説明

脂肪酸アルキルエステルの製法

脂肪酸アルキルエステルを調製する方法が本明細書には記載されている。本方法は、触媒の存在下で脂肪酸グリセリドをアルコールと接触させるステップと、反応生成物を触媒から分離するステップと、脂肪酸アルキルエステルを反応生成物から分離するステップとを包含する。触媒は、周期表のVIB族からの金属、周期表のIIIA族からの金属および周期表のVA族からの元素を包含する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エステルの製法に関する。より詳細には、本発明は、脂肪酸アルキルエステルの製法に関する。
【背景技術】
【0002】
バイオディーゼルは典型的には、トリグリセリドを低級アルコール(例えば、メタノールおよび/またはエタノール)でエステル交換することにより植物油または動物脂肪酸から製造された長鎖脂肪酸アルキルエステルを包含する。バイオ潤滑剤は、トリグリセリドをC5からC12アルコールでエステル交換することを介して調製し得る。近年、多くの配合物において、植物ベース材料を石油ベース材料の代替品として使用する傾向が高まっている。このことが、環境保護および温室ガス効果に関心がある研究者を、バイオベース材料の開発に駆り立てている。大豆、ひまわりおよびナタネなどの植物性産物に由来するこれらの新たなバイオベース材料は、再生可能であり、生分解性であり、環境有害性が低く、取り扱いが安全である。同様に、トリグリセリドの他の再生可能な供給源には、市場の食品製造に由来する溶けた動物脂肪および調理用オイルの廃油が包含される。溶けた動物脂肪および調理用オイルの廃油は、硫黄不含であることがあり、自動車用途、機械エンジン用途、化粧品用途および石けんで使用される。
【0003】
植物油の熱量は、化石燃料(例えばディーゼル燃料)の熱量と同等であるが、ディーゼルエンジンで植物油を直接使用することは、そのいくつかの物理的特性により限られる。例えば、植物油の粘度は、ディーゼル燃料の粘度の約10倍である。エステル交換は、4種の主な利用可能な処理のうちの1つであり、トリグリセリドの燃焼値および潤滑剤有用性を改善するために最も一般的に使用されている。
【0004】
トリグリセリドをエステル交換するいくつかの方法が開発されており、これには、酸および塩基触媒による均一系方法が包含される。塩基触媒による反応は単純で、適度に経済的であり、実際に数カ国において、バイオディーゼルの製造で市場で使用されており、非特許文献1から4およびNoureddiniに付与された特許文献1およびBarnhorstらに付与された特許文献2に記載されている。アルカリ金属アルコキシドの使用は、高収量の脂肪酸アルキルエステルを短い反応時間でもたらし得るが、しかしながら、アルカリ金属アルコキシドは、脂肪酸アルキル酸エステルを調製する際に使用される構成部品の腐食の原因となり得る。腐食の問題に加えて、これらの均一系触媒をベースとする方法は、供給原料から遊離脂肪酸(「FFA」)および水を、および生成物から触媒を除去する迂遠なプロセスステップを伴う。FFAが存在すると、これらは、均一系アルカリ触媒と反応して、望ましくない石けん副生成物を形成し、触媒を失活させる。加えて、非食用の未精製か廃油の植物油中に時に存在する水もまた、非特許文献5に記載されている通り、均一系触媒の失活をもたらす。均一触媒系の分離および再使用は、追加的なプロセスステップを必要とする問題である。
【0005】
スズ、マグネシウムおよび亜鉛の金属酸化物、Cs−MCM−41、Cs−交換NaX、ETS−10、Mg/Alハイドロタルサイト、アルカリ硝酸塩およびアルカリ炭酸塩負荷されたAl23、ポリマー樹脂、硫酸スズ(sulfated-tin)ならびに酸化ジルコニアおよびタングステン酸ジルコニア(tungstated-zirconia)などの数種の不均一系塩基および酸触媒系が、植物油をアルコールでエステル交換するために報告されており、非特許文献6から16に記載されている。金属イオンの浸出が、これらの不均一系のうちの多数で起こる。存在する場合、遊離脂肪酸は、固体の塩基触媒でのエステル交換を阻害し、したがって、この触媒系は、食用オイルのエステル交換に限られる。追加的な予備処理プロセスステップが、非食用オイルを使用する場合には必要である。
【0006】
Sternに付与された特許文献3、Sternらに付与された特許文献4およびからBournaらに付与された特許文献5は、不均一系アルミン酸亜鉛触媒の存在下で植物油および動物脂肪と、脂肪族モノアルコールとから、アルキルエステルを製造することを記載している。水は、この触媒系を阻害するので、反応媒体中に1000ppmを超える重量で水が存在することは望ましくない。ナカヤマらに付与された特許文献6は、ペロフスカイト構造を有する複合金属酸化物を包含する触媒の適用を記載している。反応は、アルコールを超臨界状態または亜臨界状態にすることにより行われた。Basuらに付与された特許文献7は、酢酸カルシウムおよび酢酸バリウムの混合物の適用を記載している。反応条件で、一部の量の金属が、液体ポーションに浸出するので、これは、真に不均一な触媒による系ではない。Linらに付与された特許文献8は、バイオディーゼルを製造するために酸性メソ多孔性ケイ酸塩を適用することを記載している。
【0007】
Fogliaらに付与された特許文献9は、アルカン、アレーンなどの有機溶媒、塩素化溶媒または石油エーテルの存在下で、Mucor mieheiまたはCandida Antarcticaに由来するリパーゼ触媒を使用して、トリグリセリドを短鎖アルコールでエステル交換することによるバイオディーゼル、潤滑剤および燃料ならびに潤滑剤添加物の製造を記載している。Gnosarらに付与された特許文献10、Koncarに付与された特許文献11、Muskettらに付与された特許文献12、Okuらに付与された特許文献13およびHookerに付与された特許文献14;ならびにBradinに付与された特許文献15;Haasらに付与された特許文献16;Luxenらに付与された特許文献17;Luxemらに付与された特許文献18;Boocockに付与された特許文献19;Boocockに付与された特許文献20;Haasらに付与された特許文献21;Wuらに付与された特許文献22;Noureddiniに付与された特許文献23は、リパーゼ触媒または金属イオン触媒を使用する脂肪酸アルキルエステルの製造を記載している。特許文献24は、ほぼ周囲圧力で短時間で、超強酸特性を有する固体の酸触媒の存在下で、脂肪をメタノールおよびエタノールでエステル交換することを記載している。
【0008】
純粋な大豆油またはヤシ油からのディーゼル燃料の製造は、経済的ではないので、動物脂肪または使用済み調理用オイルまたはホホバ、ジャトロファもしくはカランジャなどの野生植物の種からのオイルなど、より安価な別の供給原料を使用することが望ましい。動物脂肪および使用済みオイルは、多量のFFA含分を含有する。FFAは、アルカリベースのエステル交換触媒でけん化して、低収率、生成物分離の難しさおよび製造コストの上昇をもたらす。これらの場合、第1のステップの間に、酸触媒が遊離脂肪酸をエステル化して、メチルエステルにし、第2のステップで、塩基触媒上でトリグリセリドをエステル交換する2ステップ方法が一般には、ディーゼル燃料の調製で使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第6,015,440号明細書
【特許文献2】米国特許第6,489,496号明細書
【特許文献3】米国特許第5,908,946号明細書
【特許文献4】米国特許第6,147,196号明細書
【特許文献5】米国特許第6,878,837号明細書
【特許文献6】米国特許第6,960,672号明細書
【特許文献7】米国特許第5,525,126号明細書
【特許文献8】米国特許第7,122,688号明細書
【特許文献9】米国特許第5,713,965号明細書
【特許文献10】WO00/05327号パンフレット
【特許文献11】WO02/28811号パンフレット
【特許文献12】WO2004/048311号パンフレット
【特許文献13】WO2005/021697号パンフレット
【特許文献14】WO2005/016560号パンフレット
【特許文献15】米国特許第5,578,090号明細書
【特許文献16】米国特許第6,855,838号明細書
【特許文献17】米国特許第6,822,105号明細書
【特許文献18】米国特許第6,768,015号明細書
【特許文献19】米国特許第6,712,867号明細書
【特許文献20】米国特許第6,642,399号明細書
【特許文献21】米国特許第6,399,800号明細書
【特許文献22】米国特許第6,398,707号明細書
【特許文献23】米国特許第6,015,440号明細書
【特許文献24】WO2004/085583号パンフレット
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】J.Brazil.Chem.Soc.Vol.9、1998年、199から210頁
【非特許文献2】Bioresource Tech.Vol.70、1999年、1から15頁
【非特許文献3】Catalysis Vol.19、2006年、41から83頁
【非特許文献4】J.Am.Oil Chem.Soc.Vol.75、1998年、1775から1783頁
【非特許文献5】Bioresource Tech.Vol.70、1999年、1から15頁
【非特許文献6】J.Am.Oil.Chem.Soc.Vol.78、2001年、1161頁
【非特許文献7】Bioresource.Technol.Vol.70、1999年、249から253頁
【非特許文献8】Appl.Catal.A:Gen.Vol.218、2001年、1から11頁
【非特許文献9】Catal.Today Vol.93〜95、2004年、315から320頁
【非特許文献10】Green Chem.Vol.6、2004年、335から340頁
【非特許文献11】J.Mol Catal.A:Chem.Vol.109、1996年、37から44頁
【非特許文献12】Appl.Catal.A:Gen.Vol.257、2004年、213から223頁
【非特許文献13】Ind.Eng.Chem.Res.Vol.44、2005年、7978から7082頁
【非特許文献14】Adv.Synth.Catal.Vol.348、2006年、75から81頁
【非特許文献15】Appl.Catal.A:Gen.Vol.295、2005年、97から105頁
【非特許文献16】J.Catal.Vol.229、2005年、365から373頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
脂肪族アルキル酸をエステル交換するために多くの方法および/または触媒が提案されているが、しかしながら、従来の触媒の多くは、その活性をリサイクルの際に失うか、および/または遊離脂肪酸および水を除去するために供給原料を予備処理することを必要とする。一部の従来の触媒は、過酷な反応条件を必要とする。したがって、穏やかな条件で、精製された形態または未精製の形態の食用および非食用植物油の両方をエステル交換することができる有効で高い活性の触媒が極めて望ましい。このような触媒系は、経済的な利益を可能にし、バイオディーゼルおよびバイオ潤滑剤を、石油ベースのディーゼル燃料および潤滑剤に対する経済的な代替物にする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本明細書に記載の実施形態は、脂肪酸アルキルエステルを製造するための方法および触媒を記載している。ある種の実施形態では、方法は、触媒の存在下で、1種または複数の脂肪酸グリセリドを1種または複数のアルコールと接触させて、1種または複数の反応生成物を製造するステップと;1種または複数の反応生成物を触媒から分離するステップと;1種または複数の脂肪酸アルキルエステルを反応生成物から分離するステップとを包含する。触媒は、1種または複数の金属酸化物および助触媒を包含する。少なくとも1種の金属酸化物は、周期表のVIB族またはIIIA族からの金属を包含する。助触媒は、少なくとも1種の周期表のVA族の元素を包含する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書に記載の方法の実施形態は、脂肪酸アルキルエステルの製造を記載している。このような脂肪酸アルキルエステルは、バイオ燃料、例えばバイオディーゼルまたはバイオ潤滑剤として使用することができる。本明細書に記載の方法は、低コストおよびより長い実行時間寿命という追加の利点を有する触媒を使用する。一部の実施形態では、触媒は固体である。ある種の実施形態では、触媒は、酸性特性を有する。触媒は、遠心分離または単純な濾過により容易に分離することができ(バッチ法の場合)、再使用することができる。最も重要な点は、本方法が原子効率が高く、温度および圧力などの反応条件がもっぱら穏やかであることである。従来の塩基触媒とは異なり、本発明の触媒は、遊離脂肪酸および水不純物をオイル中に含有する非食用油でも、より有効である。したがって、本発明の触媒で使用することができる油の品質に関して、制限はほとんどない。
【0014】
本明細書に記載の方法は、脂肪酸アルキルエステル(バイオディーゼルおよびバイオ潤滑剤)を穏やかな条件で高収率で製造する効率的な方法を提供する。一部の実施形態では、方法は、大量の脂肪酸を含有する植物油および脂肪からバイオディーゼルおよびバイオ潤滑剤を製造するシングルステップ方法である。
【0015】
ある種の実施形態では、穏やかな条件およびより短い反応時間で、バッチ法または固定床法で、植物油または脂肪をC1からC4アルコールでエステル交換することによりバイオディーゼルを、およびC5からC12アルコールでエステル交換することによりバイオ潤滑剤を製造する方法を記載している。
【0016】
工業的経済性およびより長い実行時間寿命を伴う安定な系を考慮した場合に低コスト触媒という追加の利点を伴う、脂肪酸グリセリドをエステル交換するために適した不均一系担持触媒が、本明細書には記載されている。本明細書で使用される場合、「不均一系触媒」とは、一緒に混合されている場合に、他の化合物(例えば、液体または蒸気)とは異なる相にある触媒(例えば、本明細書に記載の固体触媒)を指す。この触媒は、遠心分離または単純な濾過により容易に分離することができ(バッチ法の場合)、再使用することができる。
【0017】
一実施形態では、不均一系担持触媒の存在下で、天然由来の脂肪酸グリセリドをアルコールと接触させて、脂肪酸アルキルエステルを製造する。脂肪酸グリセリドとアルコールとのモル比は、約1:6から1:50または1:10から1:40または1:20から1:30の範囲であってよい。ある種の実施形態では、1から4個の炭素原子を有するアルコールを、脂肪酸グリセリドと反応させて、バイオディーゼル燃料として使用するために適した脂肪酸アルキルエステルを形成する。一実施形態では、接触から製造される脂肪酸アルキルエステルは、15から34個の炭素原子を有する。一部の実施形態では、脂肪酸グリセリドのモルパーセント変換率は、90から100モル%であり、バイオディーゼル/バイオ潤滑剤選択率は、95%を超える。本明細書に記載の方法により製造される脂肪酸アルキルエステルの例には、これらに限られないが、ミリスチン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキジン酸またはその混合物のアルキルエステルが包含される。
【0018】
一部の実施形態では、アルコールは、第1級アルコールである。アルコールは、1から50個、2から25個または3から12個の炭素原子を有し得る。アルコールの例には、これらに限られないが、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、オクタノール、2−エチルヘキサノール、デカノール、ドデカノールまたはこれらの混合物が包含される。
【0019】
脂肪酸グリセリドは、植物油、動物脂肪または調理用オイルの廃油から得ることができる。一部の実施形態では、脂肪酸グリセリドには、天然植物油、例えば、ヤシ油、パーム油、ヒマワリ油、大豆油、カラシ油、オリーブ油、綿実油、ナタネ油、マーガリン油、ホホバ油、ジャトロファ油、カランジャ油またはこれらの混合物が包含される。
【0020】
ある種の実施形態では、触媒は、周期表のVIB族からの1種または複数の金属を包含する。VIB族金属は、無機塩(例えば、硝酸塩、硫酸塩)および/または酸化物であってよい。一部の実施形態では、VIB族金属は、モリブデンまたは酸化モリブデンである。VIB族金属の量は、触媒に対する重量で金属として算出して、触媒に対してVIB族金属約0.01重量%から約10重量%まで、約0.5重量%から5重量%まで、または1重量%から5重量%までの範囲であってよい。VIB族金属酸化物の量は、触媒に対してVIB族金属酸化物約5重量%から約20重量%まで、約8重量%から約17重量%まで、または約10重量%から約15重量%までの範囲であってよい。
【0021】
一部の実施形態では、触媒は、本明細書に記載の周期表のVIB族からの1種または複数の金属および助触媒を包含する。助触媒は、周期表のVA族からの1種または複数の元素、例えば、リンまたはリン化合物であってよい。ある種の実施形態では、VA族元素(助触媒)は、リン化合物である。一実施形態では、VA族元素は、触媒に対して約0.1重量%から約7重量%まで、約0.5重量%から約5重量%まで、約1重量%から約3重量%までの範囲で存在する。
【0022】
一部の実施形態では、触媒は、本明細書に記載の周期表のVIB族からの1種または複数の金属、補助助触媒(co-promoter)および/または助触媒を包含する。補助助触媒には、周期表のIA族、周期表のIIA族、周期表のIIIB族、周期表のVIII族の金属もしくは金属の化合物またはこれらの混合物が包含され得る。周期表のIA族、IIA族、IIIB族またはVIII族の金属の例には、これらに限られないが、ナトリウム、カリウム、カルシウム、ランタンおよびニッケルが包含される。触媒中での補助助触媒の量は、触媒に対して約0.0001重量%から約10重量%まで、約0.005重量%から約8重量%まで、または0.5重量%から約5重量%までの範囲であってよい。一部の実施形態では、触媒は、触媒に対してカルシウム約0.05重量%から約6.5重量%までを含有してよい。一部の実施形態では、触媒は、触媒に対してナトリウムおよび/またはカリウム0.0001重量%から約7.8重量%までを包含してよい。一部の実施形態では、触媒は、触媒に対してランタン約0.0001重量%から約4.5重量%までを包含してよい。一部の実施形態では、触媒は、触媒に対してニッケル0.0001重量%から約5.5重量%までを包含してよい。
【0023】
VIB族金属、VIB族金属化合物、助触媒、補助助触媒またはこれらの混合物は、周期表のIIIA族からの1種または複数の金属の1種または複数の酸化物に担持されていてよい。IIIA族金属酸化物(耐火性酸化物)の例には、これらに限られないが、酸化アルミナおよび/または酸化チタンが包含される。耐火性無機酸化物は、合成または天然由来であってよく、中程度から高い表面積および十分に展開している空孔構造を有する。一実施形態では、酸化アルミニウム三水和物を担持材料として使用すると、活性物質の形態が、生じた触媒組成物中で十分に維持されている生成物が生じる。
【0024】
触媒金属(例えば、VIB族金属)を、当分野で知られているいくつかの方法のうちのいずれかにより、成形または未成形担持体に施与することができる。通常はこれに続いて、成形し、必要な場合には、か焼により、触媒金属化合物を酸化物に変換する。Colganらに付与された米国特許第3,287,280号明細書およびO’Haraに付与された同第4,048,115号明細書は、担持触媒を調製する方法を記載している。
【0025】
触媒の中間担持材料は、固体混合方法により、または溶液の添加、それに続く混合方法により調製することができる。いずれの方法でも、担持材料の前駆体(例えば、酸化アルミナ)を適切な鉱酸、例えば、硝酸および酢酸でよく解凝固する。一実施形態では、担持体に対して1.0〜10.0%の範囲の硝酸を解凝固のために使用する。担持前駆体は、IIIAまたはIVA族の耐火性金属酸化物のいずれかまたはその組み合わせであってよい。一実施形態では、IIIA族の金属酸化物は、アルミナである。ある種の実施形態では、IIIA族金属酸化物を、担持材料に対して約1重量%から約10重量%まで、または約2重量%から8重量%まで、または約3重量%から約7重量%までの範囲の鉱酸で解凝固する。例えば、酸化アルミナを硝酸で解凝固する。一実施形態では、これらの金属酸化物の様々な前駆体をブレンドして、適切な空孔サイズ分布を得る。
【0026】
解凝固の後に、活性な触媒化合物、例えば、VIB族の金属酸化物前駆体を、周期表のVA族から選択される助触媒および/または補助助触媒と共に加えることができる。一部の実施形態では、補助助触媒を、触媒を形成する前に(例えば、押出の間に)、しかし、触媒の乾燥および/またはか焼の前に加える。活性金属、例えば、モリブデンの組成物を、含浸、配合、押出試験、本明細書に記載の方法の様々な組み合わせまたは当分野で知られている方法を使用して組み込むことができる。適切な調製条件を、当分野で知られている方法を使用して適正に選択することができる。一部の実施形態では、活性な金属前駆体、助触媒前駆体および/または補助助触媒を、別々の化合物として、または一緒にスラリーとして加えることができる。例えば、金属前駆体および助触媒前駆体を、2種の水溶液を一緒に混合することにより組み合わせることができる。金属成分の適切な形態および組織を、適切な方法および前駆体の組み合わせを適用することにより達成することができる。一実施形態では、例えば、幾何表面積を調整して、担持系のサイズおよび形態を最適化することができた。触媒の表面積は、50m2/gから300m2/gまでの範囲であってよい。
【0027】
触媒は、0.2ml/gから0.95ml/gまで、または0.5ml/gから0.7ml/gまでの範囲の空孔体積を有してよい。水を施与して飽和するまで空孔空間を充填することにより、試料の空孔体積を決定することができる。水の量を、加えられたその体積または試料の重量上昇により決定する。空孔空間を、量的に既知の試料を過剰の水に入れることにより充填し、過剰の水を除去し、飽和触媒試料の重量を再び秤量して、全水吸収を決定することができた。
【0028】
一部の実施形態では、上記方法から生じた触媒組成物をそのまま成形することができる。成形には、押出、ペレット化、ビーズ化および/または噴霧乾燥が包含される。一部の実施形態では、触媒組成物をスラリータイプの反応器、流動床、可動床、拡張床または懸濁気泡床で使用する場合、噴霧乾燥またはビーズ化が一般に使用される。固定床用途では、触媒組成物を押し出すか、ペレット化するか、またはビーズ化することができる。固定床用途では、成形の前またはその間に、成形を容易にする任意の添加剤を使用することができる。
【0029】
生じた触媒組成物またはより適切には、触媒中間体を、任意選択の乾燥ステップの後に、場合によってか焼することができる。か焼温度は、0.5から48時間の様々な時間で、約100℃から600℃まで、または約350℃から500℃までの範囲であってよい。ある種の実施形態では、触媒試料を、400℃から500℃まで、または500℃から700℃までの範囲の温度でか焼する。
【0030】
生じた押出物に活性金属をさらに負荷して、完成製品に望ましい活性金属組成を得ることができる。このようなさらなる負荷は、望ましい金属負荷および材料の成形段階の間またはその前に導入される量に直接関係している。このために、当分野で知られている様々な含浸法を適用することができる。湿式含浸または初期含浸(incipient impregnation)を使用して、活性金属を負荷することができる。一実施形態では、空孔を充填する初期含浸法を適用して、VIB族金属酸化物を負荷することができる。使用される方法はまた、完成触媒の空孔サイズ分布に、したがって製品の性能に影響を及ぼし得る。材料を再び、さらに熱処理して、触媒成分を活性化させることができる。
【0031】
本明細書に記載の担持触媒は極めて有効であり、さらに再使用するために、製品から容易に分離される。対照的に、先行技術の触媒は、鉱酸、アルカリ塩基およびリパーゼでの処理を必要とすることがあり、このことにより、触媒分離のコストが増大し得る。本明細書に記載の触媒は、有利であり、経済的で生態系に優しい方法をもたらす。したがって、本明細書に記載の固体触媒は、有効であるだけでなく、先行技術の方法に特徴的な触媒回復の冗長な方法をも回避する。本触媒系は、何ら追加的な溶媒を使用しなくても有効である。
【0032】
脂肪酸アルキルエステルを製造する方法は、脂肪酸グリセリド、アルコールおよび本明細書に記載の固体触媒を接触させて、反応混合物を生じさせるステップを包含する。一部の実施形態では、触媒は、微細な粉末化触媒である。接触の間、触媒は、脂肪酸グリセリド、アルコールおよび/または反応生成物とは別の相または実質的に別の相に留まり得る。触媒を液体反応混合物から、当分野で知られている分離技術により分離することができる。例えば、遠心分離、それに続く簡単なデカンテーションである。生じた液体反応混合物を、蒸留技術を介して過剰のアルコールを除去することにより分離することができる。アルコールを除去すると、脂肪酸メチルエステルを残りの生成物から分離することができる。脂肪酸メチルエステルを反応混合物から、重量分離により、または反応混合物と非極性溶媒とを接触させることにより分離することができる。一部の実施形態では、非極性溶媒は、石油エーテルである。
【0033】
触媒を、実施例1から11に記載されている通りに調製する。本明細書に記載されている通りに調製された選択触媒の典型的な物理化学的特性を、表1に挙げる。一実施形態では、触媒材料は、50から300m2/gまでの範囲の表面積、0.2〜0.95ml/gの範囲の空孔体積および0.4から1.3g/mlの範囲の嵩密度を有する。
【0034】
【表1】

【0035】
本明細書に記載の方法の一形態は、シングルステップ法である。したがって、従来方法におけるけん化ステップに対する要求は必要ない。本明細書に記載の方法の他の特徴は、触媒が固体であること、反応を不均一条件で実施すること、生成物のバイオディーゼルおよびバイオ潤滑剤が液体であること、固体触媒が、さらに再使用するために遠心分離/濾過により生成物から容易に分離されることである。本明細書に記載の方法の他の利点は、最小の溶媒を使用して、または実質的に溶媒を使用せずに反応が行われることである。一実施形態では、反応を、溶媒の不在下で行う。本明細書に記載の方法の他の利点は、触媒が高度に選択的であり、従来の触媒を使用して製造される生成物と比較して、高いグリセロール純度および脂肪酸メチルエステル収率をもたらすことである。本明細書に記載の方法はまた、望ましくない不純物、例えば、グリセロールエーテルの形成を低減する。
【0036】
非限定的な実施例を本明細書において記載する。
【実施例1】
【0037】
触媒支持体および触媒1の調製を本明細書において記載する。酸化アルミニウム三水和物(アルミナ0.83モル含有)を、適切な鉱酸で解凝固した後に、七モリブデン酸アンモニウム(0.00741モル)と混合粉砕した。材料を押し出して、1.2mmの押出物にし、任意選択の乾燥の後に、試料を400℃から500℃でか焼した。
【0038】
空孔充填含浸法を使用して、アルミナ試料に、七モリブデン酸アンモニウム水溶液(0.00712モル)を含浸させて、さらに金属を負荷した。任意選択の乾燥の後に、試料を、400℃から500℃で4時間か焼した。この試料を、触媒1と名付けた。
【実施例2】
【0039】
触媒2を、実施例1に記載の方法を使用して調製したが、但し、追加的な助触媒を、最終触媒組成物に組み込んだ。七モリブデン酸アンモニウムに加えて、リン酸(0.0322モル)を、支持体調製の混合粉砕段階の間に加えた。生じた材料を1.2mmに押出し、400℃から500℃で4時間か焼し、七モリブデン酸アンモニウム溶液(0.00712モル)を含浸させた。任意選択の乾燥の後に、材料を400℃から500℃で4時間、最終のか焼に掛けた。
【実施例3】
【0040】
触媒3、4、および5を、実施例2に記載の調製を使用して調製したが、但し、リン酸の量を変えた(触媒3ではリン酸0.0654モル、触媒4ではリン酸0.0968モルおよび触媒5ではリン酸0.1308モル)。任意選択の乾燥の後に、材料を400℃から500℃で4時間、最終のか焼に掛けた。
【実施例4】
【0041】
触媒6および7を、実施例2に記載の調製を使用して調製したが、但し、リン酸の量を変えた(触媒6ではリン酸0.0968モルおよび触媒7ではリン酸0.0322モル)。任意選択の乾燥の後に、材料を500℃から700℃で4時間、最終のか焼に掛けた。
【実施例5】
【0042】
触媒8を、実施例2に記載の調製を使用して調製したが、但し、リン酸の量(0.0968モル)を変え、一酸化二ナトリウム(0.080645モル)を、支持体調製の間に加えた。任意選択の乾燥の後に、試料を500℃から700℃で4時間か焼した。
【実施例6】
【0043】
触媒9を、実施例2に記載の調製を使用して調製したが、但し、リン酸の量(0.0968モル)を変え、一酸化二カリウム(0.05319モル)を、支持体調製の間に加えた。任意選択の乾燥の後に、試料を500℃から700℃で4時間か焼した。
【実施例7】
【0044】
触媒10を、実施例2に記載の調製を使用して調製したが、但し、リン酸の量(0.0968モル)を変え、三酸化ランタン(0.009202モル)を支持体調製の間に加えた。任意選択の乾燥の後に、試料を500℃から700℃で4時間か焼した。
【実施例8】
【0045】
触媒11および12を、実施例2に記載の調製を使用して調製したが、但し、リン酸の量(0.0322モル)を変え、硝酸カルシウム溶液を、押出の前に加えた。触媒11の調製では、硝酸カルシウム溶液は、酸化カルシウム0.01785モルを含有した。触媒12の調製では、硝酸カルシウム溶液は、酸化カルシウム0.05356モルを含有した。任意選択の乾燥の後に、試料を500℃から700℃で4時間か焼した。
【実施例9】
【0046】
触媒13を、実施例2に記載の調製を使用して調製したが、但し、リン酸の量(0.0968モル)を変え、三酸化ランタン(0.009202モル)を、支持体調製の間に加えた。任意選択の乾燥の後に、試料を500℃から700℃で4時間か焼した。
【実施例10】
【0047】
触媒14を、実施例5に記載の調製を使用して調製したが、但し、酸化カルシウム0.0357モルを含有する硝酸カルシウム水溶液を、混合粉砕段階の間に混和した。任意選択の乾燥の後に、試料を500℃から700℃で4時間か焼した。
【実施例11】
【0048】
触媒15を、実施例2に記載の調製を使用して調製したが、但し、リン酸の量(0.0968モル)を変え、酸化ニッケル(0.04005モル)を支持体調製の間に加えた。任意選択の乾燥の後に、試料を500℃から700℃で4時間か焼した。
【実施例12】
【0049】
空孔体積測定に関して、水で飽和するまで空孔空間を充填することにより、さらに、水銀透過法により、全ての触媒試料を評価した。また、試料を、その機械的強度に関して評価して、実際の操作条件に対する許容性を判別したが、この際、系での圧力低下は、触媒試料の破砕を示す。全ての触媒試料を、N2吸着法を介して、BET表面積値に関して評価した。また、試料を、モリブデン含分およびリン含分に関して特性決定した。触媒1〜15でのデータを、表1に挙げる。
【実施例13】
【0050】
選択された触媒試料を、その活性金属および助触媒浸出の評価に関して試験した。モリブデン(活性金属)、リン(助触媒)および、存在する場合には補助助触媒を検討した。触媒試料をメタノールおよびオレイン酸の1:1混合物と共に4時間、蒸留設定で還流させ、モリブデン含分、リン含分および、存在する場合には補助助触媒含分に関して濾液を定量分析することにより、評価を行った。
【実施例14】
【0051】
選択された触媒試料を、活性および性能評価に関して選択した。試料のスクリーニングを、物理化学的特性、主に、固有特性および浸出問題を基に行った。活性相/助触媒の改善された物理化学的特性および最小浸出を伴う試料を、さらなる評価に関して検討する。テフロン(登録商標)ライニングされたステンレス鋼/バッチ反応器および固定床反応器を150℃から250℃までの範囲の温度および10から40バールまでの範囲の圧力で、6から40までの様々なモル比での反応成分の大豆油およびメタノールと共に使用することにより、試料の活性/性能評価を行った。反応混合物を様々な間隔で収集し、脂肪酸メチルエステルへの変換率に関して試験した。グリセロールの純度を決定した。
【0052】
脂肪酸メチルエステル(バイオディーゼル)をヒマワリ油およびメタノールから製造する典型的なバッチ反応を、「テフロンライニング」された鋼オートクレーブ(100ml)中、回転熱水反応器(Hiro Co.、Japan;Mode−KH02)を使用して行った。回転速度は、50rpmであった。既知の量の植物油、アルコールおよび「微粉末化」固体触媒を密閉反応器に入れ、反応を所望の温度で所望の期間行った。オートクレーブを室温に冷却した。遠心分離し、続いて、簡単にデカンテーションすることにより、触媒を分離した。液体全体を真空蒸留に掛け、使用されなかった過剰なアルコールを除去した。グリセロールが、別の層として底部に沈殿した。脂肪酸メチルエステルおよび、存在する場合には未反応のオイルが、グリセロール部分の上に浮かんだ。次いで、石油エーテル(20から50ml)を加えた。エステルおよびオイルは、石油エーテル層に容易に移った。グリセロールは、別の層のままであった。これを分離し、その収率を決定し、純度を1H核磁気共鳴(Bruker 200 MHz Avance NMR分光計)によりチェックした。脂肪酸アルキルエステル部分を、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)およびガスクロマトグラフィー(GC)技術により分析した。異なる反応条件で、本発明の触媒を使用して行われた様々な実験の結果を、表2に挙げる。
【0053】
【表2】

【実施例15】
【0054】
脂肪酸メチルエステル(バイオディーゼル)の未精製の非食用カランジャ油およびメタノールからの調製を、本明細書では記載する。反応を、実施例14に記載の方法と同様の方法で行ったが、但し、未精製のカランジャ油を、食用ヒマワリ油の代わりに使用した。未精製のカランジャは、遊離脂肪酸約6重量%およびかなりの量の水不純物を供給原料中に含有した。HPLCにより分析された反応結果を、表2に挙げる。逆相C−18 Spheri−5カラム(250×4.6mm、粒径5μm)およびELSD検出器(Gilson)を備えたPerkin−Elmer Series 200 HPLCをHPLC分析のために使用した。10マイクロリットルの注入体積、1ml/分の流速、50℃のカラム温度ならびにメタノールおよび2−プロパノール/n−ヘキサン(5:4v/v)の移動相を使用した。生じたグリセロールは、ガスクロマトグラフィー(GC)により決定して純度90〜98%を有した。FAMEカラム(30m×0.32mm ID×0.25μmフィルム厚)用のVarian Selectを備えたVarian GC装置(250℃の注入器および260℃の検出器)を分析で使用した。
【実施例16】
【0055】
固定床反応器中での大豆油およびメタノールからの脂肪酸メチルエステルの調製を本明細書では記載する。典型的な固定床反応で、押出物の形態の触媒床を、自動制御温度の手段および供給流設備を有するステンレス鋼反応器中に設置する。メタノールおよび大豆油は不混和性であるので、二元ポンプ系を利用し、供給物を上昇流で、調節された流速で送った。生成物を反応器の頂部から収集し、バイオディーゼルを、実施例14に記載されているのと同様の方法で単離した。表3は、操作条件と、固定床反応器中、触媒13で、メタノール:オイルのモル比15で反応させた大豆油またはカランジャ油およびメタノールの生成物組成(HPLC分析により決定された通りの重量%)とを挙げている。逆相C−18 Spheri−5カラム(250×4.6mm、粒径5μm)およびELSD検出器(Gilson)を備えたPerkin−Elmer Series 200 HPLCをHPLC分析で使用した。10マイクロリットルの注入体積、1ml/分の流速、50℃のカラム温度ならびにメタノールおよび2−プロパノール/n−ヘキサン(5:4v/v)の移動相を使用した。
【0056】
【表3】

【実施例17】
【0057】
固定床反応器中での大豆油およびオクタノールからのバイオ潤滑剤用の脂肪酸オクチルエステルの製造を本明細書では記載する。オクタノールなどの高級アルコールとオイルとは混和性である。供給物を調製し、単一ポンプを使用して反応器に供給し、反応および後処理を、実施例14に記載されているのと同様の方法で行った。表4は、固定床反応器中、オクタノールと大豆油とのモル比15で反応させた大豆油およびオクタノールの結果を挙げている。生じたグリセロールは、実施例15に記載された条件を使用してGC技術により決定すると、純度90〜98%を有した。
【0058】
【表4】

【実施例18】
【0059】
オレイン酸をメタノールでエステル交換することによる脂肪酸メチルエステル(バイオディーゼル)の製造を本明細書では記載している。反応を、実施例14に記載されているのと同様の方法で、オレイン酸とメタノールとのモル比1:5で行った。バイオディーゼル収率は、EN14103に記載されているGC分析により決定される通り、97%であった。
【実施例19】
【0060】
オレイン酸をオクタノールでエステル交換することによる脂肪酸オクチルエステル(バイオ潤滑剤)の製造を、本明細書では記載する。反応を、実施例14に記載されているのと同様の方法で、オレイン酸とオクタノールとのモル比1:5で行った。オクチルエステル(バイオ潤滑剤)収率は、EN14103に記載されているGC分析により決定される通り、95%であった。
【実施例20】
【0061】
触媒13での大豆油と、メタノールおよびエタノールの等モル混合物との反応による、脂肪酸メチルエステル(バイオディーゼル)の製造。反応を、実施例14に記載されているのと同様の方法で行った。HPLC分析により決定される通り、大豆油の変換率は99.5%であり、脂肪酸メチル/エーテルエステル収率は92%であった。逆相C−18 Spheri−5カラム(250×4.6mm、粒径5μm)およびELSD検出器(Gilson)を備えたPerkin−Elmer Series 200 HPLCを、HPLC分析のために使用した。10マイクロリットルの注入体積、1ml/分の流速、50℃のカラム温度ならびにメタノールおよび2−プロパノール/n−ヘキサン(5:4v/v)の移動相を使用した。
【0062】
本明細書に記載の方法および触媒の利点には、1)本プロセスは、高い変換率が脂肪酸アルキルエステルに対する高い選択性を随伴するという組み合わされた独特な利点を有すること;2)けん化に関連する問題が生じず、触媒が複数回および長期間、ストリーム研究で再使用されること;および3)本発明の触媒は、バイオディーゼル(植物油または脂肪およびC1からC4アルコールから)およびバイオ潤滑剤(植物油または脂肪およびC5からC12アルコールから)を調製するために極めて有効であることが包含される。
【0063】
参照触媒
参照触媒試料を、Darbhaらに付与された米国特許出願公開第2007/0004599号明細書に記載されている通りに調製した。参照触媒試料は、水性媒体中のフェロシアン化カリウムおよび塩化亜鉛を、tert−ブチルアルコールを使用して反応させ、続いて、ポリエチレングリコール4000の補助錯生成剤を添加することにより調製された二重金属シアン化物触媒であった。生じた粉末試料を、本明細書に記載の触媒の活性/性能と比較するために使用した。参照触媒試料を、触媒Rと名付けた。
【0064】
本明細書を考慮すれば、本発明の様々な態様のさらなる変更および別の実施形態が、当業者には明らかであろう。したがって、本明細書は、単なる例示として解されるべきであり、当業者に本発明を実施する一般的な方法を教示することを目的としている。本明細書に示され、記載されている本発明の形態は、現在好ましい実施形態とみなされるべきであることを理解されたい。本発明の記載の恩恵を得れば当業者にはどれも明らかであるように、元素および物質を、本明細書に説明および記載されているものと代えることができ、部分および方法を逆転させることができ、本発明の一定の形態を独立して利用することができる。下記の請求項に記載されている通りの本発明の意図および範囲から逸脱することなく、本明細書に記載の要素を変更することができる。加えて、一定の実施形態では、本明細書に独立して記載されている形態を組み合わせることができることを理解されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1種または複数の脂肪酸アルキルエステルを製造する方法であって:
触媒の存在下で、1種または複数の脂肪酸グリセリドを1種または複数のアルコールと接触させて、1種または複数の反応生成物を生じさせる、接触させるステップを備え、その際、前記触媒は、1種または複数の金属酸化物および助触媒を含み、前記金属酸化物のうちの少なくとも1種は、周期表のVIB族またはIIIA族からの金属を含み、前記助触媒は、周期表のVA族からの少なくとも1種の元素を含んでおり;
1種または複数の前記反応生成物を前記触媒から分離するステップを備え;
1種または複数の前記脂肪酸アルキルエステルを前記反応生成物から分離するステップを備える、脂肪酸アルキルエステルを製造する方法。
【請求項2】
前記脂肪酸アルキルエステルが、ミリスチン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキジン酸およびそれらの混合物のアルキルエステルである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記脂肪酸グリセリドが、植物油、動物脂肪または調理用オイルの廃油から得られる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
少なくとも1種の前記脂肪酸グリセリドが、ヤシ油、パーム油、ヒマワリ油、大豆油、カラシ油、オリーブ油、綿実油、ナタネ油、マーガリン油、ホホバ油、ジャトロファ油、カランジャ油およびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
少なくとも1種の前記アルコールが、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、オクタノール、2−エチルヘキサノール、デカノール、ドデカノールおよびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
少なくとも1種の前記アルコールが、1から50までの範囲の炭素数を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
脂肪酸グリセリドとアルコールとのモル比が、1:6から1:50までの範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記接触するステップを150℃から250℃までの範囲の温度で行う、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
周期表のIIIA族からの前記金属がアルミニウムを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
周期表のVIB族からの前記金属がモリブデンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
周期表のVA族からの前記元素がリンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
少なくとも1種の前記脂肪酸アルキルエステルがバイオディーゼルを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
少なくとも1種の前記脂肪酸アルキルエステルがバイオ潤滑剤を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
少なくとも1種の前記脂肪酸アルキルエステルがバイオ燃料を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
1種または複数の前記脂肪酸アルキルエステルを前記反応生成物から分離するステップが、前記反応生成物と非極性溶媒との接触を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記触媒が補助助触媒をさらに含み、前記補助助触媒が周期表のIA族からの1種または複数を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記触媒が補助助触媒をさらに含み、前記補助助触媒が周期表のIIA族からの1種または複数を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記触媒が補助助触媒をさらに含み、前記補助助触媒が周期表のIIIB族からの1種または複数の金属を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記触媒が補助助触媒をさらに含み、前記補助助触媒が周期表のVIII族からの1種または複数の金属を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記触媒が補助助触媒をさらに含み、前記補助助触媒がカルシウムを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記触媒が補助助触媒をさらに含み、前記補助助触媒がカリウムを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記触媒が補助助触媒をさらに含み、前記補助助触媒がランタンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記触媒が補助助触媒をさらに含み、前記補助助触媒がニッケルを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
前記触媒が固体の酸触媒である、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
接触の間、触媒が、別の相または実質的に別の相のままである、請求項1に記載の方法。
【請求項26】
脂肪酸アルキルエステルを製造する方法であって:
触媒の存在下で、1種または複数の脂肪酸グリセリドを1種または複数のアルコールと接触させて、1種または複数の反応生成物を生じさせる接触をさせるステップを備え、その際、前記触媒は、1種または複数の金属酸化物、助触媒および補助助触媒を含み、前記金属酸化物のうちの少なくとも1種は、周期表のVIB族からの金属を含んでおり;
1種または複数の反応生成物を触媒から分離するステップを備え;
1種または複数の脂肪酸アルキルエステルを反応生成物から分離するステップを備える、製造する方法。
【請求項27】
バイオ燃料であって、
触媒の存在下で、1種または複数の脂肪酸グリセリドを1種または複数のアルコールと接触させて、1種または複数の反応生成物を生じさせる接触させるステップにして、その際、前記触媒は、1種または複数の金属酸化物および助触媒を含み、前記金属酸化物のうちの少なくとも1種は、周期表のVIB族またはIIIA族からの金属を含み、前記助触媒は、周期表のVA族からの少なくとも1種の元素を含んでいる、接触をさせるステップと;
1種または複数の前記反応生成物を前記触媒から分離するステップと;
1種または複数の前記脂肪酸アルキルエステルを前記反応生成物から分離するステップとを
含む方法により製造された1種または複数の脂肪酸アルキルエステル含んで成るバイオ燃料。
【請求項28】
バイオ潤滑剤であって、
触媒の存在下で、1種または複数の脂肪酸グリセリドを1種または複数のアルコールと接触させて、1種または複数の反応生成物を生じさせるステップにして、その際、前記触媒は、1種または複数の金属酸化物および助触媒を含み、前記金属酸化物のうちの少なくとも1種は、周期表のVIB族またはIIIA族からの金属を含み、前記助触媒は、周期表のVA族からの少なくとも1種の元素を含むステップと;
1種または複数の前記反応生成物を前記触媒から分離するステップと;
1種または複数の前記脂肪酸アルキルエステルを前記反応生成物から分離するステップとを
含む方法により製造された1種または複数の脂肪酸アルキルエステル含むバイオ潤滑剤。
【請求項29】
請求項1から24に記載されている通りの脂肪酸アルキルエステルを製造する方法。
【請求項30】
請求項1から24のいずれかに記載の方法により製造された脂肪酸アルキルエステルを含むバイオ燃料。
【請求項31】
請求項1から24のいずれかに記載の方法により製造された脂肪酸アルキルエステルを含むバイオ潤滑剤。
【請求項32】
触媒の存在下で、1種または複数の脂肪酸グリセリドを1種または複数のアルコールと接触させるステップを含む、脂肪酸アルキルエステルの製法。
【請求項33】
1種または複数の脂肪酸アルキルエステルを含むバイオ潤滑剤。
【請求項34】
1種または複数の脂肪酸アルキルエステルを含むバイオ燃料。

【公表番号】特表2012−507472(P2012−507472A)
【公表日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−516562(P2011−516562)
【出願日】平成21年6月24日(2009.6.24)
【国際出願番号】PCT/US2009/048393
【国際公開番号】WO2009/158379
【国際公開日】平成21年12月30日(2009.12.30)
【出願人】(511000865)ベネヒューエル・インコーポレーテッド (1)
【Fターム(参考)】