説明

肥満症および糖尿病を治療するための組成物および方法

アディポサイトカインシグナル伝達、糖代謝、脂肪酸代謝、アラキドン酸代謝、PPARシグナル伝達、インスリンシグナル伝達、脂質代謝、細胞外マトリックス(ECM)−受容体相互作用、またはそれらの組み合わせに関連する遺伝子の発現を調節する方法、高脂血症、肥満症、過剰コレステロール、心血管疾患、肝疾患、糖尿病、またはそれらの組み合わせを治療する方法、およびグルコース取り込みを刺激する方法であって、その方法を必要とする動物において、少なくとも1つの単離されたグリセオリンを含む組成物を前記動物に投与することを含む方法を開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、それぞれ本明細書に援用した、2009年12月22日出願の米国特許仮出願第61/284,623号および2010年7月8日出願の米国特許仮出願第61/399,224号の利益を主張するものである。
【0002】
連邦政府による資金提供を受けた研究開発の記載
該当なし
【0003】
共同研究契約者の名前
該当なし
【0004】
コンパクト・ディスクにより提出された資料の援用
該当なし
【0005】
本発明は、高脂血症、肥満症、過剰コレステロール、心血管疾患、糖尿病、肝疾患およびそれらの組み合わせなどの状態を治療および/または予防する方法として、ストレス条件下で生育したダイズに見出されるイソフラボノイドファイトアレキシン化合物であるグリセオリンI、IIおよびIIIの使用に関する
【背景技術】
【0006】
(関連技術の説明)
肥満症は西欧人に蔓延しつつあり、その原因は一般に高い脂肪消費量および西欧人のほとんど体を動かさない生活様式にある。肥満症は重要な公衆衛生上の問題であり、2型糖尿病および心血管疾患といった疾患に関係している。特に、内蔵型(中心性)肥満症は、インスリン抵抗性、高血糖症、高インスリン血症、脂質異常症、高血圧症、血栓形成促進性状態および炎症誘発性状態に関連している。用語「メタボリックシンドローム」は、中心性肥満症に関係するかまたは関係しないこともあるこれら生化学的異常および臨床状態を包含する。肥満症はエネルギー平衡の異常であり、高インスリン血症、インスリン抵抗性および脂質代謝の異常と関連する。肥満症は2型糖尿病、心血管疾患、アテローム性動脈硬化症およびある種の癌の発症において最も重要なリスク因子の1つである。
【0007】
アジア諸国ではこれら疾患の頻度は低いことから、アジアの食事(ダイズ食品およびダイズをベースにした食品から主に構成される)に注目が集まっている。脂肪細胞は脊椎動物系の脂質恒常性およびエネルギー平衡維持において重要な役割を果たす。過剰な脂肪消費は既存の脂肪細胞の肥大を刺激し休止状態の前駆脂肪細胞が成熟した脂肪細胞に分化するのを誘発する可能性がある。エストラジオールなどのホルモンは、脂肪生成と呼ばれるこのプロセスの調節因子である。ダイズイソフラボン(ファイトアレキシンとも呼ばれる)はエストロゲン受容体(ER)に結合し、ひいては脂肪生成を変化させることによってある種のエストラジオールの作用を模倣する。脂肪生成は主要な脂肪生成転写因子であるペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(PPAR−PPARα、PPARβ/δおよびPPARγ)ファミリーによって調節される。エビデンスの蓄積から、ダイズイソフラボンはエストロゲン受容体を介して機能するだけでなく、PPARによって調節される経路などのほかの経路を介して作用を及ぼすことが明らかとなっている。
【0008】
イソフラボンゲニステイン(ERアゴニスト)はPPARαおよびPPARγに直接結合し、その両者を活性化することができることが研究者らによって明らかとなっている。
肝では、PPARαが活性化されると、脂肪酸のβ酸化が増大し、トリグリセリド(TG)が減少し、超低密度リポタンパク質(VLDL)が合成される。このダイズイソフラボンゲニステインの作用の大半はコレステロール代謝に関与する遺伝子の発現の変化によって媒介されることが一般に認められている。ゲニステインはPPARが調節する遺伝子の上方制御を介して抗糖尿病作用および脂質低下作用を及ぼす。しかし、脂肪酸合成または他の脂質代謝の局面に対するゲニステインおよび他のファイトアレキシンまたはファイトアレキシンイソフラボン代謝物の作用についてはほとんど知られていない。
【0009】
肝臓X受容体(LXRαおよびLXRβ)は、本来はオーファン受容体として同定された核内受容体スーパーファミリーの別のメンバーである。この2つの受容体はコレステロール代謝および輸送ならびにグルコース代謝および炎症の調節に重要な役割を果たす。この肝臓X受容体(LXR)は、脂質代謝の転写制御に重要な役割を果たす核内受容体である。LXRは多様な細胞タイプにおいて細胞内コレステロール濃度の上昇に応答して活性化される核内コレステロールセンサとして機能する。活性化されると、LXRはコレステロールの吸収、流出、輸送および排出に関与する遺伝子のアレイの発現を誘発する。脂質代謝におけるそのような機能に加えて、LXRはマクロファージの免疫応答および炎症応答を調節することも見出されている。LXR受容体の活性の調節は、脂質異常症、アテローム性動脈硬化症および糖尿病を含む多数の病態生理学的状態の治療に有用であると考えられる。
【0010】
合成LXRアゴニストはin vivoでコレステロール流出を促進し、炎症を阻害し、動物モデルではアテローム性動脈硬化症の発症を阻害する。LXRには代謝のシグナル伝達と炎症のシグナル伝達とを統合する能力があるために、ヒトの代謝疾患における介入の特に魅力的なターゲットとなっている。LXRαまたはLXRβの選択的活性化が、コレステロール恒常性に差次的効果(differential effect)を及ぼすか否か、または機能的に冗長なパラログ(X,Y)として存在しているか否かについて依然として議論されている。LXRα/βヌルマウスを用いた研究からは、コレステロール恒常性に関与する肝および周囲組織の遺伝子の調節は主にLXRαの制御下であり、LXRβの活性化は末梢コレステロールの総蓄積からLXRαヌル動物を部分的に保護することができることが示唆されている。しかし、コレステロール流出におけるその役割の他に、LXRβの幅広い生物学的機能が浮かびつつあるが、未だ明らかとはなっていない。LXRαの転写制御下では排他的であるようにみえるABCG1 mRNA発現とは異なり、多数の細胞タイプではABCA1 mRNAはLXRイソタイプにもそのコレステロール輸送の役割にも依存しないシグナル伝達機序を介して調節される。それにもかかわらず、ABCA1 mRNAの変化の測定はin vitroおよびin vivoのLXR活性化の代理マーカーとして使用されることが多い。
【0011】
肝臓は脂質、糖質およびタンパク質の代謝にとって重要な器官である。したがって、肥満症の研究では肝臓は魅力的な標的器官である。乳腺組織などの他の組織も遺伝子発現の分析に用いることができる。霊長類モデルでは、乳腺組織の遺伝子発現は、グリセオリンに富んだダイズタンパク質分離物(エストラジオール併用)とのダイズタンパク質分離物(エストラジオール併用)の経口治療から行われた。グリセオリンの経口投与による動物系の遺伝子の変化についてはほとんど知られていない。
【0012】
食事由来の化合物の中で、ダイズ製品に豊富に含まれるゲニステインおよびダイゼインなどのイソフラボンは潜在的関心がある。このイソフラボンはファイトアレキシンとしても周知である。ファイトアレキシンはデノボ合成される低分子量の抗菌性化合物の化学的に不均一なグループを構成し、ストレスに応答して植物に蓄積する。ダイズには、食事由来の肥満症を予防する化合物の候補物質と考えられている構成的なイソフラボンであるダイゼインおよびゲニステインなどのいくつかのファイトアレキシンが含まれている。これ
ら化合物への最初の関心は、アジア諸国のダイズ製品の消費量と肥満症の発症率の低下とを関連付ける研究から起こった。したがって、これらの化合物を肥満症予防に使用することの可能性が示唆された。
【0013】
食事要因は種々の慢性疾患の病因にますます関与している。近年、これらの疾患の予防または治療において、特に食用植物からの特異的な生理活性成分の役割が大きく注目されている。イソフラボノイドはダイズ製品の一部として広く消費されている生理活性のある植物化学物質の重要なクラスである。ダイズタンパク質は、グリコシル化型のイソフラボンであるゲニステインおよびダイゼイン(内因性エストロゲンに構造的に類似し、ヒトの健康に関係する種々の生物学的機能を呈する)を豊富に含んでいる。最近のエビデンスからは、イソフラボン代謝産物はダイズ食品のある種の健康関連作用も媒介し得ることが示唆されている。もっともよく研究されているのはエコールであり、これはヒトのダイズ消費者および種々のヒト以外の種のサブセットの腸内細菌によってダイゼインから形成される。外傷または感染症などのストレッサーの影響下では、ダイゼインはグリセオリンと呼ばれる防御化合物の固有のクラスへとダイズ内で代謝されることもある。これまでの研究から、グリセオリンはゲニステインおよびダイゼインと比較して、はっきりと異なる作用(エストロゲン受容体(ER)シグナル伝達の調節など)を示すことが明らかとなっている。しかし、その他の生物学的経路ならびに生物学的系に対するグリセオリンの作用については研究されていない。本発明者らは乳腺脂肪組織の遺伝子発現プロフィールに対するグリセオリンに富んだダイズタンパク質の短期効果を評価した。本発明者らは候補となるグリセオリンの標的経路を同定し、標準的なダイズタンパク質分離物とのグリセオリンに富んだダイズタンパク質の比較効果を評価した。
【0014】
食事は代謝症候群および併存症の状態の主要な決定因子であり、これまでの知見からは、グリセオリンはエストロゲン受容体(ER)を競合的に結合し、ダイズイソフラボノイドとははっきり異なる選択的なER調節性を誘発し得ることが示唆されている。代謝経路の調節における特異的なイソフラボノイドおよびその誘導体の役割は未だよくわかっていない。
【0015】
遺伝子発現DNAマイクロアレイは医学研究者にとって複雑な疾患(例えば肥満症)の機序を研究するための強力なツールとなっている。この技術によって、生理学的状態および病理学的状態の裏にある機序に関与する多様な遺伝子を包括的に理解することが可能となる。マイクロアレイは種々の細胞または組織におけるmRNA発現の変化に従った疾患状態分類を容易にする。ヒトおよび動物両方の肥満症の研究では、遺伝子発現プロファイリングがDNAマイクロアレイの主要な用途である。正常状態および疾患状態下の皮下脂肪、内臓脂肪、脂肪細胞および前駆脂肪細胞、筋肉、肝臓、膵臓および癌細胞が、肥満症の遺伝子発現のプロファイルに対処するのに用いられている。
【0016】
いくつかのファイトアレキシン(レスベラトロールなど)は、癌、アテローム性動脈硬化症、2型糖尿病およびさらには神経変性などの種々の加齢性疾患を遅延させることが他の研究から明らかとなっている。ファイトアレキシンであるレスベラトロールの有益な健康効果を考慮すると、他の植物ファイトアレキシンが同様の有用な活性を有していると提唱することは合理的である。マメ科植物に基づいた最新の食物研究は構造的である植物化合物に注目している。しかし、植物性食品は現行の食物には含まれていない何千ものファイトアレキシン化合物を含むこともある。マメ科植物だけでも、肥満症に関連する未活用の予防効果の可能性を持つ200を超えるファイトアレキシンがある。これらの化合物には、肥満症予防を標的にして増強する新規のファイトアレキシンに富んだ食物を生み出す可能性がある。
【0017】
ゲニステインおよびダイゼインに加え、グリセオリンはストレス信号に応答して生合成
が増大する別のグループのファイトアレキシンを表す。グリセオリンのアイソフォームI−III(図1)は前駆体のダイゼイン由来のものであり、クメストロールに類似したコア構造を示す。グリセオリン(Ι−III)は、ダイズを発酵させて醤油および味噌を製造するのに一般に用いられる非毒産生性のアスペルギルス株のショウユコウジカビ(fungus Aspergillus sojae)にダイズを暴露することに由来し得る。ゲニステインおよびダイゼインと比較して、精製したグリセオリンはLXR受容体などのある種の遺伝子の活性を調節する能力が大きい。これらの知見から、グリセオリンに富んだダイズタンパク質は標準大豆タンパク質と比較してはっきりと異なる遺伝子調節性を有し得ることが示唆される。
【0018】
合成供給源および天然供給源から、肥満症の新しい治療法を開発する必要がある。したがって、脂質および糖代謝に関与する経路(in vitroにおけるPPARおよびアディポサイトカインシグナル伝達、リポタンパク質リパーゼ、トリグリセリド代謝およびLXRs)に対するグリセオリンの調節効果を考慮し、さらにグリセオリンに毒性がないことを考慮して、新規肥満症治療としてのin vivoにおけるグリセオリンの効果を試験した。
【0019】
本発明は、脂質および糖代謝に関与する経路に対する、(PPARおよびアディポサイトカインシグナル伝達、リポタンパク質リパーゼおよびトリグリセリド代謝など)ならびにLXRに対して調節作用を有することが見出された、誘発されたダイズから単離されたグリセオリンに関する。したがってこれらのグリセオリンは、肥満症および心血管疾患の予防および治療に有用であると考えられる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0020】
この発見によれば、本発明の目的は、誘発されたダイズから単離されたグリセオリン(グリセオリンI、IIおよびIII)を提供することである。
【0021】
本発明の他の目的は肥満症を予防または最小化するためのグリセオリンを含んだ組成物を提供することである
【0022】
本発明の別の目的は、血清総コレステロール(具体的には非高密度リポタンパク質コレステロール)を低下させる方法を提供することである。
【0023】
本発明の別の目的は、糖尿病を予防または最小化する方法を提供することである。
【0024】
本発明の別の目的は、脂質異常症を予防または最小化する方法を提供することである。
【0025】
本発明の別の目的は、アテローム性動脈硬化症を予防または最小化する方法を提供することである。
【0026】
本発明の別の目的は、肥満症および高脂血症に関連する心疾患および血管疾患を予防または治療する方法を提供することである
【0027】
本発明の別の目的は、糖尿病を予防、最小化または軽減する方法を提供することである。
【0028】
肥満症を予防または最小化するか、血清総コレステロール(具体的には非高密度リポタンパク質コレステロール)低下させるか、あるいは糖尿病を予防、最小化または軽減するグリセオリンを含有した組成物を含んだキットも本発明の一部である。
【0029】
肥満症、脂質異常症、アテローム性動脈硬化症または糖尿病を予防または最小化するためのグリセオリンを含有した組成物を含んだキットも本発明の一部である。
【0030】
グリセオリンの使用についての詳細な情報は、US2006/0246162として公開されている米国特許出願第11/118,431号に開示されており、その開示を本明細書に援用する。
【0031】
動物においてアディポサイトカインシグナル伝達、糖代謝、脂肪酸代謝、アラキドン酸代謝、PPARシグナル伝達、インスリンシグナル伝達、脂質代謝、細胞外マトリックス(ECM)−受容体相互作用またはそれらの組み合わせに関連する遺伝子の発現を調節する方法であって、少なくとも1つの単離されたグリセオリンを含む組成物を前記動物に投与することを含む方法を提供する。少なくとも1つの単離されたグリセオリンは、誘発されたダイズから単離され得、グリセオリンI、グリセオリンII、グリセオリンIIIまたはそれらの組み合わせであり得る。少なくとも1つの単離されたグリセオリンは、約100nM〜約50μΜの量で提供され得る。少なくとも1つの単離されたグリセオリンは、動物1匹あたり約1mg/kg/〜動物1匹あたり約100mg/kgの量で提供され得る。前記遺伝子は、少なくとも1つの単離されたグリセオリンを含む前記組成物を投与されていない動物と比較して上方制御され得、且つ、ADIPOQ;DGAT2;GPDl;GYS1;LEP;LPIN1;LPL;PLIN;PPARG;およびそれらの組み合わせからなる群より選択され得る。前記遺伝子は、少なくとも1つの単離されたグリセオリンを含む前記組成物を投与されていない動物と比較して上方制御され得、且つ、ACACB;ACAT1;ACOXl;AGPAT2;AHSG;AKT1;AKT2;CAP1;CD36;CEBPB;CRK;DBI;EIF2B1;EIF4EBP1;FBP1;FOS;GPDl;GPAM;HADH;HRAS1;ITGA7;LPL;MAP2K1;ORM1;PLIN;PRKAR2B;PTGDS;PTPN1;PTPN11;SORBS1;SREBF1;VEGFA;およびそれらの組み合わせからなる群より選択され得る。前記遺伝子は、少なくとも1つの単離されたグリセオリンを含む前記組成物を投与されていない動物と比較して下方制御され得、且つ、AEBP1;ARAF;CBL;CEBPA;CEBPD;CSN2;DOK2;DOK3;EIF4E;FRS3;G6PC;GCG;GCK;GPD2;GRB10;GRB2;GSK3B;IGF2;INS1;ITGA2;ITGA8;LDLR;NCK2;NOS2;NPY;OLR1;PHIP;PIK3CA;PIK3R2;PPP1CA;PRKCI;PTPRF;RETN;SDC1;SHC3;SLC27A4;およびそれらの組み合わせからなる群より選択され得る。
【0032】
高脂血症、肥満症、過剰コレステロール、心血管疾患、肝疾患、糖尿病またはそれらの組み合わせを治療するための方法であって、その方法を必要とする動物において、少なくとも1つの単離されたグリセオリンを含む組成物を前記動物に投与することを含む、方法を提供する。前記少なくとも1つの単離されたグリセオリンは、誘発されたダイズから単離され得、且つ、グリセオリンI、グリセオリンII、グリセオリンIIIまたはそれらの組み合わせであり得る。前記少なくとも1つの単離されたグリセオリンは、約100nM〜約50μΜの量で提供され得る。前記少なくとも1つの単離されたグリセオリンは、動物1匹あたり約1mg/kg〜動物1匹あたり約100mg/kgの量で提供され得る。この方法は、少なくとも1つの単離されたグリセオリンを含む組成物を投与されていない動物と比較して、ADIPOQ;DGAT2;GPD1;GYS1;LEP;LPIN1;LPL;PLIN;PPARG;およびそれらの組み合わせからなる群より選択される遺伝子の発現を前記動物において増加させることをさらに含み得る。この方法は、少なくとも1つの単離されたグリセオリンを含む組成物を投与されていない動物と比較して、前記動物において、総コレステロール(TC)を低下させ、低密度リポタンパク質(LD
L)コレステロールおよび超低密度リポタンパク質(VLDL)コレステロールを低下させ、トリグリセリド(TG)を増加させること、またはそれらの組み合わせをさらに含み得る。この方法は、少なくとも1つの単離されたグリセオリンを含む組成物を投与されていない動物と比較して、ACACB;ACAT1;ACOX1;AGPAT2;AHSG;AKT1;AKT2;CAP1;CD36;CEBPB;CRK;DBI;EIF2B1;EIF4EBP1;FBP1;FOS;GPD1;GPAM;HADH;HRASl;ITGA7;LPL;MAP2K1;ORM1;PLIN;PRKAR2B;PTGDS;PTPN1;PTPN11;SORBS1;SREBF1;VEGFA;およびそれらの組み合わせからなる群より選択される遺伝子の発現を前記動物において増加させることをさらに含み得る。この方法は、少なくとも1つの単離されたグリセオリンを含む組成物を投与されていない動物と比較して、AEBP1;ARAF;CBL;CEBPA;CEBPD;CSN2;DOK2;DOK3;EIF4E;FRS3;G6PC;GCG;GCK;GPD2;GRB10;GRB2;GSK3B;IGF2;INSl;ITGA2;ITGA8;LDLR;NCK2;NOS2;NPY;PHIP;PIK3CA;PIK3R2;PPP1CA;PTPRF;RETN;SDC1;SHC3;SLC27A4;およびそれらの組み合わせからなる群より選択される遺伝子の発現を前記動物において減少させることをさらに含み得る。
【0033】
グルコース取り込みを刺激する方法であって、その方法を必要とする動物において、グルコース取り込みを刺激する少なくとも1つの単離されたグリセオリンを含む組成物を前記動物に投与することを含む、方法を提供する。前記少なくとも1つの単離されたグリセオリンは、誘発されたダイズから単離され得、且つ、グリセオリンI、グリセオリンII、グリセオリンIII、またはそれらの組み合わせであり得る。前記少なくとも1つの単離されたグリセオリンは、約100nM〜約50μΜの量で提供され得る。前記少なくとも1つの単離されたグリセオリンは、動物1匹あたり約1mg/kg〜動物1匹あたり約100mg/kgの量で提供され得る。本発明の組成物はさらにインスリンを含んでもよいし、インスリンを含むさらなる組成物を前記動物に投与し得る。
【0034】
本開示の本質、目的および利点をさらに理解するために、以下の詳細な説明を参照し、添付図面と併せて読まれたい。同様の参照符号は同様の要素を指す。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】ダイズイイソフラボンファイトアレキシンのゲニステイン、ダイゼイン、グリセオリンI、グリセオリンIIおよびグリセオリンIIIの構造を示す図である。
【図2】ABCG1(in vitroでLNCaP細胞の肝臓X受容体によるコレステロール流出に関与する遺伝子である)の上方制御に対するグリセオリンの効果を示すグラフである。ABCG1はコレステロール流出ポンプとして機能するLXR応答性遺伝子である。図2に示すように、LNCaP細胞の結果からLXRに対するグリセオリンの効果が示唆される。5μΜのグリセオリンで48時間治療したところ、ABCG1は8.1倍上方制御された(*=p< 0.01)。
【図3】カゼイン/ラクトアルブミンと比較した遺伝子の総数(GenBankの識別子)を示すベン図である(FC>1.5,ANOVA P<0.05,質>2、t検定 P<0.05)。
【図4A】階層クラスタ分析デンドログラムである。
【図4B】遺伝子プローブの主要成分分析を示す図である(FC>1.5およびANOVA P<0.05 (n=252)。デンドログラムおよびクラスタ分析にはユークリッド距離および平均連結法を用いた。
【図5】グリセオリンと標準ダイズタンパク質とのプロフィールの差を示す図であり、FC>1.5で変化した遺伝子のヒートマップから質的に明白である。
【図6】古典的分類および機能的分類によって変化した遺伝子を分類するのに用いた経路分析を示す図である。グリセオリン群の変化した遺伝子のIPAで最も過剰出現した古典的経路はいずれも脂質、糖質および/またはエネルギー代謝に関係した(Ingenuity pathway analysisでは、GLY食餌およびSOY食餌によってFC>1.5で有意に変化した)。これらの経路には、グリセロリン脂質およびグリセロ脂質代謝、チトクロムp450代謝およびAMPKシグナル伝達が含まれた(いずれもP<0.01)。
【図7】実施例11のインスリン刺激試験で用いたプレート用チャレンジマップである。
【図8】実施例12のグリセオリンインキュベーション試験で用いたプレート用チャレンジマップである。
【図9】3T3−L1脂肪細胞によるインスリン媒介グルコース取り込みを示す用量反応曲線である。
【図10】試験前に脂肪細胞維持培地を24時間飢餓させた3T3−L1脂肪細胞によるインスリン媒介グルコース取り込みを示す用量反応曲線である。
【図11】3T3−L1脂肪細胞によるインスリン媒介グルコース取り込みを示す、迅速なピペット操作を用いて生成した用量反応曲線である。
【図12】KRHまたはグリセオリンで24時間プレインキュベートした3T3−L1分化脂肪細胞によるグルコース取り込みに対するグリセオリン、インスリン、またはグリセオリン+インスリンの効果を示すグラフである。
【図13】KRHまたはグリセオリンで24時間プレインキュベートした3T3−L1分化脂肪細胞によるグルコース取り込みに対するグリセオリン、インスリン、またはグリセオリン+インスリンの迅速なピペット操作を用いた効果を示すグラフである。互いに違う柱(p<0.05)には異なる上付き文字を付している。
【図14】KRHまたはグリセオリンで24時間プレインキュベートした3T3−L1分化脂肪細胞によるグルコース取り込みに対するグリシノール、インスリン、グリシノール+インスリンの迅速なピペット操作を用いた効果を示すグラフである。「*」は他の全群との有意差を示す。
【図15】グリセオリンでプレインキュベートした3T3−L1分化脂肪細胞によるグルコース取り込みに対するインスリンへの30分間の曝露の効果を示すグラフである。
【図16】KRHでプレインキュベートした3T3−L1分化脂肪細胞によるグルコース取り込みに対するグリセオリン、インスリンまたはグリシノールへの30分間の曝露の効果を示すグラフである。柱は以下を示す:1)DMSO対照;2)KRH対照;3)グリセオリン混合物(5μΜ);4)グリセオリンI(5μΜ);5)グリセオリンII(5μΜ);6)グリセオリンIII(5μΜ);7)グリシノール(1μΜ);8)グリシノール(0.1μΜ)。互いに異なる柱(p<0.05)には異なる上付き文字を付している。
【図17】KRHでプレインキュベートした3T3−L1分化脂肪細胞によるグルコース取り込みに対するグリセオリンIまたはグリセオリンIII(インスリンありまたはインスリンなし)への30分間の曝露の効果を示すグラフである。柱は以下を示す:1)DMSO対照;2)0.3nMインスリン;3)グリセオリンI(5μΜ);4)0.3nMインスリン+グリセオリンI(1μΜ);5)0.3nMインスリン+グリセオリンI(5μΜ);6)グリセオリンIII(5μΜ);7)グリセオリンI(1μΜ);8)0.3nMインスリン+グリセオリンIII(5μΜ)。互いに異なる柱(p<0.05)には異なる上付き文字を付している。
【図18】3T3−L1脂肪細胞によるグリセオリン媒介グルコース取り込みを示す、迅速なピペット操作を用いて生成した用量反応曲線である。
【図19】KRHまたはグリセオリンで24時間プレインキュベートした3T3−L1分化脂肪細胞によるグルコース取り込みに対するインスリンへの30分間の曝露の効果を示すグラフである。
【図20】KRHまたはグリセオリンで3時間プレインキュベートした3T3−L1分化脂肪細胞によるグルコース取り込みに対するインスリンへの30分間の曝露の効果を示すグラフである。互いに異なる柱(p<0.05)には異なる上付き文字を付している。
【図21】グリセオリン(●)またはKRH緩衝液(○)に45分間曝露後の3T3−L1分化脂肪細胞によるインスリン媒介グルコース取り込みを示すグラフである。いずれのインスリン濃度でも平均は有意に異なっている(p<0.05)。
【図22】KRHで24時間プレインキュベートし、種々の量のグリセオリンで45分間インキュベートし、その後KRHで30分間インキュベートした3T3−L1分化脂肪細胞によるグルコース取り込みを示すグラフである。互いに異なる柱(p<0.05)には異なる上付き文字を付している。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明を更に説明する前に、本発明は以下に記載される具体的な実施態様に限定されるものではないことを理解しておけなければならない。なぜなら、具体的な実施態様のバリエーションを行うことができ、それはなお添付の請求の範囲の範囲内にあるからである。また使用される用語は具体的な実施態様を説明する目的のものであって、限定を意図したものではないことは言うまでもない。それに代わって、本発明の範囲は添付の請求の範囲によって確定される。
【0037】
本明細書の操作例以外に、または別途指摘される場合に、明細書中または特許請求の範囲中で使用される、成分量、反応条件等を表すすべての数は、用語「約(about)」によってあらゆる場合に変更されるものと理解されたい。したがって、それとは反対に指摘されない限り、本明細書および添付の特許請求の範囲に記載の数値パラメータは、得ようとされる所望の特性に応じて変動し得る近似値である。少なくともそれぞれの数値パラメータは、報告された有効数字の数を考慮し、一般的な四捨五入法によって、少なくとも、添付の特許請求の範囲の同等物の教義を適用することを制限しようとするものではないものとして解釈されるべきである
【0038】
本開示の広い範囲を説明する記載の数値範囲およびパラメータは近似値であるにもかかわらず、具体的な実施例に記載の数値は可能な限り正確に報告されている。しかし、どのような数値もそれらの個々の試験測定に認められる標準偏差から必然的に生じるある種の誤差を本質的に含んでいる。
【0039】
本明細書に引用したどのような数値範囲も、本明細書に包含されるあらゆる部分的範囲(sub−ranges)を包含することも理解されたい。例えば、範囲1”〜10”は再度引用した最小値1と再度引用した最大10との間およびこれを含む(すなわち、1以上の最小値および10以下の最大値を有する)あらゆる部分的範囲を包含することを意図している。
【0040】
本明細書および添付の特許請求の範囲では、単数形「a」、「an」、および「the」とは、文脈が別途明示する場合を除き、複数形も含む。別途本明細書に規定されない限りは、本明細書で使用する技術的および科学的用語はいずれも、本発明が属する当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。
【0041】
本明細書で使用する場合、用語「最小化する(minimize)」または「低減する(reduce)」、あるいはそれらの変形例には、特定の生物学的作用の完全阻害または部分阻害を含む(用語「最小化する」が用いられる文脈から明白である)。用語「グリセオリン」とは、グリセオリンが、グリセオリンの選択された群の少なくとも1つとして定義される場合、単一のグリセオリンまたは複数のグリセオリンの両方を意味し得る。
【0042】
本開示では、特に、ストレス条件下で成育したダイズ植物(誘発されたダイズ)におけるイソフラボノイドファイトアレキシン化合物(グリセオリンI、IIおよびIII)の増大された生合成、ならびにLXRαおよび/またはLXRβ機能、PPARおよびアディポサイトカインシグナル伝達、リポタンパク質リパーゼおよびトリグリセリド代謝など脂質および糖代謝に関与する経路に対するそれら著明な効果を説明する。
【0043】
肝機能におけるグリセオリンの役割を十分に理解するために、in vitroモデルで確立されているLNCaP癌細胞モデルを用いて、選択的遺伝子発現に対するグリセオリンの作用を試験した。このモデルでは、LNCaP癌細胞を用い、LXRαまたはLXRβに対するグリセオリンのin vitro活性が確立されている。
【0044】
本発明の組成物および方法に用いるグリセオリン化合物は、ストレス下のダイズまたは誘発物質で処理したダイズのような植物に見出すことのできる天然物質である。前記グリセオリン化合物は、誘発物質による処理後に自然発生する植物源から単離することもできるし、当該技術で周知の方法から合成することもできる。
【0045】
本発明の組成物および方法に有用なグリセオリンは、天然発生する植物から抽出するのが好ましい。前記グリセオリン化合物を単離する好適な方法は、アルコール(好適にはメタノールまたはエタノール)またはメタノール水溶液を用いて植物材料を抽出し、植物材料からグリセオリンを取り出すことである。グリセオリン化合物を抽出する前に植物材料を粉末状にして、植物材料からのグリセオリン化合物の回収を最大にすることが好ましい。グリセオリン化合物は高速液体クラマトグラフィ(HPLC)のような従来の分離法によってこの抽出物から単離される。
【0046】
好ましい実施形態において、グリセオリン化合物はダイズ原料から単離される。グリセオリン化合物が単離され得るダイズ原料には、誘発剤で処理した:ダイズ種子、ダイズ、脱皮ダイズ、ダイズ子葉、ダイズ葉組織、ダイズ根およびダイズ胚軸が挙げられる。一実施形態において、グリセオリンは、低分子量の有機抽出剤(好ましくはアルコール、酢酸エチル、アセトンまたはエーテル、最も好ましいのはエチルアルコール水溶液またはメチルアルコール水溶液)を用いてダイズ種子から抽出される。
【0047】
本開示は、誘発されたダイズから単離された特定のグリセオリンが、in vivoのPPARおよびアディポサイトカインシグナル伝達、リポタンパク質リパーゼおよびトリグリセリド代謝、およびin vitroのLXRαまたはLXRβなど、脂質および糖代謝に関与する経路に対して調節作用を呈したことを明らかにする。グリセオリン(グリセオリンI、グリセオリンII、グリセオリンIIIまたはそれらの組み合わせ)の調節作用は、約0.5〜約10μΜ、約0.5〜約5.0μΜ、約0.5〜約1.0μΜ、約1.0〜約10μΜ、約1.0〜約5μΜ、約5.0〜約10μΜ、および好ましくは約5.0μΜで観察され得る。LNCaP細胞に対するグリセオリンの調節作用はゲニステインに観察された作用に類似していた(図1)。グリセオリン(グリセオリンI、グリセオリンII、グリセオリンIIIまたはそれらの組み合わせ)は、動物1匹あたり0超mg/kg〜約100mg/kg、約0.1mg/kg〜約90mg/kg、約0.1mg/kg〜約80mg/kg、約0.1mg/kg〜約75mg/kg、約0.1mg/kg〜約70mg/kg、約0.1mg/kg〜約60mg/kg、約0.1mg/kg〜約50mg/kg、約0.1mg/kg〜約40mg/kg、約0.1mg/kg〜約30mg/kg、約0.1mg/kg〜約25mg/kg、約0.1mg/kg〜約20mg/kg、約0.1mg/kg〜約15mg/kg、約0.1mg/kg〜約10mg/kg、約0.1mg/kg〜約5mg/kg、約0.1mg/kg〜約2.5mg/kg、約0.1mg/kg〜約1mg/kg、約1mg/kg〜約100mg/kg、約2.5mg/kg〜約90mg/kg、約5mg/kg〜約80mg/kg、約7.5mg/
kg〜約75mg/kg、約10mg/kg〜約60mg/kg、約20mg/kg〜約50mg/kg、約25mg/kg〜約40mg/kg、約25mg/kg〜約35mg/kg、好ましくは約30mg/kgの量で動物に提供することもできるし、動物に投与することもできるし、あるいは動物によって消費させることもできる
【0048】
材料と方法:肝臓X受容体
化学物質
ジヒドロテストステロン(DHT)、ジメチルスルホキシド(DMSO)およびゲニステイン、17β−エストラジオールはSigma Chemical社(ミズーリ州セントルイス所在)からのものとした。細胞培地および試薬はInvitrogen社(カリフォルニア州カールズバッド所在)から購入した。
【0049】
ダイズの処理および収穫
ショウユコウジカビ(Aspergillus sojae)(SRRC1125)培養基を暗室にてポテトデキストロース寒天で25℃で培養した。5日後、15mlの滅菌蒸留水中で分生子(3.4x10/ml)を収穫することによって接種材料を調製した。市販のダイズ品種Asgrow 5902からの種子の表面を70%エタノールで3分間滅菌し、脱イオン水で迅速にすすぎ、脱イオン水で2分間すすいだ。種子を滅菌脱イオン水に4〜5時間、事前浸漬し、Cuisinartフードプロセッサで2分間みじん切りにした。ショウユコウジカビ(Aspergillus sojae)胞子懸濁液(300ml)を各トレイ上の種子の切断表面に塗布した。全トレイを暗室にて25℃で3日間保管し、水ですすいで胞子を除去し、40℃で24時間オーブン乾燥した。抽出前にワーリングブレンダーを用いて種子を破砕した。
【0050】
グリセオリン(I〜III)の単離
1Lのメタノールにより300gの破砕種子からグリセオリンI、IIおよびIIIを抽出した。延長チューブを併用した2台のWaters社の25mm×10mm粒径mBondapak CI8 ラジアルコンプレッションカラムセグメントを用いた分取スケールのHPLCによりグリセオリン単離した。Waters社のUV−VIS996検出器を併用したWaters社の600E System ControllerによりHPLCを行った。流速8.0ml/分で以下の溶媒系:A=アセトニトリル、B=水;5%Aにより10分間、5%A〜90%Aで60分間溶離し、次に90%Aで20分間維持することによって溶離した。注入量は20mLであった。グリセオリンを含む画分を真空下で濃縮し、凍結乾燥した。UV−VIS分光光度法、質量分析およびNMRによってこのグリセオリンを確認した。溶媒のアセトニトリル(HPLCグレード)およびメタノールはAldrich Chemical Companyから購入した。水はMilliporeシステムを用いて得、試料調製およびHPLC分析中に使用した。グリセオリンI(68%)、II(21%)およびIII(11%)の混合物を単離し(図1を参照)、治療に用いた。平均分子量338を用いて全細胞培養試験に用いたグリセオリンの濃度を算出した。
【0051】
細胞および細胞培養
LNCaP細胞はアメリカ合衆国培養細胞系統保存機関(ヴァージニア州マナッサス所在)から入手し、10%ウシ胎仔血清(FBS)(Invitrogen社、カリフォルニア州カールスバッド所在)とともに、Media A[RPMI1640培地(フェノールレッド付)(Invitrogen社、カリフォルニア州カールスバッド所在)、2mMのL−グルタミン(Sigma社)、100U/mLのペニシリンおよび100μg/mLのストレプトマイシン(BioSource International社、カリフォルニア州カマリロ所在)で維持した。細胞を空気中5%二酸化炭素の存在下37℃でインキュベートした。
【0052】
In vitroでのMCF−7細胞を用いた遺伝子スーパーアレイ
75cm2フラスコの5%ウシ胎仔血清を補給したDMEM培地にMCF−7細胞を播種した。翌日、培地を2日間5%活性炭処理済血清を補給したフェノールレッドフリーDMEMと交換した。DMSO(ビヒクル)、1nMの17β−エストラジオール、10μΜのグリセオリン混合物および100nMのタモキシフェンにより細胞を処理した。全RNAを抽出した。各アレイは96遺伝子のパネルの発現を表す。各アレイのために、製造業者のプロトコルに記載の遺伝子特異的オリゴヌクレオチドプライマーの存在下で4μgのRNAをcDNAに逆転写した。cDNAテンプレートを適した準備済のPCRマスターミックスと混合し、同じプレートの各ウェルに等分し、定量RT−PCRおよびエストロゲン受容体シグナル伝達スーパーアレイ(米国メリーランド州ゲイサーズバーグ所在)を用いてリアルタイムPCRサイクリングプログラムを実行した。2−ΔΔCt法を用いて相対遺伝子発現を算出した(Ctは蛍光シグナルが検出閾値に達する部分サイクル数を示す)。この「ΔΔ」法(Pfafflらが記載)は、計5つの対照の内在性遺伝子(18SrRNA,HPRTl,RPL13A,GAPDHおよびACTB)を用いて算出された各試料の正規化ΔCt値を使用する。平均の倍数変化の値は、対照試料と比較して治療した遺伝子の平均倍数変化=2−(average ΔΔCt)として表した。記述統計学を用いて臨床変数を特徴付け、群間の遺伝子発現の統計学的有意差をスチューデントのt検定を用いて算出した。
【0053】
霊長類の研究および食餌
本発明者らは外科的に閉経させた平均年齢17.8±0.5歳の成熟カニクイザル(Macaca fascicularis)30匹を用いた。全動物を4年間卵巣切除し、以降、各3−4匹の安定した社会集団で飼育した。これらの動物は微量または低用量の経口エストラジオールのいずれかを与えた場合のダイズイソフラボンを評価する無作為化ラテン方格クロスオーバー試験に先に登録されていた。この以前の試験では、各社会集団の動物には同じ試験治療を施行したが、順序は変えた。治療フェーズ間の4週間の休薬期間にわたる乳房のエンドポイントのいずれにも有意なキャリーオーバー効果は認められなかった。先の試験に用いたエストラジオール用量(女性の0.09または0.5mg/日に相当)ホルモン療法として閉経後女性に一般に処方される用量(〜1.0mg/日)未満であり、イソフラボン用量(女性の0,60,120または240mg/日に相当)はヒトの食餌またはサプリメント曝露の範囲内にあった。このレベルのエストロゲンまたはイソフラボン曝露がその後で成人乳腺組織のホルモン応答を変化させるというエビデンスはない。本試験では、試験開始前に全サルに対照のカゼイン/ラクトアルブミン食を6週間与えた。次いで、サルを社会集団ごとに無作為割付し、以下を含む3種の食餌の1つを与えた:1)エストラジオール(E2,1mg/1,800kcal)+カゼイン/ラクトアルブミン[対照(Con),9例];2)193.6mg/1,800kcalのイソフラボノイドを含むE2+ダイズタンパク質分離物(SPI)(11例);および3)188.5mg/1,800kcalのイソフラボノイドおよび134.1mg/1,800kcalのグリセオリンを含むE2+グリセオリンに富んだダイズタンパク質(GLY)(10例)。対照の食餌には6.7mg/1,800kcalのイソフラボノイドを含む微量のダイズタンパク質を含有した。イソフラボノイド用量はいずれもアグリコン当量で示す。食餌は等カロリーで、主要栄養素、コレステロール、カルシウムおよびリンの点で同様である。グリセオリンに富んだタンパク質は、破砕した(scarred)ダイズ(Glycine max)を酵素処理して親イソフラボンダイゼインをグリセオリンに転換させることにより製造した。次に、このダイズを粉砕、脱脂し、繊維濃縮物に組み込んだ。GLYサプリメントは、高圧液体クロマトグラフィ(HPLC)および紫外線(UV)モニタリング(可視分光光度法)によって定量した場合に、製品1gあたり959.5μgの非抱合型グリセオリンを含んだ(76.8%グリセオリンI、9.9%グリセオリンIIおよび13.6%グリセオリンIII)。グリセオリンのHPLC分析は、UV
−VIS996検出器を併用したWaters 600E System Controllerを用いて行われた。グリセオリンを抽出して0.5mlの80%EtOHでホモジナイズし、50℃で1時間加熱し、冷却し、14,000gで10分間遠心分離して濾過した。HPLCによって上清アリコート(20μL)を直接分析した。波長285nmでグリセオリンをモニターし、Vydac Multiring CI8(4.6x250mm;5μm)逆位相カラムを用いて分離した。標準的な溶媒系を用いて流速1.0ml/分で溶離した。HPLC分析はいずれも3回ずつ行った。相対的イソフラボノイド含有量も75ユニットごとに測定した(ダイズタンパク質分離物には61.5%ゲニステイン、34.6%ダイゼインおよび3.8%グリシテイン、グリセオリンに富んだタンパク質には52.6%ゲニステイン、43.0%ダイゼインおよび4.4%グリシテイン)。食餌のバランスをとるために、繊維濃縮物(FIBRIM2000(登録商標)を対照食餌およびSPI食餌に添加した。この濃縮物には製品1gあたり0.17mg(HPLCで測定した場合)のイソフラボノイドをもたらす少量のダイズタンパク質(重量あたり11.4%)を含んだ。ダイズタンパク質分離物および他の繊維濃縮物はDupont社の一部門であるSolae(ミズーリ州セントルイス所在)から豊富に提供を受けた。グリセオリンに富んだタンパク質はSolae、農務省南部研究所およびチューレーン大学医学部の協力により提供された。エストラジオール錠はマイラン製薬(ウエストバージニア州モーガントン所在)から入手した。動物には体重(BW)1kg当たり120kcalを1日1回給餌した。サル被験体とヒト被験者との間の代謝率差を埋め合わせるために、エストラジオール、イソフラボノイドおよびグリセオリンの1日量を(BWではなく)1800kcal(米国女性の推定1日摂取量)の食事に合わせて調整した。したがって、サルには体重1kgあたり66.7μgのE2(全群);体重1kgあたり0.44mg(Con)、12.91mg(SPI)または12.57mg(GLY)のイソフラボノイド、ならびに体重1kgあたり8.94mgのグリセオリン(GLY)を各日給餌した。注目すべきなのは、最初のSPIおよびGLY食餌処方には十分な嗜好性が欠けていたため、全動物を対照群の食餌(E2)に1週間14日置いて試験した。この期間に甘いアップルソースを用いて全食餌を再処方し、以降3週間給餌し、コンプライアンスの問題はなかった。動物に関わる全手順は、州法および連邦法、米国保健社会福祉省の基準およびウェイクフォレスト大学動物実験委員会が作製したガイドラインに準拠して行った。ウェイクフォレスト大学の施設および実験動物計画は実験動物管理評価認定協会(Association for the Assessment and Accreditation of Laboratory Animal Care)によっていずれも認証を受けている。
【0054】
霊長類の乳房生検
食餌療法の開始および終了時に、ケタミンおよびブプレノルフィンにより動物を麻酔して乳房生検、採血、子宮超音波検査、膣細胞診および体重測定を行った。乳房生検では、事前に選択した乳房四分円を1.5cm切開し、小さな(〜0.4g)乳腺試料を摘出した。ACUCに認可された臨床手順に従って、切開部を縫合し、動物をモニターし、回復中に麻酔を与えた。生検部位には後で同部位を再び採取しないように入れ墨を入れた。生検試料の半分は凍結させ、残りの半分は4%パラホルムアルデヒドにより4℃で24時間固定し、標準的手順を用いた組織化学検査用に処理した。
【0055】
実施例1
グリセオリンはin vitroでLNCaP細胞の肝臓X受容体を介してABCG1を上方制御する
図1に示すように、LNCaP細胞からの試験結果はLXRに対するグリセオリンの役割を示唆している。5μΜで48時間グリセオリン処理すると、ABCG1は8.1倍上方制御された。ABCA1の有意な上方制御も観察された(データは示さず)。ゲニステイン治療によって3倍上方制御され、ダイゼインおよびゲニステインでは2倍上方制御さ
れた。
【0056】
実施例2
グリセオリン治療によってLXR応答遺伝子ABCG1およびABCA1は上方制御される
2つのLXR応答遺伝子ABCG1およびABCA1はコレステロール排出ポンプとして協働する。これらの分子作用が、ダイズグリセオリンが肥満症および肥満関連症候群(高コレステロール血症および炎症など)を予防し得る潜在的機序をもたらす。LXRαおよびLXRβアイソタイプは、コレステロール逆輸送体であるATP結合カセットサブファミリーAメンバー1(ABCA1)およびサブファミリーメンバーG1(ABCG1;4−5)の調節を介した周辺組織およびマクロファージにおける遊離コレステロールの蓄積を制限する重要な役割について研究されてきた。LXRαは主に肝細胞、脂肪細胞および腸細胞に発現し、そこではLXRβが普遍的に発現する。
【0057】
実施例3
グリセオリンはin vitroでMCF7細胞の遺伝子発現を変化させる
表1はMCF−7細胞においてエストラジオール、グリセオリン混合物およびタモキシフェン治療によって変化した遺伝子のSuperArray分析の結果を示している。太字の数字は1.5を超える遺伝子発現の倍数変化を表す。SDF−1およびPgR遺伝子発現に対するグリセオリンおよびタモキシフェン治療の差次的効果を試験し、スーパーアレイ分析を行うことによって、乳癌およびエストロゲンシグナル伝達において一般に変化されるさらに広い遺伝子パネルを用いて2種の化合物間の差をさらに調べることにした。上記リアルタイムRT−PCRデータに基づき、本発明者らはDMSO(ビヒクル)、1nMのE2、100nMのタモキシフェンまたは10μΜのグリセオリンでMCF−7細胞を4時間処理することにした。全RNAを抽出・定量し、リアルタイムPCRアレイを行った。本発明者らはグリセオリンによって上方制御されたいくつかの遺伝子を同定した(SREBF1,SREBF2,ACOX1,PPARA,FASN,AGPAT7,AGPAT6,SCD5,CPT2,ABCG1,AC02,ECHl,ECHDCl,ECHDC2,ECHDC3)。
【表1−1】

【表1−2】

【表1−3】

【表1−4】

【表1−5】

【表1−6】

【表1−7】

【表1−8】

【0058】
実施例4
グリセオリンは霊長類の乳腺組織の遺伝子発現を変化させる
表2はグリセオリンに富んだダイズタンパク質分離物と標準的ダイズタンパク質分離物とを比較した、乳腺組織で上方制御および下方制御された遺伝子の数を示している。脂肪酸代謝に関与するHADH遺伝子はグリセオリン治療によって上方制御された。GPD1、GPAM、AGPAT2およびGPAMなどのグリセロ脂質代謝に関与するいくつかの遺伝子は上方制御された。アラキドン酸代謝に関与するPTGDS遺伝子は上方制御された。ITGA8,SDC1,シンデカン1およびITGA2など、ECM−受容体相互作用に関与するいくつかの遺伝子は下方制御された。上方制御された遺伝子はITGA7およびCD36であった。LPL,PLIN,SORBSl,CD36およびDBIなど、PPARシグナル伝達経路に関与するいくつかの遺伝子は上方制御された。PRKAR2B,SORBSlおよびACACBなど、インスリンシグナル伝達経路に関与するいくつかの遺伝子は上方制御された。
【表2−1】

【表2−2】

【表2−3】

【0059】
実施例5
グリセオリンはマウス肝組織の遺伝子発現を変化させる
表3はグリセオリンで治療した肝組織の遺伝子発現を、表4は有意に上方制御(>1.5)された数を、表5はグリセオリン治療したマウス肝組織において有意に下方制御(<1.5)された遺伝子の数を対照と比較して示している。
【0060】
表3,4および5からわかるように、グリセオリンによる治療によって遺伝子発現は有意に変化した。グリセオリン治療によって、計13遺伝子が上方制御され、13遺伝子が下方制御された。本試験では、脂質代謝遺伝子ACOX1が有意に上方制御された。この遺伝子の上方制御は肝臓で行われて過剰な脂質蓄積を防止し得る。また、AHSG遺伝子およびLEP遺伝子の上方制御は体脂肪およびインスリン感受性の調節を変化させる。
【表3−1】

【表3−2】

【表3−3】

【表3−4】

【表3−5】

【表3−6】

【表3−7】

【表3−8】

【表3−9】

【表4】

【表5】

【0061】
表6はグリセオリン(E2添加)で治療したマウス肝組織において有意に上方制御(>1.5)された遺伝子数を、表7は有意に下方制御された(<1.5)遺伝子数を対照(E2添加)と比較して示す。計19遺伝子がグリセオリン治療によって有意に上方制御され、計31遺伝子が有意に下方制御された。また、本試験では、脂質代謝遺伝子ACOX1が有意に上方制御され、AHSG遺伝子の上方制御が検出された。脂質およびコレステ
ロール機能に関与する上方制御された他のいくつかの遺伝子は、グリセオリン治療によって生じた。SORBS1遺伝子は脂質輸送に重要であり、SREBF1はコレステロール輸送に関与している。表7は有意に下方制御された遺伝子もいくつか示している。INS1はインスリン調節に重要である。
【表6】

【表7】

【0062】
コレステロールは真核細胞の脂質膜の必要不可欠な構成要素で、膜流動性を維持し且つ膜関連タンパク質の輸送およびシグナル伝達を促すのに必要である。コレステロールはステロイドホルモン、胆汁酸塩およびオキシステロールなどの重要な代謝産物にとって不可欠な前駆物質でもある。いくつかの経路が体内のコレステロール恒常性を調節する。つまり、第1の経路では、細胞は主として循環するコレステロールに富んだ低密度リポタンパク質(LDL)粒子を細胞のリポタンパク質受容体に結合させることによりコレステロー
ルを取り込む。受容体−リガンド複合体はクラスリン依存性エンドサイトーシスにより細胞に吸収され、次いで、コレステロールが種々の下流の生化学経路によって使用される。第2の経路では、細胞内濃度が低い場合にSCAP/SREBPシグナル伝達カスケードの活性化によりコレステロールが合成される。SREBP(ステロール調節エレメント結合タンパク質)は、多数のコレステロール合成遺伝子の発現を調節する転写因子であり、SCAP(SREBP切断活性化タンパク質)がその活性を調節する。最終的に、細胞が過剰なコレステロールを蓄積すると、コレステロール逆輸送経路が活性化され、過剰なコレステロールは肝臓へ輸送されて胆汁に分泌される必要がある。この第3の経路では、循環する高密度リポタンパク質(HDL)は非肝細胞からのコレステロールの第一の受容体として機能する。
【0063】
ゲニステインは肝臓における脂肪酸代謝に関与する遺伝子の上方制御により脂質低下作用を生じることが明らかとなっている。脂肪酸代謝に関与するACOX1などの遺伝子の発現に観察される変化は特に興味深い。
【0064】
材料と方法:糖尿病
霊長類試験および食餌
本試験の対象は外科的に閉経させた平均年齢17.8±0.5歳の成熟カニクイザル(Macaca fascicularis)30匹とした。全動物を4年間卵巣切除し、以降各3−4匹の安定した社会集団で飼育した。全動物を社会集団ごとに無作為割付し以下を含む3種の食餌のうちの1つを与えた:(1)カゼイン/ラクトアルブミン(C/L,9例);(2)193.6mg/1800kcalのイソフラボンを含むダイズタンパク質分離物(SOY,11例);および(3)188.5mg/1800kcalのイソフラボンおよび134.1mg/1800kcalのグリセオリンを含むグリセオリンに富んだダイズタンパク質(GLY、10例)。イソフラボン用量はいずれもアグリコン当量で表す。これまでに報告されているように(Woodら、2006年)、各食餌には生理学的投与量の微粉化17β−エストラジオール(E2,1mg/1800kcal)も含んだ。食餌の製造、組成物および分析に関するさらなる詳細も、この先の報告(Woodら、2006年)に記載されている。
【0065】
つまり、GLYサプリメントには、高圧液体クロマトグラフィ(HPLC)およびUVモニタリング(可視分光測光)によって定量した場合、製品1gあたり959.5gの非抱合型グリセオリンを含んだ(76.8%グリセオリンI、9.9%グリセオリンIIおよび13.6%グリセオリンIII)。HPLC(製造業者による)を用いて相対的イソフラボン含有量も測定し(SOYには61.5%ゲニステイン、34.6%ダイゼインおよび3.8%グリシテイン、GLYには52.6%ゲニステイン、43.0%ダイゼインおよび4.4%グリシテイン)アグリコン単位で示した。食餌は等カロリーで、主要栄養素、コレステロール、カルシウムおよびリンの点で類似している。ダイズタンパク質分離物はSolae社(米国ミズーリ州セントルイス所在)から入手し、グリセオリンに富んだタンパク質はSolae社、農務省南部研究所およびチューレーン大学医学部の協力により提供された。エストラジオール錠はマイラン製薬(ウエストバージニア州モーガントン所在)から入手した。
【0066】
動物には体重(BW)1kg当たり〜120kcalを1日1回給餌した。サル被験体とヒト被験者との間の代謝率差を埋め合わせるために、イソフラボン、グリセオリンおよびE2の1日量を(BWではなく)1800kcalの食事に合わせて調整した(Schneiderら、2004年)。したがって、サルには体重1kgあたり0.44mg(C/L)、12.91mg(SOY)または12.57mg(GLY)のイソフラボン、体重1kgあたり8.94mgのグリセオリン(GLY)、および体重1kgあたり66.7μgのE2(全群)を各日給餌した。動物に関わる全手順は、州法および連邦法、米
国保健社会福祉省の基準およびウェイクフォレスト大学動物実験委員会が作製したガイドラインに準拠して行った。ウェイクフォレスト大学の施設および実験動物計画は実験動物管理評価認定協会(Association for the Assessment and Accreditation of Laboratory Animal Care)によっていずれも認証を受けている
【0067】
遺伝子マイクロアレイおよび定量的遺伝子発現解析
マイクロアレイ分析では、Tri試薬(Molecular Research Center、オハイオ州シンシナティ所在)を用いて凍結乳腺脂肪体生検から全RNAを抽出し、RNeasy Mini kit(QIAGEN社、カリフォルニア州バレンシア所在)を用いて精製し、NanoDrop ND−1000紫外線可視分光光度計(NanoDrop社、デラウェア州ウィルミントン所在)を用いて定量した。生検採取については既に記載されている(Woodら、2006年)。RNAの無損傷性(intactness)および品質はAgilent 2100 Bioanalyzer(Agilent Technologies社、デラウェア州ウィルミントン所在)を用いて確認した。各群からの品質の最も高い3つの試料(計12例)をマイクロアレイ分析に供した。RNAをGeneChip Rhesus Macaque Genome Arrays(Affymetrix社、カリフォルニア州サンタクララ所在)にハイブリダイズし、洗浄し、Cogenics(登録商標)の臨床データ部門(ノースカロライナ州モリスビル所在)にてスキャンした。GeneChip Operating Software(Affymetrix社)を用いて、スキャン画像から強度データを抽出した。脂質およびグルコース代謝経路に関連する10個の遺伝子(マイクロアレイ分析で同定)の発現を定量リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(qRT−PCR)を用いて決定した。内部対照遺伝子GAPDHおよびBACTとしてマカクに特異的なqRT−PCRプライマー/プローブセットを生成し、ターゲットアッセイにはアカゲザルまたはヒトABI Taqmanプライマー/プローブセットを用いた(qRT−PCRにより評価した標的遺伝子用のプライマー/プローブセットを示す表11を参照のこと)。上記のように全乳腺試料(30例)から、全RNAを抽出し、定量し、上記のように逆転写した。Applied Biosystems社のABI PRISM(登録商標)7500 Fast Sequence Detection SystemによりTaqman試薬および標準的なサーモサイクリングプロトコルを用いてリアルタイムPCR反応を行った。ABI相対定量7500ソフトウェアv2.0.1.によって算出したΔΔCt法を用いて相対発現を決定した。外部検量用試料として原乳腺(stock mammary)組織を各プレート上で2回試験(run)した。
【表8】

【0068】
血清マーカー
ベースライン時および治療終了後に採血して血清マーカーを測定した。液体クロマトグラフィ−フォトダイオードアレイ質量分光分析によって総グリセオリン(I〜III)およびダイズイソフラボノイドの血清濃度を決定した。放射免疫測定用(E2,DSL−4800超高感度、Diagnostic Systems Laboratories社、テキサス州ウェブスター所在)または酵素結合免疫吸着検定用(MCP−1およびET−1、R&D Systems社、ミネソタ州ミネアポリス所在;XLAPs、Osteometer Biotech A/S社、デンマーク国ヘアレブ所在;GLP−1(総)、レプチンおよびインスリン、ALPCO Diagnostics社、ニューハンプシャー州セーレム所在;アディポネクチン、Mercodia社、ノースカロライナ州ウィンストンセーレム)の市販のキットおよびプロトコルを用いてE2、血管および骨代謝回転マーカー(単球走化性タンパク質(MCP)−1、エンドセリン(ET)−1およびCrossLapsコラーゲン分解産物(XLAPs))および代謝マーカー(インスリン、グルカゴン様ペプチド(GLP)−l)、アディポネクチンおよびレプチン)の血清濃度を測定した。COBAS FARA II分析装置(Roche Diagnostics社、ニュージャージー州モントクレア所在)により標準的なプロトコルおよび試薬
を用いた酵素法を利用して、総コレステロール(TC)、高密度リポタンパク質コレステロール(HDL)およびトリグリセリド(TG)濃度を測定した。ウェイクフォレスト大学医学部の完全に標準化された臨床化学実験室にて血清分析を行った。ヘパリン・マンガン沈殿法を用いてHDL濃度を測定した。低密度リポタンパク質コレステロール(LDL)+超低密度リポタンパク質コレステロール(VLDL)をTPCとHDLとの間の差として算出した。ベースランおよび治療後の時点からの試料を同時に分析して全部の血清測定を行った。
【0069】
統計解析
GeneSifter(登録商標)ソフトウェアプログラム(Geospiza社、ワシントン州シアトル所在)を用いてマイクロアレイデータを解析した。強度データをRMAで正規化し、log2スケールに変換し、試料および群間の不均一性をスクリーニングし、管理された(supervised)分散分析(ANOVA)および治療間のペアワイズ比較を用いて評価した。結果に記載のように、選別されたデータについて主成分分析(PCA)、パターンナビゲーション、クラスタ分析、ヒートマップおよびKEGG経路分析を行った。各治療によって変化した遺伝子数の違いをカイ2乗検定を用いて比較し、平均連結法を用いた階層的クラスタ分析デンドログラムの一部としてユークリッド距離(治療ベクトル間の数値差を表す)を算出した。KEGG分析により経路を評価した。zスコア(>2.0)を特定の経路における遺伝子の有意な過剰出現と考えた。Ingenuity Pathway Analysis(IPA)ソフトウェアv8.0(Ingenuity Systems社、カリフォルニア州レッドウッドシティー所在)を用いて特定の古典的(canonical)分類および機能的分類内の発現量の異なる遺伝子の出現を評価した。フィッシャーの直接確率検定を用いてBenjamini−Hochberg補正法によりIPAにおいて所与のカテゴリー内の遺伝子数の有意性を決定し、各治療群について-log10(P値)で表した。その他のデータはSAS統計パッケージ(バージョン9.1,SAS Institute社;ノースカロライナ州カリー所在)を用いて分析した。一般線形モデルを用いて平均値を決定し、群間差を算出した。正規分布および群間の等分散性について全データを評価した。遺伝子発現および血清マーカーのデータを対数変換して分布を改善し、次いでデータを元のスケールに再変換し、対照の倍数変化として報告した(90%信頼区間)。RNAの質が悪かったため、SOY群の動物1匹を遺伝子発現分析から除外した。これにより最終的なグループサイズは、qRT−PCRデータについてはC/Lが9例、SOYが10例、GLYが10例であった。治療後の血清脂質およびマーカーのデータをベースライン値によって共変した。ボンフェローニ補正を用いて、ペアワイズテストの数についてペアワイズの全P値を調整した。いずれの比較にも両側検定の有意水準0.05を選択した。
【0070】
実施例6
食餌摂取量
食餌摂取量の指標として体重、血清E2および血清イソフラボノイドを測定した。治療群ではベースライン時または治療後の平均BW、BWの変動または血清E2濃度に有意な違いはなかった(いずれもANOVA P>0.05)。給餌4時間後、平均血清グリセオリン濃度はGLY群では134.2±34.6nmol/L、SOY群では無視できるほど小さかったが(GLYと比較してP<0.001)、給餌4時間後(いずれもP<0.001)および24時間後(いずれもP<0.05)、総血清イソフラボノイド濃度はC/L群と比較してSOY群およびGLY群では有意に高かった。SOY群およびGLY群では、給餌4時間後(P=0.59)または24時間後(P=0.73)の総血清イソフラボノイドに差はなかった。個々のイソフラボノイドも2種の食餌間で同程度であった。給餌4時間後のSOY食餌およびGLY食餌の総血清イソフラボノイドは、ヒトダイズインターベンション試験で報告されたものと同程度であった。
【0071】
実施例7
カゼイン/ラクトアルブミン(C/L)、標準ダイズタンパク質(SOY)およびグリセオリンに富んだダイズタンパク質(GLY)を含有した食餌の乳腺脂肪における遺伝子発現プロフィール
網羅的発現プロフィールから、SOYと比較して、GLYによって多数の遺伝子が変化したことがわかった。例えば、FC>1.5およびANOVA P<0.05の遺伝子(名称付き)計139のうち、SOY群(44例)と比較してGLY群(111例)では多数に変化がみられ(P<0.001、カイ2乗検定)、GLY遺伝子とSOY遺伝子とのオーバーラップはわずか14%であった(図3)。図3からは、網羅的発現プロフィールは、標準ダイズタンパク質と比較して多数の遺伝子がグリセオリンによって変化したことは明らかである。例えば、FC>1.5およびANOVA P<0.05の遺伝子(名称付き)計139のうち、標準ダイズタンパク質群(44例)と比較してグリセオリン群(111例)では多数に変化がみられ(P<0.001、カイ2乗検定)、グリセオリン遺伝子と標準ダイズタンパク質とのオーバーラップはわずか14%であった。管理された(Supervised)階層的クラスタ分析からは、C/LおよびSOY(GLYおよびSOYではなく)は最も密接な関係がある群であり、FC>1.5で有意に変化した遺伝子ではユークリッド距離は〜11であることがわかった(図4)。図4は管理された階層的クラスタ分析を示しており、カゼイン/ラクトアルブミンおよび標準ダイズタンパク質(グリセオリンおよび標準ダイズタンパク質ではない)は最も密接な関係がある群であり、FC>1.5で有意に変化した遺伝子ではユークリッド距離は〜11であることがわかった。グリセオリンと標準ダイズタンパク質とのはっきりと異なるプロフィールの差も、FC>1.5で変化した遺伝子のPCAベクトルから質的に明白である。GLYとSOYとのはっきりと異なるプロフィールの差もFC>1.5で変化したPCAベクトル(図4)およびヒートマップ(図5)から質的に明白である。ANOVAおよび管理されたペアワイズ比較によるFC>1.5で有意に変化した全遺伝子の完全なリストを表9に示す。qRT−PCRによって評価した脂質および/または糖代謝、PPARおよびAMPKシグナリングおよび/またはアディポサイトカイン活性に関連する10遺伝子を表9に示す。これらの標的のうち、カゼイン/ラクトアルブミンと比較してグリセオリン群では10個のうち8個が上方制御され(いずれもP<0.05)、標準ダイズタンパク質とカゼイン/ラクトアルブミン群との間では10個のうちいずれも差がなかった。
【0072】
実施例8
経路分析
経路分析を用いて、古典的分類および機能的分類によって変化した遺伝子を分類した。GLY群の変化した遺伝子のIPAで最も過剰出現した古典的経路はいずれも脂質、糖質および/またはエネルギー代謝に関係した。これらの経路には、KEGG経路分析により、グリセロリン脂質およびグリセロ脂質代謝、チトクロムp450代謝、およびAMPKシグナル伝達(いずれもP<0.01)(表8を参照。GLYおよび標準的タンパク質食餌によって有意に変化した遺伝子を示す(脂質、グルコースおよびエネルギー代謝に関連する)を含んだ。遺伝子プローブからのKEGG経路分析によって経路を同定した(この経路ではFC>1.5、P<0.05および>2の遺伝子が変化した。zスコアが有意(>2)な経路のみを示す)。注目すべき経路には、グリセロ脂質代謝、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(PPAR)シグナル伝達およびチトクロムp450代謝が含まれる。SOY群では、zスコアが有意な経路または関連する経路の過剰出現はみられなかった。GLY遺伝子のIPAに最も過剰出現した機能的経路は、脂質代謝、低分子生化学および糖代謝であった(いずれもP<0.05)。脂質代謝の最も有意なサブカテゴリーはトリアシルグリセロール生合成であった(−log10(P値)=6.9)。KEGG経路分析についても同様のパターンがみられ、脂質、グルコースおよびエネルギー代謝(表8)に関連するGLY群の変化した遺伝子が有意に過剰出現(zスコア>2)することが明らかとなった。本明細書で注目すべき経路には、グリセロ脂質代謝、ペルオキシソーム
増殖因子活性化受容体(PPAR)シグナル伝達およびチトクロムp450代謝が含まれた。
【表9】

【0073】
実施例9
遺伝子発現の定量
上記知見をさらに検証するために、脂質および/または糖代謝、PPARおよびAMPKシグナル伝達、および/またはアディポサイトカイン活性に関連する10個の遺伝子標的をqRT−PCRによって評価した。C/Lと比較してGLY群では、評価した16の標的のうち9個が上方制御されたが(いずれもP<0.05)、SOY群とC/L群との間には16個の標的に差はなかった(表9を参照。qRT−PCRによる定量では、食餌タンパク質が乳腺脂肪組織内の脂質およびグルコース代謝、PPARシグナル伝達およびアディポサイトカイン活性に関連する選択的遺伝子の相対的発現に作用することを示す。)。GLY群で増加した標的には、アディポサイトカインシグナル伝達(アディポネクチンおよびレプチン)、糖代謝(グリセロール−3−リン酸脱水酵素およびグリコーゲン合成酵素)、PPARシグナル伝達(PPARγおよびリピン1)および脂質代謝(リポタンパク質リパーゼおよびペリリピン)の遺伝子が含まれた。これらのカテゴリー間では相当なクロストークが生じ、ひいては特定の分子が多様な経路で機能し得ることは注目すべきである。
【表10】

【0074】
実施例10
血清マーカー
ベースライン時には血清脂質測定に有意な差はなかった(ANOVA、いずれもP>0.05)。治療後、GLY群では、C/L群およびSOY群と比較してTCおよびLDL+VLDLは低く(いずれもP<0.01)、C/L群と比較してTGは高かった(P=0.008)(表10を参照。血清脂質、血管、骨代謝回転および代謝マーカーに対する治療効果を示す)。SOY群でも、C/L群と比較してTGは高かった(P=0.02)。HDLまたはTC/HDL比に有意な群間差は認められなかった。ベースライン時または治療後に、血清MCP−1,ET−1,XLAPSまたは代謝マーカーに群間差はみられなかった(いずれもANOVA P>0.05)。
【表11】

【0075】
TC=総コレステロール;LDL=低密度リポタンパク質;VLDL=超低密度リポタンパク質;HDL=高密度リポタンパク質;TG=トリグリセリド;GLP−1=グルカゴン様ペプチド1
【0076】
表10から、ベースライン時には血清脂質測定値に有意な群間差はなかったことがわかる(いずれもANOVA P>0.05)。治療後、グリセオリン群ではカゼイン/ラクトアルブミン群および標準ダイズタンパク質群と比較して総コレステロールおよび低密度リポタンパク質+超低密度リポタンパク質は低く(いずれもP<0.01)、カゼイン/ラクトアルブミン群と比較してトリグリセリドは高かった(P=0.008)。表10の値はベースライン時の測定値により共変した治療後の平均(90%信頼区間)を表す。P値を補正して多重対比較を行った。脂質の値をSI単位(mmol/l(L))に変換するため、TC,LDL+VLDLおよびHDLについては38.67で割り、TGについては88.57で割った。記号はカゼイン/ラクトアルブミン群(*P<0.05,**P<0.01)または標準ダイズタンパク質群(##P<0.01)との有意差を示す。
【0077】
グリセオリンはある種の豆科植物(特にダイズ)によってストレスに応答して防御分子として産生される新規クラスのファイトアレキシン化合物である。この試験では、本発明者らは標準ダイズタンパク質分離物と比較して、グリセオリンに富んだダイズタンパク質から生じる乳腺脂肪組織の転写プロフィールを評価した。本発明者らは(SOYの遺伝子発現プロフィールとのオーバーラップが最小である)はっきりと違うGLYの遺伝子発現プロフィールを同定した。脂質および糖代謝に関与する経路(PPARおよびアディポサ
イトカインシグナル伝達、リポタンパク質リパーゼおよびトリグリセリド代謝など)にGLYの作用が主に関連した。GLY食餌もC/L食餌と比較して血清総コレステロール(具体的には非高密度リポタンパク質コレステロール)を低下させた。これらの予備的知見からは、グリセオリンに富んだダイズタンパク質には標準ダイズとは異なる、脂肪細胞活性および栄養素代謝に関連する作用があることが示唆される。
【0078】
食餌は代謝症候群および関連する併存症状態の主要な決定因子であり、有益な代謝効果を有する食餌介入は乳癌予防に重要な役割を果たし得る。これまでの知見から、グリセオリンはエストロゲン受容体(ER)を競合的に結合し、ダイズイソフラボノイドとははっきり異なる選択的ER調節特性を誘発し得ることが示唆される。代謝経路の調節における特異的イソフラボノイドおよびその誘導体の役割については未だによくわかっていない。GLY食餌によって上方制御される著明な遺伝子には、PPARγ、アディポネクチン、リピン1およびリポタンパク質リパーゼがあった。
【0079】
これまでの結果から、グリセオリンは天然の選択的ER調節因子として機能し得ることが明らかとなっている。本パイロット試験の結果からは、グリセオリンに富んだダイズタンパク質も脂質、糖質およびエネルギー代謝に関連する経路に生物学的に関連する作用も及ぼし得ることが示唆される。本発明者らの知見から、加工前にダイズを処理すればダイズタンパク質の生理活性成分の特性を変化させて、標準ダイズタンパク質分離物とははっきりと異なる生理学的作用および代謝作用をもたらすことができることが明らかとなっている。この考え方は他の植物性食品の生理活性成分の同定にも重要な意味を持つと考えられる。
【0080】
材料と方法:グルコース取り込み
溶液
200mLの水、300μLの1M CaCl、300μLの1.2M MgS0、300μLの1M KHP0、3mLの0.14M KCl、1.2M NaHCO中の6mLの1M HEPES、および15mLの2.6M NaClを用いてKrebs−Ringers−Hepes(KRH)緩衝液を調製した。pHを7.4に調製し、HOを添加して最終量を300mLにした。得られた溶液を0.22μmフィルタにより滅菌した。180.16mgのD−glucoseを10mLのH0に溶解することによってDグルコース(分子量=180.16)原液(100mM)を調製した。
【0081】
3μlのトレーサー原液(1μCi/μl)を297μLの100mM Dグルコースに添加して99mMグルコース中0.1μCi[H]2−デオキシグルコースを得ることによって、各プレートに新しいトレーサー溶液を調製した。10μLを各ウェルに加えて各ウェルの最終量を1000μL=0.1μCi(0.99mM Dグルコースで)とした。
【0082】
2.90mgのインスリンを5mLの0.01N HC1に溶解することによってインスリン(分子量=5808)原液(100μΜ)を調製した。希釈標準溶液を調製するために、100μLの原液を900μLのKRH緩衝液に加えることによって原液を1:10で希釈して溶液A(10μΜ)を得、400μLのAを932μLのKRH緩衝液に加えることによって溶液Aを希釈して溶液B(3μΜ)を得、100μLの溶液Aを900μLのKRH緩衝液に加えることによって溶液Aを希釈して溶液C(1μΜ)を得、100μLの溶液Bを900μLのKRH緩衝液に加えることによって溶液Bを希釈して溶液D(300nM)得、100μLの溶液Cを900μLのKRH緩衝液に加えることによって溶液Cを希釈することによって溶液E(100nM)を得、100μLの溶液を900μLのKRH緩衝液に加えることによって溶液Dを希釈して溶液F(30nM)を得、100μLの溶液Eを900μLのKRH緩衝液に加えることによって溶液Eを希釈して
溶液G(10nM)を得、100μLの溶液Fを900μLのKRH緩衝液に加えることによって溶液Fを希釈して溶液H(3nM)を得、100μLの溶液Gを900μLのKRH緩衝液に加えることによって溶液Gを希釈して溶液I(1nM)を得、100μLの溶液Hを900μLのKRH緩衝液に加えることによって溶液Hを希釈して溶液J(0.3nM)を得た。100μLの各濃縮物を各ウェルに加えて、各ウェルの最終量を1000μL(細胞への添加時に1:10で希釈)とした。
【0083】
グリセオリンI(約76.8%)、グリセオリンII(約9.9%)およびグリセオリンIII(約13.6%)の混合物3.38mgを1mLのDMSOと混合することによって10mMのグリセオリン原液を調製した。この原液を冷蔵保存した。希釈標準溶液を調製するために、3920μLのKRH緩衝液により80μLの原液を希釈して溶液A(200μΜ)を得、500μLの溶液Aを335μLのKRH緩衝液に加えることによって溶液Aを希釈して溶液B(120μΜ)を得、1000μLの溶液Aを1000μLのKRH緩衝液に加えることによって溶液Aを希釈して溶液C(100μΜ)を得、1000μLの溶液Aを1500μLのKRH緩衝液に加えることによって溶液Aを希釈して溶液D(80μΜ)を得、1000μLの溶液Aを2330μLのKRH緩衝液に加えることによって溶液Aを希釈して溶液E(60μΜ)を得、1000μLの溶液Dを1000μLのKRH緩衝液に加えることによって溶液Dを希釈して溶液F(40μΜ)を得、1000μLの溶液Fを1000μLのKRH緩衝液に加えることによって溶液Fを希釈して溶液G(20μΜ)を得、1000μLの溶液Gを1000μLのKRH緩衝液に加えることによって溶液Gを希釈して溶液H(10μΜ)を得、1000μLの溶液Hを1000μLのKRH緩衝液に加えることによって溶液Hを希釈して溶液I(5μΜ)を得た。100μLの各濃縮物を各ウェルに加えて、各ウェルの最終量を1000μL(細胞への添加時に1:10で希釈)とした。別途指示のない限り(例えば、実施例14および15を参照)、以下の実施例がグリセオリンに言及する場合、グリセオリンI、IIおよびIIIの混合物を使用した。
【0084】
細胞
マウス3T3−L1細胞の細胞培養および分化は、脂肪細胞分化、グルコース取り込みおよびインスリン作用の研究にとって広く容認されているモデルである。適したホルモンカクテルによって刺激した場合に、これらの細胞は、大きな脂質液滴蓄積による分化発現のプログラムを施行する。初代脂肪細胞と同様に、脂肪細胞はマーカー(例えば、レプチンおよびアディポネクチン)を発現し、Glut4を発現し、グルコース取り込みを増大させることによってインスリン刺激に応答する。このような試験では、凍結前駆脂肪細胞はZenbio社(ノースカロライナ州Research Triangle Park所在)から購入した。凍結前駆脂肪細胞を37℃で解凍し、Zenbio社の前駆脂肪細胞培養液で希釈し、集密になるまで95%空気および5%C0を含んだ湿気のある環境下にて24ウェルプレートで37℃でインキュベートした。さらに2日インキュベートすることによって集密に由来するシグナルを認めた。前駆脂肪細胞培地をZenbio社の分化培地と交換し細胞をさらに3日間インキュベートした。細胞の95%超が大きな脂質液滴に満たされたとき、この培地をZenbio社の脂肪細胞維持培地と約2週間交換した。
【0085】
実施例11
グルコース刺激およびグリセオリンインキュベーション
KRH1mLで洗浄後、Zenbio社の脂肪細胞維持培地にて、1mlのKrebs−Ringerバッファー中37℃で各図面に示した種々の時間インキュベートすることによって、細胞を血清、インスリンおよびグルコースの飢餓状態にした後、完全に分化した3T3−L1脂肪細胞を用いてグルコース取り込み試験を行った。翌日、細胞をKRH緩衝液で1回洗浄し、図7および8のチャレンジマップに従ってKRH、インスリンおよ
び/またはグリセオリン溶液をウェル1〜24に加えた。細胞をインキュベートし、KRB中37℃で種々の濃度のグリセオリン、インスリンまたはその両方に30分間または45分間(グリセオリン単独)曝露した後、Dグルコース中10μLの[H]2−デオキシグルコースを添加した。次に、各プレートを37℃の水浴で10分間インキュベートし、氷上に設置した。上を覆っている培地を除去し、1mLの氷冷KRH緩衝液と交換し、新しい氷冷KRH緩衝液で2回各ウェルを洗浄した。KRH緩衝液を除去し、500μLの放射性免疫沈降アッセイ(RIPA)バッファーを加えた後、1mLピペットを用いて目に見える細胞すべてを各ウェルの底から洗い落とした(移動した)。各ウェルから、450μLを集めてアッセイに供し、液体シンチレーションカウンターで[H]を測定した。データをCPM/ウェルとして表した。インスリンとのインキュベーション前に細胞を血清飢餓状態にしない同様の試験を行った。このデータを図9に示しており、インスリン媒介性グルコース取り込みが比較的小さく増加したことを反映している。例えば図10に示すように、維持培地をKRHと交換することによりZenBio社の脂肪細胞維持培地(高濃度のグルコースおよび有意なレベル濃度のインスリンを含む)の細胞を24時間飢餓状態にすることによって、インスリン媒介性グルコース取り込みは大幅に増加した(図9と比較して感受性は約10倍増大し、最大インスリン媒介性グルコース取り込みは約5倍改善した)。図9と図10を比較すると、ZenBio社の脂肪細胞維持培地をグルコースもインスリンも含まないKRH緩衝液と交換したところ細胞のインスリン応答性は改善したことは明らかである。図11は図10と同じ試験からの別のインスリン用量応答曲線を示しているが、迅速なピペット操作(rapid pipetting technique)を用いている。これらのデータから、この細胞株ではインスリン抵抗性を生じさせる可能性があることがわかる。また、データからはPark,S.らが「Glyceollins,One of the Phytoalexins Derived from Soybeans under Fungal Stress, Enhance Insulin Sensitivity and Exert Insulinotropic Actions」(J.Agric.Food Chem.2010;58(3):1551−1557)で示唆しているように、グリセオリンはインスリン感受性を変化させないことが明らかである。
【0086】
実施例12
KRH単独またはグリセオリン併用KRHとのプレインキュベーション
実施例11の試験を広げ、24時間血清飢餓中に存在するグリセオリンが無視できないほどの効果を生じるか否かを検証するために、維持培地をKRH単独または5μΜのグリセオリンを補充したKRHと交換することによって細胞を血清飢餓状態にした。この血清飢餓プロトコルに従って、KRB中の0.3nMのインスリン(きわめて低用量)に37℃で30分間細胞を曝露した後、Dグルコース中の10μLの[H]2−デオキシグルコースを添加した。グルコース取り込みを上記のように試験した。図12に示すように、グリセオリンとのプレインキュベーションなしの場合、5μΜのグリセオリン単独では0.3nMのインスリンが刺激した以上にグルコース取り込みが刺激された(柱2および3を比較されたい)。インスリン不存在下ではグリセオリンはグルコース取り込み刺激しないことが示唆されているため、この結果は驚くべきものである。ピペット操作技術を用いて、24時間血清飢餓状態なしでこの試験を繰り返し、その結果を図13に示す。Parkらの結果は、図13の柱5および6の比較により示す結果を反映するものであり、5uMのグリセオリンの添加によりグルコース取り込みが増強されたことから(図13、柱5)インスリン感受性が増大したものと考えられた。しかし、図13の柱3は、5μΜのグリセオリンが0.3nMのインスリン単独(柱2を参照)よりも一層大きくグルコース取り込みを刺激することも示している。
【0087】
柱4はインスリンとグリセオリンを併用した作用を示しており、少なくとも相加的であるように見え、相乗効果があると考えられる(柱2または3と比較)。グリセオリンが効
果を発揮するには少なくとも16〜24時間必要であり、図13の柱5−8(無血清培地を使用)のプレインキュベーション条件はこの仮説を検討するために設計されている。しかし、図13の柱2および4の比較は、24時間血清飢餓状態にし、インスリン(柱2)またはインスリン併用グリセオリン(柱4)で30分間刺激した細胞のデータを示しており、グリセオリンはプレインキュベーションなしで、グルコース取り込みの刺激に明らかに有効であるという驚くべき知見を明らかにしている。
【0088】
実施例13
KRH単独またはグリシノール併用KRHとのプレインキュベーション
24時間血清飢餓中に存在するグリシノール(グリセオリンの代わり)が無視できないほどの効果を生じるか否かを検証するために、維持培地をKRH単独または5μΜのグリシノールを補充したKRHに交換することによって細胞を24時間血清飢餓状態にし、この試験は実施例12に記載したのとは別法で行った。グリシノールはグリセオリンよりも非常に強力なエストロゲンアゴニストであり、Parkらは選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)としてグリセオリンを同定し、グリセオリンにはエストロゲンアゴニスト作用によりグルコース取り込みを増強する可能性があることを提唱している。しかし、図14に示すように、グリシノールはグルコース取り込みを刺激する効果がなく、実際にはグルコース取り込みを阻害することもある(柱1および8を比較されたい)。このデータからはエストロゲンが媒介する経路はグルコース取り込みの刺激に関与していないことが示唆される。
【0089】
実施例14
種々のグリセオリンによるプレインキュベーション
グリセオリン混合物(先の実施例で使用)と同混合物を構成する個々のグリセオリン(I、IIおよびIII)とを比較するために、グリセオリン混合物(グリセオリンI、IIおよびIII)、グリセオリンI、グリセオリンIIまたはグリセオリンIIIのいずれかで細胞を24時間プレインキュベートした。図15に示すように、各グリセオリンはインスリン媒介性グルコース取り込みを増強するのに有効であり、グリセオリンIおよびIIIはグリセオリンIIよりも有効であると考えられる。図16のデータからこの知見が裏付けられ、3種のグリセオリンいずれもがインスリン媒介性グルコース取り込みを増強することは明らかである。図16に示した試験では、KRH(血清飢餓)により24時間プレインキュベートした3T3−L1分化脂肪細胞をインスリン存在下で5μΜのグリセオリン混合物または個々のグリセオリンに、またはインスリンの不存在下でグリシノールに30分間曝露した。図16柱は以下の通りである:1)DMSO対照;2)KRH対照;3)グリセオリン混合物(5μΜ);4)グリセオリンI(5μΜ);5)グリセオリンII(5μΜ);6)グリセオリンIII(5μΜ);7)グリシノール(1μΜ);8)グリシノール(0.1μΜ)。グリセオリンIはグリセオリンIIおよびIIIよりもグルコース取り込みを刺激すると考えられる。このグリセオリン混合物は約75%のグリセオリンIを含んでいるため、精製したグリセオリンIよりも活性が弱いと考えられる。柱7および8からは、先に示したように、グリシノールはグリセオリンと同じ生物活性を示さないことが示唆される。最後に、柱1からはDMSOビヒクルにはグルコース取り込みに及ぼす影響が全くないことがわかる。
【0090】
実施例15
グリセオリンIおよびIIIはインスリン不存在下でグルコース取り込みを刺激する
細胞をKRHで24時間プレインキュベート(血清飢餓)し、次いでインスリンの存在下または不存在下でグリセオリンIまたはグリセオリンIIIに曝露した。図17のデータからは、グリセオリンIおよびIIIはいずれもインスリン不存在下でグルコース取り込みを刺激することができるが、グルコース取り込みはインスリン添加後にさらに増強されることがわかる。図17の各柱は次の通りである:1)DMSO対照;2)0.3nM
インスリン;3)グリセオリンI(5μΜ);4)0.3nMインスリン+グリセオリンI(1μΜ);5)0.3nMインスリン+グリセオリンI(5μΜ);6)グリセオリンIII(5μΜ);7)グリセオリンI(1μΜ);8)0.3nMインスリン+グリセオリンIII(5μΜ)。p<0.05の互いに異なる柱には異なる上付き文字を付けている。
【0091】
実施例16
非常に低用量のインスリンに対する3T3−L1分化脂肪細胞の反応
低濃度のインスリンを用いて実施例11に記載の実験を繰り返した。図18の用量反応曲線は、3T3−L1分化脂肪細胞のグルコース取り込みに対する非常に低い用量のインスリン濃度の影響を示す。
【0092】
実施例17
グリセオリン混合物を用いた19時間プリインキュベーション後のグルコース取り込み
3T3−L1分化脂肪細胞を指示された濃度でKRHまたはグリセオリン混合物(グリセオリンI、IIおよびIII)と19時間プレインキュベートした。次いで、細胞を洗浄し、指示された濃度でインスリンを負荷し、その結果を図19に示す。柱2は0.2nMのインスリン単独によるグルコース取り込みの刺激を示している(1と2の柱を比較されたい)。柱3,4および5からグルコース取り込みをさらに刺激するには5μΜのグリセオリンが必要である(すなわち、0.5および1.0μΜのグリセオリン濃度では不十分である)ことが示唆される。柱6は最大インスリン用量(1nM)を示し、柱8はグリセオリン(5μΜ)とのプレインキュベーションによってグルコース取り込みはさらに一層増強されることを示している。グリセオリンが高用量のインスリン以上にグルコース取り込みを刺激することができることは知られていないので、このようなデータは驚くべきものである。これらのデータはまた、グリセオリンはインスリン感受性を増強するのではなく、インスリン非依存性の機序を介してグルコース取り込みを刺激することも示唆している。この試験を3時間だけ(19時間の代わりに)プレインキュベーションすることにより繰り返したところ、そのデータからはインスリン単独で得られた値よりも高い値までグルコース取り込みを刺激するのにグリセオリン混合物との3時間のプレインキュベーションで十分であることがわかる(図20)。
【0093】
実施例18
グリセオリン混合物とのプレインキュベーション45分後のグルコース取り込み
3T3−L1分化脂肪細胞を対照としてKRHに45分間(図21の「o」を参照)または5μΜのグリセオリン混合物(図21の「●」を参照)のいずれかに曝露し、種々の用量のインスリンを負荷して上記の用量反応曲線を得た(例えば実施例11を参照)。その結果を図21に示す。上記の血清飢餓試験とは異なり、この試験には24時間の血清除去を含まなかった。これはインスリン無反応系(insulin−insensitive system)を作ってグリセオリンがインスリン感受性を増大させるか否かを確かめることが目的であった。白丸に示しているように、一晩の培地交換(medium switch)(24時間血清飢餓;図18参照)後の用量反応曲線と比較して、細胞をKRHとプレインキュベートしたときに観察された反応は非常に鈍く、インスリン無反応性である。グリセオリンがインスリン感受性を増大させると、一般に想定されるように図21のインスリン用量反応曲線は左に移動するはずであるが、そうはならなかった。すなわち、どのインスリン負荷レベルでもグルコース取り込みは有意に増大した。このことから、グリセオリンはインスリンに依存しない機序を介してグルコース取り込みを刺激するはずであることが示唆される。インスリン媒介性グルコース取り込みGLUT4トランスポーターによって媒介され、これら細胞はGLUT1トランスポーター(これが基礎的グルコース取り込みを担っていると考えられている)を有していることから、グリセオリンはGLUT4を変化させることによってインスリン感受性を増大させるのではなく、GLU
T1を介して基礎的(basal)グルコース取り込みを増大させている可能性が高いと考えられる。
【0094】
実施例19
先に示したように、3T3−L1分化脂肪細胞をKRH中で24時間プレインキュベート(血清飢餓)してグルコースおよびインスリンから細胞を飢餓させた。これによって非常に高感度のグルコース取り込み試験が行える。次に細胞を種々の濃度のグリセオリン混合物と45分間インキュベートし、洗浄し、続いてKRH中でさらに30分間インキュベートした。図22に示すように、グリセオリン混合物単独でグルコースの基礎的取り込みをインスリン非依存的に刺激する。
【0095】
本明細書に引用した全参照物は、各参照物が参照により援用されるように特定的かつ個々に示されているかのように、本明細書に参照により援用される。いかなる参照物の引用も出願日より前のその開示のためであり、本開示が従来の発明に基づいて係る参照物に先行する権利を与えられないということを承認するものとして解釈されるべきではない。
【0096】
上記要素の各々またはその2つ以上の組合せが、上記タイプとは異なる別のタイプの方法にも有用である可能性があることを理解されたい。さらなる分析をしなくても、上記から本発明の主旨が完全に明らかになるであろうから、他者は現在の知識を適用することによって、先行技術の観点から、添付の特許請求の範囲に示される本開示の一般的または特定の態様の本質的特徴を適正に構成する特徴を損なうことなく、本発明を種々の用途に容易に適合させることができる。上記実施例は例示として示したに過ぎず、本開示の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動物において、アディポサイトカインシグナル伝達、糖代謝、脂肪酸代謝、アラキドン酸代謝、PPARシグナル伝達、インスリンシグナル伝達、脂質代謝、細胞外マトリックス(ECM)−受容体相互作用またはそれらの組み合わせに関連する遺伝子の発現を調節する、少なくとも1つの単離されたグリセオリンを含む組成物。
【請求項2】
前記少なくとも1つの単離されたグリセオリンが、誘発されたダイズから単離され、グリセオリンI、グリセオリンII、グリセオリンIIIまたはそれらの組み合わせである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記少なくとも1つの単離されたグリセオリンが、約100nM〜約50μΜの量で提供される、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記少なくとも1つの単離されたグリセオリンが、動物1匹あたり約1mg/kg/〜動物1匹あたり約100mg/kgの量で提供される、請求項2に記載の組成物。
【請求項5】
前記遺伝子が、少なくとも1つの単離されたグリセオリンを含む前記組成物を投与されていない動物と比較して上方制御され、且つ、ADIPOQ;DGAT2;GPDl;GYS1;LEP;LPIN1;LPL;PLIN;PPARG;およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記遺伝子が、少なくとも1つの単離されたグリセオリンを含む前記組成物を投与されていない動物と比較して上方制御され、且つ、ACACB;ACAT1;ACOXl;AGPAT2;AHSG;AKT1;AKT2;CAP1;CD36;CEBPB;CRK;DBI;EIF2B1;EIF4EBP1;FBP1;FOS;GPDl;GPAM;HADH;HRAS1;ITGA7;LPL;MAP2K1;ORM1;PLIN;PRKAR2B;PTGDS;PTPN1;PTPN11;SORBS1;SREBF1;VEGFA;およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項4に記載の組成物。
【請求項7】
前記遺伝子が、少なくとも1つの単離されたグリセオリンを含む前記組成物を投与されていない動物と比較して下方制御され、且つ、AEBP1;ARAF;CBL;CEBPA;CEBPD;CSN2;DOK2;DOK3;EIF4E;FRS3;G6PC;GCG;GCK;GPD2;GRB10;GRB2;GSK3B;IGF2;INS1;ITGA2;ITGA8;LDLR;NCK2;NOS2;NPY;OLR1;PHIP;PIK3CA;PIK3R2;PPP1CA;PRKCI;PTPRF;RETN;SDC1;SHC3;SLC27A4;およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項4に記載の組成物。
【請求項8】
少なくとも1つの単離されたグリセオリンを含む組成物を必要とする動物において、高脂血症、肥満症、過剰コレステロール、心血管疾患、肝疾患、糖尿病またはそれらの組み合わせを治療するための少なくとも1つの単離されたグリセオリンを含む組成物。
【請求項9】
前記少なくとも1つの単離されたグリセオリンが、誘発されたダイズから単離され、且つ、グリセオリンI、グリセオリンII、グリセオリンIIIまたはそれらの組み合わせである、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記少なくとも1つの単離されたグリセオリンが、約100nM〜約50μΜの量で提供される、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記少なくとも1つの単離されたグリセオリンが、動物1匹あたり約1mg/kg/〜動物1匹あたり約100mg/kgの量で提供される、請求項9に記載の組成物。
【請求項12】
糖尿病を治療するために、前記組成物が、少なくとも1つの単離されたグリセオリンを含む組成物を投与されていない動物と比較して、ADIPOQ;DGAT2;GPD1;GYS1;LEP;LPIN1;LPL;PLIN;PPARG;およびそれらの組み合わせからなる群より選択される遺伝子の前記動物における発現を増加させる、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
糖尿病を治療するために、前記組成物が、少なくとも1つの単離されたグリセオリンを含む組成物を投与されていない動物と比較して、前記動物において、総コレステロール(TC)を低下させ、低密度リポタンパク質(LDL)コレステロールおよび超低密度リポタンパク質(VLDL)コレステロールを低下させ、トリグリセリド(TG)を増加させ、またはそれらの組み合わせをなす、請求項11に記載の組成物。
【請求項14】
肥満症を治療するために、前記組成物が、少なくとも1つの単離されたグリセオリンを含む組成物を投与されていない動物と比較して、ACACB;ACAT1;ACOX1;AGPAT2;AHSG;AKT1;AKT2;CAP1;CD36;CEBPB;CRK;DBI;EIF2B1;EIF4EBP1;FBP1;FOS;GPD1;GPAM;HADH;HRASl;ITGA7;LPL;MAP2K1;ORM1;PLIN;PRKAR2B;PTGDS;PTPN1;PTPN11;SORBS1;SREBF1;VEGFA;およびそれらの組み合わせからなる群より選択される遺伝子の前記動物における発現を増加させる、請求項11に記載の組成物。
【請求項15】
肥満症を治療するために、前記組成物が、少なくとも1つの単離されたグリセオリンを含む組成物を投与されていない動物と比較して、AEBP1;ARAF;CBL;CEBPA;CEBPD;CSN2;DOK2;DOK3;EIF4E;FRS3;G6PC;GCG;GCK;GPD2;GRB10;GRB2;GSK3B;IGF2;INSl;ITGA2;ITGA8;LDLR;NCK2;NOS2;NPY;PHIP;PIK3CA;PIK3R2;PPP1CA;PTPRF;RETN;SDC1;SHC3;SLC27A4;およびそれらの組み合わせからなる群より選択される遺伝子の前記動物における発現を減少させる、請求項に11記載の組成物。
【請求項16】
少なくとも1つの単離されたグリセオリンを含む組成物を必要とする動物において、グルコース取り込みを刺激する少なくとも1つの単離されたグリセオリンを含む組成物。
【請求項17】
前記少なくとも1つの単離されたグリセオリンが、誘発されたダイズから単離され、且つ、グリセオリンI、グリセオリンII、グリセオリンIII、またはそれらの組み合わせである、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
前記少なくとも1つの単離されたグリセオリンが、約100nM〜約50μΜの量で提供される請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
前記少なくとも1つの単離されたグリセオリンが、動物1匹あたり約1mg/kg〜動物1匹あたり約100mg/kgの量で提供される、請求項17に記載の組成物。
【請求項20】
前記組成物がインスリンをさらに含むか、またはインスリンを必要とする動物においてグルコース取り込みを刺激するインスリンを含むさらなる組成物も提供される、請求項19に記載の組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公表番号】特表2013−515085(P2013−515085A)
【公表日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−546208(P2012−546208)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【国際出願番号】PCT/US2010/061887
【国際公開番号】WO2011/087857
【国際公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【出願人】(512163819)
【出願人】(512163820)
【出願人】(512163831)オフイス・オブ・テクノロジー・アセツト・マネジメント (1)
【出願人】(512163842)ニユーメ・ヘルス・エルエルシー (1)
【Fターム(参考)】