説明

脱穀機

【課題】受網から排塵板へのワラ屑等の排稈の移行を堅実なものとなすこと。
【解決手段】扱胴を有する扱室の送塵口と揺動選別体との間に排塵板を揺動自在に配設し、排塵板の後方に排塵処理胴と吸引排塵ファンとを順次に配設した脱穀機において、排塵処理胴を扱胴の後方に穀稈の流れに直交する状態で配設すると共に、排塵板を扱胴の終端下方に配設し、しかも排塵板は、扱胴下方の受網の下端位置に揺動選別体に連設して配設したので、扱胴により脱穀されたワラ屑等は扱胴の終端下方すなわち受網の後端縁に形成した送塵口から後方に排出されるものであり、この際、受網の下端位置に基準を合わせて排塵板が配設されているので、受網から排塵板へのワラ屑等の排稈の移行を堅実なものとなすことができて、次工程の排塵処理胴へ円滑に移送できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、扱胴の後方に排塵板と排塵処理胴と吸引排塵ファンとを順に配設した脱穀機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、脱穀機においては、特に扱胴の終端部を扱胴本体よりも小径とした二段型扱胴を有するものがある。かかる脱穀機は、小径の扱胴終端部の下方に扱室の送塵口を形成して送塵口の下方に、揺動選別体に配設して一体に揺動する排塵板を配設し、排塵板の下手側に排塵板から搬送されてきた排塵塊をほぐすための排塵処理胴が直交する状態で配置し、更にその下手側には、ほぐされた排塵を吸引排塵ファンにて吸引して機体外に排出するように構成している。
【0003】
例えば、特許文献1には、終端部を小径とした扱胴を有する扱室の送塵口下方で、かつ小径の扱胴終端部下方には、前半部を送塵口に臨ませた排塵板が配置されており、排塵板の後半部上方には、直行状態に排塵処理胴を配置し、更にその後方斜め上方には、吸引排塵ファンを配置した脱穀機構造が開示されている。
【0004】
しかも、排塵板は、扱胴下方の受網の最下端レベルよりも更に下方に配置されており、また、吸引排塵ファンのファンケースは排塵処理胴の扱歯の回転軌跡よりも後方に配設されており、排塵処理胴と吸引排塵ファンとの間に一定の間隔が形成されていた。
【特許文献1】特開2006−262867公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、従来の二段式扱胴を有した脱穀機においては、扱胴下方の受網が扱胴に沿った半円弧状に形成されており、扱胴の終端下方に配設した排塵板は半円弧状の最下端縁より更に下方に位置するように配置されているため、ワラ屑等が送塵口を通り受網と排塵板との間隔から排塵板外に落下するおそれがあり、確実に排塵板上に落下させることができない欠点があった。
【0006】
また、吸引排塵ファンのファンケースと排塵処理胴の扱歯の回転軌跡との間に一定の間隔があるため、排塵処理胴によりほぐされたワラ屑等の排塵が、吸引排塵ファンのファンケース内に吸引される前に下方から上方に回転上昇する排塵処理胴の扱歯にからんで、ファンケースと排塵処理胴との間よりファンケース外に放てきされてしまい、ファンケース内の吸引排塵ファンにより充分に吸引することができず機体外に排出することができない欠点があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)請求項1記載の本発明に係る脱穀機は、扱胴を有する扱室の送塵口と揺動選別体との間に排塵板を揺動自在に配設し、排塵板の後方に排塵処理胴と吸引排塵ファンとを順次に配設した脱穀機において、排塵処理胴を扱胴の後方に穀稈の流れに直交する状態で配設すると共に、排塵板を扱胴の終端下方に配設し、しかも排塵板は、扱胴下方の受網の下端位置に揺動選別体に連設して配設したことを特徴とする。
【0008】
(2)請求項2記載の本発明に係る脱穀機は、請求項1に記載の脱穀機であって、また、本発明では、吸引排塵ファンのファンケースの吸引開口側端縁に排塵処理胴の扱歯が干渉しないような長孔を形成したことを特徴とする。
【0009】
(3)請求項3記載の本発明に係る脱穀機は、請求項1又は2に記載の脱穀機であって、扱胴の終端部を扱胴本体より小径としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
(1)請求項1の発明によれば、扱胴を有する扱室の送塵口と揺動選別体との間に排塵板を揺動自在に配設し、排塵板の後方に排塵処理胴と吸引排塵ファンとを順次に配設した脱穀機において、排塵処理胴を扱胴の後方に穀稈の流れに直交する状態で配設すると共に、排塵板を扱胴の終端下方に配設し、しかも排塵板は、扱胴下方の受網の下端位置に揺動選別体に連設して配設したので、扱胴により脱穀されたワラ屑等は扱胴の終端下方すなわち受網の後端縁に形成した送塵口から後方に排出されるものであり、この際、受網の下端位置に基準を合わせて排塵板が配設されているので、受網から排塵板へのワラ屑等の排稈の移行を堅実なものとなすことができて、次工程の排塵処理胴へ円滑に移送できる効果がある。
【0011】
(2)請求項2の発明によれば、吸引排塵ファンのファンケースの吸引開口側端縁に排塵処理胴の扱歯が干渉しないような長孔を形成したので、排塵処理胴と吸引排塵ファンとを可及的に近接して配置することができるので、脱穀部の全体をコンパクト化することができる効果を有し、特に、ファンケースを排塵処理胴の扱歯の回動軌跡と重設して配置することができるので、ほぐし処理された排塵をファンケース外に飛散させることなく可及的に吸引排塵ファンに吸引して機体外に排出することができる効果がある。
【0012】
(3)請求項3の発明によれば、扱胴の終端部を扱胴本体より小径としたので、排塵板は、扱胴の終端部の小径部分下方に位置することになり、特に、受網の下端位置に合わせて配設しているので、扱室からのワラ屑等の排稈を可及的に多く排塵板に移送することができ、次工程のほぐし、吸引搬送を円滑に行うことができる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の脱穀機は、扱胴を有する扱室の送塵口と揺動選別体との間に排塵板を揺動自在に配設し、排塵板の後方に排塵処理胴と吸引排塵ファンとを順次に配設した脱穀機において、排塵処理胴を扱胴の後方に穀稈の流に直交する状態で配設すると共に、排塵板を扱胴の終端下方に配設し、しかも排塵板は、扱胴下方の受網の下端位置に揺動選別体に連設して配設している。
【0014】
そして、吸引排塵ファンのファンケースの吸引開口側端縁に排塵処理胴の扱歯が干渉しないような長孔を形成し、扱胴の終端部を扱胴本体より小径としている。
【0015】
本発明の実施形態を図面に基づき詳説する。図1は本発明にかかる脱穀機としての脱穀部を搭載したコンバインCの側面図であり、図2は脱穀部と排塵処理部と選別部の断面側面説明図であり、図3はこれら脱穀部と排塵処理部の断面平面説明図であり、図4はこれら脱穀部と排塵処理部の断面背面説明図である。
【0016】
コンバインCは、図1に示すように、左右一対のクローラ式の走行部2,2上に機体フレーム1を配設し、同機体フレーム1の左側前端部に昇降機構11を介して穀稈を刈り取る刈取部3を昇降回動自在に取り付けている。刈取部3には、刈り取った穀稈を搬送する搬送機構12を配置している。搬送機構12の後方位置である機体フレーム1の左側前部には、搬送された穀稈を脱穀する脱穀部5を配設している。脱穀部5の後方位置には、脱穀された穀稈を排塵処理する排塵処理部6を配設している。これら脱穀部5と排塵処理部6との下方位置には、脱穀された穀粒を一番穀粒と二番穀粒に選別する選別部7を配設している。機体フレーム1の右側前部には運転部8と原動機部9を上下に位置させて配設して、これら運転部8と原動機部9の後方位置に穀粒貯留部10を配設している。13は穀粒貯留部10に連動連設した穀粒搬出部、14は機体フレーム1の後部に配設した排藁処理部である。なお、原動機部9は他の各部を駆動するようにしている。
【0017】
このようにして、コンバインCでは、刈取部3で刈り取られた穀稈は、搬送機構12によって脱穀部5へ搬送されて脱穀され、排塵処理部6にて排塵処理されて、排藁は排藁処理部14で排藁処理される。また、脱穀された穀粒や排塵処理された穀粒は選別部7で一番穀粒と二番穀粒に選別される。選別部7にて選別された一番穀粒は、穀粒貯留部10に搬送されて貯留され、その後、穀粒搬出部13によって搬出される。選別部7にて選別された二番穀粒は、再度選別処理される。脱穀された穀稈、すなわち排藁は排藁処理部14でせん断等されて排藁処理される。
【0018】
脱穀部5は、図2〜図4に示すように、扱室20を前・後・左・右側壁20a,20b,20c,20dで形成して、その前・後壁20a,20b間に前後方向に軸線を向けた扱胴軸21(図4参照)を介して扱胴22を軸架している。そして、扱胴22は扱室20の左側部に偏倚させて軸架して、前壁15の下部に前後方向及び左側方を開口して前記搬送機構12と連通する穀稈搬入口23を形成する一方、後壁20bの下部に前後方向及び左側方を開口して排塵処理部6と連通する排稈搬出口24を形成している。扱室20の左側壁20cにはフィードチェーン25(図1参照)を架設状に配設している。
【0019】
このようにして、フィードチェーン25により搬送機構12から受け継いだ穀稈は、穀稈搬入口23を通して扱室20内を移送させることで脱穀処理し、排稈搬出口24を通して搬出した後、排塵処理部6→排藁処理部14まで移送させるようにしている。
【0020】
扱胴22は、図5〜図7にも示すように、前後方向に軸線を向けた円筒状の周壁部26と前・後端壁部27,28とで形成しており、周壁部26は大部分を占める扱胴本体としての大径部26aと後端部に位置する段付き小径の小径部26bとから形成している。29aは大径部26aに突設した扱歯、29bは小径部26bに突設した扱歯である。そして、大径部26aの扱歯29aと小径部26bの扱歯29bの各先端の回転軌跡は略同一となすべく、小径部26bの扱歯29bの突出長を長目に形成している。
【0021】
前記大径部26aの前・後部の直下方位置には、前・後部受網支持壁30,31を前後対向状態に配設している。両前・後部受網支持壁30,31は、長手端面が上下に位置する薄肉の板状体を、大径部26aの周面に沿わせて左右幅方向に円弧状に伸延させて形成して、扱室20を形成する左・右側壁20c,20d間に架設している。そして、前部受網支持壁30の後面の上下方向の中途部と後部受網支持壁31の前面の上下方向の中途部間に、受網32を扱胴22の周面に沿った円弧状に湾曲させて着脱自在に張設している。このようにして、穀稈の穂先部が扱胴22の周壁部26と受網32との間で後方に移送される間に、回転する扱胴22の扱歯29a,29bで脱穀されるようにしている。扱胴22は正面視にて時計廻り、図4に示す背面視にて反時計廻りに回転される。
【0022】
ここで、後部受網支持壁31は、その上端縁31aを大径部26aの周面後端部と一定細幅Hの間隔を開けて対向させて配置することで、大径部26aの周面後端部との間に送塵口33を形成している。そして、送塵口33は受網32よりも上方位置に形成して、受網32を支持している後部受網支持壁31の中途部分から同後部受網支持壁31の上端縁31aまでに高低差h1を持たせて、この高低差部分が穀粒の障壁(仕切り)として機能するようにしている。すなわち、受網32上に脱穀された穀粒が送塵口33を通して排塵処理部6に搬出されることがないように障壁として機能するようにしている。
【0023】
排塵処理部6は、扱室20の送塵口33の後方かつ下方位置に排塵板35を配設し、同排塵板35の後方には排塵処理胴36を穀稈が移送される流れと直交する状態で配設して、同排塵処理胴36の後方斜め上に吸引排塵ファン37を配設している。
【0024】
排塵板35は、図5及び図7に示すように、左右一対の取付座39,39を介して選別部7に配設した揺動選別体38の左右側壁の上面中途部に一体的に横架して、前後方向に揺動する揺動選別体38と一体的に一定前後幅Wだけ前後方向に揺動するようにしている。そして、排塵板35は、前記した後部受網支持壁31の背面(後面)側下部の直後方位置、すなわち湾曲した受網32の最下端位置よりも下方に位置する後部受網支持壁31の下部の直後方位置に配設している。換言すれば、受網32の最下端位置にレベルを合わせて平板状の排塵板35の上端部が位置するように配置していることになる。
【0025】
このようにして、排塵板35は、最前進位置では後部受網支持壁31の背面(後面)に前進して最接近すると共に、後部受網支持壁31の背面(後面)から一定前後幅Wだけ後退して離隔する前後揺動(前後往復動作)を繰り返すようにしている。そして、扱胴22により脱穀されたワラ屑等は扱胴22の終端下方すなわち受網32の後端縁に形成した送塵口33から後方に排出されるものであり、この際、受網32の下端位置に基準を合わせて排塵板35が配設されているので、扱室20から排塵板35へのワラ屑等の排稈の移行を堅実なものとなすことができる。しかも、排塵板35上に移行されたワラ屑等は、ワラ屑や塵とそれらに挟雑混合されている刺さり粒等の残存穀粒を分離(いわゆるささり落とし)して、ワラ屑や塵は次工程の排塵処理胴36へ円滑に移送すると共に、残存穀粒は揺動選別体38に落下させるようにしている。このように、揺動選別体38にワラ屑等を直接落とさずに、一旦排塵板35上に移行させて排塵処理することで、揺動選別体38がワラ屑等で満杯になって選別効率を低下させるという不具合の発生を回避すると共に、残存穀粒を揺動選別体38に落下させて回収することができる。
【0026】
次に、排塵板35の構成について図8〜図11を参照しながら説明する。排塵板35は、板体40と、板体40に穿設した穀粒落下孔41と、板体40上に立設した多数(本実施形態では5つ)の第1〜第5ストローラック42a〜42eと、板体40の後端縁に突設した篩線43とにより構成している。
【0027】
板体40は、図8〜図11に示すように、左右方向に伸延する四角形状に形成して、その前端縁の幅員の約3分の2、すなわち、穀稈の株元側である左側前端縁部の約3分の2をL字形状に切欠して切欠端縁部40aを形成すると共に、残余の右側前端縁部を前方に突出させた突出端縁部40bを形成している。そして、切欠端縁部40aは、排塵板35が前後方向に揺動する際に、前記した後部受網支持壁31に後方から可及的に最接近(干渉しない程度)させることができるように形成している。また、突出端縁部40bは、図6及び図7に示すように、排塵板35が前後方向に揺動する際に、半円弧状に形成されている後部受網支持壁31の最下端から上昇円弧を画く部分(右側終端縁部)の下方位置まで被覆して下方を遮蔽すると共に、同後部受網支持壁31とは干渉しないようにしている。46は板体40の下面左右側部に垂設した筒状連結片であり、同筒状連結片46を介して取付座39に板体40をボルト等により連結している。
従って、排塵板35をコンパクトに構成して排塵口33の下方に位置する揺動選別体38の中途部上方を被覆することができる。その結果、扱室20から搬出された穀稈を確実に排塵板35に受け継いで排塵処理することができる。そして、穀稈と一緒に扱室20から搬出されるワラ屑等が直接揺動選別体38上に落下されることがないようにしている。
【0028】
ここで、後部受網支持壁31の背面(後面)中途部には、図5〜図7に示すように、左右方向に略水平かつ直状に伸延する帯状の間隙遮蔽体44を後方へ向けて庇状に突設している。すなわち、間隙遮蔽体44は、左右幅が板体40の切欠端縁部40aの左右幅と略同一で、前後幅が前記した一定前後幅Wと略同一ないしはやや広幅となした横長四角形板状に形成して、前端縁部を後部受網支持壁31の背面(後面)中途部に固設することで、後方へ略水平に突出させて片持ち支持している。そして、間隙遮蔽体44の直上方位置に扱胴22の小径部26bを配置して、同小径部26bと間隙遮蔽体44の間に送塵口33と排塵板35上とを連通する送塵流路45を形成している。また、小径部分26bの直下方には、排塵板35の前半部が対面する状態で配設している。
【0029】
このようにして、排塵板35が後方向に移動して後部受網支持壁31から離隔した際に、同後部受網支持壁31と切欠端縁部40aとの間に前記した一定前後幅Wだけ間隙が形成されるが、間隙遮蔽体44は、かかる間隙を直上方から被覆して閉塞し、送塵口33から送塵流路45を通して搬出される枝付き籾やワラ屑が、揺動選別体38に落下することなく間隙遮蔽体44を介して排塵板35上に堅実に移送されるようにしている。そして、間隙遮蔽体44の上面から後部受網支持壁31の上端縁31aまでに高低差h2を持たせて、この高低差部分が障壁(仕切り)として機能するようにしている。すなわち、送塵口33から後述する排塵処理部5に搬出される枝付き籾やワラ屑が、扱室20内の受網32上に逆流して通して揺動選別体38の上手方向に戻されることがないように障壁として機能するようにしている。しかも、高低差h2を持たせることで長目に形成した小径部26bの扱歯29bを、送塵流路45を通して搬出される枝付き籾やワラ屑に堅実に作用させることができて、後続の排塵板35による排塵効果を増大させることができる。また、間隙遮蔽体44の右側下方には突出端縁部40bが位置して、間隙遮蔽体44の右側方においても送塵口33から搬出される枝付き籾やワラ屑が直接揺動選別体38に落下することなく排塵板35上に移送されるようにしている。また、排塵板35は、扱胴22の終端部の小径部26bの下方に位置することになり、特に、受網32の下端位置に合わせて配設しているので、扱室20からのワラ屑等の排稈を可及的に多く排塵板35に移送することができ、次工程のほぐし、吸引搬送を円滑に行うことができる効果がある。
【0030】
また、板体40には、図8〜図11に示すように、多数の穀粒落下孔41を相互に前後方向及び左右方向に一定の間隔を開けて千鳥状に整然と穿設している。穀粒落下孔41は、板体40を部分的に上方に打ち起こして形成した凸部40cの後端縁側と、下方にへこませて形成した凹部40dの前端縁側との間に、下手側(後方)へ向けて開口させて形成している。凸部40cの内面(下面)は前低後高の下り傾斜面に形成し、また、凹部40dの内面(上面)前低後高の下り傾斜面に形成している。
【0031】
このようにして、小さなワラ屑や塵の間に挟持混合された穀粒は、板体40の前後揺動等によってすくい取るようにして穀粒落下孔41から下方に落下させるようにしている。すなわち、前後方向に揺動している板体40上に移送されることで揺出され穀粒は、下り傾斜面となした凹部40dの内面(上面)上を転動ないしは滑動して、穀粒落下孔41を通して落下するようにしている。そして、落下した穀粒は二番穀粒として後述する選別部7の下流側に配置した二番樋に回収されるようにしている。
【0032】
また、板体40上には、図8〜図11に示すように、排塵の流れ(前方から後方)に沿って第1〜第5ストローラック42a〜42eを左右幅方向に一定の間隔を開けて立設している。すなわち、第1〜第5ストローラック42a〜42eは、上下に端面を有して前後方向に直状に伸延する板状に形成すると共に、上端縁部に鋸歯状の凹凸部を形成している。そして、凹凸部の凸部は、前傾斜端面を前方から後方へ向けて緩やかな上り傾斜面となし、後傾斜端面を前方から後方へ向けて急な下り傾斜面となしている。このようにして、左右方向に伸延する穀稈は、第1・第2ストローラック42a,42b間上に横架状態にて前方から後方へ移送されるようにしている。この際、穀稈はストローラック42の凹凸部上を前後揺動されながら移送される。なお、本実施形態では、左右に隣接するストローラック間に穀粒落下孔41を2個ないしは3個ずつ形成している。
【0033】
ここで、図8〜図11に示すように、穂先側(右側)の第4・第5ストローラック42d,42eは、フィードチェーン25側(左側)の第1〜第3ストローラック42a〜42cよりも高さにおいて略2倍の大きさに形成している。そして、第1〜第3ストローラック42a〜42cは、板体40の切欠端縁部40a側に配設して、前後幅を切欠端縁部40a側の板体40前後幅と略同一に形成している。また、第4・第5ストローラック42d,42eは、板体40の突出端縁部40b側に配設して、前後幅を突出端縁部40b側の板体40前後幅と略同一に形成している。なお、第2ストローラック42bは、第1・第3ストローラック42a,42bよりもやや低めに形成している。
【0034】
このように、フィードチェーン側の第1〜第3ストローラック42a〜42cは比較的低く形成して、後方の排塵処理胴36側に移送される穀稈の支障とならないようにしている。一方、穂先側の第4・第5ストローラック42d,42eは比較的高く形成して、穀粒を抱いたまま鳥の巣状に絡まったワラ屑等から穀粒を回収することができるようにしている。すなわち、穀稈の株元側から穂先側に背面視にて反時計廻りに回転しながら脱穀作用する扱胴22により、ワラ屑等は第3ストローラック42cから第5ストローラック42e側に移送されながら形成されるが、このワラ屑等に高く形成した第4・第5ストローラック42d,42eが前後揺動して作用する。この際、穂先側の第4・第5ストローラック42d,42eと板体40との高低差が大きいため、鳥の巣状に絡まったワラ屑等は第4・第5ストローラック42d,42eのいずれかに支持されると共にその上に載置された状態で前後に揺動されることになる。そのため、鳥の巣状に絡まったワラ屑等から穀粒を堅実に板体40上に離脱させることができて、この離脱穀粒を板体40に形成した穀粒落下孔41を通して揺動選別体38に回収することができる。
【0035】
ここで、図7に示すように、第1〜第3ストローラック42a〜42cは、それらの前端部が間隙遮蔽体44の直下方において、同間隙遮蔽体44と干渉することなく前後揺動すべく、間隙遮蔽体44との間に一定の非干渉空間Sを確保している。第4・第5ストローラック42d,42eは、間隙遮蔽体44の右側方に配置しているため、それらの上端部を間隙遮蔽体44と略同一レベルに配置している。
【0036】
また、板体40の後端縁は前後一定幅でやや下方に傾斜状に折曲し、その先端には、板体40の前後幅と略同等の長さでバネ線よりなる篩線43を多数突設している。篩線43は排塵処理胴36の下方にまで延設して、排塵板40上に落下したワラ屑や塵を確実に排塵処理胴36側に移送して、移送されたワラ屑が排塵処理胴36の叩きほぐし体56によって万遍なく叩きほぐされるようにしている。
【0037】
特に、揺動する篩線43上に移送されてきたワラ屑等が排塵処理胴36の叩きほぐし体56で叩きほぐされる際にバネ線よりなる篩線43の弾力性によって叩きほぐし体56の叩きほぐしの衝撃が直接に穀粒に伝わらないようにしている。しかも、かかる篩線43の特性、すなわち篩線43がバネ線の特性で振動しながら復元力により上下揺動する機能によってワラ屑塊を効率よく叩きほぐすことができる。
【0038】
排塵処理胴36は、図5〜図7に示すように、前記した排塵板35の後上方において、排塵処理部6の左右側壁50,51間に架設している。そして、排塵処理胴36は、左右方向に軸線を向けた支軸52の外周に左右側端壁53,54を介して左右方向に伸延する円筒状の胴本体55を取り付けて形成している。また、胴本体55の周面には多数の叩きほぐし体56を突設している。叩きほぐし体56は板状の突起体としており、ワラ屑塊を叩きほぐすために最も効率的な形状、例えば、略三角形状としている。このようにして、排塵処理胴36は、図5の左側面図において、反時計廻りに回転させて、前記篩線43上のワラ屑塊を上方から叩きほぐしながら後方へ飛散させるように機能している。
【0039】
従って、叩きほぐし体56は、略三角形状の薄板とし、ワラ屑等を叩く面、すなわち回転方向面はワラ屑等に当接する際に可及的全面が当接し、かつワラ屑等のほぐし時間を長くとることができるように略三角形状の頂角を鈍角の形状としている。
【0040】
吸引排塵ファン37は、図5〜図8に示すように、前記した排塵処理胴36の斜め上後方において、排塵処理部6の左右側壁50,51の後上部間に架設している。そして、吸引排塵ファン37の上方をファンケース57で覆い、同ファンケース57の吸引開口側端縁部57aを排塵処理胴36の背後に近接させて配置している。
【0041】
そして、吸引開口側端縁部57aには、前後方向に伸延する多数の長孔58を左右方向に間隔を開けて形成している。すなわち、ファンケース57の先端部である吸引開口側端縁部57aは、排塵処理胴36の叩きほぐし体56の回転軌跡と重複するように排塵処理胴36の上方にまで延設している。従って、叩きほぐし体56と干渉するために、各叩きほぐし体56と前後方向に符合して干渉する部分にそれぞれ長孔58を形成して、回転する叩きほぐし体56が長孔58を通過しながら回転してファンケース57に干渉しないように構成している。このようにして、ファンケース57の吸引開口側端縁部57aを可及的に排塵処理胴36に近接して配設することができるようになり、その分効率的に排塵を吸引できる。そして、排塵処理部6の全体をコンパクト化することができる効果を有し、特に、ファンケース57を排塵処理胴36の叩きほぐし体56の回動軌跡と重設して配置することができるので、ほぐし処理された排塵をファンケース57外に飛散させることなく可及的に吸引排塵ファン37に吸引して機体外に排出することができる効果がある。
【0042】
次に、選別部7の構成について、図2を参照しながら説明する。すなわち、選別部7の上部には揺動選別体38を前後揺動自在に配設しており、揺動選別体38は、脱穀部5の扱室20下方位置から排塵処理部6の排塵処理胴36下方位置まで伸延させて形成している。そして、揺動選別体38は、フィードパン61、チャシーブ62、グレンシーブ63を装備している。また、揺動選別体38の始端側下方には圧風ファンである唐箕64を設け、同唐箕64の前方側で前記グレンシーブ63の下方には一番螺旋コンベア65を軸装した一番樋66を横設している。
【0043】
排塵板40の後下方には、チャシーブ62、グレンシーブ63、一番樋77により選別回収されなかった選別不充分なワラ屑等に混じった穀粒を選別回収するための二番螺旋コンベア67を軸装した二番樋68が配設している。69は選別ストローラックである。
【0044】
上記のように構成したコンバインCにおいては、フィードチェーン25で株元挟持状態の穀稈の穂先箇所を扱室20内に臨ませて回転駆動する扱胴22の扱歯29aにより扱き処理され、脱穀処理された処理物は受網32から漏下し、揺動選別体38の揺動選別作用や唐箕64の風選別作用により一番樋66に落下供給される。
【0045】
一方、受網32から漏下できなかった枝付き籾やワラ屑などの処理物は扱室20終端の送塵口33から排塵板35、排塵処理胴36に搬送されて処理され、処理穀粒は二番樋68に落下供給される。
【0046】
特に、フィードチェーン25により挟持搬送される穀稈の穂先は扱胴22の小径部26bに突設した長目の扱歯29bによって扱き作用を受けて根元側の扱ぎ残しを可及的に解消するものであり、送塵口33と排塵板35上とを連通する送塵流路45を通して排塵板35上に搬出された処理物は直交状態の排塵処理胴36の叩きほぐし体56により叩きつけられて処理物の偏りを解消しながら枝付き籾やワラ屑などの処理物を叩きほぐすものであり、搬送方向下手側に搬送されて残された処理物の全体を均等にほぐし、後方の吸引排塵ファン37の吸引効率を向上できるようにしている。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明かかる脱穀機としての脱穀部を搭載したコンバインの側面図。
【図2】脱穀部と排塵処理部と選別部の断面側面説明図。
【図3】脱穀部と排塵処理部の断面平面説明図。
【図4】脱穀部と排塵処理部の断面背面説明図。
【図5】排藁処理部の拡大側面説明図。
【図6】排藁処理部の拡大平面説明図。
【図7】排藁処理部の拡大背面説明図。
【図8】排塵板の斜視図。
【図9】排塵板の平面図。
【図10】排塵板の背面図。
【図11】排塵板の拡大右側面図。
【符号の説明】
【0048】
C コンバイン
35 排塵板
36 排塵処理胴
37 吸引排塵ファン
38 揺動選別体
40 板体
42a 第1ストローラック
42b 第2ストローラック
42c 第3ストローラック
42d 第4ストローラック
42e 第5ストローラック
43 篩線
44 間隙遮蔽体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
扱胴を有する扱室の送塵口と揺動選別体との間に排塵板を揺動自在に配設し、排塵板の後方に排塵処理胴と吸引排塵ファンとを順次に配設した脱穀機において、
排塵処理胴を扱胴の後方に穀稈の流れに直交する状態で配設すると共に、排塵板を扱胴の終端下方に配設し、しかも排塵板は、扱胴下方の受網の下端位置に揺動選別体に連設して配設したことを特徴とする脱穀機。
【請求項2】
吸引排塵ファンのファンケースの吸引開口側端縁に排塵処理胴の扱歯が干渉しないような長孔を形成したことを特徴とする請求項1に記載の脱穀機。
【請求項3】
扱胴の終端部を扱胴本体より小径としたことを特徴とする請求項1又は2に記載の脱穀機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−136648(P2010−136648A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−314829(P2008−314829)
【出願日】平成20年12月10日(2008.12.10)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】