説明

脂肪酸の製造方法

飽和脂肪酸、モノ不飽和脂肪酸、及びポリ不飽和脂肪酸を含む第一の脂肪酸混合物をエタノールの存在下で処理して、(i)固体画分、及び(ii)飽和脂肪酸及びモノ不飽和脂肪酸の総量に対するポリ不飽和脂肪酸の総量のモル比が第一の脂肪酸混合物よりも高い、第二の脂肪酸混合物を含む液体画分を形成する工程、前記固体画分と前記液体画分とを分離する工程、並びに前記第二の脂肪酸混合物又はその誘導体若しくは反応生成物に溶媒の存在下で塩基を使用する処理を施して、少なくとも幾つかのポリ不飽和脂肪酸の共役異性体を形成する工程を含む、ポリ不飽和脂肪酸の共役異性体を含む物質の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脂肪酸、特にポリ不飽和脂肪酸の共役異性体を含む物質の製造方法、前記方法によって得られる生産物、並びに前記生産物を含む食品、栄養補助食品、又は医薬品に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリ不飽和脂肪酸の共役異性体は、健康上の利益を供することが知られており、食品において使用されている。典型的には、これらの生産物はリノール酸異性体を含み、シス 9, トランス11及びトランス10, シス12異性体が一般的に1:1の質量比でこれらの物質において最も多量に存在する異性体である。
【0003】
共役ポリ不飽和脂肪酸は、隣接した炭素-炭素二重結合(例えば、1つ以上の-CH=CH-CH=CH-結合)を含有する化合物である。共役ポリ不飽和脂肪酸は、対応する非共役脂肪酸から製造され得る。例えば、EP-A-0902082は、共役ポリ不飽和脂肪酸、例えば共役リノール酸(CLA)の製造方法を開示している。前記方法は、少なくとも3つの炭素原子及び少なくとも2つのヒドロキシル基を有するアルコールである溶媒中、で塩基を使用する処理を非共役ポリ不飽和脂肪酸に与える工程を含む。
【0004】
ポリ不飽和脂肪酸の典型的な原料、例えばベニバナ油は、約80重量%のリノール酸、12重量%のオレイン酸、及び約8重量%の飽和脂肪酸を通常含有する。分画及び蒸留を使用して、飽和脂肪酸のみが除去されて良く、この事は、リノール酸含有量が90重量%を超えっれないことを意味する。従って、例えば上述のような、後に続く共役工程において生産され得る共役リノール酸の量も、最大で90重量%に制限される。
【特許文献1】EP-A-0902082
【特許文献2】US 6395778
【特許文献3】EP-A-1211304
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、共役ポリ不飽和脂肪酸を多く含有する物質が必要とされている。
【0006】
US 6395778は、非共役ポリ不飽和脂肪酸エステルを含む濃縮混合物の製造方法を開示している。前記方法は、脂肪酸エステルを形成する油のエステル交換反応の第一の工程、前記脂肪酸エステル混合物に尿素を添加する工程、並びに結果として得られた混合物を冷却又は濃縮する工程を含む。沈殿物は尿素及び飽和脂肪酸エステルを含み、且つ液体画分はいっそう多くのポリ不飽和脂肪酸エステルを含有する。開示されている特定の脂肪酸エステルは非共役であり、且つ少なくとも5つの炭素-炭素二重結合を含有する。前記方法が遊離の脂肪酸を使用して実施し得ることは示唆されていない。
【0007】
EP-A-1211304は、溶媒であるメタノール中で尿素を使用する選択的結晶化によって、非共役不飽和脂肪酸を単離する方法を開示している。
【0008】
US 6395778又はEP-A-1211304には、後に続く脂肪酸の共役についての記載が無い。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、驚くべきほどの高い収率で共役ポリ不飽和脂肪酸を製造する方法を発見した。更に、2つの炭素-炭素二重結合を含有するポリ不飽和脂肪酸に対して実施する際に、前記方法は、シス、トランス異性体に対して、より少ない脂肪酸のトランス、トランス異性体を生じさせる。前記方法の有効性は、前記方法において使用される溶媒に高度に依存することが予期せずに見出された。
【0010】
従って、本発明は、
飽和脂肪酸、モノ不飽和脂肪酸、及び非共役ポリ不飽和脂肪酸を含む第一の脂肪酸混合物をエタノールの存在下で処理して、(i)固体画分、及び(ii)飽和脂肪酸及びモノ不飽和脂肪酸の総量に対するポリ不飽和脂肪酸の総量のモル比が第一の脂肪酸混合物よりも高い、第二の脂肪酸混合物を含む液体画分を形成する工程、
前記固体画分と前記液体画分とを分離する工程、並びに
前記第二の脂肪酸混合物又はその誘導体若しくは反応生成物に溶媒の存在下で塩基を使用する処理を施して、少なくとも幾つかのポリ不飽和脂肪酸の共役異性体を形成する工程
を含む、共役ポリ不飽和脂肪酸を含む物質の製造方法を提供する。
【0011】
本発明の方法は、物質中の脂肪酸の総量に対して、共役ポリ不飽和脂肪酸を比較的多量に含有する物質の生産を可能にする。好ましくは、前記物質は、脂肪酸の総量に対して少なくとも90重量%、より好ましくは少なくとも91重量%、更により好ましくは少なくとも92重量%、最も好ましくは少なくとも93重量%、例えば少なくとも94重量%、あるいは少なくとも95重量%の共役ポリ不飽和脂肪酸を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本明細書で使用する用語である脂肪酸、ポリ不飽和脂肪酸、及びその関連用語は、12から24の炭素原子、好ましくは14から18の炭素原子を含有する直鎖カルボン酸を示す。飽和脂肪酸は、そのアルキル鎖に炭素-炭素二重結合を含有せず、例えば、ミリスチン酸(C14:0と示される)、パルミチン酸(C16:0)、及びステアリン酸(C18:0)である。モノ不飽和脂肪酸は、そのアルキル鎖に1つの炭素-炭素二重結合を含有し、例えば、オレイン酸(C18:1)及びエライジン酸(C18:1)である。ポリ不飽和脂肪酸は、そのアルキル鎖に2つ以上の(好ましくは2つの)炭素-炭素二重結合を含有し、例えば、リノール酸(C18:2)及びリノレン酸(C18:3)である。
【0013】
本発明の方法は、前記飽和脂肪酸、前記モノ不飽和脂肪酸、及び前記ポリ不飽和脂肪酸が18の炭素を含有する際に、特に有効であることを見出した。その様な脂肪酸から製造される共役ポリ不飽和脂肪酸は、好ましくは共役リノール酸(CLA)である。CLAは、2つの炭素-炭素二重結合の幾何に依存して、シス9, トランス11; トランス10, シス12; シス9, シス11; シス 10, シス 12; トランス9, トランス11; 及び トランス10, トランス12を含む多数の異性型が存在している。シス 9, トランス11及びトランス10, シス12が通常最も多量に存在する。本発明の方法は、前記異性体のいずれか1つ又は全てを製造するために使用することが可能であり、シス9, トランス11及びトランス10, シス12異性体が主要なCLA異性体である、異性体の混合物の形成を一般的に生じるであろう。
【0014】
本発明の方法は、飽和脂肪酸、モノ不飽和脂肪酸、及びポリ不飽和脂肪酸を含む第一の脂肪酸混合物をエタノールの存在下で処理して、(i)固体画分及び(ii)第二の脂肪酸混合物を含む液体画分を形成する工程を含む。前記処理は、飽和脂肪酸及びモノ不飽和脂肪酸の総量に対するポリ不飽和脂肪酸の総量のモル比が第一の脂肪酸混合物よりも高い液体画分を生じさせる。好ましくは、当該処理は、前記固体画分が典型的に少なくとも一部の飽和脂肪酸及び/又はモノ不飽和脂肪酸と共に尿素を含むように、尿素を使用する処理を含む。そのため、前記処理は、出発物質である第一の脂肪酸混合物と比較して、ポリ不飽和脂肪酸が豊富な混合物を生じさせる。驚くべきことに、前記方法のこの段階において、EP-A-1211304に開示されたメタノールに代えてエタノールを使用したことが、本発明の後に続く共役工程の後の共役異性体の高い収率、並びに前記ポリ不飽和脂肪酸が2つの炭素-炭素二重結合を有する際には、シス, トランス異性体が必要とされる場合に有益であり得るトランス, トランス異性体の低減を生じさせることを見出した。
【0015】
前記処理工程では、尿素及び第一の脂肪酸混合物は、典型的に液体形態で混合される。好ましくは、尿素のエタノール溶液を第一の脂肪酸混合物に添加することによってか、又はその逆によって、尿素のエタノール溶液を第一の脂肪酸混合物と混合する。前記工程は約10℃から80℃の温度で通常実施され、任意に、続いて必要な場合に温度を80℃まで増大させる加熱工程を実施する。次いで好ましくは、前記反応混合物を前記混合物から尿素が結晶化する温度、例えば0℃から30℃の温度まで冷却する。一部の飽和脂肪酸及び/又は不飽和脂肪酸を含有する尿素結晶が、例えば濾過又は遠心分離によって、混合物から分離される。結果として得られる液体は、ポリ不飽和脂肪酸を豊富に含む第二の脂肪酸混合物を含む。
【0016】
前記処理の好ましい実施態様において使用される尿素の量は、好ましくは、少なくとも1:5の尿素:エタノールの重量比、好ましくは少なくとも1:4、及びより好ましくは1:4から1:2の範囲の重量比を与えるのに十分なものである。第一の脂肪酸混合物に対する尿素の量は、好ましくは、少なくとも2:1の尿素:第一の脂肪酸混合物の重量比、好ましくは少なくとも3:1、及びより好ましくは3:1から5:1の範囲の重量比を与えるのに十分なものである。
【0017】
前記処理のための溶媒はエタノールを含む。前記エタノールは、上限20重量%の1つ以上の他の溶媒、例えば水及び/又はメタノールを含有して良い。そのため、第一の脂肪酸混合物は、典型的には、少なくとも80重量%のエタノールを含む溶媒の存在下で処理される。好ましくは、経済的な理由のために、前記エタノールは、2重量%から10重量%の水を含有する。
【0018】
第一の脂肪酸混合物の処理後に得られる第二の脂肪酸混合物は、任意に更に別の工程に(前記共役工程において塩基で処理する前に)かけて、その誘導体又は反応生成物を形成する。例えば、前記更に別の工程は、精製、液体からの溶媒の除去、脂肪酸のC1からC6のアルキルエステルを形成するためのエステル化、並びにこれらの工程の組み合わせを含んで良い。一般的に、任意の誘導又は反応は、混合物中の脂肪酸、又は誘導又は反応後では脂肪酸残基の分布を有意に変化させる効果を有するべきでは無い。混合物中の他の脂肪酸に対してポリ不飽和脂肪酸の量を低減することは特に望ましくない。
【0019】
第一の脂肪酸混合物は、当該技術分野で既知の方法によって得られて良い。第一の脂肪酸混合物は、典型的には、動物又は植物起源のものに由来する。第一の脂肪酸混合物は、好ましくは、脂肪酸の総量に対して50重量%から85重量%の18の炭素原子を有するポリ不飽和脂肪酸を含む油から得られる。適切な植物油は、ベニバナ油、ヒマワリ油、菜種油、綿実油、大豆油、及び亜麻仁油を含む。
【0020】
第一の脂肪酸混合物は、好ましくは、例えば水酸化ナトリウムのような塩基を使用する、油の加水分解を含む方法によって得られる。前記方法は、エタノールのような溶媒の存在下で実施されて良く、典型的には、続いて遊離の脂肪酸を形成するために酸性化を実施する。前記遊離の脂肪酸は、抽出及び任意に精製されて良い。
【0021】
本発明の方法では、第二の脂肪酸混合物又はその誘導体若しくは反応生成物を、溶媒の存在下において塩基で処理して、少なくとも幾つかのポリ不飽和脂肪酸の共役異性体を形成する。第二の脂肪酸混合物は、好ましくは遊離の脂肪酸を含む。その内容を参照によって本願明細書に組み込むEP-A-0902082の教示に従って当該処理を実施して良い。
【0022】
本発明の方法の当該工程で使用される溶媒は、好ましくは、少なくとも3つの炭素原子および少なくとも2つのヒドロキシル基を有するアルコールである。
【0023】
非常に適切な溶媒は、1,3-ジヒドロキシプロパン又は1,2-ジヒドロキシプロパン(すなわち、プロピレングリコール)である。これらの溶媒は、微量に生産物に残ったものが有害ではないような食品等級(foodgrade)のものである。前記反応は、好ましくは、グリセロールの非存在下で実施される。
【0024】
前記共役工程で使用する塩基は任意の塩基であって良いが、最も良好な結果は、NaOH又はKOHを塩基として使用して得られる。前記塩基の適切な濃度は、溶媒1リットルあたり0.25モル(mol/l)より大きく、好ましくは0.25から3.5、最も好ましくは1.25から2.75 mol/lである。より高濃度の塩基の使用が、多数の異性体(特にC18:2 トランス/トランス-異性体)が存在する生産物の形成を生じさせる。
【0025】
前記生産物は、酸性のpH(好ましくはpH1から3)が達成されるまで形成されたセッケンに希釈した酸を添加することによって、粗反応混合物から適切に単離される。油が水から分離されたら、水で洗浄してpH6から8にし、乾燥させる。前記酸の添加は、塩基のカチオン(例えばナトリウムイオン又はカリウムイオン)と酸のアニオン(例えばクロリド又はスルフェート)とを含む無機塩の形成を生じさせる。かくして、形成された塩は、例えば、ナトリウムスルフェートであって良い。前記塩の存在が、後に続く前記生産物の抽出を妨害し得ることが認められた。そのため、本発明の方法が、酸性化工程の後に、前記塩基及び酸から形成された塩の少なくとも一部を除去する工程を含むことが好ましい。前記塩が反応混合物中で結晶化又は沈殿した際に、固体形態の塩を分離することによって、前記塩が反応混合物から除去されて良い。好ましくは除去される塩の量は、反応混合物を冷却して塩の結晶化又は沈殿を増大する事によって増加される。典型的には、前記塩は、非水性相からの水性相の分離によって水性相を使用して除去されて良く、続いて非水性相の冷却及びかくして沈殿又は結晶化した塩の除去(例えば濾過によって)を実施する。
【0026】
かくして、本発明は、好ましくは、塩基を使用する処理後に、第二の脂肪酸混合物を酸性化する工程を含む。酸性化された生産物が任意に精製される。少なくとも一部の酸性化で形成された塩が除去されて、結果として得られる混合物がその後に精製されることも好ましい。用語「精製された」は、混合物中のポリ不飽和異性体の共役異性体の含有量における幾らかの増大を示し、100%の純度を意味しない。精製は、任意の残存する水性相の除去、任意に水で洗浄して乾燥し、続いて蒸留のような更に別の処理工程を実施して為されて良い。
【0027】
本発明において製造される共役ポリ不飽和脂肪酸は、ポリ不飽和脂肪酸の共役異性体のモノ、ジ、又はトリグリセリドの形成のような更に別の工程にかけて良い。この工程は、当該技術分野でよく知られたエステル化技術を使用して実施されて良い。
【0028】
本発明の生産物は、共役ポリ不飽和脂肪酸の1つ以上の異性体(例えば、幾何異性体)の量を他の異性体と比べて濃縮する方法のための、出発物質として使用されて良い。適切な方法は、WO 97/18320に記載されている。そのため、本発明は、出発物質として本発明の生産物を使用して、共役ポリ不飽和脂肪酸の1つ以上の異性体を濃縮するための方法を意図する。
【0029】
他の態様では、本発明は、尿素を使用する結晶化によって、飽和脂肪酸及びモノ不飽和脂肪酸と共にポリ不飽和脂肪酸を含有する混合物から、ポリ不飽和脂肪酸を分離するための溶媒であるエタノールの使用を提供する。前記エステル化処理は、その内容が参照によって本願明細書に組み込まれるWO 97/18320に記載のような、1つ以上の異性体の濃縮を生じさせて良い。
【0030】
他の態様では、本発明は、本発明の方法によって得られる生産物を提供する。以前は、脂肪酸の総量に対して90重量%より多くの量でポリ不飽和脂肪酸の共役異性体が存在し、飽和脂肪酸、モノ不飽和脂肪酸、及びポリ不飽和脂肪酸の共役異性体を含有する脂肪酸混合物を製造することは不可能であった。
【0031】
好ましくは、本発明の生産物は、少なくとも90重量%(より好ましくは少なくとも92重量%、例えば、少なくとも93重量%、又は少なくとも94重量%、更により好ましくは少なくとも95重量%)の共役リノール酸、少なくとも43重量%の共役リノール酸のシス-9, トランス-11異性体及び少なくとも43重量%の共役リノール酸のトランス-10, シス-12異性体、あるいは同量のこれらの酸のモノ、ジ、及びトリグリセリドを含み、シス-9, トランス-11異性体:トランス-10, シス-12異性体の重量比が1.1:1から1:1.1(より好ましくは1.05:1から1:1.05)の範囲である。
【0032】
全ての割合は、脂肪酸の全量に対する重量によるものである。これらの生産物は、1.5重量%未満(より好ましくは1.0重量%未満、例えば0.7重量%未満)の共役リノール酸のトランス, トランス異性体又はそのグリセリドを含んで良い。前記生産物は、上限0.2重量%の飽和脂肪酸及び/又は上限7.5重量%のモノ不飽和脂肪酸、又はいずれかの脂肪酸のグリセリドを含んで良い。
【0033】
本発明は、本発明の生産物を含む、食品、栄養補助食品、又は医薬品も提供する。
【0034】
本発明の生産物は、任意に、補足的な脂肪(complimentary fat)との混合物として使用する。
【0035】
前記混合物は、0.3から95重量%、好ましくは2から80重量%、最も好ましくは5から40重量%の本発明の生産物と、99.7%から5重量%、好ましくは98から20重量%、最も好ましくは95から60重量%の、ココアバター、ココアバターの等価物、パーム油若しくはその画分、パームナッツ油若しくはその画分、前記脂肪又はその画分のエステル交換した混合物から選択される補足的な脂肪、又はヒマワリ油、高オレインヒマワリ油、大豆油、菜種油、綿実油、魚油、ベニバナ油、高オレインベニバナ油、トウモロコシ油、及びMCT油から選択される液体油を含んで良い。
【0036】
本発明の食品(動物用飼料を含む)は、本発明の生産物を含む脂肪相を含有して良い。前記食品は、スプレッド、マーガリン、クリーム、ドレッシング、マヨネーズ、アイスクリーム、ベーカリー製品、乳児食、チョコレート、菓子類、ソース、コーティング、チーズ、及びスープからなる群から適切に選択される。
【0037】
本発明の栄養補助食品又は医薬品は、腸内又は非経口の適用に適切なカプセル又は他の形態であり、本発明の生産物を含んで良い。
【0038】
適切な食品の例は、マーガリン、脂肪連続スプレッド若しくは水連続スプレッド若しくは両連続スプレッド、低脂肪スプレッド、菓子類製品、例えばチョコレート若しくはチョコレートコーティング若しくはチョコレートフィリング若しくはベーカリーフィリング、アイスクリーム、アイスクリームコーティング、アイスクリーム含有物、ドレッシング、マヨネーズ、チーズ、クリーム代替物、乾燥スープ、飲料、シリアルバー、ソース、スナックバー、乳製品、臨床栄養製品、及び特殊調製粉乳からなる群から選択されるものを含む。
【0039】
医薬品は、製薬組成物、例えばタブレット、丸剤、カプセル、カプレット、顆粒、ビーズ、ペレット、及びマイクロカプセル粒子を含む多粒子、粉末剤、エリクシル、シロップ、分散剤、及び液剤を含む。製薬組成物は、製薬学的に許容される希釈剤又は担体を含むであろう。製薬組成物は、好ましくは、非経口投与(例えば経口投与)に適合する。経口投与可能な組成物は固体又は液体の形態であって良く、タブレット、粉末剤、懸濁剤、及びシロップの形態であって良い。任意に、前記組成物は、1つ以上の香味剤及び/又は着色剤を含む。
【0040】
その様な組成物における使用に適切な製薬学的に許容される担体は、製薬業においてよく知られている。本発明の組成物は、0.1から99重量%の共役脂肪酸を含有して良い。前記組成物は、単位投与形態で通常生産される。好ましくは、単位用量の共役脂肪酸は、1mgから1000mg(より好ましくは100mgから750mg)である。これらの組成物の製造において使用される賦形剤は、当該技術分野で既知の賦形剤である。
【0041】
栄養補助食品の例は、ゼラチン、デンプン、変性デンプン、デンプン誘導体、例えば、グルコース、スクロース、ラクトース、及びフルクトースからなる群から選択されるカプセル化物質を含む、ソフトゲル又はハードカプセルの形態の製品を含む。前記カプセル化物質は、架橋又は重合剤、安定剤、抗酸化剤、光にセンシティブな充填物を保護するための光吸収剤、及び保存剤などを任意に含有して良い。好ましくは、栄養補助食品における単位用量の共役脂肪酸は、1mgから1000mg(より好ましくは、100mgから750mg)である。
【0042】
以下の非制限的な実施例は、本発明を説明するものである。実施例において、及び本明細書を通じて、全ての割合は、他に示されない限り重量%である。
【実施例】
【0043】
(実施例1)
27.3gのNaOHを200mlの95% エタノールに溶解した。100gのベニバナ油を添加して、その溶液を2時間還流した。結果として得られた混合物を硫酸で分解(split)し、次いで900mlのヘキサンで3回抽出して、ヘキサン層を合わせて、蒸留水で約pH7まで洗浄し、次いでロータリーエバポレーターを使用して有機相を蒸発させた。270gの尿素を1500mlの95%エタノールに30℃で溶解して、脂肪酸を添加し、次いでその混合物を60℃で1時間加熱して、20℃まで3時間冷却した。その物質を濾過して、尿素結晶を除去し、次いでその濾過液を蒸発させた。16.8g KOHをフラスコ中の55mlのプロピレングリコールに溶解し、次いで蒸発後に濾過液から得られた50gの脂肪酸混合物(90%より多くのリノール酸を含有する)を添加した。前記フラスコに150度で15時間、窒素を勢い良く流した。共役後に、その反応混合物を熱した10%硫酸溶液に入れて、その下層を廃棄し、上層を熱した水でpH7まで洗浄して、最後に窒素で乾燥させた。共役リノール酸は、GC、HPLCで分析した。結果を表1に提示する。
【0044】
(実施例2)
尿素との反応を95%エタノールの代わりにメタノールを使用して実施した以外は同一の条件を正確に使用して、実施例1の手順を繰り返した。反応後に、共役リノール酸を分析した。結果を表1に示す。
【0045】
【表1】

【0046】
前記表は、メタノールの変わりにエタノールを使用する本発明の利点を示す。すなわち、より多くの全CLA及び主要なCLAの変異体が存在し、より少ないトランス,トランス変異体が存在する。
【0047】
(実施例3)
WO 97/18320に記載の方法を使用して、実施例1のトリグリセリドを含有するスプレッドを以下のように配合して良い。
【0048】
【表2】

【0049】
(実施例4)
WO 97/18320に記載の方法を使用して、実施例1の生産物のグリセリドを含有するドレッシングを以下のように配合して良い。
【0050】
【表3】

【0051】
(実施例5)
本実施例は、パイロットプラント規模における濃縮ベニバナ油の共役に関する。
【0052】
60kgの水酸化カリウム(50(重量)%溶液、KOH)を115kgのプロピレングリコールと混合した。この混合物を70度に加熱し、一方で前記混合物に窒素を通気させた。この後に、窒素の通気を止めて、本発明に従って尿素を使用して調製した95kgの濃縮ベニバナ脂肪酸を、前記アルカリプロピレングリコールに添加した。
【0053】
次いで温度を110℃まで増大させて、その混合物をこの温度で2時間攪拌した。この後に、温度を135度まで増大させて、C18:2c含有量が1%未満になるまで、前記混合物をこの温度で攪拌した。これを、一定時間ごとにサンプルを取って、GCによってFAME組成を分析することによってモニターした。全体で、3バッチ実施し、平均の総反応時間は82時間であった。
【0054】
各バッチからのセッケンを濃硫酸で分解した。共役反応後に、その混合物を70℃まで冷却して、250Lの脱塩水で希釈した。この後に、30kgの濃硫酸を添加して、セッケンを分解した。
【0055】
得られた混合物を静置して、下層を廃棄した。
【0056】
3つのバッチからの油相を合わせて、熱した脱塩水を使用して80℃で洗浄した。一回目の洗浄後に、エマルション層が形成されたため、添加した水の一部のみを廃棄することができた。二回目の洗浄の間に、前記エマルションは残存しており、添加した水の一部を廃棄した後に、前記油を真空乾燥した。
【0057】
乾燥した油を短経路蒸留で蒸留した。収量は170kgであった。エマルションのために、生産物の収率の損失があった(約40%)。
【0058】
前記生産物のFAME分析を以下の表2に挙げる。
【0059】
【表4】

【0060】
(実施例6)
攪拌槽型反応器において窒素ブランケット下で、7700kgの濃縮ベニバナ油を9780kgのプロピレングリコールに添加した。これに対し、5120kgの水酸化カリウム(50重量%溶液、KOH)を添加して、窒素下で110℃まで加熱した。水を除去した後に、温度を139℃まで増大させて、FAME分析におけるC18:2シス含有量が1%未満になるまで、この温度で攪拌した。総反応時間は42時間であった。
【0061】
共役後に、その混合物を100℃まで冷却し、次いで25tの脱塩水で希釈して、次いで55℃まで冷却した。希釈したセッケンを3090kgの濃硫酸(98重量%)で分解した。その脂肪酸混合物を静置して、下側の水層を廃棄した。分解中に形成された硫酸カリウム結晶を、下層の廃棄の間に水相を使用して完全に除去した。残部の脂肪相は55℃まで冷却して、全ての残存する硫酸カリウムを結晶化させた。これも除去して、以下の工程におけるエマルションの形成を防止した。
【0062】
前記脂肪酸相を95℃まで加熱して、各々10t及び5tの熱した脱塩水(95℃)を使用する2つの工程で洗浄した。前記洗浄工程においてエマルションは認められなかった。洗浄後に、前記油を蒸留のために乾燥させた。
【0063】
洗浄した脂肪酸を短経路蒸留によって蒸留して、6200kgの生産物を得た。収率損失は20%に低減した。
【0064】
前記生産物のFAME分析を、以下の表3に示す。
【0065】
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
飽和脂肪酸、モノ不飽和脂肪酸、及びポリ不飽和脂肪酸を含む第一の脂肪酸混合物をエタノールの存在下で処理して、(i)固体画分、及び(ii)飽和脂肪酸及びモノ不飽和脂肪酸の総量に対するポリ不飽和脂肪酸の総量のモル比が前記第一の脂肪酸混合物よりも高い、第二の脂肪酸混合物を含む液体画分を形成する工程、
前記固体画分と前記液体画分とを分離する工程、並びに
前記第二の脂肪酸混合物又はその誘導体若しくは反応生成物に、溶媒の存在下において塩基を使用する処理を施して、少なくとも幾つかのポリ不飽和脂肪酸の共役異性体を形成する工程
を含む、ポリ不飽和脂肪酸の共役異性体を含む物質を製造するための方法。
【請求項2】
前記物質が、少なくとも90重量%のポリ不飽和脂肪酸の共役異性体を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ポリ不飽和脂肪酸が、12から24の炭素原子を含有する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記飽和脂肪酸、前記モノ不飽和脂肪酸、及び前記ポリ不飽和脂肪酸が、18の炭素原子を含有する、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記共役異性体がリノール酸の共役異性体である、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記第一の脂肪酸画分が尿素で処理されて、前記固体画分が尿素を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記第一の脂肪酸混合物を、少なくとも80重量%のエタノールを含む溶媒の存在下で処理する、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記第二の脂肪酸混合物を、前記塩基を使用する処理の前に更に別の処理工程にかけて、その誘導体又は反応生成物を形成する、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記更に別の処理工程が、精製、溶媒の除去、脂肪酸のC1からC6アルキルエステルを形成するエステル化、及びそれらの組み合わせから選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項10】
前記第一の脂肪酸混合物が、脂肪酸の総量に対して50重量%から85重量%の18の炭素原子を含有する脂肪酸を含む油から得られる、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記第一の脂肪酸混合物が、溶媒であるエタノールの存在下において塩基を使用する植物油の加水分解を含む方法によって得られる、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記植物油が、ベニバナ油、ヒマワリ油、菜種油、綿実油、大豆油、及び亜麻仁油からなる群から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記溶媒が、3つの炭素原子及び少なくとも2つのヒドロキシル基を有するアルコールを含む、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記溶媒がプロピレングリコールである、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
塩基を使用する処理後に、前記第二の脂肪酸混合物を酸性化する工程を含む、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
酸性化によって形成される塩の少なくとも一部を除去し、続いて、結果として得られる混合物を精製する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
ポリ不飽和脂肪酸の共役異性体のモノ、ジ、又はトリグリセリドを形成する工程を更に含む、請求項1から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
飽和脂肪酸及びモノ不飽和脂肪酸と共にポリ不飽和脂肪酸を含有する混合物から、尿素を使用する結晶化によってポリ不飽和脂肪酸を分離するための溶媒としての、エタノールの使用。
【請求項19】
請求項1から17のいずれか一項に記載の方法によって得られる生産物。
【請求項20】
少なくとも90重量%の共役リノール酸、少なくとも43重量%の共役リノール酸のシス-9,トランス-11異性体及び少なくとも43重量%の共役リノール酸のトランス-10,シス-12異性体、又はそれらのモノ、ジ、若しくはトリグリセリドを含み、前記シス-9,トランス-11異性体:前記トランス-10,シス-12異性体の重量比が1.1:1から1:1.1の範囲である、請求項19に記載の生産物。
【請求項21】
1.5重量%未満の共役リノール酸のトランス,トランス異性体を含む、請求項20に記載の生産物。
【請求項22】
請求項19から21のいずれか一項に記載の生産物を含む、食品、栄養補助食品、又は医薬品。

【公表番号】特表2008−528778(P2008−528778A)
【公表日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−553554(P2007−553554)
【出願日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際出願番号】PCT/EP2006/001020
【国際公開番号】WO2006/082093
【国際公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【出願人】(503352660)ローダース・クロクラーン・ベスローテンフェンノートシャップ (10)
【住所又は居所原語表記】Hogeweg 1, NL−1521 AZ Wormerveer, Netherlands
【出願人】(507263726)アンキン・ゾンチュアン・バイオテクノロジー・カンパニー・リミテッド (1)
【Fターム(参考)】