説明

脱穀装置及びこれを備えたコンバイン

【課題】緊急停止の際にフィードチェンが即時停止する脱穀装置を提供する。
【解決手段】フィードチェン1に対して脱穀時移送方向の動力を供給する正転駆動系と、フィードチェン1に対して脱穀時移送方向とは反対向きの動力を供給する逆転駆動系とを備え、脱穀時には、逆転駆動系による動力の供給を切った状態で、正転駆動系による動力をフィードチェン1に供給し、緊急停止時には正転駆動系による動力の供給を切った状態で又は正転駆動系による動力の供給を切らずにその動力に抗して、逆転駆動系による動力をフィードチェン1に供給してフィードチェン1を停止させる又は脱穀時移送方向とは反対向きに駆動する構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、緊急停止機能を有する脱穀装置及びこれを備えたコンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
コンバインでの収穫作業においては、コンバインを走行させつつ、前部に装備された刈取機で圃場内の立毛穀稈を刈取り、この刈取穀稈をそのまま後方に移送して脱穀装置のフィードチェン及び挟持杆の間に自動的に受け渡し(自動供給)、フィードチェンにより移送しつつ脱穀を行うことが主要作業であるが、作業者により畦際を手刈り取した刈取穀稈を、フィードチェンに手動供給して脱穀を行うことも行われる。
【0003】
これら刈取穀稈の自動又は手動供給中に、フィードチェンと挟持杆との間に異物(帽子や手袋、作業用具、石や木片等)が送り込まれると、機器故障等を招きかねないため、通常は脱穀装置に緊急停止手段が設けられており、この緊急停止手段の停止操作により、原動機が停止し、これに伴い脱穀装置が停止するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−318162号公報
【特許文献2】特開2000−60288号公報
【特許文献3】特開2001−90567号公報
【特許文献4】特開2010−235252号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の技術では、脱穀装置の緊急停止手段を停止操作して、原動機を停止させたとしても、原動機のフライホイルや、原動機により回転駆動される扱胴等の各部の回転体の慣性により、フィードチェンは即時停止せず、停止操作後も異物が搬送されてしまい、機器故障を引き起こす、機器故障を拡大する、あるいは異物の除去作業が困難(特に異物がフィードチェンと挟持杆との間に挟まれた状態になった場合等)になるという問題点があった。
そこで、本発明の主たる課題は、これらの問題点を解決することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決した本発明は次のとおりである。
すなわち、請求項1記載の発明は、フィードチェン(1)と挟持杆(2)との間で穀稈を挟持しかつフィードチェン(1)の移動により穀稈を移送しつつ回転駆動される扱胴(21)に穀稈の穂先を接触させて脱穀を行う構成の脱穀装置(14)において、
前記フィードチェン(1)に対して脱穀時移送方向の動力を供給する正転駆動系と、前記フィードチェン(1)に対して脱穀時移送方向とは反対向きの動力を供給する逆転駆動系とを備え、
脱穀時には、前記逆転駆動系による動力の供給を切った状態で、前記正転駆動系による動力を前記フィードチェン(1)に供給し、緊急停止時には前記正転駆動系による動力の供給を切った状態で又は前記正転駆動系による動力の供給を切らずにその動力に抗して、前記逆転駆動系による動力を前記フィードチェン(1)に供給して該フィードチェン(1)を停止させるか又は脱穀時移送方向とは反対向きに駆動する構成としたことを特徴とする脱穀装置(14)である。
【0007】
請求項2記載の発明は、原動機(35)と、この原動機(35)の動力を前記扱胴(21)の回転動力として伝動する主伝動経路と、この主伝動経路又はこれに繋がる伝動経路の途中から分岐して主伝動経路の伝動力を前記正転駆動系の動力として伝動する第一伝動経路(R1)と、前記主伝動経路又はこれに繋がる伝動経路の途中から分岐してその分岐元の伝動経路及びこれに繋がっている伝動経路の伝動力を前記逆転駆動系の動力として伝動する第二伝動経路(R2)と、前記主伝動経路における前記第一伝動経路(R1)への分岐位置より上手側で、前記原動機(35)から前記主伝動経路への伝動を入切する脱穀クラッチ(47)と、前記第二伝動経路(R2)による前記逆転駆動系への伝動を入切する第二伝動クラッチ(66)とを備え、
前記脱穀時には、前記脱穀クラッチ(47)を接続するとともに前記第二伝動クラッチ(66)を遮断し、前記緊急停止時には、前記脱穀クラッチ(47)を遮断するとともに前記第二伝動クラッチ(66)を接続し、前記第二伝動経路(R2)の分岐元の伝動経路及びこれに繋がっている伝動経路に残る慣性力を動力として前記第二伝動経路(R2)に供給して、前記フィードチェン(1)を停止させるか又は脱穀時移送方向とは反対向きに駆動する構成としたことを特徴とする請求項1記載の脱穀装置(14)である。
【0008】
請求項3記載の発明は、前記第一伝動経路(R1)による前記正転駆動系への伝動を入切する第一伝動クラッチ(65)を備え、前記脱穀時には、前記脱穀クラッチ(47)及び前記第一伝動クラッチ(65)をそれぞれ接続するとともに前記第二伝動クラッチ(66)を遮断し、前記緊急停止時には、前記脱穀クラッチ(47)及び前記第一伝動クラッチ(65)をそれぞれ遮断するとともに前記第二伝動クラッチ(66)を接続し、前記第二伝動経路(R2)の分岐元の伝動経路及びこれに繋がっている伝動経路に残る慣性力を動力として前記第二伝動経路(R2)に供給して、前記フィードチェン(1)を停止させるか又は脱穀時移送方向とは反対向きに駆動する構成としたことを特徴とする請求項2記載の脱穀装置(14)である。
【0009】
請求項4記載の発明は、前記第一伝動経路(R1)にトルクリミッタ(70)を介在させ、前記緊急停止時には、前記脱穀クラッチ(47)を遮断するとともに前記第二伝動クラッチ(66)を接続し、前記第一伝動経路(R1)の分岐元の伝動経路及びこれに繋がっている伝動経路に残る慣性力を動力として第一伝動経路(R1)に供給するとともに、前記第二伝動経路(R2)の分岐元の伝動経路及びこれに繋がっている伝動経路に残る慣性力を動力として前記第二伝動経路(R2)に供給して、前記フィードチェン(1)に正逆両方の動力を与えることにより、前記トルクリミッタ(70)に設定トルク以上のトルクを発生させて前記第一伝動経路(R1)を前記トルクリミッタ(70)で遮断するとともに、前記第二伝動経路(R2)を介して前記フィードチェン(1)を停止させるか又は脱穀時移送方向とは反対向きに駆動する構成としたことを特徴とする請求項2記載の脱穀装置(14)である。
【0010】
請求項5記載の発明は、前記第一伝動経路(R1)及びその分岐元の伝動経路の少なくとも一部を複数のプーリ及びこれに巻き掛けられたベルトにより構成するとともに、前記第二伝動経路(R2)の少なくとも一部を複数のプーリ(37p,48p)及びこれに巻き掛けられたベルト(38)により構成し、前記緊急停止時には、前記脱穀クラッチ(47)を遮断するとともに前記第二伝動クラッチ(66)を接続し、前記第一伝動経路(R1)の分岐元の伝動経路及びこれに繋がっている伝動経路に残る慣性力を動力として第一伝動経路(R1)に供給するとともに、前記第二伝動経路(R2)の分岐元の伝動経路及びこれに繋がっている伝動経路に残る慣性力を動力として前記第二伝動経路(R2)に供給して、前記フィードチェン(1)に正逆両方の動力を与えることにより、前記第二伝動経路(R2)を構成するプーリ(37p,48p)及びベルト(38)間は滑らずに、前記第一伝動経路(R1)又はその分岐元の伝動経路を構成する少なくとも一部のプーリ及びベルト間が滑り、前記第二伝動経路(R2)を介して前記フィードチェン(1)を停止させるか又は脱穀時移送方向とは反対向きに駆動する構成としたことを特徴とする請求項2記載の脱穀装置(14)である。
【0011】
請求項6記載の発明は、原動機(35)と、この原動機(35)の動力を前記扱胴(21)の回転動力として伝動する主伝動経路と、前記原動機(35)とは別個に設けられ前記正転駆動系をなす電動機(71)と、前記主伝動経路又はこれに繋がる伝動経路の途中から分岐してその分岐元の伝動経路及びこれに繋がっている伝動経路の伝動力を前記逆転駆動系の動力として伝動する第二伝動経路(R2)と、前記原動機(35)から前記主伝動経路への伝動を入切する脱穀クラッチ(47)と、前記第二伝動経路(R2)による前記逆転駆動系への伝動を入切する第二伝動クラッチ(66)とを備え、
前記脱穀時には、前記脱穀クラッチ(47)を接続し前記電動機(71)を駆動するとともに前記第二伝動クラッチ(66)を遮断し、前記緊急停止時には、前記脱穀クラッチ(47)を遮断し前記電動機(71)を駆動停止するとともに前記第二伝動クラッチ(66)を接続し、前記第二伝動経路(R2)の分岐元の伝動経路及びこれに繋がっている伝動経路に残る慣性力を動力として前記第二伝動経路(R2)に供給して、前記フィードチェン(1)を停止させるか又は脱穀時移送方向とは反対向きに駆動する構成としたことを特徴とする請求項1記載の脱穀装置(14)である。
【0012】
請求項7記載の発明は、前記緊急停止後に前記脱穀クラッチ(47)を接続することにより、前記第二伝動クラッチ(66)が切れる構成としたことを特徴とする請求項2〜6のいずれか1項に記載の脱穀装置(14)である。
【0013】
請求項8記載の発明は、前記フィードチェン(1)の支持部を移送方向上流側に位置する上流側チェン支持部(75)と移送方向下流側に位置する下流側チェン支持部(76)とに分割するとともに、前記上流側チェン支持部(75)を前記下流側チェン支持部(76)側の端部を回動支点として前記挟持杆(2)から離間する方向に回動する構成とし、
前記緊急停止時には、前記上流側チェン支持部(75)を前記挟持杆(2)から離間する方向に回動させて、フィードチェン(1)における前記上流側チェン支持部(75)に位置する部分を前記挟持杆(2)から離間させる構成としたことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の脱穀装置(14)である。
【0014】
請求項9記載の発明は、前記正転駆動系は前記フィードチェン(1)の移送方向下流側端部に動力を供給する構成とし、前記逆転駆動系は前記フィードチェン(1)における移送方向上流側端部に動力を供給する構成としたことを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の脱穀装置(14)である。
【0015】
請求項10記載の発明は、請求項1〜9のいずれか1項に記載の脱穀装置(14)を備えたことを特徴とするコンバイン(10)である。
【発明の効果】
【0016】
請求項1記載の発明によれば、脱穀装置(14)の緊急停止時には正転駆動系の慣性に関係なく、逆転駆動系によりフィードチェン(1)を即時停止させる又は脱穀時移送方向とは反対向きに駆動するため、停止操作後も異物が搬送されるといった事態を防止でき、もって、機器故障及びその拡大の防止、並びに異物除去作業の容易化等を図ることができる。
【0017】
請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の発明による効果に加えて、専用の原動機(35)を必要とせずに、簡素な構成で逆転駆動系を構成することができる。
【0018】
請求項3記載の発明によれば、請求項2記載の発明による効果に加えて、緊急停止時には、第一伝動クラッチ(65)により正転駆動系の動力の伝動を切るため、第二伝動経路(R2)を介してフィードチェン(1)を停止させる又は脱穀時移送方向とは反対向きに駆動するための負荷が少なくて済むという利点がある。
【0019】
請求項4記載の発明によれば、請求項2記載の発明による効果に加えて、第一伝動経路(R1)による正転駆動系の動力の伝動をクラッチにより積極的に切ることなく、第二伝動クラッチ(66)を接続するだけでトルクリミッタ(70)の作用により即時にフィードチェン(1)を停止させる又は脱穀時移送方向とは反対向きに駆動することができ、フィードチェン(1)の正転・逆転の切り替えをより高速に行うことができるとともに、その切り替え制御も簡素となる。
【0020】
請求項5記載の発明によれば、請求項2記載の発明による効果に加えて、第一伝動経路(R1)による正転駆動系の動力の伝動をクラッチにより積極的に切ることなく、第二伝動クラッチ(66)を接続するだけで、第二伝動経路(R2)を構成するプーリ(37p,48p)及びベルト(38)間は滑らずに、第一伝動経路(R1)又はその分岐元の伝動経路を構成する少なくとも一部のプーリ及びベルト間が滑ることにより、即時にフィードチェン(1)を停止させる又は脱穀時移送方向とは反対向きに駆動することができ、フィードチェン(1)の正転・逆転の切り替えをより高速に行うことができるとともに、その切り替え制御及び伝動機器の構成も簡素となる。
【0021】
請求項6記載の発明によれば、請求項1記載の発明による効果に加えて、扱胴(21)及び第二伝動経路(R2)への動力を供給する原動機(35)とは別個に、正転駆動系をなす電動機(71)を設けて、正転駆動系の入切を電動機(71)の入切により行う構成としたことにより、正転駆動系の入切のための装置構成及び切換制御が簡素となる。
【0022】
請求項7記載の発明によれば、請求項2〜6のいずれか1項に記載の発明による効果に加えて、緊急停止後に脱穀クラッチ(47)を接続することにより、第二伝動クラッチ(66)が切れるため、脱穀装置(14)の再始動を自動で容易に行うことができる。
【0023】
請求項8記載の発明によれば、請求項1〜7のいずれか1項に記載の発明による効果に加えて、緊急停止時には、上流側チェン支持部(75)を挟持杆(2)から離間する方向に回動させて、フィードチェン(1)における上流側チェン支持部(75)に位置する部分を挟持杆(2)から離間させるため、フィードチェン(1)と挟持杆(2)との間に挟まれた異物を除去し易くなる。
【0024】
請求項9記載の発明によれば、請求項1〜8のいずれか1項に記載の発明による効果に加えて、正転駆動系及び逆転駆動系の各動力が効率良くフィードチェン(1)に供給されるようになる。
【0025】
請求項10記載の発明によれば、コンバイン(10)において、請求項1〜9のいずれか1項に記載の発明による脱穀装置(14)の利点を有するようになる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】コンバインの側面図である。
【図2】コンバインの平面図である。
【図3】コンバインの正面図である。
【図4】脱穀装置の縦断面図である。
【図5】脱穀装置の縦断面図である。
【図6】伝動機構図である。
【図7】第一伝動クラッチの側面図及び横断面図である。
【図8】伝動機構図である。
【図9】伝動機構図である。
【図10】伝動機構図である。
【図11】フィードチェン部分の側面図である。
【図12】制御ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の一実施形態について添付図面に基づいて具体的に説明する。
(第1の形態)
図1〜図3はコンバイン10の外観を示している。このコンバイン10は、左右一対のクローラ11,11を装備した車体12上に、穀稈供給口13を前側に位置させて脱穀装置14を搭載し、その前部に刈取搬送装置15を設けて構成したものである。
【0028】
刈取搬送装置15は、低部の刈取装置6と、刈取穀稈をフィードチェン1及び挟持杆2による搬送始端部まで搬送する図示しない穀稈搬送装置と、前部の穀稈引起し装置42等から構成している。
【0029】
脱穀装置14は、図4及び図5に示すように、前側板16と後側板17との間に扱室18が形成され、扱室18の扱口と反対側の前側に二番処理室、及びその後方に排塵処理室を配置して構成している。扱胴21は扱室18内に、二番処理胴22は二番処理室に、更に、排塵処理胴23は排塵処理室内にそれぞれ軸架して構成されている。なお、二番処理胴22と排塵処理胴23とは、一体化されて直列同心状をなしている。
【0030】
排塵処理胴23は、始端部の扱室18の排塵口24に臨ませた部分を掻込胴として掻込螺旋を設け、それに引続いて傾斜状に順次後方側の外径を拡大して誘導部を形成して扱室18から排塵物の取り込みを促進できる形状に構成している。
【0031】
フィードチェン1は無端軌道を構成するように後端部駆動スプロケット55と前端部駆動スプロケット59とに巻き掛けられているものである。フィードチェン1の上側軌道部分が扱室18の側部に形成された扱口に沿って設けられるとともに、その上側に位置する挟持杆2がスプリング2sにより下側に位置するフィードチェン1側に付勢されており、この状態でフィードチェン1が後方に向かって移動することにより、フィードチェン1と挟持杆2との間で穀稈の株元を挟持して、先端穂部を扱室18に挿入した状態で後方に搬送し、その過程で穂先部を扱胴21で脱穀した後、終端部から脱穀後の排藁を排藁チェン25に受け継がせて機外に搬送するようになっている。なお、フィードチェン1は、搬送始端部の内側に図示しない受継ぎチェンが設けられ、前側の刈取搬送装置15の終端部分から刈取穀稈を、受け継ぎながら搬送する構成としている。
【0032】
選別室28は、図4に示すように、上側に揺動選別棚29が設けられており、その下側に選別方向の上手側から唐箕30、一番移送螺旋31、二番移送螺旋33の順にそれぞれ軸装して構成している。符号32は唐箕30の送風方向を二つに分ける風向板を示している。二番揚穀装置34は、下部が二番移送螺旋33の終端部に接続され、上部が二番処理胴22を有する二番処理室に連通して設けられ、二番処理室に二番物を還元する構成としている。実施例では、二番処理室は、還元された二番物を二番処理胴22により前側に向けて移送しながら二番処理をし、選別室28に落下、供給する構成としている。
【0033】
揺動選別棚29の始端側部分(前部)は、扱室18の下方に位置する移送棚41により形成されている。移送棚41の構成は任意であり、移送方向下流側を低く傾斜させたり、あるいは、移送棚41の上面に突起や凹凸を設けたりして、揺動選別棚29の移送方向下流側のシーブ43に向けて扱室18からの漏下物を移送できればよい。移送棚の後側にはシーブ43が設けられている。シーブ43は、主に扱室18の後端部以降において落下する又は移送棚41を介して送り込まれる穀粒と異物とを選別する篩であり、図示例では、移送方向下流側(後側)が高くなるように傾斜した薄い板状体からなる、傾斜角度が調整自在の可変シーブである。さらに、このシーブ43の上方であって、扱室終端に開口した排塵口(脱穀後の穀稈出口)の下方には、傾斜姿勢の異なる2種類のラックを交互に左右方向複数配置した第一ストローラック44が設けられるとともに、シーブ43の後側には第二ストローラック45が設けられており、これら移送棚41、シーブ43、第一ストローラック44及び第二ストローラック45は揺動選別棚29と一体で前後揺動するようになっている。符号29xはこの揺動の動力を伝達するための揺動軸である。揺動選別棚29の後部上方には、揺動選別棚29のほぼ全幅にわたる幅を持つ排塵ファン49が設けられている。
【0034】
次に、このコンバイン10の伝動機構について、図6に示す伝動機構図に基づき具体的に説明する。図中「>−<」で示される部分はプーリを示しており、「<−>」で示される部分はスプロケットを示しており、「/−\」で示される部分及び「|−|」で示される部分はギヤを示しており、プーリを繋ぐ縦線部分はベルトを示し、横線部分は回転軸を示している
【0035】
エンジン35から出力される回転動力は、後方の脱穀装置14側に伝動されるとともに、公知のコンバイン10と同様に、例えば前方側の無断変速装置を経由して、左右のクローラ11,11等の走行系に伝動され、また刈取搬送装置15に対しても伝動される。
【0036】
脱穀装置14側は、エンジン35から出力された動力が脱穀クラッチ47を経由して脱穀カウンタ軸48に入力され、扱胴系統(扱胴21側)、処理胴系統(二番処理胴22側)、及び選別系統(選別室28側)の3系統に分配して伝動する構成としている。
【0037】
扱胴系統の伝動径路は、扱胴入力軸21i、扱胴ギヤボックス21gを経由して、扱胴21、排藁チェン25を一連の状態で伝動する構成になっている。また、選別系統の伝動経路は、唐箕30、一番移送螺旋(一番揚穀装置32)31、二番移送螺旋(二番揚穀装置34)33、排塵ファン49、揺動選別棚29(揺動軸29x)、排藁カッタ36(カッタ回転軸36x)等に順次伝動する構成としている。さらに、この選別系統の伝動経路における排塵ファン49入力以降の伝動経路にクラッチ付ギヤボックス50を装備して、所定速度に変速した回転動力を分岐してフィードチェン1の移送方向下流側端部に位置する後端部駆動スプロケット55に入力する第一伝動経路R1を構成している。
【0038】
このクラッチ付ギヤボックス50は、図7に示すように、入力軸51、排塵ファン49の駆動軸52、カウンタ軸53、フィードチェン駆動軸54の合計4本の軸を軸架した構成としている。なお、55はフィードチェン1に係合して伝動する後端部駆動スプロケットである。入力軸51及び排塵ファン駆動軸52には互いに噛合するギヤ51g,52gがそれぞれ軸着されている。また、カウンタ軸53上の一端側には排塵ファン駆動軸52のギヤ52gに噛合する入力側ギヤ56が遊嵌状態に軸装されるとともに、他端側には出力側ギヤ57が軸方向に往復動可能なように軸着されており、入力側ギヤ56及び出力側ギヤ57の各対向面に互いに噛合するクラッチ爪56n,57nがそれぞれ設けられている。さらに、フィードチェン駆動軸54にはカウンタ軸53の出力側ギヤ57に噛合するギヤ58が軸着されている。
【0039】
カウンタ軸53の入力側ギヤ56は、スプリング56sにより出力側ギヤ57に向かって付勢され、そのクラッチ爪56nが出力側ギヤ57のクラッチ爪57nに噛合するようになっている。また、入力側ギヤ56の回転を阻害せずに入力側ギヤ56のクラッチ爪56n側の面に当接するプッシュローラ63と、このプッシュローラ63を支持するシフター軸62と、このシフター軸62の側面から突出するシフターアーム64とを有するシフター60を設けている。そして、シフターアーム64をワイヤーで押し引き操作することにより、シフター軸62をその軸心周りに回転させ、プッシュローラ63により入力側ギヤ56を出力側ギヤ57から離間する方向に押し出して両クラッチ爪56n,57n相互が噛合せずに離間したクラッチ遮断(切り)状態とするか、あるいはプッシュローラの押し付けを解放して、スプリング56sにより入力側ギヤ56を出力側ギヤ57に向かって付勢し、両クラッチ爪56n,57nが噛合したクラッチ接続(入り)状態とするかを選択できるようになっている。これら入力側ギヤ56及び出力側ギヤ57によるクラッチはフィードチェン1への伝動を入切するものであり、第一伝動クラッチ65を構成するものである。シフター軸62は例えば後述の制御モータにより回動駆動する構成とすることができる。
【0040】
特徴的には、フィードチェン1の前端部駆動スプロケット59に対して、脱穀カウンタ軸48から第二伝動経路R2を介して回転動力が伝動されるようになっている。より詳細には、前端部駆動スプロケット59を、フィードチェン1の逆転方向(脱穀時移送方向と反対方向)にのみ回転力を伝達するワンウェイスプロケット(ワンウェイクラッチ付スプロケット)で構成するとともに、脱穀カウンタ軸48に軸着された駆動プーリ48pと、前端部駆動スプロケット59の駆動軸37に軸着された従動プーリ37pとにベルト38を巻き掛けて第二伝動経路R2を構成するとともに、このベルト38を押圧・解放して駆動プーリ48pと従動プーリ37pとの間の伝動を入切するテンションプーリ39を設けて、第二伝動クラッチ66としてのテンションクラッチを構成している。したがって、後端部駆動スプロケット55の回転によりフィードチェン1が正転方向(脱穀時移送方向)に回転しているときには、前端部駆動スプロケット59はフリーホイール状態となる。また、テンションプーリ39により第二伝動クラッチ66を接続して、前端部駆動スプロケット59に対して脱穀カウンタ軸48からの動力を入力し、前端部駆動スプロケット59の回転速度がフィードチェン1よりも速くなると、前端部駆動スプロケット59は動力を伝達する状態となり、前端部駆動スプロケット59によりフィードチェンが逆転方向に駆動される。
【0041】
他方、図12はコンバイン10の各種制御を行うコントローラ90の入出力例を示している。コントローラ90の入力側には、前・後進の切替及び走行速度の無段階変速の操作を行うためのHST(静油圧式無段変速装置)レバー91、停車状態で脱穀作業を行うための停車作業用ペダル5、刈取装置6を停止させて脱穀作業を行うための刈取スイッチ46、副変速レバー93、緊急停止スイッチ94、詰まりセンサ95、変速設定ダイヤル96、穀稈センサ97、脱穀回転センサ98、及び変速スイッチ99がそれぞれ接続され、操作信号や検出信号が入力される構成としている。また、コントローラ90の出力側には、HST3、第一伝動クラッチ65、第二伝動クラッチ66、脱穀クラッチ47、駐車ブレーキ100、刈取クラッチ7、副変速装置8、エンジン35がそれぞれ接続され、出力した制御信号に基づいて制御作動する構成としている。そして、コントローラ90は、コンバイン10の各作業に関する基準数値を記憶させており、CPUが、これらの基準数値と入力される検出情報等を比較演算しながら制御信号を出力するとしている。
【0042】
かかるコントローラにより、コンバイン10の緊急時の制御がなされる。すなわち、コンバイン10には、緊急時にすぐ押圧操作ができるように、フィードチェン1の搬送始端部の脱穀装置カバー表面の押し易い位置(図1参照)に緊急停止スイッチ94が設けられており、その操作によりコントローラ90に緊急信号を入力できる構成としている。また、詰まりセンサ95が、刈取搬送装置15とフィードチェン1との穀稈引継ぎ部位と、フィードチェン1の終端部と排藁チェン25との排藁の受継位置に設けられ、搬送穀稈(排藁)の詰まりを監視する構成としており、詰まりが発生するとコントローラ90に詰まり情報が即座に入力される構成としている。
【0043】
そして、コントローラ90は、脱穀時には脱穀クラッチ47及び第一伝動クラッチ65を接続し、第二伝動クラッチ66を遮断する制御信号を発してコンバイン10を脱穀作業状態とするのに対して、緊急停止スイッチ94又は詰まりセンサ95から情報が入力されると、エンジン35に緊急停止の制御信号を出力してエンジン35をストップすると同時に、脱穀クラッチ47及び第一伝動クラッチ65を遮断し、第二伝動クラッチ66を接続するようにそれぞれ制御信号を出力する。これにより、回転する扱胴21の慣性力は脱穀カウンタ軸48から選別系統の伝動経路に伝わるが、第一伝動クラッチ65が遮断しているため第一伝動経路R1には伝わらなくなり、フィードチェン1に対する正転駆動系の動力供給は停止される。一方、回転する扱胴21の慣性力は脱穀カウンタ軸48及び第二伝動経路R2を介してフィードチェン1の前端部駆動スプロケット59に伝達され、フィードチェン1に対して脱穀時移送方向とは反対向きの動力が与えられ、フィードチェン1は逆転されるか又は停止する。よって、停止操作後も異物が搬送されるといった事態を防止でき、もって、機器故障及びその拡大の防止、並びに異物除去作業の容易化等を図ることができる。しかも、本実施形態では、専用の原動機を必要とせずに、簡素な構成で逆転駆動系を構成することができるといった利点や、緊急停止時には、第一伝動クラッチに65より正転駆動系の動力の伝動を切るため、第二伝動経路R2を介してフィードチェン1を停止させる又は脱穀時移送方向とは反対向きに駆動するための負荷が少なくて済むといった利点がある。
【0044】
緊急停止後に通常状態に復帰させる場合、専用の復帰機構及び操作を容易しても良いが、脱穀クラッチ47が接続する操作等、脱穀作業を再開するような操作を行ったとき、コントローラ90は脱穀回転センサ98等によりその操作に伴う信号を受けて、第二伝動クラッチ66を遮断する制御信号を出力する構成とすると、脱穀装置14の再始動を自動で容易に行うことができるため好ましい。
【0045】
(第2の形態)
第2の形態は、図8に示すように、第二伝動経路R2を脱穀カウンタ軸48から分岐するのではなく、扱胴入力軸21iから分岐してその回転動力をフィードチェン1の前端部駆動スプロケット59に対して入力するようになっている点で上述の第1の形態と相違するものであり、その他は第1の形態と同様の構成となっている。このように第二伝動経路R2は、慣性力を駆動に利用できる限り、任意の伝動経路から分岐することができるものである。
【0046】
(第3の形態)
第3の形態は、図9に示すように、第一伝動経路R1にトルクリミッタ70を介在させたものである。そして、コントローラ90は、脱穀時には脱穀クラッチ47及び第一伝動クラッチ65を接続し、第二伝動クラッチ66を遮断する制御信号を発してコンバイン10を脱穀作業状態とするのに対して、緊急停止スイッチ94又は詰まりセンサ95から情報が入力されると、エンジン35に緊急停止の制御信号を出力してエンジン35をストップすると同時に、第一伝動クラッチ65は遮断せずに脱穀クラッチ47を遮断し、第二伝動クラッチ66を接続するようにそれぞれ制御信号を出力する。これにより、回転する扱胴21の慣性力は脱穀カウンタ軸48及び第二伝動経路R2を介してフィードチェン1の前端部駆動スプロケット59に伝達され、フィードチェン1に対して脱穀時移送方向とは反対向きの動力が与えられる。同時に、回転する扱胴21の慣性力は脱穀カウンタ軸48から選別系統の伝動経路及び第一伝動経路R1を介して、フィードチェン1の後端部駆動スプロケット55にも伝達され、フィードチェン1に対して脱穀時移送方向の動力が与えられる。その結果、フィードチェン1に正逆両方の動力が与えられる。ただしこのとき、トルクリミッタ70には設定トルク以上のトルクが発生してスリップし、当該トルクリミッタ70において第一伝動経路R1における伝動は遮断されるため、フィードチェン1に対して第一伝動経路R1からの正転動力の供給はなされず、第二伝動経路R2を介して逆転動力が供給され、フィードチェン1は逆転されるか又は停止することになる。
【0047】
したがって、第一伝動経路R1による正転駆動系の動力の伝動をクラッチにより積極的に切ることなく、第二伝動クラッチ66を接続するだけでトルクリミッタ70の作用により即時にフィードチェン1を停止させる又は脱穀時移送方向とは反対向きに駆動することができ、フィードチェン1の正転・逆転の切り替えをより高速に行うことができるとともに、その切り替え制御も簡素となる。
【0048】
なお、本第3の形態においては、第1の形態における第一伝動クラッチ65は設けなくても良く、また設けた場合には緊急停止時に第1の形態と同様に脱穀クラッチ47と同時に遮断することができる。
【0049】
(第4の形態)
第4の形態は、第1の形態において、第二伝動経路R2のプーリ37p,48p及びベルト38間の動摩擦力よりも、第一伝動経路R1の分岐元の伝動経路におけるプーリ及びベルト(第一伝動経路R1の少なくとも一部を複数のプーリ及びこれに巻き掛けられたベルトにより構成した場合には、これにしても良い)間の動摩擦力がある程度弱くなるように、いずれか一方又は両方のベルトテンション等を設定したものである。そして、コントローラ90は、脱穀時には脱穀クラッチ47及び第一伝動クラッチ65を接続し、第二伝動クラッチ66を遮断する制御信号を発してコンバイン10を脱穀作業状態とするのに対して、緊急停止スイッチ94又は詰まりセンサ95から情報が入力されると、エンジン35に緊急停止の制御信号を出力してエンジン35をストップすると同時に、第一伝動クラッチ65は遮断せずに脱穀クラッチ47を遮断し、第二伝動クラッチ66を接続するようにそれぞれ制御信号を出力する。これにより、回転する扱胴21の慣性力は脱穀カウンタ軸48及び第二伝動経路R2を介してフィードチェン1の前端部駆動スプロケット59に伝達され、フィードチェン1に対して脱穀時移送方向とは反対向きの動力が与えられる。同時に、回転する扱胴21の慣性力は脱穀カウンタ軸48から選別系統の伝動経路及び第一伝動経路R1を介して、フィードチェン1の後端部駆動スプロケット55にも伝達され、フィードチェン1に対して脱穀時移送方向の動力が与えられる。その結果、フィードチェン1に正逆両方の動力が与えられる。ただしこのとき、前述の動摩擦力差が存在するため、第二伝動経路R2を構成するプーリ37p,48p及びベルト38間は滑らずに、第一伝動経路R1の分岐元の伝動経路を構成するプーリ及びベルト間がスリップすることになり、その結果として第一伝動経路R1における伝動は遮断されるため、フィードチェン1に対して第一伝動経路R1からの正転動力の供給はなされず、第二伝動経路R2を介して逆転動力が供給され、フィードチェン1は逆転されるか又は停止することになる。
【0050】
したがって、第一伝動経路R1による正転駆動系の動力の伝動をクラッチにより積極的に切ることなく、第二伝動クラッチ66を接続するだけで、第二伝動経路R2を構成するプーリ37p,48p及びベルト38間は滑らずに、第一伝動経路R1の分岐元の伝動経路を構成するプーリ及びベルト間が滑ることにより、即時にフィードチェン1を停止させる又は脱穀時移送方向とは反対向きに駆動することができ、フィードチェン1の正転・逆転の切り替えをより高速に行うことができるとともに、その切り替え制御及び伝動機器の構成も簡素となる。
【0051】
なお、本第4の形態においては、第1の形態における第一伝動クラッチ65は設けなくても良く、また設けた場合には緊急停止時に第1の形態と同様に脱穀クラッチ47と同時に遮断することができる。
【0052】
(第5の形態)
第5の形態は、図10に示すように、エンジン35の動力をフィードチェン1へ伝動する第一伝動経路R1は設けずに、エンジン35とは別個にフィードチェン1の後端部駆動スプロケット55を直接に駆動する電動機71を設けた点で上述の第1の形態と相違するものであり、その他は第1の形態と同様の構成となっている。そして、コントローラ90は、脱穀時には脱穀クラッチ47を接続し、電動機71を駆動し、第二伝動クラッチ66を遮断する制御信号を発してコンバイン10を脱穀作業状態とするのに対して、緊急停止スイッチ94又は詰まりセンサ95から情報が入力されると、エンジン35に緊急停止の制御信号を出力してエンジン35をストップすると同時に、脱穀クラッチ47を遮断し、電動機71を駆動停止し、第二伝動クラッチ66を接続するようにそれぞれ制御信号を出力する。これにより、電動機71が駆動停止しているためフィードチェン1に対する正転駆動系の動力供給は停止される。一方、回転する扱胴21の慣性力は脱穀カウンタ軸48及び第二伝動経路R2を介してフィードチェン1の前端部駆動スプロケットに伝達され、フィードチェン1に対して脱穀時移送方向とは反対向きの動力が与えられ、フィードチェン1は逆転されるか又は停止する。
【0053】
このように、扱胴21及び第二伝動経路R2への動力を供給するエンジン35とは別個に、正転駆動系をなす電動機71を設けて、正転駆動系の入切を電動機71の入切により行う構成としたことにより、正転駆動系の入切のための装置構成及び切換制御が簡素となる。
【0054】
(第6の形態)
第6の形態は、図11に示すようにフィードチェン1の支持部、つまりフィードチェンの前端部駆動スプロケット59及び後端部駆動スプロケット55を支持するレール状部分75,76を、移送方向上流側に位置する上流側チェン支持部75と移送方向下流側に位置する下流側チェン支持部76とに分割し、両者を左右方向に沿う回動軸77を介して連結し、上流側チェン支持部75の前端側にシリンダからなる往復駆動装置78を接続し、この往復駆動装置78により上流側チェン支持部75を下流側チェン支持部76側の端部の回動軸77を支点として挟持杆2から離間する方向及び挟持杆2に近づく方向に回動可能に構成したものである。そして、コントローラ90は、脱穀時には往復駆動装置78により上流側チェン支持部75を挟持杆2に近づく方向に移動させた状態として、当該上流側チェン支持部75におけるフィードチェン1と挟持杆2との間で穀稈を挟持搬送するのに対して、緊急停止スイッチ94又は詰まりセンサ95から情報が入力されると、往復駆動装置78により上流側チェン支持部75が挟持杆2から離間する方向に回動されて、フィードチェン1における上流側チェン支持部75に位置する部分を挟持杆2から離間させる。よって、本第6の形態によれば、緊急停止時にフィードチェンと挟持杆2との間に挟まれた異物を除去し易くなる。特に、上述の第1〜第5の形態においては、緊急停止時にはフィードチェン1は逆転されるか又は停止し、異物が上流側チェン支持部75におけるフィードチェン1と挟持杆2との間に位置する可能性が高くなるため、本第6の形態を組み合わせるのは好ましい。
【符号の説明】
【0055】
1…フィードチェン
2…挟持杆
5…停車作業用ペダル
6…刈取装置
7…刈取クラッチ
8…副変速装置
10…コンバイン
12…車体
13…穀稈供給口
14…脱穀装置
15…刈取搬送装置
16…前側板
17…後側板
18…扱室
19…処理室
20…排塵処理室
21…扱胴
21g…扱胴ギヤボックス
21i…扱胴入力軸
22…二番処理胴
23…排塵処理胴
24…排塵口
25…排藁チェン
28…選別室
29…揺動選別棚
29x…符号
29x…揺動軸
2s…スプリング
30…唐箕
31…一番移送螺旋
32…一番揚穀装置
32…風向板
33…二番移送螺旋
34…二番揚穀装置
35…エンジン
36…排藁カッタ
36x…カッタ回転軸
37…駆動軸
37p…従動プーリ
38…ベルト
39…テンションプーリ
41…移送棚
42…穀稈引起し装置
43…シーブ
44…第一ストローラック
45…第二ストローラック
46…刈取スイッチ
47…脱穀クラッチ
48…脱穀カウンタ軸
48p…駆動プーリ
49…排塵ファン
50…ギヤボックス
51…入力軸
51g…ギヤ
52…排塵ファン駆動軸
52g…ギヤ
54…フィードチェン駆動軸
55…後端部駆動スプロケット
56…入力側ギヤ
56n…クラッチ爪
56s…スプリング
57…出力側ギヤ
57n…クラッチ爪
58…ギヤ
59…前端部駆動スプロケット
60…シフター
63…プッシュローラ
64…シフターアーム
65…第一伝動クラッチ
66…第二伝動クラッチ
70…トルクリミッタ
71…電動機
75…上流側チェン支持部
76…下流側チェン支持部
90…コントローラ
91…レバー
93…副変速レバー
94…緊急停止スイッチ
95…センサ
96…変速設定ダイヤル
97…穀稈センサ
98…脱穀回転センサ
99…変速スイッチ
100…駐車ブレーキ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィードチェン(1)と挟持杆(2)との間で穀稈を挟持しかつフィードチェン(1)の移動により穀稈を移送しつつ回転駆動される扱胴(21)に穀稈の穂先を接触させて脱穀を行う構成の脱穀装置(14)において、
前記フィードチェン(1)に対して脱穀時移送方向の動力を供給する正転駆動系と、前記フィードチェン(1)に対して脱穀時移送方向とは反対向きの動力を供給する逆転駆動系とを備え、
脱穀時には、前記逆転駆動系による動力の供給を切った状態で、前記正転駆動系による動力を前記フィードチェン(1)に供給し、緊急停止時には前記正転駆動系による動力の供給を切った状態で又は前記正転駆動系による動力の供給を切らずにその動力に抗して、前記逆転駆動系による動力を前記フィードチェン(1)に供給して該フィードチェン(1)を停止させるか又は脱穀時移送方向とは反対向きに駆動する構成としたことを特徴とする脱穀装置。
【請求項2】
原動機(35)と、この原動機(35)の動力を前記扱胴(21)の回転動力として伝動する主伝動経路と、この主伝動経路又はこれに繋がる伝動経路の途中から分岐して主伝動経路の伝動力を前記正転駆動系の動力として伝動する第一伝動経路(R1)と、前記主伝動経路又はこれに繋がる伝動経路の途中から分岐してその分岐元の伝動経路及びこれに繋がっている伝動経路の伝動力を前記逆転駆動系の動力として伝動する第二伝動経路(R2)と、前記主伝動経路における前記第一伝動経路(R1)への分岐位置より上手側で、前記原動機(35)から前記主伝動経路への伝動を入切する脱穀クラッチ(47)と、前記第二伝動経路(R2)による前記逆転駆動系への伝動を入切する第二伝動クラッチ(66)とを備え、
前記脱穀時には、前記脱穀クラッチ(47)を接続するとともに前記第二伝動クラッチ(66)を遮断し、前記緊急停止時には、前記脱穀クラッチ(47)を遮断するとともに前記第二伝動クラッチ(66)を接続し、前記第二伝動経路(R2)の分岐元の伝動経路及びこれに繋がっている伝動経路に残る慣性力を動力として前記第二伝動経路(R2)に供給して、前記フィードチェン(1)を停止させるか又は脱穀時移送方向とは反対向きに駆動する構成としたことを特徴とする請求項1記載の脱穀装置。
【請求項3】
前記第一伝動経路(R1)による前記正転駆動系への伝動を入切する第一伝動クラッチ(65)を備え、前記脱穀時には、前記脱穀クラッチ(47)及び前記第一伝動クラッチ(65)をそれぞれ接続するとともに前記第二伝動クラッチ(66)を遮断し、前記緊急停止時には、前記脱穀クラッチ(47)及び前記第一伝動クラッチ(65)をそれぞれ遮断するとともに前記第二伝動クラッチ(66)を接続し、前記第二伝動経路(R2)の分岐元の伝動経路及びこれに繋がっている伝動経路に残る慣性力を動力として前記第二伝動経路(R2)に供給して、前記フィードチェン(1)を停止させるか又は脱穀時移送方向とは反対向きに駆動する構成としたことを特徴とする請求項2記載の脱穀装置。
【請求項4】
前記第一伝動経路(R1)にトルクリミッタ(70)を介在させ、前記緊急停止時には、前記脱穀クラッチ(47)を遮断するとともに前記第二伝動クラッチ(66)を接続し、前記第一伝動経路(R1)の分岐元の伝動経路及びこれに繋がっている伝動経路に残る慣性力を動力として第一伝動経路(R1)に供給するとともに、前記第二伝動経路(R2)の分岐元の伝動経路及びこれに繋がっている伝動経路に残る慣性力を動力として前記第二伝動経路(R2)に供給して、前記フィードチェン(1)に正逆両方の動力を与えることにより、前記トルクリミッタ(70)に設定トルク以上のトルクを発生させて前記第一伝動経路(R1)を前記トルクリミッタ(70)で遮断するとともに、前記第二伝動経路(R2)を介して前記フィードチェン(1)を停止させるか又は脱穀時移送方向とは反対向きに駆動する構成としたことを特徴とする請求項2記載の脱穀装置。
【請求項5】
前記第一伝動経路(R1)及びその分岐元の伝動経路の少なくとも一部を複数のプーリ及びこれに巻き掛けられたベルトにより構成するとともに、前記第二伝動経路(R2)の少なくとも一部を複数のプーリ(37p,48p)及びこれに巻き掛けられたベルト(38)により構成し、前記緊急停止時には、前記脱穀クラッチ(47)を遮断するとともに前記第二伝動クラッチ(66)を接続し、前記第一伝動経路(R1)の分岐元の伝動経路及びこれに繋がっている伝動経路に残る慣性力を動力として第一伝動経路(R1)に供給するとともに、前記第二伝動経路(R2)の分岐元の伝動経路及びこれに繋がっている伝動経路に残る慣性力を動力として前記第二伝動経路(R2)に供給して、前記フィードチェン(1)に正逆両方の動力を与えることにより、前記第二伝動経路(R2)を構成するプーリ(37p,48p)及びベルト(38)間は滑らずに、前記第一伝動経路(R1)又はその分岐元の伝動経路を構成する少なくとも一部のプーリ及びベルト間が滑り、前記第二伝動経路(R2)を介して前記フィードチェン(1)を停止させるか又は脱穀時移送方向とは反対向きに駆動する構成としたことを特徴とする請求項2記載の脱穀装置。
【請求項6】
原動機(35)と、この原動機(35)の動力を前記扱胴(21)の回転動力として伝動する主伝動経路と、前記原動機(35)とは別個に設けられ前記正転駆動系をなす電動機(71)と、前記主伝動経路又はこれに繋がる伝動経路の途中から分岐してその分岐元の伝動経路及びこれに繋がっている伝動経路の伝動力を前記逆転駆動系の動力として伝動する第二伝動経路(R2)と、前記原動機(35)から前記主伝動経路への伝動を入切する脱穀クラッチ(47)と、前記第二伝動経路(R2)による前記逆転駆動系への伝動を入切する第二伝動クラッチ(66)とを備え、
前記脱穀時には、前記脱穀クラッチ(47)を接続し前記電動機(71)を駆動するとともに前記第二伝動クラッチ(66)を遮断し、前記緊急停止時には、前記脱穀クラッチ(47)を遮断し前記電動機(71)を駆動停止するとともに前記第二伝動クラッチ(66)を接続し、前記第二伝動経路(R2)の分岐元の伝動経路及びこれに繋がっている伝動経路に残る慣性力を動力として前記第二伝動経路(R2)に供給して、前記フィードチェン(1)を停止させるか又は脱穀時移送方向とは反対向きに駆動する構成としたことを特徴とする請求項1記載の脱穀装置。
【請求項7】
前記緊急停止後に前記脱穀クラッチ(47)を接続することにより、前記第二伝動クラッチ(66)が切れる構成としたことを特徴とする請求項2〜6のいずれか1項に記載の脱穀装置。
【請求項8】
前記フィードチェン(1)の支持部を移送方向上流側に位置する上流側チェン支持部(75)と移送方向下流側に位置する下流側チェン支持部(76)とに分割するとともに、前記上流側チェン支持部(75)を前記下流側チェン支持部(76)側の端部を回動支点として前記挟持杆(2)から離間する方向に回動する構成とし、
前記緊急停止時には、前記上流側チェン支持部(75)を前記挟持杆(2)から離間する方向に回動させて、フィードチェン(1)における前記上流側チェン支持部(75)に位置する部分を前記挟持杆(2)から離間させる構成としたことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の脱穀装置。
【請求項9】
前記正転駆動系は前記フィードチェン(1)の移送方向下流側端部に動力を供給する構成とし、前記逆転駆動系は前記フィードチェン(1)における移送方向上流側端部に動力を供給する構成としたことを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の脱穀装置。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の脱穀装置(14)を備えたことを特徴とするコンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−152159(P2012−152159A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−15148(P2011−15148)
【出願日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】