説明

脱炭酸装置および燃料電池システム

【課題】脱気装置や脱炭酸塔とその付設配管等の大掛かりな装置の追設を必要としない簡易な構成で効果的に脱炭酸が行える装置を提供する。
【解決手段】水入口部41と水出口部42とを有する水流通管1と、ガス導入部31と霧噴出部32とを有するガス流通管2とで構成された二重管構造の水噴霧器8の水入口部41に、炭酸を含んだ被処理水4を導入して、ガス流通管2内のガス3の噴出力により被処理水4を霧化させ、周囲のガス中に炭酸を溶け込ませ、脱炭酸された処理水16を水回収層9に回収する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中の炭酸分を除去・低減する脱炭酸装置、および脱炭酸装置を備えた燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に脱炭酸装置は、炭酸を含む被処理水の水質を改善する手段として、水タンクの内部に気泡を放出させる機器を備え、これらの気泡の量と拡散度合いにより水中に溶け込んでいる炭酸を気泡中に溶け込ませることで脱炭酸を行う装置である。このような脱炭酸装置の一例として、水タンクの中に気泡を放出することで脱炭酸を行うものがある(例えば特許文献1参照)。
【0003】
また、被処理水を脱イオンにより処理を行う電気脱イオン装置において、電気脱イオン装置から排出される濃縮水に対して膜脱気装置を用いて脱炭酸を行うものがある(例えば特許文献2参照)。
【0004】
また、魚介類飼育水中の溶存ガスを除去するものとして、酸化富化装置によって酸素を凝縮して得た酸素富化空気を魚介類飼育水と接触させ、酸素富化空気中の酸素を飼育水に溶解させるとともに、酸素富化装置から排出される低酸素含有量の排気ガスを飼育水と接触させて、飼育水中に溶存する魚介類の排出ガスを飼育水中から除去する装置がある(例えば特許文献3参照)。
【特許文献1】特開2000−182646号公報
【特許文献2】特開平11−114576号公報
【特許文献3】特開平5−3735号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
燃料電池発電装置においては、燃料電池本体の性能劣化を防ぐため、電池冷却水の脱炭酸性能の向上が不可欠である。一方、特許文献1に記載の脱炭酸装置においては、水タンクに気泡を送り込むために、気泡発生用のポンプとその付設配管の設置に必要なスペースを設けなければならない。また、消費電力の増大や付設機器の増加により装置構成が複雑となる。そのため、コンパクト、かつ低コストを目指す住宅用燃料電池発電設備等においては大きな課題となっていた。
【0006】
また、特許文献2や特許文献3に記載のものにおいては、膜脱気装置や脱炭酸塔とその付設配管の設置に必要なスペースを設けなければならず、装置構成が複雑で大掛かりになるという課題があった。
【0007】
本発明は上述した課題を解決するためになされたものであり、大掛かりな装置の追設を必要としない簡易な構成で効果的に脱炭酸が行える脱炭酸装置、および、かかる脱炭酸装置を備えた燃料電池システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、本発明に係る脱炭酸装置は、炭酸を含む被処理水が流入する水入口部と、該水入口部から流入した被処理水を外部に流出させる水出口部とを有する水流通管と、外部からガスを導入するガス導入部と、前記水出口部近傍にガスを噴出させてこのガスの噴出力で前記被処理水を霧化して外部に噴霧する霧噴出部とを有するガス流通管と、前記霧噴出部から噴霧された被処理水を回収する水回収手段と、を備えたことを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る燃料電池システムは、燃料電池本体と、前記燃料電池本体に水素を含む燃料を供給する燃料供給系と、前記燃料電池本体に空気を供給する空気供給系と、前記燃料電池本体から排出される電池回収水中の炭酸の少なくとも一部を除去する脱炭酸装置と、前記脱炭酸装置で処理された前記電池回収水の少なくとも一部を前記燃料電池本体に供給する給水系と、を有する燃料電池システムにおいて、前記脱炭酸装置は、前記電池回収水が流入する水入口部と、該水入口部から流入した前記電池回収水を外部に流出させる水出口部とを有する水流通管と、前記燃料電池本体の空気極出口ガスからガスを導入するガス導入部と、前記水出口部近傍にガスを噴出させてこのガスの噴出力で前記電池回収水を霧化して外部に噴霧する霧噴出部とを有するガス流通管と、前記霧噴出部から噴霧された電池回収水を回収する水回収手段と、を備えていること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、水出口部から流出した被処理水はガス流通管内のガスの噴出力により霧化され、霧化した被処理水中の炭酸が周囲のガス中に溶け込んで放出されるため、炭酸を含む被処理水の脱炭酸を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明に係る脱炭酸装置の実施形態について図面を参照して説明する。
【0012】
[第1の実施形態]
図1は本発明に係る脱炭酸装置の第1の実施形態を示す模式的構成図である。図1において、脱炭酸装置は、水噴霧器8と、水噴霧器8によって脱炭酸された水を回収する水回収槽9とで構成されている。水噴霧器8は二重管構造であって、内管をなす水流通管1と、水流通管1を取り囲む外管をなすガス流通管2とで構成されている。水流通管1は、炭酸を含んだ被処理水4を導入する水入口部41と水出口部42とを有する。また、ガス流通管2は、ガス導入部31と霧噴出部32を有する。
【0013】
水回収槽9の上部には排気口20が設けられ、下部には排水口21が設けられている。
【0014】
このように構成された本実施形態において、炭酸を含んだ被処理水4を水流通管1の水入口部41に導入する。一方、水流通管1の水出口部42を覆うように設けられたガス流通管2のガス導入部31には外部からガス3が導入される。水流通管1の水入口部41から流入した被処理水4は水流通管1の水出口部42に向かって流れ、水出口部42から流出した炭酸を含んだ被処理水4は、ガス流通管2内でガス3の噴出力で霧化され、霧噴出部32から大気中に噴霧される。
【0015】
本実施形態によれば、炭酸を含んだ被処理水4を、水出口部42近傍でガス3の噴出力によって霧化して水回収槽9中に噴霧される。水回収槽9の上部の排気口20が開いているので、水回収槽9内はほぼ大気圧になっている。水回収槽9内で霧化された被処理水4中の炭酸は、周囲のガス体に溶け込み大気中に放出されるため、被処理水4から炭酸を除去することができる。一方、被処理水4は、霧化によって大気中に炭酸を放出した後、凝縮して処理水(脱炭酸水)16として水回収槽9内に溜まり、排水口21から回収される。
【0016】
なお、必要により、回収した処理水(脱炭酸水)16を水流通管1の水入口部41に戻入するよう構成しても良く、このように構成することにより、さらに低濃度の脱炭酸水を生成することができる。
【0017】
[第2の実施形態]
次に、本発明に係る脱炭酸装置の第2の実施形態について、図2を用いて説明する。図2は、本実施形態に係る脱炭酸装置の水噴霧器8の構成を示す模式的部分縦断面図であり、水回収槽9は図1の構成と同じであるため省略してある。なお、第1の実施形態と同一または類似の構成には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0018】
本実施形態の脱炭酸装置の水噴霧器8では、炭酸を含む被処理水4が流入する水流通管1の管壁に複数の貫通孔19が放射状に設けられ、水流通管1の終端は水流通管1を覆うようにガス流通管2が配置されている。この脱炭酸装置はさらに、図1に示すように、水流通管2の水出口部42側に隣接して設置され、水噴霧器8から噴霧された被処理水4を回収する水回収槽9を有するが、図2では図示を省略している。
【0019】
このように構成された本実施形態において、水流通管1の水入口部41に流入した被処理水4は複数の貫通孔19からガス流通管2内のガス流通路に流出する。一方、ガス流通管2のガス導入部31にはガス3が導入され、このガスがガス流通管2内を流れ、水流通管1の貫通孔19から流出した被処理水4は、ガス3の噴出力により霧化される。脱炭酸された処理水16は、第1の実施形態と同様に、水回収槽9に回収される。
【0020】
本実施形態によれば、炭酸を含んだ被処理水4中の炭酸は、ガス3によって被処理水4が霧化された際に周囲のガス体に溶け込んで空気中に放出されるため、被処理水4の脱炭酸を行うことができる。
【0021】
[第3の実施形態]
次に、本発明に係る脱炭酸装置の第3の実施形態について、図3を用いて説明する。なお、第1の実施形態と同一の構成には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0022】
本実施形態は、燃料電池システムに第1の実施形態または第2の実施形態の脱炭酸装置を組み込んだ例を示している。燃料電池システムは、燃料電池本体7と、燃料5を改質して燃料電池本体7に水素リッチガスを供給する燃料処理系6と、燃料電池本体7に空気11を供給するブロワ12とを含む。本実施形態の燃料電池システムはさらに、燃料電池本体7から排出された電池回収水13と空気極出口ガス14とを導入して電池回収水13を霧化する水噴霧器8と、水噴霧器8を出た水を回収する水回収槽9とを備えている。水噴霧器8および水回収槽9の構造は第1または第2の実施形態(図1、図2)の水噴霧器8および水回収槽9の構造と同様である。
【0023】
燃料電池本体7の空気極出口ガス14をブロワ12により水噴霧器8に導入して、電池回収水13を被処理水として噴出させて霧化させ、水回収槽9で水を回収するように構成している。また、本実施形態においては、電池回収水13を被処理水として水噴霧器8に導入するとともに、脱炭酸され水回収槽9に回収された処理水を、ポンプ10等を用いて、電池供給水15として燃料電池本体7に供給するよう構成されている。
【0024】
本実施形態においては、第1の実施形態(図1)の構成におけるガス3に相当するのが燃料電池本体7の空気極出口ガス14であり、被処理水4に相当するのが燃料電池本体7の回収水13である。炭酸を含んだ燃料電池本体7の回収水13は、水流通管1の水入口部41から導入され、水出口部42から流出する際に、ガス流通管2のガス導入部31から流入した空気極出口ガス14の霧噴出部32からの噴出力により噴霧され霧化される。電池回収水13は霧化により大気中で脱炭酸した後に凝縮され、処理水16として水回収槽9に回収される。回収された処理水16は燃料電池本体7の電池供給水15としてフィードバックされる。
【0025】
本実施形態によれば、燃料電池本体7の空気極出口ガス14を用いて燃料電池回収水13を被処理水4として水噴霧器8にて燃料電池回収水13中の炭酸分を減らすことが可能となる。炭酸は燃料電池本体7の寿命に悪影響を及ぼすため、電池供給水からの脱炭酸はその長寿命化に大きく貢献する。
【0026】
[第4の実施形態]
次に本発明に係る脱炭酸装置の第4の実施形態について、図4を用いて説明する。なお、第1の実施形態と同一の構成には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0027】
この実施形態は第1の実施形態の変形例であって、図4に示すように、水噴霧器8と水回収槽9とを備えている。この実施形態ではさらに、水回収槽9の下部に気泡放出口17が設けられている。この気泡放出口17を通じて、水回収槽9内に回収された処理水16の水中に気泡を吹き込むことができる。
【0028】
このように構成された本実施形態においては、第1の実施形態と同様に、被処理水は、脱炭酸した後に凝縮して、処理水16として水回収槽9内に回収される。ここで、水回収槽9内に回収された処理水16には、前工程で除去しきれなかった微量の炭酸分を含んでいることがある。本実施形態においては、水回収槽9の下部に設けられた気泡放出口17から処理水16中に気泡18が放出される。これにより、処理水16中に残留する炭酸は気泡18中に溶け込んで大気中に放出される。このように、前工程で除去しきれなかった炭酸を含む処理水16からさらに脱炭酸が行われ、脱炭酸効率をさらに向上させることができる。
【0029】
なお、水回収槽9の排水口21と水流通管1の水入口部41とを接続して処理水を循環させるようにすれば、さらに残留炭酸濃度の低い処理水を得ることができる。
【0030】
また、図4に示す構成の変形例として、水噴霧器8の構造を図2に示すものに変えることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る脱炭酸装置の構成を示す模式的縦断面図。
【図2】本発明の第2の実施形態に係る脱炭酸装置の水噴霧器の構成を示す模式的部分縦断面図。
【図3】本発明の第3の実施形態に係る脱炭酸装置を備えた燃料電池システムを示す模式的系統図。
【図4】本発明の第4の実施形態に係る脱炭酸装置の構成を示す模式的縦断面図。
【符号の説明】
【0032】
1…水流通管、2…ガス流通管、3…ガス、4…被処理水、5…燃料、6…燃料処理系、7…燃料電池本体、8…水噴霧器、9…水回収槽、10…ポンプ、11…空気、12…ブロワ、13…電池回収水、14…空気極出口ガス、15…電池供給水、16…処理水、17…気泡放出口、18…気泡、19…貫通孔、20…排気口、21…排水口、31…ガス導入部、32…霧噴出部、41…水入口部、42…水出口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭酸を含む被処理水が流入する水入口部と、該水入口部から流入した被処理水を外部に流出させる水出口部とを有する水流通管と、
外部からガスを導入するガス導入部と、前記水出口部近傍にガスを噴出させてこのガスの噴出力で前記被処理水を霧化して外部に噴霧する霧噴出部とを有するガス流通管と、
前記霧噴出部から噴霧された被処理水を回収する水回収手段と、
を備えたことを特徴とする脱炭酸装置。
【請求項2】
前記ガス流通管は、少なくとも前記水流通管の水出口部を覆うように設けたことを特徴とする請求項1に記載の脱炭酸装置。
【請求項3】
前記水出口部は、前記水流通管の管壁に複数の貫通孔を設けて形成したことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の脱炭酸装置。
【請求項4】
前記ガス流通管は、前記水流通管の周囲を覆うように配設するとともに、前記水流通管の管端が閉止されていることを特徴とする請求項3に記載の脱炭酸装置。
【請求項5】
前記ガス流通管に導入するガスは、燃料電池空気極出口ガスであることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の脱炭酸装置。
【請求項6】
前記水流通管に導入する被処理水は、燃料電池回収水であることを特徴とする請求項1ないし請求項5に記載の脱炭酸装置。
【請求項7】
前記水回収手段は、前記霧化した被処理水の凝縮水を回収する水回収槽を備え、
前記水回収槽に回収された水中に気泡を放出させる気泡放出口を有すること、
を特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の脱炭酸装置。
【請求項8】
燃料電池本体と、
前記燃料電池本体に水素を含む燃料を供給する燃料供給系と、
前記燃料電池本体に空気を供給する空気供給系と、
前記燃料電池本体から排出される電池回収水中の炭酸の少なくとも一部を除去する脱炭酸装置と、
前記脱炭酸装置で処理された前記電池回収水の少なくとも一部を前記燃料電池本体に供給する給水系と、
を有する燃料電池システムにおいて、
前記脱炭酸装置は、
前記電池回収水が流入する水入口部と、該水入口部から流入した前記電池回収水を外部に流出させる水出口部とを有する水流通管と、
前記燃料電池本体の空気極出口ガスからガスを導入するガス導入部と、前記水出口部近傍にガスを噴出させてこのガスの噴出力で前記電池回収水を霧化して外部に噴霧する霧噴出部とを有するガス流通管と、
前記霧噴出部から噴霧された電池回収水を回収する水回収手段と、
を備えていること、
を特徴とする燃料電池システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−189975(P2009−189975A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−34212(P2008−34212)
【出願日】平成20年2月15日(2008.2.15)
【出願人】(301060299)東芝燃料電池システム株式会社 (358)
【Fターム(参考)】