説明

育苗装置およびそれを備えた育苗システム

【課題】幼苗を養生する環境を高湿度に制御することなく、簡易な方法によって幼苗を養生し、かつ病害伝播のリスクを低減しながら丈夫に育てることができる育苗装置を提供すること。
【解決手段】排水口24を有する灌水トレイ20と、灌水トレイ20に所定温度の温調水Wtを供給する給水部を有しかつ排水口24から排出した灌水トレイ20内の温調水Wtを回収する温調水循環供給手段30と、温調水Wtが循環供給される灌水トレイ20の上に設置される複数の熱伝導性容器40と、熱伝導性容器40内に収容された養生水Waに開放端を浸漬した状態で複数本の幼苗Scを略垂直に保持する苗保持プレート50とを備え、灌水トレイ20内を流れる温調水Wtによって熱伝導性容器40毎に養生水Waの温度を調整して幼苗Scを養生するよう構成されたことを特徴とする育苗装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、育苗装置およびそれを備えた育苗システムに関し、詳しくは、簡易な装置構成で植物の幼苗を丈夫に育てる育苗装置およびそれを備えた育苗システムに関する。
【背景技術】
【0002】
野菜、花卉、樹木等の植物の生産では、苗の需要の季節的な変動によって必要な育苗面積や労働力が大きく変動する。そのため、育苗面積や労働力の季節的な変動を平準化し、効率的に苗の安定供給を図るために、弱光かつ低温の環境下で苗を一定期間貯蔵する技術がある。
このように弱光かつ低温の環境下で貯蔵される苗としては、根付きの苗の他に、根を切断した挿し木苗あるいは断根挿し接ぎ苗(接ぎ木苗)が用いられる。
【0003】
挿し木苗を生産する場合、一般に植物の腋芽や若枝を挿し木として採取して培地に植え込み、低温の環境下で発根するまで養生し、その後上述のように弱光かつ低温の貯蔵庫内で貯蔵する場合がある。この場合、培地へ埋め込んだ直後の挿し木苗(幼苗)は、下端である開放端に根を有していないため吸水能力が低く、水ストレスを受けやすいことから、主に葉からの蒸散による水の損失を抑えるために、一般的に養生環境を高湿度に保つようにしている。
【0004】
一方、接ぎ木苗を生産する場合は、先ず、予め育苗された台木用苗の根部と穂部を切除して台木を準備すると共に、予め育苗された穂木用苗の根部を切除して穂木を準備する。次に、穂木の切断部と台木の穂部側の切断部を筒状の接ぎ木接合具に挿入し、各切断面を密着させて穂木と台木を接合した状態に保持することによって、接ぎ木挿し穂(幼苗)を形成する。次に、接ぎ木挿し穂の開放端(台木側)を成型培地に植え込み、弱光下に置き、で一定期間(例えば数週間)低温貯蔵する場合がある。この際、接ぎ木挿し穂の接合部は完全に繋がっておらず、台木の吸水力も弱いため、穂木の水分の蒸散を防止しかつ水分補給するために、貯蔵庫内を高湿度に維持する必要がある。次に、活着および発根を促進させるために接ぎ木挿し穂を養生しながら徐々に屋外の環境に順化させていく。この養生・順化期間で接ぎ木挿し穂の接合部を活着させると共に台木から発根させる。その後、活着した接ぎ木苗をポット内の培地へ植え込む。
【0005】
また最近では、挿し木の発根を促進させる各種の方法が提案されている。
特許文献1には、挿し木を冷蔵庫内の1〜5℃の空気中に6〜21日間保存して低温処理し、次に挿し木を水揚げ処理し、続いて挿し木の下端を発根剤水溶液に浸漬して発根促進処理を行い、その後、鉢内の培養土に挿し木を植え込み、15〜30℃の水を溜めた受け皿に鉢を定置し、空気雰囲気を80〜90%の相対湿度に調整して挿し木を4〜6日間養生することにより発根させる方法が開示されている。
また、特許文献2には、育苗箱内の挿し床土に挿し木を植え込み、その育苗箱を電熱線を敷設した苗床露地面に載置し、ビニールトンネルで被覆して密閉し、70〜90%の多湿度を保って昼間20〜25℃、夜間15℃程度の温度で加温することにより挿し木を発根させる方法が開示されている。
また、非特許文献1には、弱光かつ低温の環境下で挿し木や接ぎ木挿し穂の開放端を局所的に温い培養液に浸漬させることにより、植物の消耗を抑えつつ効率的に発根を促進させる方法が開示されている。
【0006】
また、特許文献3には、低温高湿度雰囲気の貯蔵室内で灌水方式によって育苗する方法が開示されている。この場合、多段棚の各棚に樹脂製多孔質シートを介して灌水トレイを載置し、各灌水トレイに複数の凹部を有するセルトレイを複数設置し、ポット中の培養土に定植された苗を各セルトレイの各凹部に設置する。また、各灌水トレイの一端側には給水パイプが敷設されており、給水パイプから培養液が灌水トレイ内に供給され、多孔質シートによって培養液はセルトレイの裏面側に均一に広がる。また、セルトレイの各凹部底壁には小穴が形成されており、この小穴から培養液が毛細管現象によって苗の根部に供給される。なお、余分な培養液は、灌水トレイの他端側に形成された排水口から外部に排出される。
【特許文献1】特開2003−304760号公報
【特許文献2】特開平5−328840号公報
【特許文献3】特開2001−346450号公報
【非特許文献1】寺倉、渋谷、外2名、「キュウリ挿し木の低温貯蔵中における短期間の供給培養液の加温処理が貯蔵中の品質および貯蔵後の発根に及ぼす影響」、生物環境調節、42(2)、p.331−337、2004年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のように、培地へ植え込まれた直後の挿し木や接合部が完全に繋がっていない接ぎ木挿し穂(以下、これらを総称して幼苗と称する)は、水分を吸収し難く、水ストレスを受けやすく、萎れやすいため、蒸散による水の損失を抑えるために環境雰囲気を低温かつ高湿度に保って養生する必要があるが、それによって以下の問題が生じている。
(a)低温で高湿にするため特殊な環境制御設備が必要であり、設備コストが高額となる。
(b)幼苗が高湿環境下にあるため、カビなどによる病気にかかり易い。
(c)幼苗を高湿環境下で貯蔵することにより、その後の養生・順化工程において軟弱になり易い。
(d)温室など自然光下で養生する場合は、フィルムで密閉するなどして養生施設内の湿度を高める必要があるが、養生温度環境の制御が難しい。
(e)灌水方式の場合、灌水トレイには多孔質シートよりも数ミリ程度の高さまで培養液の液膜が形成されるため、幼苗が1株でも病気にかかると、病原菌が培養液を介して同一灌水トレイ内の他の幼苗に伝播するおそれがあり、病害伝播のリスクが高い。また、複数の灌水トレイを多段式に設置し、複数の灌水トレイに供給した培養液を循環して使用する場合は、全ての灌水トレイ内の幼苗に病害が伝播するおそれがあり、よりリスクが高まる。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑み、幼苗を養生する環境を高湿度に制御することなく、簡易な方法によって幼苗を養生し、かつ病害伝播のリスクを低減しながら丈夫に育てることができる育苗装置およびそれを備えた育苗システムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かくして、本発明によれば、排水口を有する灌水トレイと、該灌水トレイに所定温度の温調水を給水する給水部を有しかつ前記排水口から排出した灌水トレイ内の温調水を回収する温調水循環供給手段と、温調水が循環供給される灌水トレイの上に設置される複数の熱伝導性容器と、該熱伝導性容器内に収容された養生水に開放端を浸漬した状態で複数本の幼苗を略垂直に保持する苗保持プレートとを備え、灌水トレイ内を流れる温調水によって熱伝導性容器毎に養生水の温度を調整して幼苗を養生するよう構成された育苗装置が提供される。
また、本発明の別の観点によれば、室温を制御可能な空調装置を備えた貯蔵室と、該貯蔵室内に設置された前記育苗装置とを備えた育苗システムが提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、以下の効果を奏する。
(1)幼苗を吸水可能な位置まで養生水に浸漬させた状態で保持することができ、それによって貯蔵庫内を高湿にすることなく幼苗の萎れを軽減しながら、挿し木苗では発根を効率よく促進させることができ、接ぎ木苗では台木と穂木の接合部を効率よく活着させることができる。それに加え、養生環境を低温かつ高湿度に維持するといった特殊で高額な設備が不要であり、設備コストがかからない簡素な装置で幼苗を養生することができる。
(2)貯蔵室内を低温雰囲気に制御することで、水蒸気飽差が小さくなって幼苗の水分蒸散が抑制しやすくなると共に、低温雰囲気下であれば光照射を弱くすることができ、養生設備を簡素化することができる。
【0011】
(3)幼苗を熱伝導性容器毎に養生することができるため、1つの熱伝導性容器内の幼苗が病気にかかっても、他の熱伝導性容器内の幼苗への病害が伝播するのを防止でき、病害伝播のリスクを低減することができる。
(4)灌水トレイ内には複数の熱伝導性容器が設置されるため、循環する温調水の水量を低減することができ、温調水循環供給手段をコンパクトに構成することが可能となり、省スペース化を図り得る。
(5)熱伝導性容器毎に異なる種類の養生水、例えば、水、水に培養液を添加したもの、水に発根促進のための植物ホルモン剤を添加したもの等の養生水を用いることができる。したがって、発根特性の異なる複数種類の植物に応じた最適な養生水を用いることにより、同一の育苗装置において複数種類の幼苗を同時に養生することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の育苗装置は、排水口を有する灌水トレイと、該灌水トレイに所定温度の温調水を給水する給水部を有しかつ前記排水口から排出した灌水トレイ内の温調水を回収する温調水循環供給手段と、温調水が循環供給される灌水トレイの上に設置される複数の熱伝導性容器と、該熱伝導性容器内に収容された養生水に開放端を浸漬した状態で複数本の幼苗を略垂直に保持する苗保持プレートとを備え、灌水トレイ内を流れる温調水によって熱伝導性容器毎に養生水の温度を調整して幼苗を養生するよう構成されたことを特徴とする。
【0013】
本発明が対象とする植物は特に限定されるものではなく、例えばナス、トマト、キュウリ、ピーマン、シシトウ、オクラ、ゴーヤ等の野菜、キク、カーネーション、ガーベラ等の花卉(草本植物)、キョウチクトウ、ウメ、ツバキ、バラ、サクラ、リンゴ、ブドウ、クヌギ、ヤマモモ、アカシア、ユーカリ等の樹木(木本植物)などの植物に本発明は適用でき、かつ挿し木苗、接ぎ木苗のいずれにも適用できる。
【0014】
本発明の育苗装置は、灌水トレイが複数個備えられると共に、複数個の灌水トレイを上下複数段に配置するための多段棚をさらに備えた構成であってもよい。この場合、各段の灌水トレイには、上述したように温調水が循環供給され、複数の熱伝導性容器が載置され、各熱伝導性容器は養生水を収容し、かつ養生水に浸漬された状態で複数本の幼苗を保持する苗保持プレートが載置されることは言うまでもない。
【0015】
前記温調水循環供給手段は、例えば、温調水タンクと、該温調水タンク内の温調水の温度を所定温度に調節する温度調節部と、前記給水部と、灌水トレイの排水口と温調水タンクとを接続する循環パイプとを備え、前記給水部は、灌水トレイ内に設置された散水パイプと、前記温調水タンクと散水パイプとを接続する給水パイプと、前記給水パイプに温調水タンク内の温調水を送るポンプと、給水パイプにおける前記散水パイプの近傍に設けられた流量調整バルブとを有して構成される。
【0016】
温調水タンクは、内部の温調水を保温できる断熱構造で構成されることが好ましく、例えば発泡プラスチックを外張りしたプラスチック製タンクを用いることができる。
散水パイプは、灌水トレイ内に均一に温調水が供給されるよう、例えば、一端側の口が塞がったパイプに長手方向に沿って複数の貫通孔を形成したものであり、灌水トレイの排水口とは反対側に配置されることが好ましい。
【0017】
温度調節部としては、温調水を所定温度に調整できるものであれば特に限定されるものではなく、例えばヒータと、温度制御装置(例えばサーモスタット)等から構成される。なお、育苗装置を空調設備のない場所に設置する場合は、温調水が所定温度より上昇する場合があるため、この場合は温調水を冷却するチラーと呼ばれる冷却装置(冷水作製装置)を併用してもよい。
【0018】
流量調整バルブは、灌水トレイ内に供給する温調水の流量を調整することにより、灌水トレイ内の温調水の温度を調整し、各段の温調水の温度差を小さくするためのものである。つまり、灌水トレイは上の段になる程、温調水タンクからの給水経路が長くなるため温調水の温度が低下しやすい。よって、各段の流量調整バルブを操作して各段毎の灌水トレイ内に供給される温調水の流量を調整することにより、各段の灌水トレイ内の温調水の温度バラツキを無くすることができる。
【0019】
本発明において、前記灌水トレイは、底壁と周囲壁とを有し上方に開口する浅箱形である。灌水トレイには所定温度の温調水が循環供給され、温調水によって複数の熱伝導性容器内の養生水の温度を所定温度に維持する必要があるため、灌水トレイを構成する材料としては、断熱性および遮水性を有する材料が好ましく、さらには加工が容易で低コストであることが好ましく、例えば独立気泡型の発泡スチロール、発泡塩化ビニル等の発泡プラスチックが好適である。
【0020】
灌水トレイは、熱伝導性容器を支持する複数の支持突起を底面に有することが好ましい。このようにすれば、支持突起によって灌水トレイの底面と熱伝導性容器との間に隙間が形成され、この隙間に温調水を流すことができる。したがって、熱伝導性容器の比較的広い面積の底壁に温調水が接触するため、効率よく養生水の温度を調整することができる。
支持突起の形状は特に限定されるものではなく、例えば、一方向に延びる凸条形、あるいは、この凸条を複数に細かく分断した凸部形とすることができる。このようにすれば、支持突起によって温調水を一方向にスムースに流すことができ、灌水トレイ内での温調水の温度勾配を小さく抑えることができる。なお、支持突起は、灌水トレイと一体的に形成されても、あるいは灌水トレイとは別部品であってもよい。
【0021】
また、灌水トレイは、底面の一端側に堰部を有し、前記排水口は、灌水トレイの外周縁と前記堰部との間に配置された構成としてもよい。このようにすれば、灌水トレイ内に連続的に温調水を供給しても、水面が堰部より高くなれば温調水は堰部を越えて排水口から排出され循環に供されるため、灌水トレイ内の温調水の水面を一定高さに維持することができる。また、灌水トレイ内の温調水がある程度の水位とされることにより、熱伝導性容器の養生水をより効率よく所定温度に調整することができる。
【0022】
また、灌水トレイは、底面の前記一端側から反対側の他端側へ向かって上り勾配で傾斜する傾斜面部を有し、前記堰部は、一部に切込み部を有する構成であってもよい。このようにすれば、清掃時に灌水トレイ内の温調水を全て排水する場合、温調水は傾斜面部を流れ落ちて堰部の切込み部から排水口へ自然と排出するため、排水が容易となる。この場合、前記支持突起は、傾斜面部の傾斜を相殺して熱伝導性容器を水平に支持するよう構成されていてもよい。このようにすれば、支持突起によって熱伝導性容器は水平に支持されるため、熱伝導性容器内の養生水の深さが均一となり、幼苗の開放端を均一な深さで養生水に浸漬し易くなる。
【0023】
本発明において、熱伝導性容器は、底壁と周囲壁とからなる上方に開口した箱形容器であり、その構成材料は、熱伝導率がよく、さらには耐水性に優れた金属材料が好ましく、例えばステンレスが好ましい。
【0024】
また、苗保持プレートは、熱伝導性容器上または熱伝導性容器内の養生水の液面上に載置できるよう、熱伝導性容器と略等しい形状および大きさで、かつ幼苗の開放端を挿する複数の小孔を有する断熱性プレートからなるものが好ましい。この苗保持プレートは、幼苗を保持する役割以外に、熱伝導性容器の蓋としての役割も兼ねており、養生水の保温、蒸発抑制および養生水への異物混入防止としても機能する。なお、苗保持プレートを熱伝導性容器にセットする形態について詳しくは後述する。
苗保持プレートを構成する材料は、灌水トレイと同様に、断熱性および遮水性を有し、さらには加工が容易で低コストである独立気泡型の発泡スチロール、発泡塩化ビニル等の発泡プラスチックが好適である。
【0025】
多段棚は、フレームと、該フレームに取り付けられた天板および上下複数段の棚板とを有する構造とすることができ、左右の側板や背板をさらに有していてもよい。
また、苗に光を照射する必要がある場合、多段棚の天板の下面および棚板の下面に配置されて幼苗に光を照射する光源を備えてもよく、さらには、多段棚における天板および棚板で仕切られた空間の空気が光源の発熱によって暖められる場合は該空間を強制的に通気させるファンを背板に設けてもよい。なお、光源による光量が少ない場合はファンを設けなくてもよい。
【0026】
本発明の育苗装置は、上述の構成要素以外に、灌水トレイの外周縁と灌水トレイ上に設置された熱伝導性容器との間を覆う断熱性蓋をさらに備えてもよい。この断熱性蓋によって、灌水トレイ内からの放熱を抑制し、熱効率を高めることができる。
【0027】
本発明の育苗装置は、上述の構成要素を適宜組み合わせることができる。
また、室温を制御可能な空調装置を備えた貯蔵室内に上述の育苗装置を設置して、育苗システムを構成することもできる。この育苗システムによれば、外部から隔離された貯蔵室内において最適な雰囲気温度で幼苗を養生することができ、より病害伝播のリスクを低減することができる。
以下、本発明の実施形態を図面を参照しながら詳しく説明する。
【0028】
(実施形態1)
図1は本発明の実施形態1の育苗装置を備えた育苗システムを示す概略構成図であり、図2は実施形態1の育苗装置の概略構成を示す正断面図である。
図1に示すように、育苗システムは、室温を制御可能な空調装置を備えた貯蔵室Rと、この貯蔵室R内に設置された育苗装置1とを備える。なお、図1において、符号2および3は空調装置の室内機および室外機を表している。
【0029】
図1および図2に示すように、育苗装置1は、多段棚10と、多段棚10に上下複数段に設置された複数の灌水トレイ20と、各段の灌水トレイ20に温調水Wtを循環供給する温調水循環供給手段30と、各段の灌水トレイ20内に設置される養生水Waを収容した熱伝導性容器40と、熱伝導性容器40内の養生水Waに開放端を浸漬した状態で複数本の挿し木苗(幼苗)Scを略垂直に保持する苗保持プレート50と、灌水トレイ20の外周縁と灌水トレイ20上に設置された熱伝導性容器40との間を覆う断熱性蓋60とを備える。
【0030】
多段棚10は、左右の側板11、11と、左右の側板11、11を連結する天板12および上下複数段に配置された棚板13と、左右の側板11、11の後端に取り付けられた通気穴14aを有する背板14とを有する。実施形態1では、天板12および4枚の棚板13によって上下5段の収納室15が形成された多段棚10の場合を例示しており、各段の収納室15の大きさおよび棚数は、1つの養生装置にて養生処理すべき苗の本数や作業性等を考慮して決定すればよく、例えば、収納室15の上下幅は30〜35cm程度、左右幅は125〜135cm程度、後述のファン72までの奥行きは60〜70cm程度、棚数は3〜6枚程度が適当であるが、当然ながらこれらに限られるものではなく、設計変更は自由である。
【0031】
また、この多段棚10において、養生中の幼苗Scに光を照射できるよう、下から2段目〜4段目の収納室15における棚板13の下面および最上段の収納室15における天板12の下面には、蛍光灯あるいはLED等からなる光源71が設置されていると共に、光源71が設けられている収納室15においては背板14の前記通気穴14aの部分に前記ファン72が設置されている。このファン72は、光源71が発光することにより生じる熱で収納室15内の雰囲気温度が上昇し、それによって幼苗Scの葉から水分が蒸散するのを抑制するために、収容室15内を通気するためのものである。また、ファン72の前方を通気可能に覆う通気穴を有するカバー72aが背板14に取り付けられている。なお、図示省略するが、ファンはケースと一体化されたものを用いてもよく、この場合、背板14の通気穴の部分の後面にファンのケースを取り付けることができる。また、幼苗Scに照射する光源71の光量が少なくてよい場合は、収納質15内の雰囲気温度はそれほど上昇しないため、ファン72aは不要である。
【0032】
図3は実施形態1における灌水トレイ20上に熱伝導性容器40が設置された状態を示す図であって、図3(a)は正断面図であり、図3(b)は右側断面図である。また、図4は実施形態1における灌水トレイ20を正面側から見た斜視図である。
灌水トレイ20は、長方形の底壁21と、底壁21の外周縁から立ち上がる周囲壁22とを有する。この灌水トレイ20は、全体が発泡スチロールにて多段棚10の収納室15とほぼ同じ大きさに形成されている。例えば、底壁21の左右幅は120〜130cm程度、前後幅は60〜65cm程度、周囲壁の高さは8〜12cm程度とされている。
【0033】
灌水トレイ20の底壁21の底面は、周囲壁22の後壁部22aから前壁部22bへ向かって下り勾配で傾斜する傾斜面部21aからなり、周囲壁22の前壁部22bと傾斜面部21aとの間には溝幅2〜5mm程度の排水溝23が形成されると共に、排水溝23の手前側の端部には排水口24が形成されている。
また、灌水トレイ20は、排水口24を多段棚10の棚板13よりも手前にせり出させた状態で設置されており、排水口24と後述する循環パイプ35とを接続するために、例えば、排水口24に下方から筒状接続部24bが圧入されて水漏れすることなく接続されている。
【0034】
また、灌水トレイ20は、傾斜面部21aと排水溝23との間には、中央に切込み部25aを有する堰部25が形成されている。この堰部25の高さは15〜20mm程度、厚みは5〜10mm程度が適当である。
さらに、傾斜面部21aには、勾配に沿って延びる凸条形の支持突起26が、平行かつ等間隔で複数本並列して形成されている。この支持突起26は、傾斜面部21aの勾配を相殺するよう、下り勾配側へ向かうにつれて連続的に傾斜面部21aからの高さが高くなっている。この支持突起26の長さは450〜550mm程度、幅は15〜20mm程度、最も高い部分の高さは15mm前後、最も低い部分の高さは5mm前後、高低差は10mm前後が適当である。
【0035】
この支持突起26によって、支持突起26上に載置された熱伝導性容器40と灌水トレイ20の傾斜面部21aとの間には隙間が形成され、この隙間が灌水トレイ20内に供給された温調水Wtが流れるための流路となる。また、傾斜面部21aは、灌水トレイ20内の温調水Wtを全て排水する場合に、温調水Wtを堰部25側へ集める機能を有しており、これにより温調水Wtが切込み部25aから排水口24へ容易に排出される。
【0036】
図1〜図4に示すように、温調水循環供給手段30は、温調水タンク31と、温調水タンク31内の温調水Wtの温度を所定温度に調節する温度調節部32と、灌水トレイ20内に設置された散水パイプ33と、温調水タンク31と散水パイプ33とを接続する給水パイプ34と、灌水トレイ20の排水口24と温調水タンク31とを接続する循環パイプ35と、給水パイプ34に温調水タンク31内の温調水Wtを送るポンプ36と、給水パイプ34における散水パイプ33とポンプ36との間に設けられた流量調整バルブ37とを備える。
【0037】
温調水タンク31は、例えば、発泡スチロール製の箱本体31aと蓋体31bとからなり、多段棚10の最下段の収納室15内に設置されている。
温度調節部32は、温調水タンク31内に設置されたヒータ32aおよびサーモスタットc32bからなる。
ポンプ36は、温調水タンク31内に設置される水中ポンプである。
温調水Wtとしては、通常、水道水や地下水が使用される。
【0038】
散水パイプ33は、ストレートな樹脂製パイプ(例えば塩化ビニル樹脂製パイプ)の一方の開口に栓をして塞ぎ、パイプの長手方向に沿って複数個の貫通孔33aを形成したものであり、各段の灌水トレイ20の傾斜面部21aの最上縁に沿って左右方向に設置されている。
給水パイプ34は、多段棚10の左の側板11の後端に沿って取付金具にて取り付けられ、その下端はポンプ36の吐出口と接続され、上端は最上段の灌水トレイ20に配置された散水パイプ34の開口端と接続され、途中部は分岐してその他の段の散水パイプ34と接続されている。そして、給水パイプ34における各段の散水パイプ34の近傍である育苗装置1の手前側に流量調整バルブ37が設けられている。
循環パイプ35は、多段棚10の右の側板11の前端に沿って取付金具にて取り付けられ、その下端は温調水タンク31に接続され、上端は最上段の灌水トレイ20の排水口24に接続され、途中部は分岐してその他の段の灌水トレイ20の排水口24に接続されている。
【0039】
熱伝導性容器40は、長方形の底壁と、底壁の外周縁から立ち上がる周囲壁とを有する上方に開口するステンレス製の直方体形容器であり、灌水トレイ20の堰部25と散水パイプ33との間に設置される大きさに形成されている。本実施形態1では、各段の灌水トレイ20に奥と手前に2つの熱伝導性容器40が設置された場合を例示しているが、多段棚10の収容室15、灌水トレイ20および熱伝導性容器40の大きさや作業性等を考慮して、1つの灌水トレイ20に3つ以上の熱伝導性容器40を設置するようにしてもよい。1つの熱伝導性容器40のサイズとしては、例えば、長辺580〜620mm程度、短辺550〜580mm程度、高さ50〜65mm程度が適当であるが、当然これに限られるものではない。
【0040】
苗保持プレート50は、厚み5〜10mm程度の長方形の発泡スチロールプレートからなり、幼苗Scの胚軸径と同程度の大きさ(直径3〜5mm程度)の小孔51が複数個マトリックス状に形成されている(図5参照)。この苗保持プレート50の大きさは、苗の種類、1枚の苗保持プレート50にて保持する苗本数等に応じて設定される。本実施形態1では、苗の種類が挿し木苗の場合を例示している。
【0041】
図1〜図3に示すように、挿し木苗Scの場合、少なくとも開放端(下端)の切断面が熱伝導性容器40内の養生水Waに浸漬していればよいため、苗保持プレート50は少なくとも長辺が熱伝導性容器40の開口縁に載置できる長さに形成される。なお、実施形態1では、苗保持プレート50は長辺および短辺が熱伝導性容器40の長辺および短辺以上の長さに形成されて1枚で熱伝導性容器40の開口部を完全に覆う大きさに形成された場合を例示しているが、図5に示すように、苗保持プレート50は複数枚にて熱伝導性容器40を覆う大きさに形成されてもよい。この場合の苗保持プレート50の大きさとしては、長辺580〜620mm程度、短辺185〜195mm程度が適当であるが、当然これに限られるものではない。
【0042】
養生水Waとしては、任意に培養成分や植物成長調節物質等が適量添加された水道水が用いられる。培養成分としては、一般的に育苗に有効な窒素、リン、カリウム等の成分(例えば、太洋興業株式会社製:ハイスピリット)が挙げられ、植物成長調節物質としてはオーキシン類等が挙げられる。
養生水Waは、液面が熱伝導性容器40の高さ6〜8分目程度になる量が収容されることが適当である。
【0043】
断熱性蓋60は、厚み5〜10mm程度の断面L字形の発泡スチロール枠体からなり、外観の大きさおよび形状は灌水トレイ20とほぼ同じであり、枠の開口は苗保持プレート50の2枚分の大きさとほぼ同じである。
この断熱性蓋60を灌水トレイ20の外周壁22の上縁に設置することにより、断熱性蓋60の開口端縁が、灌水トレイ20内に設置された2つの熱伝導性容器40上の苗保持プレート50の外周縁と接触し、灌水トレイ20内が外部から遮断されて保温される。
【0044】
次に、この育苗装置1を備えた育苗システムの作動状態について図1〜図4を参照しながら説明する。
図1に示すように、貯蔵庫R内で多数本の幼苗Scを養生するに際して、貯蔵庫R内の室温が空調装置によって所定温度、例えば0〜20℃に調整される。
一方、図2および図3に示すように、育苗装置1においては、各段の光源71が発光し、各段のファン72が回転して各収納室15が通気さる。ファン72が回転することにより、貯蔵室Rに図1中の矢印で示すような空気の対流が生じ、育苗装置1内の各収納室15を含む貯蔵室R内の雰囲気温度は均一となる。なお、育苗に際して光照射が不要であれば、光源71およびファン72は駆動しない。また、育苗装置1においては、温調水タンク31内の温調水Wtが温度調節部32にて所定温度に調整される。このとき、温調水Wtは養生水Waを加温するためのものであり、養生水Waの温度は養生する挿し木苗Scの種類に適した温度とされるため、養生水Waを所定温度(例えば、15〜25℃程度)に加温できる温度(例えば、16〜27℃程度)に温調水Wtを調整する。
【0045】
温度調整された温調水タンク31内の温調水Wtは、ポンプ36によって汲み上げられて給水パイプ34を介して各段の散水パイプ33に送られ、散水パイプ33の複数の貫通孔33aからほぼ等しい流量で温調水Wtが噴出して各段の灌水トレイ20内に均一に供給される。
灌水トレイ20内に供給された温調水Wtは、熱伝導性容器40の後端側から傾斜面部21aを下り、堰部25によって堰き止められ、堰部25の高さまで水量が溜まり、余剰分は堰部25を越えて排出口24から排出され、循環パイプ35を通って温調水タンク31へ戻され、所定温度に調整されて再度灌水トレイ20内へ供給される。なお、この間、灌水トレイ20内の温調水Wtは堰部25の切込み部25aからも排水されている。
【0046】
このように、堰部25によって灌水トレイ20内には温調水Wtが一定流量で供給されながら一定高さまで溜められ、かつ供給される流量と同じ流量の温調水Wtが堰部25を越えて排出する。このとき、温調水Wtは灌水トレイ20内を10cm/sec以上の流速で流れるため、灌水トレイ20内における上流側と下流側の温調水Wtの温度勾配はほとんどない。
ところで、灌水トレイ20は上の段になる程、温調水タンク30からの給水経路が長くなるため温調水Wtの温度が低下しやすい。よって、各段の灌水トレイ20内の温調水Wtの温度バラツキを無くには、各段の流量調整バルブ37によって各段毎の灌水トレイ20内に供給される温調水Wtの流量を調整する。すなわち、上の段になる程流量を増加させていく調整を行う。
【0047】
灌水トレイ20内の堰部25の高さまで溜められた温調水Wtによって、熱伝導性容器40を介して養生水Waが所定温度に加温される。このとき、熱伝導性容器40の底面からの養生水Waの液面高さが、該底面からの温調水Wtの液面高さと同じか、それ以下であると、効率よく養生水Waを所定温度まで加温することができるが、温調水Wtの温度や流量調整等を行って養生水Waを所定温度まで加温することができるのであれば、養生水Waの液面高さが温調水Wtの液面高さよりも(例えば2倍程度)高くても構わない。なお、このような液面高さの設定は、堰部25の高さ、支持突起26の高さ、熱伝導性容器40の高さ等の調整によって決定することができる。
【0048】
この育苗装置1によれば、0〜20℃の雰囲気中で、各熱伝導性容器40内の挿し木苗Scは開放端が15〜30℃の養生水Waに浸かった状態で養生されるため、発根が促進され、かつ根以外の成長は抑制される。
この際、挿し木苗Scの開放端を浸漬させるための養生水Waを熱伝導性容器40毎に分離し、かつ養生水Waを温調水Wtにて間接的に加温するように構成されているため、1つの熱伝導性容器40内の挿し木苗Scが病気になったとしても、養生水Waを通じて隣の熱伝導性容器40内の挿し木苗Scに病害が伝播することがなく、病害による損失を最小限に留めることができる。
【0049】
また、堰部25を設けて灌水トレイ20内の特定領域に温調水Wtを溜めるようにしたこと、およびこの特定領域に養生水Waを収容した熱伝導性容器40を設置することによって、灌水トレイ内に所定温度の養生水を循環供給して挿し木苗Scの開放端を浸漬させて養生する場合よりも、大幅に循環水の量を低減することができる。この結果、循環水タンクの小型化、それに伴う低コスト化と省スペース化、循環水を所定温度に調整する際の省エネルギー化等を図ることができる。また、苗保持プレート50および断熱性蓋60によって養生水Waおよび温調水Wtを外部から遮断して保温することも、省エネルギー化に寄与している。
【0050】
(実施形態2)
図6は実施形態2における灌水トレイ20上に熱伝導性容器40が設置された状態を示す図であって、図6(a)は右側断面図であり、図6(b)は苗保持プレートの拡大断面図である。
この実施形態2の育苗装置は、接ぎ木苗(幼苗)S2を養生するためのものであり、主として苗保持プレート150を養生水Waの液面に浮上させた状態で接ぎ木苗S2を保持すること以外は、実施形態1と同様である。なお、図5において、実施形態1と同様の構成要素には同一の符号を付している。以下、実施形態2における実施形態1と異なる点を主に説明する。
【0051】
接ぎ木苗Sgは、台木S1と穂木S2の斜めにカットされた接合面S3を接触させた状態で、接合面S3の周囲が弾性を有する筒状の接合具80にて支持されており、接合具80を台木S1側から苗保持プレート150の小孔に差し込むことにより保持されている。これによって、接ぎ木苗Sgの接合面S3は、苗保持プレート150の厚み中に位置する。なお、この苗保持プレート150の小孔の直径は、接合具80の直径とほぼ等しい。
接ぎ木苗Sgの場合、接合直後の台木S1は給水能力が弱いため、接合面S3を養生水Waに浸漬させることにより、接合面S3から水分および養分を吸収させながら、接合面S3を活着させる必要がある。
【0052】
したがって、実施形態2では、苗保持プレート150を熱伝導性容器40の内側領域よりも僅かに小さい大きさに形成し、複数本の接ぎ木苗Sgを保持した苗保持プレート150を熱伝導性容器40内の養生水Waの液面上に載置する。これにより、養生水Waは接合具80と台木S1の間の隙間を毛細管現象により接合面S3まで上昇するため、接ぎ木苗Sgは接合面S3から下の部分が養生水Waに浸かった状態で養生される。なお、枠状の断熱性蓋160は、灌水トレイ20の外周壁22と熱伝導性容器40の外周壁の上に載置されている。この断熱性蓋160は、1枚で構成してもよいが、熱伝導性容器40毎に対応した複数枚にて構成してもよい。
この場合も、実施形態1で説明したように、養生水Waは所定温度(例えば15〜35℃程度)に加温され、雰囲気温度は0〜20℃程度に調整されるため、接合面S3の活着が促進され、かつ苗の成長は抑制される。
【0053】
(他の実施形態)
1.実施形態1および2では、育苗装置にて同じ種類の幼苗を養生する場合を例示したが、各段の灌水トレイに異なる種類の幼苗を養生するようにしてもよい。さらには、同じ段の灌水トレイ内でも複数の熱伝導性容器にて異なる種類の幼苗を養生させるようにしてもよい。この場合、苗の種類に応じた養生水を使用することができる。このようにすれば、苗の少量多品種生産に対応することができる。
2.実施形態1のように、熱伝導性容器40の開口部より大きい苗保持プレート50を用いる場合、灌水トレイ20の外周壁22の高さと、灌水トレイ20内に設置した熱伝導性容器40の外周壁の高さを一致させることにより、断熱性蓋60を省略し、苗保持プレート50によって灌水トレイ20の外周壁と熱伝導性容器40の外周壁の間を覆うようにしてもよい。
3.実施形態1および2では、灌水トレイ20の傾斜面部21aに支持突起26を形成した場合を例示したが、支持突起26の位置に線状の凹溝を形成してもよい。この場合、各凹溝内に温調水がスムースに流れ込むように、散水パイプ33の位置から堰部25まで延びる凹溝を形成することが好ましい。また、傾斜面部21aの堰部25に沿った位置にも溝を形成し、この溝を傾斜面部21aの勾配方向に延びる凹溝と接続させることにより、灌水トレイ20の排水時に凹溝に水が残留することがない。
4.実施形態1および2では、多段棚10の最下段の収納室15に温調水タンク30を設置した場合を例示したが、温調水タンク30を床下に埋設し、最下段の収納室15に灌水トレイ20、熱伝導性容器40等を設置して養生スペースとして活用してもよい。
5.貯蔵室R内の雰囲気温度を、例えば0〜20℃に調整する際、空調装置によって結露水が回収される。この結露水は、苗からの蒸散によるものや、温調水および養生水が蒸発したものであるため、空調装置(室内機2)に生じた結露水を温調水タンク30内に戻して蒸発減少分を補給するように構成してもよい。
6.実施形態1および2では、灌水トレイ20における熱伝導性容器を設置する底面部分が傾斜面部21aである場合を例示したが、この底面部分は傾斜せず底壁下面と平行な水平面でもよい。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の実施形態1の育苗装置を備えた育苗システムを示す概略構成図である。
【図2】実施形態1の育苗装置の概略構成を示す正断面図である。
【図3】実施形態1における灌水トレイ上に熱伝導性容器が設置された状態を示す図であって、図3(a)は正断面図であり、図3(b)は右側断面図である。
【図4】実施形態1における灌水トレイを正面側から見た斜視図である。
【図5】本発明における苗保持プレートを熱伝導性容器上に設置する状態を示す斜視図である。
【図6】実施形態2における灌水トレイ上に熱伝導性容器が設置された状態を示す図であって、図6(a)は右側断面図であり、図6(b)は苗保持プレートの拡大断面図である。
【符号の説明】
【0055】
1 育苗装置
10 多段棚
11 側板
12 天板
13 棚板
20 灌水トレイ
21a 傾斜面部
24 排水口
25 堰部
26 支持突起
30 温調水循環供給手段
31 温調水タンク
32 温度調節部
33 散水パイプ
34 給水パイプ
35 循環パイプ
36 ポンプ
37 流量調整バルブ
40 熱伝導性容器
50、150 苗保持プレート
51 小孔
60、160 断熱性蓋
71 光源
72 ファン
R 貯蔵室
Sc 挿し木苗(幼苗)
Sg 接ぎ木苗(幼苗)
Wa 養生水
Wt 温調水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排水口を有する灌水トレイと、該灌水トレイに所定温度の温調水を給水する給水部を有しかつ前記排水口から排出した灌水トレイ内の温調水を回収する温調水循環供給手段と、温調水が循環供給される灌水トレイの上に設置される複数の熱伝導性容器と、該熱伝導性容器内に収容された養生水に開放端を浸漬した状態で複数本の幼苗を略垂直に保持する苗保持プレートとを備え、灌水トレイ内を流れる温調水によって熱伝導性容器毎に養生水の温度を調整して幼苗を養生するよう構成されたことを特徴とする育苗装置。
【請求項2】
前記灌水トレイが複数個備えられると共に、複数個の灌水トレイを上下複数段に配置するための多段棚をさらに備えた請求項1に記載の育苗装置。
【請求項3】
前記温調水循環供給手段が、温調水タンクと、該温調水タンク内の温調水の温度を所定温度に調節する温度調節部と、前記給水部と、灌水トレイの排水口と温調水タンクとを接続する循環パイプとを備え、
前記給水部は、灌水トレイ内に設置された散水パイプと、前記温調水タンクと散水パイプとを接続する給水パイプと、前記給水パイプに温調水タンク内の温調水を送るポンプと、給水パイプにおける前記散水パイプの近傍に設けられた流量調整バルブとを有する請求項1または2に記載の育苗装置。
【請求項4】
前記灌水トレイ内の温調水の温度または前記熱伝導性容器内の養生水の温度を検出する温度検出部をさらに備えた請求項1〜3のいずれか1つに記載の育苗装置。
【請求項5】
前記灌水トレイは、底面に前記熱伝導性容器を支持する複数の支持突起を有する請求項1〜4のいずれか1つに記載の育苗装置。
【請求項6】
前記灌水トレイは、底面の一端側に堰部を有し、
前記排水口は、灌水トレイの外周縁と前記堰部との間に配置された請求項1〜5のいずれか1つに記載の育苗装置。
【請求項7】
前記灌水トレイは、底面の前記一端側から反対側の他端側へ向かって上り勾配で傾斜する傾斜面部を有し、
前記堰部は、一部に切込み部を有する請求項6に記載の育苗装置。
【請求項8】
前記支持突起が、前記傾斜面部の傾斜方向に沿って延び、かつ傾斜面部が下方へ傾斜するにつれて高さが高くなる凸条である請求項7に記載の育苗装置。
【請求項9】
前記灌水トレイは断熱材からなり、
前記苗保持プレートは、熱伝導性容器上または熱伝導性容器内の養生水の液面上に載置可能な形状および大きさで、かつ幼苗の開放端を挿する複数の小孔を有する断熱性プレートからなる請求項1〜8のいずれか1つに記載の育苗装置。
【請求項10】
前記灌水トレイの外周縁と灌水トレイ上に設置された熱伝導性容器との間を覆う断熱性蓋をさらに備えた請求項1〜9のいずれか1つに記載の育苗装置。
【請求項11】
前記多段棚が、フレームと、該フレームに取り付けられた天板および上下複数段の棚板とを有してなり、
前記天板の下面および棚板の下面に配置されて幼苗に光を照射する光源をさらに備えた請求項2〜10のいずれか1つに記載の育苗装置。
【請求項12】
室温を制御可能な空調装置を備えた貯蔵室と、該貯蔵室内に設置された前記請求項1〜11のいずれか1つに記載の育苗装置とを備えた育苗システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−34055(P2009−34055A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−202060(P2007−202060)
【出願日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成18年度、農林水産省、農林水産研究高度化事業委託研究、産業再生法第30条の適用を受ける特許出願)
【出願人】(000204099)太洋興業株式会社 (30)
【Fターム(参考)】