説明

脱水縮合化合物の製造方法

【課題】 反応転化率に優れる脱水縮合化合物の製造方法を提供することを課題とする。
【解決手段】 イオン性液体及び脱水縮合反応触媒の存在下で脱水縮合反応をおこなうことにより脱水縮合化合物と水とを含む反応組成物を調製する脱水縮合化合物の製造方法であって、水が透過する親水性の膜の一方側に前記反応組成物が配されるように該膜を配置し、前記膜の前記反応組成物の側の圧力よりも該膜の他方側の圧力を低くし、前記反応組成物に含まれる水が前記膜を透過することにより前記反応組成物に含まれる水を減少させることを特徴とする脱水縮合化合物の製造方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱水縮合化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、脱水縮合化合物の製造方法としては、イオン性液体及び脱水縮合反応触媒の存在下で脱水縮合反応をおこなうことにより脱水縮合化合物と水とを含む反応組成物を調製する脱水縮合化合物の製造方法が知られている。
【0003】
具体的には、イオン性液体及び脱水縮合反応触媒(硫酸)の存在下で脱水縮合反応(エステル化反応)を行うことにより脱水縮合化合物(カルボン酸エステル)と水とを含む反応組成物を調製する製造方法が提案されている(例えば、特許文献1)。
【0004】
斯かる製造方法においては、イオン性液体の存在下で脱水縮合反応をおこなうことから、副反応が起こりにくく、反応転化率が比較的高いものとなり得るが、脱水縮合反応が可逆反応であるという理由から、反応転化率を高めるためには、脱水縮合反応に伴って生成する反応組成物中の水を減少させることを要する。
【0005】
しかしながら、斯かる製造方法においては、反応組成物中の水を選択的に減少させることが比較的困難であり、反応を促進し得る脱水縮合反応触媒の存在下であっても、反応組成物中に残存する水に起因して反応転化率が未だ必ずしも満足できるものではないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−298404号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、イオン性液体及び脱水縮合反応触媒の存在下で脱水縮合反応をおこなう脱水縮合化合物の製造方法であって、反応転化率に優れる脱水縮合化合物の製造方法が要望されている。
【0008】
本発明は、上記の問題点、要望点等に鑑み、反応転化率に優れる脱水縮合化合物の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の脱水縮合化合物の製造方法は、イオン性液体及び脱水縮合反応触媒の存在下で脱水縮合反応をおこなうことにより脱水縮合化合物と水とを含む反応組成物を調製する脱水縮合化合物の製造方法であって、
水が透過する親水性の膜の一方側に前記反応組成物が配されるように該膜を配置し、前記膜の前記反応組成物の側の圧力よりも該膜の他方側の圧力を低くし、前記反応組成物に含まれる水が前記膜を透過することにより前記反応組成物に含まれる水を減少させることを特徴とする。
【0010】
上記構成からなる脱水縮合化合物の製造方法によれば、水が透過する親水性の膜の一方側に前記反応組成物が配されるように該膜を配置し、前記膜の前記反応組成物の側の圧力よりも該膜の他方側の圧力を低くし、前記反応組成物に含まれる水が前記膜を透過することにより前記反応組成物に含まれる水を減少させることにより、前記膜の親水性に起因して、反応組成物に含まれる水が優先的に前記膜を透過し、反応組成物に含まれる水を選択的に減少させることができる。従って、平衡反応である脱水縮合反応において加水分解ではなく脱水縮合への反応が優位となり、原料の反応転化率が優れたものになり得る。
【0011】
本発明の脱水縮合化合物の製造方法では、マイクロウェーブを照射しつつ前記脱水縮合反応をおこなうことが好ましい。マイクロウェーブを照射しつつ前記脱水縮合反応をおこなうことにより、原料の反応転化率がより優れたものになり得るという利点がある。
【0012】
本発明の脱水縮合化合物の製造方法では、前記水が透過する親水性の膜として、親水性有機膜を用いることが好ましい。
【0013】
また、本発明の脱水縮合化合物の製造方法では、水が透過する親水性の膜として、分子中にヒドロキシ基を含有する高分子で形成された膜を用いることが好ましい。前記水が透過する親水性の膜として、分子中にヒドロキシ基を含有する高分子で形成された膜を用いることにより、水と該膜との親和性がより高まり該膜における水の透過性がより優先的になり得る。従って、脱水縮合反応に伴って生成する水を反応組成物からより選択的に減少させることができ、原料の反応転化率がより優れたものになり得るという利点がある。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、本発明の脱水縮合化合物の製造方法は、反応転化率に優れるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】膜透過工程における膜の配置を模式的に示した図。
【図2】膜透過工程を実施しなかった場合の脱水縮合反応(エステル化反応)の時間と反応転化率との関係を表すグラフ。
【図3】膜透過工程を実施しなかった場合の脱水縮合反応(エステル化反応)の温度と反応転化率との関係を表すグラフ。
【図4】膜透過工程を実施した場合の脱水縮合反応(エステル化反応)におけるイオン性液体の含有量と反応転化率との関係を表すグラフ。
【図5】膜透過工程を実施した場合の脱水縮合反応(エステル化反応)における脱水縮合反応の時間と反応転化率との関係を表すグラフ。
【図6】膜透過工程を実施しなかった場合の脱水縮合反応(エーテル化反応)の温度と反応転化率との関係を表すグラフ。
【図7】膜透過工程を実施しなかった場合の脱水縮合反応(エーテル化反応)の時間と反応転化率との関係を表すグラフ。
【図8】膜透過工程を実施した場合の脱水縮合反応(エーテル化反応)において、膜のTEOS含量に対する反応転化率及び水の透過速度を表すグラフ。
【図9】膜透過工程を実施した場合の脱水縮合反応(エーテル化反応)において、膜のTEOS含量に対するETBE、エタノール、及びt−ブタノールの透過速度を表すグラフ。
【図10】膜透過工程を実施した場合の脱水縮合反応(エーテル化反応)の時間と反応転化率との関係を表すグラフ。
【図11】膜透過工程を実施した場合の脱水縮合反応(エーテル化反応)において、膜の厚さに対する反応転化率及び水の透過速度を表すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る脱水縮合化合物の製造方法の実施形態について詳しく説明する。
【0017】
本実施形態の脱水縮合化合物の製造方法は、イオン性液体及び脱水縮合反応触媒の存在下で脱水縮合反応をおこなうことにより脱水縮合化合物と水とを含む反応組成物を調製する脱水縮合化合物の製造方法であって、水が透過する親水性の膜の一方側に前記反応組成物が配されるように該膜を配置し、前記膜の前記反応組成物の側の圧力よりも該膜の他方側の圧力を低くし、前記反応組成物に含まれる水が前記膜を透過することにより前記反応組成物に含まれる水を減少させるものである。
【0018】
詳しくは、本実施形態の脱水縮合化合物の製造方法は、脱水縮合化合物の原料、イオン性液体、及び脱水縮合反応触媒を混合する混合工程と、該混合工程で混合された混合組成物の脱水縮合反応をおこなう反応工程と、水が透過する親水性の膜の一方側に前記反応組成物が配されるように該膜を配置し、前記膜の前記反応組成物の側の圧力よりも該膜の他方側の圧力を低くし、前記反応組成物に含まれる水が前記膜を透過することにより前記反応組成物に含まれる水を減少させる膜透過工程と、脱水縮合反応により生成した脱水縮合化合物を反応組成物から取り出す取出工程とを実施するものである。
【0019】
前記膜透過工程と前記反応工程とは、交互に実施することもできるが、脱水縮合反応の平衡を脱水側へ傾けて脱水縮合反応を促進させるべく、通常、前記膜透過工程を前記反応工程と同時に実施する。従って、前記膜透過工程を実施する温度、時間については、通常、前記反応工程と同じとなる。
【0020】
前記混合工程では、脱水縮合化合物の原料と、イオン性液体と、脱水縮合反応触媒とを混合する。
【0021】
前記脱水縮合化合物の原料としては、脱水縮合反応により脱水縮合化合物を生じ得るものであれば特に限定されるものではないが、例えば、カルボン酸エステル化合物の原料であるカルボン酸及びアルコール、エーテル化合物の原料であるアルコール、アミド化合物の原料であるカルボン酸及び第一級又は第二級アミン等を用いることができる。また、分子中にカルボキシル基とヒドロキシ基の両方を有しそれ自体がカルボン酸エステルの原料となり得るヒドロキシカルボン酸などを用いることができる。
【0022】
具体的には、前記カルボン酸としては、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸などの飽和モノカルボン酸;グルタル酸、アジピン酸などの飽和ジカルボン酸;アクリル酸、メタクリル酸、もしくは、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、ドコサヘキサエン酸、エイコサペンタエン酸などの不飽和モノカルボン酸;フマル酸、マレイン酸などの不飽和ジカルボン酸;安息香酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、サリチル酸、没食子酸、メリト酸、もしくはケイ皮酸などの芳香族カルボン酸等を用いることができる。
【0023】
前記アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、オクタノール等の1級アルコール、sec−ブチルアルコール等の2級アルコール、tert−ブチルアルコール等の3級アルコール、シクロヘキサノール、テトラヒドロフラニルアルコール、イソボルニルアルコール等の脂環式アルコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール等の多価アルコール、2−アミノエタノール等のアミノ基含有アルコールなどを用いることができる。
【0024】
前記第一級アミンとしては、例えば、アニリン、p−n−ブチルアニリン、p−メトキシアニリン、アミノピレンなどの芳香族1級アミン;アセトアミドなどの脂肪族第一級アミン;エチルアミン、N,N−ジメチルホルムアミドなどその他の第一級アミン等を用いることができる。
【0025】
前記第二級アミンとしては、例えば、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジエタノールアミンなどの脂肪族第二級アミン;N−メチルアニリン、N−エチルアニリンなどの芳香族第二級アミン等を用いることができる。
【0026】
前記ヒドロキシカルボン酸としては、グリコール酸、乳酸、タルトロン酸、グリセリン酸、ヒドロキシ酪酸、2−ヒドロキシ酪酸、3−ヒドロキシ酪酸、γ−ヒドロキシ酪酸、リンゴ酸、酒石酸、シトラマル酸、クエン酸などの脂肪族ヒドロキシカルボン酸;サリチル酸などの芳香族ヒドロキシカルボン酸等を用いることができる。
【0027】
前記イオン性液体とは、40℃で液体状の有機化合物塩である。また、アニオンとカチオンとを含むものである。
前記イオン性液体としては、特に限定されず、従来公知のものを用いることができるが、脱水縮合反応を均一条件下でおこなえるという点で、脱水縮合化合物の原料、及び、生成する脱水縮合化合物の両者を溶解させ得るものが好ましい。斯かるイオン性液体は、用いる原料等によって適宜選択できる。
【0028】
前記イオン性液体のアニオンとしては、例えば、BF4-、NO3-、PF6-、SbF6-、ArSO3-等の無機アニオン、CH3CO2-、パラトルエンスルホナート等のアルキル基含有アニオン、又はCF3CO2-、CF3SO3-、(CF3SO22-、(CF3SO23-等のフルオロカーボン含有アニオンなどが挙げられる。
【0029】
なかでも、前記イオン性液体のアニオンとしては、脱水縮合反応に伴って生成する水に溶解しにくく、該水と相分離しやすいという点、及び、原料となるカルボン酸、アルコール、アミン等及び脱水縮合化合物の両方を溶解させ得るという点で、フルオロカーボン含有アニオンが好ましい。イオン性液体がフルオロカーボン含有アニオンを含むことにより、イオン性液体と水とが相分離しやすくなり、後述する膜透過工程において、反応組成物に含まれる水をより簡便に減少させることができるという利点がある。
また、前記イオン性液体のアニオンとしては、脱水縮合化合物の原料及び脱水縮合により生じる水の両方に対する溶解性が優れている点で、パラトルエンスルホナートアニオンが好ましい。イオン性液体がパラトルエンスルホナートアニオンを含むことにより、イオン性液体と脱水縮合化合物とが相分離しやすくなり、脱水縮合反応において、反応転化率がより優れたものになり得るという利点がある。
【0030】
前記イオン性液体のカチオンとしては、イミダゾリウム、ピリジニウム、ピロリジニウム、ピペリジニウム、ピラゾリウム、テトラアルキルアンモニウム、又はホスホニウム等が挙げられる。
前記イオン性液体のカチオンとしては、比較的安価であり脱水縮合化合物の製造が容易であるという点で、イミダゾリウムカチオンが好ましい。
【0031】
前記イミダゾリウムカチオンとしては、例えば、1,3−ジメチルイミダゾリウム、1−メチル−3−プロピルイミダゾリウム、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウム、1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリウム、1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウム、1−アリル−3−ブチルイミダゾリウム等が挙げられる。
前記ピリジニウムカチオンとしては、例えば、1−エチルピリジニウム、1−ブチルピリジニウム、1−エチル−3−メチルピリジニウム、1−ブチル−3−メチルピリジニウム、1−ブチル−4−メチルピリジニウム等が挙げられる。
前記ピロリジニウムカチオンとしては、例えば、1−ブチル−1−メチルピロリジニウム等が挙げられる。
前記ピペリジニウムカチオンとしては、例えば、N−メチル−N−プロピル(ブチル)ピペリジニウム等が挙げられる。
前記ピラゾリウムカチオンとしては、例えば、1,2−ジメチル−3,5−ジフェニル−1H−ピラゾリウム等が挙げられる。
前記テトラアルキルアンモニウムとしては、例えば、テトラブチルアンモニウム、メチルトリオクチルアンモニウム、N,N,N−トリメチル−N−プロピルアンモニウム等が挙げられる。
【0032】
前記イオン性液体としては、これら各種アニオンと各種カチオンとを組み合わせたものを用いることができる。
【0033】
具体的には、前記イオン性液体としては、例えばアニオンとしてのフルオロカーボン含有アニオンと、カチオンとしてのイミダゾリウムカチオンとを組み合わせた塩を用いることが好ましく、斯かるイオン性液体としては、より具体的には、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホナート、1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホナート、1−アリル−3−ブチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド等が挙げられる。なかでも、脱水縮合化合物の原料及び脱水縮合化合物の両方に対する溶解性が優れている点で、1−アリル−3−ブチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドを用いることが好ましい。
また、前記イオン性液体としては、例えばアニオンとしてのパラトルエンスルホナートアニオンと、カチオンとしてのイミダゾリウムカチオンとを組み合わせた塩を用いることが好ましく、斯かるイオン性液体としては、より具体的には、例えば1−メチル−3−メチルイミダゾリウムパラトルエンスルホナート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムパラトルエンスルホナート等を用いることが好ましい。
【0034】
前記イオン性液体の量としては、特に限定されるものではないが、脱水縮合反応をより進行させやすいという点で、脱水縮合化合物の原料の総重量に対して5重量%以上が好ましく、10重量%以上がより好ましい。また、必要以上の量を用いなくとも脱水縮合反応の促進効果が認められ得るという点で、原料の総重量に対して80重量%以下が好ましく、60重量%以下がより好ましい。
なお、前記イオン性液体としては、市販されているものを用いることができる。
【0035】
前記脱水縮合反応触媒としては、脱水縮合反応を促進し得るものであれば特に限定されるものではないが、例えば、酸触媒、塩基触媒等を用いることができる。脱水縮合反応によりカルボン酸エステル化合物を合成する場合は、酸触媒が好ましく用いられ、該酸触媒としては、例えば、硫酸、リン酸、パラトルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、塩酸等を用いることができる。また、脱水縮合反応によりエーテル化合物を合成する場合は、酸触媒が好ましく用いられ、該酸触媒としては、例えば、硫酸、塩酸、触媒用イオン交換樹脂(カチオン交換樹脂)等を用いることができる。また、脱水縮合反応によりアミド化合物を合成する場合は、塩基触媒が好ましく用いられ、該塩基触媒としては、例えば、イミダゾール、トリエチルアミン、N−メチルイミダゾール、p−ジメチルアミノピリジン、N−メチルモルホリン等を用いることができる。
【0036】
前記脱水縮合反応触媒の量は、適宜調整可能であるが、通常、用いる原料の全モル数に対して数モル%の量である。
【0037】
前記混合工程は、従来公知の一般的な装置等を用いて実施することができる。
【0038】
前記反応工程では、混合工程で混合された混合組成物において、脱水縮合化合物の原料に対して脱水縮合反応をおこなう。
前記脱水縮合反応としては、具体的には、例えば、カルボン酸エステル化合物などを得るエステル化反応、エーテル化合物を得るエーテル化反応、アミド化合物を得るアミド化反応などが挙げられる。
【0039】
前記脱水縮合反応における温度は、特に限定されるものではないが、脱水縮合反応をより促進できるという点で、50℃以上が好ましく、60℃以上がより好ましい。また、100℃以下が好ましく、80℃以下がより好ましい。
【0040】
前記脱水縮合反応をおこなう時間は、特に限定されるものではなく、通常、2〜10時間である。
【0041】
前記反応工程では、マイクロウェーブを照射しつつ前記脱水縮合反応をおこなうことが好ましい。
【0042】
前記マイクロウェーブとは、波長が100μm〜1m、周波数が300MHz〜3THzの電磁波のことを意味する。
【0043】
前記マイクロウェーブを照射する時間は特に限定されるものではなく、例えば、脱水縮合反応をおこなっている間、常時照射することもでき、又は所定間隔をあけて所定時間照射することもできる。
また、マイクロウェーブの照射量は、特に限定されるものではないが、脱水縮合反応をより促進し得るという点で、1500MHz以上の周波数で20分以上が好ましく、また、必要以上に脱水縮合反応の温度を上げすぎないという点で、2450MHz以下の周波数で60分以下が好ましい。
また、マイクロウェーブの周波数は、脱水縮合反応をより促進し得るという点で1500MHz〜2450MHzであることが好ましい。
なお、前記マイクロウェーブは、従来公知の装置を用いて発生させることができる。
【0044】
前記反応工程は、従来公知の一般的な装置等を用いて実施することができる。
【0045】
前記膜透過工程では、水が透過する親水性の膜の一方側に前記反応組成物が配されるように該膜を配置し、前記膜の前記反応組成物の側の圧力よりも該膜の他方側の圧力を低くし、前記反応組成物に含まれる水が前記膜を透過することにより前記反応組成物に含まれる水を減少させる。
【0046】
具体的には、前記膜透過工程では、例えば、脱水縮合反応により生成した脱水縮合化合物と水とを含む反応組成物を、水が透過する親水性の膜を介して大気圧未満の状態とし、前記反応組成物に含まれる水が前記膜を透過することにより、前記反応組成物に含まれる水を減少させる。
即ち、前記膜透過工程では、例えば、水が透過する親水性の膜を介して該反応組成物を陰圧状態とすることにより、該膜を通過した水を除去し、反応組成物に含まれ脱水縮合反応により生成した水を減少させる。
【0047】
前記膜透過工程の実施方法について図面を参照しながら詳しく説明する。
【0048】
前記膜透過工程は、いわゆるエバポミエーション法(EV法)を採用することにより実施できる。エバポミエーション法は、図1(a)に示すように、反応組成物と膜とが離間した状態で反応組成物の上方側に膜を配置し、膜の上方側を減圧することなどにより、膜の上方側の圧力を膜の下方側の圧力より低くし、反応組成物に含まれる水を膜透過させる方法である。
【0049】
また、前記膜透過工程は、いわゆるパーベーパレーション法(PV法)を採用することによっても実施できる。パーベーパレーション法は、図1(b)に示すように、反応組成物と膜とが接触した状態で反応組成物の下方側に膜を配置し、膜の下方側を減圧することなどにより、膜の下方側の圧力を膜の上方側の圧力より低くし、反応組成物に含まれる水を膜透過させる方法である。
【0050】
前記膜透過工程においては、エバポミエーション法又はパーベーパレーション法のいずれを採用してもよいが、膜と反応組成物とが接していることに起因する膜の透過性能への影響が小さいという点で、エバポミエーション法を採用することが好ましい。
【0051】
前記膜透過工程を実施することにより、脱水縮合反応に伴って生成する水が前記膜を優先的に透過することができるため、反応組成物から水を選択的に減少させることができ、原料の反応転化率が優れたものになり得る。
即ち、水が透過する親水性の膜は、脱水縮合反応に伴って精製した水と高い親和性を有する一方で、該膜は、水との親和性と比較して脱水縮合化合物との親和性が低い。このように、脱水縮合化合物より水の方が該膜との親和性が高いことから、脱水縮合化合物及び水の両方が該膜に吸着されると、脱水縮合化合物は該膜を透過しにくく、水は該膜を透過しやすいこととなる。そして、水が優先的に該膜を透過することにより、反応組成物から水が選択的に減少し、脱水縮合反応の平衡が脱水縮合側へ傾き、結果として原料の反応転化率がより優れたものになり得る。
【0052】
水が透過する親水性の膜としては、例えば、珪酸塩などで形成された親水性無機膜、又は親水性高分子で形成された親水性有機膜などを用いることができる。なかでも、作製することが比較的容易でありながら水が選択的に透過できるという点で、親水性有機膜を用いることが好ましい。
【0053】
前記親水性無機膜としては、例えば、結晶中に微細孔を有する親水性無機膜、具体的には、ゼオライト(アルミノ珪酸塩)で形成されたゼオライト膜を用いることができる。
前記ゼオライト膜としては、例えば、Si/Al比が1のNaA型ゼオライト膜を用いることができる。NaA型ゼオライト膜は、親水性に優れていることから、脱水縮合反応に伴って生成する水が該膜を優先的に透過することができる。
【0054】
前記親水性有機膜は、分子中に極性基を有する親水性高分子で形成されているものである。前記親水性有機膜としては、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ポリオキシエチレン、デオキシリボ核酸、又は、分子中にヒドロキシ基を含有する高分子で形成された親水性有機膜を用いることが好ましく、なかでも分子中にヒドロキシ基を含有する高分子で形成された親水性有機膜を用いることがより好ましい。
分子中にヒドロキシ基を含有する高分子で形成された親水性有機膜を用いることにより、脱水縮合反応に伴って生成する水が該有機膜をより優先的に透過することができるため、反応組成物に含まれる水をより選択的に減少させることができ、原料の反応転化率がより優れたものになり得るという利点がある。
【0055】
分子中にヒドロキシ基を含有する高分子としては、例えば、ヒドロキシ基含有(メタ)アクリル酸エステルを構成単位として有する重合体、ビニルアルコールを構成単位として有する重合体などを用いることができる。
なお、分子中にヒドロキシ基を含有する高分子で形成された親水性有機膜は、テトラエトキシシランなどのテトラアルコキシシラン又はシランカップリング剤などの存在下で形成されることにより、ヒドロキシ基を介して架橋されてなるものが好ましい。斯かる膜を用いることにより、膜の強度を比較的高いものとしつつ原料の反応転化率がより優れたものになり得るという利点がある。
【0056】
前記ヒドロキシ基含有(メタ)アクリル酸エステルを構成単位として有する重合体としては、例えば、ヒドロキシ基含有(メタ)アクリル酸エステルのホモポリマー又はコポリマーを用いることができ、具体的には、ポリ2−ヒドロキシエチルアクリレート、ポリ2−ヒドロキシプロピルアクリレート、ポリ4−ヒドロキシブチルアクリレート、又はこれらホモポリマーの構成単位の複数種を共重合させたコポリマー等を用いることができる。
【0057】
前記ビニルアルコールを構成単位として有する重合体としては、例えば、ビニルアルコールのみを構成単位とするポリビニルアルコール、ビニルアルコールと他のモノマー単位とを構成単位とするポリビニルアルコールコポリマーなどを用いることができる。
【0058】
なかでも分子中にヒドロキシ基を含有する高分子としては、水との親和性が適度にあるという点で、ポリビニルアルコールが好ましい。即ち、前記親水性有機膜としては、ポリビニルアルコールで形成された親水性有機膜が好ましい。
【0059】
前記親水性有機膜を形成している高分子の分子量は、特に限定されるものではないが、膜の立体的形状を保ちやすいという点で、数平均分子量が50,000〜200,000であることが好ましい。
【0060】
なお、前記膜の厚さは、特に限定されるものではなく、通常、30μm〜100μm程度である。
【0061】
前記膜は、従来公知の一般的な方法で作製できる。
具体的には、前記親水性無機膜がNaA型ゼオライト膜である場合、例えば、ケイ酸ナトリウム、水酸化アルミニウム、水酸化ナトリウムおよび純水をAl23:SiO2:Na2O:H2O=1:2:2:120のモル比で混合した混合物中に、アルミノケイ酸塩鉱物で形成された多孔性の担体(気孔率約35%、平均細孔径1μm)を浸漬し、100℃で4時間程度水熱合成することにより作製することができる。
また、前記親水性有機膜が親水性高分子で形成されている場合、例えば、該高分子を溶解する有機溶媒に該高分子を溶解させて高分子溶液を調製し、所定の面積の容器に該高分子溶液を入れ、その後有機溶媒を揮発させることにより作製できる。
【0062】
なお、前記親水性高分子は、従来公知の一般的な方法で調製できる。また、該高分子としては、市販されているものを用いることができる。
【0063】
前記取出工程では、脱水縮合反応により生じた脱水縮合化合物を取り出す。
詳しくは、前記取出工程では、例えば脱水縮合化合物が揮発しやすい化合物である場合、減圧状態にすることにより、イオン性液体や脱水縮合反応触媒などから容易に脱水縮合化合物を揮発させて取り出すことができる。また、例えば脱水縮合化合物が揮発しにくい化合物である場合、イオン性液体を溶解させにくく且つ脱水縮合化合物を溶解させる、非極性の有機溶媒を加えて斯かる有機溶媒にイオン性液体を溶解させることにより、脱水縮合化合物が溶解した有機溶媒の溶液とイオン性液体とに相分離させる。そして、脱水縮合化合物が溶解した有機溶媒の溶液を取り出し、有機溶媒を揮発させることにより脱水縮合化合物を取り出すことができる。
【0064】
本実施形態の脱水縮合化合物の製造方法は上記例示の通りであるが、本発明は、上記例示の脱水縮合化合物の製造方法に限定されるものではない。また、本発明では、一般の脱水縮合化合物の製造方法において採用される種々の形態を、本発明の効果を損ねない範囲で採用することができる。
【実施例】
【0065】
以下に、実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0066】
(試験例1)
以下のようにして、エステル化反応により、脱水縮合化合物としての酢酸n−ブチルを製造した。
まず、下記の原料を混合し、混合組成物を調製して混合工程を実施した。
脱水縮合化合物の原料:5.25gの酢酸
脱水縮合化合物の原料:4.05gの1−ブタノール
イオン性液体:1.65gの1−アリル−3−ブチルイミダゾリウム
ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド([ABIM]TFSI)
脱水縮合反応触媒:0.1mLの98%濃硫酸
次に、100℃で2時間、混合組成物を撹拌しながら脱水縮合反応(エステル化反応)をおこない、反応工程を実施した。
反応工程を実施している間は、膜透過工程を実施しなかった(減圧なし)。また、反応工程の実施に伴い、水が混合組成物の上方側に相分離した。
最後に、エステル化によって生じた酢酸n−ブチルをヘキサンでの抽出により取り出し、取出工程を実施した。
【0067】
(試験例2〜5)
脱水縮合反応の時間を4,6,8,12時間とした点以外は、試験例1と同様にして、それぞれ酢酸n−ブチルを製造した。
【0068】
(試験例6〜10)
脱水縮合反応の温度を50℃,60℃,70℃,80℃,90℃とした点以外は、試験例1と同様にして、それぞれ酢酸n−ブチルを製造した。
【0069】
(試験例11)
イオン性液体及び脱水縮合反応触媒のいずれも用いなかった点以外は、試験例1と同様にして、それぞれ酢酸n−ブチルを製造した。
【0070】
(試験例12)
イオン性液体を用いなかった点(反応溶媒を用いなかった点)以外は、試験例1と同様にして、それぞれ酢酸n−ブチルを製造した。
【0071】
(試験例13)
脱水縮合反応触媒を用いなかった点以外は、試験例1と同様にして、それぞれ酢酸n−ブチルを製造した。
【0072】
<エステル化反応における反応転化率>
混合工程を実施した直後の混合組成物と、所定時間反応工程を実施した脱水縮合反応の後の組成物とにおいて、酢酸量を中和滴定で測定することにより、反応転化率を算出した。
【0073】
試験例1〜5における反応転化率をグラフ化したものを図2に、試験例1及び試験例6〜10における反応転化率をグラフ化したものを図3に示す。また、試験例1及び試験例11〜13における反応条件及び反応転化率を表1に示す。
【0074】
【表1】

【0075】
(試験例14)
図1(a)に示すように膜を配置し、以下のようにして、脱水縮合化合物としての酢酸n−ブチルを製造した。
まず、下記の原料を混合し、混合組成物を調製して混合工程を実施した。
脱水縮合化合物の原料:5.25gの酢酸
脱水縮合化合物の原料:4.05gの1−ブタノール
イオン性液体:1.65gの1−アリル−3−ブチルイミダゾリウム
ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド
脱水縮合反応触媒:0.1mLの98%濃硫酸
次に、100℃で2時間、混合組成物を撹拌しながら脱水縮合反応(エステル化反応)をおこない、反応工程を実施した。
反応工程を実施している間、ポリビニルアルコール(数平均分子量22,000)で形成された膜を混合組成物の上方側に離間させて水平方向に配置し、該膜を介して減圧ポンプにて15Paにまで減圧し、エステル化に伴って生成した水が上記膜を透過するようにし、膜透過工程を実施した。即ち、図1(a)に示すエバポミエーション法を採用することにより膜透過工程を実施した。
最後に、エステル化によって生じた酢酸n−ブチルをヘキサンでの抽出により取り出し、取出工程を実施した。
なお、膜の形成は、ポリビニルアルコールが5重量%となるように水に溶解させたポリビニルアルコール水溶液の10gを直径7.5cmの円筒状型枠に入れ、80℃で50時間静置することによりおこなった。
【0076】
(試験例15〜19)
酢酸及び1−ブタノールの総量に対して10重量%,30重量%,40重量%,60重量%,80重量%のイオン性液体を用いた点以外は、試験例14と同様にして、それぞれ酢酸n−ブチルを製造した。
【0077】
(試験例20)
イオン性液体を用いなかった点(反応溶媒を用いなかった点)以外は、試験例14と同様にして酢酸n−ブチルを製造した。
【0078】
(試験例21〜26)
酢酸及び1−ブタノールの総量に対して0重量%,10重量%,30重量%,40重量%,60重量%,80重量%のイオン性液体を用いた点以外は、試験例1と同様にして、それぞれ酢酸n−ブチルを製造した。即ち、膜透過工程を実施せず常圧で反応工程を実施して酢酸n−ブチルを製造した。
【0079】
試験例14〜20における反応転化率をグラフ化したものを図4(a)に、試験例1及び試験例21〜26における反応転化率をグラフ化したものを図4(b)に示す。
【0080】
(試験例27,28)
脱水縮合反応の時間を6時間,10時間とした点以外は、試験例14と同様にして、それぞれ酢酸n−ブチルを製造した。
試験例14,27,28における反応転化率をグラフ化したものを図5に示す。
【0081】
(試験例29)
脱水縮合反応の際、マイクロウェーブを照射した点以外は、試験例14と同様にして酢酸n−ブチルを製造した。なお、マイクロウェーブの照射条件は、1500MHzで20分とした。
【0082】
試験例11、試験例12、試験例1、試験例14、試験例29における反応条件及び反応転化率を表2に示す。
【0083】
【表2】

【0084】
続いて、エーテル化反応により脱水縮合化合物を製造した例について説明する。
【0085】
(試験例30)
以下のようにして、エーテル化反応により、脱水縮合化合物としてのエチルターシャリーブチルエーテル(ETBE)を製造した。
まず、下記の原料を混合し、混合組成物を調製して混合工程を実施した。
脱水縮合化合物の原料:1.16gのエタノール
脱水縮合化合物の原料:1.87gのtert−ブタノール
イオン性液体:1−エチル−3−メチルイミダゾリウム
p−トルエンスルホナート([EMI]Tos)
(エタノール及びtert−ブタノールの総量に対して20重量%)
脱水縮合反応触媒:触媒用カチオン交換樹脂
(商品名「アンバーリスト15J−WET」オルガノ社製)
次に、70℃で2時間、混合組成物を撹拌しながら脱水縮合反応(エーテル化反応)をおこない、反応工程を実施した。
反応工程を実施している間は、膜透過工程を実施しなかった(減圧なし)。なお、反応工程の実施に伴い、ETBEが混合組成物から相分離した。
最後に、エーテル化によって生じたエチルターシャリーブチルエーテルをヘキサンでの抽出により取り出し、取出工程を実施した。
【0086】
(試験例31〜36)
脱水縮合反応の温度を40℃,50℃,60℃,80℃,90℃,100℃とした点以外は、試験例30と同様にして、それぞれエチルターシャリーブチルエーテルを製造した。
【0087】
(試験例37〜41)
脱水縮合反応の時間を0.5,1.0,1.5,3.0,4.0時間とした点以外は、試験例30と同様にして、それぞれエチルターシャリーブチルエーテルを製造した。
【0088】
<エーテル化反応における反応転化率>
所定時間反応工程を実施した脱水縮合反応の後の組成物において、エーテルの量をガスクロマトグラフィーで測定することにより、反応転化率を算出した。
【0089】
試験例30〜36における反応転化率をグラフ化したものを図6に、試験例30及び試験例37〜41における反応転化率をグラフ化したものを図7に示す。
【0090】
[親水性の膜の作製]
以下に示すようにして、各作製例の親水性の膜を作製した。
【0091】
(作製例1)
ポリビニルアルコール(数平均分子量22,000)とテトラエトキシシラン(TEOS)との合計量に対し、TEOSが20重量%となるように斯かる2種の化合物をジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解し、溶解後の溶液(5重量%溶液)の10gを円筒状型枠に入れ、80℃で50時間静置することにより親水性の膜を作製した。該膜の厚さは82μmであった。
【0092】
(作製例2〜4)
TEOSの量を10,30,40重量%とした点以外は、作製例1と同様にしてそれぞれ親水性の膜を作製した。
【0093】
(作製例5)
TEOSを用いずポリビニルアルコールのみを水に溶解させた点、溶解後の溶液を50℃で24時間静置した点以外は、作製例1と同様にして親水性の膜を作製した。
【0094】
(作製例6)
ポリ塩化ビニルをテトラヒドロフラン(THF)に溶解し、溶解後の溶液(5重量%溶液)の10gをの円筒状型枠に入れ、25℃で24時間静置することにより膜を作製した。
【0095】
(作製例7〜9)
膜の厚さが、17,35,64,82μmとなるように膜を作製した点以外は、作製例1と同様にして親水性の膜を作製した。
【0096】
作製例1〜6の膜の特性(水に対する接触角、密度)を表3に示す。
【0097】
【表3】

【0098】
(試験例42)
以下のようにして、脱水縮合化合物としてのエチルターシャリーブチルエーテル(ETBE)を製造した。
まず、下記の原料を混合し、混合組成物を調製して混合工程を実施した。
脱水縮合化合物の原料:1.16gのエタノール
脱水縮合化合物の原料:1.87gのtert−ブタノール
イオン性液体:1−エチル−3−メチルイミダゾリウム
p−トルエンスルホナート([EMI]Tos)
(エタノール及びtert−ブタノールの総量に対して20重量%)
脱水縮合反応触媒:触媒用カチオン交換樹脂
(商品名「アンバーリスト15J−WET」オルガノ社製)
次に、70℃で2時間、混合組成物を撹拌しながら脱水縮合反応(エーテル化反応)をおこない、反応工程を実施した。
反応工程を実施している間、作製例1の親水性の膜を混合組成物の上方側に離間させて水平方向に配置し、該膜を介して減圧ポンプにて15Paにまで減圧し、エーテル化に伴って生成した水が上記膜を透過するようにし、膜透過工程を実施した。即ち、図1(a)に示すエバポミエーション法を採用することにより膜透過工程を実施した。
最後に、エーテル化によって生じたエチルターシャリーブチルエーテル(ETBE)をヘキサンでの抽出により取り出し、取出工程を実施した。
【0099】
(試験例43〜46)
作製例2〜5の親水性の膜を用いた点以外は、試験例42と同様にして脱水縮合化合物としてのエチルターシャリーブチルエーテル(ETBE)をそれぞれ製造した。
【0100】
<透過速度>
エタノール、tert−ブタノール、エチルターシャリーブチルエーテル、又は水の透過量を測定することにより、透過速度を算出した。具体的には、次式により算出した。
透過速度=透過物の重量(kg)÷[膜面積(m3)×透過処理時間(h)]
なお、エタノール、tert−ブタノール、エチルターシャリーブチルエーテルの測定は、ガスクロマトグラフィーでおこない、水の透過量は、全透過液量からエタノール、tert−ブタノール、及びエチルターシャリーブチルエーテルの量を差し引くことにより求めた。
【0101】
試験例42〜46における反応転化率及び水の透過速度をグラフ化したものを図8に示す。また、試験例42〜46におけるエチルターシャリーブチルエーテル(ETBE)の透過速度をグラフ化したものを図9(a)に、エタノール及びtert−ブタノールの透過速度をグラフ化したものを図9(b)に示す。
【0102】
(試験例47〜51)
脱水縮合反応の時間を4,6,8,10,14時間とした点以外は、試験例42と同様にしてエチルターシャリーブチルエーテル(ETBE)を製造した。
【0103】
試験例42,試験例47〜51における反応転化率をグラフ化したものを図10に示す。
【0104】
(試験例52〜54)
作製例7〜9の親水性の膜を用いた点以外は、試験例42と同様にして脱水縮合化合物としてのエチルターシャリーブチルエーテル(ETBE)をそれぞれ製造した。
【0105】
試験例42,試験例52〜54における反応転化率及び水の透過速度をグラフ化したものを図11に示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン性液体及び脱水縮合反応触媒の存在下で脱水縮合反応をおこなうことにより脱水縮合化合物と水とを含む反応組成物を調製する脱水縮合化合物の製造方法であって、
水が透過する親水性の膜の一方側に前記反応組成物が配されるように該膜を配置し、前記膜の前記反応組成物の側の圧力よりも該膜の他方側の圧力を低くし、前記反応組成物に含まれる水が前記膜を透過することにより前記反応組成物に含まれる水を減少させることを特徴とする脱水縮合化合物の製造方法。
【請求項2】
マイクロウェーブを照射しつつ前記脱水縮合反応をおこなう請求項1記載の脱水縮合化合物の製造方法。
【請求項3】
前記水が透過する親水性の膜として、親水性有機膜を用いる請求項1又は2に記載の脱水縮合化合物の製造方法。
【請求項4】
前記水が透過する親水性の膜として、分子中にヒドロキシ基を含有する高分子で形成された膜を用いる請求項1又は2に記載の脱水縮合化合物の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−84526(P2011−84526A)
【公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−239254(P2009−239254)
【出願日】平成21年10月16日(2009.10.16)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 〔研究集会名〕 第58回高分子学会年次大会(2009年) 〔主催者〕 社団法人 高分子学会 〔刊行物名〕 高分子学会予稿集58巻1号(2009) 〔発行年月日〕 平成21年5月12日
【出願人】(399030060)学校法人 関西大学 (208)
【Fターム(参考)】