説明

脱臭・除菌機能を備えた車両及び静電霧化装置の制御方法

【課題】車両内環境に準じた帯電微粒子水の放出を行うことができる脱臭・除菌機能を備えた車両を提供する。
【解決手段】バス車両1は、放電電極23に高電圧を印加して放電電極23に保持される水を霧化させて帯電微粒子水を発生させる静電霧化装置11を有する。システム制御部41は、ドア開閉制御手段53から入力される車両ドア52を開作動させる旨の開閉信号に基づいて、所定時間内での車両ドア52の開作動の回数を計測する。そして、システム制御部41は、所定時間内での車両ドア52の開作動の回数に応じて帯電微粒子水の放出量を変更するように静電霧化装置11を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱臭・除菌機能を備えた車両、及び該車両に備えられた静電霧化装置の制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、バス車両及び鉄道用車両等の車両には、不特定多数の人が乗車するとともに、手摺り、吊革及び座席には不特定の人が次々と接触する。また、不特定多数の人が乗車する車両内には、様々な臭いやアレルゲン物質が入り込むことから、座席、壁、天井及び床等にこれらの臭いやアレルゲン物質が付着する。そのため、車両内が汚染されてしまう。
【0003】
そこで、例えば特許文献1に記載された鉄道用車両は脱臭・除菌機能を備えている。特許文献1の鉄道用車両は、ナノメータサイズの帯電微粒子水を発生させる静電霧化装置を備えている。そして、静電霧化装置で発生させた帯電微粒子水を鉄道用車両内に放出することにより、帯電微粒子水に含まれる活性種の作用によって、鉄道用車両内の空気中を浮遊している臭い成分を除去したり、細菌を除去したり、アレルゲン物質を不活性化したりする。また、帯電微粒子水に含まれる活性種の作用によって、鉄道用車両内の座席、壁、天井及び床等の脱臭、除菌及びアレルゲン物質の不活性化をする。尚、特許文献1には、鉄道用車両に乗車している人の人数に応じて該車両内への帯電微粒子水の放出量を調整することにより、効率良く鉄道用車両内の脱臭、除菌及びアレルゲン物質の不活性化をすることが記載されている。
【0004】
また、例えば特許文献2に記載されているように、車両内の脱臭、除菌及びアレルゲン物質の不活性化をするために、帯電微粒子水を発生させる静電霧化装置を乗用車等の車両に備えることも考えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−286196号公報
【特許文献2】特開2006−151046号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、バス車両及び鉄道用車両等の車両内の汚染状況は、車両に乗車している人の人数にのみ依存するものではない。従って、車両内の環境を向上させるためには、車両に乗車している人の人数だけでなく、車両内の環境に準じて帯電微粒子水の放出を行うことが望まれていた。
【0007】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、車両内環境に準じた帯電微粒子水の放出を行うことができる脱臭・除菌機能を備えた車両、及び該車両に備えられた静電霧化装置の制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の脱臭・除菌機能を備えた車両は、放電電極に高電圧を印加して前記放電電極に保持される水を霧化させて帯電微粒子水を発生させる静電霧化装置を有する脱臭・除菌機能を備えた車両であって、車両を密閉する密閉時間に応じて、前記帯電微粒子水の放出量及び前記帯電微粒子水の放出場所の少なくとも一方を変更するように前記静電霧化装置を制御するシステム制御部を備えたことを特徴とする。
【0009】
この脱臭・除菌機能を備えた車両において、車両の乗車人数を推定するための乗車人数推定手段を備え、前記システム制御部は、前記乗車人数推定手段の出力に基づいて推定した乗車人数に応じて前記帯電微粒子水の放出量を調整するように前記静電霧化装置を制御することが好ましい。
【0010】
この脱臭・除菌機能を備えた車両において、車両に乗車している人が居る場所を検知する乗車場所検知手段を備え、前記システム制御部は、前記乗車場所検知手段にて検知した場所に集中的に前記帯電微粒子水を放出するように前記静電霧化装置を制御することが好ましい。
【0011】
この脱臭・除菌機能を備えた車両において、車両内の汚染度合いを検出するための汚染度合い検出手段を備え、前記システム制御部は、前記汚染度合い検出手段の出力に応じて、前記帯電微粒子水の放出量及び前記帯電微粒子水の放出場所の少なくとも一方を変更するように前記静電霧化装置を制御することが好ましい。
【0012】
この脱臭・除菌機能を備えた車両において、車両内の温度分布及び湿度分布を検知するための温湿度分布検知手段を備え、前記システム制御部は、前記温湿度分布検知手段の出力に基づいて検知した車両内の温度分布及び湿度分布に応じて、前記帯電微粒子水の放出量及び前記帯電微粒子水の放出場所の少なくとも一方を変更するように前記静電霧化装置を制御することが好ましい。
【0013】
この脱臭・除菌機能を備えた車両において、前記静電霧化装置を複数備えたことが好ましい。
この脱臭・除菌機能を備えた車両において、車両に設けられ開閉部材にて開閉される開口部の近傍に集中して前記静電霧化装置が配置されていることが好ましい。
【0014】
この脱臭・除菌機能を備えた車両において、車両に搭載されたエアコン装置の内部若しくは前記エアコン装置の噴出し口に前記静電霧化装置が配置されていることが好ましい。
この脱臭・除菌機能を備えた車両において、車両に乗車している人が接触する可触部の近傍に前記静電霧化装置が配置されていることが好ましい。
【0015】
本発明の静電霧化装置の制御方法は、脱臭・除菌機能を備えた車両に備えられた静電霧化装置の制御方法であって、車両の乗降口を開閉する車両ドアの開時間に比例して前記帯電微粒子水の放出量を増加させることを特徴とする。
【0016】
本発明の静電霧化装置の制御方法は、脱臭・除菌機能を備えた車両に備えられた静電霧化装置の制御方法であって、車両の乗降口を開閉する車両ドアの開作動の回数に比例して前記帯電微粒子水の放出量を増加させることを特徴とする。
【0017】
本発明の静電霧化装置の制御方法は、脱臭・除菌機能を備えた車両に備えられた静電霧化装置の制御方法であって、車両の乗降口を開閉する車両ドアの開時間が予め設定された基準時間よりも長い場合、及び前記車両ドアの開作動の回数が予め設定された基準回数よりも多い場合の少なくとも一方の場合には、前記乗降口の近傍に配置された前記静電霧化装置による前記帯電微粒子水の放出量を増加させる、若しくは前記乗降口の近傍に配置された前記静電霧化装置を集中的に駆動することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、車両内環境に準じた帯電微粒子水の放出を行うことができる脱臭・除菌機能を備えた車両、及び該車両に備えられた静電霧化装置の制御方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】脱臭・除菌機能を備えた車両の電気的構成を示すブロック図。
【図2】霧化ブロックの概略構成図。
【図3】(a)は脱臭・除菌機能を備えたバス車両を上方から見た概略図、(b)は脱臭・除菌機能を備えたバス車両を側方から見た概略図。
【図4】別の形態の脱臭・除菌機能を備えた車両の電気的構成を示すブロック図。
【図5】別の形態の脱臭・除菌機能を備えた車両の電気的構成を示すブロック図。
【図6】別の形態の脱臭・除菌機能を備えた車両の電気的構成を示すブロック図。
【図7】別の形態の脱臭・除菌機能を備えた車両の電気的構成を示すブロック図。
【図8】別の形態の脱臭・除菌機能を備えた車両の電気的構成を示すブロック図。
【図9】(a)は脱臭・除菌機能を備えた別の形態のバス車両を上方から見た概略図、(b)は脱臭・除菌機能を備えた別の形態のバス車両を側方から見た概略図。
【図10】(a)及び(b)は静電霧化装置の別の形態の配置状態を示す概略図。
【図11】(a)〜(c)は静電霧化装置の別の形態の配置状態を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に従って説明する。
図1は、車両としてのバス車両1に搭載される脱臭・除菌システム2の電気的構成図を示す。脱臭・除菌システム2を構成する静電霧化装置11は、霧化ブロック12、高圧電源回路13、ペルチェ用電源14、高圧電源電圧検出回路15、放電電流検出回路16及び制御部17を備えている。尚、本実施形態のバス車両1は、近距離の交通機関として用いられるものである。
【0021】
図2に示すように、霧化ブロック12を構成する支持枠21は、PBT樹脂、ポリカーボネート樹脂、PPS樹脂等の絶縁性樹脂材料を用いて形成されるとともに、略円筒状の筒部21aにて主体が構成されている。そして、筒部21aの基端部(図2において下端部)には、外周側に突出する円環状の固定フランジ部21bが一体に形成されている。また、筒部21aの内周面には、支持枠21の内部空間を霧化空間S1と密閉空間S2とに分割する隔壁21cが一体に形成されるとともに、この隔壁21cの径方向の中央部には、霧化空間S1と密閉空間S2とを連通する連通孔21dが形成されている。更に、筒部21aにおいて、霧化空間S1の外周を囲う部位には、霧化空間S1と筒部21aの外部空間とを連通する複数の空気流入孔21eが形成されている。また、筒部21aの先端面(図2において上端面)には、リング状の対向電極22がインサート成形等により一体的に設けられている。この対向電極22の中央部の開口は、ミスト吐出口22aとなっている。
【0022】
筒部21aの内部には、導電性を有する金属製の放電電極23が配置されている。放電電極23は、筒部21aの軸方向に沿って延びる略円柱状をなすとともに、同放電電極23の先端側の部位は、先端に向かうに連れて縮径された円錐形状をなしている。また、放電電極23は、その先端部に球状の放電部23aを有する一方、その基端部に径方向外側に延設された円環状のフランジ部23bを有する。
【0023】
そして、放電電極23は、先端部の放電部23aが霧化空間S1内に配置されるように、前記隔壁21cの連通孔21dを貫通した状態で筒部21aの内部に配置されている。また、放電電極23のフランジ部23bは、密閉空間S2内に配置されるとともに、隔壁21cにおける連通孔21dの外周部分に当接している。このように配置された放電電極23と前記対向電極22との間には間隔が設けられている。また、放電電極23の基端部には、高電圧を印加するための高電圧印加板24が接続されている。高電圧印加板24は、筒部21aの外部にまで延出されるとともに高圧電源回路13に接続されている。
【0024】
前記密閉空間S2内には、放電電極23の基端面と当接するように冷却用絶縁板25が収容されている。冷却用絶縁板25は、熱伝導性及び耐電性の高いアルミナや窒化アルミニウム等にて形成されている。
【0025】
また、密閉空間S2内には、放電電極23との間に冷却用絶縁板25が介在されるようにペルチェモジュール26が配置されている。ペルチェモジュール26は、厚さ方向に互いに対向して配置される一対の回路基板27,28間にBiTe系の複数の熱電素子29を配置して構成されている。回路基板27,28は、熱伝導性の高い絶縁板(例えばアルミナ、窒化アルミニウム等)に回路が形成されたプリント基板であり、前記回路は一対の回路基板27,28の互いに対向する面にそれぞれ形成されている。また、この回路によって複数の熱電素子29が電気的に接続されている。更に、熱電素子29は、ペルチェ入力リード線30を介してペルチェ用電源14(図1参照)に接続されている。このようなペルチェモジュール26は、ペルチェ入力リード線30を介して複数の熱電素子29に通電されると、冷却用絶縁板25に当接された一方の回路基板27から、他方の回路基板27に向けて熱が移動するようになっている。
【0026】
また、前記支持枠21の固定フランジ部21bは放熱部材31に固定されている。この放熱部材31は、熱電素子29への通電により放電電極23側の回路基板27から放熱部材31側の回路基板28に向けて搬送された熱を効率良く外気に放出するためのものである。放熱部材31は、高熱伝導性を有するアルミナや窒化アルミニウム等にて形成されるとともに、前記一対の回路基板27,28のうち冷却用絶縁板25に当接していない方の回路基板28(図2において下側の回路基板28)に当接している。
【0027】
また、前記隔壁21cの連通孔21dと放電電極23との間が封止部材32によって封止されており、この封止部材32と放熱部材31とによって密閉空間S2が密閉状態に維持されている。
【0028】
図1に示すように、制御部17はマイコンを備えている。そして、前記ペルチェ用電源14は、制御部17に電気的に接続されるとともに、制御部17からの制御信号によって制御される。また、高圧電源回路13は、制御部17に電気的に接続されるとともに、制御部17からの制御信号により制御される。更に、高圧電源電圧検出回路15は、高圧電源回路13が放電電極23に印加する電圧値を検出するとともに、検出した電圧値に応じた高圧電圧信号を制御部17に出力する。また、放電電流検出回路16は、高圧電源回路13によって放電電極23に高電圧が印加されたときに生じる放電電流を検出し、検出した放電電流に応じた放電電流信号を制御部17に出力する。
【0029】
制御部17は、高圧電源回路13のオン・オフを制御するだけでなく、高圧電源電圧検出回路15から入力された高圧電圧信号及び放電電流検出回路16から入力された放電電流信号に基づいて生成した放電電圧調整信号を高圧電源回路13に出力する。そして、高圧電源回路13のオン・オフを制御するためのON/OFF制御信号のみではなく、この放電電流調整信号に基づいて高圧電源回路13が駆動されることにより、安定して静電霧化できる電圧が高圧電源回路13から放電電極23に印加されるようになっている。
【0030】
図1及び図2に示すように、上記のように構成された静電霧化装置11では、ペルチェ用電源14による熱電素子29への通電により放電電極23側の回路基板27から放熱部材31側の回路基板27へ熱が移動されると、該熱移動に伴って冷却用絶縁板25を介して放電電極23が冷却される。すると、放電電極23の周囲の空気が冷却されて空気中の水分が結露して放電電極23の表面に付着する。そして、放電電極23の特に放電部23aの表面に水が保持された状態で、放電電極23がマイナス電極となって電荷が集中するように放電電極23と対向電極22との間に高圧電源回路13によって高電圧が印加される。すると、静電気力により放電部23aに保持された水が対向電極22側に引き上げられてテイラーコーンと称される形状を形成する。そして、放電部23aに保持された水は、大きなエネルギを受けてレイリー分裂を繰り返し、帯電微粒子水Mを大量に発生させるとともに、発生された帯電微粒子水Mは、対向電極22のミスト吐出口22aを通って霧化空間S1の外に放出される。
【0031】
図3(a)及び図3(b)に示すように、本実施形態のバス車両1に搭載される脱臭・除菌システム2は、複数の静電霧化装置11を備えている。即ち、バス車両1には、複数の静電霧化装置11(図では一例として9個の静電霧化装置11)が配置されている。尚、図1には、代表として静電霧化装置11を1つのみ図示している。また、各静電霧化装置11の制御部17は、マイコンを備え脱臭・除菌システム2を制御するシステム制御部41にそれぞれ電気的に接続されている。
【0032】
図3(a)及び図3(b)に示すように、本実施形態のバス車両1の左側面における前端部には、バス車両1の内部と外部とを連通する開口部としての乗降口51が形成されている。この乗降口51は、開閉部材としての車両ドア52にて開閉されるようになっている。尚、車両ドア52は、図1に示すように、ドア開閉制御手段53にて制御されるドア駆動手段54によってその開閉が行われる。即ち、車両ドア52を開作動させる旨の開閉信号をドア開閉制御手段53がドア駆動手段54に出力すると、ドア駆動手段54は乗降口51を開放するように車両ドア52を作動させる。一方、車両ドア52を閉作動させる旨の開閉信号をドア開閉制御手段53がドア駆動手段54に出力すると、ドア駆動手段54は乗降口51を閉鎖するように車両ドア52を作動させる。そして、本実施形態では、ドア開閉制御手段53は、ドア駆動手段54に出力する開閉信号と同じ開閉信号をシステム制御部41にも出力するように構成されている。従って、システム制御部41は、ドア開閉制御手段53から入力された開閉信号に基づいて、車両ドア52の開閉状態を認識できるようになっている。
【0033】
また、図3(a)及び図3(b)に示すように、バス車両1内には、最前部の左側に運転者が着席する運転席55が配置されるとともに、バス車両1内において同バス車両1の幅方向の中央部には、前後方向に延びる通路56が形成されている。そして、運転席55の後方であって通路56の幅方向の両側には、乗客用の座席57が複数個(図では一例として9個)ずつ配置されている。通路56の幅方向の一方側(例えば左側)の複数個の座席57と、他方側(例えば右側)の複数個の座席57とは、通路56を挟んでそれぞれ隣り合っている。
【0034】
そして、複数の前記静電霧化装置11は天井部58に配置されている。複数の静電霧化装置11は、天井部58において通路56と上下方向に対向する部位に、前後方向に等間隔(座席57の前後方向の間隔と同じ)に設けられている。更に、複数の静電霧化装置11は、バス車両1の幅方向に隣り合う座席57間にそれぞれ配置されている。また、これらの静電霧化装置11は、それぞれが配置された場所において、発生させた帯電微粒子水Mをバス車両1内に放出する。
【0035】
また、図1に示すように、本実施形態のシステム制御部41は、ドア開閉制御手段53から入力される開閉信号に基づいて、予め任意に設定された計測時間内での車両ドア52の開作動の回数を計測する。計測時間の計測には例えばシステム制御部41に備えられたカウンタ回路が用いられるとともに、車両ドア52の開作動の回数の計測には例えばシステム制御部41に備えられたタイマ回路が用いられる。そして、システム制御部41は、所定の前記計測時間内での車両ドア52の開作動の回数に応じて、発生させる帯電微粒子水Mの量を変更するように各静電霧化装置11の制御部17に指令を出す。この指令によって、各静電霧化装置11において帯電微粒子水Mの放出量が変更される。尚、所定の計測時間内での車両ドア52の開作動の回数が多いほど、バス車両1を連続して密閉する密閉時間が短くなるため、所定の計測時間内での車両ドア52の開作動の回数は、バス車両1を密閉する密閉時間に準じた値である。従って、本実施形態のシステム制御部41は、バス車両1を密閉する密閉時間に応じて帯電微粒子水Mの放出量を変更するように帯電微粒子水Mの放出量を変更するように静電霧化装置11を制御している。
【0036】
次に、上記のように構成された本実施形態のバス車両1の動作を、脱臭・除菌機能を中心に説明する。
バス車両1は、該バス車両1の運行ルートに設けられた停留所(図示略)に到着すると該停留所に停止される。そして、バス車両1の運転者(図示略)は、ドア開閉制御手段53を通じてドア駆動手段54を駆動することにより、車両ドア52を開作動させる。このとき、ドア駆動手段54は、ドア駆動手段54に出力する開閉信号と同じ開閉信号をシステム制御部41にも出力する。システム制御部41は、バス車両1の運行中に車両ドア52を開作動させる旨の開閉信号が入力された回数を計測する。
【0037】
ここで、バス車両1の外部の空気は、周囲の車両から排出される排気ガス等によって汚染されていることがある。そして、車両ドア52の開作動の回数が多い場合には、バス車両1の外部の汚染された空気が乗降口51から流入する頻度が多くなるため、車両ドア52の開作動の回数が多い程、バス車両1内が汚染されやすくなる。そこで、本実施形態のシステム制御部41は、計測時間内の車両ドア52の開作動の回数が予め設定された閾値以上となった場合に、発生させる帯電微粒子水Mの量を増加するように各静電霧化装置11の制御部17に指令を出す。すると、各静電霧化装置11から放出される帯電微粒子水Mの放出量が増加されるため、帯電微粒子水Mに含まれる活性種の作用によって、バス車両1内において効率良く脱臭、除菌及びアレルゲン物質の不活性化を行うことができる。尚、静電霧化装置11による帯電微粒子水Mの放出量は、例えば、各静電霧化装置11において放電電極23に印加する電圧値を変更することにより変更する。
【0038】
また、システム制御部41は、計測時間内の車両ドア52の開作動の回数が前記閾値よりも少ない場合には、計測時間内の車両ドア52の開作動の回数が前記閾値以上である場合よりも帯電微粒子水Mの放出量を減少させるように各静電霧化装置11を制御する。
【0039】
以上説明したように、本実施形態によれば、以下の作用効果を奏することができる。
(1)バス車両1内の汚染状況は、バス車両1を密閉する密閉時間にも依存する。従って、本実施形態のように、バス車両1の密閉に応じて帯電微粒子水Mの放出量を変更することにより、バス車両1内の環境に準じた帯電微粒子水の放出を行うことができる。
【0040】
(2)バス車両1の密閉時間を、所定の計測時間内での車両ドア52の開作動の回数を計測することにより検出している。従って、バス車両1の密閉時間を容易に検出できるため、システム制御部41における制御が容易となる。
【0041】
(3)システム制御部41は、計測時間内の車両ドア52の開作動の回数が予め設定された閾値よりも少ない場合には、各静電霧化装置11における帯電微粒子水Mの放出量を減少させる。従って、バス車両1内の汚染の度合いが低い場合に過剰に帯電微粒子水Mを放出することを抑制できる。その結果、静電霧化装置11の運転コストを低減できる。
【0042】
(4)本実施形態のバス車両1は近距離の交通機関に用いられている。近距離の交通機関では、隣り合う停留所間の距離が短いため、鉄道や長距離バス等の長距離の交通機関に比べて単位時間当たりの車両ドア52の開作動の回数が多い。そのため、バス車両1の外部の汚染された空気が乗降口51から流入する頻度が多い。従って、このような近距離の交通機関に用いられるバス車両1内に静電霧化装置11を配置するとともに、バス車両1の密閉時間に応じて帯電微粒子水Mの放出量を変更することは、バス車両1内の環境を向上させる上で大きな意義がある。
【0043】
尚、本発明の実施形態は、以下のように変更してもよい。
・上記実施形態のシステム制御部41は、計測時間内の車両ドア52の開作動の回数に応じて駆動する静電霧化装置11を変更するものであってもよい。例えば、システム制御部41は、計測時間内の車両ドア52の開作動の回数が閾値以上となった場合に、車両ドア52に近い静電霧化装置11から帯電微粒子水Mの放出する一方、車両ドア52から遠い静電霧化装置11を停止させてもよい。尚、車両ドア52に近い静電霧化装置11は、例えば、図3において、複数の静電霧化装置11のうち、前方から1個目の静電霧化装置11のみとしてもよいし、前方から2〜3個目までの静電霧化装置11としてもよい。このようにしても、上記実施形態の(1)、(2)及び(4)と同様の作用効果を奏する。
【0044】
・上記実施形態のシステム制御部41は、バス車両1の密閉時間に加えて、バス車両1内の人数に応じて帯電微粒子水Mの放出量を調整するものであってもよい。
例えば、図4に示す例では、乗車人数推定手段としての炭酸ガスセンサ61を用いてバス車両1の乗車人数を推定する。炭酸ガスセンサ61は、車両ドア52の開閉による影響を避けるために、バス車両1内において車両ドア52から離れた位置に配置される。そして、炭酸ガスセンサ61は、バス車両1内の炭酸ガス濃度を検出するとともに、その検出結果をシステム制御部41に出力する。システム制御部41は、予め求めてあるバス車両1の乗車人数とバス車両1内における炭酸ガス濃度との関係に基づいて、炭酸ガスセンサ61で検出した炭酸ガス濃度によりバス車両1の乗車人数を推定する。そして、システム制御部41は、推定した乗車人数に応じて、静電霧化装置11から放出する帯電微粒子水Mの放出量を調整する。例えば、システム制御部41は、推定した乗車人数が多いほど、帯電微粒子水Mの放出量が多くなるように静電霧化装置11を制御する。このようにすると、バス車両1の乗車人数に応じて効率良く帯電微粒子水Mをバス車両1内に放出することができる。
【0045】
また、炭酸ガスセンサ61に代えて、乗車人数推定手段としての人感センサをバス車両1に備えてもよい。図5に示す例では、人の出す赤外線を利用して人を検出する人感センサ71をバス車両1に備えている。人感センサ71では、バス車両1内を複数の領域に分割し、この分割した領域内で発生している赤外線をフレネルレンズ(マルチレンズ)72を介して焦電素子73で検出する。そして、焦電素子73での検出結果は、増幅回路74で増幅された後にコンパレータ75において検出される。コンパレータ75における検出結果は、カウント回路76においてカウントされるとともに、カウント回路76は、そのカウント数をシステム制御部41に出力する。システム制御部41は、カウント回路76から出力されたカウント数に基づいてバス車両1の乗車人数を推定する。このとき、システム制御部41は、バス車両1を複数に分割した領域のうち、1つの領域に居る人の人数を推定し、他の領域も同等の人数と推定してバス車両1の乗車人数を推定してもよい。また、システム制御部41は、バス車両1内を複数の領域に分割したうちの各領域に居る人の人数をそれぞれ推定して合計することによりバス車両1の乗車人数を推定してもよい。そして、システム制御部41は、推定した乗車人数に応じて帯電微粒子水Mの放出量を調整するように静電霧化装置11を制御する。このようにしても、バス車両1の乗車人数に応じて効率良く帯電微粒子水Mをバス車両1内に放出することができる。
【0046】
尚、バス車両1の乗車人数の推定は、乗車料金を受領するためにバス車両1に搭載された周知の料金受領装置を利用して行ってもよい。更に、炭酸ガスセンサ61、人感センサ71及び料金受領装置を適宜組み合わせて使用することにより、バス車両1の乗車人数の推定を行うようにしてもよい。また、バス車両1に乗り口と降り口とが設けられている場合には、乗り口及び降り口に配置した能動式赤外線センサを用いてバス車両1の乗車人数を推定するようにしてもよい。この場合、システム制御部41は、能動式赤外線センサの出力に基づいて乗り口を通った人の人数と降り口を通った人の人数をシステム制御部41においてカウントするとともに、このカウント値に基づいてバス車両1の乗車人数を推定する。
【0047】
また、バスロケーションシステムを利用してバス車両1内の乗車人数を推定してもよい。この場合、前記人感センサ71は、バスロケーションシステムを構成する停留所装置(図示略)に設けられる。停留所装置は、停留所に設置されるとともに、システム制御部41に備えられる無線通信手段(図示略)と無線通信を行う通信部を備えている。そして、停留所装置に設けられた人感センサ71は、停留所で発生している赤外線をフレネルレンズ(マルチレンズ)72を介して焦電素子73で検出する。そして、カウント回路76においてカウントされたカウント数は、停留所装置の通信部からシステム制御部41の無線通信手段に送信される。システム制御部41は、無線通信手段で受信したカウント数に基づいて、当該停留所でバスを待っている人の人数を推定するとともに、この推定した人数に基づいて帯電微粒子水Mの放出量を増加させるか否かを判定する。例えば、システム制御部41は、停留所で待っている人の人数が多い場合(予め設定された基準人数より多い場合)には、帯電微粒子水Mの放出量を増加させるように静電霧化装置11を制御する。
【0048】
また、バスロケーションシステムを利用する場合、システム制御部41は、停留所装置から送信されたカウント値に基づいて推定した人数に、バス車両1内に居る人の人数を加算して得た乗車人数に応じて、帯電微粒子水Mの放出量を調整してもよい。また、バス車両1が路線バスである場合等、バス車両1に下車ボタンが設けられている場合には、下車ボタンが操作されたときに出力されるオン信号をシステム制御部41に入力するようにしてもよい。下車ボタンからオン信号が入力された場合には、バス車両1から下車する人が居ることが想定されるため、推定した乗車人数から任意の所定数を減算した数を修正乗車人数として、この修正乗車人数に応じて帯電微粒子水Mの放出量を調整してもよい。尚、この場合、バス車両1内に居る人の人数は、バス車両1に設けられた上記の炭酸ガスセンサ61、人感センサ71、能動式赤外線センサ等の出力に基づいて推定される。また、システム制御部41の無線通信手段は、バスロケーションシステムにおいて、バス車両1の位置情報を送信した際に、停留所で待っている人の人数を取得してもよい。
【0049】
・上記実施形態では、バス車両1を密閉する密閉時間に準じた値として、計測時間当たりの車両ドア52の開作動の回数を用いた。しかしながら、バス車両1の密閉時間に準じた値として、混雑時における車両ドア52の閉時間を用いてもよい。混雑時にバス車両1が密閉されている時間が長くなると、バス車両1内の多くの人から臭い等が空気中に放出されるため、バス車両1内が汚染されやすい。そこで、システム制御部41は、バス車両1内が混雑しているとき、即ちバス車両1の乗車人数が予め設定された基準人数以上であるときに、乗降口51が車両ドア52によって閉鎖されている時間を計測する。バス車両1の乗車人数は、上記の炭酸ガスセンサ61、人感センサ71、能動式赤外線センサ等の出力に基づいて推定される。そして、システム制御部41は、バス車両1の乗車人数が予め設定された基準人数以上であるときに、乗降口51が車両ドア52によって閉鎖されている時間が所定時間以上になると、帯電微粒子水Mの放出量を増加させるように静電霧化装置11を制御する。このようにしても、上記実施形態の(1)と同様の作用効果を奏する。
【0050】
・上記実施形態のシステム制御部41は、バス車両1内で人の居る場所へ集中して帯電微粒子水Mを放出するように構成されてもよい。この場合、図6に示すように、バス車両1には、バス車両1内で人の居る場所を検知する乗車場所検知手段81が設けられるとともに、乗車場所検知手段81は、バス車両1内で人の居る場所を検知してその検知結果をシステム制御部41に出力する。乗車場所検知手段81としては、例えば、座席57に設けられた着座センサや、手摺り及び吊革等に設けられたタッチセンサ等が用いられる。そして、システム制御部41は、乗車場所検知手段81にて検知した場所、即ちバス車両1内で人の居る場所の近傍に配置された静電霧化装置11を集中的に駆動することにより、バス車両1内で人の居る場所に集中的に帯電微粒子水Mを放出する。
【0051】
このようにすると、バス車両1内を汚染する要因となる人が居る場所に集中的に帯電微粒子水Mを放出するため、効率良く脱臭、除菌及びアレルゲン物質の不活性化を行うことができる。また、バス車両1内で人の居る場所が偏る場合には、人が居る場所に集中的に帯電微粒子水Mが放出されることにより、バス車両1内で人が集中した場所があってもその場所の環境がバス車両1内の他の場所に比べて汚染の度合いが高くなることが抑制される。尚、バス車両1の乗客は、鉄道用車両の乗客と比較すると、着席したり、手摺り及び吊革等に捕まったりすることが多いため、バス車両1では、鉄道用車両に比べて内部の人の居場所を特定しやすい。従って、帯電微粒子水Mを人の居る場所へ集中的に放出しやすい。
【0052】
・上記実施形態のシステム制御部41は、バス車両1内の汚染度合いに応じて、帯電微粒子水Mの放出量及び帯電微粒子水Mの放出場所の少なくとも一方を変更するように構成されてもよい。例えば、車両ドア52の開作動の回数が多くなるとバス車両1の外部の汚染された空気がバス車両1内に流入する機会が多くなるため、バス車両1内が汚染されやすくなる。そこで、システム制御部41は、車両ドア52の開作動の回数を計測し、その計測結果に応じて帯電微粒子水Mの放出量を調整するようにしてもよい。この場合、開閉信号をシステム制御部41に出力するドア開閉制御手段53が、バス車両1内の汚染度合いを検出するための汚染度合い検出手段となる。
【0053】
また、図7に示すように、ドア開閉制御手段53以外に、バス車両1内の汚染度合いを検出するための汚染度合い検出手段91をバス車両1に設けてもよい。例えば、バス車両1の内部の混雑率からバス車両1内の汚染度合いを検出する場合には、汚染度合い検出手段91には、人の所在を検知する人感センサが用いられる。ここで、「混雑率」は、バス車両1の乗車定員に対する乗車人数の割合である。システム制御部41は、人感センサの出力に基づいてバス車両1の乗車人数を算出し、算出した乗車人数とバス車両1の乗車定員とから混雑率を算出する。そしてシステム制御部41は、算出した混雑率に応じて帯電微粒子水Mの放出量を調整するように静電霧化装置11を制御する。例えば、システム制御部41は、混雑率が高いほど帯電微粒子水Mの放出量が多くなるように各静電霧化装置11を制御する。
【0054】
また、汚染度合い検出手段91にダストセンサを用いてもよい。この場合、システム制御部41は、ダストセンサの出力に基づいてバス車両1内の汚染度合いを検出するとともに、検出した汚染度合いに応じて帯電微粒子水Mの放出量を変更するように各静電霧化装置11を調整する。ダストセンサの出力に基づいて、バス車両1内で特に汚染されている場所が特定できる場合には、システム制御部41は、特に汚染されている場所の近傍に配置された静電霧化装置11を駆動するように、駆動する静電霧化装置11を変更してもよい。
【0055】
また、人感センサ71、ダストセンサ、炭酸ガスセンサ61等を汚染度合い検出手段91として用いることにより、バス車両1において汚染度合いが高い場所を検知してもよい。この場合、システム制御部41は、汚染度合いが高い場所の近傍にある静電霧化装置11から帯電微粒子水Mが放出されるようにする。また、人感センサ71、ダストセンサ、炭酸ガスセンサ61等を汚染度合い検出手段91として用い、当該汚染度合い検出手段91の出力に基づいてバス車両1内での人の動きを検知してもよい。この場合、システム制御部41は、人の動きに応じて当該人の近傍の静電霧化装置11から帯電微粒子水Mが放出されるようにする。
【0056】
このようにすると、バス車両1内の汚染の度合いに応じて帯電微粒子水Mが放出されるため、帯電微粒子水Mが過剰に放出されたり、脱臭、除菌及びアレルゲン物質の不活性化が不十分となったりすることが抑制される。また、汚染の度合いに応じて帯電微粒子水Mの放出場所が変更されると、バス車両1内で部分的に汚染の度合いが高い場所が発生することが抑制される。
【0057】
・上記実施形態のシステム制御部41は、バス車両1内の温度分布及び湿度分布に応じて、帯電微粒子水Mの放出量及び帯電微粒子水Mの放出場所の少なくとも一方を変更するものであってもよい。この場合、図8に示すように、バス車両1には、温湿度分布検知手段としての複数の温度センサ101及び複数の湿度センサ102が設けられる。複数の温度センサ101及び湿度センサ102は、バス車両1に複数配置された静電霧化装置11の近傍にそれぞれ配置されることが好ましい。システム制御部41は、複数の温度センサ101及び複数の湿度センサ102の出力に基づいて、バス車両1内の温度分布及び湿度分布を検知する。そして、システム制御部41は、検知した温度分布及び湿度分布に応じて、放電電極23で行われる水の霧化に適した場所に存在する静電霧化装置11を駆動する。また、システム制御部41は、検知した温度分布及び湿度分布に応じて、帯電微粒子水Mが適切に発生されるように静電霧化装置11を駆動してもよい。温度分布や湿度分布は、放電電極23に保持される水の生成と関連があるため、温度分布及び湿度分布に基づいて静電霧化装置11を駆動することにより、効率的に帯電微粒子水Mを発生させることができる。
【0058】
・バス車両1に複数の静電霧化装置11を配置する場合には、図9に示すようにしてもよい。図9に示すバス車両1は、バス車両1の左側面における後方側の部位に開口部及び乗降口としての乗り口111が設けられるとともに、バス車両1の左側面の前端部に開口部及び乗降口としての降り口112が設けられている。乗り口111及び降り口112は、それぞれ車両ドア52にて開閉される。そして、バス車両1には、上記実施形態と同様に天井部58に複数の静電霧化装置11が配置されるとともに、更に、乗り口111及び降り口112近傍に集中して静電霧化装置11が配置されている。詳しくは、乗り口111の両側にそれぞれ静電霧化装置11が配置されるとともに、降り口112の両側にそれぞれ静電霧化装置11が配置されている。
【0059】
このように、バス車両1内に複数の静電霧化装置11を配置すると、バス車両1内の場所に応じて帯電微粒子水Mを放出することが容易にできる。また、帯電微粒子水Mを放出する場所の変更や、帯電微粒子水Mの放出量の調整を容易に行うことができる。また、乗り口111及び降り口112が開放されると、バス車両1内の外部の汚染された空気が流入する。従って、乗り口111及び降り口112の近傍に静電霧化装置11を配置して帯電微粒子水Mを放出することにより、乗り口111及び降り口112からバス車両1内へ流入した空気の脱臭、除菌及びアレルゲン物質の不活性化を効率良く行うことができる。
【0060】
尚、バス車両1に設けられる静電霧化装置11の数は必ずしも複数でなくてもよく、バス車両1には、少なくとも1つの静電霧化装置11が設けられればよい。また、バス車両1に設けられ窓ガラス等の開閉部材にて開閉可能な窓部(開口部)の近傍に静電霧化装置11を配置してもよい。
【0061】
・上記実施形態では、静電霧化装置11は、天井部58に配置されている。しかしながら、静電霧化装置11は、天井部58に限らず、バス車両1において該バス車両1の内部に帯電微粒子水Mを放出可能な位置に配置されればよい。
【0062】
例えば、図10(a)に示す例では、静電霧化装置11は、冷却器122、エアコン用ファン123を備えたエアコン装置124の風路125の下流側端部にある噴出し口121にミスト吐出口22aが隣り合うように配置されている。また、図10(b)に示す例では、静電霧化装置11は、エアコン装置124の風路125にミスト吐出口22aが隣り合うように配置されている。また、静電霧化装置11は、エアコン装置124の内部で、エアコン用ファン123の上流側若しくは下流側に配置されてもよい。
【0063】
このようにすると、エアコン装置124の気流を利用して帯電微粒子水Mをバス車両1内に効果的に拡散させることができる。また、バス車両1には、噴出し口121の噴射方向を手動で変更できるものがある。従って、バス車両1において静電霧化装置11を噴出し口121の近傍やエアコン装置124の内部に配置すると、バス車両1に乗車した人は、噴出し口121の噴射方向を手動で変更することにより、集中して帯電微粒子水Mを浴びることができるようになる。
【0064】
また、静電霧化装置11は、バス車両1に乗車している人が接触する可触部の近傍に配置されてもよい。例えば、図11(a)に示すように、可触部としての座席57に隣り合うようにバス車両1の側壁部に静電霧化装置11を配置してもよい。また、図11(b)に示すように、可触部としての吊革131の近傍に静電霧化装置11を配置してもよい。また、図11(c)に示すように、可触部としての手摺り132の近傍に静電霧化装置11を配置してもよい。また、下車ボタンが操作されるときには、同下車ボタンの近傍に人が居ることが多いため、下車ボタンの近傍に静電霧化装置11を配置してもよい。
【0065】
バス車両1内において、可触部(座席57、吊革131、手摺り132及び下車ボタン等)は、人が直接接触するため、臭気、細菌及びアレルゲン物質が付着しやすい。そして、可触部の近傍に静電霧化装置11を配置することにより、可触部の脱臭、除菌及びアレルゲン物質の不活性化を効果的に行うことができる。また、可触部付近には人が居ることが多いので、人から出る臭気等を効果的に除去することができる。尚、バス車両1内の可触部にグランド電極を設けること、可触部に接触した人はより帯電微粒子水Mを浴びやすくなる。
【0066】
・上記実施形態のシステム制御部41は、車両ドア52の開時間に比例して帯電微粒子水Mの放出量を増加させるように静電霧化装置11を制御してもよい。この場合、システム制御部41は、ドア開閉制御手段53から車両ドア52を開作動させる旨の開閉信号が入力されると、当該開閉信号が入力されてからの時間を計測する。そして、システム制御部41は、車両ドア52を開作動させる旨の開閉信号が入力されてからの時間に比例して帯電微粒子水Mの放出量が増加するように、バス車両1内に配置された各静電霧化装置11を制御する。尚、システム制御部41は、車両ドア52を開作動させる旨の開閉信号が入力されてからの時間に比例して帯電微粒子水Mの放出量が増加するように、駆動する前記静電霧化装置11の個数を増加させてもよい。
【0067】
車両ドア52の開時間が長くなると、それに伴って乗降口51からバス車両1内に流入する汚染された空気の量も増加する。従って、車両ドア52の開時間に比例して帯電微粒子水Mの放出量を増加させることにより、乗降口51からバス車両1内に流入する汚染された空気によってバス車両1内の汚染の度合いが増すことが抑制される。また、静電霧化装置11による帯電微粒子水Mの放出量を増加、若しくは駆動する静電霧化装置11の個数を増加させることにより、帯電微粒子水Mの放出量を容易に増加させることができる。
【0068】
・上記実施形態のシステム制御部41は、車両ドア52の開作動の回数に比例して帯電微粒子水Mの放出量を増加させるように静電霧化装置11を制御してもよい。この場合、システム制御部41は、車両ドア52を開作動させる旨の開閉信号が入力された回数を計測する。そして、システム制御部41は、車両ドア52を開作動させる旨の開閉信号が入力された回数に比例して帯電微粒子水Mの放出量が増加するように、バス車両1内に配置された各静電霧化装置11を制御する。尚、システム制御部41は、車両ドア52を開作動させる旨の開閉信号が入力された回数に比例して帯電微粒子水Mの放出量が増加するように、駆動する前記静電霧化装置11の個数を増加させてもよい。
【0069】
車両ドア52の開作動の回数が多くなると、それに伴って乗降口51からバス車両1内に流入する汚染された空気の量も増加する。従って、車両ドア52の開作動の回数に比例して帯電微粒子水Mの放出量を増加させることにより、乗降口51からバス車両1内に流入する汚染された空気によってバス車両1内の汚染の度合いが増すことが抑制される。また、静電霧化装置11による帯電微粒子水Mの放出量を増加、若しくは駆動する静電霧化装置11の個数を増加させることにより、帯電微粒子水Mの放出量を容易に増加させることができる。
【0070】
・上記実施形態のシステム制御部41は、車両ドア52の開時間が予め設定された基準時間よりも長い場合に、乗降口51の近傍に配置された静電霧化装置11による帯電微粒子水Mの放出量を増加させてもよい。また、システム制御部41は、車両ドア52の開時間が前記基準時間よりも長い場合に、乗降口51の近傍に配置された静電霧化装置11を集中的に駆動してもよい。尚、システム制御部41は、ドア開閉制御手段53から車両ドア52を開作動させる旨の開閉信号が入力されてからの時間を計測することにより、車両ドア52の開時間を計測する。
【0071】
また、システム制御部41は、車両ドア52の開作動の回数が予め設定された基準回数よりも多い場合に、乗降口51の近傍に配置された静電霧化装置11による帯電微粒子水Mの放出量を増加させてもよい。また、システム制御部41は、車両ドア52の開作動の回数が前記基準回数よりも場合に、乗降口51の近傍に配置された静電霧化装置11を集中的に駆動してもよい。尚、システム制御部41は、ドア開閉制御手段53から車両ドア52を開作動させる旨の開閉信号が入力された回数を計測することにより、車両ドア52の開作動の回数を計測する。
【0072】
また、システム制御部41は、車両ドア52の開時間が前記基準時間よりも長い場合であって、車両ドア52の開作動の回数が前記基準回数よりも多い場合に、乗降口51の近傍に配置された静電霧化装置11による帯電微粒子水Mの放出量を増加させてもよい。この場合、システム制御部41は、乗降口51の近傍に配置された静電霧化装置11を集中的に駆動してもよい。
【0073】
このようにすると、バス車両1の内部において乗降口51付近の環境を良好に維持しやすくなる。
・上記実施形態では、バス車両1は、近距離の交通機関として用いられるものであるが、長距離の交通機関として用いられてもよい。また、バス車両1は、鉄道用車両等の車両としてもよい。
【0074】
・上記実施形態では、静電霧化装置11は、放電電極23と該放電電極23に対向して配置された対向電極22との間に高電圧を印加するように形成されている。しかしながら、静電霧化装置11は、対向電極22を備えず、放電電極23に高電圧が印加される構成であってもよい。また、帯電除去板、支持枠21等、放電電極23の周囲に配置された静電霧化装置11の構成部品や、静電霧化装置11を搭載する機器のハウジングによって対向電極22の役割を果たすようにしてもよい。
【0075】
上記実施形態及び上記各変更例から把握できる技術的思想を以下に記載する。
(イ)請求項1乃至請求項9の何れか1項に記載の車両において、前記車両はバス車両であることを特徴とする脱臭・除菌機能を備えた車両。
【符号の説明】
【0076】
1…車両としてのバス車両、11…静電霧化装置、23…放電電極、41…システム制御部、51…開口部としての乗降口、52…開閉部材としての車両ドア、53…汚染度合い検出手段としてのドア開閉制御手段、57…可触部としての座席、61…乗車人数推定手段及び汚染度合い検出手段としての炭酸ガスセンサ、71…乗車人数推定手段及び汚染度合い検出手段としての人感センサ、81…乗車場所検知手段、91…汚染度合い検出手段、101…温湿度分布検知手段としての温度センサ、102…温湿度分布検知手段としての湿度センサ、111…開口部及び乗降口としての乗り口、112…開口部及び乗降口としての降り口、121…噴出し口、124…エアコン装置、131…可触部としての吊革、132…可触部としての手摺り。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放電電極に高電圧を印加して前記放電電極に保持される水を霧化させて帯電微粒子水を発生させる静電霧化装置を有する脱臭・除菌機能を備えた車両であって、
車両を密閉する密閉時間に応じて、前記帯電微粒子水の放出量及び前記帯電微粒子水の放出場所の少なくとも一方を変更するように前記静電霧化装置を制御するシステム制御部を備えたことを特徴とする脱臭・除菌機能を備えた車両。
【請求項2】
請求項1に記載の脱臭・除菌機能を備えた車両において、
車両の乗車人数を推定するための乗車人数推定手段を備え、
前記システム制御部は、前記乗車人数推定手段の出力に基づいて推定した乗車人数に応じて前記帯電微粒子水の放出量を調整するように前記静電霧化装置を制御することを特徴とする脱臭・除菌機能を備えた車両。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の脱臭・除菌機能を備えた車両において、
車両に乗車している人が居る場所を検知する乗車場所検知手段を備え、
前記システム制御部は、前記乗車場所検知手段にて検知した場所に集中的に前記帯電微粒子水を放出するように前記静電霧化装置を制御することを特徴とする脱臭・除菌機能を備えた車両。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の脱臭・除菌機能を備えた車両において、
車両内の汚染度合いを検出するための汚染度合い検出手段を備え、
前記システム制御部は、前記汚染度合い検出手段の出力に応じて、前記帯電微粒子水の放出量及び前記帯電微粒子水の放出場所の少なくとも一方を変更するように前記静電霧化装置を制御することを特徴とする脱臭・除菌機能を備えた車両。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の脱臭・除菌機能を備えた車両において、
車両内の温度分布及び湿度分布を検知するための温湿度分布検知手段を備え、
前記システム制御部は、前記温湿度分布検知手段の出力に基づいて検知した車両内の温度分布及び湿度分布に応じて、前記帯電微粒子水の放出量及び前記帯電微粒子水の放出場所の少なくとも一方を変更するように前記静電霧化装置を制御することを特徴とする脱臭・除菌機能を備えた車両。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5の何れか1項に記載の脱臭・除菌機能を備えた車両において、
前記静電霧化装置を複数備えたことを特徴とする脱臭・除菌機能を備えた車両。
【請求項7】
請求項6に記載の脱臭・除菌機能を備えた車両において、
車両に設けられ開閉部材にて開閉される開口部の近傍に集中して前記静電霧化装置が配置されていることを特徴とする脱臭・除菌機能を備えた車両。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7の何れか1項に記載の脱臭・除菌機能を備えた車両において、
車両に搭載されたエアコン装置の内部若しくは前記エアコン装置の噴出し口に前記静電霧化装置が配置されていることを特徴とする脱臭・除菌機能を備えた車両。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8の何れか1項に記載の脱臭・除菌機能を備えた車両において、
車両に乗車している人が接触する可触部の近傍に前記静電霧化装置が配置されていることを特徴とする脱臭・除菌機能を備えた車両。
【請求項10】
請求項1乃至請求項9の何れか1項に記載の脱臭・除菌機能を備えた車両に備えられた静電霧化装置の制御方法であって、
車両の乗降口を開閉する車両ドアの開時間に比例して前記帯電微粒子水の放出量を増加させることを特徴とする静電霧化装置の制御方法。
【請求項11】
請求項1乃至請求項9の何れか1項に記載の脱臭・除菌機能を備えた車両に備えられた静電霧化装置の制御方法であって、
車両の乗降口を開閉する車両ドアの開作動の回数に比例して前記帯電微粒子水の放出量を増加させることを特徴とする静電霧化装置の制御方法。
【請求項12】
請求項1乃至請求項9の何れか1項に記載の脱臭・除菌機能を備えた車両に備えられた静電霧化装置の制御方法であって、
車両の乗降口を開閉する車両ドアの開時間が予め設定された基準時間よりも長い場合、及び前記車両ドアの開作動の回数が予め設定された基準回数よりも多い場合の少なくとも一方の場合には、前記乗降口の近傍に配置された前記静電霧化装置による前記帯電微粒子水の放出量を増加させる、若しくは前記乗降口の近傍に配置された前記静電霧化装置を集中的に駆動することを特徴とする静電霧化装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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