説明

肺炎球菌表面付着因子Aタンパク質(PsaA)に関する結合メンバー

本発明は、肺炎連鎖球菌表面付着因子A(PsaA)タンパク質に特異的に結合することが可能な少なくとも1つの結合ドメインを含む結合メンバー、特に少なくとも2つの結合ドメインを有する結合メンバー、診断方法ならびに処置のための上記結合メンバーの使用、に関する。好ましい実施形態において、上記結合メンバーは、抗体(例えば、ヒト抗体、またはそのフラグメント)であり、それはまた、二重特異性抗体であり得る。上記結合メンバーは、連鎖球菌属、特に肺炎連鎖球菌に関する疾患および障害を予防および処置するための薬学的組成物での使用に適する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)表面付着因子A(PsaA)タンパク質に特異的に結合することが可能な少なくとも1つの結合ドメインを含む結合メンバー、特に少なくとも2つの結合ドメインを有する結合メンバー、診断方法ならびに処置のための上記結合メンバーの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
(背景)
肺炎連鎖球菌は、生命を脅かす細菌感染の主な原因の1つである。発展途上国において、数百万の5才未満の子供が、毎年肺炎連鎖球菌が原因で死亡すると推定されている(3)。工業化した世界では、肺炎連鎖球菌肺炎の発生率は、100,000人あたり5人〜10人であり、そしてその致死率は5%〜7%である。肺炎連鎖球菌髄膜炎は、100,000人あたり1人〜2人に発生し、致死率は30%〜40%である(14)。肺炎連鎖球菌は、菌血の最も多い原因の1つである。肺炎連鎖球菌は、中耳炎を有する子供から単離される最も多い生物体である。6才未満の全ての子供のうちの約75%は、中耳炎に苦しむ。
【0003】
肺炎連鎖球菌は、対または短連鎖で増殖するグラム陽性細菌である。その表面は、3つの層(莢膜、細胞壁および形質膜)から構成されている。莢膜は、最も厚い層であり、増殖する肺炎連鎖球菌の内部構造を完全に隠す。オリゴ糖類(多糖類)の反復単位のポリマーが、その莢膜を占めている。異なる血清型が、それらの莢膜の一部としてリビトール、アラビチノール(arabitinol)またはホスホリルコリンを含み、血清型に特異的な化学的構造を生ずる。細胞壁は、ペプチドグリカンからなるが、テイコ酸およびリポテイコ酸からもなる。形質膜は、細胞を取り包みそして種々の分子をその表面へ固定する、二重リン脂質膜である(2)。
【0004】
現在、肺炎連鎖球菌の莢膜の多様性に基づいて、90種類の異なる型の肺炎連鎖球菌が認識されている(26)。この莢膜は、肺炎連鎖球菌感染の病原において重要である。1つの莢膜型に対して生じる抗体は、この型の感染からの防御を提供するが、他の莢膜型の感染に対しては提供しない。現在の23の結合価の多糖類ワクチンは、最も多い血清型の60%〜85%よりも多くからの防御を提供する。
【0005】
細胞壁は、2つの多糖類(C−多糖類(C−PS)(テイコ酸およびペプチドグリカン)およびF−抗原(リポテイコ酸、フォルスマン抗原))を含む(26)。肺炎連鎖球菌以外の細菌は、C−PS(例えば、α−連鎖球菌属)を含む(12)。F−抗原は、連鎖球菌性の群C多糖類と交差反応する(29)。莢膜多糖類に対するいくつかの抗体は、おそらくC−PSと交差反応する。なぜなら、これらは、共有結合しているからである。抗C−PS抗体の防御的な役割は、議論の余地がある。なぜなら、いくつかの研究は、マウスにおいてこれらの抗体が防御的であることを見出しているが(6)、他の研究は見出していないからである(20;28)。防御の欠如は、C−PSの莢膜隠匿(capsular concealment)によってもたらされると考えられている。C−PSに対する抗体は、無莢膜の菌株によって感染される宿主を防御するか、またはその莢膜を落とす減衰する肺炎連鎖球菌に結合し得る。F−抗原を用いるマウスの免疫は、肺炎連鎖球菌感染に対して防御しない(4)。
【0006】
肺炎球菌表面付着因子A(PsaA)は、37−kDaの表面タンパク質である。PsaAに関するモノクローナル抗体は、24の異なる莢膜を有する肺炎連鎖球菌の溶解物のうちの24と反応し、そして多くの他の細菌のどれとも反応しなかった(23)。23の莢膜血清型を示す80の菌株由来のpsaA遺伝子のRFLP分析は、それらが高度に保存されることを示した(24)。PsaAを用いるマウスの免疫は、3型肺炎連鎖球菌に対する防御を提供した(32)。ネイティブのPsaAは、標準的な方法によって精製される(25;33)。組換えPsaAは、バキュロウイルスベクター系において発現され得る(10)。抗rPsaA免疫血清は、コントロールマウスと比較して、肺炎連鎖球菌血清型6Bに対してマウスに防御を与えた(10)。少なくとも6つの異なるモノクローナル抗体が報告され(9;23)、そして診断目的のために提案されたが、肺炎連鎖球菌に関連する疾患の処置は、これらの抗体と共には提案されていない。
【0007】
IgAからPsaAは、2才未満の子供(261人中193人)および成人(17人中17人)由来の唾液中に検出可能である(34)。抗PsaA IgGは、EIAによって2才未満のほとんどの子供(1108人中872人)およびほとんどの成人(325人中262人)に検出可能であった(35)。セロコンバージョンは、キャリアの状態に関連があった。すなわち、鼻咽頭標本または中耳標本から培養される肺炎連鎖球菌を有したことのある子供は、抗PsaA IgG陽性になる可能性が高かった。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0008】
(要旨)
本発明は、肺炎連鎖球菌表面付着因子A(PsaA)タンパク質に特異的に結合することが可能な少なくとも1つの結合ドメインを含む結合メンバーに関し、その結合メンバーは、連鎖球菌属、特に肺炎連鎖球菌に関する疾患および障害を予防および処置するための薬学的組成物での使用に適する。
【0009】
それゆえ、1つの実施形態において、本発明は、肺炎連鎖球菌表面付着因子A(PsaA)タンパク質に特異的に結合することが可能な少なくとも1つの結合ドメインを含む単離された結合メンバーに関し、その結合ドメインは、1×10−6M未満であるPsaAに対する解離定数Kを有する。好ましくは、上記結合ドメインを含む結合メンバーは、上で規定される解離定数Kを有する。
【0010】
その高結合力に起因して、上記結合メンバーは、薬学的組成物での使用に適する。
【0011】
別の局面において、本発明は、少なくとも第一結合ドメインおよび第二結合ドメインを含む、単離された結合メンバーに関し、その第一結合ドメインは、肺炎連鎖球菌表面付着因子A(PsaA)タンパク質に特異的に結合することが可能である。
【0012】
本発明による結合メンバーは、好ましくは、抗体または抗体のフラグメントである。この抗体は、当業者に公知の任意の適切な方法によって産生され得るが、その結合メンバーの少なくとも一部は、組換え技術を通じて産生されることが好ましい。それゆえ、本発明は、1つの局面において、上述されるような結合メンバーの少なくとも一部をコードする単離された核酸分子、ならびに、上で規定される核酸分子を含むベクターおよび上で規定される核酸分子を含む宿主細胞に関する。
【0013】
本発明は、さらに、上で規定されるような結合メンバーの少なくとも一部を発現するように操作された細胞株に関し、より好ましくは、上で規定されるような全結合メンバーを発現するように操作された細胞株に関する。
【0014】
さらなる局面において、本発明は、個体において肺炎球菌に関連する疾患または障害を検出または診断する方法に関し、その方法は、
その個体に由来する生物学的サンプルを提供する工程、
上で規定されるような少なくとも1つの結合メンバーを生物学的サンプルに添加する工程、
その生物学的サンプルに結合された結合メンバーを検出し、それによってその疾患または障害を検出または診断する工程、
を包含する。
【0015】
また、上記方法において、本発明は、さらに、上で規定されるような少なくとも1つの結合メンバーを含むキットに関し、その結合メンバーは、診断方法での使用のために標識される。
【0016】
なお別の局面において、本発明は、上で規定されるような少なくとも1つの結合メンバーを含む薬学的組成物に関する。
【0017】
さらに、本発明は、肺炎連鎖球菌に関連する障害または疾患(例えば、肺炎、髄膜炎および/または敗血症)の処置または予防用の薬学的組成物の生成のための、上で規定されるような結合メンバーの使用に関する。
【0018】
なおさらなる局面において、本発明は、上で規定されるような結合メンバーの有効量を投与することによって、肺炎連鎖球菌に関連する障害または疾患(例えば、肺炎、髄膜炎および/または敗血症)に苦しむ個体を処置または防御するための方法に関する。
【0019】
(配列表)
(配列番号および名称)
配列番号1:CDR1抗PsaA 7−1G9 VK DNA配列
配列番号2:CDR1抗PsaA 7−1G9 VK アミノ酸配列
配列番号3:CDR2抗PsaA 7−1G9 VK DNA配列
配列番号4:CDR2抗PsaA 7−1G9 VK アミノ酸配列
配列番号5:CDR3抗PsaA 7−1G9 VK DNA配列
配列番号6:CDR4抗PsaA 7−1G9 VK アミノ酸配列
配列番号7:抗PsaA 7−1G9 VK DNA配列
配列番号8:抗PsaA 7−1G9 VK アミノ酸配列
配列番号9:CDR1抗PsaA 7−1G9 VH DNA配列
配列番号10:CDR1抗PsaA 7−1G9 VH アミノ酸配列
配列番号11:CDR2抗PsaA 7−1G9 VH DNA配列
配列番号12:CDR2抗PsaA 7−1G9 VH アミノ酸配列
配列番号13:CDR1抗PsaA 7−1G9 VH DNA配列
配列番号14:CDR3抗PsaA 7−1G9 VH アミノ酸配列
配列番号15:抗PsaA 7−1G9 VH DNA配列
配列番号16:抗PsaA 7−1G9 VH アミノ酸配列
配列番号17:CDR1抗PsaA 1−15E5 VK DNA配列
配列番号18:CDR1抗PsaA 1−15E5 VK アミノ酸配列
配列番号19:CDR2抗PsaA 1−15E5 VK DNA配列
配列番号20:CDR2抗PsaA 1−15E5 VK アミノ酸配列
配列番号21:CDR3抗PsaA 1−15E5 VK DNA配列
配列番号22:CDR3抗PsaA 1−15E5 VK アミノ酸配列
配列番号23:抗PsaA 1−15E5 VK DNA配列
配列番号24:抗PsaA 1−15E5 VK アミノ酸配列
配列番号25:CDR1抗PsaA 1−15E5 VH DNA配列
配列番号26:CDR1抗PsaA 1−15E5 VH アミノ酸配列
配列番号27:CDR2抗PsaA 1−15E5 VH DNA配列
配列番号28:CDR2抗PsaA 1−15E5 VH アミノ酸配列
配列番号29:CDR3抗PsaA 1−15E5 VH DNA配列
配列番号30:CDR3抗PsaA 1−15E5 VH アミノ酸配列
配列番号31:抗PsaA 1−15E5 VH DNA配列
配列番号32:抗PsaA 1−15E5 VH アミノ酸配列
配列番号33:CDR1抗PsaA 9A7 VK DNA配列
配列番号34:CDR1抗PsaA 9A7 VK アミノ酸配列
配列番号35:CDR2抗PsaA 9A7 VK DNA配列
配列番号36:CDR2抗PsaA 9A7 VK アミノ酸配列
配列番号37:CDR3抗PsaA 9A7 VK DNA配列
配列番号38:CDR3抗PsaA 9A7 VK アミノ酸配列
配列番号39:抗PsaA 9A7 VK DNA配列
配列番号40:抗PsaA 9A7 VK アミノ酸配列
配列番号41:CDR1抗PsaA 9A7 VH DNA配列
配列番号42:CDR1抗PsaA 9A7 VH アミノ酸配列
配列番号43:CDR2抗PsaA 9A7 VH DNA配列
配列番号44:CDR2抗PsaA 9A7 VH アミノ酸配列
配列番号45:CDR3抗PsaA 9A7 VH DNA配列
配列番号46:CDR3抗PsaA 9A7 VH アミノ酸配列
配列番号47:抗PsaA 9A7 VH DNA配列
配列番号48:抗PsaA 9A7 VH アミノ酸配列
配列番号49:PsaA A−改変体DNA配列
配列番号50:PsaA A−改変体アミノ酸配列
配列番号51:ペプチド9136
配列番号52:ペプチド9137
配列番号53:ペプチド9138
配列番号54:PsaA 1−65アミノ酸配列
配列番号55:PsaA DNA配列
配列番号56:PsaA アミノ酸配列。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】

(発明の詳細な説明)
(定義)
親和力:レセプターとそれらのリガンドとの間(例えば、抗体とその抗原との間)の結合する力。
【0021】
アビディティ:抗体の、その抗原と機能的に結合する力であり、その抗原は、そのエピトープとパラトープとの間の反応の親和力、ならびにその抗体および抗原の結合価の両方に関連する。
【0022】
アミノ酸残基:そのペプチド結合におけるポリペプチドの化学的消化(加水分解)の際に形成されるアミノ酸。本明細書において記載されるアミノ酸残基は、好ましくは、「L」異性体形態である。しかし、所望の機能的特性が上記ポリペプチドによって保持される限り、「D」異性体形態の残基は、任意のL−アミノ酸残基に置換され得る。NHは、ポリペプチドのアミノ末端に存在する遊離アミノ基をいう。COOHは、ポリペプチドのカルボキシル末端に存在する遊離カルボキシル基をいう。標準ポリペプチドと一致して、アミノ酸残基の略称が、以下の対応表に示される。
【0023】
(対応表)
(記号)
1文字 3文字 アミノ酸
Y Tyr チロシン
G Gly グリシン
F Phe フェニルアラニン
M Met メチオニン
A Ala アラニン
S Ser セリン
I Ile イソロイシン
L Leu ロイシン
T Thr スレオニン
V Val バリン
P Pro プロリン
K Lys リジン
H His ヒスチジン
Q Gln グルタミン
E Glu グルタミン酸
Z Glx Gluおよび/またはGln
W Trp トリプトファン
R Arg アルギニン
D Asp アスパラギン酸
N Asn アスパラギン
B Asx Asnおよび/またはAsp
C Cys システイン
X Xaa 不明またはその他

本明細書に式で表される全てのアミノ酸残基配列は、アミノ末端からカルボキシル末端にかけての従来の方向に、左から右の方向を有することに注意するべきである。さらに、成句「アミノ酸残基」は、対応表に列挙されるアミノ酸ならびに改変されたアミノ酸および異常なアミノ酸を含むように広く規定される。その上、アミノ酸残基配列の開始部分または終止部分におけるダッシュ記号は、1つ以上のアミノ酸残基のさらなる配列へのペプチド結合、またはアミノ末端基(例えば、NHまたはアセチル基)への共有結合もしくはカルボキシ末端基(例えば、COOH)への共有結合を示すことに注意すべきである。
【0024】
抗体:種々の文法的な形において、用語、抗体は、本明細書において免疫グロブリン分子、および本発明の組成物の免疫グロブリン分子(すなわち、抗体結合部位またはパラトープを含む分子)の免疫学的に活性な部分をいうように使用される。典型的な抗体分子は、無傷な免疫グロブリン分子、実質的に無傷な免疫グロブリン分子および免疫グロブリン分子の部分(Fab、Fab’、F(ab’)およびFvとして当該分野において公知のそれらの部分を含む)である。Fabの模式図が、図1に示されている。本明細書において使用される場合、用語「抗体」はまた、ヒト抗体、単鎖抗体およびヒト化抗体、ならびにそのような抗体の結合フラグメントまたはそのような抗体の改変形の結合フラグメント(例えば、抗体分子由来の少なくとも1つの抗原結合決定基を有する、多重特異性分子、二重特異性分子およびキメラ分子)を含むことが意図される。
【0025】
抗体クラス:その重鎖定常ドメインのアミノ酸配列に依存して、免疫グロブリンは、異なるクラスに割り当てられ得る。免疫グロブリンには少なくとも5つの主要なクラスがあり(IgA、IgD、IgE、IgGおよびIgM)、そして、これらのクラスのいくつかは、さらにサブクラス(アイソタイプ)に分類され得る(例えば、IgG−1、IgG−2、IgG−3およびIgG−4;IgA−1およびIgA−2)。免疫グロブリンの異なるクラスに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれ、アルファ(α)、デルタ(δ)、エプシロン(ε)、ガンマ(γ)およびミュー(μ)と呼ばれる。抗体の軽鎖は、それらの定常ドメインのアミノ配列に基づいて、2つの明確に区別される型(カッパ(κ)およびラムダ(λ)と呼ばれる)の1つに割り当てられ得る。免疫グロブリンの異なるクラスのサブユニット構造および三次元構成は、周知である。
【0026】
抗体結合部位:抗体結合部位は、抗原と特異的に結合する(免疫反応する)重鎖可変領域および軽鎖可変領域ならびに超可変領域を含む抗体分子のその構造部分である。種々の形の用語、免疫反応は、抗原決定基含有分子と抗原結合部位を含む分子(例えば、全抗体分子またはその部分)との間の特異的結合を意味する。あるいは、抗体結合部位は、抗原結合部位として公知である。
【0027】
塩基対(bp):二重鎖DNA分子におけるチミン(T)とアデニン(A)、またはグアニン(G)とシトシン(C)の連携。RNAにおいては、ウラシル(U)が、チミンの代わりに用いられる。
【0028】
結合メンバー:肺炎連鎖球菌タンパク質のエピトープに結合し得る(特に、PsaAに特異的に結合し得る)ポリペプチド。
【0029】
結合ドメイン:抗原に特異的に結合する抗原結合部位。結合メンバーは、多重特異的であり得、そして2つの免疫学的に異なる抗原に特異的に結合する2つ以上の結合ドメインを含み得る。
【0030】
キメラ抗体:可変領域がある動物種に由来し、そして定常領域が別の動物の種に由来する抗体。例えば、キメラ抗体は、マウスモノクローナル抗体由来の可変領域およびヒトの定常領域を有する抗体であり得る。
【0031】
相補的塩基:DNAまたはRNAが二重鎖構成をとる場合、通常対になるヌクレオチド。
【0032】
相補性決定領域またはCDR:抗体認識ドメインおよび抗体結合ドメインを共に形成する、抗体のV−ドメイン内の領域。
【0033】
相補的ヌクレオチド配列:DNAまたはRNAの一本鎖分子のヌクレオチド配列であって、別の一本鎖のヌクレオチド配列に十分に相補的であり、結果として生じる水素結合により特異的にその一本鎖にハイブリダイズするヌクレオチド配列。
【0034】
保存される:ヌクレオチド配列が予め選択された配列の正確な相補体にランダムでなくハイブリダイズする場合、そのヌクレオチド配列は、予め選択された(参照)配列に関して保存される。
【0035】
保存的置換:本明細書において使用される場合、用語、保存的置換は、別の生物学的に類似の残基によるアミノ酸残基の置換を意味する。保存的置換の例としては、1つの疎水性残基(例えば、イソロイシン、バリン、ロイシンまたはメチオニン)の別のものへの置換、または1つの極性残基の別のものへの置換(例えば、アルギニンのリジンへの置換、グルタミン酸のアスパラギン酸への置換、グルタミンのアスパラギンへの置換、等)が挙げられる。用語、保存的置換はまた、置換されたポリペプチドを有する分子もまた同じ機能を有するという条件で、置換されていない元のアミノ酸の代わりでの置換されたアミノ酸の使用を含む。
【0036】
定常領域または定常ドメインまたはC−ドメイン:定常領域は、そこで保存的置換を含み得る所定のアイソタイプの中にアミノ酸残基配列を含む抗体分子のそれらの構造部分である。例示的な重鎖免疫グロブリン定常領域は、CH1、CH2、CH3、CH4およびCH5として当該分野で公知の免疫グロブリン分子のそれらの部分である。例示的な軽鎖免疫グロブリン定常領域は、Cとして当該分野で公知の免疫グロブリンのその部分である。
【0037】
ダイアボディ(diabodies):この用語は、2つの抗原結合部位を有する小さい抗体フラグメントをいい、そのフラグメントは、同じポリペプチド鎖(VH−VL)の中の軽鎖可変ドメイン(VL)に連結している重鎖可変ドメイン(VH)を含む。同じ鎖上の2つのドメインの間で対になるには短すぎるリンカーを使用して、そのドメインは、別の鎖の相補的ドメインと強制的に対にされ、そして2つの抗原結合部位が生み出される。ダイアボディは、例えば、EP 404,097;WO 93/11161;およびHollingerら、Proc.Natl.Acad Sci.USA 90:6444−6448(1993)でより十分に記載されている。
【0038】
解離定数、Kd:レセプターとそのリガンド(例えば、抗体とその抗原)との間の結合力(または親和力またはアビディティ)を記載する尺度。Kdが小さいほど、結合は強い。
【0039】
下流:配列転写または読み上げの方向で、DNAの非コード鎖に沿った3’から5’方向またはRNA転写に沿った5’から3’方向に移動するDNA配列にさらに沿うこと。
【0040】
二重鎖DNA:二重鎖の塩基対に存在する相補的塩基の各々の間を1つ以上の水素結合で結合される実質的に相補的ポリヌクレオチドの2つの鎖を含む、二本鎖核酸分子。塩基対を形成するヌクレオチドは、リボヌクレオチド塩基またはデオキシリボヌクレオチド塩基のいずれかであり得るので、成句「二重鎖DNA」は、2つのDNA鎖を含むDNA−DNA二重鎖(dsDNA)または1つのDNA鎖および1つのRNA鎖を含むRNA−DNA二重鎖のいずれかをいう。
【0041】
融合ポリペプチド:少なくとも2つのポリペプチドおよび2つのポリペプチドを1つの連続するポリペプチドに作動可能に連結する連結配列(linking sequence)からなるポリペプチド。融合ポリペプチドに連結された2つのポリペプチドは、代表的には2つの独立した供給源に由来し、それゆえ融合ポリペプチドは、天然では通常連結されるとは見られない2つの連結ポリペプチドを含む。
【0042】
Fv:VおよびVの両方を含む、二重鎖抗体フラグメント。
【0043】
遺伝子:RNAまたはポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を有する核酸。遺伝子は、RNAまたはDNAのいずれかであり得る。
【0044】
ヒト抗体フレームワーク:ヒト免疫グロブリンに由来する、抗原結合部位を有し、その分子の本質的に残りすべてがヒト免疫グロブリン由来の部分である、分子。
【0045】
ヒト化抗体フレームワーク:非ヒト種由来の免疫グロブリンに由来する抗原結合部位を有するのに対して、その分子の残りの免疫グロブリン由来の部分のいくらかまたはすべては、ヒト免疫グロブリンに由来する、分子。その抗原結合部位は、1つ以上のヒト定常ドメインに融合する非ヒト免疫グロブリン由来の完全な可変ドメイン、または可変ドメインの適切なヒトフレームワーク領域に移植される1つ以上の相補性決定領域(CDR)のいずれかを含み得る。ヒト化抗体では、CDRは、マウスモノクローナル抗体に由来し得、そして抗体の他の領域は、ヒト由来である。
【0046】
ハイブリダイゼーション:相補的塩基対の間の水素結合の確立によって二重鎖またはヘテロ二重鎖を形成する、実質的に相補的なヌクレオチド配列の対形成(核酸の鎖)。ハイブリダイゼーションは、競合的に阻害され得る2つの相補的ポリヌクレオチドの間の特異的な(すなわち、ランダムでない)相互作用である。
【0047】
免疫グロブリン:血清抗体であり、IgG、IgM、IgA、IgEおよびIgDが挙げられる。
【0048】
免疫グロブリンアイソタイプ:異なるH鎖を有するIgに与えられる名称。その名称は、IgG(IgG1、2、3、4)、IgM、IgA(IgA1、2)、sIgA、IgE、IgDである。
【0049】
免疫学的に異なる:成句、免疫学的に異なるは、2つのポリペプチドを区別する能力をいい、そのポリペプチドの一方に特異的に結合し、そして他方のポリペプチドに特異的に結合しない抗体の能力に関する。
【0050】
個体:一定の状態(特に、以下に規定される「感染症」)に感受性であることを必要とする、生存する動物またはヒト。被験体は、抗原刺激および増殖因子刺激に反応し得る白血球を有する生物体である。好ましい実施形態において、被験体は、哺乳動物(ヒトおよび非ヒト哺乳動物(例えば、イヌ、ネコ、ブタ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、ラット、およびマウス)が挙げられる)である。最も好ましい実施形態において、被験体は、ヒトである。
【0051】
感染症:連鎖球菌属の1種以上(特に肺炎連鎖球菌)によりもたらされる障害。
【0052】
単離された:天然の環境の構成要素から同定されおよび分離されおよび/または回収され、本明細書によって開示される種々の結合メンバー、ポリペプチドおよびヌクレオチドを記載するために使用される。その天然の環境の汚染要素は、そのポリペプチドの診断上の使用もしくは治療上の使用に通常干渉する物質であり、そして酵素、ホルモン、および他のタンパク様溶質または非タンパク様溶質を含み得る。好ましい実施形態において、ポリペプチドは、精製される。
【0053】
標識および表示手段:種々の文法的な形において、複合体の存在を示す検出可能なシグナルの生成に直接的にまたは間接的に関与する単一の原子および分子をいう。
【0054】
モノクローナル抗体:種々の文法的な形において、成句、モノクローナル抗体は、特定の抗原と免疫反応し得る抗体結合部位のうち1種のみを含む抗体分子の集団をいう。従って、モノクローナル抗体は、代表的にそれが免疫反応する任意の抗原に対し単一の結合親和力を示す。モノクローナル抗体は、各々が異なる抗原に対し免疫特異性である複数の抗体結合部位を有する抗体分子(例えば、二重特異性モノクローナル抗体)を含み得る。
【0055】
マルチマーの:1つより多くのポリペプチドを含むポリペプチド分子。マルチマーは、ダイマーで2つのポリペプチドを含み得、そしてマルチマーはトリマーで3つのポリペプチドを含み得る。マルチマーは、ホモマーで2つ以上の同一のポリペプチドを含むか、またはマルチマーはヘテロマーで2つ以上の同一でないポリペプチドを含み得る。
【0056】
核酸:ヌクレオチドのポリマーであって、単鎖または二重鎖のいずれかである。
【0057】
ヌクレオチド:糖部分(ペントース)、リン酸塩、および窒素含有複素環式塩基からなる、DNAまたはRNAのモノマー単位。その塩基は、グリコシドの炭素(ペントースの1’炭素)を介して糖部分に連結され、そして塩基と糖とのその組み合わせが、ヌクレオシドである。そのヌクレオシドが、ペントースの3’または5’位に結合されるリン酸基を含む場合、それはヌクレオチドといわれる。作動可能に連結されるヌクレオチドの配列は、本明細書において代表的に「塩基配列」または「ヌクレオチド配列」(およびそれらの文法的に相当するもの)といわれ、そして本明細書において、その左から右方向が従来の5’末端から3’末端の方向とする式で示される。
【0058】
ヌクレオチド類似体:A、T、G、C、またはUと構造的に異なるが、核酸分子中の通常のヌクレオチドと置き換わるのに十分類似するプリンヌクレオチドまたはピリミジンヌクレオチド。
【0059】
肺炎球菌(Pneumococcus):肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)と同意語として使用される。
【0060】
ポリクローナル抗体:ポリクローナル抗体は、特定の所定の抗原を認識する抗体分子の混合物であり、それゆえ、ポリクローナル抗体は、その抗原内の異なるエピトープを認識し得る。
【0061】
ポリヌクレオチド:単鎖ヌクレオチドまたは二重鎖ヌクレオチドのポリマー。本明細書において使用される場合、「ポリヌクレオチド」(およびその文法的に相当するもの)は、全範囲の核酸を包含する。ポリヌクレオチドは、代表的に2つ以上のデオキシリボヌクレオチドおよび/またはリボヌクレオチドの直鎖からなる核酸分子をいう。その正確な大きさは、多くの因子に依存し、同様にその因子は、当該分野で周知のように使用の最終状態に依存する。本発明のポリヌクレオチドとしては、プライマー、プローブ、RNA/DNAセグメント、オリゴヌクレオチドまたは「オリゴ」(比較的短いポリヌクレオチド)、遺伝子、ベクター、プラスミド等が挙げられる。
【0062】
ポリペプチド:成句、ポリペプチドは、隣接するアミノ酸残基の間のアミド結合以外の結合を含まないアミノ酸残基を含む分子をいう。
【0063】
レセプター:レセプターは、別の分子と特異的に(ランダムではなく)結合し得る分子(例えば、タンパク質、糖タンパク質等)である。
【0064】
組換えDNA(rDNA)分子:2つのDNAセグメントを作動可能に連結することによって産生されるDNA分子。従って、組換えDNA分子は、天然には通常共に見られない少なくとも2つのヌクレオチド配列を含むハイブリッドDNA分子である。共通の生物学的起源を有さない(すなわち、進化的に異なる)rDNAは、「異種」といわれる。
【0065】
特異性:用語、特異性は、ポリペプチドの所定の抗原と免疫反応する(特異的に結合する)潜在的な抗原結合部位の数をいう。そのポリペプチドは、1つのポリペプチドであっても、ジスルフィド結合によって結合される2つ以上のポリペプチドであってもよい。ポリペプチドは、単一特異性で抗原に特異的に結合する1つ以上の抗原結合部位を含み得、またはポリペプチドは二重特異性であり2つの免疫学的に異なる抗原に特異的に結合する2つ以上の抗原結合部位を含み得る。従って、ポリペプチドは、同じかまたは異なる抗原に特異的に結合する、複数の抗原結合部位を含み得る。
【0066】
血清型:種々の特徴において互いに異なる多くの菌株からなる連鎖球菌属の種の中の細菌の識別。血清型を規定する通常使用される特徴は、特定の抗原分子である。
【0067】
単鎖抗体またはscFv:成句、単鎖抗体は、1つ以上の抗原結合部位を含む単一のポリペプチドをいう。その上、FvフラグメントのH鎖およびL鎖は、別々の遺伝子によってコードされるが、それらは、直接かまたはペプチドを介してかのいずれかによって連結され得る。例えば、組換え技術によって、それらが単一のタンパク質鎖として作製されることを可能にする、合成リンカーが作製され得る(単鎖抗体、sAbとして公知である;Birdら 1988 Science 242:423−426;およびHustonら 1988 PNAS 85:5879−5883)。そのような単鎖抗体はまた、用語「抗体」の中に包含され、多重特異性結合分子の設計および操作において結合決定基として利用され得る。
【0068】
上流:DNA転写の方向に対して反対方向に、それゆえ非コード鎖の5’から3’へ、またはmRNAの3’から5’へ進むこと。
【0069】
結合価:用語、結合価は、ポリペプチド中の潜在的な抗原結合部位(すなわち、結合ドメイン)の数をいう。ポリペプチドは、一価で1つの抗原結合部位を含み得るか、またはポリペプチドは二価で2つの抗原結合部位を含み得る。さらに、ポリペプチドは、四価で4つの抗原結合部位を含み得る。各抗原結合部位は、1つの抗原に特異的に結合する。ポリペプチドが、1つより多くの抗原結合部位を含む場合、各抗原結合部位は、同じかまたは異なる抗原に特異的に結合し得る。従って、ポリペプチドは、複数の抗原結合部位を含み得、それゆえ多価であり得、ポリペプチドは、同じかまたは異なる抗原に特異的に結合し得る。
【0070】
Vドメイン:可変ドメインは、抗原結合部位を形成するアミノ酸残基配列を含む抗体分子のその構造部分である。典型的な軽鎖免疫グロブリン可変領域は、Vとして当該分野において公知の免疫グロブリン分子のその部分である。
【0071】
:軽鎖の可変ドメイン。
【0072】
:重鎖の可変ドメイン。
【0073】
ベクター:細胞中で自発的に複製可能であり、DNAセグメント(例えば、遺伝子またはポリヌクレオチド)の複製を引き起こすようにその結合するセグメントを、作動可能に連結し得る、rDNA分子。1つ以上のポリペプチドをコードする遺伝子の発現を導き得るベクターは、本明細書において「発現ベクター」といわれる。特に重要なベクターは、逆トランスクリプターゼを使用して産生されるmRNA由来のcDNA(相補DNA)のクローニングを可能にする。
【0074】
(説明)
上に記載されるように、本発明は、結合メンバー、特に肺炎連鎖球菌タンパク質(より具体的には肺炎球菌表面付着因子Aタンパク質(PsaA))を特異的に認識しそれに結合することが可能である抗体またはそのフラグメント、に関する。本発明による結合メンバーは、肺炎連鎖球菌によってもたらされる疾患の処置、ならびに上記細菌を検出する診断方法およびキットに使用されるのに特に有用である。肺炎球菌表面付着因子Aタンパク質は、好ましくは、図15(配列番号50)または配列番号56に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドである。
【0075】
従って、本発明による結合メンバーは、好ましくは、免疫学的に活性である(例えば、抗体として、例えば、抗原に結合可能であり、抗原を免疫活性細胞に提示可能である)べきであり、それによって上記抗原の食菌作用を促進する。
【0076】
特に、その結合メンバーは、抗体(例えば、当該分野において公知の任意の適切な抗体)であり、特に、本明細書に規定されるような抗体(例えば、抗体または免疫学的に活性な抗体フラグメント)、または単鎖抗体である。抗体分子は、代表的に、ジスルフィド結合によって一緒に共有結合される、4つのポリペプチド、2つの同一重鎖および2つの同一軽鎖からなる基本単位を有する、Y型分子である。これらの鎖の各々は、別々のドメインに折りたたまれている。重鎖および軽鎖の両方のC末端領域は、配列中に保存され、定常領域と呼ばれる(Cドメインとしても公知である)。N末端領域(Vドメインとしても公知である)は、配列において可変であり、そして抗体特異性に関与する。抗体は、主にVドメインに位置する6つの短い相補性決定領域(図1を参照のこと)を通じて、抗原を特異的に認識し、それに結合する。
【0077】
本発明による抗体は、特に有用である。なぜなら、それらは、PsaAに対して強い親和力を有するからである。
【0078】
それゆえ、本発明による結合メンバーは、1×10−6M未満であるPsaAに対する解離定数Kを有する、結合ドメインを有する。より好ましくは、1×10−7M未満であるPsaAに対する解離定数K、より好ましくは1×10−8M未満、より好ましくは5×10−8M未満、より好ましくは1×10−9M未満、より好ましくは5×10−9M未満、より好ましくは1×10−10M未満である。
【0079】
PsaAに対する結合メンバーの親和力は、好ましくは、実施例3に記載されるように測定される。
【0080】
上記結合メンバーは、好ましくは、上に規定されるような単離された結合メンバーであり、より好ましくは、単離された、純粋な結合メンバーである。
【0081】
(相補性決定領域)
理論に束縛されることなく、高結合力は、以下に示される配列の1つ以上の次のモチーフを有するアミノ酸配列を結合ドメインに組み込むことによってもたらされると考えられている。
【0082】
より具体的には、上記結合ドメインは、好ましくは、以下から選択される配列を含むCDR1領域を含む:
配列番号2:図16Aのアミノ酸配列のCDR1
配列番号10:図16Bのアミノ酸配列のCDR1
配列番号18:図17Aのアミノ酸配列のCDR1
配列番号26:図17Bのアミノ酸配列のCDR1
配列番号34:図18Aのアミノ酸配列のCDR1
配列番号42:図18Aのアミノ酸配列のCDR1
そして/または、上記結合ドメインは、好ましくは、以下から選択される配列を含むCDR2領域を含む:
配列番号4:図16Aのアミノ酸配列のCDR2
配列番号12:図16Bのアミノ酸配列のCDR2
配列番号20:図17Aのアミノ酸配列のCDR2
配列番号28:図17Bのアミノ酸配列のCDR2
配列番号36:図18Aのアミノ酸配列のCDR2
配列番号44:図18Bのアミノ酸配列のCDR2
そして/または、上記結合ドメインは、好ましくは、以下から選択される配列を含むCDR3領域を含む:
配列番号6:図16Aのアミノ酸配列のCDR3
配列番号14:図16Bのアミノ酸配列のCDR3
配列番号22:図17Aのアミノ酸配列のCDR3
配列番号30:図17Bのアミノ酸配列のCDR3
配列番号38:図18Aのアミノ酸配列のCDR3
配列番号46:図18Bのアミノ酸配列のCDR3
より好ましくは、上記結合ドメインの可変部分は、以下から選択される配列、または、そのホモログ(ここで、ホモログは、本明細書の他のところで規定される)を含む:
配列番号8:図16Aのアミノ酸配列
配列番号16:図16Bのアミノ酸配列
配列番号24:図17Aのアミノ酸配列
配列番号32:図17Bのアミノ酸配列
配列番号40:図18Aのアミノ酸配列
配列番号48:図18Bのアミノ酸配列。
【0083】
より好ましくは、上記結合ドメインは、以下の群から選択される少なくとも1つのアミノ酸配列のセットを含む:
アミノ酸配列セット配列番号2またはそのホモログ、配列番号4またはそのホモログ、および配列番号6またはそのホモログ、あるいは
アミノ酸配列セット配列番号10またはそのホモログ、配列番号12またはそのホモログ、および配列番号14またはそのホモログ、あるいは
アミノ酸配列セット配列番号18またはそのホモログ、配列番号20またはそのホモログ、および配列番号22またはそのホモログ、あるいは
アミノ酸配列セット配列番号26またはそのホモログ、配列番号28またはそのホモログ、および配列番号30またはそのホモログ、あるいは
アミノ酸配列セット配列番号34またはそのホモログ、配列番号36またはそのホモログ、および配列番号38またはそのホモログ、あるいは
アミノ酸配列セット配列番号42またはそのホモログ、配列番号44またはそのホモログ、および配列番号46またはそのホモログ。
【0084】
上記のアミノ酸配列セットにおいて、アミノ酸配列は、好ましくは、結合ドメインの中にCDR1、CDR2およびCDR3として配置される(すなわち、他のアミノ酸配列によって別々に間隔を空けられる)。
【0085】
上述のホモログのいずれか1つの相同性は、好ましくは、上に規定されるようなPsaAに対する解離定数Kを有する1つ以上のホモログを含む、結合ドメインを与える。
【0086】
(同一性および相同性)
用語「同一性」または「相同性」は、配列をアラインメントし、全体の配列に対して最大限の同一性パーセントを達成するために必要な場合にはギャップを導入し、いずれの保存的置換も配列同一性の一部でないとみなした後に、比較される対応配列のアミノ酸残基と同一である候補配列中のアミノ酸残基の割合を意味する、と解釈されるものとする。N末端もしくはC末端の伸長も挿入も同一性または相同性を減少させていると解釈されないものとする。アラインメントのための方法およびコンピュータープログラムは、当該分野において公知である。配列同一性は、配列分析ソフトウェア(例えば、Sequence Analysis Software Package、Genetics Computer Group、University of Wisconsin Biotechnology Center、1710 University Ave.、Madison、Wis.53705)を使用して測定され得る。このソフトウェアは、種々の置換、欠失、および他の改変に関して一定の相同性を割り当てることによって類似の配列を対応させる。
【0087】
本明細書において特定される1つ以上の配列のホモログは、規定された配列と比較して、1つ以上のアミノ酸で異なり得るが、同じ機能を実行し得る(すなわち、ホモログは、所定の配列の機能的等価物と考えられ得る)。
【0088】
上述のように、本明細書において、任意の所定の配列のホモログは、以下のように規定され得る:
i)所定のアミノ酸配列によっても認識される抗原を認識し得るアミノ酸配列を含むホモログ、および/または
ii)抗原に選択的に結合し得るアミノ酸配列を含むホモログ(ここで、抗原はまた、所定の配列によって選択的に結合される)、および/または
iii)所定の配列(例えば、配列番号8)を含む結合ドメインと実質的に同じかまたはより高いPsaAに対する結合親和力を有するホモログ。
【0089】
ホモログの例は、1つ以上の保存的アミノ酸置換(所定のアミノ酸の同じグループ内の1つ以上の保存的アミノ酸置換を含む)、または複数の保存的アミノ酸置換(ここで、各保存的置換は、所定のアミノ酸の異なるグループ内の置換によって生成される)を含む。
【0090】
従って、ホモログは、互いに独立した保存的置換を含み得、このホモログの少なくとも1つのグリシン(Gly)が、Ala、Val、LeuおよびIleならびにそれらの独立のホモログからなるアミノ酸の群より選択されるアミノ酸で置換され、そのホモログの少なくとも1つのアラニン(Ala)が、Gly、Val、LeuおよびIleならびにそれらの独立のホモログからなるアミノ酸の群より選択されるアミノ酸で置換され、そのホモログの少なくとも1つのバリン(Val)が、Gly、Ala、LeuおよびIleならびにそれらの独立のホモログからなるアミノ酸の群より選択されるアミノ酸で置換され、そのホモログの少なくとも1つのロイシン(Leu)が、Gly、Ala、ValおよびIleならびにそれらの独立のホモログからなるアミノ酸の群より選択されるアミノ酸で置換され、そのホモログの少なくとも1つのイソロイシン(Ile)が、Gly、Ala、ValおよびIleならびにそれらの独立のホモログからなるアミノ酸の群より選択されるアミノ酸で置換され、そのホモログの少なくとも1つのアスパラギン酸(Asp)が、Glu、AsnおよびGlnならびにそれらの独立のホモログからなるアミノ酸の群より選択されるアミノ酸で置換され、そのホモログの少なくとも1つのフェニルアラニン(Phe)が、Tyr、Trp、His、Proならびにそれらの独立のホモログからなるアミノ酸の群より選択されるアミノ酸(好ましくは、TyrおよびTrpならびにそれらの独立のホモログからなるアミノ酸の群より選択されるアミノ酸)で置換され、そのホモログの少なくとも1つのチロシン(Tyr)が、Phe、Trp、His、Proならびにそれらの独立のホモログからなるアミノ酸の群より選択されるアミノ酸(好ましくは、PheおよびTrpならびにそれらの独立のホモログからなるアミノ酸の群より選択されるアミノ酸)で置換され、そのフラグメントの少なくとも1つのアルギニン(Arg)が、LysおよびHisならびにそれらの独立のホモログからなるアミノ酸の群より選択されるアミノ酸で置換され、そのホモログの少なくとも1つのリジン(Lys)が、AgrおよびHisならびにそれらの独立のホモログからなるアミノ酸の群より選択されるアミノ酸で置換され、そのホモログの少なくとも1つのアスパラギン(Asn)が、Asp、GluおよびGlnならびにそれらの独立のホモログからなるアミノ酸の群より選択されるアミノ酸で置換され、そのホモログの少なくとも1つのグルタミン(Gln)が、Asp、GluおよびAsnならびにそれらの独立のホモログからなるアミノ酸の群より選択されるアミノ酸で置換され、そのホモログの少なくとも1つのプロリン(Pro)が、Phr、Tyr、TrpおよびHisならびにそれらの独立のホモログからなるアミノ酸の群より選択されるアミノ酸で置換され、そのホモログの少なくとも1つのシステイン(Cys)が、Asp、Glu、Lys、Arg、His、Asn、Ser、ThrおよびTyrからなるアミノ酸の群より選択されるアミノ酸で置換される。
【0091】
保存的置換は、好ましい所定の配列の任意の位置に導入され得る。しかし、非保存的置換(特に、1つ以上の任意の位置における非保存的置換であるが、これに限定されない)を導入することもまた望まれ得る。
【0092】
本明細書において、配列の機能的に等価なホモログの形成をもたらす非保存的置換は、例えば、i)極性(例えば、極性側鎖を有する残基(例えば、Gly、Ser、Thr、Cys、Tyr、Asn、またはGln)または荷電したアミノ酸(例えば、Asp、Glu、Arg、またはLys)に置換された非極性側鎖を有する残基(Ala、Leu、Pro、Trp、Val、Ile、Leu、PheまたはMet)あるいは荷電した残基もしくは極性残基を非極性残基へ置換すること)の点で実質的に異なり;ならびに/あるいはii)ポリペプチドの骨格の配向(例えば、別の残基によるProまたはGlyの置換または別の残基によるProまたはGlyへの置換)へのその効果の点で実質的に異なり;ならびに/あるいはiii)電荷(例えば、負に荷電した残基(例えば、GluまたはAsp)を正に荷電した残基(例えば、Lys、HisまたはArg)への置換)(逆もまた同じ)の点で実質的に異なり;ならびに/あるいはiv)立体的なかさ高さ(例えば、かさ高い残基(例えば、His、Trp、PheまたはTyr)のより小さな側鎖を有する残基(例えば、Ala、GlyまたはSer)への置換)(逆もまた同じ)の点で実質的に異なる。
【0093】
1つの実施形態において、アミノ酸の置換は、それらの疎水性値および親水性値、ならびにアミノ酸側鎖置換基の相対的な類似性(電荷、大きさ、等を含む)に基づいて、行なわれ得る。種々の前述の特徴を考慮する例示的なアミノ酸置換は、当業者に周知であり、そして、アルギニンおよびリジン;グルタミン酸塩およびアスパラギン酸塩;セリンおよびスレオニン;グルタミンおよびアスパラギン;ならびにバリン、ロイシンおよびイソロイシンが挙げられる。
【0094】
好ましい実施形態において、上記結合ドメインは、配列番号2、配列番号4、配列番号6および配列番号8から選択される配列に少なくとも60%相同であるアミノ酸配列を有するホモログを含む。
【0095】
より好ましくは、その相同性は、配列番号2、配列番号4、配列番号6および配列番号8から選択される配列に少なくとも65%(例えば少なくとも70%相同、例えば少なくとも75%相同、例えば少なくとも80%相同、例えば少なくとも85%相同、例えば少なくとも90%相同、例えば少なくとも95%相同、例えば少なくとも98%相同)である。
【0096】
より好ましい実施形態において、上に述べた割合は、配列番号2、配列番号4、配列番号6および配列番号8から選択される配列と比較されるように、ホモログの配列の同一性に関連する。
【0097】
(エピトープ)
本発明による抗体は、好ましくは、配列番号50または配列番号56のN末端アミノ酸残基1〜150に対応するPsaAのN末端部分に局在するエピトープを認識し、それに結合する。好ましくは、そのエピトープは、配列番号50または配列番号56のN末端アミノ酸残基1〜100に対応するPsaAのN末端部分に局在し、より好ましくは、配列番号50または配列番号56のN末端アミノ酸残基1〜65に対応するPsaAのN末端部分に局在する。
【0098】
好ましい実施形態において、上記抗体は、配列番号51、配列番号52または配列番号53に対応する配列を有するフラグメントの群から選択されるフラグメントを認識し、それに結合する。
【0099】
さらに、本発明による抗体は、エピトープを認識し、それに結合し、ここで、そのエピトープはまた、以下の群から選択される配列を含む可変部分を有する抗体によって認識されることが、好ましい:
配列番号8:図16Aのアミノ酸配列
配列番号16:図16Bのアミノ酸配列
配列番号24:図17Aのアミノ酸配列
配列番号32:図17Bのアミノ酸配列
配列番号40:図18Aのアミノ酸配列
配列番号48:図18Bのアミノ酸配列。
【0100】
(血清型)
上述のように、肺炎連鎖球菌の90の異なる血清型が、同定されている。本発明による結合メンバーは、2つ以上の異なる肺炎球菌血清型(例えば3つ以上の異なる肺炎球菌血清型、例えば4つ以上の異なる肺炎球菌血清型、例えば5つ以上の異なる肺炎球菌血清型)に由来するPsaAに結合し得ることが好ましい。最も好ましくは、本発明による結合メンバーは、本質的に全血清型に由来する肺炎球菌を認識し、それに結合することが可能である。
【0101】
(モノクローナル抗体/ポリクローナル抗体)
本発明の1つの実施形態において、結合メンバーは、抗体であり、ここで、その抗体は、哺乳動物またはモノクローナル抗体の混合物由来のポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体であり得る。好ましい実施形態において、結合メンバーは、モノクローナル抗体またはそのフラグメントである。その抗体は、いかなる種類の抗体であり得るが、好ましくは、IgG抗体である。より好ましくは、その抗体は、IgG1抗体またはそのフラグメントである。
【0102】
モノクローナル抗体(Mab)は、抗体であり、ここで、あらゆる抗体分子は、類似であり、従って、同じエピトープを認識する。モノクローナル抗体は、一般に、ハイブリドーマ細胞株によって産生される。モノクローナル抗体および抗体合成ハイブリドーマ細胞を作製する方法は、当業者に周知である。抗体産生ハイブリドーマは、例えば、不死化された細胞株を用いる抗体産生Bリンパ球の融合によって調製され得る。
【0103】
モノクローナル抗体は、以下の工程によって産生され得る。全手順において、動物は、抗原(例えば、上述のようなポリクローナル抗体調製用のタンパク質(またはそのペプチド))を用いて免疫される。その免疫は、代表的に、免疫原を免疫有効量(すなわち、免疫応答を生じるのに十分な量)で免疫学的に適格な哺乳動物に投与することによって達成される。好ましくは、その哺乳動物は、げっ歯類(例えば、ウサギ、ラットまたはマウス)である。その哺乳動物は、次いで、その哺乳動物にとって、記載されたような高親和力抗体分子を産生するのに十分な期間、追加免疫スケジュールで維持される。抗体産生細胞の懸濁液は、所望の抗体を分泌する各免疫化された哺乳動物から取り出される。高親和力抗体を産生するのに十分な時間の後、その哺乳動物(例えば、マウス)は、屠殺され、そして抗体産生リンパ球が、1つ以上のリンパ節、脾臓および末梢血から得られる。脾臓細胞が好ましく、そして脾臓細胞は当業者に周知の方法を使用して生理培地中で個々の細胞に機械的に分離され得る。その抗体産生細胞は、マウス骨髄腫株の細胞への融合によって不死化される。マウスリンパ球は、マウスホモログ骨髄腫を用いて、高率の安定的な融合を生じるが、ラット体細胞、ウサギ体細胞およびカエル体細胞もまた、使用され得る。所望の抗体産生動物の脾臓細胞は、一般に融剤(例えば、ポリエチレングリコール)の存在下で、骨髄腫細胞と融合することにより不死化される。融合パートナーとして適切な多くの骨髄腫細胞株のいずれもが、標準的な技術(例えば、American Type Culture Collection(ATCC)、Rockville、Mdから入手可能なP3−NS1/1−Ag4−1骨髄腫株、P3−x63−Ag8.653骨髄腫株またはSp2/O−Ag14骨髄腫株)を用いて使用される。
【0104】
モノクローナル抗体はまた、組換えDNA技術の当業者に周知の他の方法によっても産生され得る。代替的な方法(「コンビナトリアル抗体ディスプレイ(combinatorial antibody display)」方法といわれる)が、特定の抗原特異性を有する抗体フラグメントを同定および単離するように開発されており、そしてモノクローナル抗体を産生するために利用され得る。
【0105】
ポリクローナル抗体は、特定の所定の抗原を認識する抗体分子の混合物であり、それゆえ、ポリクローナル抗体は、その抗原中の異なるエピトープを認識し得る。一般に、ポリクローナル抗体は、予め抗原を用いて免疫された、哺乳動物の血清から精製される。ポリクローナル抗体は、例えば、Antibodies:A Laboratory Manual、By Ed HarlowおよびDavid Lane、Cold Spring Harbor Laboratory Press、1988に記載の任意の方法により調製され得る。ポリクローナル抗体は、任意の適切な哺乳動物種(例えば、マウス、ラット、ウサギ、ロバ、ヤギ、およびヒツジ)に由来し得る。
【0106】
(特異性)
上記結合メンバーは、PsaAタンパク質に関して単一特異性であり得、ここで、PsaAタンパク質に関しての特異性とは、その結合メンバーが、PsaAタンパク質と免疫反応することを意味する。別の実施形態において、その結合メンバーは、PsaAタンパク質に関して特異的である少なくとも1つの部分を有し、二重特異性または多重特異性である。
【0107】
(一価抗体)
単一特異性結合メンバーは、一価(すなわち、ただ1つの結合ドメインを有する)であり得る。
【0108】
一価抗体に関して、免疫グロブリン定常ドメインアミノ酸残基配列は、当該分野でCH1、CH2、CH3およびCH4として公知の抗体分子の構造部分を含む。Cとして当該分野で公知のそれらの結合メンバーが好ましい。好ましいCポリペプチドは、CκおよびCλからなる群から選択される。
【0109】
さらに、上記定常ドメインが、重鎖定常ドメインまたは軽鎖定常ドメイン(それぞれ、CまたはC)のいずれかであり得る限り、種々の一価結合メンバー組成物は、本発明によって意図される。例えば、軽鎖定常ドメインは、別の軽鎖定常ドメインまたは重鎖定常ドメインのいずれかにジスルフィド架橋することが可能である。対照的に、重鎖定常ドメインは、2つの独立したジスルフィド架橋を形成し得、別の重鎖および軽鎖の両方に架橋することが可能であるか、または重鎖のポリマーを形成することが可能である。
【0110】
従って、別の実施形態において、本発明は、一価ポリペプチドを含む組成物を意図し、ここで、上記定常鎖ドメインCは、少なくとも1つのジスルフィド架橋を形成し得るシステイン残基を有し、そしてその組成物は、そのジスルフィド架橋によって共有結合する少なくとも2つの一価ポリペプチドを含む。
【0111】
好ましい実施形態において、上記定常鎖ドメインCは、CまたはCのいずれかであり得る。Cが、Cである場合、そのCポリペプチドは、好ましくは、CκおよびCλからなる群から選択される。
【0112】
別の実施形態において、本発明は、Cが、ジスルフィド架橋を形成し得るシステイン残基を有するCである場合を除いて、上記のような一価ポリペプチドを含む結合メンバー組成物を意図し、そうしてその組成物は、そのジスルフィド架橋によって共有結合する2つの一価ポリペプチドを含む。
【0113】
(多価)
本発明の別の実施形態において、結合メンバーは、少なくとも2つの結合ドメインを有する多価結合メンバーである。その結合ドメインは、同じリガンドまたは異なるリガンドに対して特異性を有し得る。
【0114】
(多重特異性(二重特異性を含む))
好ましい実施形態において、本発明は、少なくとも2つの異なる実体に対し親和力を有しかつその実体に結合し得る、多重特異性結合メンバーに関する。多重特異性結合メンバーは、二重特異性結合メンバーを含み得る。
【0115】
1つの実施形態において、上記多重特異性分子は、二重特異性抗体(BsAb)であり、その二重特異性抗体は、少なくとも2つの異なる結合ドメインを保有し、その結合ドメインの少なくとも1つは、抗体起源である。
【0116】
本発明の二重特異性分子はまた、単鎖二重特異性分子である(例えば、単鎖二重特異性抗体、1つの単鎖抗体と結合ドメインとを含む単鎖二重特異性分子、または2つの結合ドメインを含む単鎖二重特異性分子)。多重特異性分子はまた、単鎖分子であっても少なくとも2つの単鎖分子を含んでもよい。
【0117】
上記多重特異性(二重特異性を含む)抗体は、当業者に公知の任意の適切な様式によって産生され得る。
【0118】
二重特異性全抗体を産生するための従来のアプローチは、各々所望の特異性を有する抗体を産生する2つのハイブリドーマ細胞株を融合することであった。免疫グロブリン重鎖および免疫グロブリン軽鎖のランダムな会合が理由で、これらのハイブリッドハイブリドーマは、重鎖および軽鎖の10組までの異なる組合せの混合物を産生し、その組合せの1つだけが二重特異性抗体である。それゆえ、これらの二重特異性抗体は、所望の産生物の収量をかなり減少させる、扱いにくい手順で精製されなければならない。
【0119】
代替的なアプローチは、ヒンジにおいてかまたは上記のように遺伝的に導入されるC末端のシステインを介してかのいずれかの、システイン残基の化学的架橋結合による2つの抗原特異性のインビトロ連結を含む。そのようなインビトロ構築の改良点は、ヘテロダイマーの形成を促進するペプチドとのFabの組換え融合を使用することによって達成された。しかし、これらの方法の二重特異性産生物の収量は、100%よりずっと少ない。
【0120】
二価または二重特異性抗体フラグメントを産生する、より効率的なアプローチ(インビトロでの化学的構築工程を含まない)が、Holligerら(1993)によって記載された。このアプローチは、細菌から分泌されるscFvが、しばしばモノマーおよびダイマーの両方として存在するという観察を利用する。この観察は、異なる鎖のVおよびVは、対になり得、従ってダイマーおよびより大きい複合体を形成することを示唆した。そのダイマー抗体フラグメント(Hollingerらによって「ダイアボディ」とも名付けられる)は、実際に、インビボで構築された小さい二価抗体フラグメントである。2つの異なる抗体1および抗体2のVおよびVを結合することによって、「交差」鎖であるV 1VL 2およびV 2−VL 1を形成するために、ダイマー化プロセスが、両方の抗原結合部位を再構築するために示された。その2つの結合部位の親和力は、開始scFvに等しいか、またはVおよびVと共有結合しているポリペプチドリンカーが除去される場合、10倍増加し、従って、各々Vと対になっていないVと直接共有結合するVからなる、2つのタンパク質を生成することが示された。二重特異性抗体フラグメントを産生するこの戦略はまた、いくつかの特許出願に記載された。特許出願WO 94/09131(SCOTGEN LTD;優先日1992年10月15日)は、結合ドメインが、2つの鎖に存在するかまたはscFvに結合しているかのいずれかであるVおよびV領域の両方に由来する二重特異性結合タンパク質に関し、他方で、他の融合抗体ドメイン(例えば、C末端定常ドメイン)は、ダイマー構築物を安定化するように使用される。特許出願WO 94/13804(CAMBRIDGE ANTIBODY TECHNOLOGY/MEDICAL RESEARCH COUNCIL;最先優先日1992年12月4日)は、互いに結合し得、それによってVドメインが、リンカーを用いてまたはリンカーを用いずに結合され得るVおよびVを含むポリペプチドに関する。
【0121】
MallenderおよびVoss、1994(また、特許出願WO 94/13806;DOW CHEMICAL CO;優先日1992年12月11日にも記載される)は、E.coliの単鎖二重特異性抗体フラグメントのインビボ産生を報告した。二価タンパク質の二重特異性は、異なる特異性を有し、柔軟なポリペプチドリンカーによって遺伝子レベルで一緒に連結される、2つの予め産生された一価scFv分子に基づいていた。伝統的に、単鎖抗体フラグメントが、言及される場合はいつも、ポリペプチドリンカーの存在下または非存在下で1つの(対応する)軽鎖に連結する1つの重鎖からなる単一分子が、関係する。「ダイアボディ」アプローチ(Holligerら、(1993)および特許出願WO 94/09131)を通じてかまたは「二重scFv」アプローチ(MallenderおよびVoss、1994および特許出願WO 94/13806)によって二価または二重特異性抗体フラグメントを作製する場合、再びそのVは、(対応する)Vに連結する。
【0122】
上述の多重特異性分子は、多くの方法によって作製され得る。例えば、すべての特異性は、同じベクターでコードされ得、そして同じ宿主細胞中に発現されそして組み立てられる。この方法は、その多重特異性分子が、mAb×mAb融合タンパク質、mAb×Fab融合タンパク質,Fab×F(ab’)融合タンパク質またはリガンド×Fab融合タンパク質である場合に、特に有用である。二重特異性抗体または多重特異性抗体を調製するための種々の他の方法は、例えば、米国特許第5,260,203号;同第5,455,030号;同第4,881,175号;同第5,132,405号;同第5,091,513号;同第5,476,786号;同第5,013,653号;同第5,258,498号;および同第5,482,858号に記載されている。
【0123】
本発明による二重特異性結合メンバーまたは多重特異性結合メンバーを使用することによって、本発明は、単一特異性/一価結合メンバーと比較していくつかの利点を提供する。
【0124】
二重特異性/多重特異性結合メンバーは、連鎖球菌タンパク質、特にPsaAを特異的に認識し、それに結合し得る第一結合ドメインを有する一方で、他の結合ドメインは、他の目的で使用され得る。
【0125】
1つの実施形態において、少なくとも1つの他の結合ドメインは、連鎖球菌タンパク質に結合するために使用される(例えば、第一結合ドメインと比較して、同じ連鎖球菌タンパク質上の別のエピトープに結合する)。それによって、連鎖球菌属種に対する特異性は、増加され得、ならびに結合メンバーのアビディティを増加し得る。
【0126】
別の実施形態において、上記少なくとも1つの他の結合ドメインは、哺乳動物細胞(例えば、ヒト細胞)に特異的に結合するために使用され得る。少なくとも他の結合ドメインは、治療方法において結合メンバーの効果を増加させるために、免疫活性細胞(例えば、白血球、マクロファージ、リンパ球、好塩基性細胞、および/または好酸性細胞)に結合し得ることが、好ましい。これは、少なくとも1つの他の結合ドメインが、哺乳動物タンパク質(例えば、ヒトタンパク質、例えば、分化抗原群タンパク質(CD)の任意のもの(特に、CD64および/またはCD89))から選択されるタンパク質)に特異的に結合し得ることを確立することによって達成され得る。CD64特異性を有する二重特異性抗体を産生する方法は、Medarex,IncへのUS6,0713517に記載されている。
【0127】
本明細書で使用される場合、「エフェクター細胞」は、白血球またはリンパ球である免疫細胞をいう。特定のエフェクター細胞は、特定のFcレセプターを発現し、そして特定の免疫機能を実行する。例えば、CD89レセプターを発現する単球、マクロファージ、好中球、好酸球、およびリンパ球は、標的細胞の特異的な殺作用および免疫系の他の構成要素へ抗原を提示すること、または抗原を提示する細胞に結合することに関与する。
【0128】
(ヒト化抗体フレームワーク)
ヒトの治療に非ヒト抗体を使用することは、いつも望ましいわけではない。なぜなら、非ヒト「外来」エピトープは、処置される個体中に免疫反応を誘発し得るからである。非ヒト抗体に関連する問題を除去または縮小するために、キメラ抗体誘導体(すなわち、ヒト定常領域(Fc)を用いて非ヒトFab可変領域結合決定基を結合する「ヒト化」抗体分子)を操作することが望まれる。そのような抗体は、上述のモノクローナル抗体及びポリクローナル抗体の等価な抗原特異性および親和性によって特徴付けされ、そしてヒトに投与される場合、免疫原性が低く、それゆえ処置される個体によってはより耐えられやすくなる。
【0129】
従って、1つの実施形態において、上記結合メンバーは、ヒト化抗体フレームワーク(またヒト化抗体とも呼ばれる)を保有する結合ドメインを有する。
【0130】
ヒト化抗体は、一般に、ヒト抗体由来の領域および非ヒト抗体(例えば、げっ歯類抗体)由来の領域を含む、キメラ抗体である。ヒト化(新形態化またはCDR移植とも呼ばれる)は、異種の供給源(通常、げっ歯類)由来のモノクローナル抗体(mAb)の免疫原性を減少し、ヒト免疫グロブリンに対する相同性を増加し、およびヒト免疫系のそれらの活性化を改良するよく確立した技術である。従って、ヒト化抗体は、代表的には、あるCDR残基およびおそらくあるフレームワーク残基がげっ歯類抗体の類似の部位由来の残基によって置換される、ヒト抗体である。
【0131】
ヒト化抗体は、その抗原および他の都合のよい生物学的特性に対する高い親和力を保持することが、さらに重要である。この目標を達成するために、好ましい方法によると、ヒト化抗体は、親配列およびヒト化配列の三次元モデルを使用して、親配列および種々の概念的なヒト化産生物の分析のプロセスによって調製される。三次元免疫グロブリンモデルは、通常入手可能であり、そして当業者によく知られている。選択される候補免疫グロブリン配列のありえそうな三次元立体配座構造を説明および表示するコンピュータープログラムは、入手可能である。これらの表示の検定は、候補免疫グロブリン配列(すなわち、その抗原に結合する候補免疫グロブリンの能力を影響する残基の分析)の機能におけるある残基のありえそうな役割の分析を可能にする。この方法で、FR残基は、レシピエントから選択および組合わされ得そして配列を読み込み得、それゆえ、所望の抗体の特徴(例えば、目標抗原に対する増加した親和性)が最大化されるが、抗原結合を直接的におよび最も実質的に影響するのは、CDR残基である。
【0132】
MAbをヒト化する1つの方法は、キメラ抗体の産生に関連し、そのキメラ抗体において、1つの抗体の完全な可変ドメインを含む抗原結合部位が、第二の抗体(好ましくは、ヒト抗体)由来の定常ドメインに融合されている。そのようなキメラ化手順を実行するための方法は、例えば、EP−A−0 120 694(Celltech Limited)、EP−A−0 125 023(Genentech Inc.)、EP−A−0 171496(Res.Dev.Corp.Japan)、EP−A−0173494(Stanford University)、およびEP−A−0 194 276(Celltech Limited)に記載されている。抗体のヒト化のより複雑な形態は、可変領域ドメインの再設計に関与し、それゆえ、非ヒト抗体結合部位を形成するアミノ酸は、ヒト抗体可変領域のフレームワークへと組み込まれている(Jonesら、1986)。
【0133】
本発明のヒト化抗体は、非ヒト抗体由来のCDRによってヒト抗体のCDRの少なくとも一部を置換し得る任意の方法によって産生され得る。Winterは、本発明のヒト化抗体を調製するために使用され得る方法を記載し(1987年3月26日に申請されたUK Patent Application GB 2188638A)、その内容は、参考として明白に援用されている。そのヒトCDRは、以下の実施例に記載されるようにオリゴヌクレオチド部位特異的突然変異誘発を使用して非ヒトCDRによって置換され得る。
【0134】
1つの例として、本発明のヒト化抗体は、以下の短い説明の中に記載されるように作製され得る。本発明のヒト化抗体は、以下のプロセスによって産生され得る:
(a)従来の技術によって、抗体重鎖をコードするDNA配列を用いてオペロンを含む発現ベクターを構築するプロセスであって、その中で、抗体結合特異性を保持するために必要なCDRおよび可変ドメインフレークワーク領域のそのような最小限の部分が、非ヒト免疫グロブリンに由来し、そして、抗体鎖の残存する部分がヒト免疫グロブリンに由来し、それによって本発明のベクターを産生するプロセス;
(b)従来の技術によって、相補的抗体軽鎖をコードするDNA配列を用いてオペロンを含む発現ベクターを構築するプロセスであって、その中で、ドナー抗体結合特異性を保持するために必要なCDRおよび可変ドメインフレークワーク領域のそのような最小限の部分が、非ヒト免疫グロブリンに由来し、そして、抗体鎖の残存する部分がヒト免疫グロブリンに由来し、それによって本発明のベクターを産生するプロセス;
(c)本発明のトランスフェクトされる宿主細胞を産生するために従来の技術によって宿主細胞にその発現ベクターをトランスフェクトするプロセス;および
(d)本発明のヒト化抗体を産生するために従来の技術によってそのトランスフェクトされる細胞を培養するプロセス。
【0135】
上記宿主細胞は、本発明の2つのベクターと同時トランスフェクトされ得、その第一ベクターは、軽鎖由来のポリペプチドをコードするオペロンを含み、そして第二ベクターは、重鎖由来のポリペプチドをコードするオペロンを含む。その2つのベクターは、異なる選択マーカーを含むが、そうでなければ、抗体重鎖コード配列および抗体軽鎖コード配列から離れており、好ましくは同一であり、可能な限り、重鎖ポリペプチドおよび軽鎖ポリペプチドの等しい発現を保証する。あるいは、1つのベクターが使用され得、そのベクターは、軽鎖ポリペプチドおよび重鎖ポリペプチドの両方をコードする配列を含んでいる。軽鎖および重鎖のためのコード配列は、cDNAまたはゲノムDNAまたはその両方を含み得る。
【0136】
本発明の変化される抗体を発現するために使用される宿主細胞は、細菌細胞(例えば、Escherichia coli)であるか、または真核生物細胞であり得る。特に、この目的のためによく規定されたタイプの哺乳動物細胞(例えば、骨髄腫細胞またはチャイニーズハムスター卵巣細胞)が、使用され得る。
【0137】
本発明のベクターが構築され得る一般の方法、本発明の宿主細胞を産生するために必要とされるトランスフェクション方法およびそのような宿主細胞由来の本発明の抗体を産生するために必要とされる培養方法は、全て従来の技術である。同様に、一度産生される場合、本発明のヒト化抗体は、以下に記載されるような標準的な手順によって精製され得る。
【0138】
(ヒト抗体フレームワーク)
より好ましい実施形態において、本発明は、結合メンバーに関連し、ここで、上記結合ドメインは、ヒト抗体フレームワークによって保有される(すなわち、ここで、この抗体は、ヒト化抗体よりも高度のヒトペプチド配列を有する。
【0139】
ヒトタンパク質に対して導かれるヒトmAb抗体は、マウス免疫系ではなく完全なヒト免疫系を保有するトランスジェニックマウスを使用して、産生され得る。所定の抗原により免疫されるこれらのトランスジェニックマウス由来の脾細胞は、ヒトタンパク質由来のエピトープに対し特異的親和力を有するヒトmAbを分泌するハイブリドーマを産生するために使用される(例えば、Woodら 国際出願WO 91/00906、Kucherlapatiら PCT公開WO 91/10741;Lonbergら 国際出願WO 92/03918;Kayら 国際出願92/03917;Lonberg,N.ら 1994 Nature 368:856−859;Green,L.L.ら 1994 Nature Genet.7:13−21;Morrison,S.L.ら 1994 Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:6851−6855;Bruggemanら 1993 Year Immunol 7:33−40;Tuaillonら 1993 PNAS 90:3720−3724;Bruggemanら 1991 Eur J Immunol 21:1323−1326参照のこと)。
【0140】
そのようなトランスジェニックマウスは、Abgenix,Inc.、Fremont、Calif、およびMedarex,Inc.、Annandale、N.J.から入手可能である。キメラマウスおよび生殖細胞系変異体マウスの抗体重鎖連結領域(IH)遺伝子のホモ接合欠失は、内因性抗体産生の完全な阻害を生じる記載されている。そのような生殖細胞系変異体マウスのヒト生殖細胞系免疫グロブリン遺伝子配置の転移は、抗原攻撃の際にヒト抗体の産生を生じる(例えば、Jakobovitsら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:2551(1993);Jakobovitsら、Nature 362:255−258(1993);Bruggermannら、Year in Immunol.7:33(1993);およびDuchosalら、Nature 355:258(1992)参照のこと)。ヒト抗体はまた、ファージ提示ライブラリに由来され得る(Hoogenboomら、J.Mol.Biol.227:381(1991);Marksら、J.Mol.Biol.222:581−597(1991);Vaughanら、Nature Biotech 14:309(1996))。
【0141】
好ましい実施形態において、上記抗体は、実施例1に記載される方法によって産生される。
【0142】
(フラグメント)
本発明の1つの実施形態において、上記結合メンバーは、抗体のフラグメント(好ましくは、抗原結合フラグメントまたは可変領域)である。本発明を用いるに有用な抗体フラグメントの例としては、Fabフラグメント、Fab’フラグメント、F(ab’)フラグメントおよびFvフラグメントが挙げられる。抗体のパパイン消化は、各々1つの抗原結合部位を有する、2つの同一の抗原結合フラグメント(Fabフラグメントと呼ばれる)および残余の「Fc」フラグメント(容易に結晶化するその能力のためにそう呼ばれる)を産生する。ペプシン処理は、抗原に架橋結合し得る2つの抗原結合フラグメントを有するF(ab’)フラグメント、および残余の他のフラグメント(pFc’と称される)を産生する。さらなるフラグメントとしては、ダイアボディ、線状抗体、単鎖抗体分子、および抗体フラグメントから形成される多重特異性抗体が挙げられ得る。
【0143】
抗体フラグメントFab、抗体フラグメントFvおよび抗体フラグメントscFvは、これら抗体フラグメントが、ただ1つの抗原結合部位を保有する点で、完全な抗体と異なる。2つの結合部位を有する組換えフラグメントは、いくつかの方法で産生される(例えば、FvのVHのC末端(Cumberら、1992)もしくはscFvのVLのC末端(PackおよびPluckthun、1992)に導入されるシステイン残基の化学的架橋結合によってか、またはFab’のヒンジシステイン残基を通して(Carterら、1992))。
【0144】
好ましい抗体フラグメントは、その抗原またはレセプターに選択的に結合する抗体のいくつかのまたは実質的に全ての能力を保持する。いくつかの好ましいフラグメントは、以下のように規定される:
(1)Fabは、抗体分子の一価抗原結合フラグメントを含むフラグメントである。Fabフラグメントは、酵素パパインを用いる完全な抗体の消化によって産生され、無傷の軽鎖および1つの重鎖の部分を産生し得る。
(2)Fab’は、抗体分子のフラグメントであり、そしてペプシンを用いて完全な抗体を処理し、続いて還元することによって得られ、無傷の軽鎖および重鎖の部分を産生し得る。2つのFab’フラグメントが、1つの抗体分子につき得られる。Fab’フラグメントは、抗体ヒンジ領域由来の1つ以上のシステインを含む重鎖CH1ドメインのカルボキシル末端におけるいくつかの残基の添加に関してFabフラグメントと異なる。
(3)(Fab’)は、それに続く還元を伴わず、酵素ペプシンを用いて完全な抗体を処理することによって得られる抗体のフラグメントである。F(ab’)は、2つのジスルフィド結合によって結合される2つのFab’フラグメントのダイマーである。
(4)Fvは、完全な抗原認識および結合部位を含む最小限の抗体フラグメントである。この領域は、固い、非共有結合における1つの重鎖可変ドメインおよび1つの軽鎖可変ドメインのダイマーからなる(V−Vダイマー)。各可変ドメインの3つのCDRがV−Vダイマーの表面の抗原結合部位を規定するために相互作用するのは、この構成である。集合的に、その6つのCDRは、抗体に対する抗原結合特異性を与える。しかし、1つの可変ドメイン(または、抗原に対し特異的な3つのCDRのみを含むFvの半分)ですら、抗原を認識し、それに結合する能力を有するが、全体の結合部位よりも弱い親和力である。
【0145】
本発明の1つの実施形態において、上記抗体は、遺伝子的に融合される単鎖分子として適切なポリペプチドリンカーによって連結される、軽鎖の可変領域、重鎖の可変領域を含む遺伝子的に操作される分子として規定される、単鎖抗体(「SCA」)である。そのような単鎖抗体はまた、「単鎖Fv」抗体フラグメントまたは「sFv」抗体フラグメントといわれる。一般に、そのFvポリペプチドは、さらにそのsFvに抗原結合のための所望の構造を形成することを可能にする、VドメインおよびVドメインの間のポリペプチドリンカーを含む。
【0146】
本発明による上記抗体フラグメントは、当業者に公知の任意の適切な方法によって産生され得る。いくつかの細菌発現系が、活性抗体フラグメントを産生するために既に開発されている(例えば、種々の宿主(例えば、E.coli(Betterら、1988、SkerraおよびPluckthun、1988、Carterら、1992)、酵母(Horwitzら、1988)および糸状菌Trichoderma reesei(Nyyssonenら、1993))が記載されている)。これらの代替的系において組換えタンパク質の収量は、比較的高くあり得る(高細胞密度発酵のE.coliの細胞膜周辺腔に分泌されるFabに関して1〜2g/l、Carterら、1992参照のこと)かまたは低レベル(例えば、発酵槽の酵母のFabに関して約0.1mg/l(Horwitzら、1988)、および融合タンパク質CBHI−Fabに関しては150mg/lおよび発酵槽のTrichodermaのFabに関しては1mg/l(Nyyssonenら、1993))であり得、そしてそのような産生物は、哺乳動物細胞(ハイブリドーマ、骨髄腫、CHO)おける完全な抗体の産生と比較して非常に安い。
【0147】
上記フラグメントは、Fab’としてかまたはFvとして産生され得るが、さらに、VHおよびVLは、その組合せがscFvとして公知である、柔軟なポリペプチドリンカーによってどちらかの順序で遺伝子的に連結され得ることが示される。
【0148】
(単離された核酸分子/ベクター/宿主細胞)
1つの局面において、本発明は、上に規定されるような結合メンバーの少なくとも一部をコードする単離された核酸分子に関する。1つの実施形態において、その核酸分子は、軽鎖をコードし、別の核酸は、重鎖をコードする。その2つの核酸分子は、分離し得るか、またはそれらは、1つの核酸分子に融合され、必要に応じてリンカー配列によって間隔を空けられ得る。抗体フラグメントとの関係で特に、その核酸分子は、全結合メンバーをコードし得るが、結合メンバーの設計に依存して、これはまた、いくつかのより大きな結合メンバーに関連し得る。一度その核酸分子が、宿主細胞中に配置される場合、その核酸分子は、好ましくは、DNA配列(より好ましくは、結合メンバーの発現を促進するその上流末端調節要素を含むDNA配列)である。
【0149】
それゆえ、1つの実施形態において、本発明は、以下の群から選択されるポリヌクレオチド、およびそのようなポリヌクレオチドの相補鎖に関する。
i)図16a、図16b、図17a、図17b、図18a、および図18bのヌクレオチド配列から選択される配列を含むポリヌクレオチド、
ii)図16a、図16b、図17a、図17b、図18a、および図18bの群から選択される1つ以上のアミノ酸配列を含む結合メンバーをコードするポリヌクレオチド、
iii)ポリヌクレオチドi)によってコードされるポリペプチドのフラグメントをコードするポリヌクレオチドであって、ここで、そのフラグメントは、
a)ii)の結合メンバーによってもまた認識される抗原を認識し得え、および/または、
b)抗原に選択的に結合し得、ここで、その抗原はまた、ii)の結合メンバーによって選択的に結合され、および/または、
c)所定の配列(例えば、配列番号8、配列番号16、配列番号24、配列番号32、配列番号40、配列番号48)を含む結合ドメインとして、実質的にPsaAに対する結合親和力と類似か、またはより高いPsaAに対する結合親和力を有する。
iv)ポリヌクレオチドの相補鎖が、i)、ii)、iii)のいずれかに規定されるようなポリヌクレオチドと一緒に厳しい条件下でハイブリダイズし、およびiii)に規定されるようなポリペプチドをコードする、ポリヌクレオチド、
v)i)〜iv)のいずれかに規定されるようなポリヌクレオチドのヌクレオチド配列に変質するヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド。
【0150】
本発明は、さらに上に規定されるような核酸分子を含むベクター(1つの核酸につき1つのベクターか、または同じベクターに2つ以上の核酸のいずれか)に関する。そのベクターは、好ましくは、上記核酸分子によってコードされる抗体の発現を調節するヌクレオチド配列を含む。
【0151】
なお別の局面において、本発明は、上に規定されるような核酸分子を含む宿主細胞に関する。
【0152】
また、本発明は、上に規定されるような結合メンバーを発現するように操作される細胞株に関連し、この細胞株は、例えば、マウスリンパ球および不死化細胞株のハイブリドーマである。その細胞株は、いずれの適切な細胞株であり得るが、細胞株P3が好ましい。別の実施形態において、CHO細胞株が、好まれる。
【0153】
(結合メンバーの精製)
産生後、本発明による上記結合メンバーは、好ましくは、精製される。使用される精製方法は、いくつかの因子(必要とされる精製度、抗体の供給源、抗体の意図される使用、抗体が産生される種、抗体のクラスおよび、その抗体がモノクローナル抗体である場合の、抗体のサブクラス、が挙げられる)に依存する。
【0154】
抗体を含むポリペプチドを精製する任意の適切な従来の方法としては、沈殿反応およびカラムクロマトグラフィーが挙げられ、そして精製分野の当業者に周知であり、交差流ろ過法、硫安塩析、アフィニティーカラムクロマトグラフィー、ゲル電気泳動を含み、そして同様のものが使用され得る。
【0155】
抗免疫グロブリン抗体を用いて抗体を精製する方法は、単一精製手順かまたは連続精製手順のいずれかであり得る。単一精製および連続精製の方法は、精製分野の当業者に周知である。単一工程精製手順において、抗体は、単一抗免疫グロブリン抗体によって特異的に結合される。特異的に結合されない分子は、洗浄工程で除去され、そして特異的に結合される分子は、特異的に溶出される。連続精製手順において、抗体は、第一抗免疫グロブリン抗体に特異的に結合され、特異的に結合されない分子は、洗浄工程で除去され、そして特異的に結合される分子は、特異的に溶出される。第一抗免疫グロブリン抗体由来の溶離液は、次いで第二抗免疫グロブリン抗体に特異的に結合される。特異的に結合されない分子は、洗浄工程で除去され、そして特異的に結合される分子は、特異的に溶出される。好ましい実施形態において、抗体は、重鎖定常領域および軽鎖定常領域に特異的に結合する抗体からなるグループから選択される第一抗免疫グロブリン抗体および第二抗免疫グロブリン抗体によって連続的に精製される。
【0156】
通常使用される精製方法は、精製される抗体が、タンパク質A、タンパク質Gによってかまたは抗免疫グロブリン抗体によって結合される、アフィニティークロマトグラフィーである。当業者に周知のアフィニティークロマトグラフィーの別の方法は、その別個の抗原に対する抗体の特異性結合である。
【0157】
多重特異性抗体を(二重特異性抗体を含む)精製するために特に、連続精製手順が、使用され得、ここで、2つ以上の可変ドメインを含む二重特異性抗体は、第一抗原に特異的に結合され、次いで第二抗原に特異的に結合される。
【0158】
代替的な実施形態において、2つ以上の可変領域を含む二重特異性抗体は、抗体を第一精製工程において第一抗原にそして第二精製工程において第二抗原に特異的に結合することによる連続精製により精製される。
【0159】
抗免疫グロブリン抗体を用いて抗体を精製する方法は、単一精製手順かまたは連続精製手順のいずれかであり得る。単一精製および連続精製の方法は、精製分野の当業者に周知である。単一工程精製手順において、抗体は、単一抗免疫グロブリン抗体によって特異的に結合される。特異的に結合されない分子は、洗浄工程で除去され、そして特異的に結合される分子は、特異的に溶出される。連続精製手順において、抗体は、第一抗免疫グロブリン抗体に特異的に結合され、特異的に結合されない分子は、洗浄工程で除去され、そして特異的に結合される分子は、特異的に溶出される。第一抗免疫グロブリン由来の溶離液は、次いで第二抗免疫グロブリン抗体に特異的に結合される。特異的に結合されない分子は、洗浄工程で除去され、そして特異的に結合される分子は、特異的に溶出される。好ましい実施形態において、抗体は、重鎖定常領域および軽鎖定常領域に特異的に結合する抗体からなるグループから選択される第一抗免疫グロブリン抗体および第二抗免疫グロブリン抗体によって連続的に精製される。より好ましい実施形態において、抗体は、IgGの重鎖定常領域およびκおよびλの軽鎖定常領域に特異的に結合する抗体からなるグループから選択される第一抗免疫グロブリン抗体および第二抗免疫グロブリン抗体によって連続的に精製される。さらにより好ましい実施形態において、抗免疫グロブリン抗体は、κおよびλの軽鎖定常領域に特異的に結合する抗体からなるグループから選択される。
【0160】
(診断方法)
本発明はまた、本明細書において記載される診断方法によるサンプル中の細菌の存在(および好ましくは量)を検出することが望ましい場合、生物学的サンプルの連鎖球菌属(特に肺炎連鎖球菌)の存在をアッセイするための診断システム(好ましくはキット形態における)を記載する。
【0161】
上記診断システムは、少なくとも1つのアッセイを実行するに十分な量の、本発明による結合メンバー組成物(好ましくは、分離してパッケージ化される試薬として、より好ましくは使用説明書も)を含む。
【0162】
上記生物学的サンプルは、組織、組織抽出物、液状サンプルまたは体液サンプル(例えば、血液、血漿または血清)であり得る。
【0163】
パッケージ化されるとは、固体マトリックスまたは固体物質(本発明の結合メンバーを定められた範囲中に保持し得る、例えば、ガラス、プラスチック(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンまたはポリ炭酸塩)、紙、ホイル等)の使用をいう。従って、例えば、パッケージは、ミリグラムの量の意図される標識結合メンバー調製物を含むために使用されるガラスバイアルであり得るか、またはそれは、ミリグラムの量の意図される標識結合メンバーが、作動可能に添付されている(すなわち、リガンドを結合し得るように連結される)マイクロタイタープレートウェルであり得る。
【0164】
「使用説明書」は、代表的に、試薬濃度または少なくとも1つのアッセイ方法パラメーター(例えば、試薬および混合されるサンプルの相対量、試薬/サンプル混合物の保守期間、温度、緩衝条件等)を記載する明白な表現を含む。
【0165】
本発明の診断システムはまた、好ましくは、予め選択されるリガンドと複合体化される結合メンバーを含む結合反応複合体の形成を伝達し得る標識または表示手段を含む。
【0166】
任意の標識または表示手段は、発現されたポリペプチドまたは診断方法において使用されるファージ粒子に連結されるかまたは組み込まれ得る。そのような標識は、それ自身が臨床診断化学において周知である。
【0167】
標識手段は、抗体または抗原を変性することなくそれらに化学的に結合して、有用な免疫蛍光トレーサーである蛍光色素(染料)を形成する蛍光標識剤であり得る。適切な蛍光標識剤は、フルオレセインイソシアネート(FIC)、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、5−ジメチルアミン−1−ナフタレンスルホニル塩化物(DANSC)、テトラメチルローダミンイソチオシアン酸塩(TRITC)、リサミン、ローダミン8200スルホニル塩化物(RB 200 SC)等のような蛍光色素である。免疫蛍光分析技術の説明は、参考として本明細書に援用されているDeLuca、「Immunofluorescence Analysis」、in Antibody As a Tool、Marchalonisら編、John Wiley & Sons,Ltd.、pp.189−231(1982)の中に見られる。
【0168】
好ましい実施形態において、上記表示グループは、酵素(例えば、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)、グルコースオキシダーゼ、等)である。そのような主な表示グループが、酵素(例えば、HRPまたはグルコースオキシダーゼ)である場合、さらなる試薬が、レセプター−リガンド複合体(免疫反応物)が形成する事実を視覚可能とするために必要とされる。HRPのためのそのようなさらなる試薬としては、過酸化水素および酸化染料前駆体(例えば、ジアミノベンジジン)が挙げられる。グルコースオキシダーゼと一緒に有用なさらなる試薬は、2,2’−アミノ−ジ−(3−エチル−ベンズサイアゾリン−G−スルホン酸)(ABTS)である。
【0169】
放射性元素はまた、有用な標識剤であり、そして本明細書において説明的に使用される。例示的な放射標識剤は、ガンマ線放射を生成する放射性元素である。それ自体がガンマ線を放射する元素(例えば、124I、125I、128I、132Iおよび51Cr)は、ガンマ線放射生成放射性元素表示グループの1つのクラスを示す。特に好ましいのは、125Iである。有用な標識手段の別のグループは、それ自体陽電子を放射する11C、18F、15Oおよび13Nのような元素である。その陽電子は、動物の体に存在する電子に遭遇する際にガンマ線を精製するように放出される。また有用なものは、β放射体(例えば、111InまたはH)である。
【0170】
標識、ポリペプチドおよびタンパク質またはファージの連結(すなわち、各々の標識)は、当該分野で周知である。例えば、タンパク質は、培養培地の構成要素として提供される放射性同位体含有アミノ酸の代謝的組み込みによって標識され得る。例えば、Galfreら、Meth.Enzymol.、73:3−46(1981)を参照のこと。活性化された官能基を通じたタンパク質接合またはタンパク質連結の技術は、特に適用可能である。例えば、Aurameasら、Scand.J.Immunol.、第8巻補遺 7:7−23(1978)、Rodwellら、Biotech.、3:889−894(1984)、および米国特許第4,493,795号を参照のこと。
【0171】
診断システムはまた、特異性結合剤(好ましくは、分離パッケージとして)を含み得る。「特異性結合剤」は、本発明の結合メンバー種かまたはそのような種を含む複合体に選択的に結合し得る分子の実体であるが、それ自体は本発明の結合メンバーではない。例示的な特異性結合剤は、抗体分子、相補的タンパク質またはそのフラグメント、S.aureusタンパク質A、等である。好ましくは、その特異性結合剤が、結合メンバー種に結合するのは、その種が複合体の一部として存在する場合である。
【0172】
好ましい実施形態において、上記特異性結合剤は、標識される。しかし、上記診断システムが、標識されていない特異性結合剤を含む場合、その結合剤は、代表的に増幅手段または増幅試薬として使用される。これらの実施形態において、その標識特異性結合剤が、増幅手段に特異的に結合し得るのは、その増幅手段が、試薬種含有複合体に結合される場合である。
【0173】
本発明の診断キットは、液状サンプル中の予め選択されるリガンドの量を検出するための「ELISA」型式の中で使用され得る。「ELISA」は、サンプル中に存在する抗原の量を検出および数量化するために、固相および酵素−抗原接合または酵素−抗体接合に結合される抗体かまたは抗原を使用する酵素結合イムノソルベント検定法をいい、そして本方法に対し容易に適用可能である。
【0174】
従って、いくつかの実施形態において、本発明の結合メンバーは、被験体診断システム中のパッケージを含む固体支持体を形成するために固体マトリックスに添付され得る。
【0175】
試薬は、代表的に水溶培地からの吸着によって固体マトリックスに添付されるが、当業者に周知であるタンパク質およびポリペプチドに適用可能である添付の他の様式が、使用され得る。例示的な吸着方法は、本明細書に記載されている。
【0176】
有用な固体マトリックスはまた、当該分野において周知である。そのような物質は、水不溶性であり、そしてそのような物質としては、Pharmacia Fine Chemicals(Piscataway、N.J.)から登録商標SEPHADEXの下で入手可能である架橋されたデキストラン;アガロース;Abbott Laboratories of North Chicago,Ill.から入手可能である直径約1μmから約5mmのポリスチレンビーズのビーズ;ポリビニル塩化物、ポリスチレン、架橋されたポリアクリルアミド、ニトロセルロースに基づく繊維またはナイロンに基づく繊維(例えば、シーツ、ストリップまたはパドル);あるいは管、プレートまたはマイクロタイタープレートのウェル(例えば、ポリスチレンまたはポリビニル塩化物から生成されたもの)が挙げられる。
【0177】
本明細書において記載される任意の診断システムの結合メンバー種、標識特異性結合剤または増幅試薬が、液体分散としてかまたは実質的に乾燥粉末(dry power)として(例えば、凍結冷凍された形態で)溶液中に提供され得る。表示手段が酵素である場合、その酵素の基質はまた、系の分離パッケージ中に提供され得る。固体支持体(例えば、以前に記載されたマイクロタイタープレートおよび1つ以上の緩衝液)はまた、この診断アッセイ系に分離してパッケージ化される元素として含まれ得る。
【0178】
(診断方法)
本発明はまた、生物学的サンプルに代表的に存在する連鎖球菌属(特に、肺炎連鎖球菌)の存在(および好ましくは量)を決定するための種々のアッセイ方法を意図する。
【0179】
それゆえ、本発明は、個体において肺炎球菌に関連する疾患または障害を検出または診断する方法に関し、その方法は、
その個体に由来する生物学的サンプルを提供する工程、
上で規定されるような少なくとも1つの結合メンバーを生物学的サンプルに添加する工程、
その生物学的サンプルに結合された結合メンバーを検出し、それによってその疾患または障害を検出または診断する工程、
を包含する。
【0180】
上記結合される結合メンバーは、サンプル中の連鎖球菌属の量まで直接的にまたは間接的に検出され得る。
【0181】
当業者は、種々の周知の臨床診断化学手順があることを理解しており、その手順の中で、本発明の結合試薬が、結合反応産生物を形成するために使用され得る。その結合反応産生物の量は、サンプル中のリガンドの量に関する。従って、例示的なアッセイ方法が本明細書に記載されるが、その発明は、そのように限定されない。
【0182】
競合的または非競合的のいずれかである種々の異質のプロトコルおよび同質のプロトコルが、本発明のアッセイ方法を実行する際に使用され得る。
【0183】
結合条件は、レセプターのリガンド結合活性を維持するものである。これらの条件としては、約4℃から約50℃の温度範囲、約5から約9のpH値の範囲および、蒸留水のおよそのイオン強度から1モルの塩化ナトリウムのイオン強度まで変動するイオン強度が挙げられる。
【0184】
検出工程は、免疫学分野で周知のように、複合体または結合試薬(複合体のレセプター構成要素)のいずれかに対して導かれ得る。従って、二次的結合試薬(例えば、レセプターに対して特異的な抗体)が、利用され得る。
【0185】
あるいは、上記複合体は、標識レセプター分子を使用したことがあることによって検出可能であり得、それによって複合体を標識する。この場合の検出は、その複合体に存在する標識を検出することを含む。
【0186】
さらなる診断方法は、リガンドを架橋するために、本発明の1つの実施形態の結合メンバー組成物の多重結合価を利用し得、それによって、多重リガンドおよびポリペプチドの凝集体を形成し、沈降可能な凝集体を産生する。この実施形態は、免疫沈降の周知の方法と比較可能である。この実施形態は、結合条件下で結合混合物を形成するために、本発明の結合メンバー組成物とサンプルを混合する工程を含み、形成される結合複合体を単離する分離工程が後に続く。代表的に、単離は、混合物から凝集体を除去するために、遠心沈殿法またはろ過により達成される。結合複合体の存在は、検出される予め選択されるリガンドの存在を示す。
【0187】
(薬学的組成物)
好ましい局面において、本発明は、本明細書において記載される治療方法を実施するために有用な薬学的組成物を意図する。本発明の薬学的組成物は、活性成分としてそこで溶解または分散した、本明細書に記載される結合メンバーの少なくとも1つの種と一緒に、生理学的に耐性なキャリアを含む。好ましい実施形態において、その薬学的組成物が免疫原性ではないのは、治療目的でヒト個体に投与される場合であり、その目的が、免疫反応を誘導するものではない場合である。
【0188】
1つの局面において、本発明は、上に規定されるような少なくとも1つの結合メンバーを含む薬学的組成物に関する。好ましい実施形態において、その薬学的組成物は、その処置の効果を増加させるために、上に規定されるような少なくとも2つの異なる結合メンバーを含む。
【0189】
本明細書で使用される場合、用語「薬学的に受容可能な」、「生理学的に耐性可能な」およびその文法上の異形は、それらが組成物、キャリア、希釈剤および試薬をいうように、可換的に使用され、そしてその物質が、望まれない生理学的効果(例えば、吐き気、めまい感、急性胃ぜん動等)の生成を伴わずヒトへまたはヒトに投与し得ることを示す。
【0190】
そこで溶解または分散される活性成分を含む薬理学的組成物の調製は、当該分野においてよく理解されている。代表的に、そのような組成物は、溶液または懸濁液、水溶液または非水溶液のように無菌の注射可能物質として調製されるが、使用前に液体中の液剤または懸濁剤として適切な固体形態もまた調製され得る。その調製はまた、乳化され得る。
【0191】
上記活性成分は、薬学的に受容可能でありそして活性成分と一致しそして本明細書において記載される治療方法の使用に適切な量の賦形剤と混合され得る。適切な賦形剤は、例えば、水、食塩水、ブドウ糖、グリセロール、エタノール等およびそれらの組み合わせである。さらに、もし所望ならば、その組成物は、活性成分の有効性を促進する微量の二次的物質(例えば、湿潤剤または乳化剤、pH緩衝液等)を含み得る。
【0192】
本発明の薬学的組成物は、そこでその構成要素の薬学的に受容可能な塩を含み得る。薬学的に受容可能な塩は、無機酸(例えば、塩酸またはリン酸)、またはそのような有機酸(例えば、酢酸、酒石酸、マンデル酸等)により形成される、酸付加塩(ポリペプチドの遊離アミノ基により形成される)を含む。遊離カルボキシル基により形成される塩はまた、無機塩基(例えば、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウムまたは水酸化第二鉄)、およびそのような有機塩基(例えば、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、2−エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカイン等)に由来し得る。
【0193】
生理学的に耐性なキャリアは、当該分野において周知である。液状キャリアの模範例は、活性成分および水に加えて物質を含まない、または緩衝液(生理的pH値におけるリン酸ナトリウム、生理食塩水またはその両方(例えば、リン酸緩衝化生理水))を含む、無菌の水溶液である。なおさらに、水溶性キャリアは、1つ以上の緩衝液塩、ならびに塩(例えば、塩化ナトリウムおよび塩化カリウム、ブドウ糖、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールおよび他の溶質)を含み得る。
【0194】
液体組成物はまた、水に加えるおよび水を除く液相を含み得る。そのようなさらなる液相の模範例は、グリセリン、植物油(例えば、綿実油)、有機エスター(例えば、オレイン酸エチル)、および水−油乳剤である。
【0195】
薬学的組成物は、代表的に1gの全薬学的組成物あたり抗体の少なくとも0.1重量%の量の、本発明の結合メンバーを含む。重量%は、全組成物に対する抗体の重量の割合である。従って、例えば、0.1重量%は、100gの全組成物あたり0.1gの抗体である。
【0196】
本発明はまた、本発明の抗体を含む、医薬または薬学的組成物を調製するための方法に関連し、その医薬は、連鎖球菌属(特に、肺炎連鎖球菌(例えば、肺炎、髄膜炎および敗血症))に関連する疾患または障害の免疫療法のために使用されており、生理学的に受容可能なキャリアと上に規定されるような少なくとも1つの結合メンバーを混合することを含む。
【0197】
さらに、本発明は、連鎖球菌属(特に、肺炎連鎖球菌)に関連する疾患または障害(例えば、肺炎、髄膜炎および敗血症)の処理のための薬学的組成物を生成するために、上に規定されるような結合メンバーの使用に関する。
【0198】
上記薬学的組成物はまた、さらに抗生物質剤(例えば、β−ラクタム、セファロスポリン、ペニシリンおよびアミノ配糖体から選択される抗生物質)を含む、および/または免疫刺激剤(例えば、サイトカイン、インターフェロン、増殖因子(例えば、GCSFまたはGM−CSF))を含む、キットの一部であり得る。そのキットの一部は、同時投与、連続投与または分離投与のために使用され得る。
【0199】
さらに、上記薬学的組成物は、連鎖球菌タンパク質PsaAと組み合わせて(特に、ワクチンとして)、本発明による結合メンバーを含み得る。タンパク質PsaAと本発明による結合メンバーを組み合わせることによって、その組み合わせ産生物の免疫化特性は、タンパク質PsaA単独よりも優良であることが、見い出された。このことは、そのPsaAが、結合メンバーによって免疫系に提示される事実に起因し得る。
【0200】
(治療方法)
本発明による結合メンバーは、その高い親和力および特異性に起因して治療方法において特に有用である。それゆえ、その結合メンバーは、連鎖球菌属(特に、肺炎連鎖球菌)に関連する疾患または障害(例えば、肺炎、髄膜炎および敗血症)に関して免疫療法的に使用され得る。
【0201】
本発明の結合メンバーと一緒に本明細書において使用される場合、用語「免疫療法的に」または「免疫療法」は、予防的投与ならびに治療投与の両方を示す。従って、その結合メンバーは、疾患の可能性および/または重症度を減少させるため危険性が高い患者に投与され得、活性感染が既に証明されている患者に投与され得、または感染の危険性のある患者に投与され得る。
【0202】
本発明の結合メンバーの投与のための投与量の範囲は、疾患の症状が回復するかまたは感染の可能性が減少する、望ましい効果を生成するに十分な範囲である。一般に、その投与量は、年齢、条件、性別および患者が有する疾患の程度によって変動し、そして当業者によって決定され得る。その投与量は、いずれかの合併症の事象の際に個々の医者によって調節され得る。
【0203】
本発明の結合メンバーの治療有効量は、代表的に、生理学的に耐性な組成物に投与される場合、1mlあたり約0.1μgから約100μg/ml(好ましくは、約1μg/mlから約5μg/ml、および通常約5μg/ml)の血漿濃度を達成するに十分であるような抗体の量である。別の言い方をすれば、その投与量は、1日または数日間、1日に1回以上の投与において、約0.1mg/kgから約300mg/kgまで(好ましくは約0.2mg/kgから約200mg/kgまで、最も好ましくは約0.5mg/kgから約20mg/kgまで)変動し得る。
【0204】
本発明の結合メンバーは、注射によってまたは長期にわたって徐々に注入することによって非経口的に投与され得る。上記感染は、全身的であり得、そしてそれゆえ薬学的組成物の静脈投与によって最も頻繁に処理され得るが、他の組織および送達手段は、組織を標的にすることが、疾患の減少を生じる可能性がある場合に意図される。従って、本発明の抗体は、非経口的に(例えば、静脈内に、腹腔内に、筋肉内に、皮下に、胸腔内に、経皮内に)投与され得、そしてぜん動手段によって送達され得る。
【0205】
本発明の結合メンバーを含む薬学的組成物は、従来的に静脈投与される(例えば、1つの単位投与の注射によるように)。本発明の薬学的組成物に関して使用される場合、用語「単位投与」は、被験体に対する単一の投与量として適切な物理的に個別の単位をいい、各単位は、必要とされる希釈剤(すなわち、キャリア、またはビヒクル)と関連する所望の治療効果を産生するように計算される所定の量の活性物質を含む。
【0206】
上記治療方法は、さらに上で規定されるようなキットの一部の使用を含み得る。
【実施例】
【0207】
本発明は、さらに以下の実施例を通じて説明される;その実施例は、本発明を限定するように構成されない。
【0208】
(実施例1)
(抗PsaA抗体の産生)
完全にヒト抗体を産生する能力を有するマウスを、使用した。そのマウスは、Medarex,Incから得られたHuMAb−マウスであった。
【0209】
His6−psaAタンパク質(ここで、PsaAタンパク質は、図15に示される配列を有する)を、免疫実験のための抗原として使用した。これらのタンパク質の濃度を、分光光度計によって計算し、そしてこれらの精製度を、銀染色後にSDS−PAGEによって確認した。タンパク質を、適切に、完全フロイントアジュバント、不完全フロイントアジュバント、およびアジュバントとしてRIBIを使用して、免疫のために調製した。12匹から18匹の雄HuMAbマウスのグループを、全ての免疫実験のために使用した。各マウスを、3週間間隔で20μg〜50μgのHis6−psaA(PsaAアミノ酸配列を、図15に示す)の腹腔内(i.p.)注射および皮下注射によって免疫した。5×10e8熱不活性化肺炎連鎖球菌R6細胞i.p.Seraを受け取った何匹かのマウスを、レトロ軌道出血によってマウスから集めた。rpsaAへの滴定量をELISAによって決定した。マウスを、犠牲にする前に静脈内に追加免疫した。
【0210】
8つの融合が実行され、そして65の実行可能な細胞クローンを生じた。これらを、サブクローニングし、そして以下の1aに記載される方法によって同定された42の陽性クローンをさらなる研究のために選択した。これらのうち、26を選択し、そして精製されたモノクローナル抗体であった。乏しい反応性のため、3つを放棄した;従って、23のクローンを評価した。その23のクローンの中で、候補MAbの優先リストを確立した。その最優先の4つを、インビボモデルでさらに評価した。
【0211】
(1a)肺炎連鎖球菌R6結合抗体)
ハイブリドーマ上清を、試薬が過多のサンドイッチ型酵素結合イムノソルベントアッセイの中で肺炎連鎖球菌R6に対して3つの希釈容液で試験した。
(装置:)
ELISA読み取り機、BIO−TEK EL 800
ELISA洗浄機、携帯用モデル
インキュベーター37℃
ピペット
(材料:)
チップ
試薬トレー
プレートカバー
96−ウェルマイクロタイタープレート(Nunc Maxisorp)。
(細菌:)
10e10/mlの濃度の冷凍ストックからの肺炎連鎖球菌R6(SSI、Pneumokoklaboratoriet)。37℃で急速に解凍し、そしてコーティング緩衝液で1:100に希釈する。
(試薬:)
NaCO、pH 9.6
PBS、pH 7.4
Tween 20
ウサギ抗ヒトIgA,G,M HRP接合、DAKO #P212
ウサギ抗マウスIg HRP接合、DAKO #P260
ブタ抗ウサギIg HRP接合、DAKO #P217
0.1M クエン酸、pH 5.0
OPD 10mg錠剤、Kem−En−Tec番号4260

SO
コーティング緩衝液:NaCO 0.05M、pH 9.6、生産後2週間で期限切れ、4℃にて保存
希釈緩衝液および洗浄緩衝液:0.01% Tween20を伴うPBS、生産後1週間で期限切れ、4℃にて保存
二次抗体:希釈緩衝液中で1:1500に希釈し、毎日新しく作製する
基質:10mlのクエン酸に1OPD錠を溶解し、そして10μlのHを添加する。毎日新しく作製する
停止試薬:1.2M HSO、生産後1年で期限切れ、室温で保存。
(コントロール:)
ブランク:0.1% Tween20を伴うPBS
陽性コントロール:精製されるRa−a−PsaAの親和力
(サンプル:)
希釈緩衝液で1:2、1:50および1:1250に希釈したハイブリドーマ培養上清。
(手順:)
1ウェルあたり100μLの細菌(=10e7)を、96マイクロウェルにコーティングし、そしてそのプレートを一晩4℃でインキュベートする。過多の液体を放棄する。そのプレートを、300μLの洗浄緩衝液で3回洗浄し、そして今後1ヶ月の期間は4℃で保存し得る。100μLのブランク、陽性コントロールまたはサンプルを添加し、そしてそのプレートを2時間37℃でインキュベートする。そのプレートを、300μLの洗浄緩衝液で3回洗浄する。100μLの二次抗体を添加し、そしてそのプレートを1時間37℃でインキュベートする。そのプレートを、300μLの洗浄緩衝液で3回洗浄する。そのプレートを、300μLの脱塩水で2回洗浄する。100μLの基質を添加し、そしてそのプレートを室温で30分インキュベートする。100μLの停止試薬を添加し、そしてそのプレートを、A490nmで読み取る。
【0212】
(実施例2)
(モノクローナル抗PsaA抗体のインビトロ効果)
実施例1で得られたモノクローナル抗体を、種々の株の肺炎球菌に対してインビトロで試験し、全細菌に対して(ELISA)(方法1を参照のこと)、およびウェスタンブロットを使用して(以下の方法2を参照のこと)、抗体を同定した。
【0213】
(方法2)
(細菌結合抗体の同定―ウェスタンブロット)
第一の細菌タンパク質を、以下の方法によって、NuPAGE Tris−Bis Gelからポリビニリデンジフルオライド(PVDF)膜へ移す。
(サンプル:)
電気泳動したNuPAGE Tris−Bis Gel
(装置:)
ブロットモジュールを伴うXCell SurelockTMミニ細胞
電源装置
(材料:)
プレカットブロッティングPVDF膜(0.45μm)およびろ紙(Invitrogen #LC2005)
ピペット
チップ
トレー
(試薬:)
NuPAGE転移緩衝液(Introgen #NP0006)
ミリQ等級H
エタノール 96%。
【0214】
(手順:)
(1つのゲルを移す)
a) 500mlの転移緩衝液を、25mlの20X NuPAGE(登録商標)転移緩衝液および100mlのエタノール(96%)を375mlのミリQ等級HOに添加することによって調製した。ブロッティングパッドを、350mlの転移緩衝液に浸漬した。PVDF膜を、30秒間96%のエタノールに浸漬し、そして緩衝液の中で2分間洗浄し、そして上記ろ紙を、短く転移緩衝液の中に浸漬した。
【0215】
予め浸漬したろ紙の一片を、ゲルの上に置き(底板に接着させる)、そして全ての閉じ込められた気泡を、除去した。
【0216】
そのプレートを反転し、そうしてそのゲルおよびろ紙が、手袋をはめた手の上でまたは清潔な平面の上で下向きに向き合っていた。その予め浸漬された転移膜をゲルの上に置き、そして閉じ込められた気泡を除去した。
【0217】
別の予め浸漬されたろ紙を、上記膜の上に置き、そして全ての閉じ込められた気泡を、除去した。
b) 2つの浸漬されたブロッティングパッドを、ブロットモジュールの陰極(−)コアに置いた。そのゲル/膜集合体を、注意深く取り上げ、そして正しい方向にブロッティングパッドの上に置き、そうしてそのゲルは、陰極コアに最も近い。2つの浸漬されたブロッティングパッドを、そのsandwichの上に置き、そして陽極(+)コアはそのパッドの上にある。
c) 上記ブロットモジュールを、硬く結合し、そしてそれを低緩衝液室(Lower Buffer Chamber)のガイドレールの中に滑らせた。ゲル張力楔状部(Gel Tension Wedge)を、低緩衝液室の中に運び、そしてその楔状部を所定の位置に固定した。
【0218】
上記ブロットモジュールを、ゲル/膜集合体を覆うまで、転移緩衝液で満たした。外部緩衝液室(Outer Buffer Chamber)を、650mlのミリQ等級HOで満たし、そのふたをその部分の上に置き、そして導線を電源装置に接続した。PVDF膜に向けての転移を、1時間一定の30Vを使用して実行した。予想される開始電流は、170mAであった。そして予想される終了電流は110mAである。ウェスタンブロットを発展し、そして乾燥した膜を、1週間4℃で閉じたコンテナー/ポーチの中で保管した。
【0219】
(2つのゲルを移す)
1. 2つのゲル/膜サンドイッチを調製するために上記工程a)を2回繰り返す。
2. 上記ブロットモジュールの陰極コアの上に、2つの予め浸漬したブロッティングパッドを置く。
3. 第一ゲル/膜集合体をブロッティングパッドの上に正確な方向に置き、そうしてそのゲルは、陰極コアに最も近い。
4. 別の予め浸漬したブロッティングパッドを第一膜集合体の上に添加する。
5. 第二ゲル/膜サンドイッチをブロッティングパッドの上に正確な方向に置き、そうしてそのゲルは、陰極コアに最も近い。
6. (1つのゲルを移す)から工程c)を進める。
上記同定を、以下に記載されるように行なう:
電気泳動的に転移したタンパク質、細菌溶解物またはリポ多糖類を有するPVDF膜。
(試薬:)
WesternBreeze遮断液/希釈液A+B、Invitrogen 番号WB7050
WesternBreeze洗浄液(16×)、Invitrogen 番号WB7003
NBT/BCIP液状基質、Sigma−Aldrich番号B3679
Simply Blue Safestain、Invitrogen 番号LC 6060
ウサギ抗ヒト IgG AP、DAKO D0336
ウサギ抗マウス Ig AP、DAKO D0314
ブタ抗ウサギ Ig AP、DAKO D0306
ミリQ等級H
エタノール 96%
洗浄緩衝液:
10mlのWestern Breeze洗浄液(16×)
150mlのミリQ等級H
ブロック化溶液:
5mlのミリQ等級H
2mlの遮断液/希釈液(Part A)
3mlの遮断液/希釈液(Part B)
一次抗体溶液:
7mlのミリQ等級H
2mlの遮断液/希釈液(Part A)
1mlの遮断液/希釈液(Part B)
二次抗体溶液:
7mlのミリQ等級H
2mlの遮断液/希釈液(Part A)
1mlの遮断液/希釈液(Part B)
5μlの二次抗体(最終希釈1:2000)。
【0220】
(手順)
1. 乾燥したPVDF膜を、96%のエタノールで再び湿らせ、そして5分間で2回、各々20mlのミリQ等級HOの中でリンスし、工程4に進む。
2. 新しくブロットされた膜を、ガラスプレートに置き、そしてMWマーカーを切断する。MWマーカーを、Simply Blue SafeStainの中で15分間から30分間染色し、背景がはっきりするまで30%のエタノールで脱色する。ミリQ等級HOの中で2回洗浄する。
3. その膜を、5分間で2回、各々20mlのミリQ等級HOの中で洗浄する。
4. 膜を、緩やかに振盪させながら、室温で30分間覆われたプラスチック皿の10mlのブロック化溶液の中に置く。ブロック化溶液をデカントする。
5. 緩やかに振盪させながら、室温で5分間20mlのHOでリンスする。デカントする。もう1度繰り返す。膜を、必要な場合、これからチップに切断し得る。
6. 膜を、緩やかに振盪させながら、室温で1時間10mlの一次抗体溶液でインキュベートする。あるいは、4℃にて一晩インキュベートする。
7. 5分間で4回、各々20mlの洗浄緩衝液で洗浄する。
8. 膜を、室温で30分間10mlの二次抗体溶液でインキュベートする。
9. 5分間で4回、各回20mlの洗浄緩衝液で洗浄する。
10. その膜を、2分間で3回、各回20mlのミリQ等級HOでリンスする。
11. 紫色のバンドが発達するまで(1分から60分)、膜を、5mlのNBT/BCIP液状基質の中でインキュベートする。
12. 膜を、2分間で3回、各回20mlのミリQ等級HOでリンスすることによって発達を止める。
13. その膜を、清潔なろ紙の上で乾燥させる。
【0221】
(結果)
図20に、上記インビトロ試験の結果を列挙する。
【0222】
(実施例3)
(抗PsaA抗体親和力の測定)
以下の一般的な記載を、全ての親和力測定に実施した。
【0223】
(使用した機器およびソフトウェア:)
a. BIAcore 3000、表面プラスモン共鳴機器。
b. BiaEval v3.2、データ分析のためのソフトウェア。
c. Biacoreからの全ての連続緩衝液(HBS−EP/HBS−P)。
【0224】
(CM5チップのアミンを介してタンパク質Gを固定する方法(アミン連結方法))
a. そのチップを、少なくとも2回適切な緩衝液で正規化する。
b. タンパク質Gの0.5μg/mL希釈溶液を、pH 2.9の10mM酢酸ナトリウム緩衝液の中に産生する。
c. Biacoreハンドブックに述べられる方法にしたがって、5μL/分の流動速度で、新しく混合されたEDC & NHSを流すことによって、そのCM5チップを7分間活性化させる。
d. この活性化された表面の上に22分間タンパク質Gサンプルを注入する。
e. 1Mのエタノールアミン−HClを10分間を注入することによって非活性化させる。
f. この方法は、活性化された表面の上の約10000RUのタンパク質Gに連結する。
g. ブランクの表面に対して、同じ活性化および非活性化手順をタンパク質Gの注入なしに続ける。
【0225】
(CM5チップのアミンを介してPsaAを固定する方法(アミン連結方法))
a. CM5チップを、上のように正規化した。
b. PsaA希釈溶液を、pH 4.0の10mM酢酸ナトリウム緩衝液の中で、50μg/mLから150μg/mLの範囲の濃度に、生成する。
c. 新しく混合されたEDCおよびNHSを流すことによって、そのチップを7分間活性化させる。
d. そのチップに捕らえられる量が、所望のレベルに達するまで(本発明者らの場合、350RUから800RU)、手動注入によって酢酸緩衝液中で生成されたPsaAを注入する。
e. そのチップを、10分間1Mのエタノールアミン−HClを注入することによって非活性化させる。
f. そのチップ表面から結合されていない/緩く結合されている分子を除去するために、弱酸または弱塩基を用いてチップを再生成する。
g. そのブランクの表面を、そのタンパク質を注入する工程を除いた、同じ方法によって生成する。
【0226】
(PsaAとの抗PsaA抗体の結合のアビディティを決定する方法)
a. 抗体のアビディティを測定することに続く一般の方法論は、高流動速度にて抗原表面(上述)の上に少なくとも5つの異なる濃度の抗体を流すことである。その高流動速度は、抗原表面に再結合する抗体を最小限にするために必要である。結合相および解離相は、それぞれ、5分から10分と30分から40分との間で変動し得る。この実験設計は、この抗体のアビディティの測定に結び付くが;本発明者らは、アビディティの推定におけるこの現象の効果を最小限にしようとする。そのデータ分析を、結合/解離の二相性態様を表した領域を注意深く含まなかった後、実行した。その態様は、次いで1:1ラングニュアモデルに一致する。分析のためにデータを選択する方法は、アビディティの推定は、真の親和力により近いことを裏付けする。
b. 抗体濃度:3μg/mL、2μg/mL、1μg/mL、0.75μg/mLまたは0.5μg/mL(結合部位の40.02nM、26.68nM、13.34nM、10.0nMおよび6.67nMに対応している)。全ての希釈溶液を、連続緩衝液、HBS−EP、pH 7.2において生成した。
c. 30μL/分の流動速度。結合相8分、解離相30分から40分。
d. その表面の再生成:流動速度100μL/分、緩衝液:150mM NaClを伴う100mM HCl、時間:1分から2分。
【0227】
(実験3a)8つの精製される抗PsaA huMabの結合親和力)
(試薬)
【0228】
【表1】

(使用した機器):Biacore:3000
(使用したチップ):(結合緩衝液):10mM酢酸、pH 4.0
(結合濃度):50μg/mLから150μg/mL
(固定された量(02/12/03):)
Fc1&3=ブランク Fc2=PsaA:353RU Fc4:PsaA:824RU
(固定された量(02/20/03):)
Fc1&3=ブランク Fc2=PsaA:1145RU Fc4:PsaA:355RU。
【0229】
(実験条件:)
抗体濃度:5μg/mL、4μg/mL、3μg/mL、2μg/mLおよび1μg/mL(66.7nM、53.36nM,40.02nM,26.68nMおよび13.34nM)
連続緩衝液:HBS−EP 流動速度:30μL/分
結合時間:8分 解離時間:40分
再生成緩衝液:100mM HClおよび150mM NaCl
流動速度:100μL/分 再生成時間:1分。
【0230】
(結果:)
【0231】
【表2】

(実験3b)3つの精製される抗PsaA HuMabの結合親和力)
(試薬:)
【0232】
【表3】

(使用した機器):Biacore:3000
(使用したチップ):CM5
(結合緩衝液):10mM酢酸、pH 4.0 (結合濃度:)50μg/mLから150μg/mL
(固定された量:)
Fc1&3=ブランク Fc2=PsaA:353RU Fc4:PsaA:824RU。
【0233】
(実験条件:)
抗体の濃度:4μg/mL、3μg/mL、2μg/mL、1μg/mLおよび0.5μg/mL(53.36nM,40.02nM,26.68nM、13.34nMおよび6.67nM)
連続緩衝液:HBS−EP 流動速度:25μL/分
結合時間:5分 解離時間:45分
再生成緩衝液:100mM HClおよび150mM NaCl
流動速度:100μL/分 再生成時間:1分。
【0234】
(結果:)
【0235】
【表4】

(実験3c)14の精製される抗PsaA HuMabの結合親和力)
(試薬:)
【0236】
【表5】

(使用した機器):Biacore:3000
(使用したチップ):CM5 (チップを調製した日):02/12/03
(結合緩衝液):10mM酢酸、pH 4.0 (結合濃度):50μg/mLから150μg/mL
(固定された量(02/12/03):)
Fc1&3=ブランク Fc2=PsaA:353RU Fc4:PsaA:824RU。
【0237】
(実験条件:)
抗体の濃度:3μg/mL、2μg/mL、1μg/mL、0.75μg/mLおよび0.50μg/mL(40.02nM,26.68nM、13.34nM、10.0nM、6.67nM)
連続緩衝液:HBS−EP 流動速度:30μL/分
結合時間:8分 解離時間:30分から40分
再生成緩衝液:100mM HClおよび150mM NaCl
流動速度:100μL/分 再生成時間:45秒から1分。
【0238】
(結果:)
【0239】
【表6】

(実施例4)
(候補抗体のインビボ試験)
肺炎球菌によってもたらされる感染の処理における抗PsaA huMabの効果を、以下に記載されるように決定した。
【0240】
(材料:)
・トランスジェニック(ヒトCD64)雌マウス(8週齢から12週齢、重量19gから20g)
・0.9%食塩水(MU)
・PBS pH 7.0
・5%血小板
・ろ過されたウシブロス
・モノクローナル抗体:
・抗PsaA 5−9A7
・抗PsaA 1−15E5
・抗PsaA 7−1G9
・抗PsaA 4−3D10
【0241】
【数1】


【0242】
(方法)
(1日目:)
肺炎球菌株を、4×5%血小板に接種し、そして35℃にて一晩インキュベートした。
(0日目)
その肺炎球菌株を、ろ過されたブロスの中で10CFU/ml(MU/F074−01を参照のこと)まで懸濁し、そして1×10CFU/ml(4.95ml PBSの中に50μl 10CFU/ml)まで希釈し、そしてさらに抗体を用いて希釈する(スキームを参照のこと)。その細菌/抗体混合物を、振盪し、そして35℃にて10分間インキュベートし、次いでそのマウスを0.5ml i.p.で接種する。
【0243】
【表7】

(スキーム)
【0244】
【表8】

(血液サンプルの回収)
上記マウスを、COを用いて落ち着かせた。切除を腋において行い、そして血液をガラス管0に収集した。100μlをガラス1に移し、そして全面的に混ぜ合わせ、その後、100μlを、ガラス棒を用いて血小板の上に拡散した。次いで、CFU決定を実行した。その残りの血液を、7分間2000×Gにて遠心分離し、そして血清を別の管に移し、−20℃にて保管した。
【0245】
(腹膜液の回収)
上記マウスを犠牲にし、2mlの無菌の食塩水をその腹の中へ注入し、そして10秒後、その液体を、無菌のパスツールピペットを用いて回収し、そしてエッペンドルフ管へ移した。CFU決定を実行した。その残りの腹膜液を−20℃にて保管した。
【0246】
(結果)
上記結果を、図19A〜図19Eに示す。
【0247】
(実施例5)
(抗CD64×抗PsaA 5−9A7二重特異性抗体の産生)
各HuMAb、抗CD64(88.53)、および抗PsaA 5−9A7のF(ab’)フラグメントを、ペプシン消化によって産生し、そしてSuperdex 200ゲルろ過クロマトグラフィーによって同質性に精製した。サイズ排除HPLCを実行し、そしてプロフィールを各F(ab’)に関して図2に示す。このタイプの分析により、F(ab’)フラグメントの両方が、95%以上純粋だった。
【0248】
88.53のFab’フラグメントを、メルカプトエタノールアミン(MEA)を用いたF(ab’)フラグメントの中間重鎖のジスルフィド結合の弱い還元によって産生した。その正確な還元状態は、接合前の小規模実験において決定した。サイズ排除HPLCを実行し、そしてプロフィールをFab’に関して図3に示す。このタイプの分析により、88.53 Fab’は、90%以上純粋だった。
【0249】
88.53のFab’フラグメントを、G−25カラムクロマトグラフィーによって遊離MEAから分離した。そのFab’フラグメントを、Fab−TNB接合を産生するために、ジニトロチオベンゾエート(DTNB)を用いてインキュベートした。
【0250】
5−9A7のFab’フラグメントを、メルカプトエタノールアミン(MEA)を用いたF(ab’)フラグメントの中間重鎖のジスルフィド結合の弱い還元によって産生した。その正確な還元状態は、接合前の小規模実験において決定した。サイズ排除HPLCを実行し、そしてプロフィールをFab’に関して図4に示す。このタイプの分析により、5−9A7 Fab’は、90%以上純粋だった。
【0251】
5−9A7のFab’フラグメントを、G−25カラムクロマトグラフィーによって遊離MEAから分離し、そして室温にて一晩1:1のモル比において88.53 Fab−TNBと混合した。図5に示されるHPLCプロフィールは、インキュベーションの18時間後および精製前の接合混合物のプロフィールを示す。このプロフィールは、二重特異性抗体ならびに接合されていないFab’分子の混合物を示す。
【0252】
上記二重特異性抗体を、Superdex 200サイズ排除クロマトグラフィーによって汚染されているFab’分子から精製し、そしてその精製された分子をHPLCによって分析した。図6に示されるように、88.53×5−9A7二重特異性抗体を同質性近くまで精製した。
【0253】
コントロールに関して、抗CD64×抗CD89二重特異性抗体を産生した。各HuMAb、抗CD64(88.53)、および抗CD89(14A8)のF(ab’)フラグメントを、ペプシン消化によって産生し、そしてSuperdex 200ゲルろ過クロマトグラフィーによって同質性に精製した。サイズ排除HPLCを実行し、そしてプロフィールを各F(ab’)に関して図7に示す。このタイプの分析により、F(ab’)フラグメントの両方が、95%以上純粋だった。
【0254】
88.53のFab’フラグメントを、メルカプトエタノールアミン(MEA)を用いたF(ab’)フラグメントの中間重鎖のジスルフィド結合の弱い還元によって産生した。その正確な還元状態は、接合前の小規模実験において決定した。サイズ排除HPLCを実行し、そしてプロフィールをFab’に関して図8に示す。このタイプの分析により、88.53 Fab’は、90%以上純粋であった。
【0255】
88.53のFab’フラグメントを、G−25カラムクロマトグラフィーによって遊離MEAから分離した。そのFab’フラグメントを、Fab−TNB接合を産生するために、ジニトロチオベンゾエート(DTNB)16aおよび16bを用いてインキュベートした。
【0256】
14A8のFab’フラグメントを、メルカプトエタノールアミン(MEA)を用いたF(ab’)フラグメントの中間重鎖のジスルフィド結合の弱い還元によって産生した。その正確な還元状態は、接合前の小規模実験において決定した。サイズ排除HPLCを実行し、そしてプロフィールをFab’に関して図9に示す。このタイプの分析により、14A8 Fab’は、95%以上純粋だった。
【0257】
14A8のFab’フラグメントを、G−25カラムクロマトグラフィーによって遊離MEAから分離し、そして室温にて一晩1:1のモル比において88.53 Fab−TNBと混合した。図10に示されるHPLCプロフィールは、インキュベーションの18時間後および精製前の接合混合物のプロフィールを示す。このプロフィールは、二重特異性抗体ならびに接合されていないFab’分子の混合物を示す。
【0258】
上記二重特異性抗体を、Superdex 200サイズ排除クロマトグラフィーによって汚染されているFab’分子から精製し、そしてその精製された分子をHPLCによって分析した。図11に示されるように、88.53×14A8二重特異性抗体を同質性近くまで精製した。
【0259】
(抗CD64×抗PsaA二重特異性抗体の結合特異性の特徴付け二重特異性ELISA)
1. ELISAプレートを、組換えPsaA、50μl/ウェル、5μg/mlでコーティングし、そして4℃にて一晩インキュベートした。
2. そのプレートを、PBS中の5%のBSAを用いて遮断した。
3. 二重特異性抗体の滴定をそのプレートに添加した。コントロールは、抗CD64×抗CD89二重特異性(コントロール二重特異性)および抗CD64 Ab、88.53、または抗PsaA Ab、5−9A7のF(ab’)フラグメントを含む。
4. そのプレートを、次いでヒトIgMのFc部分に連結する可溶性CD64からなる融合タンパク質を含む上清を用いてインキュベートした。
5. そのプレートを、最終的に、ヤギ抗ヒトIgM抗体と標識されたアルカリホスファターゼを用いてインキュベートした。陽性ウェルを、アルカリホスファターゼ基質を用いて検出した。
【0260】
上記抗PsaA×抗CD64二重特異性は、このアッセイの中で投与量依存的な結合を示した(図13を参照のこと)。コントロール二重特異性は、検出されず、なぜなら、それは、PsaAに結合しないからであり、抗CD64 F(ab’)は、検出されず、なぜなら、それは、CD64に結合するが、PsaAには結合しないからであり、そして抗PsaA F(ab’)は、検出されず、なぜなら、それは、PsaAに結合するが、可溶性CD64−IgM融合タンパク質には結合しないからである。
【0261】
(抗CD64×抗PsaA二重特異性抗体の結合特異性の特徴付けヒトCD64−トランスジェニックマウス上のCD64への結合)
血液を、CD64トランスジェニックマウスからまたは非トランスジェニック同腹体から摂取し、そして室温にて30分間30μg/mlの濃度にて88.53×5−9A7二重特異性抗体を用いてインキュベートした。
【0262】
上記血液を洗浄し、次いで室温にて30分間FITC標識抗ヒトIgG抗体を用いてインキュベートした。赤血球を溶解し、そして残りの白血球を、フローサイトメトリーによって染色のために分析した。リンパ球、単球、および好中球群に対応する領域を、ゲートしそして別々に分析した。結合アッセイの結果を、図14に示す(A〜C)。黒線は、CD64トランスジェニックマウス由来の細胞の染色を示し、緑線は、非トランスジェニック同腹体由来の細胞の染色を示す。
【0263】
ヒトCD64を、CD64トランスジェニックマウスの単球上に発現し、そして、より少ない程度において、CD64トランスジェニックマウスの好中球上に発現する。ヒトにおいてそうであるように、CD64は、そのトランスジェニックマウスのリンパ球によって発現されない。図14のデータは、二重特異性抗体は、CD64トランスジェニック単球および好中球に結合するが、非トランスジェニックマウス由来のどの細胞群にも結合しないことを示す。
【0264】
要約すると、2つの二重特異性抗体(抗CD64×抗PsaAおよび抗CD64×抗CD89)を産生し、そして同質性まで精製した。88.53×5−9A7二重特異性抗体は、CD64およびPsaAへ同時に結合することが示された。さらに、この二重特異性抗体は、ヒトCD64トランスジェニックマウスによって発現されるCD64に結合する。
【0265】
(実施例6)
(抗体の配列決定)
実施例3bの親和力表に示される抗体を、従来の方法によって配列決定し、そしてこの抗体の可変領域を図に示す。
【0266】
9A7(クローン5−9A7) 図16aおよび図16b
1G9(クローン7−1G9.1) 図17aおよび図17b
15E5(クローン1−15E5.2.1) 図18aおよび図18b。
【0267】
(実施例7)
(エピトープの局在化の同定)
PsaAの15の合成フラグメント(各々は、PsaAの25のアミノ酸残基を表し、そして5つのアミノ酸残基を有する隣接フラグメントと重なっている)を、産生した。このフラグメントに結合する抗体を、標準的なELISAアッセイにおいて試験した。本発明による抗体が、配列番号51、配列番号52および配列番号53に対応するN末端フラグメントに結合したことを、見い出した。
【0268】
(参考文献)
【0269】
【表9】

【0270】
【表10】

【0271】
【表11】

【図面の簡単な説明】
【0272】
【図1】Fabフラグメントの模式図。
【図2a】88.53のF(ab’)フラグメントのサイズ排除HPLCプロフィール。
【図2b】5−9A7のF(ab’)フラグメントのサイズ排除HPLCプロフィール。
【図3】88.53のFab’フラグメントのサイズ排除HPLCプロフィール。
【図4】5−9A7のFab’フラグメントのサイズ排除HPLCプロフィール。
【図5】88.53×5−9A7接合混合物のサイズ排除HPLCプロフィール。
【図6】精製された88.53×5−9A7二重特異性抗体のサイズ排除HPLCプロフィール。
【図7a】88.53のF(ab’)フラグメントのサイズ排除HPLCプロフィール。
【図7b】14A8のF(ab’)フラグメントのサイズ排除HPLCプロフィール。
【図8】88.53のFab’フラグメントのサイズ排除HPLCプロフィール。
【図9】14A8のFab’フラグメントのサイズ排除HPLCプロフィール。
【図10】88.53×14A8接合混合物のサイズ排除HPLCプロフィール。
【図11】精製された88.53×14A8二重特異性抗体のサイズ排除HPLCプロフィール。
【図12】二重特異性抗体の模式図。
【図13】88.53×5−9A7二重特異性抗体の二重特異性結合活性。
【図14】88.53×5−9A7二重特異性抗体は、ヒトCD64トランスジェニックマウスによって発現されたCD64に結合する。
【図15】配列番号50を有するPsaAアミノ酸配列。
【図16a】抗PsaA 7−1G9 VK、ここで、Vセグメント:L15およびJセグメント:JK1。
【図16b】抗PsaA 7−1G9 VH、ここで、Vセグメント:4−34、Dセグメント:不明、およびJセグメント:JH4b。
【図17a】抗PsaA 1−15E5 VK、Vセグメント:L6、およびJセグメント:JK4。
【図17b】抗PsaA 1−15E5 VH、Vセグメント:3−7、Dセグメント:3−10、Jセグメント:JH6b。
【図18a】抗PsaA 9A7 VK、Vセグメント:L6、およびJセグメント:JK3。
【図18b】抗PsaA 9A7 VH、Vセグメント:3−7、Dセグメント:3−10、およびJセグメント:JH6b。
【図19A】肺炎球菌感染に対する抗PsaA抗体の効果を示す4つのグラフ。
【図19B】肺炎球菌感染に対する抗PsaA抗体の効果を示す4つのグラフ。
【図19C】肺炎球菌感染に対する抗PsaA抗体の効果を示す4つのグラフ。
【図19D】肺炎球菌感染に対する抗PsaA抗体の効果を示す4つのグラフ。
【図19E】肺炎球菌感染に対する抗PsaA抗体の効果を示す4つのグラフ。
【図20】インビトロ試験の結果の表。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
肺炎連鎖球菌表面付着因子A(PsaA)タンパク質に特異的に結合することが可能な少なくとも1つの結合ドメインを含む単離された結合メンバーであって、該結合ドメインは、1×10−6M未満であるPsaAに対する解離定数Kを有する、単離された結合メンバー。
【請求項2】
請求項1に記載の単離された結合メンバーであって、該単離された結合メンバーは、純粋な単離された結合メンバーである、単離された結合メンバー。
【請求項3】
請求項1に記載の単離された結合メンバーであって、抗体または免疫学的に活性な抗体フラグメントもしくは抗体の単鎖から選択される、結合メンバー。
【請求項4】
請求項3に記載の単離された結合メンバーであって、前記抗体は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、またはモノクローナル抗体の混合物から選択される、単離された結合メンバー。
【請求項5】
請求項1に記載の単離された結合メンバーであって、該結合メンバーは、PsaAプロテインに関して単一特異性である、単離された結合メンバー。
【請求項6】
請求項1に記載の単離された結合メンバーであって、該結合メンバーは、PsaAプロテインに関して特異的である少なくとも一部分を有し、二重特異性である、単離された結合メンバー。
【請求項7】
請求項1に記載の単離された結合メンバーであって、該結合メンバーは、PsaAプロテインに関して特異的である少なくとも一部分を有し、多重特異性である、単離された結合メンバー。
【請求項8】
請求項1に記載の単離された結合メンバーであって、前記結合ドメインが、ヒト抗体フレームワークによって保有される、単離された結合メンバー。
【請求項9】
請求項1に記載の単離された結合メンバーであって、前記結合ドメインが、ヒト化抗体フレームワークによって保有される、単離された結合メンバー。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載の単離された結合メンバーであって、前記結合ドメインは、PsaAのN末端部分のエピトープを認識する、単離された結合メンバー。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載の単離された結合メンバーであって、前記結合ドメインは、PsaAのN末端の100個のアミノ酸残基のエピトープを認識する、単離された結合メンバー。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれかに記載の単離された結合メンバーであって、前記結合ドメインは、配列番号2から、配列番号4から、配列番号6から、および配列番号8から、またはそのホモログから選択されるアミノ酸配列を含む、単離された結合メンバー。
【請求項13】
請求項12に記載の単離された結合メンバーであって、前記結合ドメインは、配列番号2から、配列番号4から、配列番号6から、および配列番号8から、またはそのホモログから選択される少なくとも2個のアミノ酸配列を含む、単離された結合メンバー。
【請求項14】
請求項12に記載の単離された結合メンバーであって、前記結合ドメインは、少なくとも配列番号4、および配列番号6、またはそのホモログを含む、単離された結合メンバー。
【請求項15】
請求項12に記載の単離された結合メンバーであって、前記結合ドメインは、配列番号2、配列番号4、および配列番号6、またはそのホモログを含む、単離された結合メンバー。
【請求項16】
請求項12に記載の単離された結合メンバーであって、前記結合ドメインは、配列番号8またはそのホモログを含む、単離された結合メンバー。
【請求項17】
請求項1〜16のいずれかに記載の単離された結合メンバーであって、該結合メンバーは、2つ以上の異なる肺炎球菌血清型由来のPsaAに結合することが可能である、単離された結合メンバー。
【請求項18】
請求項12〜17のいずれか1項に記載の単離された結合メンバーであって、前記ホモログは、配列番号2から、配列番号4から、配列番号6から、および配列番号8から選択される配列の1つ以上に少なくとも60%ホモログ(例えば少なくとも65%ホモログ、例えば少なくとも70%ホモログ、例えば少なくとも75%ホモログ、例えば少なくとも80%ホモログ、例えば少なくとも85%ホモログ、例えば少なくとも90%ホモログ、例えば少なくとも95%ホモログ、例えば少なくとも98%ホモログ)である、単離された結合メンバー。
【請求項19】
請求項1〜18のいずれかに記載の単離された結合メンバーであって、該結合メンバーは、PsaAのエピトープに結合することが可能であり、該エピトープは、請求項12〜16のいずれか1項に記載の結合メンバーによって認識される、単離された結合メンバー。
【請求項20】
請求項1に記載の単離された結合メンバーであって、前記解離定数が、5×10−9M未満(例えば、1×10−9M未満)である、単離された結合メンバー。
【請求項21】
請求項1〜20のいずれかに記載の単離された結合メンバーであって、前記結合ドメインが、Vドメインに位置している、単離された結合メンバー。
【請求項22】
請求項1〜21のいずれかに記載の単離された結合メンバーであって、前記結合ドメインが、Vドメインに位置している、単離された結合メンバー。
【請求項23】
請求項12〜15のいずれか1項に記載の単離された結合メンバーであって、前記結合ドメインが、該結合メンバーの相補性決定領域(CDR)として配置される、単離された結合メンバー。
【請求項24】
請求項2に記載の単離された結合メンバーであって、前記抗体フラグメントが、Fab、Fab’、F(ab)およびFvから選択される、単離された結合メンバー。
【請求項25】
請求項1〜24のいずれかに記載の結合メンバーであって、少なくとも第一結合ドメインおよび第二結合ドメインを含み、該第一結合ドメインが、肺炎連鎖球菌表面付着因子A(PsaA)タンパク質に特異的に結合することが可能であり、そして該第二結合ドメインが、該第一結合ドメインと異なる、単離された結合メンバー。
【請求項26】
請求項25に記載の単離された結合メンバーであって、前記第二結合ドメインが、哺乳動物タンパク質(例えば、ヒトタンパク質(例えば、CD64またはCD89から選択されるタンパク質))に特異的に結合することが可能である、単離された結合メンバー。
【請求項27】
請求項25に記載の単離された結合メンバーであって、前記第二結合ドメインが、哺乳動物細胞(例えば、ヒト細胞(例えば、白血球、マクロファージ、リンパ球、好中球細胞、好塩基球細胞、および好酸性球細胞から選択される細胞))に特異的に結合することが可能である、単離された結合メンバー。
【請求項28】
請求項26に記載の単離された結合メンバーであって、前記第二結合ドメインが、肺炎球菌タンパク質に特異的に結合することが可能である、単離された結合メンバー。
【請求項29】
請求項28に記載の単離された結合メンバーであって、前記第二結合ドメインが、前記第一結合ドメインと異なるPsaAエピトープに特異的に結合することが可能である、単離された結合メンバー。
【請求項30】
請求項25に記載の単離された結合メンバーであって、該結合メンバーが、2つの結合ドメインを含む、単離された結合メンバー。
【請求項31】
請求項30に記載の単離された結合メンバーであって、2つの前記結合メンバーが、スペーサー領域を通じて連結される、単離された結合メンバー。
【請求項32】
請求項1〜31のいずれか1項に記載の結合メンバーの少なくとも一部分をコードする、単離された核酸分子。
【請求項33】
請求項32に記載の核酸分子を含む、ベクター。
【請求項34】
請求項33に記載のベクターであって、前記核酸分子によってコードされる抗体の発現を調節するヌクレオチド配列を含む、ベクター。
【請求項35】
請求項32に記載の核酸分子を含む、宿主細胞。
【請求項36】
請求項1〜31のいずれかに記載の結合メンバーを発現するよう操作された、細胞株。
【請求項37】
個体において肺炎球菌に関連する疾患または障害を検出または診断する方法であって、
該個体に由来する生物学的サンプルを提供する工程、
請求項1〜31のいずれかに記載の少なくとも1つの結合メンバーを該生物学的サンプルに添加する工程、
該生物学的サンプルに結合された結合メンバーを検出し、それによって該疾患または障害を検出または診断する工程、
を包含する、方法。
【請求項38】
請求項1〜31のいずれかに記載の少なくとも1つの結合メンバーを含むキットであって、前記抗体が標識される、キット。
【請求項39】
請求項1〜31のいずれかに記載の少なくとも1つの結合メンバーを含む、薬学的組成物。
【請求項40】
請求項39に記載の薬学的組成物であって、少なくとも2つの異なる結合メンバーを含む、薬学的組成物。
【請求項41】
薬学的組成物の生成のための、請求項1〜31のいずれかに記載の結合メンバーの、使用。
【請求項42】
肺炎球菌感染の処置用の薬学的組成物の生成のための、請求項1〜31のいずれかに記載の結合メンバーの、使用。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7a】
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【図7b】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図18b】
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【図19A】
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【図19B】
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【図19C】
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【図19D】
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【図19E】
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【図20】
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【公表番号】特表2007−527703(P2007−527703A)
【公表日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−517971(P2006−517971)
【出願日】平成16年7月8日(2004.7.8)
【国際出願番号】PCT/DK2004/000492
【国際公開番号】WO2005/003174
【国際公開日】平成17年1月13日(2005.1.13)
【出願人】(506006832)
【Fターム(参考)】