説明

胎盤成長因子(PlGF)媒介性の転移および/または血管新生の阻害

本発明は、血管新生、ならびに/または腫瘍の成長、生存、および/もしくは転移を阻害する方法および組成物に関する。具体的な態様において、本方法および組成物は、胎盤成長因子(PlGF)に対するリガンド、例えばBP-1、BP-2、BP-3、またはBP-4に関するものであり得る。いくつかの方法は、一つまたは複数のPlGFリガンドを単独でまたは一つもしくは複数の他の薬剤、例えば化学療法剤、他の抗血管新生剤、免疫療法剤、もしくは放射免疫療法剤と組み合わせて被検体に投与することを含み得る。PlGFリガンドは、血管新生、腫瘍細胞の運動性、腫瘍の転移、腫瘍の成長、および/または腫瘍の生存を阻害するのに有効である。特定の態様において、PlGFリガンドは、他の血管新生関連状態、例えば黄斑変性を寛解させるために被検体に投与され得る。いくつかの態様において、PlGFの発現レベルは任意の公知の方法によって決定され、PlGFを標的とする治療法に応答する可能性が高い患者が選択され得る。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、血管新生、具体的には病的な血管新生ならびに/または腫瘍の成長および転移を阻害するための方法および組成物に関する。具体的な態様において、この組成物および方法は、ペプチド、抗体、抗体フラグメント、ヒト化抗体、キメラ抗体、抗体アナログ、アプタマー、有機化合物、ならびに/またはPlGF媒介性の血管新生および/もしくは転移を阻害するのに使用され得る当技術分野で公知の任意のその他の分子もしくは化合物を含むがこれらに限定されない、胎盤成長因子-2(PlGF)および/またはその受容体Flt-1に標的化された阻害剤に関する。より具体的な態様において、阻害剤は、PlGFに対するファージディスプレイにより単離されたペプチドであり得る。
【背景技術】
【0002】
背景
関連技術の説明
血管新生増殖因子の高発現は、様々な癌の成長および発展に必要とされる(Cao et al., 1998, J Clin Invest 101: 1055-1063(非特許文献1))。このような血管新生増殖因子の中でも、血管内皮増殖因子(VEGF)の高発現は、悪性度の増加および転移との関連に関して最も注目を浴びている(Abdulrauf et al., 1998, J Neurosurg 88: 513-52(非特許文献2); Ahmed et al., 2000, Placenta 21 Suppl A, S16-24(非特許文献3))。しかし、腫瘍の再発または転移成長におけるVEGFおよびVEGFファミリーの他のメンバーの成長因子の役割は、はっきりと分かっていない。放射線照射、サイトカイン、および細胞傷害性薬剤を含む多くの処置は、それらの治療活性の一部を抗血管新生機構に頼っており、そのうちの一つはVEGFのダウンレギュレーションである(Taylor et al., 2002a, Clin Cancer Res 8: 1213-1222(非特許文献4); Jiang et al., 1999, Mol Carcinog 26: 213-225(非特許文献5); Machein et al., 1999, Neuropathol Appl Neurobiol 25: 104-112(非特許文献6))。しかし、VEGFを著しく阻害したとしても、常に持続的な反応または治癒をもたらすわけではない。このことは、VEGF以外の要因が、生きている腫瘍細胞への血液の供給を回復させることができる可能性を示唆している。
【0003】
腫瘍の血管新生ならびに/または成長および転移、ならびに他の疾患に関連する血管新生の効果的な阻害のための方法および組成物に対する必要性が、当技術分野に存在する。
【0004】
【非特許文献1】Cao et al., 1998, J Clin Invest 101: 1055-1063
【非特許文献2】Abdulrauf et al., 1998, J Neurosurg 88: 513-52
【非特許文献3】Ahmed et al., 2000, Placenta 21 Suppl A, S16-24
【非特許文献4】Taylor et al., 2002a, Clin Cancer Res 8: 1213-1222
【非特許文献5】Jiang et al., 1999, Mol Carcinog 26: 213-225
【非特許文献6】Machein et al., 1999, Neuropathol Appl Neurobiol 25: 104-112
【発明の開示】
【0005】
発明の概要
本発明は、血管新生および/または腫瘍の転移を阻害、抑制、ブロック、および/または排除するための方法および組成物を提供することによって、当技術分野で未解決だった要望を満たす。特定の態様において、この組成物および/または方法は、胎盤成長因子-2(PlGF)に対するリガンドならびに/またはFlt-1およびPlGFの両方に結合するリガンドに関するものであり得る。このようなリガンドには、ペプチド、抗体、抗体フラグメント、ヒト化抗体、キメラ抗体、抗体アナログ、アプタマー、有機化合物、および/またはPlGFに対するリガンドである当技術分野で公知の任意の他の分子もしくは化合物が含まれ得るがこれらに限定されない。
【0006】
様々な態様において、PlGFリガンドはペプチドであり得る。特定の標的に結合するペプチドを同定する方法は当技術分野で周知であり、例えば後述するようなファージディスプレイ技術が含まれる。ファージディスプレイにおいて、ファージ、例えば糸状バクテリオファージの表面に発現されたペプチドのライブラリが構築され、関心対象の標的に対する選別によってスクリーニングされ得る。標的に対して1ラウンドまたは複数ラウンドのスクリーニング(パニング(panning))を行った後、標的に結合する表面発現ペプチドを含むファージが単離され、例えばファージ核酸内のペプチドをコードするDNAインサートの配列決定を行うことによってペプチド配列が決定され得る。
【0007】
他の態様は、被検体、例えば癌および/または血管新生に関連する状態(例えば黄斑変性など)を有する被検体を処置する方法および/または組成物に関するものであり得る。被検体には、ヒト、動物、ネコ、イヌ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、アルパカ、および哺乳動物が含まれ得るがこれらに限定されない。この方法および組成物は、被検体に投与される一つまたは複数のPlGFリガンドを含み得る。好ましい態様において、PlGFに対するファージディスプレイによってリガンドとして同定されたペプチドが投与され得る。投与は、当技術分野で公知の任意の経路、例えば経口経路、経鼻経路、口腔経路、吸入経路、直腸経路、経膣経路、または局所経路によりなされ得る。あるいは、投与は、同所注射、皮内注射、皮下注射、筋内注射、腹腔内注射、動脈内注射、髄腔内注射、または静脈内注射によりなされ得る。好ましい態様において、PlGFリガンド(阻害剤)は経口投与される。より好ましい態様において、PlGFリガンドは、以下の実施例に開示される(結合タンパク質)BP-1、BP-2、BP-3、またはBP-4の配列を含み得る。
【0008】
PlGFリガンドの投与は、腫瘍の転移、固形腫瘍における血管新生、腫瘍細胞の生存、および/または腫瘍細胞の運動性を阻害または排除するのに有効であり得る。好ましい態様において、一つまたは複数のPlGFリガンドの投与は、腫瘍が転移するのを妨げ得るかまたは既存の腫瘍の退行もしくは成長阻害をもたらし得る。当業者は、一つまたは複数のPlGFリガンドが単独であるいは癌および/または血管新生に対する他の公知の治療処置、例えば化学療法、放射線療法、免疫療法、抗VEGF剤、および/または他の公知の抗血管新生剤等と組み合わせて投与され得ることを認識しているであろう。いくつかの態様において、PlGFリガンドは、PlGFリガンドに対する結合部位および腫瘍抗原または他の標的に対する第二の結合部位を有する二特異性抗体と共に投与され得る。他の態様において、PlGFリガンドは、抗体、抗体フラグメント、モノクローナル抗体、Fcフラグメント、Fc結合タンパク質、もしくは抗体結合タンパク質に共有結合により付加されるか、またはこれらとの融合タンパク質として提供され得る。
【0009】
代替の態様において、PlGFリガンドは、癌以外の血管新生に関連する状態を処置するのに使用され得る。血管新生に関連する状態の例には、関節リウマチ、炎症性腸疾患、クローン病、潰瘍性大腸炎、サルコイドーシス、喘息、浮腫、肺高血圧、腫瘍の形成および発展、乾癬、糖尿病性網膜症、黄斑変性、角膜移植片拒絶、血管新生緑内障、心筋血管新生、プラークの新生血管形成、再狭窄、血管外傷後の新生内膜形成、毛細血管拡張、血友病性関節症、血管線維腫、慢性炎症に関連する線維症、肺線維症、深部静脈血栓症、および創傷の肉芽形成が含まれるがこれらに限定されない。
【0010】
他の代替の態様において、本明細書中に開示されるPlGFリガンドは、例えば、複合体または治療剤との結合により、ターゲティングペプチドとして使用され得る。PlGFリガンド、例えばBP-1、BP-2、BP-3、および/またはBP-4は、当技術分野で周知の方法、例えば共有結合性架橋試薬の使用によって様々な部分に共有結合または非共有結合により付加され得る。多くのこのような薬剤、例えばカルボジイミド、ビスイミデート、スベリン酸のN-ヒドロキシスクシニミドエステル、ジメチル-3,3'-ジチオ-ビスプロピオンイミデート、アジドグリオキサール、1,5-ジフルオロ-2,4-(ジニトロベンゼン)ならびにタンパク質および/またはペプチドに使用されるその他の架橋剤が、公知であり使用され得る。様々な態様において、PlGFリガンドは、抗体、抗体フラグメント、化学療法剤、抗血管新生剤、アポトーシス促進剤、そのような薬剤または任意のその他の公知の治療用化合物を組み込んだリポソームに付加され得る。
【0011】
さらに他の態様において、PlGFリガンドは、診断目的および/または画像化目的で補助剤として使用され得る。例えば、PlGFリガンドは、任意の公知の造影剤もしくは検出剤でタグ標識され得るか、または任意の公知の方法、例えばELISA等を用いて検出され得る。PlGFリガンドは、例えばPlGFを発現する腫瘍または他の組織を検出するために、組織切片の免疫組織化学によってエクスビボで使用され得る。あるいは、PlGFリガンドは、PlGFを発現する組織のインビボ検出のために被検体に投与され得る。このような組成物および方法は、例えば、PlGF発現腫瘍の存在を検出もしくは診断するため、および/またはPlGFに対して標的化された治療からの利益を享受し得る血管新生もしくは細胞の運動性に関連する状態を有する被検体を同定するために使用され得る。
【0012】
例示的な態様の説明
本願において引用される、特許、特許出願、記事、書籍、および論文を含むがこれらに限定されない全ての書類または書類の一部は、明示的に、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0013】
定義
本明細書中で使用する場合、「一つ(a)」または「一つ(an)」は、一つまたは一つより多い対象物を意味する。
【0014】
本明細書中で使用する場合、「および、ならびに」および「または、もしくは」という用語は、接続的または離接的のいずれかを意味するよう使用され得る。すなわち、両方の用語は、そうでないことが示されない限り、「および/または」と等価であることが理解されるべきである。
【0015】
「リガンド」は、標的に結合できる任意の分子、化合物、または組成物を意味する。例えば、PlGFリガンドは、PlGFに結合できるリガンドである。結合能は、当技術分野で公知の任意の方法、例えば標識リガンドまたは標的を用いる放射アッセイ、アフィニティクロマトグラフィ、免疫沈降、ドットブロット、スロットブロット、ウェスタンブロット、ELISA、マイクロアレイへの結合等によって直接的に決定され得る。あるいは結合は、間接的な方法、例えばファージディスプレイ技術を用いた標的に対するペプチド保有ファージのパニングによって決定され得る。
【0016】
使用される略語は以下の通りである:
BSA、ウシ血清アルブミン;
ELISA、酵素結合免疫吸着測定法;
FGF、線維芽細胞成長因子;
FGFR、線維芽細胞成長因子受容体;
FITC、フルオレセインイソチオシアネート;
flk-l、VEGF受容体II;
Flt-l、fms様チロシンキナーゼ-1、VEGF受容体I;
FLAG、標的タンパク質またはペプチド検出用のエピトープタグシステム;
HEC、ヒト微小血管内皮細胞;
HRP、西洋ワサビペルオキシダーゼ;
IHC、免疫組織化学;
MTT、3-(4,5-ジメチルチアゾリル-2)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロミド系の細胞生存率アッセイ;
PBS、リン酸緩衝生理食塩水;
PlGF、胎盤成長因子;
RT、室温;
RTKs、受容体チロシンキナーゼ;
UT、未処理の対照;
VEGF、血管内皮増殖因子。
【0017】
腫瘍の血管新生および転移における胎盤成長因子(PlGF)
本発明の様々な態様は、成長因子のVEGFファミリーのメンバーである胎盤成長因子(PlGF)に関連する組成物および方法に関する。特定の態様において、PlGFを標的化するまたはPlGFおよびFlt-1を標的化する阻害剤(リガンド)が、腫瘍の血管新生および/または転移を阻害するのに使用される。
【0018】
PlGFは、VEGFの血小板由来増殖因子様領域と53%の同一性を有する(Maglione et al., 1991, Proc Natl Acad Sci USA 88: 9267-9271)。これは、PlGF-1およびPlGF-2という二つの主要なアイソフォームとして産生される。これらは、132または153アミノ酸のモノマーがジスルフィド結合によって頭から尾への様式(head-to-tail fashion)で連結された、総分子量46〜50kDの二量体として分泌される(Maglione et al., 1991)。三つのアイソフォームがmRNAスプライス変種から生じるが、PlGF-1およびPlGF-2のみが十分に特徴付けられている(Ahmed et al., 2000; Cao et al., 1997, Biochem Biophys Acta 235, 493-498)。
【0019】
最初に胎盤からクローニングされた(Maglione et al., 1991)、PlGFは、通常、栄養膜、正常な甲状腺により、および創傷治癒の際に発現される(Viglietto et al., 1995, Oncogene 11: 1569-1579; Failla et al., 2000, J Invest Dermatol 115: 388-395)。栄養膜において、PlGFの発現は、低酸素ストレスによって消滅する(Gleadle et al., Am. J. Physiol. 268: C1362-8, 1995)が、低酸素により誘導される発現が、少なくとも一つの原発性腫瘍において(Yonekura et al., J. Biol. Chem. 274: 35172-8, 1999)、異種移植腫瘍において(Taylor et al., Clin. Cancer Res. 61: 2696-703, 2001)、および線維芽細胞において(Green et al., Cancer Res. 61: 2696-703,2001)見出されている。多くの悪性腫瘍はPlGF受容体であるFlt-1を発現する(Luttun et al., Nat. Med. 8: 831-40,2002)。
【0020】
PlGFは、正常な血清において低レベルで見出されているが、妊娠後期の子癇前症を有さない女性の血清中では9〜10倍に増加する(Helske et al., 2001, Mol Hum Reprod 7: 205-210; Reuvekamp et al., 1999, Br J Obstet Gynaecol 106: 1019-1022; Vuorela-Vepsalainen et al., 1999, Hum Reprod 14: 1346-1351)。PlGFは、正常な脳組織においては発現されないにもかかわらず、神経膠芽腫および髄膜腫において検出された(Gleadle et al., 1995, Am J Physiol 268: C1362-1368; Donnini et al., 1999, J Pathol 189: 66-71)。PlGFはまた、様々なその他の原発性悪性腫瘍においても検出された(Nomura et al., 1998, J. Neurooncol. 40: 123-30; Taylor et al., 2003a, Proc Am Assoc Cancer Res 44: 4-5 [abstr R22]; Matsumoto et al., 2003, Anticancer Res 23: 3767-3773; Chen et al., 2004, Cancer Lett 213: 73-82; Wei et al., 2005, Gut 54, 666-672; Lacal et al., 2000, J Invest Dermatol 115, 1000-1007)。PlGFの発現はまた、新生血管の増殖を伴う糖尿病性網膜症に関連して観察された(Khaliq et al., 1998, Lab Invest. 78: 109-16)。PlGFの欠失実験は、動物モデルにおける腫瘍の成長の阻害および網膜血管新生の減少を示した(Carmeliet et al., 2001, Nat. Med. 7: 575-83)。
【0021】
PlGF-1は、ヘパリン結合ドメインを欠いており、Flt-1(VEGFR1とも称される)にのみ結合するが、PlGF-2は、21アミノ酸のヘパリン結合ドメインをCOOH末端に有しており、ニューロピリン-1およびFlt-1の両方に結合する(Migdala et al., 1998, J Biol Chem 273: 22272-22278; Hauser and Weich, 1993, Growth Factors 9: 259-268)。PlGF-2は、Flt-1に結合すると、内皮細胞の分化、増殖、および移動を誘導することができる(Landgren et al., 1998, Oncogene 16: 359-367)。栄養膜において、PlGFの発現は、低酸素ストレスによって消滅する(Gleadle et al., 1995)が、低酸素により誘導される発現が、少なくとも一つの原発性腫瘍において(Yonekura et al., 1999, J Biol Chem 274: 35172-35178)、異種移植腫瘍において(Taylor et al., 2004, Proc Am Assoc Cancer Res 45: 981 [abstr 4255])、および線維芽細胞において(Green et al., 2001, Cancer Res 61: 2696-2703)見出されている。PlGF-1およびPlGF-2は両方とも、自然に、VEGFとのヘテロ二量体を形成する。ヘテロ二量体の相対的な活性は、VEGFに結合するPlGFの形態に依存し得る。PlGF-1異性体およびVEGFからなるヘテロ二量体は、インビトロまたはインビボでほとんどまたは全く活性を有さない(Eriksson et al., 2002, Cancer Cell 1: 99-108)。他方、PlGF-2/VEGFヘテロ二量体は、VEGFホモ二量体とほぼ同じ程度に強力である(Clauss et al., 1996, J Biol Chem 271: 17629-17634; Cao et al., 1996, J Biol Chem 271: 3154-3162; DiSalvo et al., 1995, J Biol Chem 270: 7717-7723)。
【0022】
PlGFに対する(およびVEGFに対する)受容体であるFlt-1は、受容体のチロシンキナーゼファミリー(RTKs)のメンバーである。これらは、活性化リガンドと結合した際の、それらの細胞質ドメインにおけるチロシン残基の自己リン酸化によって特徴付けられる。Flt-1は、7つの細胞外Ig様ドメインおよび分断された細胞内チロシンキナーゼドメインを有する。Flt-1とPlGFの相互作用は、主に二番目の細胞外ドメインにおいて起こる。Flt-1の四番目のドメインは、二量体化に関連し、かつ潜在的にFlt-1およびそのリガンドをより近い位置に集めるヘパリン結合領域を含む(Park and Lee, 1999, Biochem Biophys Res Commun 264: 730-734)。逆平行のPlGF二量体は、その結合ドメインが二量体の反対側の位置にあり、従って結合した際にFlt-1が二つの受容体を近い位置に寄せ集めて、活性化のためにそれらの連結する可能性があることが確認された(Fuh et al., 1998, J Biol Chem 273: 11197-11204; Wiesmann et al., 1997, Cell 91: 695-704)。
【0023】
ヘパリンとPlGFおよびFlt-1のヘパリン結合ドメインとの相互作用は、PlGFによるFlt-1の完全な活性化に必要とされ得る。ヘパリン結合の役割は、線維芽細胞成長因子(FGF)-線維芽細胞成長因子受容体(FGFR)というリガンド-チロシンキナーゼ受容体の対において十分に特徴付けられている(Schlessinger et al., 2000, Molecular Cell 6: 743-750)。この例において、ヘパリンは、リガンドおよび受容体の両方と多重接触を行い、これにより、活性化に必要な段階である、FGF-FGFRの相互に対する結合および受容体の二量体化が増加する。PlGFの活性の高い方の形態である、PlGF-2にヘパリン結合ドメインが存在することは、ヘパリンがPlGFによるFlt-1の活性化における役割を有し得ることを示唆する。
【0024】
腫瘍の再発に関する本発明者らの調査において、本発明者らは、PlGFの発現が処置前は検出できなかった場合でさえも、放射性標識抗体による細胞傷害性の処置後に腫瘍細胞を生存させることによりPlGF産生を検出した(Taylor et al., 2002a; Taylor et al., 2003; Taylor et al., 2002b, Proc Am Assoc Cancer Res 43: 10-11 [abstr 51])。PlGFが内皮細胞にとって生存因子であることはすでに確認されている(Adini et al., 2002, Cancer Res 62: 2749-2752)が、腫瘍細胞によるその処置誘導性の発現は予想外の発見であった(Taylor et al., 2002a; Taylor et al., 2003b, Int J Cancer 105: 158-169)。さらなる調査は、PlGFの発現と、細胞傷害性の処置からの復帰率の増加とを関連づけた(Taylor et al., 2003b)。いくつかの腫瘍細胞株による処置誘導性の発現および構成的な発現もまた見出された。
【0025】
代謝活性または処置に起因して腫瘍において遍在する状態である低酸素は、ケラチノサイトおよび腫瘍細胞によるPlGFの発現を増加させる(Ahmed et al., 2000; Taylor et al., 2002a; Taylor et al., 2003b)。いくつかの悪性細胞は、それらの表面上に低レベルのFlt-1を発現するが、そのリガンド・受容体を通じたシグナル伝達の直接的な効果は未だ十分に特徴付けられていない。これらの発見は、PlGFが、腫瘍細胞および腫瘍環境に対して効果を発揮し得ることを示唆した。本開示では、ヒト乳癌細胞および異種移植片におけるPlGFおよびFlt-1の直接的効果を試験した。
【0026】
血管新生におけるPlGFおよびVEGFの相対的な役割
PlGFおよびVEGFは両方ともFlt-1受容体に結合し、両方とも腫瘍および正常組織において血管新生を刺激することが報告されている。血管新生に対するVEGFのFlt-1受容体への結合の効果が試験された(El-Mousawi et al., 2003, J. Biol. Chem. 278: 46681-91; 米国特許出願公開番号20040266694)。El-Mousawiら(2003)は、様々な見かけ上のVEGF結合ペプチドを単離するため、組換えFlt-1に対してパニングしたランダム16マーファージディスプレイ系を使用した。最も強い相互作用は、V5.2と称されるペプチドによって観察された。VEGFまたはPlGFで刺激されたHUVECおよびHCEC内皮細胞へのV5.2の添加は、内皮細胞の増殖を阻害することが報告されており、マトリゲル(商標)におけるVEGF媒介性のHCECの移動およびVEGF誘導性の毛細管形成を阻害することも報告された(El-Mousawi et al., 2003)。これらのV5.2の効果は、Flt-1受容体への結合を通じて媒介されることが示唆された(同書)。しかし、V5.2に結合するFlt-1のドメインはこれらの著者によって特徴付けられず、V5.2の効果がFlt-1のヘパリン活性化と拮抗的なものであるかどうかも決定されなかった。様々な態様において、別の抗血管新生剤、例えば抗VEGF剤と組み合わせてPlGFリガンドを投与することが考慮される場合、ペプチドV5.2および類似のVEGF阻害剤が使用され得る。
【0027】
血管新生におけるVEGF-A、VEGF-B、およびPlGFの役割は、2005年9月27日にオンラインで公開された、Blood誌におけるMalikらの「Redundant roles of VEGF-B and PlGF during selective VEGF-A blockade in mice」によって試験された。これらの著者は、VEGF-BまたはPlGFのいずれかを欠くマウスが、わずかな発育障害のみしか示さないことを報告した。VEGF-A、VEGF-B、およびPlGFの阻害と比較して、VEGF-A活性の阻害は、血管新生の減少を含む、新生仔マウスの成長および生存に対する同様の効果を示した。PlGFおよびVEGF-BはVEGF-Aのブロックを補填しないことが結論付けられ、これによりVEGFR-1受容体のVEGF-BおよびPlGF活性化は、VEGFR-2のVEGF-A活性化と比較して、生後の発達および成体における血管の恒常性において比較的マイナーな役割を有することが示された。これらの結果は、VEGFR-1に対する抗体が、異種移植腫瘍の成長および血管新生の阻害について抗VEGFR-2抗体とほぼ同定度に有効であったとする他の報告と矛盾した(Carmeliet et al., 2001, Nat. Med. 7: 575-83; Stefanik et al.,2001, J. Neurooncol. 55: 91-100)。VEGF-BおよびPlGFは、成体における病的な血管新生の際の炎症現象の調節に関与し得ることが示唆された(Malik et al., 2005)。
【0028】
当業者は、本明細書中に開示されるPlGFリガンドが、一つまたは複数のVEGF阻害剤と組み合わせて使用され得ることを認識するであろう。使用される可能性のあるVEGF阻害剤には、ネオバスタット(Neovastat)(登録商標)(Falardeau et al., 2001, Semin. Oncol. 28: 620-25)、IM862(Tupule et al., 2000, J. Clin. Oncol. 18: 716-23)、アンジオザイム(Angiozyme)(商標)(RPI-4610)(Weng and Usman, 2001, Curr. Oncol. Rep. 3: 141-46)、ベバシズマブ(Gordon et al., 2001, J. Clin Oncol. 19: 843-50)、セマキサニブ(Semaxanib)(SU-5416)(Fong et al., 1999, Cancer Res. 59: 99)、およびTNP-470(Figg et al., 1997, Pharmocotherapy 17: 91-97)が含まれる。
【0029】
血管新生の阻害による被検体の治療処置
様々な態様において、PlGF媒介性の血管新生をブロックまたは阻害し得るPlGFリガンドに関する方法および組成物は、病的な血管新生により特徴付けられる状態の処置における用途が見出される。これらの状態の例には、関節リウマチ、炎症性腸疾患、クローン病、潰瘍性大腸炎、サルコイドーシス、喘息、浮腫、肺高血圧、腫瘍の形成および発展、乾癬、糖尿病性網膜症、黄斑変性、角膜移植片拒絶、血管新生緑内障、心筋血管新生、プラークの新生血管形成、再狭窄、血管外傷後の新生内膜形成、毛細血管拡張、血友病性関節症、血管線維腫、慢性炎症に関連する線維症、肺線維症、深部静脈血栓症、創傷の肉芽形成、ならびに腫瘍の血管新生、成長、および生存が含まれるがこれらに限定されない。血管新生または細胞の運動性に関連する疾患状態を有する被検体の全てが疾患組織においてPlGFを発現しているわけではなく、当業者は、特定の態様において、PlGFを標的とする治療的介入から最も利益を享受する被検体を同定するためにエクスビボおよび/またはインビボPlGF発現アッセイが使用され得ることを理解しているであろう。
【0030】
当業者は、抗血管新生療法が本明細書中に開示されるPlGFリガンドの一つまたは複数を利用し得ること、および特定の代替の態様において、当技術分野で公知の他の抗血管新生剤、例えばエンドスタチン(商標)、アンジオスタチン、ラミニンペプチド、フィブロネクチンペプチド(ED-Bフィブロネクチンを含む)、プラスミノゲン活性化因子阻害剤、組織メタロプロテイナーゼ阻害剤、インターフェロン、インターロイキン12、IP-10、Gro-β、トロンボスポンジン、2-メトキシエストラジオール、プロリフェリン関連タンパク質、カルボキシアミドトリアゾール、CM101、マリマスタット、ポリ硫酸ペントサン、アンジオポエチン2、インターフェロン-アルファ、ハービマイシンA、PNU145156E、16Kプロラクチンフラグメント、リノマイド(Linomide)、サリドマイド、ペントキシフィリン、ゲニステイン、TNP-470、パクリタキセル、アクチン(accutin)、アンジオスタチン、シドホビル、ビンクリスチン、ブレオマイシン、AGM-1470、血小板第4因子、またはミノサイクリンの投与を含み得ることを理解しているであろう。
【0031】
当業者はまた、腫瘍を有する被検体を処置するという文脈の下で、本明細書中に開示されるPlGFリガンドが、以下でより詳細に議論されるような任意の公知の癌療法と組み合わせて使用され得ることを理解するであろう。公知の癌療法には、化学療法剤、放射線療法、外科的切除、局所温熱療法、抗腫瘍抗体、およびその他の抗血管新生剤の投与が含まれるがこれらに限定されない。
【0032】
ペプチドの投与
本発明の方法および/または組成物の様々な態様は、一つまたは複数の治療用ペプチドを被検体に投与することに関するものであり得る。投与は、経口、経鼻、口腔、吸入、直腸、経膣、局所、同所、皮内、皮下、筋内、腹腔内、動脈内、髄腔内、または静脈内注射を含むがこれらに限定されない当技術分野で公知の任意の経路によって行われ得る。
【0033】
被検体に経口投与される非修飾型ペプチドは、消化管で分解され得、かつ配列および構造によっては、腸の内層を通じた吸収が乏しい場合がある。しかし、内因性のプロテアーゼによる分解に対する感受性を低下させるかまたは消化管を通じた吸収性を高めるためにペプチドを化学修飾する方法が周知である(例えば、Blondelle et al., 1995, Biophys. J. 69: 604-11; Ecker and Crooke, 1995, Biotechnology 13: 351-69; Goodman and Ro, 1995, BURGER'S MEDICINAL CHEMISTRY AND DRUG DISCOVERY, VOL. I, ed. Wollf, John Wiley & Sons; Goodman and Shao, 1996, Pure & Appl. Chem. 68: 1303-08を参照のこと)。このような方法は、選択された標的、例えばPlGFに結合するペプチドに対して行われ得る。ペプチドアナログ、例えばD-アミノ酸を含有するペプチド;ペプチドの構造を模倣する有機分子からなるペプチド模倣物;またはペプトイド、例えばビニル性ペプトイドのライブラリを調製する方法もまた記載されており、被検体への経口投与に適したPlGF結合ペプチドを構築するのに使用され得る。
【0034】
特定の態様において、既知のPlGFリガンド、例えばBP-1、BP-2、BP-3、またはBP-4の構造を模倣するペプチド模倣物の調製および投与は、本発明の方法および組成物の範囲内で使用され得る。このような化合物においては、標準的なペプチド結合が、一つまたは複数の代替の連結基、例えばCH2-NH、CH2-S、CH2-CH2、CH=CH、CO-CH2、CHOH-CH2等で置換され得る。ペプチド模倣物を調製する方法は周知である(例えば、各々参照により本明細書に組み入れられる、Hruby, 1982, Life Sci 31: 189-99; Holladay et al., 1983, Tetrahedron Lett. 24: 4401-04; Jennings-White et al., 1982, Tetrahedron Lett. 23: 2533; Almquiest et al., 1980, J. Med. Chem. 23: 1392-98; Hudson et al., 1979, Int. J. Pept. Res. 14: 177-185; Spatola et al., 1986, Life Sci 38: 1243-49; 米国特許第5,169,862号; 同第5,539,085号; 同第5,576,423号、同第5,051,448号、同第5,559,103号)。ペプチド模倣物は、それらのペプチドアナログと比較して、インビボで高い安定性および/または吸収性を示し得る。
【0035】
あるいは、治療用ペプチドは、エキソペプチダーゼ作用を防ぐためのN末端および/またはC末端キャッピングを用いて、経口送達により投与され得る。例えば、C末端はアミドペプチドを用いてキャップされ、N末端はペプチドのアセチル化によってキャップされ得る。ペプチドはまた、エキソペプチダーゼをブロックするために、例えば環状アミド、ジスルフィド、エーテル、スルフィド等を形成することによって環化され得る。
【0036】
ペプチドの安定化はまた、天然のL-アミノ酸をD-アミノ酸で置換することによって、具体的にはエンドペプチダーゼが作用することが公知の位置で置換することによってもたらされ得る。エンドペプチダーゼの結合・切断配列は当技術分野で公知であり、D-アミノ酸を組み込んだペプチドを作製および使用する方法は記載されている(例えば、参照により本明細書に組み入れられる、2/305に出願されたMcBrideらの米国特許出願公開第 20050025709号)。別の代替法は、BP-1、BP-2、BP-3、またはBP-4の配列をシステイン残基に隣接させて含み、かつ全てがD-アミノ酸で構成される環状ペプチドを使用する。このようなD-アミノ酸環状アナログは、L型と同じ折り畳まれた立体配座を有し得、これは当技術分野で公知の技術を用いるコンピューターモデリング研究によって評価され得る。好ましい態様において、修飾型ペプチドは、ナノモルまたはそれより低い範囲でPlGF結合性を示す。修飾型ペプチドは、標準的なアッセイ、例えばELISAによって、PlGF結合性についてアッセイされ得る。当業者は、ペプチド修飾の工程を進める上で、ペプチド修飾の後に標的結合活性についての試験を行うべきことを認識しているであろう。特定の態様において、ペプチドおよび/またはタンパク質は、プロテイナーゼおよび/またはペプチダーゼ阻害剤と共に処方することによって経口投与され得る。
【0037】
治療用ペプチドを経口送達する他の方法は、Mehta (「Oral delivery and recombinant production of peptide hormones」 June 2004, BioPharm International)に開示されている。ペプチドは、腸溶性の固形剤形で、腸のタンパク質分解作用を調整し腸壁を通じたペプチドの輸送を増進する賦形剤と共に投与される。この技術を用いたインタクトなペプチドの相対的なバイオアベイラビリティは、投与された用量の1%〜10%の範囲であった。本明細書中に開示されるPlGF結合ペプチドよりもずっと大きなタンパク質であるインスリンを、コール酸ナトリウムおよびプロテアーゼ阻害剤を含む腸溶性マイクロカプセルを用いてイヌに投与することに成功している(Ziv et al., 1994, J. Bone Miner. Res. 18 (Suppl. 2): 792-94)。ペプチドの経口投与は、浸透促進剤(permeation enhancer)としてアシルカルニチンおよび腸溶コーティングを用いて行われた(Eudragit L30D-55、Rohm Pharma Polymers、Mehta, 2004を参照のこと)。経口投与用ペプチドに使用される賦形剤は、一般的に、界面活性剤またはペプチドの溶解性もしくは吸収性を改善する他の薬剤と共に一つまたは複数の腸プロテアーゼ/ペプチダーゼ阻害剤を含み得、これらは腸溶性カプセルまたは腸溶錠に充填され得る(Mehta, 2004)。腸溶コーティングは酸に対して耐性があるため、吸収のためのペプチドの胃を通じた腸への移動を可能にする。カプセルが腸内で溶解した際に腸を酸性化し腸のプロテアーゼ活性を阻害するために、カプセル内に有機酸が含まれ得る(Mehta, 2004)。ペプチドの経口送達の別の代替法には、吸収性および酵素的分解に対する耐性を向上させる、ポリエチレングリコール(PEG)ベースの両親媒性オリゴマーとの結合が含まれる(Soltero and Ekwuribe, 2001, Pharm. Technol. 6: 110)。
【0038】
さらに他の態様において、ペプチド、例えばPlGF結合ペプチドは、特定のタンパク質、例えばIgG1のFc領域との結合によって、経口または吸入投与用に修飾され得る(実施例3〜7を参照のこと)。ペプチド-Fc複合体を調製および使用する方法は、例えば各々参照により本明細書に組み入れられるLowら(2005, Hum. Reprod. 20: 1805-13)およびDumontら(2005, J Aerosol. Med. 18: 294-303)に開示されている。Lowら(2005)は、CHO細胞中での組換え発現を用いて、単鎖形態またはヘテロ二量体形態で、FSHのアルファサブユニットおよびベータサブユニットをIgG1のFc領域に結合することを開示する。Fc結合型ペプチドは、新生児Fc受容体を介する輸送系により肺または腸の上皮細胞を通じて吸収された。Fc結合型ペプチドは、そのネイティブペプチドと比較してインビボで改善された安定性および吸収性を示した。ヘテロ二量体複合体は、単鎖形態よりも活性が高いことも観察された。より大きなタンパク質、例えばエリスロポエチンもまた、Fcへの結合を用いることで、吸入により効果的に送達され得る(Dumont et al., 2005)。
【0039】
代替の態様において、治療用ペプチドは、吸入経路によって投与され得る(例えばSievers et al., 2001, Pure Appl. Chem. 73: 1299-1303)。タンパク質およびペプチドを含む様々な薬学的因子からナノスケールまたはマイクロスケールの粒子を生成するのに、超臨界二酸化炭素エアゾール化が使用される(同書)。超臨界二酸化炭素をタンパク質またはペプチドの水溶液と混合することによって形成されるマイクロバブルは、代替の薬学的粉末製法よりも低温(25〜65℃)で乾燥されるため、治療用ペプチドの構造および活性が維持され得る(同書)。いくつかの場合において、安定化化合物、例えばトレハロース、スクロース、他の糖類、緩衝剤、または界面活性剤が、機能的活性をさらに保護するためにこの溶液に添加され得る。生成される粒子は、吸入により投与するのに十分小さく、腸プロテアーゼ/ペプチダーゼおよび胃腸内層を通じた吸収に伴う問題のいくつかを回避する。
【0040】
被検体に投与される治療用ペプチドの用量は、薬物動態の特徴、投与様式および経路、被検体の年齢、体重、および健康、症状の性質および程度、併用する治療、ならびに処置の頻度に依存して変化し得る。ペプチドの用量は、体重50kgあたり約1〜3000mg、好ましくは10〜1000mg/50kg、より好ましくは25〜800mg/50kgの範囲であり得る。8〜800mg/50kgの用量は、一日あたり1〜6回の投与に分けてまたは徐放形式で投与され得る。ある研究では、一回量500μgのペプチドをヒト被検体に投与すると、90〜180分以内に、約150〜600pg/mlの範囲のピーク血漿濃度がもたらされた(Mehta, 2004)。
【0041】
ファージディスプレイ
本発明の組成物および/または方法の特定の態様は、様々なタンパク質標的、例えばPlGFへの結合ペプチドおよび/またはペプチド模倣物に関する。PlGF結合ペプチド(BP)は、ファージディスプレイ技術を含むがこれらに限定されない当技術分野で公知の任意の方法によって同定され得る。様々なファージディスプレイ法および多様なペプチド集団を作製する技術が当技術分野で周知である。例えば、各々参照により本明細書に組み入れられる、米国特許第5,223,409号;同第5,622,699号、および同第6,068,829号は、ファージライブラリを調製する方法を開示する。ファージディスプレイ技術は、小さいペプチドが表面上に発現され得るようバクテリオファージを遺伝子操作することを必要とする(Smith and Scott, 1985, Science 228: 1315-1317; Smith and Scott, 1993, Meth. Enzymol. 21: 228-257)。
【0042】
この十年の間に、ファージディスプレイ型ペプチドライブラリの構築およびペプチドリガンドを単離するためにライブラリを使用するスクリーニング方法の開発において大きな前進が見られた。例えば、ペプチドライブラリの使用は、多くのタンパク質、例えば炎症反応に関与する抗体または細胞接着を媒介するインテグリン内の相互作用部位および受容体・リガンド結合モチーフの特徴付けを可能にした。この方法はまた、ペプチド模倣薬または画像化剤の開発につながり得る新規のペプチドリガンドを同定するのに使用されている(Arap et al., 1998a, Science 279: 377-380)。ペプチドに加えて、大きなタンパク質ドメイン、例えば単鎖抗体もまた、ファージ粒子の表面に提示され得る(Arap et al., 1998a)。
【0043】
所定の器官、組織、細胞型、または標的分子に選択的なターゲティングアミノ酸配列は、パニング(panning)によって単離され得る(Pasqualini and Ruoslahti, 1996, Nature 380: 364-366; Pasqualini, 1999, The Quart. J. Nucl. Med. 43: 159-162)。簡単に説明すると、推定ターゲティングペプチドを含むファージのライブラリが、インタクトな生物または単離された器官、組織、細胞型、もしくは標的分子に投与され、結合したファージを含むサンプルが回収される。標的に結合するファージは、標的器官、組織、細胞型、または標的分子から溶出され、次いでそれらを宿主細菌内で培養することによって増殖され得る。
【0044】
特定の態様において、ファージは、パニングのラウンドの間に宿主細菌において増殖され得る。細菌は、ファージにより溶菌されず、その代わりに特定のインサートを提示する複数コピーのファージを分泌し得る。必要に応じて、増幅されたファージは、標的器官、組織、細胞型、または標的分子に再度暴露され、パニングの追加のラウンドのために回収され得る。選択的または特異的な結合因子の集団が得られるまで、複数ラウンドのパニングが行われ得る。ペプチドのアミノ酸配列は、ファージゲノム内のターゲティングペプチドインサートに対応するDNAを配列決定することによって決定され得る。次いで、同定されたターゲティングペプチドは、標準的なタンパク質化学技術によって合成ペプチドとして製造され得る(Arap et al., 1998a, Smith et al., 1985)。
【0045】
いくつかの態様において、バックグラウンドのファージ結合をさらに減らすために、サブストラクションプロトコルが使用され得る。サブストラクションの目的は、関心対象の標的以外の標的に結合するファージをライブラリから除去することである。代替の態様において、ファージライブラリは、対照細胞、組織、または器官に対してプレスクリーニングされ得る。例えば、腫瘍結合ペプチドは、対照の正常細胞株に対してライブラリをプレスクリーニングした後に同定され得る。サブストラクションの後、ライブラリは、関心対象の分子、細胞、組織、または器官に対してスクリーニングされ得る。例えば、参照により本明細書に組み入れられる米国特許第5,840,841号、同第5,705,610号、同第5,670,312号、および同第5,492,807号に開示されるような、サブストラクションプロトコルの他の方法が公知であり、本発明の方法の実施の際に使用され得る。
【0046】
タンパク質およびペプチド
様々なポリペプチドまたはタンパク質が、本発明の方法および組成物の範囲で使用され得る。特定の態様において、タンパク質は、抗体または抗原結合部位を含む抗体フラグメントを含み得る。他の態様において、標的、例えばPlGFに対する短いペプチドリガンドが、様々な目的、例えば細胞、組織、もしくは器官におけるPlGF受容体の存在の検出、PlGFのその受容体への結合の阻害もしくはブロック、PlGFのその受容体への結合の促進もしくは活性化、またはPlGF分子もしくはその受容体の一部の模倣のために使用され得る。
【0047】
本明細書中で使用する場合、タンパク質、ポリペプチド、またはペプチドは、概ね、約200アミノ酸よりも大きく、遺伝子から翻訳される全長配列以下のタンパク質;約100アミノ酸よりも大きいポリペプチド;および/または約3〜約100アミノ酸のペプチドを意味するがこれらに限定されない。便宜上、「タンパク質」、「ポリペプチド」、および「ペプチド」という用語は、本明細書中で互換的に使用される。従って、「タンパク質またはペプチド」という用語は、天然タンパク質に見られる20個の共通アミノ酸のうちの少なくとも一つまたは少なくとも一つの修飾型もしくは異常アミノ酸を含むアミノ酸配列を包含する。
【0048】
本明細書中で使用する場合、「アミノ酸残基」は、任意の天然アミノ酸、任意のアミノ酸誘導体、または当技術分野で公知の任意のアミノ酸模倣物を意味する。特定の態様において、タンパク質またはペプチドの残基は連続的なものであり、非アミノ酸がアミノ酸残基の配列に割り込んでいたりしない。他の態様において、配列は一つまたは複数の非アミノ酸部分を含み得る。特定の態様において、タンパク質またはペプチドの残基の配列には、一つまたは複数の非アミノ酸部分が割り込んでいる場合がある。
【0049】
従って、「タンパク質またはペプチド」という用語は、天然タンパク質に見られる20個の共通アミノ酸のうちの少なくとも一つ、または以下の表4に示されるアミノ酸を含むがこれらに限定されない少なくとも一つの修飾型もしくは異常アミノ酸を含むアミノ酸配列を包含する。
【0050】
(表4)修飾型アミノ酸および異常アミノ酸

【0051】
タンパク質またはペプチドは、標準的な分子生物学的技術を通じたタンパク質、ポリペプチド、もしくはペプチドの発現、天然源からのタンパク質もしくはペプチドの単離、またはタンパク質もしくはペプチドの化学合成を含む、当業者に公知の任意の技術によって作製され得る。様々な遺伝子、例えばPlGFに対応するヌクレオチド、ならびにタンパク質、ポリペプチド、およびペプチドの配列はすでに開示されており、かつ当業者に公知のコンピューターデータベースにおいて見出され得る。一つのこのようなデータベースは、国立バイオテクノロジー情報センターのGenbankおよびGenPeptデータベース(www.ncbi.nlm.nih.gov/)である。公知遺伝子のコード領域は、本明細書中に開示される技術または当業者に公知の技術を用いて増幅および/または発現され得る。あるいは、様々な市販のタンパク質、ポリペプチド、およびペプチド調製物が当業者に公知である。
【0052】
ペプチド模倣物
ポリペプチドの調製の別の態様は、ペプチド模倣物の使用である。模倣物は、タンパク質の二次構造の要素を模倣するペプチド含有分子である。例えば、参照により本明細書に組み入れられる、BIOTECHNOLOGY AND PHARMACY, Pezzuto et al., Eds., Chapman and Hall, New York (1993)のJohnson et al., 「Peptide Turn Mimetics」を参照のこと。ペプチド模倣物の使用の背景にある論理的根拠は、タンパク質のペプチド骨格は、主として、分子間の相互作用、例えば抗体と抗原の相互作用を容易にするようアミノ酸側鎖を配置させるために存在するということである。ペプチド模倣物は、天然分子と類似の分子間相互作用を許容することが期待される。これらの原理は、本明細書中に開示される結合ペプチドの天然の特性の多くを有するが、変更または改善された特徴、例えば胃もしくは腸を通じた高い吸収性および/またはインビボでの改善された安定性もしくは活性を有する、第二世代の分子を作製するのに使用され得る。
【0053】
融合タンパク質
様々な態様は、融合タンパク質に関するものであり得る。これらの分子においては、一般的に、あるペプチドの全てまたは実質的な部分が、そのN末端またはC末端において、第二のポリペプチドまたはタンパク質の全てまたは一部に連結されている。例えば、融合物は、異種宿主におけるタンパク質の組換え発現を許容する他の種由来のリーダー配列を有し得る。別の有用な融合には、免疫学的に活性なドメイン、例えば抗体エピトープの追加が含まれる。さらに別の有用な融合形態には、精製に使用する部分、例えばFLAGエピトープの付加が含まれ得る(Prickett et al., 1989, Biotechniques 7: 580-589; Castrucci et al., 1992, J Virol 66: 4647-4653)。融合タンパク質を作製する方法は当業者に周知である。このようなタンパク質は、例えば、二官能性架橋試薬を用いる化学的付加によって、完全な融合タンパク質のデノボ合成によって、または第一のタンパク質もしくはペプチドをコードするDNA配列を第二のペプチドもしくはタンパク質をコードするDNA配列に付加し、その後にインタクトな融合タンパク質を発現させることによって生成され得る。
【0054】
タンパク質の精製
いくつかの態様において、タンパク質またはペプチドは単離または精製され得る。タンパク質精製技術は当業者に周知である。これらの技術は、あるレベルでの、細胞、組織、または器官のホモジナイゼーションおよびポリペプチドおよび非ポリペプチド画分への粗分画を含む。関心対象のタンパク質またはポリペプチドは、クロマトグラフィおよび電気泳動技術を用いてさらに精製され、部分的または完全な精製(または均一な程度に至る精製)を達成され得る。純粋なペプチドの調製に特に適する分析方法は、イオン交換クロマトグラフィ、ゲル排除クロマトグラフィ、ポリアクリルアミドゲル電気泳動、アフィニティクロマトグラフィ、免疫アフィニティクロマトグラフィ、および等電点電気泳動である。ペプチドを精製するのに特に有効な方法は、中高圧液体クロマトグラフィ(FPLC)であり、HPLCでもよい。
【0055】
タンパク質精製に使用するのに適した様々な技術が当業者に周知である。これらには、例えば、硫酸アンモニウム、PEG、抗体等による、または熱変性による沈降、その後の遠心分離;クロマトグラフィ工程、例えばイオン交換、ゲル濾過、逆相、ヒドロキシアパタイト、およびアフィニティクロマトグラフィ;等電点電気泳動;ゲル電気泳動;ならびにこれらおよびその他の技術の組み合わせが含まれる。一般的に当技術分野で公知のことであるが、様々な精製工程を行う順序は変更され得る、または特定の工程を省略してもなお、実質的に精製されたタンパク質またはペプチドの調製に適した方法となり得ると考えられている。
【0056】
タンパク質またはペプチドは常にそれらの最も精製された状態で提供されなければならないという一般的要求はない。実際、実質的な精製に至らない生成物が特定の態様において有用性を有すると考えられる。部分精製は、数種の精製工程を組み合わせて使用することによって、または同じ一般的精製スキームの異なる形式を利用することによって達成され得る。例えば、HPLC機器を用いて実施される陽イオン交換カラムクロマトグラフィは、一般的に、低圧クロマトグラフィシステムを用いる同じ技術よりも高い精製「倍率」をもたらし得ることが理解されている。低い程度の相対的精製をもたらす方法は、タンパク質産物の総回収率または発現されたタンパク質の活性の維持における利点を有し得る。
【0057】
アフィニティクロマトグラフィは、単離したい物質とそれに特異的に結合できる分子との間の特異的な親和性に基づくクロマトグラフィ手順である。これは、受容体・リガンド型の相互作用である。カラム原材料は、結合パートナーの一方を不溶性のマトリクス、例えば磁気ビーズ(Dynal)またはセファロースもしくはセファデックスビーズ(Pharmacia)に共有結合させることによって合成される。このカラム原材料はその後、溶液中からその物質を特異的に吸着することができる。溶出は、結合が生じない条件に変化させる(例えばpH、イオン強度、温度等を変化させる)ことによって行われる。マトリクスは、それ自体が相当程度で分子に吸着せず、かつ広範囲の化学的、物理的、および熱的安定性を有する物質であるべきである。リガンドは、その結合特性に影響を与えない方法で結合させるべきである。リガンドはまた、比較的緊密な結合を提供すべきである。さらに、サンプルまたはリガンドを破壊することなくその物質を溶出することが可能であるべきである。
【0058】
合成ペプチド
タンパク質またはペプチドは、従来的技術に従い、全体または一部が、溶液中でまたは固体支持体上で合成され得る。様々な全自動合成機が市販されており、公知のプロトコルに従い使用され得る。例えば、StewartおよびYoung(1984, Solid Phase Peptide Synthesis, 2d. ed., Pierce Chemical Co.);Tamら(1983, J. Am. Chem. Soc., 105: 6442);Merrifield(1986, Science, 232: 341-347); ならびにBaranyおよびMerrifield(1979, The Peptides, Gross and Meienhofer, eds., Academic Press, New York, pp. 1-284)を参照のこと。通常約6から約35〜50アミノ酸までの短いペプチド配列は、このような方法によって容易に合成され得る。あるいは、関心対象のペプチドをコードするヌクレオチド配列を発現ベクターに挿入し、適当な宿主細胞を形質転換またはトランスフェクトし、発現に適した条件下で培養する、組換えDNA技術が使用され得る。
【0059】
抗体
様々な態様は、標的に対する抗体リガンド、例えば抗PlGF抗体に関するものであり得る。「抗体」という用語は、本明細書中で、抗原結合領域を有する任意の抗体様分子をさす目的で使用され、これにはFab'、Fab、F(ab')2、単一ドメイン抗体(DAB)、Fv、scFv(単鎖Fv)等の抗体フラグメントが含まれる。様々な抗体ベースの構築物およびフラグメントを調製および使用する技術が当技術分野で周知である。抗体を調製および特徴付ける方法も当技術分野で周知である(例えば、Harlowe and Lane, 1988, Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratoryを参照のこと)。使用する抗体はまた、幅広い公知の供給源から商業的に入手され得る。例えば、様々な抗体分泌性のハイブリドーマ株が、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC, Manassas, VA)から入手できる。
【0060】
ポリクローナル抗体
ポリクローナル抗体は、動物を免疫原で免疫し、免疫した動物から抗血清を回収することによって調製され得る。抗血清の作製には幅広い動物種が使用され得る。典型的には、抗血清の作製に使用される動物は、非ヒト動物、例えばウサギ、マウス、ラット、ハムスター、ブタ、またはウマである。ウサギは比較的血液量が多いので、ポリクローナル抗体の作製についてはウサギが好ましい選択肢である。
【0061】
ポリクローナルおよびモノクローナルの両方の抗体は、従来的な免疫技術を用いて調製され得る。抗原性エピトープを含む組成物が、一匹または複数の実験動物、例えばウサギまたはマウスを免疫するのに使用され得、免疫された動物はその後、特異的な抗体を産生するに至る。ポリクローナル抗血清は、抗体生成の時間を与えた後、単に、動物から採血し、全血から血清サンプルを調製することによって獲得され得る。
【0062】
所定の組成物は、その免疫原性が様々であり得る。従ってしばしば宿主の免疫系をブーストすることが必要とされ、これは免疫原をキャリアに結合することによって達成され得る。典型的かつ好ましいキャリアは、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)およびウシ血清アルブミン(BSA)である。他のアルブミン、例えばオボアルブミン、マウス血清アルブミン、またはウサギ血清アルブミンもまた、キャリアとして使用され得る。抗原をキャリアタンパク質に結合する手段は周知であり、これには架橋剤、例えばグルタルアルデヒド、m-マレイミドベンゾイル-N-ヒドロキシスクシニミドエステル、カルボジイミド、およびビス-ジアゾ化ベンジジン(bis-biazotized benzidine)が含まれる。
【0063】
個々の免疫原組成物の免疫原性は、アジュバントとして公知の、非特異的な免疫反応賦活剤の使用によって増強され得る。典型的かつ好ましいアジュバントには、完全フロイントアジュバント(死滅した結核菌を含む非特異的な免疫反応賦活剤)、不完全フロイントアジュバント、および水酸化アルミニウムアジュバントが含まれる。
【0064】
ポリクローナル抗体の産生に使用される免疫原組成物の量は、免疫原の性質および免疫に使用される動物によって異なる。免疫原を投与するのに様々な経路(皮下、筋内、皮内、静脈内、および腹腔内)が使用され得る。ポリクローナル抗体の産生は、免疫後の様々な時点で免疫動物から血液を採取することによって確認され得る。第二のブースター注射も行われ得る。ブースト・滴定プロセスは、適当な力価が達成されるまで繰り返される。所望のレベルの免疫原性が得られれば、免疫動物から採血し、血清を単離および保存し、および/またはその動物を用いてモノクローナル抗体が作製され得る。
【0065】
モノクローナル抗体
モノクローナル抗体は、周知技術、例えば米国特許第4,196,265号において例証される技術の使用を通じて容易に調製され得る。典型的には、この技術は、選択された免疫原組成物で適当な動物を免疫することを含む。免疫用組成物は、抗体産生細胞を刺激するのに有効な様式で投与される。げっ歯類、例えばマウスおよびラット由来の細胞が好ましい。マウスがより好ましく、最も日常的に使用されており一般的に安定な融合物を高い割合で生成することからBALB/cマウスが最も好ましい。
【0066】
免疫後、抗体産生能を有する体細胞、具体的にはBリンパ球(B細胞)が、mAb作製プロトコルにおいて使用するために選択される。これらの細胞は、切除した脾臓、扁桃腺、またはリンパ節から、または末梢血サンプルから獲得され得る。脾細胞および末梢血細胞が好ましいが、それは前者については分裂性の形質芽球段階にある抗体産生細胞の豊富な供給源だからであり、後者については末梢血が容易に取得できるからである。多くの場合、動物のパネルが免疫され、最も高い抗体価を有する動物の脾臓が取り出され、脾臓をシリンジ内でホモジナイズすることによって脾臓のリンパ球が獲得される。典型的には、免疫マウス由来の脾臓は、およそ5×107〜2×108個のリンパ球を含む。
【0067】
次いで、免疫動物由来の抗体産生性のBリンパ球は、不死化骨髄腫細胞の細胞と、一般的には免疫した動物と同じ種の細胞と融合される。ハイブリドーマを生成する融合手順において使用するのに適した骨髄腫細胞株は、好ましくは非抗体産生性であり、高い融合率を有し、かつ所望の融合細胞(ハイブリドーマ)のみの成長を支持する特定の選択培地においてそれの培養ができなくなる酵素欠損性のものである。
【0068】
当業者に公知の多くの骨髄腫細胞のいずれか一つが使用され得る。例えば、免疫動物がマウスの場合、P3-X63/Ag8、P3-X63-Ag8.653、NS1/1.Ag 4 1、Sp210-Ag14、FO、NSO/U、MPC-11、MPC11-X45-GTG 1.7、およびS194/5XX0 Bulが使用され得;ラットの場合、R210.RCY3、Y3-Ag 1.2.3、IR983F、および4B210が使用され得;U-266、GM1500-GRG2、LICR-LON-HMy2およびUC729-6は全て、細胞融合に関して有用である。
【0069】
抗体産生性の脾細胞またはリンパ節細胞と骨髄腫細胞のハイブリッドを作製する方法は、通常、細胞膜の融合を促進する薬剤または薬剤群(化学的または電気的)の存在下で体細胞と骨髄腫細胞を2:1の比で混合することを含むが、この比は、約20:1から約1:1まで変更され得る。センダイウイルスを用いる融合法およびポリエチレングリコール(PEG)、例えば37%(v/v)PEGを用いる融合法が記載されている。電気的に融合を誘導する方法の使用もまた適当である。
【0070】
融合手順は通常、生存可能なハイブリッドを低頻度で、およそ1×10-6〜1×10-8で生成する。しかし、生存可能な融合ハイブリッドは、選択培地で培養することによって、親の非融合細胞(具体的には通常無限に分裂を続ける非融合骨髄腫細胞)から分離されるため、これが問題となることはない。選択培地は一般的に、組織培養培地におけるヌクレオチドのデノボ合成をブロックする薬剤を含む培地である。典型的かつ好ましい薬剤は、アミノプテリン、メトトレキサート、およびアザセリンである。アミノプテリンおよびメトトレキサートは、プリンおよびピリミジンの両方のデノボ合成をブロックし、アザセリンはプリン合成のみをブロックする。アミノプテリンまたはメトトレキサートが使用される場合、培地にはヌクレオチド源としてヒポキサンチンおよびチミジンが補充される(HAT培地)。アザセリンが使用される場合、培地にはヒポキサンチンが補充される。
【0071】
好ましい選択培地はHATである。ヌクレオチドサルヴェージ経路を稼働できる細胞のみがHAT培地において生き残ることができる。骨髄腫細胞は、このサルヴェージ経路の鍵となる酵素、例えばヒポキサンチンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HPRT)を欠いており、これらは生き残ることができない。B細胞はこの経路を稼働できるが、それらは培養下では限られた寿命しか有さず、一般的に約二週間以内に死滅する。従って、選択培地において生き残れる唯一の細胞は、骨髄腫細胞およびB細胞から形成されたハイブリッドなのである。
【0072】
この培養によりハイブリドーマの集団が得られ、この集団から特定のハイブリドーマが選択される。典型的には、ハイブリドーマの選択は、マイクロタイタープレート上での単一クローン希釈によってこれらの細胞を培養し、その後に(約2〜3週間後に)個々の単クローン性の上清を所望の活性について試験することによって実施される。アッセイは、高感度で簡単で迅速なもの、例えば放射免疫アッセイ、酵素免疫アッセイ、細胞傷害性アッセイ、プラークアッセイ、ドット免疫結合アッセイ等であるべきである。
【0073】
次いで、選択されたハイブリドーマを連続希釈して、個々の抗体産生細胞株までクローニングし、次いでこのクローンをmAbを提供するために無限に増殖させる。この細胞株は、二つの基本的な方法でmAb産生に利用され得る。ハイブリドーマのサンプルは、最初の融合のために、体細胞および骨髄腫細胞を提供するのに使用されたタイプの組織適合性動物に注射(多くの場合腹腔に注射)され得る。注射された動物は、融合細胞ハイブリッドにより産生された特定のモノクローナル抗体を分泌する腫瘍を生じる。次いで、mAbを高濃度で得るために、動物の体液、例えば血清または腹水が抜き取られ得る。個々の細胞株はまた、インビトロで培養され得る。この場合、mAbは培養培地に自然に分泌され、それらはその培地から高濃度で容易に獲得され得る。いずれかの手段によって生成されたmAbは、必要な場合、濾過、遠心分離、および様々なクロマトグラフィ法、例えばHPLCもしくはアフィニティクロマトグラフィを用いてさらに精製され得る。
【0074】
抗体フラグメントの作製
本発明の方法および/または組成物のいくつかの態様は、抗体フラグメントに関するものであり得る。このような抗体フラグメントは、従来的方法による全長抗体のペプシンまたはパパイン消化によって獲得され得る。例えば、抗体フラグメントは、ペプシンによる抗体の酵素切断によりF(ab')2と呼ばれる5Sフラグメントを提供することによって作製され得る。このフラグメントはさらに、3.5S Fab'一価フラグメントを提供するため、チオール還元剤および必要に応じてジスルフィド結合の切断により生じるスルフヒドリル基のためのブロッキング基を用いて切断され得る。あるいは、ペプシンを用いる酵素切断は、二つの一価のFabフラグメントおよびFcフラグメントを生成する。抗体フラグメントを作製する典型的な方法は、米国特許第4,036,945号;米国特許第4,331,647号;Nisonoff et al., 1960, Arch. Biochem. Biophys. 89:230; Porter, 1959, Biochem. J. 73:119; Edelman et al., 1967, METHODS IN ENZYMOLOGY, page 422 (Academic Press)、ならびにColigan et al. (eds.), 1991, CURRENT PROTOCOLS IN IMMUNOLOGY, (John Wiley & Sons)に開示される。
【0075】
抗体を切断する他の方法、例えば一価の軽鎖-重鎖フラグメントを形成するための重鎖の分離、フラグメントのさらなる切断、または他の酵素的、化学的、もしくは遺伝子的技術もまた、そのフラグメントがインタクトな抗体によって認識される抗原に結合する限り使用され得る。例えば、Fvフラグメントは、VH鎖およびVL鎖の会合物を含む。この会合は、Inbar et al., 1972, Proc. Nat'l. Acad. Sci. USA, 69: 2659に記載されるように、非共有結合性であり得る。あるいは、可変鎖は、分子間ジスルフィド結合によって連結されるかまたは化合物、例えばグルタルアルデヒド等の化学品によって架橋され得る。Sandhu, 1992, Crit. Rev. Biotech., 12:437を参照のこと。
【0076】
好ましくは、Fvフラグメントは、ペプチドリンカーによって接続されたVH鎖およびVL鎖を含む。これらの単鎖抗原結合タンパク質(scFv)は、オリゴヌクレオチドリンカー配列によって接続されたVHドメインおよびVLドメインをコードするDNA配列を含む構造遺伝子を構築することによって調製される。この構造遺伝子は発現ベクターに挿入され、その後に発現ベクターが宿主細胞、例えば大腸菌に導入される。この組換え宿主細胞は、二つのVドメインを架橋するリンカーペプチドを含む単一のポリペプチドを合成する。sFvの作製方法は当技術分野で公知である。Whitlow et al., 1991, Methods: A Companion to Methods in Enzymology 2: 97; Bird et al., 1988, Science, 242: 423; 米国特許第4,946,778号; Pack et al., 1993, Bio/Technology, 11:1271, およびSandhu, 1992, Crit. Rev. Biotech., 12:437を参照のこと。
【0077】
抗体フラグメントの別の形態は、単一の相補性決定領域(CDR)をコードするペプチドである。CDRペプチド(「最小認識単位」)は、関心対象の抗体のCDRをコードする遺伝子を構築することによって獲得され得る。このような遺伝子は、例えば、抗体産生細胞のRNAからポリメラーゼ連鎖反応を用いて可変領域を合成することによって調製される。Larrick et al., 1991, Methods: A Companion to Methods in Enzymology 2: 106; Ritter et al. (eds.), 1995, MONOCLONAL ANTIBODIES: PRODUCTION, ENGINEERING AND CLINICAL APPLICATION, pages 166-179 (Cambridge University Press); Birch et al., (eds.), 1995, MONOCLONAL ANTIBODIES: PRINCIPLES AND APPLICATIONS, pages 137-185 (Wiley-Liss, Inc.)を参照のこと。
【0078】
キメラ抗体およびヒト化抗体
キメラ抗体は、ヒト抗体の可変領域が、例えば抗PlGFマウス抗体の可変領域(マウス抗体の相補性決定領域(CDR)を含む)で置換された組換えタンパク質である。キメラ抗体は、被検体に投与された場合に低い免疫原性および高い安定性を示す。キメラ抗体を構築する方法は当技術分野で周知である(例えばLeung et al., 1994, Hybridoma 13:469)。
【0079】
キメラモノクローナル抗体は、マウス免疫グロブリンの重鎖および軽鎖の可変鎖由来のマウスCDRをヒト抗体の対応する可変ドメインに移すことによってヒト化され得る。キメラモノクローナル抗体におけるマウスフレームワーク領域(FR)もまた、ヒトFR配列で置換される。ヒト化モノクローナルの安定性および抗原特異性を保存するため、一つまたは複数のヒトFR残基が、カウンターパートのマウス残基によって置換され得る。ヒト化モノクローナル抗体は、被検体の治療的処置に使用され得る。ヒト化抗体の標的に対する親和性はまた、CDR配列の選択された修飾によって増大され得る(WO0029584A1)。ヒト化モノクローナル抗体を作製する技術は当技術分野で周知である(例えば、Jones et al., 1986, Nature, 321: 522; Riechmann et al., Nature, 1988, 332: 323; Verhoeyen et al., 1988, Science, 239: 1534; Carter et al., 1992, Proc. Nat'l Acad. Sci. USA, 89: 4285; Sandhu, Crit. Rev. Biotech., 1992, 12:437; Tempest et al., 1991, Biotechnology 9: 266; Singer et al., J. Immun., 1993, 150: 2844を参照のこと)。
【0080】
他の態様は、非ヒト霊長類抗体に関するものであり得る。ヒヒにおいて治療的に有用な抗体を生成する一般的技術は、例えばGoldenberg et al., WO 91/11465 (1991)、およびLosman et al., Int. J. Cancer 46: 310 (1990)に見出され得る。
【0081】
別の態様において、抗体はヒトモノクローナル抗体であり得る。このような抗体は、抗原チャレンジによって特異的なヒト抗体を生成するよう操作されたトランスジェニックマウスから獲得される。この技術において、ヒトの重鎖および軽鎖の遺伝子座の要素が、内因性の重鎖および軽鎖の遺伝子座を特異的に破壊した胚性幹細胞株から生じたマウス系統に導入される。このトランスジェニックマウスは、ヒト抗原に特異的なヒト抗体を合成することができるので、このマウスはヒト抗体を分泌するハイブリドーマを作製するのに使用され得る。トランスジェニックマウスからヒト抗体を獲得する方法は、Green et al., Nature Genet. 7: 13 (1994), Lonberg et al., Nature 368: 856 (1994), およびTaylor et al., Int. Immun. 6: 579 (1994)に記載されている。
【0082】
ヒト抗体
コンビナトリアルアプローチまたはヒト免疫グロブリン遺伝子座で形質転換したトランスジェニック動物のいずれかを用いて完全ヒト抗体を作製する方法は、当技術分野で公知である(例えば、各々参照により本明細書に組み入れられるMancini et al., 2004, New Microbiol. 27: 315-28; Conrad and Scheller, 2005, Comb. Chem. High Throughput Screen. 8: 117-26; Brekke and Loset, 2003, Curr. Opin. Phamacol. 3: 544-50)。このような完全ヒト抗体は、キメラ抗体またはヒト化抗体よりもずっと小さい副作用を示すこと、およびインビボで本質的に内因性のヒト抗体として機能することが期待される。特定の態様において、本発明の方法および手順は、このような技術によって作製されるヒト抗体を利用し得る。
【0083】
一つの代替法において、上記のようなファージディスプレイ技術が、ヒト抗体を作製するのに使用され得る(例えば、参照により本明細書に組み入れられるDantas-Barbosa et al., 2005, Genet. Mol. Res. 4:126-40)。ヒト抗体は、正常なヒトからまたは特定の疾患状態、例えば癌を示すヒトから作製され得る(Dantas-Barbosa et al., 2005)。疾患を有する個体からヒト抗体を構築する利点は、循環する抗体レパートリーが疾患関連抗原に対する抗体の方に偏っている可能性があることである。
【0084】
この方法の一つの非限定的な例において、Dantas-Barbosaら(2005)は、骨肉腫患者由来のヒトFab抗体フラグメントのファージディスプレイライブラリを構築した。全般的に、総RNAは、循環血液中のリンパ球から獲得された(同書)。組換えFabは、μ、γ、およびκ鎖の抗体レパートリーからクローニングされ、ファージディスプレイライブラリに挿入された(同書)。RNAはcDNAに変換され、重鎖および軽鎖の免疫グロブリン配列に対して特異的なプライマーを用いてFab cDNAライブラリを作製するのに使用された(参照により本明細書に組み入れられる、Marks et al., 1991,. J. Mol. Biol. 222: 581-97)。ライブラリの構築は、Andris-Widhopfら(参照により本明細書に組み入れられる、2000, Phage Display Laboratory Manual, Barbas et al. (eds), 1st edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY pp. 9.1 to 9.22)。最終的なFabフラグメントを制限エンドヌクレアーゼで消化し、バクテリオファージゲノムに挿入してファージディスプレイライブラリを構築した。このようなライブラリは、上記のような標準的なファージディスプレイ法によりスクリーニングされ得る。当業者は、この技術が例にすぎず、ファージディスプレイによりヒト抗体または抗体フラグメントを作製およびスクリーニングするための任意の公知の方法が使用され得ることを理解しているであろう。
【0085】
別の代替法において、ヒト抗体を生成するよう遺伝子操作されたトランスジェニック動物が、上記のような標準的な免疫プロトコルを用いて、本質的に任意の免疫原性標的に対する抗体を作製するために使用され得る。このような系の非限定的な例は、Abgenix(Fremont, CA)製のXenoMouse(登録商標)である(例えば、参照により本明細書に組み入れられる、Green et al., 1999, J. Immunol. Methods 231 : 11-23)。XenoMouse(登録商標)および類似の動物において、マウス抗体の遺伝子は不活性化され機能的なヒト抗体の遺伝子で置き換えられるが、マウス免疫系の残りの遺伝子はインタクトなままで維持される。
【0086】
XenoMouse(登録商標)は、アクセサリー遺伝子および調節配列に沿って、可変領域配列の大部分を含む、ヒトIgHおよびIgカッパ遺伝子座の一部を含む生殖系YAC(酵母人工染色体)で形質転換された。ヒト可変領域レパートリーは、公知技術によってハイブリドーマ処理がなされ得る抗体産生性B細胞を生成するのに使用され得る。標的抗原で免疫したXenoMouse(登録商標)は、正常な免疫反応によってヒト抗体を産生し、これが上記の標準的技術によって収集および/または生成され得る。様々なXenoMouse(登録商標)系統が入手可能であり、それらは各々、異なるクラスの抗体を産生することができる。そのようなヒト抗体は、例えば、化学的架橋またはその他の公知の方法によってPlGFリガンドに結合され得る。トランスジェニック技術より生成されたヒト抗体は、正常なヒト抗体の薬物動態特性を保持しつつ治療的効力を有することが示されている(Green et al., 1999)。当業者は、本発明の組成物および方法がXenoMouse(登録商標)系の使用に限定されるのではなく、ヒト抗体を生成するよう遺伝子操作された任意のトランスジェニック動物を利用し得ることを理解するであろう。
【0087】
二特異性抗体および複合体
特定の態様において、本明細書中に開示されるPlGFリガンドは、そのリガンドに付加された別の分子と組み合わせて使用され得る。付加は、共有結合または非共有結合のいずれかであり得る。いくつかの態様において、PlGFリガンドは、二特異性抗体、すなわち二つの異なる結合部位を有し、一方がPlGFリガンドに対するものでありもう一方が疾患関連標的抗原に対するものである抗体に付加され得る。原発性癌、転移性癌、過形成、関節リウマチ、炎症性腸疾患、クローン病、潰瘍性大腸炎、サルコイドーシス、喘息、浮腫、肺高血圧、腫瘍組織の形成および発展、乾癬、糖尿病性網膜症、黄斑変性、角膜移植片拒絶、血管新生緑内障、心筋血管新生、プラークの新生血管形成、再狭窄、血管外傷後の新生内膜形成、毛細血管拡張、血友病性関節症、血管線維腫、慢性炎症に関連する線維症、肺線維症、深部静脈血栓症、および創傷の肉芽形成を含むがこれらに限定されない血管新生、癌、転移、または細胞の運動性に関する任意の疾患または状態が標的化され得る。二特異性および多特異性(multi-specific)抗体を構築および使用する方法は、例えば、その全体が参照により本明細書に組み入れられる、2004年2月11日に出願された米国特許出願公開番号20050002945に開示されている。
【0088】
二特異性抗体は、部分的に、腫瘍関連抗原に対して標的化されるが、任意のタイプの腫瘍および任意のタイプの腫瘍抗原がそのように標的化され得ることが明らかである。標的化され得る典型的な腫瘍のタイプには、急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、胆道癌、乳癌、子宮頸癌、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、結腸直腸癌、子宮体癌、食道癌、胃癌、頭頸部癌、ホジキンリンパ腫、肺癌、甲状腺髄様癌、非ホジキンリンパ腫、卵巣癌、膵癌、神経膠腫、黒色腫、肝癌、前立腺癌、および膀胱癌が含まれる。PlGFを構成的に発現する腫瘍またはPlGFの産生を刺激され得る腫瘍が好ましい。
【0089】
標的化され得る腫瘍関連抗原には、A3、A33抗体に特異的な抗原、BrE3抗原、CD1、CDla、CD3、CD5、CD15、CD19、CD20、CD21、CD22、CD23、CD25、CD30、CD45、CD74、CD79a、CD80、HLA-DR、NCA 95、NCA90、HCGおよびそのサブユニット、CEA(CEACAM-5)、CEACAM-6、CSAp、EGFR、EGP-l、EGP-2、Ep-CAM、Ba 733、HER2/neu、低酸素誘導因子(HIF)、KC4抗原、KS-1抗原、KS1-4、Le-Y、マクロファージ阻害因子(MIF)、MAGE、MUC1、MUC2、MUC3、MUC4、PAM-4抗原、PSA、PSMA、RS5、S100、TAG-72、p53、テネイシン、IL-6、IL-8、インスリン成長因子-1(IGF-1)、Tn抗原、トムソン・フリーデンライヒ抗原、腫瘍壊死抗原、VEGF、17-1A抗原、血管新生マーカー(例えばED-Bフィブロネクチン)、癌遺伝子マーカー、癌遺伝子産物、ならびにその他の腫瘍関連抗原が含まれるがこれらに限定されない。腫瘍関連抗原に関する最近の報告には、各々参照により本明細書に組み入れられるMizukami et al., (2005, Nature Med. 11: 992-97); Hatfield et al., (2005, Curr. Cancer Drug Targets 5: 229-48); Vallbohmer et al. (2005, J. Clin. Oncol. 23: 3536-44)およびRen et al. (2005, Ann. Surg. 242: 55-63)が含まれる。
【0090】
二特異性抗体および抗体フラグメントを作製するのに様々な組換え方法が使用され得る。例えば、二特異性抗体および抗体フラグメントは、トランスジェニック家畜類の乳から生成され得る(例えば、各々参照により本明細書に組み入れられるColman, A., Biochem. Soc. Symp., 63: 141-147, 1998; 米国特許第5,827,690号を参照のこと)。それぞれが免疫グロブリン重鎖および軽鎖の対をコードするDNAセグメントを含む二つのDNA構築物が調製される。このフラグメントは、哺乳動物の上皮細胞において優先的に発現されるプロモーター配列を含む発現ベクター中にクローニングされる。その例には、ウサギ、ウシ、およびヒツジのカゼイン遺伝子、ウシアルファ-ラクトグロブリン遺伝子、ヒツジベータ-ラクトグロブリン遺伝子、ならびにマウス乳清酸性タンパク質遺伝子由来のプロモーターが含まれるがこれらに限定されない。好ましくは、挿入されるフラグメントは、その3’側で、乳房特異的遺伝子由来の同族ゲノム配列と隣接するものである。これは、ポリアデニル化部位および転写安定化配列を提供する。この発現カセットは、哺乳動物受精卵の前核に混注され、次いでこの受精卵が雌レシピエントの子宮に移植され、そして懐胎させる。出産後、その子孫は、サザン分析によって両方の導入遺伝子の存在についてスクリーニングされる。抗体が存在するというためには、重鎖遺伝子および軽鎖遺伝子の両方が同一細胞において同時に発現されなければならない。トランスジェニック雌の乳は、当技術分野で公知の標準的な免疫学的方法を用いて抗体または抗体フラグメントの存在および機能について分析される。抗体は、当技術分野で公知の標準的な方法を用いて乳から精製され得る。
【0091】
プレターゲティング
二特異性抗体を使用する一つのストラテジーには、二特異性抗体を投与した後にエフェクター分子、例えば抗血管新生性または抗腫瘍性のPlGFリガンドを被検体に投与するプレターゲティング法が含まれる。PlGFリガンドに対する結合部位および疾患組織に対する結合部位を含む二特異性抗体は、疾患組織に局在化し、エフェクターPlGFリガンドの疾患組織への局在化の特異性を増大する(米国特許出願番号20050002945)。エフェクター分子は二特異性抗体よりもずっと迅速に循環から排除され得るので、エフェクター分子を疾患ターゲティング抗体に直接連結した場合よりもプレターゲティングストラテジーを使用した場合の方が、正常組織がエフェクター分子に曝される機会が減少する。
【0092】
プレターゲティング方法は開発が進み、検出剤または治療剤の標的:バックグラウンド比が向上した。プレターゲティングアプローチおよびビオチン/アビジンアプローチの例は、例えば、Goodwin et al., 米国特許第4,863,713号; Goodwin et al., J. Nucl. Med. 29: 226, 1988; Hnatowich et al., J. Nucl. Med. 28: 1294, 1987; Oehr et al., J. Nucl. Med. 29: 728, 1988; Klibanov et al., J. Nucl. Med. 29:1951, 1988; Sinitsyn et al., J. Nucl. Med. 30: 66,1989; Kalofonos et al., J. Nucl. Med. 31: 1791,1990; Schechter et al Int. J. Cancer 48: 167,1991; Paganelli et al., Cancer Res. 51: 5960,1991; Paganelli et al., Nucl. Med. Commun. 12: 211, 1991; 米国特許第5,256,395号; Stickney et al., Cancer Res. 51: 6650, 1991; Yuan et al., Cancer Res. 51: 3119, 1991; 米国特許第6,077,499号; 米国出願番号09/597,580; 米国出願番号10/361,026; 米国出願番号09/337,756; 米国出願番号09/823,746; 米国出願番号10/116,116; 米国出願番号09/382,186; 米国出願番号10/150,654; 米国特許第6,090,381号; 米国特許第6,472,511号; 米国出願番号10/114,315; 米国仮出願番号60/386,411; 米国仮出願番号60/345,641; 米国仮出願番号60/3328,835; 米国仮出願番号60/426,379; 米国出願番号09/823,746; 米国出願番号09/337,756; および米国仮出願番号60/342,103に記載されており、これらは全て参照により本明細書に組み入れられる。
【0093】
特定の態様において、二特異性抗体および標的化が可能な構築物は、例えば、各々参照により本明細書に組み入れられる米国特許第6,126,916号;同第6,077,499号;同第6,010,680号;同第5,776,095号;同第5,776,094号;同第5,776,093号;同第5,772,981号;同第5,753,206号;同第5,746,996号;同第5,697,902号;同第5,328,679号;同第5,128,119号;同第5,101,827号;および同第4,735,210号に記載される方法を用いて、正常または疾患状態の組織および器官を処置および/または画像化するのに使用され得る。さらなる方法は、1999年6月22日に出願された米国出願番号09/337,756および2001年4月3日に出願された米国出願番号09/823,746に記載される。
【0094】
ターゲティングペプチド
他の態様において、ペプチドPlGFリガンド、例えばBP-1、BP-2、BP-3、またはBP-4は、一つまたは複数の薬剤を疾患組織に送達するためのターゲティングペプチドとして使用され得る。このような場合、薬剤は、PlGF結合ペプチドに共有結合または非共有結合により付加され得る。使用される可能性のある薬剤には、薬物、プロドラッグ、毒素、酵素、オリゴヌクレオチド、放射性同位元素、免疫調節剤、サイトカイン、ホルモン、結合性分子、脂質、ポリマー、ミセル、リポソーム、ナノ粒子、またはそれらの組み合わせが含まれる。使用される典型的な治療剤および方法は、各々参照により本明細書に組み入れられる米国特許公開番号20050002945、20040018557、20030148409、および20050014207に開示されている。
【0095】
典型的な態様において、使用される薬剤は、アプリジン(aplidin)、アザリビン、アナストロゾール、アザシチジン、ブレオマイシン、ボルテゾミブ、ブリオスタチン-1、ブスルファン、カリケアマイシン(calicheamycin)、カンプトテシン、10-ヒドロキシカンプトテシン、カルムスチン、セレブレクス(celebrex)、クロラムブシル、シスプラチン、イリノテカン(CPT-11)、SN-38、カルボプラチン、クラドリビン、シクロホスファミド、シタラビン、ダカルバジン、ドセタキセル、ダクチノマイシン、ダウノマイシングルクロニド、ダウノルビシン、デキサメタゾン、ジエチルスチルベストロール、ドキソルビシン、2-ピロリノドキソルビシン(2P-DOX)、シアノモルホリノドキソルビシン、ドキソルビシングルクロニド、エピルビシングルクロニド、エチニルエストラジオール、エストラムスチン、エトポシド、エトポシドグルクロニド、リン酸エトポシド、フロクスウリジン(FUdR)、3',5'-O-ジオレオイル-FudR(FUdR-dO)、フルダラビン、フルタミド、フルオロウラシル、フルオキシメステロン、ゲムシタビン、カプロン酸ヒドロキシプロゲステロン、ヒドロキシウレア、イダルビシン、イホスファミド、L-アスパラギナーゼ、ロイコボリン、ロムスチン、メクロレタミン、酢酸メドロプロゲステロン(medroprogesterone acetate)、酢酸メゲストロール、メルファラン、メルカプトプリン、6-メルカプトプリン、メトトレキサート、ミトキサントロン、ミトラマイシン、マイトマイシン、ミトタン、酪酸フェニル、プレドニゾン、プロカルバジン、パクリタキセル、ペントスタチン、PSI-341、セムスチンストレプトゾシン、タモキシフェン、タキサン類、タキソール、プロピオン酸テストステロン、サリドマイド、チオグアニン、チオテパ、テニポシド、トポテカン、ウラシルマスタード、ベルケード(velcade)、ビンブラスチン、ビノレルビン、ビンクリスチン、リシン、アブリン、リボヌクレアーゼ、オンコナーゼ(onconase)、rapLR1、DNase I、ブドウ球菌エンテロトキシン-A、アメリカヤマゴボウ抗ウイルスタンパク質、ゲロニン(gelonin)、ジフテリア毒素、シュードモナス外毒素、シュードモナス内毒素、アンチセンスオリゴヌクレオチド、干渉性RNA、またはこれらの組み合わせの一つまたは複数を含み得る。
【0096】
アプタマー
特定の態様において、使用されるPlGFリガンドはアプタマーであり得る。アプタマーを構築およびその結合特性を決定する方法は当技術分野で周知である。例えば、このような技術は、各々参照により本明細書に組み入れられる米国特許第5,582,981号、同第5,595,877号、および同第5,637,459号に記載されている。
【0097】
アプタマーは、合成法、組換え法、および精製法を含む任意の公知の方法によって調製され得、単独でまたは同じ標的に特異的な他のリガンドと組み合わせて使用され得る。一般的に、特異的な結合には、最小でおよそ3ヌクレオチド、好ましくは少なくとも5ヌクレオチドが必要とされる。10塩基より短い配列のアプタマーは不可能ではないが、10、20、30、または40ヌクレオチドのアプタマーが好ましい。
【0098】
アプタマーには結合特異性を付与する配列を含めることが必要とされるが、これは隣接領域およびそれ以外では誘導体化によって拡張され得る。好ましい態様において、アプタマーのPlGF結合配列はプライマー結合配列に隣接させることで、PCRまたはその他の増幅技術によるアプタマーの増幅が促進され得る。さらなる態様において、隣接配列は、アプタマーの基質への固定を増強する部分を優先的に認識または結合する特別な配列を含み得る。
【0099】
アプタマーは、従来的なDNAまたはRNA分子として単離、配列決定、および/または増幅もしくは合成され得る。あるいは、関心対象のアプタマーは、修飾型オリゴマーを含み得る。通常アプタマーに存在するヒドロキシル基のいずれかは、ホスホン酸基、リン酸基で置換されるか、標準的な保護基で保護されるか、もしくは他のヌクレオチドへのさらなる連結のために活性化され得るか、または固体支持体に結合され得る。一つまたは複数のホスホジエステル結合は、代替の連結基によって置換され得る、例えばP(O)Oは、P(O)S、P(O)NR2、P(O)R、P(O)OR'、CO、またはCNR2(RはHまたはアルキル(1〜20C)でありR'はアルキル(1〜20C)である)によって置換され得;さらにこの基はOまたはSを通じて隣接ヌクレオチドに付加され得る。オリゴマー中の全ての連結が同一である必要はない。
【0100】
本発明の特異的結合配列を決定するプロセスにおける出発物質として使用されるアプタマーは、単鎖または二重鎖のDNAまたはRNAであり得る。好ましい態様において、この配列は、RNAよりもヌクレアーゼ分解に対する感受性が低い単鎖DNAである。好ましい態様において、出発アプタマーは、一般的には約10〜400ヌクレオチド、より好ましくは20〜100ヌクレオチドを含む、ランダム配列部分を含む。ランダム配列は、標的に結合することが見出されたアプタマーの増幅を実現するプライマー配列に隣接される。合成の間に、ランダム領域の合成のために、無作為化が望まれる位置にヌクレオチド混合物が加えられ得る。
【0101】
関心対象の特定の標的に結合するアプタマーの調製およびスクリーニング方法は周知であり、例えば各々参照により本明細書に組み入れられる米国特許第5,475,096号および米国特許第5,270,163号に記載される。この技術は一般的に、アプタマー候補の混合物からの選択、ならびに結合、非結合アプタマーからの結合アプタマーの分離、および増幅の段階的な反復を含む。最高の親和性のアプタマーに対応する配列は、僅かな数のみ(一つのみのアプタマー分子の可能性もある)しか混合物中に存在しないので、一般的には、混合物中の相当量のアプタマー(およそ5〜50%)が分離の間に維持されるような分配基準を設定することが望ましい。各々のサイクルは、標的に対して高い親和性を有するアプタマーを増加させる。標的、例えばPlGFに対して高い親和性および特異性で結合するアプタマーを生成するためには、3〜6回の選択・増幅サイクルの繰り返しが使用され得る。
【0102】
疾患組織の検出、診断、および画像化方法
タンパク質ベースのインビトロ診断
本発明は、PlGF抗原の存在についてインビトロおよび/またはインビボで生物学的サンプルをスクリーニングするための、PlGF結合ペプチド、PlGF融合タンパク質、PlGF抗体またはフラグメント、二特異性抗体、および抗体フラグメントを含むPlGFリガンドの使用を意図する。典型的な免疫アッセイにおいて、PlGF抗体、融合タンパク質、またはそれらのフラグメントは、以下に記載されるように、液相中で使用されるかまたは固相キャリアに結合され得る。好ましい態様において、具体的にはインビボ投与に関する態様において、PlGF抗体またはそのフラグメントはヒト化される。PlGF抗体またはそのフラグメントが完全にヒトであることも好ましい。さらには、PlGF融合タンパク質がヒト化または完全ヒトPlGF抗体を含むことも好ましい。当業者は、特定の遺伝子の発現レベルを決定するための幅広い様々な技術が公知であること、ならびに任意のそのような公知の方法、例えば免疫アッセイ、RT-PCR、mRNA精製、ならびに/またはcDNA調製およびその後の遺伝子発現アッセイチップに対するハイブリダイゼーションが、個々の被検体および/または組織におけるPlGFの発現レベルを決定するのに使用され得ることを理解しているであろう。
【0103】
生物学的サンプルがPlGF抗原を含むかどうかを決定するスクリーニング方法の一例は、放射免疫アッセイ(RIA)である。例えば、RIAの一形態において、試験物質は、放射性標識されたPlGF抗原の存在下でPlGF MAbと混合される。この方法において、試験物質の濃度はMAbに結合した標識PlGF抗原の量と反比例し、遊離の標識PlGF抗原の量と直接的に関連する。他の適当なスクリーニング方法は、当業者に容易に明らかとなろう。
【0104】
あるいは、PlGFリガンド、抗PlGF抗体、融合タンパク質、またはそれらのフラグメントを固相キャリアに結合させたインビトロアッセイが行われ得る。例えば、MAbは、MAbを不溶性の支持体、例えばポリマーコートしたビーズ、プレート、またはチューブに連結するために、ポリマー、例えばアミノデキストランに付加され得る。
【0105】
生物学的サンプル中のPlGF抗原の存在は、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)を用いて決定され得る。直接競合型ELISAにおいて、純粋または準純粋な抗原調製物が、試験される液体または細胞抽出物に不溶性の固体支持体に結合され、一定量の検出可能な標識をされた可溶型抗体、抗体フラグメント、またはPlGFリガンドが、固相抗原と標識PlGF結合分子の間で形成される二成分複合体の検出および/または定量を可能にするよう加えられる。
【0106】
サンドイッチELSIAは少量の抗原しか必要とせず、かつこのアッセイは抗原の高度な精製を必要としない。従って、サンドイッチELISAは、臨床サンプル中の抗原の検出において直接競合型ELISAより好ましい。例えば、Field et al., Oncogene 4: 1463 (1989); Spandidos et al., AntiCancer Res. 9: 821 (1989)を参照のこと。
【0107】
サンドイッチELISAにおいては、一定量の非標識MAbまたは抗体フラグメント(「捕捉抗体」)が固体支持体に結合され、試験サンプルは捕捉抗体と接触され、一定量の検出可能な標識をされた可溶型抗体(または抗体フラグメント)が、捕捉抗体、抗原、および標識抗体の間で形成される三成分複合体の検出および/または定量を可能にするよう加えられる。抗体フラグメントは、抗体の一部分、例えば、F(ab')2、F(ab)2、Fab'、Fab等である。この文脈で、抗体フラグメントは、PlGF抗原のエピトープに結合するPlGF MAbの一部である。「抗体フラグメント」という用語は、特定の抗原に結合して複合体を形成することによって抗体と同様の作用をする合成タンパク質または遺伝子操作したタンパク質をも包含する。例えば、抗体フラグメントには、軽鎖可変領域からなる単離されたフラグメント、重鎖および軽鎖の可変領域からなる「Fv」フラグメント、ならびに軽鎖および重鎖の可変領域がペプチドリンカーによって接続された組換え単鎖ポリペプチド分子が含まれる。抗体融合タンパク質は、同一または異なる特異性を有する同一または異なる単鎖抗体または抗体フラグメントのセグメントが二つまたは複数連結された、組換え生成された抗原結合分子である。融合タンパク質は、単一抗体成分、異なる抗体成分の多価もしくは多特異的な組み合わせ、または複数コピーの同一抗体成分を含み得る。融合タンパク質はさらに、診断/検出剤および/または治療剤に結合された抗体または抗体フラグメントを含み得る。PlGF抗体という用語は、ヒト化抗体、ヒト抗体およびマウス抗体、それらの抗体フラグメント、免疫複合体およびそのフラグメント、ならびに抗体融合タンパク質およびそのフラグメントを包含する。
【0108】
サンドイッチELISAを行う方法は周知である。例えば、Field et al., 前出, Spandidos et al., 前出, およびMETHODS IN MOLECULAR BIOLOGY, VOL.10, 273〜281ページ(The Humana Press, Inc. 1992)の Moore et al., 「Twin-Site ELISAs for fos and myc Oncoproteins Using the AMPAK System」 を参照のこと。当業者は、サンドイッチELISAと類似のアッセイが、第一の非標識抗体または第二の標識抗体のいずれかの代わりとしてPlGFリガンドを使用することによって実施され得ることを理解するであろう。
【0109】
サンドイッチELISAにおいて、可溶型抗体または抗体フラグメントは、捕捉抗体により認識されるエピトープとは異なるPlGFエピトープに結合しなければならない。サンドイッチELISAは、PlGF抗原が生検サンプル中に存在するかどうかを確認するために実施され得る。あるいは、このアッセイは、体液の臨床サンプル中に存在するPlGF抗原の量を定量するために実施され得る。定量アッセイは、精製されたPlGF抗原の希釈物を加えることによって実施され得る。
【0110】
他の態様において、サンプル中のPlGFの存在を検出および定量するのにウェスタンブロット分析が使用され得る。この技術は一般的に、分子量に基づきゲル電気泳動によりサンプルタンパク質を分離すること、分離されたタンパク質を適当な固体支持体(ニトロセルロースフィルター、ナイロンフィルター、または誘導体化ナイロンフィルター)に転写すること、およびPlGFに特異的に結合する抗体またはリガンドと共にサンプルをインキュベートすることを含む。抗PlGF抗体またはリガンドは、固体支持体上のPlGFに特異的に結合する。これらの抗体またはリガンドは、直接的に標識されるか、あるいは抗PlGF抗体またはリガンドに特異的に結合する標識された二次抗体を用いてその後に検出され得る。
【0111】
PlGFリガンド、Mab、融合タンパク質、およびそれらのフラグメントもまた、アッセイキットの調製に適している。このようなキットは、各々が免疫アッセイの異なる要素を含む、一つまたは複数の収容手段、例えばバイアル、チューブ等を厳重な密閉下で収納するよう区分けされた運搬手段を含み得る。例えば、固相支持体に固定された捕捉抗体を含む収容手段、さらには検出可能に標識された抗体を溶液状態で含む収容手段が含まれ得る。さらなる収容手段は、PlGF抗原の連続希釈物を含む標準溶液を含み得る。PlGF抗原の標準溶液は、PlGF抗原の濃度が横座標に、検出シグナルが縦座標にプロットされた標準曲線を準備するのに使用される。PlGF抗原を含むサンプルから得られた結果は、そのようなプロットから、生物学的サンプル中のPlGF抗原の濃度が示され得る。
【0112】
PlGFリガンド、抗PlGF抗体、融合タンパク質、およびそれらのフラグメントはまた、組織学的標本から調製された組織切片中のPlGF抗原の存在を検出するのに使用され得る。このようなインサイチュー検出は、試験組織中のPlGF抗原の存在を決定するため、およびPlGF抗原の分布を決定するために使用され得る。インサイチュー検出は、検出可能に標識されたPlGFリガンドまたは抗体を、凍結乾燥またはパラフィン包埋した組織切片に適用することによって達成され得る。インサイチュー検出の一般的技術は当業者に周知である。例えば、MAMMALIAN DEVELOPMENT: A PRACTICAL APPROACH 113-38 Monk (ed.) (IRL Press 1987)のPonder, 「Cell Marking Techniques and Their Application」およびColigan、5.8.1〜5.8.8ページを参照のこと。
【0113】
PlGFリガンド、抗PlGF抗体、融合タンパク質、およびそれらのフラグメントは、任意の適当なマーカー部分、例えば放射性同位元素、酵素、蛍光標識、色素、色素原、化学発光標識、生物発光標識、または常磁性標識によって検出可能に標識され得る。このような検出可能に標識されたPlGF抗体を作製および検出する方法は当業者に周知であり、かつ以下により詳細に記載する。
【0114】
マーカー部分は、ガンマカウンターもしくはベータシンチレーションカウンターの使用等の手段によってまたはオートラジオグラフィによって検出される放射性同位元素であり得る。好ましい態様において、診断用複合体は、ガンマ放射、ベータ放射、または陽電子放射性の同位体である。マーカー部分は、所定の条件下でシグナルを生じる分子を意味する。マーカー部分の例には、放射性同位元素、酵素、蛍光標識、化学発光標識、生物発光標識、および常磁性標識が含まれる。PlGF抗体へのマーカー部分の結合は、当技術分野で公知の標準的技術を用いて達成され得る。これに関する典型的な方法は、Kennedy et al., Clin. Chim. Acta 70: 1 (1976), Schurs et al., Clin. Chim. Acta 81: 1 (1977), Shih et al., Int'l J. Cancer 46: 1101 (1990)に記載されている。
【0115】
核酸ベースのインビトロ診断
特定の態様において、PlGFの発現レベルを、具体的には核酸増幅法を用いて決定するために核酸が分析され得る。増幅のテンプレートとして使用される核酸配列(mRNAおよび/またはcDNA)は、標準的な方法に従い、生物学的サンプルに含まれる細胞から単離され得る。核酸は分画されたRNAまたは総細胞RNAであり得る。RNAが使用される場合、RNAを相補的なcDNAに変換することが望ましい場合がある。一つの態様において、RNAは総細胞RNAであり、増幅のテンプレートとして直接的に使用される。
【0116】
一つの例において、PlGF発現の決定は、PlGF mRNAまたはcDNA配列を(例えばPCRによって)増幅し、TaqManアッセイ(Applied Biosystems, Foster City, CA)、アガロースまたはポリアクリルアミドゲル電気泳動およびエチジウムブロミド染色、PlGF特異的プローブを含むマイクロアレイへのハイブリダイゼーション、ノーザンブロット、ドットブロット、スロットブロット等を含むがこれらに限定されない当技術分野で公知の任意の方法によって増幅産物を検出および/または定量することにより行われる。
【0117】
様々な増幅の形態が当技術分野で周知であり、任意のこのような公知の方法が使用され得る。一般的に、増幅には、増幅すべき標的核酸配列に選択的または特異的にハイブリダイズする一つまたは複数のプライマーが使用される。
【0118】
プライマー:
本明細書における定義では、プライマーという用語は、テンプレート依存的なプロセスで新たな核酸の合成を刺激することのできる任意の核酸を包含する意味で用いられる。典型的には、プライマーは、10〜20塩基対の長さのオリゴヌクレオチドであるが、それよりも長い配列も使用され得る。プライマーは、二重鎖形態または単鎖形態で提供され得るが、単鎖形態が好ましい。標準的なワトソン・クリック塩基対から得られる相補的な配列の設計(すなわち、アデニンはチミジンまたはウラシルに結合し、グアニンはシトシンに結合する)に基づくプライマー設計方法は当技術分野で周知である。増幅用プライマーを選択および設計するためのコンピュータープログラムは、当業者に周知の商業的および/または公的な供給源から入手できる。PlGFの発現を検出するのに使用する特定のプライマー配列が公知である(例えば、Regnault et al., 2003, J. Physiol. 550: 641-56)。当業者は、本明細書中に開示される特定の配列が例証にすぎないこと、ならびに代替のプライマーおよび/またはプローブ配列が本発明の実施において使用され得ることを理解するであろう。
【0119】
増幅:
所定のサンプル中に存在するマーカー配列を増幅するのに、多くのテンプレート依存的なプロセスが利用できる。最も良く知られている増幅方法の一つは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCRと称される)であり、これは米国特許第4,683,195号、同第4,683,202号、および同第4,800,159号に詳細に記載されている。
【0120】
本発明の一つの態様は、個体から適当なサンプルを採取し、PlGFメッセンジャーRNAを検出することを含み得る。組織サンプルを獲得したら、そのサンプルは、標準的な技術(例えば細胞の単離、外膜の消化、mRNAのオリゴdT単離等)により核酸の単離用に調製され得る。mRNAの単離はまた、当技術分野で公知のキット(Pierce, AP Biotech等)を用いて実施され得る。増幅したmRNAの量を定量するために、逆転写酵素PCR増幅手順が行われ得る。RNAからcDNAへと逆転写する方法は周知であり、Sambrook et al., 1989に記載されている。代替の逆転写法は、熱安定性DNAポリメラーゼを利用するものである。
【0121】
病理学的状態の診断または病期分類を補助するために、上記のインビトロおよびインサイチュー検出法が使用され得る。例えば、このような方法は、PlGF抗原を発現する腫瘍、例えば転移性癌を検出するのに使用され得る。
【0122】
インビボ診断
PlGFリガンドおよび/または抗体は、インビボ診断のために使用される。標識ペプチドまたはMAbを用いる診断画像化法は周知である。例えば、免疫シンチグラフィ技術において、PlGFリガンドまたは抗体は、ガンマ放射性の放射性同位元素で標識され、患者に導入される。ガンマ放射性の放射性同位元素の位置および分布を検出するために、ガンマカメラが使用される。例えば、Srivastava (ed.), RADIOLABELED MONOCLONAL ANTIBODIES FOR IMAGING AND THERAPY (Plenum Press 1988), REMINGTON'S PHARMACEUTICAL SCIENCES, 18th Edition, Gennaro et al. (eds.), pp. 624-652 (Mack Publishing Co., 1990)のChase, 「Medical Applications of Radioisotopes」およびBIOTECHNOLOGY AND PHARMACY 227-49, Pezzuto et al. (eds.) (Chapman & Hall 1993)のBrown, 「Clinical Use of Monoclonal Antibodies」を参照のこと。陽電子放射性の放射性核種(PET同位体)、例えば511 keVのエネルギーを有する放射性核種、例えばフッ素-18 18F)、ガリウム-68(68Ga)、およびヨウ素-124(124I)の使用もまた好ましい。このような画像化は、PlGFリガンドの直接標識によって、またはGoldenberg et al, 「Antibody Pretargeting Advances Cancer Radioimmunodetection and Radiotherapy」 (submitted MS)に記載されるようなプレターゲティング型の画像化法によって行われ得る。各々参照により本明細書に組み入れられる米国特許公開番号20050002945、20040018557、20030148409、および20050014207もまた参照のこと。
【0123】
診断画像化において、放射性同位元素は、PlGFリガンドまたは抗体に、直接的または中間官能基(intermediary functional groups)を用いて間接的にのいずれかにより結合され得る。有用な中間官能基には、キレート剤、例えばエチレンジアミン四酢酸およびジエチレントリアミン五酢酸が含まれる。例えば、Shih et al., 前出および米国特許第5,057,313号を参照のこと。
【0124】
患者に送達される放射線量は、検出および正確な測定を可能にする最小の半減期、最小の体内保持率、および最小の放射性同位元素量の最良の組み合わせに関する放射性同位元素の選択を通じて、可能な限り低レベルで維持される。PlGF抗体に結合できかつ診断画像化に適した放射性同位元素の例には、99mTcおよび111Inが含まれる。
【0125】
PlGFリガンド、抗体、融合タンパク質、およびそれらのフラグメントはまた、インビボ診断の目的で、常磁性イオンおよび様々な放射線医学用造影剤で標識され得る。磁気共鳴画像法において特に有用な造影剤には、ガドリニウム、マンガン、ジスプロシウム、ランタン、または鉄イオンが含まれる。さらなる薬剤には、クロム、銅、コバルト、ニッケル、レニウム、ユーロピウム、テルビウム、ホルミウム、またはネオジムが含まれる。PlGFリガンド、抗体、およびそれらのフラグメントはまた、超音波造影剤/増感剤(enhancing agents)に結合され得る。例えば、一つの超音波造影剤は、ヒト化PlGF IgGまたはそのフラグメントを含むリポソームである。超音波造影剤が、ガスで満たされたリポソームであることもまた好ましい。
【0126】
好ましい態様において、二特異性抗体は、造影剤に結合され得る。例えば、二特異性抗体は、超音波画像化において使用するための一つより多くの画像増感剤を含み得る。好ましい態様において、造影剤はリポソームである。好ましくは、リポソームは、リポソームの外表面に共有結合させた二価DTPA-ペプチドを含む。さらにより好ましくは、リポソームはガスで満たされている。
【0127】
画像化剤および放射性同位元素
特定の態様において、本発明のペプチドまたはタンパク質は、様々な疾患器官、組織、または細胞型の画像化および診断に使用する画像化剤に付加され得る。多くの適当な画像化剤が当技術分野で公知であり、それらをタンパク質またはペプチドに付加する方法も同様である(例えば、両方とも参照により本明細書に組み入れられる、米国特許第5,021,236号および同第4,472,509号を参照のこと)。特定の付加方法は、例えばタンパク質またはペプチドに付加された有機キレート剤、例えばDTPAを用いる金属キレート錯体の使用を包含する(米国特許第4,472,509号)。タンパク質またはペプチドはまた、カップリング剤、例えばグルタルアルデヒドまたは過ヨウ素酸塩の存在下で酵素と反応され得る。フルオレセインマーカーとの複合体は、これらのカップリング剤の存在下でまたはイソチオシアネートとの反応によって調製される。
【0128】
画像化剤として使用される可能性のある常磁性イオンの非限定的な例には、クロム(III)、マンガン(II)、鉄(III)、鉄(II)、コバルト(II)、ニッケル(II)、銅(II)、ネオジム(III)、サマリウム(III)、イッテルビウム(III)、ガドリニウム(III)、バナジウム(II)、テルビウム(III)、ジスプロシウム(III)、ホルミウム(III)、およびエルビウム(III)が含まれ、ガドリニウムが特に好ましい。他の文脈、例えばX線像において有用なイオンには、ランタン(III)、金(III)、鉛(II)、および特にビスマス(III)が含まれるがこれらに限定されない。
【0129】
画像化剤または治療剤として使用される可能性のある放射性同位元素には、アスタチン21114炭素、51クロム、36塩素、57コバルト、58コバルト、銅62、銅64、銅67152Eu、フッ素18、ガリウム67、ガリウム683水素、ヨウ素123、ヨウ素124、ヨウ素125、ヨウ素131、インジウム11152鉄、59鉄、32リン、33リン、レニウム186、レニウム188、Sc4775セレン、銀11135硫黄、テクネチウム94m(technicium)、テクネチウム99m、イットリウム86、およびイットリウム90が含まれる。125Iは、特定の態様において使用するのに好ましい場合が多く、テクネチウム99mおよびインジウム111もまた、多くの場合、それらの低エネルギー性および広範囲の検出への適性から好ましい。
【0130】
放射性標識されたタンパク質またはペプチドは、当技術分野で周知の方法に従い作製され得る。例えば、それらは、ヨウ化ナトリウムまたはヨウ化カリウムおよび化学的酸化剤、例えば次亜塩素酸ナトリウムもしくは酵素的酸化剤、例えばラクトペルオキシダーゼと接触させることによってヨウ素化され得る。タンパク質またはペプチドは、例えば第一スズ溶液でペルテクネート(pertechnate)を還元し、セファデックスカラム上で還元型テクネチウムをキレート化し、ペプチドをこのカラムにアプライすることによるリガンド交換プロセスによって、または、例えば、ペルテクネート、還元剤、例えばSNCl2、緩衝溶液、例えばフタル酸ナトリウムカリウム溶液、およびペプチドをインキュベートすることによる、直接標識技術によって、テクネチウム99mで標識され得る。多くの場合に金属イオンとして存在する放射性同位元素をペプチドに結合するのに使用される中間官能基には、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、DOTA、NOTA、ポルフィリンキレート、およびエチレンジアミン四酢酸(EDTA)が含まれる。ローダミン、フルオレセインイソチオシアネート、およびレノグラフィンを含む蛍光標識もまた、使用が考慮される。
【0131】
特定の態様において、本発明のタンパク質またはペプチドは、色素形成性の基質との接触によって有色の生成物を生じ得る二次結合性リガンドまたは酵素(酵素タグ)に連結され得る。適当な酵素の例には、ウレアーゼ、アルカリホスファターゼ、(西洋ワサビ)水素ペルオキシダーゼ、およびグルコースオキシダーゼが含まれる。好ましい二次結合性リガンドは、ビオチンおよびアビジンまたはストレプトアビジン化合物である。このような標識の使用は当業者に周知であり、例えば各々参照により本明細書に組み入れられる米国特許第3,817,837号;同第3,850,752号;同第3,939,350号;同第3,996,345号;同第4,277,437号;同第4,275,149号、および同第4,366,241号に記載されている。これらの蛍光標識は、インビトロ用途に好ましいが、インビボ適用、具体的には内視鏡または血管内検出手順においても有用性が認められ得る。
【0132】
代替の態様において、PlGFリガンド、抗体、またはその他のタンパク質もしくはペプチドは、蛍光マーカーのタグ標識をなされ得る。光検出可能な標識の非限定的な例には、アレクサ350、アレクサ430、AMCA、アミノアクリジン、BODIPY 630/650、BODIPY 650/665、BODIPY-FL、BODIPY-R6G、BODIPY-TMR、BODIPY-TRX、5-カルボキシ-4',5'-ジクロロ-2',7'-ジメトキシフルオロセイン、5-カルボキシ-2',4',5',7'-テトラクロロフルオレセイン、5-カルボキシフルオレセイン、 5-カルボキシローダミン、6-カルボキシローダミン、6-カルボキシテトラメチルアミノ、カスケードブルー、Cy2、Cy3、Cy5,6-FAM、塩化ダンシル、フルオレセイン、HEX、6-JOE、NBD(7-ニトロベンゾ-2-オキサ-1,3-ジアゾール)、オレゴングリーン488、オレゴングリーン500、オレゴングリーン514、パシフィックブルー、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、クレシルファストバイオレット、クレシルブルーバイオレット、ブリリアントクレシルブルー、パラアミノ安息香酸、エリスロシン、フタロシアニン、アゾメチン、シアニン、キサンチン、スクシニルフルオレセイン、希土類金属クリプテート、ユーロピウムトリスビピリジンジアミン、ユーロピウムクリプテートまたはキレート、ジアミン、ジシアニン、ラ・ホーヤブルーダイ、アロフィコシアニン、アロコシアニンB、フィコシアニンC、フィコシアニンR、チアミン、フィコエリスロシアニン、フィコエリスリンR、REG、ローダミングリーン、ローダミンイソチオシアネート、ローダミンレッド、ROX、TAMRA、TET、TRIT (テトラメチルローダミンイソチオール)、テトラメチルローダミン、およびテキサスレッドが含まれる。これらおよびその他の発光標識は、Molecular Probes (Eugene, OR)等の商業的供給源から入手できる。
【0133】
使用される化学発光標識化合物には、ルミノール、イソルミノール、芳香族アクリジニウムエステル、イミダゾール、アクリジニウム塩、およびシュウ酸エステル、または生物発光化合物、例えばルシフェリン、ルシフェラーゼ、およびエクオリンが含まれ得る。診断用免疫複合体は、例えば、術中、内視鏡、もしくは血管内腫瘍または疾患診断に使用され得る。
【0134】
様々な態様において、使用される標識には金属ナノ粒子が含まれ得る。ナノ粒子を調製する方法は公知である(例えば、米国特許第6,054,495号;同第6,127,120号;同第6,149,868号;Lee and Meisel, J. Phys. Chem. 86: 3391-3395, 1982を参照のこと)。ナノ粒子はまた、商業的供給源(例えばNanoprobes Inc., Yaphank, NY; Polysciences, Inc., Warrington, PA)から入手できる。修飾型ナノ粒子、例えばNanoprobes, Inc. (Yaphank, NY)製のNanogold(登録商標)ナノ粒子が入手可能である。タンパク質またはペプチドへの結合のために使用される官能性ナノ粒子が市販されている。
【0135】
架橋剤
いくつかの態様において、タンパク質またはペプチドは、当技術分野で公知の様々な架橋試薬、例えばホモ二官能性、ヘテロ二官能性、および/または光活性化型架橋試薬を用いて標識され得る。このような試薬の非限定的な例には、ビスイミデート;1,5-ジフルオロ-2,4-(ジニトロベンゼン);スベリン酸のN-ヒドロキシスクシニミドエステル;酒石酸ジスルクニミジル;ジメチル-3,3'-ジチオ-ビスプロピオンイミデート;N-スクシニミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート;4-(ブロモアミノエチル)-2-ニトロフェニルアジド;および4-アジドグリオキサールが含まれる。典型的な態様において、酸性の残基とアミノ基またはその他の基を架橋するのに、カルボジイミド架橋剤、例えばDCCDまたはEDCが使用され得る。このような試薬は、様々なタイプの標識、例えば蛍光標識を付加するために修飾され得る。
【0136】
二官能性架橋試薬は、様々な目的で幅広く使用されている。二つの同一の官能基を有するホモ二官能性試薬は、同一および異なる高分子間または高分子のサブユニット間の架橋を誘導するのに、およびポリペプチドリガンドをそれらの特異的な結合部位に連結するのに非常に有効であることが証明された。ヘテロ二官能性試薬は、二つの異なる官能基を含む。二つの異なる官能基の異なる反応性という利点を生かすことで、選択的および順序的の両方の意味で架橋が制御され得る。二官能性架橋試薬は、それらの官能基の特異性に従って、例えばアミノ、スルフヒドリル、グアニジノ、インドール、カルボキシルに特異的な基に、分類され得る。これらのうち、遊離アミノ基に対する試薬は、それらが商業的に入手できること、合成が容易であること、およびそれらに適用され得る反応条件が穏やかであることから特に人気である。ヘテロ二官能性架橋試薬の大部分は、第一級アミン反応基およびチオール反応基を含む。
【0137】
別の例において、ヘテロ二官能性架橋試薬およびその架橋試薬を使用する方法は記載されている(参照により本明細書に組み入れられる米国特許第5,889,155号)。架橋試薬は、求核性のヒドラジド残基と求電子性のマレイミド残基を結合し、一つの例においては、アルデヒドと遊離のチオールのカップリングを実現する。架橋試薬は、様々な官能基を架橋するために修飾され得る。
【0138】
クローニング、遺伝子移入、および発現のためのベクター
特定の態様において、ペプチドまたはタンパク質、例えば融合タンパク質を発現させ、次いでこれを精製し使用するために発現ベクターが使用され得る。他の態様において、発現ベクターは、例えば遺伝子療法において使用され得る。発現には、適当なシグナルがベクターに提供されていることが必要であり、これには様々な調節エレメント、例えば宿主細胞における関心対象の遺伝子の発現を駆動する、ウイルス源または哺乳動物源のいずれか由来のエンハンサー/プロモーターが含まれる。宿主細胞中でのメッセンジャーRNAの安定性および翻訳性を最適化するよう設計されたエレメントも公知である。
【0139】
調節エレメント
「発現構築物」または「発現ベクター」という用語は、遺伝子産物をコードする核酸を含み、核酸コード配列の一部または全てが転写され得る任意のタイプの遺伝子構築物を含む意味で用いられる。好ましい態様において、遺伝子産物をコードする核酸は、プロモーターの転写制御下にある。「プロモーター」は、細胞の合成機構または導入された合成機構により認識され、特定の遺伝子の転写を開始するのに必要とされるDNA配列を意味する。「転写制御下」という成句は、プロモーターが、RNAポリメラーゼ開始反応および遺伝子発現を制御するため、その核酸との関係で正確な位置および方向にあることを意味する。
【0140】
関心対象の核酸配列の発現を制御するのに使用される特定のプロモーターは、それが標的細胞において核酸の発現を誘導できる限り重要ではないと考える。従って、ヒト細胞が標的化される場合、核酸コード領域を、ヒト細胞において発現させることができるプロモーターの隣にかつその制御下に配置することが好ましい。一般論を言えば、このようなプロモーターには、ヒトプロモーターまたはウイルスプロモーターのいずれも含まれ得る。
【0141】
様々な態様において、ヒトサイトメガロウイルス(CMV)最初期遺伝子プロモーター、SV40初期プロモーター、ラウス肉腫ウイルス長末端反復、ラットインスリンプロモーター、およびグルタルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼプロモーターが、関心対象のコード配列の高レベル発現を得るのに使用され得る。関心対象のコード配列の発現を達成するために当技術分野で周知の他のウイルスまたは哺乳動物細胞または細菌ファージのプロモーターを使用することも、所定の目的にとってその発現レベルが十分である限り、考慮される。
【0142】
cDNAインサートが使用される場合、典型的には遺伝子転写物の適当なポリアデニル化をもたらすためにポリアデニル化シグナルが含まれ得る。ポリアデニル化シグナルの性質は、本発明の実施を成功させる上で重要であるとは考えていないが、任意のそような配列、例えばヒト成長ホルモンおよびSV40のポリアデニル化シグナルが使用され得る。ターミネーターもまた、発現構築物のエレメントとして考慮される。これらのエレメントは、メッセージレベルを増強し、その構築物から他の配列への読み通し(read throught)を最小限に抑える働きをなし得る。
【0143】
選択マーカー
特定の態様において、核酸構築物を含有する細胞は、インビトロまたはインビボで、発現構築物にマーカーを含めることによって同定され得る。このようなマーカーは、細胞に識別可能な変化を与え、発現構築物を含有する細胞の同定を容易にする。通常、薬物選択マーカーの導入が、形質転換体のクローニングおよび選択を助ける。例えば、ネオマイシン、ピューロマイシン、ハイグロマイシン、DHFR、GPT、ゼオシン、およびヒスチジノールに対する耐性を付与する遺伝子が有用な選択マーカーである。あるいは、酵素、例えば単純疱疹ウイルスチミジンキナーゼ(tk)またはクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)が使用され得る。免疫学的マーカーもまた使用され得る。使用される選択マーカーは、それが遺伝子産物をコードする核酸と同時に発現できる限り、重要であるとは考えていない。選択マーカーのさらなる例は、当業者に周知である。
【0144】
発現ベクターの送達
発現ベクターを細胞に導入する方法は多く存在する。特定の態様において、発現構築物は、ウイルスまたはウイルスゲノム由来の人工構築物を含む。特定のウイルスが受容体媒介性のエンドサイトーシスを通じて細胞に侵入し、宿主細胞のゲノムに統合され、ウイルス遺伝子を安定的かつ効率的に発現する能力は、それらを、外来遺伝子を哺乳動物細胞に移入するための魅力的な候補としている(Ridgeway, In: Vectors: A Survey of Molecular Cloning Vectors and Their Uses, Rodriguez et al., eds., Stoneham: Butterworth, pp. 467-492, 1988; Nicolas and Rubenstein, In: Vectors: A survey of molecular cloning vectors and their uses, Rodriguez and Denhardt, eds., Stoneham: Butterworth, pp. 494-513, 1988; Baichwal and Sugden, 1986, In: Gene Transfter, Kucherlapati R, ed., New York, Plenum Press, pp. 117-148; Temin, In: Gene Transfer, Kucherlapati R, ed., New York, Plenum Press, pp. 149-188, 1986)。好ましい遺伝子療法ベクターは、一般的に、ウイルスベクターである。
【0145】
外来遺伝子物質を受け入れることができるいくつかのウイルスは、収容できるヌクレオチドの数および感染する細胞の範囲において限度があるが、これらのウイルスは、遺伝子発現に成功することが実証されている。しかし、アデノウイルスは、それらの遺伝子物質を宿主ゲノムに統合せず、従って遺伝子の発現のために宿主の複製を必要としないことから、それらは迅速、効率的な異種遺伝子の発現に理想的に適している。複製感染性ウイルス(replication infective viruses)を調製する技術は当技術分野で周知である。
【0146】
ウイルス送達系を使用する際、ベクター構築物を受容した細胞、動物、または個体において望ましくない反応を引き起こさないよう、望ましくない混入物質、例えば不完全な妨害性のウイルス粒子または内毒素およびその他の発熱物質を本質的に含まない程度に十分にビリオンを精製することが望まれる。好ましいベクター精製手段は、浮遊密度勾配、例えば塩化セシウム勾配遠心分離の使用を含む。
【0147】
遺伝子ベクターとして使用されるDNAウイルスには、パポバウイルス(例えばシミアンウイルス40、ウシパピローマウイルス、およびポリオーマ)(Ridgeway, 1988; Baichwal and Sugden, 1986)ならびにアデノウイルス(Ridgeway, 1988; Baichwal and Sugden, 1986)が含まれる。好ましいインビボ送達法の一つは、アデノウイルス発現ベクターの使用を含む。アデノウイルスベクターはゲノムDNAへの統合については能力が低いことが公知であるが、この特徴は、これらのベクターによりもたらされる高い遺伝子移入効率によって埋め合わせされる。「アデノウイルス発現ベクター」は、(a)構築物のパッケージングを支持し、(b)その内部にクローニングされたアンチセンスまたはセンスポリヌクレオチドを発現するのに十分なアデノウイルス配列を含む構築物を含む意味があるがこれに限定されない。
【0148】
複製欠損性のアデノウイルスベクターの生成および増幅は、Ad5 DNAフラグメントによってヒト胎児由来腎臓細胞から形質転換され構成的にE1タンパク質を発現する、293と呼ばれるヘルパー細胞株に基づく(Graham et al., J. Gen. Virol., 36: 59-72, 1977)。E3領域はアデノウイルスゲノムに必須ではないので(Jones and Shenk, Cell, 13: 181-188, 1978)、現在のアデノウイルスベクターは、293細胞の助けにより、E1、E3のいずれか、または両方の領域に外来DNAを保有する(Graham and Prevec, In: Methods in Molecular Biology: Gene Transfer and Expression Protocol, E. J. Murray, ed., Humana Press, Clifton, NJ, 7: 109-128,1991)。
【0149】
ヘルパー細胞株は、ヒト細胞、例えばヒト胎児由来腎臓細胞、筋細胞、造血細胞、または他のヒト胚間葉細胞もしくは上皮細胞から獲得され得る。あるいは、ヘルパー細胞は、ヒトアデノウイルスを許容する他の哺乳動物種の細胞から獲得され得る。このような細胞には、例えばベロ細胞または他のサル胚間葉細胞もしくは上皮細胞が含まれる。上記のように、好ましいヘルパー細胞株は293である。
【0150】
Racherら(Biotechnology Techniques, 9:169-174, 1995)は、293細胞を培養しアデノウイルスを増幅するための改良法を開示した。一つの形式において、自然細胞凝集物は、100〜200mlの培地を含む1リットルのシリコン処理したスピナーフラスコ(Techne, Cambridge, UK)に個々の細胞を接種することによって培養される。40rpmで撹拌した後、トリパンブルーを用いて細胞の生存率を概算する。別の形式においては、Fibra-Celマイクロキャリア(Bibby Sterlin, Stone, UK)(5g/l)を以下の通り使用する。5mlの培地に再懸濁された細胞接種物を、250mlのエルレンマイアーフラスコ中のキャリア(50ml)に加え、ときどき撹拌しながら1〜4時間静置する。次いで培地を50mlの新鮮な培地に交換し、震盪を開始する。ウイルスの生成のために、細胞は約80%のコンフルエンスに達するまで培養された後、培地を交換し(終量の25%に)、MOIが0.05のアデノウイルスを加える。培養物は一晩静置し、その後に容量を100%まで増やし、震盪をさらに72時間行う。
【0151】
他の遺伝子移入ベクターは、レトロウイルスから構築され得る。レトロウイルスは、感染した細胞においてそれらのRNAを逆転写プロセスによって二重鎖DNAに変換する能力により特徴付けられる、単鎖RNAウイルスのグループである(Coffin, In: Virology, Fields et al., eds., Raven Press, New York, pp. 1437-1500, 1990)。次いで、得られるDNAは、細胞の染色体にプロウイルスとして安定的に統合され、ウイルスタンパク質の合成がなされる。この統合により、ウイルス遺伝子配列はレシピエント細胞およびその子孫で保持されることになる。レトロウイルスゲノムは、三つの遺伝子、gag、pol、およびenvを含み、これらはそれぞれ、カプシドタンパク質、ポリメラーゼ酵素、およびエンベロープ成分をコードする。gag遺伝子の上流に見られる配列は、ゲノムをビリオンにパッケージするシグナルを含む。二つの長末端反復(LTR)配列は、ウイルスゲノムの5'および3'末端に存在する。これらは強いプロモーターおよびエンハンサー配列を含み、宿主細胞ゲノムにおける統合にも必要とされる(Coffin, 1990)。
【0152】
レトロウイルスベクターを構築するため、関心対象のタンパク質をコードする核酸は、複製欠損性のウイルスを生じるよう、ウイルスゲノムの特定ウイルス配列の位置に挿入される。ビリオンを生成するため、gag、pol、およびenv遺伝子を含むがLTRおよびパッケージング成分を含まないパッケージング細胞株が構築される(Mann et al., Cell, 33: 153-159,1983)。レトロウイルスLTRおよびパッケージング配列と共に、cDNAを含む組換えプラスミドがこの細胞株に導入されると(例えばリン酸カルシウム沈降によって)、パッケージング配列は、組換えプラスミドのRNA転写物をウイルス粒子にパッケージし、その後これが培養培地に分泌される(Nicolas and Rubenstein, 1988; Temin, 1986; Mann et al., 1983)。次いで、組換えレトロウイルスを含有する培地が回収され、必要に応じて濃縮され、そして遺伝子移入に使用される。レトロウイルスベクターは、幅広い細胞型に感染することができる。しかし、統合および安定な発現には、宿主細胞の分裂が必要となる(Paskind et al., Virology, 67: 242-248, 1975)。
【0153】
他のウイルスベクターが発現構築物として使用される場合がある。ワクシニアウイルス(Ridgeway, 1988; Baichwal and Sugden, 1986; Coupar et al., Gene, 68: 1-10, 1988)、アデノ随伴ウイルス(AAV)(Ridgeway, 1988; Baichwal and Sugden, 1986; Hermonat and Muzycska, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81: 6466-6470,1984)、および疱疹ウイルス等のウイルス由来のベクターが使用され得る。これらは、様々な哺乳動物細胞に対していくつかの魅力的な特徴を提供する(Friedmann, Science, 244: 1275-1281, 1989; Ridgeway, 1988; Baichwal and Sugden, 1986; Coupar et al., Gene, 68: 1-10, 1988; Horwich et al., J. Virol., 64: 642-650, 1990)。
【0154】
薬学的組成物
いくつかの態様において、PlGFリガンドおよび/または一つもしくは複数のその他の治療剤が、被検体に、例えば癌を有する被検体に投与され得る。このような薬剤は、薬学的組成物の形態で投与され得る。一般的に、これには、ヒトまたは動物に対して有害であり得る不純物を本質的に含まない組成物を調製することが必要である。
【0155】
一般的には、治療剤を安定化し、標的細胞による取り込みを可能にする適当な塩および緩衝剤が使用される。水性の組成物は、薬学的に許容されるキャリアまたは水性媒体に溶解または分散された、有効量のPlGF結合タンパク質またはペプチドを含み得る。「薬学的または薬理学的に許容される」という成句は、動物またはヒトに投与した際に、有害な、アレルギー性の、またはその他の望ましくない反応を生じない分子性物体および組成物を意味する。本明細書中で使用する場合、「薬学的に許容されるキャリア」には、任意のおよび全ての溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤等が含まれる。このような媒体および薬剤を薬学的に活性な物質のために使用することは、当技術分野で周知である。任意の従来的な媒体または薬剤が本明細書中に開示されるPlGFリガンドと不適合な場合を除いて、その治療用組成物における使用が考慮される。補助的な活性成分もまた、組成物に加えられ得る。
【0156】
本発明の方法および組成物には、古典的な薬学的製剤が含まれ得る。これらの組成物の投与は、その経路を通じて標的組織が利用できる限り、任意の一般的経路を通じて行われ得る。この経路には、経口、経鼻、口腔、直腸、経膣、または局所が含まれる。あるいは、投与は、同所、皮内、皮下、筋内、腹腔内、髄腔内、動脈内、または静脈内注射によりなされ得る。このような組成物は通常、薬学的に許容される組成物として投与される。
【0157】
使用に適した薬学的形態には、無菌水溶液または無菌分散物および無菌溶液または無菌分散物を調製するための無菌粉末が含まれる。これは製造および保存条件下で安定でなければならず、微生物、例えば細菌および真菌の混入作用から保護されなければならない。キャリアは、例えば水、エタノール、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコール等)、それらの適当な混合物ならびに植物油を含む溶媒または分散媒であり得る。適当な流動性は、例えば、コーティング、例えばレシチンの使用によって、分散物の場合は必要な粒子径の維持によって、および界面活性剤の使用によって維持され得る。微生物作用の抑止は、様々な抗菌剤および抗真菌剤、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサール等によってもたらされ得る。多くの場合、等張剤、例えば糖または塩化ナトリウムを含むことが好ましい。組成物の長期的な吸収は、その組成物において吸収を遅らせる薬剤、例えばモノステアリン酸アルミニウム、およびゼラチンを使用することによってもたらされ得る。
【0158】
当業者は、薬学的組成物が、例えば経口または非経口、例えば静脈内を含む様々な経路によって被検体に投与され得ることを認識しているであろう。いくつかの場合において、PlGFリガンドは、リポソームの表面に提示されるかまたはリポソームに内包され得る。リポソームは、リン脂質またはその他の脂質からなり、かつ製造および投与が比較的簡単な、一般的に非毒性であり、生理学的に許容および代謝されるキャリアである。
【0159】
特定の態様において、有効量の治療剤、例えばPlGFリガンドが、被検体に投与されなければならない。「有効量」は、所望の効果を生じる薬剤の量である。有効量は、例えば、薬剤の効能および意図する効果に依存し得る。例えば、過形成状態、例えば黄斑変性または子宮内膜症の処置には、固形腫瘍を減少もしくは除去するためまたはその転移を防止もしくは減少させるための癌療法において必要とされる量と比較して、少なめの量の抗血管新生剤が必要とされ得る。特定の目的における特定の薬剤の有効量は、当業者に周知の方法を用いて決定され得る。
【0160】
治療剤
化学療法剤
特定の態様において、化学療法剤が、一つまたは複数の抗血管新生剤、例えばPlGFリガンドと同時投与され得る。化学療法剤には、5-フルオロウラシル、ブレオマイシン、ブスルファン、カンプトテシン、カルボプラチン、クロラムブシル、シスプラチン(CDDP)、シクロホスファミド、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エストロゲン受容体結合剤、エトポシド(VP16)、ファルネシル-タンパク質トランスフェラーゼ阻害剤、ゲムシタビン、イホスファミド、メクロレタミン、メルファラン、マイトマイシン、ナベルビン、ニトロソ尿素類、プリカミシン(plicomycin)、プロカルバジン、ラロキシフェン、タモキシフェン、タキソール、テモゾロミド(temazolomide)(DTICの水性型)、トランス白金(transplatinum)、ビンブラスチンおよびメトトレキサート、ビンクリスチン、または上記薬剤の任意のアナログもしくは誘導変種体が含まれるがこれらに限定されない。
【0161】
化学療法剤および投与方法、用量等は当業者に周知である(例えば、関連箇所が参照により本明細書に組み入れられる「Physicians Desk Reference」 Goodman & Gilmanの「The Pharmacological Basis of Therapeutics」および「Remington's Pharmaceutical Sciences」を参照のこと)。処置する被検体の状態によっては、ある程度の用量のばらつきが生じのが当然であろう。いずれの場合も、投与責任者が個々の被検体にとっての適当な用量を決定するであろう。
【0162】
ホルモン
コルチコステロイドホルモンは、他の化学療法剤の効果を増大することができ、その結果、それらは併用処置として頻繁に使用される。プレドニゾンおよびデキサメタゾンは、コルチコステロイドホルモンの例である。プロゲスチン、例えばカプロン酸ヒドロキシプロゲステロン、酢酸メドロキシプロゲステロン、および酢酸メゲストロールは、子宮内膜および乳房の癌に使用される。エストロゲン、例えば、ジエチルスチルベストロールおよびエチニルエストラジオールは、乳房および前立腺等の癌に使用される。抗エストロゲン、例えばタモキシフェンは、乳房等の癌に使用される。アンドロゲン、例えばプロピオン酸テストステロンおよびフルオキシメステロンもまた、乳癌の処置に使用される。
【0163】
血管新生阻害剤
特定の態様において、本明細書中に開示されるPlGFリガンドは、一つまたは複数の他の抗血管新生剤、例えばアンジオスタチン、バキュロスタチン(baculostatin)、カンスタチン(canstatin)、マスピン、抗VEGF抗体、抗血管増殖因子抗体、抗Flk-1抗体、抗Flt-1抗体、ラミニンペプチド、フィブロネクチンペプチド、プラスミノゲン活性化因子阻害剤、組織メタロプロテイナーゼ阻害剤、インターフェロン、インターロイキン12、IP-10、Gro-B、トロンボスポンジン、2-メトキシエストラジオール(2-methoxyoestradiol)、プロリフェリン(proliferin)関連タンパク質、カルボキシアミドトリアゾール、CM101、マリマスタット(Marimastat)、ポリ硫酸ペントサン、アンジオポエチン2、インターフェロン-アルファ、ハービマイシンA、PNU145156E、16Kプロラクチンフラグメント、リノマイド(Linomide)、サリドマイド、ペントキシフィリン、ゲニステイン、TNP-470、エンドスタチン、パクリタキセル、アクチン(accutin)、アンジオスタチン、シドホビル、ビンクリスチン、ブレオマイシン、AGM-1470、血小板第4因子、またはミノサイクリンと同時投与され得る。
【0164】
免疫調節剤
本明細書中で使用する場合、「免疫調節剤」という用語には、サイトカイン、幹細胞成長因子、リンホトキシン、および造血因子、例えばインターロイキン、コロニー刺激因子、インターフェロン(例えばインターフェロン-α、-β、および-γ)、ならびに「S1因子」と称される幹細胞成長因子が含まれる。適当な免疫調節部分の例には、IL-2、IL-6、IL-10、IL-12、IL-18、IL-21、インターフェロン-ガンマ、TNF-アルファ等が含まれる。
【0165】
「サイトカイン」という用語は、ある細胞集団により放出され、細胞間メディエーターとして別の細胞に作用するタンパク質またはペプチドの総称である。本明細書の広範囲で使用されるように、サイトカインの例には、リンホカイン、モノカイン、成長因子、および伝統的なポリペプチドホルモンが含まれる。サイトカインには、成長ホルモン、例えばヒト成長ホルモン、N-メチオニルヒト成長ホルモン、およびウシ成長ホルモン;副甲状腺ホルモン;サイロキシン;インスリン;プロインスリン;レラキシン;プロレラキシン;糖タンパク質ホルモン、例えば卵胞刺激ホルモン(FSH)、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、および黄体化ホルモン(LH);肝細胞増殖因子(hepatic growth factor);プロスタグランジン、線維芽細胞成長因子;プロラクチン;胎盤ラクトゲン、OBタンパク質;腫瘍壊死因子-αおよび-β;ミューラー阻害因子;マウス性腺刺激ホルモン関連ペプチド;インヒビン;アクチビン;血管内皮増殖因子;インテグリン;トロンボポエチン(TPO);神経発育因子、例えばNGF-β;血小板増殖因子;トランスホーミング増殖因子(TGF)、例えばTGF-αおよびTGF-β;インスリン様成長因子-Iおよび-II;エリトロポイエチン(EPO);骨誘導因子;インターフェロン、例えばインターフェロン-α、-β、および-γ;コロニー刺激因子(CSF)、例えばマクロファージ-CSF(M-CSF);顆粒球-マクロファージ-CSF(GM-CSF);ならびに顆粒球-CSF(G-CSF);インターロイキン(IL)、例えばIL-1、IL-1α、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-10、IL-11、IL-12;IL-13、IL-14、IL-15、IL-16、IL-17、IL-18、IL-21 、LIF、G-CSF、GM-CSF、M-CSF、EPO、kit-リガンド、またはFLT-3、アンジオスタチン、トロンボスポンジン、エンドスタチン、腫瘍壊死因子、およびLTが含まれる。本明細書中で使用する場合、サイトカインという用語には、天然源由来または組換え細胞培養物由来のタンパク質およびネイティブ配列のサイトカインの生物学的に活性な等価物が含まれる。
【0166】
ケモカインは一般的に、免疫エフェクター細胞をケモカイン発現部位に動員する化学誘引物質として作用する。他の免疫系成分の処置部位への動員を増強するため、特定のケモカイン遺伝子を、例えばサイトカイン遺伝子と組み合わせて発現させるのが有利であり得る。ケモカインには、RANTES、MCAF、MIP1-アルファ、MIP1-ベータ、およびIP-10が含まれるがこれらに限定されない。当業者は、特定のサイトカインが化学誘引効果も有することが公知であり、ケモカインという名の下で分類され得ることを認識しているであろう。同様に、免疫調節剤およびサイトカインという用語は、それぞれのメンバーが重複している。
【0167】
放射性同位元素療法および放射免疫療法
いくつかの態様において、本明細書中に開示および主張するペプチドおよび/またはタンパク質は、放射性核種(radiionuclide)療法または放射免疫療法において使用され得る(例えば、各々参照により本明細書に組み入れられるGovindan et al., 2005, Technology in Cancer Research & Treatment, 4: 375-91; Sharkey and Goldenberg, 2005, J. Nucl. Med. 46: 115S-127S; Goldenberg et al. (submitted MS), 「Antibody Pretargeting Advances Cancer Radioimmunodetection and Radioimmunotherapy」を参照のこと)。特定の態様において、PlGFリガンドは、以下で議論されるように、使用する放射性同位元素で直接的にタグ標識がなされて、被検体に投与され得る。代替の態様において、放射性同位元素は、上記のプレターゲティング法において、ハプテンペプチドまたは放射性標識され疾患組織におけるPlGF発現が増加した部位に局在する二特異性抗体の投与後に注射されるPlGFリガンドを用いて投与され得る。
【0168】
疾患組織を処置するのに有用な放射性同位元素には、111In、177Lu、212Bi、213Bi、211At、62Cu、64Cu、67Cu、90Y、125I、131I、32P、33P、47Sc、111Ag、67Ga、142Pr、153Sm、161Tb、166Dy、166Ho、186Re、188Re、189Re、212Pb、223Ra、225Ac、59Fe、75Se、77As、89Sr、99Mo、105Rh、109Pd、143Pr、149Pm、169Er、194Ir、198Au、199Au、および211Pbが含まれるがこれらに限定されない。治療用放射性核種は好ましくは、オージェ放射について20〜6,000keVの範囲、好ましくは60〜200keVの範囲、ベータ放射について100〜2,500keV、およびアルファ放射について4,000〜6,000keVの崩壊エネルギーを有する。有用なベータ粒子放射性核種の最大崩壊エネルギーは、好ましくは20〜5,000keV、より好ましくは100〜4,000keV、最も好ましくは500〜2,500keVである。実質的にオージェ放射性粒子と共に崩壊する放射性核種も好ましい。例えば、CO-58、Ga-67、Br-80m、Tc-99m、Rh-103m、Pt-109、In-111、Sb-119、I-125、Ho-161、Os-189m、およびIr-192である。有用なベータ粒子放射性核種の崩壊エネルギーは、好ましくは<1,000keV、より好ましくは<100keV、最も好ましくは<70keVである。実質的にアルファ粒子の発生と共に崩壊する放射性核種も好ましい。このような放射性核種には、Dy-152、At-211、Bi-212、Ra-223、Rn-219、Po-215、Bi-211、Ac-225、Fr-221、At-217、Bi-213、およびFm-255が含まれるがこれらに限定されない。有用なアルファ粒子放射性の放射性核種の崩壊エネルギーは、好ましくは2,000〜10,000keV、より好ましくは3,000〜8,000keV、最も好ましくは4,000〜7,000keVである。
【0169】
例えば、その61.5時間という半減期ならびにベータ粒子およびガンマ線の豊富な供給源であることから放射免疫療法にとってより見込みのある放射性同位元素の一つであるとみなされている67Cuが、キレート剤であるp-ブロモアセトアミド-ベンジル-テトラエチルアミン四酢酸(TETA)を用いてPlGFリガンド、例えば抗PlGF抗体に結合され得る。あるいは、高エネルギー性のベータ粒子を放射する90Yが、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)を用いてペプチド、抗体、融合タンパク質、またはそれらのフラグメントに結合され得る。
【0170】
さらなる可能性のある放射性同位元素には、11C、13N、15O、75Br、198Au、224Ac、126I、133I、77Br、133mIn、95Ru、97Ru、103Ru、105Ru、107Hg、203Hg、121mTe、122mTe、125mTe、165Tm、167Tm、168Tm、197Pt、109Pd、105Rh、142Pr、143Pr、161Tb、166Ho、199Au、57Co、58Co、51Cr、59Fe、75Se、201TI、225Ac、76Br、169Yb等が含まれる。
【0171】
別の態様において、放射線増感剤が、裸のまたは複合体型のPlGFリガンド、抗体、または抗体フラグメントと組み合わせて使用され得る。例えば、放射線増感剤は、放射性標識リガンド、抗体、または抗体フラグメントと組み合わせて使用され得る。放射線増感剤の追加は、放射性標識リガンド、抗体、または抗体フラグメント単独での処置と比較して効能を増強し得る。放射線増感剤は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる、D. M. Goldenberg (ed.), CANCER THERAPY WITH RADIOLABELED ANTIBODIES, CRC Press (1995)に記載されている。
【0172】
熱中性子活性化療法のためのホウ素化合物保持キャリア(boron addend-loaded carrier)を有するペプチド、抗体、抗体フラグメント、または融合タンパク質は、通常、同様の方法で使用される。しかし、中性子線の照射を行う前に非標的免疫複合体がなくなるまで待つのが有利であろう。クリアランスは、PlGFリガンドに結合する抗体を用いて促進され得る。この一般原理の解説については米国特許第4,624,846号を参照のこと。例えば、ホウ素化合物(boron addends)、例えばカルボランがPlGFリガンド抗体に付加され得る。カルボランは、当技術分野で周知のように、ペンダント側鎖のカルボキシル官能基を用いて調製され得る。キャリア、例えばアミノデキストランへのカルボランの付加は、カルボランのカルボキシル基の活性化およびキャリア上のアミンとの縮合によって達成され得る。中間複合体はその後、PlGF抗体に結合される。PlGF抗体複合体を投与した後、ボラン化合物は、熱中性子線照射により活性化され、アルファ放射により崩壊され毒性が強く射程の短い効果を生じる放射性原子に変換される。
【0173】
キット
様々な態様は、患者における疾患組織を処置または診断するのに適した要素を含むキットに関するものであり得る。典型的なキットは、少なくとも一つのPlGFリガンドを含み得る。必要に応じて、その他のキット成分には、上記のような、一つまたは複数の他の抗血管新生剤、化学療法剤、二特異性抗体、またはその他の成分が含まれ得る。
【0174】
投与のための組成物を含む要素が消化管を通じた送達、例えば経口送達用に処方されていない場合、キットの要素をいくつかの他の経路を通じて送達できるデバイスが含まれ得る。非経口送達等の適用のためのデバイスの一つのタイプは、組成物を被検体の体内に注射するのに使用されるシリンジである。吸入型デバイスもまた使用され得る。
【0175】
キットの要素は、ひとまとめに包装されるかまたは二つもしくは複数の別個の容器に隔離され得る。いくつかの態様において、容器は、再構成に適した組成物の無菌凍結乾燥処方物を含むバイアルであり得る。キットはまた、再構成および/または他の試薬の希釈に適した一つまたは複数の緩衝液を含み得る。使用され得る他の容器には、ポーチ、トレイ、ボックス、チューブ等が含まれるがこれらに限定されない。キットの要素は、容器内に無菌的に包装および保持され得る。別の含まれ得る成分は、キット使用者向けの、その使用法に関する説明書である。
【0176】
実施例
以下の実施例は、本発明の好ましい態様を実証するために含まれる。以下の実施例に開示される技術は、本発明の実施の際に十分に機能することが見出された典型的な技術であり、従ってその実施の好ましい様式を構成するものとみなせることが当業者により認識されるはずである。しかし、当業者は、本発明の開示に照らせば、本発明の意図および範囲から逸脱することなく、開示される具体的態様において多くの変更をなすことができ、かつそれでも同様または類似の結果を得ることができることを認識するはずである。
【0177】
実施例1. 腫瘍細胞の成長、運動性、血管新生、および転移に対するPlGFの効果
方法および材料
免疫組織化学、組織病理学、およびフローサイトメトリー
フローサイトメトリーは、1〜5μg/mlの一次抗体および1:500希釈のFITC標識二次抗体(Biosource International, Camarillo, CA)を用いて標準的な方法により実施した。データは、Cell Questソフトウェアを用いてBD FACSCaliburフローサイトメーター(BD Biosciences)により収集した。
【0178】
US Biomax Inc.(Rockville, MD)およびTARP, NCI(Bethesda, MD)製のパラフィン包埋した原発性乳癌組織のアレイを、PlGFおよびVEGFの発現について、標準的な免疫組織化学手順(Taylor et al., 2002a)を用いて染色した。組織アレイはまた、Flt-1またはNRP-1(ABXIS, Seoul, Korea)について調査した。スライドを脱パラフィン処理し、適当な正常血清でブロックし、Santa Cruz Biotechnology, Inc.(Santa Cruz, CA)から購入した抗体と共にインキュベートした。一次抗体と共にインキュベートした後、ビオチニル化二次抗体をアプライし、その後に3% H2O2中で内因性ペルオキシダーゼをクエンチした。アビジン-ビオチン-西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)複合体を、洗浄したスライドにアプライした。スライドをHRP基質3',3'-ジアミノベンジジンテトラヒドロクロリド(DAB、Sigma, St. Louis, MO製)と共に10分間インキュベートし、ヘマトキシリン(Sigma)で対比染色した。染色したスライドを100倍で試験し、染色強度を反映する相対値;薄い(0.25〜0.5)、並(0.5〜1.0)、濃い(1.0〜2.0)、および極めて濃い(>2.0)を評価することによって染色強度の等級付けを行った。スコアは0.25ポイントづつの増分であった。全てのスライドを、一人の研究者が読み取り(盲検)、別の研究者が抜き打ち検査をした。
【0179】
腫瘍の生存していると思われる領域(viable-appearing areas)のみを評価し、全体の強度および染色した細胞の%を表す値を各スライドに付した。細胞外、結合組織、および白血球の染色は、スコアに含めなかった。バックグラウンドの染色(対照のAg8抗体により示される)もまた評価し、次いでこれを差し引いた。染色強度が0.5以上の場合に腫瘍標本を陽性であるとみなした。ヒト腫瘍異種移植サンプルをヘマトキシリン(hemotoxylin)およびエオシンで染色した。
【0180】
細胞株
使用した細胞株をさらに特徴付けるために、MCF-7、MDA-MB-231、および-468(American Type Culture collection, Mannassas, VA)を、フローサイトメトリーによりPlGFまたはVEGFの発現について評価した。MDA-MB-231および-468、ならびにMCF-7はまた、細胞単層のIHCによって、エストラジオール受容体アルファ(Santa Cruz Biotechnology)の発現について試験した。エストロゲン受容体について、MCF-7は陽性であり、MDA-MB-231および-468は陰性であった。MDA-MB-231および-468異種移植腫瘍はまた、IHCによってFlt-1について調査し、これは陽性であった。MCF-7腫瘍はFlt-1試験を行わなかった。
【0181】
ファージの単離および選択
ファージライブラリ(Ph.D.-12 Phage Display Peptide Library Kit, New England Biolabs, Inc., Ipswich, MA)を、販売元の方法に従い、組換えヒトPlGF-2(PlGF)または組換えヒトVEGF165(VEGF)(R&D Systems, Flanders, NJ)に対してパニングした。その後のパニングは、PlGFまたはPlGF分子の推定受容体結合部位に対応するペプチドのいずれかを用いて行った。ファージに3ラウンドのパニングを受けさせ、力価についての10倍希釈系列として寒天上にプレーティングした。十分孤立したプラークをタイタープレートから回収し、さらなる調査のために増幅した。
【0182】
配列決定
DNAを増幅したプラークから単離し、Ph.D. キット(M13ファージ特異的)、サーモ・シーケナーゼ・ラジオラベルド・ターミネーター・サイクル・シーケンシング・キット(Thermo Sequenase Radiolabeled Terminator Cycle Sequencing Kit)(USB, Swampscott, MA)によって推奨されるプライマーを用いて配列決定を行った。結合ペプチド1(BP1)は20アミノ酸を含んだ。対照ペプチドであるCPAは、BP1のH、R、およびD残基をAで置換することによって獲得した。BP1およびCPAを商業的手段により合成し(University of Georgia)、これをインビトロおよびインビボで調査した。
【0183】
ペプチド配列を、Flt-1またはPlGFの推定リガンド結合部位に対する相同性について試験した。一つのペプチド、結合ペプチド1(BP1)は、Y199およびL204に対応する、ドメイン2のFlt-1結合部位に対する小さな位置的相同性を有し(Davis-Smyth et al., 1998, J Biol Chem 273: 3216-3222; Iyer et al., 2001, J Biol Chem 276: 12153-12161)、その配列は他のものよりも長かった。他のペプチドは9〜12アミノ酸長であり、パニング間の配列の一貫性に基づき選択した。別個のファージ由来の二つのプラークは同一であった(結合ペプチド3、BP3)。
【0184】
ペプチドの配列:

【0185】
PlGF、VEGF、またはFlt-1に対する結合についてのファージまたは遊離ペプチドの試験
ファージディスプレイ系の販売元の推奨するパニングについてのプロトコルを使用した。各々のコーティングしたウェルについて、(緩衝液対照として)別のウェルを緩衝液中でインキュベートした。コーティング溶液を除去した後、プレートを2%BSA含有PBS中、RTにて1.5時間ブロックした。別のコーティングしていないプレートもブロックし、ファージを希釈するのに使用した。ブロッキング後、増幅したファージ(約108ファージ/ml)を、ブロッキング緩衝液で1:20希釈し、各希釈物50μlをPlGFコート/ブロックしたウェルおよびブロックのみのウェルに加えた。ファージをRTで1〜2時間結合させた。プレートを空にし、ディッピング(dipping)および廃棄(emptying)を3回行うことによって洗浄した(洗浄:0.05% Tween-20含有PBS)。ブロッキング緩衝液で1:1000希釈したHRP結合型の抗M13ファージ抗体(Amersham Biosciences, Buckinghamshire, England)を全てのウェルに加え、RTで1時間インキュベートした。プレートを、記載されるようなディッピングによって洗浄した。基質を追加し、30〜60分後に410nmの吸光度を読み取った。
【0186】
遊離ペプチドの結合は、10μg/ml PlGF、10μg/ml組換えヒトFlt-1融合タンパク質(R & D Systems)、または10μg/ml VEGFで96ウェルプレートをコーティングすることによって決定した。競合アッセイは2.5または25U/mlヘパリン(Sigma, St. Louis, MO)を用いて行った。BP1、3、4およびBP3のスクランブル型(scrBP3)をリンカーを用いて合成し、その後にC末端にFLAGエピトープ(DYKDDDDK SEQ ID NO:5)を付加した。第一の試薬を添加してから30分後、第二の試薬を加え、その後にさらに30分間インキュベートした。ペプチドの結合は、FLAGエピトープを調査することによって評価した(Prickett et al., Biotechniques 7: 580-9, 1989; Castrucci et al., J. Virol. 66: 4647-53, 1992)。490nmで吸光度を読みとった。ELISAベースの結合アッセイにおいて、CPAは、PlGFおよびVEGFに結合したが、Flt-1に対しては微弱な親和性(50%)を示した。CPAエプチドは、インビトロおよびインビボで一貫して不活性であった。
【0187】
腫瘍細胞の生存率
MTT(3-(4,5-ジメチルチアゾリル-2)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロミド、Sigma)アッセイを低血清条件下(1%)で行い、細胞の生存率に対するPlGFの効果、ペプチドの毒性、およびPlGF媒介性の乳房腫瘍細胞の成長に対するそれらの効果を決定した(Mosmann, 1983, J Immunol Meth 65: 55-63; Modrak et al., 2000, Biochem Biophys Res Commun 268: 603-606)。ペプチドの濃度は1〜2μMであり、内因性PlGFの濃度は2nMであった。試験したヒト乳房腫瘍株は:MDA-MB-231、MDA-MB-468、およびMCF-7(ATCC, Mannasses, VA)であった。簡単に説明すると、1%ウシ胎仔血清(FBS)含有培地を含む96ウェルプレートに、5〜10×104細胞/mlとなるよう接種した。24時間後、細胞を、1〜2μMの濃度の各ペプチド(4つの結合ペプチド)を4連でおよび/または2nMの濃度のrhuPlGFで処理した。示された時点の後、0.5mg/ml MTT(5mg/mlストックを血清非含有RPMI培地で1:10希釈した)をウェルに加えた(Mosmann, 1983)。細胞中に紫色の結晶がはっきりと見えたら、プレートは十分現像されたものとみて、酸性アルコール(0.04M HCl含有イソプロパノール)を用いて反応を停止させた。溶解させた結晶の吸光度を570nmで読み取った。腫瘍細胞の移動に対するPlGFのインビトロ効果がこの時点で測定可能であったという理由で、24時間時点を選択した(以下の創傷治癒アッセイを参照のこと)。これらのアッセイを、10%FBSを含有する培地を用いても行い、類似の結果を得た。
【0188】
創傷治癒アッセイ
乳房腫瘍および正常ヒト内皮細胞(HEC)に対するPlGF、VEGF、およびBPペプチドの機能的効果を決定するため、創傷治癒アッセイを行った(Verma et al., 2001, Cell Microbiol 3: 169-180; Sung et al., 2003, Exp Cell Res 287: 209-218; Itokawa et al., Mol. Cancer Ther. 1: 295-302, 2002)。MCF-7、MDA-MB-231、およびMDA-MB-468の乳房腫瘍細胞株またはHECを、ペトリ皿または6ウェルプレートの無菌ガラスカバースリップ上に接種した。細胞が70〜80%のコンフルエントになったら、無菌のプラスチックピペットのチップで単層を引っ掻いた。カバースリップを無菌PBSで洗浄し、次いでペプチド(2μM)単独でまたはPlGFもしくはVEGF(2nM)と組み合わせて、または抗体(0.67〜1μg/ml)で処置した。
【0189】
阻害剤の濃度は50μM PD98059(PD98)(マイトジェン活性化型タンパク質キナーゼ-キナーゼ1[MEK1]阻害剤)、5nMワートマニン(Wortmannin)(ホスファチジルイノシトール3キナーゼ[PI3K]阻害剤)、またはヒト組換え可溶型Flt-1(sFlt-1)(R&D Systems)であった。ペプチドまたはsFlt-1は、細胞に添加する前に、PlGF、VEGF含有培地と共に10分間インキュベートした。細胞は、PlGFの添加前に、PD98およびワートマニンと共に15〜30分間、事前インキュベートした。染色(ライト・ギムザ)およびマウントしたカバースリップを顕微鏡で試験した。5〜10箇所の100×領域は、創傷の縁部から離れ創傷の中心に向かって移動したようである細胞数を計数することによって評価した。結果は、創傷に移動した細胞の平均数/100×領域で報告する。いくつかの場合においては、別の実験のデータを合わせて、表中の様々な処置に含めた。
【0190】
細胞浸潤アッセイ
細胞の浸潤は、5×104細胞をグロースファクターリデューストマトリゲルインベージョンチャンバー(BD Biosciences Discovery Labware, Bedford, MA)に加えることによって決定した(Taylor et al., 2003b; Passaniti et al., 1992, Lab Invest 67, 519-528)。マトリゲル(登録商標)プラグへの添加物質は、総量100μlのPBS中にまとめてRTで10分間、事前インキュベートした後、各添加物質をマトリゲルに加えた。成長因子(2.0または0.2nM)、ペプチド(2μg/ml)、または抗体(1μg/ml)を低血清(0.1%ウシ胎仔血清[FBS])培地下で細胞に加えた。ベースラインおよび化学誘引物質ベースの浸潤(10% FBS)を含めた。浸潤細胞の数は、24時間(MDA-MB-231)または48時間(MCF-7、MDA-MB-468)後に100倍の倍率で染色後のインベージョンチャンバーの膜の底部の細胞数を計数することによって決定した。3〜5回の別々の実験の結果を示す。
【0191】
インビボでの腫瘍の成長に対するペプチド処置の効果
組織培養により成長させたヒト乳房腫瘍細胞株MDA-MB-231を、ヌードマウスの側腹部に皮下(s.c.)移植した。腫瘍が確認できたら、マウスを秤量し、腫瘍を測定した。ペプチド処置は、腫瘍の容積が平均で約0.06〜0.12cm3になった場合に開始した。マウスは、4週間の間、3〜4日間隔で、i.p.注射によって200μgのペプチドを含有するPBSで処置した。各処置の際に動物を秤量し、腫瘍を測定した。第二の実験には、対照ペプチドであるCPAを含めた。最後の処置から3日後、腫瘍および肺を採取した。(実験1からの)肺の全身腫瘍組織量は、各マウスにつき計4つのスライドまたは切片における全ての肺組織において見られたコロニー(<20細胞)、クラスター(>20〜100細胞)、および小結節(>100細胞)を計数することによって決定した。データは、各処置グループ(3〜4匹のマウス/グループ)についての各転移サイズの平均数として表す。各処置グループにおける各々の総数を合算し、これをそのグループにおけるマウスの総数で割った。転移についてのパーセント阻害は、次式:%阻害=(#モック処置 - #処置/#モック処置)×100により決定した。
【0192】
組織培養物中で成長させたMDA-MB-231もまた、SCIDマウスの乳房の脂肪パッド(mfp)に移植した(3×106細胞、4〜5匹/グループ)。このモデルにおいて、大規模な肺転移が発生する可能性は小さい(Richert et al., Breast Cancer Res. 7: R819-27, 2005)。ペプチド処置は、移植から5日目、全てのマウス(8匹を処置)において小さな腫瘍が触診可能になったときに開始した。最後のペプチド処置から3日後、腫瘍を取り出し、秤量した。肺を採取し、上記のようにして転移について顕微鏡で試験した。
【0193】
統計解析
結合、生存率、運動性、血管新生、腫瘍の成長、および転移性全身腫瘍組織量を、ANOVAによって評価した。P<0.05を有意であるとみなした。
【0194】
結果
PlGFは原発性ヒト乳癌および乳房腫瘍細胞株において構成的に発現される。
原発性乳癌および乳房腫瘍細胞株による構成的なPlGFおよびPlGF受容体の発現の頻度を、上記のように組織アレイの免疫組織化学的染色によって調査した。表1に示される結果は、PlGF陽性サンプルの比率がVEGFよりも高い(43%〜60%、PlGF;13%〜14%、VEGF)ことを実証した。PlGF受容体であるNRP-1の発現は、腫瘍内皮ではなく、乳癌の実質に限定された(27%)。他方、腫瘍の実質および内皮は両方とも、Flt-1について陽性であった(それぞれ65%および56%)。
【0195】
(表1)原発性乳癌によるPlGF、VEGF、NRP-1、およびFlt-1の発現

中等度から強度の染色度の腫瘍の数/総サンプル数/アレイ。アレイ1、TARP。アレイ2、市販品。ND、実施せず。
【0196】
肺癌および脳腫瘍(神経膠芽腫)もまた発現頻度が比較的高かった(それぞれ32%および20%、データは示さず)。結腸癌は構成的発現が最も低く(8%)、結腸腫瘍細胞株も同様であった(1/4)(データは示さず)。
【0197】
ヒト乳癌細胞株であるMCF-7、MDA-MB-231、およびMDA-MB-468を、フローサイトメトリーによってPlGFおよびVEGFの発現について分析した。PlGF陽性細胞の割合は、MCF-7、MDA-MB-231、およびMDA-MB-468についてそれぞれ29%、49%、および38%であった。VEGF陽性細胞の割合は、MCF-7、MDA-MB-231、およびMDA-MB-468についてそれぞれ8%、18%、および13%であった。従って、これらの細胞株は、PlGFを比較的高度に発現する細胞であり、かつVEGFを低度に発現する細胞であった。MDA-MB-231および-468の両方の異種移植腫瘍は、PlGF受容体であるFlt-1を発現する。MDA-MB-468はNRP-1について僅かに染色され(示さず)、MDA-MB-231によるNRP-1の発現はすでに発表されている(Soker et al., J. Biol. Chem. 271: 5761-7, 1996)。これらの細胞株は、その後の調査に使用した。
【0198】
PlGF結合ペプチドの誘導
PlGF、NRP-1、およびFlt-1が乳癌細胞により比較的高頻度で発現されることは、PlGFがこれらの細胞において直接的な効果を有し得ることを示唆した。乳癌細胞に対するPlGFの効果を調査するため、PlGFおよびFlt-1に結合するタンパク質(BP)を、ファージペプチドライブラリのパニングによって獲得した。結合ペプチドは、少なくとも3ラウンドのパニング後に獲得された。結合ペプチド1および2(BP1、BP2)はrhuPlGFのパニングから得られ、結合ペプチド3および4(BP3、BP4)は、PlGFの推定受容体結合部位の配列に対応するペプチドで最初に2ラウンドパニングし、その後第3ラウンドとしてrhuPlGFでパニングを行ったファージから得られた。BP3は、2つの異なるファージプラークに共通する配列を表す。
【0199】
単離後、ファージを、PlGFコートプレートを用いたELISAベースの結合アッセイに供した。ファージのBP1についての吸光度の読み取り値(410nm)は0.024(ファージライブラリのバックグラウンドは0.003)であった。この結果は、PlGFパニングを行ったファージのPlGFコートウェルに対する結合がバックグラウンドより10〜20倍増加したことを示した。
【0200】
ペプチドBP1

をC末端にFLAGエピトープを付けて合成し、PlGFおよびFlt-1ならびにVEGFに対する結合について試験した。BP1はPlGF(A490 0.100±0.058)およびVEGF165(A490 0.299±0.174)に結合したが、Flt-1(A490、0.886±0.096)に対する結合が最も強かった。Flt-1に対する結合については、Flt-1を固定化した結合アッセイに非結合型Flt-1を加えることによってさらに試験した。遊離のFlt-1(2nM)の添加は、固定型Flt-1に対するBP1の結合を38%減少させた(5μM BP1のみについてのA490、0.527±0.025;添加した遊離のFlt-1およびBP1の場合、0.327±0.127)。
【0201】
PlGFの存在がBP1-Flt-1の相互作用を妨げるかどうかを決定するため、さらなるアッセイを行った。1〜100nMの濃度のPlGFは、BP1のFlt-1に対する結合に対して有意な効果を有さなかった。これらの知見は、BP1が、PlGFとFlt-1の主要な相互作用が行われるドメイン2以外のFlt-1上の部位と相互作用することを示唆した。その後、BP1と、Flt-1およびPlGF-2の両方に存在するヘパリン結合部位との会合を調査した。図1に示されるように、BP1を添加する前にヘパリンをFlt-1コートプレートに添加すると、BP1の結合が64%減少した(P<0.0002)。しかし、ヘパリン添加の前にBP1を添加した場合、BP1の結合は13%阻害されたにすぎなかった(P>0.05)。従って、BP1は、Flt-1と、そのヘパリン結合部位またはその付近で結合する可能性が非常に高い。
【0202】
BP1は、最初の6残基がビトロネクチンにおいて見出されるヘパリン結合ドメインの最初の6残基と同じパターン(XBBXBX)を有することから、それ自体がヘパリン結合モチーフを含むのかもしれない。このドメインは、血管新生、腫瘍の転移、および/または腫瘍細胞の運動性の阻害に関する能力が向上した代替の結合ペプチド配列の中心部として使用され得る。当業者は、例えば、「X」で示される位置にあるアミノ酸の任意選択が、有用なBP1アナログを生じる可能性があることを理解するであろう。電荷の分布は重要かもしれないが、「B」で示される位置にある他の塩基性残基(例えばヒスチジン、アルギニン、リジン)の置換もまた、有用なBP1アナログを生じ得る。
【0203】
BP1のVEGFに対する測定可能な結合は検出できなかった。予想外にも、BP1はまた、Flt-1に対して、バックグラウンドの10倍結合した。Flt-1に対する結合の特異性を、ELISAベースの結合アッセイに非結合型Flt-1(2nM)を添加することによって試験し、これによって5μM BP1の固定型Flt-1に対する結合が38%減少した。
【0204】
ペプチドBP3およびBP4、ならびにBP3のスクランブル型(BP3scr)もまた、遊離ペプチドとして、PlGFおよびFlt-1に対する結合についてアッセイしたが、50μMまでの濃度ではPlGFに検出可能な程度に結合しなかった。これらのペプチドについては、Flt-1に対する測定可能な結合が検出できなかった。
【0205】
PlGFまたはペプチドに曝した場合の乳房腫瘍細胞の生存率
PlGFおよび4つ全てのペプチドを、乳房腫瘍細胞の生存率に対するそれらの効果についてアッセイした。多くの原発性および転移性の乳癌の代表的存在であることから、細胞株MCF-7、MDA-MB-231、およびMDA-MB-468を選択した。MCF-7はエストロゲン受容体陽性であり、中程度によく分化した組織学を有する。MDA-MB-231は、最初に転移性胸水から単離され(Cailleau et al., 1974, J Natl Cancer Inst 53: 661-674)、エストロゲン受容体陰性であり、分化度の乏しいグレードIIIの腺癌異種移植片を形成する。MDA-MB-468もまたエストロゲン受容体陰性であり、分化度が乏しく、ヌードマウスにおいて腫瘍形成性である。3つの腫瘍は全て、PlGF陰性の結腸腫瘍細胞株HT-29と比較して3〜4倍のPlGFを構成的に産生し(フローサイトメトリーによる)、かつ低レベルのPlGF受容体Flt-1を発現する(データは示さず)。MDA-MB-231は、PlGFを最も多く産生する細胞であり、MDA-MB-468が最も低い。
【0206】
腫瘍細胞培養物にPlGF(2nM)を添加すると、24時間の培養後に細胞数が増加した(MDA-MB-231およびMDA-MB-468についてP<0.04)(図4)。PlGFにより刺激された生存率および増殖に対するペプチドの効果を決定するため、ペプチド(1〜2μM)をPlGF(2nM)と混合した。PlGF含有MTTアッセイへのペプチドの添加の結果を図4に示す。PlGFを含有するMCF-7培養物へのBP4の添加(図4A)は、細胞生存率の有意な減少をもたらし、MDA-MB-231へのBP3の添加も同様であった(P<0.03)。3つ全てのペプチドは、PlGFを含有するMDA-MB-468培養物の生存率を減少させた(示さず)(P<0.03)。
【0207】
腫瘍細胞をペプチドのみ(2μM)と共に24時間インキュベートした場合、生存率が21%低下した(P<0.005)MCF-7とBP1とのインキュベーションの場合を除き、細胞生存率に有意な効果を及ぼさなかった。MCF-7はまた、BP3との48時間のインキュベーション後も、未処置の対照と比較して生存率を低下させた(P>0.05)。
【0208】
PlGFは腫瘍細胞の移動を刺激し、転移に関与する
PlGFが腫瘍の再発または転移の可能性を高め得るかどうかを決定した。転移性の腫瘍細胞は、増加した運動性および浸潤性を示すので、乳癌細胞株MCF-7、MDA-MB-231、およびMDA-MB-468を含む運動性・浸潤性アッセイに内因性のPlGFを加えた。PlGFは、MDA-MB-231およびMCF-7の運動性を1.8〜2.1倍増加させた(P<0.01)が、MDA-MB-468の運動性には有意な影響を及ぼさなかった。組換え可溶型Flt-1を添加すると(2nM)、PlGFの刺激効果が有意に、MDA-MB-231およびMCF-7についてそれぞれ55%および67%ブロックされた(P<0.02)(表2)。抗PlGF抗体(1μg/ml)もまた、PlGFにより媒介されるMDA-MB-231およびMCF-7の運動性をブロックした(P<0.02)(表2)。BP1はまた、PlGFにより刺激されたMDA-MB-231およびMCF-7の運動性を有意に阻害した(P<0.02)。対照ペプチドCPAは効果を有さず、VEGF(2nM)も同様であった(表2)。PlGFを含むアッセイに添加した抗VEGF抗体は、PlGFにより刺激されたMDA-MB-231の移動に影響せず、これによりこの細胞株において観察された運動性の増加はVEGF活性に起因するものではないことが示唆された(表2)。
【0209】
(表2)PlGFにより刺激された腫瘍細胞の運動性の、ペプチドBP1、Flt-1、抗PlGF抗体、抗VEGF抗体、およびPI3K/MEK1阻害剤による阻害


【0210】
PlGF、VEGF、およびFlt-1、2nM;ペプチド、2μM。抗体濃度は1μg/mlであった。MEK1阻害剤、PD98059(PD98)、50μM。PI3K阻害剤、ワートマニン、5nM。結果は、18〜24時間で、5〜10箇所の100倍顕微鏡領域における「創傷」に移動した細胞の平均数±SD/処置/実験として表す。n=2〜4実験。抗体処置および阻害剤処置についての値は、全ての関連する対照を含めて、別々の実験から得た。2つの実験において、全ての値が、以前の実験の大多数の値のおよそ半分であったため、それらを2倍することにより標準化し、次いで他の実験との平均値を算出した。UTは、未処置の対照を示す。UTとの比較でP<0.01(ANOVA);†PlGF単独との比較でP<0.02(ANOVA);‡PlGF単独との比較でP<0.001(ANOVA)。相対活性は、処置の平均値をPlGFまたはVEGF単独での値で割ることによって決定した。
【0211】
PI3KおよびMEK1の両方の活性化は、しばしばチロシンキナーゼ受容体(RTK)の細胞内シグナル伝達と関係する。さらに、活性なPI3KおよびMEK1は、腫瘍細胞の移動に関与する(Zeng et al., J. Biol. Chem. 276: 26969-79, 2001; Hollande et al., Am. J. Physiol. Gastrointest. Liver Physiol. 280: G910-21, 2001)。PlGFにより刺激された運動性がこれらのキナーゼのいずれかの活性化によるものなのかどうかを調査するため、MDA-MB-231を、PlGFおよびPI3K(ワートマニン、5nM)またはMEK1(PD98059、50μM[PD98])の阻害剤を用いて処置した。PD98およびワートマニンは、PlGF刺激性の移動を有意に、それぞれ68%および72%阻害した(P<0.001)(表2)。これらの結果は、PlGFが、PI3KおよびMEK1経路の活性化を通じて、おそらくはFlt-1によるPI3Kの活性化を通じて細胞の運動性を刺激することを示唆する。
【0212】
基底膜に浸潤する能力は転移に必須であるため、PlGFまたはVEGFを添加して浸潤アッセイを行った。2.0および0.2nMの両方のPlGFの添加は、24時間後にMDA-MB-231の浸潤をほぼ3倍増加させた(11±8.1未処置 対 30±13.7(2.0nM)または28±12(0.2nM)PlGF処置、P<0.05)(図2)。VEGF(2.0nMまたは0.2nM)は、MDA-MB-231の浸潤能を変化させなかった(10±8.0細胞)。ペプチドBP1の添加は、PlGF刺激性の浸潤を50%減少させた(15±4.2細胞)(P<0.02対PlGF単独)。対照ペプチドCPAは、PlGFの活性を阻害しなかった(35±17.3細胞)。抗PlGF抗体(0.6μg/ml)を0.2nM PlGFアッセイに添加すると、浸潤細胞が46%減少した(15±2.3細胞、一つの実験)。まとめると、これらの結果は、PlGFが攻撃的な腫瘍細胞株MDA-MB-231の浸潤性を刺激すること、および阻害ペプチドBP1は、PlGF抗体と同様、この活性を阻害することを示唆する。同様の結果は、MDA-MB-468およびMCF-7においても得られたが、統計的に有意でなかった(表3)。
【0213】
(表3)PlGFは乳癌細胞株の浸潤能を増加させる。BP1はPlGF媒介性の浸潤能を阻害する。

【0214】
24時間後(MDA-MB-231)または48時間後(MDA-MB-468およびMCF-7)の膜上の細胞数の未処置対照に対する平均変化倍率±SD。PlGFの濃度、0.2nM;ペプチド、2μg/ml。n=2〜4実験/細胞株。P<0.01対未処置。†P<0.02対PlGF単独。
【0215】
ペプチドBP1の治療活性を試験するため、皮下腫瘍として移植した場合に自発的に肺転移を起こすヒト乳癌細胞MDA-MB-231をマウスに移植した。腫瘍の容積が平均0.12cm3になった場合、200μg、週2回、4週間のモック処置またはBP1治療のいずれかを開始した。BP1を与えたマウスは、モック処置をした対照と比較して37%の腫瘍サイズの減少を示した。その後の実験において、処置を、腫瘍が0.07〜0.08cm3になった際に開始した。記載したように、4週間の処置後の、モック処置およびCPA処置した腫瘍の平均容積は、それぞれ0.25および0.33cm3であったが、BP1処置した腫瘍は、平均0.04cm3であった(P<0.05 BP1処置した腫瘍対モック処置またはCPA処置した腫瘍)(図3)。
【0216】
処置から3日後、原発性腫瘍および肺を、顕微鏡試験のために採取した。典型的には、モック処置動物の肺には、大小複数の転移物が含まれており、多くの腫瘍病巣は大部分が肺血管を取り囲むよう成長し、周囲の実質に拡散していた(示さず)。モック処置対照の肺は、平均78±25個の小結節、76±19個のクラスター、および36±6個のコロニー/肺組織全体/マウスを有した。対照的に、BP1処置した肺は、マウスあたり平均5±2、9±2、および5±2個のそれぞれ小結節、クラスター、およびコロニーを有した。これは、ペプチド処置動物の転移性肺小結節の数における94%の減少に相当した(P<0.07)。
【0217】
MDA-MB-231を用いた同所性乳房脂肪パッド(mfp)モデルにおいて、BP1処置は、統計的有意に達しなかったものの、腫瘍の重量を23%減少させた(モック処置、0.423±0.089g;CPA、0.416±0.083g;BP1、0.345±0.095g)。mfpに移植したMDA-MB-231は、おそらく実験期間の短さ(4.5週)が原因で、大きな肺小結節をを生じなかった。しかし、微小転移巣(20から>100細胞)が、肺静脈に隣接して見られた(示さず)。微小転移巣の数は、モック処置、CPA、およびBP1のマウスについて、それぞれ3.4±1.9、2.8±1.3、および0.6±0.5であり(P<0.02対モック処置またはCPA処置)、82%の転移の減少であった。
【0218】
MDA-MB-468異種移植片(平均腫瘍容積:0.19cm3)を保持するマウスを、それぞれのペプチドのi.p.注射(200μg/投与)により処置した(図5)。毎週2回の処置を4週行った後、腫瘍の成長は、BP1(図5A)またはBP3(図5B)で処置したマウスにおいて、それぞれ49%および58%阻害された。腫瘍の成長に対するBP3の効果は2週間の処置後に見られた(図5B)が、BP1の阻害効果は1週間後にあらわれた(図5A)。BP1処置の間の個々の腫瘍容積の平均変化は、10、14、17、および24日で有意であった(P<0.05)(図5A)。BP2処置は効果がなく;腫瘍は、モック処置対照とほぼ同じ速度で成長を続けた(結果は示さず)。BP4処置は、腫瘍成長の20%阻害をもたらした(結果は示さず)。
【0219】
血管新生の阻害
内皮細胞の移動および血管新生に対するPlGF結合ペプチドの効果をさらに調査するため、PlGF、BP1、BP2、またはPBSを含むマトリゲル基底膜プラグを、ヌードマウスの側腹部にs.c.移植した。PBS対照における内部の微小血管の数は16.2±11.4/mm2であった。PlGF単独の移植片は28.9±17.2/mm2を含み(対モック処置移植片で1.8倍)、PlGFおよびBP1を含む移植片はわずか12.3±13.0微小血管/mm2であった(P<0.02)。
【0220】
考察
様々な研究は、乳癌を含む癌によるPlGFの発現が再発、転移、および運動性と相関することを示している(Wei et al., Gut 54: 666-72, 2005; Chen et al., Cancer Lett. 213: 73-82,2004; Parr et al., Eur. J. Cancer 41 : 2819-27,2005; Weidner et al., Am. J. Pathol. 143: 401-9, 1993; Zhang et al., World J. Surg. Oncol. 3: 68,2005)。PlGFはまた、多くの病理学的状態(Carmeliet et al., Nat. Med. 7: 575-83,2001)および腫瘍の新生血管形成(Li et al., FASEB J. 20: 1495-97,2006; Taylor et al., Int. J. Cancer 1-5: 158-69,2003)に関与する。
【0221】
ヒトの癌におけるVEGFおよびPlGFの臨床研究は対立している。例えば、ある報告では、VEGFではなくPlGFが、エクスビボでフィラデルフィア染色体陽性の急性骨髄性白血病の成長を刺激した(Ikai et al., Eur. J. Haematol. 75: 273-9, 2005)。他方、VEGFは腎細胞癌の病期、組織学的等級、ならびにその血管分布および静脈浸潤に関連付けられた(Matsumoto et al. Anticancer Res. 23: 4953-8, 2003)。これらの著者は、PlGFもまたこの癌の独立した予後因子であることを報告した。
【0222】
複数の抗VEGF剤が開発され、ブロッキング抗体、VEGF・受容体の結合を妨げる低分子、およびアンチセンスオリゴヌクレオチドを含むいくつかは臨床試験が行われている(Whatmore et al., 2002, Angiogenesis 5: 45-51; Mulligan-Kehoe et al., 2002, J Biol Chem 277: 49077-49089; Shi and Siemann, 2002, Br J Cancer 87: 119-126; Yang et al., 2003, NEJM 349, 427-434)。これらの研究の結果は、腫瘍の血管新生が複雑かつ冗長であること;すなわち、VEGFが処置により消滅した場合またはVEGFの発現が少ない腫瘍タイプにおいて、悪性腫瘍への血液供給を構築する「バックアップ」機構が存在し得ることを示唆する。PlGFは、この機能的冗長性に関与する可能性がある。PlGFはまた動脈新生性であり、既存の吻合からの動脈の形成をもたらす(Pipp et al., 2003)。
【0223】
上記のデータは、PlGFが、腫瘍の転移を特徴付ける上皮間充織転換に関与する運動性および浸潤性を刺激することにより、乳癌細胞の転移能を増強することを示している。対照的に、外部から加えられたVEGFは、これらのアッセイにおいて腫瘍細胞の運動性または浸潤性に対する効果を有さなかった。これらの結果は、VEGFが浸潤の刺激因子であることが見出された(MDA-MB-231)というBachelderら(Cancer Res. 62: 7203-6,2002)の結果と異なる。しかし、この研究はPlGFを含んでおらず;従って、これらの成長因子の比較をなすことはできない。本発明者らの結果は、腫瘍細胞環境におけるPlGFまたはVEGFの存在に基づくが、Bachelderら(2002)は、細胞によるVEGF産生を抑制するRNAiを使用しており、その結果はVEGFのパラクリン効果とは異なるのかもしれない。
【0224】
別の報告は、通常はPlGF低発現・VEGF高発現細胞である腫瘍株により過剰発現させた場合のPlGFの阻害的役割を実証した(Xu et al., Cancer Res. 6: 3971-7,2006)。この発現パターンは、本研究において使用された、原発性のヒト乳癌を模倣するパターンであるPlGF高発現・VEGF低発現細胞という乳房株のそれとは異なる。少なくとも一つの他の研究は、VEGFおよびPlGFは恊働して病理学的状態において血管新生を刺激することを示した(Carmeliet et al., 2001)。PlGFまたはVEGFの腫瘍病理に対する寄与は複雑である可能性が高く、これは部分的にそれらの腫瘍微小環境における相対的な豊富さならびに腫瘍細胞および内皮におけるそれらの活性な受容体の存在に起因し得る。
【0225】
本明細書中に開示された通り、PlGFが癌細胞の運動性および浸潤を刺激する能力は、作製した抗PlGF抗体、ならびにBP1、PlGF-2/Flt-1アンタゴニストペプチドによって阻害された。PlGFが阻害性ならば、その除去がVEGF媒介性の活性を進行させると推測され得るが、これは事実ではなかった。
【0226】
外因性PlGFの刺激効果についての可能性のある細胞内機構を調査し、その結果はPI3KおよびMEK1経路がPlGF刺激性の移動に関与する可能性があることを示した。これらの経路は、以前に細胞の移動と関連付けられていた(Hollande et al., 2001)が、これらのキナーゼはまた、タンパク質の翻訳、遺伝子の調節、増殖、浸潤、およびアポトーシスに対する抵抗を含む癌の進行を促進する他のプロセスにも関与する(Zeng et al., J. Biol. Chem. 276: 26969-79, 2001; Hollande et al., 2001; Belka et al., Int. J. Radiat. Oncol. Biol. Phys. 58: 542-54,2004; Pommery et al. Ann. Pharm. Fr. 63: 69-75,2005; Bancroft et al., Clin. Cancer Res. 7: 435-42,2001; Mekhail et al., Cell Cycle 3: 1027-9,2004; Pollheimer et al., Angiogenesis 3: 159-66, 1999)。PlGFを発現する腫瘍細胞は、それらの死シグナルに対する抵抗性を高め、必要な場合にそれらの血液供給源への移動を可能にするオートクライン/パラクリン経路を通じて生存上の利益を獲得し得る。
【0227】
腫瘍および内皮細胞の生物学におけるPlGFの役割を解明するため、本発明者らは、腫瘍および内皮の両方の細胞においてPlGFの活性を阻害し、かつインビボでの自発的な転移に影響を及ぼすアンタゴニストペプチドBP1を作製した。その結果は、BP1がPlGF-2/Flt-1 - ヘパリンの会合をアンタゴナイズすることを示す。ヘパリン結合はいくつかの受容体チロシンキナーゼの完全な活性化に必須であり(Park et al., Bioechem. Biophys. Res. Comm. 264: 730-4, 1999; Schlessinger et al. Molec. Cell. 6: 743-50,2000; Ito et la., Angiogenesis 3: 159-66, 1999)、これは、多くの場合に受容体チロシンキナーゼ、例えばFlt-1と関連するPI3KおよびMEK1経路の阻害がPlGFにより刺激された細胞の移動を妨げるという本発明者らの観察により支持される。BP1は、ヘパリンとPlGF-2およびFlt-1の密接な会合を妨げることによって、細胞内部への活性化シグナルの伝達を妨げ得る。
【0228】
FGF-FGFR-ヘパリン複合体の結晶化研究は、ヘパリンがそのリガンドおよび受容体の両方との複数の接触を行うことを示している。この会合は、活性化に必要な受容体の二量体化を促進する(Park and Lee, 1999; Schlessinger et al., 2000; Ito and Claesson-Welsh, 1999, Angiogenesis 3: 159-166)。BP1は、この複合体を妨害することによって、ヘパリンとPlGFおよびFlt-1のこの密接な会合を妨げ得る。本発明者らは、血管新生アッセイに含めた外因性のヘパリンが、VEGFまたはPlGF等の成長因子を添加しなかった場合でさえも血管の形成を増進させることを発見した(未発表データ)。この場合、血管新生の亢進は、マトリゲル内部の成長因子と移植片に移動する細胞上の受容体との間の、ヘパリンにより媒介される相互作用の亢進に起因する可能性が高い。
【0229】
BP1は、PlGF媒介性の移動を阻害するのに加えて、PlGFを保持する基底膜移植片における微小血管の成長を阻害することが出来た。この内皮細胞の移動および腫瘍における血管の構築の阻害は、移動アッセイのデータと合わせて、乳癌病理におけるPlGFの機能が内皮細胞の移動、そしておそらくは管形成を刺激することであり(データは示さず)、かつ腫瘍細胞自体を血液供給源へと移動させることでもあることを示唆する。
【0230】
Baeら(Clin. Cancer Res. 11: 2651-61,2005)は最近、VEGFのFlt-1への結合ならびにVEGFを分泌する結腸腫瘍異種移植片の成長および転移を阻害するFlt-1アンタゴニストペプチドの抗癌作用を報告した。このペプチドの活性は、腫瘍細胞ではなく、移動および増殖の刺激因子としてVEGFを用い、その内皮細胞との相互作用によって決定された。これらの著者により使用されたペプチドはまた、PlGFのFlt-1に対する結合も阻害したこと、およびその効能の一部がこの相互作用に由来し得ることが興味深い。しかし、これらのペプチドは、Flt-1のドメイン2の成長因子結合部位を妨害する(Bae et al., 2005)ことから、BP1とは異なるようであり、ヘパリン結合ドメインとの相互作用の証拠もない。従って、Baeらによって提示されたペプチドは、BP1とは異なる機能をすると考えられる。
【0231】
癌におけるPlGFのインビボでの役割を、自発的に転移するヒト乳癌異種移植片をBP1で処置することによって研究した。BP1ペプチドによる処置は、同所(mfp)モデルの94%および82%において、s.c.でのMDA-MB-231腫瘍の成長を停止させ、肺転移の発生を減少させた。これらの結果は、抗Flt-1ペプチド、例えばBP1の成長阻害および転移阻害特性を実証し、このことは、この受容体が特定の癌の進行において鍵となる役割を果たし得ることおよび抗癌療法の標的となることを示している。
【0232】
まとめると、本発明者らは、いくつかの原発性ヒト癌および細胞株、特に乳癌におけるPlGFの発現増加を実証した。PlGFは、乳癌細胞株MDA-MB-231および-468の増殖ならびにMCF-7およびMDA-MB-231の運動性を亢進した。本発明者らの知る限り、これは、PlGFによる悪性細胞の直接的活性化を実証した最初の報告である。さらに、本発明者らは、PlGFおよびFlt-1の両方に結合し、最終的にはインビトロでPlGF-2/Flt-1のリガンド・受容体対の活性を破壊するペプチドBP1を単離した。BP1によりブロックされる活性には、PlGFにより刺激される腫瘍細胞の生存率および運動性ならびに基底膜移植片における微小血管の形成が含まれる。さらに、腫瘍保持マウスのペプチドBP1処置は、乳房腫瘍異種移植片MDA-MB-468のs.c.での成長を阻害し、MDA-MB-231による肺転移の成立を大きく減少させた。
【0233】
実施例2. マウス角膜アッセイにおけるPlGF媒介性血管新生の阻害
PlGFリガンドがインビボで角膜組織におけるPlGF媒介性血管新生をブロックスする能力を調査する。改良版フォン・グレーフェ・カタラクトナイフを用いて、雄性5〜6週齢のC57B16/Jマウスの両目に角膜マイクロポケットを作製する。100ngのPlGFまたはPlGFと1μM BP-1、BP-2、BP-3、またはBP-4を含むポリグルクロン酸/ポリ乳酸の徐放処方物で構成されるマイクロペレットを、各角膜ポケットに移植する。ペレット移植後5日目にスリットランプ生体顕微鏡によって眼を試験する。血管の長さおよび新生血管形成を測定する。
【0234】
PlGFは、強い血管新生反応を誘導し、高密度の微小血管を形成する。BP-1、BP-3、またはBP-4の添加は、角膜組織におけるPlGF媒介性の血管新生を阻害する。糖尿病性網膜症または黄斑変性の被検体の処置は、血管の形成を阻害し、その状態を寛解させる。
【0235】
実施例3. BP1融合タンパク質および複合体
経口投与の目的でまたは他の態様において、BP1およびそのアナログはキャリアタンパク質に組換えによりまたは化学的に連結され得る。天然タンパク質で見出される20個の共通L-アミノ酸で構成されるペプチドの連結については、組換えDNA法が好ましい。ペプチド模倣物またはD-アミノ酸、修飾アミノ酸、もしくは非天然アミノ酸を含むペプチドの連結については、現在のところ化学的結合法のみが実施可能である。本明細書中に開示されるように、BP1がヒトIgG1のFc(hFc)の糖質に連結された複合体を調製する一般的方法を提供する。BP1およびhFcで構成される三つの典型的な融合タンパク質を構築する方法を以下に開示する。
【0236】
骨髄腫細胞においてhFcを発現するためのベクターを、標準的な組換えDNA技術を用いて調製する。PCRによりFc(ヒンジドメイン、CH2ドメイン、およびCH3ドメイン)のコード配列を増幅するためのDNAテンプレートとして、発現ベクターshCD20-Fc-pdHL2(図6)を使用する。二回のPCRを行う。第一のPCRは、以下に示すプライマー対を用いて全リーダーペプチド配列(フラグメントA)を増幅するためのものである。

第二のPCRは、以下に示すプライマー対を用いてヒンジおよびCH2(フラグメントB)を増幅するためのものである。

【0237】
shCD20-Fc-pdHL2をXbaIおよびSac2で消化した後、大きい方のDNAフラグメントをフラグメントAおよびBに連結してFc用の発現ベクター(hFc-pdHL2)を獲得する。
【0238】
実施例4. BP1とhFcの結合
骨髄腫細胞をhFc-pdHL2でトランスフェクトし、陽性クローンをスクリーニングする。最も高い産生細胞をローラーボトルで培養し、その培養上清をプロテインAで精製してhFcを獲得する。BP1とhFcの結合は、以下に記載する二つの方法の一方を用いて行う。第一の方法において、hFcを過ヨウ素酸ナトリウムによって酸化させて、糖質内にアルデヒド基を作製する。脱塩工程後、酸化型hFcをヘテロ架橋剤、例えばBMPH(Pierce、製造番号22297)で誘導体化し、ヒドロラジドとアルデヒドの反応を通じてマレイミド基を導入する。過剰な試薬を除去した後、マレイミド結合型hFcを、BP1中のシステイン残基の反応を通じてBP1に結合する。代替法では、BMPHとBP1をカップリングし、逆相HPLCを用いて得られる生成物を単離し、そしてBMPH-BP1と酸化型hFcを反応させる。
【0239】
実施例5. BP1-hFc用の発現ベクター
代替の態様において、BP1-hFcを、各々がフレキシブルリンカー、例えば(GGGGS)3を通じてヒトIgG1のヒンジ、CH2、およびCH3に連結されたBP1から構成される、二つの同一のポリペプチドから構成される融合タンパク質として構築する。二つのポリペプチドを、ヒンジのシステイン残基から形成される二つのジスルフィド結合によって共有結合する。BP1-Fcは、以下の利点を与えると考えられる:(1)VEGFR1のヘパリン結合ドメインに対するBP1の親和性が、BP1が二価になることによって増強され得る;(2)分子サイズの増加(約60kDa)は、ヘパリンのVEGFR1への結合をよく排除し、それによってPlGFとVEGFR1の間の相互作用をより効果的に阻害し得る;および(3)Fcの存在は、血清半減期を延長し、上皮細胞中で発現される新生児Fc受容体(FcRn)への結合によって経口送達または肺送達を可能にし得る。
【0240】
骨髄細胞中でBP1-Fcを発現するベクターは以下の通りに構築する。簡単に説明すると、BP1および(GGGGS)3リンカーをコードする114bpの配列を網羅するよう10〜15bp分オーバーラップし、末端にHindIII部位を追加した三つの長鎖オリゴヌクレオチドを合成する。このオリゴヌクレオチドをアニールし、DNAポリメラーゼで伸長させる。得られるBP1およびリンカーを含むDNAフラグメントを精製し、中間ベクターにクローニングした後、配列を確認する。次いで、中間ベクターをHind IIIで消化することによってフラグメントを単離し、Hind IIIで切断したFc-pdHL2にクローニングする(実施例3を参照のこと)。二つの方向の可能性があり、正確な方を、二酵素消化によって同定し、そして単離する(BP1-hFc-pdHL2)。
【0241】
骨髄腫細胞をBP1-hFc-pdHL2でトランスフェクトし、高産生性クローンを選択する。最も高い産生細胞をローラーボトルで培養し、その培養上清をプロテインAで精製してBP1-hFcを獲得する。
【0242】
実施例6. 二量体型BP1-hFc(BP1-hFc-ddd2)
BP1-hFcの二量体で構成される融合タンパク質は、BP1-hFcのC末端に、ddd2と命名した特別なペプチド配列(SEQ ID NO: 10)を付け足すことによって獲得する。二量体型BP1-hFcはジスルフィド結合によって安定化されており、4つのBP1を含む。

【0243】
実施例7. BP1-hFc × 抗VEGFR2 Fab(約160kDa)
VEGFR1およびVEGFR2の両方を標的化することのできる約160kDaの複合体を作製するため、A2B技術を用いて、BP1-Fcをジスルフィド結合によって抗VEGFR2 Fabに連結する。最初に、CH1のC末端にad2と命名した特別なペプチド配列(SEQ ID NO: 11)を付け足すことによって抗VEGFR2のB型を作製する。BP1-hFc × 抗VEGFR1 Fabを作製するため、BP1-hFc-ddd2(実施例6)を抗VEGFR2のB型と混合し、TCEPを用いて1時間還元させる。TCEPを除去した後、DMSOを加えて終濃度を10%とし、二つの親タンパク質の各々に存在するddd2とad2との間のジスルフィド結合の形成を誘導する。

【0244】
本明細書中に開示および主張する組成物および方法は全て、本開示に照らせば過度の実験を行うことなく作製および実施され得る。これらの組成物および方法は、好ましい態様の観点で記載されているが、本発明の概念、意図、および範囲から逸脱することなく本明細書中に記載される組成物および方法ならびにその方法の工程または工程の順序において変更が適用され得ることが、当業者には明らかであろう。より具体的には、化学的にも生理学的にも関連する特定の薬剤が、本明細書中に記載される薬剤の代わりとして使用され得、それでも同一または類似の結果が達成される。当業者に明らかな、このような類似の置換および修正は全て、添付の特許請求の範囲により定義される、本発明の意図、範囲、および概念に含まれるものと見なされる。
【図面の簡単な説明】
【0245】
添付の図面は、本明細書の一部を構成し、本発明の具体的な態様の特定の局面をさらに実証するために含まれている。これらの態様は、本明細書中に記載された詳細な説明と合わせてこれらの図面の一つまたは複数を参照することによってより理解されるであろう。
【図1】BP1は、Flt-1のヘパリン結合領域と相互作用する。図の下部に示される試薬をFlt-1コートしたウェルに加えた。本実験において使用したBP1は、そのC末端にリンカーおよびFLAGエピトープを含む。ペプチドとの結合は、FLAGエピトープを調査することによって評価した。A:1μM BP1単独;B:2.5/25 U/mlヘパリン単独;C:2.5 U/mlヘパリン、その後に1μM BP1;D:1μM BP1、その後に2.5 U/mlヘパリン。示される値は、二つの別々の実験から得た二連のウェルの平均値±SDである。*ヘパリンおよびその後の1μM BP1(C)対BP1単独(A)についてP<0.0002(ANOVA)。
【図2】PlGFは、MDA-MB-231細胞のインビトロでの浸潤を刺激する。グラフは、累積結果±SDを表す(n=3〜5実験)。グラフにおいて使用される略記:「Pl」はPlGFであり;「VE」はVEGFである。*P<0.05(ANOVA)。
【図3】BP1は、MDA-MB-231異種移植片の成長および転移を阻害する。腫瘍の容積対時間、s.c.モデル。示される結果は、二つの実験のうちの一方から得た結果±SDである(n=3〜4マウス/処置)。*モック処置またはCPAに対してP<0.05(腫瘍容積の変化(ANOVA))。
【図4】図4A〜4C。外因性のPlGFは、腫瘍細胞生存率の増加を刺激する。乳房腫瘍細胞株を、低血清濃度(1%)条件下、PlGF(2nM)またはPlGFおよび示されるペプチド(1〜2μM)で処置した。24時間後、細胞の生存率をMTTによって評価した。#は、PlGF処置細胞と未処置対照との比較においてP<0.04であることを示す。アスタリスク()は、PlGF単独と比較してP<0.03であることを示す(ANOVA)。図4A - MCF-7ヒト乳癌細胞。図4B - MDA-MB-468ヒト乳癌細胞。図4C - MDA-MB-231ヒト乳癌細胞。
【図5】図5A〜5B。ペプチドBP1またはBP3による、MDA-MB-468異種移植片保有マウスの処置。マウスを、方法の節に記載されるように200ug BPで3〜4日ごとに処置した。腫瘍の容積を2回/週で測定した。*第10日、第14日、第17日、および第24日において、P<0.05(腫瘍容積の変化(ANOVA))。図5A - 結合ペプチド1で処置した腫瘍。図5B - 結合ペプチド3で処置した腫瘍。
【図6】hFc用発現ベクター。この図は、hFcを発現するベクター(pdHL2-hFc)を構築するためのテンプレートとして利用される典型的なベクター(pdHL2-sCD20-hFc)の概略図を提供する。組換えhFcは、実施例4に記載されるようにBP1に化学的に結合されるか、または実施例5に記載されるようにhFcに融合され得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
血管新生、腫瘍の成長、または腫瘍の転移を阻害する胎盤成長因子(PlGF)リガンドを含む組成物。
【請求項2】
リガンドがペプチドである、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
ペプチドが、PlGFに対するファージディスプレイによって同定される、請求項2記載の組成物。
【請求項4】
ペプチドが、BP-1(SEQ ID NO:1)、BP-2(SEQ ID NO:2)、BP-3(SEQ ID NO:3)、またはBP-4(SEQ ID NO:4)の配列から選択される少なくとも12の連続するアミノ酸残基を含む、請求項2記載の組成物。
【請求項5】
ペプチドが、BP-1(SEQ ID NO:1)の配列を含む、請求項4記載の組成物。
【請求項6】
リガンドが、抗体、抗体フラグメント、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、ヒト抗体フラグメント、または抗体アナログを含む、請求項1記載の組成物。
【請求項7】
ペプチドが、直鎖状または環状の立体配座である、請求項2記載の組成物。
【請求項8】
ペプチドがペプチドの各末端にシステイン残基を含み、かつシステイン残基が相互に結合して環状ペプチドを形成する、請求項7記載の組成物。
【請求項9】
腫瘍が、リンパ腫、白血病、骨髄腫、肉腫、神経膠腫、黒色腫、または癌腫である、請求項1記載の組成物。
【請求項10】
腫瘍が乳癌である、請求項9記載の組成物。
【請求項11】
ペプチドが、PlGFおよびFlt-1(Fms様チロシンキナーゼ受容体)の両方に結合する、請求項2記載の組成物。
【請求項12】
ペプチドが、PlGF-2およびFlt-1のヘパリン結合部位に結合する、請求項11記載の組成物。
【請求項13】
ペプチドが、PlGFおよび/またはFlt-1に対するヘパリンの結合を阻害する、請求項12記載の組成物。
【請求項14】
ヘパリンが、PlGFおよび/またはFlt-1に対するペプチドの結合を阻害する、請求項12記載の組成物。
【請求項15】
リガンドが、別の分子または化合物に付加されている、請求項2記載の組成物。
【請求項16】
リガンドが、抗体、二特異性抗体、抗体フラグメント、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、ヒト抗体フラグメント、抗体アナログ、Fcフラグメント、Fc結合タンパク質、抗体結合性融合タンパク質、薬物、プロドラッグ、毒素、酵素、オリゴヌクレオチド、放射性同位元素、免疫調節剤、サイトカイン、ホルモン、結合性分子、脂質、ポリマー、ミセル、リポソーム、ナノ粒子、またはそれらの組み合わせに付加されている、請求項15記載の組成物。
【請求項17】
リガンドが、腫瘍抗原に結合する分子に付加されている、請求項16記載の組成物。
【請求項18】
リガンドが、疾患標的に結合する分子に付加されている、請求項15記載の組成物。
【請求項19】
分子が、腫瘍関連抗原に対する一つの結合部位およびPlGFリガンドに対する第二の結合部位を有する二特異性抗体またはそのフラグメントである、請求項17記載の組成物。
【請求項20】
リガンドが、疾患標的に対する結合部位を有するモノクローナル抗体またはそのフラグメントに共有結合により付加されている、請求項15記載の組成物。
【請求項21】
二特異性抗体が、A3、A33抗体に特異的な抗原、BrE3抗原、CD1、CD1a、CD3、CD5、CD15、CD19、CD20、CD21、CD22、CD23、CD25、CD30、CD45、CD74、CD79a、CD80、HLA-DR、NCA95、NCA90、HCGおよびそのサブユニット、CEA(CEACAM5)、CEACAM6、CSAp、EGFR、EGP-1、EGP-2、Ep-CAM、Ba 733、HER2/neu、低酸素誘導因子(HIF-1)、KC4抗原、KS-1抗原、KS1-4、Le-Y、マクロファージ阻害因子(MIF)、MAGE、MUC1、MUC2、MUC3、MUC4、PAM-4、PSA、PSMA、RS5、S1OO、TAG-72、p53、テネイシン、IL-6、IL-8、インスリン成長因子-1(IGF-1)、Tn抗原、トムソン-フリーデンライヒ抗原、腫瘍壊死抗原、VEGF、ED-Bフィブロネクチン、17-1A抗原、血管新生マーカー、癌遺伝子マーカー、ならびに癌遺伝子産物からなる群より選択される腫瘍関連抗原に対する結合部位を有する、請求項19記載の組成物。
【請求項22】
腫瘍が、急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、胆道癌、乳癌、子宮頸癌、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、結腸直腸癌、子宮体癌、食道癌、胃癌、頭頸部癌、ホジキンリンパ腫、肺癌、甲状腺髄様癌、非ホジキンリンパ腫、卵巣癌、膵癌、神経膠腫、黒色腫、肝癌、前立腺癌、および膀胱癌からなる群より選択される、請求項1記載の組成物。
【請求項23】
PlGFリガンドが結合性ペプチドであり、結合性ペプチドが抗体のFcフラグメント、Fc結合タンパク質、または抗体結合性融合タンパク質に共有結合により付加されている、請求項15記載の組成物。
【請求項24】
PlGFリガンドが抗体のFcフラグメントに付加されており、抗体がIgG1である、請求項23記載の組成物。
【請求項25】
a)胎盤成長因子(PlGF)に結合するリガンドを獲得する工程;および
b)リガンドを被検体に投与する工程
を含み、リガンドが腫瘍の血管新生、転移、腫瘍の成長、腫瘍細胞の生存、および/または癌細胞の運動性を阻害する、腫瘍の血管新生、転移、腫瘍の成長、腫瘍細胞の生存、および/または癌細胞の運動性を阻害する方法。
【請求項26】
リガンドがペプチドである、請求項25記載の方法。
【請求項27】
ファージディスプレイによりペプチドを同定する工程をさらに含む、請求項26記載の方法。
【請求項28】
ペプチドが、BP-1(SEQ ID NO:1)、BP-2(SEQ ID NO:2)、BP-3(SEQ ID NO:3)、またはBP-4(SEQ ID NO:4)の配列から選択される少なくとも12の連続するアミノ酸残基を含む、請求項26記載の方法。
【請求項29】
ペプチドが、BP-1(SEQ ID NO:1)の配列を含む、請求項28記載の方法。
【請求項30】
リガンドが、抗体、抗体フラグメント、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、ヒト抗体フラグメント、および抗体アナログからなる群より選択される、請求項25記載の方法。
【請求項31】
被検体が乳癌を有する、請求項25記載の方法。
【請求項32】
ペプチドと組み合わせて一つまたは複数の抗癌剤を投与する工程をさらに含む、請求項26記載の方法。
【請求項33】
ホスファチジルイノシトール3キナーゼ(PI3K)またはマイトジェン活性化タンパク質キナーゼ-キナーゼ1(MEK1)の阻害剤を被検体に投与する工程をさらに含む、請求項25記載の方法。
【請求項34】
PI3K阻害剤がワートマニン(Wortmannin)であり、MEK1阻害剤がPD98059である、請求項33記載の方法。
【請求項35】
薬剤が、化学療法剤、放射線療法、免疫療法、放射免疫療法、局所温熱療法、レーザー照射、および外科的切除からなる群より選択される、請求項32記載の方法。
【請求項36】
一つまたは複数の抗血管新生性化合物を被検体に投与する工程をさらに含む、請求項25記載の方法。
【請求項37】
化合物が、VEGF媒介性の血管新生を阻害する、請求項36記載の方法。
【請求項38】
リガンドが、PlGFにより活性化される癌細胞の運動性を阻害する、請求項25記載の方法。
【請求項39】
a)胎盤成長因子(PlGF)に結合するリガンドを獲得する工程;および
b)リガンドを被検体に投与する工程
を含み、リガンドが血管新生を阻害する、血管新生に関連する状態を処置する方法。
【請求項40】
状態が、癌、過形成、糖尿病性網膜症、黄斑変性、炎症性腸疾患、クローン病、潰瘍性大腸炎、関節リウマチ、サルコイドーシス、喘息、浮腫、肺高血圧、乾癬、角膜移植片拒絶、血管新生緑内障、オースラー-ウェーバー症候群、心筋血管新生、プラークの新生血管形成、再狭窄、血管外傷後の新生内膜形成、毛細血管拡張、血友病性関節症、血管線維腫、慢性炎症に関連する線維症、肺線維症、深部静脈血栓症、および創傷の肉芽形成からなる群より選択される、請求項39記載の方法。
【請求項41】
a)胎盤成長因子(PlGF)に結合するリガンドを獲得する工程;および
b)リガンドを薬剤に付加する工程
を含み、PlGFリガンドが腫瘍および/または血管内皮細胞に結合する、腫瘍または血管内皮細胞に対して薬剤を標的化する方法。
【請求項42】
リガンドが、BP-1(SEQ ID NO:1)、BP-2(SEQ ID NO:2)、BP-3(SEQ ID NO:3)、およびBP-4(SEQ ID NO:4)からなる群より選択される、請求項41記載の方法。
【請求項43】
PlGFリガンドに対する結合部位および腫瘍抗原に対する第二の結合部位を有する二特異性抗体を投与する工程をさらに含む、請求項41記載の方法。
【請求項44】
リガンド-抗体複合体が経口からまたは吸入により投与され、リガンド-抗体複合体が新生児Fc受容体輸送系との相互作用を通じて吸収される、請求項43記載の方法。
【請求項45】
PlGFリガンドおよび容器を含むキット。
【請求項46】
化学療法剤、二特異性抗体、抗血管新生剤、またはそれらの組み合わせをさらに含む、請求項45記載のキット。
【請求項47】
PlGFリガンド配列および第二の配列を含む、融合タンパク質。
【請求項48】
PlGFリガンド配列が、BP-1(SEQ ID NO:1)、BP-2(SEQ ID NO:2)、BP-3(SEQ ID NO:3)、またはBP-4(SEQ ID NO:4)の配列から選択される少なくとも12の連続するアミノ酸を含む、請求項47記載の融合タンパク質。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2009−514813(P2009−514813A)
【公表日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−536725(P2008−536725)
【出願日】平成18年10月16日(2006.10.16)
【国際出願番号】PCT/US2006/040431
【国際公開番号】WO2007/047609
【国際公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【出願人】(508119769)
【出願人】(508119792)イムノメディクス インコーポレーティッド (1)
【Fターム(参考)】