説明

脂肪族炭素含有量が大きい芳香族ジシアナート化合物

少なくとも約6個の炭素原子を有する脂肪族成分を含む芳香族ジシアナート化合物、並びに、このような化合物に基づく樹脂及び熱硬化製造物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般には、少なくとも約6個の炭素原子を有する脂肪族成分を含む芳香族ジシアナート化合物、並びに、このような化合物に基づく樹脂及び熱硬化製造物に関する。
【背景技術】
【0002】
電気用途において使用される熱硬化性樹脂についての性能要求が増大し続けている。特に、高周波エレクトロニクスが、コンピューター、通信及び無線技術における進歩とともに、より一般的になっている。そのことを考慮すると、低下した誘電率及び散逸率、並びに、高まった耐熱性を示す樹脂が求められている。
【0003】
様々な芳香族シアナート化合物が長年にわたってエレクトロニクス用途において使用されている。最も一般的なシアナート、すなわち、下記の式のビスフェノールAジシアナート:
【化1】

が、ビスフェノールA(イソプロピリデンジフェノール)を酸アクセプター(例えば、トリエチルアミン)の存在下においてハロゲン化シアン(例えば、臭化シアン)と反応させることによって調製され得る。もう1つの公知の芳香族ジシアナート化合物がシクロヘキサノンビスフェノールのジシアナートである。例えば、欧州特許第612783号を参照のこと(その開示全体が特に参照により本明細書に組み込まれる)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
今回、芳香族シアナート化合物から作製される樹脂の誘電特性が、シアナート化合物の炭化水素含有量を増大させることによって改善され得ることが見出されている。
【0005】
具体的には、本発明者らは、特に、高い割合の非極性炭化水素基を含有し、かつ、高いガラス転移温度(Tg)とともに、(低い)誘電率及び散逸率の改善された組合せを有する樹脂をもたらす一群の芳香族ジシアナート化合物を見出している。大きい炭化水素構造の取り込みは、これらのジシアナート化合物を取り込む熱硬化可能な混合物の熱特性及び硬化プロフィルにとって有害であると考えられることが推測されたが、正反対のことが認められた(下記の実施例を参照のこと)。従って、そのような芳香族ジシアナート化合物の炭化水素部分は、その炭化水素部分により、高まった耐熱性、低い吸湿性及び優れた誘電特性が、芳香族ジシアナート化合物から調製される熱硬化可能な混合物の硬化挙動、又は、芳香族ジシアナート化合物から作製される硬化製造物のTgに対する悪影響を伴うことなくもたらされるので望ましいことが見出された。本発明の芳香族ジシアナート化合物の増大した炭化水素含有量は、エンタルピー硬化エネルギー(enthalpic cure energy)を、硬化開始温度及び硬化終了温度を増大させることなく抑え得ることが予想外にも見出された。硬化時の発熱性におけるこの低下は、本発明のジシアナートよりも小さい割合の非極性炭化水素基を含むジシアナートの硬化から生じ得る損傷、例えば、亀裂又は層間剥離などを防止するために役立ち得る。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、下記の式(I)の芳香族ジシアナート化合物を提供する:
【化2】

式中、
それぞれのmは独立して、0、1又は2である;
成分R及び成分Rは独立して、合計で約5個〜約24個の炭素原子を有する置換され得る脂肪族基を表し、かつ、R及びRは、それらが結合する炭素原子と一緒になって、置換され得る、及び/又は、不飽和たり得る、及び/又は、多環式の脂肪族たり得る、少なくとも約8個の環炭素原子を有する環構造を形成しても良い;及び
成分Rは独立して、ハロゲン、シアノ、ニトロ、置換され得るアルキル、置換され得るシクロアルキル、置換され得るアルコキシ、置換され得るアルケニル、置換され得るアルケニルオキシ、6個〜約10個の炭素原子を有する置換され得るアリール、7個〜約12個の炭素原子を有する置換され得るアラルキル、6個〜約10個の炭素原子を有する置換され得るアリールオキシ、及び、7個〜約12個の炭素原子を有する置換され得るアラルコキシ(aralkoxy)を表す。
【0007】
1つの態様において、式(I)の芳香族ジシアナート化合物は下記の式(Ia)の芳香族ジシアナート化合物であり得る:
【化3】

式中、
nは約7〜約24の値を有する;
それぞれのmは独立して、0、1又は2である;及び
成分Rは独立して、ハロゲン、シアノ(−CN)、ニトロ、1個〜約6個の炭素原子を好ましくは有する非置換アルキル又は置換アルキル、約5個〜約8個の炭素原子を好ましくは有する非置換シクロアルキル又は置換シクロアルキル、1個〜約6個の炭素原子を好ましくは有する非置換アルコキシ又は置換アルコキシ、3個〜約6個の炭素原子を好ましくは有する非置換アルケニル又は置換アルケニル、3個〜約6個の炭素原子を好ましくは有する非置換アルケニルオキシ又は置換アルケニルオキシ、6個〜約10個の炭素原子を好ましくは有する非置換アリール又は置換アリール、7個〜約12個の炭素原子を好ましくは有する非置換アラルキル又は置換アラルキル、6個〜約10個の炭素原子を好ましくは有する非置換アリールオキシ又は置換アリールオキシ、及び、7個〜約12個の炭素原子を好ましくは有する非置換アラルコキシ又は置換アラルコキシを表す;
かつ、上記の式(Ia)に含まれる非芳香族環式成分はどれも、1つ又はそれ以上の置換基を有し得る、及び/或いは、1つ又はそれ以上の二重結合を含み得る、及び/或いは、多環式(例えば、二環式又は三環式)であり得る。
【0008】
式(Ia)の芳香族ジシアナート化合物の1つの態様において、nは約9〜約16の値を有することができ、例えば、nは、9、10又は11の値を有することができ、特に、11に等しい場合がある。
【0009】
式(I)/(Ia)の化合物の1つの態様において、それぞれのmは独立して、0又は1であり得る。
【0010】
式(I)/(Ia)のジシアナートの限定されない例には、1,1−ビス(4−シアナトフェニル)シクロドデカン、1,1−ビス(4−シアナト−3,5−ジメチルフェニル)シクロドデカン、1,1−ビス(4−シアナト−3−メチルフェニル)シクロドデカン、1,1−ビス(4−シアナトフェニル)シクロデカン、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)アダマンタン、4,4’−ビス(4−シアナトフェニル)オクタヒドロ−1,4:5,8−ジメタノナフタレン−2(1H)イリデン及び5,5−ビス(4−シアナトフェニル)ヘキサヒドロ−4,7−メタノインダンが含まれる。式(I)/(Ia)の化合物の好ましい一例が1,1−ビス(4−シアナトフェニル)シクロドデカンである。
【0011】
本発明はまた、上記で示される式(I)のジシアナート化合物(その様々な態様を含む)のポリマー(すなわち、ホモポリマー及びコポリマー)及びプレポリマーを提供する。
【0012】
本発明はまた、上記で示されるような本発明の少なくとも1つの芳香族ジシアナート化合物(その様々な態様を含む)及び/又はそのプレポリマーと、重合触媒、共硬化剤(co-curing agent)、難燃剤、難燃剤のための相乗剤、溶媒、フィラー、接着促進剤、湿潤化助剤、分散化助剤、表面改質剤、熱可塑性ポリマー及び離型剤から選択される1つ又はそれ以上の物質とを含む第1の重合可能な混合物を提供する。
【0013】
本発明はまた、(i)上記で示されるような本発明の少なくとも1つの芳香族ジシアナート化合物(その様々な態様を含む)及び/又はそのプレポリマーと、(ii)(i)と反応することができる少なくとも1つの化合物及び/又はそのプレポリマーとを含む第2の重合可能な混合物を提供する。
【0014】
第2の混合物の1つの態様において、そのような少なくとも1つの化合物(ii)は、1つ又はそれ以上の重合可能なエチレン性不飽和成分を含む化合物、式(I)のジシアナートとは異なる芳香族ジシアナート及び芳香族ポリシアナート、芳香族ジシアナミド及び芳香族ポリシアナミド、ジマレイミド及びポリマレイミド、並びに、ジグリシジルエーテル及びポリグリシジルエーテルから選択することができる。
【0015】
別の態様において、第2の混合物はさらに、重合触媒、共硬化剤、難燃剤、難燃剤のための相乗剤、溶媒、フィラー、接着促進剤、湿潤化助剤、分散化助剤、表面改質剤、熱可塑性ポリマー及び離型剤から選択される1つ又はそれ以上の物質を含むことができる。
【0016】
別の態様において、上記の第1の混合物及び第2の混合物のそれぞれを部分的又は完全に重合させることができ、本発明はまた、そのような重合させられた混合物を含む製造物を提供する。
【0017】
1つの態様において、製造物は、電気用積層物、IC(集積回路)基板、注型物、被覆物、ダイアタッチ(die attach)及びモールドコンパウンド(mold compound)のための配合物、複合材、並びに、接着剤の少なくとも1つを含むことができる。
【0018】
本発明はまた、上記で示されるような本発明のジシアナート化合物(その様々な態様を含む)を調製するためのプロセスを提供する。本発明のプロセスは、下記の式(II)の化合物:
【化4】

(式中、m、R、R及びRは、式(I)に関して上記で示される通りである)
を、溶媒中で、少なくともほぼ化学量論的量の塩基の存在下において少なくともほぼ化学量論的量のハロゲン化シアンと反応させることを含む。
【0019】
本発明のプロセスの1つの態様において、ハロゲン化シアンは塩化シアン及び/又は臭化シアンを含むことができる。
【0020】
別の態様において、反応を約−40℃〜約60℃の温度で行うことができる。
【0021】
本発明のプロセスのさらに別の態様において、塩基は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、トリメチルアミン及びトリエチルアミンの1つ又はそれ以上を含むことができ、特に、トリエチルアミンを含むことができる。
【0022】
本発明のプロセスのなおさらにさらなる態様において、溶媒は、水、脂肪族ケトン、塩素化炭化水素、脂肪族若しくは脂環族のエーテル若しくはジエーテル、及び、芳香族炭化水素の1つ又はそれ以上を含むことができる。例えば、溶媒は、アセトン、メチルエチルケトン、メチレンクロリド及びクロロホルムの1つ又はそれ以上を含むことができる。
【0023】
本発明の他の特徴及び利点が下記の本発明の記載において示され、また、その記載からその一部が明らかになるか、又は、本発明の実施によって知ることができる。本発明は、その記載された説明及び特許請求の範囲において具体的に示される組成物、製造物及び方法によって実現及び達成される。
【発明を実施するための形態】
【0024】
別途明言されない限り、化合物又は成分に対する参照は、単独でのその化合物又は成分、並びに、他の化合物又は成分との組合せでのその化合物又は成分(例えば、化合物の混合物など)を包含する。
【0025】
本明細書中で使用される場合、単数形である「a」、「an」及び「the」は、文脈により明確に別途示されない限り、複数である参照物を包含する。
【0026】
別途示される場合を除き、本明細書及び特許請求の範囲において使用される成分及び反応条件などの量を表すすべての数字は、すべての場合において「約」の用語によって修飾されるとして理解されなければならない。従って、それとは反対に示されないならば、下記の明細書及び添付された特許請求の範囲において示される数値パラメーターは、本発明によって得られることが求められる所望される特性に依存して変化し得る近似値である。少なくとも、また、特許請求の範囲に対する均等論の適用を制限しようとする試みとして見なされないために、それぞれの数値パラメーターは、有効数字の数及び通常の丸め慣例を考慮して解釈されなければならない。
【0027】
加えて、本明細書における数値範囲の列挙は、その範囲に含まれるすべての数値及び数値範囲の開示であると見なされる。例えば、範囲が約1〜約50であるならば、例えば、1、7、34、46.1、23.7、或いは、この範囲に含まれるいずれかの他の値又は範囲を包含すると見なされる。
【0028】
本明細書中に示される個々の事項は単に例としてであり、また、単に本発明の実施形態の例示的な議論のためのものであり、また、本発明の原理及び概念的態様の最も有用である容易に理解される記載であると考えられるものを提供するために示される。これに関連して、記載により、本発明のいくつかの形態がどのようにして実際に具体化され得るかが当業者には明らかになるので、本発明の実施形態を、本発明の基本的な理解のために必要であるよりも詳しく示すことは試みられていない。
【0029】
上記で示されるように、本発明は、特に、下記の式(I)の芳香族ジシアナート化合物を提供する:
【化5】

【0030】
上記式における成分R及び成分Rは独立して、合計で約5個〜約24個の炭素原子を有する置換され得る脂肪族基を表し得る。通常、脂肪族成分R及び脂肪族成分Rにおける炭素原子の総数は少なくとも約6個であり、例えば、少なくとも約7個、少なくとも約8個、少なくとも約9個又は少なくとも約10個であり、しかし、通常は約18個以下であり、例えば、約16個以下又は約14個以下である。脂肪族成分は、直鎖、分岐又は環式で、かつ、飽和又は不飽和であり得る。その限定されない例が、直鎖又は分岐のアルキル基及びアルケニル基、シクロアルキル基及びシクロアルケニル基、並びに、アルキルシクロアルキル基及びシクロアルキルアルキル基であり、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−ノニル、n−デシル、n−ウンデシル、n−ドデシル、シクロヘキシル、メチルシクロヘキシル及びシクロヘキシルメチル、並びに、対応するモノ不飽和基及びジ不飽和基などである。さらに、これらの基は1つ又はそれ以上(例えば、1つ、2つ、3つ又は4つ)の置換基によって置換され得る。置換基の限定されない例が、F、Cl及びBr、並びに、芳香族基(例えば、フェニルなど)である。同様にまた、多くの場合において、成分R及び成分Rの1つがメチル又はエチルを表し、特にメチルを表す。
【0031】
上記の式(I)における成分R及び成分Rはまた、それらが結合する炭素原子と一緒になって、少なくとも約8個の環炭素原子を有する置換され得る、及び/又は、場合により多環式の脂肪族環構造を形成することができる。対応する化合物の例が下記の式(Ia)の化合物である:
【化6】

【0032】
上記の式(Ia)におけるnの値は約7以上であり、例えば、約8以上、約9以上又は約10以上であり、かつ、約24以下であり、例えば、約16以下、約14以下又は約12以下であり、好ましくは、8、9、10、11又は12に等しく、特に、11に等しい(すなわち、シクロドデシリデン構造を生じさせる)。
【0033】
上記の式(Ia)において示される脂環族成分は場合により多環式(例えば、二環式又は三環式)であってもよく、及び/或いは、1つ又はそれ以上(例えば、1つ、2つ、3つ又は4つ)の二重結合を場合により含むことができ、及び/或いは、1つ又はそれ以上(例えば、1つ、2つ又は3つ)の置換基を場合により有することができる。2つ以上の置換基が存在するならば、そのような置換基は同じであってもよく、又は、異なっていてもよい。脂環族成分に存在し得る置換基の限定されない例には、アルキル基、例えば、1個〜約6個の炭素原子を有する置換され得るアルキル基(例えば、メチル又はエチル)、及び、ハロゲン原子(例えば、F、Cl及びBrなど)が含まれる。アルキル基は、例えば、1つ又はそれ以上のハロゲン原子(例えば、F、Cl及びBrなど)により置換され得る。
【0034】
上記の式(I)/(Ia)におけるそれぞれのmの値は独立して、0、1又は2である。好ましくは、mの値は同一であり、及び/或いは、0又は1である。
【0035】
上記の式(I)/(Ia)における成分Rは独立して、ハロゲン(例えば、F、Cl及びBr、好ましくはCl又はBr)、シアノ、ニトロ、1個〜約6個の炭素原子を好ましくは有する非置換アルキル又は置換アルキル、約5個〜約8個の炭素原子を好ましくは有する非置換シクロアルキル又は置換シクロアルキル、1個〜約6個の炭素原子を好ましくは有する非置換アルコキシ又は置換アルコキシ、3個〜約6個の炭素原子を好ましくは有する非置換アルケニル又は置換アルケニル、3個〜約6個の炭素原子を好ましくは有する非置換アルケニルオキシ又は置換アルケニルオキシ、6個〜約10個の炭素原子を好ましくは有する非置換アリール又は置換アリール、7個〜約12個の炭素原子を好ましくは有する非置換アラルキル又は置換アラルキル、6個〜約10個の炭素原子を好ましくは有する非置換アリールオキシ又は置換アリールオキシ、及び、7個〜約12個の炭素原子を好ましくは有する非置換アラルコキシ又は置換アラルコキシを表す。
【0036】
用語「アルキル」及び用語「アルケニル」が本明細書及び添付された特許請求の範囲において使用されるときには常に、これらの用語はまた、対応する脂環族基(例えば、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロペンテニル及びシクロヘキセニルなど)を包含することを理解しなければならない。同様にまた、2つのアルキル基及び/又はアルケニル基が脂肪族環又は芳香族環の2つの(好ましくは隣接する)炭素原子に結合する場合、それらは一緒になってアルキレン基又はアルケニレン基を形成することができ、このアルキレン基又はアルケニレン基は、この基が結合する炭素原子と一緒になって、好ましくは5員環構造又は6員環構造をもたらす。隣接していない炭素原子の場合には、この環構造は二環式の化合物を生じさせることができる。
【0037】
上記のアルキル基及びアルコキシ基(R)は多くの場合、1個〜約4個の炭素原子を含み、特に1個又は2個の炭素原子を含む。これらの基の限定されない具体的な例には、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル及びtert−ブチル、並びに、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、イソブトキシ、sec−ブトキシ及びtert−ブトキシが含まれる。アルキル基及びアルコキシ基は1つ又はそれ以上(例えば、1つ、2つ又は3つ)の置換基により置換され得る。2つ以上の置換基が存在するならば、そのような置換基は同じであってもよく、又は、異なっていてもよく、好ましくは同一である。これらの置換基の限定されない例には、ハロゲン原子(例えば、F、Cl及びBrなど)が含まれる。置換アルキル基及び置換アルコキシ基の限定されない具体的な例には、CF、CFCH、CCl、CClCH、CHCl、CHCl、CHBr、CClO、CHClO、CHClO及びCHBrOが含まれる。
【0038】
上記のアルケニル基及びアルケニルオキシ基は多くの場合、3個又は4個の炭素原子を含み、特に3個の炭素原子を含む。これらの基の限定されない具体的な例が、アリル、メタリル及び1−プロペニルである。アルケニル基及びアルケニルオキシ基は1つ又はそれ以上(例えば、1つ、2つ又は3つ)の置換基により置換され得る。2つ以上の置換基が存在するならば、そのような置換基は同じであってもよく、又は、異なっていてもよく、好ましくは同一である。これらの置換基の限定されない例には、ハロゲン原子(例えば、F、Cl及びBrなど)が含まれる。
【0039】
上記のアリール基及びアリールオキシ基は多くの場合、フェニル基及びフェノキシ基である。アリール基及びアリールオキシ基は1つ又はそれ以上(例えば、1つ、2つ、3つ、4つ又は5つ)の置換基により置換され得る。2つ以上の置換基が存在するならば、そのような置換基は同じであってもよく、又は、異なっていてもよい。これらの置換基の限定されない例には、ニトロ、シアノ、ハロゲン(例えば、F、Cl及びBrなど)、1個〜約6個の炭素原子、例えば、1個〜約4個の炭素原子を有するハロゲン置換され得るアルキル(例えば、メチル又はエチル)、及び、1個〜約6個の炭素原子(例えば、1個〜約4個の炭素原子)を有するハロゲン置換され得るアルコキシ(例えば、メトキシ又はエトキシ)が含まれる。置換アリール基及び置換アリールオキシ基の限定されない具体的な例には、トリル、キシリル、エチルフェニル、クロロフェニル、ブロモフェニル、トリルオキシ、キシリルオキシ、エチルフェノキシ、クロロフェノキシ及びブロモフェノキシが含まれるが、これらに限定されない。
【0040】
上記のアラルキル基及びアラルコキシ基は多くの場合、ベンジル基、フェネチル基、ベンジルオキシ基又はフェネトキシ基である。これらの基は、(置換されるならば、好ましくはアリール環において)1つ又はそれ以上(例えば、1つ、2つ、3つ、4つ又は5つ)の置換基により置換され得る。2つ以上の置換基が存在するならば、そのような置換基は同じであってもよく、又は、異なっていてもよい。これらの置換基の限定されない例には、ニトロ、シアノ、ハロゲン(例えば、F、Cl及びBrなど)、1個〜約6個の炭素原子、例えば、1個〜約4個の炭素原子を有するハロゲン置換され得るアルキル(例えば、メチル又はエチル)、及び、1個〜約6個の炭素原子、例えば、1個〜約4個の炭素原子を有するハロゲン置換され得るアルコキシ(例えば、メトキシ又はエトキシ)が含まれる。
【0041】
式(I)/(Ia)のジシアナートは、当業者には周知である方法によって調製することができる。例えば、これらのジシアナートは、対応するビスフェノールをハロゲン化シアンと反応させることによって調製することができる。そのようなビスフェノールは、例えば、フェノール性化合物を、当分野では周知である方法を使用してケトンと縮合することによって調製することができる。これらの方法の例が、例えば、米国特許第4,438,241号及びドイツ国特許DE3345945に記載される(それらの開示全体が参照により本明細書に組み込まれる)。一般的に言えば、ケトンが酸触媒の存在下において大過剰のフェノール性化合物により処理される。この場合、酸触媒の限定されない例には、鉱酸(例えば、HCl又はHSOなど)、アリールスルホナート、シュウ酸、ギ酸又は酢酸が含まれる。共触媒(例えば、メルカプタンなど)を加えることができる。可溶性の酸触媒を使用するのではなく、むしろ、スルホン化された架橋ポリスチレンのビーズの層を使用することもまた一般的である。好適なケトン出発物質の限定されない例には、脂環族ケトン、例えば、シクロドデカノン、シクロデカノン、アダマンタノン、及び、多環式炭化水素に由来する他のケトンなど、同様にまた、脂肪族ケトン、例えば、2−オクタノン、3−オクタノン、2−ノナノン、3−ノナノン、2,4,8−トリメチル−4−ノナノン、2−デカノン、3−デカノン、2−ウンデカノン、6−ウンデカノン、2−メチル−4−ウンデカノン、2−ドデカノン、3−ドデカノン及び4−ドデカノンなどが含まれる。好適なフェノール出発物質の限定されない例には、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、o−クロロフェノール、o−ブロモフェノール、2−エチルフェノール、2−オクチルフェノール、2−ノニルフェノール、2,6−キシレノール、2−t−ブチル−5−メチルフェノール、2−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,4−ジ(t−ブチル)フェノール、2−t−ブチルフェノール、2−sec−ブチルフェノール、2−n−ブチルフェノール、2−シクロヘキシルフェノール、4−シクロヘキシルフェノール、2−シクロヘキシル−5−メチルフェノール、α−デカロン及びβ−デカロンが含まれる。
【0042】
この縮合化学反応は、様々な生成物(例えば、フェノール性化合物のo−アルキル化、ケトンによるフェノール性化合物の多重アルキル化に由来するオリゴマー、及び、酸触媒による転移生成物など)の混合物を与え得ることが当分野では周知である。これらの不純物は除去することができるか、又は、シアン化反応のための出発物質として使用される物質に残すことができるかのどちらかである。いくつかの点で、これらの不純物は、最終的なシアン化された生成物の融点を低下させるということにおいて有益であり得る。このことは、シアナートをより可溶性にすること、及び、結晶化する傾向を低下させることによって、シアナートを配合するために調製することをより容易にすることができる。オリゴマーの存在は、シアナートの粘度、及び、従って、その配合された製造物の粘度を増大させる傾向がある。このことは、用途に依存する有益な特性又は有害な特性であり得る。
【0043】
限定されない例として、本発明のジシアナート化合物、例えば、1,1−ビス(4−シアナトフェニル)シクロドデカンなどは、シクロアルカンビスフェノール、例えば、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロドデカノンなどを、フェノール性ヒドロキシル基に対してほぼ化学量論的量又はわずかな化学量論的過剰(約20パーセント過剰に至るまで)の塩基化合物の存在下において、かつ、好適な溶媒の存在下において、フェノール性ヒドロキシル基に対してほぼ化学量論的量又はわずかな化学量論的過剰(約20パーセント過剰に至るまで)のハロゲン化シアンと反応させることによって調製することができる。この反応は概略的には、(1,1−ビス(4−シアナトフェニル)シクロドデカンの場合については)下記のように表すことができる。
【化7】

【0044】
通常、約−40℃〜約60℃の反応温度が用いられ、約−15℃〜約10℃の反応温度が好ましく、約−10℃〜約0℃の反応温度が特に好ましい。反応時間は、例えば、用いられている反応物、反応温度、使用される溶媒及び反応の規模などの関数として大きく変化し得るが、多くの場合、約15分〜約4時間の範囲であり、約30分〜約90分の反応時間が好ましい。
【0045】
好適なハロゲン化シアンの限定されない例には、塩化シアン及び臭化シアンが含まれる。代替として、Organic Synthesis、第61巻、35頁〜68頁(1983)(John Wiley and Sonsによって発行、その開示全体が特に参照により本明細書に組み込まれる)に記載されるマーチン(Martin)及びバウアー(Bauer)の方法を、ハロゲン化シアンをシアン化ナトリウム及びハロゲン(例えば、塩素又は臭素など)からその場で生じさせるために使用することができる。
【0046】
上記プロセスにおいて使用される好適な塩基化合物の限定されない例には、無機塩基及び第三級アミンの両方が含まれ、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、トリメチルアミン、トリエチルアミン及びそれらの混合物などが含まれる。トリエチルアミンが塩基として最も好ましい。
【0047】
シアン化反応のための好適な溶媒の限定されない例には、水、脂肪族ケトン、塩素化炭化水素、脂肪族及び脂環族のエーテル及びジエーテル、芳香族炭化水素、並びに、それらの混合物が含まれる。アセトン、メチルエチルケトン、メチレンクロリド及びクロロホルムが溶媒として特に好適である。
【0048】
本発明の芳香族ジシアナート化合物は通常、必要な場合には好適な触媒の存在下において、約50℃〜約400℃の温度で加熱することによって、好ましくは、約100℃〜約250℃の温度で加熱することによって硬化(熱硬化)させることができる。
【0049】
好適な触媒の例には、酸、塩基、塩、窒素化合物及びリン化合物が含まれ、例えば、ルイス酸(例えば、AlCl、BF、FeCl、TiCl、ZnCl及びSnClなど)、プロトン酸(例えば、HCl及びHPOなど)、芳香族ヒドロキシ化合物(例えば、フェノール、p−ニトロフェノール、ピロカテコール、ジヒドロキシナフタレンなど)、水素化ナトリウム、ナトリウムメチラート、ナトリウムフェノラート、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、キノリン、イソキノリン、テトラヒドロイソキノリン、テトラエチルアンモニウム塩化物、ピリジン−N−オキシド、トリブチルホスフィン、オクタン酸亜鉛、オクタン酸スズ、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、オクタン酸コバルト、コバルトアセチルアセトナートなどが含まれる。触媒として同様に好適なものが金属キレートであり、例えば、遷移金属と、二座配位子又は三座配位子とのキレートなどであり、具体的には、鉄、コバルト、亜鉛、銅、マンガン、ジルコニウム、チタン、バナジウム、アルミニウム及びマグネシウムのキレートである。これらの触媒及び他の触媒が米国特許第3,694,410号及び同第4,094,852号に開示される(それらの開示全体が参照により本明細書に組み込まれる)。ナフテン酸コバルト、オクタン酸コバルト及びコバルトアセチルアセトナートが触媒として特に好適である。
【0050】
触媒が使用されるならば、使用される触媒の量は、具体的な触媒の構造、硬化させられているジシアナート化合物の構造、硬化温度及び硬化時間などに依存し得る。一般には、重合可能な成分の総重量に基づいて約0.001重量パーセント〜約2重量パーセントの触媒濃度が好ましい。
【0051】
本発明のジシアナート化合物のB段階化又は予備重合を、上記で示されるよりも低い温度及び/又は短い硬化時間を使用することによって達成することができる。その後、そのようにして形成されたB段階化(予備重合)樹脂の硬化を、温度及び/又は硬化時間を増大することによって、B段階化(予備重合)後しばらくして、又は、B段階化(予備重合)後すぐに達成することができる。
【0052】
本発明のジシアナート化合物から調製される硬化(熱硬化)製造物は、硬化プロセスに関与し、かつ、1,3,5−トリアジン環構造の形成を妨げる他の官能性が、硬化可能な混合物に存在しない限り、シアナート基のホモ重合構造、すなわち、1,3,5−トリアジン環を含む。
【0053】
本発明の芳香族ジシアナート化合物は、様々な他の化合物及び/又はそのプレポリマーと共重合させることができる。対応する共重合可能な混合物において、式(I)/(Ia)の1つ又はそれ以上のジシアナート及び/或いはそのプレポリマーが、例えば、重合可能な成分の総重量に基づいて約5重量%〜約95重量%の量で存在することができ、例えば、重合可能な成分の総重量に基づいて約10重量%〜約90重量%の量、又は、約25重量%〜約75重量%の量で存在することができる。
【0054】
式(I)のジシアナート及び/又はそのプレポリマーと共重合され得る化合物(そのプレポリマーを含む)の限定されない例には、1つ又はそれ以上の重合可能なエチレン性不飽和成分を含む化合物、式(I)のジシアナートとは異なる芳香族ジシアナート及び芳香族ポリシアナート、芳香族ジシアナミド及び芳香族ポリシアナミド、ジマレイミド及びポリマレイミド、並びに、ジグリシジルエーテル及びポリグリシジルエーテル(エポキシ樹脂)、例えば、ビスフェノールA又はビスフェノールFのジグリシジルエーテル、フェノールノボラック樹脂又はクレゾールノボラック樹脂のポリグリシジルエーテル、及び、「脂環族成分を含むポリフェノール性化合物及びエポキシ樹脂並びにそれらの製造プロセス」と題される同時に譲渡された(co-assigned)特許出願(これは本出願と同時に出願された:代理人文書番号65221)(その開示全体が特に参照により本明細書に組み込まれる)に開示されるエポキシ樹脂などが含まれる。
【0055】
当然のことではあるが、本発明の芳香族ジシアナート化合物及び/又はそのプレポリマーを、他の成分と、例えば、(a)シアナート基又はシアナミド基及び重合可能なエチレン性不飽和基の両方を同じ分子において含有する少なくとも1つの化合物、(b)1,2−エポキシド基及び重合可能なエチレン性不飽和基の両方を同じ分子において含有する少なくとも1つの化合物、(c)マレイミド基及びシアナート基の両方を同じ分子において含有する少なくとも1つの化合物、(d)少なくとも1つのポリアミン、及び、(e)少なくとも1つのポリフェノールなどの1つ又はそれ以上などと共重合させることもまた可能である。ビスマレイミド及びエポキシ樹脂を含有し、かつ、高性能な電気用積層物を製造するために有用である配合物を作製するためにジシアナートを使用することの限定されない具体的な例が、例えば、米国特許第4,110,364号に開示される(その開示全体が参照により本明細書に組み込まれる)。
【0056】
式(I)/(Ia)のジシアナートと共重合され得る化合物(そのプレポリマーを含む)の具体的かつ限定されない例には、下記の式(III)の化合物及びそのプレポリマーが含まれる:
【化8】

式中、
nは約5〜約24の値を有する;
それぞれのmは独立して、0、1又は2である;
成分Rは独立して、ハロゲン、シアノ、ニトロ、ヒドロキシ、1個〜約6個の炭素原子を好ましくは有する1つ又は2つのアルキル基を場合により有するアミノ、1個〜約6個の炭素原子を好ましくは有する非置換アルキル又は置換アルキル、約5個〜約8個の炭素原子を好ましくは有する非置換シクロアルキル又は置換シクロアルキル、1個〜約6個の炭素原子を好ましくは有する非置換アルコキシ又は置換アルコキシ、3個〜約6個の炭素原子を好ましくは有する非置換アルケニル又は置換アルケニル、3個〜約6個の炭素原子を好ましくは有する非置換アルケニルオキシ又は置換アルケニルオキシ、6個〜約10個の炭素原子を好ましくは有する非置換アリール又は置換アリール、7個〜約12個の炭素原子を好ましくは有する非置換アラルキル又は置換アラルキル、6個〜約10個の炭素原子を好ましくは有する非置換アリールオキシ又は置換アリールオキシ、及び、7個〜約12個の炭素原子を好ましくは有する非置換アラルコキシ又は置換アラルコキシを表す;及び
成分Qは独立して、水素、シアノ、HRC=CR−CH−又はHC−CR=HC−(式中、成分Rは独立して、水素、或いは、1個〜約3個の炭素原子を有する非置換アルキル又は置換アルキルを表す)を表す;
但し、(1)両方の成分Qが水素であるとき、少なくとも1つの成分RがHRC=CR−CH−又はHC−CR=HC−を表し、(2)1つを超えない基Qがシアノを表し、かつ、(3)上記の式(III)に含まれる非芳香族環式成分はどれも、1つ又はそれ以上の置換基を場合により有することができ、及び/又は、1つ又はそれ以上の二重結合を場合により含むことができ、及び/又は、場合により多環式(例えば、二環式又は三環式)であり得る。
【0057】
式(III)において示される脂環族成分、並びに、式(III)におけるn、m及びRの意味に関しては、式(I)/(Ia)の化合物に関して上記で示される解説がそれらの全体において適用される。
【0058】
上記の式(III)における成分Qは独立して、水素、シアノ、HRC=CR−CH−又はHC−CR=HC−(式中、成分Rは独立して、水素、或いは、1個〜約3個の炭素原子を有する非置換アルキル又は置換アルキル(好ましくは非置換アルキル)を表す)を表す。好ましい成分Qがアリルである。同様にまた、成分Qが同一であること、及び、HRC=CR−CH−又はHC−CR=HC−を表すこと、及び/或いは、水素と異なることが好ましい。同様に好ましくは、成分Qの少なくとも1つが水素ではない。
【0059】
上記アルキル成分Rの限定されない具体的な例には、メチル、エチル、プロピル及びイソプロピルが含まれる。メチルが好ましい。1つ又はそれ以上の置換基がこれらのアルキル基に存在するならば、それらは、例えば、ハロゲン(例えば、F、Cl及びBrなど)であり得る。
【0060】
式(III)の上記化合物の限定されない例には、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロドデカンビス(アリルエーテル)、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロドデカンビス(メタリルエーテル)、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロドデカンビス(1−プロペニルエーテル)、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロデカンビス(アリルエーテル)、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロデカンビス(メタリルエーテル)、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロデカンビス(1−プロペニルエーテル)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)アダマンタンビス(アリルエーテル)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)アダマンタンビス(メタリルエーテル)、4,4’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタヒドロ−1,4:5,8−ジメタノナフタレン−2(1H)イリデンビス(アリルエーテル)、4,4’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタヒドロ−1,4:5,8−ジメタノナフタレン−2(1H)イリデンビス(メタリルエーテル)、5,5−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサヒドロ−4,7−メタノインダンビス(アリルエーテル)及び5,5−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサヒドロ−4,7−メタノインダンビス(メタリルエーテル)が含まれる。
【0061】
式(III)の上記化合物のさらなる限定されない例には、成分Qの少なくとも1つがHRC=CR−CH−又はHC−CR=HC−を表す式(III)の化合物の部分的又は完全なクライゼン転位生成物、同様にまた、クライゼン転位を阻止するための少なくとも1つの置換基を少なくとも1つの芳香族環に有するモノマーが含まれる。
【0062】
式(III)の化合物は、当業者には周知である方法によって調製することができる。例えば、これらのモノマーは、上記の式(II)のシクロアルカンビスフェノールを、基HRC=CR−CH−又は基HC−CR=HC−を含む化合物によりエーテル化することによって調製することができる。これに関連して、「脂肪族成分及び芳香族成分を含むエチレン性不飽和モノマー」と題される同時に譲渡された特許出願(これは本出願と同時に出願された:代理人文書番号66641)もまた参照することができる(その開示全体が特に参照により本明細書に組み込まれる)。
【0063】
限定されない例として、式(II)のビスフェノールのアリル化を、例えば、アリルメチルカルボナートを使用するトランスカルボナート化(transcarbonation)反応によって達成することができ、又は、例えば、アリルハリド及びメタリルハリドなど、さらに、アルカリ剤及び場合により使用される触媒(例えば、相間移動触媒など)を使用する直接的なアリル化反応によって達成することができる。
【0064】
アリルハリド(例えば、アリルクロリドなど)による上記式(II)のビスフェノールの直接的なアリル化反応を、例えば、アルカリ剤(例えば、水酸化アルカリ金属(例えば、NaOH)の水溶液など)の存在下において行うことができる。所望されるならば、不活性な溶媒(例えば、1,4−ジオキサンなど)及び相間移動触媒(例えば、ベンジルトリアルキルアンモニウムハリド又はテトラアルキルアンモニウムハリドなど)を用いることができる。
【0065】
式(I)/(Ia)の芳香族ジシアナートと共重合され得る化合物(そのプレポリマーを含む)のさらなる具体的かつ限定されない例には、下記の式(IV)の化合物及びそのプレポリマーが含まれる:
【化9】

式中、
pは0であるか、又は、1〜約19の整数である;
それぞれのmは独立して、0、1又は2である;
成分Rは独立して、ハロゲン、シアノ、ニトロ、1個〜約6個の炭素原子を好ましくは有する非置換アルキル又は置換アルキル、1個〜約6個の炭素原子を好ましくは有する非置換アルコキシ又は置換アルコキシ、3個〜約6個の炭素原子を好ましくは有する非置換アルケニル又は置換アルケニル、3個〜約6個の炭素原子を好ましくは有する非置換アルケニルオキシ又は置換アルケニルオキシ、6個〜約10個の炭素原子を好ましくは有する非置換アリール又は置換アリール、7個〜約12個の炭素原子を好ましくは有する非置換アラルキル又は置換アラルキル、6個〜約10個の炭素原子を好ましくは有する非置換アリールオキシ又は置換アリールオキシ、及び、7個〜約12個の炭素原子を好ましくは有する非置換アラルコキシ又は置換アラルコキシを表す;及び
成分Qは独立して、水素、シアノ、HRC=CR−CH−又はHC−CR=HC−(式中、成分Rは独立して、水素、或いは、1個〜約3個の炭素原子を有する非置換アルキル又は置換アルキルを表す)を表す;
但し、4つすべての成分Qが水素であるとき、少なくとも1つの成分RがHRC=CR−CH−又はHC−CR=HC−を表す;
かつ、上記の式(IV)に含まれる非芳香族環式成分はどれも、1つ又はそれ以上の置換基を場合により有することができ、及び/又は、1つ又はそれ以上の二重結合を場合により含むことができる。
【0066】
上記の式(IV)において、pは0であるか、或いは、1〜約19の整数であり、例えば、約14に至るまでの整数、約12に至るまでの整数、又は、約8に至るまでの整数であり、例えば、1、2、3、4、5、6及び7であり、1、2又は3が好ましく、1が特に好ましい。式(IV)におけるn、R、Q及びRの例示的かつ好ましい意味に関しては、上記の式(I)及び式(III)に関する解説がそれらの全体において適用され、特に参照される。
【0067】
式(IV)の上記化合物の限定されない具体的な例には、(Q= HRC=CR−CH−又はHC−CR=HC−については)ジメチルシクロヘキサンテトラフェノールテトラ(アリルエーテル)、ジメチルシクロヘキサンテトラフェノールテトラ(メタリルエーテル)、ジメチルシクロヘキサンテトラフェノールテトラ(1−プロペニルエーテル)、ジメチルシクロオクタンテトラフェノールテトラ(アリルエーテル)、ジメチルシクロオクタンテトラフェノールテトラ(メタリルエーテル)、ジメチルシクロオクタンテトラフェノールテトラ(1−プロペニルエーテル)、ジメチルシクロヘキサンテトラフェノールテトラ(アリルエーテル)の部分的又は完全なクライゼン転位生成物、及び、クライゼン転位を阻止するための少なくとも1つの置換基を少なくとも1つの芳香族環に有する化合物が含まれる。式(IV)の上記化合物の限定されない具体的な例にはさらに、(Q= −CNについては)ジメチルシクロヘキサンテトラフェノールテトラシアナート及びジメチルシクロオクタンテトラフェノールテトラシアナートが含まれる。
【0068】
上記の式(IV)の化合物は、例えば、約5個〜約24個の環炭素原子を含む対応するシクロアルカンのジアルデヒドと、対応するヒドロキシ芳香族(例えば、フェノール性)化合物(例えば、フェノールなど)とを、多分散度(Mw/Mn)が約2以下(例えば、約1.8以下又は約1.5以下)であるポリフェノール性化合物の混合物をもたらす芳香族ヒドロキシ基対アルデヒド基のモル比で縮合すること、そして、必要な場合には、混合物に存在するフェノール性基を、シアナート基(−OCN)に、並びに/或いは、式HRC=CR−CH−O−及び/又は式HC−CR=HC−O−のエーテル基(式中、成分Rは独立して、水素、或いは、1個〜約3個の炭素原子を有する非置換アルキル又は置換アルキルを表す)に部分的又は完全に変換するために、ポリフェノール性化合物の混合物をエーテル化反応及び/又は(例えば、ハロゲン化シアンを用いた)シアン化反応(上記参照)に供することを含むプロセスによって調製することができる。このプロセスは、式(IV)の化合物を、類似する構造で、しかし、より大きい(及びより小さい)分子量(より大きい縮合度又はより小さい縮合度)を有する他のモノマーとの混合においてもたらす。
【0069】
上記プロセスのための出発物質である脂環族ジアルデヒドは、当業者には周知である方法によって調製することができる。限定されない例として、シクロヘキサンジアルデヒドをシクロヘキサ−3−エンカルボキサルデヒドのヒドロホルミル化によって生成することができる。このプロセスでは、1,3−シクロヘキサンジカルボキサルデヒド及び1,4−シクロヘキサンジカルボキサルデヒドの混合物がもたらされる。ジアルデヒドのこの混合物と、フェノールとの縮合では、シクロヘキサンジアルデヒドテトラフェノールを、より大きい縮合度及びより小さい縮合度を有する化合物と一緒に含むノボラックがもたらされる。このプロセスは、大きい平均官能価を有する、多分散度が非常に低い生成物をもたらすことを可能にする。例えば、フェノール及びシクロヘキサンジアルデヒドを出発物質として使用するときには、約930の重量平均分子量(Mw)及び約730の数平均分子量(Mn)、並びに/又は、平均して分子あたり約6個のヒドロキシ基を有する生成物を日常的に生成することができる。このプロセスでは好ましくは、芳香族ヒドロキシ基対アルデヒド基の比較的高いモル比(例えば、約6:1)が、オリゴマー化を低く保つために使用される。その後、過剰なヒドロキシ芳香族化合物を、例えば、蒸留によって除くことができる。これに関連して、「芳香族ポリシアナート化合物及びその製造プロセス」と題される同時に譲渡された特許出願(これは本出願と同時に出願された:代理人文書番号66500)(その開示全体が特に参照により本明細書に組み込まれる)、並びに、上記の、「脂環族成分を含むポリフェノール性化合物及びエポキシ樹脂並びにそれらの製造プロセス」と題される同時に譲渡された特許出願(代理人文書番号65221)もまた参照することができる。
【0070】
限定されない例として、シクロアルカンテトラフェノールのアリル化、例えば、シクロヘキサンジアルデヒドテトラフェノール(及び、それとの混合で存在し得る関連したフェノール性化合物)などのアリル化を、例えば、アリルメチルカルボナートを使用するトランスカルボナート化反応によって達成することができ、又は、例えば、アリルハリド及びメタリルハリドなど、さらに、アルカリ剤及び場合により使用される触媒(例えば、相間移動触媒など)を使用する直接的なアリル化反応によって達成することができる。これに関連して、式(II)の化合物のアリル化に関して上記で示される対応するさらなる解説を参照することができる。
【0071】
本発明の(共)重合可能な混合物、及び、そのような混合物から作製される製造物はそれぞれさらに、1つ又はそれ以上の他の物質を含むことができ、例えば、重合可能な混合物、及び、そのような混合物から作製される製造物において一般に存在する1つ又はそれ以上の添加物などを含むことができる。そのような添加物の限定されない例には、重合触媒、共硬化剤、難燃剤、難燃剤のための相乗剤、溶媒、フィラー、ガラス繊維、接着促進剤、湿潤化助剤、分散化助剤、表面改質剤、熱可塑性樹脂及び離型剤が含まれる。
【0072】
本発明において使用される共硬化剤の限定されない例には、ジシアンジアミド、置換グアニジン、フェノール性化合物、アミノ化合物、ベンゾオキサジン、無水物、アミドアミン及びポリアミドが含まれる。
【0073】
(式(I)のジシアナートのホモ重合に関して上記で示される触媒に加えて)本発明において使用される触媒の限定されない例には、遷移金属錯体、イミダゾール系化合物、ホスホニウム塩、ホスホニウム錯体、第三級アミン、ヒドラジド、「潜伏性触媒」(例えば、Ancamine2441及びK61B(Air Productsから入手可能な修飾された脂肪族アミン)、Ajinomoto PN−23又はMY−24、及び、修飾ウレアなど)が含まれる。
【0074】
本発明において使用される難燃剤及び相乗剤の限定されない例には、リン含有分子(DOP−エポキシ反応生成物)、DOPO(6H−ジベンゾ[c,e][1,2]オキサホスホリン−6−オキシド)の付加物、マグネシウム水和物、ホウ酸亜鉛及びメタロセンが含まれる。
【0075】
(例えば、加工性を改善するために)本発明において使用される溶媒の限定されない例には、アセトン、メチルエチルケトン、及び、Dowanol PMA(Dow Chemical Companyから入手可能なプロピレングリコールメチルエーテルアセタート)が含まれる。
【0076】
本発明において使用されるフィラーの限定されない例には、粒子サイズ範囲が約0.5nm〜約100μmである機能性及び非機能性の粒子状フィラーが含まれる。それらの具体的な例には、シリカ、アルミナ三水和物、酸化アルミニウム、金属酸化物、カーボンナノチューブ、銀フレーク又は銀粉末、カーボンブラック及びグラファイトが含まれる。
【0077】
本発明において使用される接着促進剤の限定されない例には、修飾された有機シラン(エポキシ化、メタクリル、アミノ、アリルなど)、アセチルアセトナート類、イオウ含有分子、チタナート類及びジルコナート類が含まれる。
【0078】
本発明において使用される湿潤化助剤及び分散化助剤の限定されない例には、修飾された有機シラン(例えば、Byk900シリーズ及びW9010など)及び修飾されたフルオロカーボンが含まれる。
【0079】
本発明において使用される表面改質剤の限定されない例には、スリップ剤及び光沢剤が含まれ、それらのいくつかがByk−Chemie(ドイツ)から入手可能である。
【0080】
本発明において使用される熱可塑性樹脂の限定されない例には、反応性及び非反応性の熱可塑性樹脂、例えば、ポリフェニルスルホン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリビニリデンフルオリド、ポリエーテルイミド、ポリフタルイミド、ポリベンゾイミダゾール、アクリル樹脂、フェノキシ樹脂及びポリウレタンなどが含まれる。
【0081】
本発明において使用される離型剤の限定されない例には、ワックス、例えば、カルナウバワックスなどが含まれる。
【0082】
本発明の芳香族ジシアナート化合物は、特に、プリント回路基板及び集積回路パッケージング用材料(例えば、IC基板など)を製造するための熱硬化可能なコモノマーとして有用である。本発明の芳香族ジシアナート化合物は、高速度のプリント回路基板、集積回路パッケージング及びアンダーフィル(underfill)接着剤のためのマトリックス樹脂を配合するために特に有用である。コモノマーとして、本発明の芳香族ジシアナート化合物はまた、熱硬化マトリックスにおける炭化水素の量を調節するために使用することができる。
【実施例】
【0083】
(実施例1)
1,1−ビス(4−シアナトフェニル)シクロドデカンの合成
250ミリリットルの、三口のガラス製丸底反応器に、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロドデカン(17.63グラム、0.10ヒドロキシル当量)及びアセトン(125ミリリットル、1グラムのビスフェノールあたり7.09ミリリットル)を装入した。反応器はさらに、(0℃で維持される)冷却器、温度計、頭上窒素導入管(1LPMのNが使用される)及び磁石式攪拌を備えた。撹拌を開始して、21.5℃での溶液を得た。臭化シアン(11.12グラム、0.105モル、1.05:1の臭化シアン:ヒドロキシル当量比)を溶液に加えると、臭化シアンが直ちに溶液に溶解した。冷却用のドライアイス−アセトン浴を反応器の下に置き、−5℃での撹拌溶液の冷却及び平衡化を続けた。トリエチルアミン(10.17グラム、0.1005モル、1.005のトリエチルアミン:ヒドロキシル当量比)を、シリンジを使用して少量ずつ加え、これにより、反応温度を−5℃〜0℃で維持した。トリエチルアミンについての総添加時間は30分であった。トリエチルアミンの最初の少量の添加により、撹拌溶液における曇りが誘導され、さらなる添加により、トリエチルアミン臭化水素酸塩の白色スラリーの形成が誘導された。
【0084】
−5℃〜0.5℃での反応後8分の後、反応生成物のサンプルの高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)分析により、0.68面積パーセントの未反応の1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロドデカン、4.43面積%のモノシアナート及び93.98面積%のジシアナートの存在が明らかにされ、残りが7つの微量ピークとしてであった。−5℃〜0℃での反応後累積45分の後、反応生成物のサンプルのHPLC分析により、0.84面積パーセントの未反応のシクロドデカンビスフェノール、5.34面積%のモノシアナート及び93.51面積%のジシアナートの存在が明らかにされ、残りが1つの微量ピークとしてであった。
【0085】
反応後累積101分の後、生成物スラリーを、磁石撹拌されている脱イオン水(1.5リットル)のビーカーに加え、これにより、水性スラリーを得た。5分間の撹拌の後、ろ紙による水性スラリーの重力ろ過により、白色の粉末生成物を回収した。ろ紙からの生成物を、200ミリリットルの総体積までの脱イオン水を使用してビーカーの中に洗い入れ、その後、ジクロロメタン(200ミリリットル)を加えた。溶液がジクロロメタン層において形成した。混合物を分液ロートに加え、徹底的に混合し、静置させ、その後、ジクロロメタン層を回収し、水層を捨てた。ジクロロメタン溶液を分液ロートに戻し、新鮮な脱イオン水(200ミリリットル)によりさらに2回抽出した。
【0086】
得られた曇っているジクロロメタン溶液を顆粒状の無水硫酸ナトリウム(5グラム)で乾燥して、透明な溶液を得た。その後、この溶液を、枝付き真空フラスコに取り付けられる、60ミリリットルの中間的なフリットガラスロートに担持される無水硫酸ナトリウム(25グラム)の層に通した。透明なろ液を、真空が3.5mmHg未満になるまで、50℃の最高油浴温度を使用してロータリーエバポレーションした。合計で19.81グラム(98.43%の未補正の単離収率)の白色の結晶性生成物が回収された。生成物のサンプルのHPLC分析により、0.47面積パーセントの未反応の1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロドデカン、3.09面積%のモノシアナート及び96.44面積%のジシアナートの存在が明らかにされた。
【0087】
(実施例2)
1,1−ビス(4−シアナトフェニル)シクロドデカンのホモポリトリアジンの合成
上記の実施例1から得られる1,1−ビス(4−シアナトフェニル)シクロドデカンの一部分(9.8ミリグラム)の示差走査熱量測定法(DSC)分析を、35立方センチメートル/分で流れる窒素の流れのもとで25℃から400℃まで7℃/分の加熱速度を使用して完了した。ただ1つの融解吸熱が、120.8℃の開始、129.6℃の中間点、及び、136.0℃の終了とともに検出され、これには4.5ジュール/グラムのエンタルピーが伴った。環状三量体化に起因すると考えられるただ1つの発熱が、194.8℃の開始、289.4℃の中間点、及び、340.3℃の終了とともに検出され、これには562.3ジュール/グラムのエンタルピーが伴った。得られたホモポリトリアジンの再度の走査では、ガラス転移温度であるかもしれない202.1℃での弱い転移が明らかにされた。DSC分析から回収されたホモポリトリアジンは、透明で、明るい琥珀色の堅い固体であった。
【0088】
(実施例3)
高純度の1,1−ビス(4−シアナトフェニル)シクロドデカンを製造するための合成及び再結晶
実施例1の1,1−ビス(4−シアナトフェニル)シクロドデカンの合成を繰り返したが、規模における2倍の増大を用いた。38.86グラムの回収された生成物は、HPLC分析によって、0.69面積パーセントの未反応の1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロドデカン、3.91面積%のモノシアナート及び95.40面積%のジシアナートを示した。再結晶を、溶液を沸騰するアセトン(50ミリリットル)において形成し、その後、23℃で24時間保持することによって行った。アセトン溶液をデカンテーションによって結晶性生成物から除いた。湿った結晶性生成物の一部分のHPLC分析により、検出可能な未反応の1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロドデカンの非存在、1.02面積%のモノシアナート及び98.98面積%のジシアナートの存在が明らかにされた。アセトン(40ミリリットル)からの湿った結晶性生成物の再度の再結晶、その後、50℃での48時間の真空オーブンにおける乾燥により、20.12グラムの輝く白色生成物が得られた。これには、HPLC分析によって、検出可能な未反応の1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロドデカンが存在せず、0.42面積%のモノシアナート及び99.58面積%のジシアナートが含まれていた。2回の再結晶からのアセトン溶液のデカンテーション液を一緒にし、その後、溶液を28ミリリットルの体積に濃縮することにより、二番晶の輝く白色生成物(8.39グラム)が得られた。これには、HPLC分析によって、微量(積分不能)の未反応の1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロドデカン、2.28面積%のモノシアナート及び97.72面積%のジシアナートが含まれていた。
【0089】
(参考例1)
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロドデカンのビス(アリルエーテル)の合成
アリルアルコール(101.58グラム、1.75モル)、ジメチルカルボナート(157.55グラム、1.75モル)及びナトリウムメトキシド触媒(0.18グラム、0.065重量パーセント)を500ミリリットルの三口丸底ガラス製反応器に加え、窒素雰囲気下において撹拌とともに室温(23℃)で維持した。反応器にはさらに、冷却された冷却器、温度計、磁石式攪拌、及び、サーモスタット制御の加熱用マントルが取り付けられた。アリルメチルカルボナート、ジアリルカルボナート及びメタノールの平衡混合物が、15.5℃への反応器内容物の冷却と同時にすぐに形成された。13分後、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロドデカン(28.31グラム、0.1606当量のヒドロキシ基)を反応器に加え、その後、トリフェニルホスフィン(0.56グラム、0.204重量パーセント)及び5%パラジウム担持炭素(0.38グラム、0.127重量パーセント)の混合物を加えた。1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロドデカンは高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)分析によって99.76面積%を示し、残りが2つの微量成分(0.09面積%及び0.15面積%)からなった。加熱を開始し、次の127分間にわたって、反応温度が79℃〜80℃に達した。反応混合物を77.5℃〜80℃で8時間維持し、その後、室温に冷却し、中間的なフリットガラスロートに詰められた珪藻土の層に通して真空ろ過した。回収されたろ液を、100℃の最高油浴温度で、1.7mmHg圧力の真空までロータリーエバポレーションして、透明な明黄色の液体(35.04グラム)を得た。これは室温で粘着性の固体になった。
【0090】
HPLC分析により、96.78面積%の、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロドデカンのアリルエーテルの存在が明らかにされ、残りがただ1つの微量成分(3.22面積%)としてであった。このただ1つの微量成分は、生成物をジクロロメタン(100ミリリットル)に溶解し、得られた溶液を中間的なフリットガラスロートに担持されるシリカゲル(230メッシュ〜400メッシュの粒子サイズ、60オングストロームの平均細孔サイズ、550m/グラムの表面積)の深さ2インチ×直径1.75インチの層に通すことによって除去された。さらなるジクロロメタンによるシリカゲル層からの溶出の後、黄色バンドが起点領域に残ったままであった。ロータリーエバポレーションにより、33.98グラム(98.94%の単離収率)の淡黄色の粘着性固体が得られた。
【0091】
HPLC分析により、99.57面積%の、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロドデカンのアリルエーテルの存在が明らかにされ、残りが2つの微量成分(0.22面積%及び0.21面積%)としてであった。KBrプレートにおける生成物のフィルムサンプルの赤外分光光度法分析により、不飽和C−Hの伸縮について予想される範囲におけるピーク(3032cm−1、3058cm−1、3081cm−1)、飽和C−Hの伸縮について予想される範囲におけるピーク(2862cm−1、2934cm−1[肩が両方に存在する])、C=Cの伸縮について予想される範囲におけるピーク(1581cm−1、1607cm−1)、C−Oの伸縮について予想される範囲におけるピーク(1026cm−1)、及び、CH=CHの変角について予想される範囲におけるピーク(924cm−1、998cm−1)が明らかにされ、ヒドロキシル基の吸光度の完全な非存在が付随し、従って、これにより、アリルエーテル基へのフェノール性ヒドロキシル基の完全な変換が確認された。
【0092】
(実施例4)
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロドデカンのビス(アリルエーテル)(25%wt.)及び1,1−ビス(4−シアナトフェニル)シクロドデカン(75%wt.)の熱誘導共重合
1,1−ビス(4−シアナトフェニル)シクロドデカン(0.5034グラム、75%wt.)と、参考例1から得られる1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロドデカンのビス(アリルエーテル)(0.1678グラム、25%wt.)とをガラス製バイアルに計り取り、これにジクロロメタン(1.5ミリリットル)を加えた。1,1−ビス(4−シアナトフェニル)シクロドデカンのHPLC分析により、99.44面積%のジシアナート及び0.56面積%のモノシアナートが明らかにされた。バイアルを振とうすることにより、溶液が得られ、この溶液をアルミニウムトレーに加えた。真空オーブンにおいて40℃で30分間行われた揮発物除去により、ジクロロメタンが除かれ、均一なブレンド物が得られた。ブレンド物の一部分(9.70ミリグラム及び10.00ミリグラム)のDSC分析を、35立方センチメートル/分で流れる窒素の流れのもとで25℃から400℃まで5℃/分の加熱速度を使用して行った。
【0093】
吸熱が、平均での99.0℃の開始(98.07℃及び99.96℃)、118.8℃の最小値(118.72℃及び118.93℃)、及び、126.5℃の終点(124.61℃及び128.40℃)とともに認められ、これには11.5ジュール/グラム(10.13ジュール/グラム及び12.76ジュール/グラム)のエンタルピーが伴った(括弧内に個々の値)。アリル基及びシアナート基の共重合(さらに、何らかのホモ重合)に起因すると考えられる発熱が、平均での172.2℃の開始(170.58℃及び173.90℃)、249.1℃の最大値(248.30℃及び249.80℃)、及び、292.9℃の終点(289.54℃及び296.18℃)とともに認められ、これには487.1ジュール/グラム(474.9ジュール/グラム及び499.2ジュール/グラム)のエンタルピーが伴った(括弧内に個々の値)。DSC分析から回収されたコポリマーは、透明な琥珀色の堅い固体であった。
【0094】
(実施例5)
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロドデカンのビス(アリルエーテル)(25%wt.)及びシクロドデカンビスフェノールのジシアナート(75%wt.)のコポリマーのガラス転移温度
実施例4から得られる残っているブレンド物の硬化を、下記の硬化スケジュールを使用してオーブンにおいて完了した:150℃で1時間、200℃で1時間、250℃で1時間。硬化生成物の一部分(28.2ミリグラム及び35.0ミリグラム)のDSC分析では、214.3℃の平均ガラス転移温度(212.85℃及び215.83℃)が得られた(括弧内に個々の値)。
【0095】
(実施例6)
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロドデカンのビス(アリルエーテル)(50%wt.)及び1,1−ビス(4−シアナトフェニル)シクロドデカン(50%wt.)の熱誘導共重合
1,1−ビス(4−シアナトフェニル)シクロドデカン(0.2978グラム、50%wt.)と、参考例1から得られる1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロドデカンのビス(アリルエーテル)(0.2978グラム、50%wt.)とをガラス製バイアルに計り取り、これにジクロロメタン(1.5ミリリットル)を加えた。1,1−ビス(4−シアナトフェニル)シクロドデカンのHPLC分析により、99.44面積%のジシアナート及び0.56面積%のモノシアナートが明らかにされた。バイアルを振とうすることにより、溶液が得られ、この溶液をアルミニウムトレーに加えた。真空オーブンにおいて40℃で30分間行われた揮発物除去により、ジクロロメタンが除かれ、均一なブレンド物が得られた。
【0096】
ブレンド物の一部分(9.70ミリグラム及び10.70ミリグラム)のDSC分析を、35立方センチメートル/分で流れる窒素の流れのもとで25℃から400℃まで5℃/分の加熱速度を使用して行った。吸熱が全く認められなかった。アリル基及びシアナート基の共重合(さらに、何らかのホモ重合)に起因すると考えられる発熱が、平均での173.7℃の開始(171.05℃及び176.27℃)、246.5℃の最大値(245.96℃及び247.01℃)、及び、282.0℃の終点(281.01℃及び282.91℃)とともに認められ、これには414.2ジュール/グラム(403.2ジュール/グラム及び425.1ジュール/グラム)のエンタルピーが伴った(括弧内に個々の値)。DSC分析から回収されたコポリマーは、透明な琥珀色の堅い固体であった。
【0097】
(実施例7)
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロドデカンのビス(アリルエーテル)(50%wt.)及び1,1−ビス(4−シアナトフェニル)シクロドデカン(50%wt.)のコポリマーのガラス転移温度
実施例6から得られる残っているブレンド物の硬化を、下記の硬化スケジュールを使用してオーブンにおいて行った:150℃で1時間、200℃で1時間、250℃で1時間。硬化生成物の一部分(33.8ミリグラム及び34.3ミリグラム)のDSC分析は、260℃を超える温度での残留発熱性(residual exothermicity)を与えた。再度の走査の後、144.57℃の平均ガラス転移温度(140.98℃及び148.15℃)(括弧内に個々の値)が測定された。残留発熱性が、330℃を超える温度で認められたので、3回目の走査を完了した。残留発熱性を何ら伴わない160.03℃の平均ガラス転移温度(159.52℃及び160.53℃)が認められた。
【0098】
(実施例8)
触媒を使用する1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロドデカンのビス(アリルエーテル)(25%wt.)及び1,1−ビス(4−シアナトフェニル)シクロドデカン(75%wt.)の共重合
1,1−ビス(4−シアナトフェニル)シクロドデカン(0.7709グラム、75%wt.)と、参考例1から得られる1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロドデカンのビス(アリルエーテル)(0.2570グラム、25%wt.)と、6%のナフテン酸コバルト(0.0051グラム、0.5%wt.)とをガラス製バイアルに計り取り、これにジクロロメタン(1.5ミリリットル)を加えた。1,1−ビス(4−シアナトフェニル)シクロドデカンのHPLC分析により、99.44面積%のジシアナート及び0.56面積%のモノシアナートが明らかにされた。バイアルを振とうすることにより、溶液が得られ、この溶液をアルミニウムトレーに加えた。真空オーブンにおいて40℃で30分間行われた揮発物除去により、ジクロロメタンが除かれ、均一なブレンド物が得られた。
【0099】
ブレンド物の一部分(10.1ミリグラム及び12.5ミリグラム)のDSC分析を、35立方センチメートル/分で流れる窒素の流れのもとで25℃から400℃まで5℃/分の加熱速度を使用して行った。吸熱が、平均での51.62℃の開始(41.67℃及び61.57℃)、85.29℃の最小値(79.93℃及び90.64℃)、及び、93.09℃の終点(90.48℃及び95.70℃)とともに認められ、これには16.22ジュール/グラム(8.65ジュール/グラム及び23.79ジュール/グラム)のエンタルピーが伴った(括弧内に個々の値)。アリル基及びシアナート基の共重合(さらに、何らかのホモ重合)に起因すると考えられる発熱が、平均での93.09℃の開始(90.48℃及び95.70℃)、合体した162.04℃及び238.36℃の最大値(161.28℃、162.79℃、236.93℃及び239.78℃)、並びに、283.38℃の終点(282.43℃及び284.33℃)とともに認められ、これには422.6ジュール/グラム(413.0ジュール/グラム及び432.1ジュール/グラム)のエンタルピーが伴った(括弧内に個々の値)。DSC分析から回収されたコポリマーは、透明な琥珀色の堅い固体であった。
【0100】
(実施例9)
触媒を使用して調製される1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロドデカンのビス(アリルエーテル)(25%wt.)及び1,1−ビス(4−シアナトフェニル)シクロドデカン(75%wt.)のコポリマーの熱重量分析(TGA)及び示差走査熱量測定(DSC)
1,1−ビス(4−シアナトフェニル)シクロドデカン(3.00グラム、75%wt.)と、参考例1から得られる1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロドデカンのビス(アリルエーテル)(1.00グラム、25%wt.)と、6%のナフテン酸コバルト(0.0040グラム、0.1%wt.)とをガラス製バイアルに計り取り、これにジクロロメタン(2.0ミリリットル)を加えた。シクロドデカンビスフェノールのジシアナートのHPLC分析により、99.44面積%のジシアナート及び0.56面積%のモノシアナートが明らかにされた。バイアルを振とうすることにより、溶液が得られ、この溶液を円形のアルミニウム皿に加えた。真空オーブンにおいて50℃で30分間行われた揮発物除去により、ジクロロメタンが除かれ、均一なブレンド物が得られた。硬化を、下記の硬化スケジュールを使用してオーブンにおいて行った:100℃で1時間、150℃で1時間、200℃で2時間、250℃で1時間。堅い、透明な琥珀色のディスクが、硬化及びアルミニウム皿からの取出しの後で回収された。
【0101】
硬化生成物の一部分(33.0ミリグラム及び34.3ミリグラム)のDSC分析を、35立方センチメートル/分で流れる窒素の流れのもとで25℃から400℃まで5℃/分の加熱速度を使用して行った。残留発熱性が、260℃を超える温度で認められ、181.83℃の平均ガラス転移温度(185.80℃及び177.85℃)(括弧内に個々の値)が測定された。硬化生成物の一部分(20.3110ミリグラム)のTGAを、動的な窒素雰囲気のもとで25℃から600℃まで10℃/分の加熱速度を使用して行った。400.42℃の開始温度及び446.57℃の終了温度を有する段階転移(step transition)が認められた。初期サンプル重量の99.00%、95.00%及び90.00%における温度がそれぞれ、243.23℃、373.76℃及び396.76℃であった。
【0102】
(実施例10)
触媒を使用して調製される1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロドデカンのビス(アリルエーテル)(25%wt.)及び1,1−ビス(4−シアナトフェニル)シクロドデカン(75%wt.)のコポリマーの防湿性
実施例9から得られる硬化させられたコポリマーディスクの残り部分を重量測定し、脱イオン水(40ミリリットル)とともに4オンスのガラス製ジャーに加え、密封し、その後、55℃で維持されるオーブンに入れた。ディスクを示された間隔で取り出し、水気がなくなるまで水を拭き取り、重量測定し、その後、試験を続けるために、密封されたジャーに戻した。初期重量からの重量における変化をそれぞれの時間間隔について計算し、これにより、表に示される下記の結果が得られた。
【表1】

【0103】
(参考例2)
ジメチルシクロヘキサンのテトラフェノールの合成及び特徴づけ
フェノール(598g、6.36モル)及びシクロヘキサンジカルボキサルデヒド(74.2g、0.53モル、1,3−異性体及び1,4−異性体の混合物;フェノール性基対アルデヒド基の比率=6:1、フェノール対シクロヘキサンジカルボキサルデヒドの当量比=3:1)を1Lの五口反応器において一緒にした。混合物を500rpmの機械式攪拌機による撹拌とともに50℃に加熱した。50℃及び大気圧において、p−トルエンスルホン酸(PTSA)(1.3959g(総量)、0.207重量%)を6回に分けて30分間にわたって加えた。温度がそれぞれのPTSA添加により数度上昇した。6回目のPTSA添加の後、温度コントローラーを70℃に設定し、真空を反応器に加えた。反応器の内容物が精留搭からあふれることを防止するために、反応器の圧力を徐々に下げて、水を反応液から除いた。還流が止まったとき、反応器を大気圧に戻し、水(48g)を加えた。
【0104】
水(79g)及びNaHCO(0.6212g)を加えて、PTSAを中和した。反応の内容物が室温に冷えたとき、全内容物を2Lの分液ロートに移した。メチルエチルケトン(MEK)を加え、内容物を水により数回洗浄して、PTSAの塩を除いた。溶媒及び過剰なフェノールを、ロータリーエバポレーターを使用して除き、熱いノボラックをアルミニウムホイルの上に注いだ。フェノールと、シクロヘキサンジカルボキサルデヒドとの反応は、主生成物として、下記の理想化された構造を有するテトラフェノール(ジメチルシクロヘキサンのテトラフェノール)をもたらした:
【化10】

【0105】
紫外分光光度法分析は118.64のヒドロキシル当量重量(HEW)をもたらした。高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)分析が、生成物に存在する24の(異性体)成分を分離するために調節された。
【0106】
本発明がその特定の形式に関してかなり詳しく記載されているが、他の形式が可能であり、また、示される形式の様々な変更、置換及び均等物が、本明細書を読んで理解したとき、及び、図面を検討したとき、当業者には明らかになる。同様にまた、本明細書中の形式の様々な特徴を、本発明のさらなる形式を提供するために様々な様式で組み合わせることができる。さらに、ある種の専門用語が、本発明を限定するためではなく、記述の明確化のために使用されている。従って、添付されている特許請求の範囲はどれも、本明細書中に含まれる好ましい形式の記述に限定されてはならず、本発明の真の精神及び範囲に含まれるようなすべてのそのような変更、置換及び均等物を包含するものとする。
【0107】
これまで本発明を詳しく記載してきたが、本発明の方法は、本発明の範囲又はそのいずれかの実施形態から逸脱することなく、幅広い同等な範囲の条件、配合及び他のパラメーターを用いて実施され得ることが当業者には理解される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の式(I):
【化2】

式中、
それぞれのmは独立して、0、1又は2である;
成分R及び成分Rは独立して、合計で約5個〜約24個の炭素原子を含む置換され得る脂肪族基を表し、かつ、R及びRは、それらが結合する炭素原子と一緒になって、置換され得る、及び/又は、不飽和たり得る、及び/又は、多環式の脂肪族たり得る、少なくとも約8個の環炭素原子を有する環構造を形成しても良い;及び
成分Rは独立して、ハロゲン、シアノ、ニトロ、置換され得るアルキル、置換され得るシクロアルキル、置換され得るアルコキシ、置換され得るアルケニル、置換され得るアルケニルオキシ、6個〜約10個の炭素原子を有する置換され得るアリール、7個〜約12個の炭素原子を有する置換され得るアラルキル、6個〜約10個の炭素原子を有する置換され得るアリールオキシ、及び、7個〜約12個の炭素原子を有する置換され得るアラルコキシを表す、ジシアナート化合物。
【請求項2】
下記の式(Ia):
【化3】

(式中、
m及びRは、請求項1において定義される通りである;及び
nは約7〜約24の値を有する;
かつ、上記の式(Ia)に含まれる非芳香族環式成分はどれも、1つ又はそれ以上の置換基を有し得る、及び/或いは、1つ又はそれ以上の二重結合を含み得る、及び/或いは、多環式であり得る)
である、請求項1に記載のジシアナート化合物。
【請求項3】
nが約9〜約16の値を有する、請求項2に記載のジシアナート化合物。
【請求項4】
nが、10、11又は12の値を有する、請求項2又は3に記載のジシアナート化合物。
【請求項5】
nが11に等しい、請求項2又は3に記載のジシアナート化合物。
【請求項6】
それぞれのmが独立して、0又は1である、請求項1から5のいずれか一項に記載のジシアナート化合物。
【請求項7】
1,1−ビス(4−シアナトフェニル)シクロドデカン、1,1−ビス(4−シアナト−3,5−ジメチルフェニル)シクロドデカン、1,1−ビス(4−シアナト−3−メチルフェニル)シクロドデカン、1,1−ビス(4−シアナトフェニル)シクロデカン、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)アダマンタノン、4,4’−ビス(4−シアナトフェニル)オクタヒドロ−1,4:5,8−ジメタノナフタレン−2(1H)イリデン及び5,5−ビス(4−シアナトフェニル)ヘキサヒドロ−4,7−メタノインダンから選ばれる、請求項1から6のいずれか一項に記載のジシアナート化合物。
【請求項8】
1,1−ビス(4−シアナトフェニル)シクロドデカンである、請求項1から7のいずれか一項に記載のジシアナート化合物。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載されるジシアナートのポリマー又はプレポリマー。
【請求項10】
請求項1から8のいずれか一項に記載される少なくとも1つのジシアナート化合物及び/又はそのプレポリマーと、重合触媒、共硬化剤、難燃剤、難燃剤のための相乗剤、溶媒、フィラー、ガラス繊維、接着促進剤、湿潤化助剤、分散化助剤、表面改質剤、熱可塑性ポリマー及び離型剤から選択される1つ又はそれ以上の物質とを含む、重合可能な混合物。
【請求項11】
(i)請求項1から8のいずれか一項に記載される少なくとも1つのジシアナート化合物及び/又はそのプレポリマーと、(ii)(i)と反応することができる少なくとも1つの化合物及び/又はそのプレポリマーとを少なくとも含む、重合可能な混合物。
【請求項12】
前記少なくとも1つの化合物(ii)が、1つ又はそれ以上の重合可能なエチレン性不飽和成分を含む化合物、式(I)のジシアナート化合物とは異なる芳香族ジシアナート及び芳香族ポリシアナート、芳香族ジシアナミド及び芳香族ポリシアナミド、ジマレイミド及びポリマレイミド、並びに、ジグリシジルエーテル及びポリグリシジルエーテルから選択される、請求項11に記載の混合物。
【請求項13】
重合触媒、共硬化剤、難燃剤、難燃剤のための相乗剤、溶媒、フィラー、ガラス繊維、接着促進剤、湿潤化助剤、分散化助剤、表面改質剤、熱可塑性ポリマー及び離型剤から選択される1つ又はそれ以上の物質をさらに含む、請求項11又は12に記載の混合物。
【請求項14】
部分的又は完全に重合させられる、請求項10から13のいずれか一項に記載の混合物。
【請求項15】
請求項10から14のいずれか一項に記載される重合させられた混合物を含む製造物。
【請求項16】
電気用積層物、IC基板、注型物、被覆物、ダイアタッチ及びモールドコンパウンドのための配合物、複合材、並びに、接着剤の少なくとも1つである、請求項15に記載の製造物。
【請求項17】
請求項1から8のいずれか一項に記載されるジシアナート化合物を調製するためのプロセスであって、下記の式(II)の化合物:
【化4】

(式中、m、R、R及びRは、請求項1、2及び6のいずれか一項に示される通りである)
を、溶媒中で、少なくともほぼ化学量論的量の塩基の存在下において少なくともほぼ化学量論的量のハロゲン化シアンと反応させることを含む、プロセス。
【請求項18】
前記ハロゲン化シアンが塩化シアン及び臭化シアンの少なくとも1つを含む、請求項17に記載のプロセス。
【請求項19】
前記反応が約−40℃〜約60℃の温度で行われる、請求項17又は18に記載のプロセス。
【請求項20】
前記塩基が、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、トリメチルアミン及びトリエチルアミンの1つ又はそれ以上を含む、請求項17から19のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項21】
前記塩基がトリエチルアミンを含む、請求項17から20のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項22】
前記溶媒が、水、脂肪族ケトン、塩素化炭化水素、脂肪族若しくは脂環族のエーテル若しくはジエーテル、及び、芳香族炭化水素の1つ又はそれ以上を含む、請求項17から21のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項23】
前記溶媒が、アセトン、メチルエチルケトン、メチレンクロリド及びクロロホルムの1つ又はそれ以上を含む、請求項17から22のいずれか一項に記載のプロセス。

【公表番号】特表2011−517441(P2011−517441A)
【公表日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−550797(P2010−550797)
【出願日】平成21年3月9日(2009.3.9)
【国際出願番号】PCT/US2009/036517
【国際公開番号】WO2009/114465
【国際公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ リミティド ライアビリティ カンパニー (1,383)
【Fターム(参考)】