説明

脈波計測装置およびプログラム

【課題】光電変換による脈波測定を行う場合において、発光素子の駆動電力を大きくすることなくその検出信号における外光の影響によるS/Nの低下を回避する。
【解決手段】脈波センサー30の発光素子32aは測定部位に向けた光の点灯と消灯を周期的に繰り返す。サンプルホールド回路1117aは、発光素子32aが点灯している時間内における受光素子32bの出力信号をサンプルホールドする。サンプルホールド回路1117aは、発光素子32aが消灯している時間内における受光素子32bの出力信号をサンプルホールドする。減算回路1118は、回路1117a,1117bの出力信号の差分信号を出力し、演算処理回路120は、この信号から脈波の計測を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脈波を光学的に計測する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
光電変換を利用した脈波計測に関わる技術が各種提案されている。この脈波計測では、身体における手指や耳朶などの部位を測定部位とし、この測定部位に発光素子と受光素子とを併有する光センサーを装着する。そして、血液に吸収されやすい波長を持った光を発光素子から測定部位に向けて照射し、測定部位における生体組織を透過した透過光やその生体組織における散乱等を経て反射される反射光を受光素子により受光する。その上で、受光素子が受光した光を光電変換することにより電気信号である脈波信号を生成する。
【0003】
光電変換を利用した脈波計測では、測定部位における脈波を検出する手段として光センサーを用いるため、その発光素子から測定部位に向けて照射される照射光の強度よりも発光素子以外の発光源から測定部位に照射される外光の強度が大きい場合、外光の影響により受光素子から得られる脈波信号の基線がゆらぎ、脈波信号のS/Nが低下し、脈波の計測を正確に行えなくなる、という問題がある。
【0004】
特許文献1には、このような問題の解決を意図して案出された技術の開示がある。同文献に開示された光電脈波計測装置は、光センサーと、光センサーを駆動させる駆動制御部と、光センサーの出力信号を用いて脈波の解析を行う波形信号解析部とを有する。この光電脈波計測装置の駆動制御部は、外乱光や照明光などの外光の状態を監視する。そして、駆動制御部は、外光の監視結果に基づいて当該光電脈波計測装置の使用場所が野外であるか屋内であるかを判定し、野外である場合には発光素子の発光量を大きくし、屋内である場合には発光素子の発光量を小さくする、というように、外光の状態に応じて発光素子の発光量を調整する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−4972号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示された技術では、外光の影響が大きい環境の下で装置が使用されている場合、発光素子の発光量を大きくする分だけ消費電力が大きくなるという問題があった。
【0007】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、光電変換による脈波測定を行う場合において、発光素子の駆動電力を大きくすることなく、その検出信号における外光の影響によるS/Nの低下を回避する技術的手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、被験者の身体の測定部位に向けた光の点灯と消灯とを繰り返す発光手段と、前記測定部位にて反射された光または前記測定部位を透過した光を受光して、受光した光の受光強度を示す受光信号を出力する受光手段と、前記発光手段による光の点灯期間内の前記受光信号と前記発光手段による光の消灯期間内の前記受光信号との差分を脈波信号として出力する脈波信号発生手段とを具備する脈波計測装置を提供する。
【0009】
この発明において、脈波信号発生手段の出力信号である脈波信号は、発光手段の点灯期間内における受光手段の受光強度の成分から、発光手段の消灯期間内における受光手段の受光強度の成分である外光の成分を除去したものとなる。よって、本発明によると、発光手段の駆動電流を増やしてその光の強度を強くする、といった操作を要することなく、受光手段の受光強度を示す出力信号から外光の影響によるノイズを除去することができ、S/Nの低下を回避することができる。なお、この発明において、受光手段が受光する光である「測定部位を透過した光」には、外光が含まれている。
【0010】
この発明において、前記脈波信号発生手段は、前記発光手段による光の点灯期間内に前記受光信号をサンプルホールドすることにより第1の信号を出力する第1のサンプホールド手段と、前記発光手段による光の消灯期間内に前記受光信号をサンプルホールドすることにより第2の信号を出力する第2のサンプルホールド手段とを具備し、前記第1の信号と前記第2の信号との差分を前記脈波信号として出力するようにしてもよい。これによると、発光手段の点灯期間内における受光手段の受光強度を示すサンプル信号と発光手段の消灯期間内における受光手段の受光強度を示すサンプル信号とを確実に得ることができる。
【0011】
また、この発明において、 前記発光手段による光の点灯のタイミングと同期して当該光の点灯時間以下の時間だけアクティブになる第1のタイミング信号と、前記発光手段による光の消灯のタイミングと同期して当該光の消灯時間より短い時間だけアクティブになる第2のタイミング信号とを発生する制御手段を具備し、前記第1のサンプルホールド手段は、前記第1のタイミング信号がアクティブになる期間で前記受光信号をサンプリングし、前記第2のサンプルホールド手段は、前記第2のタイミング信号がアクティブになる期間で前記受光信号をサンプリングすることが好ましい。この発明によれば、点灯期間以下の時間で受光信号をサンプリングするので、確実に脈波成分を有する信号をサンプルホールドすることができる。特に、点灯期間とサンプリング期間とが等しい場合には、それだけ点灯期間を短くできるので、消費電力を削減することができる。
【0012】
また、前記脈波信号発生手段は、前記受光信号を前記点灯期間および前記消灯期間に1回ずつA/D変換して受光データを出力するA/D変換手段を具備し、前記受光データのうち前記点灯期間のサンプルを第1のデータ、前記受光データのうち前記消灯期間のサンプルを第2のデータとしたとき、前記第1のデータと前記第2のデータとの差分を求め、この差分を前記脈波信号として出力するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1実施形態である脈波計測装置の外観を示す図である。
【図2】同計測装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図3】同計測装置の脈波センサーを測定部位の側方から見た図である。
【図4】同測定装置のアナログ制御回路が発生するタイミング信号の波形を示す図である。
【図5】同測定装置における脈波センサーの出力信号、サンプルホールド回路の出力信号、及び減算回路の出力信号の波形の一例を示す図である。
【図6】本発明の第2実施形態である脈波計測装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図7】同計測装置のCPUが発生するA/D変換クロックφ0及び発光素子駆動クロックφ1の波形を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<1.第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態である脈波計測装置1の外観を示す図である。図2は、脈波計測装置1の電気的構成例を示すブロック図である。図1に示すように、脈波計測装置1は、脈波センサー30と、装置本体10と、これらを接続するケーブル20とを有する。脈波センサー30は、被験者の左手人差し指の根元から第2指関節までの間の部位(以下、測定部位)における血液の流れを光学的に検出する役割を果たすセンサーである。脈波センサー30は、測定部位の幅よりも小さな寸法を持った扁平な板状をなしている。脈波センサー30は、発光素子32aと受光素子32bを併有している。発光素子32aは、血液に吸収され易い波長の発光色(例えば、青色とする)を持ったLED(Light Emitting Diode)である。受光素子32bは、フォドダイオードである。脈波センサー30には、センサー固定用バンド34が取り付けられている。
【0015】
図3に示すように、脈波センサー30は、測定部位に発光素子32a及び受光素子32bを向けるようにして測定部位の周りにセンサー固定用バンド34を巻きつけることにより、被験者の身体に装着される。この装着状態において、脈波センサー30の発光素子32aは、装置本体10からケーブル20を介して当該発光素子32aに供給される電流に応じた強度の光LMSRを測定部位に向けて照射する。発光素子32aから照射された光LMSRは、当該発光素子32a以外の発光源からの外光(例えば、太陽光や室内照明光:以下、外光LOUTという)とともに測定部位の表皮を透過してその奥の真皮の毛細血管に到達する。血管に到達した光の一部は血管内を流れる血液により吸収される。また、血管に到達した光のうち血管内の血液により吸収されなかった光は、一部は測定部位を透過し、残りは生体組織における散乱等を経た後に反射光LREFとして受光素子32bに到達する。受光素子32bは、この反射光LREFの受光強度に応じて当該受光素子32bに流れる電流を、受光強度を示す受光信号RAとして出力する。ここで、測定部位における血管は、心拍と同じ周期で膨張と収縮を繰り返している。そして、血管の膨張と収縮の周期と同じ周期で光の吸収量が増減し、これに合わせて反射光LREFの強度も変化する。このため、受光信号RAは、測定部位における血管の容積変化を示す成分をもったものとなる。
【0016】
装置本体10は、脈波センサー30の発光素子32aを点滅させつつ同センサー30の受光信号RAを取得し、この信号RAから外光LOUTの影響によるノイズの成分を除去し、ノイズの成分を除去した信号から測定部位における血管の容積変化を示す波形である脈波を計測する。
【0017】
装置本体10は、腕時計を模した形状を有している。装置本体10の表面には、長方形状の表示面を持った表示部14が設けられている。表示部14には、当該脈波計測装置1による計測結果である脈間隔や脈拍数が表示される。装置本体10の筐体の外周部にはボタンスイッチ16が設けられている。ボタンスイッチ16は、脈波の計測開始や計測終了、計測結果のリセットなどの各種指示の入力に用いられる。図1では詳細な図示は省略したが、表示部14およびボタンスイッチ16は演算処理回路120に接続されている。また、図1に示す構成要素の他にも、脈波計測装置1は、演算処理回路120に接続され装置本体10に収納される音声出力部も有している。また、装置本体10の外周部における表示部14を挟んで対向する部分にはリストバンド12の一端と他端が取り付けられている。装置本体10は、リストバンド12を被験者の手首(図1に示す例では、左手首)に巻きつけることにより、被験者の身体に装着される。
【0018】
図2に示すように、装置本体10には、アナログ回路部110、アナログ制御回路140、演算処理回路120、及びデータ記憶回路130が内蔵されている。アナログ回路部110は、駆動回路1120、IV変換回路1112、アンプ1116、サンプルホールド回路1117a,1117b、及び減算回路1118を有する。駆動回路1120は、アナログ制御回路140による制御の下、発光素子32aを駆動させる。より具体的に説明すると、アナログ制御回路140は、点灯及び消灯の切り換えのタイミングを案内する周期的なタイミング信号TS1を駆動回路1120に与える。駆動回路1120は、この信号TS1がハイレベルとなっている間は発光素子32aに電流を供給して発光素子32aを点灯させ、信号TS1がローレベルとなっている間は発光素子32aへの電流の供給を止めて発光素子32aを消灯させる。
【0019】
IV変換回路1112は、受光素子32bに流れる電流RA(受光信号)に応じた電圧RA’をアンプ1116へ出力する。アンプ1116は、IV変換回路1112の出力電圧RA’を増幅し、増幅した信号RA”をサンプルホールド回路1117a及び1117bへ出力する。サンプルホールド回路1117aは、アナログ制御回路140による制御の下、発光素子32aの点灯期間内のアンプ1116の出力信号RA”をサンプルホールドし、サンプルホールドの時点における信号RA”の振幅を信号RAaとして出力する。また、サンプルホールド回路1117bは、アナログ制御回路140による制御の下、発光素子32aの消灯期間内のアンプ1116の出力信号RA”をサンプルホールドし、サンプルホールドの時点における信号RA”の振幅を信号RAbとして出力する。
【0020】
より具体的に説明すると、アナログ制御回路140は、サンプルホールド回路1117aに対し、発光素子32aにおける点灯のタイミングと同期したタイミング信号TS2を与える。また、アナログ制御回路140は、サンプルホールド回路1117bに対し、発光素子32aにおける消灯のタイミングと同期したタイミング信号TS3を与える。サンプルホールド回路1117aは、タイミング信号TS2がハイレベルである期間、出力信号RAaを信号RA”に追従させ、タイミング信号TS2がハイレベルからローレベルになったとき、その時点における出力信号RAaを保持する動作を繰り返す。サンプルホールド回路1117bは、タイミング信号TS3がハイレベルである期間、出力信号RAbを信号RA”に追従させ、タイミング信号TS3がハイレベルからローレベルになったとき、その時点における出力信号RAbを保持する動作を繰り返す。
【0021】
減算回路1118は、サンプルホールド回路1117aの出力信号RAaとサンプルホールド回路1117bの出力信号RAbとの差分RAa−RAbを求め、この差分RAa−RAbを脈波信号RDAとして出力する。この減算回路1118と、サンプルホールド回路1117aおよび1117bとが、発光手段(発光素子32a)による光の点灯期間内の受光信号RA”と発光手段(発光素子32a)による光の消灯期間内の受光信号RA”との差分を脈波信号として出力する脈波信号発生手段として機能する。
【0022】
演算処理回路120は、A/D変換回路1211、CPU(Central Processing Unit)1215、RAM(Random Access Memory)などの揮発性メモリー1216、およびROM(Read Only Memory)などの不揮発性メモリー1217を含んでいる。
【0023】
A/D変換回路1211は、減算回路1118の出力信号RDAをデジタル形式に変換し、変換した信号RDDを出力する。このA/D変換回路1211によるA/D変換は、例えばタイミング信号TS1またはTS2の一方または両方に同期させて行わせてもよく、タイミング信号TS1およびTS2の両方がローレベルである期間内にアクティブレベルとなる別のタイミング信号を発生し、このタイミング信号に同期させて行わせてもよい。CPU1215は、揮発性メモリー1216をワークエリアとして利用しつつ、不揮発性メモリー1217に記憶された脈波解析プログラムを実行する。この脈波解析プログラムは、A/D変換回路1211の出力信号RDDから脈拍間隔および脈拍数を計測し、この計測結果をデータ記憶回路130に記憶させる処理をCPU1215に実行させるプログラムである
【0024】
次に、本実施形態の脈波計測装置1の動作について説明する。脈波計測装置1の電源をオンにすると、演算処理回路120のCPU1215は、アナログ制御回路140にタイミング信号TS1、TS2およびTS3の発生を開始させる。図4(A)はタイミング信号TS1の波形を、図4(B)はタイミング信号TS2の波形を、図4(C)はタイミング信号TS3の波形を各々示している。図4(A)に示すように、タイミング信号TS1は、時間長T1毎にハイレベル及びローレベルを交互に繰り返す矩形波である。駆動回路1120は、タイミング信号TS1がハイレベルである期間、発光素子32aへ電流を供給し、タイミング信号TS1がローレベルである期間、発光素子32aへの電流の供給を止める、という動作を繰り返す。これにより、発光素子32aは、時間長T1毎に点灯と消灯を繰り返す。ここで、この時間長T1は、発光素子32aにおける点灯及び消灯の周波数fが16Hz〜64Hz程度になるような長さとすることが望ましい。
【0025】
また、図4(B)に示すように、タイミング信号TS2は、タイミング信号TS1の立ち上がりから時間長T2(T2=T1/2)が経過したタイミングにおいてアクティブ(ハイレベル)になり、そのタイミングから時間長T3(T3<T2)が経過したタイミングにおいて非アクティブ(ローレベル)になる矩形波である。サンプルホールド回路1117aは、タイミング信号TS2がアクティブとなる期間において、アンプ1116の出力信号RA”の振幅値をサンプリングし、その後ホールドすることにより信号RAaを出力する。なお、この例では、タイミング信号TS1のハイレベル期間T1(点灯期間)は、タイミング信号TS2のアクティブ期間T3より短いが、タイミング信号TS1のハイレベル期間T1を短くして、タイミング信号TS2のアクティブ期間T3と一致させてもよい。この場合には、点灯期間が短くなるので消費電力を削減することができる。
【0026】
また、図4(C)に示すように、タイミング信号TS3は、タイミング信号TS1の立ち下がりから時間長T2(T2=T1/2)が経過したタイミングにおいてアクティブ(ハイレベル)になり、そのタイミングから時間長T3(T3<T2)が経過したタイミングにおいて非アクティブ(ローレベル)になる矩形波である。サンプルホールド回路1117bは、タイミング信号TS3がアクティブとなる期間において、アンプ1116の出力信号RA”の振幅値をサンプリングし、その後ホールドすることにより信号RAbを出力する。
【0027】
ここで、サンプルホールド回路1117aの出力信号RAaは、発光素子32aが点灯している時間内に受光素子32bに到達した光の受光強度を表すものとなり、サンプルホールド回路1117bの出力信号RAbは、発光素子32aが消灯している時間内に受光素子32bに到達した光の受光強度を表すものとなる。このため、受光素子32bから本来の計測対象である血管の容積変化を表す成分と外光LOUTの影響によるノイズの成分とを含む信号RAが出力されている場合、図5に示すように、信号RAと全く同じ成分を有する信号RAaと信号RAにおけるノイズの成分のみを有する信号RAbとが減算回路1118に入力される。そして、減算回路1118における減算を経ることにより、このノイズの成分が除去された信号RDA(すなわち、血管の容積変化を表す成分のみを有する信号)が、A/D変換回路1211に入力される。
【0028】
脈波解析処理では、CPU1215は、A/D変換回路1211の出力信号RDDから脈拍間隔および脈拍数を計測し、この計測結果をデータ記憶回路130に記憶させる。より具体的には、CPU1215は、信号RDDにピークが現れる度に、その最新のピークと1つ前のピークとの間の時間差を求め、この時間差を脈拍間隔としてデータ記憶回路130に記憶させる。また、CPU1215は、信号RDDにおける所定時間(例えば、1分間)毎のピークの出現数をカウントし、カウントした数を脈拍数としてデータ記憶回路130に記憶させる。データ記憶回路130に記憶された脈拍間隔および脈拍数は、ボタンスイッチ16の操作に従ってデータ記憶回路130から読み出され、計測結果として表示部14に表示される。
【0029】
以上説明したように、本実施形態では、減算回路1118の出力信号RDAは、脈波センサー30の発光素子32aが点灯している間の受光素子32bの受光強度の成分から、発光素子32aが消灯している間の受光素子32bの受光強度の成分である外光LOUTの成分を除去したものとなる。よって、本実施形態によると、発光素子32aの駆動電流を増やしてその光LMSRの強度を強くする、といった操作を要することなく、受光素子32bの出力信号RAから外光LOUTの影響によるノイズを除去することができ、S/Nの低下を回避することができる。特に、本実施形態は、腕時計型のような長時間の脈波のモニタリングを行う脈拍計への適用において際立った効果を奏することが可能である。
【0030】
<2.第2実施形態>
図6はこの発明の第2実施形態である脈波計測装置1Aの構成を示すブロック図である。本実施形態では、上記第1実施形態におけるアナログ回路部110が駆動回路1120、IV変換回路1112およびアンプ1116のみからなるアナログ回路部110aに置き換えられている。なお、駆動回路1120、IV変換回路1112およびアンプ1116の機能は上記第1実施形態と同様である。
【0031】
上記第1実施形態では、脈波信号発生手段としてサンプルホールド回路1117aおよび1117bと減算回路1118がアナログ回路部110内に設けられた。これに対し、本実施形態では、CPU1215が不揮発性メモリー1217に記憶された制御プログラムを実行することにより、この脈波信号発生手段としての機能および第1実施形態におけるアナログ制御回路140としての機能を果たす。本実施形態において、CPU1215は、制御プログラムに従って、A/D変換クロックφ0をA/D変換回路1211に供給するとともに、このA/D変換クロックφ0の1/2の周波数の発光素子駆動クロックφ1を駆動回路1120に供給する。図7は、A/D変換クロックφ0および発光素子駆動クロックφ1の各波形を示すものである。図7に示すように、A/D変換クロックφ0は、発光素子駆動クロックφ1がローレベルである期間内のほぼ中央のタイミングと、発光素子駆動クロックφ1がハイレベルである期間内のほぼ中央のタイミングにおいてアクティブレベルであるハイレベルに立ち上がるクロックである。
【0032】
A/D変換回路1211は、A/D変換クロックφ0がハイレベルになる毎に、アンプ1116の出力信号をA/D変換し、デジタル形式のサンプル値を出力する。駆動回路1120は、発光素子駆動クロックφ1がハイレベルである期間、発光素子32aに電流を流して発光素子32aを点灯させ、発光素子駆動クロックφ1がローレベルである期間、発光素子32aに対する電流の供給を停止して発光素子32aを消灯させる。
【0033】
そして、CPU1215は、制御プログラムに従って、発光素子駆動クロックφ1がハイレベルである期間内のA/D変換クロックφ0に同期してA/D変換回路1211から出力されるサンプル値を第1のデータとし、発光素子駆動クロックφ1がローレベルである期間内のA/D変換クロックφ0に同期してA/D変換回路1211から出力されるサンプル値を第2のデータとしたとき、第1のデータと第2のデータの差分を求め、この差分を脈波信号のサンプル値とする。
【0034】
ここで、発光素子駆動クロックφ1がハイレベルである期間内のA/D変換クロックφ0に同期してA/D変換回路1211から出力されるサンプル値は、発光素子32aの点灯期間内におけるアンプ1116の出力信号RA”の振幅を示すサンプル値である。また、発光素子駆動クロックφ1がローレベルである期間内のA/D変換クロックφ0に同期してA/D変換回路1211から出力されるサンプル値は、発光素子32aの点灯期間内におけるアンプ1116の出力信号RA”の振幅を示すサンプル値、すなわち、外光LOUTの受光強度を示すサンプル値である。従って、前者のサンプル値(第1のデータ)から後者のサンプル値(第2のデータ)を差し引くことにより脈波信号RDDのサンプル値が得られる。本実施形態においても上記第1実施形態と同様な効果が得られる。
【0035】
<3.変形例>
以上、本発明の第1および第2実施形態について説明したが、これらの実施形態に以下に述べる変形を加えても勿論良い。
(1)上記実施形態では、脈波センサー30の発光素子32aの発光色は青であったが、この発光色を緑やその他の色にしてもよい。
【0036】
(2)上記実施形態では、サンプルホールド回路1117aは、発光素子32aの点灯及び消灯の周期T1の半分の時間長T2(T2=T1/2)だけ発光素子32aの点灯から遅れたタイミングにおいて信号RA”をサンプルホールドした。しかし、発光素子32aが点灯している時間内における別のタイミングで信号RA”をサンプルホールドしてもよい。
【0037】
(3)上記実施形態では、サンプルホールド回路1117bは、発光素子32aの点灯及び消灯の周期T1の半分の時間長T2(T2=T1/2)だけ発光素子32aの消灯から遅れたタイミングにおいて信号RA”をサンプルホールドした。しかし、発光素子32aが消灯している時間内における別のタイミングで信号RA”をサンプルホールドしてもよい。
【0038】
(4)上記実施形態では、脈波センサー30の受光素子32bは、同センサー30の発光素子32aが測定部位に向けて照射した光LMSRの反射光LREFを受光し、この反射光LREFの受光強度を示す信号を検出信号RAとして出力した。しかし、脈波センサー30の受光素子32bは、同センサー30の発光素子32aが測定部位に向けて照射した光LMSRの透過光(より具体的には、光LMSR及び光LOUTの透過光)を受光し、この透過光の受光強度を示す信号を検出信号RAとして出力してもよい。
【0039】
(5)上記実施形態では、アナログ制御回路140が発生するタイミング信号TS1のデューティー比(ハイレベル期間/ローレベル期間)が50パーセントであった。しかし、このデューティー比を50パーセントより小さくしてもよい。タイミング信号TS1のデューティー比を50パーセント以下にすることにより、単位時間当たりの発光素子32aの点灯時間が短くなる。これにより、発光素子32aを駆動させるための電力の消費量を小さくすることができる。
【0040】
(6)また、上述した実施形態では、脈波検出部30はセンサー固定用バンド34により被験者の人指し指の根元から第2指関節までの間の部分に巻きつけられているが、脈波検出部30をカフ(腕帯)により被験者の上腕部または前腕部に巻き付ける構造にしても良い。
さらに、上述した実施形態では、脈波計測装置1は、手首に装着される装置本体10と、人指し指の根元から第2指関節までの間の部分に装着される脈波検出部30とを備え、これらはケーブル20を介して接続される構造を有しているが、脈波検出部30と装置本体10とが一体として構成され、共にリストバンド12により被験者の手首に装着する構造にしても良い。この場合、ケーブル20が不要となり、装置本体10と脈波検出部30とが一体となった腕時計構造を有するため、脈波計測装置1の使い勝手の向上が可能となる。
また、上述した実施形態では、装置本体10を腕時計構造とし、リストバンド12により被験者の手首に巻き付ける構造を有しているが、装置本体10を携帯電話等の外部の機器上に設け、装置本体10が設けられた携帯電話等と脈波検出部30との間で無線通信を実行してもよい。この場合、脈波検出部30は、手首、上腕部あるいは前腕部に巻きつけるカフ(腕帯)としてもよい。あるいは、耳朶に装着する構成としてもよい。装置本体10は、携帯電話の有する表示機能、入力機能、及びCPUを利用できるため、脈波計測装置1の低コスト化が可能となる。
【符号の説明】
【0041】
1…脈波計測装置、10…装置本体、12…リストバンド、14…表示部、16…ボタンスイッチ、20…ケーブル、30…脈波センサー、32a…発光素子、32b…受光素子、34…センサー固定用バンド、110…アナログ回路部、1112…IV変換回路、1116…アンプ、1117a,1117b…サンプルホールド回路、1118…減算回路、1120…駆動回路、120…演算処理回路、1211…A/D変換回路、1215…CPU、1216…揮発性メモリー、1217…不揮発性メモリー、130…データ記憶回路、140…アナログ制御回路。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者の身体の測定部位に向けた光の点灯と消灯とを繰り返す発光手段と、
前記測定部位にて反射された光または前記測定部位を透過した光を受光して、受光した光の受光強度を示す受光信号を出力する受光手段と、
前記発光手段による光の点灯期間内の前記受光信号と前記発光手段による光の消灯期間内の前記受光信号との差分を脈波信号として出力する脈波信号発生手段と
を具備することを特徴とする脈波計測装置。
【請求項2】
前記脈波信号発生手段は、
前記発光手段による光の点灯期間内に前記受光信号をサンプルホールドすることにより第1の信号を出力する第1のサンプホールド手段と、
前記発光手段による光の消灯期間内に前記受光信号をサンプルホールドすることにより第2の信号を出力する第2のサンプルホールド手段とを具備し、
前記第1の信号と前記第2の信号との差分を前記脈波信号として出力することを特徴とする請求項1に記載の脈波計測装置。
【請求項3】
前記発光手段による光の点灯のタイミングと同期して当該光の点灯時間以下の時間だけアクティブになる第1のタイミング信号と、前記発光手段による光の消灯のタイミングと同期して当該光の消灯時間より短い時間だけアクティブになる第2のタイミング信号とを発生する制御手段を具備し、
前記第1のサンプルホールド手段は、前記第1のタイミング信号がアクティブになる期間で前記受光信号をサンプリングし、前記第2のサンプルホールド手段は、前記第2のタイミング信号がアクティブになる期間で前記受光信号をサンプリングする
ことを特徴とする請求項2に記載の脈波計測装置。
【請求項4】
前記脈波信号発生手段は、
前記受光信号を前記点灯期間および前記消灯期間に1回ずつA/D変換して受光データを出力するA/D変換手段を具備し、
前記受光データのうち前記点灯期間のサンプルを第1のデータ、前記受光データのうち前記消灯期間のサンプルを第2のデータとしたとき、前記第1のデータと前記第2のデータとの差分を求め、この差分を前記脈波信号として出力することを特徴とする請求項1に記載の脈波計測装置。
【請求項5】
コンピュータに、
被験者の身体の測定部位に向けた光の点灯と消灯とを発光手段に繰り返させる処理と、
前記測定部位にて反射された光、または前記測定部位を透過した光を受光する受光手段の受光強度をサンプリング手段にサンプリングさせる処理と、
前記サンプリング手段によりサンプリングされた前記受光手段の受光強度のサンプル値のうち前記発光手段による光の点灯期間内における受光強度のサンプル値と、前記発光手段による光の消灯期間内における受光強度のサンプル値との差分を求め、この差分を脈波信号のサンプル値とする処理と
を実行させることを特徴とするプログラム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−165851(P2012−165851A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−28294(P2011−28294)
【出願日】平成23年2月14日(2011.2.14)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】