説明

肺への組成物の送達

【課題】組成物の肺への送達方法及びそれに使用する肺カテーテルの提供。
【解決手段】本発明は、肺血管系(すなわち肺動脈および肺静脈)を利用した、非外科的経皮的アプローチによる組成物の肺への送達方法における肺カテーテルの使用に関する。また本発明は組成物の肺特異的送達を可能にする方法、および配置可能なアームを含むカテーテルにも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
本発明は肺への組成物の送達に関する。
【背景技術】
【0002】
肺は、胸部に位置する大きな複数の葉からなる器官で、各肺(すなわち右肺および左肺)は3つの主な構成要素から成っている:気管支、肺動脈および肺静脈、ならびに肺実質である。肺への主な血流は肺動脈幹を通るが、これは心臓の右心室から酸素化されていない血液を送り込む。肺動脈幹は左右の肺動脈に分岐し、これがそれぞれさらに分岐して、左右の肺の各々の葉および区域への動脈となる。これらの動脈を流れる血液は、肺の肺胞に到達するが、ここでは赤血球は肺胞細胞の薄い膜および毛細血管の内皮細胞によってのみ、空気から隔てられている。ここで、酸素を受け取り、二酸化炭素を捨てる。その後、酸素化された血液は、肺静脈を通って心臓の左心房へ戻る。
【0003】
各肺へは1本の肺動脈しか通じていないが、肺静脈は各肺に通常2本ずつある(すなわち右肺に2本の肺静脈、左肺に2本の肺静脈)。図1に示した肺の模式図は、左右の肺へ向かう主要な血管と左右の肺から出る主要な血管を示している。図2は心臓を通る血液の流れと左右の肺動脈および肺静脈の関係を示す模式図である。
【0004】
酸素を体中の細胞に届けるという重要な役割を担っていることを考えると、疾病または損傷によって肺の片方または両方の機能が損なわれると、健康上深刻な問題になる。肺の疾病は先天性であるか、環境因子によって誘導されたり悪化したりすることがある。大気汚染、タバコの煙、およびその他の有害な空中浮遊物質(例えばアスベスト)は、慢性空気流閉塞、塵肺、肺炎、拘束性肺疾患(浸潤性肺疾患とも呼ばれる)、および原発性または転移性肺癌を含むがこれらに限定されることのない様々な肺の疾病に寄与する。したがって、治療用組成物(例えば薬剤)の肺への送達を容易にする方法は、肺の疾病の治療、または少なくともその症状の緩和に有用であると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第5,584,803号
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Brown et al., Heart 79:24-28, 1998
【非特許文献2】Kinoshita et al., Br. Heart J. 69(4):332-326, 1993
【非特許文献3】Feldman et al., Cathet.Cardiovasc. Diagn. suppl 2:26-34, 1994
【非特許文献4】Moore et al., Am. Heart J.130(6):1245-1249, 1995
【非特許文献5】The Physician’s Desk Reference, Medical Economics Co. Inc., Montvale, NJ,1998
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明の概要
一般に、本発明は肺循環を利用した非外科的、経皮的アプローチによって肺への組成物の送達を容易にするための装置およびこの装置の使用に関する。
【0008】
したがって、第1の局面では、本発明は肺への組成物の送達方法における、肺動脈カテーテルおよび肺静脈カテーテルの使用を特徴とし、該方法は以下の段階を含む:(a) 肺へ通じる肺動脈に第1の非外科的経皮的経路を通して肺動脈カテーテルを挿入する段階で、該肺動脈カテーテルは挿入された肺動脈を閉塞する配置可能な手段を含む段階;(b) 肺から出る肺静脈に第2の非外科的経皮的経路を通して肺静脈カテーテルを挿入する段階で、該肺静脈カテーテルは挿入された肺静脈を閉塞する配置可能な手段を含む段階;および(c) 肺動脈カテーテルおよび肺静脈カテーテルからなる群のうちの少なくとも1つを通して肺へ組成物を送達する段階。
【0009】
1つの態様では、肺へ送達される組成物は、肺動脈カテーテルおよび肺静脈カテーテルからなる群のうちの少なくとも1つによって回収されるが、送達用カテーテルと回収用カテーテルとは異なる。別の態様では、送達用カテーテルは回収用カテーテルに接続され、該回収用カテーテルによって回収される組成物は、送達用カテーテルによって肺へ戻される。好ましくは、何本かの(例えば、2またはそれ以上、例えば3または4)肺静脈が肺から出る。
【0010】
本発明の第1の局面の別の態様では、段階(b)はさらにいくつかの肺静脈カテーテルを肺から出るいくつかの肺静脈に挿入する段階を含み、ここで、各肺静脈カテーテルは挿入された肺静脈を閉塞する配置可能な手段を含み、肺静脈カテーテルの数は、肺から出る肺静脈の数と等しく、1本の肺静脈に複数の肺静脈カテーテルが挿入されることはない。好ましくは、送達する段階は、肺動脈カテーテルおよび少なくとも1本の肺静脈カテーテルからなる群のうちの少なくとも1つを通して行われる。好ましくは、肺に送達される組成物は、肺動脈カテーテルおよび少なくとも1つの肺静脈カテーテルからなる群のうちの少なくとも1つによって回収されるが、送達用カテーテルと回収用カテーテルとは異なる。別の態様では、送達用カテーテルは回収用カテーテルに接続され、回収用カテーテルによって回収される組成物は、送達用カテーテルによって肺へ戻される。
【0011】
本発明の第1の局面の別の態様では、肺静脈カテーテルはいくつかの配置可能なアームをさらに含み、肺静脈カテーテルの配置可能なアームの数は、肺から出る肺静脈の数より1つ少ない数と等しい。別の態様では、段階(b)は肺から出るいくつかの肺静脈に肺静脈カテーテルのいくつかの配置可能なアームを挿入する段階をさらに含み、各々の配置可能なアームは配置されると、挿入された肺静脈を閉塞する配置可能な手段を含み、1つの肺静脈には複数の配置可能なアームが挿入されることはない。好ましくは、送達する段階は、肺動脈カテーテル、肺静脈カテーテル、および肺静脈カテーテルの少なくとも1つの配置可能なアームからなる群のうちの少なくとも1つを通して行われる。好ましくは、肺に送達される組成物は、肺動脈カテーテル、肺静脈カテーテル、および肺静脈カテーテルの少なくとも1つの配置可能なアームからなる群のうちの少なくとも1つを通して回収されるが、送達用カテーテルと回収用カテーテルとは異なる。別の態様では、送達用カテーテルは、回収用カテーテルに接続され、回収用カテーテルによって回収される組成物は、送達用カテーテルによって肺へ戻される。
【0012】
本発明の第1の局面の様々な態様では、肺動脈カテーテルまたは肺静脈カテーテルは、従来の導入器のシースを介する挿入に適合するか、ガイドワイヤを用いた挿入に適合するか、圧力モニター用のゲージを備えているか、流速モニター用の流量計を備えているか、少なくとも部分的には放射線不透過性、または閉塞する配置可能な手段より遠位にポートと通じる管腔をさらに含む。好ましくは、第1の非外科的経皮的経路または第2の非外科的経皮的経路は、超音波ガイダンス、X線ガイダンス、および磁気共鳴ガイダンスからなる群より選択されるガイダンス法によって視覚化される。別の態様では、第1の非外科的経皮的経路は静脈内アプローチであり、第2の非外科的経皮的は動脈内アプローチである。
【0013】
第2の局面では、本発明は (a) 非外科的経皮的経路を通して肺の血管に肺カテーテルを挿入する段階で、肺カテーテルは挿入された血管を閉塞するための配置可能な手段を含む段階と; (b) 肺カテーテルを通して肺へ薬剤を送達する段階とを含む、肺へ薬剤を送達する方法における肺カテーテルの使用を特徴とする。様々な態様では、非外科的経皮的経路は、超音波ガイダンス、X線ガイダンス、および磁気共鳴ガイダンスからなる群より選択されるガイダンス法によって可視化され、非外科的経皮的経路は、静脈内アプローチおよび動脈内アプローチからなる群より選択される。別の態様では、肺カテーテルは、従来の導入器のシースを通した挿入に適合するか、ガイドワイヤを用いた挿入に適合するか、圧力モニター用のゲージを備えているか、流速モニター用の流量計を備えているか、少なくとも部分的には放射線不透過性、または閉塞する配置可能な手段より遠位のポートと通じる管腔をさらに含む。肺の血管は、肺に血液を供給する肺動脈、または肺から排出する肺静脈である可能性がある。好ましくは、いくつかの(例えば、2またはそれ以上、例えば3または4)肺静脈が肺から出る。
【0014】
本発明の第2の局面の別の態様では、肺カテーテルはいくつかのカテーテルをさらに含み、肺カテーテルのカテーテル数は、肺から出る肺静脈の数と等しい。別の態様では、肺カテーテルのうち2本以上のカテーテルが1つの肺静脈に挿入されることのないように、肺カテーテルのうちいくつかのカテーテルがいくつかの肺静脈に挿入され、肺カテーテルの各々のカテーテルは挿入された肺静脈を閉塞するための配置可能な手段を含む。
【0015】
本発明の第2の局面のさらに別の態様では、肺カテーテルはいくつかの配置可能なアームをさらに含み、肺カテーテルの配置可能なアームの数は、肺から出る肺静脈の数より1つ少ない。別の態様では、肺カテーテルの複数の配置可能なアームが1つの肺静脈に挿入されないように、肺カテーテルのいくつかの配置可能なアームがいくつかの肺静脈に挿入され、ここで肺カテーテルの配置可能な各アームは、配置されると、挿入された肺静脈を閉塞するための配置可能な手段を含む。
【0016】
第3の局面では、本発明は、カテーテルが挿入された血管を閉塞するための配置可能な手段(例えばバルーン)、配置可能な閉塞手段より近位に位置するポートに通じる管腔、およびアームを管腔とカテーテルのポート中を進ませることによって配置される配置可能なアームを含むカテーテルを特徴とする。様々な態様では、このカテーテルは配置可能な閉塞手段より遠位に位置するポートに通じる第2の管腔をさらに含み、配置可能なアームは配置されると、配置可能なアームの挿入された血管を閉塞する配置可能な手段を含む。好ましくは、配置可能なアームは、配置されると、配置可能なアームの配置可能な閉塞手段より遠位に位置するポートに通じる管腔をさらに含む。
【0017】
本発明の第3の局面の様々な態様では、本カテーテルは、従来の導入器のシースを通した挿入に適合するか、ガイドワイヤを用いた挿入に適合するか、圧力モニター用のゲージを備えているか、流速モニター用の流量計を備えているか、または少なくとも部分的には放射線不透過性である。
【0018】
「薬剤」とは、肺の細胞に対して、治療的、診断的、または予防的な物質として作用する化合物または組成物を意味する。薬剤は、肺細胞中で代謝または表現型の変化を生じる可能性があるか、肺細胞の増殖を変化させるか、肺細胞と他の細胞との相互作用に影響を与えるか、肺細胞の遺伝的構成または遺伝的活性に影響を与えるか、または肺細胞の死を招く可能性がある。本発明の目的のためには、薬剤は、肺血管系を通じた血流を促進するために十分な投与量で投与されるか、十分な濃度で送達される任意の化合物または組成物(例えば、ヘパリン)を特に除外する。
【0019】
「肺」とは右肺、左肺、または右肺と左肺の両方のいずれかを意味する。
【0020】
「肺動脈」とは、右肺動脈、左肺動脈、または肺動脈幹のいずれかを意味する。
【0021】
「肺細胞」とは、肺中に存在する細胞を意味する。肺細胞には、肺実質の細胞、癌性肺細胞、肺血管の内側を覆う血管内皮細胞、および肺中にたまたま存在する任意の起源の任意の細胞(例えば、異所性の転移性癌細胞)が含まれるがこれらに限定されることはない。
【0022】
「近位」とは、カテーテルのある特徴のほうが参照物体よりもカテーテルを挿入される人に近いことを意味する。たとえば、参照物体(例えば、閉塞する装置)より近位に存在する特徴(例えば、ポート)は、参照物体よりもカテーテルを挿入される人に近い。したがって、その特徴は、カテーテルを挿入される人と、参照物体との間に存在する。
【0023】
「遠位」とは、カテーテルの特徴のほうが参照物体よりもカテーテルを挿入される人から遠いことを意味する。たとえば、参照物体(例えば閉塞する装置)より遠位に存在する特徴(例えばポート)は、参照物体よりもカテーテルを挿入される人から遠い。したがって、参照物体は、カテーテルを挿入される人とその特徴との間に存在する。
【0024】
本明細書に記述される本発明は、非外科的経皮的アプローチによって肺循環を通して肺に組成物を送達する方法を提供する。また本発明は、組成物の肺特異的な送達も特徴とする。肺に組成物の送達を局在化させることによって、たとえば、体の他の部分(例えば骨髄区画)に対する組成物の毒性などのために全身に投与できる濃度よりも、高濃度の組成物(例えば薬剤)を投与できる。
【0025】
本発明の他の特徴および利点は、以下の詳細な説明および特許請求の範囲から明らかになると思われる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図1は肺の主要な血管の模式図である。血流の方向は矢印で示されている。血液は肺動脈を通って肺に流れ込み、肺静脈を通って肺から出る。
【図2】図2は心臓を通る血流の模式図である。血流の方向は矢印で示されている。酸素化されていない血液は、上大静脈および下大静脈を通って全身から心臓の右心房に入る。右心房から、血液は右心室を通って肺動脈幹へ流れ込む。肺動脈幹は左右の肺動脈へと分岐し、これがそれぞれ左肺と右肺に血液を運ぶ。酸素化された血液は左右の肺静脈を通って肺から戻り、左心房へ入る。その後左心房の血液は左心室へ流れ、大動脈を通って心臓から出る。
【図3】図3は本発明で有用な肺動脈カテーテルの水平断面図の模式図である。この図に描かれている肺動脈は、左肺動脈または右肺動脈のいずれでもよい。細かい斜線をつけた配置可能な閉塞装置(1)は配置された位置にあり、点線で表されている肺動脈壁にしっかりとカテーテルを固定していることに留意されたい。また、肺動脈の血流の方向はこの図では右から左であることにも留意されたい。
【図4】図4は同じ肺から出る2本の肺静脈に1本ずつ導入された2本のカテーテルからなる肺静脈カテーテルの水平断面図の模式図である。この図では、肺静脈は左肺から出ている。細かい斜線をつけた各カテーテルの配置可能な閉塞装置(4および5)は配置された位置にあり、左肺静脈壁にしっかりとカテーテルを固定していることに留意されたい。また、肺静脈の血流の方向は矢印で表されている。
【図5A】図5Aは、配置可能なアーム1本と2本の管腔を持つカテーテル1本のみで構成される肺静脈カテーテルの水平断面の模式図であり、第1の管腔(12)はカテーテルの遠位端にあるポート(13)に通じており、第2の管腔(14)はカテーテルの配置可能な閉塞装置(11)より近位にあるポート(10)に通じている。この図では、描かれた肺静脈は右肺から出ている。図5Aには、配置可能な閉塞装置(11)が配置され、カテーテルの遠位端を2本の右肺静脈のうちの1本の壁にしっかり固定している状態の、カテーテルの水平断面図が示されている。
【図5B】図5Bは、配置可能なアーム1本と2本の管腔を持つカテーテル1本のみで構成される肺静脈カテーテルの水平断面の模式図であり、第1の管腔(12)はカテーテルの遠位端にあるポート(13)に通じており、第2の管腔(14)はカテーテルの配置可能な閉塞装置(11)より近位にあるポート(10)に通じている。この図では、描かれた肺静脈は右肺から出ている。図5Bには、1本のカテーテルで構成される肺静脈カテーテルの断面図が示されているが、このカテーテルの配置可能なアームには、肺静脈カテーテルの第2の管腔(14)に第2のカテーテルを通すことによって配置した第2のカテーテルが示されている。第2のカテーテルは、右肺から出る第2の肺静脈中にあり、第2のカテーテルの遠位端にあるポート(17)に通じている管腔(16)、およびここでは配置された位置で示されている配置可能な閉塞装置(15)を含んでいる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
詳細な説明
本発明は、肺の主要な血管(例えば肺動脈および肺静脈)を利用した非外科的経皮的アプローチを用いた、肺の細胞への組成物の送達を特徴とする。本発明の送達方法の1つの変法では、標的の肺へ入る肺動脈または標的の肺から出る肺静脈に経皮的アプローチで挿入されたカテーテルを通して、右肺もしくは左肺または両方に組成物(例えば薬剤)を投与するための方法が記述されている。
【0028】
また、組成物の送達のための、完全に経皮的で、低侵襲性の、肺の非外科的隔離を可能にする方法も記述されている。以下に記述されるような、複数のカテーテルを備えた装置を利用することによって、隔離された右肺もしくは左肺または両方の細胞に組成物を送達し、肺細胞以外の任意の細胞に組成物が送達されるのを防ぐことができる。この方法では、肺疾患(例えば癌)を治療するまたはその症状を緩和することが見出された治療用組成物(例えば化学療法剤)を、周辺の肺以外の健康な組織(例えば胃腸管)に対するその組成物の影響を考慮することなく、非常に高濃度で患部に送達できる。
【0029】
本発明の方法を用いると、組成物を肺に添加する流速を調節するだけで、投与する組成物の圧力と流速の制御ができる。したがって、投与される組成物の圧力と流速を、肺細胞への送達の増加および/または肺細胞の取り込みの増加のために、望むように操作することができる。
【0030】
本発明の方法の1つの変法では、任意の時点で、組成物を左肺または右肺のいずれか一方のみに投与する。したがって、カテーテル(すなわち肺動脈カテーテル)は、右心房を通り、三尖弁を通過し、右心室を通って、肺動脈弁を通過し、肺動脈幹へ、そして左肺動脈または右肺動脈のいずれかへと挿入される。同様に、1セット(すなわち左または右)の肺静脈のみを標的とする肺静脈カテーテルは、大動脈を通って、大動脈弁を通過し、左心室を通って、僧帽弁を通過し、左心房を通って、該当する左肺静脈または右肺静脈へと挿入される。肺動脈カテーテルおよび肺静脈カテーテルの直径には変動があるものの、血流がカテーテルの周囲を流れることができ、隔離されていない肺(すなわち組成物が送達されない肺)と共に心臓が機能できるように、選択する。
【0031】
本発明の方法の別の変法では、患者に心肺バイパスを施しつつ、両方の肺の還流のために、カテーテルは最も重要な肺動脈幹(または右肺動脈と左肺動脈の両方)、ならびに右肺静脈および左肺静脈の両方に設置される。このバイパスは、たとえば、大腿動脈および大腿静脈のカニューレ挿入を行い、経皮的大動脈起始部還流(percutaneous aortic root infusion)バルーンカテーテルを用いて冠動脈を通して投与される心臓麻痺性溶液の注入により、心臓を停止させて実施できる(たとえば、Stevensら、米国特許第5,584,803号参照)。
【0032】
I. 組成物を肺に送達するための装置
1本のカテーテルが右肺または左肺のどちらかから出る肺静脈を標的とし、別のカテーテルがその肺へ向かう肺動脈を標的とするような一連のカテーテルを利用して、組成物を肺に送達する装置が開発された。
【0033】
たとえば右心房および右心室から肺動脈幹を通り左肺動脈または右肺動脈のいずれかに入る静脈内アプローチのような、経皮的アプローチを用いて、カテーテルを左肺動脈または右肺動脈に挿入できる。同様に、たとえば、左心室から左心房、そして左肺静脈または右肺静脈のいずれかに入る動脈アクセスによるような、経皮的アプローチを用いて、カテーテルを左肺静脈または右肺静脈に挿入できる。
【0034】
A. 肺動脈カテーテル
カテーテルは左肺動脈または右肺動脈のいずれかに挿入される。肺動脈カテーテルは、静脈内アプローチで右心房を通り、三尖弁(右心房と右心室の間に存在する)、右心室、肺動脈弁、肺動脈幹、そして左肺動脈または右肺動脈のいずれかに挿入される。肺動脈カテーテルは、左肺または右肺に組成物を送達するためか、肺静脈カテーテルによって送達された組成物を左肺または右肺から回収するために使用できる。肺への送達または肺からの回収を行うカテーテルとして、肺動脈カテーテルは、肺動脈内でカテーテルを固定するための配置可能な閉塞装置(例えばバルーン)より遠位にあるポートに通じる管腔を持つ。
【0035】
または、肺動脈カテーテルは肺静脈カテーテルによって送達された組成物が肺動脈および肺動脈幹を通って心臓に戻るのを防止するために使用できる。この場合は、肺動脈カテーテルは肺動脈内でカテーテルを固定するための配置可能な閉塞装置(例えばバルーン)を有するが、さらに配置可能な閉塞装置より遠位に位置するポートに通じる管腔を持つ場合も持たない場合もある。
【0036】
右肺動脈または左肺動脈のいずれかに挿入できるカテーテルの模式図が図3に提供されている。肺動脈カテーテルにはバルーンのような配置可能な閉塞装置(1)が取り付けられている。配置されると(図3に描かれた形)、配置可能な閉塞装置(1)は肺動脈を閉塞し、肺動脈内の血流を停止する。また、配置された閉塞装置は、肺に添加されている組成物が、閉塞装置より遠位(図3では閉塞装置(1)の右側)に位置する肺動脈の領域に、意に反して逆流をするのも防ぐ。さらに肺動脈カテーテルは閉塞装置(1)より近位に位置するポート(3)から液体を送達するための管腔(2)も持っており、これを通して溶液または懸濁液の状態の組成物が送達できる。
【0037】
両方の肺を同時に標的にする場合には、肺動脈カテーテルを肺動脈幹に挿入できる。これよりは好ましくはないが、両方の肺に組成物を同時に送達する方法として、2本の肺動脈カテーテルを利用して、各々の肺動脈カテーテルを右肺動脈または左肺動脈のいずれかに挿入することもできる。
【0038】
B. 肺静脈カテーテル
肺静脈カテーテルは左肺または右肺から出る肺静脈に挿入される。肺静脈カテーテルは、動脈アクセスを通って、左心室から、僧帽弁(左心房と左心室の間にある)を通過し、左心房へ、そして左肺静脈または右肺静脈のいずれかへと挿入される。
【0039】
肺静脈カテーテルを利用して、標的の肺から出る肺静脈からの組成物の回帰流を隔離することができる。そのため、肺静脈カテーテルは肺動脈カテーテルによって送達された組成物を標的肺から回収するために使用できる。逆に、肺静脈カテーテルを用いて組成物を標的肺に送達することもできる。
【0040】
送達用または回収用カテーテルとして、肺静脈カテーテルは、肺静脈中でカテーテルを固定するための配置可能な閉塞装置(例えばバルーン)より遠位にあるポートに通じる管腔を持っている。
【0041】
肺静脈カテーテルを利用して、肺に投与した組成物が肺静脈を通って心臓に戻るのを単に防ぐこともできる。この場合、肺静脈カテーテルは肺静脈内でカテーテルを固定するための配置可能な閉塞装置(例えばバルーン)を持つが、さらに配置可能な閉塞装置より遠位に位置するポートに通じる管腔を持つ場合も持たない場合もある。
【0042】
i. 2つまたはそれ以上のカテーテルで構成される肺静脈カテーテル
肺静脈カテーテルは2本以上のカテーテルで構成され、各カテーテルが右肺または左肺から出る肺静脈の1セットを標的とすることもできる。たとえば、大部分の患者は各肺から2本の肺静脈が出ているため、左肺を標的とするために、2本の左肺静脈の各々にカテーテルが挿入される。左肺静脈に導入された2本のカテーテルを持つ肺静脈カテーテルの例は、図4に示されている。2本のカテーテルのそれぞれが、左肺静脈内でカテーテルを固定するための配置可能な閉塞装置(図4の4および5)を持っている。また、図4に示される2本のカテーテルのそれぞれが、配置可能な閉塞装置より遠位にあるポート(8および9)に通じる管腔(6および7)を持っている。
【0043】
左肺から出る左肺静脈がたとえば3本以上ある患者では、2本またはそれ以上のカテーテルで構成される肺静脈カテーテルは、3本またはそれ以上のカテーテルで構成され、そのそれぞれがその患者の持つ各左肺静脈に導入される。
【0044】
ii. 1本のカテーテルのみで構成される肺静脈カテーテル
肺静脈カテーテルの別の変法では、各肺から2本の肺静脈が出ている患者の例では、肺静脈カテーテルは配置可能なアームを持つ1本のカテーテルのみで構成され、その配置可能なアームは、配置されると、配置可能な閉塞装置を持ち、さらにその配置可能な閉塞装置より遠位に位置するポートに通じる管腔も持つ場合がある。所望の肺静脈(例えば右肺静脈)が左心房に向かう地点で左心房中に設置されると、配置可能アームは2本の左肺静脈の第1番目の中に位置し、カテーテルの遠位端は2本の右肺静脈の第2番目の中に位置するように、カテーテルの配置可能なアームが配置される。
【0045】
肺静脈カテーテルの模式図は図5Aおよび5Bに示されている。このカテーテルは2つの管腔(図5Aおよび5Bの12および14)を持ち、このそれぞれが、カテーテルの遠位端にあるポート(ポート13)またはカテーテルの配置可能な閉塞装置(11)の近位端にあるポート(ポート10)のいずれかに通じている。第2の管腔(14)に通じるポート(10)は、カテーテルが肺静脈中を進む際に血液が管腔(14)に流れ込むのを防ぐための、一方向弁もさらに含むことがある。カテーテルの遠位端が第1の右肺静脈中に設置されたら、管腔(14)の直径よりも小さな外径(バルーンが配置されていないときに)を持つ第2のバルーンカテーテルで構成される、肺静脈カテーテルの配置可能なアームが、第2の管腔(14)に第2のカテーテルを進め、第2のカテーテルを第2の右肺静脈中に設置することによって、配置される(図5B)。この肺静脈カテーテルの第2のカテーテルは配置可能な閉塞装置(15)を持っており、第2のカテーテルの遠位端にあるポート(17)に通じる管腔(16)を持つ可能性がある。第2の右肺静脈内に設置されると、第2のカテーテルの配置可能な閉塞装置(15)が配置され、第2の肺静脈内の血流を閉塞する。図5Aおよび5Bの肺静脈カテーテルを用いて、カテーテルの遠位端に位置するポート(13)に通じる管腔(12)を通して、肺に組成物を送達でき、また、第2のカテーテルの遠位端に位置するポート(17)に通じる配置可能なアーム(すなわち第2のカテーテル)の管腔(16)を通して組成物を回収できる。
【0046】
図5Aおよび5Bのカテーテルは2つの管腔を持つが、このカテーテルには、配置可能なアーム(第2のカテーテル)を通すための1つの管腔(14)のみが必要であると理解される。同様に、第2のカテーテルは管腔を持つ必要はない。
【0047】
右肺から、たとえば3本以上の右肺静脈が出る患者の場合には、1本のカテーテルのみで構成される肺静脈カテーテルは、2本またはそれ以上の配置可能なアームを持ち(すなわち、2本またはそれ以上のカテーテルが、肺静脈カテーテルの2つまたはそれ以上の管腔を通って配置される)、カテーテルの遠位端は右肺静脈の1つに設置され、各配置可能なアームは残りの右肺静脈中に設置され、この患者のすべての右肺静脈中に、肺静脈カテーテルの遠位端または肺静脈カテーテルの配置可能なアームの遠位端が設置されるようになる。
【0048】
C. 組成物の肺特異的な送達
肺特異的な送達のためには、組成物は肺動脈カテーテルを通して肺に送達され、肺静脈カテーテルを通して回収されるか、その逆となるが、ここでその肺動脈と肺静脈は同一の肺に通じている。好ましくは、肺静脈カテーテルの管腔は、肺動脈カテーテルの管腔に接続しており、肺を出て肺静脈カテーテルによって回収される組成物は肺動脈カテーテルを通して再び肺に導入され、肺を出て肺動脈カテーテルによって回収される組成物は肺静脈カテーテルを通して再び肺に導入される。
【0049】
好ましくは、肺静脈カテーテルおよび肺動脈カテーテルのうちの少なくとも1つは、それぞれ投与された肺から出る肺静脈および肺動脈に、経皮的経路で挿入される。
【0050】
また、2本またはそれ以上のカテーテルで構成される肺静脈カテーテル、または1本のカテーテルのみで構成され2つの管腔を持つ肺静脈カテーテルのような、1つの肺静脈カテーテルのみを用いて、組成物を肺に投与することもできる。2本またはそれ以上のカテーテルで構成される肺静脈カテーテル(例えば図4に示すカテーテル)を用いて組成物を肺に送達する場合には、好ましくは、肺静脈カテーテルの1本のカテーテルによって送達した組成物が、肺静脈カテーテルの第2のカテーテルによって回収できるように、肺静脈カテーテルの2本またはそれ以上のカテーテルの管腔が接続している。1本のカテーテルで構成される肺静脈カテーテル(例えば図5Aおよび5Bに示すカテーテル)が使用される場合には、配置可能なアームの管腔(図5Bの管腔(16))と、1本のみのカテーテルで構成される肺静脈カテーテルの遠位端の管腔(図5Aおよび5Bの管腔(12))とは接続していて、カテーテルの遠位端によって送達された組成物が、カテーテルの配置可能なアームによって回収できる、およびその逆となるようになっている。
【0051】
好ましくは、組成物が1本の肺静脈カテーテルのみを用いて投与される場合には、投与される肺に向かう肺動脈は、配置可能な閉塞装置を持つ肺動脈カテーテルによって閉塞され、投与される組成物が肺動脈を通して心臓に漏れるのが防止される。
【0052】
本発明のカテーテルの管腔がエクスビボで接続していれば、隔離された肺へ組成物が再度循環できることになる。そのような再循環があれば、肺は、投与される組成物により長い期間触れることになり、組成物の無菌性を維持する手段となり、さらに組成物(例えば治療用薬剤)および送達媒体(例えば血液または生理的溶液)の節約にもなる。また、標的の肺が長期間にわたって隔離される場合には、好ましくは、標準的な心肺バイパス手法にしたがってエクスビボで酸素化できるような、酸素運搬能力のある溶液(例えば血液)中で、組成物が投与される。
【0053】
D. カテーテルの仕様および改変
本発明のカテーテルは、好ましくはガイドワイヤおよび/または従来の導入器のシースを用いてカテーテルが導入できるように、改変することができる。また、好ましくはカテーテルの設置にX線透視ガイダンスの使用が容易になるよう、各カテーテルは部分的に放射線不透過性である。上述のカテーテルは、組成物を効率良く送達するために十分な流速、100〜5000 mL/分の間の流速、好ましくは250〜3000 mL/分の間の流速、および最も好ましくは500〜2500 mL/分の流速を含むがこれらに限定されることのない流速で、液体を運搬するようにデザインされている。
【0054】
カテーテルは接続して巡回路としたり、肺に入ったり、中を通過したり、出たり、および再度入ったりする際に組成物の流れが中断しないように、ポンプ装置と組み合せることもできる。カテーテルには、肺の中の圧力の適切な調節ができるように、圧力をモニターするためのゲージを取り付けることもできる。同様に、カテーテルに流速のモニター用の流量計を取り付け、肺に送達される組成物の流量の適切な調節を行うこともできる。
【0055】
本発明で使用されるカテーテルの直径および長さは、組成物を投与される患者の年齢、健康状態、性別、およびカテーテル設置の経路に依存して、変わり得る。
【0056】
II. 非外科的経皮的アプローチ
本発明を用いると、組成物の送達を容易にするために、肺を完全に経皮的で低侵襲性で非外科的に隔離することができる。経皮的アプローチは外科的な肺動脈アクセスよりも侵襲的ではないため、疾病をもつ患者はこの処置に対してより耐容性が高く、回復がはるかに早く、罹患率および死亡率が低く、合併症も少ない。大循環へ「漏れる」組成物の量を低下させるためには、非特異的送達または浸透よりも、真の経皮的隔離がかなり効果的である。これは、浸透はすべての組成物に適用できないのみならず、浸透効率の点でも限度があるためである。全身の暴露から、本発明の提供する肺への組成物の送達の隔離に改善することで、肺に対してより高い用量の組成物を安全に送達し、また治療効果を改善しつつ有害な副作用および罹患率を低下させるために組成物の送達と取り込みを改善するための、圧力をかけた送達(Mannら、国際公開公報第98/20109号参照)を活用することもできる。
【0057】
経皮的アプローチは、当業者に周知で、一般的にBrownら、Heart 79:24-28, 1998:Kinoshitaら、Br. Heart J. 69(4):332-326, 1993; Feldmanら、Cathet.Cardiovasc. Diagn. suppl 2:26-34, 1994; Mooreら、Am. Heart J.130(6):1245-1249, 1995に記述されている。肺の肺動脈または肺静脈へカテーテルを送達するために非外科的経皮的アプローチを行うためには、静脈内アプローチまたは動脈内アプローチを用いることができる。静脈内/動脈内アプローチは、好ましくはガイドワイヤ手法を用いて、超音波イメージング(例えば2次元またはドップラーフローイメージング)、X線イメージング(例えばX線透視またはコンピュータ断層撮影)、または磁気共鳴イメージングのガイダンスで行う。その後、この静脈/動脈アクセス手法を用いて、左肺静脈もしくは右肺静脈または動脈へカテーテルを設置するために、従来の手技を用いたカテーテル交換を行うことができる。これらのアプローチは以下に記述されている。
【0058】
A. 静脈内アプローチ
肺動脈カテーテルの設置のための静脈内アプローチには、好ましくは頚静脈、鎖骨下静脈、または大腿静脈のような大きな静脈の直接の穿刺が含まれる。その後、カテーテルを大静脈内に通し、右心房へ、三尖弁を通過して、右心室へ、肺動脈弁を通過して、肺動脈幹を通り、左肺動脈または右肺動脈へと進める。この穿刺とカテーテルの設置は、好ましくは超音波(例えば2次元またはドップラーフローイメージング)、X線イメージング(例えばX線透視またはコンピュータ断層撮影)、または磁気共鳴イメージングを含むがこれらに限定されるのことのないイメージング法のガイダンスで行う。その後、組成物の送達または回収のための適切な位置に移動するために、左肺動脈または右肺動脈へカテーテルを設置するために、ガイドワイヤ操作および導入器シースの挿入のような従来の経皮的アクセス手法を使用することができる。
【0059】
B. 動脈内アプローチ
肺動脈カテーテルの設置のための静脈内アプローチには、好ましくは頚動脈、鎖骨下動脈、または大腿動脈のような大きな動脈の直接の穿刺が含まれる。その後、カテーテルを大動脈内に通し、大動脈弁、左心室、僧帽弁、左心房を通って、左肺静脈または右肺静脈へ進める。
【0060】
III. 逆流
本明細書に記載の本発明を用いると、肺に組成物を送達するために使用する流れの方向を操作することができる。インビボでは、肺内の血流は、肺動脈から肺に入って、肺静脈を通って出ている。本発明の方法を使用することによって、組成物を逆方向で肺に投与することができる。この手技によると、肺の到達しにくい部分に組成物を送達することができる。たとえば、肺静脈カテーテルを通して組成物を投与し、通常の血流とは逆方向で肺内を流れ、肺から出る際に肺動脈カテーテルを通して回収することができる。肺から出た組成物は、上述のように肺静脈カテーテルを通して肺に再度導入することもできる。
【0061】
IV. 時限式露出
肺内の血液量は、生理的状態および病的状態によって、正常の50%から200%間で変わり得る。肺が血液の貯蔵所となるこの能力を考慮すると、本発明は投与される組成物に対して、隔離された標的の肺を時限式に露出することができる。
【0062】
たとえば、肺静脈カテーテルまたは肺動脈カテーテルを用いて組成物を投与する。好ましくは、肺動脈カテーテルおよび肺静脈カテーテルの両方が、心臓に組成物が漏れるのを防ぐための閉塞装置を有する。すると、組成物を隔離された肺に投与して、肺を膨張させ(損傷は与えない程度)ることができる。投与された組成物は、所望の時間だけ、肺内にとどめておくことができる。たとえば、投与された組成物を長時間肺にとどめておくこともできるし、または直ちに肺から排出することもできる。肺が組成物に露出する時間は、投与される組成物、組成物の濃度、および治療する肺疾患の種類によって、変わり得る。
【0063】
このアプローチによる肺に送達した組成物の排出は、無菌生理食塩水のような適切な液体によって肺動脈カテーテルまたは肺静脈カテーテルを洗い流すことによって、任意の時点で行うことができる。必要ならば、肺から排出される組成物を回収し、肺に再度導入することもできる。その後、カテーテルの配置可能な閉塞装置(例えばバルーン)を収縮させ、カテーテルを抜去して標的肺に正常な血流を回復することができる。
【0064】
V. 組成物
本発明の方法と装置を用いて肺に送達する組成物は、任意の溶液または液体中の組成物の懸濁液で良い。製剤を作製するための当技術分野で周知の方法は、たとえば、レミントンの薬学(Remington's Pharmaceutical Sciences)、第18版、A. Gennaro編、1990、Mack Publishing Company, Easton, PAに記述されている。液体の例には、無菌水、生理食塩水、または血液が含まれるがこれらに限定されることはない。右肺または左肺のいずれかが長時間にわたって隔離される場合は、血液のような酸素運搬溶液を使用するのが好ましい。肺を隔離し、組成物を肺に投与し、肺内を通過させ、その後、肺から排出するアプローチでは、好ましくは、組成物は装置の種々のカテーテルの間をエクスビボで通過する間に酸素化できるような酸素運搬溶液中にある場合がある。本発明の組成物には、造影剤;化学療法剤および抗生物質のような薬剤;および細胞懸濁液が含まれるがこれらに限定されることはない。また、医師用便覧(ThePhysician’s Desk Reference) (Medical Economics Co. Inc., Montvale, NJ,1998)は、肺疾患の治療に有用な種々の治療用化合物および組成物の好ましい用量および適応症を詳述しているが、これに限定されることはない。
【0065】
以下の実施例は本発明を例証するものである。これらはいずれにせよ本発明を限定するものではない。
【実施例】
【0066】
実施例I:肺の原発癌の治療方法
扁平上皮癌、腺癌、大細胞未分化癌、小細胞癌、および細気管支肺胞癌を含むがこれらに限定されることのない肺の原発癌の患者は、本明細書に記載の方法で治療することができる。この実施例では、2つの肺のうちの一方のみの治療について記述するが、癌が両方の肺に広がっていれば、両方の肺を順次(すなわち組成物をまず右肺に投与してから、左肺に投与する)または同時に治療することができる。
【0067】
右肺のみに小細胞癌を持つ患者を治療する方法のこの実施例では、患者の右肺から2本の肺静脈が出ている。膨張したときのバルーンの直径が1.0 cmから3.0 cmでありバルーンより遠位にあるポートに通じる管腔を持つバルーンカテーテルを、経皮的アプローチを用いて肺動脈に挿入する。この実施例で使用する肺動脈カテーテルは、図3に描かれるものと類似している。そのようなカテーテルはたとえば、Boston Scientific Corp. (マサチューセッツ州ネイティック)により市販されている。
【0068】
X線透視ガイダンスを用いて、経皮的アプローチにより肺動脈カテーテルを右肺動脈に設置する。カテーテルを上大静脈に挿入して、バルーンを膨張させる。血流と共にカテーテルを右心房、三尖弁を通り右心室に進める。それから、カテーテルを肺動脈弁を通過し、肺動脈幹へ、そして右肺動脈へと進める。右肺動脈(左肺動脈に対して)へのカテーテルの正しい設置は、X線透視により確認する。種々の部分をカテーテルが通過することは、カテーテル先端の遠位ポートを圧力変換装置に接続し、閉塞された肺動脈を含む種々の部分における圧力波形を測定することにより、モニターできる。同様なカテーテル設置方法が周知である(たとえば、Blakeら、米国特許第3,995,623号参照)。
【0069】
1本のカテーテル(図5Aおよび5Bに示されるようなカテーテル)で構成され、膨張したときの直径が0.5 cmから4.0 cmの間のバルーンを持つ肺静脈バルーンカテーテルを、経皮的アプローチで右肺静脈に設置する。このアプローチにおいて、カテーテルは、ガイドワイヤにより大動脈へ、大動脈弁を通過して、左心室へ、僧帽弁を通過して、左心房中で右肺静脈が左心房に結合しているところまで入る。肺静脈バルーンカテーテルは、肺静脈カテーテルの管腔を通って、肺静脈カテーテルの配置可能なバルーンより近位に位置するポートまたは弁を通って管腔を出るように配置できる配置可能なアーム(すなわち第2のカテーテル)を有する。
【0070】
肺静脈カテーテルの遠位端は、まず2つの右肺静脈の1つに進める。外部からのコントロールによって、カテーテルの遠位端の配置可能なバルーンを膨張させ、2つの右肺静脈のうちの1本にカテーテルをしっかりと固定する。次に、カテーテルの配置可能なバルーンより近位にあるポートに通じる肺静脈カテーテルの管腔内に第2のカテーテルを進め、配置可能なアームを配置する。配置されると、配置可能なアーム(すなわち第2のカテーテル)は、配置可能なバルーンと配置可能なアームの配置可能なバルーンより遠位にあるポートに通じる管腔とを有する。配置可能なアームは、やはりX線透視ガイダンスのもとで、2本の右肺静脈の2番目の中に導入する。そして配置された配置可能アームの配置可能なバルーンを膨張させ、2本の右肺静脈の2番目の中で第2のカテーテルをしっかりと固定する。このようにして、両方の右肺静脈が閉塞される。
【0071】
肺がんの治療に有用な量のシスプラチン(例えば、20〜80 mg/m2)を、肺を完全に飽和させるために十分な量(例えば250 mL)の血液と混合する。最も好ましくは、この血液は患者由来のものである;これほど好ましくはない場合では、血液は交差適合するドナー由来である。血液/シスプラチン組成物を、肺動脈カテーテルを通して右肺に添加する。肺動脈カテーテルによって右肺に送達された組成物が、肺静脈カテーテルによって回収され、肺動脈カテーテルによって右肺に戻されるような形で、肺動脈カテーテルは肺静脈カテーテルに結合している。
【0072】
血液/シスプラチン組成物は、数時間の間、肺動脈カテーテルおよび肺静脈カテーテルを通って右肺の中を再循環させる。血液/シスプラチンが肺動脈カテーテルと肺静脈カテーテルとの間をエクスビボで循環する間に、標準的な心肺バイパス手術中のように、好ましくは血液細胞は酸素化される。
【0073】
治療後、肺動脈カテーテルから肺静脈カテーテルを取り外す。それから肺動脈カテーテルに無菌生理食塩水を満たし、血液/シスプラチン組成物の流出液を肺静脈カテーテルで回収し、保存または廃棄する。肺動脈カテーテルを抜去するには、肺動脈カテーテルのバルーンを収縮させてから、肺動脈カテーテルを抜去する。肺静脈カテーテルを抜去するには、肺静脈カテーテルの配置可能なアーム(すなわち第2のカテーテル)のバルーンをまず収縮させてから、配置可能なアームを戻して、図5Aに示すような位置に肺静脈カテーテルを戻す。次に、肺静脈カテーテルの配置可能なバルーンを収縮させ、肺静脈カテーテルを抜去する。
【0074】
シスプラチン治療は、右肺の癌細胞の数を低下させる、および/または患者の症状を緩和するために必要なだけ繰り返す。
【0075】
実施例II:肺アスペルギルス症の治療方法
肺アスペルギルス症は肺の日和見感染である。この疾病には1つの肺しか関与しない可能性があるので、本発明の方法および装置を用いた治療の理想的な候補となる。
【0076】
この実施例では、左肺を冒すアスペルギルス症を、本発明の方法を用いてアンフォテリシンBのような抗真菌剤で治療する。この実施例の患者の左肺からは2本の肺静脈が出ている。コンピュータ断層撮影のガイダンスおよび標準的なガイドワイヤ手法(たとえばMicrovena, White Bear Lake, MNが市販しているガイドワイヤを用いる)を用いて、膨張したときのバルーンの直径が1.0 cmから3.0 cmの肺動脈カテーテルを、大腿静脈への経皮的アプローチによって患者の右肺動脈に挿入する。そのようなカテーテルは、たとえばMeditech(マサチューセッツ州ウォータータウン)が市販しており、配置可能なバルーンを備える。図4に示すような肺静脈カテーテルのような、2本のカテーテルで構成される肺静脈カテーテルは、やはりコンピュータ断層撮影ガイダンスおよび標準的なガイドワイヤ手法を用いて、大動脈から動脈内アプローチによって左肺静脈に設置する。肺静脈カテーテルのそれぞれのカテーテルは、配置可能なバルーンより遠位に位置するポートに通じる管腔を持ち、それぞれのカテーテルは左肺静脈へ挿入するために適した直径を持つ(例えば、膨張したときのバルーンの直径が0.5 cm〜4.0cm)。
【0077】
肺動脈カテーテルおよび肺静脈カテーテルにバルーンを配置し、左肺動脈および左肺静脈にしっかりとカテーテルを固定する。1本または両方の肺静脈カテーテルから無菌生理食塩水を投与し、肺動脈カテーテルから血液を排出する。肺動脈カテーテルにより回収された血液は、頚静脈または他の静脈内アクセスを通して患者に戻すことができる。
【0078】
その後、肺のアスペルギルス症の治療に有用な量(例えば3〜30 mg/kg)のアンフォテリシンB (Sequus Pharmaceuticals (カリフォルニア州メンローパーク)が市販)を肺静脈カテーテルを通して投与し、1時間の間、肺内でインキュベートする。肺動脈カテーテルの管腔は、このときに閉塞して、アンフォテリシンB溶液の還流中に圧力上昇を促進しても良い。その後、無菌生理食塩水を1本または両方の肺静脈カテーテルから投与して、肺動脈カテーテルを介して肺から抗真菌溶液を洗い流す。次に、すべてのカテーテルのバルーン(すなわち肺静脈カテーテルの両方のカテーテルのバルーンおよび肺動脈カテーテルのバルーン)を収縮させ、カテーテルを抜去する。
【0079】
必要ならば、アンフォテリシンBの投与量を1日あたりの投与量に分割し、送達法を繰り返し行うことができる。当然ながら、カテーテルのサイズおよび使用する抗真菌剤の用量は、患者によって変わり得る(例えば小児にはより小さなカテーテルを使用)ことが理解されると思われる。
【0080】
実施例III:転移性肺癌の治療方法
肺内に癌性増殖が明らかだが、転移性粒子は体の別の部分に存在する可能性がある場合は、最も強く冒されている肺に組成物(例えば化学療法剤)を直接投与し、組成物を体中に拡散させるのが望ましい場合がある。この場合、大静脈から静脈内アプローチを介して、最も強く冒されている肺に血液を供給する肺動脈(すなわち右肺動脈または左肺動脈)に、図3に示されているカテーテルなどのカテーテルを挿入する。そのようなカテーテルは、配置可能な閉塞バルーンおよびバルーンより遠位に位置するポートに通じる管腔を持ち、たとえば、Advanced Cardiovascular Systems (カリフォルニア州サンタクララ)、Cordis Corp. (フロリダ州マイアミ)またはMedtronic Inc. (ミネソタ州ミネアポリス)から市販されている。
【0081】
治療する癌の種類によって、癌の増殖を遅らせる、停止する、または逆行させるために十分な用量の化学療法剤を、冒された肺に投与する。たとえば、有効量のカルムスチン、メクロレタミン、ブレオマイシン、マイトマイシン、シタラビン、ドキソルビシン、フルダラビン、イフォスファミド、メトトレキセート、ダカーバジン、ミトキサントロン、ペントスタチン、ダウノルビシン、ビンブラスチン、クラドリビン、およびビンクリスチンを含むがこれらに限定することのない化学療法剤を、肺動脈カテーテルを通して、冒された肺に投与することができる。そのような投与量は、種々の医学参考書(例えば、医師用便覧(The Physician's Desk Reference) (Medical EconomicsCo. Inc., Montvale, NJ, 1998)および各化学療法剤の製造元の仕様を手引きとして決定できる。
【0082】
冒された肺に血液を供給する動脈中に肺動脈カテーテルを設置したら、配置可能なバルーンを膨張させ、冒された肺への血流を阻止する。その後、組成物を肺に投与して、肺内の血液を交換すると、交換された血液は単に心臓の左心房へ押し出される。冒された肺を通過する血流はないので、肺を通る組成物の流れは停止するため、組成物(すなわち化学療法剤)を所望の時間、肺に留めておくことができる。この間に、患者が体外で酸素化された血液を必要とする場合(冒された肺が機能しないため)は、標準的な心肺バイパス手術法にしたがって、大腿動脈および大腿静脈に設置したカテーテルを通して、エクスビボで酸素化することができる。
【0083】
組成物により、冒された肺内の血液が置き換えられると、肺動脈カテーテル中の組成物の流れは停止するが、一部の組成物は冒された肺から流れ出る肺静脈中に漏れ出て、心臓、大動脈および周囲の組織中に漏れる可能性がある。しかし、漏れ出る組成物は、組成物が投与されていない肺から心臓に入る血流によって希釈されるため、組成物が血液によって体の他の部分に運搬される際には、組成物の濃度は低下することになる。組成物が体の残りの部分に到達する際にこの希釈を維持するために、組成物が流れずに冒された肺中に貯留するべき所望の時間が経過したら、肺動脈カテーテルを通して冒された肺に血液をゆっくりと添加し、冒された肺中の組成物とゆっくりと混合し、これを置き換えるようにする。このようにして、体の残りの部分に到達する組成物は、非癌細胞に対する有害性が低下した濃度になる。逆に、濃度が低下するものの組成物は体の残りの部分にも投与されるので、該組成物は、冒された肺にある癌から転移した任意の癌細胞の増殖にも影響を与える可能性がある。
【0084】
冒された肺から組成物の大部分が除去されたら、カテーテルのバルーンを収縮させ、カテーテルを抜去する。両方の肺が癌に侵されている場合は、他方の肺も、直ちにまたは別のときに同様に治療できる。その後、転移性肺癌を減少させたり、少なくともその症状を緩和するために必要ならば、同一または異なる化学療法剤を用いて、冒された肺を繰り返し治療する。
【0085】
実施例IV:両方の肺における転移性肺癌の治療方法
転移性肺癌が患者の両方の肺に広がっている場合は、化学療法剤で両方の肺を同時に治療することができる。この実施例では、患者の各肺から2本の肺静脈が出ている。両方の肺へ組成物を同時に投与するために、たとえば大腿動脈および大腿静脈のカニューレ挿入などによって、まず心肺バイパスを確立する必要がある。標準的な心肺バイパス法にしたがって、大腿静脈から血液を採集し、エクスビボで酸素化する。その後、酸素化された血液は、大腿動脈を通して患者に再注入される。
【0086】
心肺バイパスが確立されたら、たとえば、経皮的大動脈起始部還流バルーンカテーテルを用いて、冠動脈循環に心臓麻痺性溶液を還流して心臓を一時的に停止させる。その後、経皮的アプローチでX線透視ガイダンスを用いて、肺動脈カテーテルを肺動脈幹に設置する。たとえば、下大静脈にバルーンカテーテルを挿入し、右心房へ、三尖弁を通過し、右心室へと進める。その後、肺動脈弁を介してカテーテルを最も重要な肺動脈幹に進め、ここでカテーテルのバルーンを膨張させて肺動脈幹を完全に閉塞する。
【0087】
冠動脈還流カテーテルの設置および大動脈根バルーンの膨張の前に、右肺および左肺の両方から出るすべての肺静脈中に、バルーンカテーテルを設置する。好ましくは、大動脈から大動脈弁を通過し、左心室へ、僧帽弁を通過し、左心房へ、そして肺静脈へと挿入されるカテーテルの数を最小にするため、各々に配置可能なアームのついた2本の肺静脈カテーテルを用いる。各々に配置可能なアームのついた2本の肺静脈カテーテルを用いる場合、および2本のカテーテルのそれぞれの遠位端が左肺静脈または右肺動脈中に設置される場合は、次に各カテーテルの配置可能なアームを残りの左肺静脈または右肺静脈中に設置して、膨張可能なバルーンが残りの左肺静脈または右肺静脈を閉塞するようにする。このようにして、左肺および右肺から出るすべての肺静脈が閉塞される。
【0088】
肺動脈幹カテーテルまたは肺静脈カテーテルを通して適当な液体(例えば生理食塩水)を流すことによって肺から血液を排出した後、化学療法剤を含む溶液を両方の肺に注入し、所望の時間インキュベートする。インキュベートする時間が長い場合には、肺細胞の酸素不足を避けるために、酸素運搬能力のある化学療法剤溶液(例えば溶液は所望の量の化学療法剤が血液に溶解したものとなる)を再循環することが望ましい。再循環法では、溶液をエクスビボで酸素化するが、好ましくは、たとえば肺静脈カテーテルを出る溶液が、肺動脈幹カテーテルを通って再導入されるように、カテーテルが相互に接続している。
【0089】
化学療法剤溶液で所望の時間、両方の肺をインキュベーションしたら、無菌生理食塩水(または血液のような他の液体)を肺動脈幹カテーテルまたは肺静脈カテーテルのいずれかに注入して、肺から溶液を洗い出す。肺から溶液を洗い出している間、当然ながらカテーテルの相互の接続は取り外す。次に、すべてのカテーテルのバルーン(肺静脈カテーテルの配置可能なアームのものを含む)を収縮させ、カテーテルを抜去する。必要ならば、標準的な蘇生術(例えば電気除細動)を適用することによって、通常の冠動脈血流を回復させ、心臓の鼓動を再開、促進させる。最後に、心臓の循環制御が回復したら、大腿動脈および大腿静脈からカニューレを抜去する。
【0090】
上述の実施例のように、転移性肺癌を寛解に導くために、同一または異なる化学療法剤によって治療を繰り返すこともできる。たとえば、片方の肺にのみ癌性増殖が残る場合には、冒された肺を隔離して治療することによって、機能的な心臓が、治療しない肺と共に循環制御を行うようにできる。
【0091】
本明細書で言及されるすべての出版物および特許出願は、各々の独立した出版物または特許出願が具体的且つ個々に参照として本明細書に組み入れられると記載された場合と同じく、参照として本明細書に組み入れられる。
【0092】
本発明を、その具体的な態様に関して記載してきたが、さらに改変を加えることが可能であり、本出願は、概して本発明の原理に従う、本発明が属する技術分野における公知または慣習的な実施の範囲内で生じる本開示からの逸脱を含む本発明の任意の変法、用途、または適用を包含するものであり、本明細書に記載の本質的な特徴に適用され、添付の特許請求の範囲に従うものであることが理解されると思われる。
【0093】
他の態様は、特許請求の範囲内である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の段階を含む、肺への組成物の送達方法における、肺動脈カテーテルおよび肺静脈カテーテルの使用:
(a) 第1の非外科的経皮的経路を通して、肺に血液を供給する肺動脈に肺動脈カテーテルを挿入する段階であって、該肺動脈カテーテルが、挿入された肺動脈を閉塞する配置可能な手段を含む段階;
(b) 第2の非外科的経皮的経路を通して、該肺から排出する肺静脈に肺静脈カテーテルを挿入する段階であって、該肺静脈カテーテルが、挿入された肺静脈を閉塞する配置可能な手段を含む段階;および
(c) 該肺動脈カテーテルおよび該肺静脈カテーテルからなる群のうちの少なくとも1つを通して該肺に組成物を送達する段階。
【請求項2】
肺が、肺から排出する肺静脈を2本またはそれ以上含む、請求項1記載の使用。
【請求項3】
段階(b)が、肺から排出する肺静脈の各々への肺静脈カテーテルの挿入をさらに含む請求項2記載の使用であって、該各肺静脈カテーテルはそれが挿入された肺静脈を閉塞するための配置可能な手段を含み、肺静脈カテーテルの数は肺から出る肺静脈の数と等しく、且つ1本の肺静脈には複数の肺静脈カテーテルが挿入されない、請求項2記載の使用。
【請求項4】
送達段階が、肺動脈カテーテルおよび肺静脈カテーテルのうちの少なくとも1本からなる群のうちの少なくとも1つを通して行われる、請求項3記載の使用。
【請求項5】
肺静脈カテーテルが、肺から出る肺静脈の数より1つ少ない数の配置可能なアームをさらに含む、請求項2記載の使用。
【請求項6】
段階(b)が、カテーテルが挿入されていない肺静脈に肺静脈カテーテルの配置可能なアームを挿入する段階をさらに含み、該配置可能なアームは配置されると、それが挿入された肺静脈を閉塞するための配置可能な手段を含み、且つ1本の肺静脈には複数の配置可能なアームが挿入されない、請求項5記載の使用。
【請求項7】
送達段階が、肺動脈カテーテル、肺静脈カテーテル、および該肺静脈カテーテルの少なくとも1本の配置可能なアームからなる群のうちの少なくとも1本を通して行われる、請求項6記載の使用。
【請求項8】
肺に送達される組成物が、肺動脈カテーテル、肺静脈カテーテルのうちの少なくとも1本、および該肺静脈カテーテルの配置可能なアームのうちの少なくとも1本からなる群のうちの少なくとも1本によって回収され、送達用カテーテルと回収用カテーテルとが異なる、請求項1、4、または7のいずれか一項記載の使用。
【請求項9】
送達用カテーテルが回収用カテーテルに接続しており、それにより該回収用カテーテルによって回収される組成物が、該送達用カテーテルによって肺に戻される、請求項8記載の使用。
【請求項10】
肺動脈カテーテルおよび肺静脈カテーテルのうちの少なくとも1本が、従来の導入器シースまたはガイドワイヤを用いた挿入に適合されている、請求項1記載の使用。
【請求項11】
肺動脈カテーテルおよび肺静脈カテーテルのうちの少なくとも1本に、圧力モニター用ゲージまたは流速モニター用流量計が備えられている、請求項1記載の使用。
【請求項12】
肺動脈カテーテルおよび肺静脈カテーテルのうちの少なくとも1本が、少なくとも部分的に放射線不透過性である、請求項1記載の使用。
【請求項13】
肺動脈カテーテルおよび肺静脈カテーテルのうちの少なくとも1本が、配置可能な閉塞手段より遠位に位置するポートに通じる管腔をさらに含む、請求項1記載の使用。
【請求項14】
第1の非外科的経皮的経路および第2の非外科的経皮的経路のうちの少なくとも1つが、超音波ガイダンス、X線ガイダンス、および磁気共鳴ガイダンスからなる群より選択されるガイダンス法によって可視化される、請求項1記載の使用。
【請求項15】
第1の非外科的経皮的経路が静脈内アプローチであり、かつ第2の非外科的経皮的経路が動脈内アプローチである、請求項1記載の使用。
【請求項16】
(a) 非外科的経皮的経路を通して肺の血管内に肺カテーテルを挿入する段階であって、該肺カテーテルが、挿入された血管を閉塞するための配置可能な手段を含む段階;および
(b)該肺カテーテルを通して薬剤を該肺に送達する段階;
を含む、肺へ薬剤を送達する方法における、肺カテーテルの使用。
【請求項17】
非外科的経皮的経路が超音波ガイダンス、X線ガイダンス、および磁気共鳴ガイダンスからなる群より選択されるガイダンス手法によって可視化される、請求項16記載の使用。
【請求項18】
非外科的経皮的経路が静脈内アプローチおよび動脈内アプローチからなる群より選択される、請求項16記載の使用。
【請求項19】
肺カテーテルが、従来の導入器シースまたはガイドワイヤを用いた挿入に適合されている、請求項16記載の使用。
【請求項20】
肺カテーテルに圧力モニター用ゲージまたは流速モニター用流量計が備えられている、請求項16記載の使用。
【請求項21】
肺カテーテルが少なくとも部分的に放射線不透過性である、請求項16記載の使用。
【請求項22】
肺カテーテルが配置可能な閉塞手段より遠位に位置するポートに通じる管腔をさらに含む、請求項16記載の使用。
【請求項23】
肺の血管が肺に血液を供給する肺動脈または肺から排出する肺静脈である、請求項16記載の使用。
【請求項24】
肺から排出する肺静脈が2本またはそれ以上肺に存在する、請求項16記載の使用。
【請求項25】
肺カテーテルが、肺から排出する肺静脈の数に等しい数のカテーテルをさらに含む、請求項24記載の使用。
【請求項26】
1本の肺静脈には肺カテーテルのうち複数のカテーテルが挿入されないように、肺カテーテルのカテーテルが肺静脈に挿入され、該肺カテーテルの各カテーテルが、それが挿入された肺静脈を閉塞するための配置可能な手段を含む、請求項25記載の使用。
【請求項27】
肺カテーテルが、肺から排出する肺静脈の数よりも1つ少ない数の配置可能なアームをさらに含む、請求項24記載の使用。
【請求項28】
1つの肺静脈に肺カテーテルの複数の配置可能なアームが挿入されないように、該数の肺静脈に該肺カテーテルの該数の配置可能なアームが挿入され、該肺カテーテルの該配置可能な各アームが配置されたときに、それが挿入された肺静脈を閉塞するための配置可能な手段を含む、請求項27記載の使用。
【請求項29】
カテーテルが挿入された血管を閉塞する配置可能な手段と、該配置可能な閉塞手段より近位に位置するポートに通じる管腔と、アームを該カテーテルの該管腔および該ポートを通じて進ませることによって配置される配置可能なアームとを含む、カテーテル。
【請求項30】
配置可能な閉塞手段より遠位に位置するポートに通じる第2の管腔をさらに含む、請求項29記載のカテーテル。
【請求項31】
配置可能なアームが配置されたときに、それが挿入された血管を閉塞する配置可能な手段を含む、請求項29記載のカテーテル。
【請求項32】
配置可能なアームが配置されたときに、配置可能なアームの配置可能な閉塞手段より遠位に位置するポートに通じる管腔をさらに含む、請求項31記載のカテーテル。
【請求項33】
従来の導入器シースまたはガイドワイヤを用いた挿入に適合されている、請求項29記載のカテーテル。
【請求項34】
圧力モニター用ゲージまたは流速モニター用流量計が備えられている、請求項29記載のカテーテル。
【請求項35】
少なくとも部分的に放射線不透過性である、請求項29記載のカテーテル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【公開番号】特開2009−142678(P2009−142678A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−65429(P2009−65429)
【出願日】平成21年3月18日(2009.3.18)
【分割の表示】特願2000−573421(P2000−573421)の分割
【原出願日】平成11年10月5日(1999.10.5)
【出願人】(502243468)コージェンテック インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】