説明

脱臭システム、脱臭装置及び脱臭方法

【課題】 水の循環・再利用性に優れ、理想的な循環サイクルを実現可能な脱臭システムを提供する。
【解決手段】 被処理ガスに散水する散水ノズル22bと、被処理ガスに散水された水を滞留させる滞留水タンク23と、滞留水をRO分離装置30に送水するポンプ52とを備える脱臭装置20、送水された水を、逆浸透膜を通過させることにより浄水と濃縮水とに分離し、パイプ53を介して散水ノズル22bへ浄水を循環させ、パイプ54を介して電気分解装置40に濃縮水を送水するRO分離装置30と、送水された濃縮水を電気分解により浄化し、パイプ55を介して滞留水タンク23に浄化した水を循環させる電気分解装置40とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄水処理装置を用いた脱臭システム、脱臭装置及び脱臭方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鋳造工場では、鋳造工程等で発生する臭気成分を含むガスを無臭化するための脱臭システムが使用されている。従来の脱臭システムとしては、臭気成分を含んだガスと薬液とを接触させることによりガス中の悪臭成分を除去する、薬液脱臭処理システムが知られている。
しかし、薬液脱臭処理システムによれば、硫酸、苛性ソーダなどの劇物を薬液として使用するため、システム管理に労力を要し、処理後の廃液や廃棄物も有害であるため特別な廃液処理等を講じる必要があるといった問題があった。また、システムを構成する装置が大型化して、エネルギーロスが大きく、工場内の設備環境を悪化させるといった問題もあった。
このような問題に加えて地球環境保全への配慮が重要視されるようになった昨今においては、環境にやさしい光触媒を利用した光触媒脱臭システムが注目されており、様々な提案がなされている。
例えば、特許文献1では、光触媒により汚染された水を分解して脱臭装置に循環させるとともに吸着効率が劣化した水を濾過して脱臭装置などに循環させることにより、処理水の浄化能力に優れ、大量に臭気ガスの発生する鋳造工場等に適した脱臭システムが開示されており、一定の効果を奏している。
【特許文献1】特開2008−62129号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記特許文献1の脱臭システムは一定の効果はあるものの、理想的な循環サイクルを実現できているとはいえない。すなわち、上記脱臭システムでは光触媒による臭気成分の分解速度よりも処理水の劣化速度が速い場合に対応できず、著しく劣化の進んだ水(劣化水)という廃棄物を生じさせてしまう場合がある。また、劣化水を逆浸透膜(RO膜:Reverse Osmosis)を利用した濾過により分離して浄水に戻すことも提案されているが、劣化水の劣化度合によってはRO膜が短期に目詰まりを起こしてしまうという問題もある。さらに、地域社会への配慮から環境基準を「排気臭気濃度300以下」から「100以下」と厳しい条件を自らに課す鋳造工場もある。このような条件を実現するためには脱臭能力のさらなる向上が要求されており、その向上には定常的な浄水による脱臭が不可欠であることが明らかになっている。
そこで、本発明は、上記のような問題点に鑑みなされたものであり、水の循環・再利用性に優れ、理想的な循環サイクルを実現可能な脱臭システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するために、本発明に係る脱臭システムは、臭気成分と固形成分とを含む被処理ガスに散水して被処理ガスから臭気成分と固形成分とを除去して清浄ガスを排出する脱臭装置と、被処理ガスに散水された水を浄水と濃縮水とに分離する分離装置と、前記濃縮水を電気分解により浄化する電気分解装置とを備え、前記脱臭装置は、被処理ガスに散水する散水手段と、被処理ガスに散水された水を滞留させる滞留手段と、滞留させた水を前記分離装置に送水する滞留水送水手段とを備え、前記分離装置は、送水された水を、逆浸透膜を通過させることにより浄水と濃縮水とに分離する分離手段と、分離された浄水を前記脱臭装置の散水手段に循環させる浄水循環手段と、分離された濃縮水を前記電気分解装置に送水する濃縮水送水手段とを備え、前記電気分解装置は、送水された濃縮水を電気分解により浄化する電気分解手段と、浄化した水を前記脱臭装置の滞留手段に循環させる滞留水循環手段とを備えることを特徴とする。
これによって、RO膜の作用によって浄水と濃縮水を分離して浄水を散水に再利用し、電解質濃度が高まった濃縮水を電気分解により浄化して滞留水として循環させるので、浄水の持つ高い脱臭能力が維持されて効果的な脱臭が可能となるとともに、水を効率的に再利用する脱臭システムが実現される。
ここで、前記脱臭装置は、さらに、前記滞留手段に滞留されている水の電解質濃度を調整する濃度調整手段を備えるとするのが好ましい。
これによって、システム内を循環する水の電解質濃度が所定の範囲内に調整されるので、RO膜の目詰まりを生じさせることもなく連続的に作動させることができるとともに、電気分解装置の設備・運用コストの面でも優れた脱臭システムを実現することができる。
また、本発明は1つの脱臭装置として実現することも可能である。すなわち、臭気成分と固形成分とを含む被処理ガスに洗浄水を散水して、被処理ガスから臭気成分と固形成分とを除去して清浄ガスを排出する脱臭装置であって、被処理ガスに散水する散水部と、被処理ガスに散水された水を滞留させる滞留部と、滞留させた水を、逆浸透膜を通過させることにより浄水と濃縮水とに分離する分離部と、分離された浄水を前記散水部に循環させる浄水循環部と、分離された濃縮水を電気分解により浄化する電気分解部と、浄化した水を前記滞留部に循環させる滞留水循環部とを備えることを特徴とする脱臭装置としてもよい。
さらに、本発明は、臭気成分と固形成分とを含む被処理ガスから臭気成分と固形成分とを除去して清浄ガスを排出する脱臭方法であって、被処理ガスに散水する散水ステップと、被処理ガスに散水された水を滞留させる滞留ステップと、滞留させた水を、逆浸透膜を通過させることにより浄水と濃縮水とに分離する分離ステップと、分離された浄水を前記散水ステップにおける散水に再利用する浄水循環ステップと、分離された濃縮水を電気分解により浄化する電気分解ステップと、浄化した水を被処理ガスに散水された水と共に再び滞留させる滞留水循環ステップとを含むことを特徴とする脱臭方法として実現することもできる。
【発明の効果】
【0005】
以上説明したように、本発明に係る脱臭システムによれば、RO膜の作用で浄水を分離し散水として再利用し、分離された濃縮水を電気分解により浄化し再び滞留水として循環させるので、理想的な循環サイクルの脱臭システムを実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る脱臭システムの機能的な構成を示すブロック図である。
脱臭システム1は、シェルマシンや低圧鋳造機から発生するガス中に含まれるヤニ成分や粉塵、砂を除去するとともに、ガス中に含まれる臭気成分(例えば、アンモニア、ホルムアルデヒド、フェノールなど)を除去して無臭化し、大気中へ排出するシステムである。そして、この脱臭システム1は、脱臭装置2、RO分離装置3及び電気分解装置4を備えている。
脱臭装置2は、被処理ガスを取り込んで無臭化し、無臭化されたガス(清浄ガス)を排出する装置であり、吸入手段5、散水手段6、滞留手段7及び排出手段10を備えている。
吸入手段5は、シェルマシン等で発生しブロア等によって送風されてくる被処理ガスをシステム内に取り入れる機能を有し、例えば、吸引ファンにより実現される。
散水手段6は、被処理ガスに洗浄水を散水し、被処理ガスに含まれる臭気成分や粉塵や砂などの固形成分を水に吸着させて除去する機能を有し、散水ノズルにより実現される。
滞留手段7は、具体的にはタンク等であり、散水手段6で散水された結果、臭気成分等を含んで汚れた水を滞留させる機能を有し、電解質濃度調整手段8と滞留水送水手段9とを備えている。
電解質濃度調整手段8は、滞留手段7が滞留させている水(滞留水)の電解質濃度を調整する機能を有し、例えば電解質濃度センサ、濃度調整のための水を流入させるバルブやバルブの開閉を制御する制御装置等により実現される。
滞留水送水手段9は、滞留水をRO分離装置3に送水する機能を有する。滞留水を自然通水させるパイプのみで実現してもよいが、圧送するポンプで実現するのが好ましい。
排出手段10は、散水手段6における散水により臭気成分が除去されて無臭化された被処理ガス(清浄ガス)を外気に排出する機能を有し、具体的には送風ファンがこれに該当する。
RO分離装置3は、脱臭装置2から送水される滞留水を浄水と濃縮水とに分離する装置であり、RO分離手段11、浄水循環手段12及び濃縮水送水手段13を備えている。
RO分離手段11は、滞留水送水手段9から送られてくる水(処理水)をRO膜の作用により浄水と不純物が濃縮された濃縮水とに分離する機能を有し、RO膜を利用した濾過装置により実現される。
浄水循環手段12は、分離された浄水を散水手段6に循環させる機能を有する。浄水循環手段12として浄水を圧送するためのポンプを使用してもよいが、滞留水送水手段9として使用するポンプからの水圧を利用して自然通水させるためのパイプのみで実現することもできる。
濃縮水送水手段13は、分離された濃縮水を電気分解装置4に送水する機能を有する。濃縮水循環手段13として濃縮水を圧送するためのポンプを使用してもよいが、滞留水送水手段9として使用するポンプからの水圧を利用して自然通水させるためのパイプのみで実現することもできる。
電気分解装置4は、RO分離装置3から送られてくる濃縮水を電気分解により浄化する装置であり、電気分解手段14と滞留水循環手段15とを備えている。
電気分解手段14は、濃縮水送水手段13から送られてくる濃縮水を電気分解により浄化する機能を有し、電極等を有する電気分解装置により実現される。
滞留水循環手段15は、電気分解により浄化された水を滞留水として滞留手段7に循環させる機能を有する。滞留水循環手段15として滞留水を圧送するためのポンプを使用してもよいが、滞留水送水手段9として使用するポンプからの水圧を利用して自然通水させるためのパイプのみで実現することもできる。
図2は、上記のような機能を有する脱臭システム1の構成例の概略を模式的に示す図である。
図2に示すように、この脱臭システム1は大別して、脱臭装置20とRO分離装置30と電気分解装置40とから構成されている。
脱臭装置20は、図1の脱臭装置2に相当する装置であり、吸入手段5に相当する吸入口21と、散水手段6に相当する散水ノズル22a,22bと、気液接触材24及びミスト回収材25と、滞留手段7に相当する脱臭装置タンク23と、排出手段10に相当する排気口26と、電解質濃度調整手段8に相当する濃度センサ27及び濃度制御装置28とを備えている。
吸入口21は、被処理ガスの取り込み口であり、例えばファンの吸引力によって被処理ガスを脱臭装置20の内部に取り入れる。
散水ノズル22a及び散水ノズル22bは、被処理ガスに散水するためのノズルである。散水ノズル22aからの散水は、吸入口21から取り込まれた被処理ガスに混入する砂や粉塵などの固形成分を主に除去し、散水ノズル22bからの散水は、気液接触材24を通過する被処理ガスに浄水を散水して主に臭気成分を除去する。なお、構成について後に詳述するが、RO分離装置30からの浄水は散水ノズル22bのみに循環させるのが望ましい。RO分離装置30から循環される浄水は流量が限られており、臭気成分の除去に浄水を使用することが重要であって、前処理の工程となる固形成分の除去には滞留水タンク23の水を散水ノズル22aに配管して散水すれば十分だからである。
滞留水タンク23は、散水により臭気成分等を含んで汚れるとともに所定の電解質材料(例えば、NaCl)を含有する滞留水を貯めるための槽であり、この槽に貯められた滞留水は濃度センサ27及び濃度制御装置28により電解質濃度が一定の範囲になるよう調整されており、ポンプ52によりRO分離装置30に送水される。
気液接触材24は、散水ノズル22bから散水される浄水と被処理ガスとを効率よく接触させるための充填材であり、例えば、プラスチック充填材である。
ミスト回収材25は、散水ノズル22b及び気液接触材24によって無臭化された被処理ガス(清浄ガス)に含まれるミスト状の水の粒径を大きくさせて水分を吸収する部材であり、例えば、網状フィルタなどである。
排気口26は、清浄ガスの排出口であり、例えばファンの送風によってミスト回収材25で水分が分離された清浄ガスを外気へ排出する。
濃度センサ27は、滞留水の電解質濃度を検出するためのセンサであり、濃度制御装置28は、濃度センサ27の測定値に基づいて滞留水タンク23内の滞留水の電解質濃度を所定の範囲内に調整する装置である。
例えば、電解質が食塩(NaCl)である場合、濃度センサ27として酸化還元電位計(ORP計)と導電率計を用いて残留塩素量等を測定し、測定した値に所定の係数を乗じることにより電解質濃度を算出することが可能である。ここで調整される滞留水の電解質濃度は1%〜3.5%とする。電解質濃度を薄くし過ぎると、後述する電気分解装置40における電気分解能力の低下を招くとともに電気分解に要する電力が大きくなりランニングコストが増加してしまうからである。一方、電解質濃度を濃くし過ぎると、後述するRO分離装置30におけるRO膜に目詰まりが生じてRO膜の寿命が短くなってしまうおそれがあるからである。RO膜は海水淡水化技術に一般的に適用されており、海水の塩分濃度が約3.5%であることからすれば、滞留水の電解質濃度は3.5%未満とするのが好ましい。滞留水の電解質濃度は、濃度制御装置28に相当するORP制御装置がバルブ51の開閉を制御して、電解質濃度を希釈させる場合は浄水である工業用水を、電解質濃度を濃縮させる場合は飽和食塩水を滞留水タンク23に流入させることにより調整することが可能である。
このように構成される脱臭装置20は、吸入口21から被処理ガスを順次取り込んで、浄水の散水によって臭気成分や固形成分を除去し、清浄ガスとして排出するというように連続的に運転される。被処理ガスは、散水ノズル22aの散水によって下方に向けて移動し、滞留水タンク23の水面上で向きを変えて上方へ、すなわち、気液接触材24の方向へ移動し、散水ノズル22bの散水を受けた後、ミスト回収材25を経て清浄ガスとして排気口26から排出される。このとき、散水ノズル22a及び散水ノズル22bの散水により臭気成分等を含むこととなった水、すなわち滞留水は滞留水タンク23に貯留され、電解質濃度を調整された上で連続的または間欠的に稼働するポンプ52によってRO分離装置30へ送られる。なお、図1の滞留水送水手段に相当するポンプ52を稼動させるタイミングは、連続的稼働でもよいし脱臭装置20の運転が所定の時間を経過した時点としてもよいし、例えば、脱臭装置20内にカラーセンサを設けて、洗浄水の変色が所定の基準以上となった時点としてもよい。また、ポンプ52の稼動は、手動によるとしてもよいし、脱臭装置20にポンプ52の制御手段を備えさせて、タイマーが所定時間を計測した後やカラーセンサが所定基準以上の液色を検出した後に、ポンプ52を稼動させるようにしてもよい。
RO分離装置30は、図1のRO分離装置3に相当する装置であり、脱臭装置20から送られてくる水を浄水と濃縮水とに分離する装置である。RO分離装置30は、ポンプ52によって脱臭装置20から送り込まれる水(処理水)をRO膜の作用を利用した濾過によって、不純物が濃縮された濃縮水と不純物を含まない浄水とに分離する。分離された浄水は図1の浄水循環手段12に相当するパイプ53を通って脱臭装置20に循環されて散水ノズル22bにおける散水に再利用される。散水による臭気成分の吸着力、つまり脱臭能力は散水される水の清浄度に依存するから、浄水を分離して散水に再利用することは、理想的な循環サイクルに資することになる。一方、濃縮水は図1の濃縮水送水手段13に相当するパイプ54を通って電気分解装置40へ送られる。
電気分解装置40は、図1の電気分解装置4に相当する装置であり、RO分離装置30から送られてくる濃縮水を電気分解により浄化する装置である。電気分解の処理対象となる水の電解質濃度が希薄であると電気分解用の電極が大型化したり必要電力が増大するのが一般的であるが、本実施の形態における電気分解装置40は、電解質濃度が所定の範囲になるよう調整された滞留水をRO分離装置30で濃縮分離した濃縮水を電気分解するので、電極等の設備を小型化できるとともに必要電力も少なくすることができる。この電気分解装置40で電気分解により浄化された水は図1の滞留水循環手段15に相当するパイプ55を通って脱臭装置20の滞留水タンク23に送り込まれ、滞留水としてシステム内を循環することになる。
次に、以上のような装置で構成される脱臭システム1における水の循環する手順を、図を用いて説明する。
図3は、脱臭システム1における水の循環手順を示すフロー図である。
まず、散水ノズル22a、22bから被処理ガスに浄水が散水されると(ステップS10)、臭気成分等を吸着した水が滞留水タンク23に貯留される。滞留水タンク23内の水(滞留水)は、電解質濃度が所定の範囲内にあるか否か随時チェックされており、所定の範囲内を外れると(ステップS11のNo)、滞留水タンク23に浄水又は飽和食塩水が投入されて濃度調整が行われる(ステップS12)。
電解質濃度が所定の範囲内に調整された滞留水はRO分離装置に送られて(ステップS11のYes)、RO膜の作用により浄水と濃縮水とに分離される(ステップS13)。分離された浄水は散水ノズル22bからの散水に再利用されてシステム内を循環し、分離された濃縮水は電気分解装置40に送られる(ステップS14)。
濃縮水は、電気分解装置40において電気分解による浄化処理を施された後(ステップS15)、滞留水タンク23に戻されて滞留水としてシステム内を循環する(ステップS16)。
そして、脱臭システム1は、このような水の循環手順を運転を停止するまで繰り返す(ループA)。
以上のように、本実施の形態に係る脱臭システム1は、脱臭装置20において、被処理ガスに浄水を散水して臭気成分等を吸着させて被処理ガスを無臭化するとともに臭気成分等を吸着させた水を電解質濃度を調整しつつ滞留させ、RO分離装置30に適宜送水する。RO分離装置30においては、送り込まれた水を浄水と濃縮水とに分離して、分離した浄水を脱臭装置20に循環させて被処理ガスへの散水に再利用し、濃縮水を電気分解装置40に送水する。電気分解装置40においては、送り込まれた濃縮水を電気分解により浄化して脱臭装置20に循環させて、再び滞留させる。
このような構成を備える脱臭システム1は、RO膜による濾過によって浄水を分離して散水に再利用するから、脱臭能力を高いレベルで維持することが可能となり、効率的な脱臭処理を実現することができる。また、分離された濃縮水は電気分解により浄化されて再び滞留水として循環されるから、著しく劣化の進んだ劣化水という廃棄物を生じさせることもなく理想的な循環サイクルを実現することができる。さらに、電解質濃度を所定の範囲内に調整しているから、RO膜の目詰まりを生じさせることもなく連続稼働が可能であり、電気分解装置の設備・運用コストにも優れた脱臭システムを実現することができる。
以上、本発明に係る脱臭システムについて、実施の形態に基づいて説明したが本発明はこれに限定されるものではなく、本発明の目的を達成でき、かつ発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々設計変更が可能であり、それらも全て本発明の範囲内に包含されるものである。
例えば、上記実施の形態では、電解質材料として食塩(NaCl)を用いたが、その他の電解質材料、たとえば水酸化カリウムや希硫酸などを用いても差支えない。また、電解質材料の種類に応じて制御される電解質濃度の範囲が異なる(電解質によって、0.3〜3.5%程度の幅がある)ことはいうまでもない。
また、上記実施の形態では、各装置間の送水手段としてポンプを1つとパイプを用いているが、この配設は単なる一例にすぎず各装置間にポンプを配設してもよい。
さらに、本実施の形態では、脱臭装置、RO分離装置及び電気分解装置を分離した脱臭システムの構成を示したが、一つの装置として構成してもよい。
図4に、これらを一体化した脱臭装置の機能的な構成例を示す。図4の各部は図1における各手段又は各装置に対応している。すなわち、吸入部62は吸入手段5、散水部65は散水手段6、滞留部66は滞留手段7、電解質濃度調整部67は電解質濃度手段8、RO分離部68はRO分離装置3、電気分解部69は電気分解装置4、排出部64は排出手段10にそれぞれ対応しており、各手段及び各装置については既述であるから、ここでの説明は省略する。
このほか、RO分離装置と電気分解装置を一体化して、脱臭装置のみを分離する構成とするなどしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0007】
本発明に係る脱臭システムは、塗装装置やメッキ装置などの臭気ガスを発生させる工業関連装置の脱臭システムとして有用であり、特に、大量に臭気ガスの発生する鋳造工場等の低圧鋳造機の脱臭システムとして好適である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】脱臭システムの機能的な構成を示すブロック図である。
【図2】脱臭システムの構成例の概略を模式的に示す図である。
【図3】脱臭システムにおける水の循環手順を示すフロー図である。
【図4】脱臭装置の機能的な構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0009】
1 脱臭システム
2、20、61 脱臭装置
3、30 RO分離装置
4、40 電気分解装置
5 吸入手段
6 散水手段
7 滞留手段
8 電解質濃度調整手段
9 滞留水送水手段
10 排出手段
11 RO分離手段
12 浄水循環手段
13 濃縮水送水手段
14 電気分解手段
15 滞留水循環手段
21 吸入口
22a、22b 散水ノズル
23 滞留水タンク
24 気液接触材
25 ミスト回収材
26 排気口
27 濃度センサ
28 濃度制御装置
51 バルブ
52 ポンプ
53、54、55 パイプ
62 吸入部
63 脱臭部
64 排出部
65 散水部
66 滞留部
67 電解質濃度調整部
68 RO分離部
69 電気分解部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
臭気成分と固形成分とを含む被処理ガスに散水して被処理ガスから臭気成分と固形成分とを除去して清浄ガスを排出する脱臭装置と、
被処理ガスに散水された水を浄水と濃縮水とに分離する分離装置と、
前記濃縮水を電気分解により浄化する電気分解装置とを備え、
前記脱臭装置は、
被処理ガスに散水する散水手段と、被処理ガスに散水された水を滞留させる滞留手段と、滞留させた水を前記分離装置に送水する滞留水送水手段とを備え、
前記分離装置は、
送水された水を、逆浸透膜を通過させることにより浄水と濃縮水とに分離する分離手段と、
分離された浄水を前記脱臭装置の散水手段に循環させる浄水循環手段と、
分離された濃縮水を前記電気分解装置に送水する濃縮水送水手段とを備え、
前記電気分解装置は、
送水された濃縮水を電気分解により浄化する電気分解手段と、
浄化した水を前記脱臭装置の滞留手段に循環させる滞留水循環手段とを備える
ことを特徴とする脱臭システム。
【請求項2】
前記脱臭装置は、さらに、前記滞留手段に滞留されている水の電解質濃度を調整する濃度調整手段を備える
ことを特徴とする請求項1記載の脱臭システム。
【請求項3】
臭気成分と固形成分とを含む被処理ガスに洗浄水を散水して、被処理ガスから臭気成分と固形成分とを除去して清浄ガスを排出する脱臭装置であって、
被処理ガスに散水する散水部と、
被処理ガスに散水された水を滞留させる滞留部と、
滞留させた水を、逆浸透膜を通過させることにより浄水と濃縮水とに分離する分離部と、
分離された浄水を前記散水部に循環させる浄水循環部と、
分離された濃縮水を電気分解により浄化する電気分解部と、
浄化した水を前記滞留部に循環させる滞留水循環部とを備える
ことを特徴とする脱臭装置。
【請求項4】
臭気成分と固形成分とを含む被処理ガスから臭気成分と固形成分とを除去して清浄ガスを排出する脱臭方法であって、
被処理ガスに散水する散水ステップと、
被処理ガスに散水された水を滞留させる滞留ステップと、
滞留させた水を、逆浸透膜を通過させることにより浄水と濃縮水とに分離する分離ステップと、
分離された浄水を前記散水ステップにおける散水に再利用する浄水循環ステップと、
分離された濃縮水を電気分解により浄化する電気分解ステップと、
浄化した水を被処理ガスに散水された水と共に再び滞留させる滞留水循環ステップとを含む
ことを特徴とする脱臭方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−69423(P2010−69423A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−240443(P2008−240443)
【出願日】平成20年9月19日(2008.9.19)
【出願人】(000225027)特殊電極株式会社 (26)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】