脊椎動物PATCHED−2タンパク質
【課題】発現された配列タグを含む核酸配列、オリゴヌクレオチドプローブ、ポリペプチド、抗体、ベクター及びヒト及びpatched-2に対するイムノアドヘシン、アゴニスト及びアンタゴニストを発現する宿主細胞を提供する。
【解決手段】patched-2ポリペプチドをコードするDNA分子、又はDNA分子の補体に対して少なくとも約80%の配列同一性を有し;patched-2の生物学的活性を有するポリペプチドをコードする単離された核酸分子。ヒトpatched-2ポリペプチドをコードするDNAを含むベクター。ベクターを含む宿主細胞。宿主細胞を、patched-2の発現に適した条件下で培養し、細胞培地からそれを回収することを含んでなるpatched-2ポリペプチドの製造方法。単離されたpatched-2ポリペプチド。ヘッジホッグ(Hh)、部分的に媒介される疾患の治療のためのpatched-2の使用方法。
【解決手段】patched-2ポリペプチドをコードするDNA分子、又はDNA分子の補体に対して少なくとも約80%の配列同一性を有し;patched-2の生物学的活性を有するポリペプチドをコードする単離された核酸分子。ヒトpatched-2ポリペプチドをコードするDNAを含むベクター。ベクターを含む宿主細胞。宿主細胞を、patched-2の発現に適した条件下で培養し、細胞培地からそれを回収することを含んでなるpatched-2ポリペプチドの製造方法。単離されたpatched-2ポリペプチド。ヘッジホッグ(Hh)、部分的に媒介される疾患の治療のためのpatched-2の使用方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、一般的にシグナル伝達分子、特に、細胞増殖及び分化に含まれるヘッジホッグ(hh)カスケードにおけるシグナル伝達及びメディエータ分子に関する。
【0002】
(発明の背景)
多細胞生物の発育は少なくとも部分的に、細胞、組織、又は器官のパターンの位置的情報を特定、指揮又は維持するメカニズムに依存している。種々の分泌されたシグナル伝達分子、例えばトランスフォーミング成長因子-ベータ(TGF-β)、Wnt、繊維芽成長因子及びヘッジホッグファミリー等は、ショウジョウバエ及び脊椎動物における様々な細胞及び構造のパターン形成に関連している。Perrimon, Cell: 80: 517-520 (1995)。
セグメントポラリティ遺伝子はショウジョウバエにおいて最初に発見され、それが突然変異した場合に体節構造のパターンに変化を起こした。これらの変化は頭から尾に沿ったパターンに影響を与えた。ヘッジホッグ(Hh)は、キイロショウジョウバエにおける遺伝子スクリーニングによりセグメントポラリティ遺伝子として最初に同定され、Nusslein-Volhard等, Roux. Arch. Dev. Biol. 193: 267-282 (1984)、それは広範な発達機能を果たす。Perrimon, 上掲。1つのショウジョウバエHh遺伝子しか同定されていないが、3つのヒトHh相同体:ソニックHh(Shh)、デザートHh(Dhh)及びインディアンHh(Ihh)が単離されている、Echelard等, Cell 75, 1417-30 (1993);Riddle等, Cell 75: 1401-16 (1993)。Shhは発育中の脊椎動物胚の脊索及び底板で高レベルで発現され、発育中の肢、体節及び神経管における細胞運命を確立するために作用する。インビトロ外植片アッセイ並びにトランスジェニック動物におけるShhの異所性発現は、SHhが神経管パターン形成において鍵となる役割を果たすことを示している、Echelard等, 上掲, Ericson等, Cell 81: 747-56 (1995); Marti等, Nature 375: 322-5 (1995); Roelink等 (1995), 上掲; Hynes等, Neuron 19: 15-26 (1997)。また、Hhは、肢(Krauss等, Cel 75: 1431-44 (1993); Laufer等, Cell 79, 993-1003 (1994))、体節(Fan 及びTessier-Lavigne, Cell 79, 1175-86 (1994); Johnson等, Cell 79: 1165-73 (1994))、肺(Bellusci等, Develop. 124: 53-63 (1997))及び皮膚(Oro等, Science 276: 817-21 (1997))の発達においても役割を果たす。同様に、Ihh及びDhhは骨、腸及び胚細胞発育に関連する、Apeqvist等, Curr. Biol. 7: 801-4 (1997); Bellusci等, Development 124: 55-63 (1997); Bitgood等, Curr. Biol. 6: 298-304 (1996); Roberts等, Development 121: 3163-74 (1995)。特に、Ihhは軟骨細胞発達に含まれていたが[Vorlamp, A.等, Science 273: 613-22 (1996)]、Dhhは精巣発達において役割を果たす。Bitgood等, 上掲。Ihh及びShhが発現される腸を除いて、ヘッジホッグファミリーメンバーの発現パターンは重複しない。Bitgood等, 上掲。
【0003】
細胞表面において、Hh機能は、ショウジョウバエにおいてセグメントポラリティ遺伝子として最初に同定され、後に脊椎動物で特徴付けされた2つの多重膜貫通タンパク質であるpatched(ptch)及びSmoothened(Smo)を含む多成分レセプター複合体によって媒介されていることがわかった。Nakano等, Nature 341: 508-13 (1989); Goodrich等, Genes Dev. 10: 301-312 (1996); Marigo等, Develop. 122: 1225-1233 (1996); van den Heuval, M.及びIngham, P.W., Nature 382: 547-551 (1996); Alcedo等, Cell 86: 221-232 (1996); Stone, D.M.等, Nature 384: 129-34 (1996)。HhのPtchへの結合に際し、PtchのSmoに対する正常な阻害効果が解除され、Smoが細胞質膜を通したHhシグナルを伝達するのを可能にする。Ptch/Smoレセプター複合体が哺乳動物の3つ全てのヘッジホッグを媒介する場合、又は特定の成分が存在する場合、それは確立されたままである。興味深いことに、第2のマウスPtch遺伝子、Ptch-2が最近単離されたが[Motoyama, J.等, Nature Genetics 18: 104-106 (1998)]、そのHhレセプターとしての機能は確立されていない。Ptch-2を特徴付けし、それを種々のHhファミリーメンバーの生物学的機能についてPtchと比較するために、本出願人は、ヒトPtch-2遺伝子を単離した。Ptch及びPtch-2の生物学的分析は、両方共がHhファミリーの全てのメンバーに類似の親和性で結合し、両方の分子がSmoと複合体を形成できることを示した。しかしながら、Ptch-2及びPtchの発現パターンは重複していない。Ptchはマウス胚を通して発現されるが、Ptch-2は、正常な発達のためにデザートヘッジホッグ(Dhh)を必要とする精母細胞に主に見られ、Ptch-2が精巣におけるDhh活性を媒介することを示唆している。Ptch-2の染色体局在化は、それを幾つかの生殖細胞において欠失される領域である染色体1p33-34に配置させ、Ptch-2がDhh標的細胞における腫瘍サプレッサーとなる可能性を向上させる。
【0004】
(発明の概要)
一実施態様では、本発明は、(a)図1のアミノ酸1〜1203の配列を含むpatched-2ポリペプチドをコードするDNA分子、又は(b)(a)のDNA分子の補体に対して少なくとも約80%の配列同一性を有し;patched-2の生物学的活性を有するポリペプチドをコードする単離された核酸分子を提供する。配列同一性は、好ましくは>91%、より好ましくは約92%、最も好ましくは約95%である。一態様において、単離された核酸は、図1のアミノ酸残基1〜約1203の配列を有するポリペプチドに対して少なくとも>91%、より好ましくは少なくとも約92%、さらに好ましくは少なくとも約95%の配列同一性を有する。さらなる態様において、単離された核酸分子は、図1のアミノ酸残基1〜約1203を有するヒトpatched-2ポリペプチドをコードするDNAを含んでなる。さらに他の態様では、本発明は、(a)ATCC寄託番号209778のcDNA(記号:pRK7.hptc2.Flag-1405)にコードされるのと同じ成熟ポリペプチドをコードするDNA分子、あるいは、ATCC209778の登録番号で寄託されたクローンpRK7.hptc2.Flag-1405のコード化配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するDNAを含んでなる単離された核酸を提供する。またさらなる態様では、本発明はATCC寄託番号209778のcDNA(記号:pRK7.hptc2.Flag-1405)のcDNAの配列、又はそれに緊縮条件下でハイブリッド形成する配列をコードするヒトpatched-2を含んでなる核酸を提供する。
【0005】
他の実施態様では、本発明は、ヒトpatched-2ポリペプチドをコードするDNAを含むベクターを提供する。また、そのようなベクターを含む宿主細胞も提供される。例えば、宿主細胞は哺乳動物細胞(例えばCHO細胞)、原核生物細胞(例えば大腸菌)又は酵母細胞(例えばサッカロミセスセレヴィシアエ(Saccaromyces cerevisiae))でよい。さらに、宿主細胞を、patched-2の発現に適した条件下で培養し、細胞培地からそれを回収することを含んでなるpatched-2ポリペプチドの製造方法も提供される。
さらに他の実施態様では、本発明は単離されたpatched-2ポリペプチドを提供する。特に、本発明は単離された天然配列patched-2ポリペプチドを提供し、それは一実施態様において図1の残基1〜約1203を含むアミノ酸配列を含んでなるヒトpatched-2である。メチオニンから開始されてもされなくてもよいヒトpatched-2ポリペプチドが特に含まれる。また、本発明は登録番号ATCC209778の下で寄託された核酸にコードされるヒトpatched-2ポリペプチドを提供する。
さらに他の実施態様では、本発明は、異種ポリペプチド又はアミノ酸配列に融合したpatched-2ポリペプチドpatched-2を含んでなるキメラ分子を提供する。そのようなキメラ分子の例は、エピトープタグ配列又は免疫グロブリンの定常領域の融合したpatched-2ポリペプチドpatched-2を含むキメラ分子である。
さらに他の実施態様では、本発明は、図2A(905531)(配列番号:3)及び図2B(1326258)(配列番号:5)で同定される核酸配列を含む発現された配列タグ(EST)を提供する。
さらに多の実施態様では、本発明は、patched-2の生物学的活性を持つ選択的にスプライシングされたヒトpatched-2の変異体を提供する。
さらに他の実施態様では、本発明は、ヘッジホッグ(Hh)、特にデザートヘッジホッグ(Dhh)によって少なくとも部分的に媒介される疾患の治療のためのpatched-2の使用方法を提供する。特に精巣癌である。さらに他の実施態様では、本発明は、Hhシグナル伝達、特にDhhシグナル伝達を阻止することにより効果をあげる疾患の治療又は生理学的状態の生成のためのpatched-2アンタゴニスト又はアゴニストの使用方法を提供する。(例えば、避妊)。
【0006】
(好適な実施態様の詳細な説明)
I.定義
ここで使用される際の「patched-2」及び「patched-2ポリペプチド」という用語は、天然配列patched-2及びpatched-2の生物学的活性を有するpatched-2変異体(ここで更に詳細に定義する)を含む。patched-2は、ヒト組織型又は他の供給源といった種々の供給源から単離してもよく、あるいは組換え又は合成方法によって調製してもよい。
「天然配列patched-2」は、天然由来のヒトpatched-2ポリペプチドと同一のアミノ酸配列を有するポリペプチドを含んでいる。このような天然配列patched-2は、自然から単離することもできるし、組換え及び/又は合成手段により生産することもできる。「天然配列脊椎動物patched-2」という用語には、特に、ヒトpatched-2の自然に生じる切断形態、自然に生じる変異形態(例えば、選択的にスプライシングされた形態)及びヒトpatched-2の自然に生じる対立遺伝子変異体が含まれる。よって、本発明の一実施態様において、天然配列patched-2は、図1(配列番号:2)のアミノ酸1〜1203を含む成熟又は全長天然ヒトPtch-2であり、位置1に開始メチオニンを有しても有さなくてもよい。
「patched-2変異体」とは、以下に定義されるように、(a)patched-2ポリペプチドをコードするDNA分子、又は(b)(a)のDNA分子の補体と少なくとも約>91%のアミノ酸配列同一性を有する活性なヒトpatched-2を意味する。特別な実施態様において、patched-2変異体は、全長天然配列ヒトpatched-2について図1に示した推定アミノ酸配列を有するヒトPtch-2(配列番号:2)と少なくとも>91%のアミノ酸配列相同性を有する。このようなpatched-2変異体は、これらに限られないが、図1(配列番号:2)の配列のN-又はC-末端において一又は複数のアミノ酸残基が付加、もしくは欠失されたpatched-2ポリペプチドを含む。好ましくは、核酸又はアミノ酸配列同一性は、少なくとも約92%、より好ましくは少なくとも約93%、さらにより好ましくは少なくとも約95%である。
【0007】
patched-2配列に対してここで同定されている「パーセント(%)アミノ酸配列同一性」は、配列を整列させ、最大のパーセント配列同一性を得るために必要ならば間隙を導入し、如何なる保存的置換も配列同一性の一部と考えないとした、patched-2配列のアミノ酸残基と同一である候補配列中のアミノ酸残基のパーセントとして定義される。パーセントアミノ酸配列同一性を決定する目的のためのアラインメントは、当業者の技量の範囲にある種々の方法、例えば、初期設定パラメータに設定されたBLAST-2ソフトウエアのような公に入手可能なコンピュータソフトウエアを使用することにより達成可能である。当業者であれば、比較される配列の全長に対して最大のアラインメントを達成するために必要な任意のアルゴリズムを含む、アラインメントを測定するための適切なパラメータを決定することができる。
ここで同定されるpatched-2配列に対する「パーセント(%)核酸配列同一性」は、配列を整列させ、最大のパーセント配列同一性を得るために必要ならば間隙を導入し、patched-2配列のヌクレオチドと同一である候補配列中のヌクレオチドのパーセントとして定義される。パーセント核酸配列同一性を決定する目的のためのアラインメントは、当業者の技量の範囲にある種々の方法、例えば、初期設定パラメータに設定したBLAST-2ソフトウエアのような公に入手可能なコンピュータソフトウエアを使用することにより達成可能である。当業者であれば、比較される配列の全長に対して最大のアラインメントを達成するために必要な任意のアルゴリズムを含む、アラインメントを測定するための適切なパラメータを決定することができる。
【0008】
「エピトープタグ」なる用語は、ここで用いられるときは、「タグポリペプチド」に融合したpatched-2ポリペプチド、又はその一部、patched-2を含んでなるキメラポリペプチドを意味する。タグポリペプチドは、その抗体が産生され得るエピトープを提供するに十分な残基を有しているが、patched-2ポリペプチドの活性を阻害しないよう充分に短い。また、タグポリペプチドは、好ましくは、抗体が他のエピトープと実質的に交差反応をしないようにかなり独特である。適切なタグポリペプチドは一般に、少なくとも6のアミノ酸残基、通常は約8〜約50のアミノ酸残基(好ましくは約10〜約20の残基)を有する。
ここで用いられる「イムノアドヘシン」なる用語は、異種タンパク質(「アドヘシン」)の結合特異性と免疫グロブリン定常ドメインのエフェクター機能とを組み合わせた抗体様分子を指す。構造的には、イムノアドヘシンは、所望の結合特異性を持ち、抗体の抗原認識及び結合部位以外である(即ち「異種の」)アミノ酸配列と、免疫グロブリン定常ドメイン配列との融合物を含む。イムノアドヘシン分子のアドへシン部分は、典型的には少なくともレセプター又はリガンドの結合部位を含む隣接アミノ酸配列である。イムノアドヘシンの免疫グロブリン定常ドメイン配列は、IgG-1、IgG-2、IgG-3又はIgG-4サブタイプ、IgA(IgA-1及びIgA-2を含む)、IgE、IgD又はIgMなどの任意の免疫グロブリンから得ることができる。文献に報告されたイムノアドヘシンは、T細胞レセプター*[Gascoigne等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84: 2936-2940 (1987)];CD4*[Capron等, Nature 337: 525-531 (1989); Traunecker等, Nature 339: 68-70 (1989); Zettmeissl等, DNA Cell Biol. USA 9: 347-353 (1990); Byrn等, Nature 344, 667-670 (1990)];L-セレクチン(ホーミングレセプター)[Watson等, J. Cell. Biol. 110, 2221-2229 (1990); Watson等, Nature 349, 164-167 (1991)];CD44*[Aruffo等, Cell 61, 1303-1313 (1990)];CD28*及びB7*[Linsley等, J. Exp. Med. 173, 721-730 (1991)];CTLA-4*[Lisley等, J. Exp. Med. 174, 561-569 (1991)];CD22*[Stamenkovic等, Cell 66. 1133-1144 (1991)];TNFレセプター[Ashkenazi等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88, 10535-10539 (1991); Lesslauer等, Eur. J. Immunol. 27, 2883-2886 (1991); peppel等, J. Exp. Med. 174, 1483-1489 (1991)];NPレセプター[Bennett等, J. Biol. Chem. 266, 23060-23067 (1991)];IgEレセプターα鎖*[Ridgway及びGorman, J. Ce;;. Biol. 115, 要約, 1448 (1991)];HGFレセプター[Mark, M.R.等, J. Biol. Chem., 267(36): 26166-26171 (1992)]の融合物を含み、ここで星印(*)は、レセプターが免疫グロブリンスーパーファミリーのメンバーであることを示す。
【0009】
ハイブリッド形成反応の「緊縮性」は、当業者によって容易に決定され、一般的に
プローブ長、洗浄温度、及び塩濃度に依存する経験的な計算である。一般に、プローブが長くなると適切なアニーリングのための温度が高くなり、プローブが短くなると温度は低くなる。ハイブリッド形成は、一般的に、相補的鎖がそれらのTm(融点)に近いがそれより低い環境に存在する場合における変性DNAの再アニールする能力に依存する。プローブとハイブリッド形成可能な配列との間の所望の相同性の程度が高くなると、使用できる相対温度が高くなる。その結果、より高い相対温度は、反応条件をより緊縮性にするが、低い温度は緊縮性を低下させる。さらに、緊縮性は塩濃度にも逆比例する。ハイブリッド形成反応の緊縮性の更なる詳細及び説明は、Ausubel等, Current Protocols in Molecular Biology (1995)を参照のこと。
ここで定義される「緊縮性条件」は、(1)洗浄のために低イオン強度及び高温度、例えば、50℃において0.015Mの塩化ナトリウム/0.0015Mのクエン酸ナトリウム/0.1%のドデシル硫酸ナトリウムを用いるもの;(2)ハイブリッド形成中にホルムアミド等の変性剤、例えば、42℃において50%(vol/vol)ホルムアミドと0.1%ウシ血清アルブミン/0.1%フィコール/0.1%のポリビニルピロリドン/50mMのpH6.5のリン酸ナトリウムバッファー、及び750mMの塩化ナトリウム、75mMクエン酸ナトリウムを用いるもの;(3)42℃における50%ホルムアミド、5xSSC(0.75MのNaCl、0.075Mのクエン酸ナトリウム)、50mMのリン酸ナトリウム(pH6.8)、0.1%のピロリン酸ナトリウム、5xデンハード液、超音波処理サケ精子DNA(50μg/ml)、0.1%SDS、及び10%のデキストラン硫酸と、42℃における0.2xSSC(塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム)中の洗浄及び55℃でのホルムアミド、次いで55℃におけるEDTAを含む0.1xSSCからなる高緊縮性洗浄を用いるものによって同定される。
【0010】
「単離された」とは、ここで開示される種々のポリペプチドを記述するために使用するときは、その自然環境の成分から同定され分離され及び/又は回収されたポリペプチドを意味する。その自然環境の汚染成分とは、そのポリペプチドの診断又は治療への使用を典型的には妨害する物質であり、酵素、ホルモン、及び他のタンパク質様又は非タンパク質様溶質が含まれる。好ましい実施態様において、ポリペプチドは、(1)スピニングカップシークエネーターを使用することにより、少なくとも15残基のN末端あるいは内部アミノ酸配列を得るのに充分なまで、あるいは、(2)クーマシーブルーあるいは好ましくは銀染色を用いた非還元あるいは還元条件下でのSDS-PAGEによる均一性まで精製される。単離されたポリペプチドには、patched-2の自然環境の少なくとも1つの成分が存在しないため、組換え細胞内のインサイツのタンパク質が含まれる。しかしながら、通常は、単離されたポリペプチドは少なくとも1つの精製工程により調製される。
「単離された」patched-2核酸分子は、同定され、patched-2核酸の天然源に通常付随している少なくとも1つの汚染核酸分子から分離された核酸分子である。単離されたpatched-2核酸分子は、天然に見出される形態あるいは設定以外のものである。ゆえに、単離されたpatched-2核酸分子は、天然の細胞中に存在するようなpatched-2核酸分子から区別される。
【0011】
「コントロール配列」という表現は、特定の宿主生物において作用可能に結合したコード配列を発現するために必要なDNA配列を指す。例えば原核生物に好適なコントロール配列は、プロモーター、場合によってはオペレータ配列、及びリボソーム結合部位を含む。真核生物の細胞は、プロモーター、ポリアデニル化シグナル及びエンハンサーを利用することが知られている。
核酸は、他の核酸配列と機能的な関係にあるときに「作用可能に結合し」ている。例えば、プレ配列あるいは分泌リーダーのDNAは、ポリペプチドの分泌に参画するプレタンパク質として発現されているなら、そのポリペプチドのDNAに作用可能に結合している;プロモーター又はエンハンサーは、配列の転写に影響を及ぼすならば、コード配列に作用可能に結合している;又はリボソーム結合部位は、もしそれが翻訳を容易にするような位置にあるなら、コード配列と作用可能に結合している。一般的に、「作用可能に結合している」とは、結合したDNA配列が近接しており、分泌リーダーの場合には近接していて読みフェーズにあることを意味する。しかし、エンハンサーは必ずしも近接している必要はない。結合は簡便な制限部位でのライゲーションにより達成される。そのような部位が存在しない場合は、従来の手法に従って、合成オリゴヌクレオチドアダプターあるいはリンカーが使用される。
【0012】
「抗体」という用語は最も広い意味において使用され、特に単一のモノクローナル抗体(アゴニスト及びアンタゴニスト抗体を含む)、及び多エピトープ特異性を持つ抗体組成物、並びに、これらが所望の生物学的活性を示す限りにおいて抗体断片(例えばFab、F(ab')2及びFv)を包含している。
ここで使用される「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に均一な抗体の集団、すなわち、構成する個々の抗体が、少量存在しうる自然に生じる可能性のある突然変異を除いて同一である集団から得られる抗体を指す。モノクローナル抗体は高度に特異的であり、単一の抗原部位に対応する。さらに、異なる決定基(エピトープ)に対応する異なる抗体を典型的に含む従来の(ポリクローナル)抗体調製物とは異なり、各モノクローナル抗体は抗原の単一の決定基に対応する。それらの特異性に加えて、モノクローナル抗体は、それらが他の免疫グロブリンで汚染されていないハイブリドーマ培地で合成されるという点で有利である。「モノクローナル」という修飾語は、抗体の実質的に均一な集団から得られるという抗体の特徴を示すものであり、或る特定の方法による抗体生産を必要とすると解釈すべきではない。例えば、本発明に従って使用されるモノクローナル抗体は、最初にKohler及びMilsteinによって、Nature, 256:495 (1975)に記載されたハイブリドーマ法によって作ることができ、あるいは組換えDNA法によって作ることができる[例えば米国特許第4,816,567号(Cabilly等)参照]。
ここで、モノクローナル抗体は特に、重鎖及び/又は軽鎖の一部が、特定の種から誘導された又は特定の抗体クラス又はサブクラスに属する抗体の対応する配列と同一又は相同であるが、鎖の残りの部分は他の種から誘導された又は他の抗体クラス又はサブクラスに属する抗体の対応する配列と同一又は相同である「キメラ」抗体(免疫グロブリン)、並びに、それらが所望の生物学的活性を示す限りそれらの抗体の断片を含む[米国特許第4,816,567号、Cabilly等;Morrison 等, Proc. Natl. acad. Sci. U.S.A. 81: 6851-6855 (1984)]。
【0013】
非ヒト(例えばマウス)抗体の「ヒト化」型は、非ヒト免疫グロブリンから誘導された最小配列を含有する特定のキメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖又はそれらの断片(例えば、Fv、Fab、Fab'、F(ab')2あるいは抗体の他の抗原結合性配列)である。大部分において、ヒト化抗体はヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)であって、そのレシピエントの相補性決定領域(CDR)が、マウス、ラット、ヤギなどのヒト以外の種のCDR(ドナー抗体)に由来する所望の特異性、親和性及び容量を持つ残基で置換されている。ある場合は、ヒト免疫グロブリンのFv枠残基が対応する非ヒト残基で置換される。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にも、輸入されるCDR又は枠配列にも見られない残基を含んでもよい。これらの修飾は、抗体の性能をさらに精密かつ最適化するために施される。一般にヒト化抗体は、CDR領域の全て又は実質上全てが非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、FR領域の全て又は実質上全てがヒト免疫グロブリン共通配列のものである少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全部を含有するであろう。また、最適なヒト化抗体は、免疫グロブリン定常領域(Fc)、典型的にはヒト免疫グロブリンのものの少なくとも一部も含有するであろう。さらなる詳細については、Jones等, Nature 321: 522 -525 (1986);Reichmann等, Nature 332: 323-329 (1988);Presta, Curr. Op. struct. Biol. 2: 593 -596 (1992)及び1993年7月6日発行の米国特許第5,225,539号(Winter)を参照のこと。
【0014】
ここで意図している「活性な」及び「活性」とは、天然又は天然発生patched-2の生物学的及び/又は免疫学的活性を保持するpatched-2の形態を意味する。好ましい活性は、ヘッジホッグ(Hh)、特にデザートヘッジホッグ(Dhh)シグナル伝達に結合及び影響、例えば阻止又はその他の変調をさせる能力である。例えば、精巣眼、雄精母細胞形成及び基底細胞癌の病原を調節である。
ここで用いられる「アンタゴニスト」なる用語は、最も広い意味において、Hhシグナル伝達におけるpatched-2の正常な機能を阻止、防止、阻害、中和する任意の分子を含む。アンタゴニストの1つの特別な形態は、Dhhとpatched-2との相互作用を阻害する分子を含む。あるいは、アンタゴニストはpatched-2のレベルを増大させる分子でもあり得る。同様に、ここで用いられる「アゴニスト」なる用語は、Hhシグナル伝達経路におけるHhのpatched-2への結合を促進、向上又は刺激する、あるいはそれをアップレギュレートする(例えば、ptch-2(配列番号:2)のSmo(配列番号:17)への結合を阻止する)任意の分子を含む。Hh及びpatched-2及びその結合タンパク質のタンパク質−タンパク質相互作用に影響する好ましい分子は、後者の断片又は小さな生物有機分子、例えばペプチド類似物を含み、それらは場合によってHhのpatched-2への結合を防止又は促進するであろう。非限定的な例は、タンパク質、ペプチド、糖タンパク質、グリコペプチド、糖脂質、多糖類、オリゴ糖、核酸、生物有機分子、ペプチド類似物、製薬剤又はそれらの代謝物、転写及び翻訳制御配列などを含む。アンタゴニストの他の好ましい形態は、野生型patched-2の正しい転写を阻害するアンチセンスヌクレオチドを含む。
【0015】
「変調」又は「変調する」という語句は、シグナル伝達経路のアップレギュレーション又はダウンレギュレーションを意味する。シグナル伝達の制御下での細胞プロセスは、これらに限られないが、特定遺伝子の転写;代謝、増殖、分化、接着、アポトーシス及び生存などの正常な細胞機能、並びに、形質転換、分化及び転移の阻止といった異常なプロセスを含みうる。
「ポリメラーゼ連鎖反応」又は「PCR」の技術は、ここで用いられる場合、一般に核酸、RNA及び/又はDNAの特定の切片の少量が1987年7月28日発行の米国特許第4,683,195号に記載されたように増幅される方法を意味する。一般的に、対象とする領域の末端から又は利用可能の必要性を越える配列情報は、オリゴヌクレオチドプライマーの設計を可能にし;これらのプライマーは増幅されるテンプレートの反対鎖の配列と同一又は類似している。2つのプライマーの5’末端ヌクレオチドは増幅された物質の末端と一致する。PCR配列は、全ゲノムDNA、及び全細胞性RNA、バクテリオファージ、又はプラスミド配列等から転写されたcDNAを形成する。一般的に、Mullis等, Cold Spring Harbor Symp. Quant Biol. 51: 263 (1987); Erlich, Ed., PCR Technology, (Stockton Press, NY, 1989)を参照のこと。ここで用いられるように、PCRは、プライマーとして公知の核酸を、そして核酸の特定の切片を増幅又は生成するために核酸ポリメラーゼを使用することを含む核酸試験試料の唯一ではない一例であると考えられる。
【0016】
II. 本発明の組成物と方法
A.全長patched-2
本発明は、本出願においてpatched-2と称されるポリペプチドをコードする、新規に同定され単離された核酸配列を提供する。特に本出願人は、以下の実施例で更に詳細に開示するような、ヒトpatched-2ポリペプチドをコードするcDNAを同定し単離した。(初期パラメータに設定された)BLAST、BLAST-2及びFastA配列アラインメントコンピュータプログラムを用いて、本出願人は、ヒトpatched-2の全長天然配列(即ち、図3のPtch-2、配列番号:2)がヒトpatched(即ちPtch、配列番号:4)と53%のアミノ酸配列同一性を有することを見出した。さらに、ヒト全長配列patched-2(即ち、Ptch-2、配列番号:2)は、マウスPtch-2(配列番号:7)(図8)と約91%の配列同一性を有していた。従って、現在では、本出願で開示されるヒトpatched-2(即ち、Ptch-2、配列番号:2)ががヘッジホッグシグナル伝達カスケード、特にデザートヘッジホッグの新たに同定されたメンバーであると考えられている。
ヒトpatched-2遺伝子の全長天然配列、又はその一部は、全長遺伝子を単離するための、又は図1(配列番号:2)に開示したヒトpatched-2配列と所定の配列同一性を有する更に他の脊椎動物相同遺伝子(例えば、patched-2の天然発生変異体又は他の種からのpatched-2をコードするもの)を単離するためのcDNAライブラリ用のハイブリッド形成プローブとして使用できる。場合によっては、プローブの長さは約20から約50塩基であろう。ハイブリッド形成プローブは、図1(配列番号:1)の核酸配列から、又は天然配列脊椎動物patched-2のプロモーター、エンハンサーエレメント、及びイントロンを含むゲノム配列から誘導されうる。例えば、スクリーニング方法は、脊椎動物patched-2遺伝子のコード化領域を周知のDNA配列を用いて単離して約40塩基の選択されたプローブを合成することを含む。ハイブリッド形成プローブは、32P又は35Sなどの放射性ヌクレオチド、アビジン/ビオチン結合系を解してプローブに結合したアルカリホスファターゼ等の酵素標識を含む種々の標識によって標識してよい。本発明の脊椎動物patched-2遺伝子に相補的な配列を有する標識したプローブは、ヒトcDNA、ゲノムDNA又はmRNAのライブラリのスクリーニングに使用でき、それらのライブラリの何れのメンバーにプローブがハイブリッド形成するかを決定できる。
【0017】
B.patched-2変異体
ここに記載した全長天然配列patched-2に加えて、patched-2変異体も調製できると考えられる。patched-2変異体は、公知のpatched-2DNAに適当なヌクレオチド変化を導入することにより、あるいは所望のpatched-2ポリペプチドを合成することにより調製できる。当業者は、アミノ酸変化がpatched-2の翻訳後プロセスを変えうることを理解するであろう。
天然全長配列patched-2又はここに記載したpatched-2の種々のドメインにおける変異は、例えば、米国特許第5,364,934号に記載されている保存的及び非保存的変異についての任意の技術及び指針を用いてなすことができる。変異は、結果として天然配列patched-2と比較してpatched-2のアミノ酸配列が変化するpatched-2をコードする一又は複数のコドンの置換、欠失又は挿入であってよい。場合によっては、変異は少なくとも1つのアミノ酸の、patched-2の一又は複数のドメインの任意の他のアミノ酸による置換である。いずれのアミノ酸残基が所望の活性に悪影響を与えることなく挿入、置換又は欠失されるかの指針は、patched-2の配列を相同性の知られたタンパク質分子の配列と比較し、相同性の高い領域内でなされるアミノ酸配列変化を最小にすることによって見出される。アミノ酸置換は、一のアミノ酸を類似した構造及び/又は化学特性を持つ他のアミノ酸で置換した結果、例えばロイシンのセリンでの置換、即ち保存的アミノ酸置換とすることができる。挿入及び欠失は、場合によっては1から5のアミノ酸の範囲内とすることができる。許容される変異は、配列においてアミノ酸の挿入、欠失又は置換を系統的に作成し、得られた変異体を下記の実施例に記載するインビトロアッセイの任意のもので活性について試験することにより決定される。
【0018】
変異は、オリゴヌクレオチド媒介(部位特異的)突然変異誘発、アラニンスキャンニング、及びPCR突然変異誘発等のこの分野で周知の技術を用いてなすことができる。部位特異的突然変異誘発[Carter等, Nucl. Acids Res., 13: 4331 (1986); Zoller等, Nucl. Acids Res., 10: 6487 (1987)]、カセット突然変異誘発[Wells等, Gene, 34: 315 (1985)]、制限的選択突然変異誘発[Wells等, Philos. Trans. R. Soc. London SerA, 317: 415 (1986)]又は他のこの分野で知られた技術をクローニングしたDNAに実施して、脊椎動物patched-2変異体DNAを作成することもできる。
また、隣接配列に沿って一又は複数のアミノ酸を同定するのにスキャンニングアミノ酸分析を用いることができる。中でも好ましいスキャンニングアミノ酸は、比較的小さく、中性のアミノ酸である。そのようなアミノ酸は、アラニン、グリシン、セリン、及びシステインを含む。アラニンは、ベータ炭素を越える側鎖を排除し変異体の主鎖構造を変化させにくいので、この群の中で典型的に好ましいスキャンニングアミノ酸である。また、アラニンは最もありふれたアミノ酸であるため典型的には好ましい。さらに、それは埋没した及び露出した位置の両方に見られることが多い[Creighton, The Proteins, (W.H. Freeman & Co., N.Y.); Chothia, J. Mol. Biol., 150: 1 (1976)]。アラニン置換が十分な量の変異体を生じない場合は、アイソテリック(isoteric)アミノ酸を用いることができる。
図3に示したヒトpatched及びpatched-2(例えば、Ptch、配列番号:4及びPtch-2、配列番号:2)の間の比較では、12の膜貫通ドメインを灰色で同定し、同一残基をボックスで囲んだ。ギャップはダッシュ(−)で示し、2つの配列間の全同一スコアを最大にするように挿入した。
【0019】
C.patched-2の修飾
patched-2ポリペプチドの共有結合的修飾は本発明の範囲内に含まれる。共有結合的修飾の一型は、patched-2の標的とするアミノ酸残基を、patched-2の選択された側鎖又はN又はC末端残基と反応できる有機誘導体化試薬と反応させることである。二官能性試薬での誘導体化が、例えばpatched-2を水不溶性支持体マトリクスあるいは抗-patched-2抗体の精製方法又はその逆で用いるための表面に架橋させるのに有用である。通常用いられる架橋剤は、例えば、1,1-ビス(ジアゾアセチル)-2-フェニルエタン、グルタルアルデヒド、N-ヒドロキシスクシンイミドエステル、例えば4-アジドサリチル酸、3,3’-ジチオビス(スクシンイミジルプロピオネート)等のジスクシンイミジルエステルを含むホモ二官能性イミドエステル、ビス-N-マレイミド-1,8-オクタン等の二官能性マレイミド、及びメチル-3-[(p-アジドフェニル)-ジチオ]プロピオイミダート等の試薬を含む。
他の修飾は、グルタミニル及びアスパラギニル残基の各々対応するグルタミル及びアスパルチル残基への脱アミノ化、プロリン及びリシンのヒドロキシル化、セリル又はトレオニル残基のヒドロキシル基のリン酸化、リジン、アルギニン、及びヒスチジン側鎖のα-アミノ基のメチル化[T.E. Creighton, Proteins: Structure and Molecular Properties, W.H. Freeman & Co., San Francisco, pp.79-86 (1983)]、N-末端アミンのアセチル化、及び任意のC-末端カルボキシル基のアミド化を含む。
patched-2の共有結合的修飾の他の型は、patched-2ポリぺプチドの、種々の非タンパク質様ポリマー、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、又はポリオキシアルキレンの一つへの、米国特許第4,640,835号;第4,496,689号;第4,301,144号;第4,670,417号;第4,791,192号又は第4,179,337号に記載された方法での結合を含む。このような修飾は、哺乳動物系での循環における分子の半減期の増大が予想され;patched-2分子の半減期の延長は、patched-2変異体が治療薬として投与される場合などの或る種の状況下で有用であり得る。
【0020】
また、本発明のpatched-2は、他の異種ポリペプチド又はアミノ酸配列に融合したpatched-2を含むキメラ分子を形成する方法で修飾してもよい。一実施態様では、このようなキメラ分子は、抗タグ抗体が選択的に結合できるエピトープを提供するタグポリペプチドとpatched-2との融合を含む。エピトープタグは、一般的にはpatched-2のアミノ-又はカルボキシル-末端に位置する。このようなpatched-2のエピトープタグ形態の存在は、タグポリペプチドに対する抗体を用いて検出することができる。また、エピトープタグの提供は、抗タグ抗体又はエピトープタグに結合する他の型の親和性マトリクスを用いたアフィニティ精製によってpatched-2を容易に精製できるようにする。もう一つの実施態様において、キメラ分子はpatched-2の免疫グロブリン又は免疫グロブリンの特定領域との融合体を含む。キメラ分子の二価形態では、このような融合はIgG分子のFc領域であり得る。
通常は、patched-2レセプターの隣接アミノ酸配列のC-末端が、免疫グロブリン定常領域の隣接アミノ酸配列のN-末端に、可変領域に換えて融合するが、N-末端融合も可能である。
典型的には、このような融合物は、少なくとも免疫グロブリン重鎖の定常領域の機能的活性ヒンジ、CH2及びCH3ドメインを保持する。また融合は、定常ドメインのFc部分のC-末端、又は重鎖のCH1の直近N-末端又は軽鎖の対応する領域にもなされる。これは、通常は、適当なDNA配列を作成し、それを組換え細胞培地で発現させることにより達成される。あるいは、イムノアドヘシンは周知を方法に従って合成してもよい。
融合がなされる正確な位置は重要ではなく;特定の位置は良く知られており、免疫グロブリンの生物学的活性、分泌又は結合特性を最適化するために選択されうる。
【0021】
好ましい実施態様では、patched-2の結合部位を含む隣接アミノ酸配列のC-末端が、N-末端において、抗体のC-末端部分(特にFcドメイン)に融合し、免疫グロブリン、例えば免疫グロブリンGl(IgG-l)のエフェクター機能を含有する。ここで上述したように、全重鎖定常領域を結合部位を含む配列に融合させることができる。しかしながら、より好ましくは、パパイン切断部位(IgGFcを化学的に定義する;残基216、重鎖定常領域の第1残基を114とする[Kobet等, 上掲]、又は他の免疫グロブリンの類似部位)の直上流のヒンジ領域で開始する配列が融合に用いられる。イムノアドヘシンにおいて異種タンパク質重鎖融合タンパク質が効率的に分泌されるには免疫グロブリン軽鎖が必要であるというのが以前の考えであったが、全IgGl重鎖を含むイムノアドヘシンでさえも軽鎖無しで効率的に分泌されることが見出された。軽鎖が不要であるので、本発明のイムノアドヘシンの作成に用いられる免疫グロブリン重鎖定常ドメインは、軽鎖結合部位を持たなくてもよい。これは、通常は軽鎖が結合する免疫グロブリンの重鎖配列成分を除去又は十分に変化させ、そのような結合がもはや不可能とすることにより達成される。よって、patched-2/免疫グロブリンキメラの或る実施態様では、CH1ドメインが完全に除去され得る。
特に好ましい実施態様では、patched-2の細胞外ドメインを含むアミノ酸配列がヒンジ領域及びCH2、CH3;又はIgG-1、IgG-2、IgG-3、又はIgG-4の重鎖のCH1、ヒンジ、CH2及びCH3ドメインに融合する。
幾つかの実施態様において、patched-2/免疫グロブリン分子(イムノアドヘシン)は、単量体、二量体、又は多量体、特に二量体又は三量体として組み立てられる。一般的に、これらの組み立てられたイムノアドヘシンは、対応する免疫グロブリンのものに似た周知の単位構造を有する。基本的な4つの鎖構造単位(2つの免疫グロブリン重鎖−軽鎖対の二量体)は、IgG、IgA及びIgEが存在する形態である。4つの鎖単位は高分子量免疫グロブリンで繰り返され;IgMは一般にジスルフィド結合で保持された基本的な4つの鎖単位の五量体として存在する。IgAグロブリン、場合によってはIgGグロブリンも、血清中で多量体形態でも存在する。多量体の場合、4つの各鎖単位は同じでも異なっていてもよい。
【0022】
patched-2/免疫グロブリンキメラの全免疫グロブリン部分が同じ免疫グロブリンからである必要はない。イムノアドヘシンの特性を最適化するために、異なる免疫グロブリンの種々の部分が結合され、天然免疫グロブリンの変異体及び誘導体がpatched-2について上述したように作成されうる。例えば、IgG-1のヒンジがIgG-3のものに置換されたイムノアドヘシン作成物が、機能的であり全IgG-1重鎖を含むイムノアドヘシンに薬力学的に匹敵することがわかった。
種々のタグポリペプチド及びそれら各々の抗体はこの分野で良く知られている。例としては、ポリ−ヒスチジン(poly-his)又はポリ−ヒスチジン−グリシン(poly-his-gly)タグ;flu HAタグポリペプチド及びその抗体12CA5[Field等, Mol. Cell. Biol., 8:2159-2165 (1988)];c-mycタグ及びそれに対する8F9、3C7、6E10、G4、B7及び9E10抗体[Evan等, Molecular and Cellular Biology, 5:3610-3616 (1985)];及び単純ヘルペスウイルス糖タンパク質D(gD)タグ及びその抗体[Paborsky等, Protein Engineering, 3(6):547-553 (1990)]を含む。他のタグポリペプチドは、フラッグペプチド[Hopp等, BioTechnology, 6:1204-1210 (1988)];KT3エピトープペプチド[Martin等, Science, 255:192-194 (1992)];α-チューブリンエピトープペプチド[Skinner等, J. Biol. Chem., 266:15163-15166 (1991)];及びT7遺伝子10タンパク質ペプチドタグ[Lutz-Freyermuth等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 87:6393-6397 (1990)]を含む。好ましいタグはインフルエンザHAタグである。
【0023】
D.patched-2の調製
以下の説明は、主として、patched-2核酸を含むベクターで形質転換又は形質移入された細胞を培養することにより特定のpatched-2を生産する方法に関する。もちろん、当該分野においてよく知られている他の方法を用いてpatched-2を調製することはできると考えられる。例えば、patched-2配列、又はその一部は、固相技術を用いた直接ペプチド合成によって生産してもよい[例えば、Stewart等, Solid-Phase Peptide Synthesis, W.H. Freeman Co., San Francisco, CA (1969);Merrifield, J. Am. Chem. Soc., 85:2149-2154 (1963)参照]。手動技術又は自動によるインビトロタンパク質合成を行ってもよい。自動合成は、例えば、アプライド・バイオシステムズ・ペプチド合成機(Applied Biosystems peptide Synthesizer)(Foster City, CA)を用いて、製造者の指示により実施してもよい。脊椎動物patched-2の種々の部分を、別々に化学的に合成し、化学的又は酵素的方法を用いて結合させて全長patched-2を生産してもよい。
【0024】
1.脊椎動物patched-2をコードするDNAの単離
patched-2をコードするDNAは、patched-2mRNAを保有していてそれを検出可能なレベルで発現すると考えられる組織から調製されたcDNAライブラリから得ることができる。従って、ヒトpatched-2DNAは、実施例に記載されるような、ヒトの組織から調製されたcDNAライブラリから簡便に得ることができる。また脊椎動物patched-2コード化遺伝子は、ゲノムライブラリから又はオリゴヌクレオチド合成により得ることもできる。
ライブラリは、対象となる遺伝子あるいはそれによりコードされるタンパク質を同定するために設計された(patched-2に対する抗体又は少なくとも約20−80塩基のオリゴヌクレオチド等の)プローブによってスクリーニングできる。選択されたプローブによるcDNA又はゲノムライブラリのスクリーニングは、例えばSambrook等, Molecular Cloning: A Laboratory Manual(New York: Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989)に記載されている標準的な手順を使用して実施することができる。脊椎動物patched-2をコードする遺伝子を単離する代替的手段はPCR法を使用するものである[Sambrook等, 上掲;Dieffenbach等, PCR Primer:A Laboratory Manual(Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1995)]。
下記の実施例は、cDNAライブラリのスクリーニング技術を記載している。プローブとして選択されたオリゴヌクレオチド配列は、充分な長さで、疑陽性が最小化されるよう充分に明瞭でなければならない。オリゴヌクレオチドは、スクリーニングされるライブラリ内のDNAへのハイブリッド形成時に検出可能であるように標識されていることが好ましい。標識化の方法は当該分野において良く知られており、32P標識されたATPのような放射線標識、ビオチン化あるいは酵素標識の使用が含まれる。中程度の緊縮性及び高度の緊縮性を含むハイブリッド形成条件は、上掲のSambrook等に与えられている。
このようなライブラリースクリーニング法において同定された配列は、Genbank等の公共データベース又は個人の配列データベースに寄託され公衆に利用可能とされている周知の配列と比較及びアラインメントすることができる。分子の一定の領域内又は全長に渡っての(アミノ酸又は核酸レベルのいずれかでの)配列同一性は、相同性測定のための種々のアルゴリズムを用いるBLAST、BLAST-2、ALIGN、DNAstar、及びINHERIT等のコンピュータソフトウェアプログラムを用いた配列アラインメントを通して決定することができる。
タンパク質コード化配列を有する核酸は、初めてここで開示された推定アミノ酸配列を使用して、選択したcDNA又はゲノムライブラリをスクリーニングすることにより、また必要ならば、cDNAに逆転写されなかったmRNAの生成中間体及び先駆物質を検出する上掲のSambrook等に記述されているような従来のプライマー伸展法を使用することにより得られる。
【0025】
2.宿主細胞の選択及び形質転換
宿主細胞を、ここに記載したpatched-2生産のための発現又はクローニングベクターで形質移入又は形質転換し、プロモーターを誘導し、形質転換体を選択し、又は所望の配列をコードする遺伝子を増幅するために適当に変性された常套的栄養培地で培養する。培養条件、例えば培地、温度、pH等々は、過度の実験をすることなく当業者が選ぶことができる。一般に、細胞培養の生産性を最大にするための原理、プロトコール、及び実用技術は、Mammalian Cell Biotechnology: a Practical Approach, M.Butler編 (IRL Press, 1991)及びSambrook等, 上掲に見出すことができる。
形質移入の方法、例えば、CaPO4及びエレクトロポレーションは当業者に知られている。用いられる宿主細胞に応じて、その細胞に対して適した標準的な方法を用いて形質転換はなされる。前掲のSambrook等に記載された塩化カルシウムを用いるカルシウム処理又はエレクトロポレーションが、原核生物又は実質的な細胞壁障壁を含む他の細胞に対して用いられる。アグロバクテリウム・トゥメファシエンスによる感染が、Shaw等, Gene, 23:315 (1983)及び1989年6月29日公開のWO 89/05859に記載されているように、或る種の植物細胞の形質転換に用いられる。このような細胞壁のない哺乳動物の細胞に対しては、Graham及びvan der Eb, Virology, 52:456-457 (1978)のリン酸カルシウム沈降法が用いられる。哺乳動物細胞の宿主系形質転換の一般的な態様は米国特許第4,399,216号に記載されている。酵母菌中への形質転換は、典型的には、Van solingen等, J. Bact., 130:946 (1977)及びHsiao等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 76:3829 (1979)の方法に従って実施される。しかしながら、DNAを細胞中に導入する他の方法、例えば、核マイクロインジェクション、エレクトロポレーション、無傷の細胞、又はポリカチオン、例えばポリブレン、ポリオルニチン等を用いる細菌プロトプラスト融合もまた用いることもできる。哺乳動物細胞を形質転換するための種々の技術については、Keown等, Methods in Enzymology, 185:527-537 (1990)及び Mansour等, Nature, 336:348-352 (1988)を参照のこと。
【0026】
ここに記載のベクターにおいてDNAをクローン化あるいは発現するために適切な宿主細胞は、原核生物、酵母菌、又は高等真核生物細胞である。適切な原核生物は、限定するものではないが、真正細菌、例えばグラム陰性又はグラム陽性生物体、例えば大腸菌のような腸内細菌科を含む。種々の大腸菌株が公衆に利用可能であり、例えば、大腸菌K12株MM294(ATCC31,446);大腸菌X1776(ATCC31,537);大腸菌株W3110(ATCC27,325)及びK5772(ATCC53,635)である。
原核生物に加えて、糸状菌又は酵母菌のような真核微生物は、脊椎動物patched-2コード化ベクターのための適切なクローニング又は発現宿主である。サッカロミセス・セレヴィシアは、通常用いられる下等真核生物宿主微生物である。
脊椎動物patched-2の発現に適切な宿主細胞は多細胞生物から誘導される。無脊椎動物細胞の例としては、ショウジョウバエS2及びスポドスペラSf9等の昆虫細胞並びに植物細胞が含まれる。有用な哺乳動物宿主細胞系の例は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)及びCOS細胞を含む。より詳細な例は、SV40によって形質転換されたサル腎臓CV1株 (COS-7, ATCC CRL 1651);ヒト胚腎臓株(293又は懸濁培養での増殖のためにサブクローン化された293細胞、Graham等, J. Gen Virol., 36:59 (1977));チャイニーズハムスター卵巣細胞/-DHFR(CHO, Urlaub及びChasin, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 77:4216 (1980));マウスのセルトリ細胞(TM4, Mather, Biol. Reprod., 23:243-251 (1980));ヒト肺細胞 (W138, ATCC CCL 75);ヒト肝細胞 (Hep G2, HB 8065);及びマウス乳房腫瘍 (MMT 060562, ATTC CCL51)を含む。適切な宿主細胞の選択は、この分野の技量の範囲内にある。
【0027】
3.複製可能なベクターの選択及び使用
patched-2をコードする核酸(例えば、cDNA又はゲノムDNA)は、クローニング(DNAの増幅)又は発現のために複製可能なベクター内に挿入される。様々なベクターが公的に入手可能である。ベクターは、例えば、プラスミド、コスミド、ウイルス粒子、又はファージの形態とすることができる。適切な核酸配列が、種々の手法によってベクターに挿入される。一般に、DNAはこの分野で周知の技術を用いて適当な制限エンドヌクレアーゼ部位に挿入される。ベクター成分としては、一般に、これらに制限されるものではないが、一又は複数のシグナル配列、複製開始点、一又は複数のマーカー遺伝子、エンハンサーエレメント、プロモーター、及び転写終結配列を含む。これらの成分の一又は複数を含む適当なベクターの作成には、当業者に知られた標準的なライゲーション技術を用いる。
発現及びクローニングベクターは共に一又は複数の選択された宿主細胞においてベクターの複製を可能にする核酸配列を含む。そのような配列は種々の細菌、酵母菌及びウイルスに対してよく知られている。プラスミドpBR322に由来する複製開始点は大部分のグラム陰性細菌に好適であり、2μプラスミド開始点は酵母菌に適しており、様々なウイルス開始点(SV40、ポリオーマ、アデノウイルス、VSV又はBPV)は哺乳動物細胞におけるクローニングベクターに有用である。好ましい複製可能なベクターは、プラスミドpRK5である。Holmes等, Science, 253: 1278-1280 (1991)。
発現及びクローニングベクターは、典型的には、選べるマーカーとも称される選択遺伝子を含む。典型的な選択遺伝子は、(a)抗生物質あるいは他の毒素、例えばアンピシリン、ネオマイシン、メトトレキセートあるいはテトラサイクリンに耐性を与え、(b)栄養要求性欠陥を補い、又は(c)複合培地から得られない重要な栄養素、例えばバシリに対する遺伝子コードD-アラニンラセマーゼを供給するタンパク質をコードする。
【0028】
哺乳動物細胞に適切な選べるマーカーの他の例は、DHFRあるいはチミジンキナーゼのように、patched-2核酸を取り込むことのできる細胞成分の同定が可能なものである。野生型DHFRを用いた場合の好適な宿主細胞は、Urlaub 等により, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 77:4216 (1980)に記載されているようにして調製され増殖されたDHFR活性に欠陥のあるCHO細胞系である。酵母菌中での使用に好適な選択遺伝子は酵母菌プラスミドYRp7に存在するtrp1遺伝子である[Stinchcomb等, Nature, 282:39(1979);Kingman等, Gene, 7:141(1979);Tschemper等, Gene, 10:157(1980)]。trp1遺伝子は、例えば、ATCC番号44076あるいはPEP4-1のようなトリプトファン内で成長する能力を欠く酵母菌の突然変異株に対する選択マーカーを提供する[Jones, Genetics, 85:12 (1977)]。
発現及びクローニングベクターは、通常、patched-2核酸配列に作用可能に結合してmRNA合成を制御するプロモーターを含む。種々の可能な宿主細胞により認識される好適なプロモーターが知られている。原核生物宿主での使用に好適なプロモーターはβ-ラクタマーゼ及びラクトースプロモーター系[Cahng等, Nature, 275:615 (1978); Goeddel等, Nature, 281:544 (1979)]、アルカリホスファターゼ、トリプトファン(trp)プロモーター系[Goeddel, Nucleic Acids Res., 8:4057 (1980); EP 36,776]、及びハイブリッドプロモーター、例えばtacプロモーター[deBoer 等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 80:21-25 (1983)]を含む。細菌系で使用するプロモータもまたpatched-2をコードするDNAと作用可能に結合したシャイン・ダルガーノ(S.D.)配列を有する。
酵母菌宿主と共に用いて好適なプロモーター配列の例としては、3-ホスホグリセラートキナーゼ[Hitzeman 等, J. Biol. Chem., 255:2073 (1980)]又は他の糖分解酵素[Hess 等, J. Adv. Enzyme Reg., 7:149 (1968);Holland, Biochemistry, 17:4900(1978)]、例えばエノラーゼ、グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ、ヘキソキナーゼ、ピルビン酸デカルボキシラーゼ、ホスホフルクトキナーゼ、グルコース-6-リン酸イソメラーゼ、3-ホスホグリセレートムターゼ、ピルビン酸キナーゼ、トリオセリン酸イソメラーゼ、ホスホグルコースイソメラーゼ、及びグルコキナーゼが含まれる。
【0029】
他の酵母菌プロモーターとしては、成長条件によって転写が制御される付加的効果を有する誘発的プロモーターであり、アルコールデヒドロゲナーゼ2、イソチトクロムC、酸ホスファターゼ、窒素代謝と関連する分解性酵素、メタロチオネイン、グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ、及びマルトース及びガラクトースの利用を支配する酵素のプロモーター領域がある。酵母菌での発現に好適に用いられるベクターとプロモータはEP 73,657に更に記載されている。
哺乳動物の宿主細胞におけるベクターからのpatched-2転写は、例えば、ポリオーマウィルス、伝染性上皮腫ウィルス(1989年7月5日公開のUK 2,211,504)、アデノウィルス(例えばアデノウィルス2)、ウシ乳頭腫ウィルス、トリ肉腫ウィルス、サイトメガロウィルス、レトロウィルス、B型肝炎ウィルス及びサルウィルス40(SV40)のようなウィルスのゲノムから得られるプロモーター、異種哺乳動物から得られるプロモーター、例えばアクチンプロモーター又は免疫グロブリンプロモーター、及び熱衝撃プロモーターから得られるプロモーターによって、このようなプロモーターが宿主細胞系に適合し得る限り制御される。
より高等の真核生物による脊椎動物patched-2をコードしているDNAの転写は、ベクター中にエンハンサー配列を挿入することによって増強され得る。エンハンサーは、通常は約10から300塩基対で、プロモーターに作用してその転写を増強するDNAのシス作動要素である。哺乳動物遺伝子由来の多くのエンハンサー配列が現在知られている(グロビン、エラスターゼ、アルブミン、α-フェトプロテイン及びインスリン)。しかしながら、典型的には、真核細胞ウィルス由来のエンハンサーが用いられるであろう。例としては、複製起点の後期側のSV40エンハンサー(100−270塩基対)、サイトメガロウィルス初期プロモーターエンハンサー、複製起点の後期側のポリオーマエンハンサー及びアデノウィルスエンハンサーが含まれる。エンハンサーは、patched-2コード化配列の5’又は3’位でベクター中にスプライシングされ得るが、好ましくはプロモーターから5’位に位置している。
また真核生物宿主細胞(酵母菌、真菌、昆虫、植物、動物、ヒト、又は他の多細胞生物由来の有核細胞)に用いられる発現ベクターは、転写の終結及びmRNAの安定化に必要な配列も含む。このような配列は、真核生物又はウィルスのDNA又はcDNAの通常は5’、時には3’の非翻訳領域から取得できる。これらの領域は、patched-2をコードするmRNAの非翻訳部分にポリアデニル化断片として転写されるヌクレオチドセグメントを含む。
組換え脊椎動物細胞培養でのpatched-2の合成に適応化するのに適切なさらに他の方法、ベクター及び宿主細胞は、Gething等, Nature, 293:620-625 (1981); Mantei等, Nature, 281:40-46 (1979); EP 117,060; 及びEP 117,058に記載されている。
【0030】
4.遺伝子増幅/発現の検出
遺伝子の増幅及び/又は発現は、ここで提供された配列に基づき、適切に標識されたプローブを用い、例えば、従来よりのサザンブロット法、mRNAの転写を定量化するノーザンブロット法[Thomas, Proc. Natl. Acad. Sci. USA,77:5201-5205 (1980)]、ドットブロット法(DNA分析)、又はインサイツハイブリッド形成法によって、直接的に試料中で測定することができる。あるいは、DNA二本鎖、RNA二本鎖及びDNA−RNAハイブリッド二本鎖又はDNA-タンパク二本鎖を含む、特異的二本鎖を認識することができる抗体を用いることもできる。次いで、抗体を標識し、アッセイを実施することができ、ここで二本鎖は表面に結合しており、その結果二本鎖の表面での形成の時点でその二本鎖に結合した抗体の存在を検出することができる。
あるいは、遺伝子の発現は、遺伝子産物の発現を直接的に定量する免疫学的な方法、例えば細胞又は組織切片の免疫組織化学的染色及び細胞培養又は体液のアッセイによって、測定することもできる。試料液の免疫組織化学的染色及び/又はアッセイに有用な抗体は、モノクローナルでもポリクローナルでもよく、任意の哺乳動物で調製することができる。簡便には、抗体は、天然配列patched-2ポリペプチドに対して、又はここで提供されるDNA配列をベースとした合成ペプチドに対して、又はpatched-2DNAに融合し特異的抗体エピトープをコードする外因性配列に対して調製され得る。
【0031】
5.ポリペプチドの精製
patched-2の形態は、宿主細胞の溶解液から回収することができる。patched-2は膜結合性であるので、適切な洗浄液(例えばトリトン-X100)又は酵素的切断を用いて膜から引き離すことができる。patched-2の発現に用いられる細胞は、凍結解凍サイクル、超音波処理、機械的破壊、又は細胞溶解剤などの種々の化学的又は物理的手段によって破壊することができる。
patched-2を、組換え細胞タンパク又はポリペプチドから精製することが望ましい。適切な精製手順の例である次の手順により精製される:すなわち、イオン交換カラムでの分画;エタノール沈殿;逆相HPLC;シリカ又はカチオン交換樹脂、例えばDEAEによるクロマトグラフィー;クロマトフォーカシング;SDS-PAGE;硫酸アンモニウム沈殿;例えばセファデックスG-75を用いるゲル濾過;IgGのような汚染物を除くプロテインAセファロースカラム;及びpatched-2のエピトープタグ形態を結合させる金属キレート化カラムである。この分野で知られ、例えば、Deutcher, Methodes in Enzymology, 182 (1990);Scopes, Protein Purification: Principles and Practice, Springer-Verlag, New York (1982)に記載された多くのタンパク質精製方法を用いることができる。選ばれる精製過程は、例えば、用いられる生産方法及び特に生産される特定のpatched-2の性質に依存する。
【0032】
E.patched-2の用途
(1)patched-2はデザートヘッジホッグ(Dhh)に対する特異的レセプターである。
ヘッジホッグ(Hh)シグナル伝達経路は、哺乳動物及び無脊椎動物の胚構造の形成に含まれている。多重経路膜貫通レセプターpatchedは、Hh経路のネガティブレギュレータであり、セルペンチン(serpentine)シグナル伝達分子smoothened(Smo)を抑制する。データは、patchedの喪失がHh経路の調節解除を導き、胚における異常構造及び成人における癌の形成をもたらすことを示した。
patched-2(例えば、Ptch-2、配列番号:2)と命名される出願人が新たに同定した第2のヒトpatched遺伝子は、patchedと類似の12膜貫通ドメインのトポロジーを有し、Hhファミリーの全てのメンバーと結合でき、Smo(例えば、配列番号:17)と複合体を形成できる。しかしながら、patched-2とpatchedの発現パターンは重複しない。patched-2は主に発育中の精母細胞で発現され、それはデザートヘッジホッグ産生セルトリ細胞によって直接支持され、patched-2がデザートヘッジホッグのレセプターであることを示唆している。
成人細管において、通常は大きな分泌細胞であるセルトリ細胞は、精細管を基底層から管腔側へ行き来し、胚細胞を飲み込む細胞質隆起を送り出している。これらの接触は、単相ラウンドの精子細胞が分化して高度に特化した運動性精子が生成される精子完成の間に特に密接である。隣接するセルトリ細胞間の密接な結合は、細管を有糸分裂精原細胞及び初期精母細胞を含む基底領域、及びに減数分裂精母細胞及び成熟精子細胞を含むアドルミナル(adluminal)区画とに区分する。実際に、セルトリ誘導細胞系は培地の胚細胞の減数分裂的進行を支持し、セルトリ細胞から誘導された因子が胚細胞成熟に寄与するという見方に一致する、Rassoulzadegan, M.等, Cell 1993, 75: 997-1006。Dhh活性の喪失は、劣性の性特異的フェノタイプをもたらす。雌マウス同型接合の変異は十分に生存可能で繁殖可能であったが、雄マウスでは生存可能だが繁殖不可能であった。試験全体により、18.5dpc程度の初期では、変異した雄の精子は同型接合同腹仔のものより検出できる程度に小さいことが示された。Bitgood等, Curr. Biol., 1996, 6(3): 298-304。即ち、セルトリ細胞は、出生後発育の間の胚細胞発達の有糸分裂及び減数分裂段階を独立に調節するようである。従って、patched-2はDhh(配列番号:13)のレセプターであることが明らかとなったので、Dhh(配列番号:13)のpatched-2への結合を変調させる分子はDhh(配列番号:13)シグナル伝達の活性化に影響を与え、よってDhh(配列番号:13)に媒介される状態の治療に有用性を持つ。(例えば、精巣癌である)。あるいは、patched-2のアンタゴニスト又はアゴニストがDhhシグナル伝達の阻止によって影響される疾患の治療又は望ましい生理学的状態の生成に使用できることも提案される。(例えば、避妊、不妊治療である)。
【0033】
(2)patched-2の一般的用途
patched-2をコードする核酸配列(又はそれらの補体)は、ハイブリッド形成プローブとしての使用を含む分子生物学の分野において、染色体及び遺伝子マッピングにおいて、及びアンチセンスRNA及びDNAの生成において種々の用途を有している。また、patched-2核酸は、ここに記載される組み換え技術によるpatched-2ポリペプチドの調製にも有用であろう。
全長天然配列patched-2遺伝子、又はその一部は、全長遺伝子の単離又は図1(配列番号:1)に開示されたpatched-2配列に対して所望の配列同一性を持つ更に他の遺伝子(例えば、patched-2の天然発生変異体をコードするもの)の単離のためのcDNAライブラリ用のハイブリッド形成プローブとして使用できる。場合によっては、プローブの長さは約20〜約50塩基である。ハイブリッド形成プローブは、図1(配列番号:1)の核酸配列から、又は天然配列patched-2のプロモーター、エンハンサー成分及びイントロンを含むゲノム配列から誘導され得る。例えば、スクリーニング法は、patched-2遺伝子のコード化領域を周知のDNA配列を用いて単離して約40塩基の選択されたプローブを合成することを含む。ハイブリッド形成プローブは、32P又は35S等の放射性ヌクレオチド、又はアビジン/ビオチン結合系を介してプローブに結合したアルカリホスファターゼ等の酵素標識を含む種々の標識で標識されうる。本発明のpatched-2遺伝子に相補的な配列を有する標識されたプローブは、ヒトcDNA、ゲノムDNA又はmRNAのライブラリーをスクリーニングし、それらのライブラリーの何れのメンバーがプローブにハイブッド形成するかを決定するのに使用できる。ハイブリッド形成技術は、以下の実施例において更に詳細に記載する。
また、プローブは、PCR技術に用いて、密接に関連したpatched-2配列の同定のための配列のプールを作成するのに用いることができる。
【0034】
また、patched-2をコードする核酸配列は、そのpatched-2をコードする遺伝子のマッピングのため、及び遺伝子疾患を持つ個体の遺伝子分析のためのハイブリッド形成プローブの作成にも用いることができる。ここに提供される核酸配列は、インサイツハイブリッド形成、既知の染色体マーカーに対する結合分析、及びライブラリーでのハイブリッド形成スクリーニング等の周知の技術を用いて、染色体及び染色体の特定領域にマッピングすることができる。
patched-2ポリペプチドは、究極的にヘッジホッグシグナル伝達の変調をもたらすpatched-2との複合体形成に含まれる他のタンパク質又は分子を同定するアッセイに用いることができる。あるいは、これらの分子は、patched-2のDhh(配列番号:13)への結合を変調させることもできる。このような方法によって、結合性相互作用の阻害剤を同定することができる。また、このような結合性相互作用に含まれるタンパク質も、ペプチド又は小分子阻害剤又は結合性相互作用のアゴニストのスクリーニングに用いることができる。また、patched-2の基質は、関連する複合体形成タンパク質の単離に使用することもできる。スクリーニングアッセイは、天然patched-2の生物学的活性に似たリード化合物の発見のために、又はpatched-2に対して基質として作用するものの発見のために設計され得る。このようなスクリーニングアッセイは、化学的ライブラリーの高スループットスクリーニングにも用いられ、それらを小分子候補薬剤の同定に特に適したものとする。そのような小分子阻害剤は、patched-2の酵素活性を阻止し、それによりヘッジホッグシグナル伝達を阻害できる。考慮される小分子阻害剤は、合成有機又は無機化合物を含む。アッセイは、この分野で良く知られ特徴付けられているタンパク質−タンパク質結合アッセイ、生化学的スクリーニングアッセイ、免疫検定及び細胞ベースのアッセイを含む種々の型式で実施される。
【0035】
patched-2又はその修飾形態をコードする核酸は、トランスジェニック動物又は「ノックアウト」動物を作成するのに用いることもでき、言い換えると、治療的に有用な薬剤の開発及びスクリーニングに有用である。トランスジェニック動物(マウス又はラット等)は、出生前、例えば胚段階で、その動物又はその動物の祖先に導入された導入遺伝子を含む細胞を有する動物である。導入遺伝子とは、トランスジェニック動物が発生する細胞のゲノムに組み込まれるDNAである。一実施形態では、patched-2をコードするcDNAを、確立された技術によりpatched-2をコードするゲノムDNAをクローニングするために使用することができ、ゲノム配列を、patched-2をコードするDNAを発現する細胞を有するトランスジェニック動物を産生するために使用することができる。特にマウス又はラット等のトランスジェニック動物を産生する方法は当該分野において常套的になっており、例えば米国特許第4,736,866号や第4,870,009号に記述されている。典型的には、特定の細胞を組織特異的エンハンサーでのpatched-2導入遺伝子の導入の標的にする。胚段階で動物の生殖系列に導入されたpatched-2をコードする導入遺伝子のコピーを含むトランスジェニック動物は、patched-2をコードするDNAの増大した発現の影響を調べるために使用できる。このような動物は、例えばその過剰発現を伴う病理的状態に対して保護をもたらすと思われる試薬のテスター動物として使用できる。
脊椎動物patched-2の非ヒト相同体は、動物の胚性細胞に導入されたpatched-2をコードする変更ゲノムDNAと、patched-2をコードする内在性遺伝子との間の相同的組換えによって、patched-2をコードする欠陥又は変更遺伝子を有するpatched-2「ノックアウト」動物を作成するために使用できる。例えば、patched-2をコードするDNAは、確立された技術に従い、patched-2をコードするゲノムDNAのクローニングに使用できる。patched-2をコードするゲノムDNAの一部を欠失したり、組み込みを監視するために使用する選択可能なマーカーをコードする遺伝子等の他の遺伝子で置換することができる。典型的には、ベクターは無変化のフランキングDNA(5'と3'末端の両方)を数キロベース含む[例えば、相同的組換えベクターについてはThomas and Capecchi, Cell, 51:503 (1987)を参照のこと]。ベクターは胚性幹細胞に(例えばエレクトロポレーション等によって)導入し、導入されたDNAが内在性DNAと相同的に組換えられた細胞を選択する[例えば、Li等, Cell, 69:915 (1992)参照]。選択された細胞は次に動物(例えば、マウス又はラット)の胚盤胞内に注入され、集合キメラを形成する[例えば、Bradley, Teratocarcinomas and Embryonic Stem Cells: A Practical Approach, E. J. Robertson, ed. (IRL, Oxford, 1987), pp. 113-152参照]。その後、キメラ性胚を適切な偽妊娠の雌性乳母に移植し、「ノックアウト」動物を作ると言われる。胚細胞に相同的に組換えられたDNAを有する子孫は標準的な技術により同定され、それらを利用して動物の全細胞が相同的に組換えられたDNAを含む動物を繁殖させることができる。ノックアウト動物は、patched-2ポリペプチドが不在であることによるある種の病理的状態及び病理的状態の進行に対して防御する能力によって特徴付けられる。
【0036】
また、Dhhシグナル伝達の抑制又は阻害(拮抗作用)も治療方法の対象である。patched-2がヘッジホッグファミリーの全てのメンバー(即ち。Shh、Dhh、Ihh)に結合できるので、ヘッジホッグ分子のPtch-2(配列番号:2)への結合を防止するアンタゴニスト分子は治療的有用性を持つ。例えば、Shhシグナル伝達は基底細胞癌において活性化されることが知られ;Dhh(配列番号:13)は精母細胞の調節に含まれることが知られている。Hhシグナル伝達の阻害剤又はアンタゴニストは、各々基底細胞の治療又は雄の避妊において有効な治療薬である。
Dhhシグナル伝達の刺激(作動作用)も治療方法の対象である。Ptch-2(配列番号:2)はHhファミリーの他のメンバー、Ihh及びShhにも結合するので、Dhhシグナル伝達の活性化は、不活性又は不十分なHhシグナル伝達に特徴付けられる疾患状態又は疾病において有用である。例えば、神経系の変性疾患、例えば、パーキンソン病、記憶障害、アルツハイマー病、ルー・ゲーリグ病、ハンティングトン病、精神分裂病、発作及び薬物嗜癖である。さらに、patched-2アゴニストは、腸疾患、骨疾患、皮膚疾患、精巣の疾患(不妊症を含む)、潰瘍、肺疾患、膵臓の疾患、糖尿病、骨粗鬆症の治療に使用できる。
【0037】
F.抗-patched-2抗体
本発明は、さらに抗-脊髄動物patched-2抗体を提供するものである。抗体の例としては、ポリクローナル、モノクローナル、ヒト化、二重特異性及びヘテロ抱合体抗体が含まれる。
1.ポリクローナル抗体
抗-patched-2抗体はポリクローナル抗体を含んでよい。ポリクローナル抗体の調製方法は当業者に知られている。哺乳動物においてポリクローナル抗体は、例えば免疫化剤、及び所望するのであればアジュバントを、一又は複数回注射することで発生させることができる。典型的には、免疫化剤及び/又はアジュバントを複数回皮下又は腹腔内注射により、哺乳動物に注射する。免疫化剤は、patched-2ポリペプチド又はその融合タンパク質を含みうる。免疫化剤を免疫化された哺乳動物において免疫原性が知られているタンパク質に抱合させるのが有用である。このような免疫原タンパク質の例は、これらに限られないが、キーホールリンペットヘモシアニン、血清アルブミン、ウシサイログロブリン及び大豆トリプシンインヒビターが含まれる。使用され得るアジュバントの例には、フロイント完全アジュバント及びMPL-TDMアジュバント(モノホスホリル脂質A、合成トレハロースジコリノミコラート)が含まれる。免疫化プロトコールは、過度の実験することなく当業者により選択されるであろう。
【0038】
2.モノクローナル抗体
あるいは、抗-patched-2抗体はモノクローナル抗体であってもよい。モノクローナル抗体は、Kohler及びMilstein, Nature, 256:495 (1975)に記載されているようなハイブリドーマ法を使用することで調製することができる。ハイブリドーマ法では、マウス、ハムスター又は他の適切な宿主動物を典型的には免疫化剤により免疫化することで、免疫化剤に特異的に結合する抗体を生成するかあるいは生成可能なリンパ球を誘発する。あるいは、リンパ球をインビトロで免疫化することもできる。
免疫化剤は、典型的にはpatched-2ポリペプチド又はその融合タンパク質を含む。一般にヒト由来の細胞が望まれる場合には末梢血リンパ球(「PBL」)が使用され、あるいは非ヒト哺乳動物源が望まれている場合は、脾臓細胞又はリンパ節細胞が使用される。次いで、ポリエチレングリコール等の適当な融合剤を用いてリンパ球を不死化株化細胞と融合させ、ハイブリドーマ細胞を形成する[Goding, Monoclonal Antibodies: Principles and Practice, Academic Press, (1986) pp. 59-103]。不死化株化細胞は、通常は、形質転換した哺乳動物細胞、特に齧歯動物、ウシ、及びヒト由来の骨髄腫細胞である。通常、ラット又はマウスの骨髄腫株化細胞が使用される。ハイブリドーマ細胞は、好ましくは、未融合の不死化細胞の生存又は成長を阻害する一又は複数の物質を含有する適切な培地で培養される。例えば、親細胞が、酵素のヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRT又はHPRT)を欠いていると、ハイブリドーマの培地は、典型的には、ヒポキサチン、アミノプテリン及びチミジンを含み(「HAT培地」)、このれら物質がHGPRT欠乏性細胞の増殖を阻止する。
好ましい不死化株化細胞は、効率的に融合し、選択された抗体生成細胞による安定した高レベルの抗体発現を支援し、HAT培地のような培地に対して感受性のものである。より好ましい不死化株化細胞はマウス骨髄腫株であり、これは例えばカリフォルニア州サンディエゴのSalk Institute Cell Distribution Centerやメリーランド州ロックビルのアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクションより入手可能である。ヒトモノクローナル抗体を生成するためのヒト骨髄腫及びマウス-ヒト異種骨髄腫株化細胞も開示されている[Kozbor, J. Immunol., 133:3001 (1984)、Brodeur等, Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications, Marcel Dekker, Inc., New York, (1987) pp. 51-63]。
【0039】
次いでハイブリドーマ細胞が培養される培養培地を、patched-2に対するモノクローナル抗体の存在について検定する。好ましくは、ハイブリドーマ細胞によって生成されたモノクローナル抗体の結合特異性は免疫沈降又はラジオイムノアッセイ(RIA)や酵素結合免疫測定法(ELISA)等のインビトロ結合検定法によって測定する。このような技術及びアッセイは、当該分野において公知である。モノクローナル抗体の結合親和性は、例えばMunson及びPollard, Anal. Biochem., 107:220 (1980)によるスキャッチャード分析法によって測定することができる。
所望のハイブリドーマ細胞が同定された後、クローンを制限希釈工程によりサブクローニングし、標準的な方法で成長させることができる[Goding, 上掲]。この目的のための適当な培地には、例えば、ダルベッコの改変イーグル培地及びRPMI-1640倍地が含まれる。あるいは、ハイブリドーマ細胞は哺乳動物においてインビボで腹水として成長させることもできる。
サブクローンによって分泌されたモノクローナル抗体は、例えばプロテインA−セファロース、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析又はアフィニティークロマトグラフィー等の従来の免疫グロブリン精製方法によって培養培地又は腹水液から単離又は精製される。
【0040】
また、モノクローナル抗体は、組換えDNA法、例えば米国特許第4,816,567号に記載された方法により作成することができる。本発明のモノクローナル抗体をコードするDNAは、常套的な方法を用いて(例えば、マウス抗体の重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合可能なオリゴヌクレオチドプローブを使用して)、容易に単離し配列決定することができる。本発明のハイブリドーマ細胞はそのようなDNAの好ましい供給源となる。ひとたび単離されたら、DNAは発現ベクター内に配することができ、これが宿主細胞、例えばサルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、あるいは免疫グロブリンタンパク質を生成などしない骨髄腫細胞内に形質移入され、組換え宿主細胞内でのモノクローナル抗体の合成を得ることができる。また、DNAは、例えばヒト重鎖及び軽鎖定常ドメインのコード化配列を相同マウス配列に換えて置換することにより[US. Patent No.4,816,567;Morrison等, 上掲]、又は免疫グロブリンコード配列に非免疫グロブリンポリペプチドのコード化配列の一部又は全部を共有結合することにより修飾することができる。このような非免疫グロブリンポリペプチドは、本発明の抗体の定常ドメインの代わりに置換するか、本発明の抗体の一つの抗原結合部位の可変ドメインの代わりに置換し、キメラ性二価抗体を産生することができる。
抗体は一価抗体であってもよい。一価抗体の調製方法は当該分野においてよく知られてる。例えば、一つの方法は免疫グロブリン軽鎖と修飾重鎖の組換え発現を含む。重鎖は一般的に、重鎖の架橋を防止するようにFc領域の任意の点で切断される。あるいは、関連するシステイン残基を他のアミノ酸残基で置換するか欠失させて架橋を防止する。
一価抗体の調製にはインビトロ法がまた適している。抗体の消化による、その断片、特にFab断片の生成は、当該分野において知られている慣用的技術を使用して達成できる。
【0041】
3.ヒト化抗体
本発明の抗-patched-2抗体は、さらにヒト化抗体又はヒト抗体を含む。非ヒト(例えばマウス)抗体のヒト化形とは、キメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖あるいはその断片(例えばFv、Fab、Fab'、F(ab')2あるいは抗体の他の抗原結合サブ配列)であって、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小配列を含むものである。ヒト化抗体はレシピエントの相補性決定領域(CDR)からの残基が、マウス、ラット又はウサギのような所望の特異性、親和性及び能力を有する非ヒト種(ドナー抗体)のCDRからの残基によって置換されたヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)を含む。幾つかの例では、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク残基は、対応する非ヒト残基によって置換されている。また、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にも、移入されたCDRもしくはフレームワーク配列にも見出されない残基を含んでいてもよい。一般に、ヒト化抗体は、全てあるいはほとんど全てのCDR領域が非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、全てあるいはほとんど全てのFR領域がヒト免疫グロブリンコンセンサス配列のものである、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含む。ヒト化抗体は、最適には免疫グロブリン定常領域(Fc)、典型的にはヒトの免疫グロブリンの定常領域の少なくとも一部を含んでなる[Jones等, Nature, 321:522-525 (1986); Riechmann等, Nature, 332:323-329 (1988); 及びPresta, Curr. Op Struct. Biol., 2:593-596 (1992)]。
【0042】
非ヒト抗体をヒト化する方法はこの分野でよく知られている。一般的に、ヒト化抗体には非ヒト由来の一又は複数のアミノ酸残基が導入される。これら非ヒトアミノ酸残基は、しばしば、典型的には「移入」可変ドメインから得られる「移入」残基と称される。ヒト化は基本的に齧歯動物のCDR又はCDR配列でヒト抗体の該当する配列を置換することによりウィンター(winter)及び共同研究者[Jones等, Nature, 321:522-525 (1986);Riechmann等, Nature, 332:323-327 (1988);Verhoeyen等, Science, 239:1534-1536 (1988)]の方法に従って実施される。従って、このような「ヒト化」抗体は、無傷のヒト可変ドメインより実質的に少ない分が非ヒト種由来の対応する配列で置換されたキメラ抗体(米国特許第4,816,567号)である。実際には、ヒト化抗体は典型的には幾つかのCDR残基及び場合によっては幾つかのFR残基が齧歯類抗体の類似する部位からの残基によって置換されたヒト抗体である。
また、ヒト抗体は、ファージ表示ライブラリ[Hoogenboom及びWinter, J. Mol. Biol., 227:381 (1992);Marks等, J. Mol. Biol., 222:581 (1991)]を含むこの分野で知られた種々の方法を用いて作成することもできる。また、Cole等及びBoerner等の技術も、ヒトモノクローナル抗体の調製に利用することができる[Cole等, Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R. Liss. p.77(1985)及びBoerner等, J. Immunol., 147(1):86-95(1991) ]。
【0043】
4.二重特異性抗体
二重特異性抗体は、少なくとも2つの異なる抗原に対して結合特異性を有するモノクローナル、好ましくはヒトもしくはヒト化抗体である。本発明の場合において、結合特異性の一方は脊椎動物patched-2に対してであり、他方は任意の他の抗原、好ましくは細胞表面タンパク質又はレセプター又はレセプターサブユニットに対してである。
二重特異性抗体を作成する方法は当該技術分野において周知である。伝統的には、二重特異性抗体の組換え生産は、二つの重鎖が異なる特異性を持つ二つの免疫グロブリン重鎖/軽鎖対の同時発現に基づく[Milstein及びCuello, Nature, 305:537-539 (1983)]。免疫グロブリンの重鎖と軽鎖を無作為に取り揃えるため、これらハイブリドーマ(クアドローマ)は10種の異なる抗体分子の潜在的混合物を生成し、その内一種のみが正しい二重特異性構造を有する。正しい分子の精製は、アフィニティークロマトグラフィー工程によって通常達成される。同様の手順が1993年5月13日公開のWO 93/08829、及びTraunecker等, EMBO J.,10:3655-3656 (1991)に開示されている。
所望の結合特異性(抗体−抗原結合部位)を有する抗体可変ドメインを免疫グロブリン定常ドメイン配列に融合できる。融合は、好ましくは少なくともヒンジ部、CH2及びCH3領域の一部を含む免疫グロブリン重鎖定常ドメインとのものである。少なくとも一つの融合には軽鎖結合に必要な部位を含む第一の重鎖定常領域(CH1)が存在することが望ましい。免疫グロブリン重鎖融合をコードするDNA、及び望むのであれば免疫グロブリン軽鎖を、別々の発現ベクターに挿入し、適当な宿主生物に同時形質移入する。二重特異性抗体を作成するための更なる詳細については、例えばSuresh等, Methods in Enzymology, 121:210(1986)を参照されたい。
【0044】
5.ヘテロ抱合体抗体
ヘテロ抱合抗体もまた本発明の範囲に入る。ヘテロ抱合抗体は、2つの共有結合した抗体からなる。このような抗体は、例えば、免疫系細胞を不要な細胞に対してターゲティングさせるため[米国特許第4,676,980号]及びHIV感染の治療のために[WO 91/00360; WO 92/200373; EP 03089]提案されている。この抗体は、架橋剤に関連したものを含む合成タンパク化学における既知の方法を使用して、インビトロで調製することができると考えられる。例えば、ジスルフィド交換反応を使用するか又はチオエーテル結合を形成することにより、免疫毒素を作成することができる。この目的に対して好適な試薬の例には、イミノチオレート及びメチル-4-メルカプトブチリミデート、及び例えば米国特許第4,6767,980号に開示されているものが含まれる。
【0045】
G.抗-patched-2抗体の用途
本発明の抗-patched-2抗体は様々な有用性を有している。例えば、抗-patched-2抗体は、patched-2の診断アッセイ、例えばその特定細胞、組織、又は血清での発現の検出に用いられる。競合的結合アッセイ、直接又は間接サンドウィッチアッセイ及び不均一又は均一相で行われる免疫沈降アッセイ[Zola, Monoclonal Antibodies: A Manual of Techniques, CRC Press, Inc. (1987) pp. 147-158]等のこの分野で知られた種々の診断アッセイ技術が使用される。診断アッセイで用いられる抗体は、検出可能な部位で標識される。検出可能な部位は、直接又は間接に検出可能なシグナルを発生しなければならない。例えば、検出可能な部位は、3H、14C、32P、35S又は125I等の放射性同位体、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン又はルシフェリン等の蛍光又は化学発光化合物、あるいはアルカリホスファターゼ、ベータ-ガラクトシダーゼ又はセイヨウワサビペルオキシダーゼ等の酵素であってよい。Hunter等 Nature, 144:945 (1962);David等, Biochemistry, 13: 1014 (1974);Pain等, J. Immunol. Meth., 40:219 (1981) ;及びNygren, J. Histochem. and Cytochem., 30:407 (1982)に記載された方法を含む、抗体を検出可能な部位に抱合するためにこの分野で知られた任意の方法が用いられる。
また、抗-patched-2抗体は、組換え細胞培養又は天然供給源からのpatched-2のアフィニティー精製にも有用である。この方法においては、patched-2に対する抗体を、当該分野でよく知られている方法を使用して、セファデックス樹脂や濾紙のような適当な支持体に固定化する。次に、固定化された抗体を、精製するpatched-2を含む試料と接触させた後、固定された抗体に結合したpatched-2以外の試料中の物質を実質的に全て除去する適当な溶媒で支持体を洗浄する。最後に、patched-2を抗体から離脱させる他の適当な溶媒で支持体を洗浄する。
【0046】
基底細胞癌(BCC)は最もありふれたヒトの癌である。Hhシグナル伝達経路は、全てのBCCで活性化されることが見出された。patched機能の喪失は、調節されないSmo活性を導き、全てのBCCの約半分の原因となると考えられている。patchedはHh経路自体の標的であり、patchedmRNAレベルの増加が、BCC[Gailani等, Nature Genet. 14: 78-81 (1996)]並びにBCCの動物モデルにおいて検出されている。Oro等, Science 276: 817-821 (1997); Xie等, Nature 391: 90-92 (1998)。BCCで生じるようなShシグナル伝達の異常な活性化を試験してpatched-2発現が増加したか否かを確認した。図9に示すように、Smo-M2(配列番号:16)トランスジェニックマウスにおけるPtch(配列番号:4)及びPtch-2(配列番号:2)についてのインサイツハイブリッド形成(Xie等, 上掲)は、Ptchより低いものの、腫瘍細胞においても高かった。このことは、Ptch-2(配列番号:2)に対する治療的抗体がBCCの治療に有用であることを示している。
抗-patched-2抗体は、前のセクション「E.patched-2の用途」で明示したものと同様の有用性を有する。抗-patched-2抗体がpatched-2レセプターに結合し、Hhシグナル伝達を阻害するか(アンタゴニスト)、patched-2のSmo(配列番号:17)との複合体形成を阻害して、それによりSmo(配列番号:17)のHhシグナル伝達に対する正常な蘇我以降かを阻害するか(アゴニスト)に応じて、抗体はpatched-2について既に明示したものに対応する有用性を具備する。
【0047】
H.patched-2アンタゴニスト
本発明の融合アンタゴニスト及びアゴニスト化合物を生成させるのに幾つかの方法を好適に用いることができる。アンタゴニスト分子を細胞内部に標的化でき、それが野生型patched-2を正常な作用から阻害又は防止する任意の方法が好ましい。例えば、変異体patched-2レセプターを含む競合的阻害剤は、野生型patched-2がDhh及びHhシグナル伝達に必要な他のタンパク質と正しく結合することを防止する。膜貫通輸送に適した電荷、サイズ及び疎水性等の、そのようなアンタゴニスト又はアゴニスト分子のさらなる特性は、当業者によって容易に決定可能である。
patched-2の模倣物又は他の哺乳動物相同体が同定され評価される場合、細胞を試験化合物に暴露し、ヒトpatched-2のみに暴露したポジティブ対照、化合物にも天然リガンドにも暴露していないネガティブ対照と比較する。patched-2シグナル変調のアンタゴニスト又はアゴニストを同定し評価する場合は、細胞を天然リガンドの存在下で本発明の化合物に暴露し、試験化合物に暴露していない対照と比較する。
本発明のアンタゴニスト/アゴニスト化合物のHhシグナル伝達の阻害/促進活性を評価する一次スクリーニングとして検出アッセイが用いられる。このアッセイは、濃度範囲、例えば100mMから1pMの範囲で試験し、リン酸化又はシグナル伝達が対照に比較して50%減少又は増加する量の濃度(IC50)を計算することにより、化合物の相対的能力を評価するのに使用してもよい。
アッセイは、patched-2基質のHhシグナル伝達に影響する化合物の同定のために実施してもよい。特に、アッセイはpatched-2のリン酸化活性を増大させる化合物の同定のために実施でき、あるいはアッセイはpatched-2基質のHhシグナル伝達を低下させる化合物を同定するために実施できる。これらのアッセイは、全細胞自体又は細胞抽出物のいずれにも実施することができる。アッセイは、タンパク質−タンパク質結合アッセイ、生化学的スクリーニングアッセイ、免疫アッセイ、細胞ベースのアッセイ等を含む種々の様式で実施できる。このようなアッセイ様式は、この分野で公知である。
本発明のスクリーニングアッセイは、化学的ライブラリの高スループットスクリーニングに適用でき、特に小分子薬剤候補の同定に適している。
【0048】
(1)アンタゴニスト及びアゴニスト分子
patched-2シグナル伝達のアンタゴニスト及び/又はアゴニストをスクリーニングするために、アッセイ混合物を、候補となる製薬剤の存在を別にすれば、patched-2が基準活性でヘッジホッグシグナル伝達を誘発する条件下でインキュベートした。混合物の成分は、必要なヘッジホッグ活性を与える任意の順序で添加できる。インキュベーションは、最適な結合を促進する任意の温度、典型的には約4℃から40℃、より通常には約15℃から40℃で実施する。インキュベーション時間も同様に最適結合のために選択されるが、迅速で高スループットのスクリーニングを促進するために最小化され、典型的には約0.1から10時間、好ましくは5時間未満、より好ましくは2時間未満である。インキュベーションの後、候補製薬剤のpatched-2シグナル伝達に対する効果を任意の都合の良い方法で決定する。細胞無しの結合型アッセイでは、結合及び非結合成分を分離するための分離工程がしばしば用いられる。分離は、例えば、沈殿(例えばTCA沈殿、免疫沈降など)、固定化(例えば、固体基体上)、それに続く洗浄によってなされる。結合したタンパク質は、それに結合した検出可能な標識により、例えば放射活性放出、光学又は電子密度を測定することにより、あるいは、例えば抗体抱合を用いた間接的な検出により都合良く検出される。
例えば、適切なpatched-2アンタゴニスト及び/又はアゴニストのスクリーニング方法は、Dhh及び他のヘッジホッグリガンドの適用を含みうる。このようなスクリーニングアッセイは、patched-2発現組織における候補アンタゴニスト及び/又はアゴニストの存在下又は不存在下でのインサイツハイブリッド形成、並びにpatched-2変調細胞成長の確認又は不存在を比較することができる。典型的には、これらの方法は、固定化patched-2をそれに結合すると予測される分子に暴露すること、レポーター作成物のリガンド結合下流の活性化レベルを決定すること、及び/又は分子がpatched-2を活性化(又は活性化の阻止)をするか否かを評価することを含む。このようなpatched-2結合リガンドを同定するために、patched-2を細胞表面で発現させ、合成候補化合物又は(例えば、血清又は細胞などの内因性供給源からの)天然発生化合物ライブラリのスクリーニングに用いることができる。
【0049】
patched-2及びその結合タンパク質のタンパク質−タンパク質相互作用に影響する好適な分子は、後者の断片又は小分子、例えばリガンド−レセプター相互作用を阻害するペプチド模倣物を含む。そのような小分子は、通常10K分子量未満であり、細胞に透過しやすいので治療薬として好適であり、種々の細胞機構による分解を受けにくく、タンパク質のように免疫反応を誘発しやすくない。小分子は、これらに限られないが、合成有機又は無機化合物を含む。多くの製薬会社が、そのような分子の広範なライブラリを有しており、それは本発明のアッセイを用いて都合良くスクリーニングできる。非限定的な例は、タンパク質、ペプチド、糖タンパク質、グリコペプチド、糖脂質、多糖類、オリゴ糖、核酸、生物有機分子、ペプチド模倣物、薬理学的試薬及びそれらの代謝物、転写及び翻訳制御配列等を含む。
patched-2に結合する分子の同定に好ましい技術は、アッセイ用プレートのウェルなどの固相に結合したキメラ基質(例えば、エピトープタグpatched-2又はpatched-2イムノアドヘシン)を利用する。場合によっては標識された(例えば放射性標識された)候補分子の固定化レセプターへの結合が測定できる。あるいは、種々のHh経路、特にDhh(配列番号:13)に対する競合が測定できる。アンタゴニスト及び/又はアゴニストのスクリーニングにおいて、patched-2はpatched-2基質、次いで推定アンタゴニスト及び/又はアゴニストに暴露され、あるいはpatched-2結合タンパク質及びアンタゴニスト及び/又はアゴニストが同時に添加され、アンタゴニスト及び/又はアゴニストのpatched-2活性化を阻止する能力が評価される。
【0050】
(2)検出アッセイ
patched-2ポリペプチドは、patched-2レセプター/リガンドヘッジホッグシグナル伝達を変調させる治療的活性薬のためのリード化合物を同定するアッセイにおいて有用である。特に、リード化合物は、patched-2シグナル伝達複合体の形成を防止する、あるいはpatched-2変調ヘッジホッグシグナル伝達を防止又は減弱する(例えば、patched-2に結合する)。
この分野で知られた種々の方法が、本発明のpatched-2タンパク質の活性阻害の同定、評価又は検定に使用できる。patched-2はDhh(配列番号:13)のレセプターであるが、Shh(配列番号:14)及びIhh(配列番号:29)にも結合すると考えられるので、リガンド/レセプターモジュレータの同定で用いる公知の技術を本発明に用いてもよい。一般的に、そのようなアッセイは、培地中の標的細胞を化合物に暴露し、(a)細胞溶解物を生化学的に分析して結合のレベル及び/又は同一性を評価する;又は(b)試験基質に暴露していない対照細胞に比較した処理細胞におけるフェノタイプ又は機能変化を評点化することを含む。このようなスクリーニングアッセイは、米国特許第5,602,171号、米国特許第5,710,173号、WO 96/35124及びWO 96/40276に記載されている。
【0051】
(a)生化学的検出技術
生化学的分析は種々の技術によって評価できる。本発明で使用できる1つの典型的なアッセイ混合物は、patched-2及び通常はpatched-2に付随するタンパク質(例えば、Dhh(配列番号:13))を、通常は単離された、部分的に純粋又は純粋な形態で含有する。これらの成分の一方又は両方は、例えばアッセイ条件下等でタンパク質−タンパク質結合を提供又は促進する他のペプチド又はポリペプチドに融合してよい。さらに、成分の一方は、通常検出可能な標識を含むかそれに結合している。標識は、放射活性、蛍光、光学又は電子密度等の測定による直接検出、あるいはエピトープタグ、酵素等の間接的検出を提供する。アッセイ混合物は候補製薬剤をさらに含み、場合によっては、結合を促進し、安定性を向上させ、非特異的又はバックグラウンドの相互作用を減少させ、又は他にアッセイの効率又は感度を向上させる種々の他の成分、例えば塩、バッファー、担体タンパク質、例えばアルブミン、洗浄剤、プロテアーゼ阻害剤、ヌクレアーゼ阻害剤、抗微生物剤等を含む。
以下の検出方法は、シグナル伝達基質分子及びpatched-2を含む細胞溶解物が本発明の化合物と混合される細胞無しの系で使用できる。化合物の活性を評価するために、反応混合物をSDS-PAGEによって分析してもよく、あるいは、それを固体支持体に結合した基質特異的固着抗体に添加し、分離又は捕捉した基質に上記の検出方法を実施してpatched-2結合リガンドの存在又は不存在を評価してもよい。結果は、化合物を添加しない反応混合物で得られた結果と比較する。細胞無しの系は、天然リガンド又はその同定の知識を必要としない。例えば、Posner等(米国特許第5,155,031号)は、パーバナデート(pervanadate)のPTP活性を阻害する能力を示すのに、基質としてのインシュリンレセプター及び標的細胞としてのラット脂肪細胞の使用を記載している。他の例Burke等, Biochem. Biophys. Res. Comm. 204: 129-134 (1994)は、ホスホチロシル模倣物の阻害活性の評価における自己リン酸化インシュリンレセプター及び組換えPTP1Bの使用を記載している。
【0052】
(i)全細胞検出
共通の技術は、細胞をpatched-2及び放射性標識リガンドとともにインキュベートし、細胞を溶解し、溶解物からSDS-ポリアクリルアミドゲル(SDS-PAGE)技術を用いて、一又は二次元のいすれかで細胞性タンパク質成分を分離し、X-線フィルムに暴露して標識タンパク質の存在を検出することを含む。検出は、放射性標識を用いることなくなすこともできる。そのような技術において、タンパク質成分(例えば、分離されたSDS-PAGE)はニトロセルロース膜に移され、そこでpatched-2−リガンド複合体の存在が抗-リガンド抗体を用いて検出される。
あるいは、抗-patched-2リガンド抗体は、セイヨウワサビペルオキシダーゼ等の酵素に抱合させ、次いで酵素用の比色基質を添加することにより検出することもできる。さらなる代替法は、抗-patched-2リガンドを認識する二次抗体と反応させることによる抗-patched-2リガンドの検出を含み、この二次抗体は、既に述べたような放射活性部分又は酵素で標識されている。これらの例及び類似の技術は、Hansen等, Electrophoresis 14: 112-126 (1993); Campbell等, J. Biol. Chem. 268: 7427-7434 (1993); Donato等, Cell Growth Diff. 3: 258-268 (1992); Katagiri等, J. Immunol. 150: 585-593 (1993)に記載されている。さらに、抗-patched-2リガンドは、それを放射活性基質で標識し、次いで標識ニトロセルロースをスキャンニングして放射活性又は検出するか、X-線フィルムに暴露することにより検出できる。
上記のものに好適なさらなる検出技術を開発してもよい。特に高スループットスクリーニングに関連する使用のために、それらの方法は、良好な感度及び特異性、拡張された線形範囲、低いバックグラウンドシグナル、最小のゆらぎ、他の試薬との相容性、及び自動化取り扱い系との適合性が予測される。
本発明の処理のインビボ有効性は、齧歯類モデルにおいて化学的に誘発した腫瘍に対して実験することができる。インビトロ細胞培地で成長させた腫瘍細胞系を実験用齧歯類、例えばマウスに、例えば皮下経路による注射によって導入される。実験動物における腫瘍の化学的誘発の技術は当該分野で良く知られている。
【0053】
(ii)キナーゼアッセイ
patched-2はHhシグナル伝達のネガティブレギュレータであるから、Hhによって活性化されたときにSmoに対する正常な阻害効果を放棄し、patched-2のSmoへの結合の阻害は、Hhシグナル伝達に伴う種々のキナーゼ基質の活性化によって測定できる。patched-2アンタゴニスト/アゴニストについての本発明のスクリーニング方法がエキソビボアッセイとして行われる場合、標的キナーゼ(例えばfused)は実質的に精製されたポリペプチドでありうる。キナーゼ基質(例えば、MBP、Gli)は実質的に精製された基質であり、アッセイにおいて、キナーゼに触媒される実質的に精製されたリン酸塩供給源との反応でリン酸化される。リン酸化の程度は、反応でリン酸化された基質の量を測定することにより決定される。種々の可能な基質を使用してよく、キナーゼ自身も含まれるが、その場合はアッセイで測定されるリン酸化反応は自己リン酸化である。外因性基質を用いることもでき、ミエリン塩基性タンパク質(MBP)等の標準的なタンパク質基質;酵母菌タンパク質基質;合成タンパク質基質、及びポリマー基質が含まれる。これらの中で、MBP及び他の標準的タンパク質基質が好ましいとされる。しかしながら他の基質も同定され、それらは、キナーゼに対する親和性、反応速度の最小摂動、単一又は相同反応部位の保持、取扱及び反応後回収の容易さ、強いシグナル生成能力、及び試験化合物に対する耐性及び不活性によって優れている。
【0054】
本発明のエキソビボアッセイでリン酸化された基質量の測定は、イムノアッセイ、ラジオアッセイ又は他の周知の方法で行うことができる。イムノアッセイ測定において、反応中に形成されるリン酸化部位に特異的な抗体(ヤギ又はマウス抗-ホスホセリン/スレオニン抗体)を使用してよい。周知のELISA技術を用いて、ホスホセリン/スレオニン抗体複合体は、測定可能なシグナルを発生することのできる標識(例えば、蛍光又は放射活性標識)に結合した更なる抗体により、それ自身検出される。さらに、ミクロタイタープレートにおけるELISA型アッセイを精製された基質の試験に用いてもよい。Peraldi等, J. Biochem. 285: 71-78 (1992); Schaag等, Anal. Biochem. 211: 233-239 (1993); Cleavland, Anal. Biochem. 190: 259-253 (1990); Farley, Anal. Biochem. 203: 151-157 (1992)及びLozaro, Anal. Biochem. 192: 257-261 (1991)。
例えば、検出計画では、キナーゼ反応中の基質消費を測定することができる。最初に、リン酸塩供給源を32P又は33P等の同位体で放射性標識し、反応中に基質に取り込まれた放射性標識の量を決定することによりリン酸化された基質の量を測定してもよい。検出は、(a)フィルター又はミクロタイターウェル表面に吸着させた後、ベータカウンターを用いる市販の閃光体含有プレート及びビーズ、又は(b)シンチレーション近接アッセイビーズ又は閃光体プレートに結合させた後の光度測定手段により達成される。Weernink及びKijken, J. Biochem. Biophs. Methods 31: 49, 1996; Brauwalder等, Anal. Biochem. 234: 23 (1996); Kentrup等, J. Biol. Chem. 271: 3488 (1996)及びRusken等, Meth. Enzymol. 200: 98 (1991)。
【0055】
好ましくは、基質を固体支持体表面に非特異的又は好ましくは特異的に結合させる。このような結合は、シグナル検出に先立ってリン酸化基質を非リン酸化標識リン酸塩供給源(アデノシン三リン酸など)から分離するのを可能にする。一実施態様では、基質は反応の前に、Nunc(商品名)高タンパク質結合プレート(Hanke等, J. Biol. Chem. 271: 695 (1996))又はWalac ScintiStrip(商品名)プレート(Brauwalder等, Anal. Biochem. 234: 23 (1996))の使用を介して物理的に固定化される。また、基質は、例えばP81ホスホセルロース(塩基性ペプチド用)、PEI/酸性モリブデン塩樹脂又はDEAE上への捕捉、又はWhatman(商品名)3MMペーパーへのTCA析出により反応後に固定化してもよい、Tiganis等, Arch. Biochem. biophys. 325: 289 (1996); Morawetz等, Mol. Gen. Genet. 250: 17 (1996); Budde等, Int. J. Pharmacognosy 33: 27 (1995)及びCasnellie, meth. Enz. 200: 115 (1991)。さらに他の可能性は、予め支持体に結合させたグルタチオン及びストレプトアビジン(各々GST及びビオチンの場合)等の結合パートナーで抱合することにより、あるいは同様に支持体に結合させたタグに特異的な抗体を介して支持体表面に基質を結合させる事である。
上記のものに適したさらなる検出方法を開発してもよい。特に、高スループットスクリーニングに関連した用途では、そのような方法は、良好な選択性及び特異性、延長された直線範囲、低いバックグラウンドシグナル、最小の摂動、他の試薬との相容性、及び自動取扱システムとの相容性を示すことが予測される。
本発明の治療のインビボ有効性は、種々の齧歯類モデルにおいて化学的に誘発された腫瘍に対して実験できる。腫瘍細胞系はインビトロ細胞培地で成長させ、実験用齧歯類、例えばマウスに、例えば皮下経路での注射によって導入される。実験動物における腫瘍の化学的誘発はの技術は、この分野で良く知られている。
【0056】
(b)生物学的検出技術
本発明のアンタゴニスト/アゴニスト化合物の、それ自身がヘッジホッグシグナル伝達を変調するpatched-2の活性を変調させる能力は、リガンド結合に伴う形態又は機能変化についての評点化によって測定される。この分野で知られている任意の定性的及び定量的技術は、patched-2の制御下で起こる細胞プロセスの観察及び測定のために適用できる。また、本発明の化合物の活性は、ヘッジホッグシグナル伝達の機能不全によって生ずる又はそれに関連する疾患の実験的モデルを用いて動物で評価することもできる。例えば、マウスにおける無効なDhhヘッジホッグシグナル伝達は、生存できるが繁殖できないマウスを導く。さらに、正しいShhシグナル伝達は、脊索及び底板、神経管、末端肢構造、脊柱及び肋骨におけるマウス胚成長に重要である。また、不正なShhシグナル伝達は単眼症に関連している。これらのフェノタイプ特性は、patched-2アンタゴニスト及び/又はアゴニストについてのスクリーニングアッセイにおいて評価され定量化される。ヘッジホッグの過剰発現に伴う疾患状態は、基底細胞癌に関連するが、不活性なShhシグナル伝達は異常な神経発達を導く。
これらの細胞培養アッセイ及び動物実験で得られたデータは、ヒトで使用するための用量範囲の処方に用いられる。本発明の化合物の用量は、毒性を殆ど又は全く持たない循環濃度の範囲内にある。用量は、採用する投与形態及び投与経路に応じてこの範囲内で変化する。
【0057】
(2)アンチセンスオリゴヌクレオチド
アンタゴニストの他の好ましいクラスは遺伝子治療技術の使用を含み、アンチセンスオリゴヌクレオチドの投与を含む。適用可能な遺伝子治療技術は、治療的に有効なDNA又はmRNAの一回又は複数回投与を含む。アンチセンスRNA及びDNAは、インビボでの或る種の遺伝子の発現を阻止するための治療薬として使用できる。参照用の短いアンチセンスオリゴヌクレオチドを細胞に移入でき、それらは細胞膜による制限された取り込みによって生ずる低い細胞内濃度にも関わらず阻害剤として作用する、Zamecnik等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 83: 4143-4146 (1986)。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、例えば負に荷電したホスホジエステル基を不荷電基で置換することにより、それらの取り込みを促進させるように修飾することができる。
生存細胞に核酸を導入するために知られた種々の技術がある。これらの技術は、対象とする宿主の細胞において、インビトロ、エキソビボ、又はインビボで培養された細胞に移行されるかによって変化する。インビトロで哺乳動物細胞に核酸を移行するのに適した技術は、リポソーム、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、細胞融合、DEAD-デキストラン、リン酸カルシウム沈殿法などの使用を含む。現在好ましいインビボ遺伝子移行技術は、ウイルス(典型的にはレトロウイルス)ベクターでの形質移入及びウイルスコートタンパク質−リポソーム媒介形質移入を含む、Dzau等, Trends Biotech. 11: 205-210 (1993)。幾つかの状況では、核酸供給源を標的細胞をターゲティングする試薬と共に提供するのが好ましく、例えば、エンドサイトーシスを伴う細胞表面膜タンパク質に特異的な抗体をターゲティング及び/又は取り込みの促進のために用いてもよく、例えば、特定の細胞型向性のカプシドタンパク質又はその断片、サイクリングで内部移行を受けるタンパク質の抗体、及び細胞内局在化をターゲティングし細胞内半減期を向上させるタンパク質である。レセプター媒介エンドサイトーシスの技術は、例えば、Wu等, J. Biol. Chem. 262: 4429-2232 (1987); Wagner等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87: 3410-3414 (1990)に記載されている。周知の遺伝子作成及び遺伝子治療プロトコールの概説については、Anderson等, Science 256: 808-813 (1992)を参照のこと。
一実施態様では、patched-2発現は、patched-2タンパク質の発現を低下させるのに有効な量のpatched-2アンチセンスRNA又はDNAとともにpatched-2発現細胞を提供することにより低下させうる。
【0058】
I.診断的用途
ここに記載した本発明の化合物(例えば、patched-2、patched-2及び抗-patched-2抗体)の他の用途は、patched-2又はヘッジホッグシグナル伝達により疾患が幾分進行したか否かの診断を助けることである。例えば、基底細胞癌細胞は活性なヘッジホッグシグナル伝達に関連し、精母細胞形成はDhhシグナル伝達に関連し、patched及びpatched-2抑制の欠損は精巣癌に関連する。
patched-2変調ヘッジホッグシグナル伝達によって特定の疾患が導かれるか否かを決定する診断アッセイは以下の工程を用いて実施される:(1)試験細胞又は組織を培養する;(2)patched-2とSmo(配列番号:17)の結合を防止する化合物を投与し、それによりHhシグナル伝達経路を活性化する;及び(3)ヘッジホッグシグナル伝達を測定する。工程は、この開示に照らして標準的な技術を用いて実施できる。例えば、細胞又は組織の単離及び培養又はインビボに標準的な技術を使用できる。
選択性の程度が変化した化合物類は、patched-2の役割を診断するのに有用である。例えば、他の形態のキナーゼに加えてpatched-2を阻害する化合物は、幾つかのシグナル伝達リガンドが疾患を導くか否かを決定する最初の試験化合物として使用できる。選択的化合物は、次いで、疾患の誘導における他のリガンドの可能な役割をさらに排除するのに使用できる。試験化合物は、細胞毒性効果の発揮よりも、リガンド−patched-2結合活性の阻害において有力であるべきである(例えば、IC50/LD50が1より大きい)。IC50及びLD50は、MTTアッセイ等の標準的技術、又はLDH放出量の測定により測定できる。化合物のIC50/LD50の度合いは、診断アッセイの評価を考慮すべきである。一般的に、IC50/LD50の比率が大きくなると情報がより相対的になる。適切な対照は、化合物の起こりうる毒性効果を考慮し、例えば、増殖疾患を伴わない細胞(例えば対照細胞)の試験化合物での処理は、診断アッセイの一部として用いることができる。本発明の診断方法は、patched-2のヘッジホッグシグナル伝達に対する効果を変調させる試薬についてのスクリーニングを含む。例示的な検出技術は、放射性標識及び免疫沈降を含む(米国特許第5,385,915号)。
【0059】
J.製薬組成物及び用量
本発明の組成物の治療用製剤は、所定の純度を持つpatched-2分子、アゴニスト及び/又はアンタゴニストを、この分野で典型的に用いられる任意の「製薬的に許容される」又は「生理学的に許容される担体、賦形剤又は安定化剤(以下、全てを「賦形剤」と称する)と混合することにより凍結乾燥製剤又は水溶液として調製され保存される。例えば、緩衝剤、安定化剤、防腐剤、等張化剤、非イオン性洗浄剤、酸化防止剤及び他の添加剤である(Remington's Pharmaceutical Sciences, 16th ed., Osol, A.編, (1980)参照)。このような添加剤は、用いられる用量及び濃度で受容者に非毒性でなければならない。
緩衝剤は、pHを生理学的条件近傍に維持するのを助ける。それらは、約2mMから約50mMの範囲の濃度で存在する。本発明での使用に適した緩衝剤は、有機及び無機酸の両方及びその塩、例えば、クエン酸バッファー(例えば、クエン酸一ナトリウム−クエン酸二ナトリウム混合物、クエン酸−クエン酸三ナトリウム混合物、クエン酸−クエン酸一ナトリウム混合物など)、コハク酸バッファー(例えば、コハク酸−コハク酸一ナトリウム混合物、コハク酸−水酸化ナトリウム混合物、コハク酸−コハク酸二ナトリウム混合物など)、酒石酸バッファー(例えば、酒石酸−酒石酸ナトリウム混合物、酒石酸−酒石酸カリウム混合物、酒石酸−水酸化ナトリウム混合物など)、フマル酸バッファー(例えば、フマル酸−フマル酸一ナトリウムなど)、フマル酸バッファー(例えば、フマル酸−フマル酸一ナトリウム混合物、フマル酸−フマル酸二ナトリウム混合物、フマル酸一ナトリウム−フマル酸二ナトリウム混合物など)、グルコン酸バッファー(例えば、グルコン酸−グルコン酸一ナトリウム混合物、グルコン酸−水酸化ナトリウム混合物、グルコン酸−グルコン酸カリウム混合物など)、シュウ酸バッファー(例えば、シュウ酸−シュウ酸ナトリウム混合物、シュウ酸−水酸化ナトリウム混合物、シュウ酸−シュウ酸カリウム混合物など)、乳酸バッファー(例えば、乳酸−乳酸ナトリウム混合物、乳酸−水酸化ナトリウム混合物、乳酸−乳酸カリウム混合物など)及び酢酸バッファー(例えば、酢酸−酢酸ナトリウム混合物、酢酸−水酸化ナトリウム混合物など)を含む。さらに、リン酸バッファー、ヒスチジンバッファー、及びトリス等のトリメチルアミン塩を挙げることができる。
【0060】
防腐剤は、微生物成長を抑制するために添加され、0.2%−1%(w/v)の範囲の量で添加される。本発明での使用に適した防腐剤は、フェノール、ベンジルアルコール、メタ-クレゾール、メチルパラベン、プロピルパラベン、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、ハロゲン化ベンザルコニウム(benzalconium)(例えば、塩化物、臭化物、ヨウ化物)、ヘキサメトニウム、メチル又はプロピルパラベン等のアルキルパラベン、カテコール、レゾルシノール、シクロヘキサノール、及び3-ペンタノールを含む。
等張化剤は「安定化剤」としても知られ、本発明の液体組成物の等張性を確保するために存在し、多価糖アルコール、好ましくは三価又はそれ以上の糖アルコール、例えばグリセリン、エリスリトール、アラビトール、キシリトール、ソルビトール及びマンニトールを含む。多価アルコールは、他の成分との相対量を考慮して、0.1%から25重量%、好ましくは1%から5%の間の量で存在する。
安定化剤は賦形剤の広い範疇を意味し、充填剤から、治療薬を可溶化する、又は変性及び容器壁面への付着の防止を助ける添加剤までの範囲とすることができる。典型的な安定化剤は、多価糖アルコール(上で列挙した);アミノ酸、例えばアルギニン、リジン、グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アラニン、オルニチン、L-ロイシン、2-フェニルアラニン、グルタミン酸、スレオニン等、有機糖又は糖アルコール、例えばラクトース、トレハロース、スタキオース(stachyose)、マンニトール、ソルビトール、キシリトール、リボチトール、ミオイノシトール、ガラクチトール、グリセロール等、イノシトール等のシクリトールを含む;ポリエチレングリコール;アミノ酸ポリマー;イオウ含有還元剤、例えば尿素、グルタチオン、チオシト(thiocutic)酸、チオグリコール酸、チオグリセロール、α-モノチオグリセロール及びチオ硫酸ナトリウム;低分子量ポリペプチド(<約10残基);ヒト血清アルブミン、ウシ血清アルブミン、ゼラチン、又は免疫グロブリン等のタンパク質;ポリビニルピロリドン等の親水性ポリマー;キシロース、マンノース、フルクトース、グルコース等の単糖類;ラクトース、マルトース、スクロース等の二糖類及びラフィノース等の三糖類;デキストラン等の多糖類とすることができる。安定化剤は、活性タンパク質重量部当たり0.1から10,000重量の範囲で存在することができる。
【0061】
非イオン性界面活性剤又は洗浄剤(「湿潤剤」としても知られる)は、治療薬の可溶化を助けるため、並びに撹拌い誘発される凝集に抗して治療用タンパク質を保護するために存在し、製剤をタンパク質変性することなく応力のかかった剪断表面に暴露するのを可能にする。好ましい非イオン性界面活性剤は、ポリソルベート(20、80等)、ポリオキサマー(184、188等)、Pluronic(登録商標)ポリペプチドオール、ポリペプチドオキシエチレンソルビタンモノエーテル(Tween(登録商標)-20、Tween(登録商標)-80等)を含む。非イオン性界面活性剤は、約0.05mg/mlから約1.0mg/ml、好ましくは約0.07mg/mlから約0.2mg/mlの範囲で存在する。
さらなる種々の賦形剤は、充填剤(例えばデンプン)、キレート化剤(例えばEDTA)、酸化防止剤(例えばアスコルビン酸、眼チオノン、ビタミンE)及び共溶媒を含む。
ここで製剤は、治療すべき特定の症状の必要に応じて一以上の化合物を含有してもよく、好ましくは互いに悪影響を及ぼさない相補的活性を持つものである。例えば、免疫抑制剤をさらに提供するのが望ましい場合もある。このような分子は、意図する目的に有効な量で組み合わせて好適に存在させる。
また活性成分は、コロイド状ドラッグデリバリーシステム(例えば、リポソーム、アルブミン微小球、マイクロエマルション、ナノ-粒子及びナノカプセル)又はマイクロエマルションにおいて、マイクロカプセルに包括させてもよく、例えば、コアセルベーション技術により又は界面重合により調製された、例えば、各々ヒドロキシメチルセルロース又はゼラチンマイクロカプセル及びポリペプチド-(メチルメタクリレート)マイクロカプセルである。これらの技術はRemington's Pharmaceutical Sciences, 16th edition, A. Csal, 編 (1980)に記載されている。
【0062】
インビボ投与に用いられる製剤は無菌でなければならない。これは、例えば滅菌濾過膜を通した濾過によって容易に達成される。
持続放出製剤を調製することもできる。持続放出製剤の好適な例は、本発明の化合物を含有する固体疎水性ポリマーの半透性マトリクスを含み、当該マトリクスは成形物、例えばフィルム又はマイクロカプセルの形態である。持続放出マトリクスの例は、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリ(2-ヒドロキシエチル-メタクリレート)、又はポリ(ビニルアルコール)、ポリアクチド(米国特許第3,773,919号))、L-グルタミン酸及びエチル-L-グルタメートのコポリマー、非分解性エチレン−酢酸ビニル、分解性乳酸−グリコール酸コポリマー、例えばLupron Depot(商品名)(乳酸−グリコール酸コポリマー及び酢酸ロイプロリドからなる注射可能な微小球)、及びポリ-D-(−)-3-ヒドロキシブチル酸を含む。エチレン−酢酸ビニル及び乳酸−グリコール酸等のポリマーは分子を100日に渡って放出することを可能にするが、或る種のヒドロゲルはより短時間しかタンパク質を放出しない。本発明のカプセル化化合物が体内に長時間滞在すると、それらは37℃の水分に暴露される結果変性又は凝集して生物学的活性の喪失及び免疫原性の変化を起こすこともある。含まれるメカニズムによって安定化を工夫して合理的な方法とすることができる。例えば、凝集メカニズムがチオ−ジスルフィド交換を通した細胞間S-S結合形成であることが見出された場合、スルフヒドリル残基の修飾、酸性溶液からの凍結乾燥、適当な添加剤を用いた水分の制御、及び特定のポリマーマトリクス組成の開発によって安定化が達成される。
特定の疾患又は状態の治療において有効な治療用ポリペプチド、抗体又はその断片の量は疾患又は状態の性質に依存し、標準的な臨床技術により決定できる。可能ならば、最初にインビトロで、次いでヒトにおける試験の前に有用な動物モデル系で本発明の製薬組成物についての用量−応答曲線を決定する。しかしながら、この分野の常識に基づいて、Dhh及びHhシグナル伝達の変調に有効な製薬組成物は、約10から1000ng/mlの間、好ましくは100から800ng/mlの間、最も好ましくは200ng/mlから600ng/mlのPtch-2(配列番号:2)という局所的patched-2タンパク質濃度を与えてもよい。
【0063】
好ましい実施態様では、治療用ポリペプチド、抗体又はその断片の水溶液が皮下注射によって投与される。各用量は体重1kg当たりに約0.5μgから約50μg、より好ましくは体重1kg当たりに約3μgから約30μgの範囲である。
皮下投与の投与スケジュールは、疾患の型、疾患の重篤さ、及び治療薬に対する患者の感受性に応じて、週に1回から毎日変えられる。
patched-2ポリペプチドは、図1に示したようなアミノ酸配列又はそのサブ配列、それから誘導される活性アミノ酸配列、又は機能的等価な配列を含んでよく、このサブ配列はpatched-2ポリペプチドの機能的部分を含むと考える。
患者が、発熱、風邪又は流感様症状、疲労などといった望ましくない副作用を現した場合、より低用量でより頻繁な間隔で投与するのが望ましいであろう。このような副作用を緩和するために、一又は複数の付加的薬剤、例えば解熱剤、抗炎症剤又は鎮痛剤をpatched-2と組み合わせて投与してもよい。
【0064】
以下の実施例は例示する目的にのみ提供されるものであって、本発明の範囲を決して限定することを意図するものではない。
本明細書で引用した全ての特許及び文献の全体を、出典明示によりここに取り込む。
(実施例)
実施例で言及されている全ての他の市販試薬は、特に示さない限りは製造者の使用説明に従い使用した。ATCC登録番号により以下の実施例及び明細書全体を通して特定されている細胞の供給源はアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション、ロックビル、メリーランドである。
【0065】
実施例1
序文
細胞表面において、Hh機能はPtch及びSmo(配列番号:17)を含む多成分レセプター複合体によって媒介されることがわかり、2つの多重膜貫通タンパク質がショウジョウバエにおいてセグメントポラリティ遺伝子として同定され、後に脊椎動物において特徴付けされた。Nakano等, Nature 341: 508-13 (1989); Goodrich等, Genes Dev. 10: 301-312 (1996); Marigo等, Develop. 122: 1225-1233 (1996); van den Heuval等, Nature 382: 547-551 (1996); Alcedo等, Cell 86: 221-232 (1996); Stone, D.M.等, Nature 384: 129-34 (1996)。遺伝学的及び生化学的証拠がともに、Ptch(配列番号:4)がリガンド結合性サブユニットであり、Gタンパク質結合レセプター様分子であるSmo(配列番号:17)がシグナル伝達成分であることを支持している。Stone, D.M.等, Nature 384: 129-34 (1996); Marigo等, Nature 384: 176-79 (1996), Chen等, Cell 87: 553-63 (1996)。HhのPtch(配列番号:4)への結合の際に、Ptch(配列番号:4)のSmo(配列番号:17)に対する正常な阻害効果が開放され、Smo(配列番号:17)が原形質膜を通してHhシグナルを伝達することを可能にする。
【0066】
結果
PTCH/SMO複合体が3つの哺乳類Hh全てを媒介するか否か、又は特定の成分が存在するか否かは、未だ確立されずにいる。近年、第2のマウスpatched遺伝子mPatched-2(配列番号:7)が最近単離されたが[Motoyama等, Nature Genet. 18: 104-106 (1998)]、そのHhレセプターとしての機能は確立されていない。patched-2(配列番号:2)を特徴付け、それをPatched(配列番号:4)と種々のHhファミリーメンバーの生物学的機能について比較するため、我々はPatched(配列番号:4)タンパク質でESTデータベースをスクリーニングして新規なヒトpatched遺伝子についての2EST候補を同定した。ヒトPtch-2(配列番号:2)をコードする全長cDNAは精巣ライブラリからクローニングした。開始ATGは、約131kDaの推定分子量を持つ1204アミノ酸長タンパク質をコードする3612ヌクレオチドのオープンリーディングフレームを決定する。ヒトPtch(配列番号:4)とPtch-2(配列番号:2)との全体の同一性は54%であり(図1)、ヒトPTCH-2と最近記載されたマウスPtch-2(配列番号:7)当量の同一性は90%である(図8)。2つのヒトPatchedタンパク質の間の最も明白な構造的な相違は、Ptch-2(配列番号:2)の切断されたC-末端細胞質ドメインである。さらに、Ptch(配列番号:4)に存在する2つのグリコシル化部位の一方のみがPtch-2(配列番号:2)に保存されている。
Patched-2がHhレセプターであるか否か、2つのPatched分子が種々のHhリガンド間を特異的な結合を介して識別できるか否かを決定するために、本出願人は、ヒト293胚腎臓細胞をPtch(配列番号:4)又はPtch-2(配列番号:2)発現作成物で形質移入し、その細胞のShh、Dhh及びIhh結合について分析した。図7Aに示すとおり、125I-Shhの結合性が過剰のShh、Dhh又はIhh(配列番号:14、13及び29)各々と比較できる。置換曲線のスキャッチャード分析は、Ptch(配列番号:4)(Shh、1.0nM)(配列番号:14);Dhh、2.6nM(配列番号:13);Ihh、1.0nM(配列番号:29)及びPtch-2(配列番号:2)(Shh、1.8nM(配列番号:14);Dhh、0.6nM(配列番号:13);Ihh、0.4nM(配列番号:29)について全てのHhが類似の親和性を有することを示し、PTCH(配列番号:4)及びPTCH-2(配列番号:2)の両方が3つの哺乳動物Hhタンパク質に対する生理学的レセプターを提供しうることを示している。
【0067】
次に本出願人は、Patched-2が、Patchedと同様に、Smo(配列番号:17)と物理的複合体を形成するか否かを決定した。FlagタグのPtch(配列番号:4)又はPtch-2(配列番号:2)を、MycタグのSmo(配列番号:17)とともに293細胞で同時形質移入した。既に述べられているように[Stone, D.M.等, Nature 384: 129-34 (1996)]、Ptch(配列番号:4)及びSmo(配列番号:15)を発現する細胞において、Ptch(配列番号:4)はエピトープタグSmo(配列番号:15)に対する抗体で免疫沈降できる(図7B)。同様に、Patched-2は、2つのタンパク質が293細胞で同時発現される場合はエピトープタグSmo(配列番号:15)に対する抗体で免疫沈降できる。それとともに、これらの結果は、PTCHについて記載されたもの(Stone等, 上掲)と同様に、Patched-2がSmo(配列番号:17)とともに多成分Hhレセプター複合体を形成するモデルを示唆している。興味深いことに、切断Patchedの分析によって既に示唆されているように(Stone等, 上掲)、これらの結果はPatched-2には無い長いCー末端尾部がSmo(配列番号:17)との相互作用には不要であることも示している。しかしながら、C-末端の不存在がPatched-2のSmo(配列番号:17)によるシグナル伝達を阻止する能力に影響を与え、Patched-2に比較してPatchedによるシグナル伝達の相違を導くことは可能である。
Patched-2が、その発現プロフィールに基づいて特定のHh分子の作用を変調できるか否かをさらに実験するために、本出願人は、Ptch(配列番号:4)及びPtch-2(配列番号:2)の発現を比較した。第1にPtch-2(配列番号:1)に特異的なプローブを用いたノーザンブロット分析は、精巣における高レベルのPTCH2mRNAを明らかにした(図4)。この方法により、胚組織を含む分析した他の全ての組織においてPtch-2(配列番号:1)発現は検出されなかった(データは示さず)。このプロフィールは、ノーザンブロットで精巣には見られないが多数の成人及び胚組織で見られるPtch(配列番号:18)で観察されるものとは非常に異なる[Goodrich等, Genes Dev. 10: 301-312 (1996)]。Ptch(配列番号:18)及びPtch-2(配列番号:1)の発現パターンの更に詳細な分析は、精巣に特に注意したインサイツハイブリッド形成によって実施した。既に記載されているように(Motoyama等, 上掲)、低レベルのPtch-2(配列番号:1)の発現が発達中の歯及び皮膚の上皮細胞で検出された(データは示さず)。高レベルのPtch-2(配列番号:2)コード化mRNAが精細管内部で、一次及び二次精母細胞上に発現されたが(図6(b)、6(e))、精細管の間質に局在化したライディヒ細胞で低レベルのPtch(配列番号:4)コード化mRNAが検出できるのみである(図6(a))。一次及び二次精母細胞は、精巣におけるDhh(配列番号:13)の供給源である支持セルトリ細胞と密に接触する[Bitgood等, Curr. Biol. 6: 298-304 (1996)]。2つのレセプターの何れが精巣でのDhh(配列番号:13)活性の最も関連するメディエータであるかを決定するために、我々はFuRK(配列番号:10)、Hhシグナル伝達経路の成分と考えられているFused関連キナーゼの発現プロフィールを分析した。Patched-2が精巣におけるDhhの標的であるという考えに一致して、我々は、FuRK(配列番号:10)、それとPtch-2(配列番号:2)とが共に局在化した胚細胞のみで発現されることを見出した(図4(c)、(f))。雄Dhh-欠損マウスが成熟精子を欠くため繁殖不能であるので、Dhh(配列番号:13)は胚細胞の正しい分化に必要である(Bitgood等, 上掲)。我々のデータは、Dhh(配列番号:13)がPtch-2(配列番号:2)を通して胚細胞に直接作用するが、テストステロン産生ライディヒ細胞上で低レベルで発現されたPtch(配列番号:4)の機能は不明であることを示唆している。
【0068】
議論
Patchedの異型接合性の喪失(LOH)が家系性並びに散発性基底細胞癌において高頻度で生ずることが報告され[Johnson等, Science 272: 1688-71 (1996); Hahn等, Cell 85: 841-51 (1996); Gailani等, Nature Genetics 14: 78-81; Xie等, Cancer Res. 57: 2369-72 (1997)]、それが腫瘍サプレッサとして機能することを示唆している。上記のレセプターモデルに従うと、Patched機能の喪失がSmo(配列番号:17)による異常なシグナル伝達をもたらし、皮膚基底細胞層の過剰増殖を導きうる。上記で示唆されたように、Patched-2がDhhの機能を媒介するならば、Patched-2の喪失は、Smo(配列番号:17)活性がPatched-2に制御されている組織における腫瘍形成を導きうる。Ptch-2(配列番号:2)をコードする遺伝子は、蛍光インサイツハイブリッド形成及びヒト染色体1p33−34に対する放射性ハイブリッドパネルを用いたPCRによってマッピングされた(データは示さず)。興味深いことに、精上皮腫を含む精巣腫瘍における再発性の染色体異常の最近の分析は、領域1p32−36の欠失を明らかにした[Summersgill等, B. J. Cancer 77: 305-3313 (1998)]。Patched-2座位を含むこの領域の喪失は、胚細胞腫瘍の場合の36%と一致した。これらのデータから、基底細胞癌及び髄芽細胞腫におけるPatchedと同様に、Patched-2が、精母細胞などのDhh(配列番号:13)標的細胞における腫瘍サプレッサであり、さらに癌におけるHhシグナル伝達に関係している可能性が生じる。
要するに、我々のデータは、Patched及びPatched-2の両方が純粋なHhレセプターであり、それらがともにSmo(配列番号:17)と複合体を形成できることを示している。結合データは、Patched及びPatched-2が親和性の相違を介して種々のHhリガンド間を識別しないことを示しているが、これら2つのレセプターの明確な組織分布は、インビボにおいてPatchedはShhの主要なレセプターであり、Patched-2は主にDhhシグナル伝達を媒介することを示唆している。Hhシグナル伝達成分の幾つかが存在しないときのライディヒ細胞におけるPatched発現の機能は、未だ説明されていない。同様に、Patched-2が発達中の歯及び皮膚に存在するShh発現細胞において発現されたときに役割を果たすか否かを決定するのは興味深い、Motoyama等, Nature Genet. 18: 104-106 (1998)。最後に、Patched-2の存在は、さらなるPatchedレセプター、特にIhh(配列番号:29)の機能を媒介するものが存在するか否かという疑問を生じさせる。
【0069】
材料と方法
1. ヒトpatched-2cDNAクローンの単離
発現された配列タグ(EST)データベース(LIFESEQ(商品名)、Incyte Pharmaceuticals、Palo Alto, CA)を、ショウジョウバエのセグメントポラリティ遺伝子patched-2のヒト相同体について検索した。2つのEST(Incyte #905531及び1326258)(図2)を潜在的な候補として同定した。ヒトpatched-2クローンを含むヒトcDNAライブラリを同定するために、pRK5におけるヒトcDNAライブラリを以下のプライマーを用いたPCRによって最初にスクリーニングした:
5'-905531(A): 5'-AGGCGGGGGATCACAGCA-3' (配列番号:19)
3'-905531(A): 5'-ATACCAAAGAGTTCCACT-3' (配列番号:20)
胎児肺ライブラリを選択し、加熱開始した後に添加した10μlの10xPCRバッファ(Klentaq(登録商標))、1μlのdNTP(200μM)、1μlのライブラリDNA(200ng)、0.5μlのプライマー、86.5μlのH2O及び1μlのKlentaq(登録商標)(Clontech)を含む反応において3'-905531(A)プライマーを用いてdut−/ung−宿主で成長させたプラスミドライブラリから一本鎖DNAを発現させることによりpatched-2cDNAクローンを富化した。反応は95℃で1分間変性させ、60℃で1分間アニールし、次いで72℃で20分間伸展させた。DNAをフェノール/CHCl3で抽出し、エタノール沈殿させ、次いでエレクトロポレーションによりDH10B(Gibco/BRLi)宿主細菌に移行させた。各形質転換体からのクローンをナイロン膜上にレプリカプレートし、以下の配列のEST配列(#905531)から誘導された重複オリゴプローブでスクリーニングした:
5'-ptch2プローブ: 5'-CTGCGGCGCTGCTTCCTGCTGGCCGTCTGCATCCTGCTGGTGTGC-3'
(配列番号:21)
3'-ptch2プロー: 5'-AGAGCACAGACGAGGAAAGTGCACACCAGCAGGATGCAGACGGCC-3'
(配列番号:22)
【0070】
オリゴプローブを、[γ-32P]-ATP及びT4ポリヌクレオチドキナーゼで標識した。フィルターは、42℃において、50%のホルミアミド、5XSSC、10Xデンハード、0.05mのリン酸ナトリウム(pH6.5)、0.1%のピロリン酸ナトリウム、50μg/mlの超音波処理サケ精子DNA中でハイブリッド形成した。次いでフィルターを2xSSCでリンスし、0.1xSSC、0.1%SDSで洗浄し、次にKodak(登録商標)X線フィルムに暴露した。この方法を用いて、胎児脳ライブラリから部分クローンを単離した(クローン3A−図10)(配列番号:8)。失った5'-配列を単離するために、精巣ライブラリ(下記のノーザンブロット参照)をスクリーニングした。精巣ライブラリをプローブするためのクローン3Aからの204bpプローブを増幅するのに使用したプライマーは:
RACE 5: 5'-ACTCCTGACTTGTAGCAGATT-3' (配列番号:23)及び
RACE 6: 5'-AGGCTGCATACACCTCTCAGA-3' (配列番号:24)であった。
増幅したプローブをアガロースゲルから切除することにより精製し、ランダムプライマー標識化キット(Boehringer Mannheim)で標識した。潜在的開始メチオニンを含むもの(クローン16.1−図11)(配列番号:9)を含む幾つかのクローンを単離した。これらのクローンの幾つかを組み立てることによりPatched-2をコードする全長cDNAを再構築した。ヒトPtch-2(図1(配列番号:1))をコードする全長cDNAは、144kDaの推定分子量を持つ1204アミノ酸タンパク質をコードする3612ヌクレオチド長のオープンリーディングフレームリーディングフレームを有する。ヒトPtch(配列番号:4)とのアラインメントは、2つの分子間でのアミノ酸レベルで53%の同一性を明らかにした(図3)。12の膜貫通ドメイン全てが保存された。最も有意な相違は、Ptch(配列番号:4)に比較して短いPtch-2(配列番号:2)のC-末端細胞内ドメインである。
【0071】
2. ノーザンブロット
完全な全長patched-2cDNAを単離スルのに最良の組織供給源を決定し、その発現プロフィールを決定するために、我々は以下のプライマー:
TM2: 5'-GCTTAGGCCCGAGGAGAT-3' (配列番号:25)
URT2: 5'-AACTCACAACTTTCTCTCCA-3' (配列番号:26)
を用いてPatched-2の3'非切断領域から増幅した752bpの断片でヒト多重組織ノーザンブロット(Clontech)をプローブした。得られた断片をゲル精製してランダムプライミングにより標識した。ブロットをExpressHyb(登録商標)ハイブリッド形成溶液(Clontech)中、1x106cpm/mlの32P-標識プローブ存在下、42℃で終夜ハイブリッド形成した。ブロットを2xSSCで室温において10分間洗浄し、0.1xSSC/0.1%SDS中、42℃で30分間洗浄し、次いでX-線フィルムに終夜暴露した。図4は、Ptch-2メッセージが精巣のみで高レベルで発現されたことを示している。
【0072】
3. 染色体局在化
上記のプライマーTM2(配列番号:25)及びUTR2(配列番号:26)をGenome System (St. Louis, MO) BACライブラリのスクリーニングに使用した。このライブラリから2つの個々のBACクローンを得て、これらのクローン両方のFISH法による染色体局在化は、Ptch-2(配列番号:2)がヒト染色体1p33−34にマッピングされることを示した(図5)。Patchedについての異型接合性の喪失(LOH)が基底細胞癌で高頻度に起こることが報告された。Patched機能の喪失はSmoothened(Smo)(配列番号:17)による恒常的シグナル伝達を導き、真皮の基底層の過剰増殖をもたらす。類似のメカニズムが胚細胞腫瘍の形成を導きうる。このモデルは胚細胞腫瘍の進行の第1段階が胚細胞前駆体によるDNAの初期喪失であり、次いで精上皮腫を形成する腫瘍性胚細胞を導くことを提案している[De Jong等, Cancer Genet. Cytogenet. 48: 143-167 (1990)]。侵襲性精上皮腫から、全ての他の形態の胚細胞型が発生する。全ての胚細胞腫瘍の約80%は同腕染色体12p(i12p)に関連し、精上皮腫より非精上皮腫でより高頻度で見られる[Rodriguez等, Cancer Res. 52: 2285-2291 (1992)]。しかしながら、精上皮腫を含む精巣腫瘍における再発性の染色体異常の分析は、領域1p32−36の欠失を明らかにした。この領域の喪失は、最近の研究における胚細胞腫瘍の36%と一致した[Summersgill等, B. J. Cancer 57: 305-313 (1998)]。染色体1p32−36の類似の欠失は、乏突起細胞腫において28%の頻度で報告されている;Bello等, Int. J. Cancer 57: 172-175 (1994)。Ptch-2(配列番号:2)の脳における発現はここで詳細に試験されていないが、Ptch-2(配列番号:2)はDhhレセプターと考えられ(下記参照)、マウスシュワン細胞によるDhhの発現が以前に報告されている[Bitgood等, Develop. Biol. 172: 126-138 (1995)]。Ptch-2(配列番号:2)は染色体1p33−34に局在しているので、Patched-2はDhh標的細胞においてSmo(配列番号:17)シグナル伝達を調節し、Patched-2機能の喪失がこれらの細胞における異常なSmo(配列番号:17)シグナル伝達、続いて腫瘍形成を導きうる。
【0073】
4. インサイツハイブリッド形成
マウス精巣断片を16μmで切り出し、 Phillips等, Science 250: 290-294 (1990)に記載された方法によりインサイツハイブリッド形成用に加工した。33P-UTP標識RNAプローブをMelton等, Nucleic Acids Res. 12: 7035-7052 (1984)に記載されているように生成させた。センス及びアンチセンスプローブをマウスPatchedの3'非コード化領域から、又はヒト配列のアミノ酸317−486コード化領域に相当するマウスFuRKcDN断片から各々T3及びT7を用いて合成した。
PTCH:
503(アンチセンス)
5'GGATTCTAATACGACTCACTATAGGGCCCAATGGCCTAAACCGACTGC3'(配列番号:27)
503(センス)
5'CTATGAAATTAACCCTCACTAAAGGGACCCACGGCCTCTCCTCACA3'(配列番号:28)
PTCH2:
504(アンチセンス)
5'GGATTCTAATACGACTCACTATAGGGCCCCTAAACTCCGCTGCTCCAC3'(配列番号:12)
504(センス)
5'CTATGAAATTAACCCTCACTAAAGGGAGCTCCCGTGAGTCCCTATGTG3'(配列番号:11)
FuRKセンス及びアンチセンスは、ヒトのアミノ酸残基317−486コード化領域に相当するマウスfusedDNA断片から各々T3及びT7を用いて合成した。
【0074】
図6は、Ptch(配列番号:4)及びPtch-2(配列番号:2)の両方が精巣で発現されるが、それらの発現パターンは重複しないことを示している。Ptch(配列番号:4)は間質のライディヒ細胞で発現されるのに対し、Ptch-2(配列番号:2)は一次及び二次精母細胞で発現される。
発達中の精母細胞に特異的なPatched-2の発現は、Patched-2がDhh(配列番号:13)の直接の標的であることを示唆している。Dhh(配列番号:13)はセルトリ細胞で発現され、Dhh(配列番号:13)を欠くマウスは精子生産の欠損により繁殖不能である[Bitgood等, Curr. Biol. 6: 298-304 (1996)]。この胚細胞への効果は間接的であり、ライディヒ細胞上に存在するPatchedによって媒介されると考えられていたが、我々のデータは、DhhがPatched-2を介して胚細胞に直接作用することを示唆している。このことは、FuRK(配列番号:10)の局在化、ショウジョウバエFusedに相同な細胞内キナーゼによって更に示され、ヘッジホッグ(Hh)シグナルの伝達に含まれている。図6に示すように、FuRK(配列番号:10)は、Ptch(配列番号:4)とともにライディヒ細胞ではなく、Ptch-2(配列番号:2)とともに胚細胞に局在し、PatchedではなくPatched-2がDhhシグナルを伝達できることを示唆している。これらの結果はPatched-2がDhhレセプターであることを示唆する。
Smo-M2(配列番号:16)トランスジェニックマウス[BCCに類似する自律的フェノタイプをもたらすSmo変異、Xie等, Nature 391: 90-92 (1998)]におけるPtch-2mRNAレベルは、Hhシグナル伝達経路の異常な活性化の際に増加しうる。図9に示すように、Ptch-2(配列番号:2)レベルは腫瘍細胞で高い(Ptch(配列番号:4)レベルよりは低い)。このことは、Ptch-2(配列番号:2)に対する抗体がBCCの治療に有用であることを示唆している。
【0075】
5. Smoでの免疫沈降:
myc-エピトープタグSmo(配列番号:15)及びFLAG-エピトープタグPatched又はPatched-2発現作成物の一過性形質移入系を用いて、標準的技術を用いた293細胞における同時形質移入により、Patched-2のSmo(配列番号:17)への結合を評価した(Gorman, C., DNA Cloning: A Practical Approach, Clover, DM編, Vol. 11, pp. 143-190, IRL Press, Washington, D.C.)。形質移入の36時間後、細胞を1%のNP-40中に溶解し、9E10抗-myc抗体又はM2抗-FLAG抗体(IBI-Kodak)、続いてプロテインAセファロースで免疫沈降させ、次に変性6%ポリアクリルアミドゲル上で分離した。タンパク質を、ニトロセルロースに移してECL検出系(Amersham)を用いてFlag又はMycエピトープに対する抗体でプローブすることにより検出した。図7Bは、Ptch(配列番号:4)又はPtch-2(配列番号:2)の両方が同レベルで発現され(IP Flag、Blot Flag)、Ptch(配列番号:4)のようにPtch-2(配列番号:2)がSmo(配列番号:17)と物理的複合体を形成することを示している。これらの結果は、Patchedと同様に、Patched-2がそのSmo(配列番号:17)との相互作用を介してHhシグナル伝達を制御することを示唆している。
【0076】
6. Hh結合:
Patched-2が種々のヘッジホッグリガンドに結合するか否かを決定するために、293細胞を標準的手法を用いてPtch(配列番号:4)又はPtch-2(配列番号:2)で形質移入した。細胞を100pMの125I-Shh(マウスShh(配列番号:14)の19kDアミノ末端断片)とともに、過剰の非標識のShh(配列番号:14)又はDhh(配列番号:13)の存在下又は非存在下で室温において2時間インキュベートした。平衡に達した後、リガンド結合細胞を連続スクロース勾配を通して遠心して未取り込み物を分離し、シンチレーションカウンターでカウントした。図7Aは、Dhh(配列番号:13)及びShh(配列番号:14)の両方がPtch(配列番号:4)及びPtch-2(配列番号:2)に結合することを示す。種々の濃度の非放射性競合物は、2つのリガンドがPtch(配列番号:4)及びPtch-2(配列番号:2)に対して類似の親和性を有することを示している。
【0077】
実施例2:大腸菌におけるpatched-2の発現
ヒトpatched-2をコードするDNA配列を、選択したPCRプライマーを用いて最初に増幅した。プライマーは、選択された発現ベクターの制限酵素部位に対応する制限酵素部位を持たなければならない。種々の発現ベクターが用いられる。好適なベクターの例は、pBR322(大腸菌から誘導されたもの;Bolivar等, Gene, 2:95 (1977)参照)であり、アンピシリン及びテトラサイクリン耐性の遺伝子を含む。ベクターは制限酵素で消化され脱リン酸される。PCR増幅した配列は、次いでベクターに結合させる。ベクターは、好ましくは抗生物質耐性遺伝子、trpプロモーター、polyhisリーダー(最初の6つのSTIIコドン、polyhis配列、及びエンテロキナーゼ切断部位を含む)、脊椎動物patched-2コード化領域、ラムダ転写終結区、及びargU遺伝子をコードする配列を含む。
ライゲーション混合物は、次いで、Sambrook等, 上掲に記載された方法を用いる選択した大腸菌の形質転換に使用される。形質転換体は、それらのLBプレートで成長する能力により同定され、次いで抗生物質耐性クローンが選択される。プラスミドDNAが単離され、制限分析及びDNA配列決定で確認される。
選択されたクローンは、抗生物質を添加したLBブロスなどの液体培養培地で終夜成長させることができる。終夜培地は、続いて大規模培地への播種に用いられる。次に細胞を所望の光学密度まで成長させ、その間に発現プロモーターが作動する。
数時間以上の細胞培養の後、細胞を採集して遠心分離できる。遠心分離で得られた細胞ペレットは、この分野で知られた種々の試薬を用いて可溶化し、次いで可溶化脊椎動物patched-2タンパク質を金属キレート化カラムを用いてタンパク質を緊密に結合させる条件下で精製した。
【0078】
実施例3:哺乳動物細胞におけるpatched-2の発現
発現ベクターとしてベクターpRK5(1989年3月15日発行のEP 307,247参照)を用いた。場合によっては、脊椎動物patched-2DNAを選択した制限酵素でpRK5に結合させ、Sambrook等,上掲に記載されたようなライゲーション方法を用いて脊椎動物patched-2DNAを挿入させる。得られたベクターは、pRK5-patched-2と呼ばれる。
一実施態様では、選択された宿主細胞は293細胞とすることができる。ヒト293細胞(ATCC CCL 1573)は、ウシ胎児血清及び場合によっては滋養成分及び/又は抗生物質を添加したDMEMなどの媒質中で組織培養プレートにおいて成長させて集密化した。約10μgのpRK5-patched-2DNAを約1μgのVA RNA遺伝子をコードするDNA[Thimmappaya等, Cell, 31:543 (1982))]と混合し、500μlの1mMトリス-HCl、0.1mMのEDTA、0.227MのCaCl2に溶解させた。この混合物に、滴状の、500
μlの50mMのHEPES(pH7.35)、280mMのNaCl、1.5mMのNaPO4を添加し、25℃で10分間析出物を形成させた。析出物を懸濁し、293細胞に加えて37℃で約4時間定着させた。培養培地を吸引し、2mlのPBS中20%グリセロールを30分間添加した。293細胞は、次いで無血清培地で洗浄し、新鮮な培地を添加し、細胞を約5日間インキュベートした。
形質移入の約24時間後、培養培地を除去し、培養培地(のみ)又は200μCi/mlの35S-システイン及び200μCi/mlの35S-メチオニンを含む培養培地で置換した。12時間のインキュベーションの後、条件培地を回収し、スピンフィルターで濃縮し、15%SDSゲル上に負荷した。処理したゲルを乾燥させ、脊椎動物patched-2ポリペプチドの存在を現す選択された時間にわたってフィルムに暴露した。形質転換した細胞を含む培地は、さらなるインキュベーションを施し(無血清培地で)、培地を選択されたバイオアッセイで試験した。
【0079】
これに換わる技術において、脊椎動物patched-2は、Somparyac等, Proc. Natl. Acad. Sci., 12:7575 (1981)に記載されたデキストラン硫酸法を用いて293細胞に一過的に導入される。293細胞は、スピナーフラスコ内で最大密度まで成長させ、700μgのpRK5-patched-2DNAを添加する。細胞は、まずスピナーフラスコから遠心分離によって濃縮し、PBSで洗浄した。DNA−デキストラン沈殿物を細胞ペレット上で4時間インキュベートした。細胞を20%グリセロールで90秒間処理し、組織培養培地で洗浄し、組織培養培地、5μg/mlウシインシュリン及び0.1μgmlウシトランスフェリンを含むスピナーフラスコに再度導入した。約4日後に、条件培地を遠心分離して濾過し、細胞及び細胞片を除去した。次いで発現された脊椎動物patched-2を含む試料を濃縮し、透析及び/又はカラムクロマトグラフィー等の選択した方法によって精製した。
他の実施態様では、脊椎動物patched-2をCHO細胞で発現させることができる。pSVi-patched-2は、CaPO4又はDEAE-デキストランなどの公知の試薬を用いてCHO細胞に形質移入することができる。上記したように、細胞培地をインキュベートし、培地を培養培地(のみ)又は35S-メチオニン等の放射性標識を含む培地に置換することができる。脊椎動物patched-2ポリペプチドの存在を同定した後、培養培地を無血清培地に置換してもよい。好ましくは、培地を約6日間インキュベートし、次いで条件培地を収集する。次いで、発現された脊椎動物patched-2を含む培地を濃縮して、選択した任意の方法によって精製することができる。
また、エピトープタグ脊椎動物patched-2を宿主CHO細胞において発現させてもよい。脊椎動物patched-2はpRK5ベクターからサブクローニングした。サブクローン挿入物は、次いで、PCRを施してバキュロウイルス発現ベクター中のpoly-hisタグ等の選択されたエピトープタグを持つ枠に融合できる。poly-hisタグ脊椎動物patched-2挿入物は、次いで、安定なクローンの選択のためのDHFR等の選択マーカーを含むSV40誘導ベクターにサブクローニングできる。最後に、CHO細胞をSV40誘導ベクターで(上記のように)形質移入した。発現を確認するために、上記のように標識化を行ってもよい。発現されたpoly-hisタグ脊椎動物patched-2を含む培養培地は、次いで濃縮し、Ni2+-キレートアフィニティクロマトグラフィー等の選択された方法により精製できる。
【0080】
実施例4:酵母菌での脊椎動物patched-2の発現
以下の方法は、酵母菌中での脊椎動物patched-2の組換え発現を記載する。
第1に、ADH2/GAPDHプロモーターからの脊椎動物patched-2の細胞内生産又は分泌のための酵母菌発現ベクターを作成する。脊椎動物patched-2をコードするDNA、選択されたシグナルペプチド及びプロモーターを選択したプラスミドの適当な制限酵素部位に挿入して脊椎動物patched-2の細胞内発現を指示する。分泌のために、脊椎動物patched-2をコードするDNAを選択したプラスミドに、ADH2/GAPDHプロモーターをコードするDNA、酵母菌アルファ因子分泌シグナル/リーダー配列、及び(必要ならば)脊椎動物patched-2の発現のためのリンカー配列とともにクローニングすることができる。
酵母菌株AB110等の酵母菌は、次いで上記の発現プラスミドで形質転換し、選択された発酵培地中で培養できる。形質転換した酵母菌上清は、10%トリクロロ酢酸での沈降及びSDS−PAGEによる分離で分析し、次いでクマシーブルー染色でゲルの染色をすることができる。
続いて組換え脊椎動物patched-2は、発酵培地から遠心分離により酵母菌細胞を除去し、次いで選択されたカートリッジフィルターを用いて培地を濃縮することによって単離及び精製できる。脊椎動物patched-2を含む濃縮物は、選択されたカラムクロマトグラフィー樹脂を用いてさらに精製してもよい。
【0081】
実施例5:バキュロウイルス感染昆虫細胞での脊椎動物patched-2の発現
以下の方法は、バキュロウイルス感染昆虫細胞中における脊椎動物patched-2の組換え発現を記載する。
脊椎動物patched-2は、バキュロウイルス発現ベクター内に含まれるエピトープタグの上流patched-2である。このようなエピトープタグは、poly-hisタグ及び免疫グロブリンタグ(IgGのFc領域など)を含む。pVL1393(Navogen)などの市販されているプラスミドから誘導されるプラスミドを含む種々のプラスミドを用いることができる。簡単には、脊椎動物patched-2又は脊椎動物patched-2の所定部分(膜貫通タンパク質の細胞外ドメインをコードする配列など)が、5’及び3’領域に相補的なプライマーでのPCRにより増幅される。5’プライマーは、隣接する(選択された)制限酵素部位を包含していてもよい。生成物は、次いで、選択された制限酵素で消化され、発現ベクターにサブクローニングされる。
組換えバキュロウイルスは、上記のプラスミド及びBaculoGoldTMウイルスDNA(Pharmingen)を、Spodoptera frugiperda(「Sf9」)細胞(ATCC CRL 1711)中にリポフェクチン(GIBCO-BRLから市販)を用いて同時形質移入することにより作成される。28℃で4-5日インキュベートした後、放出されたウイルスを回収し、さらなる増幅に用いた。ウイルス感染及びタンパク質発現は、O'Reilley等, Baculovirus expression vectors: A laboratory Manual, Oxford: Oxford University Press (1994)に記載されているように実施した。
【0082】
次いで、発現されたpoly-hisタグ脊椎動物patched-2は、例えば、Ni2+-キレートアフィニティクロマトグラフィーにより以下のように精製される。抽出物は、Rupert等, Nature, 362:175-179 (1993)に記載されているように、ウイルス感染した組み換えSf9細胞から調製した。簡単には、Sf9細胞を洗浄し、超音波処理用バッファー(25mLのHepes、pH7.9;12.5mMのMgCl2;0.1mMのEDTA;10%のグリセロール;0.1%のNP-40;0.4MのKCl)中に再懸濁し、氷上で2回20秒間超音波処理した。超音波処理物を遠心分離で透明化し、上清を負荷バッファー(50mMのリン酸塩、300mMのNaCl、10%のグリセロール、pH7.8)で50倍希釈し、0.45μmフィルターで濾過した。Ni2+-NTAアガロースカラム(Qiagenから市販)を5mlの総容積で調製し、25mLの水で洗浄し、25mLの負荷バッファーで平衡させた。濾過した細胞抽出物は、毎分0.5mLでカラムに負荷した。カラムを、分画回収が始まる点であるA280のベースラインまで負荷バッファーで洗浄した。次に、カラムを、結合タンパク質を非特異的に溶離する二次洗浄バッファー(50mMのリン酸塩;300mmのNaCl、10%のグリセロール、pH6.0)で洗浄した。A280のベースラインに再度到達した後、カラムを二次洗浄バッファー中で0から500mmのイミダゾール勾配で展開した。1mLの分画を回収し、SDS−PAGE及び銀染色又はアルカリホスファターゼ(Qiagen)に複合したNi2+-NTAでのウェスタンブロットで分析した。溶離したHis10−タグ脊椎動物patched-2を含む分画をプールし、負荷バッファーで透析した。
あるいは、IgGタグ(又はFcタグ)脊椎動物patched-2の精製は、例えば、プロテインA又はプロテインGカラムクロマトグラフィーを含む公知のクロマトグラフィー技術を用いて実施できる。
【0083】
実施例6:脊椎動物patched-2に結合する抗体の調製
この実施例は、脊椎動物patched-2に特異的に結合できるモノクローナル抗体の調製を例示する。
モノクローナル抗体の生産のための技術は、この分野で知られており、例えば、Goding,上掲に記載されている。用いられ得る免疫原は、精製脊椎動物patched-2、脊椎動物patched-2を含む融合タンパク質、細胞表面に組換え脊椎動物patched-2を発現する細胞を含む。免疫原の選択は当業者が過度の実験をすることなくなすことができる。
Balb/c等のマウスを、完全フロイントアジュバントに乳化して皮下又は腹腔内に1-100マイクログラムで動物注入する脊椎動物patched-2免疫原(例えば、細胞外部分又はptch-2を発現した細胞)で免疫化する。あるいは、免疫原をMPL−TDMアジュバント(Ribi Immunochemical Researh, Hamilton, MT)に乳化し、動物の後足蹠に注入してもよい。免疫化したマウスは、次いで10から12日後に、選択したアジュバント中に乳化した付加的免疫源で追加免疫する。その後、数週間、マウスをさらなる免疫化注射で追加免疫する。脊椎動物patched-2抗体の検出のためのELISAアッセイで試験するために、レトロオービタル出血からの血清試料をマウスから周期的に採取してもよい。
【0084】
適当な抗体力価が検出された後、抗体に「陽性」な動物に、脊椎動物patched-2静脈内注射の最後の注入をすることができる。3から4日後、マウスを屠殺して脾臓を取り出した。次いで脾臓細胞を(35%ポリエチレングリコールを用いて)、ACTTから番号CRL1597で入手可能なP3X63AgU.1等の選択されたマウス骨髄細胞系に融合させた。融合によりハイブリドーマ細胞が生成され、次いで、それをHAT(ヒポキサンチン、アミノプテリン、及びチミジン)培地を含む96ウェル組織培養プレートに蒔き、非patched-2細胞、骨髄腫ハイブリッド、及び脾臓細胞ハイブリッドの増殖を阻害した。
ハイブリドーマ細胞は、脊椎動物patched-2に対する反応性についてELISAでスクリーニングされる。所望の脊椎動物patched-2に対するモノクローナル抗体を分泌する「陽性」ハイブリドーマ細胞の決定は、技術常識の範囲内である。
陽性ハイブリドーマ細胞を同系のBalb/cマウスに腹腔内注入し、抗-脊椎動物patched-2モノクローナル抗体を含む腹水を生成させる。あるいは、ハイブリドーマ細胞を、組織培養フラスコ又はローラーボトルで成長させることもできる。腹水中に生成されたモノクローナル抗体の精製は、硫酸アンモニウム沈降、それに続くゲル排除クロマトグラフィ−を用いて行うことができる。あるいは、抗体のプロテインA又はプロテインGへの親和性に基づくアフィニティクロマトグラフィーを用いることもできる。
【0085】
実施例7
Gliルシフェラーゼアッセイ
以下のアッセイは、ショウジョウバエキュービタツインターラプタス(Drospphia cubitus interruptus(Ci)の哺乳類相同体である転写因子GLIの活性化を測定するために使用してよい。GLIが細胞のShh刺激に際して活性化された転写因子であることが示された。
NHF3βエンハンサーに存在するGLI結合部位の9つのコピー(Sasaki等, Development 124: 1313-1322 (1997))を、pGL3プラスミド(Promega)のルシフェラーゼリポーター遺伝子を制御するチミジンキナーゼ最小プロモーターの前に導入した。GLI結合配列は:TCGACAAGCAGGGAACACCCAAGTAGAAGCTC(p9XGliLuc)(配列番号:31)であり、ネガティブ対照配列は:TCGACAAGCAGGGAAGTGGGAAGTAGAAGCTC(p9XmGliLuc)(配列番号:32)であった。これらの作成物を、F12、DMEM(50:50)、10%の熱不活性化FCS中で成長させたC3H10T1/2細胞中で全長Ptch-2及びSmoとともに同時形質移入した。形質移入の前日に、ウェル当たり1x105細胞を6ウェルプレートに2ml培地中で播種した。次の日に、1μgの各作成物を、0.025mgのptkRenillaルシフェラーゼプラスミドで、100μlのOptiMem(GlutaMaxを含む)中のリポフェクタミン(Gibco-BRL)を用い、製造者の指示に従って37℃で3時間再度同時形質移入した。次いで血清(20%、1ml)を各ウェルに添加し、細胞を37℃でさらに3時間インキュベートした。次いで細胞をPBSで2回洗浄し、次に37℃で48時間2mlの培地中でインキュベートした。次いで各ウェルをPBSで洗浄し、細胞を0.5mlの受動的溶解バッファー(Promega)で15分間室温で振盪装置上で溶解させた。溶解物を氷上のエッペンドルフ管に移し、冷却遠心機で30秒間スピンし、上清を氷上で保存した。各測定について、20μlの細胞溶解物をポリプロピレン管内の100μlのLARII(ルシフェラーゼアッセイ試薬、Promega)に添加し、ルシフェラーゼ光活性を測定した。停止及びグローバッファー(Promega)の添加により反応を停止し、3から5回ピペット上下することにより混合し、Renillaルシフェラーゼ光活性を照度計で測定した。
【0086】
材料の寄託
次の細胞系をアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション, 12301 パークローンドライブ、ロックビル、メリーランド、米国(12301 Parklawn Drive, Rockville, MD, USA)(ATCC)に寄託した:
材料 ATCC寄託番号 寄託日
pRK7.hptc2.Flag-1405 209778 1998年4月14日
この寄託は、特許手続き上の微生物の寄託の国際的承認に関するブダペスト条約及びその規則(ブダペスト条約)の規定に従って行われた。これは、寄託の日付から30年間、寄託の生存可能な培養が維持されることを保証するものである。寄託物はブダペスト条約の条項に従い、またジェネンテク社とATCCとの間の合意に従い、ATCCから入手することができ、これは、どれが最初であろうとも、関連した米国特許の発行時又は任意の米国又は外国特許出願の公開時に、寄託培養物の後代を永久かつ非制限的に入手可能とすることを保証し、米国特許法第122条及びそれに従う特許庁長官規則(特に参照番号886OG638の37CFR第1.14条を含む)に従って権利を有すると米国特許庁長官が決定した者に子孫を入手可能とすることを保証するものである。
【0087】
本出願の譲受人は、寄託した培養物が、適切な条件下で培養されていた場合に死亡もしくは損失又は破壊されたならば、材料は通知時に同一の他のものと即座に取り替えることに同意する。寄託物質の入手可能性は、特許法に従いあらゆる政府の権限下で認められた権利に違反して、本発明を実施するライセンスであるとみなされるものではない。
上記の文書による明細書は、当業者に本発明を実施できるようにするために十分であると考えられる。寄託した態様は、本発明のある側面の一つの説明として意図されており、機能的に等価なあらゆる作成物がこの発明の範囲内にあるため、寄託された作成物により、本発明の範囲が限定されるものではない。ここでの物質の寄託は、ここに含まれる文書による説明が、そのベストモードを含む、本発明の任意の側面の実施を可能にするために不十分であることを認めるものではないし、それが表す特定の例証に対して請求の範囲を制限するものと解釈されるものでもない。実際、ここに示し記載したものに加えて、本発明を様々に改変することは、前記の記載から当業者にとっては明らかなものであり、添付の請求の範囲内に入るものである。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】ヒトptch-2の天然配列の核酸配列(配列番号:1)及び誘導アミノ酸配列(配列番号:2)を示す図である。
【図2】ヒトPtch(配列番号:18)とのアラインメントにおけいて2AはEST905531(配列番号:3)を示し、2BはEST1326258(配列番号:5)を示す。これらのESTは、ヒト全長Ptch-2(配列番号:1)のクローン化に用いられた。
【図3】ヒトPtch(配列番号:4)とptch-2(配列番号:2)の間の比較を示す図である。最適なアラインメントのために導入されたギャップはダッシュで示した。同一のアミノ酸はボックスで囲んだ。12の膜貫通ドメインを灰色のボックスで示し、それら全ては2つの配列間で保持されている。2つの配列間のアラインメントの結果は53%の同一性を示している。最も有意な相違は、ヒトPtch(配列番号:4)と比較してより短いヒトptch-2(配列番号:2)のC-末端細胞内ドメインである。
【図4】patched-2(配列番号:2)のノーザンブロット分析を示す図であり、発現が精巣に限定されていることを示している。複数のヒト胎児及び成人組織ノーザンブロットは、マウスPtch-2の3’-非翻訳領域に対応する断片でプローブされた。
【図5】ヒトpatched-2誘導プローブでのPCRスクリーニングによって単離した2つのBACクローンの染色体局在化を示す図である。両方のプローブは、FISHによりヒト染色体1p33−34にマッピングされた。
【図6】Ptch(配列番号:4)、ptch-2(配列番号:2)及びFused(FuRK)(配列番号:10)発現を比較するインサイツハイブリッド形成を示す。(a)Ptch、Ptch-2(配列番号:2)(b)、及びFuRK(配列番号:10)(c)の発現を示す高倍率のマウス精巣。各々、Ptch-2センス(配列番号:11)(d)及びアンチセンスプローブ(配列番号:12)(e)でハイブリッド形成した低倍率の精巣断面。図6(f)は、FuRK(配列番号:10コード化核酸)でハイブリッド形成した低倍率の精巣断面を示す。スケール・バー:a,b,c:0.05mm;d,e,f:0.33mm。
【図7A】Ptch-2(配列番号:2)のDhh(配列番号:13)及びShh(配列番号:14)への結合を比較する対数プロットである。組換えマウス125I-Shhの、Ptch(配列番号:4)又はPtch-2(配列番号:2)を過剰発現する293細胞への競合的結合。mock形質移入細胞への検出可能な結合は無かった(データは示さず)。
【図7B】エピトープタグPtch(配列番号:4)又はPtch-2(配列番号:2)とエピトープタグSmo(配列番号:15)との同時免疫沈降を示すウェスタンブロットである。免疫沈降はFlagタグPtch(配列番号:4)に対する抗体で実施し、MycタグSmo(配列番号:15)に対する抗体を含む6%アクリルアミドゲル上で分析した。タンパク質複合体はPtch(配列番号:4)及びPtch-2(配列番号:2)の両方で検出され、Smo(配列番号:15)Ptch(配列番号:4)及びPtch-2(配列番号:2)は、Flagタグに対する抗体を用いた免疫沈降及び同じ抗-Flag抗体を用いたウェスタンブロットによって示されたように類似のレベルで発現する。
【図8】ヒトPtch-2(配列番号:2)及びマウスPtch-2(配列番号:7)の間の配列比較を示す図であり、2つの配列の間に約91%の同一性があることを示している。
【図9】SMO-M2(配列番号:16)を過剰発現するE18トランスジェニックマウスの基底細胞におけるインサイツハイブリッド形成で検出されたPtch(配列番号:4)及びPtch-2(配列番号:2)mRNAの蓄積を示すインサイツハイブリッド形成を示す(Xie等, Nature 391: 90-92 (1998))。
【図10】胎児脳ライブラリから最初に単離された部分的patched-2断片であるクローン3(配列番号:8)を示す部分配列である。
【図11】精巣ライブラリから単離された部分的patched-2断片であるクローン16.1(配列番号:9)を示す部分配列である。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図1E】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【発明の開示】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、一般的にシグナル伝達分子、特に、細胞増殖及び分化に含まれるヘッジホッグ(hh)カスケードにおけるシグナル伝達及びメディエータ分子に関する。
【0002】
(発明の背景)
多細胞生物の発育は少なくとも部分的に、細胞、組織、又は器官のパターンの位置的情報を特定、指揮又は維持するメカニズムに依存している。種々の分泌されたシグナル伝達分子、例えばトランスフォーミング成長因子-ベータ(TGF-β)、Wnt、繊維芽成長因子及びヘッジホッグファミリー等は、ショウジョウバエ及び脊椎動物における様々な細胞及び構造のパターン形成に関連している。Perrimon, Cell: 80: 517-520 (1995)。
セグメントポラリティ遺伝子はショウジョウバエにおいて最初に発見され、それが突然変異した場合に体節構造のパターンに変化を起こした。これらの変化は頭から尾に沿ったパターンに影響を与えた。ヘッジホッグ(Hh)は、キイロショウジョウバエにおける遺伝子スクリーニングによりセグメントポラリティ遺伝子として最初に同定され、Nusslein-Volhard等, Roux. Arch. Dev. Biol. 193: 267-282 (1984)、それは広範な発達機能を果たす。Perrimon, 上掲。1つのショウジョウバエHh遺伝子しか同定されていないが、3つのヒトHh相同体:ソニックHh(Shh)、デザートHh(Dhh)及びインディアンHh(Ihh)が単離されている、Echelard等, Cell 75, 1417-30 (1993);Riddle等, Cell 75: 1401-16 (1993)。Shhは発育中の脊椎動物胚の脊索及び底板で高レベルで発現され、発育中の肢、体節及び神経管における細胞運命を確立するために作用する。インビトロ外植片アッセイ並びにトランスジェニック動物におけるShhの異所性発現は、SHhが神経管パターン形成において鍵となる役割を果たすことを示している、Echelard等, 上掲, Ericson等, Cell 81: 747-56 (1995); Marti等, Nature 375: 322-5 (1995); Roelink等 (1995), 上掲; Hynes等, Neuron 19: 15-26 (1997)。また、Hhは、肢(Krauss等, Cel 75: 1431-44 (1993); Laufer等, Cell 79, 993-1003 (1994))、体節(Fan 及びTessier-Lavigne, Cell 79, 1175-86 (1994); Johnson等, Cell 79: 1165-73 (1994))、肺(Bellusci等, Develop. 124: 53-63 (1997))及び皮膚(Oro等, Science 276: 817-21 (1997))の発達においても役割を果たす。同様に、Ihh及びDhhは骨、腸及び胚細胞発育に関連する、Apeqvist等, Curr. Biol. 7: 801-4 (1997); Bellusci等, Development 124: 55-63 (1997); Bitgood等, Curr. Biol. 6: 298-304 (1996); Roberts等, Development 121: 3163-74 (1995)。特に、Ihhは軟骨細胞発達に含まれていたが[Vorlamp, A.等, Science 273: 613-22 (1996)]、Dhhは精巣発達において役割を果たす。Bitgood等, 上掲。Ihh及びShhが発現される腸を除いて、ヘッジホッグファミリーメンバーの発現パターンは重複しない。Bitgood等, 上掲。
【0003】
細胞表面において、Hh機能は、ショウジョウバエにおいてセグメントポラリティ遺伝子として最初に同定され、後に脊椎動物で特徴付けされた2つの多重膜貫通タンパク質であるpatched(ptch)及びSmoothened(Smo)を含む多成分レセプター複合体によって媒介されていることがわかった。Nakano等, Nature 341: 508-13 (1989); Goodrich等, Genes Dev. 10: 301-312 (1996); Marigo等, Develop. 122: 1225-1233 (1996); van den Heuval, M.及びIngham, P.W., Nature 382: 547-551 (1996); Alcedo等, Cell 86: 221-232 (1996); Stone, D.M.等, Nature 384: 129-34 (1996)。HhのPtchへの結合に際し、PtchのSmoに対する正常な阻害効果が解除され、Smoが細胞質膜を通したHhシグナルを伝達するのを可能にする。Ptch/Smoレセプター複合体が哺乳動物の3つ全てのヘッジホッグを媒介する場合、又は特定の成分が存在する場合、それは確立されたままである。興味深いことに、第2のマウスPtch遺伝子、Ptch-2が最近単離されたが[Motoyama, J.等, Nature Genetics 18: 104-106 (1998)]、そのHhレセプターとしての機能は確立されていない。Ptch-2を特徴付けし、それを種々のHhファミリーメンバーの生物学的機能についてPtchと比較するために、本出願人は、ヒトPtch-2遺伝子を単離した。Ptch及びPtch-2の生物学的分析は、両方共がHhファミリーの全てのメンバーに類似の親和性で結合し、両方の分子がSmoと複合体を形成できることを示した。しかしながら、Ptch-2及びPtchの発現パターンは重複していない。Ptchはマウス胚を通して発現されるが、Ptch-2は、正常な発達のためにデザートヘッジホッグ(Dhh)を必要とする精母細胞に主に見られ、Ptch-2が精巣におけるDhh活性を媒介することを示唆している。Ptch-2の染色体局在化は、それを幾つかの生殖細胞において欠失される領域である染色体1p33-34に配置させ、Ptch-2がDhh標的細胞における腫瘍サプレッサーとなる可能性を向上させる。
【0004】
(発明の概要)
一実施態様では、本発明は、(a)図1のアミノ酸1〜1203の配列を含むpatched-2ポリペプチドをコードするDNA分子、又は(b)(a)のDNA分子の補体に対して少なくとも約80%の配列同一性を有し;patched-2の生物学的活性を有するポリペプチドをコードする単離された核酸分子を提供する。配列同一性は、好ましくは>91%、より好ましくは約92%、最も好ましくは約95%である。一態様において、単離された核酸は、図1のアミノ酸残基1〜約1203の配列を有するポリペプチドに対して少なくとも>91%、より好ましくは少なくとも約92%、さらに好ましくは少なくとも約95%の配列同一性を有する。さらなる態様において、単離された核酸分子は、図1のアミノ酸残基1〜約1203を有するヒトpatched-2ポリペプチドをコードするDNAを含んでなる。さらに他の態様では、本発明は、(a)ATCC寄託番号209778のcDNA(記号:pRK7.hptc2.Flag-1405)にコードされるのと同じ成熟ポリペプチドをコードするDNA分子、あるいは、ATCC209778の登録番号で寄託されたクローンpRK7.hptc2.Flag-1405のコード化配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するDNAを含んでなる単離された核酸を提供する。またさらなる態様では、本発明はATCC寄託番号209778のcDNA(記号:pRK7.hptc2.Flag-1405)のcDNAの配列、又はそれに緊縮条件下でハイブリッド形成する配列をコードするヒトpatched-2を含んでなる核酸を提供する。
【0005】
他の実施態様では、本発明は、ヒトpatched-2ポリペプチドをコードするDNAを含むベクターを提供する。また、そのようなベクターを含む宿主細胞も提供される。例えば、宿主細胞は哺乳動物細胞(例えばCHO細胞)、原核生物細胞(例えば大腸菌)又は酵母細胞(例えばサッカロミセスセレヴィシアエ(Saccaromyces cerevisiae))でよい。さらに、宿主細胞を、patched-2の発現に適した条件下で培養し、細胞培地からそれを回収することを含んでなるpatched-2ポリペプチドの製造方法も提供される。
さらに他の実施態様では、本発明は単離されたpatched-2ポリペプチドを提供する。特に、本発明は単離された天然配列patched-2ポリペプチドを提供し、それは一実施態様において図1の残基1〜約1203を含むアミノ酸配列を含んでなるヒトpatched-2である。メチオニンから開始されてもされなくてもよいヒトpatched-2ポリペプチドが特に含まれる。また、本発明は登録番号ATCC209778の下で寄託された核酸にコードされるヒトpatched-2ポリペプチドを提供する。
さらに他の実施態様では、本発明は、異種ポリペプチド又はアミノ酸配列に融合したpatched-2ポリペプチドpatched-2を含んでなるキメラ分子を提供する。そのようなキメラ分子の例は、エピトープタグ配列又は免疫グロブリンの定常領域の融合したpatched-2ポリペプチドpatched-2を含むキメラ分子である。
さらに他の実施態様では、本発明は、図2A(905531)(配列番号:3)及び図2B(1326258)(配列番号:5)で同定される核酸配列を含む発現された配列タグ(EST)を提供する。
さらに多の実施態様では、本発明は、patched-2の生物学的活性を持つ選択的にスプライシングされたヒトpatched-2の変異体を提供する。
さらに他の実施態様では、本発明は、ヘッジホッグ(Hh)、特にデザートヘッジホッグ(Dhh)によって少なくとも部分的に媒介される疾患の治療のためのpatched-2の使用方法を提供する。特に精巣癌である。さらに他の実施態様では、本発明は、Hhシグナル伝達、特にDhhシグナル伝達を阻止することにより効果をあげる疾患の治療又は生理学的状態の生成のためのpatched-2アンタゴニスト又はアゴニストの使用方法を提供する。(例えば、避妊)。
【0006】
(好適な実施態様の詳細な説明)
I.定義
ここで使用される際の「patched-2」及び「patched-2ポリペプチド」という用語は、天然配列patched-2及びpatched-2の生物学的活性を有するpatched-2変異体(ここで更に詳細に定義する)を含む。patched-2は、ヒト組織型又は他の供給源といった種々の供給源から単離してもよく、あるいは組換え又は合成方法によって調製してもよい。
「天然配列patched-2」は、天然由来のヒトpatched-2ポリペプチドと同一のアミノ酸配列を有するポリペプチドを含んでいる。このような天然配列patched-2は、自然から単離することもできるし、組換え及び/又は合成手段により生産することもできる。「天然配列脊椎動物patched-2」という用語には、特に、ヒトpatched-2の自然に生じる切断形態、自然に生じる変異形態(例えば、選択的にスプライシングされた形態)及びヒトpatched-2の自然に生じる対立遺伝子変異体が含まれる。よって、本発明の一実施態様において、天然配列patched-2は、図1(配列番号:2)のアミノ酸1〜1203を含む成熟又は全長天然ヒトPtch-2であり、位置1に開始メチオニンを有しても有さなくてもよい。
「patched-2変異体」とは、以下に定義されるように、(a)patched-2ポリペプチドをコードするDNA分子、又は(b)(a)のDNA分子の補体と少なくとも約>91%のアミノ酸配列同一性を有する活性なヒトpatched-2を意味する。特別な実施態様において、patched-2変異体は、全長天然配列ヒトpatched-2について図1に示した推定アミノ酸配列を有するヒトPtch-2(配列番号:2)と少なくとも>91%のアミノ酸配列相同性を有する。このようなpatched-2変異体は、これらに限られないが、図1(配列番号:2)の配列のN-又はC-末端において一又は複数のアミノ酸残基が付加、もしくは欠失されたpatched-2ポリペプチドを含む。好ましくは、核酸又はアミノ酸配列同一性は、少なくとも約92%、より好ましくは少なくとも約93%、さらにより好ましくは少なくとも約95%である。
【0007】
patched-2配列に対してここで同定されている「パーセント(%)アミノ酸配列同一性」は、配列を整列させ、最大のパーセント配列同一性を得るために必要ならば間隙を導入し、如何なる保存的置換も配列同一性の一部と考えないとした、patched-2配列のアミノ酸残基と同一である候補配列中のアミノ酸残基のパーセントとして定義される。パーセントアミノ酸配列同一性を決定する目的のためのアラインメントは、当業者の技量の範囲にある種々の方法、例えば、初期設定パラメータに設定されたBLAST-2ソフトウエアのような公に入手可能なコンピュータソフトウエアを使用することにより達成可能である。当業者であれば、比較される配列の全長に対して最大のアラインメントを達成するために必要な任意のアルゴリズムを含む、アラインメントを測定するための適切なパラメータを決定することができる。
ここで同定されるpatched-2配列に対する「パーセント(%)核酸配列同一性」は、配列を整列させ、最大のパーセント配列同一性を得るために必要ならば間隙を導入し、patched-2配列のヌクレオチドと同一である候補配列中のヌクレオチドのパーセントとして定義される。パーセント核酸配列同一性を決定する目的のためのアラインメントは、当業者の技量の範囲にある種々の方法、例えば、初期設定パラメータに設定したBLAST-2ソフトウエアのような公に入手可能なコンピュータソフトウエアを使用することにより達成可能である。当業者であれば、比較される配列の全長に対して最大のアラインメントを達成するために必要な任意のアルゴリズムを含む、アラインメントを測定するための適切なパラメータを決定することができる。
【0008】
「エピトープタグ」なる用語は、ここで用いられるときは、「タグポリペプチド」に融合したpatched-2ポリペプチド、又はその一部、patched-2を含んでなるキメラポリペプチドを意味する。タグポリペプチドは、その抗体が産生され得るエピトープを提供するに十分な残基を有しているが、patched-2ポリペプチドの活性を阻害しないよう充分に短い。また、タグポリペプチドは、好ましくは、抗体が他のエピトープと実質的に交差反応をしないようにかなり独特である。適切なタグポリペプチドは一般に、少なくとも6のアミノ酸残基、通常は約8〜約50のアミノ酸残基(好ましくは約10〜約20の残基)を有する。
ここで用いられる「イムノアドヘシン」なる用語は、異種タンパク質(「アドヘシン」)の結合特異性と免疫グロブリン定常ドメインのエフェクター機能とを組み合わせた抗体様分子を指す。構造的には、イムノアドヘシンは、所望の結合特異性を持ち、抗体の抗原認識及び結合部位以外である(即ち「異種の」)アミノ酸配列と、免疫グロブリン定常ドメイン配列との融合物を含む。イムノアドヘシン分子のアドへシン部分は、典型的には少なくともレセプター又はリガンドの結合部位を含む隣接アミノ酸配列である。イムノアドヘシンの免疫グロブリン定常ドメイン配列は、IgG-1、IgG-2、IgG-3又はIgG-4サブタイプ、IgA(IgA-1及びIgA-2を含む)、IgE、IgD又はIgMなどの任意の免疫グロブリンから得ることができる。文献に報告されたイムノアドヘシンは、T細胞レセプター*[Gascoigne等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84: 2936-2940 (1987)];CD4*[Capron等, Nature 337: 525-531 (1989); Traunecker等, Nature 339: 68-70 (1989); Zettmeissl等, DNA Cell Biol. USA 9: 347-353 (1990); Byrn等, Nature 344, 667-670 (1990)];L-セレクチン(ホーミングレセプター)[Watson等, J. Cell. Biol. 110, 2221-2229 (1990); Watson等, Nature 349, 164-167 (1991)];CD44*[Aruffo等, Cell 61, 1303-1313 (1990)];CD28*及びB7*[Linsley等, J. Exp. Med. 173, 721-730 (1991)];CTLA-4*[Lisley等, J. Exp. Med. 174, 561-569 (1991)];CD22*[Stamenkovic等, Cell 66. 1133-1144 (1991)];TNFレセプター[Ashkenazi等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88, 10535-10539 (1991); Lesslauer等, Eur. J. Immunol. 27, 2883-2886 (1991); peppel等, J. Exp. Med. 174, 1483-1489 (1991)];NPレセプター[Bennett等, J. Biol. Chem. 266, 23060-23067 (1991)];IgEレセプターα鎖*[Ridgway及びGorman, J. Ce;;. Biol. 115, 要約, 1448 (1991)];HGFレセプター[Mark, M.R.等, J. Biol. Chem., 267(36): 26166-26171 (1992)]の融合物を含み、ここで星印(*)は、レセプターが免疫グロブリンスーパーファミリーのメンバーであることを示す。
【0009】
ハイブリッド形成反応の「緊縮性」は、当業者によって容易に決定され、一般的に
プローブ長、洗浄温度、及び塩濃度に依存する経験的な計算である。一般に、プローブが長くなると適切なアニーリングのための温度が高くなり、プローブが短くなると温度は低くなる。ハイブリッド形成は、一般的に、相補的鎖がそれらのTm(融点)に近いがそれより低い環境に存在する場合における変性DNAの再アニールする能力に依存する。プローブとハイブリッド形成可能な配列との間の所望の相同性の程度が高くなると、使用できる相対温度が高くなる。その結果、より高い相対温度は、反応条件をより緊縮性にするが、低い温度は緊縮性を低下させる。さらに、緊縮性は塩濃度にも逆比例する。ハイブリッド形成反応の緊縮性の更なる詳細及び説明は、Ausubel等, Current Protocols in Molecular Biology (1995)を参照のこと。
ここで定義される「緊縮性条件」は、(1)洗浄のために低イオン強度及び高温度、例えば、50℃において0.015Mの塩化ナトリウム/0.0015Mのクエン酸ナトリウム/0.1%のドデシル硫酸ナトリウムを用いるもの;(2)ハイブリッド形成中にホルムアミド等の変性剤、例えば、42℃において50%(vol/vol)ホルムアミドと0.1%ウシ血清アルブミン/0.1%フィコール/0.1%のポリビニルピロリドン/50mMのpH6.5のリン酸ナトリウムバッファー、及び750mMの塩化ナトリウム、75mMクエン酸ナトリウムを用いるもの;(3)42℃における50%ホルムアミド、5xSSC(0.75MのNaCl、0.075Mのクエン酸ナトリウム)、50mMのリン酸ナトリウム(pH6.8)、0.1%のピロリン酸ナトリウム、5xデンハード液、超音波処理サケ精子DNA(50μg/ml)、0.1%SDS、及び10%のデキストラン硫酸と、42℃における0.2xSSC(塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム)中の洗浄及び55℃でのホルムアミド、次いで55℃におけるEDTAを含む0.1xSSCからなる高緊縮性洗浄を用いるものによって同定される。
【0010】
「単離された」とは、ここで開示される種々のポリペプチドを記述するために使用するときは、その自然環境の成分から同定され分離され及び/又は回収されたポリペプチドを意味する。その自然環境の汚染成分とは、そのポリペプチドの診断又は治療への使用を典型的には妨害する物質であり、酵素、ホルモン、及び他のタンパク質様又は非タンパク質様溶質が含まれる。好ましい実施態様において、ポリペプチドは、(1)スピニングカップシークエネーターを使用することにより、少なくとも15残基のN末端あるいは内部アミノ酸配列を得るのに充分なまで、あるいは、(2)クーマシーブルーあるいは好ましくは銀染色を用いた非還元あるいは還元条件下でのSDS-PAGEによる均一性まで精製される。単離されたポリペプチドには、patched-2の自然環境の少なくとも1つの成分が存在しないため、組換え細胞内のインサイツのタンパク質が含まれる。しかしながら、通常は、単離されたポリペプチドは少なくとも1つの精製工程により調製される。
「単離された」patched-2核酸分子は、同定され、patched-2核酸の天然源に通常付随している少なくとも1つの汚染核酸分子から分離された核酸分子である。単離されたpatched-2核酸分子は、天然に見出される形態あるいは設定以外のものである。ゆえに、単離されたpatched-2核酸分子は、天然の細胞中に存在するようなpatched-2核酸分子から区別される。
【0011】
「コントロール配列」という表現は、特定の宿主生物において作用可能に結合したコード配列を発現するために必要なDNA配列を指す。例えば原核生物に好適なコントロール配列は、プロモーター、場合によってはオペレータ配列、及びリボソーム結合部位を含む。真核生物の細胞は、プロモーター、ポリアデニル化シグナル及びエンハンサーを利用することが知られている。
核酸は、他の核酸配列と機能的な関係にあるときに「作用可能に結合し」ている。例えば、プレ配列あるいは分泌リーダーのDNAは、ポリペプチドの分泌に参画するプレタンパク質として発現されているなら、そのポリペプチドのDNAに作用可能に結合している;プロモーター又はエンハンサーは、配列の転写に影響を及ぼすならば、コード配列に作用可能に結合している;又はリボソーム結合部位は、もしそれが翻訳を容易にするような位置にあるなら、コード配列と作用可能に結合している。一般的に、「作用可能に結合している」とは、結合したDNA配列が近接しており、分泌リーダーの場合には近接していて読みフェーズにあることを意味する。しかし、エンハンサーは必ずしも近接している必要はない。結合は簡便な制限部位でのライゲーションにより達成される。そのような部位が存在しない場合は、従来の手法に従って、合成オリゴヌクレオチドアダプターあるいはリンカーが使用される。
【0012】
「抗体」という用語は最も広い意味において使用され、特に単一のモノクローナル抗体(アゴニスト及びアンタゴニスト抗体を含む)、及び多エピトープ特異性を持つ抗体組成物、並びに、これらが所望の生物学的活性を示す限りにおいて抗体断片(例えばFab、F(ab')2及びFv)を包含している。
ここで使用される「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に均一な抗体の集団、すなわち、構成する個々の抗体が、少量存在しうる自然に生じる可能性のある突然変異を除いて同一である集団から得られる抗体を指す。モノクローナル抗体は高度に特異的であり、単一の抗原部位に対応する。さらに、異なる決定基(エピトープ)に対応する異なる抗体を典型的に含む従来の(ポリクローナル)抗体調製物とは異なり、各モノクローナル抗体は抗原の単一の決定基に対応する。それらの特異性に加えて、モノクローナル抗体は、それらが他の免疫グロブリンで汚染されていないハイブリドーマ培地で合成されるという点で有利である。「モノクローナル」という修飾語は、抗体の実質的に均一な集団から得られるという抗体の特徴を示すものであり、或る特定の方法による抗体生産を必要とすると解釈すべきではない。例えば、本発明に従って使用されるモノクローナル抗体は、最初にKohler及びMilsteinによって、Nature, 256:495 (1975)に記載されたハイブリドーマ法によって作ることができ、あるいは組換えDNA法によって作ることができる[例えば米国特許第4,816,567号(Cabilly等)参照]。
ここで、モノクローナル抗体は特に、重鎖及び/又は軽鎖の一部が、特定の種から誘導された又は特定の抗体クラス又はサブクラスに属する抗体の対応する配列と同一又は相同であるが、鎖の残りの部分は他の種から誘導された又は他の抗体クラス又はサブクラスに属する抗体の対応する配列と同一又は相同である「キメラ」抗体(免疫グロブリン)、並びに、それらが所望の生物学的活性を示す限りそれらの抗体の断片を含む[米国特許第4,816,567号、Cabilly等;Morrison 等, Proc. Natl. acad. Sci. U.S.A. 81: 6851-6855 (1984)]。
【0013】
非ヒト(例えばマウス)抗体の「ヒト化」型は、非ヒト免疫グロブリンから誘導された最小配列を含有する特定のキメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖又はそれらの断片(例えば、Fv、Fab、Fab'、F(ab')2あるいは抗体の他の抗原結合性配列)である。大部分において、ヒト化抗体はヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)であって、そのレシピエントの相補性決定領域(CDR)が、マウス、ラット、ヤギなどのヒト以外の種のCDR(ドナー抗体)に由来する所望の特異性、親和性及び容量を持つ残基で置換されている。ある場合は、ヒト免疫グロブリンのFv枠残基が対応する非ヒト残基で置換される。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にも、輸入されるCDR又は枠配列にも見られない残基を含んでもよい。これらの修飾は、抗体の性能をさらに精密かつ最適化するために施される。一般にヒト化抗体は、CDR領域の全て又は実質上全てが非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、FR領域の全て又は実質上全てがヒト免疫グロブリン共通配列のものである少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全部を含有するであろう。また、最適なヒト化抗体は、免疫グロブリン定常領域(Fc)、典型的にはヒト免疫グロブリンのものの少なくとも一部も含有するであろう。さらなる詳細については、Jones等, Nature 321: 522 -525 (1986);Reichmann等, Nature 332: 323-329 (1988);Presta, Curr. Op. struct. Biol. 2: 593 -596 (1992)及び1993年7月6日発行の米国特許第5,225,539号(Winter)を参照のこと。
【0014】
ここで意図している「活性な」及び「活性」とは、天然又は天然発生patched-2の生物学的及び/又は免疫学的活性を保持するpatched-2の形態を意味する。好ましい活性は、ヘッジホッグ(Hh)、特にデザートヘッジホッグ(Dhh)シグナル伝達に結合及び影響、例えば阻止又はその他の変調をさせる能力である。例えば、精巣眼、雄精母細胞形成及び基底細胞癌の病原を調節である。
ここで用いられる「アンタゴニスト」なる用語は、最も広い意味において、Hhシグナル伝達におけるpatched-2の正常な機能を阻止、防止、阻害、中和する任意の分子を含む。アンタゴニストの1つの特別な形態は、Dhhとpatched-2との相互作用を阻害する分子を含む。あるいは、アンタゴニストはpatched-2のレベルを増大させる分子でもあり得る。同様に、ここで用いられる「アゴニスト」なる用語は、Hhシグナル伝達経路におけるHhのpatched-2への結合を促進、向上又は刺激する、あるいはそれをアップレギュレートする(例えば、ptch-2(配列番号:2)のSmo(配列番号:17)への結合を阻止する)任意の分子を含む。Hh及びpatched-2及びその結合タンパク質のタンパク質−タンパク質相互作用に影響する好ましい分子は、後者の断片又は小さな生物有機分子、例えばペプチド類似物を含み、それらは場合によってHhのpatched-2への結合を防止又は促進するであろう。非限定的な例は、タンパク質、ペプチド、糖タンパク質、グリコペプチド、糖脂質、多糖類、オリゴ糖、核酸、生物有機分子、ペプチド類似物、製薬剤又はそれらの代謝物、転写及び翻訳制御配列などを含む。アンタゴニストの他の好ましい形態は、野生型patched-2の正しい転写を阻害するアンチセンスヌクレオチドを含む。
【0015】
「変調」又は「変調する」という語句は、シグナル伝達経路のアップレギュレーション又はダウンレギュレーションを意味する。シグナル伝達の制御下での細胞プロセスは、これらに限られないが、特定遺伝子の転写;代謝、増殖、分化、接着、アポトーシス及び生存などの正常な細胞機能、並びに、形質転換、分化及び転移の阻止といった異常なプロセスを含みうる。
「ポリメラーゼ連鎖反応」又は「PCR」の技術は、ここで用いられる場合、一般に核酸、RNA及び/又はDNAの特定の切片の少量が1987年7月28日発行の米国特許第4,683,195号に記載されたように増幅される方法を意味する。一般的に、対象とする領域の末端から又は利用可能の必要性を越える配列情報は、オリゴヌクレオチドプライマーの設計を可能にし;これらのプライマーは増幅されるテンプレートの反対鎖の配列と同一又は類似している。2つのプライマーの5’末端ヌクレオチドは増幅された物質の末端と一致する。PCR配列は、全ゲノムDNA、及び全細胞性RNA、バクテリオファージ、又はプラスミド配列等から転写されたcDNAを形成する。一般的に、Mullis等, Cold Spring Harbor Symp. Quant Biol. 51: 263 (1987); Erlich, Ed., PCR Technology, (Stockton Press, NY, 1989)を参照のこと。ここで用いられるように、PCRは、プライマーとして公知の核酸を、そして核酸の特定の切片を増幅又は生成するために核酸ポリメラーゼを使用することを含む核酸試験試料の唯一ではない一例であると考えられる。
【0016】
II. 本発明の組成物と方法
A.全長patched-2
本発明は、本出願においてpatched-2と称されるポリペプチドをコードする、新規に同定され単離された核酸配列を提供する。特に本出願人は、以下の実施例で更に詳細に開示するような、ヒトpatched-2ポリペプチドをコードするcDNAを同定し単離した。(初期パラメータに設定された)BLAST、BLAST-2及びFastA配列アラインメントコンピュータプログラムを用いて、本出願人は、ヒトpatched-2の全長天然配列(即ち、図3のPtch-2、配列番号:2)がヒトpatched(即ちPtch、配列番号:4)と53%のアミノ酸配列同一性を有することを見出した。さらに、ヒト全長配列patched-2(即ち、Ptch-2、配列番号:2)は、マウスPtch-2(配列番号:7)(図8)と約91%の配列同一性を有していた。従って、現在では、本出願で開示されるヒトpatched-2(即ち、Ptch-2、配列番号:2)ががヘッジホッグシグナル伝達カスケード、特にデザートヘッジホッグの新たに同定されたメンバーであると考えられている。
ヒトpatched-2遺伝子の全長天然配列、又はその一部は、全長遺伝子を単離するための、又は図1(配列番号:2)に開示したヒトpatched-2配列と所定の配列同一性を有する更に他の脊椎動物相同遺伝子(例えば、patched-2の天然発生変異体又は他の種からのpatched-2をコードするもの)を単離するためのcDNAライブラリ用のハイブリッド形成プローブとして使用できる。場合によっては、プローブの長さは約20から約50塩基であろう。ハイブリッド形成プローブは、図1(配列番号:1)の核酸配列から、又は天然配列脊椎動物patched-2のプロモーター、エンハンサーエレメント、及びイントロンを含むゲノム配列から誘導されうる。例えば、スクリーニング方法は、脊椎動物patched-2遺伝子のコード化領域を周知のDNA配列を用いて単離して約40塩基の選択されたプローブを合成することを含む。ハイブリッド形成プローブは、32P又は35Sなどの放射性ヌクレオチド、アビジン/ビオチン結合系を解してプローブに結合したアルカリホスファターゼ等の酵素標識を含む種々の標識によって標識してよい。本発明の脊椎動物patched-2遺伝子に相補的な配列を有する標識したプローブは、ヒトcDNA、ゲノムDNA又はmRNAのライブラリのスクリーニングに使用でき、それらのライブラリの何れのメンバーにプローブがハイブリッド形成するかを決定できる。
【0017】
B.patched-2変異体
ここに記載した全長天然配列patched-2に加えて、patched-2変異体も調製できると考えられる。patched-2変異体は、公知のpatched-2DNAに適当なヌクレオチド変化を導入することにより、あるいは所望のpatched-2ポリペプチドを合成することにより調製できる。当業者は、アミノ酸変化がpatched-2の翻訳後プロセスを変えうることを理解するであろう。
天然全長配列patched-2又はここに記載したpatched-2の種々のドメインにおける変異は、例えば、米国特許第5,364,934号に記載されている保存的及び非保存的変異についての任意の技術及び指針を用いてなすことができる。変異は、結果として天然配列patched-2と比較してpatched-2のアミノ酸配列が変化するpatched-2をコードする一又は複数のコドンの置換、欠失又は挿入であってよい。場合によっては、変異は少なくとも1つのアミノ酸の、patched-2の一又は複数のドメインの任意の他のアミノ酸による置換である。いずれのアミノ酸残基が所望の活性に悪影響を与えることなく挿入、置換又は欠失されるかの指針は、patched-2の配列を相同性の知られたタンパク質分子の配列と比較し、相同性の高い領域内でなされるアミノ酸配列変化を最小にすることによって見出される。アミノ酸置換は、一のアミノ酸を類似した構造及び/又は化学特性を持つ他のアミノ酸で置換した結果、例えばロイシンのセリンでの置換、即ち保存的アミノ酸置換とすることができる。挿入及び欠失は、場合によっては1から5のアミノ酸の範囲内とすることができる。許容される変異は、配列においてアミノ酸の挿入、欠失又は置換を系統的に作成し、得られた変異体を下記の実施例に記載するインビトロアッセイの任意のもので活性について試験することにより決定される。
【0018】
変異は、オリゴヌクレオチド媒介(部位特異的)突然変異誘発、アラニンスキャンニング、及びPCR突然変異誘発等のこの分野で周知の技術を用いてなすことができる。部位特異的突然変異誘発[Carter等, Nucl. Acids Res., 13: 4331 (1986); Zoller等, Nucl. Acids Res., 10: 6487 (1987)]、カセット突然変異誘発[Wells等, Gene, 34: 315 (1985)]、制限的選択突然変異誘発[Wells等, Philos. Trans. R. Soc. London SerA, 317: 415 (1986)]又は他のこの分野で知られた技術をクローニングしたDNAに実施して、脊椎動物patched-2変異体DNAを作成することもできる。
また、隣接配列に沿って一又は複数のアミノ酸を同定するのにスキャンニングアミノ酸分析を用いることができる。中でも好ましいスキャンニングアミノ酸は、比較的小さく、中性のアミノ酸である。そのようなアミノ酸は、アラニン、グリシン、セリン、及びシステインを含む。アラニンは、ベータ炭素を越える側鎖を排除し変異体の主鎖構造を変化させにくいので、この群の中で典型的に好ましいスキャンニングアミノ酸である。また、アラニンは最もありふれたアミノ酸であるため典型的には好ましい。さらに、それは埋没した及び露出した位置の両方に見られることが多い[Creighton, The Proteins, (W.H. Freeman & Co., N.Y.); Chothia, J. Mol. Biol., 150: 1 (1976)]。アラニン置換が十分な量の変異体を生じない場合は、アイソテリック(isoteric)アミノ酸を用いることができる。
図3に示したヒトpatched及びpatched-2(例えば、Ptch、配列番号:4及びPtch-2、配列番号:2)の間の比較では、12の膜貫通ドメインを灰色で同定し、同一残基をボックスで囲んだ。ギャップはダッシュ(−)で示し、2つの配列間の全同一スコアを最大にするように挿入した。
【0019】
C.patched-2の修飾
patched-2ポリペプチドの共有結合的修飾は本発明の範囲内に含まれる。共有結合的修飾の一型は、patched-2の標的とするアミノ酸残基を、patched-2の選択された側鎖又はN又はC末端残基と反応できる有機誘導体化試薬と反応させることである。二官能性試薬での誘導体化が、例えばpatched-2を水不溶性支持体マトリクスあるいは抗-patched-2抗体の精製方法又はその逆で用いるための表面に架橋させるのに有用である。通常用いられる架橋剤は、例えば、1,1-ビス(ジアゾアセチル)-2-フェニルエタン、グルタルアルデヒド、N-ヒドロキシスクシンイミドエステル、例えば4-アジドサリチル酸、3,3’-ジチオビス(スクシンイミジルプロピオネート)等のジスクシンイミジルエステルを含むホモ二官能性イミドエステル、ビス-N-マレイミド-1,8-オクタン等の二官能性マレイミド、及びメチル-3-[(p-アジドフェニル)-ジチオ]プロピオイミダート等の試薬を含む。
他の修飾は、グルタミニル及びアスパラギニル残基の各々対応するグルタミル及びアスパルチル残基への脱アミノ化、プロリン及びリシンのヒドロキシル化、セリル又はトレオニル残基のヒドロキシル基のリン酸化、リジン、アルギニン、及びヒスチジン側鎖のα-アミノ基のメチル化[T.E. Creighton, Proteins: Structure and Molecular Properties, W.H. Freeman & Co., San Francisco, pp.79-86 (1983)]、N-末端アミンのアセチル化、及び任意のC-末端カルボキシル基のアミド化を含む。
patched-2の共有結合的修飾の他の型は、patched-2ポリぺプチドの、種々の非タンパク質様ポリマー、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、又はポリオキシアルキレンの一つへの、米国特許第4,640,835号;第4,496,689号;第4,301,144号;第4,670,417号;第4,791,192号又は第4,179,337号に記載された方法での結合を含む。このような修飾は、哺乳動物系での循環における分子の半減期の増大が予想され;patched-2分子の半減期の延長は、patched-2変異体が治療薬として投与される場合などの或る種の状況下で有用であり得る。
【0020】
また、本発明のpatched-2は、他の異種ポリペプチド又はアミノ酸配列に融合したpatched-2を含むキメラ分子を形成する方法で修飾してもよい。一実施態様では、このようなキメラ分子は、抗タグ抗体が選択的に結合できるエピトープを提供するタグポリペプチドとpatched-2との融合を含む。エピトープタグは、一般的にはpatched-2のアミノ-又はカルボキシル-末端に位置する。このようなpatched-2のエピトープタグ形態の存在は、タグポリペプチドに対する抗体を用いて検出することができる。また、エピトープタグの提供は、抗タグ抗体又はエピトープタグに結合する他の型の親和性マトリクスを用いたアフィニティ精製によってpatched-2を容易に精製できるようにする。もう一つの実施態様において、キメラ分子はpatched-2の免疫グロブリン又は免疫グロブリンの特定領域との融合体を含む。キメラ分子の二価形態では、このような融合はIgG分子のFc領域であり得る。
通常は、patched-2レセプターの隣接アミノ酸配列のC-末端が、免疫グロブリン定常領域の隣接アミノ酸配列のN-末端に、可変領域に換えて融合するが、N-末端融合も可能である。
典型的には、このような融合物は、少なくとも免疫グロブリン重鎖の定常領域の機能的活性ヒンジ、CH2及びCH3ドメインを保持する。また融合は、定常ドメインのFc部分のC-末端、又は重鎖のCH1の直近N-末端又は軽鎖の対応する領域にもなされる。これは、通常は、適当なDNA配列を作成し、それを組換え細胞培地で発現させることにより達成される。あるいは、イムノアドヘシンは周知を方法に従って合成してもよい。
融合がなされる正確な位置は重要ではなく;特定の位置は良く知られており、免疫グロブリンの生物学的活性、分泌又は結合特性を最適化するために選択されうる。
【0021】
好ましい実施態様では、patched-2の結合部位を含む隣接アミノ酸配列のC-末端が、N-末端において、抗体のC-末端部分(特にFcドメイン)に融合し、免疫グロブリン、例えば免疫グロブリンGl(IgG-l)のエフェクター機能を含有する。ここで上述したように、全重鎖定常領域を結合部位を含む配列に融合させることができる。しかしながら、より好ましくは、パパイン切断部位(IgGFcを化学的に定義する;残基216、重鎖定常領域の第1残基を114とする[Kobet等, 上掲]、又は他の免疫グロブリンの類似部位)の直上流のヒンジ領域で開始する配列が融合に用いられる。イムノアドヘシンにおいて異種タンパク質重鎖融合タンパク質が効率的に分泌されるには免疫グロブリン軽鎖が必要であるというのが以前の考えであったが、全IgGl重鎖を含むイムノアドヘシンでさえも軽鎖無しで効率的に分泌されることが見出された。軽鎖が不要であるので、本発明のイムノアドヘシンの作成に用いられる免疫グロブリン重鎖定常ドメインは、軽鎖結合部位を持たなくてもよい。これは、通常は軽鎖が結合する免疫グロブリンの重鎖配列成分を除去又は十分に変化させ、そのような結合がもはや不可能とすることにより達成される。よって、patched-2/免疫グロブリンキメラの或る実施態様では、CH1ドメインが完全に除去され得る。
特に好ましい実施態様では、patched-2の細胞外ドメインを含むアミノ酸配列がヒンジ領域及びCH2、CH3;又はIgG-1、IgG-2、IgG-3、又はIgG-4の重鎖のCH1、ヒンジ、CH2及びCH3ドメインに融合する。
幾つかの実施態様において、patched-2/免疫グロブリン分子(イムノアドヘシン)は、単量体、二量体、又は多量体、特に二量体又は三量体として組み立てられる。一般的に、これらの組み立てられたイムノアドヘシンは、対応する免疫グロブリンのものに似た周知の単位構造を有する。基本的な4つの鎖構造単位(2つの免疫グロブリン重鎖−軽鎖対の二量体)は、IgG、IgA及びIgEが存在する形態である。4つの鎖単位は高分子量免疫グロブリンで繰り返され;IgMは一般にジスルフィド結合で保持された基本的な4つの鎖単位の五量体として存在する。IgAグロブリン、場合によってはIgGグロブリンも、血清中で多量体形態でも存在する。多量体の場合、4つの各鎖単位は同じでも異なっていてもよい。
【0022】
patched-2/免疫グロブリンキメラの全免疫グロブリン部分が同じ免疫グロブリンからである必要はない。イムノアドヘシンの特性を最適化するために、異なる免疫グロブリンの種々の部分が結合され、天然免疫グロブリンの変異体及び誘導体がpatched-2について上述したように作成されうる。例えば、IgG-1のヒンジがIgG-3のものに置換されたイムノアドヘシン作成物が、機能的であり全IgG-1重鎖を含むイムノアドヘシンに薬力学的に匹敵することがわかった。
種々のタグポリペプチド及びそれら各々の抗体はこの分野で良く知られている。例としては、ポリ−ヒスチジン(poly-his)又はポリ−ヒスチジン−グリシン(poly-his-gly)タグ;flu HAタグポリペプチド及びその抗体12CA5[Field等, Mol. Cell. Biol., 8:2159-2165 (1988)];c-mycタグ及びそれに対する8F9、3C7、6E10、G4、B7及び9E10抗体[Evan等, Molecular and Cellular Biology, 5:3610-3616 (1985)];及び単純ヘルペスウイルス糖タンパク質D(gD)タグ及びその抗体[Paborsky等, Protein Engineering, 3(6):547-553 (1990)]を含む。他のタグポリペプチドは、フラッグペプチド[Hopp等, BioTechnology, 6:1204-1210 (1988)];KT3エピトープペプチド[Martin等, Science, 255:192-194 (1992)];α-チューブリンエピトープペプチド[Skinner等, J. Biol. Chem., 266:15163-15166 (1991)];及びT7遺伝子10タンパク質ペプチドタグ[Lutz-Freyermuth等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 87:6393-6397 (1990)]を含む。好ましいタグはインフルエンザHAタグである。
【0023】
D.patched-2の調製
以下の説明は、主として、patched-2核酸を含むベクターで形質転換又は形質移入された細胞を培養することにより特定のpatched-2を生産する方法に関する。もちろん、当該分野においてよく知られている他の方法を用いてpatched-2を調製することはできると考えられる。例えば、patched-2配列、又はその一部は、固相技術を用いた直接ペプチド合成によって生産してもよい[例えば、Stewart等, Solid-Phase Peptide Synthesis, W.H. Freeman Co., San Francisco, CA (1969);Merrifield, J. Am. Chem. Soc., 85:2149-2154 (1963)参照]。手動技術又は自動によるインビトロタンパク質合成を行ってもよい。自動合成は、例えば、アプライド・バイオシステムズ・ペプチド合成機(Applied Biosystems peptide Synthesizer)(Foster City, CA)を用いて、製造者の指示により実施してもよい。脊椎動物patched-2の種々の部分を、別々に化学的に合成し、化学的又は酵素的方法を用いて結合させて全長patched-2を生産してもよい。
【0024】
1.脊椎動物patched-2をコードするDNAの単離
patched-2をコードするDNAは、patched-2mRNAを保有していてそれを検出可能なレベルで発現すると考えられる組織から調製されたcDNAライブラリから得ることができる。従って、ヒトpatched-2DNAは、実施例に記載されるような、ヒトの組織から調製されたcDNAライブラリから簡便に得ることができる。また脊椎動物patched-2コード化遺伝子は、ゲノムライブラリから又はオリゴヌクレオチド合成により得ることもできる。
ライブラリは、対象となる遺伝子あるいはそれによりコードされるタンパク質を同定するために設計された(patched-2に対する抗体又は少なくとも約20−80塩基のオリゴヌクレオチド等の)プローブによってスクリーニングできる。選択されたプローブによるcDNA又はゲノムライブラリのスクリーニングは、例えばSambrook等, Molecular Cloning: A Laboratory Manual(New York: Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989)に記載されている標準的な手順を使用して実施することができる。脊椎動物patched-2をコードする遺伝子を単離する代替的手段はPCR法を使用するものである[Sambrook等, 上掲;Dieffenbach等, PCR Primer:A Laboratory Manual(Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1995)]。
下記の実施例は、cDNAライブラリのスクリーニング技術を記載している。プローブとして選択されたオリゴヌクレオチド配列は、充分な長さで、疑陽性が最小化されるよう充分に明瞭でなければならない。オリゴヌクレオチドは、スクリーニングされるライブラリ内のDNAへのハイブリッド形成時に検出可能であるように標識されていることが好ましい。標識化の方法は当該分野において良く知られており、32P標識されたATPのような放射線標識、ビオチン化あるいは酵素標識の使用が含まれる。中程度の緊縮性及び高度の緊縮性を含むハイブリッド形成条件は、上掲のSambrook等に与えられている。
このようなライブラリースクリーニング法において同定された配列は、Genbank等の公共データベース又は個人の配列データベースに寄託され公衆に利用可能とされている周知の配列と比較及びアラインメントすることができる。分子の一定の領域内又は全長に渡っての(アミノ酸又は核酸レベルのいずれかでの)配列同一性は、相同性測定のための種々のアルゴリズムを用いるBLAST、BLAST-2、ALIGN、DNAstar、及びINHERIT等のコンピュータソフトウェアプログラムを用いた配列アラインメントを通して決定することができる。
タンパク質コード化配列を有する核酸は、初めてここで開示された推定アミノ酸配列を使用して、選択したcDNA又はゲノムライブラリをスクリーニングすることにより、また必要ならば、cDNAに逆転写されなかったmRNAの生成中間体及び先駆物質を検出する上掲のSambrook等に記述されているような従来のプライマー伸展法を使用することにより得られる。
【0025】
2.宿主細胞の選択及び形質転換
宿主細胞を、ここに記載したpatched-2生産のための発現又はクローニングベクターで形質移入又は形質転換し、プロモーターを誘導し、形質転換体を選択し、又は所望の配列をコードする遺伝子を増幅するために適当に変性された常套的栄養培地で培養する。培養条件、例えば培地、温度、pH等々は、過度の実験をすることなく当業者が選ぶことができる。一般に、細胞培養の生産性を最大にするための原理、プロトコール、及び実用技術は、Mammalian Cell Biotechnology: a Practical Approach, M.Butler編 (IRL Press, 1991)及びSambrook等, 上掲に見出すことができる。
形質移入の方法、例えば、CaPO4及びエレクトロポレーションは当業者に知られている。用いられる宿主細胞に応じて、その細胞に対して適した標準的な方法を用いて形質転換はなされる。前掲のSambrook等に記載された塩化カルシウムを用いるカルシウム処理又はエレクトロポレーションが、原核生物又は実質的な細胞壁障壁を含む他の細胞に対して用いられる。アグロバクテリウム・トゥメファシエンスによる感染が、Shaw等, Gene, 23:315 (1983)及び1989年6月29日公開のWO 89/05859に記載されているように、或る種の植物細胞の形質転換に用いられる。このような細胞壁のない哺乳動物の細胞に対しては、Graham及びvan der Eb, Virology, 52:456-457 (1978)のリン酸カルシウム沈降法が用いられる。哺乳動物細胞の宿主系形質転換の一般的な態様は米国特許第4,399,216号に記載されている。酵母菌中への形質転換は、典型的には、Van solingen等, J. Bact., 130:946 (1977)及びHsiao等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 76:3829 (1979)の方法に従って実施される。しかしながら、DNAを細胞中に導入する他の方法、例えば、核マイクロインジェクション、エレクトロポレーション、無傷の細胞、又はポリカチオン、例えばポリブレン、ポリオルニチン等を用いる細菌プロトプラスト融合もまた用いることもできる。哺乳動物細胞を形質転換するための種々の技術については、Keown等, Methods in Enzymology, 185:527-537 (1990)及び Mansour等, Nature, 336:348-352 (1988)を参照のこと。
【0026】
ここに記載のベクターにおいてDNAをクローン化あるいは発現するために適切な宿主細胞は、原核生物、酵母菌、又は高等真核生物細胞である。適切な原核生物は、限定するものではないが、真正細菌、例えばグラム陰性又はグラム陽性生物体、例えば大腸菌のような腸内細菌科を含む。種々の大腸菌株が公衆に利用可能であり、例えば、大腸菌K12株MM294(ATCC31,446);大腸菌X1776(ATCC31,537);大腸菌株W3110(ATCC27,325)及びK5772(ATCC53,635)である。
原核生物に加えて、糸状菌又は酵母菌のような真核微生物は、脊椎動物patched-2コード化ベクターのための適切なクローニング又は発現宿主である。サッカロミセス・セレヴィシアは、通常用いられる下等真核生物宿主微生物である。
脊椎動物patched-2の発現に適切な宿主細胞は多細胞生物から誘導される。無脊椎動物細胞の例としては、ショウジョウバエS2及びスポドスペラSf9等の昆虫細胞並びに植物細胞が含まれる。有用な哺乳動物宿主細胞系の例は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)及びCOS細胞を含む。より詳細な例は、SV40によって形質転換されたサル腎臓CV1株 (COS-7, ATCC CRL 1651);ヒト胚腎臓株(293又は懸濁培養での増殖のためにサブクローン化された293細胞、Graham等, J. Gen Virol., 36:59 (1977));チャイニーズハムスター卵巣細胞/-DHFR(CHO, Urlaub及びChasin, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 77:4216 (1980));マウスのセルトリ細胞(TM4, Mather, Biol. Reprod., 23:243-251 (1980));ヒト肺細胞 (W138, ATCC CCL 75);ヒト肝細胞 (Hep G2, HB 8065);及びマウス乳房腫瘍 (MMT 060562, ATTC CCL51)を含む。適切な宿主細胞の選択は、この分野の技量の範囲内にある。
【0027】
3.複製可能なベクターの選択及び使用
patched-2をコードする核酸(例えば、cDNA又はゲノムDNA)は、クローニング(DNAの増幅)又は発現のために複製可能なベクター内に挿入される。様々なベクターが公的に入手可能である。ベクターは、例えば、プラスミド、コスミド、ウイルス粒子、又はファージの形態とすることができる。適切な核酸配列が、種々の手法によってベクターに挿入される。一般に、DNAはこの分野で周知の技術を用いて適当な制限エンドヌクレアーゼ部位に挿入される。ベクター成分としては、一般に、これらに制限されるものではないが、一又は複数のシグナル配列、複製開始点、一又は複数のマーカー遺伝子、エンハンサーエレメント、プロモーター、及び転写終結配列を含む。これらの成分の一又は複数を含む適当なベクターの作成には、当業者に知られた標準的なライゲーション技術を用いる。
発現及びクローニングベクターは共に一又は複数の選択された宿主細胞においてベクターの複製を可能にする核酸配列を含む。そのような配列は種々の細菌、酵母菌及びウイルスに対してよく知られている。プラスミドpBR322に由来する複製開始点は大部分のグラム陰性細菌に好適であり、2μプラスミド開始点は酵母菌に適しており、様々なウイルス開始点(SV40、ポリオーマ、アデノウイルス、VSV又はBPV)は哺乳動物細胞におけるクローニングベクターに有用である。好ましい複製可能なベクターは、プラスミドpRK5である。Holmes等, Science, 253: 1278-1280 (1991)。
発現及びクローニングベクターは、典型的には、選べるマーカーとも称される選択遺伝子を含む。典型的な選択遺伝子は、(a)抗生物質あるいは他の毒素、例えばアンピシリン、ネオマイシン、メトトレキセートあるいはテトラサイクリンに耐性を与え、(b)栄養要求性欠陥を補い、又は(c)複合培地から得られない重要な栄養素、例えばバシリに対する遺伝子コードD-アラニンラセマーゼを供給するタンパク質をコードする。
【0028】
哺乳動物細胞に適切な選べるマーカーの他の例は、DHFRあるいはチミジンキナーゼのように、patched-2核酸を取り込むことのできる細胞成分の同定が可能なものである。野生型DHFRを用いた場合の好適な宿主細胞は、Urlaub 等により, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 77:4216 (1980)に記載されているようにして調製され増殖されたDHFR活性に欠陥のあるCHO細胞系である。酵母菌中での使用に好適な選択遺伝子は酵母菌プラスミドYRp7に存在するtrp1遺伝子である[Stinchcomb等, Nature, 282:39(1979);Kingman等, Gene, 7:141(1979);Tschemper等, Gene, 10:157(1980)]。trp1遺伝子は、例えば、ATCC番号44076あるいはPEP4-1のようなトリプトファン内で成長する能力を欠く酵母菌の突然変異株に対する選択マーカーを提供する[Jones, Genetics, 85:12 (1977)]。
発現及びクローニングベクターは、通常、patched-2核酸配列に作用可能に結合してmRNA合成を制御するプロモーターを含む。種々の可能な宿主細胞により認識される好適なプロモーターが知られている。原核生物宿主での使用に好適なプロモーターはβ-ラクタマーゼ及びラクトースプロモーター系[Cahng等, Nature, 275:615 (1978); Goeddel等, Nature, 281:544 (1979)]、アルカリホスファターゼ、トリプトファン(trp)プロモーター系[Goeddel, Nucleic Acids Res., 8:4057 (1980); EP 36,776]、及びハイブリッドプロモーター、例えばtacプロモーター[deBoer 等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 80:21-25 (1983)]を含む。細菌系で使用するプロモータもまたpatched-2をコードするDNAと作用可能に結合したシャイン・ダルガーノ(S.D.)配列を有する。
酵母菌宿主と共に用いて好適なプロモーター配列の例としては、3-ホスホグリセラートキナーゼ[Hitzeman 等, J. Biol. Chem., 255:2073 (1980)]又は他の糖分解酵素[Hess 等, J. Adv. Enzyme Reg., 7:149 (1968);Holland, Biochemistry, 17:4900(1978)]、例えばエノラーゼ、グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ、ヘキソキナーゼ、ピルビン酸デカルボキシラーゼ、ホスホフルクトキナーゼ、グルコース-6-リン酸イソメラーゼ、3-ホスホグリセレートムターゼ、ピルビン酸キナーゼ、トリオセリン酸イソメラーゼ、ホスホグルコースイソメラーゼ、及びグルコキナーゼが含まれる。
【0029】
他の酵母菌プロモーターとしては、成長条件によって転写が制御される付加的効果を有する誘発的プロモーターであり、アルコールデヒドロゲナーゼ2、イソチトクロムC、酸ホスファターゼ、窒素代謝と関連する分解性酵素、メタロチオネイン、グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ、及びマルトース及びガラクトースの利用を支配する酵素のプロモーター領域がある。酵母菌での発現に好適に用いられるベクターとプロモータはEP 73,657に更に記載されている。
哺乳動物の宿主細胞におけるベクターからのpatched-2転写は、例えば、ポリオーマウィルス、伝染性上皮腫ウィルス(1989年7月5日公開のUK 2,211,504)、アデノウィルス(例えばアデノウィルス2)、ウシ乳頭腫ウィルス、トリ肉腫ウィルス、サイトメガロウィルス、レトロウィルス、B型肝炎ウィルス及びサルウィルス40(SV40)のようなウィルスのゲノムから得られるプロモーター、異種哺乳動物から得られるプロモーター、例えばアクチンプロモーター又は免疫グロブリンプロモーター、及び熱衝撃プロモーターから得られるプロモーターによって、このようなプロモーターが宿主細胞系に適合し得る限り制御される。
より高等の真核生物による脊椎動物patched-2をコードしているDNAの転写は、ベクター中にエンハンサー配列を挿入することによって増強され得る。エンハンサーは、通常は約10から300塩基対で、プロモーターに作用してその転写を増強するDNAのシス作動要素である。哺乳動物遺伝子由来の多くのエンハンサー配列が現在知られている(グロビン、エラスターゼ、アルブミン、α-フェトプロテイン及びインスリン)。しかしながら、典型的には、真核細胞ウィルス由来のエンハンサーが用いられるであろう。例としては、複製起点の後期側のSV40エンハンサー(100−270塩基対)、サイトメガロウィルス初期プロモーターエンハンサー、複製起点の後期側のポリオーマエンハンサー及びアデノウィルスエンハンサーが含まれる。エンハンサーは、patched-2コード化配列の5’又は3’位でベクター中にスプライシングされ得るが、好ましくはプロモーターから5’位に位置している。
また真核生物宿主細胞(酵母菌、真菌、昆虫、植物、動物、ヒト、又は他の多細胞生物由来の有核細胞)に用いられる発現ベクターは、転写の終結及びmRNAの安定化に必要な配列も含む。このような配列は、真核生物又はウィルスのDNA又はcDNAの通常は5’、時には3’の非翻訳領域から取得できる。これらの領域は、patched-2をコードするmRNAの非翻訳部分にポリアデニル化断片として転写されるヌクレオチドセグメントを含む。
組換え脊椎動物細胞培養でのpatched-2の合成に適応化するのに適切なさらに他の方法、ベクター及び宿主細胞は、Gething等, Nature, 293:620-625 (1981); Mantei等, Nature, 281:40-46 (1979); EP 117,060; 及びEP 117,058に記載されている。
【0030】
4.遺伝子増幅/発現の検出
遺伝子の増幅及び/又は発現は、ここで提供された配列に基づき、適切に標識されたプローブを用い、例えば、従来よりのサザンブロット法、mRNAの転写を定量化するノーザンブロット法[Thomas, Proc. Natl. Acad. Sci. USA,77:5201-5205 (1980)]、ドットブロット法(DNA分析)、又はインサイツハイブリッド形成法によって、直接的に試料中で測定することができる。あるいは、DNA二本鎖、RNA二本鎖及びDNA−RNAハイブリッド二本鎖又はDNA-タンパク二本鎖を含む、特異的二本鎖を認識することができる抗体を用いることもできる。次いで、抗体を標識し、アッセイを実施することができ、ここで二本鎖は表面に結合しており、その結果二本鎖の表面での形成の時点でその二本鎖に結合した抗体の存在を検出することができる。
あるいは、遺伝子の発現は、遺伝子産物の発現を直接的に定量する免疫学的な方法、例えば細胞又は組織切片の免疫組織化学的染色及び細胞培養又は体液のアッセイによって、測定することもできる。試料液の免疫組織化学的染色及び/又はアッセイに有用な抗体は、モノクローナルでもポリクローナルでもよく、任意の哺乳動物で調製することができる。簡便には、抗体は、天然配列patched-2ポリペプチドに対して、又はここで提供されるDNA配列をベースとした合成ペプチドに対して、又はpatched-2DNAに融合し特異的抗体エピトープをコードする外因性配列に対して調製され得る。
【0031】
5.ポリペプチドの精製
patched-2の形態は、宿主細胞の溶解液から回収することができる。patched-2は膜結合性であるので、適切な洗浄液(例えばトリトン-X100)又は酵素的切断を用いて膜から引き離すことができる。patched-2の発現に用いられる細胞は、凍結解凍サイクル、超音波処理、機械的破壊、又は細胞溶解剤などの種々の化学的又は物理的手段によって破壊することができる。
patched-2を、組換え細胞タンパク又はポリペプチドから精製することが望ましい。適切な精製手順の例である次の手順により精製される:すなわち、イオン交換カラムでの分画;エタノール沈殿;逆相HPLC;シリカ又はカチオン交換樹脂、例えばDEAEによるクロマトグラフィー;クロマトフォーカシング;SDS-PAGE;硫酸アンモニウム沈殿;例えばセファデックスG-75を用いるゲル濾過;IgGのような汚染物を除くプロテインAセファロースカラム;及びpatched-2のエピトープタグ形態を結合させる金属キレート化カラムである。この分野で知られ、例えば、Deutcher, Methodes in Enzymology, 182 (1990);Scopes, Protein Purification: Principles and Practice, Springer-Verlag, New York (1982)に記載された多くのタンパク質精製方法を用いることができる。選ばれる精製過程は、例えば、用いられる生産方法及び特に生産される特定のpatched-2の性質に依存する。
【0032】
E.patched-2の用途
(1)patched-2はデザートヘッジホッグ(Dhh)に対する特異的レセプターである。
ヘッジホッグ(Hh)シグナル伝達経路は、哺乳動物及び無脊椎動物の胚構造の形成に含まれている。多重経路膜貫通レセプターpatchedは、Hh経路のネガティブレギュレータであり、セルペンチン(serpentine)シグナル伝達分子smoothened(Smo)を抑制する。データは、patchedの喪失がHh経路の調節解除を導き、胚における異常構造及び成人における癌の形成をもたらすことを示した。
patched-2(例えば、Ptch-2、配列番号:2)と命名される出願人が新たに同定した第2のヒトpatched遺伝子は、patchedと類似の12膜貫通ドメインのトポロジーを有し、Hhファミリーの全てのメンバーと結合でき、Smo(例えば、配列番号:17)と複合体を形成できる。しかしながら、patched-2とpatchedの発現パターンは重複しない。patched-2は主に発育中の精母細胞で発現され、それはデザートヘッジホッグ産生セルトリ細胞によって直接支持され、patched-2がデザートヘッジホッグのレセプターであることを示唆している。
成人細管において、通常は大きな分泌細胞であるセルトリ細胞は、精細管を基底層から管腔側へ行き来し、胚細胞を飲み込む細胞質隆起を送り出している。これらの接触は、単相ラウンドの精子細胞が分化して高度に特化した運動性精子が生成される精子完成の間に特に密接である。隣接するセルトリ細胞間の密接な結合は、細管を有糸分裂精原細胞及び初期精母細胞を含む基底領域、及びに減数分裂精母細胞及び成熟精子細胞を含むアドルミナル(adluminal)区画とに区分する。実際に、セルトリ誘導細胞系は培地の胚細胞の減数分裂的進行を支持し、セルトリ細胞から誘導された因子が胚細胞成熟に寄与するという見方に一致する、Rassoulzadegan, M.等, Cell 1993, 75: 997-1006。Dhh活性の喪失は、劣性の性特異的フェノタイプをもたらす。雌マウス同型接合の変異は十分に生存可能で繁殖可能であったが、雄マウスでは生存可能だが繁殖不可能であった。試験全体により、18.5dpc程度の初期では、変異した雄の精子は同型接合同腹仔のものより検出できる程度に小さいことが示された。Bitgood等, Curr. Biol., 1996, 6(3): 298-304。即ち、セルトリ細胞は、出生後発育の間の胚細胞発達の有糸分裂及び減数分裂段階を独立に調節するようである。従って、patched-2はDhh(配列番号:13)のレセプターであることが明らかとなったので、Dhh(配列番号:13)のpatched-2への結合を変調させる分子はDhh(配列番号:13)シグナル伝達の活性化に影響を与え、よってDhh(配列番号:13)に媒介される状態の治療に有用性を持つ。(例えば、精巣癌である)。あるいは、patched-2のアンタゴニスト又はアゴニストがDhhシグナル伝達の阻止によって影響される疾患の治療又は望ましい生理学的状態の生成に使用できることも提案される。(例えば、避妊、不妊治療である)。
【0033】
(2)patched-2の一般的用途
patched-2をコードする核酸配列(又はそれらの補体)は、ハイブリッド形成プローブとしての使用を含む分子生物学の分野において、染色体及び遺伝子マッピングにおいて、及びアンチセンスRNA及びDNAの生成において種々の用途を有している。また、patched-2核酸は、ここに記載される組み換え技術によるpatched-2ポリペプチドの調製にも有用であろう。
全長天然配列patched-2遺伝子、又はその一部は、全長遺伝子の単離又は図1(配列番号:1)に開示されたpatched-2配列に対して所望の配列同一性を持つ更に他の遺伝子(例えば、patched-2の天然発生変異体をコードするもの)の単離のためのcDNAライブラリ用のハイブリッド形成プローブとして使用できる。場合によっては、プローブの長さは約20〜約50塩基である。ハイブリッド形成プローブは、図1(配列番号:1)の核酸配列から、又は天然配列patched-2のプロモーター、エンハンサー成分及びイントロンを含むゲノム配列から誘導され得る。例えば、スクリーニング法は、patched-2遺伝子のコード化領域を周知のDNA配列を用いて単離して約40塩基の選択されたプローブを合成することを含む。ハイブリッド形成プローブは、32P又は35S等の放射性ヌクレオチド、又はアビジン/ビオチン結合系を介してプローブに結合したアルカリホスファターゼ等の酵素標識を含む種々の標識で標識されうる。本発明のpatched-2遺伝子に相補的な配列を有する標識されたプローブは、ヒトcDNA、ゲノムDNA又はmRNAのライブラリーをスクリーニングし、それらのライブラリーの何れのメンバーがプローブにハイブッド形成するかを決定するのに使用できる。ハイブリッド形成技術は、以下の実施例において更に詳細に記載する。
また、プローブは、PCR技術に用いて、密接に関連したpatched-2配列の同定のための配列のプールを作成するのに用いることができる。
【0034】
また、patched-2をコードする核酸配列は、そのpatched-2をコードする遺伝子のマッピングのため、及び遺伝子疾患を持つ個体の遺伝子分析のためのハイブリッド形成プローブの作成にも用いることができる。ここに提供される核酸配列は、インサイツハイブリッド形成、既知の染色体マーカーに対する結合分析、及びライブラリーでのハイブリッド形成スクリーニング等の周知の技術を用いて、染色体及び染色体の特定領域にマッピングすることができる。
patched-2ポリペプチドは、究極的にヘッジホッグシグナル伝達の変調をもたらすpatched-2との複合体形成に含まれる他のタンパク質又は分子を同定するアッセイに用いることができる。あるいは、これらの分子は、patched-2のDhh(配列番号:13)への結合を変調させることもできる。このような方法によって、結合性相互作用の阻害剤を同定することができる。また、このような結合性相互作用に含まれるタンパク質も、ペプチド又は小分子阻害剤又は結合性相互作用のアゴニストのスクリーニングに用いることができる。また、patched-2の基質は、関連する複合体形成タンパク質の単離に使用することもできる。スクリーニングアッセイは、天然patched-2の生物学的活性に似たリード化合物の発見のために、又はpatched-2に対して基質として作用するものの発見のために設計され得る。このようなスクリーニングアッセイは、化学的ライブラリーの高スループットスクリーニングにも用いられ、それらを小分子候補薬剤の同定に特に適したものとする。そのような小分子阻害剤は、patched-2の酵素活性を阻止し、それによりヘッジホッグシグナル伝達を阻害できる。考慮される小分子阻害剤は、合成有機又は無機化合物を含む。アッセイは、この分野で良く知られ特徴付けられているタンパク質−タンパク質結合アッセイ、生化学的スクリーニングアッセイ、免疫検定及び細胞ベースのアッセイを含む種々の型式で実施される。
【0035】
patched-2又はその修飾形態をコードする核酸は、トランスジェニック動物又は「ノックアウト」動物を作成するのに用いることもでき、言い換えると、治療的に有用な薬剤の開発及びスクリーニングに有用である。トランスジェニック動物(マウス又はラット等)は、出生前、例えば胚段階で、その動物又はその動物の祖先に導入された導入遺伝子を含む細胞を有する動物である。導入遺伝子とは、トランスジェニック動物が発生する細胞のゲノムに組み込まれるDNAである。一実施形態では、patched-2をコードするcDNAを、確立された技術によりpatched-2をコードするゲノムDNAをクローニングするために使用することができ、ゲノム配列を、patched-2をコードするDNAを発現する細胞を有するトランスジェニック動物を産生するために使用することができる。特にマウス又はラット等のトランスジェニック動物を産生する方法は当該分野において常套的になっており、例えば米国特許第4,736,866号や第4,870,009号に記述されている。典型的には、特定の細胞を組織特異的エンハンサーでのpatched-2導入遺伝子の導入の標的にする。胚段階で動物の生殖系列に導入されたpatched-2をコードする導入遺伝子のコピーを含むトランスジェニック動物は、patched-2をコードするDNAの増大した発現の影響を調べるために使用できる。このような動物は、例えばその過剰発現を伴う病理的状態に対して保護をもたらすと思われる試薬のテスター動物として使用できる。
脊椎動物patched-2の非ヒト相同体は、動物の胚性細胞に導入されたpatched-2をコードする変更ゲノムDNAと、patched-2をコードする内在性遺伝子との間の相同的組換えによって、patched-2をコードする欠陥又は変更遺伝子を有するpatched-2「ノックアウト」動物を作成するために使用できる。例えば、patched-2をコードするDNAは、確立された技術に従い、patched-2をコードするゲノムDNAのクローニングに使用できる。patched-2をコードするゲノムDNAの一部を欠失したり、組み込みを監視するために使用する選択可能なマーカーをコードする遺伝子等の他の遺伝子で置換することができる。典型的には、ベクターは無変化のフランキングDNA(5'と3'末端の両方)を数キロベース含む[例えば、相同的組換えベクターについてはThomas and Capecchi, Cell, 51:503 (1987)を参照のこと]。ベクターは胚性幹細胞に(例えばエレクトロポレーション等によって)導入し、導入されたDNAが内在性DNAと相同的に組換えられた細胞を選択する[例えば、Li等, Cell, 69:915 (1992)参照]。選択された細胞は次に動物(例えば、マウス又はラット)の胚盤胞内に注入され、集合キメラを形成する[例えば、Bradley, Teratocarcinomas and Embryonic Stem Cells: A Practical Approach, E. J. Robertson, ed. (IRL, Oxford, 1987), pp. 113-152参照]。その後、キメラ性胚を適切な偽妊娠の雌性乳母に移植し、「ノックアウト」動物を作ると言われる。胚細胞に相同的に組換えられたDNAを有する子孫は標準的な技術により同定され、それらを利用して動物の全細胞が相同的に組換えられたDNAを含む動物を繁殖させることができる。ノックアウト動物は、patched-2ポリペプチドが不在であることによるある種の病理的状態及び病理的状態の進行に対して防御する能力によって特徴付けられる。
【0036】
また、Dhhシグナル伝達の抑制又は阻害(拮抗作用)も治療方法の対象である。patched-2がヘッジホッグファミリーの全てのメンバー(即ち。Shh、Dhh、Ihh)に結合できるので、ヘッジホッグ分子のPtch-2(配列番号:2)への結合を防止するアンタゴニスト分子は治療的有用性を持つ。例えば、Shhシグナル伝達は基底細胞癌において活性化されることが知られ;Dhh(配列番号:13)は精母細胞の調節に含まれることが知られている。Hhシグナル伝達の阻害剤又はアンタゴニストは、各々基底細胞の治療又は雄の避妊において有効な治療薬である。
Dhhシグナル伝達の刺激(作動作用)も治療方法の対象である。Ptch-2(配列番号:2)はHhファミリーの他のメンバー、Ihh及びShhにも結合するので、Dhhシグナル伝達の活性化は、不活性又は不十分なHhシグナル伝達に特徴付けられる疾患状態又は疾病において有用である。例えば、神経系の変性疾患、例えば、パーキンソン病、記憶障害、アルツハイマー病、ルー・ゲーリグ病、ハンティングトン病、精神分裂病、発作及び薬物嗜癖である。さらに、patched-2アゴニストは、腸疾患、骨疾患、皮膚疾患、精巣の疾患(不妊症を含む)、潰瘍、肺疾患、膵臓の疾患、糖尿病、骨粗鬆症の治療に使用できる。
【0037】
F.抗-patched-2抗体
本発明は、さらに抗-脊髄動物patched-2抗体を提供するものである。抗体の例としては、ポリクローナル、モノクローナル、ヒト化、二重特異性及びヘテロ抱合体抗体が含まれる。
1.ポリクローナル抗体
抗-patched-2抗体はポリクローナル抗体を含んでよい。ポリクローナル抗体の調製方法は当業者に知られている。哺乳動物においてポリクローナル抗体は、例えば免疫化剤、及び所望するのであればアジュバントを、一又は複数回注射することで発生させることができる。典型的には、免疫化剤及び/又はアジュバントを複数回皮下又は腹腔内注射により、哺乳動物に注射する。免疫化剤は、patched-2ポリペプチド又はその融合タンパク質を含みうる。免疫化剤を免疫化された哺乳動物において免疫原性が知られているタンパク質に抱合させるのが有用である。このような免疫原タンパク質の例は、これらに限られないが、キーホールリンペットヘモシアニン、血清アルブミン、ウシサイログロブリン及び大豆トリプシンインヒビターが含まれる。使用され得るアジュバントの例には、フロイント完全アジュバント及びMPL-TDMアジュバント(モノホスホリル脂質A、合成トレハロースジコリノミコラート)が含まれる。免疫化プロトコールは、過度の実験することなく当業者により選択されるであろう。
【0038】
2.モノクローナル抗体
あるいは、抗-patched-2抗体はモノクローナル抗体であってもよい。モノクローナル抗体は、Kohler及びMilstein, Nature, 256:495 (1975)に記載されているようなハイブリドーマ法を使用することで調製することができる。ハイブリドーマ法では、マウス、ハムスター又は他の適切な宿主動物を典型的には免疫化剤により免疫化することで、免疫化剤に特異的に結合する抗体を生成するかあるいは生成可能なリンパ球を誘発する。あるいは、リンパ球をインビトロで免疫化することもできる。
免疫化剤は、典型的にはpatched-2ポリペプチド又はその融合タンパク質を含む。一般にヒト由来の細胞が望まれる場合には末梢血リンパ球(「PBL」)が使用され、あるいは非ヒト哺乳動物源が望まれている場合は、脾臓細胞又はリンパ節細胞が使用される。次いで、ポリエチレングリコール等の適当な融合剤を用いてリンパ球を不死化株化細胞と融合させ、ハイブリドーマ細胞を形成する[Goding, Monoclonal Antibodies: Principles and Practice, Academic Press, (1986) pp. 59-103]。不死化株化細胞は、通常は、形質転換した哺乳動物細胞、特に齧歯動物、ウシ、及びヒト由来の骨髄腫細胞である。通常、ラット又はマウスの骨髄腫株化細胞が使用される。ハイブリドーマ細胞は、好ましくは、未融合の不死化細胞の生存又は成長を阻害する一又は複数の物質を含有する適切な培地で培養される。例えば、親細胞が、酵素のヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRT又はHPRT)を欠いていると、ハイブリドーマの培地は、典型的には、ヒポキサチン、アミノプテリン及びチミジンを含み(「HAT培地」)、このれら物質がHGPRT欠乏性細胞の増殖を阻止する。
好ましい不死化株化細胞は、効率的に融合し、選択された抗体生成細胞による安定した高レベルの抗体発現を支援し、HAT培地のような培地に対して感受性のものである。より好ましい不死化株化細胞はマウス骨髄腫株であり、これは例えばカリフォルニア州サンディエゴのSalk Institute Cell Distribution Centerやメリーランド州ロックビルのアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクションより入手可能である。ヒトモノクローナル抗体を生成するためのヒト骨髄腫及びマウス-ヒト異種骨髄腫株化細胞も開示されている[Kozbor, J. Immunol., 133:3001 (1984)、Brodeur等, Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications, Marcel Dekker, Inc., New York, (1987) pp. 51-63]。
【0039】
次いでハイブリドーマ細胞が培養される培養培地を、patched-2に対するモノクローナル抗体の存在について検定する。好ましくは、ハイブリドーマ細胞によって生成されたモノクローナル抗体の結合特異性は免疫沈降又はラジオイムノアッセイ(RIA)や酵素結合免疫測定法(ELISA)等のインビトロ結合検定法によって測定する。このような技術及びアッセイは、当該分野において公知である。モノクローナル抗体の結合親和性は、例えばMunson及びPollard, Anal. Biochem., 107:220 (1980)によるスキャッチャード分析法によって測定することができる。
所望のハイブリドーマ細胞が同定された後、クローンを制限希釈工程によりサブクローニングし、標準的な方法で成長させることができる[Goding, 上掲]。この目的のための適当な培地には、例えば、ダルベッコの改変イーグル培地及びRPMI-1640倍地が含まれる。あるいは、ハイブリドーマ細胞は哺乳動物においてインビボで腹水として成長させることもできる。
サブクローンによって分泌されたモノクローナル抗体は、例えばプロテインA−セファロース、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析又はアフィニティークロマトグラフィー等の従来の免疫グロブリン精製方法によって培養培地又は腹水液から単離又は精製される。
【0040】
また、モノクローナル抗体は、組換えDNA法、例えば米国特許第4,816,567号に記載された方法により作成することができる。本発明のモノクローナル抗体をコードするDNAは、常套的な方法を用いて(例えば、マウス抗体の重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合可能なオリゴヌクレオチドプローブを使用して)、容易に単離し配列決定することができる。本発明のハイブリドーマ細胞はそのようなDNAの好ましい供給源となる。ひとたび単離されたら、DNAは発現ベクター内に配することができ、これが宿主細胞、例えばサルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、あるいは免疫グロブリンタンパク質を生成などしない骨髄腫細胞内に形質移入され、組換え宿主細胞内でのモノクローナル抗体の合成を得ることができる。また、DNAは、例えばヒト重鎖及び軽鎖定常ドメインのコード化配列を相同マウス配列に換えて置換することにより[US. Patent No.4,816,567;Morrison等, 上掲]、又は免疫グロブリンコード配列に非免疫グロブリンポリペプチドのコード化配列の一部又は全部を共有結合することにより修飾することができる。このような非免疫グロブリンポリペプチドは、本発明の抗体の定常ドメインの代わりに置換するか、本発明の抗体の一つの抗原結合部位の可変ドメインの代わりに置換し、キメラ性二価抗体を産生することができる。
抗体は一価抗体であってもよい。一価抗体の調製方法は当該分野においてよく知られてる。例えば、一つの方法は免疫グロブリン軽鎖と修飾重鎖の組換え発現を含む。重鎖は一般的に、重鎖の架橋を防止するようにFc領域の任意の点で切断される。あるいは、関連するシステイン残基を他のアミノ酸残基で置換するか欠失させて架橋を防止する。
一価抗体の調製にはインビトロ法がまた適している。抗体の消化による、その断片、特にFab断片の生成は、当該分野において知られている慣用的技術を使用して達成できる。
【0041】
3.ヒト化抗体
本発明の抗-patched-2抗体は、さらにヒト化抗体又はヒト抗体を含む。非ヒト(例えばマウス)抗体のヒト化形とは、キメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖あるいはその断片(例えばFv、Fab、Fab'、F(ab')2あるいは抗体の他の抗原結合サブ配列)であって、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小配列を含むものである。ヒト化抗体はレシピエントの相補性決定領域(CDR)からの残基が、マウス、ラット又はウサギのような所望の特異性、親和性及び能力を有する非ヒト種(ドナー抗体)のCDRからの残基によって置換されたヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)を含む。幾つかの例では、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク残基は、対応する非ヒト残基によって置換されている。また、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にも、移入されたCDRもしくはフレームワーク配列にも見出されない残基を含んでいてもよい。一般に、ヒト化抗体は、全てあるいはほとんど全てのCDR領域が非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、全てあるいはほとんど全てのFR領域がヒト免疫グロブリンコンセンサス配列のものである、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含む。ヒト化抗体は、最適には免疫グロブリン定常領域(Fc)、典型的にはヒトの免疫グロブリンの定常領域の少なくとも一部を含んでなる[Jones等, Nature, 321:522-525 (1986); Riechmann等, Nature, 332:323-329 (1988); 及びPresta, Curr. Op Struct. Biol., 2:593-596 (1992)]。
【0042】
非ヒト抗体をヒト化する方法はこの分野でよく知られている。一般的に、ヒト化抗体には非ヒト由来の一又は複数のアミノ酸残基が導入される。これら非ヒトアミノ酸残基は、しばしば、典型的には「移入」可変ドメインから得られる「移入」残基と称される。ヒト化は基本的に齧歯動物のCDR又はCDR配列でヒト抗体の該当する配列を置換することによりウィンター(winter)及び共同研究者[Jones等, Nature, 321:522-525 (1986);Riechmann等, Nature, 332:323-327 (1988);Verhoeyen等, Science, 239:1534-1536 (1988)]の方法に従って実施される。従って、このような「ヒト化」抗体は、無傷のヒト可変ドメインより実質的に少ない分が非ヒト種由来の対応する配列で置換されたキメラ抗体(米国特許第4,816,567号)である。実際には、ヒト化抗体は典型的には幾つかのCDR残基及び場合によっては幾つかのFR残基が齧歯類抗体の類似する部位からの残基によって置換されたヒト抗体である。
また、ヒト抗体は、ファージ表示ライブラリ[Hoogenboom及びWinter, J. Mol. Biol., 227:381 (1992);Marks等, J. Mol. Biol., 222:581 (1991)]を含むこの分野で知られた種々の方法を用いて作成することもできる。また、Cole等及びBoerner等の技術も、ヒトモノクローナル抗体の調製に利用することができる[Cole等, Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R. Liss. p.77(1985)及びBoerner等, J. Immunol., 147(1):86-95(1991) ]。
【0043】
4.二重特異性抗体
二重特異性抗体は、少なくとも2つの異なる抗原に対して結合特異性を有するモノクローナル、好ましくはヒトもしくはヒト化抗体である。本発明の場合において、結合特異性の一方は脊椎動物patched-2に対してであり、他方は任意の他の抗原、好ましくは細胞表面タンパク質又はレセプター又はレセプターサブユニットに対してである。
二重特異性抗体を作成する方法は当該技術分野において周知である。伝統的には、二重特異性抗体の組換え生産は、二つの重鎖が異なる特異性を持つ二つの免疫グロブリン重鎖/軽鎖対の同時発現に基づく[Milstein及びCuello, Nature, 305:537-539 (1983)]。免疫グロブリンの重鎖と軽鎖を無作為に取り揃えるため、これらハイブリドーマ(クアドローマ)は10種の異なる抗体分子の潜在的混合物を生成し、その内一種のみが正しい二重特異性構造を有する。正しい分子の精製は、アフィニティークロマトグラフィー工程によって通常達成される。同様の手順が1993年5月13日公開のWO 93/08829、及びTraunecker等, EMBO J.,10:3655-3656 (1991)に開示されている。
所望の結合特異性(抗体−抗原結合部位)を有する抗体可変ドメインを免疫グロブリン定常ドメイン配列に融合できる。融合は、好ましくは少なくともヒンジ部、CH2及びCH3領域の一部を含む免疫グロブリン重鎖定常ドメインとのものである。少なくとも一つの融合には軽鎖結合に必要な部位を含む第一の重鎖定常領域(CH1)が存在することが望ましい。免疫グロブリン重鎖融合をコードするDNA、及び望むのであれば免疫グロブリン軽鎖を、別々の発現ベクターに挿入し、適当な宿主生物に同時形質移入する。二重特異性抗体を作成するための更なる詳細については、例えばSuresh等, Methods in Enzymology, 121:210(1986)を参照されたい。
【0044】
5.ヘテロ抱合体抗体
ヘテロ抱合抗体もまた本発明の範囲に入る。ヘテロ抱合抗体は、2つの共有結合した抗体からなる。このような抗体は、例えば、免疫系細胞を不要な細胞に対してターゲティングさせるため[米国特許第4,676,980号]及びHIV感染の治療のために[WO 91/00360; WO 92/200373; EP 03089]提案されている。この抗体は、架橋剤に関連したものを含む合成タンパク化学における既知の方法を使用して、インビトロで調製することができると考えられる。例えば、ジスルフィド交換反応を使用するか又はチオエーテル結合を形成することにより、免疫毒素を作成することができる。この目的に対して好適な試薬の例には、イミノチオレート及びメチル-4-メルカプトブチリミデート、及び例えば米国特許第4,6767,980号に開示されているものが含まれる。
【0045】
G.抗-patched-2抗体の用途
本発明の抗-patched-2抗体は様々な有用性を有している。例えば、抗-patched-2抗体は、patched-2の診断アッセイ、例えばその特定細胞、組織、又は血清での発現の検出に用いられる。競合的結合アッセイ、直接又は間接サンドウィッチアッセイ及び不均一又は均一相で行われる免疫沈降アッセイ[Zola, Monoclonal Antibodies: A Manual of Techniques, CRC Press, Inc. (1987) pp. 147-158]等のこの分野で知られた種々の診断アッセイ技術が使用される。診断アッセイで用いられる抗体は、検出可能な部位で標識される。検出可能な部位は、直接又は間接に検出可能なシグナルを発生しなければならない。例えば、検出可能な部位は、3H、14C、32P、35S又は125I等の放射性同位体、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン又はルシフェリン等の蛍光又は化学発光化合物、あるいはアルカリホスファターゼ、ベータ-ガラクトシダーゼ又はセイヨウワサビペルオキシダーゼ等の酵素であってよい。Hunter等 Nature, 144:945 (1962);David等, Biochemistry, 13: 1014 (1974);Pain等, J. Immunol. Meth., 40:219 (1981) ;及びNygren, J. Histochem. and Cytochem., 30:407 (1982)に記載された方法を含む、抗体を検出可能な部位に抱合するためにこの分野で知られた任意の方法が用いられる。
また、抗-patched-2抗体は、組換え細胞培養又は天然供給源からのpatched-2のアフィニティー精製にも有用である。この方法においては、patched-2に対する抗体を、当該分野でよく知られている方法を使用して、セファデックス樹脂や濾紙のような適当な支持体に固定化する。次に、固定化された抗体を、精製するpatched-2を含む試料と接触させた後、固定された抗体に結合したpatched-2以外の試料中の物質を実質的に全て除去する適当な溶媒で支持体を洗浄する。最後に、patched-2を抗体から離脱させる他の適当な溶媒で支持体を洗浄する。
【0046】
基底細胞癌(BCC)は最もありふれたヒトの癌である。Hhシグナル伝達経路は、全てのBCCで活性化されることが見出された。patched機能の喪失は、調節されないSmo活性を導き、全てのBCCの約半分の原因となると考えられている。patchedはHh経路自体の標的であり、patchedmRNAレベルの増加が、BCC[Gailani等, Nature Genet. 14: 78-81 (1996)]並びにBCCの動物モデルにおいて検出されている。Oro等, Science 276: 817-821 (1997); Xie等, Nature 391: 90-92 (1998)。BCCで生じるようなShシグナル伝達の異常な活性化を試験してpatched-2発現が増加したか否かを確認した。図9に示すように、Smo-M2(配列番号:16)トランスジェニックマウスにおけるPtch(配列番号:4)及びPtch-2(配列番号:2)についてのインサイツハイブリッド形成(Xie等, 上掲)は、Ptchより低いものの、腫瘍細胞においても高かった。このことは、Ptch-2(配列番号:2)に対する治療的抗体がBCCの治療に有用であることを示している。
抗-patched-2抗体は、前のセクション「E.patched-2の用途」で明示したものと同様の有用性を有する。抗-patched-2抗体がpatched-2レセプターに結合し、Hhシグナル伝達を阻害するか(アンタゴニスト)、patched-2のSmo(配列番号:17)との複合体形成を阻害して、それによりSmo(配列番号:17)のHhシグナル伝達に対する正常な蘇我以降かを阻害するか(アゴニスト)に応じて、抗体はpatched-2について既に明示したものに対応する有用性を具備する。
【0047】
H.patched-2アンタゴニスト
本発明の融合アンタゴニスト及びアゴニスト化合物を生成させるのに幾つかの方法を好適に用いることができる。アンタゴニスト分子を細胞内部に標的化でき、それが野生型patched-2を正常な作用から阻害又は防止する任意の方法が好ましい。例えば、変異体patched-2レセプターを含む競合的阻害剤は、野生型patched-2がDhh及びHhシグナル伝達に必要な他のタンパク質と正しく結合することを防止する。膜貫通輸送に適した電荷、サイズ及び疎水性等の、そのようなアンタゴニスト又はアゴニスト分子のさらなる特性は、当業者によって容易に決定可能である。
patched-2の模倣物又は他の哺乳動物相同体が同定され評価される場合、細胞を試験化合物に暴露し、ヒトpatched-2のみに暴露したポジティブ対照、化合物にも天然リガンドにも暴露していないネガティブ対照と比較する。patched-2シグナル変調のアンタゴニスト又はアゴニストを同定し評価する場合は、細胞を天然リガンドの存在下で本発明の化合物に暴露し、試験化合物に暴露していない対照と比較する。
本発明のアンタゴニスト/アゴニスト化合物のHhシグナル伝達の阻害/促進活性を評価する一次スクリーニングとして検出アッセイが用いられる。このアッセイは、濃度範囲、例えば100mMから1pMの範囲で試験し、リン酸化又はシグナル伝達が対照に比較して50%減少又は増加する量の濃度(IC50)を計算することにより、化合物の相対的能力を評価するのに使用してもよい。
アッセイは、patched-2基質のHhシグナル伝達に影響する化合物の同定のために実施してもよい。特に、アッセイはpatched-2のリン酸化活性を増大させる化合物の同定のために実施でき、あるいはアッセイはpatched-2基質のHhシグナル伝達を低下させる化合物を同定するために実施できる。これらのアッセイは、全細胞自体又は細胞抽出物のいずれにも実施することができる。アッセイは、タンパク質−タンパク質結合アッセイ、生化学的スクリーニングアッセイ、免疫アッセイ、細胞ベースのアッセイ等を含む種々の様式で実施できる。このようなアッセイ様式は、この分野で公知である。
本発明のスクリーニングアッセイは、化学的ライブラリの高スループットスクリーニングに適用でき、特に小分子薬剤候補の同定に適している。
【0048】
(1)アンタゴニスト及びアゴニスト分子
patched-2シグナル伝達のアンタゴニスト及び/又はアゴニストをスクリーニングするために、アッセイ混合物を、候補となる製薬剤の存在を別にすれば、patched-2が基準活性でヘッジホッグシグナル伝達を誘発する条件下でインキュベートした。混合物の成分は、必要なヘッジホッグ活性を与える任意の順序で添加できる。インキュベーションは、最適な結合を促進する任意の温度、典型的には約4℃から40℃、より通常には約15℃から40℃で実施する。インキュベーション時間も同様に最適結合のために選択されるが、迅速で高スループットのスクリーニングを促進するために最小化され、典型的には約0.1から10時間、好ましくは5時間未満、より好ましくは2時間未満である。インキュベーションの後、候補製薬剤のpatched-2シグナル伝達に対する効果を任意の都合の良い方法で決定する。細胞無しの結合型アッセイでは、結合及び非結合成分を分離するための分離工程がしばしば用いられる。分離は、例えば、沈殿(例えばTCA沈殿、免疫沈降など)、固定化(例えば、固体基体上)、それに続く洗浄によってなされる。結合したタンパク質は、それに結合した検出可能な標識により、例えば放射活性放出、光学又は電子密度を測定することにより、あるいは、例えば抗体抱合を用いた間接的な検出により都合良く検出される。
例えば、適切なpatched-2アンタゴニスト及び/又はアゴニストのスクリーニング方法は、Dhh及び他のヘッジホッグリガンドの適用を含みうる。このようなスクリーニングアッセイは、patched-2発現組織における候補アンタゴニスト及び/又はアゴニストの存在下又は不存在下でのインサイツハイブリッド形成、並びにpatched-2変調細胞成長の確認又は不存在を比較することができる。典型的には、これらの方法は、固定化patched-2をそれに結合すると予測される分子に暴露すること、レポーター作成物のリガンド結合下流の活性化レベルを決定すること、及び/又は分子がpatched-2を活性化(又は活性化の阻止)をするか否かを評価することを含む。このようなpatched-2結合リガンドを同定するために、patched-2を細胞表面で発現させ、合成候補化合物又は(例えば、血清又は細胞などの内因性供給源からの)天然発生化合物ライブラリのスクリーニングに用いることができる。
【0049】
patched-2及びその結合タンパク質のタンパク質−タンパク質相互作用に影響する好適な分子は、後者の断片又は小分子、例えばリガンド−レセプター相互作用を阻害するペプチド模倣物を含む。そのような小分子は、通常10K分子量未満であり、細胞に透過しやすいので治療薬として好適であり、種々の細胞機構による分解を受けにくく、タンパク質のように免疫反応を誘発しやすくない。小分子は、これらに限られないが、合成有機又は無機化合物を含む。多くの製薬会社が、そのような分子の広範なライブラリを有しており、それは本発明のアッセイを用いて都合良くスクリーニングできる。非限定的な例は、タンパク質、ペプチド、糖タンパク質、グリコペプチド、糖脂質、多糖類、オリゴ糖、核酸、生物有機分子、ペプチド模倣物、薬理学的試薬及びそれらの代謝物、転写及び翻訳制御配列等を含む。
patched-2に結合する分子の同定に好ましい技術は、アッセイ用プレートのウェルなどの固相に結合したキメラ基質(例えば、エピトープタグpatched-2又はpatched-2イムノアドヘシン)を利用する。場合によっては標識された(例えば放射性標識された)候補分子の固定化レセプターへの結合が測定できる。あるいは、種々のHh経路、特にDhh(配列番号:13)に対する競合が測定できる。アンタゴニスト及び/又はアゴニストのスクリーニングにおいて、patched-2はpatched-2基質、次いで推定アンタゴニスト及び/又はアゴニストに暴露され、あるいはpatched-2結合タンパク質及びアンタゴニスト及び/又はアゴニストが同時に添加され、アンタゴニスト及び/又はアゴニストのpatched-2活性化を阻止する能力が評価される。
【0050】
(2)検出アッセイ
patched-2ポリペプチドは、patched-2レセプター/リガンドヘッジホッグシグナル伝達を変調させる治療的活性薬のためのリード化合物を同定するアッセイにおいて有用である。特に、リード化合物は、patched-2シグナル伝達複合体の形成を防止する、あるいはpatched-2変調ヘッジホッグシグナル伝達を防止又は減弱する(例えば、patched-2に結合する)。
この分野で知られた種々の方法が、本発明のpatched-2タンパク質の活性阻害の同定、評価又は検定に使用できる。patched-2はDhh(配列番号:13)のレセプターであるが、Shh(配列番号:14)及びIhh(配列番号:29)にも結合すると考えられるので、リガンド/レセプターモジュレータの同定で用いる公知の技術を本発明に用いてもよい。一般的に、そのようなアッセイは、培地中の標的細胞を化合物に暴露し、(a)細胞溶解物を生化学的に分析して結合のレベル及び/又は同一性を評価する;又は(b)試験基質に暴露していない対照細胞に比較した処理細胞におけるフェノタイプ又は機能変化を評点化することを含む。このようなスクリーニングアッセイは、米国特許第5,602,171号、米国特許第5,710,173号、WO 96/35124及びWO 96/40276に記載されている。
【0051】
(a)生化学的検出技術
生化学的分析は種々の技術によって評価できる。本発明で使用できる1つの典型的なアッセイ混合物は、patched-2及び通常はpatched-2に付随するタンパク質(例えば、Dhh(配列番号:13))を、通常は単離された、部分的に純粋又は純粋な形態で含有する。これらの成分の一方又は両方は、例えばアッセイ条件下等でタンパク質−タンパク質結合を提供又は促進する他のペプチド又はポリペプチドに融合してよい。さらに、成分の一方は、通常検出可能な標識を含むかそれに結合している。標識は、放射活性、蛍光、光学又は電子密度等の測定による直接検出、あるいはエピトープタグ、酵素等の間接的検出を提供する。アッセイ混合物は候補製薬剤をさらに含み、場合によっては、結合を促進し、安定性を向上させ、非特異的又はバックグラウンドの相互作用を減少させ、又は他にアッセイの効率又は感度を向上させる種々の他の成分、例えば塩、バッファー、担体タンパク質、例えばアルブミン、洗浄剤、プロテアーゼ阻害剤、ヌクレアーゼ阻害剤、抗微生物剤等を含む。
以下の検出方法は、シグナル伝達基質分子及びpatched-2を含む細胞溶解物が本発明の化合物と混合される細胞無しの系で使用できる。化合物の活性を評価するために、反応混合物をSDS-PAGEによって分析してもよく、あるいは、それを固体支持体に結合した基質特異的固着抗体に添加し、分離又は捕捉した基質に上記の検出方法を実施してpatched-2結合リガンドの存在又は不存在を評価してもよい。結果は、化合物を添加しない反応混合物で得られた結果と比較する。細胞無しの系は、天然リガンド又はその同定の知識を必要としない。例えば、Posner等(米国特許第5,155,031号)は、パーバナデート(pervanadate)のPTP活性を阻害する能力を示すのに、基質としてのインシュリンレセプター及び標的細胞としてのラット脂肪細胞の使用を記載している。他の例Burke等, Biochem. Biophys. Res. Comm. 204: 129-134 (1994)は、ホスホチロシル模倣物の阻害活性の評価における自己リン酸化インシュリンレセプター及び組換えPTP1Bの使用を記載している。
【0052】
(i)全細胞検出
共通の技術は、細胞をpatched-2及び放射性標識リガンドとともにインキュベートし、細胞を溶解し、溶解物からSDS-ポリアクリルアミドゲル(SDS-PAGE)技術を用いて、一又は二次元のいすれかで細胞性タンパク質成分を分離し、X-線フィルムに暴露して標識タンパク質の存在を検出することを含む。検出は、放射性標識を用いることなくなすこともできる。そのような技術において、タンパク質成分(例えば、分離されたSDS-PAGE)はニトロセルロース膜に移され、そこでpatched-2−リガンド複合体の存在が抗-リガンド抗体を用いて検出される。
あるいは、抗-patched-2リガンド抗体は、セイヨウワサビペルオキシダーゼ等の酵素に抱合させ、次いで酵素用の比色基質を添加することにより検出することもできる。さらなる代替法は、抗-patched-2リガンドを認識する二次抗体と反応させることによる抗-patched-2リガンドの検出を含み、この二次抗体は、既に述べたような放射活性部分又は酵素で標識されている。これらの例及び類似の技術は、Hansen等, Electrophoresis 14: 112-126 (1993); Campbell等, J. Biol. Chem. 268: 7427-7434 (1993); Donato等, Cell Growth Diff. 3: 258-268 (1992); Katagiri等, J. Immunol. 150: 585-593 (1993)に記載されている。さらに、抗-patched-2リガンドは、それを放射活性基質で標識し、次いで標識ニトロセルロースをスキャンニングして放射活性又は検出するか、X-線フィルムに暴露することにより検出できる。
上記のものに好適なさらなる検出技術を開発してもよい。特に高スループットスクリーニングに関連する使用のために、それらの方法は、良好な感度及び特異性、拡張された線形範囲、低いバックグラウンドシグナル、最小のゆらぎ、他の試薬との相容性、及び自動化取り扱い系との適合性が予測される。
本発明の処理のインビボ有効性は、齧歯類モデルにおいて化学的に誘発した腫瘍に対して実験することができる。インビトロ細胞培地で成長させた腫瘍細胞系を実験用齧歯類、例えばマウスに、例えば皮下経路による注射によって導入される。実験動物における腫瘍の化学的誘発の技術は当該分野で良く知られている。
【0053】
(ii)キナーゼアッセイ
patched-2はHhシグナル伝達のネガティブレギュレータであるから、Hhによって活性化されたときにSmoに対する正常な阻害効果を放棄し、patched-2のSmoへの結合の阻害は、Hhシグナル伝達に伴う種々のキナーゼ基質の活性化によって測定できる。patched-2アンタゴニスト/アゴニストについての本発明のスクリーニング方法がエキソビボアッセイとして行われる場合、標的キナーゼ(例えばfused)は実質的に精製されたポリペプチドでありうる。キナーゼ基質(例えば、MBP、Gli)は実質的に精製された基質であり、アッセイにおいて、キナーゼに触媒される実質的に精製されたリン酸塩供給源との反応でリン酸化される。リン酸化の程度は、反応でリン酸化された基質の量を測定することにより決定される。種々の可能な基質を使用してよく、キナーゼ自身も含まれるが、その場合はアッセイで測定されるリン酸化反応は自己リン酸化である。外因性基質を用いることもでき、ミエリン塩基性タンパク質(MBP)等の標準的なタンパク質基質;酵母菌タンパク質基質;合成タンパク質基質、及びポリマー基質が含まれる。これらの中で、MBP及び他の標準的タンパク質基質が好ましいとされる。しかしながら他の基質も同定され、それらは、キナーゼに対する親和性、反応速度の最小摂動、単一又は相同反応部位の保持、取扱及び反応後回収の容易さ、強いシグナル生成能力、及び試験化合物に対する耐性及び不活性によって優れている。
【0054】
本発明のエキソビボアッセイでリン酸化された基質量の測定は、イムノアッセイ、ラジオアッセイ又は他の周知の方法で行うことができる。イムノアッセイ測定において、反応中に形成されるリン酸化部位に特異的な抗体(ヤギ又はマウス抗-ホスホセリン/スレオニン抗体)を使用してよい。周知のELISA技術を用いて、ホスホセリン/スレオニン抗体複合体は、測定可能なシグナルを発生することのできる標識(例えば、蛍光又は放射活性標識)に結合した更なる抗体により、それ自身検出される。さらに、ミクロタイタープレートにおけるELISA型アッセイを精製された基質の試験に用いてもよい。Peraldi等, J. Biochem. 285: 71-78 (1992); Schaag等, Anal. Biochem. 211: 233-239 (1993); Cleavland, Anal. Biochem. 190: 259-253 (1990); Farley, Anal. Biochem. 203: 151-157 (1992)及びLozaro, Anal. Biochem. 192: 257-261 (1991)。
例えば、検出計画では、キナーゼ反応中の基質消費を測定することができる。最初に、リン酸塩供給源を32P又は33P等の同位体で放射性標識し、反応中に基質に取り込まれた放射性標識の量を決定することによりリン酸化された基質の量を測定してもよい。検出は、(a)フィルター又はミクロタイターウェル表面に吸着させた後、ベータカウンターを用いる市販の閃光体含有プレート及びビーズ、又は(b)シンチレーション近接アッセイビーズ又は閃光体プレートに結合させた後の光度測定手段により達成される。Weernink及びKijken, J. Biochem. Biophs. Methods 31: 49, 1996; Brauwalder等, Anal. Biochem. 234: 23 (1996); Kentrup等, J. Biol. Chem. 271: 3488 (1996)及びRusken等, Meth. Enzymol. 200: 98 (1991)。
【0055】
好ましくは、基質を固体支持体表面に非特異的又は好ましくは特異的に結合させる。このような結合は、シグナル検出に先立ってリン酸化基質を非リン酸化標識リン酸塩供給源(アデノシン三リン酸など)から分離するのを可能にする。一実施態様では、基質は反応の前に、Nunc(商品名)高タンパク質結合プレート(Hanke等, J. Biol. Chem. 271: 695 (1996))又はWalac ScintiStrip(商品名)プレート(Brauwalder等, Anal. Biochem. 234: 23 (1996))の使用を介して物理的に固定化される。また、基質は、例えばP81ホスホセルロース(塩基性ペプチド用)、PEI/酸性モリブデン塩樹脂又はDEAE上への捕捉、又はWhatman(商品名)3MMペーパーへのTCA析出により反応後に固定化してもよい、Tiganis等, Arch. Biochem. biophys. 325: 289 (1996); Morawetz等, Mol. Gen. Genet. 250: 17 (1996); Budde等, Int. J. Pharmacognosy 33: 27 (1995)及びCasnellie, meth. Enz. 200: 115 (1991)。さらに他の可能性は、予め支持体に結合させたグルタチオン及びストレプトアビジン(各々GST及びビオチンの場合)等の結合パートナーで抱合することにより、あるいは同様に支持体に結合させたタグに特異的な抗体を介して支持体表面に基質を結合させる事である。
上記のものに適したさらなる検出方法を開発してもよい。特に、高スループットスクリーニングに関連した用途では、そのような方法は、良好な選択性及び特異性、延長された直線範囲、低いバックグラウンドシグナル、最小の摂動、他の試薬との相容性、及び自動取扱システムとの相容性を示すことが予測される。
本発明の治療のインビボ有効性は、種々の齧歯類モデルにおいて化学的に誘発された腫瘍に対して実験できる。腫瘍細胞系はインビトロ細胞培地で成長させ、実験用齧歯類、例えばマウスに、例えば皮下経路での注射によって導入される。実験動物における腫瘍の化学的誘発はの技術は、この分野で良く知られている。
【0056】
(b)生物学的検出技術
本発明のアンタゴニスト/アゴニスト化合物の、それ自身がヘッジホッグシグナル伝達を変調するpatched-2の活性を変調させる能力は、リガンド結合に伴う形態又は機能変化についての評点化によって測定される。この分野で知られている任意の定性的及び定量的技術は、patched-2の制御下で起こる細胞プロセスの観察及び測定のために適用できる。また、本発明の化合物の活性は、ヘッジホッグシグナル伝達の機能不全によって生ずる又はそれに関連する疾患の実験的モデルを用いて動物で評価することもできる。例えば、マウスにおける無効なDhhヘッジホッグシグナル伝達は、生存できるが繁殖できないマウスを導く。さらに、正しいShhシグナル伝達は、脊索及び底板、神経管、末端肢構造、脊柱及び肋骨におけるマウス胚成長に重要である。また、不正なShhシグナル伝達は単眼症に関連している。これらのフェノタイプ特性は、patched-2アンタゴニスト及び/又はアゴニストについてのスクリーニングアッセイにおいて評価され定量化される。ヘッジホッグの過剰発現に伴う疾患状態は、基底細胞癌に関連するが、不活性なShhシグナル伝達は異常な神経発達を導く。
これらの細胞培養アッセイ及び動物実験で得られたデータは、ヒトで使用するための用量範囲の処方に用いられる。本発明の化合物の用量は、毒性を殆ど又は全く持たない循環濃度の範囲内にある。用量は、採用する投与形態及び投与経路に応じてこの範囲内で変化する。
【0057】
(2)アンチセンスオリゴヌクレオチド
アンタゴニストの他の好ましいクラスは遺伝子治療技術の使用を含み、アンチセンスオリゴヌクレオチドの投与を含む。適用可能な遺伝子治療技術は、治療的に有効なDNA又はmRNAの一回又は複数回投与を含む。アンチセンスRNA及びDNAは、インビボでの或る種の遺伝子の発現を阻止するための治療薬として使用できる。参照用の短いアンチセンスオリゴヌクレオチドを細胞に移入でき、それらは細胞膜による制限された取り込みによって生ずる低い細胞内濃度にも関わらず阻害剤として作用する、Zamecnik等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 83: 4143-4146 (1986)。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、例えば負に荷電したホスホジエステル基を不荷電基で置換することにより、それらの取り込みを促進させるように修飾することができる。
生存細胞に核酸を導入するために知られた種々の技術がある。これらの技術は、対象とする宿主の細胞において、インビトロ、エキソビボ、又はインビボで培養された細胞に移行されるかによって変化する。インビトロで哺乳動物細胞に核酸を移行するのに適した技術は、リポソーム、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、細胞融合、DEAD-デキストラン、リン酸カルシウム沈殿法などの使用を含む。現在好ましいインビボ遺伝子移行技術は、ウイルス(典型的にはレトロウイルス)ベクターでの形質移入及びウイルスコートタンパク質−リポソーム媒介形質移入を含む、Dzau等, Trends Biotech. 11: 205-210 (1993)。幾つかの状況では、核酸供給源を標的細胞をターゲティングする試薬と共に提供するのが好ましく、例えば、エンドサイトーシスを伴う細胞表面膜タンパク質に特異的な抗体をターゲティング及び/又は取り込みの促進のために用いてもよく、例えば、特定の細胞型向性のカプシドタンパク質又はその断片、サイクリングで内部移行を受けるタンパク質の抗体、及び細胞内局在化をターゲティングし細胞内半減期を向上させるタンパク質である。レセプター媒介エンドサイトーシスの技術は、例えば、Wu等, J. Biol. Chem. 262: 4429-2232 (1987); Wagner等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87: 3410-3414 (1990)に記載されている。周知の遺伝子作成及び遺伝子治療プロトコールの概説については、Anderson等, Science 256: 808-813 (1992)を参照のこと。
一実施態様では、patched-2発現は、patched-2タンパク質の発現を低下させるのに有効な量のpatched-2アンチセンスRNA又はDNAとともにpatched-2発現細胞を提供することにより低下させうる。
【0058】
I.診断的用途
ここに記載した本発明の化合物(例えば、patched-2、patched-2及び抗-patched-2抗体)の他の用途は、patched-2又はヘッジホッグシグナル伝達により疾患が幾分進行したか否かの診断を助けることである。例えば、基底細胞癌細胞は活性なヘッジホッグシグナル伝達に関連し、精母細胞形成はDhhシグナル伝達に関連し、patched及びpatched-2抑制の欠損は精巣癌に関連する。
patched-2変調ヘッジホッグシグナル伝達によって特定の疾患が導かれるか否かを決定する診断アッセイは以下の工程を用いて実施される:(1)試験細胞又は組織を培養する;(2)patched-2とSmo(配列番号:17)の結合を防止する化合物を投与し、それによりHhシグナル伝達経路を活性化する;及び(3)ヘッジホッグシグナル伝達を測定する。工程は、この開示に照らして標準的な技術を用いて実施できる。例えば、細胞又は組織の単離及び培養又はインビボに標準的な技術を使用できる。
選択性の程度が変化した化合物類は、patched-2の役割を診断するのに有用である。例えば、他の形態のキナーゼに加えてpatched-2を阻害する化合物は、幾つかのシグナル伝達リガンドが疾患を導くか否かを決定する最初の試験化合物として使用できる。選択的化合物は、次いで、疾患の誘導における他のリガンドの可能な役割をさらに排除するのに使用できる。試験化合物は、細胞毒性効果の発揮よりも、リガンド−patched-2結合活性の阻害において有力であるべきである(例えば、IC50/LD50が1より大きい)。IC50及びLD50は、MTTアッセイ等の標準的技術、又はLDH放出量の測定により測定できる。化合物のIC50/LD50の度合いは、診断アッセイの評価を考慮すべきである。一般的に、IC50/LD50の比率が大きくなると情報がより相対的になる。適切な対照は、化合物の起こりうる毒性効果を考慮し、例えば、増殖疾患を伴わない細胞(例えば対照細胞)の試験化合物での処理は、診断アッセイの一部として用いることができる。本発明の診断方法は、patched-2のヘッジホッグシグナル伝達に対する効果を変調させる試薬についてのスクリーニングを含む。例示的な検出技術は、放射性標識及び免疫沈降を含む(米国特許第5,385,915号)。
【0059】
J.製薬組成物及び用量
本発明の組成物の治療用製剤は、所定の純度を持つpatched-2分子、アゴニスト及び/又はアンタゴニストを、この分野で典型的に用いられる任意の「製薬的に許容される」又は「生理学的に許容される担体、賦形剤又は安定化剤(以下、全てを「賦形剤」と称する)と混合することにより凍結乾燥製剤又は水溶液として調製され保存される。例えば、緩衝剤、安定化剤、防腐剤、等張化剤、非イオン性洗浄剤、酸化防止剤及び他の添加剤である(Remington's Pharmaceutical Sciences, 16th ed., Osol, A.編, (1980)参照)。このような添加剤は、用いられる用量及び濃度で受容者に非毒性でなければならない。
緩衝剤は、pHを生理学的条件近傍に維持するのを助ける。それらは、約2mMから約50mMの範囲の濃度で存在する。本発明での使用に適した緩衝剤は、有機及び無機酸の両方及びその塩、例えば、クエン酸バッファー(例えば、クエン酸一ナトリウム−クエン酸二ナトリウム混合物、クエン酸−クエン酸三ナトリウム混合物、クエン酸−クエン酸一ナトリウム混合物など)、コハク酸バッファー(例えば、コハク酸−コハク酸一ナトリウム混合物、コハク酸−水酸化ナトリウム混合物、コハク酸−コハク酸二ナトリウム混合物など)、酒石酸バッファー(例えば、酒石酸−酒石酸ナトリウム混合物、酒石酸−酒石酸カリウム混合物、酒石酸−水酸化ナトリウム混合物など)、フマル酸バッファー(例えば、フマル酸−フマル酸一ナトリウムなど)、フマル酸バッファー(例えば、フマル酸−フマル酸一ナトリウム混合物、フマル酸−フマル酸二ナトリウム混合物、フマル酸一ナトリウム−フマル酸二ナトリウム混合物など)、グルコン酸バッファー(例えば、グルコン酸−グルコン酸一ナトリウム混合物、グルコン酸−水酸化ナトリウム混合物、グルコン酸−グルコン酸カリウム混合物など)、シュウ酸バッファー(例えば、シュウ酸−シュウ酸ナトリウム混合物、シュウ酸−水酸化ナトリウム混合物、シュウ酸−シュウ酸カリウム混合物など)、乳酸バッファー(例えば、乳酸−乳酸ナトリウム混合物、乳酸−水酸化ナトリウム混合物、乳酸−乳酸カリウム混合物など)及び酢酸バッファー(例えば、酢酸−酢酸ナトリウム混合物、酢酸−水酸化ナトリウム混合物など)を含む。さらに、リン酸バッファー、ヒスチジンバッファー、及びトリス等のトリメチルアミン塩を挙げることができる。
【0060】
防腐剤は、微生物成長を抑制するために添加され、0.2%−1%(w/v)の範囲の量で添加される。本発明での使用に適した防腐剤は、フェノール、ベンジルアルコール、メタ-クレゾール、メチルパラベン、プロピルパラベン、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、ハロゲン化ベンザルコニウム(benzalconium)(例えば、塩化物、臭化物、ヨウ化物)、ヘキサメトニウム、メチル又はプロピルパラベン等のアルキルパラベン、カテコール、レゾルシノール、シクロヘキサノール、及び3-ペンタノールを含む。
等張化剤は「安定化剤」としても知られ、本発明の液体組成物の等張性を確保するために存在し、多価糖アルコール、好ましくは三価又はそれ以上の糖アルコール、例えばグリセリン、エリスリトール、アラビトール、キシリトール、ソルビトール及びマンニトールを含む。多価アルコールは、他の成分との相対量を考慮して、0.1%から25重量%、好ましくは1%から5%の間の量で存在する。
安定化剤は賦形剤の広い範疇を意味し、充填剤から、治療薬を可溶化する、又は変性及び容器壁面への付着の防止を助ける添加剤までの範囲とすることができる。典型的な安定化剤は、多価糖アルコール(上で列挙した);アミノ酸、例えばアルギニン、リジン、グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アラニン、オルニチン、L-ロイシン、2-フェニルアラニン、グルタミン酸、スレオニン等、有機糖又は糖アルコール、例えばラクトース、トレハロース、スタキオース(stachyose)、マンニトール、ソルビトール、キシリトール、リボチトール、ミオイノシトール、ガラクチトール、グリセロール等、イノシトール等のシクリトールを含む;ポリエチレングリコール;アミノ酸ポリマー;イオウ含有還元剤、例えば尿素、グルタチオン、チオシト(thiocutic)酸、チオグリコール酸、チオグリセロール、α-モノチオグリセロール及びチオ硫酸ナトリウム;低分子量ポリペプチド(<約10残基);ヒト血清アルブミン、ウシ血清アルブミン、ゼラチン、又は免疫グロブリン等のタンパク質;ポリビニルピロリドン等の親水性ポリマー;キシロース、マンノース、フルクトース、グルコース等の単糖類;ラクトース、マルトース、スクロース等の二糖類及びラフィノース等の三糖類;デキストラン等の多糖類とすることができる。安定化剤は、活性タンパク質重量部当たり0.1から10,000重量の範囲で存在することができる。
【0061】
非イオン性界面活性剤又は洗浄剤(「湿潤剤」としても知られる)は、治療薬の可溶化を助けるため、並びに撹拌い誘発される凝集に抗して治療用タンパク質を保護するために存在し、製剤をタンパク質変性することなく応力のかかった剪断表面に暴露するのを可能にする。好ましい非イオン性界面活性剤は、ポリソルベート(20、80等)、ポリオキサマー(184、188等)、Pluronic(登録商標)ポリペプチドオール、ポリペプチドオキシエチレンソルビタンモノエーテル(Tween(登録商標)-20、Tween(登録商標)-80等)を含む。非イオン性界面活性剤は、約0.05mg/mlから約1.0mg/ml、好ましくは約0.07mg/mlから約0.2mg/mlの範囲で存在する。
さらなる種々の賦形剤は、充填剤(例えばデンプン)、キレート化剤(例えばEDTA)、酸化防止剤(例えばアスコルビン酸、眼チオノン、ビタミンE)及び共溶媒を含む。
ここで製剤は、治療すべき特定の症状の必要に応じて一以上の化合物を含有してもよく、好ましくは互いに悪影響を及ぼさない相補的活性を持つものである。例えば、免疫抑制剤をさらに提供するのが望ましい場合もある。このような分子は、意図する目的に有効な量で組み合わせて好適に存在させる。
また活性成分は、コロイド状ドラッグデリバリーシステム(例えば、リポソーム、アルブミン微小球、マイクロエマルション、ナノ-粒子及びナノカプセル)又はマイクロエマルションにおいて、マイクロカプセルに包括させてもよく、例えば、コアセルベーション技術により又は界面重合により調製された、例えば、各々ヒドロキシメチルセルロース又はゼラチンマイクロカプセル及びポリペプチド-(メチルメタクリレート)マイクロカプセルである。これらの技術はRemington's Pharmaceutical Sciences, 16th edition, A. Csal, 編 (1980)に記載されている。
【0062】
インビボ投与に用いられる製剤は無菌でなければならない。これは、例えば滅菌濾過膜を通した濾過によって容易に達成される。
持続放出製剤を調製することもできる。持続放出製剤の好適な例は、本発明の化合物を含有する固体疎水性ポリマーの半透性マトリクスを含み、当該マトリクスは成形物、例えばフィルム又はマイクロカプセルの形態である。持続放出マトリクスの例は、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリ(2-ヒドロキシエチル-メタクリレート)、又はポリ(ビニルアルコール)、ポリアクチド(米国特許第3,773,919号))、L-グルタミン酸及びエチル-L-グルタメートのコポリマー、非分解性エチレン−酢酸ビニル、分解性乳酸−グリコール酸コポリマー、例えばLupron Depot(商品名)(乳酸−グリコール酸コポリマー及び酢酸ロイプロリドからなる注射可能な微小球)、及びポリ-D-(−)-3-ヒドロキシブチル酸を含む。エチレン−酢酸ビニル及び乳酸−グリコール酸等のポリマーは分子を100日に渡って放出することを可能にするが、或る種のヒドロゲルはより短時間しかタンパク質を放出しない。本発明のカプセル化化合物が体内に長時間滞在すると、それらは37℃の水分に暴露される結果変性又は凝集して生物学的活性の喪失及び免疫原性の変化を起こすこともある。含まれるメカニズムによって安定化を工夫して合理的な方法とすることができる。例えば、凝集メカニズムがチオ−ジスルフィド交換を通した細胞間S-S結合形成であることが見出された場合、スルフヒドリル残基の修飾、酸性溶液からの凍結乾燥、適当な添加剤を用いた水分の制御、及び特定のポリマーマトリクス組成の開発によって安定化が達成される。
特定の疾患又は状態の治療において有効な治療用ポリペプチド、抗体又はその断片の量は疾患又は状態の性質に依存し、標準的な臨床技術により決定できる。可能ならば、最初にインビトロで、次いでヒトにおける試験の前に有用な動物モデル系で本発明の製薬組成物についての用量−応答曲線を決定する。しかしながら、この分野の常識に基づいて、Dhh及びHhシグナル伝達の変調に有効な製薬組成物は、約10から1000ng/mlの間、好ましくは100から800ng/mlの間、最も好ましくは200ng/mlから600ng/mlのPtch-2(配列番号:2)という局所的patched-2タンパク質濃度を与えてもよい。
【0063】
好ましい実施態様では、治療用ポリペプチド、抗体又はその断片の水溶液が皮下注射によって投与される。各用量は体重1kg当たりに約0.5μgから約50μg、より好ましくは体重1kg当たりに約3μgから約30μgの範囲である。
皮下投与の投与スケジュールは、疾患の型、疾患の重篤さ、及び治療薬に対する患者の感受性に応じて、週に1回から毎日変えられる。
patched-2ポリペプチドは、図1に示したようなアミノ酸配列又はそのサブ配列、それから誘導される活性アミノ酸配列、又は機能的等価な配列を含んでよく、このサブ配列はpatched-2ポリペプチドの機能的部分を含むと考える。
患者が、発熱、風邪又は流感様症状、疲労などといった望ましくない副作用を現した場合、より低用量でより頻繁な間隔で投与するのが望ましいであろう。このような副作用を緩和するために、一又は複数の付加的薬剤、例えば解熱剤、抗炎症剤又は鎮痛剤をpatched-2と組み合わせて投与してもよい。
【0064】
以下の実施例は例示する目的にのみ提供されるものであって、本発明の範囲を決して限定することを意図するものではない。
本明細書で引用した全ての特許及び文献の全体を、出典明示によりここに取り込む。
(実施例)
実施例で言及されている全ての他の市販試薬は、特に示さない限りは製造者の使用説明に従い使用した。ATCC登録番号により以下の実施例及び明細書全体を通して特定されている細胞の供給源はアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション、ロックビル、メリーランドである。
【0065】
実施例1
序文
細胞表面において、Hh機能はPtch及びSmo(配列番号:17)を含む多成分レセプター複合体によって媒介されることがわかり、2つの多重膜貫通タンパク質がショウジョウバエにおいてセグメントポラリティ遺伝子として同定され、後に脊椎動物において特徴付けされた。Nakano等, Nature 341: 508-13 (1989); Goodrich等, Genes Dev. 10: 301-312 (1996); Marigo等, Develop. 122: 1225-1233 (1996); van den Heuval等, Nature 382: 547-551 (1996); Alcedo等, Cell 86: 221-232 (1996); Stone, D.M.等, Nature 384: 129-34 (1996)。遺伝学的及び生化学的証拠がともに、Ptch(配列番号:4)がリガンド結合性サブユニットであり、Gタンパク質結合レセプター様分子であるSmo(配列番号:17)がシグナル伝達成分であることを支持している。Stone, D.M.等, Nature 384: 129-34 (1996); Marigo等, Nature 384: 176-79 (1996), Chen等, Cell 87: 553-63 (1996)。HhのPtch(配列番号:4)への結合の際に、Ptch(配列番号:4)のSmo(配列番号:17)に対する正常な阻害効果が開放され、Smo(配列番号:17)が原形質膜を通してHhシグナルを伝達することを可能にする。
【0066】
結果
PTCH/SMO複合体が3つの哺乳類Hh全てを媒介するか否か、又は特定の成分が存在するか否かは、未だ確立されずにいる。近年、第2のマウスpatched遺伝子mPatched-2(配列番号:7)が最近単離されたが[Motoyama等, Nature Genet. 18: 104-106 (1998)]、そのHhレセプターとしての機能は確立されていない。patched-2(配列番号:2)を特徴付け、それをPatched(配列番号:4)と種々のHhファミリーメンバーの生物学的機能について比較するため、我々はPatched(配列番号:4)タンパク質でESTデータベースをスクリーニングして新規なヒトpatched遺伝子についての2EST候補を同定した。ヒトPtch-2(配列番号:2)をコードする全長cDNAは精巣ライブラリからクローニングした。開始ATGは、約131kDaの推定分子量を持つ1204アミノ酸長タンパク質をコードする3612ヌクレオチドのオープンリーディングフレームを決定する。ヒトPtch(配列番号:4)とPtch-2(配列番号:2)との全体の同一性は54%であり(図1)、ヒトPTCH-2と最近記載されたマウスPtch-2(配列番号:7)当量の同一性は90%である(図8)。2つのヒトPatchedタンパク質の間の最も明白な構造的な相違は、Ptch-2(配列番号:2)の切断されたC-末端細胞質ドメインである。さらに、Ptch(配列番号:4)に存在する2つのグリコシル化部位の一方のみがPtch-2(配列番号:2)に保存されている。
Patched-2がHhレセプターであるか否か、2つのPatched分子が種々のHhリガンド間を特異的な結合を介して識別できるか否かを決定するために、本出願人は、ヒト293胚腎臓細胞をPtch(配列番号:4)又はPtch-2(配列番号:2)発現作成物で形質移入し、その細胞のShh、Dhh及びIhh結合について分析した。図7Aに示すとおり、125I-Shhの結合性が過剰のShh、Dhh又はIhh(配列番号:14、13及び29)各々と比較できる。置換曲線のスキャッチャード分析は、Ptch(配列番号:4)(Shh、1.0nM)(配列番号:14);Dhh、2.6nM(配列番号:13);Ihh、1.0nM(配列番号:29)及びPtch-2(配列番号:2)(Shh、1.8nM(配列番号:14);Dhh、0.6nM(配列番号:13);Ihh、0.4nM(配列番号:29)について全てのHhが類似の親和性を有することを示し、PTCH(配列番号:4)及びPTCH-2(配列番号:2)の両方が3つの哺乳動物Hhタンパク質に対する生理学的レセプターを提供しうることを示している。
【0067】
次に本出願人は、Patched-2が、Patchedと同様に、Smo(配列番号:17)と物理的複合体を形成するか否かを決定した。FlagタグのPtch(配列番号:4)又はPtch-2(配列番号:2)を、MycタグのSmo(配列番号:17)とともに293細胞で同時形質移入した。既に述べられているように[Stone, D.M.等, Nature 384: 129-34 (1996)]、Ptch(配列番号:4)及びSmo(配列番号:15)を発現する細胞において、Ptch(配列番号:4)はエピトープタグSmo(配列番号:15)に対する抗体で免疫沈降できる(図7B)。同様に、Patched-2は、2つのタンパク質が293細胞で同時発現される場合はエピトープタグSmo(配列番号:15)に対する抗体で免疫沈降できる。それとともに、これらの結果は、PTCHについて記載されたもの(Stone等, 上掲)と同様に、Patched-2がSmo(配列番号:17)とともに多成分Hhレセプター複合体を形成するモデルを示唆している。興味深いことに、切断Patchedの分析によって既に示唆されているように(Stone等, 上掲)、これらの結果はPatched-2には無い長いCー末端尾部がSmo(配列番号:17)との相互作用には不要であることも示している。しかしながら、C-末端の不存在がPatched-2のSmo(配列番号:17)によるシグナル伝達を阻止する能力に影響を与え、Patched-2に比較してPatchedによるシグナル伝達の相違を導くことは可能である。
Patched-2が、その発現プロフィールに基づいて特定のHh分子の作用を変調できるか否かをさらに実験するために、本出願人は、Ptch(配列番号:4)及びPtch-2(配列番号:2)の発現を比較した。第1にPtch-2(配列番号:1)に特異的なプローブを用いたノーザンブロット分析は、精巣における高レベルのPTCH2mRNAを明らかにした(図4)。この方法により、胚組織を含む分析した他の全ての組織においてPtch-2(配列番号:1)発現は検出されなかった(データは示さず)。このプロフィールは、ノーザンブロットで精巣には見られないが多数の成人及び胚組織で見られるPtch(配列番号:18)で観察されるものとは非常に異なる[Goodrich等, Genes Dev. 10: 301-312 (1996)]。Ptch(配列番号:18)及びPtch-2(配列番号:1)の発現パターンの更に詳細な分析は、精巣に特に注意したインサイツハイブリッド形成によって実施した。既に記載されているように(Motoyama等, 上掲)、低レベルのPtch-2(配列番号:1)の発現が発達中の歯及び皮膚の上皮細胞で検出された(データは示さず)。高レベルのPtch-2(配列番号:2)コード化mRNAが精細管内部で、一次及び二次精母細胞上に発現されたが(図6(b)、6(e))、精細管の間質に局在化したライディヒ細胞で低レベルのPtch(配列番号:4)コード化mRNAが検出できるのみである(図6(a))。一次及び二次精母細胞は、精巣におけるDhh(配列番号:13)の供給源である支持セルトリ細胞と密に接触する[Bitgood等, Curr. Biol. 6: 298-304 (1996)]。2つのレセプターの何れが精巣でのDhh(配列番号:13)活性の最も関連するメディエータであるかを決定するために、我々はFuRK(配列番号:10)、Hhシグナル伝達経路の成分と考えられているFused関連キナーゼの発現プロフィールを分析した。Patched-2が精巣におけるDhhの標的であるという考えに一致して、我々は、FuRK(配列番号:10)、それとPtch-2(配列番号:2)とが共に局在化した胚細胞のみで発現されることを見出した(図4(c)、(f))。雄Dhh-欠損マウスが成熟精子を欠くため繁殖不能であるので、Dhh(配列番号:13)は胚細胞の正しい分化に必要である(Bitgood等, 上掲)。我々のデータは、Dhh(配列番号:13)がPtch-2(配列番号:2)を通して胚細胞に直接作用するが、テストステロン産生ライディヒ細胞上で低レベルで発現されたPtch(配列番号:4)の機能は不明であることを示唆している。
【0068】
議論
Patchedの異型接合性の喪失(LOH)が家系性並びに散発性基底細胞癌において高頻度で生ずることが報告され[Johnson等, Science 272: 1688-71 (1996); Hahn等, Cell 85: 841-51 (1996); Gailani等, Nature Genetics 14: 78-81; Xie等, Cancer Res. 57: 2369-72 (1997)]、それが腫瘍サプレッサとして機能することを示唆している。上記のレセプターモデルに従うと、Patched機能の喪失がSmo(配列番号:17)による異常なシグナル伝達をもたらし、皮膚基底細胞層の過剰増殖を導きうる。上記で示唆されたように、Patched-2がDhhの機能を媒介するならば、Patched-2の喪失は、Smo(配列番号:17)活性がPatched-2に制御されている組織における腫瘍形成を導きうる。Ptch-2(配列番号:2)をコードする遺伝子は、蛍光インサイツハイブリッド形成及びヒト染色体1p33−34に対する放射性ハイブリッドパネルを用いたPCRによってマッピングされた(データは示さず)。興味深いことに、精上皮腫を含む精巣腫瘍における再発性の染色体異常の最近の分析は、領域1p32−36の欠失を明らかにした[Summersgill等, B. J. Cancer 77: 305-3313 (1998)]。Patched-2座位を含むこの領域の喪失は、胚細胞腫瘍の場合の36%と一致した。これらのデータから、基底細胞癌及び髄芽細胞腫におけるPatchedと同様に、Patched-2が、精母細胞などのDhh(配列番号:13)標的細胞における腫瘍サプレッサであり、さらに癌におけるHhシグナル伝達に関係している可能性が生じる。
要するに、我々のデータは、Patched及びPatched-2の両方が純粋なHhレセプターであり、それらがともにSmo(配列番号:17)と複合体を形成できることを示している。結合データは、Patched及びPatched-2が親和性の相違を介して種々のHhリガンド間を識別しないことを示しているが、これら2つのレセプターの明確な組織分布は、インビボにおいてPatchedはShhの主要なレセプターであり、Patched-2は主にDhhシグナル伝達を媒介することを示唆している。Hhシグナル伝達成分の幾つかが存在しないときのライディヒ細胞におけるPatched発現の機能は、未だ説明されていない。同様に、Patched-2が発達中の歯及び皮膚に存在するShh発現細胞において発現されたときに役割を果たすか否かを決定するのは興味深い、Motoyama等, Nature Genet. 18: 104-106 (1998)。最後に、Patched-2の存在は、さらなるPatchedレセプター、特にIhh(配列番号:29)の機能を媒介するものが存在するか否かという疑問を生じさせる。
【0069】
材料と方法
1. ヒトpatched-2cDNAクローンの単離
発現された配列タグ(EST)データベース(LIFESEQ(商品名)、Incyte Pharmaceuticals、Palo Alto, CA)を、ショウジョウバエのセグメントポラリティ遺伝子patched-2のヒト相同体について検索した。2つのEST(Incyte #905531及び1326258)(図2)を潜在的な候補として同定した。ヒトpatched-2クローンを含むヒトcDNAライブラリを同定するために、pRK5におけるヒトcDNAライブラリを以下のプライマーを用いたPCRによって最初にスクリーニングした:
5'-905531(A): 5'-AGGCGGGGGATCACAGCA-3' (配列番号:19)
3'-905531(A): 5'-ATACCAAAGAGTTCCACT-3' (配列番号:20)
胎児肺ライブラリを選択し、加熱開始した後に添加した10μlの10xPCRバッファ(Klentaq(登録商標))、1μlのdNTP(200μM)、1μlのライブラリDNA(200ng)、0.5μlのプライマー、86.5μlのH2O及び1μlのKlentaq(登録商標)(Clontech)を含む反応において3'-905531(A)プライマーを用いてdut−/ung−宿主で成長させたプラスミドライブラリから一本鎖DNAを発現させることによりpatched-2cDNAクローンを富化した。反応は95℃で1分間変性させ、60℃で1分間アニールし、次いで72℃で20分間伸展させた。DNAをフェノール/CHCl3で抽出し、エタノール沈殿させ、次いでエレクトロポレーションによりDH10B(Gibco/BRLi)宿主細菌に移行させた。各形質転換体からのクローンをナイロン膜上にレプリカプレートし、以下の配列のEST配列(#905531)から誘導された重複オリゴプローブでスクリーニングした:
5'-ptch2プローブ: 5'-CTGCGGCGCTGCTTCCTGCTGGCCGTCTGCATCCTGCTGGTGTGC-3'
(配列番号:21)
3'-ptch2プロー: 5'-AGAGCACAGACGAGGAAAGTGCACACCAGCAGGATGCAGACGGCC-3'
(配列番号:22)
【0070】
オリゴプローブを、[γ-32P]-ATP及びT4ポリヌクレオチドキナーゼで標識した。フィルターは、42℃において、50%のホルミアミド、5XSSC、10Xデンハード、0.05mのリン酸ナトリウム(pH6.5)、0.1%のピロリン酸ナトリウム、50μg/mlの超音波処理サケ精子DNA中でハイブリッド形成した。次いでフィルターを2xSSCでリンスし、0.1xSSC、0.1%SDSで洗浄し、次にKodak(登録商標)X線フィルムに暴露した。この方法を用いて、胎児脳ライブラリから部分クローンを単離した(クローン3A−図10)(配列番号:8)。失った5'-配列を単離するために、精巣ライブラリ(下記のノーザンブロット参照)をスクリーニングした。精巣ライブラリをプローブするためのクローン3Aからの204bpプローブを増幅するのに使用したプライマーは:
RACE 5: 5'-ACTCCTGACTTGTAGCAGATT-3' (配列番号:23)及び
RACE 6: 5'-AGGCTGCATACACCTCTCAGA-3' (配列番号:24)であった。
増幅したプローブをアガロースゲルから切除することにより精製し、ランダムプライマー標識化キット(Boehringer Mannheim)で標識した。潜在的開始メチオニンを含むもの(クローン16.1−図11)(配列番号:9)を含む幾つかのクローンを単離した。これらのクローンの幾つかを組み立てることによりPatched-2をコードする全長cDNAを再構築した。ヒトPtch-2(図1(配列番号:1))をコードする全長cDNAは、144kDaの推定分子量を持つ1204アミノ酸タンパク質をコードする3612ヌクレオチド長のオープンリーディングフレームリーディングフレームを有する。ヒトPtch(配列番号:4)とのアラインメントは、2つの分子間でのアミノ酸レベルで53%の同一性を明らかにした(図3)。12の膜貫通ドメイン全てが保存された。最も有意な相違は、Ptch(配列番号:4)に比較して短いPtch-2(配列番号:2)のC-末端細胞内ドメインである。
【0071】
2. ノーザンブロット
完全な全長patched-2cDNAを単離スルのに最良の組織供給源を決定し、その発現プロフィールを決定するために、我々は以下のプライマー:
TM2: 5'-GCTTAGGCCCGAGGAGAT-3' (配列番号:25)
URT2: 5'-AACTCACAACTTTCTCTCCA-3' (配列番号:26)
を用いてPatched-2の3'非切断領域から増幅した752bpの断片でヒト多重組織ノーザンブロット(Clontech)をプローブした。得られた断片をゲル精製してランダムプライミングにより標識した。ブロットをExpressHyb(登録商標)ハイブリッド形成溶液(Clontech)中、1x106cpm/mlの32P-標識プローブ存在下、42℃で終夜ハイブリッド形成した。ブロットを2xSSCで室温において10分間洗浄し、0.1xSSC/0.1%SDS中、42℃で30分間洗浄し、次いでX-線フィルムに終夜暴露した。図4は、Ptch-2メッセージが精巣のみで高レベルで発現されたことを示している。
【0072】
3. 染色体局在化
上記のプライマーTM2(配列番号:25)及びUTR2(配列番号:26)をGenome System (St. Louis, MO) BACライブラリのスクリーニングに使用した。このライブラリから2つの個々のBACクローンを得て、これらのクローン両方のFISH法による染色体局在化は、Ptch-2(配列番号:2)がヒト染色体1p33−34にマッピングされることを示した(図5)。Patchedについての異型接合性の喪失(LOH)が基底細胞癌で高頻度に起こることが報告された。Patched機能の喪失はSmoothened(Smo)(配列番号:17)による恒常的シグナル伝達を導き、真皮の基底層の過剰増殖をもたらす。類似のメカニズムが胚細胞腫瘍の形成を導きうる。このモデルは胚細胞腫瘍の進行の第1段階が胚細胞前駆体によるDNAの初期喪失であり、次いで精上皮腫を形成する腫瘍性胚細胞を導くことを提案している[De Jong等, Cancer Genet. Cytogenet. 48: 143-167 (1990)]。侵襲性精上皮腫から、全ての他の形態の胚細胞型が発生する。全ての胚細胞腫瘍の約80%は同腕染色体12p(i12p)に関連し、精上皮腫より非精上皮腫でより高頻度で見られる[Rodriguez等, Cancer Res. 52: 2285-2291 (1992)]。しかしながら、精上皮腫を含む精巣腫瘍における再発性の染色体異常の分析は、領域1p32−36の欠失を明らかにした。この領域の喪失は、最近の研究における胚細胞腫瘍の36%と一致した[Summersgill等, B. J. Cancer 57: 305-313 (1998)]。染色体1p32−36の類似の欠失は、乏突起細胞腫において28%の頻度で報告されている;Bello等, Int. J. Cancer 57: 172-175 (1994)。Ptch-2(配列番号:2)の脳における発現はここで詳細に試験されていないが、Ptch-2(配列番号:2)はDhhレセプターと考えられ(下記参照)、マウスシュワン細胞によるDhhの発現が以前に報告されている[Bitgood等, Develop. Biol. 172: 126-138 (1995)]。Ptch-2(配列番号:2)は染色体1p33−34に局在しているので、Patched-2はDhh標的細胞においてSmo(配列番号:17)シグナル伝達を調節し、Patched-2機能の喪失がこれらの細胞における異常なSmo(配列番号:17)シグナル伝達、続いて腫瘍形成を導きうる。
【0073】
4. インサイツハイブリッド形成
マウス精巣断片を16μmで切り出し、 Phillips等, Science 250: 290-294 (1990)に記載された方法によりインサイツハイブリッド形成用に加工した。33P-UTP標識RNAプローブをMelton等, Nucleic Acids Res. 12: 7035-7052 (1984)に記載されているように生成させた。センス及びアンチセンスプローブをマウスPatchedの3'非コード化領域から、又はヒト配列のアミノ酸317−486コード化領域に相当するマウスFuRKcDN断片から各々T3及びT7を用いて合成した。
PTCH:
503(アンチセンス)
5'GGATTCTAATACGACTCACTATAGGGCCCAATGGCCTAAACCGACTGC3'(配列番号:27)
503(センス)
5'CTATGAAATTAACCCTCACTAAAGGGACCCACGGCCTCTCCTCACA3'(配列番号:28)
PTCH2:
504(アンチセンス)
5'GGATTCTAATACGACTCACTATAGGGCCCCTAAACTCCGCTGCTCCAC3'(配列番号:12)
504(センス)
5'CTATGAAATTAACCCTCACTAAAGGGAGCTCCCGTGAGTCCCTATGTG3'(配列番号:11)
FuRKセンス及びアンチセンスは、ヒトのアミノ酸残基317−486コード化領域に相当するマウスfusedDNA断片から各々T3及びT7を用いて合成した。
【0074】
図6は、Ptch(配列番号:4)及びPtch-2(配列番号:2)の両方が精巣で発現されるが、それらの発現パターンは重複しないことを示している。Ptch(配列番号:4)は間質のライディヒ細胞で発現されるのに対し、Ptch-2(配列番号:2)は一次及び二次精母細胞で発現される。
発達中の精母細胞に特異的なPatched-2の発現は、Patched-2がDhh(配列番号:13)の直接の標的であることを示唆している。Dhh(配列番号:13)はセルトリ細胞で発現され、Dhh(配列番号:13)を欠くマウスは精子生産の欠損により繁殖不能である[Bitgood等, Curr. Biol. 6: 298-304 (1996)]。この胚細胞への効果は間接的であり、ライディヒ細胞上に存在するPatchedによって媒介されると考えられていたが、我々のデータは、DhhがPatched-2を介して胚細胞に直接作用することを示唆している。このことは、FuRK(配列番号:10)の局在化、ショウジョウバエFusedに相同な細胞内キナーゼによって更に示され、ヘッジホッグ(Hh)シグナルの伝達に含まれている。図6に示すように、FuRK(配列番号:10)は、Ptch(配列番号:4)とともにライディヒ細胞ではなく、Ptch-2(配列番号:2)とともに胚細胞に局在し、PatchedではなくPatched-2がDhhシグナルを伝達できることを示唆している。これらの結果はPatched-2がDhhレセプターであることを示唆する。
Smo-M2(配列番号:16)トランスジェニックマウス[BCCに類似する自律的フェノタイプをもたらすSmo変異、Xie等, Nature 391: 90-92 (1998)]におけるPtch-2mRNAレベルは、Hhシグナル伝達経路の異常な活性化の際に増加しうる。図9に示すように、Ptch-2(配列番号:2)レベルは腫瘍細胞で高い(Ptch(配列番号:4)レベルよりは低い)。このことは、Ptch-2(配列番号:2)に対する抗体がBCCの治療に有用であることを示唆している。
【0075】
5. Smoでの免疫沈降:
myc-エピトープタグSmo(配列番号:15)及びFLAG-エピトープタグPatched又はPatched-2発現作成物の一過性形質移入系を用いて、標準的技術を用いた293細胞における同時形質移入により、Patched-2のSmo(配列番号:17)への結合を評価した(Gorman, C., DNA Cloning: A Practical Approach, Clover, DM編, Vol. 11, pp. 143-190, IRL Press, Washington, D.C.)。形質移入の36時間後、細胞を1%のNP-40中に溶解し、9E10抗-myc抗体又はM2抗-FLAG抗体(IBI-Kodak)、続いてプロテインAセファロースで免疫沈降させ、次に変性6%ポリアクリルアミドゲル上で分離した。タンパク質を、ニトロセルロースに移してECL検出系(Amersham)を用いてFlag又はMycエピトープに対する抗体でプローブすることにより検出した。図7Bは、Ptch(配列番号:4)又はPtch-2(配列番号:2)の両方が同レベルで発現され(IP Flag、Blot Flag)、Ptch(配列番号:4)のようにPtch-2(配列番号:2)がSmo(配列番号:17)と物理的複合体を形成することを示している。これらの結果は、Patchedと同様に、Patched-2がそのSmo(配列番号:17)との相互作用を介してHhシグナル伝達を制御することを示唆している。
【0076】
6. Hh結合:
Patched-2が種々のヘッジホッグリガンドに結合するか否かを決定するために、293細胞を標準的手法を用いてPtch(配列番号:4)又はPtch-2(配列番号:2)で形質移入した。細胞を100pMの125I-Shh(マウスShh(配列番号:14)の19kDアミノ末端断片)とともに、過剰の非標識のShh(配列番号:14)又はDhh(配列番号:13)の存在下又は非存在下で室温において2時間インキュベートした。平衡に達した後、リガンド結合細胞を連続スクロース勾配を通して遠心して未取り込み物を分離し、シンチレーションカウンターでカウントした。図7Aは、Dhh(配列番号:13)及びShh(配列番号:14)の両方がPtch(配列番号:4)及びPtch-2(配列番号:2)に結合することを示す。種々の濃度の非放射性競合物は、2つのリガンドがPtch(配列番号:4)及びPtch-2(配列番号:2)に対して類似の親和性を有することを示している。
【0077】
実施例2:大腸菌におけるpatched-2の発現
ヒトpatched-2をコードするDNA配列を、選択したPCRプライマーを用いて最初に増幅した。プライマーは、選択された発現ベクターの制限酵素部位に対応する制限酵素部位を持たなければならない。種々の発現ベクターが用いられる。好適なベクターの例は、pBR322(大腸菌から誘導されたもの;Bolivar等, Gene, 2:95 (1977)参照)であり、アンピシリン及びテトラサイクリン耐性の遺伝子を含む。ベクターは制限酵素で消化され脱リン酸される。PCR増幅した配列は、次いでベクターに結合させる。ベクターは、好ましくは抗生物質耐性遺伝子、trpプロモーター、polyhisリーダー(最初の6つのSTIIコドン、polyhis配列、及びエンテロキナーゼ切断部位を含む)、脊椎動物patched-2コード化領域、ラムダ転写終結区、及びargU遺伝子をコードする配列を含む。
ライゲーション混合物は、次いで、Sambrook等, 上掲に記載された方法を用いる選択した大腸菌の形質転換に使用される。形質転換体は、それらのLBプレートで成長する能力により同定され、次いで抗生物質耐性クローンが選択される。プラスミドDNAが単離され、制限分析及びDNA配列決定で確認される。
選択されたクローンは、抗生物質を添加したLBブロスなどの液体培養培地で終夜成長させることができる。終夜培地は、続いて大規模培地への播種に用いられる。次に細胞を所望の光学密度まで成長させ、その間に発現プロモーターが作動する。
数時間以上の細胞培養の後、細胞を採集して遠心分離できる。遠心分離で得られた細胞ペレットは、この分野で知られた種々の試薬を用いて可溶化し、次いで可溶化脊椎動物patched-2タンパク質を金属キレート化カラムを用いてタンパク質を緊密に結合させる条件下で精製した。
【0078】
実施例3:哺乳動物細胞におけるpatched-2の発現
発現ベクターとしてベクターpRK5(1989年3月15日発行のEP 307,247参照)を用いた。場合によっては、脊椎動物patched-2DNAを選択した制限酵素でpRK5に結合させ、Sambrook等,上掲に記載されたようなライゲーション方法を用いて脊椎動物patched-2DNAを挿入させる。得られたベクターは、pRK5-patched-2と呼ばれる。
一実施態様では、選択された宿主細胞は293細胞とすることができる。ヒト293細胞(ATCC CCL 1573)は、ウシ胎児血清及び場合によっては滋養成分及び/又は抗生物質を添加したDMEMなどの媒質中で組織培養プレートにおいて成長させて集密化した。約10μgのpRK5-patched-2DNAを約1μgのVA RNA遺伝子をコードするDNA[Thimmappaya等, Cell, 31:543 (1982))]と混合し、500μlの1mMトリス-HCl、0.1mMのEDTA、0.227MのCaCl2に溶解させた。この混合物に、滴状の、500
μlの50mMのHEPES(pH7.35)、280mMのNaCl、1.5mMのNaPO4を添加し、25℃で10分間析出物を形成させた。析出物を懸濁し、293細胞に加えて37℃で約4時間定着させた。培養培地を吸引し、2mlのPBS中20%グリセロールを30分間添加した。293細胞は、次いで無血清培地で洗浄し、新鮮な培地を添加し、細胞を約5日間インキュベートした。
形質移入の約24時間後、培養培地を除去し、培養培地(のみ)又は200μCi/mlの35S-システイン及び200μCi/mlの35S-メチオニンを含む培養培地で置換した。12時間のインキュベーションの後、条件培地を回収し、スピンフィルターで濃縮し、15%SDSゲル上に負荷した。処理したゲルを乾燥させ、脊椎動物patched-2ポリペプチドの存在を現す選択された時間にわたってフィルムに暴露した。形質転換した細胞を含む培地は、さらなるインキュベーションを施し(無血清培地で)、培地を選択されたバイオアッセイで試験した。
【0079】
これに換わる技術において、脊椎動物patched-2は、Somparyac等, Proc. Natl. Acad. Sci., 12:7575 (1981)に記載されたデキストラン硫酸法を用いて293細胞に一過的に導入される。293細胞は、スピナーフラスコ内で最大密度まで成長させ、700μgのpRK5-patched-2DNAを添加する。細胞は、まずスピナーフラスコから遠心分離によって濃縮し、PBSで洗浄した。DNA−デキストラン沈殿物を細胞ペレット上で4時間インキュベートした。細胞を20%グリセロールで90秒間処理し、組織培養培地で洗浄し、組織培養培地、5μg/mlウシインシュリン及び0.1μgmlウシトランスフェリンを含むスピナーフラスコに再度導入した。約4日後に、条件培地を遠心分離して濾過し、細胞及び細胞片を除去した。次いで発現された脊椎動物patched-2を含む試料を濃縮し、透析及び/又はカラムクロマトグラフィー等の選択した方法によって精製した。
他の実施態様では、脊椎動物patched-2をCHO細胞で発現させることができる。pSVi-patched-2は、CaPO4又はDEAE-デキストランなどの公知の試薬を用いてCHO細胞に形質移入することができる。上記したように、細胞培地をインキュベートし、培地を培養培地(のみ)又は35S-メチオニン等の放射性標識を含む培地に置換することができる。脊椎動物patched-2ポリペプチドの存在を同定した後、培養培地を無血清培地に置換してもよい。好ましくは、培地を約6日間インキュベートし、次いで条件培地を収集する。次いで、発現された脊椎動物patched-2を含む培地を濃縮して、選択した任意の方法によって精製することができる。
また、エピトープタグ脊椎動物patched-2を宿主CHO細胞において発現させてもよい。脊椎動物patched-2はpRK5ベクターからサブクローニングした。サブクローン挿入物は、次いで、PCRを施してバキュロウイルス発現ベクター中のpoly-hisタグ等の選択されたエピトープタグを持つ枠に融合できる。poly-hisタグ脊椎動物patched-2挿入物は、次いで、安定なクローンの選択のためのDHFR等の選択マーカーを含むSV40誘導ベクターにサブクローニングできる。最後に、CHO細胞をSV40誘導ベクターで(上記のように)形質移入した。発現を確認するために、上記のように標識化を行ってもよい。発現されたpoly-hisタグ脊椎動物patched-2を含む培養培地は、次いで濃縮し、Ni2+-キレートアフィニティクロマトグラフィー等の選択された方法により精製できる。
【0080】
実施例4:酵母菌での脊椎動物patched-2の発現
以下の方法は、酵母菌中での脊椎動物patched-2の組換え発現を記載する。
第1に、ADH2/GAPDHプロモーターからの脊椎動物patched-2の細胞内生産又は分泌のための酵母菌発現ベクターを作成する。脊椎動物patched-2をコードするDNA、選択されたシグナルペプチド及びプロモーターを選択したプラスミドの適当な制限酵素部位に挿入して脊椎動物patched-2の細胞内発現を指示する。分泌のために、脊椎動物patched-2をコードするDNAを選択したプラスミドに、ADH2/GAPDHプロモーターをコードするDNA、酵母菌アルファ因子分泌シグナル/リーダー配列、及び(必要ならば)脊椎動物patched-2の発現のためのリンカー配列とともにクローニングすることができる。
酵母菌株AB110等の酵母菌は、次いで上記の発現プラスミドで形質転換し、選択された発酵培地中で培養できる。形質転換した酵母菌上清は、10%トリクロロ酢酸での沈降及びSDS−PAGEによる分離で分析し、次いでクマシーブルー染色でゲルの染色をすることができる。
続いて組換え脊椎動物patched-2は、発酵培地から遠心分離により酵母菌細胞を除去し、次いで選択されたカートリッジフィルターを用いて培地を濃縮することによって単離及び精製できる。脊椎動物patched-2を含む濃縮物は、選択されたカラムクロマトグラフィー樹脂を用いてさらに精製してもよい。
【0081】
実施例5:バキュロウイルス感染昆虫細胞での脊椎動物patched-2の発現
以下の方法は、バキュロウイルス感染昆虫細胞中における脊椎動物patched-2の組換え発現を記載する。
脊椎動物patched-2は、バキュロウイルス発現ベクター内に含まれるエピトープタグの上流patched-2である。このようなエピトープタグは、poly-hisタグ及び免疫グロブリンタグ(IgGのFc領域など)を含む。pVL1393(Navogen)などの市販されているプラスミドから誘導されるプラスミドを含む種々のプラスミドを用いることができる。簡単には、脊椎動物patched-2又は脊椎動物patched-2の所定部分(膜貫通タンパク質の細胞外ドメインをコードする配列など)が、5’及び3’領域に相補的なプライマーでのPCRにより増幅される。5’プライマーは、隣接する(選択された)制限酵素部位を包含していてもよい。生成物は、次いで、選択された制限酵素で消化され、発現ベクターにサブクローニングされる。
組換えバキュロウイルスは、上記のプラスミド及びBaculoGoldTMウイルスDNA(Pharmingen)を、Spodoptera frugiperda(「Sf9」)細胞(ATCC CRL 1711)中にリポフェクチン(GIBCO-BRLから市販)を用いて同時形質移入することにより作成される。28℃で4-5日インキュベートした後、放出されたウイルスを回収し、さらなる増幅に用いた。ウイルス感染及びタンパク質発現は、O'Reilley等, Baculovirus expression vectors: A laboratory Manual, Oxford: Oxford University Press (1994)に記載されているように実施した。
【0082】
次いで、発現されたpoly-hisタグ脊椎動物patched-2は、例えば、Ni2+-キレートアフィニティクロマトグラフィーにより以下のように精製される。抽出物は、Rupert等, Nature, 362:175-179 (1993)に記載されているように、ウイルス感染した組み換えSf9細胞から調製した。簡単には、Sf9細胞を洗浄し、超音波処理用バッファー(25mLのHepes、pH7.9;12.5mMのMgCl2;0.1mMのEDTA;10%のグリセロール;0.1%のNP-40;0.4MのKCl)中に再懸濁し、氷上で2回20秒間超音波処理した。超音波処理物を遠心分離で透明化し、上清を負荷バッファー(50mMのリン酸塩、300mMのNaCl、10%のグリセロール、pH7.8)で50倍希釈し、0.45μmフィルターで濾過した。Ni2+-NTAアガロースカラム(Qiagenから市販)を5mlの総容積で調製し、25mLの水で洗浄し、25mLの負荷バッファーで平衡させた。濾過した細胞抽出物は、毎分0.5mLでカラムに負荷した。カラムを、分画回収が始まる点であるA280のベースラインまで負荷バッファーで洗浄した。次に、カラムを、結合タンパク質を非特異的に溶離する二次洗浄バッファー(50mMのリン酸塩;300mmのNaCl、10%のグリセロール、pH6.0)で洗浄した。A280のベースラインに再度到達した後、カラムを二次洗浄バッファー中で0から500mmのイミダゾール勾配で展開した。1mLの分画を回収し、SDS−PAGE及び銀染色又はアルカリホスファターゼ(Qiagen)に複合したNi2+-NTAでのウェスタンブロットで分析した。溶離したHis10−タグ脊椎動物patched-2を含む分画をプールし、負荷バッファーで透析した。
あるいは、IgGタグ(又はFcタグ)脊椎動物patched-2の精製は、例えば、プロテインA又はプロテインGカラムクロマトグラフィーを含む公知のクロマトグラフィー技術を用いて実施できる。
【0083】
実施例6:脊椎動物patched-2に結合する抗体の調製
この実施例は、脊椎動物patched-2に特異的に結合できるモノクローナル抗体の調製を例示する。
モノクローナル抗体の生産のための技術は、この分野で知られており、例えば、Goding,上掲に記載されている。用いられ得る免疫原は、精製脊椎動物patched-2、脊椎動物patched-2を含む融合タンパク質、細胞表面に組換え脊椎動物patched-2を発現する細胞を含む。免疫原の選択は当業者が過度の実験をすることなくなすことができる。
Balb/c等のマウスを、完全フロイントアジュバントに乳化して皮下又は腹腔内に1-100マイクログラムで動物注入する脊椎動物patched-2免疫原(例えば、細胞外部分又はptch-2を発現した細胞)で免疫化する。あるいは、免疫原をMPL−TDMアジュバント(Ribi Immunochemical Researh, Hamilton, MT)に乳化し、動物の後足蹠に注入してもよい。免疫化したマウスは、次いで10から12日後に、選択したアジュバント中に乳化した付加的免疫源で追加免疫する。その後、数週間、マウスをさらなる免疫化注射で追加免疫する。脊椎動物patched-2抗体の検出のためのELISAアッセイで試験するために、レトロオービタル出血からの血清試料をマウスから周期的に採取してもよい。
【0084】
適当な抗体力価が検出された後、抗体に「陽性」な動物に、脊椎動物patched-2静脈内注射の最後の注入をすることができる。3から4日後、マウスを屠殺して脾臓を取り出した。次いで脾臓細胞を(35%ポリエチレングリコールを用いて)、ACTTから番号CRL1597で入手可能なP3X63AgU.1等の選択されたマウス骨髄細胞系に融合させた。融合によりハイブリドーマ細胞が生成され、次いで、それをHAT(ヒポキサンチン、アミノプテリン、及びチミジン)培地を含む96ウェル組織培養プレートに蒔き、非patched-2細胞、骨髄腫ハイブリッド、及び脾臓細胞ハイブリッドの増殖を阻害した。
ハイブリドーマ細胞は、脊椎動物patched-2に対する反応性についてELISAでスクリーニングされる。所望の脊椎動物patched-2に対するモノクローナル抗体を分泌する「陽性」ハイブリドーマ細胞の決定は、技術常識の範囲内である。
陽性ハイブリドーマ細胞を同系のBalb/cマウスに腹腔内注入し、抗-脊椎動物patched-2モノクローナル抗体を含む腹水を生成させる。あるいは、ハイブリドーマ細胞を、組織培養フラスコ又はローラーボトルで成長させることもできる。腹水中に生成されたモノクローナル抗体の精製は、硫酸アンモニウム沈降、それに続くゲル排除クロマトグラフィ−を用いて行うことができる。あるいは、抗体のプロテインA又はプロテインGへの親和性に基づくアフィニティクロマトグラフィーを用いることもできる。
【0085】
実施例7
Gliルシフェラーゼアッセイ
以下のアッセイは、ショウジョウバエキュービタツインターラプタス(Drospphia cubitus interruptus(Ci)の哺乳類相同体である転写因子GLIの活性化を測定するために使用してよい。GLIが細胞のShh刺激に際して活性化された転写因子であることが示された。
NHF3βエンハンサーに存在するGLI結合部位の9つのコピー(Sasaki等, Development 124: 1313-1322 (1997))を、pGL3プラスミド(Promega)のルシフェラーゼリポーター遺伝子を制御するチミジンキナーゼ最小プロモーターの前に導入した。GLI結合配列は:TCGACAAGCAGGGAACACCCAAGTAGAAGCTC(p9XGliLuc)(配列番号:31)であり、ネガティブ対照配列は:TCGACAAGCAGGGAAGTGGGAAGTAGAAGCTC(p9XmGliLuc)(配列番号:32)であった。これらの作成物を、F12、DMEM(50:50)、10%の熱不活性化FCS中で成長させたC3H10T1/2細胞中で全長Ptch-2及びSmoとともに同時形質移入した。形質移入の前日に、ウェル当たり1x105細胞を6ウェルプレートに2ml培地中で播種した。次の日に、1μgの各作成物を、0.025mgのptkRenillaルシフェラーゼプラスミドで、100μlのOptiMem(GlutaMaxを含む)中のリポフェクタミン(Gibco-BRL)を用い、製造者の指示に従って37℃で3時間再度同時形質移入した。次いで血清(20%、1ml)を各ウェルに添加し、細胞を37℃でさらに3時間インキュベートした。次いで細胞をPBSで2回洗浄し、次に37℃で48時間2mlの培地中でインキュベートした。次いで各ウェルをPBSで洗浄し、細胞を0.5mlの受動的溶解バッファー(Promega)で15分間室温で振盪装置上で溶解させた。溶解物を氷上のエッペンドルフ管に移し、冷却遠心機で30秒間スピンし、上清を氷上で保存した。各測定について、20μlの細胞溶解物をポリプロピレン管内の100μlのLARII(ルシフェラーゼアッセイ試薬、Promega)に添加し、ルシフェラーゼ光活性を測定した。停止及びグローバッファー(Promega)の添加により反応を停止し、3から5回ピペット上下することにより混合し、Renillaルシフェラーゼ光活性を照度計で測定した。
【0086】
材料の寄託
次の細胞系をアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション, 12301 パークローンドライブ、ロックビル、メリーランド、米国(12301 Parklawn Drive, Rockville, MD, USA)(ATCC)に寄託した:
材料 ATCC寄託番号 寄託日
pRK7.hptc2.Flag-1405 209778 1998年4月14日
この寄託は、特許手続き上の微生物の寄託の国際的承認に関するブダペスト条約及びその規則(ブダペスト条約)の規定に従って行われた。これは、寄託の日付から30年間、寄託の生存可能な培養が維持されることを保証するものである。寄託物はブダペスト条約の条項に従い、またジェネンテク社とATCCとの間の合意に従い、ATCCから入手することができ、これは、どれが最初であろうとも、関連した米国特許の発行時又は任意の米国又は外国特許出願の公開時に、寄託培養物の後代を永久かつ非制限的に入手可能とすることを保証し、米国特許法第122条及びそれに従う特許庁長官規則(特に参照番号886OG638の37CFR第1.14条を含む)に従って権利を有すると米国特許庁長官が決定した者に子孫を入手可能とすることを保証するものである。
【0087】
本出願の譲受人は、寄託した培養物が、適切な条件下で培養されていた場合に死亡もしくは損失又は破壊されたならば、材料は通知時に同一の他のものと即座に取り替えることに同意する。寄託物質の入手可能性は、特許法に従いあらゆる政府の権限下で認められた権利に違反して、本発明を実施するライセンスであるとみなされるものではない。
上記の文書による明細書は、当業者に本発明を実施できるようにするために十分であると考えられる。寄託した態様は、本発明のある側面の一つの説明として意図されており、機能的に等価なあらゆる作成物がこの発明の範囲内にあるため、寄託された作成物により、本発明の範囲が限定されるものではない。ここでの物質の寄託は、ここに含まれる文書による説明が、そのベストモードを含む、本発明の任意の側面の実施を可能にするために不十分であることを認めるものではないし、それが表す特定の例証に対して請求の範囲を制限するものと解釈されるものでもない。実際、ここに示し記載したものに加えて、本発明を様々に改変することは、前記の記載から当業者にとっては明らかなものであり、添付の請求の範囲内に入るものである。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】ヒトptch-2の天然配列の核酸配列(配列番号:1)及び誘導アミノ酸配列(配列番号:2)を示す図である。
【図2】ヒトPtch(配列番号:18)とのアラインメントにおけいて2AはEST905531(配列番号:3)を示し、2BはEST1326258(配列番号:5)を示す。これらのESTは、ヒト全長Ptch-2(配列番号:1)のクローン化に用いられた。
【図3】ヒトPtch(配列番号:4)とptch-2(配列番号:2)の間の比較を示す図である。最適なアラインメントのために導入されたギャップはダッシュで示した。同一のアミノ酸はボックスで囲んだ。12の膜貫通ドメインを灰色のボックスで示し、それら全ては2つの配列間で保持されている。2つの配列間のアラインメントの結果は53%の同一性を示している。最も有意な相違は、ヒトPtch(配列番号:4)と比較してより短いヒトptch-2(配列番号:2)のC-末端細胞内ドメインである。
【図4】patched-2(配列番号:2)のノーザンブロット分析を示す図であり、発現が精巣に限定されていることを示している。複数のヒト胎児及び成人組織ノーザンブロットは、マウスPtch-2の3’-非翻訳領域に対応する断片でプローブされた。
【図5】ヒトpatched-2誘導プローブでのPCRスクリーニングによって単離した2つのBACクローンの染色体局在化を示す図である。両方のプローブは、FISHによりヒト染色体1p33−34にマッピングされた。
【図6】Ptch(配列番号:4)、ptch-2(配列番号:2)及びFused(FuRK)(配列番号:10)発現を比較するインサイツハイブリッド形成を示す。(a)Ptch、Ptch-2(配列番号:2)(b)、及びFuRK(配列番号:10)(c)の発現を示す高倍率のマウス精巣。各々、Ptch-2センス(配列番号:11)(d)及びアンチセンスプローブ(配列番号:12)(e)でハイブリッド形成した低倍率の精巣断面。図6(f)は、FuRK(配列番号:10コード化核酸)でハイブリッド形成した低倍率の精巣断面を示す。スケール・バー:a,b,c:0.05mm;d,e,f:0.33mm。
【図7A】Ptch-2(配列番号:2)のDhh(配列番号:13)及びShh(配列番号:14)への結合を比較する対数プロットである。組換えマウス125I-Shhの、Ptch(配列番号:4)又はPtch-2(配列番号:2)を過剰発現する293細胞への競合的結合。mock形質移入細胞への検出可能な結合は無かった(データは示さず)。
【図7B】エピトープタグPtch(配列番号:4)又はPtch-2(配列番号:2)とエピトープタグSmo(配列番号:15)との同時免疫沈降を示すウェスタンブロットである。免疫沈降はFlagタグPtch(配列番号:4)に対する抗体で実施し、MycタグSmo(配列番号:15)に対する抗体を含む6%アクリルアミドゲル上で分析した。タンパク質複合体はPtch(配列番号:4)及びPtch-2(配列番号:2)の両方で検出され、Smo(配列番号:15)Ptch(配列番号:4)及びPtch-2(配列番号:2)は、Flagタグに対する抗体を用いた免疫沈降及び同じ抗-Flag抗体を用いたウェスタンブロットによって示されたように類似のレベルで発現する。
【図8】ヒトPtch-2(配列番号:2)及びマウスPtch-2(配列番号:7)の間の配列比較を示す図であり、2つの配列の間に約91%の同一性があることを示している。
【図9】SMO-M2(配列番号:16)を過剰発現するE18トランスジェニックマウスの基底細胞におけるインサイツハイブリッド形成で検出されたPtch(配列番号:4)及びPtch-2(配列番号:2)mRNAの蓄積を示すインサイツハイブリッド形成を示す(Xie等, Nature 391: 90-92 (1998))。
【図10】胎児脳ライブラリから最初に単離された部分的patched-2断片であるクローン3(配列番号:8)を示す部分配列である。
【図11】精巣ライブラリから単離された部分的patched-2断片であるクローン16.1(配列番号:9)を示す部分配列である。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図1E】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)図1(配列番号:2)のアミノ酸1〜約1203の配列を含む脊髄動物patched-2ポリペプチドをコードするDNA分子、又は(b)(a)の補体に対して少なくとも95%の配列同一性を有し、patched-2の生物学的活性を有するポリペプチドをコードするDNAを含んでなる単離された核酸。
【請求項2】
(a)ATCC寄託番号209778(記号:pRK7.hptc2.Flag-1405)のcDNAによってコードされるのと同じ成熟ポリペプチドをコードするDNA分子、又は(b)(a)のDNA分子の補体に対して少なくとも95%の配列同一性を有するDNAを含んでなる単離された核酸。
【請求項3】
ATCC寄託番号209778(記号:pRK7.hptc2.Flag-1405)のcDNAの配列をコードするヒトpatched-2、又はそれに緊縮条件下でハイブリダイズする配列を含んでなる請求項2に記載の単離された核酸。
【請求項4】
請求項1に記載の核酸を含むベクター。
【請求項5】
当該ベクターで形質転換された宿主細胞に認識されるコントロール配列に作用可能に結合した請求項4に記載のベクター。
【請求項6】
請求項4に記載のベクターで形質変換された宿主細胞。
【請求項7】
哺乳動物である請求項6に記載の宿主細胞。
【請求項8】
前記細胞がCHO細胞である請求項7に記載の宿主細胞。
【請求項9】
原核生物である請求項6に記載の宿主細胞。
【請求項10】
前記細胞が大腸菌細胞である請求項9に記載の宿主細胞。
【請求項11】
前記細胞が酵母菌細胞である請求項7に記載の宿主細胞。
【請求項12】
サッカロミセスセレヴィシアエである請求項11に記載の宿主細胞。
【請求項13】
請求項9に記載の宿主細胞を、脊椎動物patched-2の発現に適した条件下で培養し、細胞培地からpatched-2を回収することを含んでなるpatched-2ポリペプチドの製造方法。
【請求項14】
図1(配列番号:2)のアミノ酸残基1〜1203を含んでなる単離された天然配列ヒトpatched-2ポリペプチド。
【請求項15】
ATCC登録番号209778(記号:pRK7.hptc2.Flag-1405)の下で寄託されたpatched-2生物学的活性を有するヌクレオチドにコードされる単離された天然配列ヒトpatched-2ポリペプチド。
【請求項16】
異種アミノ酸配列に融合した脊椎動物patched-2ポリペプチドPatched-2を含んでなるキメラ分子。
【請求項17】
前記異種アミノ酸配列がエピトープタグ配列である請求項16に記載のキメラ分子。
【請求項18】
前記異種アミノ酸配列が免疫グロブリンの定常領域である請求項17に記載のキメラ分子。
【請求項19】
Dhhシグナル伝達経路におけるDhhの機能を阻止、防止、阻害及び/又は中和する脊椎動物patched-2のアンタゴニスト。
【請求項20】
生物有機化学的小分子である請求項19に記載のアンタゴニスト。
【請求項21】
アンチセンスヌクレオチドである請求項19に記載のアンタゴニスト。
【請求項22】
Dhhシグナル伝達経路においてpatched-2の正常な機能発現を刺激又は促進するpatched-2のアゴニスト。
【請求項23】
ptch-2(配列番号:2)のSmo(配列番号:17)活性化を防止する請求項22に記載のアゴニスト。
【請求項24】
生物有機化学的小分子である請求項22に記載のアゴニスト。
【請求項25】
生物有機化学的小分子である請求項24に記載のアゴニスト。
【請求項26】
patched-2生物学的活性のアンタゴニスト又はアゴニストのためのスクリーニング方法において、
(a)培地中でpatched-2発現標的細胞を候補化合物及びDhhに暴露し、そして
(b)細胞をDhhのpatched-2への結合について分析するか、又は
(c)処理した細胞のフェノタイプ又は機能変化を評点化し、
そして、当該結果を候補化合物に暴露していない対照細胞と比較することを含んでなる方法。
【請求項27】
patched-2生物学的活性のアンタゴニスト又はアゴニスト分子のためのスクリーニング方法において、
(a)patched-2リガンド及びpatched-2生物学的活性を有する化合物を候補アンタゴニスト又はアゴニストに暴露し、そして
(b)基質をリガンドの化合物への結合について分析し、そして、
当該結果を候補分子に暴露していない対照反応と比較することを含んでなる方法。
【請求項28】
特定の疾患がDhhシグナル伝達によって変調されるか否かを決定する診断方法において、
(a)試験細胞又は組織を培養し、
(b)patched-2変調Dhhシグナル伝達を阻害できる化合物を投与し、そして、
(c)試験細胞におけるpatched-2へのDhh結合又はDhh変調フェノタイプ効果を分析することを含んでなる方法。
【請求項1】
(a)図1(配列番号:2)のアミノ酸1〜約1203の配列を含む脊髄動物patched-2ポリペプチドをコードするDNA分子、又は(b)(a)の補体に対して少なくとも95%の配列同一性を有し、patched-2の生物学的活性を有するポリペプチドをコードするDNAを含んでなる単離された核酸。
【請求項2】
(a)ATCC寄託番号209778(記号:pRK7.hptc2.Flag-1405)のcDNAによってコードされるのと同じ成熟ポリペプチドをコードするDNA分子、又は(b)(a)のDNA分子の補体に対して少なくとも95%の配列同一性を有するDNAを含んでなる単離された核酸。
【請求項3】
ATCC寄託番号209778(記号:pRK7.hptc2.Flag-1405)のcDNAの配列をコードするヒトpatched-2、又はそれに緊縮条件下でハイブリダイズする配列を含んでなる請求項2に記載の単離された核酸。
【請求項4】
請求項1に記載の核酸を含むベクター。
【請求項5】
当該ベクターで形質転換された宿主細胞に認識されるコントロール配列に作用可能に結合した請求項4に記載のベクター。
【請求項6】
請求項4に記載のベクターで形質変換された宿主細胞。
【請求項7】
哺乳動物である請求項6に記載の宿主細胞。
【請求項8】
前記細胞がCHO細胞である請求項7に記載の宿主細胞。
【請求項9】
原核生物である請求項6に記載の宿主細胞。
【請求項10】
前記細胞が大腸菌細胞である請求項9に記載の宿主細胞。
【請求項11】
前記細胞が酵母菌細胞である請求項7に記載の宿主細胞。
【請求項12】
サッカロミセスセレヴィシアエである請求項11に記載の宿主細胞。
【請求項13】
請求項9に記載の宿主細胞を、脊椎動物patched-2の発現に適した条件下で培養し、細胞培地からpatched-2を回収することを含んでなるpatched-2ポリペプチドの製造方法。
【請求項14】
図1(配列番号:2)のアミノ酸残基1〜1203を含んでなる単離された天然配列ヒトpatched-2ポリペプチド。
【請求項15】
ATCC登録番号209778(記号:pRK7.hptc2.Flag-1405)の下で寄託されたpatched-2生物学的活性を有するヌクレオチドにコードされる単離された天然配列ヒトpatched-2ポリペプチド。
【請求項16】
異種アミノ酸配列に融合した脊椎動物patched-2ポリペプチドPatched-2を含んでなるキメラ分子。
【請求項17】
前記異種アミノ酸配列がエピトープタグ配列である請求項16に記載のキメラ分子。
【請求項18】
前記異種アミノ酸配列が免疫グロブリンの定常領域である請求項17に記載のキメラ分子。
【請求項19】
Dhhシグナル伝達経路におけるDhhの機能を阻止、防止、阻害及び/又は中和する脊椎動物patched-2のアンタゴニスト。
【請求項20】
生物有機化学的小分子である請求項19に記載のアンタゴニスト。
【請求項21】
アンチセンスヌクレオチドである請求項19に記載のアンタゴニスト。
【請求項22】
Dhhシグナル伝達経路においてpatched-2の正常な機能発現を刺激又は促進するpatched-2のアゴニスト。
【請求項23】
ptch-2(配列番号:2)のSmo(配列番号:17)活性化を防止する請求項22に記載のアゴニスト。
【請求項24】
生物有機化学的小分子である請求項22に記載のアゴニスト。
【請求項25】
生物有機化学的小分子である請求項24に記載のアゴニスト。
【請求項26】
patched-2生物学的活性のアンタゴニスト又はアゴニストのためのスクリーニング方法において、
(a)培地中でpatched-2発現標的細胞を候補化合物及びDhhに暴露し、そして
(b)細胞をDhhのpatched-2への結合について分析するか、又は
(c)処理した細胞のフェノタイプ又は機能変化を評点化し、
そして、当該結果を候補化合物に暴露していない対照細胞と比較することを含んでなる方法。
【請求項27】
patched-2生物学的活性のアンタゴニスト又はアゴニスト分子のためのスクリーニング方法において、
(a)patched-2リガンド及びpatched-2生物学的活性を有する化合物を候補アンタゴニスト又はアゴニストに暴露し、そして
(b)基質をリガンドの化合物への結合について分析し、そして、
当該結果を候補分子に暴露していない対照反応と比較することを含んでなる方法。
【請求項28】
特定の疾患がDhhシグナル伝達によって変調されるか否かを決定する診断方法において、
(a)試験細胞又は組織を培養し、
(b)patched-2変調Dhhシグナル伝達を阻害できる化合物を投与し、そして、
(c)試験細胞におけるpatched-2へのDhh結合又はDhh変調フェノタイプ効果を分析することを含んでなる方法。
【図4】
【図5】
【図6(a)−(c)】
【図6(d)−(f)】
【図7A】
【図7B】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図8D】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図10D】
【図11A】
【図11B】
【図5】
【図6(a)−(c)】
【図6(d)−(f)】
【図7A】
【図7B】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図8D】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図10D】
【図11A】
【図11B】
【公開番号】特開2010−46077(P2010−46077A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−240086(P2009−240086)
【出願日】平成21年10月19日(2009.10.19)
【分割の表示】特願2000−543606(P2000−543606)の分割
【原出願日】平成11年4月2日(1999.4.2)
【出願人】(509012625)ジェネンテック インコーポレイテッド (357)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−240086(P2009−240086)
【出願日】平成21年10月19日(2009.10.19)
【分割の表示】特願2000−543606(P2000−543606)の分割
【原出願日】平成11年4月2日(1999.4.2)
【出願人】(509012625)ジェネンテック インコーポレイテッド (357)
【Fターム(参考)】
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