である。また、他の具体例において、HGF異型体のうち一つはヒトNK4(配列番号6)である。さらなる具体例において、前記HGFの2以上の異型体はf1HGF及びdHGFを含む。別の具体例において、前記HGFの2以上の異型体は、f1HGF及びdHGFからなる。
【0104】
一具体例において、HGFの異型体は、ヒト野生型HGF異型体の変形体である。例えば、前記異型体は野生型ヒトf1HGF(配列番号2)、dHGF(配列番号3)、NK1(配列番号4)、NK2(配列番号5)又はNK4(配列番号6)配列と少なくとも80%の配列同一性、例えば少なくとも85、90、95、96、97、98又は99%の配列同一性を有するヒトf1HGF、dHGF、NH1、NH2又はNK4配列の変形体であり得る。前記変形体は、野生型ヒトHGF異型体のアミノ酸配列に対する付加、欠損、置換又はこの組合せを含み得る。また、付加又は置換は、自然に発生しないアミノ酸の使用を含み、N-末端及び/又はC-末端において内部に任意の数で発生し得る。
【0105】
好ましくは、任意の置換は保存的アミノ酸置換である。“保存的(conservative)アミノ酸置換”はアミノ酸残基が類似した側鎖(side chain)を有するアミノ酸残基に代替されるものである。類似した側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、本技術分野内において定義されてきた。これらファミリーは、塩基性側鎖を有するアミノ酸(例えば、ライシン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖を有するアミノ酸(例えば、アスファト酸、グルタム酸)、電荷を帯びていない極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グリシン、アスファラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、アラニン、バリン、ルイシン、イソルイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、β-枝の側鎖を有するアミノ酸(例えば、トレオニン、バリン、イソルイシン)及び芳香族側鎖を有するアミノ酸(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を含む。
【0106】
配列の同一性は、最適に整列した2個の配列を比較領域と比較し、同一のアミノ酸残基が両側配列において発生して一致した位置数を生成する位置数(number of positions)を決定し、前記一致した位置数を比較領域内の総位置数(すなわち、ウィンドウの大きさ)に分け、前記結果に100を掛けて配列同一性百分率を得ることにより算出される。一実施形態において、整列を最大化するために100個のアミノ酸長さに4個のギャップ(gap)が導入され得るとき、百分率同一性は、比較される配列内の同一のアミノ酸残基を整列するさらに小さい2個の配列内のアミノ酸残基の百分率で計算される(Dayhoff, in Atlas of Protein Sequence andStructure, Vol. 5, p. 124, National Biochemical Research Foundation,Washington, D.C. (1972)、本明細書に参照として統合される)。同一性の決定は、典型的に本技術分野に知られているコンピュータ相同性プログラムによりなされる。例示的なプログラムは、スミスとウォーターマン(Smithand Waterman)のアルゴリズムを利用する、基本セッティング(default setting)を利用したギャップ(Gap)プログラム(WisconsinSequence Analysis Package, Version 8 for UNIX, Genetics Computer Group,University Research Park, Madison, WI、本明細書に参照として統合される)である。
【0107】
一具体例において、HGF異型体の変形体は、野生型HGF異型体蛋白質の任意の少なくとも一つの生物学的活性モードを実質的に維持する。本明細書に使用された用語“野生型HGFの実質的に全ての生物学的活性”は、HGF異型体の任意の少なくとも一つの生物学的活性(例えば、血管新生を刺激したり細胞増殖を促進する能力)のうち少なくとも70%以上を維持するHGF異型体の変形体を指す。一部の具体例において、HGF異型体の少なくとも一つの生物学的活性のうち、少なくとも75、80、85、90又は95%が維持される。HGF活性は、本技術分野に広く知られている通常の試験管内(in vivo)及び生体内(in vivo)分析により決定され得る(例えば、生体内マトリゲルプラグ(Matrigel plug)及び角膜新生血管(cornelneovascularization)分析、生体内/試験管内ひよこ漿尿膜(chick chorioallantoic membrane, CAM))分析、試験管内細胞(増殖、移動、脈管形成(tubeformation))及び器官形態的(organotypic)(大動脈環(aortic ring))分析)。
【0108】
HGFの構造及び機能は、広範囲に研究されてきており、本技術分野の熟練者は実質的に蛋白質の全ての生物学的活性を維持するのに重要であり、好ましくはHGFの任意の配列変形体において変わらないか、単に保存的に変わったHGF配列内のアミノ酸が知られている(例えば、Hartmannet al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:11574 (1992); Lokker et al.,EMBO J. 11:2503 (1992), Zhou et al., Structure 6:109 (1998), Ultsch etal., Structure 6:1383 (1998), Shimizu et al., Biochem. Biophys. Res.Commun. 189:1329 (1992), Yoshiyama et al., Biochem. Biophys. Res.Commun. 175:660 (1991)参照、それぞれは全体が参照として本明細書に統合されている)。例えば、N-末端ヘアピンループ及びクリングル1ドメインが細胞増殖活性に要求されるものと見られる。生物学的活性に重要でないその他のアミノ酸は、より自由に欠損及び/又は置換され得る。本技術分野の熟練者は、前記言及された参考文献に記述されているように通常の突然変異発生技術を利用してHGF異型体の変形体を製造することができる。実質的にHGF異型体の全ての生物学的活性を維持する変形体を確認することができる。
【0109】
本発明の一実施形態において、HGFの2以上の異型体は前記異型体をコードするポリヌクレオチドとして対象に投与される。一具体例において、前記ポリヌクレオチドは哺乳動物HGF、例えばヒトHGFの異型体をコードする。様々な種からのHGF遺伝子のポリヌクレオチド配列は本技術分野に広く知られており、GenBankのような配列データベースにおいて見出すことができる(登録番号NM00061を有するヒトHGF遺伝子のポリヌクレオチド配列、本明細書において参照として統合されている)。一具体例において、前記ポリヌクレオチドはf1HGFをコードする。また別の具体例において、前記ポリヌクレオチドはdHGFをコードする。また別の具体例において、前記ポリヌクレオチドはNK1をコードする。また別の具体例において、前記ポリヌクレオチドはNK2をコードする。また別の具体例において、前記ポリヌクレオチドはNK4をコードする。さらなる具体例において、前記ポリヌクレオチドはf1HGF及びdHGFをいずれもコードする。さらなる具体例において、前記ポリヌクレオチドはf1HGF、dHGF及びNK1をコードする。
【0110】
一具体例において、HGFの2以上の異型体をコードする少なくとも一つのポリヌクレオチドは、野生型ヒトHGF遺伝子配列を含む。また別の具体例において、前記ポリヌクレオチドは、野生型HGF遺伝子の配列変形体を含むものの、コドンの縮退性(degeneracy)によって依然として前記HGF異型体の野生型アミノ酸配列をコードする。さらなる具体例において、前記ポリヌクレオチドは前記で記述したとおりHGF異型体蛋白質の配列変形体をコードする。一具体例において、ヒトHGF異型体遺伝子配列のポリヌクレオチド配列変形体は、野生型ヒトHGF異型体の遺伝子配列と少なくとも80%以上の配列同一性、例えば、少なくとも85、90、95、96、97、98又は99%の同一性を有する。
【0111】
本発明の一実施例において、HGFの2以上の異型体は、2以上の異型体、例えばf1HGF及びdHGFを同時に発現するハイブリッド(hybrid)HGF遺伝子によりコードされる。US2005/0079581 A1(本明細書に全体が参照として統合されている)に記述されている前記ハイブリッドHGF遺伝子は、HGFのエクソン1乃至18に該当するcDNA及び前記CDNAのエクソン4と5の間に挿入された固有の(inherent)又は外来のイントロンを含み、ここで、前記ハイブリッド遺伝子はエクソン4と5の間のイントロン以外にはエクソン間の他のイントロンがない。前記イントロンは、固有のイントロンの断片又は組換え配列を含む。
【0112】
固有のイントロンを含む前記ハイブリッドHGF遺伝子の具体例は7113bp長さであり、配列番号7のヌクレオチド配列を有する。前記ハイブリッドHGF遺伝子は、f1HGF及びdHGFをいずれも同時に発現し、f1HGFcDNAよりも高い発現効率を有する。
【0113】
コドン縮退性(codon degeneracy)は、蛋白質のアミノ酸配列及び遺伝子の発現を変化させず、前記ハイブリッドHGF遺伝子のコード及び/又は非-コード領域を変形させたり変化させる。したがって、配列番号7のハイブリッドHGF遺伝子及びこの断片化と実質的に同一のポリヌクレオチドは本発明の範疇に属する。“実質的に同一の”は配列同一性が80%以上、例えば90%以上、例えば95%以上であることを意味する。
【0114】
ハイブリッドHGF遺伝子は選択的にHGF cDNAのエクソン4と5の間に挿入された小さな組換え配列を有する固有のイントロンの断片を含み得る。ここにおいて、固有のイントロンの断片を含む、そのようなハイブリッドHGF遺伝子は“HGF-X”と命名される。例にはそれぞれ配列番号8乃至10のヌクレオチド配列を有するHGF-X6、HGF-X7及びHGF-X8が含まれる。
【0115】
投与されるHGFの2以上の異型体は、別途のポリヌクレオチド又は単一ヌクレオチドによりコードすることができる。前記ポリヌクレオチドはHGF異型体の発現を調節する少なくとも一つの調節配列、例えばプロモーター又はエンハンサーに作動可能に連結され得る。前記プロモーターは、構造プロモーター(例えば、ヒトサイトメガロウイルスプロモーター)又は誘導性プロモーターであり得る。前記調節配列は、特定リガンドの付加又は除去によりHGF異型体の発現を調節する遺伝子スイッチの一部であり得る。本発明の遺伝子スイッチに使用することができるリガンド依存的転写因子の例には、それらそれぞれのリガンドにより活性化された核受容体スーパーファミリーのうち一つ(例えば、グルココルチコイド(glucocorticoid)、エストロゲン、プロゲスチン、レチノイド、エクジソン(ecdysone)及びこの類似体及び模写体)並びにテトラサイクリンにより活性化されたrTTAが含まれる。さらなる具体例において、前記プロモーターは心筋細胞-特異的プロモーター(例えば、心臓アンキリン反復蛋白質(cardiacankyrin repeat protein)、MYBPC3)であり得る。HGFの2以上の異型体が別途のポリヌクレオチドによりコードされるとき、それぞれのポリヌクレオチドはそれら自身の調節配列に作動可能に連結され得る。また別の具体例において、前記2以上のポリヌクレオチドは、いずれも異型体の発現を促進するために2以上のポリヌクレオチドの間に挿入された配列、例えば内部リボソーム結合部位を選択的に有する、直列カセット(tandemcassette)の一部として単一調節配列の統制下にあり得る。
【0116】
本発明の一具体例において、HGFの2以上の異型体をコードする少なくとも一つのポリヌクレオチドはベクター、例えば発現ベクターの一部である。前記ベクターは、例えばプラスミドベクター(例えば、Leeet al., Biochem. Biophys. Res. Commun. 272:230 (2000); WO 2000/040737に開示されているようなpCKベクター)又は単一筋或いは二重螺旋RNA又はDNAウイルスベクターであり得る。そのようなベクターは、細胞内にDNA及びRNAを導入する広く知られた技術により細胞内に導入され得る。ウイルスベクターは複製可能(replicationcompetent)であるか複製不能(replication defective)であり得る。後者の場合、ウイルス増殖が一般的に宿主細胞を補完(complementing)するときにのみ起こるのである。本明細書に使用されているように、用語“宿主細胞”又は“宿主”は本発明の少なくとも一つのポリヌクレオチドを有している本発明の細胞を意味するために使用される。
【0117】
したがって、少なくとも前記ベクターは本発明のポリヌクレオチドを含まなければならない。前記ベクターのその他の要素には、選別マーカー、染色質変形ドメイン(chromatin modification domain)、ベクター上にまた存在することができるその他のポリペプチドの発現を誘導するさらなるプロモーター(例えば、致死(lethal)ポリペプチド)、ゲノム挿入部位、組換え部位、及び分子挿入ピボット(molecularinsertion pivot)が含まれるが、これに制限されない。前記ベクターは、前記ポリヌクレオチドの内部又は外部に任意の数のこのようなさらなる要素を含み得、これにより前記ベクターは所望の治療方法の特定目標に合うように調整され得る。
【0118】
本発明の一具体例において、細胞内に導入されるベクターは、発現するとき前記ベクターが宿主細胞内に導入されたことを示す“選別マーカー遺伝子”をさらに含む。この方式において、前記選択遺伝子(selector gene)がベクターの存在のための陽性マーカーであり得る。本発明の方法に重要ではないものの、選別マーカー遺伝子の存在により、実験者がベクター構造体が細胞内に導入された生きている細胞集団を選別することができるようになる。したがって、本発明の特定の具体例は、前記ベクターが成功裏に導入された細胞を選別することを含む。本明細書に使用されているように、用語“選別”又はこの変形は、細胞とともに使用されるとき、特定の遺伝的気質や表現型を有する細胞を選択するよく知られている標準方法を意味するものと意図される。典型的な方法には、G418、ピューロマイシン(puromycin)及びアンピシリンのような抗生剤の存在下に細胞を培養することを含むが、これに制限されない。選別マーカー遺伝子の別の例には、メトトレキセート(methotrexate)、ハイグロマイシン(hygromycin)、又はマイコフェノール酸(mycophenolicacid)に対する抵抗性を付与する遺伝子を含むが、これに制限されない。抗生剤抵抗性遺伝子又は遺伝子を含むベクター構造体を含む細胞は、培養時に前記抗生剤に耐え得るはずである。同様に、抗生剤抵抗性遺伝子又は遺伝子を含むベクター構造体を含まない細胞は、培養時に前記抗生剤に耐えられないであろう。
【0119】
本明細書に使用されているように、“染色質変形ドメイン”(chromatinmodification domain、CMD)は、これに制限されないDNA絶縁体(insulator)のように、染色質構造を維持及び/又は変形させることと関連した様々な蛋白質と相互作用するヌクレオチド配列を指す(Ciavattaet al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 103:9958 (2006)参照、本明細書に参照として統合される)。CMDの例には、ニワトリβ-グロブリン絶縁体及びニワトリ過敏性部位4(cHS4)が含まれるが、これに制限されない。少なくとも一つの遺伝子プログラム間に異なるCMD配列を使用(すなわち、プロモーター、コード配列、及び3’調節領域)すると、例えば、存在する多遺伝因子(multigenic)又は単一遺伝因子(monogenic)シャトルベクター間の遺伝子プログラムを“交換(swap)”するために多様な微生物又は試験管内リコンビニアリング(recombineering)技術と組み合わされて“ミニ相同性アーム(minihomology arm)”として差別的なCMD DNA配列を容易に使用することができる。染色質変形ドメインの別の例は、本技術分野に知られているか、又は容易に確認することができる。
【0120】
本発明に使用するための特定ベクターは、蛋白質又はポリヌクレオチドをコードする発現ベクターである。一般的に、前記ベクターは宿主における発現に効果的である、発現されたポリヌクレオチドに作動可能に連結された作用位置(cis-acting)調節領域を含む。適切な作用伝達因子(trans-acting factor)が宿主に導入される時、宿主により供給されるか補完ベクターにより供給されるか、又はベクター自体により供給される。
【0121】
蛋白質又はポリヌクレオチドを発現するために、相当多様な発現ベクターが使用され得る。このようなベクターには染色体、エピソーム及びウイルス由来ベクター、例えば細菌プラスミド、バクテリオファージ、酵素エピソーム、酵素染色体要素、アデノ-関連ウイルス、レンチウイルス、バキュロウイルス、パポバ(papova)ウイルス、SV40、牛痘(vaccinia)ウイルス、アデノウイルス、鶏痘(fowl pox)ウイルス、仮性狂犬病(pseudorabies)ウイルス及びレトロウイルスのようなウイルス、コスミド及びファージミドのようなプラスミド及びバクテリオファージ遺伝要素から由来したもののような、これに組み合されて由来したベクターが含まれる。いずれも本発明の実施形態による発現のために使用することができる。一般的に宿主においてポリヌクレオチド又は蛋白質を維持、延長又は発現するのに適合した任意のベクターが発現のために使用され得る。
【0122】
上記発現ベクター内のポリヌクレオチド配列は、例えば、mRNA転写を誘導するためのプロモーターを含む適切な発現調節配列に作動可能に連結される。さらなるプロモーターの代表的な例には、構造プロモーター及び組織特異的又は誘導性プロモーターが含まれるが、これに制限されない。構造真核プロモーターの例には、マウスメタロチオネインI遺伝子(Hameret al., J. Mol. Appl. Gen. 1:273 (1982));ヘルペスウイルスのTK プロモーター(McKnight, Cell 31:355 (1982)); SV40初期プロモーター(Benoist et al.,Nature 290:304 (1981));及び牛痘ウイルスプロモーターが含まれるが、これに制限されない。前記列挙された全ての参考文献は、本明細書に参考として統合されている。蛋白質又はポリヌクレオチドの発現を誘導するのに使用され得るプロモーターのさらなる例には、アルブミンプロモーター(肝細胞)、プロインシュリンプロモーター(膵β細胞)等のような、組織-特異的プロモーター及び特定蛋白質のための、その他の内生的プロモーターが含まれるが、これに制限されない。一般的に、発現構造体は転写、開始及び終結部位及び転写された領域内に翻訳のためのリボソーム結合部位を含有するのである。前記構造体により発現された成熟した転写体のコード部分は、開始部分にある翻訳開始AUG及び翻訳されるポリペプチドの末端に適切に位置した終結コドン(UAA、UGA又はUAG)を含み得る。
【0123】
さらには、前記構造体は発現させるだけでなく、発現を調節する調節領域を含有し得る。一般的にそのような領域は、その中でも抑制物質(repressor)結合部位及びエンハンサーのように、転写を調節することによって作動するのである。
【0124】
真核ベクターの例には、ストラタジーン(Stratagene)から利用可能なpW-LNEO、pSV2CAT、pOG44、pXT1及びpSG;アマシャム・ファルマシア・バイオテック(AmershamPharmacia Biotech)から利用可能なpSVK3, pBPV, pMSG及びpSVL;並びにクロンテック(Clontech)から利用可能なpCMVDsRed2-express、pIRES2-DsRed2、pDsRed2-Mito及びpCMV-EGFPを含むが、これに制限される訳ではない。数多くの他のベクターがよく知られており、商業的に利用可能である。
【0125】
宿主における発現のための適切なベクター及びプロモーターの選別はよく知られている過程であり、ベクターの製造及び宿主への導入だけでなく宿主における発現のための必要な技術は、本技術分野において通常の技術である。
【0126】
ポリヌクレオチドの細胞への導入は、ベクターの一時的(transient)形質感染又は安定的形質感染であり得る。ベクターの宿主細胞への一時的形質感染は、直接注射、リン酸カルシウム形質感染、DEAE-デクストラン媒介形質変換、陽イオン性脂質-媒介形質感染、電気穿孔法、形質転換、形質導入(transduction)、感染又はその他の方法により遂行することができる。そのような方法は、Daviset al., Basic Methods in Molecular Biology (1986); Keown et al.,Meth. Enzymol. 185:527 (1990); Sambrook et al., 2001, MolecularCloning, A Laboratory Manual, Third Edition, Cold Spring Harbor LaboratoryPress, N.Y.(本明細書に参照として統合される)のような数多くの標準実験室マニュアルに記述されている。
【0127】
HGFの2以上の異型体又は前記HGF異型体をコードする少なくとも一つのポリヌクレオチドは、薬学的組成物の形態で対象に投与され得る。一具体例において、前記組成物は注射により剤形化される。
【0128】
薬剤学的組成物は、薬剤学的に許容可能な担体をさらに含み得る。薬剤学的分野における通常の任意の手続きが、製剤、カプセル、丸薬、顆粒、懸濁液及び溶液のような経口剤形、溶液、懸濁液、注射前の蒸留水と混合され得る乾燥粉末のような注射剤形;軟膏、クリーム及びローションのような局所的に適用可能な剤形及びその他の剤形を製造するのに使用され得る。
【0129】
薬剤学的分野において、一般的に使用される担体が本発明の組成物に使用され得る。例えば、経口投与剤形は結合剤、柔化剤、崩壊剤、賦形剤、可溶化剤、分散剤、安定化剤、懸濁剤、着色剤又は香辛料を含み得る。注射剤形は、防腐剤、可溶化剤又は安定化剤を含み得る。局所投与用製剤は塩基、賦形剤、潤滑剤又は防腐剤を含み得る。本技術分野に知られている任意の適切な剤形(Remington's Pharmaceutical Science(18th edition), Mack PublishingCompany, Eaton PA)が本発明に使用され得る。
【0130】
前記薬剤学的組成物は、多様な経口及び非経口剤形として臨床的に投与され得る。適切な剤形は、添加剤、改善剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤及び界面活性剤又は希釈剤のような賦形剤を利用して製造することができる。経口投与用固形剤形には、丸薬、錠剤、微細粉末(dusting powder)、顆粒及びカプセルが含まれる。そのような固形剤形は、少なくとも一つの賦形剤、例えば澱粉、炭酸カルシウム、スクロース、ラクトース及びゼラチンをジベンジルブチロラクトンのリグナン(dibenzylbuthyllactonlignam)誘導体と混合することにより製造することができる。また、マグネシウムステアレート及びタルクのような潤滑剤が前記剤形に含まれ得る。経口投与用液状剤形には、懸濁液、溶液、柔化液及びシロップが含まれる。そのような剤形は、水及び液状パラフィンのような一般的な単純希釈剤以外に湿潤剤、甘味剤、芳香剤及び保存剤を含有し得る。非経口投与用剤形には、殺菌水溶液、懸濁液、柔化液、凍結乾燥した大腿治療及び座剤(suppository)が含まれる。水不溶性賦形剤及び懸濁剤にはプロピレングリコール、ポリエチレングリコール及びオリーブオイルのような植物性脂肪、及びエチルオレートのような注射可能なエステルが含まれる。Witepsol(R)、Macrogol(R)、Tween(R)61、カカオ脂肪、ラウリン脂肪及びグリセロールゼラチンが座剤の基剤として使用され得る。
【実施例】
【0131】
下記の実施例は単に例示の目的のために提示されるのであり、本発明の範疇を制限しようとするものではない。
【0132】
《実施例1:プラスミドの製造》
pCKベクターはヒトサイトメガロウイルス(HCMV)プロモーターから遺伝子の発現を誘導することができ、以前の文献に説明されたところがある(Leeet al., Biochem. Biophys. Res. Commun. 272:230 (2000); WO 2000/040737)。
【0133】
pCK-VEGF165は、VEGF165 cDNAを前記pCKベクターに挿入して製造されており、以前の文献に説明されたところがある(Leeet al., Biochem. Biophys. Res. Commun. 272:230 (2000); WO2000/040737)。
【0134】
pCK-cHGFは、HCMVプロモーターの統制下にHGF728をコードするcDNAを含有し、以前の文献に説明されたところがある(US2005/0079581)。
【0135】
pCK-dHGFは、HCMVプロモーターの統制下にHGF723をコードするcDNAを含有し、以前の文献に説明されたところがある(PCT/KR03/00548)。
【0136】
pCK-HGF-X7は、前記pCK ベクターに同時に挿入された2個の異型体を発現しようとして考案されたハイブリッドHGFcDNA(配列番号9)を含有し、以前の文献に説明されたところがある(US 2005/0079581)。
【0137】
《実施例2:細胞移動及び増殖に対するHGFの効果》
本研究の目的は、試験管内(in vivo)細胞移動及び増殖に対するHGFの効果を評価するためのものであった。
1. 物質及び方法
(1)HGF蛋白質の製造
pCK-HGF-X7をFuGENE6TM(RocheDiagnostics, Germany)を利用して、293T細胞に形質感染させた。対照群として、pCK, pCK-cHGF及びpCK-dHGFを使用した。形質感染の二日後、HGF蛋白質を含有する細胞上澄液を得た後、製造業者の指示に従ってヒトHGFELISA(R&D Systems, MN, USA)を利用してHGFの量を測定した。
(2)細胞の移動分析
ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC, Agiolab Co., Ltd., AL01-0122S)、マウス骨格筋芽細胞(skeletal myoblast cell)(C2C12, ATCC No. CRL-1772)及びラット心臓筋肉芽細胞 (cardiomyoblastcell)(H9C2, ATCC No. CRL-1446)の移動に対するHGFの効果を、変形したボイデンチャンバー分析(Boyden chamberassay)を通じて評価した。多孔性ポリカーボネートフィルター(8-μm 隙間の大きさ)を有する24 トランスウェル細胞培養チャンバー(Corning,NY, US)の挿入物(inserts)をPBSに溶かした1% ゼラチンでコーティングした。1%のFBSが添加されたM199培地に懸濁したHUVEC(n=15)及びそれぞれ3%のFBSが添加されたDMEM培地に懸濁したC2C12(n=10)又はH9C2(n=10)細胞をウェル当り1×104細胞として前記挿入物に添加した。試験物質(pCK、pCK-cHGF、pCK-dHGF又はpCK-HGF-X7に形質感染された293T細胞からの上澄液)をそれぞれ1%又は3%のFBSが添加されたM199又はDMEMにおいて50 ng/mLの最終HGF濃度で希釈し、前記希釈された試験物質600 μLをチャンバーの下部に置いた。細胞をCO2培養器において37℃で 3時間の間移動するようにした後、前記挿入物を持ち上げてPBSで洗浄し、4%のホルムアルデヒドで10分間固定させ、0.2%のクリスタルバイオレットで染色した。前記挿入物の反対側に位置した細胞を計数して細胞移動を定量した。各挿入物にグループに対して高倍率の視野(high-powerfield, ×200)で細胞を計数した。イメージをイメージ-プロ(R) プラス(Image-Pro(R) plus (Media Cybernetics, US))を利用して分析した。
(3)細胞増殖の分析
HUVEC細胞の増殖に対するHGFの効果を[3H]チミジン混入分析を利用して評価した。1%のFBSが添加されたM199培地に懸濁したHUVEC細胞(n=10)をウェル当り5×103細胞として96ウェルプレートに塗り付けた。HGF蛋白質(pCK, pCK-cHGF, pCK-dHGF又はpCK-HGF-X7に形質感染した293T細胞からの上澄液)10ナノグラムを前記細胞に添加した。細胞をCO2 培養器において37℃で48時間増殖させた。その後、各ウェルに1μCiの [3H]チミジンを添加し、細胞を37℃で16時間さらに培養した。細胞を回収して[3H]チミジン混入を液体閃光計数器(liquidscintillation counter, Wallac, Turku, Finland)を利用して測定した。
【0138】
2. 結果及び討議
二種類のHGF蛋白質異型体の生物学的結果を察し見るために、細胞移動及び増殖に対するこれらの効果を調査した。これらの分析を物質及び方法に記述されているように各発現ベクターで形質感染した293T細胞から得た上澄液を利用して行った。すべての実験において、同一量のHGFを使用した。
【0139】
図1、2及び3に示されているように、単に一つの異型体が存在するときと比較してみたとき、pCK-HGF-X7から生成された二種類のHGF異型体の存在時にそれぞれHUVEC、C2C12及びH9C2細胞の移動をより効率的に誘導した。また、二種類のHGF異型体の存在時にHUVEC細胞の効果的な増殖を促進した(図4)。pCK-HGF-X7から生成された上澄液はpCK-dHGF形質感染した細胞から生成された上澄液よりもHUVEC細胞の増殖をより効率的に誘導した。このような結果は、二種類のHGFの異型体の組み合わされた効果が内皮細胞においてさらに強い移動、増殖活性、骨格及び心臓筋芽細胞においてさらに強い移動を生成したということを示す。
【0140】
血管内皮細胞の移動は血管新生と強く連関しており、心筋及び骨格筋前駆細胞の移動は筋肉の発達及び損傷後の筋肉再生において重要な段階である。したがって、このような結果は、HGFの二種類の異型体の投与が新血管形成(neovascularization)及び虚血性組織の再生を誘導する、より効果的な方法を提供することができるということを示す。また、血管内皮細胞の移動及び増殖は、血管壁の形成と連関した自然の過程である。よって、これらの結果はまた、HGFの二種類の異型体の投与が血管壁の再-内皮細胞化を促進することができるということを示す。
【0141】
《実施例3:ラット虚血性心臓疾病モデルにおけるHGFの効能評価》
本研究の目的は、ラット虚血性心臓疾病モデルにおけるHGFの心内注射の心臓-保護効果を評価するためのものであった。実験の過程は、図5に提示されている。
1. 物質及び方法
(1)動物
38匹のスプラーグドーリー(Sprague-Dawley)ラット(オス、12週齢、350乃至400g、SLC)が到着するなり自由に餌と水を提供し、手術前7日間の休息を取るようにした。
【0142】
(2)心筋梗塞モデル
本研究において、HGFの薬理効能の分析のために、広く使用されるCAD病理モデルのうちの一つであるラット虚血性心臓疾患モデルを使用した。前記ラットにキシラジン(Xylazine)(5mg/kg)を筋肉注射した後、ケタミン(Ketamine)(50mg/kg)を筋肉注射して麻酔させた。95%のアルコール及びヨードで殺菌した後、胸部を殺菌済みの手術用の布で覆い、切開部位を露出させることにより手術のための完璧な殺菌条件を提供した。口腔経路を通じて気管内挿管(Endotrachealintubation)を行った。手術の間に、陽圧換気(positive pressure ventilation)を維持した。心電図及び酸素飽和度を継続して追跡観察した。中間開胸(Midthoracotomy)を行った。心嚢(pericardium)を開いて左心室の前壁(anterial wall)を調べた後、小さい組織のネラトン(Nelaton)(5Fr)で支持された6-0ポリプロピレン縫合を利用して左前下行冠状動脈(leftanterior descending coronary artery, LAD)の近位部(proximal)1/3の地点を結紮した。観察された心電図上において、ST-分析(segment)の上昇を確認した。60分間、LADを結紮した後、ラット虚血性心筋を再潅流させた。心嚢及び開胸の傷跡を閉じた。十分な自発呼吸が戻った後、中間壁吸引器(suction)に連結された単一胸部チューブを除去し、気管挿管チューブを除去した。そうしてから、出血の存在有無を調べるために切開部位を確認した。出血が止まった後、切開された筋肉(fascia)及び皮膚を縫合した。手術後、ゲンタマイシン(3mg/kg/日)を三日間、筋肉内に投与して感染を予防した。手術後、28日目に経胸部心臓超音波(Transthoracicechocardiogram)を行ってラットにおける心筋梗塞の誘導を確認した。
(3)効能評価の研究設計
HGFの効能はHGFを含有するプラスミドを虚血性心筋に直接注射し、生理学上、それと解剖学上から心臓-保護効果を観察することにより試験した。虚血誘導(0日)後、HGF遺伝子を含有するプラスミドを即時に投与した。各動物に総投与量250μgのpCK-cHGF(n=12)又はpCK-HGF-X7(n=10)を心筋内に注射した。陰性及び陽性対照群のために、HGFコード配列がない同一量のpCKベクター(n=7)及びpCK-VEGF165(n=9)を注射した。DNA注射後、1、14、28及び56日目に開胸部心臓超音波により心臓の生理的機能の向上を評価した。剖検後、血管新生及び抗-線維化効果の数値を測定した。
(4)心臓-生理学的分析
1日目に、開胸部心臓超音波を利用して左心室の拍出係数及び収縮-心室中隔を測定した。一日に得られた数値を基準数値として定めた。14、28及び56日目に心臓超音波を再び行った。1、14、28及び56日に得られた数値を、pCK、pCK-HGF-X7、pCK-cHGF及びpCK-VEGF165群の間で比較した。さらには、虚血性心臓から組織スライスを採取して、左心室における毛細管密度及び線維化の程度の変化を分析した。
(5)血管密度分析
56日目に、虚血性心臓から心筋組織を得て、二日間10%のホルマリン溶液において固定させてからパラフィンに包埋した。各標本から幾つかの連続分節を製造し、組織の切断時にCD31抗体で染色して血管の内皮細胞を確認した。血管密度を400X倍率の顕微鏡下で定量的に分析し、0.15mm2当りの血管数として示した(Image-Pro(R)plus, Version 4.1, Media Cybernetics, Bethesda, Maryland, USA)。そうしてから、前記数値を処理群の間で比較した。
(6)抗-線維化効果分析
56日目に、虚血性心臓から心筋組織を得て、二日間10%のホルマリン溶液において固定させてからパラフィンに包埋した。各標本から幾つかの連続分節を製造し、トリクローム(Trichrom)で染色してコラーゲンの含量を評価した。左心室内の線維化された領域(fibroticarea)を8X倍率の顕微鏡下で定量的に分析した。そうしてから、前記数値を処理群の間で比較した。
【0143】
(7)統計
結果をSPSS(version 10.0, SPSS. Inc,Chicago, IL, USA)を利用して平均±平均の標準誤差(SEM)で示した。すべてのデータの統計分析を一元分散分析(one-way ANOVA)後、LSD検定法又はチューキー検定法(Tukey’stest)を利用して行い、多重比較時に有意差を測定した。0.05以上のP値を有意であると見なした。
【0144】
2.結果
(1)ラットにおける左心室心筋梗塞の誘導
心筋梗塞の誘導後、28日に経胸部心臓超音波を行い、動物疾病モデルを確認した。心筋虚血の外科的誘導後に左心室の生理的機能が著しく減少したことが観察された。また、心筋線維症は左心室の前側部壁(anterolateralwall)において観察された。
【0145】
(2)左心室の機能に対するHGFの効果
DNA注射後、左心室の拍手係数(LVEF)の変化を処理群の間において比較した。1日目及び14日目に、群の間においてLVEFに統計学的に有意な差はなかった。ところが、心筋内にDNAを処理した後28日まで、LVEF数値はpCK群(pCK群(31.24±3.58%, p=0.028)又はpCK-cHGF群(33.99±2.26%,p=0.069)と比較してみたとき、pCK-HGF-X7処理群(40.77±2.92%)で統計学的に有意に、さらに高かった。pCK-VEGF165群におけるLVEF数値(39.63±2.44%)がpCK群(p=0.056)又はpCK-cHGF群(p=0.138)より高いものと見られるが、その差は統計学的に有意ではなかった。よく似たパターンが、処理後54日目に観察された(図6)。
【0146】
DNA処理後、収縮-心室中隔(IVS)の変化もまた比較した。収縮IVSはpCK-HGF-X7処理群においてのみ有意に増加し、56日目にpCK-HGF-X7処理群のIVSはpCK(p=0.061)、pCK-VEGF165(p=0.012)又はpCK-cHGF(p=0.011)-処理群よりさらに相当高かった(図7)。
【0147】
(3)血管密度に対するHGFの効果
56日目に、pCK-HGF-X7処理群の場合、虚血性境界部分(ischemicborder area)の心筋組織内の毛細管密度は、0.15mm2当り300.00±14.71であった。この毛細管密度は、pCK群の0.15mm2当り227.54±6.16(p<0.001)、pCK-VEGF165群の0.15mm2当り247.38±7.52(p<0.001)、又はpCK-cHGF群の0.15mm2当り231.35±5.55(p<0.001)より有意に、さらに高かった(図8)。
【0148】
(4)心筋線維化に対するHGFの効果
56日目に、pCK-HGF-X7処理群の場合、左心室内の線維化の程度は18.88±1.81%であった。この百分率線維化の程度は、pCK群の30.20±2.35%(p=0.009)よりも有意に、さらに低かった。また、pCK-HGF-X7群と比較してみたとき、統計学的に有意さが少なかったにも拘らず、pCK-VEGF165群(20.96±2.25%)における線維化の程度はpCK群(p=0.049)よりもさらに低かった。しかしながら、pCK-cHGF群(25.02±2.49%)における線維化の程度は、pCK処理群(p=0.411)よりもさらに相当低くはなかった(図9)。
【0149】
3.討議
よく知られているCAD動物モデルであるラット虚血性心臓疾病モデルにおいて、HGFの治療可能性を評価した。0日目に、外科的過程を通じて心臓虚血を発生させ、HGF遺伝子又は対照群DNAを含有する総250μgのプラスミドを虚血性心筋内に注射した。心臓超音波及び/又は組織学的分析によりHGFの効果を評価した。虚血性心臓の機能は、pCK-HGF-X7処理群において有意に改善された。pCK-cHGFがHGF蛋白質の一種類の異型体を発現するにも拘らず、pCK-cHGF群は心臓機能に何らの有意な改善も示さなかった。
【0150】
《実施例4:人体臨床試験におけるpCK-HGF-X7の効能評価》
人体臨床試験において、pCK-HGF-X7の効能を評価した。冠状動脈バイパス移植術(coronaryartery bypass graft, CABG)を受けた二名の患者に0.5mgのpCK-HGF-X7を注射した。
【0151】
1. 方法
(1)対象
対象は下記の条件を満たす場合、試験に含めた:1)19乃至75歳、2)MIBI-SPECT評価による可逆的潅流欠損(reversible perfusion defect)(休息(rest)及び負荷(stress)潅流間の7パーセント超の差)を有する、3)CABG後、不完全な再潅流領域を依然として有するものと推定されるか、CABGに適合しない心筋潅流領域を有するものと推定される。
【0152】
対象は、下記の以前の病歴又は現在の証拠がある場合除いた:1)悪性腫瘍(malignancy)、2)治療されていない心室不整脈、3)進行性心不全又はKillip分類(Killip class)II以上の左心室機能障害及び経胸部2D心臓超音波により<25%の左心室拍出係数を有する、4)深刻な感染性疾患、5)治療されていない結核疾患、6)心臓薄膜疾患(valvularheart disease)及び左心室の縮小手術(debulking surgery)を必要とする、7)増殖性網膜病症(proliferative retinopathy)、8)脳卒中、9) JNC IIの評価による治療されていない本態性高血圧(essentialhypertension)、10)深刻な肝及び心臓疾患、又は11)以前のCABG。
【0153】
前記プロトコルは韓国食薬庁だけでなく、ソウル大学病院臨床試験審査委員会(InstitutionalReview Board)により承認を受けた。
【0154】
(2)MIBI-SPECT心筋潅流の研究
pCK-HGF-X7の処理前に、そしてpCK-HGF-X7の処理後3ヶ月及び6ヶ月後に、全ての患者に休息時及びアデノシンを利用した生理学的負荷の後、99mTc-MIBIゲートSPECT(Vertex EPIC, ADAC Labs, CA., USA)を行った。SPECTイメージは心電図ゲーティング(electrocardiographygating)により構築し、自動-定量化プログラム(AutoQUANT, ADAC Labs, CA., USA)を利用して半定量的20-分節モデルを分析した。
【0155】
SPECT下において、休息及び負荷潅流スコア間の7%の差が心筋虚血における可逆的潅流欠損の最低線である。したがって、休息及び負荷潅流の間の≧7%の差は心筋が可逆的潅流欠損を有するということを示し、≦7%の差は心筋が正常な潅流を有するということを示す。
【0156】
休息及び負荷潅流のスコアをSPECT bull’s eye imageの分節数10及び16から得て、スコアの差はスコアリング期間、pCK-HGF-X7注射後、3及び6ヶ月目に評価した(図10)。
【0157】
(3)CABG下における心筋内pCK-HGF-X7注射
左前下行冠状動脈及び回旋(circumflex)冠状動脈のバイパス移植術を標準胸骨正中切開術(median sternotomy)により完了した。減少した潅流を有するにも拘らず、MIBISPECTにより評価されるとき、CABGに適合していなかった後下行動脈(posterior descending artery)の両側面に、0.5mgのpCK-HGF-X7(0.125mg/0.25 mL/注射; 4 部位/患者)を心筋内注射により投与した。pCK-HGF-X7が投与された分節数は、MIBI-SPECTから得られたbull’s eye imageの10及び16であった(図11)。
【0158】
2. 結果及び論議
(1)MIBI-SPECT下での心筋潅流に対するpCK-HGF-X7の効果
pCK-HGF-X7注射の前及び後にSPECT下の休息及び負荷潅流スコア間の差を比較した。一番目の患者において、pCK-HGF-X7注射前の休息及び負荷潅流スコア間の平均差は16%であった。pCK-HGF-X7注射後、3及び6ヶ月後に注射領域(分節数10及び16)における休息並びに負荷潅流スコア間の平均差は基準数値とは有意に異なる3.5%及び0.5%であった。二番目の患者において、pCK-HGF-X7注射前の休息及び負荷潅流スコアの間の平均差は9%であった。pCK-HGF-X7注射後3及び6ヶ月に注射領域(分節数10及び16)における休息及び負荷潅流スコア間の平均差は基準数値とは顕著に異なる4%及び3.5%であった(図12)。
【0159】
結論として、病気に罹った患者に対してpCK-HGF-X7を心筋内に注射する際、心筋潅流の状態を可逆的欠損から正常に変化させることができる。このような結果は、pCK-HGF-X7の投与が心筋潅流を顕著に向上させることができるということを示す。
【0160】
《実施例5:ブタアメロイド(ameroid)虚血性モデルにおけるpCK-HGF-X7の効能評価》
本研究の目的は、ブタアメロイド虚血性モデルにおいて、心臓イメージシステムの案内下にカテーテルを利用してpCK-HGF-X7の経皮心臓内注射の心臓-保護効果を評価するものであった。
【0161】
1. 物質及び方法
(1)動物
去勢されたヨークシャー食用ブタ(n=9、オス、20乃至40kg)が到着するなり自由に餌と水を提供し、手術する前に7日間の休息を提供した。
【0162】
(2)ブタアメロイド虚血性モデル
アメロイドの構築を通じた慢性心筋虚血のブタモデルは、十分に確立された、臨床学的に活用することができるとともに新規血管新生治療法の試験における慢性心筋虚血の許容された全臨床学的モデルである。このモデルは、ヒトにおける虚血に伴う血管形成の程度だけでなく、ヒト冠状解剖の全てを刺激する。さらに、このブタモデルは、ヒト心血管系と大きさ及び解剖が類似するために、心血管の医療装置実験において十分に確立されている。
【0163】
ブタの近位部左回旋(left circumflex)にアメロイド収縮器を外科的に移植して慢性虚血を引き起こした。テラゾール(R)(Telazol(R))4-6mg/kg及びアトロピンスルフェート(AtropineSulfate)0.02乃至0.05mg/kgを筋肉内に注射してブタを鎮静させた。そうしてから、顔面マスクを介してイソフルラン(Isoflurane)を投与して外科的介入のための一般的な麻酔を誘導した。前記ブタに管を挿入し、手術のために適切に準備した。前記ブタを左側横向け位(leftlateral recumbency)に置いた。静脈内にプラズマライト(Plasmalyte)及びリドカイン(Lidocaine)をゆっくりと注入して手術中の水和(hydration)を維持し、不整脈を抑制した。スクラブ(scrub)溶液を使用して手術部位を滅菌状態に準備し、胸部を滅菌した布ドレープ(drape)で覆い、動物全体をボディドレープで覆った。深い水準の麻酔が確立した後、筋肉弛緩のためにパンクロニウムブロマイド
1284433187307_0
を静脈内に投与した。五番目の肋骨間の空間(intercostalspace)にある左胸部において20-cm切開を行った。肋骨を広げてから、肺を食塩水で湿らせたガーゼスポンジでくるんだ。水平切開により隔膜神経(phrenicnerve)で遠位部(distal)心嚢を開いて心臓を心膜クレードル(pericardial cradle)に懸濁した。回旋動脈(circumflex coronary artery, LCX)を一番目の辺縁枝(marginalbranch)近位部の約0.5cmの距離で切開して動脈のための適切な大きさのアメロイド収縮器をその周囲に置いた。LCXベッド(bed)に衝撃を与え得る全ての副次的な物質を永久的に括った。不整脈の抑制のために必要な場合、リドカインボールス(Lidocainebolus)を投与した。前記心膜を通常通り縫合して塞がなかったものの、動脈上に位置したアメロイドを保障するための補助として使用された。連続パターンのクロミックガット(Chromicgut)(PDS II)縫合を使用して筋肉層を閉じた。ブレーデッドデキソン(Braided DexonTM)縫合を皮下に使用した。外科ステープル(Surgicalstaple)を使用して皮膚を閉じた。そうしてから、感染を予防するために全てのブタに三日間、筋肉内にエンロフロキサシン(Enrofloxaxin)(0.5mg/kg/day)を注射した。
【0164】
(3)効能評価の研究設計
アメロイドの移植の4週後に、ブタに無作為に1mgのpCK-HGF-X7[低容量群:1mg/2mL (n-3)], 4 mgのpCK-HGF-X7[高容量群: 4mg/8mL(n=3)]又はpCK-HGF-X7と共に使用された同一の賦形剤緩衝液からなる対照群[運搬体対照群:8mL(n=3)]を注射した。前記群に心内膜(transendocardial)経路でNOGA(R)MyoStar伝達カテーテル(Biosense Webster, USA)を利用して投与した。各動物に前壁及び後壁上の生存及び虚血性心筋の端部領域にpCK-HGF-X7の8(低容量群:0.125mg/0.25mL/注射部位)又は16(高容量群:0.25mg/0.5mL/注射部位)注射又は対照群(運搬体対照群:0.5mL/注射部位)を処理した。pCK-HGF-X7処理の機能上の結果を評価するために、心筋造影負荷心臓超音波(contraststress echocardiography)において測定したように、DNA処理前及び後の最大応力(peak stress)における心筋潅流(κ)を決定した。
【0165】
2. 結果
プラスミドDNA注射前及び後の最大応力における心筋潅流の変化を処理群の間で比較した。運搬体の対照群において、30日が0日目に比して減少した潅流傾向を示した。しかしながら、30日目に二種類のpCK-HGF-X7群は0日に比して潅流保存傾向を示した(図13)。このような結果は、pCK-HGF-X7の心内膜の伝達が心筋の虚血により誘導される心筋潅流の減少を予防することができるということを提示した。
【0166】
このような結果は、HGFがカテーテルを利用して伝達され得るということを示す。前記経皮的心内膜注射カテーテルは、臨床試験において電気機械的心臓航法システム(cardiacnavigation system)の案内下に多様な薬物、例えば幹細胞、アデノウイルス及び純粋なDNAの心内膜注射に使用されてきた。このような結果は、pCK-HGF-X7プラスミドDNAが電気機械的な指導下でカテーテルを利用した経皮心内膜注射として潅流の減少を有する心筋に安全に投与され得るということを示す。したがって、pCK-HGF-X7を心臓に伝達するためのカテーテル注入システムが安定、不安定狭心症又は急性、慢性心筋梗塞のような虚血性心臓組織を有する患者に使用され得る。
【0167】
《実施例6:HGF発現細胞の伝達》
HGFはpCK-HGF-X7を含む細胞の形態で伝達され得る。対象から肝葉幹細胞が回収される。肝葉幹細胞の供給源は、骨髄吸引物(marrowaspirate)又は稼動化抹消血液(mobilized peripheral blood)であり得る。回収された肝葉幹細胞を培養し、リポソームを利用してpCK-HGF-X7に形質感染させる。そうしてから、細胞を回収して食塩水で洗浄し、樹液に再混濁させた後患者内に注入する。pCK-HGF-X7で形質感染された肝葉幹細胞は、i)注射器を利用した心筋内注射として、又はii)電気機械的指導下にカテーテルを利用して経皮心内膜に注射として、虚血性及び梗塞した心臓組織内に注入することができる。
【0168】
《実施例7:pCK-HGF-X7-溶出性ステント(elutingstent)》
本実施例は、プラスミド-溶出性ステントの生産を立証する。
【0169】
A. プラスミド-溶出性ステンレススチールの生産
1. 物質及び方法
(1)ステンレススチールステント
ステンレススチールステント(SS stent, Liberte(R),3.0 mm x 20 mm)をボストンサイエンティフィック(Boston Scientific, USA)から購入した。
【0170】
(2)pCK-HGF-X7-溶出性SSステントの生産
a. 非重合体基盤のpCK-HGF-X7-溶出性SSステントの生産
SSステント支柱(strut)の表面を洗浄するために、ステントを3分間エタノールにおいて3回超音波分解(Vibra-CellTM,Sonics & Materials INC., Switzland)し、37℃で30分間乾燥させた。そうしてから、前記ステントを5mg/mLのpCK-HGF-X7溶液に5分間漬けた後、37℃で30分間乾燥させた。
b. 重合体基盤のpCK-HGF-X7-溶出性SSステントの生産
重合体基盤のSSステントを作るために、ステントをエタノールに溶かした5mg/mLのフォスフォリルコリン(PC)重合体(CM5208,Vertellus Specilities INC., UK)溶液に一回漬けた。そうしてから、前記PC重合体基盤のSSステントを5mg/mLのpCK-HGF-X7に5分間一回漬けた後、37℃で20分間乾燥させた。
【0171】
(3)SSステントから溶出されたpCK-HGF-X7の定量
SSステントにローディングされたpCK-HGF-X7の量を分析するために、除去されて補充された多量の溶液(1mL中0.8mL)を選んで迅速かつ効率的な方式でpCK-HGF-X7の溶出を定量した。
【0172】
pCK-HGF-X7がコーティングされたSSステントをそれぞれ1mLの正常食塩水を含有するクライオチューブ(cryotube)に浸漬させた。ステントを含有する前記チューブを1分当り40回転の条件下で60分間ローラーミキサー(HIP-RMF40,Hyunil LAB-MATE, Korea)上に置いた。pCK-HGF-X7の溶出物を1、5、10、20及び40分に回収した。各時点に、UV分析のために0.8mLの溶液を抜き出し、溶液の総容量を維持するためにクライオチューブに再び0.8mLの新鮮な正常食塩水を添加した。そうしてから、前記クライオチューブをローラミキサーに置いて、実験を継続した。各時点で得られた、抜き出したpCK-HGF-X7溶出液の濃度をウルトラスペック(Ultraspec)3000(AmershamPharmacia Biotech., Sweden)を利用して260nmで測定した。また、陰性対照群として、pCK-HGF-X7がないSSステントを前記定量方法を利用して試験した。
【0173】
2. 結果
結果を表1及び2に示した。1分に非重合体基盤のSSステントからほぼ78μgのpCK-HGF-X7が溶出され、40分に115μgが溶出された。また、60分に重合体基盤のSSステントからほぼ43μgのpCK-HGF-X7が溶出された。このような結果は、前記プラスミドが全ての非重合体及び重合体基盤のSSステント上にコーティングされ得るということと、前記コーティングされたプラスミドがSSステントから溶出され得るということを示す。よって、プラスミド-溶出性SSステントが成功裏に製造されたとの結論を下した。
【0174】
【表1】

【0175】
【表2】

【0176】
B. プラスミド-溶出性コバルトクロムステントの生産
1. 物質及び方法
(1)コバルトクロムステント
コバルトクロムステント(Co-Crステント、ARTHOSPico, 2.75 mm×12mm)をAMG インターナショナル(AMG international, Germany)から購入した。
【0177】
(2)pCK-HGF-X7-溶出性Co-Crステントの生産
a. 非重合体基盤のpCK-HGF-X7-溶出性Co-Crステントの生産
SSステント支柱の表面を洗浄するために、ステントをエタノールで3分間3回超音波分解し、37℃で30分間乾燥させた。
【0178】
b. pCK-HGF-X7-溶出性Co-Crステントの生産
重合体基盤のCo-Crステントを作るために、ステントをエタノールに溶かした5mg/mLのフォスフォリルコリン(PC)重合体(CM5208,Vertellus Specilities INC., UK)において1回浸漬した。そうしてから、前記PC重合体基盤のCo-Crステントを5分間、5mg/mLのpCK-HGF-X7に3回浸漬して37℃で10分間乾燥させた。
【0179】
(3)Co-Crステントから溶出されたpCK-HGF-X7の定量
Co-Crステント上にローディングされたpCK-HGF-X7の量を分析するために、除去されて補充された多量の溶液(1mL中0.8mL)を選んで迅速かつ効率的な方式でpCK-HGF-X7を定量した。
【0180】
Co-CrステントをコーティングしたpCK-HGF-X7をそれぞれ1mLの正常食塩水を含有するクライオチューブ(cryotube)に添加した。前記チューブを1分当り40回転の条件下で60分間ローラーミキサー(HIP-RMF40,Hyunil LAB-MATE, Korea)上に置いた。pCK-HGF-X7の溶出物を10、20、30、40、50及び60分に回収した。各時点でUV分析のために0.8mLの溶液を抜き出し、溶液の総容量を維持するためにクライオチューブに再び0.8mLの新鮮な正常食塩水を添加した。そうしてから、前記クライオチューブをローラミキサーに置いて、実験を継続した。各時点で得られた、抜き出したpCK-HGF-X7溶出液の濃度をウルトラスペック(Ultraspec)3000(AmershamPharmacia Biotech., Sweden)を利用して260nmで測定した。また、陰性対照群として、pCK-HGF-X7がないCo-Crステントを前記定量方法を利用して試験した。
【0181】
2. 結果及び論議
結果を表3及び4に示した。1分及び20分に非重合体基盤のCo-Crステントからほぼ60μg及び85μgのpCK-HGF-X7がそれぞれ溶出された。また、60分に重合体基盤のCo-Crステントからほぼ43μgのpCK-HGF-X7が溶出された。このような結果は、前記プラスミドが非重合体及び重合体基盤の全てのCo-Crステント上にコーティングされ得るということと、Co-Crステントから溶出されたプラスミドの量が、SSステントより少ないにも拘らず、前記コーティングされたプラスミドがCo-Crステントから溶出され得るということを示す。よって、プラスミド-溶出性Co-Crステントが成功裏に製造されたとの結論を下した。
【0182】
【表3】

【0183】
【表4】

【0184】
《実施例8:ウサギバルーン裸化モデル(rabbit balloondenudation model)におけるHGF-X7-溶出性ステントの効能評価》
本研究の目的は、ウサギバルーン裸化モデルにおけるHGF-X7-溶出性ステントによる再-内皮細胞化の加速を評価するためのものであった。
【0185】
1. 物質及び方法
(1)動物
10匹のニュージーランド白ウサギ(オス、3.5乃至4.0kg、デュアルバイオテック)に到着するなり自由に餌と水を提供し、ステント移植前に7日間の休息を提供した。
【0186】
(2)ウサギバルーン裸化モデル及びステント移植
キシラジン(Xylazine, 5mg/kg)の筋肉内注射後、ケタミン(50mg/kg)を注入してウサギを麻酔させた。95%のアルコール及びヨードで殺菌した後、首を滅菌手術用の布で覆い、切開部位のみ露出させ、手術のための完璧な殺菌条件を提供した。外部頚動脈を外科的に露出させた後、5F誘導管(introducersheath, Cordis, USA)を外部頚動脈内に前進させた。標準蛍光透視法(standard fluoroscopy method)を利用して1.4Fガイド-ワイヤー(guide-wire Terumo, Japan)を大腿動脈に挿入した後、2.8Fマイクロ-カテーテルを外部腸骨動脈(iliac artery)の隣接部分に前進させた。1000Uヘパリン及び0.1mgのニトログリセリンを投与した。
【0187】
次のように外部腸骨動脈のバルーン裸化を行った:ガイド-ワイヤーを介して外部腸骨動脈に2.5×8mmバルーンカテーテルを挿入した後、ウサギからマイクロ-カテーテルを除去した。バルーンカテーテルを膨張させた後(10atm)、連続して10回撤収(withdrawal)させ、約1.0cmの距離に外部腸骨動脈の内皮を露出させた。腸骨露出用カテーテルをウサギから除去し、pCK-HGF-X7-溶出性SSステント(PES)又はコーティングされていない金属(bare-metal)ステント(BMS)が固定された新たなバルーンカテーテルを露出した外部腸骨動脈に前進させた。12atmのバルーン膨張において、15秒間ステント移植を行った。PES(n=10)及びBMS(n=10)は左右両側に移植した。
【0188】
(3)光学干渉性断層撮影(Optical coherenttomography, OCT)分析
光学干渉性断層撮影(OCT)分析のために、ヘリオスオクルージョン(Heliosocclusion)バルーンカテーテル(LightLab, USA)をガイド-ワイヤーを介して外部腸骨動脈の近位部に前進させた後、ウサギから除去した。そうしてから、OCTイメージワイヤー(LightLab,USA)を移植されたステントの遠位部の端から1.5cmの距離に置いた。10mLの正常な食塩水を流してOCTイメージを得た。ウサギからすべての装置を除去した後、3-0シルク縫合を利用して外部頚動脈(carotidartery)を連結した。そうしてから、出血の存在有無のために切開部位を確認した。出血を抑制した後、切開された筋肉、筋膜(fascia)及び皮膚を縫合した。ゲンタマイシン(3mg/kg/日)を筋肉内に3日間投与して感染を予防した。また、32.5mgのクロピドグレル(Sanofi-Aventis,France)及び25mgのアスピリン(Bayer, Germany)を毎日投与した。
(4)注射電子顕微鏡(Scanning electron microscopy, SEM)
ステント移植後、14日及び28日に動物を犠牲にして血管を収去し、2.5%のグルタルアルデヒド溶液で2時間の間固定させた。前記固定された血管をリン酸緩衝食塩水(PBS)で3回洗浄し、1%のOSO4溶液で後-固定を行った。前記後-固定された血管をPBSで3回洗浄し、60乃至95%のエチルアルコールで連続して脱水過程を行った。最後に、前記脱水された血管に金のコーティングを施した。
(5)統計
結果をSPSS(version 10.0, SPSS Inc., Chicago, IL, USA)を利用して平均±平均の標準誤差(SEM)で示した。スチューデントのt-検定法を利用して全てのデータの統計分析を行った。0.05未満のP値を有意なものと見なした。
2. 結果及び論議
pCK-HGF-X7-溶出性ステントが再-内皮細胞化の過程を加速化することができるか否かを評価するために、OCT及びSEMによってステントを覆う細胞の内膜面積(intimaldimension)の変化及び特性をそれぞれ調査した。
ステント移植後、0、14及び28日にOCTイメージを得た。各ステントから9個の断面イメージを得た。OCTの基準及び追跡データが図14に示されている。後-介入(post-intervention)の結果は両方の群において類似した(図14A;0日)。しかしながら、ステント移植後14日にPEG群の断面部位の内部面積(ID-CSA,mm2)はBMS群に比して有意に拡張された(図14B;PES vs BMS, 0.23±0.05mm2 vs0.48±0.09mm2, p=0.03)。ステント移植後28日に、二つの群の間のID-CSAは類似した(図14B;PESvs BMS, 0.91±0.08mm2 vs 0.98±0.09mm2, p=0.76)。このような結果は、pCK-HGF-X7-溶出性ステントがコーティングされない金属ステントに比してステントの表面上の細胞の成長を向上させたということを示す。
次に、SEM分析によりステント上に増殖した細胞の種類を調査した。SEMは14日及び28日に行った。図15は内皮細胞(黒の矢印を参照)がPES群ではステントの表面を均一に覆うのに対して、BMS群では平滑筋細胞及び内皮細胞から構成された混合新生内膜(neointima)が観察されたということを示す。
このような結果は、pCK-HGF-X7-溶出性ステントが再-内皮細胞化を加速化させることができ、したがって混濁した血管を治療する有用な道具であることを証明する。
前記結果は、HGFの二つの異型体(HGF及びdHGF)の存在がHGF又はdHGFの単独に比して試験管内(in vivo)内皮細胞の成長及び移動をより効果的に誘導することができるということと、生体内(in vivo)HGFの二種類の異型体(HGF及びdHGF)全てを発現するヌクレオチド配列の伝達が血管の再-内皮細胞化の過程を加速化することができるということを示す。このような結果は、HGFの二種類の異型体がHGFの単一異型体よりも迅速な再-内皮細胞化の活性を通じてさらに効果的に再狭窄症を弱化させることができるということを示す。
本明細書に言及された全ての文献(特許、特許出願、ジャーナル記事、実験マニュアル、又はその他の文献)の全体の開示が参照として統合されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
HGFの2以上の異型体又は前記異型体をコードする少なくとも一つのポリヌクレオチドを含む組成物の、対象における心臓疾患を予防又は治療するための薬剤を製造するための使用。
【請求項2】
前記心臓疾患の予防又は治療が、対象における心臓組織の潅流又は血管密度を増加させることによるものである、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記心臓組織が虚血性心臓組織である、請求項2に記載の使用。
【請求項4】
前記心臓疾患の予防又は治療が、対象の血管損傷部位において、又は疾病に罹った血管の部位において内皮回復を向上させることによるものである、請求項1に記載の使用。
【請求項5】
HGFの2以上の異型体又は前記異型体をコードする少なくとも一つのポリヌクレオチドを含む組成物の、血管における内皮細胞の成長を促進するための薬剤を製造するための使用。
【請求項6】
前記血管が損傷したものである、請求項5に記載の使用。
【請求項7】
前記血管の再-内皮細胞化(re-endothelialization)が促進又は加速化されるものである、請求項6に記載の使用。
【請求項8】
前記血管が再狭窄症の予防又は治療を必要とする対象内にあるものである、請求項5に記載の使用。
【請求項9】
前記HGFの2以上の異型体が前記異型体をコードするポリヌクレオチドとして投与されるものである、請求項1乃至8のいずれかに記載の使用。
【請求項10】
前記薬剤が注射により投与されるものである、請求項1乃至4のいずれかに記載の使用。
【請求項11】
前記組成物が伝達装置を利用して投与されるものである、請求項1乃至8のいずれかに記載の使用。
【請求項12】
前記伝達装置がステントである、請求項11に記載の使用。
【請求項13】
前記ステントが非-重合体基盤のステンレススチールステント、重合体基盤のステンレススチールステント、非-重合体基盤のコバルトクロムステント及び重合体基盤のコバルトクロムステントからなる群より選ばれるものである、請求項12に記載の使用。
【請求項14】
前記組成物が前記ステントから溶出されるものである、請求項12に記載の使用。
【請求項15】
前記HGFの2以上の異型体が全長HGF(f1HGF)及び欠損した変異型HGF(dHGF)を含むものである、請求項1に記載の使用。
【請求項16】
前記HGFの2以上の異型体がNK1をさらに含むものである、請求項15に記載の使用。
【請求項17】
前記HGFの2以上の異型体がf1HGF及びdHGFからなるものである、請求項15に記載の使用。
【請求項18】
前記f1HGF及びdHGFがヒトf1HGF及びヒトdHGFの野生型配列とそれぞれ少なくとも80%同一であるものである、請求項15に記載の使用。
【請求項19】
前記f1HGF及びdHGFがヒトf1HGF及びヒトdHGFの野生型配列とそれぞれ少なくとも90%同一であるものである、請求項15に記載の使用。
【請求項20】
前記f1HGF及びdHGFがヒトf1HGF及びヒトdHGFの野生型配列とそれぞれ少なくとも95%同一であるものである、請求項15に記載の使用。
【請求項21】
前記f1HGF及びdHGFがヒトf1HGF及びヒトdHGFである、請求項20に記載の使用。
【請求項22】
前記f1HGF及び前記dHGFが別途のポリヌクレオチドによりコードされるものである、請求項15に記載の使用。
【請求項23】
前記f1HGF及び前記dHGFが同一のポリヌクレオチドによりコードされるものである、請求項15に記載の使用。
【請求項24】
前記少なくとも一つのポリヌクレオチドがプロモーターに作動可能に連結されたものである、請求項1に記載の使用。
【請求項25】
前記プロモーターが構成プロモーターである、請求項24に記載の使用。
【請求項26】
前記少なくとも一つのポリヌクレオチドが異なるベクター上にあるものである、請求項1に記載の使用。
【請求項27】
前記少なくとも一つのポリヌクレオチドが同一のベクター上にあるものである、請求項1に記載の使用。
【請求項28】
前記ベクターがプラスミドベクターである、請求項27に記載の使用。
【請求項29】
前記プラスミドベクターがcPKベクターである、請求項28に記載の使用。
【請求項30】
前記ベクターがウイルスベクターである、請求項27に記載の使用。
【請求項31】
前記f1HGF及び前記dHGFが、HGFエクソン1-18又はコードされたアミノ酸配列を変えないこの縮退物(degenerate)を含み、エクソン4とエクソン5の間にイントロンをさらに含むハイブリッドHGFコンストラクトによりコードされ、ここで前記コンストラクトはエクソン4とエクソン5の間の前記イントロン以外にはエクソンの間に他のイントロンがない、請求項15に記載の使用。
【請求項32】
前記イントロンが固有の(inherent)イントロンであるものである、請求項31に記載の使用。
【請求項33】
前記ハイブリッドHGFコンストラクトが、配列番号7のヌクレオチド配列を含む、請求項32に記載の使用。
【請求項34】
前記イントロンが固有のイントロンの断片である、請求項31に記載の使用。
【請求項35】
前記ハイブリッドHGFコンストラクトが配列番号8、9又は10のヌクレオチド配列を含む、請求項34に記載の使用。
【請求項36】
前記対象がヒトであり、前記HGFの異型体がそれぞれ約1μg乃至約100mgの投与量で投与される、請求項1に記載の使用。
【請求項37】
前記対象がヒトであり、前記ポリヌクレオチドがそれぞれ約1μg乃至約10mgの投与量で投与される、請求項1に記載の使用。
【請求項38】
HGFの2以上の異型体又は前記異型体をコードする少なくとも一つのポリヌクレオチドを活性成分として含む、対象における心臓疾患の治療又は予防用組成物。
【請求項39】
前記心臓疾患の予防又は治療が、対象における虚血性心臓組織の潅流を増加させることによるものである、請求項38に記載の組成物。
【請求項40】
HGFの2以上の異型体又は前記異型体をコードする少なくとも一つのポリヌクレオチドを活性成分として含む、対象における血管内の内皮細胞成長の促進用組成物。

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate


【公表番号】特表2011−510069(P2011−510069A)
【公表日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−544236(P2010−544236)
【出願日】平成21年1月28日(2009.1.28)
【国際出願番号】PCT/KR2009/000406
【国際公開番号】WO2009/093880
【国際公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【出願人】(507348377)ビロメッド カンパニー, リミテッド (6)
【Fターム(参考)】