説明

肺吸入による、早漏を治療するための医薬品組成物

本発明は、早漏を治療するための、改善された製剤に関し、詳細には、早漏を治療するための、肺吸入による抗うつ薬の投与に関する。クロミプラミンなど、三環式抗うつ薬を含めた様々なタイプの既知の抗うつ薬を使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、早漏を治療するための、改善された製剤に関し、より詳細には、早漏を治療するための、肺吸入による抗うつ薬の投与に関する。クロミプラミンなどの三環系抗うつ薬も含めた、様々なタイプの既知の抗うつ薬を使用することができる。
【背景技術】
【0002】
早漏(PE)は、挿入前、挿入時、または挿入直後、および患者(またはパートナー)が望む前の、最小限の刺激による持続性または再発性の射精である。時折生ずるPEなら心配の種にはならないと思われるが、その問題がより頻繁に生ずる場合は、治療がふさわしい機能不全パターンが通常は存在する。
【0003】
男性の性的刺激は、性周期中の機能的活動度に従って分類することができる。正常な男性の性的応答周期は、定められた順序で生ずる5つの相関した事象、すなわちリビドー、勃起、射精、オルガスム、および膨張減退に分割される。
【0004】
射精は、性器の交感神経支配によって制御され、脊髄反射の結果生ずるが、相当な随意抑制制御もある。射精には、2つのプロセスがある。射精は、精管膨大部、精嚢、および前立腺平滑筋の収縮を介した、後部尿道への精液の分泌に関係する。この後、陰茎を経た外部への精液の放出という第2段階が続く。射精の阻害作用は、前脳におけるセロトニン作動性神経伝達を介して媒介されると考えられる。
【0005】
正常な発達の場合、男性は、17才または18才までに自己の射精を制御することができる。
【0006】
射精障害は、早漏から射精の欠如に至るまで様々なものがある。早漏は、推定有病率が30%程度の、最も一般的な、男性の性的機能不全と言われている。この推定値は、状況を明確にするのに使用した母集団および基準に応じて、1%から75%までの間で様々である。
【0007】
使用されてきた説明的定義によれば、早漏は、「挿入前、挿入時、または挿入直後、および人が望む前、および物質乱用のない状態で引き起こされる、最小限の刺激による持続性または再発性の射精」と定義される。この状態は、大きな悩みを引き起こす可能性があり、人間関係に緊張をもたらす可能性がある。したがって、PEの効果的で信頼性ある治療が、非常に望まれている。
【0008】
定量的な定義、膣内射精潜時間(IELT)も、射精遅延が改善されるよう設計された処置の評価を可能にする最終点として、使用されてきた。IELTが≦60秒である場合、人は、早漏状態にあると見なされる。
【0009】
早漏は、その性質が生理学的なもの(神経異常、急性身体疾患、身体的外傷、または薬理学的副作用)または心理学的なもの(緊張、不安、精神性的な技量不足)である可能性がある。原発性の早漏は、性的経験の始まりから症状を持っている者の状態を表すのに対し、続発性のPEは、別の状態の後遺症、例えば勃起不全である。
【0010】
PEは、過敏性神経系、陰茎過敏症、体細胞敏感性、セロトニン作動系の阻害作用の欠如、優れた生殖戦略を含めた、いくつかの異なる要因に関係する可能性がある。
【0011】
射精遅延は、5HT2C活性化に関係し、より速い射精は、5HT1A活性化に関連していると考えられる。5HT神経伝達が低いこと、または5HT2C受容体の機能低下、または5HT1Aの機能亢進は、PEの原因になるという仮説が立てられる。
【0012】
早漏の治療は、心理的および行動的カウンセリング、または薬物療法に分けることができる。前者は、いくつかの形をとることができるが、全てはストップ-スタートテクニックの基本的手順を中心にしている。この場合、男性または彼のパートナーが刺激を停止し、射精直前に、小帯近くで陰茎を締め付ける。マスターベーションで始まり、能動的な性交で終わる段階的な手法で使用されるこの技法は、初期成功率が高いが(60〜90%)、治療を受けた後3年が経過すると、25%に低下する。
【0013】
早漏には、いくつかの異なる薬物療法アプローチがある。初期研究の多くは、クロミプラミンなどの三環系抗うつ薬を使用して行ったが、これは、主としてセロトニン取込みを阻害するよう5HT2受容体を介して働くものであり、それによってセロトニン活性を促進させ、射精の遅延を行う。
【0014】
Althof他(J Clin Psychiatry(1995年9月)56:9, p.402〜407)によれば、25〜50mgのクロミプラミンを毎日経口投与すると、急速な射精の遅延が行われることがわかった。この研究結果から、クロミプラミンは、射精の待ち時間を著しく延ばし、かつ性的な関係を満足させるのに有効であると結論付けられた。また、選択された患者には、費用効果のある長期治療にもなると見なされた。
【0015】
PEの治療では、自発的オルガスムや無オルガスム症、射精痛など、クロミプラミンの使用に伴う副作用がある。さらに、ドライマウス、発汗、便秘、かすみ目、吐き気、眠気、頭痛、および眩暈も含め、抗うつの徴候に使用される経口製剤に関してしばしば報告される、様々な副作用(>10%)がある。
【0016】
研究は、セルトラリン(Zoloft(登録商標))やフルオキセチン(Prozac(登録商標))、パロキセチン(Paxil(登録商標))などの選択的セロトニン取込み阻害剤(SSRI)に関しても実施した。これらの活性薬剤の全ては、経口投与後に射精の遅延をもたらすのに有効であることがわかったが、一般に、投与(摂取による)と治療効果の発現との間には、著しい遅延がある。現在のところ、これらSSRIの中に、PE治療での使用が認められたものはない。
【0017】
いくつかの初期研究は、交感神経系が精液の蠕動運動の制御を担うという仮説に基づいて、α-アドレナリン受容体遮断薬を用いて行った。しかし、より多くの試験において、決定的な投薬計画は確立されなかった。
【0018】
Abdel-Hamnid他(Int J Impot Res(2001)2月;13(1):41-5)は、原発性PEの31人の男性患者に対し、無作為化二重盲検交差比較研究を実施した。この研究では、4週にわたる治療期間および2週にわたる洗出し期間中、5つの療法(クロミプラミン、セルトラリン、パロキセチン、シルデナフィル、および「スクイズテクニック」)について評価した。薬物は、計画された性交の約3〜5時間前、かつ1週間に2回以下、経口投与した。経口投与したクロミプラミン、セルトラリン、およびパロキセチンは、最適な効能を示すシルデナフィルに匹敵する効能を示すと結論付けられた。薬物の「応需型(オンデマンド)」使用は、上記論じたAlthofなどの初期研究によって提案されている連続投与と比較した場合、副作用の発生率が中程度であり、また低いことがわかった。
【0019】
ダポキセチン、5HTモジュレータ取込み阻害剤、5HT3受容体拮抗薬、および5HT4拮抗薬と、新規なフルオキセチン製剤も含めたいくつかの新しい製品も、現在開発中である。
【0020】
コンドームの使用と共に、陰茎亀頭および陰茎幹部に塗布される局所麻酔クリームの使用には、限られたデータを利用することが可能である。この治療は、正式に試験がなされていない。無痛状態は、塗布後、最長で2〜3時間あり、塗布の方法に応じて1〜2時間続くようである。
【0021】
従来技術で論じられた、PE薬物治療の圧倒的大部分では、活性薬剤を経口投与する。これは、抗うつ薬の経口剤形が容易に入手可能であるので便利であるが、この投与経路では、活性薬剤の急速放出がなされるように経口剤形が処方されている場合であっても、治療効果の発現は比較的遅くなる。
【非特許文献1】Althof他、J Clin Psychiatry(1995年9月)56:9, p.402〜407
【非特許文献2】Abdel-Harnid他、Int J Impot Res(2001)2月;13(1):41-5
【特許文献1】米国特許第6495154号
【特許文献2】WO97/03649
【特許文献3】WO02/43701
【特許文献4】WO96/23485
【特許文献5】WO02/00197
【特許文献6】米国特許第6257233号
【特許文献7】WO01/00262
【特許文献8】WO02/07805
【特許文献9】WO02/89880
【特許文献10】WO02/89881
【非特許文献3】Unites States Pharmacopoeia 26、Chapter 601、Apparatus 4(2003)
【特許文献11】WO01/82906
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
上記手短かに論じた治療の全ては、投薬と効果の達成との間に遅延があるので、高度な予測性と性的行動の計画とに依拠するものである。したがって本発明の目的は、最小限の、しかし適切な持続時間で、所望の治療効果が迅速に表れ、それによって、性的活動の重要な自発性が可能になり、かつ既存の治療よりもはるかに患者に優しい治療が生み出される、早漏の治療を提供することである。効果は、投与した後、ほぼ即座に表れることが好ましい。
【0023】
さらに、本発明は、上記論じた既知の治療のいくつかにしばしば伴う副作用を、回避しようとするものである。これは、より効率的な投与によって実現できると考えられ、したがって、同じ治療効果を得るのに、より少ない用量の治療薬を投与することができる。自発的オルガスムや無オルガスム症、射精痛など、クロミプラミンの投与に伴う副作用は、経口経路代謝の比較的予想できない性質に起因する可能性があり、したがって、それらの副作用を、より予測可能な投与形態を使用することによって回避できる可能性があることも、示されている。
【0024】
また副作用は、連続的にではなく「必要に応じて」治療薬を投与することができる場合、常習的に毎日投薬することによって、低減させるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明の第1の態様によれば、肺吸入によって早漏を治療するめの、抗うつ薬を含む新しい医薬品組成物が提供される。
【0026】
この投与形態は、通常は抗うつ薬の投与に伴う副作用の回避、または低減を引き起こすことが好ましい。本発明の組成物は、治療効果の発現が極めて速く、それによって、性的行動に至る直前の時点で真の「応需型(オンデマンド)」投与が可能になることが、特に好ましい。本発明の組成物に関する治療効果の発現速度について、以下に、より詳細に論じる。
【0027】
抗うつ薬は、うつ病の症状を軽減させる薬物である。この薬物は、1950年代に初めて開発され、それ以来、定常的に使用されてきた。いわゆる三環式抗うつ薬(TCAまたはTCAD)と、選択的セロトニン取込み阻害剤(SSRI)は、おそらく処方された抗うつ薬の約95%を占める。選択的セロトニンおよびノルアドレナリン取込み阻害剤(SNRI)は、より新しいグループの抗うつ薬であるが、これらはまだ、それほど広く使用されていない。
【0028】
抗うつ薬は、中程度から重症のうつ病を治療するのに使用される。抗うつ薬は、重症の不安、パニック発作、および強迫の問題に関する症状を助けるのにも使用される。また抗うつ薬は、慢性の痛み、摂食障害、および心的外傷後ストレス症候群に悩む人々を助けるのにも使用することができる。様々な抗うつ薬が機能すると考えられるメカニズムは、様々なタイプの抗うつ薬同士でかなり変化する。
【0029】
いくつかの種々のタイプの抗うつ薬があり、これらは以下のカテゴリーに包含される傾向がある;
1) クロミプラミンやイミプラミン、ロフェプラミン、ノルトリプチリン、アミトリプチリン、デシプラミン、ドスレピン、ドキセピン、トリミプラミン、アモキサピン、トラゾドン、アミネプチン、ドチエピン、イプリンドール、オピプラモール、プロピゼピン、プロトリプチリン、キヌプラミン、フルフェナジンなどの、三環式抗うつ薬(TCADまたはTCA);
2) ベンラファクシンやミルナシプランなどの、選択的セロトニンおよびノルアドレナリン取込み阻害剤(SNRI);
3) シタロプラムやエスシタロプラム、フルオキセチン、フルボキサミン、パロキセチン、クロボキサミン、フェモキセチン、イフォキセチン、ビクアリン、ジメルジン、セルトラリンなどの、選択的セロトニン取込み阻害剤(SSRI);
4) レボキセチンやデシプラミン、オキサプロチリン、メリトラセンなどの、選択的ノルアドレナリン取込み阻害剤(NARI);
5) シブトラミンやミルタザピンなどの、ノルアドレナリンおよび選択的セロトニン抗うつ薬(NASSA);
6) モクロベミドやトラニルシプロミン、ブロファロミン、クロルギリン、イソカルボキサジド、ニアラミド、ピルリンドール、セレギリン、トロキサトン、ビロキサジン、フェネルジンなどの、モノアミンオキシダーゼ阻害剤(MAOI);
7) 炭酸リチウムやクエン酸リチウムなどの、リチウム塩;
8) バルプロ酸などのGABA増強剤;
9) フルペンチキソールなどのチオキサンテン;
10) マプロチリンやレボプロチリン、ミアンセリンなどの、三環式抗うつ薬;および
11) 上述のカテゴリーに適合しないその他の薬剤であって、ブプロピオンやカルバマゼピン、トリプトファン、アメセルギド、ベナクチジン、ブトリプチリン、シアノプラミン、デメキシプチリン、ジベンゼピン、ジメタクリン、エトペリドン、フェゾラミン、メディフォキサミン、メタプラミン、メチルフェニデート、ミナプリン、ノミフェンシン、オキサフロザン、オキシトリプタン、ロリプラム、セチプチリン、テニロキサジン、チアネプチン、トフェナシン、ネファゾドンなど。
【0030】
本明細書で使用する、抗うつ薬という用語は、本発明の組成物に使用することもできる抗精神病薬を包含してもよい。そのような抗精神病薬には、例えば、アリピプラゾール、クロルプロマジン、ズクロペンチキソール、クロザピン、フルペンチキソール、スルピリド、ペルフェナジン、フルフェナジン、ハロペリドール、チオリダジン、ペリシアジン、レボメプロマジン、ピモジド、オキシペルチン、ピポチアジン、プロマジン、リスペリドン、クエチアピン、アミスルプリド、トリフルオペラジン、プロクロルペラジン、ゾテピン、およびオランザピンが含まれる。
【0031】
上述のタイプまたはクラスの抗うつ薬のいずれか(例えば、三環式抗うつ薬)を、PE治療のために本発明で使用することができる。その上、上記任意の個々の抗うつ薬(例えば、クロミプラミン)も、PEの治療に使用することができる。
【0032】
本発明の一実施形態では、組成物中に含まれる抗うつ薬が、三環式抗うつ薬である。範囲を変えるため、上述の三環式薬剤の全ては、ノルエピネフリンの神経細胞取込み能力を共有する。そうは言うものの、これら三環式薬剤は、その副作用が様々になり、とりわけ鎮静の程度および抗コリン作動効果の範囲で顕著になる可能性がある。
【0033】
クロミプラミン(3-クロロ-5-[3-(ジメチルアミノ)-プロピル]-10,11-ジヒドロ-5H-ジベンズ[b,f]アゼピン)は、本発明で使用される好ましい活性薬剤の1つである。この三環式薬剤は、抗うつ性と抗強迫性の両方を有する。その他の三環式抗うつ薬のように、クロミプラミンは、おそらくはニューロンの膜ポンプの遮断によって、中枢神経終末へのノルエピネフリンおよびセロトニンの取込みを阻害し、それによって、受容体部位での伝達物質モノアミンの濃度が増加する。クロミプラミンは、それがセロトニン作動性神経伝達に及ぼす影響を介して、うつ病ならびに強迫および強制的行動に影響を及ぼすと推定される。実際の神経化学的なメカニズムはわかっていないが、クロミプラミンがセロトニン取込みを阻害する能力は、重要であると考えられる。またクロミプラミンは、しばしばうつ病に伴う不安構成要素を緩和するのに役立つ可能性のある、軽い鎮静作用も有するようである。
【0034】
その他の三環式化合物と同様に、クロミプラミンは、その副作用のいくつかの原因である抗コリン作動性を有する。また、弱い抗ヒスタミン性および抗セロトニン性も有し、痙攣閾値を低下させ、ノルエプネフリンおよびCNSに働くその他の薬物の作用を増強させ、心臓に対してキニジン様の作用を有し、かつ心伝導も与えることができる。
【0035】
クロミプラミンは、通常、10、25、50、または75mgのクロミプラミンまたは塩酸クロミプラミンを含んでいる、経口錠剤またはカプセルの形で市販されている。クロミプラミンの吸収は、経口投与の後、迅速かつ完全であることが報告されている。血漿濃度は、通常、投薬してから約2時間後にピークに達するが、かなりの個人差が生ずる。1回経口投与した後の血漿内半減期は、約21時間であるが、活性代謝産物であるデスメチルクロミプラミンは、経口投与後の半減期が約36時間である。
【0036】
クロミプラミンは、約25mgから始まる経口投与によってPEを治療するのに有効であることが示されたが、この薬物の治療効果の発現は比較的遅く、したがってその問題が提示され、性交の自発性を破壊する可能性がある。さらに、この大きさのクロミプラミン用量は、様々な副作用を伴い、そのほとんどは軽いものであるが、そのいくつかは重篤になる可能性がある。
【0037】
PE治療のための、クロミプラミンの応需型(オンデマンド)使用が、米国特許第6495154号に提示されている。この特許では、性的行動に関与する前の30分未満の時点で薬物を投与することが提示されているが、実際には、この主張を裏付ける証拠が提供されていない。また、そのような治療効果の迅速な発現を、信頼性がありかつ再現性のある状態で全ての患者にもたらす可能性のある、剤形または投与形態に関する開示もない。
【0038】
抗うつ薬は、肺から迅速に吸収され、その治療効果の極めて迅速な発現がもたらされることを、ついに発見した。事実、活性薬剤が迅速に放出されるように錠剤が処方されている場合であっても、治療効果の発現は、錠剤などの経口投与後に観察されるよりも、肺投与後のほうが著しく速い。
【0039】
さらに、性的機能不全の治療に必要とされる抗うつ薬の量は、前記用量を肺吸入によって投与する場合、経口投与を目的とした現在利用可能な抗うつ薬の形態で与えられた用量よりも、著しく少なくなることがわかった。
【0040】
その上、肺吸入による抗うつ薬の投与は、極めて有益な薬物動態プロフィルに至ることもわかり、すなわち短いが十分でありかつ適切な持続時間を有する並外れて迅速な治療効果が発現し、引き続き血漿から薬物が迅速に排除されるというプロフィルに至るのである。これは、おそらくは薬物がより緩やかに吸収されることによって、比較的遅く治療効果が発現し、かつ血漿中に薬物が長時間存在するという経口投与された錠剤とは、対照的である。
【0041】
肺吸入によって投与された、少ない用量の抗うつ薬、また結果として観察された、効果の迅速な発現および迅速な停止(薬物血漿濃度の急速な上昇、その後の薬物血漿濃度の急速な低下によってもたらされる)は、薬物の投与に一般に伴う副作用の発生率を低下させることがわかったことも、有利である。ほとんどの抗うつ薬は、眠気やドライマウス、吐き気などの、比較的軽い副作用を伴う。これらの副作用は、一般に、用量依存性であると共に、抗うつ薬の慢性的な投与に関連していると考えられる。したがって、これらの副作用は、本発明で提供されるように、抗うつ薬の肺投与の結果、低減させることができ、または完全に回避することができる。
【0042】
本発明の別の態様によれば、抗うつ薬を含む新しい医薬品組成物、すなわち肺吸入によって投与される医薬品組成物を使用して、早漏を治療する新しい方法が提供される。
【0043】
やはり、これらの方法も、肺吸入した後に、抗うつ薬の効果が迅速に発現することによって、所望の治療効果を素早く実現することが好ましい。さらに、これらの方法は、抗うつ薬を投与した場合、特に抗うつ薬を経口投与したときに、通常または頻繁に付随して表れる副作用を、回避しまたは低減させることも好ましい。
【0044】
本発明の一実施形態によれば、好ましい抗うつ薬は、三環式抗うつ薬である。別の実施形態では、三環式抗うつ薬は、クロミプラミンである。本明細書で使用する「クロミプラミン」という用語には、クロミプラミンおよび塩酸クロミプラミンが含まれる。その他の適切な三環式抗うつ薬には、イミプラミンやアミプリチリン、ドキセプチンなどの、上述のものが含まれる。
【0045】
本発明の組成物は、同じクラスまたはタイプの抗うつ薬(2種の異なる三環式抗うつ薬など)から、あるいは2種以上の異なるクラス(1種または複数のSSRIや、1種または複数のMAOIなど)からのものでよい、2種以上の異なる抗うつ薬を含むことができる。その上、本発明の組成物は、任意選択で早漏の治療を補助することができるその他の治療薬も、さらに含むことができる。
【0046】
本発明の組成物に含まれる追加の治療薬は、下記の1種または複数でよい:
1) 2-メチルセロトニン、ブスピロン、イプサペロン、チアスピロン、ゲピロン、リセルギン酸ジエチルアミド、麦角アルカロイド、8-ヒドロキシ-(2-N,N-ジプロピルアミノ)-テトラリン、1-(4-ブロモ-2,5-ジメトキシフェニル)-2-アミノプロパン、シサプリド、スマトリプタン、m-クロロフェニルピペラジン、トラゾドン、ザコプリド、およびメザコプリドを含めた、セロトニン作動薬;
2) オンダンセトロン、グラニセトロン、メトクロプラミド、トロピセトロン、ドラセトロン、トリメトベンズアミド、メチルセルギド、リスペリドン、ケタンセリン、リタンセリン、クロザピン、アミトリプチリン、R(+)-α-(2,3-ジメトキシフェニル)-1-[2-(4-フルオロフェニル)エチル]-4-ピペリジンe-メタノール、アザタジン、シプロヘプタジン、フェンクロニン、デキスフェンフルラミン、フェンフルラミン、クロルプロマジン、およびミアンセリンを含めた、セロトニン拮抗薬;
3) メトキサミン、メトペンテルミン、メタラミノール、ミトドリン、クロニジン、アプラクロニジン、グアンファシン、グアナベンズ、メチルドーパ、アムフェタミン、メタムフェタミン、エピネフリン、ノルエピネフリン、エチルノルエピネフリン、フェニルエフリン、エフェドリン、偽性エフェドリン、メチルフェニデート、ペモリン、ナファゾリン、テトラヒドロゾリン、オキシメタゾリン、キシロメタゾリン、フェニルプロパノールアミン、フェニルエチルアミン、ドーパミン、ドブタミン、コルテロール、イソプロテレノール、イソタリン、メタプロテレノール、テルブタリン、メタラミノール、チラミン、ヒドロキシアムフェタミン、リトドリン、プレナルテロール、アルブテロール、イソエタリン、ピルブテロール、ビトルテロール、フェノテロール、フォルモテロール、プロカテロール、サルメテロール、メフェンテリン、およびプロピルヘキセドリンを含めた、アドレナリン作動薬;
4) フェノキシベンズアミン、フェントラミン、トラゾリン、プラゾシン、テラゾシン、ドキサゾシン、トリマゾシン、ヨヒンビン、麦角アルカロイド、ラベタロール、ケタンセリン、ウラピジル、アルフゾシン、ブナゾシン、タムスロシン、クロルプロマジン、ハロペリドール、フェノチアジン、ブチロフェノン、プロプラノロール、ナドロール、チモロール、ピンドロール、メトプロロール、アテノロール、エスモロール、アセブトロール、ボピンドロール、カルテオロール、オキスプレノロール、ペンブトロール、カルベジロール、メドロキサロール、ナフトピジル、ブシンドロール、レボブノロール、メチプラノロール、ビソプロロール、ネビボロール、ベタキソロール、カルテオロール、セリプロロール、ソタロール、プロパフェノン、およびインドラミンを含めた、アドレナリン拮抗薬;
5) ベタニジン、デブリソキン、グアベンキサン、グアナドレル、グアナゾジン、グアネチジン、グアノクロール、およびグアノキサンを含めた、アドレナリン作動性ニューロン遮断;
6) アルプラゾラム、ブロチゾラム、クロルジアゼポキシド、クロバゼパム、クロナゼパム、クロラゼペート、デモキセパム、ジアゼパム、エスタゾラム、フルラゼパム、ハラゼパム、ロラゼパム、ミダゾラム、ニトラゼパム、ノルダザパム、オキサゼパム、プラゼパム、クアゼパム、テマゼパム、およびトリアゾラムを含めた、ベンゾジアゼピン;
7) クロルプロマジン、トリフルプロマジン、メソリダジン、チオリダジン、アセトフェナジン、フルフェナジンHCl、ペルフェナジン、プロクロルペラジン、トリフルオロペラジン、クロルプロチキセン、チオチキシン、ハロペリドール、ロキサピン、モリンドン、クロザピン、リスペリドン、オランザピン、およびクエチアピンを含めた、神経弛緩薬;
8) プラゾシン、フェノキシベンズアミン、ドキサゾシン、テラゾシン、カルバジロール、およびラベタロールを含めた、α遮断薬;
9) クロルジアズポキシド、ロラゼパム、およびアルプラゾラムを含めた、抗不安薬;および
10) パパベリン、フェントラミン、臭化シメトロピウム、ヒヨスチンブチルブロミド、メベベリン、臭化オチリウム、臭化ピナベリウム、トリメブチン、およびこれらの組合せを含めた、平滑筋弛緩薬。
【0047】
特に好ましい追加の活性薬剤は、上記列挙したようなベンゾジアゼピンを含む。
【0048】
本発明の組成物および方法は、所望の治療効果の迅速な発現を提供する。具体的には、その発現は、抗うつ薬を経口投与したときに観察されるよりも、著しく速い。本発明の一実施形態では、射精を遅延させる治療効果の発現は、肺経路を介して組成物を投与してから30分未満である。その他の実施形態では、投与から治療効果発現までの時間が、25分以下、20分以下、15分以下、10分以下、8分以下、6分以下、5、4、3または2分以下、あるいは、さらに1分以下である。
【0049】
本発明の組成物を肺投与した後の、治療効果の発現の遅延時間は、従来技術、すなわちその従来技術が「迅速な発現」および「応需型(オンデマンド)」に言及している場合であっても、その従来技術に開示された遅延時間より著しく速い。
【0050】
本発明で治療される状態を考慮すれば、組成物によって提供される治療効果が30分未満の時間内で、実際には20分以下の時間内で達成されない限り、治療は「応需型(オンデマンド)」であると真に言うことができないと考えられる。これは、最低限でも心理的に、性交の自発性を維持することが、PEの治療では非常に重要な役割を果たすからである。事実、この自発性の維持は、抗うつ薬の効果を超えて、PEの治療をさらに補助することができる。
【0051】
また本発明は、抗うつ薬の高性能吸入送達にも関するものであり、これには、経口投与にも優る、いくつかの有意なかつ意外な利点がある。これらの利点について、以下により詳細に論じる。これは、この優れた性能を可能にする本発明の投与形態および製剤である。
【0052】
本発明の一実施形態によれば、医薬品組成物は、乾燥粉末の形をとる。乾燥粉末は、乾燥粉末吸入器(DPI)を使用して分配することが好ましい。
【0053】
本発明の一実施形態では、組成物は、抗うつ薬を含んだ活性粒子を含み、この活性粒子は、その空気動力学粒径(MMAD)が、約10μm以下である。
【0054】
本発明の別の実施形態では、組成物が、抗うつ薬および添加剤物質を含んだ活性粒子を含み、この添加剤物質は、接着防止物質であり、かつ組成物中の粒子間の凝集を低減させるものである。
【0055】
本発明のさらに別の実施形態では、組成物が、抗うつ薬と、ラクトースなどの不活性賦形物質の担体粒子とを含む。担体粒子は、その平均粒径が約5から約1000μmでよい。
【0056】
代替の実施形態では、組成物は、加圧計量式吸入器(pMDI)を使用して分配された、溶液または懸濁液である。この実施形態による組成物は、HFA134aやHFA227などの液体噴射剤と混合し、またはそのような液体噴射剤に溶解させた、上記論じた乾燥粉末組成物を含むことができる。
【0057】
肺吸入を介した抗うつ薬の送達は、現在使用されている経口経路による送達よりも、有効であることが予測される。また、この効率的な送達によって、投薬レベルを低下させることが可能になり、低減された副作用を観察できることも、示される。
【0058】
この投薬効率は、抗うつ薬を経口投与したときと同じ治療効果を達成するのに必要とされる用量よりも、少ない用量の抗うつ薬を吸入することにより、吸入後に観察される臨床効果をもたらすことが予測される。例えばPEは、25mgから始まって50mgまでの、経口量のクロミプラミンで治療できることが開示されているが、約25mg未満、好ましくは約20mg未満、約15mg未満、約10mg未満、または約5mg未満の用量のクロミプラミンが、肺吸入によって投与したときに有効になると予測される。本発明の一実施形態では、肺吸入によって投与された抗うつ薬の用量は、約0.1〜約20mgの間、約0.2〜約15mgの間、約0.5〜約10mgの間、または約1〜約5mgの間である。クロミプラミンまたはその他の抗うつ薬の、肺用量に関するその他の好ましい範囲には、約0.1〜約5mg、約0.2〜約5mg、および約0.5〜約5mgが含まれる。
【0059】
本発明のいくつかの実施形態では、抗うつ薬が、粉末組成物の約1%から約99%、約3%から約80%、約5%から約50%、または約15%から約40%を構成する。
【0060】
別の態様によれば、本発明は、早漏を治療するための、単位用量の抗うつ薬を提供する。単位用量には、上記論じた抗うつ薬を含む医薬品組成物が、含まれる。
【0061】
一実施形態では、本発明による組成物を含有するブリスターが、提供される。このブリスターは、ホイルブリスターであることが好ましく、内部にキャビティが形成されているベースを含み、このキャビティには粉末組成物が入っており、またこのキャビティには、破裂させることが可能なカバーによって封止された開口がある。
【0062】
用量および/または薬物が導入されたブリスターは、好ましくは粉末組成物を約0.1〜約20mg、より好ましくは粉末組成物を約1〜約5mg含み、この場合、抗うつ薬は、粉末組成物の約1〜約99%、約3%から約80%、約5%から約50%、または約15%から約40%を構成する。
【0063】
本発明の別の態様によれば、本明細書で述べるような、本発明による組成物を含む乾燥粉末吸入器が提供される。
【0064】
一実施形態では、吸入器は、能動吸入器である。別の実施形態では、吸入器は、呼吸作動式吸入器である。
【0065】
一実施形態では、本発明による組成物がブリスター内に保持され、その内容物は、前述の吸入器の1つを使用して分配することができる。ブリスターは、ホイルブリスターであることが好ましい。別の実施形態では、ブリスターは、組成物に接触した状態のポリ塩化ビニルまたはポリプロピンレンを含む。
【0066】
さらに別の態様によれば、本発明は、本発明の第1の態様による粉末化抗うつ組成物の、吸入可能なエアロゾルを生成するための方法を提供する。
【0067】
本発明の別の態様によれば、肺吸入により早漏を治療する薬品の製造における、抗うつ薬の使用が提供される。一実施形態では、抗うつ薬は、クロミプラミンなどの三環式抗うつ薬である。この薬品は、本発明の第1の態様による組成物でよい。
【0068】
組成物、治療方法、吸入器、ブリスター、吸入方法、および用量のいくつかに関し、約40μmから約70μmの好ましい平均粒径を有する担体物質を含むものとしてこれまで述べてきたが、その他の実施形態によれば、これら組成物、治療方法、吸入器、ブリスター、吸入方法、および用量中の担体物質は、その他の平均粒径範囲を有することができることを理解すべきであり、例えば、約5μmから約1000μm、約10μmから約70μm、または約20μmから約30μmである。
【0069】
本発明は、従来技術に優る、いくつかの著しい利点をもたらす。具体的には、本発明は、抗うつ薬の高性能肺送達を提供し、それによってこの抗うつ薬を、信頼性があり、便利であり、かつ効率的なPE治療に使用することが可能になる。高性能であることによって、迅速なピーク血中濃度を実現することができ、治療効果の迅速な臨床発現を提供すべきである。本発明により提供された抗うつ薬の肺投与の効果は、一貫しており、かつ再現性があり、高性能投与のこの一貫性によって、通常はそのような薬剤の投与に伴う副作用の低減がなされる。また、一貫して高性能であるので、必要とされる全用量は、その他の投与経路を使用した場合に必要になると思われる全用量に比べ、低くて済む。
【0070】
さらに本発明は、肺投与後の、より短い効果持続時間も提供し、これは、患者が経験する副作用をさらに低減することが予測される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0071】
本発明による吸入可能な製剤は、乾燥粉末吸入器(DPI)を介して投与することが好ましいが、加圧計量式吸入器(pMDI)を介して投与することもでき、さらに噴霧化システムを介して投与することもできる。
【0072】
(乾燥粉末吸入器製剤)
微細な乾燥粒子(活性粒子)の形をした活性薬剤を含む粒状薬品組成物を、肺投与することによって、医薬品として活性な薬剤を患者に投与することが知られている。活性粒子のサイズは、肺の中での活性薬剤の吸収部位を決定するのに、非常に重要である。粒子を肺の奥深くまで運ぶため、この粒子は非常に微細でなければならず、例えば、10μm未満の空気動力学粒径(MMAD)を有する。約10μmよりも大きい空気力学的直径を有する粒子は、喉の壁面に衝撃を与える可能性があり、一般に肺に到達しない。約5μmから約2μmの範囲の空気力学的直径を有する粒子は、一般に、呼吸細気管支内に堆積するのに対し、約3〜約0.05μmの範囲の空気力学的直径を有するより小さい粒子は、肺胞内に堆積し易い。
【0073】
本発明の一実施形態では、組成物は、抗うつ薬を含んだ活性粒子を含み、この活性粒子は、約10μm以下のMMADを有する。別の実施形態では、活性粒子が、約5μmから約2μmのMMADを有する。さらに別の実施形態では、活性粒子が、約3〜約0.05μmの範囲の空気力学的直径を有する。本発明の一実施形態では、活性粒子の少なくとも90%が、5μm以下の粒径を有する。粒子内の活性薬剤は、この活性薬剤の、迅速で治療上有効な血漿濃度が提供されるよう、できる限り速く血流中に吸収されることになる。したがって活性粒子は、約5μm以下の粒径を有することが好ましい。
【0074】
しかし、約10μm未満の直径を有する粒子は、その表面積と体積との比が高く、著しく過剰な表面自由エネルギーをもたらし、かつ粒子を凝集させるので、熱力学的に不安定である。吸入器内では、小さい粒子の凝集と、吸入器壁面に対する粒子の接着とが問題であり、その結果、活性粒子は、大きい凝集体として吸入器から離れ、または吸入器から離れることができなくなり、吸入器内部に接着したままになり、あるいは吸入器を詰まらせまたは塞ぐことになる。
【0075】
吸入器を作動させるごとに、また異なる吸入器同士で、また異なるバッチ同士の粒子について、安定な凝集体がどの程度形成されるか不確かであると、用量の再現性が不十分になる。さらに、凝集体の形成は、活性粒子のMMADが大幅に増大することを意味し、したがって活性粒子の凝集体は、必要とされる肺の部分と反応しない。そのため、本発明の目的は、良好な再現性をもたらし、したがって正確かつ予測可能な投薬をもたらす、粉末製剤を提供することである。
【0076】
乾燥粉末製剤の計量用量(MD)は、問題の吸入器によって示される計量形態中に存在する、活性薬剤の全質量である。例えばMDは、Cyclohaler(登録商標)の場合にはカプセル内に存在し、またはAspirair(登録商標)の場合にはホイルブリスター内に存在する、活性薬剤の質量と考えられる。
【0077】
放出用量(ED)は、作動後に吸入器から放出された活性薬剤の全質量である。吸入器の内部または表面に残された物質は含まない。EDは、しばしば用量均一サンプリング装置(DUSA)と呼ばれる装置内に、吸入器から放出された全質量を収集し、これを、有効定量湿式化学アッセイによって回収することによって、測定される。
【0078】
微粒子用量(FPD)は、定められた範囲よりも小さい空気力学的粒径で存在する、作動後に吸入器から放出された活性薬剤の、全質量である。微粒子用量またはFPDという用語を、本明細書で使用する場合、空気力学的粒径は、5μmよりも小さい。FPDは、2段階インピンジャ(TSI)や多段階液体インピンジャ(MSLI)、Anderson Cascade Impactor(ACI)、またはNext Generation Impactor(NGI)などの、インパクタまたはインピンジャを使用して測定する。インパクタまたはインピンジャのそれぞれは、各段階ごとに、所定の空気力学的粒径収集切点を有する。FPD値は、検証済みの定量湿式化学アッセイによって定量されたステージごとの活性薬剤回収率を解析することによって得られ、この場合、FPDを決定するのに、単純な段階切点を使用し、または、ステージごとの堆積に関するより複雑な数学的補間を使用する。
【0079】
微粒子分率(FPF)は、通常、FPDをEDで割ったものと定義され、パーセンテージで表す。本明細書では、微粒子用量パーセント(%FPD)という用語は、5μm以下の直径を有し、かつ送達された全計量用量の、パーセンテージを指すのに使用する(すなわち、%FPD=100×FPD/全計量用量)。
【0080】
「超微粒子用量」(UFPD)という用語は、本明細書では、3μm以下の直径を有し、かつ吸入器によって送達された活性物質の、全質量を指すのに使用する。「超微粒子分率」という用語は、本明細書では、3μm以下の直径を有し、かつ吸入器によって送達された活性物質の、総量のパーセンテージを指すのに使用する。超微粒子用量パーセント(%UFPD)という用語は、本明細書では、3μm以下の直径を有し、かつ送達された全計量用量の、パーセンテージを指すのに使用する(すなわち、%UFPD=100×UFPD/全計量用量)。
【0081】
「送達用量」および「放出用量」または「ED」という用語は、本明細書では同義として使用する。これらは、吸入生成物に関する現行のEP研究論文に記載されるように、測定する。
【0082】
「吸入器の作動」は、ある用量の粉末を、吸入器内でのその静止位置から取り出す間のプロセスを指す。このステップは、使える状態にある吸入器内に、粉末を導入した後に行う。
【0083】
微粒子に凝集傾向があると、所与の用量のFPFを予測することが非常に難しく、その結果、様々な割合の微粒子が肺に、または肺の正確な部分に投与されることを意味する。これは、例えば、純粋な薬物を微粒子形態で含む製剤で観察される。そのような製剤は、ほとんどの環境下で、不十分な流動特性、および不十分なFPFを示す。
【0084】
この状況を改善し、また一貫したFPFおよびFPDを提供しようとする場合、乾燥粉末製剤は、しばしば添加剤物質を含む。
【0085】
添加剤物質は、乾燥粉末製剤の粒子同士の凝集を低減しようとするものである。添加剤物質は、小粒子間の弱い結合力を妨げ、粒子を分離させた状態に保つのを助け、かつそのような粒子の相互の接着、および存在する場合には製剤中のその他の粒子との接着、および吸入器の内面との接着を低減させると考えられる。粒子の凝集体が形成される場合、添加剤物質である粒子を添加すると、そのような凝集体の安定性が低下し、その結果、吸入器の作動時に生成される乱気流中で、凝集体はより破壊され易くなり、直ちに粒子が吸入器から放出され、吸入される。凝集体は破壊されるので、活性粒子は、下部肺に到達することが可能な小さい個々の粒子の形に、または少数の粒子の凝集体の形に戻ることができる。
【0086】
従来技術では、添加剤物質である別個の粒子(一般に、微細な活性粒子のサイズに匹敵したサイズのもの)を含んだ乾燥粉末製剤について、論じている。いくつかの実施形態では、添加剤物質は、コーティング、一般には不連続なコーティングを、活性粒子および/または任意の担体粒子の表面に形成することができる。
【0087】
好ましくは、添加剤物質が接着防止物質であり、この物質が、粒子同士の凝集を低減させる傾向を持ち、かつ微粒子が吸入器内の面に付着するのを防止することになる。添加剤物質は、摩擦防止剤または流動促進剤であり、吸入器内でより良好な流動性を粉末製剤に与えるようになることが、有利である。このように使用される添加剤物質は、通常、必ずしも接着防止剤または摩擦防止剤である必要はないと考えられるが、粒子同士の凝集を低減させ、または粉末の流動を改善する効果を持つことになる。添加剤物質は、力制御剤(FCA)と呼ばれることもあり、通常は、より良好な用量再現性と、より高いFPFをもたらす。
【0088】
したがって、本明細書で使用する添加剤物質またはFCAは、それが粒子表面に存在することにより、その他の粒子の存在下かつ粒子が曝される面に対して、粒子が経験する接着または凝集表面力を修正することができる物質である。一般に、その機能は、接着力および凝集力を共に低下させることである。
【0089】
粒子が、互いにまたは吸入器自体に、強力に結合する傾向が減じられると、粉末の凝集および接着が低減されるだけでなく、より良好な流動特性も促進させることができる。この結果、各用量ごとに計量される粉末量のばらつきが少なくなり、また吸入器からの粉末の放出が改善されるので、用量再現性の改善がもたらされる。また、吸入器から離れる活性物質が、患者の下部肺に到達する可能性も、高くなる。
【0090】
粒子の不安定な凝集体は、吸入器内にある場合、粉末中に存在することが好ましい。上述のように、粉末を吸入器から効率的にかつ再現性ある状態で引き離すには、そのような粉末の粒子が大きいものであるべきで、約40μmより大きいことが好ましい。そのような粉末は、約40μm以上のサイズを有する個々の粒子、および/またはより微細な粒子の凝集体、すなわち約40μm以上のサイズを有する凝集体の形をとることができる。形成された凝集体は、約1000μm程度のサイズを有することができ、添加剤物質を添加した場合、このような凝集体は、吸入時に生成された乱気流中で、より効率的に破砕され易くなる。したがって、不安定なまたは「軟質」の凝集体が粉末中に形成されることは、実質的に凝集のない粉末と比較して、好ましいと考えられる。そのような不安定な凝集体は、粉末が吸入器内にある間は安定であるが、粉末が分配されたときに、崩壊し破砕される。
【0091】
活性粒子同士の凝集性および接着性を低下させると、サイズが縮小された凝集体と同等の性能、または個々の粒子とも同等の性能をもたらすことができる。
【0092】
したがって、本発明の別の実施形態では、組成物が、活性粒子および添加剤物質を含む。添加剤物質は、WO97/03649に開示されるように、活性粒子の表面に接着し易い粒子の形をとることができる。あるいは添加剤物質は、例えばWO02/43701に開示される同時粉砕法によって、活性粒子の表面に被覆することができる。同時噴霧乾燥は、表面に添加剤物質を有する活性粒子を生成するための、別の方法である。そのような「被覆された」活性粒子を製造するその他の可能な方法には、臨界流体処理、噴霧凍結乾燥、バルク溶液からの様々な形の沈殿および結晶化、および当業者に周知のその他の方法が含まれる。
【0093】
本発明の、ある実施形態では、製剤が「担体フリー」製剤であり、すなわち抗うつ薬と1種または複数の添加剤物質だけを含み、担体物質も賦形剤物質も含まないものである。そのような担体フリー製剤は、WO97/03649に記載されており、その開示全体を、参照により本明細書に援用する。
【0094】
粉末は、この粉末の重量に対して、抗うつ薬を少なくとも60重量%含む。粉末は、抗うつ薬を少なくとも70重量%含むことが有利であり、より好ましくは少なくとも80重量%である。粉末は、この粉末の重量に対して、抗うつ薬を少なくとも90重量%含むことが最も有利であり、より好ましくは少なくとも95重量%であり、より好ましくは少なくとも97重量%である。
【0095】
できる限り少ない粉末の肺への導入では、特に、患者に投与されるべき活性成分以外の物質の場合、生理学的な利点があると考えられる。したがって、添加剤物質が添加される量は、できる限り少ないことが好ましい。したがって、最も好ましい粉末は、抗うつ薬を99重量%よりも多く含むと考えられる。
【0096】
これらの「担体フリー」製剤中、粉末の粒子の少なくとも90重量%は、63μm未満の粒径を有することが有利であり、好ましくは30μm未満であり、より好ましくは10μm未満である。上述のように、粉末の活性粒子のサイズは、下部肺への効果的な送達を行うには、約0.1μmから約5μmの範囲内にあるべきである。添加剤物質が粒状形態である場合、これらの添加剤粒子は、下部肺への送達に好ましい範囲外のサイズを有することが、有利と考えられる。
【0097】
添加剤物質は、アミノ酸を含むことが特に好ましい。アミノ酸は、添加剤物質として存在する場合、呼吸に適する活性物質を高い割合で与え、また粉末の良好な流動性も与えることが見出された。好ましいアミノ酸は、ロイシン、特にL-ロイシンである。L-形態のアミノ酸が一般に好ましいが、D-およびDL-形態を使用してもよい。添加剤物質は、下記のアミノ酸のいずれか、すなわちロイシン、イソロイシン、リジン、バリン、メチオニン、システイン、およびフェニルアラニンの、1種または複数を含むことができる。粉末は、この粉末の重量に対して、活性薬剤を少なくとも80重量%含むことが有利であり、好ましくは少なくとも90重量%である。粉末は、この粉末の重量に対して、添加剤物質を8重量%以下含むことが有利であり、5重量%以下含むことがより有利である。上述のように、場合によっては、粉末が添加剤物質を約1重量%含有することが有利になる。
【0098】
代替の実施形態では、添加剤物質は、ステアリン酸マグネシウムまたはコロイド状二酸化ケイ素を含む。
【0099】
添加剤物質またはFCAは、約0.1重量%から約50重量%の量で、好ましくは約0.15重量%から約30重量%、約0.2重量%から約20重量%、約0.25重量%から約15重量%、約0.5重量%から約10重量%、約0.5重量%から約5重量%、または0.5重量%から約2重量%の量で、提供することができる。本発明の文脈において、適切な添加剤物質は接着防止物質を含むが、これに限定するものではない。添加剤物質は、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ロイシン、レシチン、およびステアリルフマル酸ナトリウムを含むことができ、参照により本明細書に援用するWO96/23485に、より十分に記載されている。
【0100】
添加剤物質が、微粉化されたロイシンまたはレシチンである場合、約0.1重量%から約10重量%の量で提供することが好ましい。添加剤物質は、微粉状ロイシンを約3%から約7%含むことが好ましく、約5%であることが好ましい。微粉状ロイシンの少なくとも95重量%は、その粒径が150μm未満であることが好ましく、100μm未満であることが好ましく、50μm未満であることが最も好ましい。微粉状ロイシンの質量中央径は、10μm未満であることが好ましい。
【0101】
ステアリン酸マグネシウムまたはステアリルフマル酸ナトリウムを、添加剤物質として使用する場合、約0.05%から約10%、約0.15%から約5%、約0.25%から約2%、または約0.15%から約0.5%の量で提供することが好ましい。
【0102】
分配器からの乾燥粉末の抽出を改善し、また一貫したFPFおよびFPDを得ようとするさらなる試みでは、乾燥粉末製剤は、活性物質の微粒子と混合された賦形剤物質の粗製担体粒子をしばしば含む。微細な活性粒子は、吸入器内にある間、互いに固着するのではなく、粗製担体粒子の表面に接着する傾向があるが、分配器の作動および気道への吸入によって、放出されかつ分散した状態になることが示唆され、微細な懸濁体が得られる。担体粒子は、約60μmより大きく、または約40μmよりも大きいMMADを有することが好ましい。
【0103】
また粗製担体粒子を含むことは、非常に少ない用量の活性薬剤を分配する場合、非常に魅力あるものである。正確にかつ再現性ある状態で、非常に少ない量の粉末を分配することは、非常に難しく、また分配された粉末の量のばらつきが少ないことは、非常に少ない量の粉末しか分配せずかつその粉末が主に活性粒子を含む場合、活性薬剤の用量に大きなばらつきがあることを意味する。したがって、大きな賦形剤粒子の形をとる希釈剤の添加は、投薬を、より再現性のあるものにし、かつ正確なものにすることになる。
【0104】
担体粒子は、任意の許容可能な不活性賦形剤物質のいずれか、またはこれらの物質の組合せでよい。例えば、担体粒子は、糖アルコール、ポリオール、および結晶糖から選択された、1種または複数の物質からなるものでよい。その他の適切な担体には、塩化ナトリウムや炭酸カルシウムなどの無機塩、乳酸ナトリウムなどの有機塩、および多糖やオリゴ糖などのその他の有機化合物が含まれる。担体粒子は、ポリオールを含むことが有利である。特に、担体粒子は結晶糖の粒子でよく、例えば、マンニトール、デキストロース、またはラクトースがある。担体粒子は、ラクトースからなることが好ましい。
【0105】
しかし、粗製担体粒子を微細な活性粒子の組成物に添加したときに遭遇する可能性のある、その他の問題とは、送達器の作動時に、この微細な粒子が、比較的大きい担体粒子の表面から確実に切り離されることである。
【0106】
活性粒子を、その他の活性粒子から、また存在する場合には担体粒子から分散させて、吸入用の微細な活性粒子のエアロゾルを形成するステップは、肺の中の所望の吸収部位に到達する活性物質の、用量の割合を決定するのに重要である。そのような分散の効率を改善するため、組成物中に、上記論じた性質の添加剤物質を含めることが知られている。微細な活性粒子、担体粒子、および添加剤物質を含む組成物は、WO96/23485に開示されている。
【0107】
したがって、本発明の一実施形態では、組成物が、活性粒子および担体粒子を含む。担体粒子は、その平均粒径が、約5〜約1000μm、約4〜約40μm、約60〜約200μm、または約150〜約1000μmでよい。担体粒子に関する、その他の有用な平均粒径は、約20〜約30μm、または約40〜約70μmである。
【0108】
抗うつ薬および担体粒子を含む組成物は、添加剤物質をさらに含むことができる。添加剤物質は、WO97/03649に開示されるように、活性粒子の表面に接着する傾向がある粒子の形をとることができる。あるいは添加剤物質は、例えばWO02/43701に開示されているように、同時粉砕法によって、活性粒子表面に被覆することができ、またはWO02/00197に開示されているように、担体粒子の表面に被覆することができる。
【0109】
乾燥粉末吸入器では、投与すべき用量を、加圧していない乾燥粉末の形で保存し、吸入器を作動させることによって、患者がその粉末粒子を吸入する。乾燥粉末吸入器は、患者の息が吸入器に原動力を与える唯一の気体供給源である、「受動」吸入器にすることができる。「受動」乾燥粉末吸入器の例には、RotahalerおよびDiskhaler(GlaxoSmithLkine)、およびTurbohaler(Astra-Draco)、およびNovolizer(登録商標)(Viatris GmbH)が含まれる。あるいは、圧縮気体供給源、または代替のエネルギー源を使用する、「能動」吸入器を使用することができる。適切な能動吸入器の例には、Aspirair(登録商標)(Vectura Ltd)、およびNektar Therapeutics製の能動吸入器が含まれる(米国特許第6257233号に包含される)。
【0110】
特に好ましい「能動」乾燥粉末吸入器を、本明細書では、Aspirair吸入器と呼び、これらについては、WO01/00262、WO02/07805、WO02/89880、およびWO02/89881に、より詳細に記述されており、その内容を、参照により本明細書に援用する。しかし本発明の組成物は、受動式または能動式のいずれかの吸入器を用いて投与できることを、理解すべきである。
【0111】
図1は、上述の粉末製剤を患者に送達するのに使用することができる、好ましい吸入器を概略的に示す。このタイプの吸入器は、WO02/89880およびWO02/89881に、詳細に記載されている。
【0112】
図1および2を参照すると、吸入器は、粉末製剤のエアロゾルを生成するために、過流チャンバ12を含みかつ出口および入口を有する過流ノズル11を含む。過流チャンバは、マウスピース13、すなわち使用者がこれを介して吸込みを行うことにより吸入器を使用するための、マウスピース13内に位置付けられている。空気の通路(図示せず)は、粉末化した薬品の他にも空気を使用者が吸入できるよう、過流チャンバとマウスピースとの間に画定することができる。
【0113】
粉末製剤は、支持体および穿刺可能なホイル蓋によって画定された、ブリスター14内に保存される。ブリスターホルダ15はブリスターを定位置に保持する。図示するように、支持体は、その内部にキャビティが形成されており、そこに粉末製剤が保持される。キャビティの開放端は、蓋で封止する。過流チャンバの吸気管は、穿刺可能なホイル蓋を穿刺する穿刺ヘッド16で終わっている。リザーバ17は、通路を介してブリスターに接続している。空気の供給、好ましくは手動ポンプあるいは加圧気体または噴射剤のキャニスタによって、リザーバには、所定の圧力(例えば1.5バール)まで気体(例えば、この実施例では空気)が充填される。好ましい実施形態では、リザーバが、リザーバチャンバを画定するシリンダ内に受容される、ピストンを含む。ピストンをシリンダ内に押し込んで、チャンバの容積を減少させ、充填された気体を加圧する。
【0114】
使用者が吸入すると、呼吸作動機構19によって弁18が開き、空気は、加圧された空気リザーバからブリスター内へと押しやられ、そこでは、粉末化した製剤が空気流内に混入する。この空気流は、粉末製剤を過流チャンバ12に輸送し、そこでは粉末製剤の回転過流が形成され、入口と出口との間には空気が生成される。空気流中に混入された粉末化製剤は、過流チャンバを介して連続的に通過するのではなく、非常に短い時間(典型的な場合、0.3秒未満であり、好ましくは20ミリ秒未満)で過流チャンバに入り、純粋な薬物製剤(すなわち担体を含まない)の場合には、粉末製剤の一部が過流チャンバの壁面に固着する。この粉末は、粉末に隣接する境界層に存在する高剪断力によって、引き続きエアロゾル化される。過流の動作は、粉末製剤粒子の凝集を解き、または薬物および担体を含む製剤の場合には、担体から薬物を引き離し、したがって粉末化製剤のエアロゾルは、出口を介して過流チャンバから出ていく。エアロゾルは、マウスピースを介して使用者に吸入される。
【0115】
過流チャンバは、解凝集、すなわち粒子クラスタを、個々の吸入可能な粒子に破砕すること、および濾過、すなわちある特定のサイズよりも小さい粒子を、出口からより容易に優先的に逃がすこをも含め、いくつかの機能を発揮すると見なすことができる。解凝集は、粉末化製剤の凝集性クラスタを、吸入可能な粒子に破砕し、濾過は、過流チャンバ内でのクラスタの滞留時間を長くして、解凝集により多くの時間をかけることができるようにする。解凝集は、乱流によって、また過流チャンバ内の空気流の速度勾配により高剪断力を生成することによって、実現することができる。速度勾配は、過流チャンバの壁面に近い境界層で、最高になる。
【0116】
過流チャンバは、実質的に円筒形のチャンバの形をとる。過流チャンバは、非対称の形状を有することが有利である。図2および3に示す実施形態では、過流チャンバの壁面8が、螺旋または巻物の形をとる。入口3は、過流チャンバ1の周辺に対し、実質的に接線方向にあり、出口2は、過流チャンバ1の軸とほぼ同心上にある。したがって気体は、入口3を介して接線方向で過流チャンバ1に入り、出口2を介して軸方向に出ていく。出口2の中心から測定した過流チャンバ1の半径Rは、入口での最大半径Rmaxから最小半径Rminまで、滑らかに減少していく。したがって、入口3の位置から角度θ(シータ)での半径Rは、R=Rmax(1-θk/2π)によって与えられ、ただしk=(Rmax-Rmin)/Rmaxである。過流チャンバ1の有効半径は、空気流および混入した薬品粒子がチャンバ内を循環するにつれて、減少する。このように、空気流が直面する過流チャンバ1の有効断面積は減少し、したがって空気流は加速され、混入した薬品粒子の堆積が少なくなる。さらに、空気流が2πラジアン(360°)を通過したとき、その空気流は、入口3を介して流入する空気流と平行になり、したがって、衝突する流れによって引き起こされる乱流が減少し、過流での液体損失を少なくするのを助けることになる。
【0117】
入口3と出口2との間には、過流が生成され、そこでは剪断力が発生して、粉末化製剤粒子の凝集を解く。出口2の長さは、出口壁面に薬物が堆積する可能性を低下させるため、できる限り短いことが好ましい。図3は、図2の吸入器の過流チャンバの、一般的な形を示す。過流チャンバの幾何形状は、下記の表に列挙した寸法によって、画定される。これらの寸法の好ましい値も、表に列挙する。過流チャンバは、このチャンバの最上部(屋根)が平らであるときに最も効果的に機能することが見出されたので、チャンバの円錐部分の高さhの好ましい値は、0mmであることに留意すべきである。
【0118】
【表1】

【0119】
チャンバ1の直径と出口2の直径との比は、ノズルのエアロゾル化性能に強力な影響を及ぼす。図2の非対称ノズルの場合、直径は、(Rmax+Rmin)と定義される。比は、4から12の間であり、好ましくは6から8の間である。図2および3の好ましい実施形態では、比は6.9である。
【0120】
図示される実施形態では、過流チャンバは、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、アクリル、または真鍮から機械加工されるが、広範な代替材料が可能である。大量生産では、過流チャンバは、ポリマーから射出成型することが有利である。適切な材料には、ポリカーボネート、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、ポリアミド、ポリスチレン、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、およびポリオレフィンであって、ポリプロピレンおよびポリエチレンテレフタレート(PET)を含めたものが含まれるが、これらに限定するものではない。
【0121】
本発明の実施形態による吸入器は、比較的ゆっくり動くエアロゾルを、高い微粒子分率で生成することができる。吸入器は、計量された用量の粉末化薬物の、完全で再現可能なエアロゾル化をもたらすことができ、かつエアロゾル化した用量を、患者の吸気流より遅い速度または実質的に等しい速度で、患者の吸気流中に送達することができ、それによって、患者の口に嵌めることによる堆積が、減少する。さらに、この効率的なエアロゾル化システムによれば、エアロゾルの生成に使用されるエネルギーが少ないので、簡単で小さくかつ低コストの吸入器が可能になる。エアロゾルの生成に必要な流体エネルギーは、圧力と流量との積を時間で積分したものと定義される。これは典型的な場合、5ジュール未満であり、3ジュール程度にすることもできる。
【0122】
本発明の、ある実施形態では、粉末組成物は、少なくとも35%の微粒子分率が吸入器の作動時に生成されるものである。微粒子分率は、45%、50%、または60%以上であることが特に好ましい。微粒子分率は、少なくとも70%であることが好ましく、最も好ましくは少なくとも80%である。一実施形態で、この粉末は、抗うつ薬を担体物質と合わせて含む。
【0123】
粉末組成物を分配するのに使用される吸入器は、能動吸入器であることが最も好ましく、その配置構成は、吸入器の作動時に、少なくとも35%、好ましくは少なくとも50%、さらに好ましくは少なくとも60%、さらに好ましくは少なくとも70%、最も好ましくは少なくとも80%の微粒子分率が生成されるようなものである。能動吸入器は、用量をエアロゾル化する際、患者の吸入に左右されないので、この用量の送達は、受動吸入器を使用したときに観察されるよりも再現性がある。
【0124】
本発明の別の実施形態によれば、活性薬剤の用量は、投与される用量の微粒子用量に関して定義される。肺に到達することになる用量中の、抗うつ薬のパーセンテージは(%FPD)、使用する製剤および使用する吸入器に左右される。したがって、本発明で予測されるように、10mg用量の抗うつ薬、例えばクロミプラミンは、35%の%FPDが実現された場合、患者の肺にはクロミプラミン3.5mgが送達されることになるが、60%の%FPDが実現された場合には、同じ用量で、患者の肺にはクロミプラミン6mgが送達されることになり、または70%の%FPDの場合には、7mgが送達されることになる。したがって、抗うつ薬の用量は、Multistage Liquid ImpingerまたはAnderson Cascade Impactorで測定した場合、使用した製剤のFPDおよび使用した吸入器に関して定義することが適切である。
【0125】
したがって、本発明の別の実施形態によれば、吸入を介して早漏を治療するための方法が提供されるが、この方法は、ある用量の粉末組成物を、患者の肺に吸入することを含むものであり、この用量の粉末組成物は、Multistage Liquid Impinger、Unites States Pharmacopoeia 26、Chapter 601、Apparatus 4(2003)、Anderson Castade Impactor、またはNew Generation Impactorで測定した場合、生体外で、抗うつ薬が約0.1mgから約20mgの微粒子用量を送達する。
【0126】
Multistage Liquid Impingerに関連して上述のように定義された、活性薬剤の用量は、ブリスター、吸入器、および本明細書に記載する組成物と共に、同様に使用することができる。
【0127】
微粒子分率の他に、問題となっている別のパラメータは、上記定義した超微粒子である。5μm未満の直径を有する粒子(FPFに相当する)は、肺への局所送達に適しているが、全身送達の場合、薬物は、血流に吸収されるよう肺胞に到達しなければならないので、さらに微細な粒子が必要であると考えられる。したがって、本発明による製剤および吸入器は、少なくとも約50%、より好ましくは少なくとも約60%、最も好ましくは少なくとも約70%の超微粒子分率を提供するのに十分であることが、特に好ましい。
【0128】
活性物質の少なくとも90重量%は、その粒径が10μm以下であることが好ましく、最も好ましくは5μm以下である。したがって、この粒子は、吸入器の作動時に良好な懸濁体をもたらす。
【0129】
本発明の実施形態によれば、能動吸入器は、最良の微粒子分率および微粒子用量を確実に実現させるため、かつ非常に重要なことであるがそのような実現が確実に一貫してなされるようにするために、乾燥粉末製剤を分配するのに使用することができる。吸入器は、用量の送達が患者の吸入の開始によって引き起こされるように、呼吸起動手段を含むことが好ましい。これは、患者が自身の吸入を吸入器の作動に合わせる必要がないこと、および用量を吸気流の最適な点で送達できることを意味する。そのような吸入器を、一般に「呼吸作動式」と呼ぶ。
【0130】
上述のRotohalerやDiskhalerなど、従来の吸入器を利用する本発明の実施形態では、担体粒子の粒径は、約10〜約1000μmに及んでよい。これらの実施形態のいくつかでは、担体粒子の粒径が、約20μmから約120μmに及んでよい。これらの実施形態の、その他のいくつかでは、担体粒子の少なくとも90重量%のサイズが1000μm未満であり、好ましくは60μmから1000μmの間にある。これらの担体粒子の比較的大きいサイズは、良好な流動および巻込み特性をもたらす。
【0131】
これらの実施形態で、粉末は、賦形剤物質の微粒子を含有してもよく、これは例えば、担体物質としての使用に適しているとして既に述べられた物質のいずれか、特に、デキストロースやラクトースのような結晶糖などの物質を含有してもよい。微細な賦形剤物質は、担体粒子と共に存在する場合、この担体粒子と同じかまたは異なった物質のものでよい。微細な賦形剤物質の粒径は、一般に30μmを超えず、好ましくは20μmを超えない。
【0132】
粉末は、送達および放出を補助するために、追加の賦形剤と共に処方してもよい。例えば、上記論じたように、粉末組成物は、粉末の流動性を促進させる比較的大きい担体粒子、例えばその空気動力学粒径が30μmよりも大きく、40μmよりも大きく、60μmよりも大きく、またはさらに90μmよりも大きい粒子と共に処方することができる。あるいは、または追加として、疎水性微粒子を本発明の組成物中に含めることができる。好ましい疎水性物質には、オレイン酸やラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、エルカ酸、ベヘン酸、またはこれらの誘導体(エステルや塩など)などの、固体状態の脂肪酸が含まれる。そのような物質の特定の例には、ホスファチジルコリン、ホスファチジルグリセロール、その他の天然および合成肺サーファクタントの例が含まれる。特に好ましい物質には、ステアリン酸金属塩、特にステアリン酸マグネシウムであって、肺を介した送達が認められているものが含まれる。
【0133】
大きい担体粒子は、上記論じたDiskhalerやRotaheler吸入器など、受動吸入器を使用して分配させる組成物中に含めた場合、特に有用である。これらの吸入器は、作動時にその吸入器内に激しい乱流を生成せず、したがって、担体粒子が存在することは、粉末の流動性に有益な効果をもたらすことになり、粉末が貯蔵されているブリスターまたはカプセルからのその粉末の抽出を容易にするので、有利である。
【0134】
ある状況では、吸入用の粉末は、粉末の成分を一緒に混合することによって調製することができる。例えば粉末は、活性物質の粒子とラクトースとを一緒に混合することによって調製することができる。
【0135】
例えば上記論じたAspirair吸入器などの、能動吸入器を利用する本発明の実施形態では、担体粒子が好ましくは5〜100μmの間であり、40〜70μmの間の直径または20〜30μmの間の直径でよい。所望の粒径は、例えば、賦形剤を篩い分けることによって実現することができる。40〜70μmの間の所望の粒径範囲の場合、物質は、45μmおよび63μmのスクリーンを通して篩い分けることができ、それによって、45μmスクリーンを通過する粒子を排除し、63μmスクリーンを通過しない粒子を排除する。賦形剤は、ラクトースであることが最も好ましい。
【0136】
活性粒子の、好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも99%は、その直径が5μm以下である。以下に詳細に述べるように、そのような製剤は、好ましい能動吸入器を介して投与した場合、約80%を超える微粒子分率、および約70%を超える超微粒子分率を提供することができる。
【0137】
分配器の作動時に、その内部に激しい乱流が生成されるような製剤では、粉末は、その粉末の流動性を高めるための大きい担体粒子を含む必要がない。分配器は、粉末の流動性が不十分であっても、その粉末を抽出することが可能であり、したがってそのような製剤で使用される希釈剤物質は、より小さい粒径を有することができる。一実施形態では、賦形剤物質の粒子は、その直径が10μm以下であってもよい。
【0138】
本発明の粉末組成物が一般に使用されることになる乾燥粉末吸入器には、個々の用量の粉末組成物が、例えば吸入器の単回用量カプセルまたはブリスターに導入される「単回用量」吸入器、例えばRotahaler(登録商標)およびSpinhaler(登録商標)が含まれ、また、吸入器が作動すると、この吸入器に含まれる粉末物質のリザーバから1回分の用量の粉末が取り出される複数回用量吸入器、例えばTurbohaler(登録商標)も含まれる。
【0139】
既に述べたように、ある粉末の場合、能動吸入器は、その他の形態の吸入器を使用した場合よりも、より高い微粒子分率と、用量ごとにより一貫した再現性とが得られることになる、という利点をもたらす。そのような吸入器には、例えばAspirair(登録商標)またはNektar Therapeutics能動吸入器が含まれ、エアロゾル化した雲状粉末の発生が患者の吸入によって引き起こされる種類の、呼吸作動式吸入器でよい。
【0140】
存在する場合、担体粒子の量は、粉末の全重量に対して99重量%まで、95重量%まで、90重量%まで、80重量%まで、または50重量%まででよい。存在する場合、任意の微細な賦形剤物質の量は、粉末の全重量に対して90重量%まで、50重量%まで、および有利な場合には30重量%まで、特に20重量%まででよい。
【0141】
粉末粒子の粒径について述べる場合、他に特に示さない限り、粒径は、体積加重粒径であることが理解されよう。粒径は、レーザ回折法によって計算することができる。粒子が、この粒子の表面に添加剤物質も含む場合、被覆された粒子の粒径も、被覆されていない粒子に関して述べられた好ましいサイズ範囲内にあることが有利である。
【0142】
活性物質の粒子を、できる限り高い比率で肺の深い部分に送達することが明らかに望ましいが、通常は、できる限り少ないその他の成分を、肺の深い部分に浸透させることが好ましい。したがって粉末は、一般に、活性物質粒子と、この活性物質粒子を運ぶための担体粒子とを含む。
【0143】
WO01/82906に記載されるように、添加剤物質は、ある用量を投与したことが患者に示される、その用量で提供してもよい。下記においてインジケータ物質と呼ばれる添加剤物質は、乾燥粉末吸入器用に処方されたものとして粉末中に存在させてもよく、あるいは、添加剤が、活性物質を含有する粉末と同時にまたはそのような粉末に続いて吸入時に発生した空気流中に混入されるよう、吸入器内の個別の位置に存在させるなど、個別の形で存在させてもよい。
【0144】
ある状況では、例えば、存在する任意の担体粒子および/または任意の微細な賦形剤物質が、口咽頭領域内に感覚を引き起こすことの可能な物質そのものである場合、その担体粒子および/または微細な賦形剤物質は、インジケータ物質を構成することができる。例えば、担体粒子および/または任意の微粒子賦形剤は、マンニトールを含んでよい。別の適切なインジケータ物質は、メントールである。
【0145】
本発明の、ある実施形態では、各用量を、ブリスターパックのホイル「ブリスター」に貯蔵する。ホイルブリスターを利用する本発明の実施形態によれば、各用量を、封止されたホイルブリスター内に貯蔵することによって、製剤の投与前の空気に対する曝露が、低減されまたは予防される。ある状況では、例えばアルミニウムホイルなどのホイル製の封止バッグなど、別の封止容器に複数のブリスターを配置することによって、製剤をさらに保護することが望ましいと考えられる。別の機械的保護も、貯蔵中および輸送中などに、封止ブリスターを損傷から保護するのに望ましいと考えられる。封止ホイルブリスター(および任意選択の封止バッグ、および/またはその他の保護パッケージ)の使用により、製剤中に酸化防止剤などを含める必要が全くなくなる。
【0146】
本発明で使用することができるブリスターは、ベースおよび蓋からなる。ベース材料は、薬物に接触するポリマー層と、軟質強化アルミニウム層と、外部ポリマー層とを含んだラミネートであることが好ましい。アルミニウムは、湿分および酸素の障壁を提供するのに対し、ポリマーは、薬物に接触する比較的不活性な層を提供する。軟質強化アルミニウムには延性があり、したがって、ブリスター形状に「冷間形成」することができる。これは典型的な場合、45〜47μmの厚さである。外部ポリマー層は、追加の強度をラミネートに与える。蓋材料は、ヒートシールラッカーと、硬質圧延アルミニウム層(典型的な場合、20〜30μmの厚さ)と、外部ポリマー層とを含んだラミネートである。ヒートシールラッカーは、ヒートシール中に、ベースホイルラミネートのポリマー層と結合する。アルミニウム層は、穿刺が容易になるように硬質圧延する。薬物に接触するポリマー層の材料には、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリプロピレン(PP)、およびポリエチレン(PE)が含まれる。ベースホイル上の外部ポリマー層は、典型的な場合、延伸ポリアミド(oPA)である。
【0147】
(加圧計量式吸入器製剤)
加圧計量式吸入器(pMDI)は、典型的な場合、2つの構成要素を有し、すなわち薬物粒子、この場合は抗うつ薬が、懸濁体または溶液の形で加圧下で貯蔵されるキャニスタ構成要素と、このキャニスタを保持し作動させるのに使用されるレセプタクル構成要素とを有する。典型的な場合、キャニスタは、複数回用量の製剤を含むことになるが、単回用量キャニスタを有することも可能である。キャニスタ構成要素は、典型的な場合、キャニスタの内容物を放出することができる弁付き出口を含む。エアロゾル薬品は、キャニスタ構成要素に力を加えてレセプタクル構成要素に押し込み、それによって弁付き出口を開放し、弁付き出口からレセプタクル構成要素を通して薬品を移送させ、レセプタクル構成要素の出口から放出することによって、pMDIから分配される。キャニスタからの放出時、薬品は「噴霧化」され、エアロゾルを形成する。
【0148】
薬品粒子が患者の吸気流に巻き込まれ、肺に運ばれるように、患者は、自身の吸入に合わせてエアロゾル化薬品の放出を調整することになる。
【0149】
典型的な場合、pMDIは、キャニスタの内容物を加圧するために、かつ薬品をレセプタクル構成要素の出口から外に押し出すために、噴射剤を使用する。PMDI吸入器では、製剤が液体の形で提供され、噴射剤と一緒に容器内に存在する。噴射剤は、様々な形をとることができる。例えば噴射剤は、圧縮気体または液化気体を含むことができる。適切な噴射剤には、CFC 11やCFC 12などのCFC(クロロフルオロカーボン)噴射剤、ならびにHFA134aやHFA227などのHFA(ヒドロフルオロカーボン)噴射剤が含まれる。1種または複数の噴射剤を、所与の製剤に使用することができる。
【0150】
より良好に吸入器の作動と吸入とを合わせるため、呼吸作動式弁システムを使用することができる。そのようなシステムは、例えばBaker Nortonおよび3Mから入手可能である。そのような機器を使用するため、患者はその機器を「準備」し、次いで患者が吸入したときに用量を自動的に噴射させる。
【0151】
ある実施形態では、pMDI製剤は、「懸濁体」タイプの製剤または「溶液」タイプの製剤のいずれかであり、それぞれは、噴射剤として液化気体を使用している。生体内でのpMDI製剤の効果は、治療効果までの時間および治療効果の持続時間に関し、上述のDPI製剤の場合と同様と考えられる。
【0152】
(溶液pMDI)
pMDI技術の中で、溶液pMDIは、最も微細なミストを提供するので、かつ吸入器に修正を加えることによってより容易に最適化できるので、全身肺送達に最も適切であると考えられる。最近開発された弁(例えばBespakから入手可能)は、現行のシステムにも優るペイロードの増大をもたらすが、これは、懸濁タイプのpMDIよりも、より多くの全身用量を、溶液pMDIで送達できる可能性があることを意味する。溶液pMDI技法は、HFA噴射剤と共に抗うつ薬を送達するための、製剤を調製するのに使用することができる。
【0153】
(懸濁pMDI)
懸濁pMDIも、抗うつ薬を肺に送達するのに使用することができる。しかし、懸濁pMDIには、いくつかの欠点がある。例えば懸濁pMDIは、一般に、溶液pMDIよりも少ない用量を送達し、懸濁に関係するその他の問題、例えば用量の非一貫性や、弁の遮断、および懸濁体の不安定性(例えば沈降)が生じがちになる。これらの理由、およびその他の理由で、懸濁pMDIは、溶液pMDIよりも、処方しかつ製造するのがさらに複雑になる傾向がある。
【0154】
本発明の一実施形態によれば、抗うつ薬用の懸濁pMDIが提供される。懸濁pMDIの噴射剤は、2種の市販されているHFA噴射剤のブレンドであることが好ましく、HFA227(1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン)およびHFA134a(1,1,1,2-テトラフルオロエタン)のブレンドであることが最も好ましい。一実施形態では、Bespak BK630シリーズ0.22mmアクチュエータを備えた3M被覆(Dupont 3200 200)キャニスタ内で、約60%のHFA227と約40%のHFA134aのブレンドを、抗うつ薬と共に使用する。
【0155】
(噴霧システム)
別の可能な投与方法は、噴霧システムを介するものである。そのようなシステムには、従来の超音波噴霧システムと、ジェット噴霧システム、ならびに最近導入された、Respimat(Boehringer Ingelheimから入手可能)やAERx(Aradigmから入手可能)などの手持ち式機器が含まれる。そのようなシステムでは、抗うつ薬を、例えばメタ重亜硫酸ナトリウムなどの酸化防止剤と共に滅菌水溶液中で安定化することができる。用量は、上述の場合と同様でよく、噴霧システムで、肺に到達することになるより低いパーセンテージの抗うつ薬が考慮されるよう、調節することができる。これらのシステムを使用することができるが、これらは明らかに、効率および使い易さの点で、上述のDPIシステムより劣っている。
【実施例】
【0156】
(実施例-ジェット粉砕)
本発明を示す様々な実施例について、以下に論じる。他に特に示さない限り、実施例で使用される吸入器は、Vectura Limited製のAspirair原型吸入器であった。
【0157】
製剤を、Hosokawa AS50ジェットミルを使用して、市販の塩酸クロミプラミン粉末から生成した。純粋な薬物をこのミルに通し、または5%w/wの力制御剤を添加した薬物を通した。ミルは、様々なパラメータと共に使用した。主に、これらはインジェクタ空気圧、研削空気圧、および粉末供給速度であった。
【0158】
製剤1: 純粋な塩酸クロミプラミンを、超微粉砕機に3回通し、それぞれ通すごとに、インジェクタ空気圧を8バール、研削空気圧を1.5バール、粉末供給速度を約1g/分とした。Malvern(乾燥粉末)粒径測定によれば、d(50)は1.2μmであった。
【0159】
製剤2: 製剤1と、5%の微粉化した1-ロイシンとを、乳鉢内でへらを用いて予備混合した。このブレンドを、インジェクタ空気圧を8バールとし、研削空気圧を1.5バールとし、粉末供給速度を約1g/分として、さらに微粉化した。Malvern(乾燥粉末)粒径測定によれば、d(50)は1.2μmであった。
【0160】
製剤3: 純粋な塩酸クロミプラミンを、インジェクタ空気圧を7バールとし、研削空気圧を5バールとし、粉末供給速度を約10g/分として、微粉化した。Malvern(乾燥粉末)粒径測定によれば、d(50)は1.0μmであった。
【0161】
製剤4: 純粋な塩酸クロミプラミンを、インジェクタ空気圧を7バールとし、研削空気圧を5バールとし、粉末供給速度を約10g/分として、微粉化した。この微粉化したクロミプラミンと、5%の微粉化した1-ロイシンとを、乳鉢内でへらを用いて予備混合した。次いでこのブレンドを、インジェクタ空気圧を7バールとし、研削空気圧を5バールとし、粉末供給速度を約10g/分として、微粉化した。Malvern(乾燥粉末)粒径測定によれば、d(50)は0.95μmであった。
【0162】
製剤5: 塩酸クロミプラミンと、5%のステアリン酸マグネシウムとを、乳鉢内でへらを用いて予備混合した。このブレンドを、インジェクタ空気圧を7バールとし、研削空気圧を5バールとし、粉末供給速度を約10g/分として、微粉化した。Malvern(乾燥粉末)粒径測定によれば、d(50)は0.95μmであった。
【0163】
製剤6: 純粋な塩酸クロミプラミンを、インジェクタ空気圧を7バールとし、研削空気圧を1バールとし、粉末供給速度を約1g/分として、微粉化した。Malvern(乾燥粉末)粒径測定によれば、d(50)は1.8μmであった。
【0164】
次いで予備的に微粉化したこの塩酸クロミプラミンと、5%の微粉化した1-ロイシンとを、乳鉢内でへらを用いてブレンドした。次いでこのブレンドを、インジェクタ空気圧を7バールとし、研削空気圧を1バールとし、粉末供給速度を約1g/分として、微粉化した。Malvern(乾燥粉末)粒径測定によれば、d(50)は1.38μmであった。
【0165】
製剤7a: 純粋な塩酸クロミプラミンを、インジェクタ空気圧を7バールとし、研削空気圧を1バールとし、粉末供給速度を約10g/分として、微粉化した。Malvern(乾燥粉末)粒径測定によれば、d(50)は3.5μmであった。
【0166】
次いで予備的に微粉化したこの塩酸クロミプラミンと、5%の微粉化した1-ロイシンとを、乳鉢内でへらを用いてブレンドした。次いでこのブレンドを、インジェクタ空気圧を7バールとし、研削空気圧を1バールとし、粉末供給速度を約10g/分として、微粉化した。Malvern(乾燥粉末)粒径測定によれば、d(50)は2.0μmであった。
【0167】
製剤7b: 純粋な塩酸クロミプラミンを、インジェクタ空気圧を7バールとし、研削空気圧を3バールとし、粉末供給速度を約1g/分として、微粉化した。Malvern(乾燥粉末)粒径測定によれば、d(50)は1.2μmであった。
【0168】
次いで予備的に微粉化したこの塩酸クロミプラミンと、5%の微粉化した1-ロイシンとを、乳鉢内でへらを用いてブレンドした。次いでこのブレンドを、インジェクタ空気圧を7バールとし、研削空気圧を3バールとし、粉末供給速度を約1g/分として、微粉化した。Malvern(乾燥粉末)粒径測定によれば、d(50)は0.99μmであった。
【0169】
製剤7c: 純粋な塩酸クロミプラミンを、インジェクタ空気圧を7バールとし、研削空気圧を3バールとし、粉末供給速度を約10g/分として、微粉化した。Malvern(乾燥粉末)粒径測定によれば、d(50)は1.6μmであった。
【0170】
次いで予備的に微粉化したこの塩酸クロミプラミンと、5%の微粉化した1-ロイシンとを、乳鉢内でへらを用いてブレンドした。次いでこのブレンドを、インジェクタ空気圧を7バールとし、研削空気圧を3バールとし、粉末供給速度を約10g/分として、微粉化した。Malvern(乾燥粉末)粒径測定によれば、d(50)は1.1μmであった。
【0171】
製剤8a: 塩酸クロミプラミンと、5%の微粉化した1-ロイシンとを、乳鉢内でへらを用いて予備混合した。このブレンドを、インジェクタ空気圧を7バールとし、研削空気圧を5バールとし、粉末供給速度を約10g/分として、微粉化した。Malvern(乾燥粉末)粒径測定によれば、d(50)は1.8μmであった。
【0172】
製剤8b: 純粋な塩酸クロミプラミンを、インジェクタ空気圧を7バールとし、研削空気圧を5バールとし、粉末供給速度を約10g/分として、微粉化した。
【0173】
次いで予備的に微粉化したこの塩酸クロミプラミンと、5%のステアリン酸マグネシウムとを、乳鉢内でへらを用いてブレンドした。次いでこのブレンドを、インジェクタ空気圧を7バールとし、研削空気圧を1バールとし、粉末供給速度を約10g/分として、微粉化した。
【0174】
次いでこの粉末を、10分間、圧縮ギャップが1mmであるHosokawa MechanoFusion Mini-kitで処理した。Malvern(乾燥粉末)粒径測定によれば、d(50)は1.39μmであった。
【0175】
製剤8c: 純粋な塩酸クロミプラミンを、インジェクタ空気圧を7バールとし、研削空気圧を5バールとし、粉末供給速度を約10g/分として、微粉化した。
【0176】
次いで予備的に微粉化したこの塩酸クロミプラミンと、5%のステアリン酸マグネシウムとを、乳鉢内でへらを用いてブレンドした。次いでこのブレンドを、インジェクタ空気圧を7バールとし、研削空気圧を1バールとし、粉末供給速度を約10g/分として、微粉化した。Malvern(乾燥粉末)粒径測定によれば、d(50)は1.38μmであった。
【0177】
製剤8d: 純粋な塩酸クロミプラミンを、インジェクタ空気圧を7バールとし、研削空気圧を5バールとし、粉末供給速度を約10g/分として、微粉化した。この場合、Malvern(乾燥粉末)粒径測定によれば、d(50)は1.67μmであった。
【0178】
Malvern粒径分布は、塩酸クロミプラミンが、非常に容易に小さい粒径に微粉化されたことを示す。例えば製剤3は、5バールという比較的高い研削圧力、および10g/分という比較的速い粉末供給速度での、1回の通過で、1.0μmに微粉化された。
【0179】
研削圧力を低下させると、例えば製剤6の中間粉末のように1バールにすると、より大きい粒子が得られた(d(50)は約1.8μm)。中間研削圧力(3バール)では、中間粒径分布が得られた(製剤7bの中間粉末に関し、d(50)は約1.2μm)。
【0180】
同様に、粉末供給速度を、例えば1〜10g/分に増大させると、製剤6および7aのd(50)を比較することによってわかるように、より大きい粒子が得られた。
【0181】
製剤8aのように、FCA、例えばロイシンの添加は、粉砕効率を低下させるように見えた。しかしこの変化は、ミルへの粉末供給速度に、小さいが有意な増大をもたらした、当初の薬物粉末の流動性に関する付随的な改善によって、引き起こされた可能性がある。その他の研究では、粉砕効率は、この粉末供給速度が10g/分よりも速くなったときに、ますますこの粉末供給速度に敏感になることが観察された。
【0182】
この一連の実施例から、特定のd(50)が選択されるように、粉砕パラメータを設計することが可能であるように思われた。例えば、約1.4のd(50)は、低圧粉砕と低供給速度(製剤6)を繰り返すことによって、あるいは、より速い供給速度(製剤8c)で、より高い圧力とより低い圧力の粉砕を混合することによって得ることができた。
【0183】
次いで、約2mgの各製剤を、ホイルブリスター内に投入し、封止した。次いでこれを、60l/分に設定された空気流を用い、Aspirair吸入器からNext Generation Impactorに噴射した。性能データを、下記表1、2、および3にまとめる。
【0184】
【表2】

【0185】
【表3】

【0186】
【表4】

【0187】
化合物は、吸入器のサイクロンに巻き込まれる傾向が、比較的高いように思われる。吸入器の保持率は、純粋な薬物を使用した場合に高いようであり(20%を超える)、特に、粒径が小さい場合(特に1μm以下)に増大し、例えば製剤1および3は、薬物保持率が高かった。製剤8dは、d(50)が1.8μmであり、吸入器保持率はより低く、12%であった。吸入器保持率は、例えばd(50)が0.95μmにも関わらず12%である製剤5のように、ステアリン酸マグネシウムを使用した場合により低かった。吸入器保持率は、例えば製剤8aのように、1μmより大きい粒径と組み合わせてロイシンを使用した場合、20%よりも低下した。
【0188】
のどの堆積は、粒径が小さくなるのに比例して、減少した。のどの堆積が高い状態(>20%)は、粒径がd(50)>2μmの場合、例えば製剤7aの場合に生じる。のどの堆積が10%よりも低い状態は、粒径が1μmよりも小さい場合に見られた。より小さい粒子の慣性挙動が低下したことが、この観察結果の一因になっていると思われる。しかし上述のように、吸入器保持率は、そのような小さい粒子の場合、より高くなる傾向があった。
【0189】
粒径が小さくなるにつれ、接着性および凝集性の増大によって吸入器保持率が高くなると主張される。この接着性および凝集性、したがって吸入器保持率は、薬物粒子の表面(または、必要に応じて薬物および賦形剤)に付着する力抑制剤を添加することによって、低下させることができる。Aspirairでは、接着性および凝集性のレベルは、過流の存続時間を延ばし、よりゆっくりとした上昇流をもたらすものであることが望ましいと考えられるが、接着性および凝集性は、高い吸入器保持率をもたらすほどには高くないものであるべきである。その結果、Aspirairの最適な性能を実現するために、粒径と、接着性と、凝集性とのバランスが必要になる。
【0190】
FCAとの同時粉砕の単一ステップは、製剤5などのいくつかの実施例で有効であると思われる。多段階処理は、特定の所望の効果が達成されるように各条件を選択する場合、より有効になる可能性があることが示される。例えば第1段階の、純粋な薬物の高圧粉砕は、必要とされるサイズ分布(すなわち約1.4μm)をもたらすのに使用することができ、第2段階の、より低い圧力での同時粉砕は、力制御剤と混合するのに使用することができ、それによって、粉砕なしで、かつ各成分のミル内での分離を減少させた状態で、より良好な混合が実現される。これは、製剤8cに示されており、比較的低いのどの堆積と、低い吸入器保持率との両方の組合せが実現される。
【0191】
粉砕からの粒径の制御は、Aspirairにおける有効な性能に、極めて重要であると思われる。FCAを使用しない場合、d(50)の粒径が、約1.5〜2μmという推定範囲内で十分制御されるという条件で、許容される性能を得ることが可能と考えられる。複数回分のショットの噴射は行わず、したがって吸入器の堆積傾向については評価しなかった。しかし、単一ショットでの吸入器保持率が>10%であることは、高いように思われる。
【0192】
FCAの添加は、単一ショットでの吸入器保持率を、著しく低下させるようであり、ステアリン酸マグネシウムはロイシンよりも効果的である。最適な性能は、ステアリン酸マグネシウムと同時粉砕された、約1.3〜1.8μmの推定範囲内の粒子の場合に見られる。さらに、2段階粉砕は、改善された制御をもたらすことができることが示唆され、第1の段階は適切な粒径を実現し、第2の段階は、低圧下で同時粉砕することによってコーティングを得る。
【0193】
適切な反復製剤、反復試験、用量、回収、安定性、およびアッセイに関する問題に対する注意は、上記結果を確認するのに必要と考えられる。
【0194】
(実施例-噴霧乾燥)
抗うつ薬の、微細な乾燥粉末粒子を調製する代替方法は、噴霧乾燥である。
【0195】
抗うつ薬を含む粒子は、従来の噴霧乾燥技法を使用して調製できるが、噴霧乾燥粒子が「設計製作」されるように噴霧乾燥を適合させた場合、特に良好な性能が観察される。
【0196】
特に、噴霧乾燥した乾燥粉末製剤は、噴霧乾燥装置が、液滴を生成するための従来の二液ノズルに代わるものを含む場合、特に、二液ノズルによって生成されるよりも遅い速度での液滴の移動をもたらす代替物を含む場合に、乾燥粉末吸入器内で有益な性質および優れた性能を示すことがわかった。そのような代替の液滴形成手段の例は、超音波噴霧器(USN)である。USNを使用して形成された、噴霧乾燥した粒子は、従来の噴霧乾燥装置を使用して形成された粒子よりも、より小さく、より稠密になる傾向がある。小粒径分布も観察されている。その上、活性薬剤と添加剤または力制御剤とを同時噴霧する場合、添加剤は、乾燥中に液滴/粒子表面に移動できることが見出され、それによって、添加剤が粒子表面に存在するときに、その添加剤による粒子凝集の制御がより効果的になる。
【0197】
この実施例では、クロミプラミンを含む製剤を、超音波噴霧器を備えた装置を使用する噴霧乾燥によって調製した。製剤を、Aspirair(登録商標)およびMonoHaler(登録商標)吸入器で試験した。
【0198】
塩酸クロミプラミン製剤は、超音波噴霧器ユニットと、噴霧された液滴を加熱チューブに輸送して液滴を乾燥するための気体流と、乾燥した粒子を収集するための濾過ユニットとを含む、噴霧乾燥システムを使用して、元の塩酸クロミプラミン粉末から生成した。
【0199】
水に対して2%w/wを含有する塩酸クロミプラミンの水溶液を作製した。十分なロイシンを添加して、薬物に対して5%w/wにした。
【0200】
この溶液を、2.4MHzの周波数で噴霧し、炉面温度を約300℃に加熱したチューブ炉内に誘導し、その後、乾燥粉末を収集した。気体温度は測定しなかったが、この温度よりも十分低かった。Malvern(乾燥粉末)粒径測定によれば、d(50)は1.1μmであった。
【0201】
Malvern粒径分布は、塩酸クロミプラミンが非常に小さい粒径および分布を有することを示す。d(50)の値は、塩酸クロミプラミンの場合1.1μmである。これに対して分布グラフのモードは1.15である。さらに、分布の広がりは比較的狭く、d(90)の値が2.5μmであり、これは、質量による粉末の実質的に全てが3μm未満であることを示している。
【0202】
次いで塩酸クロミプラミン製剤の約2mgを、ホイルブリスター内に投入し、封止した。これらを、90l/分に設定した空気流を用い、Aspirair吸入器からNex Generation Impactor(NGI)内に噴射した。結果は、単一ブリスターショットに基づいている。
【0203】
塩酸クロミプラミン製剤約20mgを、3号カプセル内に投入し、封止した。塩酸クロミプラミンカプセルは、ゼラチンカプセルであった。次いでこれらのカプセルを、90l/分に設定した空気流を用い、MonoHaler吸入器を使用してNGI内に噴射した。性能データを、以下のようにまとめるが、これらのデータは、2回または3回の測定の平均である。
【0204】
【表5】

【0205】
【表6】

【0206】
【表7】

【0207】
【表8】

【0208】
Aspirair吸入器での吸入器保持率は、驚くほど低く、5%であった。これは、小さい粒径を使用し(d(50)が1.1μm)比較的高い用量を投入したときに、特に低かった。これに対し、d(50)が0.95μmである、5%ロイシンと共に同時ジェット粉砕がなされた塩酸クロミプラミンは、その他の点では同様の環境下で、23%という吸入器保持率を与えた。
【0209】
製剤を分配するのにMonohaler吸入器を使用する場合、この吸入器保持率は、Aspirair吸入器を使用したときに観察された保持率よりも高かった。しかし、9%という吸入器保持率は、>90%の超微細な薬物を含む製剤の場合、依然として、比較的低いようである。
【0210】
のど保持率も、非常に低かった。製剤を、Aspirairを使用して分配したと場合、のど保持率は4%程度に低かったが、吸入器としてMonohalerを使用した場合、その結果は、わずかに高いのど保持率(10%)を示す。
【0211】
以前、粒径が小さくなるにつれて、粉末表面の自由エネルギー、したがって粉末の接着性および凝集性が、増大すると考えられると主張した。これは、増大した吸入器保持率、および不十分な分散を、もたらすことが予想されると考えられる。そのような接着性および凝集性、したがって吸入器保持率/不十分な性能は、薬物粒子表面(必要に応じて、薬物および賦形剤)に付着される力制御剤を添加することによって、低減されることが示された。Aspirairでは、接着性および凝集性のレベルは、過流の存続時間を延ばし、よりゆっくりとした上昇流をもたらすのに望ましいと考えられるが、接着性および凝集性は、高い吸入器保持率をもたらすほどには高くないものであるべきである。その結果、Aspirairの最適な性能を実現するために、粒径と、接着性と、凝集性とのバランスが必要になると考えられる。
【0212】
この粉末に関する分散結果は、Monohalerを吸入器として使用したときに、優れていた。
【0213】
この結果は、超音波ネブライジングプロセスが、粒子表面でのロイシン濃度の最も効果的な相対的濃縮をもたらすことを示すと考えられる。表面濃縮は、乾燥プロセス中の、表面へのロイシン輸送速度、粒径、およびその沈降速度に依存する。この沈降速度は、このプロセスでの粒子のゆっくりとした乾燥に関係する。得られた効果は、粒子表面が、疎水性態様のロイシンによって占有されるということである。これは、粉末の小さい粒径および広い表面積にも関わらず、粉末の表面エネルギーが比較的低いことを示す。したがって、力制御剤の添加は、接着性および凝集性に、したがって吸入器保持率および分散に、優れた影響を与えているようである。
【0214】
ロイシンを含めることによって、塩酸クロミプラミンのエアロゾル化に著しい改善がなされるようであり、この薬物を、高用量受動または能動吸入器での使用に適したものにすべきである。
【0215】
(実施例-pMDI製剤の調製)
本発明による他の組成物は、以下のように調製することができる。クロミプラミンなど、12gの微粉化された抗うつ薬と、4.0gのロイシンSPC-3(Lipoid GMBH)を、ビーカ内に計りとる。粉末を、Hosokawa AMS-MINI MechanoFusionシステムに、蓋の最大ポートに取着された漏斗を介して移すが、このときの装置の運転は3.5%である。このポートを封止し、冷却水のスイッチを入れた。装置を5分間、20%で運転し、その後、50%で10分運転した。装置のスイッチを切り、取り外し、得られた製剤を機械的に回収した。
【0216】
(カンの調製)
0.027gの粉末を、カンに計りとり、50μmの弁をこのカンに圧着し、12.2gのHFA 134aを、このカンに戻して充填した。
【0217】
(実施例-受動吸入器で使用される、MechanoFused製剤の調製)
本発明による別の組成物は、以下のように調製することができる。クロミプラミンなど、20%の微粉化抗うつ薬と、78%のSorbolac 400ラクトースと、2%のステアリン酸マグネシウムとを含む混合物20gを、Hosokawa AMS-MINI MechanoFusionシステムに、蓋の最大ポートに取着された漏斗を介して計りとるが、このときの装置の運転は3.5%である。ポートを封止し、冷却水のスイッチを入れた。装置を5分間、20%で運転し、その後、80%で10分運転した。装置のスイッチを切り、取り外し、得られた製剤を機械的に回収した。
【図面の簡単な説明】
【0218】
【図1】本発明による粉末製剤の送達に使用することができる、好ましい吸入器を概略的に示す図である。
【図2】本発明の粉末製剤の分配に使用される吸入器に使用することができる、非対称過流式チャンバを示す図である。
【図3】非対称吸入器からの過流式チャンバの、代替の形態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0219】
11 過流ノズル
12 過流チャンバ
13 マウスピース
14 ブリスター
16 穿刺ヘッド
17 リザーバ
18 弁
19 呼吸作動機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
肺吸入によって早漏の治療をするための、抗うつ薬を含む組成物。
【請求項2】
前記抗うつ薬が三環式抗うつ薬である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
2種以上の抗うつ薬を含む、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
抗うつ薬ではない別の治療薬を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記別の治療薬が、PEの治療にも有効である、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記別の治療薬がベンゾジアゼピンである、請求項4または請求項5に記載の組成物、
【請求項7】
肺吸入による前記組成物の投与が、通常は抗うつ薬の投与に伴う副作用を伴わない、請求項1から6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
約25mg未満、約20mg未満、約15mg未満、約10mg未満、約5mg未満、約2mg未満、または約1mg未満の用量の抗うつ薬を提供する、請求項1から7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
肺吸入後、30分以下、25分以下、20分以下、15分以下、10分以下、8分以下、6分以下、5、4、3、または2分以下、あるいは1分以下の時間内に治療効果の発現をもたらす、請求項1から8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
乾燥粉末組成物である、請求項1から9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
約10μm以下の空気動力学粒径を有する抗うつ薬の粒子を含む、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記空気動力学粒径が約5μm以下である、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記抗うつ薬の少なくとも90%が、約10μm以下の粒径を有する、請求項10から12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
前記抗うつ薬の少なくとも90%が、約5μm以下の粒径を有する、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
添加剤物質をさらに含む、請求項10から14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
前記添加剤物質が、前記組成物の約0.15重量%から約5重量%の量で提供される、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
前記添加剤物質が、ロイシン、ステアリン酸マグネシウム、レシチン、およびステアリルフマル酸ナトリウムからなる群から選択される、請求項15または請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
賦形剤物質をさらに含む、請求項10から17のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項19】
前記賦形剤物質が、約40から約70μmの平均粒径を有する担体粒子の形をとる、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
噴射剤、溶媒、および水を含む溶液pMDI製剤を含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項21】
噴射剤を含む懸濁pMDI製剤である、請求項1から9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項22】
前記噴射剤が、HFA134aおよび/またはHFA227である、請求項20または請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
早漏を治療する方法であって、そのような治療を必要とする患者に、請求項1から22のいずれか一項に記載の組成物を投与することを含む方法。
【請求項24】
通常は抗うつ薬の投与に伴う副作用を引き起こさない、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
肺吸入によって早漏を治療する薬品の製造における、抗うつ薬の使用であって、前記薬品が、請求項1から22のいずれか一項に記載の組成物を含むものである使用。
【請求項26】
前記薬品が、通常は抗うつ薬の投与に伴う副作用を引き起こさない、請求項25に記載の使用。
【請求項27】
請求項1から22のいずれか一項に記載の組成物を含む、乾燥粉末吸入器。
【請求項28】
能動吸入器である、請求項27に記載の乾燥粉末吸入器。
【請求項29】
呼吸作動式吸入器である、請求項27または28に記載の乾燥粉末吸入器。
【請求項30】
請求項27から29のいずれか一項に記載の乾燥粉末吸入器で使用される、前記組成物を含むブリスター。
【請求項31】
吸入による組成物の投与によって誘発される前記副作用がある場合には、前記副作用は、平均的なレシピエントが容易に耐えられるものである、請求項1から22のいずれかに記載の組成物、請求項23または24に記載の方法、請求項25または26に記載の使用、請求項27から29のいずれかに記載の吸入器、あるいは請求項30に記載のブリスター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−505831(P2007−505831A)
【公表日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−525903(P2006−525903)
【出願日】平成16年9月15日(2004.9.15)
【国際出願番号】PCT/GB2004/003935
【国際公開番号】WO2005/025550
【国際公開日】平成17年3月24日(2005.3.24)
【出願人】(504085521)ベクトゥラ・リミテッド (15)
【Fターム(参考)】