説明

肺疾患を処置するためのモノクローナル抗体の霧状化

【課題】特に肺疾患の治療又は防止における抗体系治療薬のための薬物送達の向上した方法及び組成物を提供すること。
【解決手段】本発明は補体系の活性化を抑制する抗体を使用し、そして肺の疾患又は状態を防止又は治療するために使用できる方法及び組成物に関する。本発明によって処置される肺の疾患又は状態としては、喘息、気管支収縮、気管支炎、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、間質性肺疾患、肺悪性疾患、α−1アンチトリプシン欠損症、気腫、気管支拡張症、閉塞性細気管支炎、サルコイドーシス、肺線維症及びコラーゲン血管障害が挙げられるが、これ等に限定されない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
この出願は、2005年5月11日に出願された米国特許出願連続番号11/127,438(これは、2003年9月5日に出願された米国特許出願連続番号10/655,861の一部継続出願であり、2003年5月9日に出願された米国仮出願連続番号60/469,189および2002年9月6日に出願された米国仮出願連続番号60/408,571の出願日に対する優先権およびその利益を主張する)の出願日に対する優先権およびその利益を主張する。これら全ては、その全体が参考として本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
(背景)
喘息、気管支炎及び気腫は総括して慢性閉塞性肺疾患として知られている。これらの疾患は慢性気管支炎、喘息及び気腫の種々の程度の症状を伴った、特に小気道の全般性気道閉塞として特徴付けられている。これ等の疾患は個体内に共存する場合が多く、そして気道閉塞の第1原因を決定することは困難である場合がある。気道閉塞は努力呼気の間の気流に対する増大した抵抗性として定義される。大気道の閉塞もまたこれ等の疾患、特に喘息において生じる場合がある。現在使用できる喘息治療法は問題点を含み続けている。同様に、他の肺疾患、例えば肺癌を治療又は防止するための進歩した治療法も望まれている。
【0003】
患者への効果的な送達は良好な薬剤療法の何れにも重要な特徴である。送達の種々の経路が存在しており、そして各々が独自の利点及び難点を有している。丸薬、カプセル、エリキシル等の経口薬物送達は恐らくは最も簡便な方法であるが、多くの薬剤はそれらが吸収され得る前に消化管内で分解される。皮下注射は蛋白質の送達を包含する全身薬物送達のためには有効な経路であるが、患者の許容度が低い。一日一回以上の薬剤の注射は低い患者コンプライアンスの原因となる場合が多いため、種々の代替投与経路、例えば経皮、鼻内、直腸内、膣内及び肺送達が開発されている。即ち、特に肺疾患の治療又は防止における抗体系治療薬のための薬物送達の方法及び組成物を向上させることが望ましい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
(要旨)
従って、本出願は抗体系治療薬の送達に適する組成物及び方法を提供する。これ等の抗体系治療薬は肺の疾患又は状態、例えば喘息を防止又は治療する場合に特に有用である。本出願において有用な抗体の例は抗C5抗体又は補体カスケードの活性化を抑制する抗体、例えば米国特許第6,355,245号に記載されている抗体を包含する。抗体の他に、他の治療薬もまた本出願の組成物及び方法と共に使用されることを意図しており、例えば米国特許第5,627,264号に記載のキメラ補体抑制剤蛋白質が挙げられる。特定の好ましい実施形態においては抗体治療薬としてペキセリズマブ又はエクリズマブを使用する。特定の実施形態においては、肺疾患を治療又は防止するために抗体系治療薬を送達するのに適する方法は治療薬の全身送達の為に設計されるのではなく、従って、治療薬の全身作用はこれ等の方法を用いては観察されない場合がある。
【0005】
出願の第1の態様は、補体カスケードの活性化を抑制する、又は、補体系の後に活性化される1つ以上の成分の機能をブロックする抗体の治療有効量を被験体に投与することを含む、被験体における肺の状態を防止又は治療するための方法を提供する。特定の実施形態においては、追加的な活性剤も同じ被験体に投与する。抗体及び追加的活性剤の投与は同時又は何れかの順序で逐次的に行ってよい。特定の実施形態においては、抗体及び追加的活性剤は同じ送達方法又は経路を介して、例えば吸入により、被験体に投与できる。代替となる実施形態においては、抗体及び追加的活性剤は異なる送達方法又は経路を介して、例えば抗体を吸入により送達し、そして追加的活性剤を注射又は経口摂取により、被験体に投与できる。
【0006】
出願の第2の態様は、補体カスケードの活性化を抑制する抗体を含むエアロゾル組成物を提供し、組成物は被験体における肺の状態を防止又は治療するのに適している。抗体はエアロゾル化に適する組成物中に製剤される。抗体は追加的活性剤と組み合わせて製剤してよく、そして組み合わせた製剤はエアロゾル化に適するものである。或いは、抗体及び追加的活性剤は、エアロゾル化が起こった後に、又は、被験体に投与された後に組み合わせられるように別個に製剤してよい。
【0007】
出願の第3の態様は、補体カスケードの活性化を抑制する抗体を含む霧状化組成物を提供し、組成物は被験体における肺の状態を防止又は治療するのに適している。抗体はエアロゾル化に適する組成物中に製剤される。同様に、抗体は追加的活性剤と組み合わせて製剤してよく、そして組み合わせた製剤は霧状化に適している。或いは、抗体及び追加的活性剤は、霧状化が起こった後に、又は、被験体に投与された後に組み合わせられるように別個に製剤してよい。
【0008】
出願の更に別の態様は、補体カスケードの活性化を抑制する抗体及びネブライザーを含む生物医薬品パッケージを提供し、パッケージは被験体の肺の状態を防止又は治療するのに適している。生物医薬品パッケージは更に、抗体の他に活性剤を含んでよい。生物医薬品パッケージはまた使用のための説明書を含んでもよい。
【0009】
出願の意図する肺の疾患又は状態は喘息、気管支収縮、気管支炎、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、間質性肺疾患、肺悪性疾患、α−1アンチトリプシン欠損症、気腫、気管支拡張症、閉塞性細気管支炎、サルコイドーシス、肺線維症及びコラーゲン血管障害を包含するがこれ等に限定されない。
【0010】
被験体に治療薬を投与するタイミングは例えば被験体の実体又は治療又は防止すべき肺の疾患又は状態、又はその両方に応じて変動できる。例えば、投与は肺の状態の顕在化の前(例えば喘息発作前)、肺の状態の顕在化の最中(例えば喘息発作中)、又は肺の状態の顕在化の後(例えば喘息発作後)に行ってよい。
【0011】
本出願の抗体は、それがC5のC5a及びC5bへの分解を防止するようにC5に対して特異的であることができる。抗体はC5コンバターゼに対して特異的であることができる。或いは、抗体は補体系の成分、例えばC5a、C5b又はC5b−9に特異的であって良く、そして補体に特異的な抗体は、好ましくは、成分の機能を、例えば成分のその対応する受容体への結合をブロッキングすることにより、又は、補体カスケードにおけるその後のシグナリング又は事象の活性化におけるその機能をブロッキングすることにより抑制する。特定の実施形態はエクリズマブ又はペキセリズマブ、又は両方を使用する。本出願の抗体又は抗体治療薬は完全長の免疫グロブリン、モノクローナル抗体、キメラ抗体(例えばヒト化抗体)、1本鎖抗体、ドメイン抗体、Fabフラグメント又はFabフラグメントと変異したFc部分とを有する抗体であることができる。特定の実施形態においては、変異したFc部分が補体を活性化しないか、又は、Fc部分の変異が補体を活性化するFc部分の能力を低下させる。本出願の抗体はバルク中に生産又は処理し、そして、種々の用量において、適当な材料(例えばガラス又はプラスチック)で製造されたアンプルに充填してよい。
【0012】
本出願の追加的活性剤(又は抗体治療薬以外の活性剤)は、別の抗体治療薬(例えば抗IgE抗体、例えばXolair(登録商標)又はオマリズマブ、抗IL−4抗体又は抗IL−5抗体)、抗IgE抑制剤(例えばSingulair(登録商標)又はモンテルカストナトリウム)、交感神経作用剤(例えばアルブテロール)、抗生物質(例えばトブラマイシン)、デオキシリボヌクレアーゼ(例えばプルモザイム)、抗コリン作用剤(例えばシュウ化プラトロピウム)、コルチコステロイド(例えばデキサメタゾン)、β−アドレノレセプターアゴニスト、ロイコトリエン抑制剤(例えばジロイトン)、5リポキシゲナーゼ阻害剤、PDE抑制剤、CD23拮抗剤、IL−13拮抗剤、サイトカイン放出抑制剤、ヒスタミンH1受容体拮抗剤、抗ヒスタミン、抗炎症剤(例えばクロモリンナトリウム)又はヒスタミン放出抑制剤であることができる。
【0013】
抗体のエアロゾル化又は霧状化に適する製剤の例は適当なpH(例えばpH6〜8)において生理学的な浸透圧(例えば280〜320mM)にある。本出願の製剤は更に賦形剤、例えばポリソルベート80を含んでよく、これは0.0015〜0.02%で使用できる。
【0014】
本出願のネブライザーはジェットエアネブライザー(例えばPari LC Jet Plus又はHudson T Up−draft II)、超音波ネブライザー(例えばMABISMist II)、振動メッシュネブライザー(例えばOmronによるMicro air)及び衝撃波ネブライザー(EvitLabs Sonik LD120)であることができる。
【0015】
本発明はまた、以下の項目を提供する。
(項目1)
補体カスケードの活性化を抑制する抗体の治療有効量及び追加的な活性剤を被験体に投与することを含む、該被験体における肺の状態を防止又は治療するための方法。
(項目2)
前記肺の状態が喘息、気管支炎、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、間質性肺疾患、肺悪性疾患、α−1アンチトリプシン欠損症、気腫、気管支拡張症、閉塞性細気管支炎、サルコイドーシス、肺線維症及びコラーゲン血管障害よりなる群から選択される、項目1記載の方法。
(項目3)
前記被験体がヒトである、項目1記載の方法。
(項目4)
前記抗体がC5に特異的である、項目1記載の方法。
(項目5)
前記抗体がC5コンバターゼに特異的である、項目1記載の方法。
(項目6)
前記抗体がC5a又はC5b−9に特異的である、項目1記載の方法。
(項目7)
前記抗体がエクリズマブ又はペキセリズマブである、項目1記載の方法。
(項目8)
前記抗体が完全長免疫グロブリン、1本鎖抗体、ドメイン抗体、Fabフラグメント、及び、Fabフラグメント及び変異したFc部分を有する抗体よりなる群から選択される、項目1記載の方法。
(項目9)
前記変異したFc部分が補体を活性化しない、項目7記載の方法。
(項目10)
前記肺の状態の顕在化の前、該肺の状態の顕在化の最中、又は該肺の状態の顕在化の後に前記抗体を投与する、項目1記載の方法。
(項目11)
前記追加的な活性剤がコルチコステロイドである、項目1記載の方法。
(項目12)
前記コルチコステロイドがデキサメタゾンである、項目1記載の方法。
(項目13)
前記抗体及び追加的活性剤を同じ送達方法又は経路により前記被験体に投与することができる、項目1記載の方法。
(項目14)
前記抗体及び追加的活性剤を異なる送達方法又は経路により前記被験体に投与することができる、項目1記載の方法。
(項目15)
補体カスケードの活性化を抑制する抗体を含むエアロゾル組成物であって、該組成物が被験体における肺の状態を防止又は治療するのに適している組成物。
(項目16)
エアロゾル化に適する組成物中で前記抗体が製剤される、項目15記載のエアロゾル組成物。
(項目17)
追加的活性剤を更に含む、項目15記載のエアロゾル組成物。
(項目18)
a)補体カスケードの活性化を抑制する抗体;及びb)ネブライザーを含む生物医薬品パッケージであって、該パッケージが被験体の肺の状態を防止又は治療するのに適しているパッケージ。
(項目19)
前記ネブライザーがジェットエアネブライザー、超音波ネブライザー、振動メッシュネブライザー及び衝撃波ネブライザーよりなる群から選択される、項目18記載の生物医薬品パッケージ。
(項目20)
更に使用のための説明書を含む、項目19記載の生物医薬品パッケージ。
(項目21)
更に追加的活性剤を含む、項目19記載の生物医薬品パッケージ。
(項目22)
a)吸入器;及びb)吸入送達のために製剤された抗体を含む肺薬物送達キット。
(項目23)
前記吸入器が定量吸入器である、項目22記載のキット。
(項目24)
前記定量吸入器が加圧式定量吸入器である、項目23記載のキット。
(項目25)
前記吸入器が更に保持チャンバーを有する、項目22又は23記載のキット。
(項目26)
前記吸入器がネブライザーである、項目22記載のキット。
(項目27)
前記ネブライザーが超音波ネブライザーである、項目26記載のキット。
(項目28)
前記ネブライザーがジェットエアネブライザーである、項目26記載のキット。
(項目29)
前記吸入器がドライパウダー吸入器である、項目22記載のキット。
(項目30)
a)1mg/ml〜200mg/mlを含む抗C5抗体組成物;及びb)霧状化による投与を示すラベルを含む肺薬物送達キット。

本特許又は出願のファイルは彩色された少なくとも1つの図面を含有する。カラー図面を伴った本特許又は特許出願の公開物は、要請及び必要な代金の支払いに応じてOfficeにより提供される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は抗C5mAb、BB5.1によるC5a及びC5b−9の形成のブロッキングを示す。抗C5mAb(40mg/kg)又は対照mAb(40mg/kg)の単回iv又はip注射を受けた動物のC5b−9媒介溶血の抑制の薬力学的プロファイル(A)。黒塗りの円はiv(n=2)又はip(n=2)のいずれかにより対照mAbを投与されている4対照動物のデータを示す。黒塗りの三角形はip抗C5mAb投与動物(n=3)を示す。白抜きの三角形はiv抗C5mAb投与動物(n=3)を示す。C5a媒介好中球遊走(B)はインビトロ試験において分析した。ザイモサン活性化血清(20%)をC5aの原料として使用した。抗C5mAb(100μg/ml)を血清試料に添加した後、記載の通りザイモサン活性化を行った(n=8)。*はザイモサン活性化血清試料と比較した場合にp<0.05を示す。図4C及びD以外の全図面においてBALB/cマウスを使用した。
【図2】図2はOVA誘発への気道応答及び3種の重要なチェックポイントの定義を示す。A:sRawの長手方向の変化を示す代表的DCP結果。10分間5%OVAを用いたエアロゾル攻撃の後、EARの外観を15分において、その後5時間にLARにより観察した。B:疾患の過程の間の3つの重要なポイント。チェックポイント1:抗C5mAbを第25、29及び31日にip注射により投与した。下気道の機能の分析及び気道炎症の定量は第32日において5%OVAのエアロゾル攻撃後5時間に評価した。チェックポイント2:抗C5mAbを第33日において、第32日の初回気道応答からの回復後にip注射により投与した。AHRは第35日のエアロゾルMch攻撃に応答したベースラインからのRL及びCdynの変化を評価することにより試験した。チェックポイント3:C5抑制は第35日のEARの間、BB5.1にiv又はエアロゾル投与の何れかにより行った。下気道機能は5%OVA誘発後5時間にLARのピークの間に測定した。
【図3】図3はチェックポイント1、気道炎症の開始時のC5の寄与を示す。第32日における5〜6匹のマウスの平均血清OVA特異的抗体力価をELISAにより測定した(A)。斜線陰影棒グラフ:OVA特異的IgG。白色棒グラフ:OVA特異的IgE。又、第32日において、5%エアロゾルOVA誘発後5時間にRL(B)及びCdyn(C)の測定の為に動物に気管挿管し、その後肺(D)の組織学的分析を行った。対照mAb投与マウスの平均の組織学的評点(F)は2±0.28であったのに対し、コルチコステロイド投与動物は0.64±0.21(G)、及び抗C5mAb投与動物は1.25±0.25(H)であり、それに対し擬似マウスでは炎症は全く存在せず、評点=0であった(E)。特段の記載が無い限り、本図面及び全ての後続する図面において、*は投与動物(即ちコルチコステロイド又は抗C5mAb投与)を対照mAb投与動物と比較した場合にp<0.05であることを示し、黒塗りの四角形はコルチコステロイド投与マウスをC5又はC5aRターゲティング抗体投与マウスと比較した場合にp<0.05であることを示している。明確化のために、全ての対照mAb投与動物は後続する全ての図面において対照として標示する。矢印は好酸球浸潤を示す。ギームザ染色、倍率=100X。
【図4】図4はチェックポイント2、AHRの発生時のC5の寄与を示す。C5sBALB/cByJマウス(A及びB)及びC5dB10D2oSnマウス(C及びD)を同一の様式においてOVAで免疫化した(図2B)。動物を無作為化し、第33日に記載した投与を行った(ip)。第35日に、RL(A及びC)及びCdyn(B及びD)の測定の間に気管挿管を介してエアロゾルMch攻撃を行った。RL及びCdynにおける変化は各エアロゾル攻撃後のベースラインのパーセントとして表示した。OVA免疫化を行うか行わなかったC5dマウスのサブグループは、Mch攻撃前3時間にmC5a200μgで再生(iv)した。C5sBALB/cマウスについては、*はステロイド又は抗C5mAb投与動物を対照mAb投与動物と比較した場合にp<0.05を示す。C5dB10D2oSnマウスについては、対照mAb(n3)又は抗C5mAb(n=3)の何れかを投与したmAb投与動物(n=6)をrmC5aで再生したOVA免疫化C5dB10D2oSnマウスと比較した場合に、p<0.05であることを示す。対照mAb及び抗C5mAbを投与したC5d動物の間には統計学的な差は無かった。
【図5】図5はチェックポイント3、進行中の気道応答の間のC5の寄与を示す。第32日のアレルゲン誘発に応答して気道応答を前回経験している動物に、第35日に二回目のエアロゾルアレルゲン攻撃を行った。EARのピークの間、動物を無作為化し、記載した投与を行った(iv)。OVA誘発後5時間にRL(A)及びCdyn(B)の測定の為に動物に気管挿管した(群当たりマウスn=7〜8匹)。
【図6】図6はBALFのWBC計数及び分画分析を示す。BALFはチェックポイント1(A)又はチェックポイント3(B及びC)におけるエアロゾルアレルゲン誘発後5時間に得た。総BALFのWBC計数(A及びB)及びその分画分析(C)を二重盲検方式により病理学者が行った。6(C)について、白色棒グラフ:肺胞マクロファージ。斜線陰影棒グラフ:好酸球。黒色棒グラフ:好中球。陰影棒グラフ:リンパ球。(群当たりマウスn=6〜8匹)。
【図7】図7は炎症メディエーターのBALF値を示す。BALFはチェックポイント1(斜線陰影棒グラフ)又はチェックポイント3(黒色棒グラフ)におけるエアロゾルアレルゲン誘発後5時間に得た。IL−5(A)、IL−13(B)、ヒスタミン(C)、エオタキシン(D)、RANTES(E)、活性化TGF−β(F)、TNF−α(G)及びプロMMP9(H)をELISAにより測定した(群当たりn=6〜8試料)。
【図8】図8はチェックポイント3における肺内C5活性化の寄与を示す。結果は同一の実験操作による3つの別個の実験からプールしたデータを示す。動物は5%OVAによりエアロゾル攻撃し、無作為化した。次にEAR中、動物にジェットネブライザーを介して記載された投与の1つをエアロゾル投与により行った。擬似免疫マウスにはエアロゾルPBSを投与した。全動物につき、OVA誘発後5時間にRL(A)及びCdyn(B)の測定の為に動物に気管挿管した。BALFWBC計数(C)及びプロMMP9(D)は大多数の動物において分析した。対照mAb(n=15)及び対照sIgG投与マウス(n=4)のデータをプールした。抗C5Fab(n=3)を除き、全ての他のコホートにおいてn=6〜19匹とした。
【図9】図9は樹立された気道炎症を有する被験体におけるAHRの発生に対する複合療法の結果を示す。結果は本明細書に記載したチェックポイント2試験に基づいて得られた。投与はipの代わりに霧状化により第32日に送達した。Mch攻撃は第35日に行った。抗C5については、3mg/mlのBB5.1を10分後に霧状化した。2mg/mlのステロイドを10分間霧状化した。組み合わせについては、最終濃度はBB5.1で3mg/ml、そしてステロイドで2mg/mlとし、これは10分間霧状化した。
【図10】図10は抗体の霧状化に適する例示される製剤を示す。
【図11】図11は霧状化投与後2日のMch攻撃の結果を示す。
【図12】図12は粒径分布を示す。
【図13】図13は霧状化及び送達の効率を示す。
【図14】図14はエアロゾル化したエクリズマブのSDS−PAGE分析を示す。
【図15】図15は2種の異なるネブライザーを用いたエアロゾル化エクリズマブのSECHPLC分析を示す。
【図16】図16は抗C5モノクローナル抗体の反復長期エアロゾル投与が気道炎症を誘導しないことを示している。ここではマウスを10週間の投与に付し;擬似マウスは10週間に渡り週2回10分間PBSを投与し;対照マウスには10週間に渡りやはり週2回霧状化により10分間HFN7.1(アイソタイプマッチマウス抗体)を投与し;抗C5抗体(BB5.1)投与マウスには10週間に渡りやはり週2回霧状化により10分間BB5.1を投与した。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(この出願の詳細な説明)
概論
本出願は以下の通り特定の用語を略記する。
【0018】
AHR:気道応答亢進;BALF:気管支肺胞洗浄液;Cdyn−動的肺コンプライアンス;C5aR:C5a受容体;C5d:C5不全;C5s:C5完全;DCP:二重チャンバープレチスモグラフ;EAR:早期気道応答;IC:免疫複合体;LAR:後期気道応答;Mch:メタコリン;mC5a:組み換えマウスC5a;RL:肺抵抗;sRaw:特異的気道抵抗;sIgG:血清中IgG。
【0019】
補体系
補体系は細胞及びウィルスの病原体の侵入に対抗して防御するために身体の他の免疫学的系と共同して作用する。少なくとも25の補体蛋白質が存在し、これ等は血漿蛋白質及び膜コファクターの複雑な集合物として発見されている。血漿蛋白質は脊椎動物の血清中のグロブリンの約10%を構成している。補体成分はその免疫防御機能を、一連の内因性であるが厳密に酵素的な切断及び膜結合の事象において相互作用することにより達成する。結果として生じる補体カスケードはオプソニンの免疫調節性及び溶解性の機能を有する産物の生産をもたらす。
【0020】
補体カスケードは古典的経路又は代替経路を介して進行する。これ等の経路は多くの成分を共有しており、そして、それらはその初期の工程においては異なるが、標的細胞の活性化及び破壊に必要な同じ「末端補体」成分(C5〜C9)に集結し、これを共有する。
【0021】
古典的補体経路は典型的には標的細胞上の抗原部位の抗体認識及びそれとの結合により開始される。代替経路は通常は抗体依存性であり、そして、病原体表面上の特定の分子により開始され得る。両方の経路とも補体成分C3が活性プロテアーゼ(各経路で異なる)により分解されてC3aおよびC3bが得られる点において集結する。補体攻撃を活性化する他の経路は事象順序のより後期において作用することができ、補体機能の種々の態様をもたらしている。
【0022】
C3aはアナフィラトキシン(後述参照)である。C3bは細菌及び他の細胞に、そして特定のウィルス及び免疫複合体に結合し、そして循環系からの除去の為にそれらにタグ付けする。(この役割におけるC3bはオプソニンとして知られている)。C3bのオプソニン機能は補体系の最も重要な抗感染作用であると考えられている。C3b機能をブロックする遺伝子的疾患を有する患者は広範な種類の病原体生物による感染の傾向があるのに対し、補体カスケード順序の後期において疾患を有する患者、即ち、C5機能をブロックする疾患を有する患者はナイセリア感染症に対してのみ高い傾向を示し、そしてその後は幾分より高い傾向を示すことがわかっている(Fearon,Intensive Review of Internal Medicine,2d Ed.Fanta and Minaker,eds.Brigham and Women’s and Beth Israel Hospitals,1983)。
【0023】
C3bはまた各経路に独特の他の成分と複合体を形成して古典的又は代替のC5コンバターゼを形成し、これがC5を切断してC5a及びC5bとする。即ち、C3は、それが代替及び古典経路の両方にとって必須であることから、補体反応順序における中枢的蛋白質とみなされている(Wurzner,等、Complement Inflamm.8:328−340,1991)。C3bのこの特性はC3bに作用してiC3bを生成する血清プロテアーゼ因子Iにより調節される。オプソニンとしてなお機能しながら、iC3bは活性C5コンバターゼを形成できない。
【0024】
C5は約75μg/ml(0.4μM)の濃度で正常血清中に存在する190kDaのベータグロブリンである。C5はグリコシル化されており、その質量の約1.5〜3パーセントは炭水化物に帰属する。成熟C5は656アミノ酸の75kDaのベータ鎖にジスルフィド結合した999アミノ酸の115kDaのアルファ鎖のヘテロ二量体である。C5は単一コピー遺伝子の1本鎖前駆体蛋白質産物として合成される(Haviland等、J.Immunol.1991,146:362−368)。この遺伝子の転写産物のcDNA配列は18アミノ酸のリーダー配列に沿った1659アミノ酸の分泌プロC5前駆体を予測させる。
【0025】
プロC5前駆体はアミノ酸655及び659の後で切断され、アミノ酸末端フラグメントとしてのベータ鎖及びカルボキシ末端フラグメントとしてのアルファ鎖を生じ、2つの間の4アミノ酸が欠失する。C5は、アルファ鎖の最初の74アミノ酸を含むアミノ末端フラグメントとして、代替又は古典的C5コンバターゼのいずれかによりC5のアルファ鎖から切断される。C5aの11kDaの質量の約20%が炭水化物に帰属する。コンバターゼ作用のための切断部位は、18アミノ酸リーダー配列を有する1659アミノ酸プロC5前駆体配列のアミノ酸残基733かそれに直ぐ隣接する箇所である(米国特許第6,355,245号に記載の配列番号2)。この切断部位において、又はそれに隣接して結合する化合物は切断部位へのC5コンバターゼ酵素の接触をブロックする能力を有し、これにより補体抑制剤として作用する。
【0026】
C5はまたC5コンバターゼ活性以外の手段によっても活性化できる。制限トリプシン消化(Minta and Man,J.Immunol.1977,119:1597
−1602;Wetsel and Kolb,J.Immunol.1982,128:2209−2216)及び酸処理(Yammamoto and Gewurz,J.Immunol.1978,120:2008;Damerau等、Molec.Immunol.1989,26:1133−1142)も又C5を分解して活性なC5bを生成することができる。
【0027】
C5aは別のアナフィラトキシンである。C5bはC6、C7及びC8と複合体化して標的細胞表面においてC5b−8複合体を形成する。幾つかのC9分子の結合により、膜攻撃複合体(MAC、C5b−9、末端補体複合体−TCC)が形成される。十分な量のMAが標的細胞膜内に挿入されれば、それらが形成した開口部(MAC細孔)は標的細胞の急速な浸透圧溶解を媒介する。より低い非溶解性の濃度のMACは他の作用をもたらすことができる。特に、内皮細胞及び血小板内へのC5b−9複合体の少数の膜挿入は有害な細胞活性化を引き起こす場合がある。一部の場合においては、活性化は細胞溶解に先行する場合がある。
【0028】
上記した通り、C3a及びC5aはアナフィラトキシンである。これ等の活性化された補体成分は肥満細胞の脱顆粒化をトリガーする場合があり、これによりヒスタミン及び他の炎症メディエーターが放出され、その結果、平滑筋の収縮、血管透過性の増大、白血球活性化、及び過剰細胞をもたらす細胞増殖を含む他の炎症現象が起こる。C5aはまた補体活性化の部位にプロ炎症性顆粒球を誘引する作用を有する走化性ペプチドとしても機能する。
【0029】
肺の疾患又は状態及び補体系
喘息等の特定の肺疾患又は状態は、慢性の気道炎症、気道閉鎖及び種々の刺激への気道の応答亢進性(AHR)の組み合わせを特徴とし得る。これは抗原特異的CD4+T細胞、Th2サイトカイン及びアレルゲン特異的IgEを包含する順応性免疫応答により主に媒介され、肺の炎症及びAHRに到ると考えられている。細菌、ウィルス及びカビの侵入に対抗した生得の免疫防御の中核を構成する(Nagi等、J.Allergy.Clin.Immunol.(2003)112:729−734;Kasamatsu等、Arerui(1993)42:1616−1622;Bjornson等、Am.Rev.Respir.Dis.(1991)143:1062−1066)補体及びその活性化成分は、古典経路、代替の経路及びレクチン経路を介して活性化されることができる(Lachmann,Res.Immunol.(1996)147:69−70)。これ等の3種の活性化経路は補体成分C5において集結した後にC5a及びC5b−9を形成し、これ等は共に強力な生物学的応答、例えば組織傷害、炎症、アナフィラキシー応答及び細胞溶解を極めて低濃度で誘発する(Takafuji等、Int.Arch.Allergy Immunol.(1994)104Suppl.1:27−29)。更に、C5はアレルゲン曝露後に活性化される場合がある(Nagata等、J.Allergy Clin.Immunol.(1987)80:24−32)。アレルギー性喘息の動物モデルから得られた最近のデータによれば、活性化された補体成分、例えばC5aは生得及び獲得の免疫の間の重要な関連性をもたらしていることが示唆されている(Karp等、Nat.Immunol.(2000)1:221−226)。しかしながら、喘息の発症におけるC5及びその活性化成分の関与に関しては当該分野でなお異論が存在する(Karp等、上出;Gerard等、Curr.Opin.Immunol.(2002)14:705−708;Abe等、J.Immunol.(2001)167:4651−4660;Lukacs等、Am.J.Physiol.Lung Cell.Mol.Physiol.(2001)280(3):L512−L518)。
【0030】
気管支喘息に関する幾つかの実験モデルは、C5及びその活性化成分が気道炎症及び気管支収縮(又は気管支の収縮)の発症に関与していることを示している。種々の補体抑制
剤を用いた抑制試験では、げっ歯類においてAHR又は気道炎症が顕著に低減されている(Abe等、上出;Lucas等、上出)。C5活性化の潜在的関与はまた、臨床症状の重症度がC5活性化の範囲に相関しているという臨床観察事例にまで拡張されている(Gonczi等、Allergy(1997)52:1110−1114)。一方、研究によりC5不全(C5d)はマウスにおけるアレルゲン誘導AHRへの増大した感受性をもたらすことが判っており、そしてこの所見は喘息の発症をモジュレートすると報告されている重要なTh1サイトカインであるIL−12の低減された生産の証拠により裏付けられている(Karp等、上出)。論議の中心における重要な問題点は、C5及びその活性化成分が、C5d動物の試験(Karp等、上出)及び疾患の過程における介入を用いた実験によりそれぞれ示唆される通り、発症の感作期及びエフェクター期の間にプロ炎症性又は抗炎症性であるかどうかである(Abe等、上出;Lukacs等、上出)。更に、別の重要な問題は肺内活性化補体成分が発症において重要な役割を果たし、そして獲得免疫系に対する活性化C5成分の潜在的抗炎症作用を克服するかどうかである(Karp等、上出)。
【0031】
本出願は疾患の過程の間の3つの重要なポイントにおけるC5及びその活性化成分の研究に関し、喘息の発症における生得の免疫系のこの必須成分の重要な機序を概説する。下気道の機能の包括的分析及び気道炎症の複数のパラメーターの定量を実施している。本明細書においては、試験はC5が気道の炎症の開始に寄与することを示しており、樹立された気道炎症を有する動物におけるAHRの発生におけるC5の重要な寄与、及びアレルゲン攻撃への進行中の気道応答を持続させる場合の活性化C5成分の重要な役割を明らかにしている。
【0032】
喘息様症状の発症に必要な病理生理学的特徴は気道の炎症である。遺伝的素因を有する個体は、アレルゲン特異的CD4+T細胞の活性化、アレルゲン特異的IgEの生産及び好酸球のリクルートメントに決定的に関与しているIL−4及びIL−5等のTh2サイトカインの分極を包含する環境曝露へのモジュレートされた獲得免疫応答を有する場合がある(Cieslewicz等J.Clin.Invest.(1999)104:301−308)。より最近では、IL−3が発症で重要な役割を果たすものとして同定されており、動物において気道応答を誘導するために必要かつ十分であると報告されている(Wills−Karp等、Science(1998)282:2258−2261)。本明細書に記載する試験で示す通り、コルチコステロイドの広範な抗炎症活性スペクトル、例えばTh2サイトカインプロファイルのモジュレーション(図7AおよびB)及び下気道内への炎症細胞のリクルートメントのブロッキング(図3D)は、その強力な抗喘息活性に相関している。より早期に報告されているその抗炎症活性(Wang等、Proc.Natl.Acad.Sci.USA(196)93:8563−8568)と合致して、チェックポイント1におけるC5抑制はアレルゲン暴露への獲得免疫系の応答に対して顕著な影響を与えることなく気道炎症を顕著に低減している。更に、C5d動物はC5s動物によって発症するものと同程度の気道炎症を発症している。1つの考えられる説明は、気道がアレルゲン及び感染に直接曝露されることである。これ等の曝露は、他の補体成分、例えば極めて類似したプロ炎症特性を有し(Takafuji等、Int.Arch.Allergy Immunol.(1994)104、補足、1:27−29;Nagata等、J.Allergy Clin,Immunol.(1987)80:24−32)、そして、発症に寄与するものとして知られている(Gerard等、Clin.Opin.Immunol.(2002)14:705−708)C3aも活性化する場合がある。本出願に記載したデータは、活性化されたC5成分は、アレルゲンのエアロゾル曝露への獲得免疫応答の活性化を必要とする気道炎症の開始には決定的に関与しているが、必要ではないことを示している(Cieslewicz等、上出)。しかしながら、気道炎症が既に十分樹立されているチェックポイント2及び3においては、本明細書に記載したデータは、C5抑制は気道炎症の軽減及び下気道機能の改善においてはコルチコステロイドと同等又はそれより良好な薬効を有していることを示している(例えば図4〜8参照)。
【0033】
喘息の第2の特徴、即ち非特異的刺激に応答したAHRの発生を別の重要なチェックポイントとして選択した。数系統のC5s及びC5dマウスを予備スクリーニングすることにより、内因性AHRの原因であるムスカリンアセチルコリン受容体の機能に対する遺伝子的な影響(De Sanctis等、Am.J.Respir.Crit.Care Med.(1997)156:S62−S88;Levitt等、FASEB J.(1988)2:2605−2608)が本明細書に記載した試験から排除される。内因性AHRを有さない動物を使用した場合、C5抑制は樹立された気道炎症を有するC5sBALB/cマウスにおけるエアロゾルMch攻撃に対するAHRの発生を防止するために十分であることが判っている(図4A及びB)のに対し、rmC5aによるC5dB10D2oSnマウスの再生ではやはり樹立された気道炎症の存在下においてもAHRが復旧している(図4C及びD)。これ等のデータはC5、特にC5aは生得の免疫応答とAHRに関する気道応答の重要な成分とを直接関連付ける役割を果たしている。C5aRは気道平滑筋細胞及び気道上皮において発見されている(Drouin等、J.Immunol.(2001)166:2025−2032)。気道平滑筋及び上皮上の受容体との活性化されたC5成分特にC5aの直接の相互作用が以前に報告されている(Irvin等、Am.Rev.Respir.Dis.(1986)134:777−783;Larsen,Annu.Rev.Immunol.(1985)3:59−85)が、本明細書に提示するデータは、rmC5aによる維持B10D2oSnマウスの全身再生(iv)後のMch攻撃の間の下気道の機能に対する最小限の影響により示される通り、AHRの維持が気道上皮、気道平滑筋、炎症細胞及びその炎症メディエーターの間の複雑な相互作用に依存していることを示している(図4C及びD)。
【0034】
エアロゾルアレルゲン誘発後の進行中の気道応答は、本明細書に記載した試験における第3の重要なチェックポイントとして機能する。複数の炎症メディエーターの旺盛な生産及び放出を伴ったEAR及びLARの発生は、活性化C5成分と他の生得及び獲得免疫応答の成分との複雑な相互作用及びその発症における役割を調べる良好な機会を与える。本明細書に記載するデータは、抗C5モノクローナル抗体(mAb)又はそのFabフラグメントのいずれかによるC5抑制が、肺内炎症活動の軽減において、並びに、下気道の機能の改善において、同様のインビボ効率を達成していることを明らかにしている。
【0035】
本明細書に記載するデータは又、気道炎症の存在下、活性化C5成分が下流の炎症カスケードの重要な調節物質として機能することを示唆している。この調節作用は気道管腔内への炎症細胞の遊走、並びに、チェックポイント3における下気道機能の顕著な変化に相当する複数の有害なメディエーターの放出に影響するその能力により明らかにされる。C5aは恐らくは炎症細胞の最も強力な活性化剤であり(Takafuji等、上出)、そして、C5aRは循環系の白血球、肥満細胞、マクロファージ及び内皮細胞上で同定されている(Chenoweth等、Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1978)75:3943−3947)。抗C5aRsIgG投与後、下気道機能の顕著な改善が肺内炎症活動の顕著な存在と乖離していることは、C5aが気道平滑筋細胞及び上皮上に発現される自身の受容体と直接結合していることが、部分的には、気道の収縮の原因であるという仮説と合致している(Irvin等、上出)。データは又、C5b9の化学走性活性及び細胞活性化特性(Czermak等、Am.J.Phathol.(1999)154:1513−1524)がC5a9結合の不在下における顕著な肺内炎症活動の原因であることも示している。樹立された気道炎症及びICの存在下で、C5b−9は、C5aと炎症細胞上に発現されたその受容体との結合とは無関係に、プロMMP9等の複数のメディエーターの放出をトリガーすることにより下流の炎症カスケードを十分調節することができる(図8D)。C5b−9の上昇したレベルの存在は複数の炎症メディエーターの存在と共に、抗C5aRsIgG投与動物における気管支管腔内への炎症細胞の遊走に寄与している(図8C)。
【0036】
獲得及び生得の免疫系の両方とも、気管支痙攣、改変された血管の透過性、炎症細胞の接着及び遊走、粘膜の浮腫及び過剰な粘液分泌の原因であり、最終的には3種の独特であるが相互に依存した現象、即ち気道炎症、気道閉塞及びAHRをもたらす、ロイコトリエン、プロスタグランジン、ヒスタミン、アルカリ性蛋白質、サイトカイン、ケモカイン及び酵素を包含する複数の炎症メディエーターの生産及び放出の複雑な過程に寄与していた。多くの重複する生物学的機序があるため、遺伝子欠損動物の場合等の該当する状況下においては、これ等の重複した機序はより顕著な様式で補償及び寄与をもたらすと考えられる。これ等の成分の複雑な関係及び相互作用は気道の炎症、閉塞及びAHR、並びに他の肺の疾患又は状態の原因となる。
【0037】
肺の実質細胞は、C5を生産し、そしてC5を活性化フラグメントに分解する能力を保有している(Desai等、J.Exp.Pathol.(1984)1:201−216)。生得免疫応答の部分としてのC5の活性化は、部分的には、アレルゲン(Nagata等、上出)、ハウスダスト(Maruo等、上出)、煙(Robbins等、Am.J.Physiol.(1991)260:L254−L259)又は気道感染(Nagy等、J.Allergy.Clin.Immunol.(2003)112:729−734;Kasamatsu等、Arerugi(1993)42:1616−1622;Bjornson等、Am.Rev.Respir.Dis.(1991)143:1062−1066)への曝露後のC5の直接の酵素切断の為、自己防御応答の有害な副生成物に十分なり得るものである。アレルゲン曝露後の肺内ICの形成も補体カスケードを活性化する場合もある(Larsen,上出)。この仮説は活性化C5成分が気道の上皮側に主に位置し、そして、非喘息個体においては、補体の肺内活性化は十分調節されるということを提案している(Varsano等、Thorax(2000)55:364−369)。この仮説と合致して、本発明者等のデータは、肺内C5阻害はチェックポイント3(図8)及びチェックポイント2において全身C5抑制と同様の効率を達成したことを明らかにしている。これ等のデータは更に、肺内活性化C5成分は抗炎症性ではなく主要プロ炎症性の力であることを示唆している。
【0038】
試験は又、好中球又は好酸球により生産又は放出された炎症メディエーターに対するC5の抑制の作用を示している。これ等の炎症メディエーター、特にTGF−β、RANTES及びプロMMP9は、不良な長期予後を有する個体に関する焦点である、下気道のリモデリングと修復をもたらす、気管支平滑筋肥大及び呼吸器上皮の基底膜下のコラーゲンの付着の誘導により、気道に不可逆的損傷を引き起こす場合がある(Boulet等、Am.J.Respir.Crit.Care Med.(2000)162:1308−1313)。従って、独特で異なる抗炎症機序を利用するC5阻害はコルチコステロイド及び他の活性剤の強力な抗炎症作用を補完し、そして長期予後のための付加的な利益を有することができる。
【0039】
本試験は喘息を有する個体において観察される気道の複雑な機能的変化が複雑な炎症の過程と共存していることを明確に表している。一方で活性化C5成分、例えばC5aはその気道C5aRとの結合を介して、生得免疫系とAHRとの間を直接関連付ける役割を果たしている。他方で、C5a及びC5b−9はIC及び樹立された気道炎症の存在下、それらの化学走性及び細胞活性化の活動を介して下流の炎症カスケードを調節する。C5a及びC5b−9の形成をブロッキングすることは、下気道の機能を改善するのみならず、肺内の炎症活動を軽減する。これとは対照的に、C5aR拮抗剤は肺内の炎症活動に劇的に影響することなく下気道の機能を顕著に改善する。
【0040】
エアロゾル及び霧状化組成物
1つの態様において、本出願は補体カスケードの活性化を抑制する抗体を送達するための肺薬物送達組成物及び/又は装置に関する。肺薬物送達組成物は肺の疾患又は状態を治療するのに有用である。例えば、エアロゾル組成物は、呼吸管への追加的な活性剤と組み合わせた抗体の送達の為に提供される。呼吸管は口腔咽頭部及び喉頭を含む上気道、それに引き続き、気管、次いで気管支及び細気管支への分岐部を含む下気道を包含する。上下気道は誘導気道と称される。次に末端細気管支が分割して呼吸細気管支となり、これが次に最終的な呼吸域である肺胞、又は深部肺に到る。
【0041】
肺の薬物送達は吸入により達成してよく、そして吸入による投与は本明細書においては経口及び/又は経鼻であってよい。肺送達のための薬学的装置の例として、定量吸入器(MDI)、ドライパウダー吸入器(DPI)及びネブライザーが挙げられる。対象となる抗体及び/又は活性剤の送達に適合できる吸入による送達系の例は、例えば米国特許第5,756,353号;第5,858,784号;及びPCT出願WO98/31346;WO98/10796;WO00/27359;WO01/54664;WO02/060412に記載されている。抗体及び/又は活性剤の送達のために使用してよい他のエアロゾル製剤は米国特許第6,294,153号;第6,344,194号;第6,071,497号及びPCT出願WO02/066078;WO02/053190;WO01/60420;WO00/66206に記載されている。
【0042】
加圧定量吸入器(pMDI)は世界中で最も一般的に使用されている吸入器である。エアロゾルは弁が開放(通常は高圧ガスキャニスターを押し下げることによる)されることにより液体高圧ガスがキャニスター外に噴出される際に形成される。典型的には、薬剤又は治療薬は液体高圧ガスに懸濁している小粒子(通常は直径数ミクロン)内に含有されるが、一部の製剤においては、薬剤又は治療薬は高圧ガス内に溶解されていてよい。高圧ガスはエアロゾルが装置を離れると急速に蒸発し、小型の薬剤又は治療薬の粒子が生じ、これが吸引される。このようなpMDIで典型的に使用される高圧ガスは限定しないがハイドロフルオロアルカン類(HFA)を包含する。界面活性剤もまた、例えばpMDIと共に薬剤又は治療薬を製剤するために使用してよい。他の溶媒又は賦形剤、例えばエタノール、アスコルビン酸、メタ重硫酸ナトリウム、グリセリン、クロロブタノール及び塩化セチルピリジニウムもまたpMDIと共に使用してもよい。このようなpMDIは更に付加装置、例えばスペーサー、保持チャンバー及び他の変形例を含んでよい。
【0043】
ネブライザーは吸入のための薬剤含有液滴の霧状物を形成する。それらは通常は2種類、即ち超音波ネブライザー及びジェットネブライザーに分類される。新しい型のネブライザーも入手可能であり、それは機能するために超音波や空気圧を必要としない。単回呼吸噴霧器もまた開発されており(例えばRespimat(登録商標)、これは単回呼吸で薬剤を送達するのに用いられ、そして汚染が少ないことから好ましくあり得る。ジェットネブライザーはより一般的であり、そして薬剤含有水リザーバを通過して空気流を噴射するために加圧空気源を使用し、これにより、バッフル上の表面張力と液滴の破壊とが役割を果たす非線形の現象をもたらす粘度誘導表面不安定性が関与する複雑な過程において液滴が形成される。超音波ネブライザーはプレート又はメッシュの機械的振動により液滴を形成する。何れの型のネブライザーにおいても、薬剤は通常はネブライザー中の液体の溶液として含有され、そしてそのため、形成される小液滴は溶液として薬剤を含有する。しかしながら、一部の製剤(例えばPulmicort)に関しては、薬剤は水中に懸濁した小粒子内に含有され、これ等がその後、形成される小液滴内部に懸濁した粒子として含有される。特定の賦形剤、例えば塩化ナトリウム(例えば等張性維持のため)、無機の酸及び塩基(例えばpHを維持又は調節するため)、窒素ヘッドスペースパージ材、塩化ベンザルコニウム、塩化カルシウム、クエン酸ナトリウム、エデト酸二ナトリウム及びポリソルベート80等が通常は霧状化に適する製剤中に包含される。
【0044】
吸入器の第3の型はドライパウダー吸入器(DPI)である。DPIにおいては、エアロゾルは通常は、それが吸引されるまで装置内に含有される粉末である。治療薬又は薬剤は小粉末粒子(通常は直径が数百万分の1メートル、又はマイクロメートル)として粉末形態において製造される。多くのDPIにおいて、薬剤又は治療薬は典型的には直径50〜100マイクロメートルのより大型の糖粒子(例えば乳糖の1水和物)と混合される。乳糖/薬剤凝集塊上の増大した空力学的力により吸入時の薬剤粒子の捕獲が向上し、更に少量の個別粉末用量の充填も容易になる。吸入時、粉末は、乱流及び/又は粒子の凝集塊が衝突するスクリーン又は回転表面等の機械的装置の支援によりその構成粒子にまで分解し、肺内に吸入される気流中に小型の個々の薬剤粉末粒子を放出する。糖粒子は通常は装置内及び/又は口腔咽頭内に残存することが意図される。
【0045】
出願の1つの態様は補体カスケードの活性化を抑制する抗体を含むエアロゾル組成物を提供し、組成物は被験体における肺の疾患又は状態を防止又は治療するのに適する。エアロゾル抗体組成物はエアロゾル化抗体を含む組成物であるか、又は、エアロゾル化に適する製剤中に抗体を含む組成物であることができる。抗体はまた追加的活性剤と組み合わせて製剤してよく、そして組み合わせ製剤はエアロゾル化に適するものである。或いは、抗体及び追加的活性剤は、エアロゾル化が起こった後に、又は、被験体に投与された後に組み合わせられるように別個に製剤してよい。
【0046】
出願の別の態様は、補体カスケードの活性化を抑制する抗体を含む霧状化組成物を提供し、組成物は被験体における肺の疾患又は状態を防止又は治療するのに適する。霧状化抗体組成物は、霧状化抗体を含む組成物であるか、又は、霧状化に適する製剤中に抗体を含む組成物であることができる。同様に、抗体はまた、追加的活性剤と組み合わせて製剤してよく、そして組み合わせ製剤は霧状化に適する。或いは、抗体及び追加的活性剤は、霧状化が起こった後に、又は、被験体に投与された後に組み合わせられるように別個に製剤してよい。
【0047】
出願の更に別の態様は、補体カスケードの活性化を抑制する抗体及びネブライザーを含む生物医薬品パッケージを提供し、パッケージは被験体の肺の疾患又は状態を防止又は治療するのに適している。生物医薬品パッケージは更に、抗体の他に活性剤を含んでよい。生物医薬品パッケージはまた使用のための説明書を含んでもよい。
【0048】
本出願の抗体は、それがC5のC5a及びC5bへの分解を防止するようにC5に対して特異的であることができる。抗体はC5コンバターゼに対して特異的であることができる。或いは、抗体は補体系の成分、例えばC5a、C5b又はC5b−9に特異的であってよく、そして補体に特異的な抗体は、好ましくは、成分の機能を、例えば成分のその対応する受容体への結合をブロッキングすることにより、又は、補体カスケードにおけるその後のシグナリング又は事象の活性化におけるその機能をブロッキングすることにより、抑制する。特定の実施形態はエクリズマブ又はペキセリズマブ、又は両方を使用する。本出願の抗体又は抗体治療薬は完全長の免疫グロブリン、キメラ抗体(例えばヒト化抗体)、1本鎖抗体、ドメイン抗体(例えばヒト抗体の重鎖(VH)又は軽鎖(VL)の何れかの可変領域に相当する抗体の最小の機能的結合単位として定義されるDomantisにより開発されたドメイン抗体)、Fabフラグメント、又はFabフラグメントと変異したFc部分とを有する抗体であることができる。特定の実施形態においては、変異したFc部分が補体を活性化しないか、又は、Fc部分の変異が補体を活性化するFc部分の能力を低下させる。本出願の抗体はバルク中に生産又は処理し、そして、種々の用量において、適当な材料(例えばガラス又はプラスチック)で製造されたアンプルに充填してよい。抗体は1mg/ml〜200mg/mlの範囲の濃度において製剤中安定であってよい。
【0049】
本出願の追加的活性剤(又は抗体治療薬以外の活性剤)は別の抗体治療薬(例えば抗補体又は抗C5抗体、抗IgE抗体、例えばXolair(登録商標)又はオマリズマブ、抗IL−4抗体又は抗IL−5抗体)、抗IgE抑制剤(例えばSingulair(登録商標)又はモンテルカストナトリウム)、交感神経作用剤(例えばアルブテロール)、抗生物質(例えばトブラマイシン)、デオキシリボヌクレアーゼ(例えばプルモザイム)、抗コリン作用剤(例えばシュウ化プラトロピウム)、コルチコステロイド(例えばデキサメタゾン)、β−アドレノレセプターアゴニスト、ロイコトリエン抑制剤(例えばジロイトン)、5リポキシゲナーゼ抑制剤、PDE抑制剤、CD23拮抗剤、IL−13拮抗剤、サイトカイン放出抑制剤、ヒスタミンH1受容体拮抗剤、抗ヒスタミン、抗炎症剤(例えばクロモリンナトリウム)又はヒスタミン放出抑制剤であることができる。本明細書においては、活性剤はまた治療薬又は薬剤とも称してよい。
【0050】
抗体のエアロゾル化又は霧状化に適する製剤の例は適当なpH(例えばpH6〜8)において生理学的な浸透圧(例えば280〜320mM)にある。本出願の製剤は更に賦形剤、例えばポリソルベート80を含んでよく、これは0.0015〜0.02%で使用できる。
【0051】
米国特許第5,474,759号は、クロロフルオロカーボンを実質的に含まない、医学的用途において特定の利用性を有するエアロゾル製剤を開示している。製剤は高圧ガス(例えば1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパン)、中鎖脂肪酸プロピレングリコールジエステル、中鎖トリグリセリド、場合により界面活性剤、及び場合により補助剤、例えば抗酸化剤、保存料、緩衝剤、甘味料及び矯味剤を含有する。
【0052】
他の製薬上許容可能な担体も本出願の製剤中に使用してよい。表現「製薬上許容可能な」は、本明細書においては、調和の取れた医学上の判断内において、過剰な毒性、刺激、アレルギー応答又は他の問題又は合併症を伴うことなく人間及び動物の組織と接触して使用することに適し、合理的な利益/危険の比において均衡している化合物、物質、組成物及び/又は剤型を指すために用いる。表現「製薬上許容しうる担体」は本明細書においては、ある臓器又は身体のある部分から別の臓器又は身体の部分まで主要拮抗剤を担持するか輸送することに関わる、製薬上許容可能な物質、組成物又はベヒクル、例えば液体又は固体の充填剤、希釈剤、賦形剤、溶媒又はカプセル化物質を意味する。各担体は製剤の他の成分と適合し、そして患者に対して害とならないという意味において「許容できる」ものでなければならない。製薬上許容可能な担体として機能できる物質のいくつかの例は、(1)糖類、例えば乳糖、グルコース及びスクロース;(2)澱粉、例えばコーンスターチ及びポテトスターチ;(3)セルロース及びその誘導体、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース及び酢酸セルロース;(4)粉末トラガカント;(5)麦芽;(6)ゼラチン;(7)タルク;(8)賦形剤、例えばカカオ脂及び座薬用ワックス;(9)油脂類、例えばピーナツ油、綿実油、サフラワー油、ゴマ油、オリーブ油、コーン油及び大豆油;(10)グリコール類、例えばプロピレングリコール;(11)ポリオール類、例えばグリセリン、ソルビトール、マンニトール及びポリエチレングリコール;(12)エステル類、例えばオレイン酸エチル及びラウリン酸エチル;(13)寒天;(14)緩衝剤、例えば水酸化マグネシウム及び水酸化アルミニウム;(15)アルギン酸;(16)発熱物質を含まない水;(17)等張性食塩水;(18)リンゲル液;(19)エチルアルコール;(20)リン酸塩緩衝溶液;(21)医薬品製剤中に使用される他の非毒性の適合する物質を包含する。
【0053】
これ等の製剤又は組成物を製造する方法は担体及び場合により付随的な1つ以上の成分に本出願の化合物を会合させる工程を包含する。一般的に、製剤は液体担体又は微細分割固体担体又は両方と本出願の化合物とを均質及び緊密に会合させ、そして次に、必要に応じて製品を形状化することにより製造する。
【0054】
本出願のネブライザーはジェットネブライザー(例えばPari LC Jet Plus又はHudson T Up−draft II)、超音波ネブライザー(例えばMABISMist II)、振動メッシュネブライザー(例えばOmronのMicroair)及び衝撃波ネブライザー(EviLabs Sonik LD120)であることができる。
【0055】
「エアロゾル組成物」とは肺送達に適する形態又は製剤中の本明細書に記載の抗体及び/又は活性剤を意味する。エアロゾル組成物はドライパウダー形態であってよく、それは霧状化するための溶液、懸濁液又はスラリーであってよく、又は、それは適当な低沸点の高度に揮発性の高圧ガスとの混合物であってよい。1つより多い抗体及び場合により他の活性剤又は成分をエアロゾル化製剤又はエアロゾル組成物中に配合してよく、そして用語「抗体」又は「活性剤」の使用はそのような抗体又は他の薬剤又は成分の2つ以上の使用を排除するものではない。
【0056】
特定の好ましい実施形態においては、抗体又は活性剤は霧状化後にその活性の50%超、好ましくは70%超を保持している。特定の好ましい実施形態においては、抗体又は活性剤は霧状化後にその純度の50%超、好ましくは70%超を保持している。
【0057】
本出願の使用に適する活性剤の製剤は霧状化用のドライパウダー、溶液、懸濁液又はスラリー及び高圧ガス中に懸濁又は溶解された粒子を包含する。本出願の使用に適するドライパウダーは不定形の活性剤、結晶性の活性剤及び不定形及び結晶性の活性剤の両方の混合物を包含する。ドライパウダーの活性剤は、好ましくは10μm質量中央値直径(MMD)、好ましくは7.5μm未満、そして最も好ましくは5μm未満、そして通常は直径0.1μm〜5μmの範囲にある、肺の肺胞内への侵入を可能にするように選択された粒径を有する。これ等の粉末の送達用量効率(DDE)は>30%、通常は>40%、好ましくは>50%、そして頻繁には>60%であり、そしてエアロゾル粒径分布は約1.0〜5.0μm質量中央値空力学的直径(MMAD)、通常は1.5〜4.5μmMMAD、そして好ましくは1.5〜4.0μmMMADである。これ等のドライパウダー活性剤は約10重量%未満、通常は約5重量%未満、そして好ましくは約3重量%未満の水分含有量を有する。このような活性剤はWO95/24183及びWO96/32149に記載されており、これ等は参照により本明細書に組み込まれる。
【0058】
ドライパウダー活性剤製剤は好ましくは実質的に不定形の粉末を形成する条件下に噴霧乾燥することにより製造する。バルク活性剤、通常は血漿形態のものを、生理学的に許容可能な水性緩衝液、典型的には約2〜9のpH範囲を有するクエン酸塩緩衝液中に溶解する。活性剤は0.01重量%〜1重量%、通常は0.1%〜0.2%の濃度で溶解する。次に溶液をNiroA/S(Denmark)、Buchi(Switzerland)等の市販の従来の噴霧乾燥機において噴霧乾燥することにより、実質的に不定形の粉末としてよい。これ等の不定形の粉末はまた、不定形の構造を形成する条件下、適当な活性剤の溶液の凍結乾燥、真空乾燥又は蒸発乾燥により製造してよい。このようにして製造された不定形の活性剤製剤を粉砕又はミリングすることにより所望の粒径範囲の粒子を製造することができる。ドライパウダー活性剤はまた結晶形態であってよい。結晶性ドライパウダーはバルク結晶性活性剤を粉砕又はジェットミリングすることにより製造してよい。
【0059】
本出願の活性剤粉末は場合により呼吸器及び肺への投与に適する製薬用の担体又は賦形剤と組み合わせてよい。そのような担体は、患者に送達される粉末中の活性剤の濃度を低減することが望まれる場合は単に増量剤として機能してよいが、活性剤のより効率的で再現性のある送達を行うため、及び、製造及び粉末充填を容易にするために流動性及びコン
システンシー等の活性剤の取り扱い特性を向上させるために、粉末分散装置内の粉末の分散性を向上させるために機能してもよい。そのような賦形剤は限定されないが、(a)炭水化物、例えば単糖類、例えばフラクトース、ガラクトース、グルコース、D−マンノース、ソルボース等;二糖類、例えば乳糖、トレハロース、セロビオース等;シクロデキストリン、例えば2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン;及び多糖類、例えばラフィノース、マルトデキストリン、デキストラン等;(b)アミノ酸、例えばグリシン、アルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、システイン、リジン等;(c)有機酸及び塩基から形成された有機の塩、例えばクエン酸ナトリウム、アスコルビン酸ナトリウム、グルコン酸マグネシウム、グルコン酸ナトリウム、塩酸トロメタミン等;(d)ペプチド及び蛋白質、例えばアスパルテーム、ヒト血清アルブミン、ゼラチン等;及び(e)アルジトール、例えばマンニトール、キシリトール等を包含する。担体の好ましいグループは乳糖、トレハロース、ラフィノース、マルトデキストリン、グリシン、クエン酸ナトリウム、ヒト血清アルブミン及びマンニトールを包含する。
【0060】
ドライパウダー活性剤製剤は参照により本明細書に組み込まれるWO96/09085に記載のInhale Therapeutic Systems’ドライパウダー吸入器を用いて送達してよいが、所望のレベル又は適当な範囲内に流量を制御するように調節してよい。ドライパウダーはまた参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,320,094号においてLaube等が記載する定量吸入器を用いて送達してもよい。
【0061】
霧状化された溶液は市販の活性剤製剤溶液をエアロゾル化することにより製造してよい。これ等の溶液は前出のLaube等により使用が記載されているPuritan Bennettにより製造されたRaindrop等のジェットネブライザーにより送達してよい。溶液、懸濁液又はスラリーの送達のための他の方法はRubsamen等の米国特許第5,672,581号に記載されている。振動圧電部材を使用する装置は参照により本明細書に組み込まれるIvri等の米国特許第5,586,550号に記載されている。
【0062】
高圧ガス系は高圧ガス中に溶解した活性剤又は高圧ガス中に懸濁した粒子を包含してよい。製剤のこれ等の型の両方が参照により本明細書に組み込まれるRubsamen等の米国特許第5,672,581号に記載されている。
【0063】
特定の実施形態においては、エアロゾル又は霧状化抗体組成物は、1つ以上の他のエアロゾル又は霧状化治療薬、例えば交感神経作用剤(例えばアルブテロール)、抗生物質(例えばトブラマイシン)、デオキシボヌクレアーゼ(例えばパルモザイム)、抗コリン作用薬(例えば臭化イプラトロピウム)又はコルチコステロイドと組み合わせることができる。
【0064】
特定の実施形態においては、エアロゾル又は霧状化抗体組成物は、霧状化、吸入、静脈内又は経口経路により(同時又は逐次的に)投与される1つ以上の他の治療薬、例えば交感神経作用剤(例えばアルブテロール)、抗コリン作用薬(例えば臭化イプラトロピウム)、炎症抑制剤(例えばクロモリンナトリウム)、ロイコトリエン抑制剤(例えばジレウトン)、抗IgE抑制剤(例えばSingulair(登録商標))又はコルチコステロイドと組み合わせることができる。
【0065】
本明細書においては、抗体又は治療薬は微粒子として製剤してよい。0.5〜10ミクロンの直径を有する微粒子は天然の障壁の大部分を通過して肺に侵入できる。10ミクロン未満の直径は一般的に咽喉を迂回するために必要であり;0.5ミクロン以上の直径が通常は散逸を回避するために必要である。
【0066】
特定の実施形態においては、主要抗体又は治療薬は超分子複合体に製剤され、これは0.5〜10ミクロンの直径を有してよく、0.5〜10ミクロンの直径を有する粒子に凝集することができる。
【0067】
他の実施形態においては、主要抗体又は治療薬は肺送達のために適切に製剤されたリポソーム又は超分子複合体中で提供される。
【0068】
(i)微粒子を形成するための重合体
上記した超分子複合体のほかに、多くの他の重合体も微粒子を形成するために使用できる。本明細書においては、用語「微粒子」は微小球(均一な球体)、マイクロカプセル(コア及び重合体外層を有する)及び不規則な形状の粒子を包含する。
【0069】
重合体は好ましくは抗体又は治療薬の放出が望まれる時間帯内で、又はその後の比較的早期まで、一般的に1年、より典型的には数ヶ月、更に典型的には数日〜数週間、生体分解性である。生体分解性は微粒子の破壊、即ち微粒子を形成している重合体及び/又は重合体自身の解離を指す。これは、ジケトピペラジンの場合のように粒子が投与される担体のpHから放出部位のpHへの変化の結果として、ポリ(ヒドロキシ酸)の場合のように加水分解の結果として、アルギネート等の重合体のイオン結合により形成される微粒子の場合のように微粒子からのカルシウム等のイオンの拡散により、そして多糖類及び蛋白質の多くの場合のように酵素的作用により、生じることができる。一部の場合においては、一次的な放出が最も有用であり得るが、他の例においてはパルス放出又は「バルク放出」がより効果的な結果をもたらす場合がある。
【0070】
代表的な合成物質はジケトピペラジン、ポリ(ヒドロキシ酸)、例えばポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)及びこれ等の共重合体、ポリ無水物、ポリエステル、例えばポリオルトエステル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアルキレン、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリビニル化合物、例えばポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、ポリビニルエステル、ポリビニルハライド、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアセテート、及び、ポリビニルクロリド、ポリスチレン、ポリシロキサン、アクリル及びメタクリル酸の重合体、例えばポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(エチルメタクリレート)、ポリ(ブチルメタクリレート)、ポリ(イソブチルメタクリレート)、ポリ(ヘキシルメタクリレート)、ポリ(イソデシルメタクリレート)、ポリ(ラウリルメタクリレート)、ポリ(フェニルメタクリレート)、ポリ(メチルアクリレート)、ポリ(イソプロピルアクリレート)、ポリ(イソブチルアクリレート)、ポリ(オクタデシルアクリレート)、ポリウレタン及びこれ等の共重合体、セルロース、例えばアルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、セルロースエーテル、セルロースエステル、ニトロセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシブチルメチルセルロース、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートフタレート、カルボキシエチルセルロース、セルローストリアセテート及びセルローススルフェートナトリウム塩、ポリ(酪酸)、ポリ(吉草酸)及び(乳酸カプロラクトン)共重合体である。
【0071】
天然の重合体はアルギネート及び他の多糖類、例えばデキストラン及びセルロース、コラーゲン、アルブンミン及び他の親水性蛋白質、ゼイン及び他のプロラミン及び疎水性蛋白質、これ等の共重合体及び混合物を包含する。本明細書においては、その化学的誘導体とは置換、化学基、例えばアルキル、アルキレンの付加、ヒドロキシル化、酸化及び当該分野で知られた他の修飾を指す。
【0072】
生体接着性重合体はH.S.Sawhney,C.P.Pathak and J.A.Hubell,Macromolecules,1993,26,581−587に記載された生体腐食性ヒドロゲル、ポリヒアルロン酸、カゼイン、ゼラチン、グルチン、ポリ無水物、ポリアクリル酸、アルギネート、キトサン及びポリアクリレートを包含する。
【0073】
更に説明すれば、マトリックスは重合体から溶媒の蒸発、噴霧乾燥、溶媒抽出及び当該分野で知られた他の方法により形成できる。薬物送達のための微小球を形成するために開発された方法は文献に記載されており、例えばMathiowitz and Langer,J.Controlled Release 5,13−22(1987);Mathiowitz,等、Reactive Polymers 6,275−283(1987);及びMathiowitz,等、J.Appl.Polymer Sci.35,755−774(1988)に記載される通りである。方法の選択は、例えばMathiowitz,等、Scanning Microscopy 4,329−340(1990);Mathiowitz,等、J.Appl.Polymer Sci.45,125−134(1992);及びBenita,等、J.Pharm.Sci.73,1721−1724(1984)に記載される通り、重合体の選択、大きさ、外部形態及び所望の結晶性に応じたものである。
【0074】
例えばMathiowitz,等(1990),Benita及びJaffeへの米国特許第4,272,398号に記載される溶媒蒸発の場合は、重合体は揮発性有機溶媒に溶解する。抗体及び/又は治療薬は、溶解可能形態又は微細粒子として分散した状態で、重合体溶液に添加し、そして混合物をポリ(ビニルアルコール)等の界面活性剤を含有する水相内に懸濁させる。得られるエマルジョンを有機溶媒大半が蒸発するまで攪拌し、固体の微小球を残存させる。
【0075】
一般的に、重合体は塩化メチレンに溶解することができる。数種の異なる重合体濃度、例えば0.05〜0.20g/mlを使用できる。溶液に薬剤を投入した後、溶液を1%(w/v)ポリ(ビニルアルコール)(Sigma Chemical Co.,St.Louis,Mo.)を含有する激しく攪拌されている蒸留水200ml中に懸濁する。攪拌4時間の後、有機溶媒は重合体から蒸発し、そして得られる微小球を水で洗浄し、凍結乾燥機中で一晩乾燥する。
【0076】
種々の大きさ(1〜1000ミクロン、ただしエアロゾル用途には10ミクロン未満)及び形態を有する微小球を、ポリエステル及びポリスチレン等の比較的安定な重合体に対して有用なこの方法で得ることができる。しかしながら、ポリ無水物等の不安定な重合体は水への曝露により分解する場合がある。これ等の重合体に対しては、ホットメルトカプセル化及び溶媒の除去が好ましい場合がある。
【0077】
ホットメルトカプセル化の場合は、重合体を先ず溶融し、そして次に、好ましくは適切なサイズに分篩した抗体又は治療薬の固体粒子と混合する。混合物を非混和性の溶媒、例えばシリコーン油に懸濁し、そして連続的に攪拌しながら、重合体の融点より5℃高温に加熱する。エマルジョンが安定化した後、これを重合体粒子が固化するまで冷却する。得られた微小球を石油エーテルと共にデカンテーションすることにより洗浄し、自由流動粉末とする。1〜1000ミクロンの直径を有する微小球はこの方法で得ることができる。この手法で製造された球の外表面は通常は平滑で緻密である。この操作法は水不安定性の重合体の場合に有用であるが、1000〜50000の分子量を有する重合体の場合の使用に限られる。
【0078】
噴霧乾燥においては、重合体を有機溶媒、例えば塩化メチレン中に溶解する(0.04mg/ml)。既知量の抗体及び/又は治療薬を重合体溶液中に懸濁(不溶の場合)又は
共溶解(可溶の場合)する。次に溶液又は分散液を噴霧乾燥する。重合体の選択に応じた形態を有する1〜10ミクロンの直径範囲の微小球が得られる。
【0079】
アルギネート又はポリホスファジン又は他のジカルボン酸重合体等のゲル型の重合体から作成されるヒドロゲル微小球は、重合体を水溶液に溶解し、配合すべき物質を混合物に懸濁し、そして、窒素ガスジェットを装着した微小液滴形成装置を通して重合体混合物を押し出すことにより製造できる。得られた微小球は、例えばSalib,等、Pharmazeutische Industrie40−111A,1230(1978)に記載の通り、緩徐に攪拌されたイオン性硬化バス内に落下させる。この系の利点は、微小球表面を、例えばLim,等、J.Pharm.Sci.70,351−354(1981)に記載の通り、加工後にポリリジン等のポリカチオン性の重合体でそれらをコーティングすることにより、更に修飾することができる能力である。例えば、アルギネートの場合は、ヒドロゲルは、カルシウムイオンにアルギネートをイオン的に架橋させ、そして、次に、加工後にポリリジン等のポリカチオンに微粒子の外表面を架橋させることにより、形成することができる。微小球の大きさは種々のサイズの押出器、重合体流量及びガス流量により制御される。
【0080】
キトサンの微小球は、重合体を酸性溶液に溶解し、そしてトリポリホスフェートに架橋することにより製造できる。例えば、カルボキシメチルセルロース(CMC)微小球は、重合体を酸性溶液に溶解し、そして鉛イオンで微小球を沈殿させることにより製造される。アルギネート/ポリエチレンイミン(PEI)はアルギネートマイクロカプセル上のカルボキシル基の量を低減するために製造できる。
【0081】
(ii)医薬組成物
微粒子は患者への投与のための食塩水等の何れかの適切な製薬用の担体内に懸濁することができる。最も好ましい実施形態においては、微粒子は投与直前まで乾燥又は凍結乾燥された形態において保存される。次にこれ等を十分な溶液、例えばエアロゾルとしての投与のための水溶液に懸濁するか、又はドライパウダーとして投与することができる。
【0082】
(iii)ターゲティングされた投与
微粒子は特定の細胞又は臓器、特に貪食細胞及び臓器に送達できる。薬剤又は治療薬の全身送達が望まれる場合は、肺内のマクロファージによる微粒子のエンドサイトーシスを用いて微粒子を脾臓、骨髄、肝臓、リンパ節及び他の身体部分にターゲティングすることができる。
【0083】
微粒子はまた特定の標的、例えば、肺系内の、又は肺の疾患又は状態に関連する特定の標的(例えば肺における癌細胞に特異的な標的)に特異的又は非特異的に結合する上記したもの等のリガンドの結合によりターゲティングすることもできる。このようなリガンドの例はまた、抗体及び可変領域含有フラグメント、レクチン及びホルモン、又は、標的細胞の表面上の受容体を有する他の有機分子を包含する。
【0084】
(iv)微粒子の保存
特定の実施形態においては、微粒子は凍結乾燥して保存される。用量はカプセル化された抗体及び/又は治療薬の量、肺系内における放出速度、及び抗体及び/又は治療薬の薬物動態により決定される。
【0085】
(v)微粒子の送達
微粒子は、粒子の一部が肺系に到達するような鼻腔内への直接投与から肺の管内に到達するカテーテル又はチューブの使用まで、種々の方法を用いて送達できる。上記した通り、炭化水素高圧ガスはもはや使用されておらず、そして患者による吸気に依存しているものは用量変動をもたらす場合があるが、ドライパウダー吸入器は市販されている。適当な高圧ガスの例はヒドロフルオロアルカン高圧ガス、例えば1,1,1,2−テトラフルオロエタン(CF3CH2F)(HFA−134a)及び1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロ−n−プロパン(CF3CHFCF3)(HFA−227)、パーフルオロエタン、モノクロロフルオロメタン、1,1−ジフルオロエタン及びこれ等の組み合わせを包含する。
【0086】
治療方法
出願の第1の態様は、補体カスケードの活性化を抑制する抗体の治療有効量を被験体に投与することを含む、被験体における肺の疾患又は状態を防止又は治療するための方法を提供する。特定の実施形態においては、追加的活性剤もまた同じ被験体に投与する。抗体及び追加的活性剤の投与は同時に、又は何れかの順序において逐次的に行ってよい。
【0087】
用語「防止する」は当業者の知る通りであり、そして状態、例えば局所的再発(例えば疼痛)、癌等の疾患、心不全又は何れかの他の医学的状態等の症候群複合体に関連して使用する場合は、当該分野で良く知られているものであり、そして、組成物を投与されない被験体と相対比較して、被験体における医学的状態の症状(例えば喘息)の頻度を低減するか、発症を遅延する組成物の投与を包含する。即ち、癌の防止は、例えば未投与の対照集団と相対比較して予防的投与を受けている患者の集団において検出可能な癌性の生育の数を低減すること、及び/又は、投与集団−対−未投与対照集団において例えば統計学的及び/又は臨床的に有意な分量、検出可能な癌性の生育の出現を遅延させることを包含する。感染の防止は、例えば投与集団−対−未投与対照集団において感染の診断数を低減すること、及び/又は、投与集団−対−未投与対照集団において感染の症状の発症を遅延させることを包含する。疼痛の防止は、例えば、投与集団−対−未投与対照集団において被験体により経験される疼痛感覚の、規模を低下すること、又は遅延することを包含する。
【0088】
用語「治療する」は予防的及び/又は治療的な処置を包含する。用語「予防的又は治療的」処置は当該分野で知られる通りであり、1つ以上の主要組成物の宿主への投与を包含する。望ましくない状態(例えば宿主動物の疾患又は他の望ましくない状況)の臨床的顕在化の前に投与されれば処置は予防的(即ち望ましくない状態の発生から宿主を保護する)であるのに対し、望ましくない状態の顕在化の後に投与されれば処置は治療的である(即ち既存の望ましくない状態又はその副作用を減衰、軽減又は安定化することを意図する)。
【0089】
出願の意図する肺の疾患又は状態は限定されないが喘息、気管支収縮、気管支炎、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、間質性肺疾患、肺悪性疾患、α−1アンチトリプシン欠損症、気腫、気管支拡張症、閉塞性細気管支炎、サルコイドーシス、肺線維症及びコラーゲン血管障害を包含する。
【0090】
本治療を受ける被験体又は患者は必要とする何れかの動物、例えば霊長類、特にヒト、及び他の動物、例えばウマ、ウシ、ブタ及びヒツジ、及び家禽類及び愛玩動物全般である。
【0091】
用語「治療有効量」は本明細書においては、動物において細胞又は臓器の少なくともサブ集団においてC5又は補体カスケードの活性化を抑制し、これにより何れかの医療的処置に適用可能な合理的な利益/危険の比において、投与された細胞又は臓器におけるその機能の生物学的帰結をブロッキングすることにより、何らかの所望の治療効果をもたらすために有効な本発明の化合物、物質又は化合物を含む組成物の量を意味する。
【0092】
被験体への治療役の投与のタイミングは被験体の実体、又は、治療すべき、又は防止すべき、又は両方の肺の疾患又は状態に応じて変動することができる。例えば、投与は肺の状態の顕在化の前(例えば喘息発作前、又は、気管支収縮前)、肺の状態の顕在化の最中(例えば喘息発作又は気管支収縮の最中)、又は肺の状態の顕在化の後(例えば喘息発作後、又は、気管支収縮後)に行ってよい。
【0093】
表現「補体カスケードの活性化を抑制する」は、本出願の抗体又は活性剤により付与される上記した補体系の何れかの成分に対する何れかの抑制的な影響又は作用を指す。抑制作用は補体の活性化に典型的な応答の低減又は消失により明らかにされ得る。例えば、補体活性化に対する典型的な細胞及び他の生物学的応答は、限定されないが、ヒスタミン放出、平滑筋収縮、増大した血管の透過性、白血球活性化、化学走性(例えば補体活性化の部位への顆粒球の移動)及び他の炎症性の現象、例えば細胞増殖を包含する。特定の実施形態においては、抑制作用はC5成分に特異的である。特定の実施形態においては、抑制作用はC5コンバターゼに特異的であり、例えばC5をC5a及びC5b−9に変換するC5コンバターゼの機能をブロックする。特定の実施形態においては、抑制作用はC5aに特異的である。特定の実施形態においては、抑制作用はC5b又はC5b−9に特異的である。
【実施例】
【0094】
以下の実施例は説明の為に提示するものであり、限定するものではない。
【0095】
材料及び方法
動物:雄性C5s BALB/cByJ、C57BL/6Jマウス及びC5dB10D2oSn/J、AKR/J及びSWR/JマウスをJackson Laboratoryから購入し、病原体不在施設において飼育した。血清C5b−9媒介溶血の他に、C5遺伝子型を更に、C5s及びC5d DNAの両方に由来する280bpのDNAフラグメントを増幅するプライマー対(5’−CACGATAATGGGAGTCATCTGGG−3’及び5’−AAGTTGGAGTGTGGTCTTTGGGCC−3’)を用いながらテールDNAに対して実施したPCRにより確認した。このフラグメントはC5遺伝子における変異により選択的に破壊されるHindIII部位をコードしており、これによりHindIII(New England BioLabs,MA)消化はC5dのPCR産物ではなくC5sを選択的に切断して150および130bpのフラグメントとする。全動物のプロトコルはInstitutional Committeeにより検討され、NIHガイドラインに従った。
【0096】
試薬:抗マウスC5mAb(BB5.1)(Wang等、Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1996)93:8563−8568)及びヒトフィブロネクチンに特異的なアイソタイプマッチ非関連対照mAb(HFN7.1)を腹水から精製した。キット(Pierce Biotechnology)を用いて精製したBB5.1FaはBB5.1と同様の活性を保持しており、そして純度は97%超であった。実験的敗血症において死亡を防止することがわかっている抗C5aRsIgG(Riedemann等、J.Clin.Invest.(2002)110:101−108)はザイモサン誘導好中球遊走を防止することができた。抗C5aRsIgG及び対照sIgGは両方とも、PBS又はCFAで乳化したマウスC5aRのN末端及び1つの余分なシステイン(Riedemann等、上出)を包含するペプチドの何れかで反復して免疫化したC5aR欠損マウス(Gerard等、Curr.Opin.Immunol.(2002)14:705−708)から採取した血清より精製した。腹水又は血清の試料の何れかに由来する抗体をプロテインAアフィニティークロマトグラフィー(Amersham)により精製した。コルチコステロイド(デキサメタゾン)はSigmaから購入した。内毒素汚染が無く好中球遊走試験において強力な化学走性活性を有した組み換えマウスC5aを、以前に報告されている通り(Riedemann等、上出)クローニング及び精製した

【0097】
気道炎症及び重度の気道応答の誘導
10〜12週齢のBALB/c及びB10D2oSnマウスを第1日及び第14日に2mgの水酸化アルミニウム(Alum Inject;Pierce Biotechnology)中に乳化した20μgのOVA(GradeV;Sigma)のip注射により感作した。シングルハウジングチャンバー(Buxco Electronics,Inc)に連結したジェットネブライザー(Harvard Apparatus)を用いて第28、29及び30日に気道を介して10分間1%OVAでマウスを免疫化した。第32日に、全ての感作した動物を10分間5%OVAでエアロゾル攻撃した。チェックポイント3実験において、BALB/cマウスを第35日に再度5%OVAでエアロゾル攻撃した。擬似C5s又はC5dマウスはAlumのみで免疫化し、OVAの代わりにPBSでエアロゾル攻撃した。
【0098】
sRawの非侵襲的測定
上下気道両方の抵抗性を測定するsRawを、自発呼吸を有する覚醒動物におけるDCPにより測定した(Buxco)。DCPは5%OVAエアロゾル攻撃の前後においてsRawの長手方向の変化をモニタリングするために使用した。チェックポイント3実験において、DCPを使用してEARの出現を確認した後に、種々の投与群に動物を無作為化した。
【0099】
下気道機能の侵襲的測定
RL及びCdynの変化をBuxco Biosystemのソフトウエア及びBuxcoの全身プレチスモグラフを用いて測定した。マウスを麻酔(Avertin、160mg/kg)し、気管に挿管した。臭化パンキュロニウム(0.3mg/kgip)で自発呼吸をブロックした。呼吸はHarvard Apparatus Inspiraベンチレーターにより維持し、これにより一回換気量及び呼吸速度を体重に従って計算した。RL及びCdynの測定は5%OVAによるエアロゾル攻撃後5時間のLARのピーク時に実施した。RL及びCdynのリアルタイムの変化はBuxcoソフトウエアにより記録し、記録5分の平均値として報告した。AHRはエアロゾルMch攻撃の間のRL及びCdynの変化に基づいて評価した。RL及びCdynの変化は各エアロゾル攻撃の後のベースラインのパーセントとして表示した。Buxcoエアロゾル制御超音波ネブライザー装置をベンチレーターに接続し、気管挿管を介するMchのエアロゾル送達に供した。PBS又はMch(1.6mg/ml)を10秒当たり10パフ〜20パフの速度で送達し、エアロゾル送達の各パフは15ms持続するようにした。
【0100】
C5抑制
(1)チェックポイント1におけるC5阻害剤に関しては、抗C5mAb(BB5.1)又は対照mAb(HFN7.1)を第25、29及び31日に40mg/kgでip投与した。デキサメタゾン(2mg/kg)を陽性対照として使用した。(2)第32日の5%OVA攻撃に対する気道応答を経験した動物をその後の試験の為に無作為化した。チェックポイント2におけるC5抑制については、動物に対し、第33日にデキサメタゾン(2mg/kg)、抗C5mAb(40mg/kg)又は対照mAb(40mg/kg)の単回ip注射を行った。第35日において、エアロゾルMch攻撃の間のRL及びCdynの測定のために動物を麻酔し、気管に挿管した。(3)チェックポイント3においては、抗C5mAb(40mg/kg)、対照mAb(40mg/kg)又はデキサメタゾン(2mg/kg)を、第35日の5%OVAによる動物のエアロゾル攻撃後20分に、iv注射により投与した。この重要な時点における肺内C5抑制に関しては、動物を飼育しているシングルチャンバーに連結したジェットネブライザーを用いて、10〜30分間、抗C5mAb(3mg/ml)、抗C5Fab(3mg/ml)、対照mAb(3mg/ml)、抗C5aRsIgG(3mg/ml)、対照sIgG(2mg/ml)又はコルチコステロイド(2mg/ml)のいずれかのエアロゾル投与を動物に対して行った。擬似免疫化マウスには、同じ経路により投与したPBS溶液の同じ容量による擬似投与を行った。同じプロトコルを用いて実施した3つの肺内C5抑制実験の結果を相互にプールした。
【0101】
気管支肺胞洗浄液(BALF)の分析
アレルゲン誘発の約5.5時間の後、RL及びCdynの測定後、気管挿管を介してPBS1mlを注入し、その後穏やかに吸引することによりBALFを採取した。BALFをPBS400μlに再懸濁した。BALF中WBC総数はエアロゾル実験の場合と同様、血球計又は自動細胞計数器を用いることにより計数した(Cell−Dyn3700Abbott)。サイトスピンスライドを準備し、固定し、そしてDiff−Quickを用いて染色した(VWRInternational,Inc.)。WBC分画は100×顕微鏡レンズ上でスライド当たり300WBCの総数を計数した後に認定病理学者により調べた。プロMMP9、活性化TGF−β、RANTES、エオタキシン及びIL−13(R&DSystems,Inc.)、IL−5(Amersham Pharmacia Biotech Inc.)及びヒスタミン(Beckman Coulter)のBALFレベルを製造元の指示に従ってELISAにより測定した。
【0102】
血清OVA特異的抗体の分析
ELISAによるOVA特異的IgG及びIgEの為に、第32日に5%アレルゲン誘発後5時間に血清試料を採取した。
【0103】
肺の組織学的検討
肺を、気管挿管を介して10%緩衝ホルマリン(1ml)で膨張させ、少なくとも24時間10%ホルマリン中に固定した。肺試料はジームザ染色した。二重盲検組織学的分析を実施することにより、以下の基準に従って気道炎症を定量した。0:検出可能な気道炎症無し;1:25%未満の気管支及び周囲の脈管が脈管周囲又は気管支周囲の炎症細胞浸潤を伴って観察された;2:気管支及び周囲の脈管の約25〜50%が罹患していた;3:気管支及び周囲の脈管の約50〜75%が罹患していた;4:気管支及び周囲の脈管の>75%が罹患していた。
【0104】
C5b−9媒介溶血試験及びインビトロC5a媒介好中球遊走試験
以前に報告されている通り(Wang等、上出)ニワトリRBCの溶血を媒介しているC5b−9の原料として、記載した時点において採取した血清を使用した。マウス血清(Sigma)をBB5.1(100μg/ml)又は同じ容量のPBSと共にインキュベートした後に、ザイモサン(1mg/ml;Sigma)を用いて活性化した。希釈した血清(20%)を好中球化学走性実験のためのC5aの原料として使用した。
【0105】
統計学的分析
データは平均±SEMとして表示した。等分散と仮定したスチューデントの片側t検定を用いた(MSWindows(登録商標)。0.05未満のP値を有意とみなした。
【0106】
抗C5mAb、BB5.1によるC5a及びC5b−9の形成のブロッキング
抗C5mAbによる補体成分C5の機能的抑制は血清C5b−9媒介溶血活性のブロッキングの薬力学的プロファイルにより調べた(図1A)。更に、C5a媒介好中球遊走をインビトロの試験において調べた(図1B)。抗C5mAb、BB5.1の単回iv注射によるC5の抑制の薬力学的特徴は投与後最初の5時間の間、単回ip注射の薬力学的特徴とは大きく異なっている。C5b−9媒介溶血の80%超がBB5.1のiv投与の1時間以内に抑制されたのに対し、ip注射では30%未満の抑制であった。抗C5mAbの投与はiv注射後5時間〜48時間では溶血の60%超をブロックし続けていたが、ip注射後のこの期間では溶血の約56%がブロックされていた。対照mAb投与マウスから採取した血清試料は試験の全期間中、正常溶血活性の80%超を有していた(図1A)。溶血活性は抗C5mAb単回注射後1週間には正常範囲となるように緩徐に回復した。
【0107】
インビトロの好中球遊走試験はC5aの形成のブロッキングに対する抗C5mAbの能力をテストするために使用した(図1B)。ザイモサン活性化前の抗C5mAbによる血清試料の抑制は、ザイモサン活性化対照血清で観察された通り、ザイモサン活性化後にC5aの存在により媒介されるヒト好中球化学走性を顕著にブロックした(図1B)。抗C5mAbBB5.1はC5aとC5b−9との両方の形成をブロックし、そしてC5aに直接結合しなかったため、この抗C5amAbは恐らくはC5コンバターゼによるC5の切断のブロッキングに特異的であると考えられる。
【0108】
OVA感作動物における重度の気道応答の発生及び3種の重要なポイントの定義
OVA感作動物は5%OVAを用いたエアロゾル攻撃後、即座に重度気道応答を発生した(図2A)。アレルゲンによるエアロゾル誘発に対する典型的な気道応答は、肥満細胞によるヒスタミンの放出により媒介されることが知られている早期気道応答(EAR)、及び炎症細胞の浸潤、浮腫及び気管支の収縮の作用の組み合わせにより媒介される後期気道応答(LAR)よりなった(Larsen,Annu.Rev.Immunol.(1985)3:59−85)。5%OVA誘発後の気道応答は、非侵襲的二重チャンバープレチスモグラフ(DCP)により各マウスにおいてモニタリングすることにより、EAR及びLARの出現を示す特異的気道応答(sRaw)の長手方向の変化を測定した(図2A)。EARは典型的には5%OVA誘発後15分のsRawの短時間上昇であり、そしてLARは典型的には5時間後に観察され、これは以前の報告と合致している(Cieslewicz,等、J.Clin.Invest.(1999);104:301−308)。EAR及びLARは共にベースラインに対して5〜30倍高値の程度であった。LARピーク時の重度の気道応答は一般的に動物が明らかな呼吸困難を示しているものとして顕在化した。C5の抑制は抗C5mAbの投与により達成できるため、本発明者等はC5及びその活性化成分の重要な関与を疾患の重要な段階の間の3つの重要なポイントにおいて解明することにした(図2B)。3つの重要なチェックポイントは、1)喘息の発症の2つの特徴の1つである気道炎症の開始;2)喘息のもう1つの特徴である非特異的刺激に対するAHRの発生;及び3)アレルゲン誘発後の進行中の既往応答の持続である。チェックポイント2及びチェックポイント3の両方は以前に重度の気道応答を経験し(図2B)、そして、気道炎症を樹立している被験体におけるC5の寄与を評価するために設計されている。チェックポイント3の試験はEARの間のiv又はエアロゾルの経路のいずれかにより治療薬を投与することによるアレルゲン誘発後の進行中気道応答の間に実施した。下気道の機能及び既往炎症の定量は5%OVA誘発後5時間のLARピークの間に評価した。
【0109】
チェックポイント1:気道炎症の開始におけるC5の関与
1%OVAの反復エアロゾル感作の時点であるチェックポイント1におけるC5抑制は、第32日におけるOVA特異的IgE又はIgGの血清濃度に対して有意な影響を有していなかった(図3A)。コルチコステロイド投与マウスもまた、第25日においてコルチコステロイド又は抗C5mAbが投与されるより遥かに前に生じていたと考えられるOVA特異的IgE及びIgGの濃度上昇を示していた。擬似投与マウスは無視できる濃度のOVA特異的IgG又はIgEを有していた。対照mAb及びコルチコステロイド投与マウスにおいて観察された正常溶血活性(92.7%±6.8)と比較した場合に、抗C5mAbの反復投与(ip)の結果としてC5b−9媒介溶血の約80%が抑制されていた(21.1%±4)。下気道の2つの重要な機能を5%OVA誘発後5時間に気管挿管により調べた。肺抵抗(RL)の増大は一般的には下気道の顕著な閉塞に関連しており(図3B)、そして、動的肺コンプライアンス(Cdyn)は正常な肺で観察される圧力変化後の正常な容量への復帰の重要な特徴であり肺の弾力性の損失に関連している(図3C)。対照mAb投与マウスにおいて見られた有意に増大したRL及び低減したCdynは増大した気道閉塞を示していた(図3B及びC)。擬似マウスはエアロゾルPBS溶液への曝露後5時間にRL及びCdynの正常な範囲を示していた。
【0110】
その強力な抗炎症及び抗喘息活性と相関して、チェックポイント1におけるコルチコステロイド処置はRLの増大を有意にブロックし、そしてCdynの消失を防止している。同様に、チェックポイント1におけるC5抑制はアレルゲン誘発後5時間でRLの増大を有意に低下させており、RLは1.66cmHO/ml/秒±0.2であったのに対し、対照mAb投与動物で見られたRLは2.17cmHO/ml/秒±0.33であった(図3B)。C5抑制はまた、Cdynの消失も僅かに低減させた(図3C)。肺組織の二重盲検組織学的分析(図3D)は機能分析から得られたデータを確認するものであり、そして対照mAb投与BALB/cマウスが炎症細胞の重度の脈管周囲及び気管支周囲の浸潤を有していたことを示している(図3F)。組織学的スコアの有意な低下がコルチコステロイド投与マウスにおいて観察された(図3G)のに対し、抗C5mAb投与マウスにおいては観察された低下は明確ではなかった(図3H)。ヒトにおける重度のアレルギー性喘息と同様、気道に沿った脈管周囲及び気管支周囲の患部においては好酸球が優勢(50%超)な炎症細胞であった(図3F〜H)。
【0111】
チェックポイント2:樹立された気道炎症を有する動物におけるAHRの発生におけるC5の寄与
気道炎症に加えて、非特異的刺激に対するAHRも喘息のもう1つの特徴である。AHRはエアロゾルメタコリン(Mch)攻撃の漸増用量に応答したベースラインのパーセントとして表示されるRL及びCdynの変化として評価した(図4A及びB)。対照mAb投与BALB/cマウスはエアロゾルMch攻撃の過程においてRLの有意な増大及びCdynの有意な消失を示したが、擬似マウスはエアロゾルMch攻撃に対して中程度に応答したのみであった。対照mAb投与マウスでは8匹中2匹が高用量エアロゾルMch攻撃の間に重度の呼吸ストレスのため死亡した。対照的に、C5抑制はコルチコステロイド投与動物の場合と同様、エアロゾルMch攻撃の過程においてRLの劇的増大及びCdynの低下を防止した(図4A及びB)。擬似マウスと比較した場合のエアロゾルMch攻撃の過程におけるCdynの損失及びRLの増大は、恐らくは、これ等の動物における樹立された気道炎症の存在によるものと考えられた。3つの投与コホートの間には気道炎症の程度に注目すべき差は無かった。抗C5mAb投与マウスは第35日に正常溶血活性の約45%を有していた。
【0112】
チェックポイント2におけるC5抑制の本発明者等の結果を以前の報告(Karp等、Nat.Immunol.(2000)1:221−226)のデータと比較するために、天然の内因性AHRの存在又は不在を以前に報告されている正常C5dマウスの一部の系統において調べた(De Sanctis等、J.Respir.Crit.Care
Med.(1997)156:S82−S88;Levitt,等、FASEB J.(1988)2:2605−2608)。非免疫化C5dAKR/JマウスはエアロゾルMch攻撃の漸増用量への劇的な気道応答を有しており、ベースラインを超えるRLの有意な増大(20パフMchで84.2%±16.7)及びベースラインより低値となったCdynの有意な低下(20パフMchで40%±5.4)を示したのに対し、C5dSWR/J及びB10D2oSnマウスはC5完全(C5s)BALB/cマウス及びC57BL/6マウスと識別不可能なRL及びCdynの最小限の変化を示し、ベースラインとの差はRL及びCdynの何れも15%の最大変化を超えることは無かった(各系統につきn=3、データ示さず)。次に、内因性AHRを有さないC5dB10D2oSnマウスを免疫化し、図4A及びBにおけるC5sBALB/cマウスと同一の様式においてエアロゾルMchで攻撃した。感作C5d動物のサブグループもまた第33日に対照又は抗C5mAb投与の何れかを行った。C5dB10D2oSnマウスはC5sマウスと同程度の気道炎症を発症し、平均の組織学的スコアは1.91±0.37(n=6)であるのに対し、C5sBALB/cマウスでは組織学的スコアは2.25±0.25(n=4)であった。抗C5mAbと対照mAb投与C5dマウスとの間には注目すべき差は無かった。以前の報告(Karp等、上出)とは対照的に、漸増用量エアロゾルMch攻撃はOVA免疫化B10D.2oSnマウスにおける下気道機能の有意な変化を誘導しなかった(図4C及びD)。第33日の抗C5mAb又は対照mAbの何れの投与もAHRの発生に影響しなかった。両方のmAb投与コホートのデータをmAb投与コホートとしてプールした(図4C及びD)。更に、組み換えマウスC5a(rmC5a)を用いたOVA免疫化B10D.2oSnマウスの再生により、有意なRLの増大及びCdynの低下で示される通りエアロゾルMch攻撃に応答したAHRが完全に回復した(図4C及びD)。
【0113】
rmC5の再生は、rmC5aで再生した擬似B10D.2oSnマウスがMch攻撃の間に下気道機能の有意な変化を示さなかったことから、AHRの発生のためには十分ではなかった(図4C及びD)。Mch攻撃後の各マウスから採取した血清試料の分析によれば、B10D.2oSnマウスのC5不全状態が確認され、平均の溶血活性は8.1%±0.9であったのに対し、C5sBALB/cマウスでは108%±3.8であった。更に、C5s及びC5d動物の各ロットからの無作為の尾部試料(n=2)を分析してC5遺伝子型の状態を確認した。
【0114】
チェックポイント3:進行中の気道応答の間のC5の寄与
進行中の気道応答の持続におけるC5の役割もまた検討した。第35日の5%OVAへのエアロゾル曝露後15分においてDCPによりモニタリングしながらEARピーク時に介入を行った。全対照mAb投与BALB/cマウスは重度のLARを発症し、有意なRLの増大及びCdynの低下がアレルゲン誘発後5時間に観察された(図5A及びB)。
【0115】
迅速な全身C5抑制を達成するためにEAR中のiv注射を介した治療薬投与を選択したところ、LARの発生は完全にブロックされ、5%OVA誘発後5時間のRLは最小限の増大であり(図5A)、そしてCdynの最小限の低下により示される通り肺の弾力性の損失の大部分が防止された(図5B)。興味深いことに、コルチコステロイドの投与は5時間においてLARの発生を排除しておらず、有意なRLの上昇及びCdynの低下が観察された。
【0116】
下気道機能に対する即時の影響(5時間以内)はivコルチコステロイド投与後には観察されなかったが(図5A)、この投与は24時間後において肺内IL−13を有意にモジュレート(図7B)し、そして下気道機能を有意に向上させた。肺組織の二重盲検組織学的分析は、図3Fに示す組織学的試料と同様、コルチコステロイド、抗C5mAb又は対照mAbの何れかを用いたiv介入後5時間において動物由来の炎症細胞の脈管周囲及び気管支周囲の浸潤の程度が同等であることを示していた。
【0117】
炎症細胞の遊走に対するC5抑制の作用
気道組織炎症部から気管支管腔への炎症細胞の順次の遊走もまた、気管支肺胞洗浄液(BALF)WBC分析により調べた。チェックポイント1において対照mAb投与マウスと比較して、抗C5mAb投与BALB/cマウスにおいては総BALF炎症細胞の有意な低減があった(図6A)。C5抑制による炎症細胞の遊走に対するブロッキングは改善された下気道機能の程度を超過しており(図3B及びC)、そして組織炎症を低減した(図3D)。同様に、BALFをチェックポイント3において採取した際に(図6B)、C5抑制は再度気管支管腔内への炎症細胞の遊走を有意にブロックしており、コルチコステロイド又は対照mAbの何れを投与した動物よりも、抗C5投与動物においてBALFWBC計数値が有意に低値であった。この結果は第35日においてアレルゲン誘発の前に採取した肺組織における炎症細胞の脈管周囲及び気管支周囲の浸潤の明確な存在とは劇的に対照的である。C5抑制による炎症細胞の遊走の有意なブロックはチェックポイント3におけるコルチコステロイド投与より高値のC5抑制の有意に増強された薬効と相関していた(図5A及びB)。
【0118】
擬似マウスはBALFWBC計数のベースライン値をもたらし、これはWBC分画分析においては主に正常な肺胞マクロファージ(82.3%±10.3)であった(図6C)。好酸球は全てのOVA免疫化動物に由来するBALF炎症細胞の45%超を構成しており、治療介入とは無関係であった。コルチコステロイド(4.5%±2.8)又は抗C5mAb(6.3%±3.3)−対−対照mAb投与マウス(18.3%±4.4)の何れかを用いて、チェックポイント3において投与された動物から得たBALF中で回収された好中球のパーセントに有意な減少があった。チェックポイント3に介入を受けた動物から得たBALF試料中の好酸球又はリンパ球のパーセントには有意な低下は起こらなかった(図6C)。
【0119】
肺内Th1/Th2サイトカインプロファイル及び炎症メディエーターに対するC5抑制の作用
対照mAb投与マウスから採取したBALFは擬似マウスと比較してIL−5及びIL−13の有意に増大した濃度を有していた(図7A及びB)。コルチコステロイド投与はIL−5及びIL−13のBALF濃度を有意に低減したが、これは5時間の投与期間中の下気道の機能の迅速な改善(図5A及びB)とは解釈されなかった。チェックポイント3におけるC5抑制後に観察された下気道機能の劇的改善(図5A及びB)はIL−5及びIL−13のBALF濃度の何れの低下にも相関していなかった。抗C5及びコルチコステロイド投与マウスの間IL−13のBALF濃度の統計学的な差は、0.051のp値に相当している。チェックポイント3におけるC5抑制又はコルチコステロイド療法はヒスタミンのBALF濃度に影響しなかった(図7C)。このことは、エアロゾルアレルゲン誘発による肥満細胞のIgE受容体の結合時に気道管腔内にヒスタミンが恐らくは既に放出されており、そして、治療介入が行われた時点におけるEARの出現の原因となっているため、予測されたことである。下気道に沿って最も優勢な炎症細胞である好酸球(図3F〜H)が恐らくは喘息個体におけるエオタキシン、RANTES及びTGF−βの生産の原因である(図7D〜F)。対照mAb投与動物はエオタキシン(図7D)、RANTES(図7E)又は活性化TGF−β(図7F)の有意に上昇したBALF濃度を有していたのに対し、擬似マウスではこれ等のメディエーターの濃度は無視可能又は検出不可能な濃度であった。対照的に、C5抑制はチェックポイント1(図D及びE)又はチェックポイント3(図7F)の何れかに投与した場合に、エオタキシン、RANTES及び活性化TGF−βのBALF濃度に対して顕著な影響を与えていた。コルチコステロイド投与はチェックポイント3に投与した場合にはTGF−βのBALF濃度を低下させたのみであったが、チェックポイント1に投与した場合にはエオタキシン又はRANTESの生産及び放出に対してはっきりした影響は与えなかった。
【0120】
好中球は一般的に気管支のTNF−α及びプロMMP9の生産に関与していると考えられている。C5抑制はチェックポイント1において投与した場合にTNF−αのBALF濃度を有意に低減し(図7G)、対照mAb投与マウスとは有意に異なっていた。チェックポイント3においてC5抑制を行った場合には、プロMMP9の気管支内濃度は劇的に低下し、そして対照mAb投与及びコルチコステロイド投与マウスとは有意に異なっていた(図7H)。
【0121】
チェックポイント3:進行中の気道応答の間のC5の肺内活性化の寄与
気道組織炎症から気管支管腔への炎症細胞の多大な遊走は、恐らくは気道の上皮粘膜からの強力な化学走性の力に起因する。即ち、C5はアレルゲン誘発に対する気道の応答の間、肺内で活性化される場合がある。下気道の機能及び炎症のパラメーターをC5の肺内活性化をブロックした後に評価した。FcγRIIB等の抑制性の受容体によるチェックポイント3における潜在的影響(Katz,Curr.Opin.Immunol.(2002)14:698−704.;Ravetch等、Annu.Rev.Immunol.(2001);19:275−290)もまた、肺内C5及び抗C5mAbの間の相互作用及びその後の免疫複合体(IC)の形成の結果として評価した。
【0122】
この目的を達成するために、抗C5mAbによる肺内C5抑制の作用を抗C5Fabと直接比較した。更に、抗C5aR血清IgG(sIgG)の効率もこのチェックポイントにおける肺内C5a−対−C5b−9の役割を解明するために評価した。図8A及びBに示す通り、対照mAb投与動物は重度のLARを発生し、RLの有意な増大及びCdynの有意な低下を伴っており、擬似マウスにおいて見られた正常なRL及びCdynとは顕著に対照的であった。コルチコステロイドのエアロゾル投与はRLの低下及び相応するCdynの保存により明らかなとおり、LARの発生をブロックした。EARピーク時の抗C5mAb又は抗C5Fabの何れかのエアロゾル投与による肺内C5活性化のブロックもまたLARの発生を防止し、RLの増大は最小限であり、Cdynの低下は最小限であった(図8A及びB)。両方の抗C5投与コホートのRL及びCdynは対照mAb投与動物とは有意に異なっていた。抗C5aRsIgGを用いて肺内C5aのその受容体への結合をブロックすることは、やはり、抗C5mAbを投与した動物と同様、LARの発生を防止し、RLの増大は最小限であり、Cdynの低下は最小限であった。抗C5mAb、抗C5Fab又は抗C5aRsIgGの何れかを投与した3コホートの間には統計学的な差は無かった(図8A及びB)。
【0123】
炎症細胞の遊走(図8C)及びプロMMP9のBALF濃度(図8D)等の肺内炎症活動性のパラメーターを調べたところ、C5の肺内活性化をブロックすることとC5aのそのC5aRへの結合をブロックすることとの間に有意な差が見られた。EAR中の抗C5mAb又はそのFabフラグメントの何れかのエアロゾル投与は、気管支気道管腔内への炎症細胞の遊走及びプロMMP9のBALF濃度の上昇の両方を有意にブロックしたのに対し、C5aRの結合をブロックしたことは、対照mAbを投与した動物と同様、これ等の2つの重要な炎症パラメーターに有意な影響を示さなかった(図8C及びD)。LARの発生をブロックするその能力(図8A及びB)と合致して、コルチコステロイドのエアロゾル投与はやはり、肺内炎症活動を軽減しており、炎症細胞の遊走及びプロMMP9の生産の明確な低下(図8C及びD)が伴っており、気管支管腔の上皮側における炎症活動の重要性を示していた。抗C5mAb、抗C5Fab又は抗C5aRsIgGのエアロゾル投与は血清C5b−9媒介溶血活性に対して影響を有していなかった。
【0124】
複合療法
図9に示す通り、非特異的対照抗体を投与した動物はMch攻撃の過程において肺抵抗の有意な増大を示した。本試験においては、高用量のMchで攻撃した二匹の動物は重度の呼吸ストレスのため死亡した。対照的に、ステロイド及び抗C5投与動物は正常な擬似免疫化動物よりは高値であるが、対照プラセボ投与マウスよりは有意に低値である肺抵抗の僅か中等度の増大のみ有していた。抗C5抗体及びステロイドの両方を用いた複合投与はMch攻撃の過程において肺抵抗の増大を更に有意に低減した。この結果に基づけば、ステロイド及びC5阻害剤の両方とも、樹立された気道炎症を有する喘息個体における非特異的なエアロゾル刺激に対する気道応答亢進の発生を防止することができる。
【0125】
霧状化製剤
抗体の霧状化に適する製剤の例を図10に示す。図11は霧状化投与の有効性を更に示すものである。図11に示す結果は、ipの代わりに第32日に霧状化により薬物送達したことを除き、本明細書に記載したチェックポイント2と同様のプロトコルを使用した以下の試験の後に得られたものである。抗C5抗体については、3mg/mlのBB5.1を10分間の霧状化に付し、2mg/mlのステロイドも又10分間の霧状化に付した。複合療法の為に、10分間の霧状化に付した終濃度は:BB5.1は3mg/ml、そしてステロイドは2mg/mlとした。
【0126】
図12は更に、30mg/mlの製剤1(図10)中のエクリズマブがPari LC
Jet Plus又はSonik LDL等の従来のネブライザーにより効果的及び効率的に霧状化できることを示している。図12は霧状化後の粒子の大部分が深部肺送達に適する5μM未満であったことを示している。
【0127】
図13に示す通り、製剤1(図10)中のエクリズマブは従来のネブライザーにより効果的及び効率的に送達することができ、やはり従来のネブライザーを使用している既存の吸入送達される肺用薬剤Pulmozyme(登録商標)のエアロゾル特性に匹敵していた。製剤1(図10)中のエクリズマブはまた特殊ネブライザー、例えばSonikLDLによっても効果的及び効率的に送達することもできる。
【0128】
図14及び図15に示す通り、エクリズマブが霧状化により効果的及び効率的に送達することができたことがSDS−PAGE及びHPLC分析によりわかった。適当な製剤中のエクリズマブをPari−Jet Airネブライザー又はSonik LDIネブライザーの何れかを用いて霧状化した。噴霧形態における霧状化された抗体をネブライザーのマウスピース(例えばFID2F)から収集し、そして別のサイズのマウスピース(例えばFID2C1−C5)を使用した。SDS−PAGE及びHPLC分析によれば、分析した試料の純度により示される通り、種々のサイズの噴霧マウスピースによる霧状化された抗体の統一性が明らかになった。
【0129】
参考文献
本明細書において言及した全ての公開物及び特許は、各個々の公開物及び特許が特定され個別に参照により組み込まれるように示されるがごとく、参照により全体が本明細書に組み込まれる。
【0130】
等価物
本明細書に記載した出願の特定の実施形態の多くの等価物は、当業者が認識でき、又は日常的実験を超えずに確認できるものである。このような等価物は以下の請求項により包含されることを意図している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
40mg/mL〜200mg/mLの濃度で抗C5抗体を含む、水性溶液。
【請求項2】
前記抗C5抗体が、補体成分C5の、フラグメントC5aおよびC5bへの分解を抑制する、請求項1に記載の水性溶液。
【請求項3】
前記抗C5抗体が、補体成分を活性化しない、変異したFc部分を含む、請求項1に記載の水性溶液。
【請求項4】
前記抗C5抗体がエクリズマブである、請求項1または2に記載の水性溶液。
【請求項5】
前記抗C5抗体がペキセリズマブである、請求項1または2に記載の水性溶液。
【請求項6】
ヒスチジンを含む、請求項1に記載の水性溶液。
【請求項7】
20mMのヒスチジンを含む、請求項6に記載の水性溶液。
【請求項8】
グリシンを含む、請求項1に記載の水性溶液。
【請求項9】
50mMのグリシンを含む、請求項8に記載の水性溶液。
【請求項10】
ヒスチジンおよびグリシンを含む、請求項1に記載の水性溶液。
【請求項11】
ソルビトールを含む、請求項1に記載の水性溶液。
【請求項12】
3%(w/v)ソルビトールを含む、請求項11に記載の水性溶液。
【請求項13】
マンニトールを含む、請求項1に記載の水性溶液。
【請求項14】
1.5%(w/v)マンニトールを含む、請求項13に記載の水性溶液。
【請求項15】
ソルビトールおよびマンニトールを含む、請求項1に記載の水性溶液。
【請求項16】
賦形剤を含む、請求項1に記載の水性溶液。
【請求項17】
前記賦形剤がポリソルベート80である、請求項16に記載の水性溶液。
【請求項18】
前記溶液中の前記賦形剤の濃度が、0.0015%と0.02%との間(両端を含む)である、請求項16または17に記載の水性溶液。
【請求項19】
前記溶液のpHが、6と8との間(両端を含む)である、請求項1に記載の水性溶液。
【請求項20】
無菌である、請求項1に記載の水性溶液。
【請求項21】
(a)20mMのヒスチジン、
(b)50mMのグリシン、
(c)3%(w/v)ソルビトール、
(d)1.5%(w/v)マンニトール、および
(e)0.001〜0.02%ポリソルベート80
を含む請求項1に記載の水性溶液であって、該溶液は、生理学的な浸透圧のものであり、該溶液は、6と8との間(両端を含む)のpHを有する、水性溶液。
【請求項22】
エアロゾル投与またはネブライザー投与用に製剤化される、請求項1に記載の水性溶液。
【請求項23】
(i)請求項1に記載の水性溶液と、
(ii)該溶液を、必要とする患者に送達する手段と
を含む、キット。
【請求項24】
前記手段は、前記溶液の前記患者への肺内投与に適したものである、請求項23に記載のキット。
【請求項25】
前記手段は吸入器である、請求項24に記載のキット。
【請求項26】
前記手段はネブライザーである、請求項24に記載のキット。
【請求項27】
被験体における肺の状態の処置に使用するための少なくとも1つの追加的薬剤をさらに含む、請求項23に記載のキット。
【請求項28】
肺疾患に罹患した患者の処置に使用するための、請求項1に記載の水性溶液。
【請求項29】
請求項28に記載の使用のための水性溶液であって、前記肺疾患は、喘息、気管支炎、慢性閉塞性肺疾患、急性呼吸促迫症候群、肺線維症、α−1アンチトリプシン欠損症、気腫、気管支拡張症、閉塞性細気管支炎、サルコイドーシス、コラーゲン血管障害、および気管支炎からなる群より選択される、水性溶液。
【請求項30】
前記溶液が、肺疾患を処置するための1以上の追加的治療剤とともに投与されるものである、請求項28に記載の使用のための水性溶液。
【請求項31】
前記1以上の追加的治療剤が、IgE抑制剤、抗IgE抗体、抗IL−4抗体、抗IL−5抗体、抗生物質、交感神経作用剤、デオキシリボヌクレアーゼ、抗コリン作用剤、コルチコステロイド、β−アドレノレセプターアゴニスト、ロイコトリエン抑制剤、5リポキシゲナーゼ抑制剤、PDE抑制剤、CD23拮抗剤、IL−13拮抗剤、サイトカイン放出抑制剤、ヒスタミンHI受容体拮抗剤、抗ヒスタミン、抗炎症剤、およびヒスタミン放出抑制剤からなる群より選択される、請求項30に記載の使用のための水性溶液。
【請求項32】
請求項1に記載の水性溶液と、製薬上許容可能な担体とを含む、医薬組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−233013(P2012−233013A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−193985(P2012−193985)
【出願日】平成24年9月4日(2012.9.4)
【分割の表示】特願2008−511366(P2008−511366)の分割
【原出願日】平成18年5月10日(2006.5.10)
【出願人】(503102674)アレクシオン ファーマシューティカルズ, インコーポレイテッド (51)
【Fターム(参考)】