説明

脱穀装置

【課題】フィードチェンにて搬送される排藁内に存在するササリ粒の回収率を向上させる。
【解決手段】 扱室33内に扱胴31を軸架して設け、前記扱室33の下方に揺動選別棚38を設け、該揺動選別棚38の下方には選別風送り方向上手側から唐箕43、一番ラセン46、二番ラセン47を設け、フィードチェン15で穀稈を搬送しながら脱穀する脱穀装置9において、前記扱胴31の後方にササリ落し胴51を設け、該ササリ落し胴51に設ける複数のササリ落し歯51bの取り付けは、扱胴31の回転方向に対して所定角度G傾斜させて設けたことを特徴とする脱穀装置の構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、コンバインやハーベスタに搭載する脱穀装置に関する。
【背景技術】
【0002】
扱室内に扱胴を軸架して設け、前記扱室の下方に揺動選別棚を設け、揺動選別棚の下方には選別風送り方向上手側から唐箕、一番ラセン、二番ラセンを設けて構成した脱穀装置において、扱胴後方の無端回転体に突起を設けて構成したササリ落し体を設け、前記無端回転体を回転させることでフィードチェンにて搬送される排藁の中に存在するササリ粒を回収させるように構成した脱穀装置の技術がある。(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平9−191758号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前述のような技術では、無端回転体に対してフィードチェンは斜め状態(前方下位から後方上位状態)に配置されているので、排藁が安定して無端回転体に当接しない。このため、排藁の中に存在しているササリ粒を効率良く回収することができないという不具合が発生していた。
【0004】
本発明の課題は、前述のような不具合を解消して、ササリ粒の回収を効率良く実行させる脱穀装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の上記課題は次の構成によって達成される。
即ち、請求項1記載の発明では、扱室33内に扱胴31を軸架して設け、前記扱室33の下方に揺動選別棚38を設け、該揺動選別棚38の下方には選別風送り方向上手側から唐箕43、一番ラセン46、二番ラセン47を設け、フィードチェン15で穀稈を搬送しながら脱穀する脱穀装置9において、前記扱胴31の後方にササリ落し胴51を設け、該ササリ落し胴51に設ける複数のササリ落し歯51bの取り付けは、扱胴31の回転方向に対して所定角度G傾斜させて設けたことを特徴とする脱穀装置としたものである。
【0006】
請求項1の作用は、フィードチェン15にて搬送されてきた穀稈は扱室33内の扱胴31で脱穀され、脱穀された被処理物は揺動選別棚38上に落下する。揺動選別棚38上に落下しなかった被処理物は扱室33の終端部まで搬送されて揺動選別棚38上に落下する。
【0007】
揺動選別棚38の揺動作用と唐箕43からの選別風により選別された穀粒は、一番ラセン46から回収されていく。この一番ラセン46の後方の二番ラセン47に回収された二番物は、扱室33内又は揺動選別棚38上に還元されて再処理される。
【0008】
扱胴31で脱穀後の排藁は、フィードチェン15で後方へ搬送されながらササリ落し胴51のササリ落し歯51bの作用を受ける。排藁の中にはササリ粒が存在しているので、ササリ落し胴51の作用を受けることで、ササリ粒が回収される。そして、ササリ落し歯51bは、扱胴31の回転方向に対して所定角度G傾斜させて取り付けているので、排藁に対するササリ落し歯51bの当接面積が増大する。
【0009】
請求項2記載の発明では、前記扱胴31の直径Dに対してササリ落し胴51の直径Eを小さくなるように構成したことを特徴とする請求項1に記載の脱穀装置としたものである。
【0010】
請求項2の作用は、請求項1の作用に加え、ササリ落し胴51の直径Eは、扱胴31の直径Dよりも小さいので、フィードチェン15とササリ落し胴51との距離が長くなって空間部が広くなる。そして、ササリ落し歯51bが当接した排藁の振動が大きくなり、ササリ落し作用が増大する。
【0011】
請求項3記載の発明では、前記ササリ落し胴51に設ける複数のササリ落し歯51bの先端部の回転直径Fは変化しないように構成したことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の脱穀装置としたものである。
【0012】
請求項3の作用は、請求項1または請求項2の作用に加え、ササリ落し胴51が回転した場合のササリ落し歯51bの先端部回転直径Fは変化しないので、ササリ落し歯51bは効率良く排藁に当接する。
【発明の効果】
【0013】
本発明は上述のごとく構成したので、請求項1記載の効果は、排藁に対するササリ落し歯51bの当接面積が増大するようになるので、ササリ落しの作用が向上して4番ロスが少なくなり、穀粒の回収率が向上するようになる。
【0014】
請求項2記載の発明においては、請求項1の効果に加え、フィードチェン15とササリ落し胴51との距離が長くなって空間部が広くなるので、ササリ落し歯51bが当接した排藁の振動が大きくなってササリ落し作用が増大し、ササリ粒の回収率がさらに向上するようになる。
【0015】
請求項3記載の発明においては、請求項1または請求項2の効果に加え、ササリ落し歯51bは効率良く排藁に当接するので、ササリ粒の回収漏れが少なくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1及び図2には、本発明を具現化した農業機械であるコンバインが示されている。
走行装置1を有する車台2の前方には、刈取装置3が設けられている。この刈取装置3には、植立穀稈を分草する複数の分草具4と、植立穀稈を引き起こす複数の引起装置5と、植立穀稈を刈り取る刈刃6と、該刈刃6にて刈り取られた穀稈を挟持して後方に搬送する搬送装置7が設けられている。この搬送装置7は刈刃6後方の株元搬送装置8と該株元搬送装置8から搬送されてくる穀稈を引き継いで脱穀装置9に供給する供給搬送装置10とから構成されている。
【0017】
前記刈取装置3は、車台2の前部に立設する懸架台11の上方に設ける回転軸11aを支点にして上下動する刈取装置支持フレーム12にて、その略左右中間部で支持されている。そして、刈取装置3は操作部13に設ける操向レバー14を前後方向に傾動させることによって刈取装置支持フレーム12と共に上下動する構成である。
【0018】
車台2の上方には、前記供給搬送装置10から搬送されてくる穀稈を引き継いで搬送するフィードチェン15を有する脱穀装置9と、該脱穀装置9の右側方であって、この脱穀装置9で脱穀選別された穀粒を一時貯溜するグレンタンク16と、該グレンタンク16の前方に位置していてコンバインの各種操作を実行する操作部13が載置されている。また、車台2の前部には走行装置1を駆動する走行伝動装置17が設けられている。
【0019】
脱穀装置9の後方には、前記フィードチェン15から搬送されてくる排稈を引き継いで搬送する排稈チェン18と、該排稈チェン18の終端部下方には排稈を切断するカッター装置19が設けられている。また、この実施例のカッター装置19の後方には、排稈を結束するノッター等の他の作業機を装着してもよい。
【0020】
前記グレンタンク16内の穀粒量が満杯となると、揚穀筒20と穀粒排出オーガ21から穀粒を機外へと排出する。揚穀筒20は電気モータ(図示せず)にて旋回可能に構成され、また、穀粒排出オーガ21は油圧シリンダ22にて昇降可能に構成されている。そして、穀粒排出オーガ21は揚穀筒20の上部に連結されて一体的に構成され、揚穀筒20が旋回すると、穀粒排出オーガ21も一緒に旋回する構成となっている。
【0021】
また、コンバインは操作部13に設ける副変速レバー23を操作して走行伝動装置17内の副変速の位置を決定し、その後、走行変速レバー24を操作してエンジン(図示せず)からの動力を油圧無段変速装置及び走行伝動装置17を介して走行装置1の左右のクローラ26、26に伝動して任意の速度で走行する構成である。このように、前記走行変速レバー24の操作量によって速度が変速されるとともに、走行変速レバー24の前方向と後方向の操作によってコンバインが前後進する構成である。
【0022】
また、コンバインは操作部13に設ける前記操向レバー14を左右方向に傾倒操作することによって左右方向に旋回する構成であり、さらに、操向レバー14の左右方向への傾倒操作量によって旋回半径が決定される構成である。
【0023】
このようなコンバインを前進させて刈取作業をすると、圃場面に植立している穀稈は、分草具4にて分草され、その後、引起装置5にて引き起こされて刈刃6にて刈り取られる構成である。その後、刈り取られた穀稈は株元搬送装置8にて後方へ搬送され、供給搬送装置10へと引き継ぎ搬送される。この供給搬送装置10に引き継がれた穀稈は、さらに後方へと搬送されて、脱穀装置9のフィードチェン15へと引継ぎ搬送され、穀稈はフィードチェン15で後方へ搬送されながら脱穀装置9にて脱穀選別される構成である。
【0024】
このように脱穀選別された穀粒は、一番揚穀筒27からグレンタンク16内へと搬送されて一時貯留され、このグレンタンク16内に貯留される穀粒量が満杯になると、操作部13の報知手段(ブザーや表示装置)でオペレータに報知される構成である。その後、刈取作業を中断して、グレンタンク16内の穀粒を機外へと排出する作業を開始する。コンバインを任意の位置(トラック近傍位置)へと移動させ、穀粒排出オーガ21をオーガ受け28から離脱させて穀粒排出口21aをトラックの荷台等の位置へ移動させる。そして、操作部13に設けている穀粒排出レバー29を入り状態として、グレンタンク16内の穀粒を機外へと排出し、グレンタンク16内の穀粒排出が終了すると、穀粒排出オーガ21は再びオーガ受け28へと収納されていく構成である。
【0025】
前記脱穀装置9について、図3〜図5に基づいて説明する。
図3は脱穀装置9の側面図、図4は脱穀装置9の平面図、図5は図4に示すA−A断面図である。
【0026】
脱穀装置9内には、扱網30を有する扱胴31を扱胴軸32で軸架した扱室33と、該扱室33の一側には、扱室33の後部からの処理物を受け入れて処理する排塵処理網34を有する排塵処理胴35を排塵処理胴軸36で軸架した排塵処理室37が設けられている。そして、扱室33と排塵処理室37の下方には揺動選別棚38を設けている。
【0027】
また、排塵処理胴35の前方には、二番処理胴39と二番処理胴受樋40(網や格子状のものでもよい。)からなる二番処理室41が構成されている。二番処理胴39は、本実施例では扱胴31の一側(グレンタンク16側)であって、排塵処理胴35の前方にこの排塵処理胴35と一体的に構成されている。この二番処理胴39は基本的には二番物を処理するものである。この二番処理胴39は二番処理胴軸42にて支持されている構成であるので、前記排塵処理胴35と二番処理胴39とは一体的に排塵処理胴軸36と二番処理胴軸42とで支持されている構成である。
【0028】
さらに、図5の断面図に示すように、扱網30から漏れた被処理物は二番処理室41内に取り込まれる構成であるので、前記二番処理胴39は二番物の他に、扱室33内から入り込んできた被処理物も一緒に処理する構成となっている。前記扱網30と二番処理胴受樋40(網や格子状でもよい)と排塵処理網34は、それぞれ扱胴31と二番処理胴39と排塵処理胴35の下方に設けられている。
【0029】
前記扱室33と二番処理室41と排塵処理室37の下方には、落下してくる被選別物を受けて選別する揺動選別棚38が設置されていて、該揺動選別棚38の下方には、選別風送り方向始端側に唐箕43を設け、該唐箕43から送風される選別風の送り方向下手側には、風路44と風路45が設けられていて、この風路44と風路45の下手側に一番ラセン46を設け、該一番ラセン46の選別風送り方向下手側には二番ラセン47を設けている。この二番ラセン47にて収集された二番物を前記二番処理室41へ揚穀するための二番揚穀筒48が設けられている。
【0030】
前記揺動選別棚38の構成について説明する。揺動選別棚38は、選別送り方向の始端側から順番に、落下した脱穀物を後方に移送する移送棚49,脱穀物を選別するグレンシーブ38a(本実施例ではクリンプ網),二番物を選別するチャフシーブ38b,排塵物をほぐしてササリ粒を回収すると共に排塵物を機外に移送して放出するストローラック38cとから構成されている。該ストローラック38cの下方は、二番物を二番ラセン47内へ案内する二番棚先47aで構成されていて、この二番棚先47aの終端部近傍まで前記排塵処理胴35が延出している構成である。吸引ファン50aは、選別室50内の軽い塵埃を機外に排出するためのもので、扱胴31に対して排塵処理胴35の反対側に設けられている構成である。前記グレンシーブ38aは略一番ラセン46の上方に位置するものであり、チャフシーブ38bは略二番ラセン47の上方に位置するものである。
【0031】
前記刈取装置3から搬送されてきた穀稈は、脱穀装置9のフィードチェン15の始端部に引き継がれると共に、該フィードチェン15に引き継がれた穀稈は、後方に搬送されながら、扱胴31と扱網30により脱穀される。脱穀された脱穀物の一部は揺動選別棚38上に落下して、該揺動選別棚38の揺動作用と唐箕43からの風選作用により選別され、一番ラセン46内へと取り込まれていき、該一番ラセン46に取り込まれた穀粒は、グレンタンク16内に一時貯溜される構成である。脱穀後の排稈はフィードチェン15の終端部から、排稈チェン18の始端部に引き継がれて搬送されていき、その後、カッター19に送られて切断され下方の圃場上に放出されていく構成となっている。
【0032】
扱室31の残りの脱穀物は、後方へと搬送されていくが、その途中において一部の脱穀物は二番処理室41内に取り込まれていく。該二番処理室41内に取り込まれた脱穀物は、選別風送り方向上手側に搬送されながら、二番処理胴39と二番処理胴受樋40との相互作用で脱穀(特に、枝梗粒が処理される)されて、下方の揺動選別棚38上に落下していく。扱胴31と二番処理胴39と排塵処理胴35は、共に選別風送り方向上手側から下手側を見た状況(脱穀装置9の正面視)において、時計回りで回転する構成である。従って、二番処理胴39の処理歯39aの向きは、脱穀物を選別風送り方向の上手側方向に送るような向きに固着している。
【0033】
即ち、該処理歯39aには被処理物を選別風送り方向上手側に搬送する作用があり、さらに、被処理物を処理する作用も併せ持っている。即ち、処理歯39aは螺旋の一部であり、また、その円周方向の先端部と二番処理胴受樋40との間の相互作用にて被処理物を処理する構成となっている。二番処理胴39の搬送終端部に設けられている羽根39bは、被処理物を揺動選別棚38上に強制的に送り出すものである。
【0034】
前記排塵処理胴35の始端部の排塵処理歯35aは、扱室33の後部からの脱穀物を選別風送り方向の下手側方向に送るような向きに固着しておく必要がある。本実施例では、該排塵処理歯35aは、排塵処理胴35の外周面に巻回いされているラセン形状となっている。
【0035】
本実施例では、排塵処理網34の目合いが荒い(格子状)ので、一部の短い藁屑は揺動選別棚38上に落下し、落下しなかった長い藁屑は排塵処理室37の終端部まで搬送されて、排塵処理胴35の終端部の羽根35bにてストローラック38c上に強制的に排出される。そして、このように被処理物が排塵処理室37内にて搬送される間に、排塵処理胴35とこの排塵処理胴35の設けられている処理歯35cと排塵処理網34との相互作用で、さらに脱穀されるとともに、脱穀物はほぐされて中に混在している穀粒(いわゆるササリ粒)が取り出されて下方の揺動選別棚38上に落下し、さらに二番ラセン47内へと回収されていく構成である。
【0036】
前述のように、扱室33内の脱穀物で、揺動選別棚38上に落下せず、二番処理室41内にも取り込まれなかった残りの脱穀物は、扱室33の終端部まで搬送される。この扱室33の終端部まで搬送されてきた脱穀物は、排塵処理室37内に取り込まれ、取り込まれた脱穀物は選別風送り方向下手側に搬送されていく。
【0037】
また、扱室33の終端部まで搬送されてきた脱穀物のうち、排塵処理室37内に取り込まれなかった脱穀物は、下方の揺動選別棚38上に落下していく構成である。
扱室33内の終端部から排塵処理室37内に脱穀物を送る際において、脱穀物が詰まらないように、扱室33から排塵処理室37への引継ぎ部分において、排塵処理胴35の外周にラセン形状の排塵処理歯35aを設けられているので、排塵処理歯35aの送り作用で引継ぎ部に脱穀物が詰まらないように構成されている。
【0038】
このような、揺動選別棚38の揺動作用と唐箕43からの選別風の作用にもかかわらず、一番ラセン46内に取り込まれなかった残りの穀粒は、他の排塵物と共にさらに後方に送られ、二番ラセン47内へと取り込まれていく。該二番ラセン47内に取り込まれた二番物は、二番揚穀筒48にて前記二番処理室41の選別風送り方向下手側に還元されて、扱室33からの脱穀物と合流し、その後、選別風送り方向の上手側に搬送されながら、二番処理胴受樋40との相互作用で脱穀処理されながら搬送され、終端部の羽根39bにより下方の揺動選別棚38上に強制的に落下していく構成である。
【0039】
一方、前記扱胴31の後方には扱胴31と略同径のササリ落し胴51を設ける構成とする。ササリ落し胴51においては、扱歯31aと同じような形状をしたササリ落し歯51bを設ける構成とする。そして、このササリ落し胴51部分においては、フィードチェン15をササリ落し胴51の軸芯51aと略平行状態となるように構成する。これにより、フィードチェン15で搬送される排藁に対してササリ落し歯51bが効率良く作用するので、ササリ粒の回収率が向上するようになる。
【0040】
また、前記ササリ落し胴51の軸芯51aは、扱胴軸32と同軸に構成しているので、伝動系が簡素になる。さらに、フィードチェン15の上下方向の位置は、ササリ落し胴51の軸芯51aと略同じ高さ位置となるように配置して構成する。これにより、さらにササリ落し歯51bが効率良く排藁に当接するようになるので、ササリ粒の回収効率が向上するようになる。
【0041】
図6に示す脱穀装置9は、前述した脱穀装置に対して二番処理胴39と排塵処理胴35を設けない構成である。このため、二番ラセン47で回収した二番物は、二番揚穀筒48で扱室33や揺動選別棚38の移送棚49に還元して処理するように構成している。そして、図6の構成の脱穀装置においても、ササリ落し胴51を設ける構成とする。
【0042】
図7と図8はそれぞれ図6に示すB−B断面とC−C断面を示している。扱胴31の扱歯31aは、扱胴31の回転方向に対して傾斜させていないが、ササリ落し胴51部分に設ける複数のササリ落し歯51bについては、扱胴31の回転方向に対して所定角度G傾斜させて設けるように構成している。これにより、ササリ落しの作用が向上して4番ロスが少なくなり、穀粒の回収率が向上するようになる。前記所定角度Gについては、45度程度が望ましい。このようなササリ落し胴51に設ける複数のササリ落し歯51bの構成や後述するササリ落しに関する別実施例については、二番処理胴39と排塵処理胴35を設けている脱穀装置に構成しても同様の効果を奏する。
【0043】
図9の構成は、図6に示すB−B断面図の別構成であるが、ササリ落し歯51bの数を増やしてもよい。実施例では、4等配に設けるように構成している。
図10の構成は、図6に示すB−B断面図の別構成であるが、ササリ落し歯51bの高さH1の高さを扱歯31aよりも高くなるように構成してもよい。これにより、さらにササリ落し作用が向上するようになる。
【0044】
次に、図11の構成について説明する。
ササリ落し胴51の径を扱胴31の径よりも小さくなるように構成する。具体的には、扱胴31の径Dからササリ落し胴51の終端部の径Eに向かってテーパ状となるように構成する。従って、フィードチェン15とササリ落し胴51との距離が長くなって空間部が広くなることで、ササリ落し歯51bが当接した排藁の振動が大きくなり、ササリ落し作用が増大するようになる。また、前記テーパ状に構成されたササリ落し胴51に設けるササリ落し歯51bの先端部の径Fは同じ径となるように構成することで、ササリ落しの作用が向上するようになる。
【0045】
次に、図12について説明する。
扱胴31部分のフィードチェン15と、ササリ落し胴51部分のフィードチェン15aをそれぞれ独立して設けるように構成する。そして、前記フィードチェン15の駆動速度は、コンバインの車速に同調して変速するように構成する。一方、フィードチェン15aの駆動速度は、該フィードチェン15aの下手側に位置する排藁搬送装置18駆動速度の同調して変速するように構成する。そして、排藁搬送装置18の駆動速度が一定のときは、フィードチェン15aの駆動速度も一定となるように構成する。これにより、排藁がスムーズに搬送されていくようになる。この場合、フィードチェン15については、該フィードチェン15の下方であって前後方向の軸55(図14参照)を軸芯として側方に回動するように構成することで、フィードチェン15及び扱胴31,扱網30等の点検作業が容易となる。
【0046】
排藁搬送装置18の伝動については、図に示すようにササリ落し胴51から駆動するようにする。もちろん、ササリ落し胴51を設けない構成の脱穀装置においては、扱胴31から駆動するようにする。
【0047】
排藁搬送装置18への入力については、穂先ラグ18bの先端部に入力すると共に、その入力と同時に株元チェン18aの中間部に入力するようにする。そして、株元チェン18aの先端部については、前記入力部よりも下方に下げるように構成する。これにより、フィードチェン15aからの排藁がスムーズに搬送されていくようになる。
【0048】
図13は前記フィードチェン15aの伝動線図である。フィードチェン15aの駆動は、一番ラセン46,二番ラセン47,唐箕43を駆動している一本のベルト52から、カウンタベルト54を介して駆動するように構成する。これにより、伝動が簡素となりコストダウンとなる。また、吸引ファン50aの駆動もベルト52から駆動するようにすることで、伝動が簡素となる。
【0049】
前記フィードチェン15aの伝動については、図14に示すように、フィードチェン15の終端部スプロケット57からベルト56を介して駆動するように構成してもよい。また、フィードチェン15の駆動速度よりもフィードチェン15aの駆動速度を速くすることで、排塵物の発生を抑制できるようになる。もちろん、ササリ落しに影響がない程度の速度にする必要がある。
【0050】
また、図15に示すように、フィードチェン15とフィードチェン15aをオーバーラップするように構成してもよい。これにより、フィードチェン15からフィードチェン15aへ穀稈(排藁)を引き継ぐ際の稈こぼれを防止できるようになる。この場合、図16に示すように、フィードチェン15とフィードチェン15aとをフレーム58で連結して、軸55を軸芯にして一体的に側方に回動させるように構成している。これにより、ササリ落し胴51周辺の点検作業も容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】コンバインの左側面図
【図2】コンバインの正面図
【図3】脱穀装置の側断面図
【図4】脱穀装置の平面図
【図5】脱穀装置の一部の断面図
【図6】脱穀装置の平面図
【図7】断面図
【図8】断面図
【図9】断面図
【図10】断面図
【図11】脱穀装置の平面図
【図12】脱穀装置の平面図と脱穀装置の一部側面図
【図13】伝動線図
【図14】側面図
【図15】側面図と一部平面図
【図16】側面図と一部平面図
【符号の説明】
【0052】
D 直径
E 直径
F 回転直径
G 所定角度
9 脱穀装置
15 フィードチェン
31 扱胴
33 扱室
38 揺動選別棚
43 唐箕
46 一番ラセン
47 二番ラセン
51 ササリ落し胴
51b ササリ落し歯

【特許請求の範囲】
【請求項1】
扱室33内に扱胴31を軸架して設け、前記扱室33の下方に揺動選別棚38を設け、該揺動選別棚38の下方には選別風送り方向上手側から唐箕43、一番ラセン46、二番ラセン47を設け、フィードチェン15で穀稈を搬送しながら脱穀する脱穀装置9において、前記扱胴31の後方にササリ落し胴51を設け、該ササリ落し胴51に設ける複数のササリ落し歯51bの取り付けは、扱胴31の回転方向に対して所定角度G傾斜させて設けたことを特徴とする脱穀装置。
【請求項2】
前記扱胴31の直径Dに対してササリ落し胴51の直径Eを小さくなるように構成したことを特徴とする請求項1に記載の脱穀装置。
【請求項3】
前記ササリ落し胴51に設ける複数のササリ落し歯51bの先端部の回転直径Fは変化しないように構成したことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の脱穀装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate


【公開番号】特開2006−67837(P2006−67837A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−252536(P2004−252536)
【出願日】平成16年8月31日(2004.8.31)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】