説明

脂肪族ポリエステル系樹脂白色フィルムおよびそれを用いた反射板

【課題】カルボジイミド化合物により末端が封止され、耐加水分解性が改善された脂肪族ポリエステル系樹脂よりなる白色フィルムであって、イソシアネート化合物を遊離させず、イソシアネート化合物による悪臭の発生を抑制することができる白色フィルムを提供すること。
【解決手段】脂肪族ポリエステル系樹脂、カルボジイミド基を1個有しその第一窒素と第二窒素とが結合基により結合されている環状構造を少なくとも含む化合物、およびガラス転移温度が脂肪族ポリエステル系樹脂のガラス転移温度より15℃以上高い非相溶性熱可塑性樹脂を含有することを特徴とする脂肪族ポリエステル系樹脂白色フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は脂肪族ポリエステル系樹脂白色フィルムおよびそれを用いた反射板に関する。特に、液晶ディスプレイ、照明器具、照明看板等の反射板、およびそれに好適に使用される脂肪族ポリエステル系樹脂白色フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ等の反射板に使用される反射フィルムとして、特許文献1には、芳香族ポリエステル系樹脂からなるフィルムが開示されているが、その分子鎖中に含まれる芳香環が紫外線を吸収するため、紫外線に晒されると反射フィルムが劣化し黄変して、反射率が低下するという欠点がある。
【0003】
また、特許文献2には、反射フィルムとしてポリプロピレン系樹脂からなるフィルムが開示されているが、このようなポリプロピレン系樹脂は、焼却処理により廃棄される場合において焼却発熱量が大きいため、焼却炉を傷めるという問題がある。また、ポリプロピレン系樹脂等のプラスチックは、自然環境中で長期にわたって安定であるため、廃棄に際し埋め立て処理されると、長期にわたって土壌中に残存し、廃棄物埋め立て処理用地の短命化を促進する、自然の景観や野生動植物の生活環境を損なう等の問題がある。その他、ポリプロピレン系樹脂からなるフィルムは、反射率を向上させるべく無機充填剤を添加する際に、かかる無機充填剤の添加量を例えば60重量%以上のごとく多量にすると、十分なフィルム強度を確保することができないため、延伸時にフィルムが破断しやすく、フィルム生産の安定性が低下する恐れがある。
【0004】
これらの技術に対して、ポリ乳酸などの脂肪族ポリエステル系樹脂は、紫外線による黄変の問題も少なく、また焼却処理した場合に発熱量が小さく、埋め立て処理した場合には微生物等による分解が可能で、廃棄上の問題が生じないといった利点があり、例えば特許文献3には、脂肪族ポリエステル系樹脂からなる反射フィルムが開示されている。
【0005】
一方、ポリ乳酸などの脂肪族ポリエステル系樹脂は、耐加水分解性に劣るという問題がある。そのためフィルムに対してカルボジイミド化合物を適用し、加水分解を抑制することが既に提案されている(特許文献4)。
【0006】
しかしながら、この提案において用いられているカルボジイミド化合物は、線状のカルボジイミド化合物であり、このような線状カルボジイミド化合物を高分子化合物の末端封止剤として用いると、カルボジイミド化合物が高分子化合物の末端に結合する反応に伴いイソシアネート基を有する化合物が遊離し、イソシアネート化合物の独特の臭いを発生し、作業環境を悪化させることが問題となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平4−239540号公報
【特許文献2】特開平11−174213号公報
【特許文献3】国際公開第04/104077号パンフレット
【特許文献4】特開2001−261797号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、上記従来技術が有していた問題を解消し、カルボジイミド化合物により末端が封止され、耐加水分解性が改善された脂肪族ポリエステル系樹脂よりなる白色フィルムであって、イソシアネート化合物を遊離させず、イソシアネート化合物による悪臭の発生を抑制することができる白色フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、本発明を完成した。即ち、本発明の目的は、
1.脂肪族ポリエステル系樹脂(A成分)、カルボジイミド基を1個有しその第一窒素と第二窒素とが結合基により結合されている環状構造を少なくとも含む化合物(C成分)、およびガラス転移温度が脂肪族ポリエステル系樹脂(A成分)のガラス転移温度より15℃以上高い非相溶性熱可塑性樹脂(B成分)を含有することを特徴とする脂肪族ポリエステル系樹脂白色フィルム。
により達成される。
【0010】
また、本発明には、下記も包含される。
2.C成分において、環状構造を形成する原子数が8〜50である上記1記載の脂肪族ポリエステル系樹脂白色フィルム。
3.C成分における環状構造が、下記式(1)で表される上記1記載の脂肪族ポリエステル系樹脂白色フィルム。
【化1】

(式中、Qは、脂肪族基、脂環族基、芳香族基またはこれらの組み合わせである2〜4価の結合基であり、ヘテロ原子を含有していてもよい。)
4.Qは、下記式(1−1)、(1−2)または(1−3)で表される2〜4価の結合基である上記3記載の脂肪族ポリエステル系樹脂白色フィルム。
【化2】

(式中、ArおよびArは各々独立に、2〜4価の炭素数5〜15の芳香族基である。RおよびRは各々独立に、2〜4価の炭素数1〜20の脂肪族基、2〜4価の炭素数3〜20の脂環族基またはこれらの組み合わせ、またはこれら脂肪族基、脂環族基と2〜4価の炭素数5〜15の芳香族基の組み合わせである。XおよびXは各々独立に、2〜4価の炭素数1〜20の脂肪族基、2〜4価の炭素数3〜20の脂環族基、2〜4価の炭素数5〜15の芳香族基、またはこれらの組み合わせである。sは0〜10の整数である。kは0〜10の整数である。なお、sまたはkが2以上であるとき、繰り返し単位としてのX、あるいはXが、他のX、あるいはXと異なっていてもよい。Xは、2〜4価の炭素数1〜20の脂肪族基、2〜4価の炭素数3〜20の脂環族基、2〜4価の炭素数5〜15の芳香族基、またはこれらの組み合わせである。但し、Ar、Ar、R、R、X、XおよびXはヘテロ原子を含有していてもよい、また、Qが2価の結合基であるときは、Ar、Ar、R、R、X、XおよびXは全て2価の基である。Qが3価の結合基であるときは、Ar、Ar、R、R、X、XおよびXの内の一つが3価の基である。Qが4価の結合基であるときは、Ar、Ar、R、R、X、XおよびXの内の一つが4価の基であるか、二つが3価の基である。)
5.C成分が、下記式(2)で表される上記1記載の脂肪族ポリエステル系樹脂白色フィルム。
【化3】

(式中、Qは、脂肪族基、脂環族基、芳香族基またはこれらの組み合わせである2価の結合基であり、ヘテロ原子を含有していてもよい。)
6.Qは、下記式(2−1)、(2−2)または(2−3)で表される2価の結合基である上記5記載の脂肪族ポリエステル系樹脂白色フィルム。
【化4】

(式中、Ar、Ar、R、R、X、X、X、sおよびkは、各々式(1−1)〜(1−3)中のAr、Ar、R、R、X、X、X、sおよびkと同じである。)
7.C成分が、下記式(3)で表される上記1記載の脂肪族ポリエステル系樹脂白色フィルム。
【化5】

(式中、Qは、脂肪族基、脂環族基、芳香族基またはこれらの組み合わせである3価の結合基であり、ヘテロ原子を含有していてもよい。Yは、環状構造を担持する担体である。)
8.Qは、下記式(3−1)、(3−2)または(3−3)で表される3価の結合基である上記7記載の脂肪族ポリエステル系樹脂白色フィルム。
【化6】

(式中、Ar、Ar、R、R、X、X、X、sおよびkは、各々式(1−1)〜(1−3)のAr、Ar、R、R、X、X、X、sおよびkと同じである。但しこれらの内の一つは3価の基である。)
9.Yは、単結合、二重結合、原子、原子団またはポリマーである上記7記載の脂肪族ポリエステル系樹脂白色フィルム。
10.C成分が、下記式(4)で表される上記1記載の脂肪族ポリエステル系樹脂白色フィルム。
【化7】

(式中、Qは、脂肪族基、芳香族基、脂環族基またはこれらの組み合わせである4価の結合基であり、ヘテロ原子を保有していてもよい。ZおよびZは、環状構造を担持する担体である。)
11.Qは、下記式(4−1)、(4−2)または(4−3)で表される4価の結合基である上記10記載の脂肪族ポリエステル系樹脂白色フィルム。
【化8】

(式中、Ar、Ar、R、R、X、X、X、sおよびkは、各々式(1−1)〜(1−3)の、Ar、Ar、R、R、X、X、X、sおよびkと同じである。但し、これらの内の一つが4価の基であるか、二つが3価の基である。)
12.ZおよびZは各々独立に、単結合、二重結合、原子、原子団またはポリマーである上記10記載の脂肪族ポリエステル系樹脂白色フィルム。
13.非相溶性熱可塑性樹脂(B成分)の含有量が、脂肪族ポリエステル系樹脂(A成分)と非相溶性熱可塑性樹脂(B成分)と環状カルボジイミド化合物(C成分)とを含む樹脂組成物中、10重量%以上60重量%以下であることを特徴とする上記1〜12のいずれか1に記載の脂肪族ポリエステル系樹脂白色フィルム。
14.脂肪族ポリエステル系樹脂(A成分)が、ポリ乳酸系樹脂を主たる成分として含む、上記1〜13のいずれか1に記載の脂肪族ポリエステル系樹脂白色フィルム。
15.ポリ乳酸系樹脂が、ステレオコンプレックス結晶を形成している上記14に記載の脂肪族ポリエステル系樹脂白色フィルム。
16.非相溶性熱可塑性樹脂(B成分)が芳香族ポリカーボネートおよび芳香族ポリエステルからなる群より選ばれる少なくとも1種である上記1〜15のいずれか1に記載の脂肪族ポリエステル系樹脂白色フィルム。
17.非相溶性熱可塑性樹脂(B成分)が、酸成分100モル%中にナフタレンジカルボン酸を5〜30モル%共重合したポリエチレンテレフタレートである上記16に記載の脂肪族ポリエステル系樹脂白色フィルム。
18.液晶ディスプレイ、照明器具、または照明看板の反射板に使用されることを特徴とする上記1〜17のいずれか1に記載の脂肪族ポリエステル系樹脂白色フィルム。
19.上記1〜18のいずれか1に記載の脂肪族ポリエステル系樹脂白色フィルムを備えていることを特徴とする反射板。
20.液晶ディスプレイ、照明器具または照明看板に使用されることを特徴とする上記19に記載の反射板。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、イソシアネート化合物を遊離させず、それによりイソシアネート化合物による悪臭の発生を抑制することができ、作業環境を悪化させることがなく、かつ耐加水分解性が改善された脂肪族ポリエステル系樹脂よりなる白色フィルムを提供することができる。そして、脂肪族ポリエステル系樹脂を用いることによって、埋め立て処理した場合には微生物等による分解が可能で、廃棄上の問題を低減することができる。
【0012】
また本発明の好ましい態様によれば、優れた反射率を有する脂肪族ポリエステル系樹脂白色フィルムを得ることができる。
また本発明の好ましい態様によれば、耐熱性に優れた脂肪族ポリエステル系樹脂白色フィルムを得ることができる。
また本発明の脂肪族ポリエステル系樹脂白色フィルムは、反射板用として好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。
<環状カルボジイミド化合物(C成分)>
まず、本発明において特徴的な成分である、カルボジイミド基を1個有しその第一窒素と第二窒素とが結合基により結合されている環状構造を少なくとも含む化合物(C成分)について説明する。C成分は環状構造を有する(以下、C成分を環状カルボジイミド化合物と略記することがある。)。環状カルボジイミド化合物は、環状構造を複数有していてもよい。
【0014】
ここで環状構造は、カルボジイミド基(−N=C=N−)を1個有しその第一窒素と第二窒素とが結合基により結合されて形成している。一つの環状構造中には、1個のカルボジイミド基のみを有するが、例えば、スピロ環など、分子中に複数の環状構造を有する場合にはスピロ原子に結合するそれぞれの環状構造中に1個のカルボジイミド基を有していれば、化合物として複数のカルボジイミド基を有していてよいことはいうまでもない。環状構造中の原子数は、好ましくは8〜50、より好ましくは10〜30、さらに好ましくは10〜20、特に、10〜15が好ましい。
【0015】
ここで、環状構造中の原子数とは、環状構造を直接構成する原子の数を意味し、例えば、8員環であれば8、50員環であれば50である。環状構造中の原子数が8より小さいと、環状カルボジイミド化合物の安定性が低下して、保管、使用が困難となる場合があるためである。また反応性の観点よりは環員数の上限値に関しては特別の制限はないが、50を超える原子数の環状カルボジイミド化合物は合成上困難となり、コストが大きく上昇する場合が発生するためである。かかる観点より環状構造中の原子数は好ましくは、10〜30、より好ましくは10〜20、特に好ましくは10〜15の範囲が選択される。
【0016】
環状構造は、下記式(1)で表される構造であることが好ましい。
【化9】

【0017】
式中、Qは、それぞれヘテロ原子ならびに置換基を含んでいてもよい、脂肪族基、脂環族基、芳香族基またはこれらの組み合わせである2〜4価の結合基である。ヘテロ原子とはこの場合、O、N、S、Pを指す。この結合基の価のうち2つの価は環状構造を形成するために使用される。Qが3価あるいは4価の結合基である場合、単結合、二重結合、原子、原子団を介して、ポリマーあるいは他の環状構造と結合している。
【0018】
結合基は、それぞれヘテロ原子ならびに置換基を含んでいてもよい、2〜4価の炭素数1〜20の脂肪族基、2〜4価の炭素数3〜20の脂環族基、2〜4価の炭素数5〜15の芳香族基またはこれらの組み合わせであり、上記で規定される環状構造を形成するための必要炭素数を有する結合基が選択される。組み合わせの例としては、アルキレン基とアリーレン基が結合した、アルキレン−アリーレン基のような構造などが挙げられる。
結合基(Q)は、下記式(1−1)、(1−2)または(1−3)で表される2〜4価の結合基であることが好ましい。
【0019】
【化10】

【0020】
式中、ArおよびArは各々独立に、それぞれヘテロ原子ならびに置換基を含んでいてもよい、2〜4価の炭素数5〜15の芳香族基である。
【0021】
芳香族基として、それぞれへテロ原子を含んで複素環構造を持っていてもよい、炭素数5〜15のアリーレン基、炭素数5〜15のアレーントリイル基、炭素数5〜15のアレーンテトライル基が挙げられる。アリーレン基(2価)として、フェニレン基、ナフタレンジイル基などが挙げられる。アレーントリイル基(3価)として、ベンゼントリイル基、ナフタレントリイル基などが挙げられる。アレーンテトライル基(4価)として、ベンゼンテトライル基、ナフタレンテトライル基などが挙げられる。これらの芳香族基は置換されていても良い。置換基として、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜15のアリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミド基、ヒドロキシル基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基などが挙げられる。
【0022】
およびRは各々独立に、それぞれヘテロ原子ならびに置換基を含んでいてもよい、2〜4価の炭素数1〜20の脂肪族基、2〜4価の炭素数3〜20の脂環族基、およびこれらの組み合わせ、またはこれら脂肪族基、脂環族基と2〜4価の炭素数5〜15の芳香族基の組み合わせである。
【0023】
脂肪族基として、炭素数1〜20のアルキレン基、炭素数1〜20のアルカントリイル基、炭素数1〜20のアルカンテトライル基などが挙げられる。アルキレン基として、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、へプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ドデシレン基、へキサデシレン基などが挙げられる。アルカントリイル基として、メタントリイル基、エタントリイル基、プロパントリイル基、ブタントリイル基、ペンタントリイル基、ヘキサントリイル基、ヘプタントリイル基、オクタントリイル基、ノナントリイル基、デカントリイル基、ドデカントリイル基、ヘキサデカントリイル基などが挙げられる。アルカンテトライル基として、メタンテトライル基、エタンテトライル基、プロパンテトライル基、ブタンテトライル基、ペンタンテトライル基、ヘキサンテトライル基、ヘプタンテトライル基、オクタンテトライル基、ノナンテトライル基、デカンテトライル基、ドデカンテトライル基、ヘキサデカンテトライル基などが挙げられる。これらの脂肪族基は置換されていても良い。置換基として、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜15のアリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミド基、ヒドロキシル基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基などが挙げられる。
【0024】
脂環族基として、炭素数3〜20のシクロアルキレン基、炭素数3〜20のシクロアルカントリイル基、炭素数3〜20のシクロアルカンテトライル基が挙げられる。シクロアルキレン基として、シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、シクロへプチレン基、シクロオクチレン基、シクロノニレン基、シクロデシレン基、シクロドデシレン基、シクロへキサデシレン基などが挙げられる。アルカントリイル基として、シクロプロパントリイル基、シクロブタントリイル基、シクロペンタントリイル基、シクロヘキサントリイル基、シクロヘプタントリイル基、シクロオクタントリイル基、シクロノナントリイル基、シクロデカントリイル基、シクロドデカントリイル基、シクロヘキサデカントリイル基などが挙げられる。アルカンテトライル基として、シクロプロパンテトライル基、シクロブタンテトライル基、シクロペンタンテトライル基、シクロヘキサンテトライル基、シクロヘプタンテトライル基、シクロオクタンテトライル基、シクロノナンテトライル基、シクロデカンテトライル基、シクロドデカンテトライル基、シクロヘキサデカンテトライル基などが挙げられる。これらの脂環族基は置換されていても良い。置換基として、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜15のアリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミド基、ヒドロキシル基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基などが挙げられる。
【0025】
芳香族基として、それぞれへテロ原子を含んで複素環構造を持っていてもよい、炭素数5〜15のアリーレン基、炭素数5〜15のアレーントリイル基、炭素数5〜15のアレーンテトライル基が挙げられる。アリーレン基として、フェニレン基、ナフタレンジイル基などが挙げられる。アレーントリイル基(3価)として、ベンゼントリイル基、ナフタレントリイル基などが挙げられる。アレーンテトライル基(4価)として、ベンゼンテトライル基、ナフタレンテトライル基などが挙げられる。これら芳香族基は置換されていても良い。置換基として、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜15のアリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミド基、ヒドロキシル基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基などが挙げられる。
【0026】
上記式(1−1)、(1−2)においてXおよびXは各々独立に、それぞれヘテロ原子ならびに置換基を含んでいてもよい、2〜4価の炭素数1〜20の脂肪族基、2〜4価の炭素数3〜20の脂環族基、2〜4価の炭素数5〜15の芳香族基、またはこれらの組み合わせである。
【0027】
脂肪族基として、炭素数1〜20のアルキレン基、炭素数1〜20のアルカントリイル基、炭素数1〜20のアルカンテトライル基などが挙げられる。アルキレン基として、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、へプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ドデシレン基、へキサデシレン基などが挙げられる。アルカントリイル基として、メタントリイル基、エタントリイル基、プロパントリイル基、ブタントリイル基、ペンタントリイル基、ヘキサントリイル基、ヘプタントリイル基、オクタントリイル基、ノナントリイル基、デカントリイル基、ドデカントリイル基、ヘキサデカントリイル基などが挙げられる。アルカンテトライル基として、メタンテトライル基、エタンテトライル基、プロパンテトライル基、ブタンテトライル基、ペンタンテトライル基、ヘキサンテトライル基、ヘプタンテトライル基、オクタンテトライル基、ノナンテトライル基、デカンテトライル基、ドデカンテトライル基、ヘキサデカンテトライル基などが挙げられる。これらの脂肪族基は置換されていても良い。置換基として、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜15のアリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミド基、ヒドロキシル基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基などが挙げられる。
【0028】
脂環族基として、炭素数3〜20のシクロアルキレン基、炭素数3〜20のシクロアルカントリイル基、炭素数3〜20のシクロアルカンテトライル基が挙げられる。シクロアルキレン基として、シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、シクロへプチレン基、シクロオクチレン基、シクロノニレン基、シクロデシレン基、シクロドデシレン基、シクロへキサデシレン基などが挙げられる。アルカントリイル基として、シクロプロパントリイル基、シクロブタントリイル基、シクロペンタントリイル基、シクロヘキサントリイル基、シクロヘプタントリイル基、シクロオクタントリイル基、シクロノナントリイル基、シクロデカントリイル基、シクロドデカントリイル基、シクロヘキサデカントリイル基などが挙げられる。アルカンテトライル基として、シクロプロパンテトライル基、シクロブタンテトライル基、シクロペンタンテトライル基、シクロヘキサンテトライル基、シクロヘプタンテトライル基、シクロオクタンテトライル基、シクロノナンテトライル基、シクロデカンテトライル基、シクロドデカンテトライル基、シクロヘキサデカンテトライル基などが挙げられる。これらの脂環族基は置換されていても良い。置換基として、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜15のアリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミド基、ヒドロキシル基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基などが挙げられる。
【0029】
芳香族基として、それぞれへテロ原子を含んで複素環構造を持っていてもよい、炭素数5〜15のアリーレン基、炭素数5〜15のアレーントリイル基、炭素数5〜15のアレーンテトライル基が挙げられる。アリーレン基として、フェニレン基、ナフタレンジイル基などが挙げられる。アレーントリイル基(3価)として、ベンゼントリイル基、ナフタレントリイル基などが挙げられる。アレーンテトライル基(4価)として、ベンゼンテトライル基、ナフタレンテトライル基などが挙げられる。これらの芳香族基は置換されていても良い。置換基として、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜15のアリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミド基、ヒドロキシル基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基などが挙げられる。
【0030】
上記式(1−1)、(1−2)においてs、kは0〜10の整数、好ましくは0〜3の整数、より好ましくは0〜1の整数である。s及びkが10を超えると、環状カルボジイミド化合物は合成上困難となり、コストが大きく上昇する場合が発生するためである。かかる観点より整数は好ましくは0〜3の範囲が選択される。なお、sまたはkが2以上であるとき、繰り返し単位としてのX、あるいはXが、他のX、あるいはXと異なっていてもよい。
【0031】
上記式(1−3)においてXは、それぞれヘテロ原子ならびに置換基を含んでいてもよい、2〜4価の炭素数1〜20の脂肪族基、2〜4価の炭素数3〜20の脂環族基、2〜4価の炭素数5〜15の芳香族基、またはこれらの組み合わせである。
【0032】
脂肪族基として、炭素数1〜20のアルキレン基、炭素数1〜20のアルカントリイル基、炭素数1〜20のアルカンテトライル基などが挙げられる。アルキレン基として、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、へプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ドデシレン基、へキサデシレン基などが挙げられる。アルカントリイル基として、メタントリイル基、エタントリイル基、プロパントリイル基、ブタントリイル基、ペンタントリイル基、ヘキサントリイル基、ヘプタントリイル基、オクタントリイル基、ノナントリイル基、デカントリイル基、ドデカントリイル基、ヘキサデカントリイル基などが挙げられる。アルカンテトライル基として、メタンテトライル基、エタンテトライル基、プロパンテトライル基、ブタンテトライル基、ペンタンテトライル基、ヘキサンテトライル基、ヘプタンテトライル基、オクタンテトライル基、ノナンテトライル基、デカンテトライル基、ドデカンテトライル基、ヘキサデカンテトライル基などが挙げられる。これら脂肪族基は置換基を含んでいてもよく、置換基として、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜15のアリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミド基、ヒドロキシル基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基などが挙げられる。
【0033】
脂環族基として、炭素数3〜20のシクロアルキレン基、炭素数3〜20のシクロアルカントリイル基、炭素数3〜20のシクロアルカンテトライル基が挙げられる。シクロアルキレン基として、シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、シクロへプチレン基、シクロオクチレン基、シクロノニレン基、シクロデシレン基、シクロドデシレン基、シクロへキサデシレン基などが挙げられる。アルカントリイル基として、シクロプロパントリイル基、シクロブタントリイル基、シクロペンタントリイル基、シクロヘキサントリイル基、シクロヘプタントリイル基、シクロオクタントリイル基、シクロノナントリイル基、シクロデカントリイル基、シクロドデカントリイル基、シクロヘキサデカントリイル基などが挙げられる。アルカンテトライル基として、シクロプロパンテトライル基、シクロブタンテトライル基、シクロペンタンテトライル基、シクロヘキサンテトライル基、シクロヘプタンテトライル基、シクロオクタンテトライル基、シクロノナンテトライル基、シクロデカンテトライル基、シクロドデカンテトライル基、シクロヘキサデカンテトライル基などが挙げられる。これら脂環族基は置換基を含んでいてもよく、置換基として、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜15のアリーレン基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミド基、ヒドロキシル基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基などが挙げられる。
【0034】
芳香族基として、それぞれへテロ原子を含んで複素環構造を持っていてもよい、炭素数5〜15のアリーレン基、炭素数5〜15のアレーントリイル基、炭素数5〜15のアレーンテトライル基が挙げられる。アリーレン基として、フェニレン基、ナフタレンジイル基などが挙げられる。アレーントリイル基(3価)として、ベンゼントリイル基、ナフタレントリイル基などが挙げられる。アレーンテトライル基(4価)として、ベンゼンテトライル基、ナフタレンテトライル基などが挙げられる。これらの芳香族基は置換されていても良い。置換基として、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜15のアリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミド基、ヒドロキシル基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基などが挙げられる。
【0035】
また、Ar、Ar、R、R、X、XおよびXはヘテロ原子を含有していてもよい、また、Qが2価の結合基であるときは、Ar、Ar、R、R、X、XおよびXは全て2価の基である。Qが3価の結合基であるときは、Ar、Ar、R、R、X、XおよびXの内の一つが3価の基である。Qが4価の結合基であるときは、Ar、Ar、R、R、X、XおよびXの内の一つが4価の基であるか、二つが3価の基である。
【0036】
本発明で用いる環状カルボジイミド化合物として、以下(a)〜(c)で表される化合物が挙げられる。
【0037】
[環状カルボジイミド化合物(a)]
本発明で用いる環状カルボジイミド化合物として下記式(2)で表される化合物(以下、「環状カルボジイミド化合物(a)」ということがある。)を挙げることができる。
【0038】
【化11】

【0039】
式中、Qは、脂肪族基、脂環族基、芳香族基またはこれらの組み合わせである2価の結合基であり、ヘテロ原子を含有していてもよい。脂肪族基、脂環族基、芳香族基は、式(1)で説明したものと同じである。但し、式(2)の化合物においては、脂肪族基、脂環族基、芳香族基は全て2価である。Qは、下記式(2−1)、(2−2)または(2−3)で表される2価の結合基であることが好ましい。
【0040】
【化12】

【0041】
式中、Ar、Ar、R、R、X、X、X、sおよびkは、各々式(1−1)〜(1−3)中のAr、Ar、R、R、X、X、X、sおよびkと同じである。但し、これらは全て2価である。
かかる環状カルボジイミド化合物(a)としては、以下の化合物が挙げられる。
【0042】
【化13】

【0043】
【化14】

【0044】
【化15】

【0045】
【化16】

【0046】
【化17】

【0047】
【化18】

【0048】
【化19】

【0049】
【化20】

【0050】
【化21】

【0051】
【化22】

【0052】
【化23】

【0053】
【化24】

【0054】
【化25】

【0055】
【化26】

【0056】
[環状カルボジイミド化合物(b)]
さらに、本発明で用いる環状カルボジイミド化合物として下記式(3)で表される化合物(以下、「環状カルボジイミド化合物(b)」ということがある。)を挙げることができる。
【0057】
【化27】

【0058】
式中、Qは、脂肪族基、脂環族基、芳香族基、またはこれらの組み合わせである3価の結合基であり、ヘテロ原子を含有していてもよい。Yは、環状構造を担持する担体である。脂肪族基、脂環族基、芳香族基は、式(1)で説明したものと同じである。但し、式(3)の化合物においては、Qを構成する基の内一つは3価である。
は、下記式(3−1)、(3−2)または(3−3)で表される3価の結合基であることが好ましい。
【0059】
【化28】

【0060】
式中、Ar、Ar、R、R、X、X、X、sおよびkは、各々式(1−1)〜(1−3)のAr、Ar、R、R、X、X、X、sおよびkと同じである。但しこれらの内の一つは3価の基である。
Yは、単結合、二重結合、原子、原子団またはポリマーであることが好ましい。Yは結合部であり、複数の環状構造がYを介して結合し、式(3)で表される構造を形成している。
かかる環状カルボジイミド化合物(b)としては、下記化合物が挙げられる。
【0061】
【化29】

【0062】
【化30】

【0063】
【化31】

【0064】
【化32】

【0065】
[環状カルボジイミド化合物(c)]
本発明で用いる環状カルボジイミド化合物として下記式(4)で表される化合物(以下、「環状カルボジイミド化合物(c)」ということがある。)を挙げることができる。
【0066】
【化33】

【0067】
式中、Qは、脂肪族基、脂環族基、芳香族基またはこれらの組み合わせである4価の結合基であり、ヘテロ原子を保有していてもよい。ZおよびZは、環状構造を担持する担体である。ZおよびZは、互いに結合して環状構造を形成していてもよい。
【0068】
脂肪族基、脂環族基、芳香族基は、式(1)で説明したものと同じである。但し、式(4)の化合物において、Qは4価である。従って、これらの基の内の一つが4価の基であるか、二つが3価の基である。
は、下記式(4−1)、(4−2)または(4−3)で表される4価の結合基であることが好ましい。
【0069】
【化34】

【0070】
Ar、Ar、R、R、X、X、X、sおよびkは、各々式(1−1)〜(1−3)の、Ar、Ar、R、R、X、X、X、sおよびkと同じである。但し、Ar、Ar、R、R、X、XおよびXは、これらの内の一つが4価の基であるか、二つが3価の基である。ZおよびZは各々独立に、単結合、二重結合、原子、原子団またはポリマーであることが好ましい。ZおよびZは結合部であり、複数の環状構造がZおよびZを介して結合し、式(4)で表される構造を形成している。
かかる環状カルボジイミド化合物(c)としては、下記化合物を挙げることができる。
【0071】
【化35】

【0072】
【化36】

【0073】
【化37】

【0074】
<環状カルボジイミド化合物の製造方法>
本発明において、環状カルボジイミド化合物の製造方法は特に限定無く、従来公知の方法により製造することができる。例として、アミン体からイソシアネート体を経由して製造する方法、アミン体からイソチオシアネート体を経由して製造する方法、アミン体からトリフェニルホスフィン体を経由して製造する方法、アミン体から尿素体を経由して製造する方法、アミン体からチオ尿素体を経由して製造する方法、カルボン酸体からイソシアネート体を経由して製造する方法、ラクタム体を誘導して製造する方法などが挙げられる。
【0075】
また、本発明の環状カルボジイミド化合物は、以下の文献に記載された方法を組み合わせ、あるいは目的とする化合物に応じて適切に改変、組み合わせすることにより製造することができる。
【0076】
Tetrahedron Letters,Vol.34,No.32,515−5158,1993.
Medium−and Large−Membered Rings from Bis(iminophosphoranes):An Efficient Preparation of Cyclic Carbodiimides, Pedro Molina etal.
Journal of Organic Chemistry,Vol.61,No.13,4289−4299,1996.
New Models for the Study of the Racemization Mechanism of Carbodiimides.Synthesis and Structure(X−ray Crystallography and 1H NMR) of Cyclic Carbodiimides, Pedro Molina etal.
Journal of Organic Chemistry,Vol.43,No8,1944−1946,1978.
Macrocyclic Ureas as Masked Isocyanates, Henri Ulrich etal.
Journal of Organic Chemistry,Vol.48,No.10,1694−1700,1983.
Synthesis and Reactions of Cyclic Carbodiimides,R.Richteretal.
Journal of Organic Chemistry,Vol.59,No.24,7306−7315,1994.
A New and Efficient Preparation of Cyclic Carbodiimides from Bis(iminophosphoranea)and the System Boc2O/DMAP,Pedro Molina etal.
【0077】
製造する化合物に応じて、適切な製法を採用すればよいが、例えば、
(1)下記式(a−1)で表されるニトロフェノール類、下記式(a−2)で表されるニトロフェノール類および下記式(b)で表される化合物を反応させ、下記式(c)で表されるニトロ体を得る工程、
【化38】

【化39】

(2)得られたニトロ体を還元して下記式(d)で表わされるアミン体を得る工程、
【化40】

(3)得られたアミン体とトリフェニルホスフィンジブロミドを反応させ下記式(e)で表されるトリフェニルホスフィン体を得る工程、および
【化41】

(4)得られたトリフェニルホスフィン体を反応系中でイソシアネート化した後、直接脱炭酸させることによって製造したものは、本願発明に用いる環状カルボジイミド化合物として好適に用いることができる。
(上記式中、ArおよびArは各々独立に、炭素数1〜6のアルキル基またはフェニル基で置換されていてもよい芳香族基である。E1およびE2は各々独立に、ハロゲン原子、トルエンスルホニルオキシ基およびメタンスルホニルオキシ基、ベンゼンスルホニルオキシ基、p−ブロモベンゼンスルホニルオキシ基からなる群から選ばれる基である。Araは、フェニル基である。Xは、下記式(i−1)から(i−3)の結合基である。)
【0078】
【化42】

【0079】
【化43】

【0080】
【化44】

【0081】
なお、環状カルボジイミド化合物は、高分子化合物の酸性基を有効に封止することができるが、本発明の主旨に反しない範囲において、所望により、例えば、従来公知のポリマーのカルボキシル基封止剤を併用することができる。かかる従来公知のカルボキシル基封止剤としては、特開2005−2174号公報記載の剤、例えば、エポキシ化合物、オキサゾリン化合物、オキサジン化合物、などが例示される。
【0082】
<脂肪族ポリエステル系樹脂(A成分)>
本発明において、脂肪族ポリエステル系樹脂(A成分)としては、脂肪族ヒドロキシカルボン酸を主たる構成成分とする重合体、脂肪族多価カルボン酸またはそのエステル形成性誘導体と脂肪族多価アルコールを主成分として重縮合してなる重合体やそれらの共重合体が例示される。
【0083】
脂肪族ヒドロキシカルボン酸を主たる構成成分とする重合体としては、グリコール酸、乳酸、ヒドロキシプロピオン酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシカプロン酸などの重縮合体、もしくは共重合体などを例示することができ、なかでもポリグリコール酸、ポリ乳酸、ポリ3−ヒドロキシカルボン酪酸、ポリ4−ポリヒドロキシ酪酸、ポリ3−ヒドロキシヘキサン酸またはポリカプロラクトン、ならびにこれらの共重合体などが好ましく挙げられ、特にポリ乳酸が好ましく、ポリL−乳酸、ポリD−乳酸および、ステレオコンプレックス結晶を形成しているステレオコンプレックスポリ乳酸、ラセミポリ乳酸が好適に用いられる。
【0084】
ポリ乳酸としては、L−乳酸及び/又はD−乳酸を主たる繰り返し単位とするものを用いればよい(ここで、主たるとは、全体の50%以上を該成分が占めていることを意味する。)。
【0085】
ポリL一乳酸およびポリD−乳酸は、従来公知の方法で製造することができる。例えば、L−またはD−ラクチドを金属含有触媒の存在下加熱し、開環重合により製造することができる。また、金属含有触媒を含有する低分子量のポリ乳酸を結晶化させた後、減圧下または加圧化、不活性ガス気流下の存在下、あるいは非存在下、加熱、固相重合させ製造することもできる。さらに、有機溶媒の存在/非存在下で、乳酸を脱水縮合させる直接重合法で製造することができる。
【0086】
重合反応は、従来公知の反応容器で実施可能であり、例えばヘリカルリボン翼等、高粘度用撹拝翼を備えた縦型反応器あるいは横型反応器を単独、または並列して使用することができる。また、回分式あるいは連続式あるいは半回分式のいずれでも良いし、これらを組み合わせてもよい。
【0087】
重合開始剤としてアルコールを用いてもよい。かかるアルコールとしては、ポリ乳酸の重合を阻害せず不揮発性であることが好ましく、例えばデカノール、ドデカノール、テトラデカノール、ヘキサデカノール、オクタデカノール等を好適に用いることができる。
【0088】
固相重合法では、前述した開環重合法や乳酸の直接重合法によって得られた比較的低分子量(おおよそ15〜200程度)のポリ乳酸をプレポリマーとして使用する。プレポリマーは、そのガラス転移温度以上融点未満の温度範囲で予め結晶化させることが、樹脂ペレット融着防止の面から好ましい。結晶化させたプレポリマーは固定された縦型あるいは横型反応容器、またはタンブラーやキルンの様に容器自身が回転する反応容器(ロータリーキルン等)中に充填され、プレポリマーのガラス転移温度以上融点未満の温度範囲に加熱される。重合温度は、重合の進行に伴い段階的に昇湿させても何ら問題はない。また、固相重合中に生成する水を効率的に除去する目的で前記反応容器類の内部を減圧することや、加熱された不活性ガス気流を流通する方法も好適に併用される。
【0089】
ポリ乳酸の重合時に使用された金属含有触媒は、使用に先立ち従来公知の失活剤で不活性化しておくことが、ポリ乳酸および樹脂組成物の熱、水分に対する安定性を向上できるため好ましい。
かかる失活剤としてはイミノ基を有し且つ重合金属触媒に配位し得るキレート配位子の群からなる有機リガンドが挙げられる。
【0090】
またジヒドリドオキソリン(I)酸、ジヒドリドテトラオキソ二リン(II,II)酸、ヒドリドトリオキソリン(III)酸、ジヒドリドペンタオキソ二リン(III)酸、ヒドリドペンタオキソ二(II,IV)酸、ドデカオキソ六リン(III)酸、ヒドリドオクタオキソ三リン(III,IV,IV)酸、オクタオキソ三リン(IV,III,IV)酸、ヒドリドヘキサオキソ二リン(III,V)酸、ヘキサオキソ二リン(IV)酸、デカオキソ四リン(IV)酸、へンデカオキソ四リン(IV)酸、エネアオキソ三リン(V,IV,IV)酸等の酸価数5以下の低酸化数リン酸が挙げられる。
【0091】
また、式xHO・yPで表され、x/y=3のオルトリン酸、2>x/y>1であり、縮合度より二リン酸、三リン酸、四リン酸、五リン酸等と称せられるポリリン酸およびこれらの混合物が挙げられる。
【0092】
また、x/y=1で表されるメタリン酸、なかでもトリメタリン酸、テトラメタリン酸、1>x/y>0で表され、五酸化リン構造の一部を残した網目構造を有するウルトラリン酸(これらを総称してメタリン酸系化合物と呼ぶことがある。)が挙げられる。
【0093】
またこれらの酸の酸性塩、一価、多価のアルコール類、あるいはポリアルキレングリコール類の部分エステル、完全エステル、ホスホノ置換低級脂肪族カルボン酸誘導体等が挙げられる。
【0094】
メタリン酸系化合物は、3〜200程度のリン酸単位が縮合した環状のメタリン酸あるいは立体網目状構造を有するウルトラ領域メタリン酸あるいはそれらの(アルカル金属塩、アルカリ土類金属塩、オニウム塩)を包含する。なかでも環状メタリン酸ナトリウムやウルトラ領域メタリン酸ナトリウム、ホスホノ置換低級脂肪族カルボン酸誘導体のジへキシルホスホノエチルアセテート(以下DHPAと略称することがある)等が好適に使用される。
【0095】
本発明におけるポリ乳酸は、融点が150℃以上であるものであることが好ましい。融点が150℃よりも低い場合には、フィルムの寸法安定性、高温機械特性等を高いものとすることができない。
【0096】
より好ましくはポリ乳酸の融点は170℃以上であり、さらに好ましくは融点が200℃以上である。ここで融点とは、DSC測定によって得られた溶融ピークのピーク温度を意味する。とくに耐熱性を付与するためにはポリ乳酸がステレオコンプレックス相結晶を形成していることが好ましい。また、ステレオコンプレックス相結晶を形成しているポリ乳酸は、熱寸法安定性にも優れる。
ここで、ステレオコンプレックスポリ乳酸とは、ポリL−乳酸セグメントとポリD−乳酸セグメントが形成する共晶である。
【0097】
ステレオコンプレックス相結晶は通常ポリL−乳酸やポリD−乳酸が単独で形成するホモ相結晶よりも融点が高いので、若干でも含まれることによって耐熱性や熱寸法安定性を向上する効果が期待できるが、特にその効果は全体の結晶量に対するステレオコンプレックス相結晶の量が多い場合に顕著に発揮される。下記式に従うステレオコンプレックス結晶化度(S)において、95%以上であることが好ましく、さらに好ましくは100%である。
S(%)=〔ΔHms/(ΔHmh+ΔHms)〕×100
(但し、ΔHmsはステレオコンプレックス相結晶の融解エンタルピー、ΔHmhはホモ相ポリ乳酸結晶の融解エンタルピー。)
【0098】
ステレオコンプレックスポリ乳酸結晶の形成を安定的且つ高度に進めるために特定の添加物を配合する手法が好ましく適用される。すなわち、例えば、ステレオコンプレックス結晶化促進剤として下記式で表されるリン酸金属塩を添加する手法が挙げられる。
【0099】
【化45】

【0100】
式中、R11は水素原子または炭素原子数1〜4のアルキル基を表し、R12、R13はそれぞれ独立に、水素原子、または炭素原子数1〜12のアルキル基を表し、Mはアルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、亜鉛原子またはアルミニウム原子を表し、pは1または2を表し、qはMがアルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、亜鉛原子のときは0を、アルミニウム原子の時は1または2を表す。
【0101】
【化46】

【0102】
式中R14、R15およびR16は各々独立に、水素原子または炭素原子数1〜12のアルキル基を表し、Mはアルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、亜鉛原子またはアルミニウム原子を表し、pは1または2を表し、qはMがアルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、亜鉛原子のときは0を、アルミニウム原子の時は1または2を表す。
【0103】
上記二つの式において表されるリン酸金属塩のM、Mは、Na、K、Al、Mg、Ca、Liが好ましく、特に、K、Na、Al、LiなかでもLi、Alが最も好適に用いることができる。
これらのリン酸金属塩は、(株)ADEKA製の商品名、「アデカスタブ」NA−11、NA−71等が好適な剤として例示される。
【0104】
ポリ乳酸に対して、リン酸金属塩は0.001〜2wt%、好ましくは0.005〜1wt%、より好ましくは0.01〜0.5wt%さらに好ましくは0.02〜0.3wt%用いることが好ましい。少なすぎる場合には、ステレオコンプレックス結晶化度(S)を向上する効果が小さく、多すぎるとステレオコンプレックス結晶融点を低下させるので好ましくない。
【0105】
さらに所望により、リン酸金属塩の作用を強化するため、公知の結晶化核剤を併用することができる。なかでも珪酸カルシウム、タルク、カオリナイト、モンモリロナイトが好ましくは選択される。
結晶化核剤の使用量は、ポリ乳酸に対し0.05〜5wt%、より好ましくは0.06〜2wt%、さらに好ましくは0.06〜1wt%の範囲が選択される。
【0106】
ポリ乳酸はいずれの製法によって得られたものであってもよい。たとえば、ポリ乳酸の製造方法には、L−乳酸及び/又はD−乳酸を原料として一旦環状二量体であるラクチドを生成せしめ、その後開環重合を行う二段階のラクチド法と、L−乳酸及び/又はD−乳酸を原料として溶媒中で直接脱水縮合を行う一段階の直接重合法など、一般に知られている重合法によって好適に得ることができる。
【0107】
ポリ乳酸にはその製造上、カルボン酸基が含まれてくることがあるが、その含まれるカルボン酸基の量は少ないほどよい。そのような理由から、たとえばラクチドから水以外の開始剤を用いて開環重合したものや、重合後に化学的に処理をしてカルボン酸基を低減したポリマーを用いることは好ましい。
【0108】
ポリ乳酸の重量平均分子量は、通常少なくとも5万、好ましくは少なくとも10万、好ましくは10〜30万である。平均分子量が5万よりも低い場合にはフィルムの強度物性が低下するため好ましくない。30万を越える場合には溶融粘度が高くなりすぎ、溶融製膜が困難になる場合がある。
【0109】
また、本発明におけるポリ乳酸は、L−乳酸、D−乳酸の他にエステル形成能を有するその他の成分を共重合した共重合ポリ乳酸であってもよい。共重合可能な成分としては、グリコール酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ吉草酸、6−ヒドロキシカプロン酸などのヒドロキシカルボン酸類の他、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール等の分子内に複数の水酸基を含有する化合物類またはそれらの誘導体、アジピン酸、セバシン酸、フマル酸等の分子内に複数のカルボン酸基を含有する化合物類またはそれらの誘導体が挙げられる。ただし、高い融点を維持するためやフィルム強度を損なわないため、フィルムを構成する脂肪族ポリエステル系樹脂(A成分)の70モル%以上が乳酸単位からなることが望ましい。
【0110】
<非相溶性熱可塑性樹脂(B成分)>
本発明の脂肪族ポリエステル系樹脂白色フィルムは、ガラス転移温度が脂肪族ポリエステル系樹脂(A成分)のガラス転移温度より15℃以上高い非相溶性熱可塑性樹脂(B成分)を含有する。ここで「非相溶性」とは、脂肪族ポリエステル系樹脂(A成分)と非相溶であることを示す。B成分が非相溶性でありかつガラス転移温度が脂肪族ポリエステル系樹脂(A成分)のガラス転移温度より15℃以上高いことにより、延伸時や熱固定時において、非相溶性熱可塑性樹脂(B成分)と脂肪族系ポリエステル系樹脂(A成分)との界面でボイドが発生し、高い反射率を達成できる。また、フィルムに耐熱性を付与することができる。このような観点から、非相溶性熱可塑性樹脂(B成分)のガラス転移温度は、脂肪族ポリエステル系樹脂(A成分)のガラス転移温度より、25℃以上高いことが好ましい。耐熱性の観点からは、A成分とB成分のガラス転移温度の差はさらに大きいことが好ましく、非相溶性熱可塑性樹脂(B成分)のガラス転移温度は、脂肪族ポリエステル系樹脂(A成分)のガラス転移温度より、好ましくは50℃以上、さらに好ましくは80℃以上高いことが好ましい。A成分とB成分のガラス転移温度の差の上限は特に限定はないが、特に非相溶性熱可塑性樹脂(B成分)の含有量が多い場合においては、押出性や製膜性の観点から、現実的には300℃以下が好ましい。
【0111】
非相溶性熱可塑性樹脂は、上記のような態様であれば、溶融可能である限り特に制限はないが、これらの中でも好適な例としては芳香族ポリカーボネートや芳香族ポリエステルが挙げられ、これらからなる群より選ばれる少なくとも1種を用いることで反射率の向上効果を高くすることができる。
【0112】
芳香族ポリカーボネートとしては、特に制限はなく種々のものが使用できるが、通常、二価フェノールとカーボネート前駆体との反応により製造される芳香族ポリカーボネート樹脂を用いることができる。
【0113】
二価フェノールとしては、様々なものを挙げることができるが、特に2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン〔ビスフェノールA〕、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロアルカン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)オキシド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、及びビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトンなどを挙げることができる。好ましい二価フェノールとしては、ビス(ヒドロキシフェニル)アルカン系、特に、ビスフェノールAが挙げられる。
【0114】
カーボネート前駆体としては、カルボニルハライド、ハロホーメート、炭酸エステル等が挙げられ、具体的にはホスゲン、二価フェノールのジハロホーメート、ジフェニルカーボネート、ジメチルカーボネート及びジエチルカーボネート等が挙げられる。
【0115】
本発明で用いる芳香族ポリカーボネートは、分岐構造を有していてもよい。分岐構造を導入するためには分岐剤を用いればよく、例えば1,1,1−トリス(4−ヒドキシフェニル)エタン、α,α',α''−トリス(4−ヒドロキシフェニル)−1,3,5−トリイソプロピルベンゼン、1−〔α−メチル−α−(4'−ヒドロキシフェニル)エチル〕−4−〔α',α'−ビス(4''−ヒドロキシフェニル)エチル〕ベンゼン、フロログルシン、トリメリット酸、イサチンビス(o−クレゾール)等の官能基を三個以上有する化合物を用いることができる。
【0116】
本発明で用いる芳香族ポリカーボネートの粘度平均分子量は、樹脂組成物の物性面から、9,000〜40,000であることが好ましく、15,000〜30,000であることがより好ましい。
【0117】
芳香族ポリエステルとしては、芳香族ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体と、低分子量脂肪族ジオール又は高分子量ジオールとを反応させることにより得ることができる。
【0118】
上記芳香族ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、ナフタリンジカルボン酸、パラフェニレンジカルボン酸、テレフタル酸ジメチル、イソフタル酸ジメチル、オルトフタル酸ジメチル、ナフタリンジカルボン酸ジメチル、パラフェニレンジカルボン酸ジメチル等が挙げられる。これらは単独で用いられてもよく、2種類以上が併用されてもよい。
【0119】
上記低分子量脂肪族ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。これらは単独で用いられてもよく、2種類以上が併用されてもよい。
【0120】
上記高分子量ジオールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリヘキサメチレングリコール等が挙げられる。これらは単独で用いられてもよく、2種類以上が併用されてもよい。
【0121】
上記構成成分からなる結晶性芳香族ポリエステルとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリヘキサメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、テレフタル酸ブタンジオールポリテトラメチレングリコール共重合体等が挙げられる。これらは単独で用いられてもよく、2種類以上が併用されてもよい。
【0122】
その中でも脂肪族ポリエステルの押出温度の観点から、融点が170〜240℃となるような共重合ポリエステルが好ましい。融点が170〜240℃の範囲であれば、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ダイマー酸などの長鎖脂肪酸、ブタンジオール、プロパンジオール、ポリエチレングリコール、ポリオキシアルキレングリコールなどの共重合成分を任意に選択して共重合することができるが、分散性、隠蔽性、反射性の向上効果を同時に高めるためには、酸成分100モル%中に、ナフタレンジカルボン酸を5〜30モル%、好ましくは8〜15モル%共重合したポリエチレンテレフタレートであることが好ましい。かかるナフタレンジカルボン酸としては、2,6−ナフタレンジカルボン酸が好ましい。
【0123】
本発明の白色フィルムに含まれる非相溶性熱可塑性樹脂(B成分)の含有量は、フィルムの反射率の向上効果を高くし、また機械的物性、生産性等を高くするという観点から、本発明の白色フィルムを形成するための後述する樹脂組成物中、10重量%以上60重量%以下であることが好ましく、10重量%以上55重量%未満であることが更に好ましく、20重量%以上50重量%以下であることが特に好ましい。非相溶性熱可塑性樹脂(B成分)の含有量が10重量%以上であれば、脂肪族ポリエステル系樹脂(A成分)と非相溶性熱可塑性樹脂(B成分)との界面の面積を充分に確保することができて、反射率の向上効果を高くすることができる。また、非相溶性熱可塑性樹脂(B成分)の含有量が60重量%以下であれば、フィルムに必要な機械的性質を確保することができる。
【0124】
<樹脂組成物>
本発明の白色フィルムを形成するための樹脂組成物は、脂肪族ポリエステル系樹脂(A成分)と非相溶性熱可塑性樹脂(B成分)と環状カルボジイミド化合物(C成分)とを構成成分として含むものである。
【0125】
本発明においては、脂肪族ポリエステル系樹脂(A成分)としてステレオコンプレックス相結晶を形成したポリ乳酸を用いることが好ましく、かかる樹脂組成物は、DSC測定において、前述したステレオコンプレックス結晶化化度(S)が80%以上であることが好ましい。ステレオコンプレックス結晶化度が80%以上であると、これより得られるフィルムの90℃や120℃における熱収縮率を低下させることができる。また、耐熱性の向上効果を高くすることができる。樹脂組成物のステレオコンプレックス結晶化度は、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、特に好ましくは、ステレオコンプレックス結晶化度が100%である。
【0126】
本発明において樹脂組成物中の環状カルボジイミド化合物(C成分)の含有割合は、脂肪族ポリエステル系樹脂(A成分)の重量を基準にして、0.001〜5重量%であることが好ましい。C成分の量がこの範囲にあれば、樹脂組成物およびこれより得られるフィルムの、水分に対する安定性、耐加水分解安定性を好適に高めることができる。また、耐熱性を高くすることができ、特に長期に渡る耐熱劣化性を高くすることができる。かかる観点より環状カルボジイミド化合物(C成分)の含有割合は、より好ましくは0.01〜5重量%、さらに好ましくは0.1〜4重量%の範囲が選択される。この範囲より少量であると環状カルボジイミド化合物(C成分)の効果が有効に認められないことがあり、また、この範囲を超えて多量に適用しても、耐加水分解安定性等の効果の更なる向上は期待されない。
【0127】
脂肪族ポリエステル系樹脂(A成分)がポリ乳酸を含む場合には、そのラクチド含有量は、脂肪族ポリエステル系樹脂(A成分)の重量を基準にして、好ましくは0〜1000ppm、より好ましくは0〜200ppm、さらに好ましくは0〜100ppmの範囲である。ラクチドの含有量は少ないほうが樹脂組成物の色相、安定性等の物性の観点より好ましいが、過剰に減少操作を適用しても、更なる物性の向上は期待されずまたコスト面よりも好ましくない場合が発生する。
【0128】
また、樹脂組成物のカルボキシル基濃度は、脂肪族ポリエステル系樹脂(A成分)の重量を基準にして、好ましくは0〜30当量/ton、より好ましくは0〜10当量/ton,さらに好ましくは0〜5当量/tonの範囲、特に好ましくは0〜1当量/tonの範囲である。カルボキシル基濃度の低減は環状カルボジイミド化合物(C成分)を使用することにより、容易に達成できる。
【0129】
<その他成分>
[その他の樹脂成分]
また本発明において、樹脂組成物には、脂肪族ポリエステル系樹脂(A成分)、非相溶性熱可塑性樹脂(B成分)および環状カルボジイミド化合物(C成分)以外の他の樹脂成分を、本発明の目的を損なわない範囲で含有することができる。
【0130】
他の樹脂成分として具体的には、アクリル系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリスチレン、スチレンアクリロニトリル共重合体等のスチレン系樹脂、ポリアミド、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、B成分とは異なるポリエステル、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアセタール等の熱可塑性樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂等が挙げられる。これらは1種以上を含有させることができる。
【0131】
[添加剤]
さらに、本発明における樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲内で、各種目的に応じて任意の添加剤を配合することができる。添加剤の種類は、樹脂やゴム状重合体の配合に一般的に用いられるものであれば特に制限はない。
【0132】
添加剤として、無機充填剤や、酸化鉄等の顔料が挙げられる。またステアリン酸、ベヘニン酸、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、エチレンビスステアロアミド等の滑剤や、離型剤、パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、芳香族系プロセスオイル、パラフィン、有機ポリシロキサン、ミネラルオイル等の軟化剤・可塑剤、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、リン系熱安定剤等の酸化防止剤、ヒンダードアミン系光安定剤、ベンゾトリアゾ−ル系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、環状イミノエステル系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤難燃剤、帯電防止剤が挙げられる。ベンゾフェノール系酸化防止剤として用いるベンゾフェノン系化合物の具体例としては、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノンおよび2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノンなどが例示される。なかでも2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノンが好適である。ベンゾフェノンは単独であるいは2種以上を併用して用いることができる。かかる化合物はシプロ化成(株)からSEESORB107、SEESORB106として(商品名)として市販されており、容易に利用できる。
【0133】
また、環状イミノエステル系紫外線吸収剤として用いる環状イミノエステル系化合物の具体例としては、2,2’−ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−p−フェニレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−m−フェニレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−(4,4’−ジフェニレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−(2,6−ナフタレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−(1,5−ナフタレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−(2−メチル−p−フェニレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−(2−ニトロ−p−フェニレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)および2,2’−(2−クロロ−p−フェニレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)などが例示される。なかでも2,2’−p−フェニレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−(4,4’−ジフェニレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)および2,2’−(2,6−ナフタレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)が好適であり、特に2,2’−p−フェニレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)が好適である。
更に、有機繊維、ガラス繊維、炭素繊維、金属ウィスカ等の補強剤、着色剤、静電密着改良剤が挙げられる。また上記の混合物が挙げられる。
【0134】
本発明における樹脂組成物は、公知の方法で製造することができる。例えば単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ブラベンダー、各種ニーダー等の溶融混練機を用いて、脂肪族ポリエステル系樹脂(A成分)、非相溶性熱可塑性樹脂(B成分)および環状カルボジイミド化合物(C成分)、ならびに必要に応じて、上記のその他成分を添加、溶融混練して樹脂組成物を製造することができる。
【0135】
なお、脂肪族ポリエステル系樹脂(A成分)と環状カルボジイミド化合物(C成分)とを先にブレンドしたのち、非相溶性熱可塑性樹脂(B成分)とブレンドすることが、脂肪族ポリエステル系樹脂(A成分)の加水分解性を早期に向上させることができるので好ましい。
【0136】
<フィルムの製造方法>
以下に、本発明の脂肪族ポリエステル系樹脂白色フィルムの製造方法について一例を挙げて説明するが、本発明は、下記製造法に何等限定されるものではない。
本発明の脂肪族ポリエステル系樹脂白色フィルムは、前述の樹脂組成物をフィルム状に成形加工することで得られるが、かかる成形加工としては、例えば、Tダイ、円形ダイ等が装着された押出機等を用いた押し出し成形やキャスト成形等の成形手法を用いることができる。本発明においては、押し出し成形により未延伸フィルムを得ることが好ましい。
【0137】
[押出]
押し出し成形により未延伸フィルムを得る場合は、事前に脂肪族ポリエステル系樹脂(A成分)、非相溶性熱可塑性樹脂(B成分)および環状カルボジイミド化合物(C成分)を溶融混練した材料を押出機に投入して行なうこともできれば、各成分を押出機に投入して、押し出し成形時の溶融混練を経て行なうこともできる。
【0138】
未延伸フィルムは、溶融フィルムを冷却ドラム上に押し出し、次いで該フィルムを回転する冷却ドラムに密着させ冷却することによって製造することができる。このとき、溶融フィルムにはスルホン酸四級ホスホニウム塩等の静電密着剤を配合し、電極よりフィルムに非接触的に電荷を印加し、それによって回転する冷却ドラムに溶融フィルムを密着させることが好ましく、それにより表面欠陥の少ない未延伸フィルムを得ることができる。
【0139】
[延伸]
また、本発明の脂肪族ポリエステル系樹脂白色フィルムは、二軸延伸フィルムであることが好ましい。二軸延伸する方法は特に限定されないが、本発明においては以下の方法を好ましく採用することができる。
【0140】
すなわち、上記で得られた未延伸フィルムをロール加熱、赤外線加熱等で加熱し、機械軸方向(以下、縦方向または長手方向またはMDと呼称する場合がある。)に縦延伸して縦延伸フィルムを得る。この延伸は2個以上のロールの周速差を利用して行うのが好ましい。かかる縦延伸温度は、脂肪族ポリエステル系樹脂(A成分)のガラス転移温度(Tg)〜(Tg+70)℃とするのが好ましい。縦延伸倍率は、用途の要求特性にもよるが、好ましくは2.2〜4.0倍、さらに好ましくは2.3〜3.9倍である。このような延伸条件を採用することによって、フィルム中に適度なボイドが形成され、反射率の向上効果を高くすることができる。2.2倍未満とするとフィルムの厚み斑が悪くなり良好なフィルムが得られず、4.0倍を超えると製膜中に破断が発生し易くなり好ましくない。
【0141】
縦延伸後のフィルムは、続いて、機械軸方向と垂直な方向(以下、横方向または幅方向またはTDと呼称する場合がある。)に横延伸して、続いて熱処理(熱固定)、熱弛緩の処理を順次施して二軸配向フィルムとするが、これら処理はフィルムを走行させながら行なうことができる。かかる横延伸の処理は、脂肪族ポリエステル系樹脂(A成分)のガラス転移温度(Tg)より高い温度から始める。そしてTgより(5〜70)℃高い温度まで昇温しながら行う。横延伸過程での昇温は連続的でも段階的(逐次的)でもよいが通常逐次的に昇温する。例えばテンターの横延伸ゾーンをフィルム走行方向に沿って複数に分け、ゾーン毎に所定温度の加熱媒体を流すことで昇温する。横延伸倍率は、この用途の要求特性にもよるが、好ましくは2.5〜4.5倍、さらに好ましくは2.8〜3.9倍である。このような延伸条件を採用することによって、フィルム中に適度なボイドが形成され、反射率の向上効果を高くすることができる。2.5倍未満であるとフィルムの厚み斑が悪くなり良好なフィルムが得られず、4.5倍を超えると製膜中に破断が発生し易くなる。
【0142】
[熱処理]
横延伸後のフィルムは、両端を把持したまま(Tm−100)〜(Tm−20)℃の温度、好ましくは(Tm−80)〜(Tm−20)の温度で定幅または10%以下の幅減少下で熱処理して熱収縮率を低下させるのがよい。ここでTmは脂肪族ポリエステル系樹脂(A成分)の融点(℃)である。これより高い温度であるとフィルムの平面性が悪くなり、厚み斑が大きくなり好ましくない。また、熱処理温度が(Tm−100)℃より低いと熱収縮率が大きくなることがある。また、かかる熱処理によって、フィルム中に適度なボイドが形成され、反射率の向上効果を高くすることができる。
【0143】
[熱弛緩]
また、熱固定後、フィルム温度を常温に戻す過程で、例えば(Tm−100)〜(Tm−20)℃付近の温度領域における縦方向の熱収縮量を調整するために、上記温度範囲下において、把持しているフィルムの両端を切り落し、フィルム縦方向の引き取り速度を調整し、縦方向に弛緩(縦弛緩)することができる。具体的な弛緩方法としては、テンターのフィルムライン速度に対して、テンター出側のロール群の速度を調整する。ここで弛緩させる割合(縦弛緩率、単位%)は、「弛緩前後のフィルム速度の差/弛緩前のフィルム速度×100」として求められ、好ましくは0.1〜1.5%、さらに好ましくは0.2〜1.2%、特に好ましくは0.3〜1.0%である。テンターのフィルムライン速度に対して、テンター出側の速度を遅くすると、縦方向の熱収縮率は低くなる傾向にある。
【0144】
また、フィルム横方向については、フィルムの両端を切り落すまでの過程で、フィルムを把持しているクリップの幅を増減させて横方向の熱収縮率を調整することができる。ここで、クリップ幅を減少させてフィルムを横方向に弛緩(横弛緩)することにより、横方向の熱収縮率を低くすることができる。弛緩する割合(横弛緩率、単位:%)は、「弛緩前後のフィルム幅の差/弛緩前のフィルム幅×100」として求められ、0〜5%が好ましく、1〜3%が更に好ましく、横弛緩処理温度近辺やそれよりも低い温度における横方向の熱収縮率を小さくすることができる。弛緩前のフィルム幅に対して、弛緩後のフィルム幅を小さくすると、横方向の熱収縮率は小さくなる傾向にある。
ここでは、フィルムを逐次二軸延伸法によって延伸する場合を例に詳細に説明したが、逐次二軸延伸法、同時二軸延伸法のいずれの方法で延伸してもよい。
かくして得られたフィルムには、所望により従来公知の方法で、表面活性化処理、たとえばプラズマ処理、アミン処理、コロナ処理を施すことも可能である。
【0145】
<フィルムの特性>
[ステレオコンプレックス結晶化度:S]
本発明の脂肪族ポリエステル系樹脂白色フィルムは、DSC測定において190℃以上のステレオコンプレックス相ポリ乳酸の結晶融解ピークを有することが好ましく、さらにDSC測定の結晶融解ピーク強度より下記式で定義されるステレオコンプレックス結晶化度(S)が好ましくは80%以上、より好ましくは90〜100%、さらに好ましくは97〜100%、特に好ましくは100%である。このような態様であることによって、耐熱性や熱寸法安定性の向上効果を高くすることができる。
【0146】
即ち本発明のフィルムは、ポリ乳酸のステレオコンプレックス相が高度に形成されていることが好ましい。
S(%)=〔ΔHms/(ΔHmh+ΔHms)〕×100
ΔHmsはステレオコンプレックス相ポリ乳酸の結晶融解エンタルピー(J/g)を表す。△Hmhはホモ相ポリ乳酸の結晶融解エンタルピー(J/g)を表す。
ステレオコンプレックス結晶化度(S)は熱処理過程において最終的に生成するステレオコンプレックスポリ乳酸結晶の割合を示すパラメーターである。
本発明では,DSC測定において190℃以上に現れる結晶融解ピークは、ステレオコンプレックス相ポリ乳酸の融解に帰属される結晶融解ピークであり、190℃未満に現れる結晶融解ピークは、ホモ相ポリ乳酸の融解に帰属される結晶融解ピークである。
【0147】
[厚み]
本発明の脂肪族ポリエステル系樹脂白色フィルムの厚みは、特に限定されないが、通常は30〜500μmであり、実用面における取り扱い性を考慮すると50〜500μm程度の範囲内であることが好ましい。特に、小型、薄型の反射板用途の反射フィルムとしては、厚みが30〜100μmであることが好ましい。かかる厚みの反射フィルムを用いれば、例えばノート型パソコンや携帯電話等の小型、薄型の液晶ディスプレイ等にも使用することができる。
また、本発明の反射フィルムは、単層構成でもよいが、2層以上積層した多層構成としてもよい。
【0148】
[熱収縮率]
本発明の脂肪族ポリエステル系樹脂白色フィルムは、縦方向および横方向において、120℃×5分における熱収縮率が10%以下であることが好ましい。これは次のような理由によるものである。すなわち、自動車用カーナビゲーションシステム、車載用小型テレビ等は、夏場の炎天下において車内で高温にさらされることになる。また、液晶表示装置が長時間使用されると、光源ランプ周辺は高温にさらされることになる。したがって、とりわけこれらの用途に使用される反射フィルムには、少なくとも110℃程度の耐熱性が要求される。このような観点から、120℃の温度下で5分間放置したときの縦方向および横方向のフィルムの熱収縮率は10%以下であることが好ましく、5%以下であることが更に好ましく、3%以下が特に好ましい。フィルムの熱収縮率が10%より大きいと、高温で使用すると経時的に収縮を起こすことがあり、反射フィルムが鋼板等に積層されている場合には、フィルムのみが変形してしまうことがある。熱収縮を抑制するためには、例えばフィルムの結晶化を進行させることが望ましい。また、前述の弛緩処理を施せばよい。また、ポリ乳酸においては、ステレオコンプレックス相結晶を形成している態様であると、熱寸法安定性は良好となる傾向にある。
【0149】
また、本発明の脂肪族ポリエステル系樹脂白色フィルムは、90℃×30分における熱収縮率が、縦方向において0%を超え2.0%未満、横方向におおいて−0.1%〜1.5%であることが好ましい。これは次のような理由によるものである。すなわち、近年、液晶ディスプレイ等の大型化のニーズが高まっており、反射シートにも大型化が要求されるようになった。例えば大画面の液晶テレビ等の反射シートとして組み込まれる場合には、光源にさらされた状態で長時間使用されるので、長時間使用における寸法変化の小さい反射フィルムであることが求められる。また、中型、小型のエッジライトタイプのディスプレイでも、端部を規制されて使用する場合には、寸法変化が小さいものが求められる。このような観点から、90℃で30分間保持した後の熱収縮率が、縦方向の収縮率が0%より大きく、2.0%未満であり、横方向の収縮率が−0.1%〜1.5%であることが好ましい。熱収縮率をかかる範囲内にすることができれば、大型の液晶テレビ等の裏に使用しても経時変化による変形を防止し、フィルムの平面性を保つことができる。かかる熱収縮率は、例えば、フィルムを延伸した後、引き続き、テンター出口で弛緩処理を行い、所定量の弛緩を付与することにより、フィルムの熱収縮率を上記範囲内に設定することができる。また、ポリ乳酸においては、ステレオコンプレックス相結晶を形成している態様であると、熱寸法安定性は良好となる傾向にある。
【0150】
[平均反射率]
本発明の脂肪族ポリエステル系樹脂白色フィルムは、波長400〜700nmの光の波長域における平均反射率が90%以上であることが好ましく、95%以上であることが更に好ましく、98%以上であることが特に好ましい。フィルム表面の平均反射率が90%以上であれば、良好な反射特性を示し、液晶ディスプレイ等の反射板用として用いた場合は、画面も十分な明るさを実現することができる。なお、かかる平均反射率は、本発明における好ましい非相溶性熱可塑性樹脂の態様を採用したり、本発明における好ましい製膜条件を採用したりすればよい。
【0151】
さらに、脂肪族ポリエステル系樹脂は、分子鎖中に芳香環を含まないので紫外線吸収を起こさない。したがって、液晶表示装置等の光源から発せられる紫外線によってフィルムが劣化、黄変することがなく、光反射性が低下することがない。従って、本発明の脂肪族ポリエステル系樹脂白色フィルムは、紫外線に晒された後でも優れた平均反射率を保持することができる。
【0152】
[耐熱性]
本発明の脂肪族ポリエステル系樹脂白色フィルムは、85℃で500時間熱処理した後の破断伸度保持率が50%以上であることが好ましい。このような態様であると、耐熱性に優れることを意味し、反射板用途においては、高温環境下においても長期に渡って使用した場合に、熱によるたわみが発生せず、液晶ディスプレイにおける輝度斑などが発生することがなく好ましい。
【0153】
[耐加水分解性]
本発明の脂肪族ポリエステル系樹脂白色フィルムは、60℃、85%RHの環境下において500時間湿熱処理した後の破断強度保持率が50%以上である。このような態様であると、耐加水分解性に優れることを意味し、反射板用途においては、湿熱環境下においても長期に渡って使用した場合に、熱によるたわみが発生せず、液晶ディスプレイにおける輝度斑などが発生することがなく好ましい。
【0154】
<反射板の構成>
本発明の脂肪族ポリエステル系樹脂白色フィルムを用いて液晶ディスプレイ等に用いられる反射板を形成することができる。例えば、脂肪族ポリエステル系樹脂白色フィルムを金属板もしくは樹脂板に被覆して反射板を形成することができる。この反射板は、液晶表示装置、照明器具、照明看板等に用いられる反射板として有用である。白色フィルムを金属板もしくは樹脂板に被覆する方法としては、接着剤を使用する方法、接着剤を使用せずに熱融着する方法、接着性シートを介して接着する方法、押出しコーティングする方法等があり、特に限定されるものではない。例えば、金属板もしくは樹脂板の反射フィルムを貼り合わせる側の面に、ポリエステル系、ポリウレタン系、エポキシ系等の接着剤を塗布し、反射フィルムを貼り合わせることができる。この方法においては、リバースロールコーター、キスロールコーター等の一般的に使用されるコーティング設備を使用し、反射フィルムを貼り合わせる金属板等の表面に乾燥後の接着剤膜厚が2〜4μm程度となるように接着剤を塗布する。次いで、赤外線ヒーター及び熱風加熱炉により塗布面の乾燥及び加熱を行い、板の表面を所定の温度に保持しつつ、直にロールラミネーターを用いて、反射フィルムを被覆、冷却することにより、反射板を得ることできる。この場合、金属板等の表面を210℃以下に保持すると、反射板の光反射性を高く維持できて好ましい。
【実施例】
【0155】
以下に実施例を示し、本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内で種々の応用が可能である。なお、実施例に示す測定値および評価は以下に示すようにして行った。
【0156】
[測定および評価方法]
(1)分子量:
ポリマーの重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定、標準ポリスチレンに換算して求めた。
GPC測定機器は、
検出器;(株)島津製作所製 示差屈折計RID−6A
カラム;東ソー(株)TSKgel G3000HXL、TSKgel G4000HXL,TSKgel G5000HXLとTSKguardcolumnHXL−Lを直列に接続したもの、あるいは東ソー(株)TSKgel G2000HXL、TSKgel G3000HXLとTSKguardcolumnHXL−Lを直列に接続したものを使用した。
クロロホルムを溶離液とし温度40℃、流速1.0ml/minにて、濃度1mg/ml(1%ヘキサフルオロイソプロパノールを含むクロロホルム)の試料を10μl注入し測定した。
【0157】
(2)カルボキシル基濃度:
試料を精製o−クレゾールに溶解、窒素気流下溶解、ブロモクレゾールブルーを指示薬とし、0.05規定水酸化カリウムのエタノール溶液で適定した。
【0158】
(3)ステレオコンプレックス結晶化度(S)、結晶融解温度:
ステレオコンプレックス結晶化度(S)、結晶融解温度は、DSC(TAインスツルメント社製TA−2920)を用いて、昇温速度20℃/分の条件で結晶融解温度、結晶融解エンタルピーを測定し、その結晶融解エンタルピーから下記式に従って求めた。
S(%)=〔△Hms/(△Hmh+△Hms)〕×100
(但し、△Hmsはステレオコンプレックス相結晶の結晶融解エンタルピー、△Hmhはホモ相結晶の結晶融解エンタルピー)
なお、サンプル量は、樹脂サンプルの場合は10mg、フィルムサンプルの場合は20mgとした。
【0159】
(4)ガラス転移温度:
サンプル樹脂約20mgを測定用のアルミニウム製パンに封入して示差熱量計(TAインスツルメント社製TA−2920)に装着し、25℃から20℃/分の速度で290℃まで昇温させて、ガラス転移温度Tg(単位:℃)を測定した。
【0160】
(5)フィルム熱収縮率:
ASTM D1204に準じ、90℃熱収縮率は90℃で30分間、120℃熱収縮率は120℃で5分間、それぞれサンプルを処理した後、サンプルの温度を室温(25℃)に戻し、長さ変化より熱収縮率(%)を求めた。
【0161】
(6)耐熱性:
フィルムの耐熱性を、以下のように熱処理前後の破断伸度から破断伸度保持率を求めて評価した。破断伸度保持率が高いものが耐熱性に優れる。
まず、熱処理前のフィルムの破断伸度を求めた。サンプルフィルムを縦方向に長さ150mm、幅10mmに切り出し、チャック間100mmとした引張試験機にサンプルを装着し、JIS−C2151に従って引張速度100mm/minの条件で引張試験を行い、破断時の荷重−伸度曲線の荷重および伸度を読み取った。測定は5回行い、それぞれ平均値を結果とした。破断強度(MPa)は荷重を引張前のサンプル断面積で割って算出した。また破断伸度(%)は引張前のサンプル長100に対する伸び量の割合として算出した。測定は温度23±2℃、湿度50±5%に調節された室内において行った。
次いで、サンプルを85℃、500時間乾熱処理し、上記と同様にしてフィルム縦方向についての破断伸度を算出し、熱処理後の破断伸度を求めた。このようにして得られた熱処理後の破断伸度を、熱処理前の破断伸度で割った値を熱処理後の破断伸度保持率(%)とし、下基準にて耐熱性を評価した。
○:熱処理後の破断伸度保持率50%以上
×:熱処理後の破断伸度保持率50%未満
【0162】
(7)平均反射率(%):
分光光度計(「U−4000」、日立計測器サービス(株)製)に積分球を取り付け、波長400〜700nmに渡って反射率を測定し、得られたチャートより波長2nm間隔で反射率を読み取り、その平均値を平均反射率(%)とした。ただし、基準として、硫酸バリウム白板を100%とした。
【0163】
(8)耐加水分解性:
温度60℃、湿度85%RHの環境下において500時間湿熱処理前後のサンプルについて、上記(6)と同様にしてフィルム縦方向の破断伸度を測定し、湿熱処理前の破断伸度に対する湿熱処理後の破断伸度の割合を算出し、湿熱処理後の破断伸度保持率(%)を求め、下記の基準で評価した。
◎:湿熱処理後の破断伸度保持率が65%以上
○:湿熱処理後の破断伸度保持率が50%以上65%未満
△:湿熱処理後の破断伸度保持率が30%以上50%未満
×:湿熱処理後の破断伸度保持率が30%未満
【0164】
(9)フィルム厚み:
フィルムサンプルをエレクトリックマイクロメーター(アンリツ製 K−402B)にて、10点厚みを測定し、平均値をフィルムの厚みとした。
【0165】
(10)イソシアネートガス発生テスト:
試料を、160℃で5分間加熱し、熱分解GC/MS分析によりイソシアネートガスの発生有無を確認した。GC/MSは日本電子(株)製GC/MS Jms Q1000GC K9を使用した。
【0166】
(11)実用評価試験:
(株)日立製作所製の21インチ液晶テレビのバックライトに組み込まれている反射シートの固定枠を用いた。この固定枠に、液晶テレビに実際に取り付けられているのと同様にしてフィルムを取り付け、光源にさらされた状態を想定して、80℃で3時間加熱した後、シートの外観を肉眼で観察し、下記基準に基づき評価を行った。
評価基準:
◎:加熱後のフィルムの外観に全く変化が見られない。
○:加熱後のフィルムに、目視では変化が認められるが、0.5mm未満の高さの計測不能な凹凸が見られる
△:加熱後のフィルムに、0.5mm以上1mm未満の高さの凹凸が見られる
×:加熱後のフィルムに、1mm以上の高さの凹凸が見られる。
【0167】
[参考例1]環状カルボジイミド化合物(C成分)の製造:
o−ニトロフェノール(0.11mol)とペンタエリトリチルテトラブロミド(0.025mol)、炭酸カリウム(0.33mol)、N,N−ジメチルホルムアミド200mlを撹拌装置及び加熱装置を設置した反応装置にN雰囲気下仕込み、130℃で12時間反応後、DMFを減圧により除去し、得られた固形物をジクロロメタン200mlに溶かし、水100mlで3回分液を行った。有機層を硫酸ナトリウム5gで脱水し、ジクロロメタンを減圧により除去し、中間生成物D(ニトロ体)を得た。
【0168】
次に中間生成物D(0.1mol)と5%パラジウムカーボン(Pd/C)(2g)、エタノール/ジクロロメタン(70/30)400mlを、撹拌装置を設置した反応装置に仕込み、水素置換を5回行い、25℃で水素を常に供給した状態で反応させ、水素の減少がなくなったら反応を終了した。Pd/Cを回収し、混合溶媒を除去すると中間生成物E(アミン体)が得られた。
【0169】
次に撹拌装置及び加熱装置、滴下ロートを設置した反応装置に、N雰囲気下、トリフェニルホスフィンジブロミド(0.11mol)と1,2−ジクロロエタン150mlを仕込み撹拌させた。そこに中間生成物E(0.025mol)とトリエチルアミン(0.25mol)を1,2−ジクロロエタン50mlに溶かした溶液を25℃で徐々に滴下した。滴下終了後、70℃で5時間反応させる。その後、反応溶液をろ過し、ろ液を水100mlで5回分液を行った。有機層を硫酸ナトリウム5gで脱水し、1,2−ジクロロエタンを減圧により除去し、中間生成物F(トリフェニルホスフィン体)が得られた。
【0170】
次に、撹拌装置及び滴下ロートを設置した反応装置に、N2雰囲気下、ジ−tert−ブチルジカーボネート(0.11mol)とN,N−ジメチル−4−アミノピリジン(0.055mol)、ジクロロメタン150mlを仕込み撹拌させる。そこに、25℃で中間生成物F(0.025mol)を溶かしたジクロロメタン100mlをゆっくりと滴下させた。滴下後、12時間反応させる。その後、ジクロロメタンを除去し得られた固形物を、精製することで、下記構造式に示す化合物(MW=516)を得た。構造はNMR、IRにより確認した。
【0171】
【化47】

【0172】
[参考例2]ポリL−乳酸の製造:
L−ラクチド((株)武蔵野化学研究所製、光学純度100%)100重量部に対し、オクチル酸スズを0.005重量部加え、窒素雰囲気下、撹拌翼のついた反応器にて、180℃で2時間反応し、オクチル酸スズに対し触媒失活剤剤として、1.2倍当量の燐酸を添加しその後、13.3Paで残存するラクチドを除去し、チップ化し、ポリL−乳酸を得た。
得られたポリL−乳酸の重量平均分子量は15.2万、ガラス転移温度(Tg)55℃、融点は175℃であった。
【0173】
[参考例3]ステレオコンプレックスポリ乳酸の製造:
参考例2において、L−ラクチドをD−ラクチド((株)武蔵野化学研究所製、光学純度100%)に変更したこと以外は同条件で重合を行い、ポリD−乳酸を得た。
得られたポリD−乳酸の重量平均分子量は15.1万、ガラス転移温度(Tg)55℃、融点は175℃であった。
得られたポリD−乳酸と、参考例2の操作で得たポリL−乳酸、各50重量部とリン酸エステル金属塩((株)ADEKA製「アデカスタブ」NA−71)0.1重量部をブレンダーで混合、110℃、5時間真空乾燥した後、シリンダー温度250℃、ベント圧13.3Paで真空排気しながら溶融混練後、水槽中にストランド押し出し、チップカッターにてチップ化して、脂肪族ポリエステル系樹脂(A成分)としての、ステレオコンプレックス結晶化度(S)100%、結晶融解温度216℃のポリ乳酸組成物を得た。
【0174】
[実施例1]
参考例3の操作で得られた脂肪族ポリエステル系樹脂(A成分)と、非相溶性熱可塑性樹脂(B成分)として、酸成分100モル%中に2,6−ナフタレンジカルボン酸12モル%を共重合したポリエチレンテレフタレート(樹脂A、重量平均分子量:3.5万、ガラス転移温度:82℃)とを50重量%/50重量%の割合で混合して混合物を形成し、二軸押出機を用いてペレット化してマスターバッチを作製した。このマスターバッチおよび脂肪族ポリエステル系樹脂(A成分)のチップとを用いて、樹脂組成物中における非相溶性熱可塑性樹脂(B成分)の含有量が表1に記載のとおりとなるように混合し、110℃で5時間乾燥した後、参考例1の操作で得た環状カルボジイミド化合物(C成分)を、脂肪族ポリエステル系樹脂(A成分)の重量に対する添加量が表1に示すとおりととなるように添加し、混合しながら2軸押出機にてシリンダー温度230℃で溶融混練し、ダイ温度220℃でTダイより厚み約2300μmのフィルム状に溶融押し出しして、次いでキャスティングドラム上で冷却固化して未延伸フィルムを形成した。得られた未延伸フィルムを、温度70℃で、MDに2.8倍、TDに3.2倍の二軸延伸した後、195℃で熱処理し、厚さ250μmの白色フィルムを得た。得られた白色フィルムの物性を表1に示す。
【0175】
[実施例2〜4]
製造条件、非相溶性熱可塑性樹脂(B成分)の種類および含有量を表1のとおりに変更する以外は、実施例1と同様にして厚さ250μmの白色フィルムを得た。得られた白色フィルムの物性を表1に示す。
なお、表1における樹脂Bは、ポリカーボネート(重量平均分子量:2.1万、ガラス転移温度:142℃)である。
【0176】
[比較例1]
製造条件、非相溶性熱可塑性樹脂(B成分)の種類および含有量を表1のとおりに変更し、参考例1の操作で得た環状カルボジイミド化合物(C成分)を使用しない以外は、実施例1と同様にして厚さ250μmの白色フィルムを得た。得られた白色フィルムの物性を表1に示す。
【0177】
[比較例2]
製造条件、非相溶性熱可塑性樹脂(B成分)の種類および含有量を表1のとおりに変更し、参考例1の操作で得た環状カルボジイミド化合物(C成分)を、線状構造を有するカルボジイミド化合物(日清紡ケミカル(株)製「カルボジライト」LA−1)に変更する以外は、実施例1と同様にして厚さ250μmの白色フィルムを得た。得られた白色フィルムの物性を表1に示す。
【0178】
[比較例3]
参考例1の操作で得たポリL−乳酸樹脂と、非相溶性熱可塑性樹脂(B成分)としてポリカーボネート(樹脂B、重量平均分子量:2.1万、ガラス転移温度:142℃)とを50重量%/50重量%の割合で混合して混合物を形成し、二軸押出機を用いてペレット化してマスターバッチを作製した。このマスターバッチおよびL−乳酸樹脂のチップとを用いて、樹脂組成物中における非相溶性熱可塑性樹脂(B成分)の含有量が表1に記載のとおりとなるように混合し、110℃で5時間乾燥した後、一軸押出機にてシリンダー温度220℃で溶融混練し、ダイ温度230℃でTダイより厚み約2300μmのフィルム状に溶融押し出しして、次いでキャスティングドラム上で冷却固化して未延伸フィルムを形成した。得られた未延伸フィルムを、温度70℃で、表1に示すように、MDに2.8倍、TDに3.2倍の二軸延伸した後、140℃で熱処理し、厚さ250μmの白色フィルムを得た。得られた白色フィルムの物性を表1に示す。
【0179】
【表1】

【0180】
[反射板の作成]
実施例1〜4で得られた白色フィルムを、730mm×420mmサイズに断裁し、32インチ型液晶テレビ用反射板を作成した。得られた反射板を用いた液晶ディスプレイは輝度が高く、視認性に優れるものであった。
【産業上の利用可能性】
【0181】
本発明は、液晶ディスプレイ、照明器具、照明看板等の反射板等に使用される反射フィルムに好適に利用することが可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪族ポリエステル系樹脂(A成分)、カルボジイミド基を1個有しその第一窒素と第二窒素とが結合基により結合されている環状構造を少なくとも含む化合物(C成分)、およびガラス転移温度が脂肪族ポリエステル系樹脂(A成分)のガラス転移温度より15℃以上高い非相溶性熱可塑性樹脂(B成分)を含有することを特徴とする脂肪族ポリエステル系樹脂白色フィルム。
【請求項2】
C成分において、環状構造を形成する原子数が8〜50である請求項1記載の脂肪族ポリエステル系樹脂白色フィルム。
【請求項3】
C成分における環状構造が、下記式(1)で表される請求項1記載の脂肪族ポリエステル系樹脂白色フィルム。
【化1】

(式中、Qは、脂肪族基、脂環族基、芳香族基またはこれらの組み合わせである2〜4価の結合基であり、ヘテロ原子を含有していてもよい。)
【請求項4】
Qは、下記式(1−1)、(1−2)または(1−3)で表される2〜4価の結合基である請求項3記載の脂肪族ポリエステル系樹脂白色フィルム。
【化2】

(式中、ArおよびArは各々独立に、2〜4価の炭素数5〜15の芳香族基である。RおよびRは各々独立に、2〜4価の炭素数1〜20の脂肪族基、2〜4価の炭素数3〜20の脂環族基またはこれらの組み合わせ、またはこれら脂肪族基、脂環族基と2〜4価の炭素数5〜15の芳香族基の組み合わせである。XおよびXは各々独立に、2〜4価の炭素数1〜20の脂肪族基、2〜4価の炭素数3〜20の脂環族基、2〜4価の炭素数5〜15の芳香族基、またはこれらの組み合わせである。sは0〜10の整数である。kは0〜10の整数である。なお、sまたはkが2以上であるとき、繰り返し単位としてのX、あるいはXが、他のX、あるいはXと異なっていてもよい。Xは、2〜4価の炭素数1〜20の脂肪族基、2〜4価の炭素数3〜20の脂環族基、2〜4価の炭素数5〜15の芳香族基、またはこれらの組み合わせである。但し、Ar、Ar、R、R、X、XおよびXはヘテロ原子を含有していてもよい、また、Qが2価の結合基であるときは、Ar、Ar、R、R、X、XおよびXは全て2価の基である。Qが3価の結合基であるときは、Ar、Ar、R、R、X、XおよびXの内の一つが3価の基である。Qが4価の結合基であるときは、Ar、Ar、R、R、X、XおよびXの内の一つが4価の基であるか、二つが3価の基である。)
【請求項5】
C成分が、下記式(2)で表される請求項1記載の脂肪族ポリエステル系樹脂白色フィルム。
【化3】

(式中、Qは、脂肪族基、脂環族基、芳香族基またはこれらの組み合わせである2価の結合基であり、ヘテロ原子を含有していてもよい。)
【請求項6】
は、下記式(2−1)、(2−2)または(2−3)で表される2価の結合基である請求項5記載の脂肪族ポリエステル系樹脂白色フィルム。
【化4】

(式中、Ar、Ar、R、R、X、X、X、sおよびkは、各々式(1−1)〜(1−3)中のAr、Ar、R、R、X、X、X、sおよびkと同じである。)
【請求項7】
C成分が、下記式(3)で表される請求項1記載の脂肪族ポリエステル系樹脂白色フィルム。
【化5】

(式中、Qは、脂肪族基、脂環族基、芳香族基またはこれらの組み合わせである3価の結合基であり、ヘテロ原子を含有していてもよい。Yは、環状構造を担持する担体である。)
【請求項8】
は、下記式(3−1)、(3−2)または(3−3)で表される3価の結合基である請求項7記載の脂肪族ポリエステル系樹脂白色フィルム。
【化6】

(式中、Ar、Ar、R、R、X、X、X、sおよびkは、各々式(1−1)〜(1−3)のAr、Ar、R、R、X、X、X、sおよびkと同じである。但しこれらの内の一つは3価の基である。)
【請求項9】
Yは、単結合、二重結合、原子、原子団またはポリマーである請求項7記載の脂肪族ポリエステル系樹脂白色フィルム。
【請求項10】
C成分が、下記式(4)で表される請求項1記載の脂肪族ポリエステル系樹脂白色フィルム。
【化7】

(式中、Qは、脂肪族基、芳香族基、脂環族基またはこれらの組み合わせである4価の結合基であり、ヘテロ原子を保有していてもよい。ZおよびZは、環状構造を担持する担体である。)
【請求項11】
は、下記式(4−1)、(4−2)または(4−3)で表される4価の結合基である請求項10記載の脂肪族ポリエステル系樹脂白色フィルム。
【化8】

(式中、Ar、Ar、R、R、X、X、X、sおよびkは、各々式(1−1)〜(1−3)の、Ar、Ar、R、R、X、X、X、sおよびkと同じである。但し、これらの内の一つが4価の基であるか、二つが3価の基である。)
【請求項12】
およびZは各々独立に、単結合、二重結合、原子、原子団またはポリマーである請求項10記載の脂肪族ポリエステル系樹脂白色フィルム。
【請求項13】
非相溶性熱可塑性樹脂(B成分)の含有量が、脂肪族ポリエステル系樹脂(A成分)と非相溶性熱可塑性樹脂(B成分)と環状カルボジイミド化合物(C成分)とを含む樹脂組成物中、10重量%以上60重量%以下であることを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載の脂肪族ポリエステル系樹脂白色フィルム。
【請求項14】
脂肪族ポリエステル系樹脂(A成分)が、ポリ乳酸系樹脂を主たる成分として含む、請求項1〜13のいずれか1項に記載の脂肪族ポリエステル系樹脂白色フィルム。
【請求項15】
ポリ乳酸系樹脂が、ステレオコンプレックス結晶を形成している請求項14に記載の脂肪族ポリエステル系樹脂白色フィルム。
【請求項16】
非相溶性熱可塑性樹脂(B成分)が芳香族ポリカーボネートおよび芳香族ポリエステルからなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1〜15のいずれか1項に記載の脂肪族ポリエステル系樹脂白色フィルム。
【請求項17】
非相溶性熱可塑性樹脂(B成分)が、酸成分100モル%中にナフタレンジカルボン酸を5〜30モル%共重合したポリエチレンテレフタレートである請求項16に記載の脂肪族ポリエステル系樹脂白色フィルム。
【請求項18】
液晶ディスプレイ、照明器具、または照明看板の反射板に使用されることを特徴とする請求項1〜17のいずれか1項に記載の脂肪族ポリエステル系樹脂白色フィルム。
【請求項19】
請求項1〜18のいずれか1項に記載の脂肪族ポリエステル系樹脂白色フィルムを備えていることを特徴とする反射板。
【請求項20】
液晶ディスプレイ、照明器具または照明看板に使用されることを特徴とする請求項19に記載の反射板。

【公開番号】特開2012−1616(P2012−1616A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−137324(P2010−137324)
【出願日】平成22年6月16日(2010.6.16)
【出願人】(000003001)帝人株式会社 (1,209)
【Fターム(参考)】