説明

脂肪低下組成物

【課題】安全で有害な作用がなく、継続して摂取する事ができる脂肪低下組成物、および飲食品を提供すること。
【解決手段】イネ科植物由来、好ましくは小麦ふすま由来のアラビノキシラン分解物を有効成分として含有し、肥満、脂肪肝、高脂血症の予防および/または改善に好適な脂肪低下組成物、ならびにこの脂肪低下組成物を含有してなる飲食品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アラビノキシラン分解物を有効成分として含有する脂肪低下組成物に関する。より詳細には、イネ科植物由来のアラビノキシランを分解して得られた水溶性アラビノキシランを含み、肥満、脂肪肝、高脂血症の予防および/または改善に好適な、脂肪低下組成物、ならびにこの脂肪低下組成物を含有してなる飲食品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、食の欧米化、過剰量の食物摂取、運動不足等の原因による、肥満、脂肪肝、高脂血症の患者数増加が社会問題となっている。従来、肥満、脂肪肝、高脂血症の予防および治療は、食事制限等の摂取カロリー低下や、運動等の消費カロリー増加等の方法により行われてきた。しかし、摂取カロリーの低下や消費カロリーの増加を実現するためには生活習慣の改善を要し、長期的に日常生活に負担や制限がかかる。したがって、そのような予防および治療方法の継続にはかなりの困難が伴う。また、医薬品により肥満、脂肪肝、高脂血症の改善をしようとする場合、通院や薬剤の投与管理が煩雑であるうえ、副作用の恐れがあり、また費用がかかるという問題もあり、継続には困難が伴う。
【0003】
一方、従来から、セルロース、ヘミセルロース、ペクチン、リグニン等を主成分とする食物繊維が、肥満の予防および改善のために用いられている。
例えば、小麦ふすまから得られるヘミセルロースが、血清コレステロールの上昇を抑制する事が報告されている(特許文献1)。またトウモロコシコーンファイバーのヘミセルロースが、血清コレステロールの上昇を抑制する事が報告されている(特許文献2)。このような食物繊維摂取による血清コレステロールの上昇抑制効果は、食物繊維により消化管内の胆汁酸濃度が低下し、コレステロールの腸管循環量が低下することにより、体内のコレステロールから胆汁酸の合成が増加するためとされている。しかし、上記の食物繊維の摂取効果には個人差があり、また効果を維持するために大量の食物繊維の摂取が必要であるのに、その風味や食感が悪いため、継続して大量に摂取するには問題がある。
【0004】
また、難消化性オリゴ糖として知られるフラクトオリゴ糖が、血清中性脂肪やコレステロールを低下させる事が報告されている(非特許文献1)が、フラクトオリゴ糖には整腸作用があり、下痢等の好ましくない副作用のため、継続して摂取するのは困難である。
【0005】
また、トウモロコシから抽出したアラビノキシラン(特許文献3)や、ライ麦のアラビノキシランを主体としたガム質(特許文献4)により、血漿中コレステロールが減少する事が報告されているが、アラビノキシランが中性脂肪を低下させたという報告はない。さらに上記のアラビノキシランの作用は、前記の食物繊維によるのと同じ作用によるものであり、同様の問題点を有している。
【特許文献1】特開昭58−41824号公報
【特許文献2】特開昭57−21324号公報
【特許文献3】特表2002−516286号公報
【特許文献4】特開昭60−202824号公報
【非特許文献1】Fiordaliso M. 他:LIPIDS, 30, 163-167 (1995)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述した問題点を解決することを課題としている。すなわち、安全で有害な作用がなく、簡便に日常的に継続して摂取する事ができ、且つ顕著な脂肪低下作用を有し、肥満、脂肪肝、高脂血症の予防および/または改善に有効な、脂肪低下組成物、および
飲食品を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、アラビノキシラン分解物が体脂肪を減少させる作用を有する事、すなわち、アラビノキシラン分解物を経口摂取すると、血液中の中性脂肪およびリン脂質、ならびに肝臓のコレステロール、中性脂肪およびリン脂質の低下作用が認められることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は以下の事項に関する。
本発明に係る脂肪低下組成物は、アラビノキシラン分解物を有効成分として含有してなることを特徴としている。
【0009】
本発明では、前記アラビノキシラン分解物は、イネ科植物由来であることが好ましく、小麦ふすま由来であることがより好ましい。
前記アラビノキシラン分解物は、分子量500〜50,000Daの水溶性アラビノキシ
ランを主成分として含有することが好ましい。
【0010】
さらに、前記アラビノキシラン分解物は、分子量500〜10,000Daの水溶性アラ
ビノキシランを50〜90質量%の量で含有することが好ましい。
前記脂肪低下組成物は、血液中および肝臓中の中性脂肪低下作用を有する。
【0011】
また、本発明に係る飲食品は、前記脂肪低下組成物を含有してなることを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明の脂肪低下組成物および飲食品は、血液中の中性脂肪およびリン脂質を低下させるとともに、肝臓中のコレステロール、中性脂肪およびリン脂質を低下させる、優れた肥満、脂肪肝および高脂血症(とくに高中性脂肪血症)等の予防および/または改善作用を有する。さらに、本発明の脂肪低下組成物および飲食品は、副作用の心配がなく安全性が高い上に、風味がよく簡便に摂取可能で、長期間の継続的摂取が容易である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の好適な実施形態について具体的に説明する。
アラビノキシランは、植物細胞壁等の成分であるヘミセルロースを構成する主要な多糖類であり、β1−4結合したキシロース鎖にアラビノースが側鎖として結合したものである。本発明の脂肪低下組成物に有効成分として用いられるアラビノキシラン分解物は、高純度のアラビノキシラン単独の分解物でもよいが、植物などの天然原料を分解および抽出等することによって得られる、アラビノキシランの分解物を主成分として含む組成物であってもよく、生産効率や価格の点からは後者が望ましい。
【0014】
すなわち、該アラビノキシラン分解物は、通常の場合、500〜50,000Daの分子
量分布を有する、アラビノキシランの分解物を主成分としており、原料に含まれていた不純物由来のタンパク質やアラビノキシラン以外の糖類の成分をさらに含有していてもよい。該アラビノキシラン分解物は、好ましくは、キシロース55〜75質量%およびアラビノース5〜25質量%から構成される糖組成を有する。
【0015】
該アラビノキシラン分解物は、好ましくは分子量500〜10,000Daの、アラビノ
キシランの分解物を50〜90質量%の量で含有している。該アラビノキシラン分解物が、上記範囲内の量で上記分子量範囲の、アラビノキシランの分解物を含有していると、水溶性となり、水性媒体に溶解しても沈殿せずに安定であり、また澄明な水溶液が得られる
ため、食品のみならず飲料等にも好適に利用する事ができる。また、該アラビノキシシラン分解物は、食物繊維特有の食味がなく風味がよいため好ましい。
【0016】
ここで、上記の糖組成は、高速液体クロマトグラフィーによって測定され、また上記分子量分布は、サイズ排除高速液体クロマトグラフィーによって測定されたものである。なお、測定条件等の詳細は後述する実施例にそれぞれ記載したとおりである。
【0017】
該アラビノキシラン分解物の原料は、アラビノキシランまたはアラビノキシランから誘導される構成単位(以下、単にアラビノキシラン単位という。)を含有するものであれば、どのようなものでもよいが、アラビノキシラン単位を多量に含み、且つ入手が容易であり食経験があり安全である、イネ科植物由来のヘミセルロースが好ましい。
【0018】
イネ科植物としては小麦、大麦、エン麦、ライ麦、米、ヒエ、アワ、トウモロコシ、タケ等が知られているが、これら植物の部位のうち、実際には、アラビノキシラン単位含有部位、つまり、種実の皮部、外皮部、穂軸部、茎部、葉部をアラビノキシシラン分解物の原料として用いるとよい。なかでも、純度のより高いアラビノキシラン分解物を高収率で得られる点からは、種実の皮部、とくに小麦のふすまを原料として使用することが好ましい。
【0019】
小麦ふすまとしては、通常の製粉工程で生じる一般ふすま、それ以外のふすまのいずれも使用でき、組成や製造過程を問わないが、これらのうちでは、一般ふすまを粉砕した後、繊維質に富む区分を分級処理する事により得られた繊維質含量の高いふすまを使用するとよい。
【0020】
アラビノキシラン分解物の調製方法としては、具体的には、たとえば、前述のイネ科植物のアラビノキシラン単位含有部位に含まれているアラビノキシランを分解し、得られたアラビノキシラン分解物を抽出する方法、または該アラビノキシラン単位含有部分からアラビノキシランを抽出し、抽出したアラビノキシランを分解してアラビノキシラン分解物を得る方法、またはアラビノキシランを抽出と同時に分解してアラビノキシラン分解物を得る方法等が挙げられるが、アラビノキシラン分解物を得られる方法であればどのようなものでもよく、公知の方法を適宜採用することができる。
【0021】
たとえば、具体的な方法としては、特許公報第3079115号に記載された方法等が挙げられる。該方法について、小麦ふすまを原料とした場合を例に挙げて、以下に説明する。
【0022】
小麦ふすまは、まず水洗して、蛋白質、少糖類、その他の有機物等の水溶性夾雑物を除去するのが好ましい。その際の水の温度は、小麦ふすま中の有効成分を分解しない温度であれば特に限定されないが、操作のし易さ、夾雑物の除去効率、熱効率等の点から通常20〜70℃がよく、好ましくは30〜60℃がよい。水洗は、小麦ふすまを水に分散させて攪拌しながら行うと、小麦ふすまからの水溶性夾雑物の除去を円滑に行う事ができ好ましいが、これに限定されない。水に分散させて攪拌しながら水洗する場合には、水100質量部に対して、小麦ふすま約10〜20質量部を分散させて、周速度約10〜30m/秒で約2〜10分間行うのが、操作のし易さ、夾雑物の除去効果率、水洗終了後の小麦ふすまからの水の除去の容易さ等の点から好ましい。
【0023】
次いで、水洗終了後の小麦ふすまから水を除去する。水の除去は、ろ過、遠心分離、遠心ろ過等の固液分離として一般的ないずれの方法で行ってもよい。操作が簡便であり、速やかに水を除去できる点で遠心ろ過による方法が好ましい。水を除去した後の小麦ふすまは、そのまま湿った状態で、または必要に応じて乾燥して、次の処理に供する。
【0024】
小麦ふすまに含まれるアラビノキシランは、ヘミセルロースの構成成分として植物細胞壁に存在しており、そのままではアラビノキシラン分解物を得る事は容易ではないため、小麦ふすまの植物細胞壁構造を部分的に破壊またはゆるやかな構造に変性させる事で、アラビノキシランの分解およびアラビノキシラン分解物の抽出を容易に、高収率で行うことができる。
【0025】
そのような方法として、水分の存在下、温度100〜145℃、圧力1〜4気圧で短時間加熱処理する方法が挙げられる。ここで水分の存在下とは、加熱処理した後で植物細胞壁崩壊酵素を作用させたときに所望のアラビノキシラン分解物が得られるいかなる量の水分でもよいが、小麦ふすまの乾燥重量に対して1〜8倍量程度の水の添加で通常は充分であって、水分量が前記範囲内であると、圧力損失もなく適度な処置が可能であり好ましい。加熱処理は数秒〜数十分程度、好ましくは1〜10分程度の短時間行えばよく、この範囲以上の長時間行っても効果上の改善はもたらされないため、経済的に不要である。加熱の条件は100〜145℃で1〜4気圧、好ましくは115〜123℃で1.7〜2.3気圧である。温度が100℃未満の場合には、後のアラビノキシラン分解物の抽出効率は充分なものではなく、また温度145℃超、4気圧超にしても後のアラビノキシラン分解物の抽出効率はこれ以上上昇せず、不経済であるばかりか他成分の分解反応が生じ、生成物中にフェノール性の酸等の好ましくない生成物が発生するようになる。この加熱処理は、任意の加圧可能な加熱容器例えばオートクレーブを用いて行う事ができるが、連続式加熱加圧装置を用いて連続式操作によって行う事もできる。
【0026】
加熱処理された小麦ふすまは、次いで植物細胞壁崩壊酵素によって処理され、上記加熱処理により部分的に破壊またはゆるやかな構造に変性していた植物細胞壁は、容易に分解される。この操作により、ほぼ選択的に植物細胞壁のヘミセルロースより、アラビノキシラン分解物を得る事ができる。得られるアラビノキシラン分解物の多くの部分は水溶性であり、未分解の細胞壁成分や水不溶性の繊維質等の固体成分から、水溶性成分として容易に抽出、分離する事ができる。
【0027】
上記の方法に用いる植物細胞壁崩壊酵素としては、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ、ペクチナーゼ等が挙げられ、単独あるいは複数を混合して用いてよく、複数混合されている複合酵素を用いるのが好ましい。これらは高等植物、菌類、細菌等に広く分布しており、これらから抽出して用いることもできる。また、微生物に起源を有するものが市販・入手可能であり、これらを用いる事もできる。
【0028】
これらの植物細胞壁崩壊酵素はその至適pHおよび至適温度において使用する事が好ましい。至適pHおよび至適温度は個々の酵素により異なるが、一般にpH5〜7、および25〜60℃の範囲にあり、これらの範囲で処理を行うのが好ましい。これらの酵素は、反応液中に遊離状態で存在させて反応させる事もできる他、酵素を担体に担持させる等、固定化した状態で反応させる事もできる。
【0029】
この酵素による処理は、前記加熱処理した小麦ふすまの乾燥質量に対して0.01〜1
質量%、好ましくは0.05〜0.5質量%の量の酵素を用いて行う事が、反応効率および経済性の観点から望ましい。また、反応時間については、上記の酵素量を用いる場合、1〜120分、好ましくは15〜60分の時間反応させることにより、充分に植物細胞壁を崩壊させ、効率的にアラビノキシラン分解物を抽出する事ができる。酵素反応をとめるには、反応液を80〜100℃にすることで、酵素を失活させればよい。
【0030】
以上説明したように、小麦ふすまに特定条件の加熱処理および酵素処理を行う事により、両処理の併用効果により、小麦ふすまから選択的に5〜20質量%のアラビノキシラン
分解物を得る事ができる。これらの処理によって得られる水溶性区分中には、小麦ふすま由来の水溶性のアラビノキシラン分解物が含有されているので、この水溶性区分をそのまま目的物として取り出してもよい。しかしながら、取り扱いの容易性、保存性等を考慮すると、この水溶性区分から水分を除去し、固体状の形態とする事が好ましい。この水分除去は、アラビノキシラン分解物が変性や熱分解を起こさない条件下であれば、どのような方法でもよく、例えばろ過、遠心分離、遠心ろ過、スプレードライ、スプレークール、ドラムドライ、真空乾燥、凍結乾燥等のいずれの方法も使用できる。
【0031】
または、水溶性区分を適当な担体に結合あるいは担持させた後、上記のような方法により溶媒を除去することで、固形物として得ることもできる。
本発明の脂肪低下組成物は、アラビノキシラン分解物を含有する事を特徴とするが、アラビノキシラン分解物は脂肪低下作用、すなわち血液中の中性脂肪およびリン脂質、ならびに肝臓のコレステロール、中性脂肪およびリン脂質の低下作用を有するため、これを単独、あるいは様々な飲食品に添加して継続的に摂取すると肥満、脂肪肝および高脂血症(とくに高中性脂肪血症)の予防および/または改善に有用である。また本発明のアラビノキシラン分解物は、小麦等のイネ科植物を原料としているため、安全性が高く、また風味もよいことから、そのまま単独でも充分に摂取することが可能であり、長期間の継続的摂取が可能である。さらに水溶性であり、様々な飲食品に添加してもその飲食品の風味および食感を阻害しないため、本発明の飲食品は長期間の継続的摂取も容易である。
【0032】
本発明の脂肪低下組成物は、通常の場合、上記アラビノキシラン分解物の乾燥質量として、成人1日当たり0.1〜20gの範囲で摂取される。一般的な1日当たりの摂取量は、1〜10gであるが、該アラビノキシラン分解物は、イネ科植物を原料としている安全性の高いものであるため、その投与量をさらに増やすこともできる。1日当たりの摂取量は、1回で摂取してもよいが、数回に分けて摂取してもよい。
【0033】
その際、アラビノキシラン分解物をそのまま単独で用いる事もできるが、本発明の効果を阻害しない限り、後述する添加剤のほか、他の脂肪蓄積抑制物質、脂肪分解促進物質、脂肪代謝改善物質等を単独または複数組み合わせて配合してもよい。
【0034】
本発明の脂肪低下組成物の剤型としては、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、シロップ剤、ドライシロップ剤、液剤、懸濁剤、吸入剤等の経口剤;坐剤等の経腸製剤;軟膏、クリーム剤、ゲル剤、貼付剤等の皮膚外用剤;注射剤等が挙げられる。これらのうちでは、経口剤が好ましい。
【0035】
このような剤型の脂肪低下組成物は、慣用される賦形剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、界面活性剤、アルコール、水、水溶性高分子、甘味料、矯味剤、酸味料等の添加剤を剤型に応じて配合し、常法に従って製造することができる。なお、液剤、懸濁剤等の液体製剤は、服用直前に水または他の適当な媒体に溶解または懸濁する形であってもよく、また錠剤、顆粒剤は周知の方法で表面をコーティングしてもよい。
【0036】
本発明の脂肪低下組成物が前記添加物や他の脂肪蓄積抑制物質、脂肪分解促進物質、脂肪代謝改善物質等を含む場合には、アラビノキシラン分解物の含有量は、その剤型により異なるが、通常は、0.0001〜99質量%、好ましくは0.1〜80質量%の範囲であり、脂肪低下組成物の投与量として上述した、成人1日当たりのアラビノキシラン分解物(乾燥質量)の摂取量を摂取できるよう、1日当たりの投与量が管理できる形にするのが望ましい。
【0037】
さらに、該脂肪低下組成物を、上述した1日当たりの摂取量を管理できる形態で摂取することにより、該脂肪低下組成物を用いる、肥満、脂肪肝および高脂血症(とくに高中性
脂肪血症)の予防方法および/または改善方法がそれぞれ提供される。
【0038】
また、本発明の脂肪低下組成物を含有する飲食品としては、肥満、脂肪肝および高脂血症(とくに高中性脂肪血症)の予防作用および/または改善作用により健康増進を図る健
康食品、機能性食品、特定保健用食品等の他、上記脂肪低下組成物を配合できる、全ての飲食品が挙げられる。また、該飲食品には、人間を対象とするもののみならず、動物を対象とする飼料なども含まれる。
【0039】
具体的には、錠剤、錠菓、チュアブル錠、粉剤、カプセル剤、顆粒剤、経管経腸栄養剤等の流動食、ドリンク剤等の健康食品または栄養補助食品;緑茶、ウーロン茶や紅茶等の茶飲料、清涼飲料、ゼリー飲料、スポーツ飲料、乳飲料、炭酸飲料、果汁飲料、乳酸菌飲料、発酵乳飲料、粉末飲料、ココア飲料、精製水等の飲料;バター、ジャム、ふりかけ、マーガリン等のスプレッド類;マヨネーズ、ショートニング、カスタードクリーム、ドレッシング類、パン類、米飯類、麺類、パスタ、味噌汁、豆腐、牛乳、ヨーグルト、スープまたはソース類、菓子(たとえばビスケットやクッキー類、チョコレート、キャンディ、ケーキ、アイスクリーム、チューインガム、タブレット)等が挙げられる。
【0040】
本発明の飲食品は、上記脂肪低下組成物のほかに、その飲食品の製造に用いられる他の飲食品素材、各種栄養素、各種ビタミン、ミネラル、食物繊維、種々の添加剤(たとえば呈味成分、甘味料、有機酸等の酸味料、安定剤、フレーバー)等を配合して、常法に従って製造することができる。
【0041】
本発明の飲食品において、アラビノキシラン分解物の含有量は、飲食品の形態により異なるが、通常は0.0001〜90質量%、好ましくは0.1〜70質量%の範囲であり、脂肪低下組成物の摂取量として上述した、成人1日当たりのアラビノキシラン分解物(乾燥質量)の摂取量を飲食できるよう、1日当たりの摂取量が管理できる形にするのが好ましい。
【0042】
本発明の飲食品を、上述した1日当たりの摂取量を管理できる形態で飲食することにより、該飲食品を用いる、肥満、脂肪肝および高脂血症(高中性脂肪血症)の予防方法および/または改善方法が提供される。
【0043】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0044】
なお、以下の例中、アラビノキシラン分解物の糖組成およびアラビノキシラン分解物の分子量は次の方法で測定した。また、「%」は特に言及しない限り質量基準である。
[アラビノキシラン分解物の糖組成の測定]
アラビノキシラン分解物5mgを蒸留水1mLに溶解し、50%(v/v)トリフルオロ酢酸溶液1mLを加えて、105℃、2時間の条件で加水分解を行った。加水分解終了後
、不溶物を除去し、減圧下に残留する酸を除去したものを高速液体クロマトグラフィー(使用カラム;Shodex Sugar KS-801 昭和電工)に供した。
【0045】
[アラビノキシラン分解物に含まれる糖類の分子量分布測定]
アラビノキシラン分解物10mgを蒸留水1mLに溶解し、サイズ排除高速液体クロマトグラフィー(使用カラム;Shodex Sugar KS-803 昭和電工)に供し、次に0.1%(
v/v)トリフルオロ酢酸溶液/40%(v/v)アセトニトリル水溶液を使用して1.0mL/分の流速で溶離させた。溶離してきた液の220nmにおける紫外吸収を測定して、測定された吸光度を、分子量既知のマルトース、マルトトリオース、マルトペンタオー
スおよびプルラン(分子量5,000および10,000のもの)から作成した検量線に当てはめてアラビノキシラン分解物に含まれる糖類の分子量を決定した。
【0046】
[製造例]
(1)反応釜に小麦ふすま(日清製粉)200g、水1.4Lを仕込み、50℃でミキサ
ーを用いて3分間攪拌洗浄した。洗浄後、小麦ふすまを、ガーゼを用いてろ過し、水分を除去した。再度小麦ふすまを反応釜に戻し、水1.4Lを加えて50℃でミキサーを用い
て3分間攪拌洗浄した。これを更にもう一度繰り返し行い、合計3回洗浄操作を行った。(2)ついで、洗浄、ろ過後の小麦ふすまをメディウムびんに移し、蒸留水600mLを
加えて、オートクレーブ(TONY SS-325)で120℃、10分間加熱・加圧処理した。処
理終了後、室温にて放冷した。
(3)放冷後、残った水分をガーゼを用いたろ過により除去した小麦ふすまを、10Lバケツに投入した。
(4)該バケツに蒸留水4Lを加え、50℃に加熱後、ヘミセルラーゼ(セルラーゼオノヅカ3S ヤクルト薬品工業)を0.6g(原料小麦ふすまに対して0.3質量%)投入して50℃、60分間反応させた。
(5)反応液を90℃に加熱し、10分間酵素失活させた。
(6)蒸留水を加えて反応液の温度を下げ、脱脂綿でろ過してろ液を分取した。残渣には蒸留水2Lを加えて10分間攪拌し、脱脂綿でろ過してろ液を分取した。
(7)ろ液を合一し、減圧下に水分を除去し、その後、凍結乾燥し、さらにこれをミキサーで粉砕して、固形の形態のアラビノキシラン分解物(約20g)を得た。
(8)このアラビノキシラン分解物は、糖成分約80%、その他の成分約20%からなり、糖成分の約80%が平均分子量10,000Da以下(分子量500〜5,000:65.6%、5,000〜10,000:6.6%)の範囲にあった。糖成分の95%以上はアラビノース、キシロースおよびグルコースであり、その糖組成(質量比)はキシロース:アラビノース:グルコースが65:15:20であった。また、この固形のアラビノキシラン分解物は、わずかに甘味のある風味の良い粉末であり、これを水性媒体に添加すると、容易に溶解し清澄な液体が得られた。
【0047】
[実施例1]
錠剤の製造
製造例と同様にして得られたアラビノキシラン分解物84g、結晶セルロース(旭化成)10gおよびポリビニルピロリドン(BASF)5gを混合し、これにエタノール30mLを添加して、湿式法により常法にしたがって顆粒を製造した。この顆粒を乾燥した後、ステアリン酸マグネシウム1.2gを加えて打錠用顆粒末とし、打錠機を用いて打錠し、1錠が1gの錠剤100個を製造した。
【0048】
[実施例2]
顆粒剤の製造
製造例と同様にして得られたアラビノキシラン分解物100g、乳糖(DMV)100gおよび結晶セルロース(旭化成)40gを混合し、これにエタノール130mLを練合機に添加し、通常の方法により5分間練合した。練合終了後、10メッシュで篩過し、乾燥機中にて50℃で乾燥した。乾燥後、整粒し、顆粒剤240gを得た。
【0049】
[実施例3]
シロップ剤の製造
精製水400gを煮沸し、これをかき混ぜながら、白糖750gおよび製造例と同様にして得られたアラビノキシラン分解物100gを加えて溶解し、熱時に布ごしし、これに精製水を加えて全量を1000mLとしてシロップ剤を製造した。
【0050】
[実施例4]
流動食の製造
約65℃の純水700gにカゼインナトリウム(DMV)40g、マルトデキストリン(三和デンプン)160gおよび製造例と同様にして得られたアラビノキシラン分解物50gを添加して溶解させ、ついでビタミンミックスおよび微量ミネラルの各成分混合液を添加した。得られた混合液をホモミキサーに投入し、約8,000rpmにて15分間粗乳化した。得られた乳化液を約20℃に冷却し、香料を添加後、最終メスアップを行った。この液をパウチへ本液230g充填後、窒素置換を行いながらパウチを密封し、121℃で15分間殺菌を行って流動食を得た。
【0051】
[実施例5]
パンの製造
小麦粉(強力粉)160gとドライイースト2gを混ぜた。これとは別に、製造例と同様にして得られたアラビノキシラン分解物8g、砂糖25g、食塩3g、脱脂粉乳6gを温湯70gに溶かし、鶏卵1個を添加してよく混ぜた。これを上記の小麦粉とドライイーストの混合物に加え、よく手でこねた後、バター約40gを加えてよくこね、20個のロールパン生地を作った。次いで、これらのパン生地を発酵させた後、表面に溶き卵を塗り、オーブンにて180℃で約15分焼き、ロールパンを作成した。外観、味、食感ともに良好であった。
【0052】
[実施例6]
レトルトご飯の製造
お米2合を用いて一般的な水量に対し、製造例と同様にして得られたアラビノキシラン分解物2gを加えて炊飯し、これを慣用の方法に従ってレトルト用パックに充填した後、窒素置換を行いながら密封し、121℃で15分間殺菌を行ってレルトご飯を得た。得られたレトルトご飯の米飯は、外観、味、食感ともに良好であった。
【0053】
[実施例7]
パスタ用ソースの製造
パスタ用のミートソース一人前(150g)を鍋に入れ、これに製造例と同様にして得られたアラビノキシラン分解物5gを加えて加温した。このソースをパウチへ充填した後、窒素置換を行いながらパウチを密封し、121℃で15分間殺菌を行って、パスタ用ミートソースを得た。
[試験例]
SD系雄性ラット(4週齢:日本クレア)を6匹ずつ標準食群、試験食群に分けてそれぞれの群に表1に対応する高脂肪飼料を15日間摂取させた。飼料及び水道水を自由摂取させ、明暗12時間サイクルにて飼育した。試験期間終了後、1晩絶食させた。エーテル麻酔下で腹部大動脈より採血後、肝臓を採取した。肝臓は測定に供するまで-80℃にて保
存した。
【0054】
血液は室温にて1時間放置後、遠心分離(1,500×g、20分)により血清を得た。血清の総コレステロールはコレステロールE-テストワコー(和光純薬製)、HDL-コレステロールはHDLコレステロールE-テストワコー(和光純薬製)、トリグリセライドE-テストワコー(和光純薬製)、リン脂質はリン脂質テストワコー(和光純薬製)を用いて測定した。動脈硬化指数は以下の式を用いて計算した。
【0055】
動脈硬化指数=
(総コレステロール値−HDLコレステロール値)÷HDLコレステロール値
これらの結果を表2に示した。
【0056】
肝臓は0.2gをクロロホルム:メタノール(2:1、v/v)混合液8mLでホモジナ
イズ後、遠心上清(3000×g)を採取した。さらに残渣をクロロホルム:メタノール(
2:1、v/v)8mLで再度ホモジナイズし、遠心上清を回収、先の上清と併せた抽出
液を調製した。この抽出液を濃縮乾固後、重量を測定して総脂質量とした。肝臓総コレステロール、リン脂質、トリグリセライドの測定は上記の脂質サンプルをtert-butyl-alcohol:TritonX100:メタノール(3:1:1、 v/v)にて溶解後、血清と同様に測定した。
【0057】
肝臓脂質測定の結果を表3に示す。
【0058】
【表1】

【0059】
【表2】

【0060】
【表3】

【0061】
表2および表3の結果から明らかなように、本発明のアラビノキシラン分解物を含有する試験食により飼育された試験食群は、アラビノキシラン分解物を含有しない標準食群に比べて、血清中の中性脂肪およびリン脂質、ならびに肝臓中のコレステロール、中性脂肪およびリン脂質が顕著に低下した。したがって、本発明のアラビノキシラン分解物を含有する脂肪低下組成物は、優れた血液中および肝臓中の脂肪低下作用を有する事、とくに血液中および肝臓中の中性脂肪低下作用を有する事が明らかとなった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アラビノキシラン分解物を有効成分として含有してなる脂肪低下組成物。
【請求項2】
前記アラビノキシラン分解物がイネ科植物由来である、請求項1に記載の脂肪低下組成物。
【請求項3】
前記アラビノキシラン分解物が、分子量500〜50,000Daの水溶性アラビノキシ
ランを主成分として含有する、請求項1に記載の脂肪低下組成物。
【請求項4】
前記アラビノキシラン分解物が、分子量500〜10,000Daの水溶性アラビノキシ
ランを50〜90質量%の量で含有する、請求項1に記載の脂肪低下組成物。
【請求項5】
血液中および肝臓中の中性脂肪低下作用を有する、請求項1に記載の脂肪低下組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の脂肪低下組成物を含有してなる飲食品。

【公開番号】特開2007−182395(P2007−182395A)
【公開日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−585(P2006−585)
【出願日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【出願人】(301049744)日清ファルマ株式会社 (61)
【Fターム(参考)】