胃瘻チューブ挿入補助具
【課題】造設直後の瘻孔に、半球状の抜け止め部材を備える胃瘻チューブを容易に挿入できる胃瘻チューブ挿入補助具を提供する。
【解決手段】半球状の抜け止め部材30を備える胃瘻チューブ29の挿入を補助する挿入補助具1であって、内筒2と軟質樹脂製の外筒3とを備える。内筒2は、ガイドワイヤ28を挿通自在とする孔部4と、テーパ部5とを備える。外筒3は、内筒2または胃瘻チューブ29を挿通自在とする孔部8と、外表面に設けられた1対の薄肉部9と、胃内に挿入される側の端部に設けられた逆止弁10とを備える。逆止弁10は、内筒2が外筒3から突出するときに開弁して内筒2の外周面に密着し、内筒2が抜去されるときに閉弁する。逆止弁10は、軸に対して対称に相対向して設けられた1対の傾斜面12,12の交わる部分に設けられた稜部13に沿って設けられ、前記軟質樹脂の弾性により開閉自在とされたスリット14を備える。
【解決手段】半球状の抜け止め部材30を備える胃瘻チューブ29の挿入を補助する挿入補助具1であって、内筒2と軟質樹脂製の外筒3とを備える。内筒2は、ガイドワイヤ28を挿通自在とする孔部4と、テーパ部5とを備える。外筒3は、内筒2または胃瘻チューブ29を挿通自在とする孔部8と、外表面に設けられた1対の薄肉部9と、胃内に挿入される側の端部に設けられた逆止弁10とを備える。逆止弁10は、内筒2が外筒3から突出するときに開弁して内筒2の外周面に密着し、内筒2が抜去されるときに閉弁する。逆止弁10は、軸に対して対称に相対向して設けられた1対の傾斜面12,12の交わる部分に設けられた稜部13に沿って設けられ、前記軟質樹脂の弾性により開閉自在とされたスリット14を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、胃瘻チューブの瘻孔への挿入を補助する胃瘻チューブ挿入補助具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、食物等を経口摂取できない患者のために、経皮内視鏡的胃瘻造設術(Percutaneous Endoscopic Gastorostomy、以下、PEGと略記する)により胃瘻チューブを胃に固定し、該胃瘻チューブを介して胃内に栄養物等を送入することが行われている。前記PEGは、腹壁及び胃壁を貫通して穿設された瘻孔に、内視鏡下で胃瘻チューブを挿入し、固定するものである。
【0003】
前記PEGの一手法として、イントロデューサ法と呼ばれる方法がある(例えば、特許文献1参照)。前記イントロデューサ法では、まず、胃瘻造設部に局所麻酔後、胃壁を腹壁に癒着せしめて固定し、体表側からイントロデューサ針を穿刺して腹壁及び胃壁を貫通させることにより瘻孔を造設する。前記イントロデューサ針は、プラスチックの外針に金属の内針を内挿したものであり、前記のように穿刺した後、前記内針を抜去すると、前記外針が腹壁及び胃壁を貫通した状態で留置される。
【0004】
次に、前記外針の内側を介して胃瘻チューブを胃内に挿入する。前記胃瘻チューブが胃内に挿入されたならば、前記外筒は、体表側の端部から2つに引き裂くことにより除去される。
【0005】
前記胃瘻チューブとしては、例えば、抜け止めのために、胃内に挿入される側の端部にバルーンを備え、胃内で該バルーンを膨張させるものが用いられる。前記のようにして造設されたばかりの前記瘻孔はそれ自体損傷を受けやすいが、前記バルーンを備える胃瘻チューブは、該バルーンを収縮させた状態で前記外筒に挿通できるので、造設されたばかりの該瘻孔に対する負担を軽減することができる。一方で、前記バルーンは胃内で経時的に収縮し、抜け止めの機能が失われるので、1ヶ月程度で交換しなければならない。
【0006】
前記バルーンを備える胃瘻チューブに代えて、胃内に向かって拡径する半球状の抜け止め部材(以下、バンパーと略記することがある)を備える胃瘻チューブを用いれば、抜け止めの機能が失われるまで4〜6ヶ月、胃内に留置することが可能であるので、交換に伴う患者の負担を軽減することができる。ところが、前記バンパーを備える胃瘻チューブは、該バンパーが胃内に向かって拡径する半球状であり、収縮させた前記バルーンよりも大型であるので、造設されたばかりの前記瘻孔には負担が大となり、胃壁と腹壁とが剥離する虞があるとの問題がある。
【0007】
前記瘻孔は、造設から2ヶ月程度で十分な強度を備える様になり、前記バンパーを備える胃瘻チューブを挿入することができるようになるが、それまでに前記バルーンを備える胃瘻チューブを2回交換する必要がある。
【0008】
また、造設されたばかりの前記瘻孔に、前記バンパーを備える胃瘻チューブを挿入する方法として、プル法と呼ばれる手法がある。前記プル法では、まず、前記イントロデューサ法と同様にして胃内に挿入されたガイドワイヤを、口部から挿入した内視鏡で把持し、該ガイドワイヤを該内視鏡と共に口部から引き出す。次に、ガイドワイヤに、前記バンパーを備える胃瘻チューブの体表側となる端部を接続する。そして、前記瘻孔から体外に出ている前記ガイドワイヤの他方の端部を引くと、前記胃瘻チューブは、口部から胃内に導入され、該瘻孔から体外に引き出される。このとき、前記胃瘻チューブの前記ガイドワイヤに接続されている側の反対側の端部には、前記バンパーが備えられているので、該バンパーが胃壁に係止される。
【0009】
前記プル法によれば、前記バンパーを備える胃瘻チューブが、造設されたばかりの前記瘻孔にも、無理なく挿入される。ところが、前記プル法では、前記バンパーを備える胃瘻チューブを口部から導入するので、該胃瘻チューブが汚染され感染症の原因となる虞があるとの問題がある。
【0010】
そこで、前記挿入補助具の外筒を大径にして、前記バンパーを備える胃瘻チューブを、前記バルーンを備える胃瘻チューブと同様にして、体表側から前記瘻孔に挿入することが考えられる。
【0011】
しかしながら、前記挿入補助具の外筒を大径にすると患者への負担が大きくなる上、前記のように前記ガイドワイヤに沿って前記瘻孔に挿入した後、前記内筒を抜去する際に、胃液や胃内容物が該外筒内に逆流して該外筒の内壁に付着し、前記バンパーを備える胃瘻チューブを挿入する際の障害になるという不都合がある。
【特許文献1】特開2003−38655号公報
【特許文献2】特開2006−102195号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、かかる不都合を解消して、造設直後の瘻孔に、胃内に向かって拡径する半球状の抜け止め部材を備える胃瘻チューブを容易に挿入することができる胃瘻チューブ挿入補助具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
かかる目的を達成するために、本発明の胃瘻チューブ挿入補助具は、腹壁及び胃壁を貫通して造設された瘻孔に、胃内に向かって拡径する半球状の抜け止め部材を胃壁側の端部に備える胃瘻チューブを挿入する際に、該胃瘻チューブの挿入を補助する挿入補助具であって、内筒と、該内筒が内部に挿入される軟質樹脂製の外筒とを備え、該内筒は、該瘻孔に配設されたガイドワイヤを軸方向に沿って挿通自在とする孔部を内部に備えると共に、胃内に挿入される側の端部に先端ほど縮径するテーパ部を備え、該外筒は、該内筒または該胃瘻チューブを軸方向に沿って挿通自在とする孔部を内部に備え、外表面に軸方向に沿って延在すると共に軸に対して対称に相対向して設けられた1対の薄肉部を備えると共に、胃内に挿入される側の端部に逆止弁を備え、該逆止弁は、該内筒の該テーパ部が該外筒から突出するときに開弁して該内筒の外周面に密着し、該内筒が該外筒から抜去されるときに閉弁することを特徴とする。
【0014】
本発明の胃瘻チューブ挿入補助具は、まず、前記外筒の内部に備えられた孔部に前記内筒を挿入し、該内筒の内部に備えられた孔部に前記ガイドワイヤを挿通する。このとき、前記ガイドワイヤは前記瘻孔に配設されて、胃内に挿入されている。
【0015】
そこで、次に、本発明の胃瘻チューブ挿入補助具を前記ガイドワイヤに沿って、胃内に挿入する。このようにすると、前記胃瘻チューブ挿入補助具は、前記内筒の前記テーパ部により前記ガイドワイヤが配設されている前記瘻孔を拡大することができ、該瘻孔の拡大に伴って前記外筒が円滑に挿入される。
【0016】
本発明の胃瘻チューブ挿入補助具では、前記内筒及び外筒が体表側から前記瘻孔に挿入されて腹壁及び胃壁を貫通したならば、前記内筒を抜去し、前記外筒のみを腹壁及び胃壁を貫通した状態で該瘻孔に留置する。このとき、前記内筒の抜去に伴い、胃液や胃内容物等が前記外筒内に逆流し、該外筒の内壁が該胃液や胃内容物等により汚染されることが懸念される。しかし、本発明の胃瘻チューブ挿入補助具は、前記外筒の胃内に挿入される側の端部に前記逆止弁を備えており、該逆止弁は、前記内筒の前記テーパ部が該外筒から突出するときには開弁して該内筒の外周面に密着する一方、該内筒が該外筒から抜去されるときには閉弁するようになっている。従って、本発明の胃瘻チューブ挿入補助具は、前記胃液や胃内容物等の逆流を確実に防止することができる。
【0017】
この結果、本発明の胃瘻チューブ挿入補助具は、前記内筒の抜去後、前記外筒の孔部を介して、前記胃内に向かって拡径する半球状の抜け止め部材を備える胃瘻チューブを容易に挿入することができる。本発明の胃瘻チューブ挿入補助具は、前記胃瘻チューブ挿入後、体表側の端部から前記薄肉部に沿って前記外筒を引き裂いて除去することにより、該胃瘻チューブの挿入を完了する。
【0018】
本発明の胃瘻チューブ挿入補助具において、前記逆止弁は、前記外筒の胃内に挿入される側の端部に、軸に対して対称に相対向して設けられ、該外筒の外周面から軸方向に傾斜する1対の傾斜面と、該1対の傾斜面の交わる部分に該外筒の端部を横断して設けられた稜部と、該稜部に沿って設けられ前記軟質樹脂の弾性により開閉自在とされたスリットとを備えることが好ましい。
【0019】
本発明の胃瘻チューブ挿入補助具では、前記逆止弁は、前記稜部に設けられたスリットからなるので、前記内筒が挿通されるときには、該内筒の外周面に沿って変形することにより開弁することができる。また、前記外筒は軟質樹脂からなるので、前記スリットには、該スリットの両側面が相互に密着しようとする弾性力が作用する上、該弾性力は該スリットが前記1対の傾斜面の交わる部分に設けられた前記稜部に沿って形成されていることにより強化されている。
【0020】
従って、前記逆止弁は、前記のように強化された弾性力により、前記スリットが前記内筒を挟持して、該内筒の前記テーパ部が前記外筒から突出するときには該内筒の外周面に密着し、該内筒が抜去されるときには、該内筒の外周面に密着した状態を保持することができる。そして、前記内筒が完全に抜去されたときには、前記のように強化された弾性力により、前記稜部で前記スリットの両側面が相互に密着して前記逆止弁を閉弁し、胃液や胃内容物の前記外筒内への逆流を確実に阻止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
次に、添付の図面を参照しながら本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。図1は本実施形態の胃瘻チューブ挿入補助具の説明的断面図、図2は図1に示す胃瘻チューブ挿入補助具の外筒の正面図及び説明的断面図、図3は図2に示す外筒の先端部を拡大して示す側面図及び説明的断面図である。また、図4乃至図11は、本実施形態の胃瘻チューブ挿入補助具の使用方法を示す説明的断面図である。
【0022】
図1に示すように、本実施形態の胃瘻チューブ挿入補助具1は、内筒2と、内筒2が内部に挿入される軟質樹脂製の外筒3とを備える。尚、本明細書では、以下、胃内に挿入される側を端部を先端部、胃内に挿入される側と反対側の端部を基端部と記載する。
【0023】
内筒2は、例えば、軟質塩化ビニル樹脂、高密度ポリエチレン樹脂等からなり、ガイドワイヤ(図示せず)を軸方向に沿って挿通自在とする孔部4を内部に備えると共に、先端部に先端ほど縮径するテーパ部5を備えており、テーパ部5は外筒3の先端部から突出している。また、内筒2は基端部側に、外筒3の基端部の内周面に嵌合されて係止される係止部6を備え、基端部には外筒3の基端部の外面に係止される円盤状の係止板7を備えている。
【0024】
外筒3は、例えばシリコーン樹脂等の軟質樹脂製であり、図2(a)に示すように、内筒2を軸方向に沿って挿通自在とする孔部8を内部に備えると共に、図2(b)に示すように、外表面に軸方向に沿って延在する薄肉部9を備えている。孔部8はまた、図示しない胃瘻チューブを軸方向に沿って挿通自在とされている。外筒3には、前記胃瘻チューブを挿入した後、外筒3を引き裂いて除去するために、軸に対して対称に相対向して1対、2条の薄肉部9が設けられている(図2(b)には一方の薄肉部9のみを示す)。薄肉部9は、軸方向の全長に亘って形成されており、外筒3の外表面から厚さ方向にV字状に切り込まれた形状を備えている。
【0025】
また、外筒3は、図2(a)、(b)に示すように、先端部に逆止弁10を備えると共に、基端部の薄肉部9,9間に、1対の羽根状部材11,11を備えている。羽根状部材11,11は、前記のように外筒3を引き裂いて除去するときの把持部として用いられる。
【0026】
外筒3は、図3(a)、(b)に拡大して示すように、先端部に、軸に対して対称に相対向して設けられ、外筒3の外周面から軸方向に傾斜する1対の傾斜面12,12と、傾斜面12,12の交わる部分に設けられた稜部13とを備えている。稜部13は、外筒3の先端部を横断して設けられており、中央部にスリット14を備えている。スリット14は、前記シリコーン樹脂等の軟質樹脂の弾性により開閉自在とされている。
【0027】
次に、本実施形態の胃瘻チューブ挿入補助具1の使用方法について説明する。
【0028】
胃瘻チューブ挿入補助具1を使用する際には、まず図4に示すように、注射針21を用いて局所麻酔を行い、その後、腹壁22に胃壁23を固定する。
【0029】
次に、図5に示すように、前記局所麻酔を施した部分に、イントロデューサ針24を穿刺し、腹壁22及び胃壁23を貫通させることにより瘻孔25を造設する。イントロデューサ針24は、プラスチック製の外針26内に金属製の内針27が挿入された構成となっている。
【0030】
次に、内針27を抜去すると、図6に示すように、外針26のみが腹壁22及び胃壁23を貫通した状態で留置される。そこで、外針26の内側を介してガイドワイヤ28を胃内に挿入する。
【0031】
次に、ガイドワイヤ28が胃内に挿入されたならば、外針26を抜去する。この結果、図7に示すように、ガイドワイヤ28のみが、腹壁22及び胃壁23を貫通した状態で留置される。
【0032】
次に、図8に示すように、ガイドワイヤ28に沿って、胃瘻チューブ挿入補助具1を瘻孔25に挿入する。このとき、胃瘻チューブ挿入補助具1は、外筒3の孔部8に内筒2が挿入されており、内筒2のテーパ部5は逆止弁10を開弁させて外筒3の先端部方向に突出している。また、内筒2の孔部4には、ガイドワイヤ28が挿通されている。
【0033】
そこで、胃瘻チューブ挿入補助具1は、内筒2の孔部4に挿通されたガイドワイヤ28に沿って、内筒2のテーパ部5により瘻孔25を拡大しながら、胃内に向かって挿入される。このとき、内筒2の外表面と外筒3の外表面とには、いずれも水溶性潤滑剤が塗布されており、外筒3の外表面に塗布された該水溶性潤滑剤の作用により、胃瘻チューブ挿入補助具1を胃内に向かって容易に挿入することができる。
【0034】
そして、胃瘻チューブ挿入補助具1の先端部が胃内に挿入されたならば、内筒2及びガイドワイヤ28を抜去することにより、図9に示すように、外筒3のみが、腹壁22及び胃壁23を貫通した状態で留置される。胃瘻チューブ挿入補助具1では、内筒2を抜去するとき、逆止弁10の作用により、胃液や胃内容物が外筒3内へ逆流することがない。また、内筒2は前記のようにその外表面に前記水溶性潤滑剤が塗布されているので、外筒3から容易に抜去することができると共に、外筒3の内表面にも該水溶性潤滑剤を塗布することができる。
【0035】
外筒3は、前記シリコーン樹脂等の軟質樹脂からなるので、逆止弁10のスリット14には、スリット14の両側面が相互に密着しようとする弾性力が作用する。しかも、スリット14は1対の傾斜面12,12の交わる部分に設けられた稜部13の中央部に稜部13に沿って形成されているので、傾斜面12,12の軸方向への押圧力により、前記弾性力が強化されている。
【0036】
従って、逆止弁10は、前記のように強化された弾性力により、スリット14が内筒2を挟持して、内筒2のテーパ部5が外筒3から突出するときには内筒2の外周面に密着しており、内筒2が抜去されるときにも、内筒2の外周面に密着した状態を保持することができる。そして、内筒2が完全に抜去された後には、前記のように強化された弾性力により、稜部13でスリット12の両側面が相互に密着して逆止弁10を閉弁するので、前記胃液や胃内容物の外筒3の孔部8内への逆流を確実に阻止することができる。
【0037】
次に、図10に示すように、外筒3の孔部8を介して、胃瘻チューブ29を胃内に挿入する。胃瘻チューブ29は、胃内に挿入されたときに、胃内に向かって拡径する半球状の抜け止め部材30を先端部に備えており、図示しない専用の棒状部材を用いて胃内に挿入される(特許文献2参照)。
【0038】
胃瘻チューブ29の挿入は、抜け止め部材30に前記水溶性潤滑剤を塗布することにより行われる。胃瘻チューブ挿入補助具1によれば、内筒2の抜去の際に前記胃液や胃内容物が外筒3の孔部8内へ逆流しないので、孔部8に前記胃液及び胃内容物等が付着しておらず、また外筒3の内表面にも前記のように前記水溶性潤滑剤が塗布されているので、胃瘻チューブ29の挿入を円滑に行うことができる。
【0039】
また、外筒3は前記のように前記シリコーン樹脂等の軟質樹脂からなるので、その外径を患者の負担を大きくしない程度の大きさとしても、抜け止め部材30を備える胃瘻チューブ29の挿入を円滑に行うことができる。
【0040】
次に、胃瘻チューブ29が胃内に挿入されたならば、図11に示すように、外筒3は、基端部から薄肉部29に沿って2つに引き裂くことにより除去される。外筒3は、1対の羽根状部材11,11を互いに相反する方向に引くことにより容易に引き裂くことができる。また、外筒3は、その外表面に前記のように前記水溶性潤滑剤が塗布されているので、前記抜去を容易に行うことができる。
【0041】
この結果、本実施形態の胃瘻チューブ挿入補助具1によれば、造設されたばかりの瘻孔25に、胃内に向かって拡径する半球状の抜け止め部材30を先端部に備える胃瘻チューブ29を容易に挿入することができる。従って、バルーンを備える胃瘻チューブを瘻孔25に挿入した場合の、該バルーンを備える胃瘻チューブを1ヶ月程度毎に交換することによる患者の負担を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の胃瘻チューブ挿入補助具の一実施形態の説明的断面図。
【図2】(a)は図1に示す胃瘻チューブ挿入補助具の外筒の正面図、(b)は(a)の縦断面図。
【図3】(a)は図2に示す外筒の先端部を拡大して示す側面図、(b)は(a)のIII−III線断面図。
【図4】本発明の胃瘻チューブ挿入補助具の一実施形態の使用方法を示す説明的断面図。
【図5】本発明の胃瘻チューブ挿入補助具の一実施形態の使用方法を示す説明的断面図。
【図6】本発明の胃瘻チューブ挿入補助具の一実施形態の使用方法を示す説明的断面図。
【図7】本発明の胃瘻チューブ挿入補助具の一実施形態の使用方法を示す説明的断面図。
【図8】本発明の胃瘻チューブ挿入補助具の一実施形態の使用方法を示す説明的断面図。
【図9】本発明の胃瘻チューブ挿入補助具の一実施形態の使用方法を示す説明的断面図。
【図10】本発明の胃瘻チューブ挿入補助具の一実施形態の使用方法を示す説明的断面図。
【図11】本発明の胃瘻チューブ挿入補助具の一実施形態の使用方法を示す説明的断面図。
【符号の説明】
【0043】
1…胃瘻チューブ挿入補助具、 2…内筒、 3…外筒、 4…孔部、 5…テーパ部、 8…孔部、 9…薄肉部、 10逆止弁、 12…傾斜面、 13…稜部、 14…スリット、 22…腹壁、 23…胃壁、 25…瘻孔、 28…ガイドワイヤ、 29…胃瘻チューブ、 30…抜け止め部材。
【技術分野】
【0001】
本発明は、胃瘻チューブの瘻孔への挿入を補助する胃瘻チューブ挿入補助具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、食物等を経口摂取できない患者のために、経皮内視鏡的胃瘻造設術(Percutaneous Endoscopic Gastorostomy、以下、PEGと略記する)により胃瘻チューブを胃に固定し、該胃瘻チューブを介して胃内に栄養物等を送入することが行われている。前記PEGは、腹壁及び胃壁を貫通して穿設された瘻孔に、内視鏡下で胃瘻チューブを挿入し、固定するものである。
【0003】
前記PEGの一手法として、イントロデューサ法と呼ばれる方法がある(例えば、特許文献1参照)。前記イントロデューサ法では、まず、胃瘻造設部に局所麻酔後、胃壁を腹壁に癒着せしめて固定し、体表側からイントロデューサ針を穿刺して腹壁及び胃壁を貫通させることにより瘻孔を造設する。前記イントロデューサ針は、プラスチックの外針に金属の内針を内挿したものであり、前記のように穿刺した後、前記内針を抜去すると、前記外針が腹壁及び胃壁を貫通した状態で留置される。
【0004】
次に、前記外針の内側を介して胃瘻チューブを胃内に挿入する。前記胃瘻チューブが胃内に挿入されたならば、前記外筒は、体表側の端部から2つに引き裂くことにより除去される。
【0005】
前記胃瘻チューブとしては、例えば、抜け止めのために、胃内に挿入される側の端部にバルーンを備え、胃内で該バルーンを膨張させるものが用いられる。前記のようにして造設されたばかりの前記瘻孔はそれ自体損傷を受けやすいが、前記バルーンを備える胃瘻チューブは、該バルーンを収縮させた状態で前記外筒に挿通できるので、造設されたばかりの該瘻孔に対する負担を軽減することができる。一方で、前記バルーンは胃内で経時的に収縮し、抜け止めの機能が失われるので、1ヶ月程度で交換しなければならない。
【0006】
前記バルーンを備える胃瘻チューブに代えて、胃内に向かって拡径する半球状の抜け止め部材(以下、バンパーと略記することがある)を備える胃瘻チューブを用いれば、抜け止めの機能が失われるまで4〜6ヶ月、胃内に留置することが可能であるので、交換に伴う患者の負担を軽減することができる。ところが、前記バンパーを備える胃瘻チューブは、該バンパーが胃内に向かって拡径する半球状であり、収縮させた前記バルーンよりも大型であるので、造設されたばかりの前記瘻孔には負担が大となり、胃壁と腹壁とが剥離する虞があるとの問題がある。
【0007】
前記瘻孔は、造設から2ヶ月程度で十分な強度を備える様になり、前記バンパーを備える胃瘻チューブを挿入することができるようになるが、それまでに前記バルーンを備える胃瘻チューブを2回交換する必要がある。
【0008】
また、造設されたばかりの前記瘻孔に、前記バンパーを備える胃瘻チューブを挿入する方法として、プル法と呼ばれる手法がある。前記プル法では、まず、前記イントロデューサ法と同様にして胃内に挿入されたガイドワイヤを、口部から挿入した内視鏡で把持し、該ガイドワイヤを該内視鏡と共に口部から引き出す。次に、ガイドワイヤに、前記バンパーを備える胃瘻チューブの体表側となる端部を接続する。そして、前記瘻孔から体外に出ている前記ガイドワイヤの他方の端部を引くと、前記胃瘻チューブは、口部から胃内に導入され、該瘻孔から体外に引き出される。このとき、前記胃瘻チューブの前記ガイドワイヤに接続されている側の反対側の端部には、前記バンパーが備えられているので、該バンパーが胃壁に係止される。
【0009】
前記プル法によれば、前記バンパーを備える胃瘻チューブが、造設されたばかりの前記瘻孔にも、無理なく挿入される。ところが、前記プル法では、前記バンパーを備える胃瘻チューブを口部から導入するので、該胃瘻チューブが汚染され感染症の原因となる虞があるとの問題がある。
【0010】
そこで、前記挿入補助具の外筒を大径にして、前記バンパーを備える胃瘻チューブを、前記バルーンを備える胃瘻チューブと同様にして、体表側から前記瘻孔に挿入することが考えられる。
【0011】
しかしながら、前記挿入補助具の外筒を大径にすると患者への負担が大きくなる上、前記のように前記ガイドワイヤに沿って前記瘻孔に挿入した後、前記内筒を抜去する際に、胃液や胃内容物が該外筒内に逆流して該外筒の内壁に付着し、前記バンパーを備える胃瘻チューブを挿入する際の障害になるという不都合がある。
【特許文献1】特開2003−38655号公報
【特許文献2】特開2006−102195号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、かかる不都合を解消して、造設直後の瘻孔に、胃内に向かって拡径する半球状の抜け止め部材を備える胃瘻チューブを容易に挿入することができる胃瘻チューブ挿入補助具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
かかる目的を達成するために、本発明の胃瘻チューブ挿入補助具は、腹壁及び胃壁を貫通して造設された瘻孔に、胃内に向かって拡径する半球状の抜け止め部材を胃壁側の端部に備える胃瘻チューブを挿入する際に、該胃瘻チューブの挿入を補助する挿入補助具であって、内筒と、該内筒が内部に挿入される軟質樹脂製の外筒とを備え、該内筒は、該瘻孔に配設されたガイドワイヤを軸方向に沿って挿通自在とする孔部を内部に備えると共に、胃内に挿入される側の端部に先端ほど縮径するテーパ部を備え、該外筒は、該内筒または該胃瘻チューブを軸方向に沿って挿通自在とする孔部を内部に備え、外表面に軸方向に沿って延在すると共に軸に対して対称に相対向して設けられた1対の薄肉部を備えると共に、胃内に挿入される側の端部に逆止弁を備え、該逆止弁は、該内筒の該テーパ部が該外筒から突出するときに開弁して該内筒の外周面に密着し、該内筒が該外筒から抜去されるときに閉弁することを特徴とする。
【0014】
本発明の胃瘻チューブ挿入補助具は、まず、前記外筒の内部に備えられた孔部に前記内筒を挿入し、該内筒の内部に備えられた孔部に前記ガイドワイヤを挿通する。このとき、前記ガイドワイヤは前記瘻孔に配設されて、胃内に挿入されている。
【0015】
そこで、次に、本発明の胃瘻チューブ挿入補助具を前記ガイドワイヤに沿って、胃内に挿入する。このようにすると、前記胃瘻チューブ挿入補助具は、前記内筒の前記テーパ部により前記ガイドワイヤが配設されている前記瘻孔を拡大することができ、該瘻孔の拡大に伴って前記外筒が円滑に挿入される。
【0016】
本発明の胃瘻チューブ挿入補助具では、前記内筒及び外筒が体表側から前記瘻孔に挿入されて腹壁及び胃壁を貫通したならば、前記内筒を抜去し、前記外筒のみを腹壁及び胃壁を貫通した状態で該瘻孔に留置する。このとき、前記内筒の抜去に伴い、胃液や胃内容物等が前記外筒内に逆流し、該外筒の内壁が該胃液や胃内容物等により汚染されることが懸念される。しかし、本発明の胃瘻チューブ挿入補助具は、前記外筒の胃内に挿入される側の端部に前記逆止弁を備えており、該逆止弁は、前記内筒の前記テーパ部が該外筒から突出するときには開弁して該内筒の外周面に密着する一方、該内筒が該外筒から抜去されるときには閉弁するようになっている。従って、本発明の胃瘻チューブ挿入補助具は、前記胃液や胃内容物等の逆流を確実に防止することができる。
【0017】
この結果、本発明の胃瘻チューブ挿入補助具は、前記内筒の抜去後、前記外筒の孔部を介して、前記胃内に向かって拡径する半球状の抜け止め部材を備える胃瘻チューブを容易に挿入することができる。本発明の胃瘻チューブ挿入補助具は、前記胃瘻チューブ挿入後、体表側の端部から前記薄肉部に沿って前記外筒を引き裂いて除去することにより、該胃瘻チューブの挿入を完了する。
【0018】
本発明の胃瘻チューブ挿入補助具において、前記逆止弁は、前記外筒の胃内に挿入される側の端部に、軸に対して対称に相対向して設けられ、該外筒の外周面から軸方向に傾斜する1対の傾斜面と、該1対の傾斜面の交わる部分に該外筒の端部を横断して設けられた稜部と、該稜部に沿って設けられ前記軟質樹脂の弾性により開閉自在とされたスリットとを備えることが好ましい。
【0019】
本発明の胃瘻チューブ挿入補助具では、前記逆止弁は、前記稜部に設けられたスリットからなるので、前記内筒が挿通されるときには、該内筒の外周面に沿って変形することにより開弁することができる。また、前記外筒は軟質樹脂からなるので、前記スリットには、該スリットの両側面が相互に密着しようとする弾性力が作用する上、該弾性力は該スリットが前記1対の傾斜面の交わる部分に設けられた前記稜部に沿って形成されていることにより強化されている。
【0020】
従って、前記逆止弁は、前記のように強化された弾性力により、前記スリットが前記内筒を挟持して、該内筒の前記テーパ部が前記外筒から突出するときには該内筒の外周面に密着し、該内筒が抜去されるときには、該内筒の外周面に密着した状態を保持することができる。そして、前記内筒が完全に抜去されたときには、前記のように強化された弾性力により、前記稜部で前記スリットの両側面が相互に密着して前記逆止弁を閉弁し、胃液や胃内容物の前記外筒内への逆流を確実に阻止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
次に、添付の図面を参照しながら本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。図1は本実施形態の胃瘻チューブ挿入補助具の説明的断面図、図2は図1に示す胃瘻チューブ挿入補助具の外筒の正面図及び説明的断面図、図3は図2に示す外筒の先端部を拡大して示す側面図及び説明的断面図である。また、図4乃至図11は、本実施形態の胃瘻チューブ挿入補助具の使用方法を示す説明的断面図である。
【0022】
図1に示すように、本実施形態の胃瘻チューブ挿入補助具1は、内筒2と、内筒2が内部に挿入される軟質樹脂製の外筒3とを備える。尚、本明細書では、以下、胃内に挿入される側を端部を先端部、胃内に挿入される側と反対側の端部を基端部と記載する。
【0023】
内筒2は、例えば、軟質塩化ビニル樹脂、高密度ポリエチレン樹脂等からなり、ガイドワイヤ(図示せず)を軸方向に沿って挿通自在とする孔部4を内部に備えると共に、先端部に先端ほど縮径するテーパ部5を備えており、テーパ部5は外筒3の先端部から突出している。また、内筒2は基端部側に、外筒3の基端部の内周面に嵌合されて係止される係止部6を備え、基端部には外筒3の基端部の外面に係止される円盤状の係止板7を備えている。
【0024】
外筒3は、例えばシリコーン樹脂等の軟質樹脂製であり、図2(a)に示すように、内筒2を軸方向に沿って挿通自在とする孔部8を内部に備えると共に、図2(b)に示すように、外表面に軸方向に沿って延在する薄肉部9を備えている。孔部8はまた、図示しない胃瘻チューブを軸方向に沿って挿通自在とされている。外筒3には、前記胃瘻チューブを挿入した後、外筒3を引き裂いて除去するために、軸に対して対称に相対向して1対、2条の薄肉部9が設けられている(図2(b)には一方の薄肉部9のみを示す)。薄肉部9は、軸方向の全長に亘って形成されており、外筒3の外表面から厚さ方向にV字状に切り込まれた形状を備えている。
【0025】
また、外筒3は、図2(a)、(b)に示すように、先端部に逆止弁10を備えると共に、基端部の薄肉部9,9間に、1対の羽根状部材11,11を備えている。羽根状部材11,11は、前記のように外筒3を引き裂いて除去するときの把持部として用いられる。
【0026】
外筒3は、図3(a)、(b)に拡大して示すように、先端部に、軸に対して対称に相対向して設けられ、外筒3の外周面から軸方向に傾斜する1対の傾斜面12,12と、傾斜面12,12の交わる部分に設けられた稜部13とを備えている。稜部13は、外筒3の先端部を横断して設けられており、中央部にスリット14を備えている。スリット14は、前記シリコーン樹脂等の軟質樹脂の弾性により開閉自在とされている。
【0027】
次に、本実施形態の胃瘻チューブ挿入補助具1の使用方法について説明する。
【0028】
胃瘻チューブ挿入補助具1を使用する際には、まず図4に示すように、注射針21を用いて局所麻酔を行い、その後、腹壁22に胃壁23を固定する。
【0029】
次に、図5に示すように、前記局所麻酔を施した部分に、イントロデューサ針24を穿刺し、腹壁22及び胃壁23を貫通させることにより瘻孔25を造設する。イントロデューサ針24は、プラスチック製の外針26内に金属製の内針27が挿入された構成となっている。
【0030】
次に、内針27を抜去すると、図6に示すように、外針26のみが腹壁22及び胃壁23を貫通した状態で留置される。そこで、外針26の内側を介してガイドワイヤ28を胃内に挿入する。
【0031】
次に、ガイドワイヤ28が胃内に挿入されたならば、外針26を抜去する。この結果、図7に示すように、ガイドワイヤ28のみが、腹壁22及び胃壁23を貫通した状態で留置される。
【0032】
次に、図8に示すように、ガイドワイヤ28に沿って、胃瘻チューブ挿入補助具1を瘻孔25に挿入する。このとき、胃瘻チューブ挿入補助具1は、外筒3の孔部8に内筒2が挿入されており、内筒2のテーパ部5は逆止弁10を開弁させて外筒3の先端部方向に突出している。また、内筒2の孔部4には、ガイドワイヤ28が挿通されている。
【0033】
そこで、胃瘻チューブ挿入補助具1は、内筒2の孔部4に挿通されたガイドワイヤ28に沿って、内筒2のテーパ部5により瘻孔25を拡大しながら、胃内に向かって挿入される。このとき、内筒2の外表面と外筒3の外表面とには、いずれも水溶性潤滑剤が塗布されており、外筒3の外表面に塗布された該水溶性潤滑剤の作用により、胃瘻チューブ挿入補助具1を胃内に向かって容易に挿入することができる。
【0034】
そして、胃瘻チューブ挿入補助具1の先端部が胃内に挿入されたならば、内筒2及びガイドワイヤ28を抜去することにより、図9に示すように、外筒3のみが、腹壁22及び胃壁23を貫通した状態で留置される。胃瘻チューブ挿入補助具1では、内筒2を抜去するとき、逆止弁10の作用により、胃液や胃内容物が外筒3内へ逆流することがない。また、内筒2は前記のようにその外表面に前記水溶性潤滑剤が塗布されているので、外筒3から容易に抜去することができると共に、外筒3の内表面にも該水溶性潤滑剤を塗布することができる。
【0035】
外筒3は、前記シリコーン樹脂等の軟質樹脂からなるので、逆止弁10のスリット14には、スリット14の両側面が相互に密着しようとする弾性力が作用する。しかも、スリット14は1対の傾斜面12,12の交わる部分に設けられた稜部13の中央部に稜部13に沿って形成されているので、傾斜面12,12の軸方向への押圧力により、前記弾性力が強化されている。
【0036】
従って、逆止弁10は、前記のように強化された弾性力により、スリット14が内筒2を挟持して、内筒2のテーパ部5が外筒3から突出するときには内筒2の外周面に密着しており、内筒2が抜去されるときにも、内筒2の外周面に密着した状態を保持することができる。そして、内筒2が完全に抜去された後には、前記のように強化された弾性力により、稜部13でスリット12の両側面が相互に密着して逆止弁10を閉弁するので、前記胃液や胃内容物の外筒3の孔部8内への逆流を確実に阻止することができる。
【0037】
次に、図10に示すように、外筒3の孔部8を介して、胃瘻チューブ29を胃内に挿入する。胃瘻チューブ29は、胃内に挿入されたときに、胃内に向かって拡径する半球状の抜け止め部材30を先端部に備えており、図示しない専用の棒状部材を用いて胃内に挿入される(特許文献2参照)。
【0038】
胃瘻チューブ29の挿入は、抜け止め部材30に前記水溶性潤滑剤を塗布することにより行われる。胃瘻チューブ挿入補助具1によれば、内筒2の抜去の際に前記胃液や胃内容物が外筒3の孔部8内へ逆流しないので、孔部8に前記胃液及び胃内容物等が付着しておらず、また外筒3の内表面にも前記のように前記水溶性潤滑剤が塗布されているので、胃瘻チューブ29の挿入を円滑に行うことができる。
【0039】
また、外筒3は前記のように前記シリコーン樹脂等の軟質樹脂からなるので、その外径を患者の負担を大きくしない程度の大きさとしても、抜け止め部材30を備える胃瘻チューブ29の挿入を円滑に行うことができる。
【0040】
次に、胃瘻チューブ29が胃内に挿入されたならば、図11に示すように、外筒3は、基端部から薄肉部29に沿って2つに引き裂くことにより除去される。外筒3は、1対の羽根状部材11,11を互いに相反する方向に引くことにより容易に引き裂くことができる。また、外筒3は、その外表面に前記のように前記水溶性潤滑剤が塗布されているので、前記抜去を容易に行うことができる。
【0041】
この結果、本実施形態の胃瘻チューブ挿入補助具1によれば、造設されたばかりの瘻孔25に、胃内に向かって拡径する半球状の抜け止め部材30を先端部に備える胃瘻チューブ29を容易に挿入することができる。従って、バルーンを備える胃瘻チューブを瘻孔25に挿入した場合の、該バルーンを備える胃瘻チューブを1ヶ月程度毎に交換することによる患者の負担を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の胃瘻チューブ挿入補助具の一実施形態の説明的断面図。
【図2】(a)は図1に示す胃瘻チューブ挿入補助具の外筒の正面図、(b)は(a)の縦断面図。
【図3】(a)は図2に示す外筒の先端部を拡大して示す側面図、(b)は(a)のIII−III線断面図。
【図4】本発明の胃瘻チューブ挿入補助具の一実施形態の使用方法を示す説明的断面図。
【図5】本発明の胃瘻チューブ挿入補助具の一実施形態の使用方法を示す説明的断面図。
【図6】本発明の胃瘻チューブ挿入補助具の一実施形態の使用方法を示す説明的断面図。
【図7】本発明の胃瘻チューブ挿入補助具の一実施形態の使用方法を示す説明的断面図。
【図8】本発明の胃瘻チューブ挿入補助具の一実施形態の使用方法を示す説明的断面図。
【図9】本発明の胃瘻チューブ挿入補助具の一実施形態の使用方法を示す説明的断面図。
【図10】本発明の胃瘻チューブ挿入補助具の一実施形態の使用方法を示す説明的断面図。
【図11】本発明の胃瘻チューブ挿入補助具の一実施形態の使用方法を示す説明的断面図。
【符号の説明】
【0043】
1…胃瘻チューブ挿入補助具、 2…内筒、 3…外筒、 4…孔部、 5…テーパ部、 8…孔部、 9…薄肉部、 10逆止弁、 12…傾斜面、 13…稜部、 14…スリット、 22…腹壁、 23…胃壁、 25…瘻孔、 28…ガイドワイヤ、 29…胃瘻チューブ、 30…抜け止め部材。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
腹壁及び胃壁を貫通して造設された瘻孔に、胃内に向かって拡径する半球状の抜け止め部材を胃壁側の端部に備える胃瘻チューブを挿入する際に、該胃瘻チューブの挿入を補助する挿入補助具であって、
内筒と、該内筒が内部に挿入される軟質樹脂製の外筒とを備え、
該内筒は、該瘻孔に配設されたガイドワイヤを軸方向に沿って挿通自在とする孔部を内部に備えると共に、胃内に挿入される側の端部に先端ほど縮径するテーパ部を備え、
該外筒は、該内筒または該胃瘻チューブを軸方向に沿って挿通自在とする孔部を内部に備え、外表面に軸方向に沿って延在すると共に軸に対して対称に相対向して設けられた1対の薄肉部を備えると共に、胃内に挿入される側の端部に逆止弁を備え、
該逆止弁は、該内筒の該テーパ部が該外筒から突出するときに開弁して該内筒の外周面に密着し、該内筒が該外筒から抜去されるときに閉弁することを特徴とする胃瘻チューブ挿入補助具。
【請求項2】
前記逆止弁は、前記外筒の胃内に挿入される側の端部に、軸に対して対称に相対向して設けられ、該外筒の外周面から軸方向に傾斜する1対の傾斜面と、該1対の傾斜面の交わる部分に該外筒の端部を横断して設けられた稜部と、該稜部に沿って設けられ前記軟質樹脂の弾性により開閉自在とされたスリットとを備えることを特徴とする請求項1記載の胃瘻チューブ挿入補助具。
【請求項1】
腹壁及び胃壁を貫通して造設された瘻孔に、胃内に向かって拡径する半球状の抜け止め部材を胃壁側の端部に備える胃瘻チューブを挿入する際に、該胃瘻チューブの挿入を補助する挿入補助具であって、
内筒と、該内筒が内部に挿入される軟質樹脂製の外筒とを備え、
該内筒は、該瘻孔に配設されたガイドワイヤを軸方向に沿って挿通自在とする孔部を内部に備えると共に、胃内に挿入される側の端部に先端ほど縮径するテーパ部を備え、
該外筒は、該内筒または該胃瘻チューブを軸方向に沿って挿通自在とする孔部を内部に備え、外表面に軸方向に沿って延在すると共に軸に対して対称に相対向して設けられた1対の薄肉部を備えると共に、胃内に挿入される側の端部に逆止弁を備え、
該逆止弁は、該内筒の該テーパ部が該外筒から突出するときに開弁して該内筒の外周面に密着し、該内筒が該外筒から抜去されるときに閉弁することを特徴とする胃瘻チューブ挿入補助具。
【請求項2】
前記逆止弁は、前記外筒の胃内に挿入される側の端部に、軸に対して対称に相対向して設けられ、該外筒の外周面から軸方向に傾斜する1対の傾斜面と、該1対の傾斜面の交わる部分に該外筒の端部を横断して設けられた稜部と、該稜部に沿って設けられ前記軟質樹脂の弾性により開閉自在とされたスリットとを備えることを特徴とする請求項1記載の胃瘻チューブ挿入補助具。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−72344(P2009−72344A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−243526(P2007−243526)
【出願日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【出願人】(390029676)株式会社トップ (106)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【出願人】(390029676)株式会社トップ (106)
【Fターム(参考)】
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