脂質二重膜の形成方法およびその装置
【課題】マイクロ・ナノ加工技術を利用して、小型チップ上に再現性よく、安定して脂質膜を再構成できる脂質二重膜の形成方法およびその装置を提供する。
【解決手段】脂質二重膜の形成方法において、基板の表裏にチャンバおよびマイクロ流路を設け、前記チャンバとマイクロ流路を貫通する微小孔を設け、前記チャンバ内にバッファ媒体を導入し、前記マイクロ流路にはバッファ媒体−脂質とを含む有機溶媒−バッファ媒体を順次供給し、かつ前記チャンバのバッファ媒体に圧力を印加可能にし、前記チャンバ内の圧力を調整することにより、前記微小孔に形成される脂質平面膜を薄膜化して脂質二重膜を形成する。
【解決手段】脂質二重膜の形成方法において、基板の表裏にチャンバおよびマイクロ流路を設け、前記チャンバとマイクロ流路を貫通する微小孔を設け、前記チャンバ内にバッファ媒体を導入し、前記マイクロ流路にはバッファ媒体−脂質とを含む有機溶媒−バッファ媒体を順次供給し、かつ前記チャンバのバッファ媒体に圧力を印加可能にし、前記チャンバ内の圧力を調整することにより、前記微小孔に形成される脂質平面膜を薄膜化して脂質二重膜を形成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオテクノロジー、バイオチップ、膜タンパク質分析、創薬スクリーニング、バイオセンサーなどの分野に用いられる膜タンパク質分析用脂質二重膜の形成方法とその装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
膜タンパク質は、細胞膜中に存在し、免疫反応、細胞の内外の物質輸送・排出に重要な役割を果たしているため、各種の膜タンパク質の機能や特性を一つ一つ解明することが、次世代の治療、創薬法の開発に重要な課題となっている。
【0003】
イオンチャンネル等、膜タンパク質分析のための平面脂質膜作製の代表的な従来方法としては平面膜法、すなわち、はけ塗り法やLB法(Longmuir−Blodgett法)が挙げられる。両者とも、バッファを満たしたチャンバ内でテフロン(登録商標)シートなどに開けた数百ミクロン程度の小孔に、脂質二重膜を形成する方法であるが、前者は脂質溶液をはけで小孔に塗る方法、後者は、液体表面に脂質の単分子膜が形成されることを利用して、テフロン(登録商標)シートの両側のチャンバの溶液表面を徐々に上昇させることによって平面脂質膜を形成する方法である。
【0004】
図15はそのLB法による平面脂質膜形成法を示す模式図である。
【0005】
この図において、101はテフロン(登録商標)シート、102はそのテフロン(登録商標)シート101に開口された小孔、103は表面に脂質の単分子膜104が形成される溶液、105はバッファ溶液であり、テフロン(登録商標)シート110の両側のチャンバーの溶液103表面を徐々に上昇させることによって脂質膜106を形成するようにしている。
【0006】
また、特許文献6として、下溶液槽は底板および間隔保持部材に囲まれ、上溶液槽の下方に形成されており、下溶液槽の内部の圧力を低下させることにより、小孔で形成した人工脂質二重膜を下溶液槽側に膨らませて薄化させ、人工脂質二重膜を薄化した状態で支持層で支持するようにした人工脂質二重膜を有する電流測定装置が提案されているが、その場合の人工脂質二重膜の形成は、後述するように困難が伴うものであった。
【特許文献1】特開平02−35941号公報
【特許文献2】特開平05−253467号公報
【特許文献3】特開平07−241512号公報
【特許文献4】特表2002−505007号公報
【特許文献5】特表2003−511679号公報
【特許文献6】特開2005−091308号公報
【非特許文献1】H.Zhu et al.,“Global Analysis of Protein Activities Using Proteome Chips”,Science,Vol.293,pp.2101−2105,2001.
【非特許文献2】B.Alberts et al.,“Molecular Biology of the Cell;4th Ed.,”Garland Science,2002.
【非特許文献3】C.Miller,ed.,“Ion Channel Reconstitution,”Plenum Press,1986.
【非特許文献4】T.Ide and T.Yanagida,“An Artificial Lipid Bilayer Formed on an Agarose−Coated Glass for Simultaneous Electrical and Optical Measurement of Single Ion Channels,”Biochem.Biophys.Res.Comm.,265,pp.595−599,1999.
【非特許文献5】T.Ide,Y.Takeuchi and T.Yanagida,“Development of an Experimental Apparatus for Simultaneous Observation of Optical and Electrical Signals from Single Ion Channels,”Single Molecules,3(1),pp.33−42,2002.
【非特許文献6】J.T.Groves,N.Ulman,and S.G.Boxer,“Micropatterning Fluid Lipid Bilayers on Solid Supports,”Science,Vol.275,pp.651−653.
【非特許文献7】M.Mayer et al.,“Microfabricated Teflon Membranes for Low−Noise Recording of Ion Channels in Planar Lipid Bilayers,”Biophys.J.,Vol.85,pp.2684−2695,2003.
【非特許文献8】Fertig et al.,“Microstructured Glass Chip for Ion−Channel Electrophysiology,”Phys.Rev.E,Vol.64,040901(R),2001.
【非特許文献9】鈴木宏明、野地博行、竹内昌治、「マイクロ流路を用いた脂質平面膜の再構成」、第8回化学とマイクロ・ナノシステム研究会講演要旨集、61頁、2003年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記したはけ塗り法とLB法の両方法とも、数cm程度の大きなチャンバーが必要であり、デッドボリュームが大きく、顕微鏡観察も不可能である。また、上記の方法により流路内に複数の小孔を設けて、複数の平面膜を同時に形成した場合、隣り合う小孔(平面膜)同士は流路中のバッファ液により電気的に導通しているため、個々の電気生理計測を行うことは難しい。
【0008】
また、一度に形成できる脂質二重膜は基本的に一つであり、また形成には職人的熟練を要し、再現性にも乏しい。したがって、これまで分析の多チャンネル化は不可能であった。
【0009】
そこで、本願発明者らは既に、第1及び第2のマイクロ流路を形成して、第2のマイクロ流路へ脂質溶液を流して、その脂質溶液を制御することにより、平面脂質二重膜を形成する人工脂質膜の形成方法及びその装置を提案している。
【0010】
これによれば、まず、第1のマイクロ流路にバッファ溶液(水溶液)を満たし、次に、小孔を有する第2のマイクロ流路に脂質溶液を満たし、次に、この第2のマイクロ流路に空気を注入することにより脂質溶液を排出する。このとき小孔のバッファ溶液の界面には脂質溶液の一部が残留する。次に、第2のマイクロ流路にバッファ溶液が注入されて空気を押し出し、空気をバッファ溶液に置換する。すると小孔には平面脂質二重膜が形成される。
【0011】
本発明は、この方法を更に改良し、膜厚及び圧力を制御可能となり、再現性を飛躍的向上を図った。
【0012】
一方、これまでの膜タンパク質の機能解析法は、膜電流を計測する方法が一般的である。中でもパッチクランプ法は、細胞膜に直接ガラス管の先端を接触させて吸引し、吸引された内側の膜に存在するイオンチャンネルを通過するイオンの量を膜電流として計測する方法である。これによって、原理的には膜タンパク質の寿命、開閉確率、伝導性などを明らかにすることができるが、実際は、吸引した細胞膜中には多種の膜タンパク質が混在し、そのうちの一種類に注目した議論をするためには、さまざまな工夫を要する。また、トランスポータなど物質輸送にかかわる膜タンパク質は、計測可能な膜電流が発生しないため、一般的にこの方法は使えない。
【0013】
一方、近年注目されているのが上記した「平面膜法」である。これは、テフロン(登録商標)シートなどに小孔を開け、その内部に細胞膜と同じ、脂質二重層を再構成する方法であるが、再構成後に1種類の膜タンパク質を導入することで、一分子の特性を解析できる。例えば、膜の上下に電極を配置すれば、膜電流の計測ができる。このような平面膜法は、効率的な膜タンパク質の機能解明法であるが、現状で販売されている製品は、脂質二重膜の再構成プロセスは運まかせであり、再構成膜の再現性、安定性は、一般に低い。また、複数の脂質膜を同時に再構成するのは至難の業である。
【0014】
本発明は、上記状況に鑑みて、マイクロ・ナノ加工技術を利用して、小型チップ上に再現性よく、安定して脂質膜を再構成できる脂質二重膜の形成方法およびその装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、上記目的を達成するために、
〔1〕脂質二重膜の形成方法において、基板の表裏にチャンバおよびマイクロ流路を設け、前記チャンバとマイクロ流路を貫通する微小孔を設け、前記チャンバ内にバッファ媒体を導入し、前記マイクロ流路にはバッファ媒体−脂質とを含む有機溶媒−バッファ媒体を順次供給し、かつ前記チャンバのバッファ媒体に圧力を印加可能にし、前記チャンバ内の圧力を調整することにより、前記微小孔に形成される脂質層を薄膜化して脂質二重膜を形成することを特徴とする。
【0016】
〔2〕上記〔1〕記載の脂質二重膜の形成方法において、前記微小孔は、前記チャンバに形成される漏斗状の穴に連通して形成されることを特徴とする。
【0017】
〔3〕上記〔1〕記載の脂質二重膜の形成方法において、前記微小孔を複数個形成することを特徴とする。
【0018】
〔4〕上記〔1〕、〔2〕又は〔3〕記載の脂質二重膜の形成方法において、前記微小孔の直径をほぼ100μm、前記微小孔の高さを40μm〜50μm、前記チャンバ内の圧力をほぼ200Pa−400Paとすることを特徴とする。
【0019】
〔5〕上記〔4〕記載の脂質二重膜の形成方法において、脂質二重膜の形成の成功率を90%以上とすることを特徴とする。
【0020】
〔6〕上記〔1〕、〔2〕、〔4〕又は〔5〕記載の脂質二重膜の形成方法において、前記微小孔を独立にアレイ化し、異種の膜タンパク質を形成することを特徴とする。
【0021】
〔7〕上記〔1〕から〔6〕の何れか1項記載の脂質二重膜の形成方法において、前記チャンバ側と前記マイクロ流路側にそれぞれマイクロ電極と、該マイクロ電極に接続されるパッチクランプ増幅器を配置し、脂質二重膜の膜電流を測定可能にすることを特徴とする。
【0022】
〔8〕脂質二重膜の形成装置において、基板と、この基板上に形成されるマイクロ流路と、このマイクロ流路上に配置され、漏斗状の穴と、該穴に連通する該穴の底部に形成される微小孔とを形成される基板と、前記漏斗状の穴を単位として、形成されるチャンバと、このチャンバ内の圧力を調整する圧力調整手段とを具備することを特徴とする。
【0023】
〔9〕上記〔8〕記載の脂質二重膜の形成装置において、前記微小孔を複数個配置することを特徴とする。
【0024】
〔10〕上記〔7〕記載の脂質二重膜の形成装置において、前記チャンバ側と前記マイクロ流路側にそれぞれ配置されるマイクロ電極と、このマイクロ電極に接続されるパッチクランプ増幅器を備え、脂質二重膜の膜電流を測定可能にしてなる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、マイクロ・ナノ加工技術を利用して、小型チップ上に再現性よく、安定して脂質膜を再構成できる計測プラットフォームを実現する。マイクロ加工により、微小孔のサイズを調整し、平面膜の安定化を図る。また、微小流路と組合わせ、脂質の量や液体導入圧力を制御し、再現性を向上させる、さらに、微小孔を独立にアレイ化し、異種の膜タンパク質の膜電流計測、物質輸送イメージングを選択的に行えるシステムを提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明の脂質二重膜の形成方法は、基板(チップ)の表裏にチャンバおよびマイクロ流路を設け、前記チャンバとマイクロ流路を貫通する微小孔を設け、前記チャンバ内にバッファ媒体を導入し、前記マイクロ流路にはバッファ媒体−脂質とを含む有機溶媒−バッファ媒体を順次供給し、かつ前記チャンバ内のバッファ媒体に圧力を印加可能にし、該チャンバ内の圧力を調整することにより、前記微小孔に形成される脂質層を薄膜化して脂質二重膜を形成する。
【実施例】
【0027】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0028】
図1は本発明の原理を示す脂質二重膜の形成装置の模式図、図2は本発明にかかる脂質を含む有機溶媒を示す模式図である。
【0029】
この図において、1はガラス基板(底面板)、2はマイクロ流路、3は基板(チップ)、4Aは漏斗型の穴、4Bはその漏斗型の穴の底部に形成される微小孔、5はチャンバ、6は脂質二重膜、7は微小注入装置(図示なし)から滴下されるバッファ液、8はマイクロ流路2内のバッファ液、9はパッチクランプ増幅器、10,11はマイクロ電極、12は対物レンズである。なお、微小孔4Bの部分は疎水性であることが望ましい。
【0030】
このように、基板(チップ)3の表裏にチャンバ5およびマイクロ流路2を設け、それらを貫通する微小孔4Bに脂質二重膜6を再構成するようにしている。マイクロ流路2に脂質を含む有機溶媒およびバッファ液8として水溶液を交互に流すことにより、微小孔4Bに脂質からなる薄膜が水平に形成され、その薄膜化が進行することにより脂質二重膜6が形成される。その脂質二重膜6は、直接対物レンズ12を通して顕微鏡観察でき、その面積を求めたり、脂質二重膜6に導入されたタンパク質を蛍光イメージングして密度を求めることができる。また、パッチクランプ増幅器9により膜電流計測も可能となる。これらの情報は、膜タンパク1分子あたりのチャンネル電流値や、分子の輸送量を定量的に求めるのに必要な情報となる。
【0031】
図3は本発明にかかる脂質二重膜の形成工程を示す図である。
【0032】
まず、図3(a)に示すように、チャンバ5の壁5Aにはシリンジポンプ(図示なし)によって気圧を制御するための通路5Bが形成されている。
【0033】
そこで、マイクロ流路2に空気15を通した状態で、チャンバ5に微小注入装置16からバッファ液7を滴下する。すると、バッファ液7の界面は、表面張力により微小孔4Bの下端からわずかに露出した状態でとどまる。
【0034】
次に、図3(b)に示すように、マイクロ流路2に脂質を含む有機溶媒13を流す。
【0035】
次に、図3(c)に示すように、マイクロ流路2内の脂質を含む有機溶媒13を抜いて、空気15を通す。すると、微小孔4Bの下端のバッファ液7の表面には脂質層18が付着して残る。
【0036】
次に、図3(d)に示すように、マイクロ流路2にバッファ液8を通す。
【0037】
次に、図3(e)に示すように、チャンバ5に蓋17を被せて密封するとともに、チャンバ5の壁5Aに形成された通路5Bから流体(ここでは空気)を充填してチャンバ内の圧力を調整する。すると、気圧の上昇とともにバッファ液8が押し下げられることにより、脂質層18は薄くなる(図7の上段参照)。それにより、図3(f)に示すように、脂質二重膜6が形成される。
【0038】
このように形成される脂質二重膜6の再現性、安定性を高める条件として、微小孔の設計、二つのバッファ液(水溶液)が接触するための圧力、速度、脂質の量などが膜形成の重要な要素であることが、これまでの研究から分かってきた。
【0039】
安定度を上げるための策として、まず微小孔の直径を小さくすることにより、より安定で割れにくい脂質二重膜を形成できる。従来、孔の直径が小さければ、脂質分子層の薄膜化が進行しにくく、二重膜が得られにくかったが、本発明では、マイクロ流路によって、脂質量を微量化できるため、薄膜に最適な量を抽出できる。さらに、圧力差を生む溶液変動がないように、ガラスチューブを利用したり、溶液切り替えシステムを導入する。また、平面膜にラフト構造となる繊維状分子を導入し、本質的に膜の安定化を向上させることもひとつの解決法である。
【0040】
図4は本発明の第1実施例を示す脂質二重膜の形成装置の模式図、図5は漏斗状の穴とその底部に形成される微小孔を示す図であり、図5(a)は漏斗状の穴の全体図、図5(b)はその微小孔の拡大図である。
【0041】
これらの図において、20は脂質二重膜の形成装置、21は上部チャンバ、22Aは漏斗型の穴、22Bはその漏斗型の穴22Aの底部に形成される微小孔、23はマイクロ流路である。
【0042】
本発明では、脂質二重膜の形成装置20として、アクリルプラスチック(PMMA)板に微細機械加工を施し、マイクロ流路23および微小孔22Bを作製し、そこに脂質二重膜を再構成する。このように、マイクロ流路、チャンバが透明で機械加工が簡単で、電気的に絶縁されたPMMAで作製されているため、顕微鏡観察や膜電流計測が容易である。横型デバイスにおいては、微小孔22Bの直径、高さを調整し、チャンバ21を通して圧力を徐々にかけていくと、最大で90%以上の脂質二重膜の形成率を得ることに成功している。因みに、従来法では10%以下であった。
【0043】
図6はその漏斗状の穴の底部の微小孔に形成される脂質平面膜を示す図であり、図6(a)は脂質二重膜形成前の脂質層の状態を、図6(b)は脂質二重膜形成後の状態を示している。
【0044】
図7はそのチャンバにおける圧力と脂質二重膜の形成プロセスを示す図であり、図7(a)は20Paを印加、図7(b)は170Paを印加、図7(c)は210Paを印加したときの脂質二重膜の形成状態が示されている。これらの図から、圧力の増加とともに中央部から脂質層が押し下げられて薄くなり200Paを印加することにより、脂質二重膜が形成されていることがわかる。
【0045】
ここで、微小孔22Bの高さH〔図7(a)参照〕が脂質二重膜形成の成功率に与える影響について調べた。
【0046】
図8は脂質二重膜の形成の成功率を示す図である。
【0047】
この図から、その微小孔の高さHが47μmのとき、90%以上の成功率を達成できていることがわかる。なお、図8中の黒色のグラフは厚い脂質層が形成される割合、灰色のグラフは脂質二重膜形成の成功率を示している。
【0048】
このように、本発明により、脂質二重膜形成の成功率が飛躍的に向上した理由は、
(1)図7の上段に示すように、ある高さHをもった微小孔の内壁に、その高さHに比例した体積の脂質溶液(脂質層)が一定量残る(直径100μmの微小孔で実験したときの高さHの最適量は50μm前後であった)。
【0049】
(2)また、図3(d)において説明したように、圧力調整を精密に行うことにある。
【0050】
図9は初期の脂質層の厚さと微小孔の高さHの特性図である。
【0051】
この図において、xは各試験の生データ、実線はそれにあてはめた直線である。この図から分かるように、およそ±20μmという大きな変動があるが、微小孔の高さHにほぼ比例する。
【0052】
脂質層が二重膜にならない場合というのは、たいていの場合はシャボン玉が割れるのと同様に、膜が薄くなったときに壊れてしまう。
【0053】
図10は脂質層が二重膜になった場合(円)及び二重膜にならずに壊れた場合(四角)のチャンバにおける圧力と初期の脂質層の厚さの特性図である。
【0054】
二重膜の形成に成功した場合、加圧力は最初の厚さにかかわらずほとんどが400Pa未満である。300Pa以上の高圧であると脂質層の湾曲が大きくなり壊れる可能性が高くなる。
【0055】
これらの図から、微小孔の高さHの最適値は大体50μmであることがわかる。微小孔の高さHが20μm以下の場合、バッファを導入する際や、わずかに加圧した場合でも脂質層は壊れてしまう。微小孔の高さHが60μm以上の場合だと薄膜化により大きな圧力が必要になり、最終的な薄膜化の過程で壊れてしまう。
【0056】
次に、本発明の第2実施例について説明する。
【0057】
図11は本発明の第2実施例を示す漏斗状の穴の底部に複数の微小孔が形成されたチャンバを示す図であり、図11(a)はその全体図、図11(b)は複数の微小孔の拡大図、図11(c)はその複数の微小孔のうちの1個を示す斜視図である。なお、微小孔の部分は疎水性であることが望ましい。
【0058】
この図から明らかなように、1つのチャンバ(漏斗状の穴)30内にここでは4個の微小孔31〜34を形成しておき、同時に複数の平面脂質膜を形成することができるように構成している。
【0059】
図12はそのようにして得られた(微小孔の高さHが43μm)平面脂質膜を示す図であり、図12(a)は初期の厚い脂質層の状態を示し、図12(b)は、図12(a)の状態での蛍光脂質分子の蛍光像を示す図、図12(c)は最終状態の平面二重膜の状態を示し、図12(d)は、図12(c)の状態での蛍光脂質分子の蛍光像を示す図である。
【0060】
図12(d)に示されるように、厚い脂質膜が形成された状態では、4孔すべてにほぼ均等な蛍光が見られるため、配置された脂質溶液の量が均一であることが分かる。図12では上側チャンバが加圧され、中心部は薄膜化しており、蛍光がほとんどみられず、バルク相である周囲の部分のみ脂質膜が厚い状態であるため、環状に蛍光がみられる。
【0061】
図13は4つのそれぞれの微小孔に同時に形成される脂質膜とその確認状態を示す図〔図12(c)の拡大図〕であり、それぞれ、図13(1)は、図12(c)の左上、図13(2)は、図12(c)の右上、図13(3)は、図12(c)の左下、図13(4)は、図12(c)の右下の脂質二重膜を示している。
【0062】
図14は本発明の第1実施例において(すなわち、図5の単一孔のデバイスにおいて)グラミシジンというチャンネルタンパク質を脂質二重膜に組み込み、膜の両面に電圧(80mV)を印加したときの、グラミシジンを通過する電流を示している。このとき、水相にはKClが添加されている。グラミシジンは、モノマーが二重膜のそれぞれの片面に入るが、表側と裏側に組み込まれたグラミシジンが結合してダイマーになったときに膜を通過するチャンネルを形成する。結合は確率的に発生するが、図14にもみられるステップ状の通過電流は、グラミシジンの二量化の現象にともなって通過する電流を一分子レベルでとらえたものである。グラミシジンが二量化によってチャンネルを形成する現象は、脂質膜が二重膜であるときにしか発生しないため、これにより形成された膜が真に脂質二重膜であることが証明されている。また、本発明のデバイスがタンパク質一分子のチャンネル電流計測に耐えうるものであることも同時に示している。
【0063】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づき種々の変形が可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0064】
膜タンパク質は、薬剤応答・エネルギー変換・免疫反応・物質輸送・情報伝達などの生理的な機能の重要な役割を担っている。また、膜タンパク質の多くは、創薬の主なターゲットであり、たとえばGPCR(G−protein coupled receptor;Gタンパク質共役受容体)と呼ばれる一連のレセプタータンパク質に関する薬の市場規模は大きい。そのため、チップ上への膜タンパク質のアレイ化が期待されているが、脂質平面膜を効率的にアレイ上に再構成したものは報告されていない。また、生理的条件設定と同様に膜電流を計測可能なデバイスは皆無である。よって、本発明の膜タンパク質機能計測システムの開発は、極めて有用性があり、創薬、治療分野へのブレークスルーとなりえる。
【0065】
例えば、ヒトゲノム計画で、すでに全てのGPCRの遺伝子は同定されており、実質上ターゲットとなりうる数は限られている。そのため、これをチップ上にアレイ状に並べて、それぞれのGPCRに対する薬剤に対する応答を調べることが急務である。これ以外にも、がん細胞の薬剤耐性の原因であるABCトランスポータと呼ばれる一連の膜タンパク質など、次世代の創薬ターゲットの主なものも膜タンパク質である。本システムの開発は、こういった創薬のターゲット膜タンパク質を組み込むことで、迅速な薬剤開発に寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の原理を示す脂質二重膜の形成装置の模式図である。
【図2】本発明にかかる脂質を含む有機溶媒を示す模式図である。
【図3】本発明にかかる脂質二重膜の形成工程を示す図である。
【図4】本発明の第1実施例を示す脂質二重膜の形成装置の模式図である。
【図5】本発明の第1実施例を示す漏斗状の穴とその底部に形成される微小孔を示す図である。
【図6】本発明の第1実施例を示す漏斗状の穴の底部の微小孔に形成される脂質平面膜を示す図である。
【図7】本発明の第1実施例を示すチャンバにおける圧力と脂質二重膜の形成を示す図である。
【図8】本発明の第1実施例を示す脂質膜および脂質二重膜の形成の成功率を示す図である。
【図9】本発明の第1実施例を示す初期の脂質膜の厚さと微小孔の高さの特性図である。
【図10】本発明の第1実施例を示すチャンバにおける圧力と初期の脂質膜の厚さの特性図である。
【図11】本発明の第2実施例を示す漏斗状の穴の底部に複数の微小孔が形成されたチャンバを示す図である。
【図12】本発明の第2実施例により得られた平面脂質膜を示す図である。
【図13】本発明の第2実施例による単一の微小孔に形成される平面脂質膜とその確認状態を示す図である。
【図14】本発明の第2実施例の平面脂質膜の特性を示す図である。
【図15】LB法による従来の平面脂質膜形成法を示す模式図である。
【符号の説明】
【0067】
1 ガラス基板(底面板)
2,23 マイクロ流路
3 基板(チップ)
4A,22A,30 漏斗型の穴
4B,22B 微小孔
5 チャンバ
5A チャンバの壁
5B 通路
6 脂質二重膜
7 微小注入装置(図示なし)から滴下されるバッファ液
8 マイクロ流路内のバッファ液
9 パッチクランプ増幅器
10,11 マイクロ電極
12 対物レンズ
13 脂質を含む有機溶媒
15 空気
16 微小注入装置
17 蓋
18 脂質層
20 脂質二重膜の形成装置
21 上部チャンバ
30 1つのチャンバ
31〜34 4個の微小孔
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオテクノロジー、バイオチップ、膜タンパク質分析、創薬スクリーニング、バイオセンサーなどの分野に用いられる膜タンパク質分析用脂質二重膜の形成方法とその装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
膜タンパク質は、細胞膜中に存在し、免疫反応、細胞の内外の物質輸送・排出に重要な役割を果たしているため、各種の膜タンパク質の機能や特性を一つ一つ解明することが、次世代の治療、創薬法の開発に重要な課題となっている。
【0003】
イオンチャンネル等、膜タンパク質分析のための平面脂質膜作製の代表的な従来方法としては平面膜法、すなわち、はけ塗り法やLB法(Longmuir−Blodgett法)が挙げられる。両者とも、バッファを満たしたチャンバ内でテフロン(登録商標)シートなどに開けた数百ミクロン程度の小孔に、脂質二重膜を形成する方法であるが、前者は脂質溶液をはけで小孔に塗る方法、後者は、液体表面に脂質の単分子膜が形成されることを利用して、テフロン(登録商標)シートの両側のチャンバの溶液表面を徐々に上昇させることによって平面脂質膜を形成する方法である。
【0004】
図15はそのLB法による平面脂質膜形成法を示す模式図である。
【0005】
この図において、101はテフロン(登録商標)シート、102はそのテフロン(登録商標)シート101に開口された小孔、103は表面に脂質の単分子膜104が形成される溶液、105はバッファ溶液であり、テフロン(登録商標)シート110の両側のチャンバーの溶液103表面を徐々に上昇させることによって脂質膜106を形成するようにしている。
【0006】
また、特許文献6として、下溶液槽は底板および間隔保持部材に囲まれ、上溶液槽の下方に形成されており、下溶液槽の内部の圧力を低下させることにより、小孔で形成した人工脂質二重膜を下溶液槽側に膨らませて薄化させ、人工脂質二重膜を薄化した状態で支持層で支持するようにした人工脂質二重膜を有する電流測定装置が提案されているが、その場合の人工脂質二重膜の形成は、後述するように困難が伴うものであった。
【特許文献1】特開平02−35941号公報
【特許文献2】特開平05−253467号公報
【特許文献3】特開平07−241512号公報
【特許文献4】特表2002−505007号公報
【特許文献5】特表2003−511679号公報
【特許文献6】特開2005−091308号公報
【非特許文献1】H.Zhu et al.,“Global Analysis of Protein Activities Using Proteome Chips”,Science,Vol.293,pp.2101−2105,2001.
【非特許文献2】B.Alberts et al.,“Molecular Biology of the Cell;4th Ed.,”Garland Science,2002.
【非特許文献3】C.Miller,ed.,“Ion Channel Reconstitution,”Plenum Press,1986.
【非特許文献4】T.Ide and T.Yanagida,“An Artificial Lipid Bilayer Formed on an Agarose−Coated Glass for Simultaneous Electrical and Optical Measurement of Single Ion Channels,”Biochem.Biophys.Res.Comm.,265,pp.595−599,1999.
【非特許文献5】T.Ide,Y.Takeuchi and T.Yanagida,“Development of an Experimental Apparatus for Simultaneous Observation of Optical and Electrical Signals from Single Ion Channels,”Single Molecules,3(1),pp.33−42,2002.
【非特許文献6】J.T.Groves,N.Ulman,and S.G.Boxer,“Micropatterning Fluid Lipid Bilayers on Solid Supports,”Science,Vol.275,pp.651−653.
【非特許文献7】M.Mayer et al.,“Microfabricated Teflon Membranes for Low−Noise Recording of Ion Channels in Planar Lipid Bilayers,”Biophys.J.,Vol.85,pp.2684−2695,2003.
【非特許文献8】Fertig et al.,“Microstructured Glass Chip for Ion−Channel Electrophysiology,”Phys.Rev.E,Vol.64,040901(R),2001.
【非特許文献9】鈴木宏明、野地博行、竹内昌治、「マイクロ流路を用いた脂質平面膜の再構成」、第8回化学とマイクロ・ナノシステム研究会講演要旨集、61頁、2003年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記したはけ塗り法とLB法の両方法とも、数cm程度の大きなチャンバーが必要であり、デッドボリュームが大きく、顕微鏡観察も不可能である。また、上記の方法により流路内に複数の小孔を設けて、複数の平面膜を同時に形成した場合、隣り合う小孔(平面膜)同士は流路中のバッファ液により電気的に導通しているため、個々の電気生理計測を行うことは難しい。
【0008】
また、一度に形成できる脂質二重膜は基本的に一つであり、また形成には職人的熟練を要し、再現性にも乏しい。したがって、これまで分析の多チャンネル化は不可能であった。
【0009】
そこで、本願発明者らは既に、第1及び第2のマイクロ流路を形成して、第2のマイクロ流路へ脂質溶液を流して、その脂質溶液を制御することにより、平面脂質二重膜を形成する人工脂質膜の形成方法及びその装置を提案している。
【0010】
これによれば、まず、第1のマイクロ流路にバッファ溶液(水溶液)を満たし、次に、小孔を有する第2のマイクロ流路に脂質溶液を満たし、次に、この第2のマイクロ流路に空気を注入することにより脂質溶液を排出する。このとき小孔のバッファ溶液の界面には脂質溶液の一部が残留する。次に、第2のマイクロ流路にバッファ溶液が注入されて空気を押し出し、空気をバッファ溶液に置換する。すると小孔には平面脂質二重膜が形成される。
【0011】
本発明は、この方法を更に改良し、膜厚及び圧力を制御可能となり、再現性を飛躍的向上を図った。
【0012】
一方、これまでの膜タンパク質の機能解析法は、膜電流を計測する方法が一般的である。中でもパッチクランプ法は、細胞膜に直接ガラス管の先端を接触させて吸引し、吸引された内側の膜に存在するイオンチャンネルを通過するイオンの量を膜電流として計測する方法である。これによって、原理的には膜タンパク質の寿命、開閉確率、伝導性などを明らかにすることができるが、実際は、吸引した細胞膜中には多種の膜タンパク質が混在し、そのうちの一種類に注目した議論をするためには、さまざまな工夫を要する。また、トランスポータなど物質輸送にかかわる膜タンパク質は、計測可能な膜電流が発生しないため、一般的にこの方法は使えない。
【0013】
一方、近年注目されているのが上記した「平面膜法」である。これは、テフロン(登録商標)シートなどに小孔を開け、その内部に細胞膜と同じ、脂質二重層を再構成する方法であるが、再構成後に1種類の膜タンパク質を導入することで、一分子の特性を解析できる。例えば、膜の上下に電極を配置すれば、膜電流の計測ができる。このような平面膜法は、効率的な膜タンパク質の機能解明法であるが、現状で販売されている製品は、脂質二重膜の再構成プロセスは運まかせであり、再構成膜の再現性、安定性は、一般に低い。また、複数の脂質膜を同時に再構成するのは至難の業である。
【0014】
本発明は、上記状況に鑑みて、マイクロ・ナノ加工技術を利用して、小型チップ上に再現性よく、安定して脂質膜を再構成できる脂質二重膜の形成方法およびその装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、上記目的を達成するために、
〔1〕脂質二重膜の形成方法において、基板の表裏にチャンバおよびマイクロ流路を設け、前記チャンバとマイクロ流路を貫通する微小孔を設け、前記チャンバ内にバッファ媒体を導入し、前記マイクロ流路にはバッファ媒体−脂質とを含む有機溶媒−バッファ媒体を順次供給し、かつ前記チャンバのバッファ媒体に圧力を印加可能にし、前記チャンバ内の圧力を調整することにより、前記微小孔に形成される脂質層を薄膜化して脂質二重膜を形成することを特徴とする。
【0016】
〔2〕上記〔1〕記載の脂質二重膜の形成方法において、前記微小孔は、前記チャンバに形成される漏斗状の穴に連通して形成されることを特徴とする。
【0017】
〔3〕上記〔1〕記載の脂質二重膜の形成方法において、前記微小孔を複数個形成することを特徴とする。
【0018】
〔4〕上記〔1〕、〔2〕又は〔3〕記載の脂質二重膜の形成方法において、前記微小孔の直径をほぼ100μm、前記微小孔の高さを40μm〜50μm、前記チャンバ内の圧力をほぼ200Pa−400Paとすることを特徴とする。
【0019】
〔5〕上記〔4〕記載の脂質二重膜の形成方法において、脂質二重膜の形成の成功率を90%以上とすることを特徴とする。
【0020】
〔6〕上記〔1〕、〔2〕、〔4〕又は〔5〕記載の脂質二重膜の形成方法において、前記微小孔を独立にアレイ化し、異種の膜タンパク質を形成することを特徴とする。
【0021】
〔7〕上記〔1〕から〔6〕の何れか1項記載の脂質二重膜の形成方法において、前記チャンバ側と前記マイクロ流路側にそれぞれマイクロ電極と、該マイクロ電極に接続されるパッチクランプ増幅器を配置し、脂質二重膜の膜電流を測定可能にすることを特徴とする。
【0022】
〔8〕脂質二重膜の形成装置において、基板と、この基板上に形成されるマイクロ流路と、このマイクロ流路上に配置され、漏斗状の穴と、該穴に連通する該穴の底部に形成される微小孔とを形成される基板と、前記漏斗状の穴を単位として、形成されるチャンバと、このチャンバ内の圧力を調整する圧力調整手段とを具備することを特徴とする。
【0023】
〔9〕上記〔8〕記載の脂質二重膜の形成装置において、前記微小孔を複数個配置することを特徴とする。
【0024】
〔10〕上記〔7〕記載の脂質二重膜の形成装置において、前記チャンバ側と前記マイクロ流路側にそれぞれ配置されるマイクロ電極と、このマイクロ電極に接続されるパッチクランプ増幅器を備え、脂質二重膜の膜電流を測定可能にしてなる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、マイクロ・ナノ加工技術を利用して、小型チップ上に再現性よく、安定して脂質膜を再構成できる計測プラットフォームを実現する。マイクロ加工により、微小孔のサイズを調整し、平面膜の安定化を図る。また、微小流路と組合わせ、脂質の量や液体導入圧力を制御し、再現性を向上させる、さらに、微小孔を独立にアレイ化し、異種の膜タンパク質の膜電流計測、物質輸送イメージングを選択的に行えるシステムを提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明の脂質二重膜の形成方法は、基板(チップ)の表裏にチャンバおよびマイクロ流路を設け、前記チャンバとマイクロ流路を貫通する微小孔を設け、前記チャンバ内にバッファ媒体を導入し、前記マイクロ流路にはバッファ媒体−脂質とを含む有機溶媒−バッファ媒体を順次供給し、かつ前記チャンバ内のバッファ媒体に圧力を印加可能にし、該チャンバ内の圧力を調整することにより、前記微小孔に形成される脂質層を薄膜化して脂質二重膜を形成する。
【実施例】
【0027】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0028】
図1は本発明の原理を示す脂質二重膜の形成装置の模式図、図2は本発明にかかる脂質を含む有機溶媒を示す模式図である。
【0029】
この図において、1はガラス基板(底面板)、2はマイクロ流路、3は基板(チップ)、4Aは漏斗型の穴、4Bはその漏斗型の穴の底部に形成される微小孔、5はチャンバ、6は脂質二重膜、7は微小注入装置(図示なし)から滴下されるバッファ液、8はマイクロ流路2内のバッファ液、9はパッチクランプ増幅器、10,11はマイクロ電極、12は対物レンズである。なお、微小孔4Bの部分は疎水性であることが望ましい。
【0030】
このように、基板(チップ)3の表裏にチャンバ5およびマイクロ流路2を設け、それらを貫通する微小孔4Bに脂質二重膜6を再構成するようにしている。マイクロ流路2に脂質を含む有機溶媒およびバッファ液8として水溶液を交互に流すことにより、微小孔4Bに脂質からなる薄膜が水平に形成され、その薄膜化が進行することにより脂質二重膜6が形成される。その脂質二重膜6は、直接対物レンズ12を通して顕微鏡観察でき、その面積を求めたり、脂質二重膜6に導入されたタンパク質を蛍光イメージングして密度を求めることができる。また、パッチクランプ増幅器9により膜電流計測も可能となる。これらの情報は、膜タンパク1分子あたりのチャンネル電流値や、分子の輸送量を定量的に求めるのに必要な情報となる。
【0031】
図3は本発明にかかる脂質二重膜の形成工程を示す図である。
【0032】
まず、図3(a)に示すように、チャンバ5の壁5Aにはシリンジポンプ(図示なし)によって気圧を制御するための通路5Bが形成されている。
【0033】
そこで、マイクロ流路2に空気15を通した状態で、チャンバ5に微小注入装置16からバッファ液7を滴下する。すると、バッファ液7の界面は、表面張力により微小孔4Bの下端からわずかに露出した状態でとどまる。
【0034】
次に、図3(b)に示すように、マイクロ流路2に脂質を含む有機溶媒13を流す。
【0035】
次に、図3(c)に示すように、マイクロ流路2内の脂質を含む有機溶媒13を抜いて、空気15を通す。すると、微小孔4Bの下端のバッファ液7の表面には脂質層18が付着して残る。
【0036】
次に、図3(d)に示すように、マイクロ流路2にバッファ液8を通す。
【0037】
次に、図3(e)に示すように、チャンバ5に蓋17を被せて密封するとともに、チャンバ5の壁5Aに形成された通路5Bから流体(ここでは空気)を充填してチャンバ内の圧力を調整する。すると、気圧の上昇とともにバッファ液8が押し下げられることにより、脂質層18は薄くなる(図7の上段参照)。それにより、図3(f)に示すように、脂質二重膜6が形成される。
【0038】
このように形成される脂質二重膜6の再現性、安定性を高める条件として、微小孔の設計、二つのバッファ液(水溶液)が接触するための圧力、速度、脂質の量などが膜形成の重要な要素であることが、これまでの研究から分かってきた。
【0039】
安定度を上げるための策として、まず微小孔の直径を小さくすることにより、より安定で割れにくい脂質二重膜を形成できる。従来、孔の直径が小さければ、脂質分子層の薄膜化が進行しにくく、二重膜が得られにくかったが、本発明では、マイクロ流路によって、脂質量を微量化できるため、薄膜に最適な量を抽出できる。さらに、圧力差を生む溶液変動がないように、ガラスチューブを利用したり、溶液切り替えシステムを導入する。また、平面膜にラフト構造となる繊維状分子を導入し、本質的に膜の安定化を向上させることもひとつの解決法である。
【0040】
図4は本発明の第1実施例を示す脂質二重膜の形成装置の模式図、図5は漏斗状の穴とその底部に形成される微小孔を示す図であり、図5(a)は漏斗状の穴の全体図、図5(b)はその微小孔の拡大図である。
【0041】
これらの図において、20は脂質二重膜の形成装置、21は上部チャンバ、22Aは漏斗型の穴、22Bはその漏斗型の穴22Aの底部に形成される微小孔、23はマイクロ流路である。
【0042】
本発明では、脂質二重膜の形成装置20として、アクリルプラスチック(PMMA)板に微細機械加工を施し、マイクロ流路23および微小孔22Bを作製し、そこに脂質二重膜を再構成する。このように、マイクロ流路、チャンバが透明で機械加工が簡単で、電気的に絶縁されたPMMAで作製されているため、顕微鏡観察や膜電流計測が容易である。横型デバイスにおいては、微小孔22Bの直径、高さを調整し、チャンバ21を通して圧力を徐々にかけていくと、最大で90%以上の脂質二重膜の形成率を得ることに成功している。因みに、従来法では10%以下であった。
【0043】
図6はその漏斗状の穴の底部の微小孔に形成される脂質平面膜を示す図であり、図6(a)は脂質二重膜形成前の脂質層の状態を、図6(b)は脂質二重膜形成後の状態を示している。
【0044】
図7はそのチャンバにおける圧力と脂質二重膜の形成プロセスを示す図であり、図7(a)は20Paを印加、図7(b)は170Paを印加、図7(c)は210Paを印加したときの脂質二重膜の形成状態が示されている。これらの図から、圧力の増加とともに中央部から脂質層が押し下げられて薄くなり200Paを印加することにより、脂質二重膜が形成されていることがわかる。
【0045】
ここで、微小孔22Bの高さH〔図7(a)参照〕が脂質二重膜形成の成功率に与える影響について調べた。
【0046】
図8は脂質二重膜の形成の成功率を示す図である。
【0047】
この図から、その微小孔の高さHが47μmのとき、90%以上の成功率を達成できていることがわかる。なお、図8中の黒色のグラフは厚い脂質層が形成される割合、灰色のグラフは脂質二重膜形成の成功率を示している。
【0048】
このように、本発明により、脂質二重膜形成の成功率が飛躍的に向上した理由は、
(1)図7の上段に示すように、ある高さHをもった微小孔の内壁に、その高さHに比例した体積の脂質溶液(脂質層)が一定量残る(直径100μmの微小孔で実験したときの高さHの最適量は50μm前後であった)。
【0049】
(2)また、図3(d)において説明したように、圧力調整を精密に行うことにある。
【0050】
図9は初期の脂質層の厚さと微小孔の高さHの特性図である。
【0051】
この図において、xは各試験の生データ、実線はそれにあてはめた直線である。この図から分かるように、およそ±20μmという大きな変動があるが、微小孔の高さHにほぼ比例する。
【0052】
脂質層が二重膜にならない場合というのは、たいていの場合はシャボン玉が割れるのと同様に、膜が薄くなったときに壊れてしまう。
【0053】
図10は脂質層が二重膜になった場合(円)及び二重膜にならずに壊れた場合(四角)のチャンバにおける圧力と初期の脂質層の厚さの特性図である。
【0054】
二重膜の形成に成功した場合、加圧力は最初の厚さにかかわらずほとんどが400Pa未満である。300Pa以上の高圧であると脂質層の湾曲が大きくなり壊れる可能性が高くなる。
【0055】
これらの図から、微小孔の高さHの最適値は大体50μmであることがわかる。微小孔の高さHが20μm以下の場合、バッファを導入する際や、わずかに加圧した場合でも脂質層は壊れてしまう。微小孔の高さHが60μm以上の場合だと薄膜化により大きな圧力が必要になり、最終的な薄膜化の過程で壊れてしまう。
【0056】
次に、本発明の第2実施例について説明する。
【0057】
図11は本発明の第2実施例を示す漏斗状の穴の底部に複数の微小孔が形成されたチャンバを示す図であり、図11(a)はその全体図、図11(b)は複数の微小孔の拡大図、図11(c)はその複数の微小孔のうちの1個を示す斜視図である。なお、微小孔の部分は疎水性であることが望ましい。
【0058】
この図から明らかなように、1つのチャンバ(漏斗状の穴)30内にここでは4個の微小孔31〜34を形成しておき、同時に複数の平面脂質膜を形成することができるように構成している。
【0059】
図12はそのようにして得られた(微小孔の高さHが43μm)平面脂質膜を示す図であり、図12(a)は初期の厚い脂質層の状態を示し、図12(b)は、図12(a)の状態での蛍光脂質分子の蛍光像を示す図、図12(c)は最終状態の平面二重膜の状態を示し、図12(d)は、図12(c)の状態での蛍光脂質分子の蛍光像を示す図である。
【0060】
図12(d)に示されるように、厚い脂質膜が形成された状態では、4孔すべてにほぼ均等な蛍光が見られるため、配置された脂質溶液の量が均一であることが分かる。図12では上側チャンバが加圧され、中心部は薄膜化しており、蛍光がほとんどみられず、バルク相である周囲の部分のみ脂質膜が厚い状態であるため、環状に蛍光がみられる。
【0061】
図13は4つのそれぞれの微小孔に同時に形成される脂質膜とその確認状態を示す図〔図12(c)の拡大図〕であり、それぞれ、図13(1)は、図12(c)の左上、図13(2)は、図12(c)の右上、図13(3)は、図12(c)の左下、図13(4)は、図12(c)の右下の脂質二重膜を示している。
【0062】
図14は本発明の第1実施例において(すなわち、図5の単一孔のデバイスにおいて)グラミシジンというチャンネルタンパク質を脂質二重膜に組み込み、膜の両面に電圧(80mV)を印加したときの、グラミシジンを通過する電流を示している。このとき、水相にはKClが添加されている。グラミシジンは、モノマーが二重膜のそれぞれの片面に入るが、表側と裏側に組み込まれたグラミシジンが結合してダイマーになったときに膜を通過するチャンネルを形成する。結合は確率的に発生するが、図14にもみられるステップ状の通過電流は、グラミシジンの二量化の現象にともなって通過する電流を一分子レベルでとらえたものである。グラミシジンが二量化によってチャンネルを形成する現象は、脂質膜が二重膜であるときにしか発生しないため、これにより形成された膜が真に脂質二重膜であることが証明されている。また、本発明のデバイスがタンパク質一分子のチャンネル電流計測に耐えうるものであることも同時に示している。
【0063】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づき種々の変形が可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0064】
膜タンパク質は、薬剤応答・エネルギー変換・免疫反応・物質輸送・情報伝達などの生理的な機能の重要な役割を担っている。また、膜タンパク質の多くは、創薬の主なターゲットであり、たとえばGPCR(G−protein coupled receptor;Gタンパク質共役受容体)と呼ばれる一連のレセプタータンパク質に関する薬の市場規模は大きい。そのため、チップ上への膜タンパク質のアレイ化が期待されているが、脂質平面膜を効率的にアレイ上に再構成したものは報告されていない。また、生理的条件設定と同様に膜電流を計測可能なデバイスは皆無である。よって、本発明の膜タンパク質機能計測システムの開発は、極めて有用性があり、創薬、治療分野へのブレークスルーとなりえる。
【0065】
例えば、ヒトゲノム計画で、すでに全てのGPCRの遺伝子は同定されており、実質上ターゲットとなりうる数は限られている。そのため、これをチップ上にアレイ状に並べて、それぞれのGPCRに対する薬剤に対する応答を調べることが急務である。これ以外にも、がん細胞の薬剤耐性の原因であるABCトランスポータと呼ばれる一連の膜タンパク質など、次世代の創薬ターゲットの主なものも膜タンパク質である。本システムの開発は、こういった創薬のターゲット膜タンパク質を組み込むことで、迅速な薬剤開発に寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の原理を示す脂質二重膜の形成装置の模式図である。
【図2】本発明にかかる脂質を含む有機溶媒を示す模式図である。
【図3】本発明にかかる脂質二重膜の形成工程を示す図である。
【図4】本発明の第1実施例を示す脂質二重膜の形成装置の模式図である。
【図5】本発明の第1実施例を示す漏斗状の穴とその底部に形成される微小孔を示す図である。
【図6】本発明の第1実施例を示す漏斗状の穴の底部の微小孔に形成される脂質平面膜を示す図である。
【図7】本発明の第1実施例を示すチャンバにおける圧力と脂質二重膜の形成を示す図である。
【図8】本発明の第1実施例を示す脂質膜および脂質二重膜の形成の成功率を示す図である。
【図9】本発明の第1実施例を示す初期の脂質膜の厚さと微小孔の高さの特性図である。
【図10】本発明の第1実施例を示すチャンバにおける圧力と初期の脂質膜の厚さの特性図である。
【図11】本発明の第2実施例を示す漏斗状の穴の底部に複数の微小孔が形成されたチャンバを示す図である。
【図12】本発明の第2実施例により得られた平面脂質膜を示す図である。
【図13】本発明の第2実施例による単一の微小孔に形成される平面脂質膜とその確認状態を示す図である。
【図14】本発明の第2実施例の平面脂質膜の特性を示す図である。
【図15】LB法による従来の平面脂質膜形成法を示す模式図である。
【符号の説明】
【0067】
1 ガラス基板(底面板)
2,23 マイクロ流路
3 基板(チップ)
4A,22A,30 漏斗型の穴
4B,22B 微小孔
5 チャンバ
5A チャンバの壁
5B 通路
6 脂質二重膜
7 微小注入装置(図示なし)から滴下されるバッファ液
8 マイクロ流路内のバッファ液
9 パッチクランプ増幅器
10,11 マイクロ電極
12 対物レンズ
13 脂質を含む有機溶媒
15 空気
16 微小注入装置
17 蓋
18 脂質層
20 脂質二重膜の形成装置
21 上部チャンバ
30 1つのチャンバ
31〜34 4個の微小孔
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の表裏にチャンバおよびマイクロ流路を設け、前記チャンバとマイクロ流路を貫通する微小孔を設け、前記チャンバ内にバッファ媒体を導入し、前記マイクロ流路にはバッファ媒体−脂質とを含む有機溶媒−バッファ媒体を順次供給し、かつ前記チャンバのバッファ媒体に圧力を印加可能にし、前記チャンバ内の圧力を調整することにより、前記微小孔に形成される脂質層を薄膜化して脂質二重膜を形成することを特徴とする脂質二重膜の形成方法。
【請求項2】
請求項1記載の脂質二重膜の形成方法において、前記微小孔は、前記チャンバに形成される漏斗状の穴に連通して形成されることを特徴とする脂質二重膜の形成方法。
【請求項3】
請求項1記載の脂質二重膜の形成方法において、前記微小孔を複数個形成することを特徴とする脂質二重膜の形成方法。
【請求項4】
請求項1、2又は3記載の脂質二重膜の形成方法において、前記微小孔の直径をほぼ100μm、前記微小孔の高さを40μm〜50μm、前記チャンバ内の圧力をほぼ200Pa−400Paとすることを特徴とする脂質二重膜の形成方法。
【請求項5】
請求項4記載の脂質二重膜の形成方法において、脂質二重膜の形成の成功率を90%以上とすることを特徴とする脂質二重膜の形成方法。
【請求項6】
請求項1、2又は4、5記載の脂質二重膜の形成方法において、前記微小孔を独立にアレイ化し、異種の膜タンパク質を形成することを特徴とする脂質二重膜の形成方法。
【請求項7】
請求項1から6の何れか1項記載の脂質二重膜の形成方法において、前記チャンバ側と前記マイクロ流路側にそれぞれマイクロ電極と、該マイクロ電極に接続されるパッチクランプ増幅器を配置し、脂質二重膜の膜電流を測定可能にすることを特徴とする脂質二重膜の形成方法。
【請求項8】
(a)基板と、
(b)該基板上に形成されるマイクロ流路と、
(c)該マイクロ流路上に配置され、底部に微小孔が形成される漏斗状の穴とを有する基板と、
(d)前記漏斗状の穴を単位として形成されるチャンバと、
(e)該チャンバ内の圧力を調整する圧力調整手段とを具備することを特徴とする脂質二重膜の形成装置。
【請求項9】
請求項8記載の脂質二重膜の形成装置において、前記微小孔を複数個配置することを特徴とする脂質二重膜の形成装置。
【請求項10】
請求項7記載の脂質二重膜の形成装置において、前記チャンバ側と前記マイクロ流路側にそれぞれ配置されるマイクロ電極と、該マイクロ電極に接続されるパッチクランプ増幅器を備え、脂質二重膜の膜電流を測定可能にしてなる脂質二重膜の形成装置。
【請求項1】
基板の表裏にチャンバおよびマイクロ流路を設け、前記チャンバとマイクロ流路を貫通する微小孔を設け、前記チャンバ内にバッファ媒体を導入し、前記マイクロ流路にはバッファ媒体−脂質とを含む有機溶媒−バッファ媒体を順次供給し、かつ前記チャンバのバッファ媒体に圧力を印加可能にし、前記チャンバ内の圧力を調整することにより、前記微小孔に形成される脂質層を薄膜化して脂質二重膜を形成することを特徴とする脂質二重膜の形成方法。
【請求項2】
請求項1記載の脂質二重膜の形成方法において、前記微小孔は、前記チャンバに形成される漏斗状の穴に連通して形成されることを特徴とする脂質二重膜の形成方法。
【請求項3】
請求項1記載の脂質二重膜の形成方法において、前記微小孔を複数個形成することを特徴とする脂質二重膜の形成方法。
【請求項4】
請求項1、2又は3記載の脂質二重膜の形成方法において、前記微小孔の直径をほぼ100μm、前記微小孔の高さを40μm〜50μm、前記チャンバ内の圧力をほぼ200Pa−400Paとすることを特徴とする脂質二重膜の形成方法。
【請求項5】
請求項4記載の脂質二重膜の形成方法において、脂質二重膜の形成の成功率を90%以上とすることを特徴とする脂質二重膜の形成方法。
【請求項6】
請求項1、2又は4、5記載の脂質二重膜の形成方法において、前記微小孔を独立にアレイ化し、異種の膜タンパク質を形成することを特徴とする脂質二重膜の形成方法。
【請求項7】
請求項1から6の何れか1項記載の脂質二重膜の形成方法において、前記チャンバ側と前記マイクロ流路側にそれぞれマイクロ電極と、該マイクロ電極に接続されるパッチクランプ増幅器を配置し、脂質二重膜の膜電流を測定可能にすることを特徴とする脂質二重膜の形成方法。
【請求項8】
(a)基板と、
(b)該基板上に形成されるマイクロ流路と、
(c)該マイクロ流路上に配置され、底部に微小孔が形成される漏斗状の穴とを有する基板と、
(d)前記漏斗状の穴を単位として形成されるチャンバと、
(e)該チャンバ内の圧力を調整する圧力調整手段とを具備することを特徴とする脂質二重膜の形成装置。
【請求項9】
請求項8記載の脂質二重膜の形成装置において、前記微小孔を複数個配置することを特徴とする脂質二重膜の形成装置。
【請求項10】
請求項7記載の脂質二重膜の形成装置において、前記チャンバ側と前記マイクロ流路側にそれぞれ配置されるマイクロ電極と、該マイクロ電極に接続されるパッチクランプ増幅器を備え、脂質二重膜の膜電流を測定可能にしてなる脂質二重膜の形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図8】
【図9】
【図10】
【図14】
【図15】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図8】
【図9】
【図10】
【図14】
【図15】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2006−312141(P2006−312141A)
【公開日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−136111(P2005−136111)
【出願日】平成17年5月9日(2005.5.9)
【出願人】(801000049)財団法人生産技術研究奨励会 (72)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年5月9日(2005.5.9)
【出願人】(801000049)財団法人生産技術研究奨励会 (72)
【Fターム(参考)】
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