説明

肥大化ラテックス粒子を調製する方法

【課題】肥大化ラテックス粒子を調製する方法を提供する。
【解決手段】ラテックスエマルジョン中で、1次ラテックス粒子の凝集により肥大化ラテックス粒子を調製する方法が開示される。グラフトコポリマー組成物を調製する方法、肥大化ラテックス粒子を含有するラテックスエマルジョンを用いた多モード性ポリマー組成物ならびに肥大化ラテックス粒子、グラフトコポリマー組成物および多モード性ポリマー組成物の使用も開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラテックスエマルジョンにおいて1次ラテックス粒子を凝集させることによる肥大化ラテックス粒子(enlarged latex particles)を調製する方法に関する。本発明はさらに、グラフトコポリマー組成物を調製する方法および肥大化ラテックス粒子を含有するラテックスエマルジョンを用いた多モード性ポリマー組成物および本発明の肥大化ラテックス粒子、グラフトコポリマー組成物および多モード性ポリマー組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ラテックスエマルジョンは、ポリマーまたはコポリマーが水中コロイドの形態における粒子として分散されているエマルジョンである。従来の技術により調製されるラテックスエマルジョンは、典型的には、たとえば約150nm未満の微細粒子直径を有する1次ラテックス粒子を含む。しかしながら、ある用途については、さらに大きな粒子直径を示すラテックス粒子を含むラテックスエマルジョンを有することが望ましい。
【0003】
ラテックスエマルジョンは、通常は乳化重合技術を用いて調製される。これらの従来技術は、約150nm未満の粒子直径を有するラテックス粒子を有するラテックスエマルジョンの調製に適当である。しかしながら、さらに大きな粒子直径が望ましい用途に関しては、このような従来技術は非常に長い重合時間を必要とするので、満足できるものではない。
【0004】
さらに商業的に妥当な反応時間で少なくとも150nmの平均粒子サイズを示すラテックス粒子を有するラテックスエマルジョンを得るための一方法は、Sakabeにより米国特許第6,723,764号において開示されている。Sakabeは:
(1)(a)アニオン性界面活性剤および
(b)カチオン性界面活性剤および両性界面活性剤からなる群から選択される少なくとも1種の界面活性剤をラテックスエマルジョン中に存在させ、
(2)凝集および肥大化剤として:
(i)無機酸、
(ii)有機酸、
(iii)水中で酸を形成する物質、
(iv)互いに反応して酸を形成する少なくとも2種の物質の組み合わせ、および
(v)活性光線に暴露することにより酸を形成する物質
からなる群から選択される少なくとも1つをこれらの界面活性剤の存在下でラテックスエマルジョンに添加し、
(3)凝集および肥大化剤から誘導される酸をラテックスエマルジョンに作用させ、これにより肥大化ラテックス粒子を形成することを含む、ラテックスエマルジョン中で1次ラテックス粒子を凝集させることにより肥大化ラテックス粒子を調製するための方法を開示している。
【0005】
それでも、少なくとも150nmの平均粒子サイズを示す肥大化ラテックス粒子を有するラテックスエマルジョンを調製するための経済的な代替法が依然として必要とされている。
【特許文献1】米国特許第6,723,764号明細書
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様において:
(a)少なくとも1種のpH感受性アニオン性界面活性剤および少なくとも1種のpH非感受性アニオン性界面活性剤を有するラテックスエマルジョンを提供し;
(b)(i)水と相互作用して酸を形成する物質をラテックスエマルジョン中に混合すること;
(ii)相互作用して酸を形成する少なくとも2種の物質の組み合わせをラテックスエマルジョン中に混合すること;
(iii)活性光線に暴露することにより酸を形成する物質をラテックスエマルジョン中に混合し、ラテックスエマルジョンをかかる活性光線に暴露すること;
(iv)(i)、(ii)および(iii)のうちの2以上の任意の組み合わせのうちの1つを行うことにより、ラテックスエマルジョンのpHを7より低く低下させ;
(c)1次ラテックス粒子を(任意に機械的撹拌なしに)凝集させて肥大化ラテックス粒子にし;
(d)任意に、ラテックスエマルジョンのpHを上昇させ;
(e)任意に、少なくとも1種の重合可能なモノマーをラテックスエマルジョンに添加し、少なくとも1種の重合可能なモノマーを重合させることを含む、ラテックスエマルジョンの1次ラテックス粒子の凝集により150nm以上の体積平均粒子直径を有する肥大化ラテックス粒子を調製する方法が提供される。
【0007】
本発明の他の態様において、本発明の凝集プロセスを用いて得られる肥大化ラテックス粒子が提供される。
【0008】
本発明の他の態様において、熱可塑性樹脂との組み合わせにおいて用いられる添加剤として、たとえば少なくとも1種の耐衝撃性改良剤および加工助剤としての、本発明の方法により調製される肥大化ラテックス粒子を含有するラテックスエマルジョンの使用が提供される。
【0009】
本発明の他の態様において、
(1)(a)少なくとも1種のpH感受性アニオン性界面活性剤および少なくとも1種のpH非感受性アニオン性界面活性剤を有するラテックスエマルジョンを提供し;
(b)(i)水と相互作用して酸を形成する物質をラテックスエマルジョン中に混合すること;
(ii)相互作用して酸を形成する少なくとも2種の物質の組み合わせをラテックスエマルジョン中に混合すること;
(iii)活性光線への暴露により酸を形成する物質をラテックスエマルジョン中に混合し、このような活性光線にラテックスエマルジョンを暴露すること;および
(iv)(i)、(ii)および(iii)のうちの2以上の任意の組み合わせ
のうちの一つを行うことによりラテックスエマルジョンのpHを7より低く低下させ;
(c)1次ラテックス粒子を、任意に機械的撹拌なしに、凝集させて肥大化ラテックス粒子にすることを含む、ラテックスエマルジョンの1次ラテックス粒子の凝集により、150nm以上の体積平均粒子直径を有する肥大化ラテックス粒子を調製し;
(2)ラテックスエマルジョンのpHを上昇させ;
(3)少なくとも1種の重合可能なモノマーをラテックスエマルジョンに添加し、少なくとも1種の重合可能なモノマーを肥大化ラテックス粒子にグラフト重合させることを含む、グラフトコポリマー組成物を調製する方法が提供される。
【0010】
本発明の他の態様において、本発明の凝集プロセスを用いて得られる肥大化ラテックス粒子を用いて調製されるグラフトコポリマー組成物が提供される。
【0011】
本発明の他の態様において、たとえば、少なくとも1種の耐衝撃性改良剤および加工助剤など、熱可塑性樹脂との組み合わせにおいて使用される添加剤としての本発明の方法により調製されるグラフトコポリマー組成物の使用が提供される。
【0012】
本発明の他の具体例において、
(1)(a)少なくとも1種のpH感受性アニオン性界面活性剤および少なくとも1種のpH非感受性アニオン性界面活性剤を有するラテックスエマルジョンを提供し;
(b)(i)水と相互作用して酸を形成する物質をラテックスエマルジョン中に混合すること;
(ii)相互作用して酸を形成する少なくとも2種の物質の組み合わせをラテックスエマルジョン中に混合すること;
(iii)活性光線への暴露により酸を形成する物質をラテックスエマルジョン中に混合し、このような活性光線にラテックスエマルジョンを暴露すること;および
(iv)(i)、(ii)および(iii)のうちの2以上の任意の組み合わせ
のうちの1つを行うことによりラテックスエマルジョンのpHを7より低く低下させ;
(c)1次ラテックス粒子を、任意に機械的撹拌なしに、凝集させて肥大化ラテックス粒子にすることを含む、ラテックスエマルジョンの1次ラテックス粒子の凝集により、150nm以上の体積平均粒子直径を有する肥大化ラテックス粒子を調製し;
(2)ラテックスエマルジョンのpHを上昇させ;
(3)少なくとも1種の重合可能なモノマーをラテックスエマルジョンに添加し、少なくとも1種の重合可能なモノマーを重合させることを含む、多モード性ラテックスエマルジョンを調製する方法が提供される。
【0013】
本発明の他の態様において、本発明の凝集プロセスを用いて得られる肥大化ラテックス粒子を用いて多モード性ポリマー組成物が提供される。
【0014】
本発明の他の態様において、たとえば、少なくとも1種の耐衝撃性改良剤および加工助剤としてなど、熱可塑性樹脂との組み合わせにおいて用いられる添加剤としての本発明の方法により調製される多モード性ポリマー組成物の使用が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本明細書において定義される全ての範囲は両端を包含し、組み合わせ可能である。
【0016】
本明細書および添付の請求の範囲において用いられる「(コ)ポリマー」なる用語は、ホモポリマーおよびコポリマーのどちらも包含する。
【0017】
本発明の方法は、凝塊の生成が最少でラテックスエマルジョンの1次ラテックス粒子の凝集により肥大化ラテックス粒子を調製する方法を提供する。いくつかの具体例において、本発明の方法は、2重量%未満の凝塊(ラテックスエマルジョン中のポリマーの合計重量基準);あるいは1重量%未満の凝塊;あるいは0.5重量%未満の凝塊;あるいは0.1重量%未満の凝塊;あるいは0.05重量%未満の凝塊;あるいは0.01重量%未満の凝塊を有する肥大化ラテックス粒子を調製する方法を提供する。いくつかの具体例において、生成物ラテックスエマルジョン中少なくとも99重量%の肥大化ラテックス粒子(ラテックスエマルジョン中のポリマーの合計重量基準)は、5000nm未満;あるいは3000nm未満;あるいは2000nm未満;あるいは1000nm未満の粒子直径を示す。
【0018】
本明細書および添付の請求の範囲において用いられる「凝塊(coagulum)」なる用語は、USA標準試験シーブASTME−11明細番号325およびTyler Equivalent325メッシュのシーブ表示の45μm公称シーブ開口部を有するスクリーンを用いてラテックスエマルジョンから濾過により除去することができるポリマー物質を意味する。
【0019】
本発明の方法を用いて得られる肥大化ラテックス粒子は、150nm以上;あるいは200nm以上;あるいは250nm以上;あるいは300nm以上;あるいは400nm以上;あるいは500nm以上;あるいは510nm以上;あるいは525nm以上;あるいは550nm以上;あるいは600nm以上;あるいは150〜1000nm;あるいは200〜1000nm;あるいは250〜1000nm;あるいは300〜1000nm;あるいは400〜1000nm;あるいは500〜1000nm;あるいは510〜1000nm;あるいは525〜1000nm;あるいは525〜1000nm;あるいは600〜1000nm;あるいは300〜350nm;あるいは400〜450nm;あるいは550〜650nm;あるいは600〜700nmの体積平均粒子直径を示す。
【0020】
本発明に関する使用に好適なラテックスエマルジョン中に含まれる1次ラテックス粒子は、200nm以下;150nm以下;あるいは100nm以下;あるいは80nm以下;あるいは20〜200nm;あるいは20〜150nm;あるいは50〜150nm;あるいは50〜100nm;あるいは80〜100nmの体積平均粒子直径を示しうる。
【0021】
pH感受性アニオン性界面活性剤としての本発明に関する使用に好適なアニオン性界面活性剤としては、たとえば、カルボン酸塩が挙げられる。好適なカルボン酸塩としては、たとえば、脂肪酸のアルカリ金属塩、ロジン酸のアルカリ金属塩、アルキルサルコシン酸のアルカリ金属塩およびアルケニルコハク酸のアルカリ金属塩;あるいはオレイン酸ナトリウム、オレイン酸カリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ミリスチン酸ナトリウム、ミリスチン酸カリウム、パルミチン酸ナトリウム、パルミチン酸カリウム、ラウリン酸カリウム、ウンデカン酸カリウム、リノール酸ナトリウム、リノール酸カリウム、カプリル酸カリウム、ノナン酸カリウム、カプリン酸カリウムおよび不均化ロジン酸カリウム;あるいはオレイン酸カリウムが挙げられる。いくつかの具体例において、本発明のpH感受性アニオン性界面活性剤は、3以上;あるいは3〜6;あるいは3.5〜5.5;あるいは4〜5のpKaを示す親酸を有する。いくつかの具体例において、本発明のラテックスエマルジョンは、0.3〜1.1重量%;あるいは0.3〜0.8重量%;あるいは0.4〜0.8重量%;あるいは0.3〜0.5重量%;あるいは0.35〜0.45重量%のpH感受性アニオン性界面活性剤(ラテックスエマルジョン中のポリマーの合計重量基準)を含む。
【0022】
pH非感受性アニオン性界面活性剤としての本発明に関する使用に適したアニオン性界面活性剤としては、たとえば、アルキルスルホネート、アリールスルホネート、アルキルスルフェート、アリールスルフェート、アルキルホスフェート、アリールホスフェート、アルキルホスホネートおよびアリールホスホネート;あるいはアルキルスルホネート、アリールスルホネート、アルキルスルフェートおよびアリールスルフェート;あるいはナトリウムビス(2−エチルヘキシル)スルホサクシネート、アルキルジフェニルオキシドジスルホネート塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウムおよびドデシル硫酸ナトリウム;あるいはラウリル硫酸ナトリウムが挙げられる。いくつかの具体例において、本発明のpH非感受性アニオン性界面活性剤は、3未満;あるいは2.5以下;あるいは2.0以下;あるいは1.5以下;あるいは1.0以下;あるいは0以下のpKaを示す親酸を有する。いくつかの具体例において、本発明のラテックスエマルジョンは、0.005〜0.1重量%(ラテックスエマルジョン中のポリマーの合計重量基準);あるいは0.01〜0.03重量%;あるいは0.015〜0.025重量%のpH非感受性アニオン性界面活性剤を含む。
【0023】
本発明に関する使用に適した1次ラテックス粒子を有するラテックスエマルジョンは、様々な公知プロセスにより調製することができる。たとえば、主にラテックス粒子を有するラテックスエマルジョンは通常の乳化重合技術により調製することができる。
【0024】
本発明に関する使用に適したラテックスエマルジョンにおける1次ラテックス粒子は、たとえば、ジエンモノマー、たとえばブタジエン、イソプレンおよびクロロプレンの(コ)ポリマー;ビニルモノマー、たとえばスチレン、アクリロニトリル、アクリルエステル、メタクリルエステル、エチレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、酢酸ビニルおよびフッ化ビニルの(コ)ポリマー;ジエンモノマーとビニルモノマーのコポリマー;シリコーン樹脂、たとえばポリオルガノシロキサン;ポリエステル;エポキシ樹脂;メラミン樹脂;ポリアミド;ポリウレタンおよびその混合物;あるいはビニルモノマーの(コ)ポリマー、ジエンモノマーの(コ)ポリマーおよびジエンモノマーとビニルモノマーのコポリマー;あるいはジエンモノマーとビニルモノマーのコポリマー;あるいはブタジエン/スチレンコポリマーをはじめとする様々な物質から誘導することができる。
【0025】
いくつかの具体例において、1次ラテックス粒子が由来しうる材料は、たとえば、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレートおよび1,3−ブタンジオールジアクリレートをはじめとする架橋可能なモノマー;たとえば、ラジカル重合開始剤、熱分解可能な重合開始剤およびレドックス開始剤をはじめとする重合開始剤;たとえば、t−ドデシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタンおよびα−メチルスチレンダイマーをはじめとする連鎖移動剤;およびたとえばpH感受性アニオン性界面活性剤およびpH非感受性アニオン性界面活性剤をはじめとする界面活性剤を包含する。
【0026】
一態様において、本発明のラテックスエマルジョンは、カチオン性界面活性剤を含有せず、両性界面活性剤を含有しない。
【0027】
いくつかの具体例において、1次ラテックス粒子は、ジエンモノマー、ビニルモノマーおよびアニオン性および/またはカチオン性官能基を有するモノマーを用いて調製することができる。アニオン性および/またはカチオン性官能基を有するモノマーとしては、たとえば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマル酸、アクリルアミド、メタクリルアミド、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレートおよびグリシジルメタクリレートが挙げられる。
【0028】
いくつかの具体例において、1次ラテックス粒子は、コア/シェル構造を示す。いくつかの具体例において、本発明の1次ラテックス粒子は、有機/無機複合体を含むことができる。
【0029】
本発明に関する使用に適した1次ラテックス粒子を含有するラテックスエマルジョンは、好ましくは7〜12;あるいは7〜10;あるいは7以上;あるいは8以上;あるいは9以上のpHを示す。
【0030】
本発明に関する使用に適した、水と相互作用して酸を形成する物質は、たとえば、無水物、たとえば無水酢酸および無水マレイン酸;エステル、たとえば硫酸エステルおよびリン酸エステル;酸塩化物および二酸化炭素を包含する。
【0031】
本発明に関する使用に適した、相互作用して酸を形成する少なくとも2種の物質の組み合わせは、たとえば、ペルオキシドとホルムアルデヒドの組み合わせ;ペルオキシドとスルホキシル酸塩;およびペルオキシドとホルムアルデヒドスルホキシレート;あるいはペルオキシドとホルムアルデヒドスルホキシレート;あるいは過酸化水素とナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレートを包含する。いくつかの具体例において、少なくとも2種の物質のこのような組み合わせを水性溶液としてラテックスエマルジョンに添加することができる。いくつかの具体例において、ラテックスエマルジョンのpHを7以下;あるいは1〜6;あるいは2〜6;あるいは3〜6;あるいは3〜5に下げるために十分な量の少なくとも2種の物質のこのような組み合わせがラテックスエマルジョンに添加される。
【0032】
本発明に関する使用に適した活性光線に暴露すると酸を形成する物質としては、たとえば、活性光線に暴露されるとBronsted酸またはLewis酸を形成する物質が挙げられる。このような物質としては、たとえば、オニウム塩、ハロゲン化有機化合物、キノンジアジド化合物、α,α−ビス(スルホニル)ジアゾメタン化合物、α−カルボニル−α−スルホニル−ジアゾメタン化合物、スルホン化合物、有機エステル化合物、有機酸アミド化合物および有機酸イミド化合物が挙げられる。活性光線としては、たとえば、紫外線、遠紫外線、電子線およびレーザー光線が挙げられる。いくつかの具体例において、活性光線に暴露されると酸を形成する物質を水性溶液としてラテックスエマルジョンに添加することができる。いくつかの具体例において、ラテックスエマルジョンのpHを7以下;あるいは1〜6;あるいは2〜6;あるいは3〜6;あるいは3〜5に下げるために十分な量のこのような物質がラテックスエマルジョンに添加される。
【0033】
いくつかの具体例において、塩を、相互作用して酸を形成する少なくとも2種の物質の組み合わせおよび/または活性光線に暴露されると酸を形成する物質との組み合わせにおいて使用することができる。塩は、ラテックスエマルジョン中に存在することができるか(たとえば、塩をラテックスエマルジョン中1次ラテックス粒子の調製中にあらかじめ添加することができる)または相互作用して酸を形成する少なくとも2種の物質の組み合わせおよび/または活性光線に暴露されると酸を形成する物質より前に、または同時にラテックスエマルジョンに添加することもできる。本発明に関する使用に適したpH緩衝効果を示さない塩としては、たとえば、塩化ナトリウム、塩化カリウムおよび塩化カルシウムが挙げられる。本発明に関する使用に適したpH緩衝効果を示す塩としては、たとえばピロリン酸ナトリウム、炭酸ナトリウムおよび硫酸アンモニウムが挙げられる。
【0034】
理論に束縛されることを望まないが、ラテックスエマルジョンのpHが低下するにつて、pH感受性アニオン性界面活性剤の安定化作用が減少する。このpH感受性アニオン性界面活性剤の安定化効果における減少は、1次ラテックス粒子が凝集して肥大化ラテックス粒子になることを促進すると考えられる。
【0035】
肥大化ラテックス粒子が所望の粒子サイズになるまで1次ラテックス粒子を凝集させて肥大化ラテックス粒子にする。いくつかの具体例において、1次ラテックス粒子を、2時間以下;あるいは1.5時間以下;あるいは1時間以下の期間凝集させて、肥大化ラテックス粒子にする。
【0036】
いくつかの具体例において、ラテックスエマルジョンは任意に撹拌に付すことができ、その間、1次ラテックス粒子は凝集して、肥大化ラテックス粒子になる。たとえば、ラテックスエマルジョンを任意に超音波振動に付してもよく、その間、1次ラテックス粒子は凝集して肥大化ラテックス粒子になる。他の具体例において、相互作用して酸を形成する少なくとも2種の物質の組み合わせおよび/または活性光線に暴露されると酸を形成する物質をラテックスエマルジョンに添加し、分散させると、機械的撹拌を停止させる。理論に束縛されることを望まないが、機械的撹拌をしない場合、1次ラテックス粒子が凝集して肥大化ラテックス粒子になることはブラウン凝集により起こると考えられる。
【0037】
いくつかの具体例において、1次ラテックス粒子が凝集して肥大化ラテックス粒子になる間のラテックスエマルジョン温度は、20〜90℃;あるいは40〜90℃;あるいは45〜90℃;あるいは50〜90℃;あるいは55〜90℃;あるいは60〜90℃;あるいは50〜70℃;あるいは55〜65℃;あるいはラテックス粒子を構成する(コ)ポリマー成分のガラス転移温度より高く維持される。
【0038】
1次ラテックス粒子を凝集させて肥大化ラテックス粒子にした後、ラテックスエマルジョンのpHを任意に上昇させることができる。いくつかの具体例において、塩基性物質をラテックスエマルジョンに添加して、そのpHを上昇させる。好適な塩基性物質としては、たとえば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウムおよび炭酸カリウムが挙げられる。いくつかの具体例において、塩基性物質は水性溶液としてラテックスエマルジョンに添加される。本発明のいくつかの具体例において、1次ラテックス粒子を凝集させて肥大化ラテックス粒子にした後、ラテックスエマルジョンのpHを6〜10;あるいは7以上;あるいは8以上;あるいは9以上に上昇させるために十分な塩基性物質を添加する。
【0039】
本発明のプロセスにより得られる肥大化ラテックス粒子をグラフト重合に付して、肥大化ラテックス粒子を含有するグラフトコポリマーを得ることができる。いくつかの具体例において、グラフト重合は、少なくとも1種の重合可能なモノマーをラテックスエマルジョン中、肥大化ラテックス粒子の存在下で重合させることにより行うことができる。いくつかの具体例において、グラフト重合プロセスは、乳化重合プロセスまたは懸濁重合プロセスとして行うことができる。
【0040】
グラフトポリマーの調製における本発明に関する使用に適した重合可能なモノマーとしては、たとえば、芳香族ビニルモノマー、たとえばスチレンおよびα−メチルスチレン;芳香族多環式ビニルモノマー、たとえば4−ビニルビフェニルおよび2−ビニルナフタレン;不飽和ニトリル、たとえばアクリロニトリルおよびメタクリロニトリル;アルキル(メタ)アクリレートモノマー、たとえばメチルメタクリレートおよびブチルアクリレート;不飽和カルボン酸、たとえばアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸および無水マレイン酸;マレイミドモノマー、たとえばマレイミドおよびN−フェニルマレイミド;およびその組み合わせが挙げられる。
【0041】
たとえば、ジビニルベンゼン、アリルメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレートおよび1,3−ブチレンジメタクリレートをはじめとする多官能性ビニルモノマー;たとえばt−ドデシルメルカプタンおよびn−オクチルメルカプタンをはじめとする連鎖移動剤を包含するグラフトコポリマーの調製を促進するために、様々な他の物質を反応混合物に添加することもできる。
【0042】
肥大化ラテックス粒子とグラフト重合した少なくとも1種の重合可能なモノマーは反応系に一度に、数回に分けて、連続的に、またはこの任意の組み合わせにより添加することができる。グラフト重合が2以上の段階において行われる場合、各段階において添加される少なくとも1種の重合可能なモノマーは同一であっても、異なっていてもよい。
【0043】
いくつかの具体例において、本発明のグラフトコポリマーは、向上された透明性を示す。このような具体例において、肥大化ラテックス粒子にグラフト重合させるための重合可能なモノマーは、重合可能なモノマーおよび肥大化ラテックス粒子が同じような屈折率を示すように;あるいは肥大化ラテックス粒子に対するグラフト重合のための重合可能なモノマーと形成されたグラフトコポリマー間の屈折率の差が0.02以下;あるいは0.01以下;あるいは0.005以下となるように選択することができる。
【0044】
本発明の肥大化ラテックス粒子を含有するグラフトコポリマーは、150nm以上;あるいは200nm以上;あるいは250nm以上;あるいは300nm以上;あるいは400nm以上;あるいは500nm以上;あるいは510nm以上;あるいは525nm以上;あるいは550nm以上;あるいは600nm以上;あるいは150〜1000nm;あるいは200〜1000nm;あるいは250〜1000nm;あるいは300〜1000nm;あるいは400〜1000nm;あるいは500〜1000nm;あるいは510〜1000nm;あるいは525〜1000nm;あるいは525〜1000nm;あるいは600〜1000nm;あるいは300〜350nm;あるいは400〜450nm;あるいは550〜650nm;あるいは600〜700nmの体積平均粒子直径を示しうる。
【0045】
いくつかの具体例において、本発明の肥大化ラテックス粒子を含有するラテックスエマルジョンを、少なくとも2つのポリマー粒子集団を有する多モード性ポリマー粒子組成物を調製するために使用できる。いくつかの具体例において、肥大化ラテックス粒子は、多モード性ポリマー粒子組成物においてポリマー粒子の1集団を含む。いくつかの具体例において、たとえば、40重量%以上、あるいは45重量%以上、あるいは50重量%以上の固形分などの高い固形分を有する多モード性ポリマー粒子組成物を調製することができる。いくつかの具体例において、2000センチポアズ以下のプロセス粘度を有する多モード性ポリマー粒子組成物を調製することができる。
【0046】
本発明の肥大化ラテックス粒子、グラフトコポリマー組成物および多モード性ポリマー組成物は、様々な商業的用途において、単独または他の物質との組み合わせにおいて用いることができる。たとえば、本発明の肥大化ラテックス粒子、グラフトコポリマー組成物および多モード性ポリマー組成物は、個々に様々な熱可塑性樹脂中にブレンドして、たとえば耐衝撃性改良剤および/または加工助剤などとして熱可塑性樹脂の性質を改良することができる。
【0047】
本発明に関する使用に適した熱可塑性樹脂としては、たとえば、ポリスチレン、耐衝撃性ポリスチレン、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリアミド(たとえば、ナイロン)、メチルメタクリレート−スチレン樹脂、塩化ビニル樹脂、塩素化塩化ビニル樹脂、アクリロニトリル−スチレン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂、熱可塑性ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、およびその混合物;あるいはアクリル樹脂、メタクリル樹脂、アクリロニトリル−スチレン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂、熱可塑性ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド(たとえば、ナイロン)およびその混合物;あるいはポリ(メチル)メタクリレート樹脂、アクリロニトリル−スチレン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド(たとえば、ナイロン)およびその混合物が挙げられる。
【0048】
本発明の肥大化ラテックス粒子、グラフトコポリマー組成物および/または多モード性ポリマー組成物は、ラテックス、スラリーまたはこれから分離または集められた生成物粒子として提供することができる。肥大化ラテックス粒子、グラフトコポリマー組成物または多モード性ポリマー組成物をラテックスまたはスラリーから生成物粒子として分離し、集めるための方法に関して特に制限はない。当該分野において公知の好適な方法としては、たとえば、噴霧乾燥、凝結および凍結乾燥が挙げられる。酸化防止剤、紫外線吸収剤、ブロッキング防止剤、顔料、充填剤、滑剤、静電防止剤および抗菌剤などの添加剤を、たとえばラテックスまたはスラリーから生成物粒子を乾燥し、集める前または後に、ラテックスエマルジョンに添加することができる。
【0049】
生成物粒子と熱可塑性樹脂のブレンド比は、生成物樹脂系に対して所望の性質を提供するために選択することができる。いくつかの具体例において、生成物粒子と熱可塑性樹脂のブレンド比(固形分基準)は、それぞれ0.1:99.9重量%〜99.9:0.1重量%、あるいは1:99重量%〜99:1重量%の範囲になる。いくつかの具体例において、生成物粒子が耐衝撃性改良剤として熱可塑性樹脂とブレンドされる場合、ブレンドは、1〜50重量%(固形分基準);あるいは10〜50重量%;あるいは20〜50重量%;あるいは20〜40重量%の生成物粒子を含有しうる。
【実施例】
【0050】
本発明のいくつかの具体例を以下の実施例において詳細に説明する。
【0051】
以下の実施例において用いられる全ての「部」および「%」は特に他に記載しない限りそれぞれ乾燥重量部および重量%を意味する。以下の実施例において用いられる「BOM%]とは、モノマーの乾燥重量基準での乾燥重量%を意味する。以下の実施例において用いられる「BOP%」とは、ポリマーの乾燥重量基準での乾燥重量%を意味する。
【0052】
実施例において提供される物理的性質は、次の方法にしたがって決定した。
【0053】
体積平均粒子直径
Matec Applied Science CHDF−2000粒子サイズ分布分析器を製造業者の指示にしたがって使用して、以下の実施例において示される粒子サイズ分析データを得た。
【0054】
実施例1
1次ラテックス粒子を次のようにして調製した:
a)ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート、ジイソプロピルベンゼンヒドロペルオキシドおよびブタジエンを除く、表1に列挙した全ての物質を、撹拌しながら圧力容器に添加し;
b)ブタジエンを次いで連続して撹拌しながら圧力容器に添加し;
c)圧力容器の内容物を連続して撹拌しながら50℃に加熱し;
d)ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレートおよびジイソプロピルベンゼンヒドロペルオキシドを次いでゆっくりと10時間かけて連続して撹拌しながら圧力容器に添加して、1次ラテックス粒子を含有するラテックスエマルジョンを得た。
【0055】
【表1】

【0056】
ポリマー生成物へのモノマーの転化率は約99.5%であった。得られるラテックスエマルジョン中に含まれる1次ラテックス粒子の体積平均粒子直径は、前記のようにMatec Applied Sciences CHDF−2000粒子サイズ分布分析器を用いて95nmと測定された。
【0057】
実施例2
肥大化ラテックス粒子を、以下のようにして実施例1に従って得られたラテックスエマルジョン中1次ラテックス粒子から調製した:
a)0.05BOP%アルキルジフェニルオキシドジスルホネート塩(Dow Chemical Companyから商業的に入手可能なDowfax(登録商標)2A1)を、実施例1において記載されるようにして得られる1次ラテックス粒子を含有するラテックスエマルジョンに撹拌しながら添加し;
b)圧力容器の内容物を次いで60℃に加熱し;
c)0.4BOP%ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート(SFS)を次いで圧力容器に連続して撹拌しながら添加し;
d)(c)におけるSFS添加の5分後に、0.22BOP%過酸化水素を連続して撹拌しながら圧力容器に添加し;
e)(d)における過酸化水素添加の10分後に撹拌を停止し;
f)圧力容器の内容物を次いで50分間撹拌せずに保持し;
g)1.0BOP%の水酸化ナトリウムを次いで圧力容器に添加し;
h)(g)における水酸化ナトリウムの添加の2分後に、撹拌を再開し;
i)追加の0.082BOP%アルキルジフェニルオキシドジスルホネート塩(Dowfax(登録商標)2A1)を次いで圧力容器の内容物に連続して撹拌しながら添加して、肥大化ラテックス粒子を含有する生成物ラテックスエマルジョンを得た。
【0058】
生成物ラテックスエマルジョン中に含まれる肥大化ラテックス粒子は、前記のようにMatec Applied Sciences CHDF−2000粒子サイズ分布分析器で測定すると269nmの体積平均粒子直径を示した。
【0059】
実施例3
肥大化ラテックス粒子を、次のようにして実施例1に従って得られるラテックスエマルジョン中1次ラテックス粒子から調製した:
a)0.025BOP%アルキルジフェニルオキシドジスルホネート塩(Dowfax(登録商標)2A1)を、実施例1において記載されるようにして得られる1次ラテックス粒子を含有するラテックスエマルジョンに撹拌しながら添加し;
b)圧力容器の内容物を次いで60℃に加熱し;
c)0.4BOP%ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート(SFS)を次いで圧力容器に連続して撹拌しながら添加し;
d)(c)におけるSFS添加の5分後に、0.22BOP%過酸化水素を連続して撹拌しながら圧力容器に添加し;
e)(d)における過酸化水素添加の10分後に撹拌を停止し;
f)圧力容器の内容物を次いで50分間撹拌せずに保持し;
g)1.0BOP%の水酸化ナトリウムを次いで圧力容器に添加し;
h)(g)における水酸化ナトリウムの添加の2分後に、撹拌を再開し;
i)追加の0.082BOP%アルキルジフェニルオキシドジスルホネート塩(Dowfax(登録商標)2A1)を次いで圧力容器の内容物に連続して撹拌しながら添加して、肥大化ラテックス粒子を含有する生成物ラテックスエマルジョンを得た。
【0060】
生成物ラテックスエマルジョン中に含まれる肥大化ラテックス粒子は、前記のようにMatec Applied Sciences CHDF−2000粒子サイズ分布分析器で測定すると355nmの体積平均粒子直径を示した。
【0061】
実施例4
肥大化ラテックス粒子を、次のようにして実施例1に従って得られるラテックスエマルジョン中1次ラテックス粒子から調製した:
a)0.0225BOP%アルキルジフェニルオキシドジスルホネート塩(Dowfax(登録商標)2A1)を、実施例1において記載されるようにして得られる1次ラテックス粒子を含有するラテックスエマルジョンに撹拌しながら添加し;
b)圧力容器の内容物を次いで60℃に加熱し;
c)0.4BOP%ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート(SFS)を次いで圧力容器に連続して撹拌しながら添加し;
d)(c)におけるSFS添加の5分後に、0.22BOP%過酸化水素を連続して撹拌しながら圧力容器に添加し;
e)(d)における過酸化水素添加の10分後に撹拌を停止し;
f)圧力容器の内容物を次いで50分間撹拌せずに保持し;
g)1.0BOP%の水酸化ナトリウムを次いで圧力容器に添加し;
h)(g)における水酸化ナトリウムの添加の2分後に、撹拌を再開し;
i)追加の0.082BOP%アルキルジフェニルオキシドジスルホネート塩(Dowfax(登録商標)2A1)を次いで圧力容器の内容物に連続して撹拌しながら添加して、肥大化ラテックス粒子を含有する生成物ラテックスエマルジョンを得た。
【0062】
生成物ラテックスエマルジョン中に含まれる肥大化ラテックス粒子は、前記のようにMatec Applied Sciences CHDF−2000粒子サイズ分布分析器で測定すると423nmの体積平均粒子直径を示した。
【0063】
実施例5
肥大化ラテックス粒子を、次のようにして実施例1に従って得られるラテックスエマルジョン中1次ラテックス粒子から調製した:
a)0.02BOP%アルキルジフェニルオキシドジスルホネート塩(Dowfax(登録商標)2A1)を、実施例1において記載されるようにして得られる1次ラテックス粒子を含有するラテックスエマルジョンに撹拌しながら添加し;
b)圧力容器の内容物を次いで60℃に加熱し;
c)0.4BOP%ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート(SFS)を次いで圧力容器に連続して撹拌しながら添加し;
d)(c)におけるSFS添加の5分後に、0.22BOP%過酸化水素を連続して撹拌しながら圧力容器に添加し;
e)(d)における過酸化水素添加の10分後に撹拌を停止し;
f)圧力容器の内容物を次いで50分間撹拌せずに保持し;
g)1.0BOP%の水酸化ナトリウムを次いで圧力容器に添加し;
h)(g)における水酸化ナトリウムの添加の2分後に、撹拌を再開し;
i)追加の0.082BOP%アルキルジフェニルオキシドジスルホネート塩(Dowfax(登録商標)2A1)を次いで圧力容器の内容物に連続して撹拌しながら添加して、肥大化ラテックス粒子を含有する生成物ラテックスエマルジョンを得た。
【0064】
生成物ラテックスエマルジョン中に含まれる肥大化ラテックス粒子は、前記のようにMatec Applied Sciences CHDF−2000粒子サイズ分布分析器で測定すると489nmの体積平均粒子直径を示した。
【0065】
実施例6
肥大化ラテックス粒子を、次のようにして実施例1に従って得られるラテックスエマルジョン中1次ラテックス粒子から調製した:
a)0.025BOP%ラウリル硫酸ナトリウム(SLS)を、実施例1において記載されるようにして得られる1次ラテックス粒子を含有するラテックスエマルジョンに撹拌しながら添加し;
b)圧力容器の内容物を次いで60℃に加熱し;
c)0.53BOP%ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート(SFS)を次いで圧力容器に連続して撹拌しながら添加し;
d)(c)におけるSFS添加の5分後に、0.28BOP%過酸化水素を連続して撹拌しながら圧力容器に添加し;
e)(d)における過酸化水素添加の10分後に撹拌を停止し;
f)圧力容器の内容物を次いで50分間撹拌せずに保持し;
g)1.0BOP%の水酸化ナトリウムを次いで圧力容器に添加し;
h)(g)における水酸化ナトリウムの添加の2分後に、撹拌を再開し;
i)追加の0.082BOP%アルキルジフェニルオキシドジスルホネート塩(Dowfax(登録商標)2A1)を次いで圧力容器の内容物に連続して撹拌しながら添加して、肥大化ラテックス粒子を含有する生成物ラテックスエマルジョンを得た。
【0066】
生成物ラテックスエマルジョン中に含まれる肥大化ラテックス粒子は、前記のようにMatec Applied Sciences CHDF−2000粒子サイズ分布分析器で測定すると650nmの体積平均粒子直径を示した。
【0067】
実施例7
肥大化ラテックス粒子を、次のようにして実施例1に従って得られるラテックスエマルジョン中1次ラテックス粒子から調製した:
a)0.025BOP%アルキルジフェニルオキシドジスルホネート塩(Dowfax(登録商標)2A1)を、実施例1において記載されるようにして得られる1次ラテックス粒子を含有するラテックスエマルジョンに撹拌しながら添加し;
b)圧力容器の内容物を次いで60℃に加熱し;
c)0.61BOP%ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート(SFS)を次いで圧力容器に連続して撹拌しながら添加し;
d)(c)におけるSFS添加の5分後に、0.32BOP%過酸化水素を連続して撹拌しながら圧力容器に添加し;
e)(d)における過酸化水素添加の10分後に撹拌を停止し;
f)圧力容器の内容物を次いで50分間撹拌せずに保持し;
g)1.0BOP%の水酸化ナトリウムを次いで圧力容器に添加し;
h)(g)における水酸化ナトリウムの添加の2分後に、撹拌を再開し;
i)追加の0.082BOP%アルキルジフェニルオキシドジスルホネート塩(Dowfax(登録商標)2A1)を次いで圧力容器の内容物に連続して撹拌しながら添加して、肥大化ラテックス粒子を含有する生成物ラテックスエマルジョンを得た。
【0068】
生成物ラテックスエマルジョン中に含まれる肥大化ラテックス粒子は、前記のようにMatec Applied Sciences CHDF−2000粒子サイズ分布分析器で測定すると580nmの体積平均粒子直径を示した。
【0069】
実施例8
コアシェル形態を有する肥大化ラテックス粒子を含有するラテックスエマルジョンは、次のように実施例2〜5のいずれかの生成物から調製することができる:
a)90g(固体基準)の実施例2〜5の一つから得られる肥大化ラテックス粒子を、スターラーを備えた圧力容器に添加する;
b)圧力容器の内容物を60℃に加熱する;
c)9gのメチルメタクリレート、1gのブチルアクリレート、0.13gのt−ブチルヒドロペルオキシドおよび0.13gのナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレートを撹拌しながら1時間かけて圧力容器に添加する;
d)圧力容器の内容物を撹拌しながらさらに3時間保持して、生成物グラフトコポリマー組成物を得る。
【0070】
実施例9
1次ラテックス粒子は次のようにして調製した:
a)表2に示す最初の3成分を撹拌しながら容器に添加した;
b)容器の内容物を連続して撹拌しながら70℃に加熱した;
c)ブチルアクリレート/アリルメタクリレートエマルジョン、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート(1)およびt−ブチルヒドロペルオキシドをゆっくりと2時間かけて連続して撹拌しながら容器に添加して、1次ラテックス粒子を含有するラテックスエマルジョンを得た;
d)容器の内容物の温度を55℃に調節した;
e)メチルメタクリレート、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート(2)および過硫酸ナトリウムを添加した。
【0071】
【表2】

【0072】
モノマーのポリマー生成物への転化率は約99.5%であった。得られるラテックスエマルジョン中に含まれる1次ラテックス粒子の体積平均粒子直径は、前記のようにMatec Sciences CHDF−2000粒子サイズ分布分析器で測定すると96nmであった。
【0073】
実施例10
肥大化ラテックス粒子を、次のようにして実施例9にしたがって得られるラテックスエマルジョン中1次ラテックス粒子から調製した:
a)0.033BOP%ラウリル硫酸ナトリウムを、実施例9において記載されるようにして得られる1次ラテックス粒子を含有するラテックスエマルジョンに撹拌しながら添加し;
b)容器の内容物を次いで60℃に加熱し;
c)0.449BOP%ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート(SFS)を次いで容器に連続して撹拌しながら添加し;
d)(c)におけるSFS添加の5分後に、0.248BOP%過酸化水素を連続して撹拌しながら容器に添加し;
e)(d)における過酸化水素添加の10分後に撹拌を停止し;
f)容器の内容物を次いで50分間撹拌せずに保持し;
g)1.0BOP%の水酸化ナトリウムを次いで容器に添加し;
h)(g)における水酸化ナトリウムの添加の2分後に、撹拌を再開して、肥大化ラテックス粒子を含有する生成物ラテックスエマルジョンを得た。
【0074】
生成物ラテックスエマルジョン中に含まれる1次ラテックス粒子は、前記のようにMatec Sciences CHDF−2000粒子サイズ分布分析器で測定すると330nmの体積平均粒子直径を示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)少なくとも1種のpH感受性アニオン性界面活性剤および少なくとも1種のpH非感受性アニオン性界面活性剤を有するラテックスエマルジョンを提供し;
(b)(i)水と相互作用して酸を形成する物質をラテックスエマルジョン中に混合すること;
(ii)相互作用して酸を形成する少なくとも2種の物質の組み合わせをラテックスエマルジョン中に混合すること;
(iii)活性光線に暴露することにより酸を形成する物質をラテックスエマルジョン中に混合し、ラテックスエマルジョンをかかる活性光線に暴露すること;並びに
(iv)(i)、(ii)および(iii)のうちの2以上の任意の組み合わせ;
のうちの1つを行うことにより、ラテックスエマルジョンのpHを7より低く低下させ;さらに
(c)1次ラテックス粒子を凝集させて、肥大化ラテックス粒子にすることを含む、ラテックスエマルジョンの1次ラテックス粒子の凝集により150nm以上の体積平均粒子直径を有する肥大化ラテックス粒子を製造する方法。
【請求項2】
(d)ラテックスエマルジョンのpHを上昇させることをさらに含む請求項1記載の方法。
【請求項3】
肥大化ラテックスが500nm未満の体積平均粒子直径を示し、肥大化ラテックス粒子の少なくとも99重量%が1000nm未満の粒子直径を示す請求項1記載の方法。
【請求項4】
請求項1記載の製造方法により得られる肥大化ラテックス粒子。
【請求項5】
少なくとも1種の耐衝撃性改良剤および加工助剤として、熱可塑性樹脂との組み合わせにおいて使用するための添加剤としての請求項4記載の肥大化ラテックス粒子の使用。
【請求項6】
(e)少なくとも1種の重合可能なモノマーをラテックスエマルジョンに添加し、少なくとも1種の重合可能なモノマーを肥大化ラテックス粒子にグラフト重合させることをさらに含む請求項2記載の方法。
【請求項7】
請求項6記載の方法により得られるグラフトコポリマー組成物。
【請求項8】
少なくとも1種の耐衝撃性改良剤および加工助剤として、熱可塑性樹脂との組み合わせにおいて使用するための添加剤としての請求項7記載のグラフトコポリマー組成物の使用。
【請求項9】
(e)少なくとも1種の重合可能なモノマーをラテックスエマルジョンに添加し、少なくとも1種の重合可能なモノマーを重合させることをさらに含む請求項2記載の方法。
【請求項10】
請求項9記載の方法により得られる多モード性ポリマー組成物。
【請求項11】
少なくとも1種の耐衝撃性改良剤および加工助剤として、熱可塑性樹脂との組み合わせにおいて使用するための添加剤としての請求項9記載の多モード性ポリマー組成物の使用。

【公開番号】特開2006−111879(P2006−111879A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2005−297674(P2005−297674)
【出願日】平成17年10月12日(2005.10.12)
【出願人】(590002035)ローム アンド ハース カンパニー (524)
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
【Fターム(参考)】