説明

背負式動力作業機

【課題】エンジンを始動させる際に、作業者に無理な姿勢を強いることなく、スムーズ且つ簡単にグリップを引き出すことができるとともに、背負わずに地面や作業台上に置いた状態でグリップを引き出す場合にも作業者が楽な姿勢で行うことができ、スタータロープに無理な曲げ力が作用することを防止できる背負式動力作業機を提供する。
【解決手段】背負フレーム6と、背負フレーム6に支持されるエンジン3と、グリップ71を引く動作に伴ってスタータロープ72を牽引することによりエンジン3を始動させるリコイルスタータ7と、グリップ71を引く動作に伴って引き出されるスタータロープ72の引き出し動作をガイドし、且つ引き出し操作前のグリップ71を始動初期位置に保持可能なロープガイド機構8とを備え、ロープガイド機構8を、背負フレーム6に対して少なくとも高さ方向に回動可能に構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、背負式動力作業機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、作業者が背負った状態で所定の作業(例えば噴霧作業)を行うことが可能な背負式動力作業機が知られている。
【0003】
エンジンを動力源とする背負式動力作業機においては、グリップを引く動作に伴って、スタータロープを引き出すことによりエンジンを始動させるリコイルスタータを備えたものが通例であり、このような背負式動力作業機は背負った状態で作業者の背中側に配されるグリップを引く操作によってエンジンを始動させることができる。そして、グリップの引き動作に伴って引き出されるスタータロープをガイドする機能と、引き出し操作前のグリップを始動初期位置に保持する機能とを発揮するロープガイド機構は、背負フレームの下部に固定されているのが通例である(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−211828号公報(明細書の段落番号0012、図1及び図2参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このような動力作業機を作業者が背負った状態でグリップを引く操作、いわゆる「背引き」を行う際、スムーズに引き出しやすいグリップの位置や角度は、作業者それぞれの体格や引き癖によって異なる。
【0005】
しかしながら、ロープガイド機構を背負フレームに固定した態様であれば、このロープガイド機構に保持されるグリップの始動初期位置は背負フレームに対して常に同じ位置となり、作業者によってはグリップをスムーズに引くことができない、或いは力が入り難い場合があり、腕を不自然な状態に曲げる又は伸ばす等、作業者に無理な作業姿勢を強いることがあった。
【0006】
また、動力作業機を背負わずに地面や作業台上に置いて作業を行う場合や、暖機運転を行う場合等、地面等に置いた状態でグリップを引く操作、いわゆる「置き引き」を行う際、作業者はグリップを上方に引っ張り出す作業を行うが、ロープガイド機構を背負フレームの下部に固定した態様であれば、上方に引き出されるスタータロープがロープガイド機構の引き出し端で急角度に曲げられるため、抵抗が大きくなり、引き出す作業をスムーズに行うことができないのみならず、スタータロープに無理な曲げ力が作用して損傷するというおそれもあった。また、上方に引き出すことによる不具合を回避するために、作業者が屈み込んでグリップを引き出すことも考えられるが、一旦屈み込む又は中腰にならなければならず、面倒である。
【0007】
本発明は、このような課題に着目してなされたものであって、主たる目的は、エンジンを始動させる際に、作業者に無理な姿勢を強いることなく、スムーズ且つ簡単にグリップを引き出すことができるとともに、背負わずに地面や作業台上に置いた状態でエンジンを始動させる場合にも作業者が楽な姿勢でグリップの引き出し操作を行うことができ、スタータロープに無理な曲げ力が作用することを防止できる背負式動力作業機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明の背負式動力作業機は、背負フレームと、当該背負フレームに支持されるエンジンと、グリップを引く動作に伴ってスタータロープを牽引することにより前記エンジンを始動させるリコイルスタータと、前記グリップを引く動作に伴って引き出される前記スタータロープの引き出し動作をガイドし、且つ引き出し操作前の前記グリップを始動初期位置に保持可能なロープガイド機構とを備えたものであって、前記ロープガイド機構が、前記背負フレームに対して少なくとも高さ方向に回動可能なものであることを特徴とする。
【0009】
このようなものであれば、ロープガイド機構が背負フレームに対して高さ方向に回動可能であるため、作業者は、グリップを握った状態で当該グリップの始動初期位置をスムーズに引き出し易い、或いは力が入り易い位置や角度に調整することができ、腕を不自然な状態に曲げる又は伸ばす等の無理な作業姿勢を強いられることなく、グリップをスムーズに引き出すことができる。
【0010】
さらに、背負わずに地面や作業台上に置いて作業を行う場合や、暖機運転を行う場合には、作業者がグリップを上方に引っ張り出す角度に応じて、ロープガイド機構が回転するため、上方に引き出されるスタータロープがロープガイド機構の引き出し端で急角度に曲げられる事態を回避し、グリップを引く作業を抵抗の少ない状態で行うことができ、また、スタータロープにも無理な曲げ力が作用しないため、スタータロープの損傷を防止することができる。しかも、屈み込んだ状態でグリップを引き出す必要もないため、作業性に優れたものとなる。
【0011】
ロープガイド機構の具体的な実施態様としては、基端部側に設定した支点を中心に回動可能なアーム部と、当該アーム部の先端部に取り付けられ、且つアーム部の回動に伴って少なくとも高さ方向に移動可能なロープガイド本体とを備えた態様が挙げられる。このようなものであれば、簡単な構成でロープガイド機構を実現できるとともに、アーム部の全長を適宜設計変更することにより、回動支点とロープガイド本体との距離を変更することができ、作業機の種類や仕様等に応じて選択可能なグリップの高さ位置を調整することが可能である。
【0012】
また、アーム部が回転し過ぎた場合には、スタータロープ、具体的にはスタータロープを内部に通すガイドチューブが過度の曲がり変形によって局部的に損傷するという不具合が生じ得るが、これを防止するには、前記ロープガイド機構が、リコイルスタータ本体と前記アーム部との間で前記スタータロープを通すガイドチューブを備えたものであり、前記アーム部が、基端部側に前記ガイドチューブを高さ方向にあそびのある状態で挿通させる挿通孔を備えたものであり、当該アーム部を所定角度回動させた際に前記ガイドチューブが前記挿通孔の上縁部又は下縁部に当たることにより、当該アーム部のそれ以上の上方又は下方への回動を規制するように構成することが好ましい。
【0013】
加えて、前記ロープガイド機構が、前記背負フレームに対して少なくとも高さ方向に回動自在な可動状態と、前記背負フレームに対して回動不能な固定状態との間で変更可能なものであれば、背負った状態でエンジンを始動させる作業に使い慣れるまではロープガイド機構を可動状態に設定し、作業者自身の好みに応じたグリップの始動初期位置を探れるようにしつつ、ある程度使い慣れて作業者自身にとっての最適なグリップの始動初期位置がわかった後は、グリップを当該最適な始動初期位置に保持し得る角度でロープガイド機構を固定状態にすればよい。なお、背負わない状態でエンジンを始動させる場合には、ロープガイド機構を可動状態に設定しておくことが望ましい。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように本発明によれば、エンジンを始動させる際に、作業者に無理な姿勢を強いることなく、スムーズ且つ簡単にグリップを引き出すことができるとともに、背負わずに地面や作業台上に置いた状態でグリップを引き出す場合にも作業者は楽な姿勢でグリップの引き出し操作を行うことができ、スタータロープに無理な曲げ力が作用することを防止できる背負式動力作業機を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
【0016】
本実施形態に係る背負式動力作業機1は、図1に示すように、ポンプ2と、ポンプ2の駆動源であるエンジン3と、噴霧又は散布する液体を収容する薬液タンク4と、作業者の肩に掛けるための担ぎ帯5と、ポンプ2、エンジン3及び薬液タンク4を支持する背負フレーム6と、グリップ71を引いてスタータロープ72を牽引することによりエンジン3を始動させるリコイルスタータ7と、グリップ71を引く動作に伴って引き出されるスタータロープ72の引き出し動作をガイドし、且つ引き出し操作前のグリップ71を始動初期位置に保持可能なロープガイド機構8とを備えたものである。なお、本実施形態の背負式動力作業機1は、先端に噴霧ノズルを設けた操作桿(図示省略)を片手に持って噴霧作業を行うことができる、いわゆる背負式動力噴霧機である。
【0017】
ポンプ2、エンジン3、薬液タンク4、担ぎ帯5及び背負フレーム6については周知のものを適用しているため、詳細な説明は省略する。
【0018】
リコイルスタータ7は、グリップ71を引く動作に伴って、リコイルスタータ本体70のリールに巻いたスタータロープ72を牽引することによりクランクシャフトに動力を伝えるものであり、その基本的な構造及び原理は周知のものと同様である。
【0019】
ロープガイド機構8は、基端部側に設定した支点を中心に回動可能なアーム部81と、アーム部81の先端部に取り付けられ、且つアーム部81の回動に伴って回転しながら高さ方向に移動可能なロープガイド本体82と、リコイルスタータ本体70とアーム部71との間でスタータロープ72を通すガイドチューブ84を備えたものである。
【0020】
アーム部81は、図2及び図3に示すように、基端部側に設けられ且つ当該アーム部81を背負フレーム6に取り付けるためのアーム取付部材83を収容可能な収容部811と、収容部811から先端(前方)に向かって延びる延出部812と、延出部812の先端部(前端部)に設けられロープガイド本体82を取り付けるためのロープガイド本体取付部813と、収容部811のうち延出部812と相反する方向(後方)の縁部に設けられ且つスタータロープ72を挿通させるための挿通部814とを備えたものである。本実施形態では、アーム部81として、これら各部を一体に有する樹脂成形品を適用している。
【0021】
収容部811は、概略円形状の凹部811aを有し、この凹部811aに収容したアーム取付部材83をフレーム取付部材61にネジNを利用して取り付けることにより、ネジNを回転中心としてアーム部81がフレーム取付部材61に対して回動し得るように構成している。フレーム取付部材61は、背負フレーム6に取り付けられる第1取付片611と、収容部811にあてがわれ且つ前記ネジNが螺合可能なナット612aを有する第2取付片612とを備えた平面視略L字状をなす金具である。
【0022】
延出部812は、概略板状をなすものであり、この延出部812の先端部に概略円筒状のロープガイド本体取付部813を連続して設けている。
【0023】
ロープガイド本体取付部813は、軸方向に沿って貫通する第2挿通孔813aを有するものである。
【0024】
挿通部814には、リコイルスタータ本体70とアーム部71との間でスタータロープ72を通すガイドチューブ84を、高さ方向に遊びのある状態で収容し得る長孔状の第1挿通孔814a(本発明の「挿通孔」に相当)を形成している。この第1挿通孔814aは、アーム部81の回転中心(ネジN)よりも後方に設けられ、第1挿通孔814aの高さ方向中央部を、ロープガイド本体取付部813の第2挿通孔813aを通る仮想直線上に設定している。アーム部81のうち、挿通部814及びロープガイド本体取付部813が他の部位よりも側方に突出するように設定し、挿通部814の第1挿通孔814aからロープガイド本体取付部813の第2挿通孔813aに通したガイドチューブ84が、これら挿通孔814a、813a間において他の部位と干渉して不意に折れ曲がったり、無理な力が作用することを防止している。
【0025】
ロープガイド本体82は、ロープガイド本体取付部813に嵌合可能な嵌合部821と、この嵌合部821をロープガイド本体取付部813に嵌め合わせて取り付けた状態において、ロープガイド本体取付部813の先端縁に当接する鍔部822とを備え、鍔部822よりも先端側の部位が、ロープガイド本体取付部813の外面部に略連続する面を形成するように構成したものである。本実施形態では、ロープガイド本体82として、これら各部を一体に有する樹脂成形品を適用している。ロープガイド本体82は、ロープガイド本体取付部813に通したガイドチューブ84がそのまま挿通可能な第3挿通孔82aを軸方向に形成している。なお、スタータロープ72のみが第3挿通孔82aの先端部分を通過するように設定し、ガイドチューブ84自体は第3挿通孔82aの先端部分からさらに先方(前方)へ飛び出さないように設定している。また、ロープガイド本体82の先端部位は、先端に向かって漸次径を小さくした略切頭円錐形状をなし、一旦引き出したグリップ71及びスタータロープ72がリコイルスタータ7の図示しないリコイル用付勢手段(例えばぜんまい)の作用により巻き戻された際に、後述するグリップ71の基端部側鍔部712によってロープガイド本体82が被覆される動作をスムーズに行えるようにしている。
【0026】
このようなアーム部81とロープガイド本体82とを相互に組み付けてなるロープガイド機構8において、アーム部81の第1挿通孔814aが、スタータロープ72の導入端として機能し、ロープガイド本体82の第3挿通孔82aが、スタータロープ72の引き出し端(導出端)として機能する。
【0027】
このようなロープガイド機構8は、第1挿通孔814a及び第3挿通孔82aにガイドチューブ84を通す前の段階で、背負フレーム6に固定したフレーム取付部材61にアーム部81をあてがい、アーム部81の収容部811に収容したアーム取付部材83に挿通したネジNを、フレーム取付部材61のナット612aに締め付けることによって、背負フレーム6に一体的に取り付けることができる。そして、この取付状態において、ロープガイド機構8が、ネジNを中心に高さ方向に回転動作可能なものとなる。なお、本実施形態では、アーム取付部材83の内部にバネ座金831を設け、ネジNの締め付け量を調節することにより、ロープガイド機構8を、背負フレーム6に対して少なくとも高さ方向に回動自在な可動状態と、背負フレーム6に対して回動不能な固定状態との間で変更可能に構成している。
【0028】
リコイルスタータ7は、上述したように基本原理や構成は周知のものと略同じであるが、ここで、グリップ71の構造を簡単に説明する。
【0029】
グリップ71は、作業者が把手可能なグリップ本体711と、グリップ本体711の基端部に連続して設けられロープガイド本体82の先端部位を被覆し得る基端部側鍔部712と、グリップ本体711の先端部に連続して設けた先端部側鍔部713とを備えたものである。本実施形態では、グリップ71として、これら各部を一体に有する樹脂成形品を適用している。グリップ71は、ロープガイド本体82の第3挿通孔82aに通したスタータロープ72が挿通可能な第4挿通孔71aを軸方向に形成し、先端部側鍔部713に、括った(玉結びした)スタータロープ72の先端部を収容可能な抜け止め部を第4挿通孔71aに連続して形成している。本実施形態では、引き出し操作前の始動初期位置に位置付けられたグリップ71がロープガイド機構8に対して回転する又はぐらつくことを防止するために、グリップ71とロープガイド機構8との間に、グリップ71を安定した姿勢で保持する姿勢保持手段を設けている。具体的には、グリップ71の基端部側鍔部712に設けた略V字状の切り欠き712aと、アーム部81に設けられ当該切り欠き712aに嵌り込む当接部815とから姿勢保持手段を構成し、当接部815が切り欠き712aに嵌り込むことによってロープガイド機構8に対するグリップ71の回転又はぐらつきを防止している。
【0030】
次に、このような各部材を備えた背負式動力作業機1の操作方法、特にエンジン3を始動させる際の操作方法及び作用について説明する。
【0031】
担ぎ帯7を作業者の左右の肩にそれぞれ掛けて背負った状態でエンジン3を始動させる、いわゆる「背引き」を行う場合、グリップ71を引く操作を行うことによって、スタータロープ72がロープガイド機構8の引き出し端(導出端)、すなわちロープガイド本体82の第3挿通孔82aから引き出され、リコイルスタータ7の点火処理によりエンジン3が始動する。この際、図4に示すように、ロープガイド機構8を前記可動状態にしておくことにより、作業者がグリップ71を握って当該グリップ71を上下に動かす動作に追従して、ロープガイド機構8が、基端部側に設定した支点(ネジN)を中心に回動しながら高さ方向に移動し、ロープガイド機構8のロープガイド本体82の高さ位置も変化する。その結果、作業者は自身の体格や引き癖に応じてグリップ71の始動初期位置を任意の高さ位置に調整することができる。
【0032】
さらに、図5に示すように、自身の体格や引き癖に応じて調整した始動初期位置にあるグリップ71を引っ張ると、その引っ張り方向に応じてロープガイド機構8が回動し、ロープガイド本体82が引っ張り方向を向くため、作業者は無理な姿勢を強いられることなく、スムーズ且つ簡単にグリップ71を引き出すことができる。なお、図5(a)は、始動初期位置にあるグリップ71を下方に引っ張った状態を示し、同図(b)は始動初期位置にあるグリップ71を前方に引っ張った状態を示し、同図(c)は始動初期位置にあるグリップ71を上方に引っ張った状態を示すものである。
【0033】
また、背負式動力作業機1を背負わずに地面や作業台上に置いた状態で使用する場合や、暖機運転を行う場合等において、いわゆる「置き引き」を行う際は、ロープガイド機構8を前記可動状態にしておくことにより、作業者が始動初期位置にあるグリップ71を上方へ引っ張ると、その引っ張り方向に応じてロープガイド機構8が回動し、ロープガイド本体82が引っ張り方向を向くため(図5(c)参照)、スタータロープ72がロープガイド本体82(ロープガイド機構8の引き出し端)の部分で急角度に曲げられることを回避することができるとともに、ロープガイド本体82の部分におけるスタータロープ72の摩擦抵抗が軽減され、グリップ71を引き出す作業を軽い力で楽に行うことができる。
【0034】
さらに、アーム部81が、基端部側にスタータロープ72を高さ方向にあそびのある状態で挿通させる第1挿通孔814aを備えたものであり、図6に示すように、アーム部81を所定角度回動させた際にガイドチューブ84が第1挿通孔814aの上縁部814aaに当たる(同図(a)参照)、又は下縁部814abに当たる(同図(b)参照)ことにより、アーム部81のそれ以上の上方又は下方への回動を規制するように構成しているため、アーム部81が回転し過ぎた場合に生じ得る不具合、つまり、ガイドチューブ84、ひいてはスタータロープ72が過度の曲がり変形によって局部的に損傷するという不具合を防止することができるとともに、このようなアーム部81の回動範囲を規制する回動範囲規制手段を極めて簡単な構成で実現することができ、構造の簡略化及び製造コストの削減を有効に図ることができる。
【0035】
また、必要に応じてロープガイド機構8を回動不能な固定状態にすることもできるため、グリップ71の始動初期位置を予め所望の位置に設定することも可能である。さらに、ネジNの締め付け量を調節することによってロープガイド機構8を可動状態と固定状態との間の状態、すなわち、ロープガイド機構8が自重に反して所定の回動角度に仮保持されつつ、一定以上の外力が作用した場合に回動可能な状態(半固定状態)に設定することも可能である。
【0036】
なお、本発明は、以上に詳述した実施形態に限られるものではない。
【0037】
例えば、前記実施形態では、背負式動力作業機の一例として背負式動力噴霧機を示したが、これに限らず、背負式動力散粉機やブロワー、背負式刈払機、ヘッジトリマ、或いはオリーブシェーカ等であっても構わない。
【0038】
また、前記実施形態では、ネジを利用してロープガイド機構を背負フレームに取り付け、このネジをロープガイド機構の回動中心とする態様を例示したが、ロープガイド機構及び背負フレームに共通の軸を挿通し、この軸をロープガイド機構の回動中心(支点)としてもよい。
【0039】
さらには、ロープガイド機構が、背負フレームに対して高さ方向のみならず、左右巾方向にも回動可能なものであってもよい。この場合、例えばロープガイド機構を背負フレームにいわゆるボールジョイント部を利用して連結すれば、背負フレームに対するロープガイド機構の可動範囲を大きく設定することができる。
【0040】
また、ロープガイド機構が、前記実施形態のアーム部及びロープガイド部に相当する部材を一体に有するものによって構成してもよい。
【0041】
また、ロープガイド機構の可動状態と固定状態との変更を、別途設けたスイッチやボタンを押す操作によって行うことができるように構成しても構わない。このような態様であれば、ロープガイド機構の可動状態と固定状態との変更を簡単且つスムーズに行うことができる。
【0042】
その他、各部の具体的構成についても上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の一実施形態に係る背負式動力噴霧機を側面から見た状態を模式的に示す図。
【図2】同実施形態に係る背負式動力噴霧機の要部拡大斜視図。
【図3】図2の分解図。
【図4】同実施形態においてロープガイド機構の回転動作によりグリップの始動初期位置が高さ方向に変化する状態を模式的に示す図。
【図5】同実施形態においてグリップの引き出し方向に応じてロープガイド機構が回動する状態を模式的に示す図。
【図6】同実施形態においてアーム部の回動範囲を規制する回動範囲規制手段の作用を説明する図。
【符号の説明】
【0044】
1…背負式動力噴霧器
3…エンジン
6…背負フレーム
7…リコイルスタータ
70…リコイルスタータ本体
71…グリップ
72…スタータロープ
8…ロープガイド機構
81…アーム部
814a…挿通孔(第1挿通孔)
82…ロープガイド本体
84…ガイドチューブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
背負フレームと、当該背負フレームに支持されるエンジンと、グリップを引く動作に伴ってスタータロープを牽引することにより前記エンジンを始動させるリコイルスタータと、前記グリップを引く動作に伴って引き出される前記スタータロープの引き出し動作をガイドし、且つ引き出し操作前の前記グリップを始動初期位置に保持可能なロープガイド機構とを備えた背負式動力作業機であって、
前記ロープガイド機構が、前記背負フレームに対して少なくとも高さ方向に回動可能なものであることを特徴とする背負式動力作業機。
【請求項2】
前記ロープガイド機構が、基端部側に設定した支点を中心に回動可能なアーム部と、当該アーム部の先端部に取り付けられ、且つアーム部の回動に伴って少なくとも高さ方向に移動可能なロープガイド本体とを備えたものである請求項1記載の背負式動力作業機。
【請求項3】
前記ロープガイド機構が、リコイルスタータ本体と前記アーム部との間で前記スタータロープを通すガイドチューブを備えたものであり、
前記アーム部が、基端部側に前記ガイドチューブを高さ方向にあそびのある状態で挿通させる挿通孔を備えたものであり、当該アーム部を所定角度回動させた際に前記ガイドチューブが前記挿通孔の上縁部又は下縁部に当たることにより、当該アーム部のそれ以上の回動を規制するように構成している請求項2記載の背負式動力作業機。
【請求項4】
前記ロープガイド機構が、前記背負フレームに対して少なくとも高さ方向に回動自在な可動状態と、前記背負フレームに対して回動不能な固定状態との間で変更可能なものである請求項1、2又は3記載の背負式動力作業機。





【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−189303(P2009−189303A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−33487(P2008−33487)
【出願日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【出願人】(304065879)株式会社 マルナカ (12)
【Fターム(参考)】