説明

脱臭性材料および脱臭性シート

【課題】脱臭能力に優れ、各種基材シートの内部に安定的に保持される脱臭性材料および脱臭性シートを提供すること。
【解決手段】アニオン性および/またはカチオン性基を有するミクロゲル型樹脂からなることを特徴とする脱臭性材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱臭性材料および脱臭性シートに関し、さらに詳しくは、それ自体粉末状脱臭剤として有用であるとともに、各種合成繊維、合成樹脂、紙などの基材シートに脱臭性を付与するのに有用な脱臭性材料に関する。さらに言えば、おむつ、生理用品、吸汗性材料、住宅などに使用される繊維や紙などの基材シートに対し、脱臭性を付与するのに有効な脱臭性材料であり、イオン吸着性、水の透過性、通気性などに優れた脱臭性材料および脱臭性シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、壁紙、化粧板、建材、繊維、不織布、衣料、各種フィルムなどの分野では、これらの製品自体に、悪臭除去性、いわゆる脱臭性が要求される場合が多く、各種の脱臭材(剤)が使用されてきた。
【0003】
紙オムツや生理用品などの吸液性衛生脱臭性シートの分野においても、各種製品に対し、脱臭機能を付加する検討が多数なされており、効果的な脱臭機能を備える製品の開発が続けられている(特許文献1および2など参照)。また、特許文献3および4などでは、例えば、ゼオライト、活性炭などの粉末状脱臭剤を吸水性の基材シートに複合化する検討が多く見られるが、これらの検討の際には、脱臭剤の種類や構成、そして複合化方法などの要因により脱臭機能は大きく左右されることになるので、これらの要因の選択は製品開発時の重要案件になっている。
【0004】
脱臭剤については、イオン交換性の基を有する樹脂からなる脱臭剤の利用が知られているが、これらの脱臭剤は粒子が大きく、悪臭成分との反応面積が小さいので、その脱臭効果には限界があった。また、活性炭に代表される物理的吸着型の脱臭剤は、吸着面積は大きいが悪臭成分の吸着能力が小さく、実用性能が低いという問題があった。近年、これらの脱臭剤に対する高性能化の要求が高まっており、特に脱臭性能の向上が強く要求されている。
【特許文献1】特許第2862274号公報
【特許文献2】特開2000−350745号公報
【特許文献3】特開昭63−23662号公報
【特許文献4】特開昭62−211068号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って本発明の目的は、脱臭能力に優れ、各種基材シートの内部或いは表面に安定的に保持される脱臭性材料および脱臭性シートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的は以下本発明によって達成される。
すなわち、本発明は、アニオン性および/またはカチオン性基を有するミクロゲル型樹脂(以下「ミクロゲル」という)からなることを特徴とする脱臭性材料を提供する。該脱臭性材料においては、ミクロゲルの平均粒子径が、0.01μm〜100μmであること;ミクロゲルのアニオン性基が、スルホン基、硫酸エステル基、燐酸エステル基、およびカルボキシル基から選ばれる少なくとも1種であること;ミクロゲルのカチオン性基が、4級ピリジニウム基、4級アンモニウム基および1〜3級アミノ基から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0007】
また、本発明は、上記ミクロゲルを基材表面または基材内に含むことを特徴とする脱臭性シートを提供する。該脱臭性シートにおいては、ミクロゲル型樹脂の含有割合が、基材シート100質量部あたり0.6〜100質量部であること;基材が、セルロース紙、織布或いは不織布であること;および不織布が、スルホン化ポリプロピレン不織布であることが好ましい。
【0008】
また、本発明は、分散媒体中に分散された前記ミクロゲルを紙抄き法により繊維質基材シート中に担持させる脱臭性シートの製造方法、および前記ミクロゲルの分散液を塗布法により基材シートに担持させる脱臭性シートの製造方法を提供する。これらの方法においては、さらに吸水性樹脂粉末を混合することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、前記イオン性基を有するミクロゲルを液体媒体中に分散させ、これを各種基材シートに塗布、或いは混合などにより基材シートとの複合化が可能であり、さらには、アンモニアやメルカプタン類などの悪臭物質を効果的に除去できる脱臭性シートが得られることを見出した。
【0010】
本発明で用いられるミクロゲルは微小球体(平均粒子径:0.01〜100μm)であるため表面積が大きく、イオン性基がカチオン性基である場合はアンモニアなどのカチオン性の悪臭を、また、イオン性基がアニオン性基である場合は、アニオン性のメルカプタン類などの悪臭を効果的に除去することができる。
【0011】
また、前記のミクロゲルをバインダー樹脂とともに水性媒体中に分散させることによって、散布場所を汚染することなく、また、化粧板用原紙、脱臭性織布、壁紙用原反などの調製に好適に使用することができる。さらに基材シートに前記のミクロゲルからなる層を形成することによって、脱臭用材から溶出するアンモニアイオンなどによる他の脱臭性シートの汚染が防止され、かつ通気性や通水性が保持される。さらにこのミクロゲルは使い捨ておむつや生理用ナプキンに使用すれば優れた消臭効果をもたらす。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に好ましい実施態様を挙げて本発明をさらに詳しく説明する。
本発明を特徴づけるミクロゲルとは、ポリマー微粒子を内部架橋したものであり、アニオン性基および/またはカチオン性基を有しているものである。以上の如きミクロゲルを製造する代表的な方法としては、水系および非水系のいずれかにおいて後述の如きモノマーと架橋性モノマーとの混合物をラジカル重合する方法が挙げられ、重合の形態としてはエマルジョン重合、ソープフリー重合、懸濁重合、分散重合、シード重合などの重合方法が挙げられる。重合機構から、エマルジョン重合法、ソープフリー重合法およびシード重合法がミクロゲルの粒子径を小さくできるので好ましい。特に重合に際して乳化剤として界面活性剤を用いてもよいが、両親媒性モノマーを用いたソープフリー重合が活性剤の汚染がないので好ましい。
【0013】
ミクロゲルを調製するための代表的なモノマーとしては、例えば、スチレン、アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸(またはそれらの塩)、マレイン酸、マレイン酸メチル、スチレンスルホン基(またはそれらの塩)、(メタ)アクリロイルオキシプロピルスルホン基(またはそれらの塩)、(メタ)アクリル酸スルホプロピル(またはそれらの塩)、(メタ)アクリル酸−2−スルホエチル(またはそれらの塩)、2−(メタ)アクリロイルアミノ−2−メチル−1−プロパンスルホン基(またはそれらの塩)、2−(メタ)アクリロイルアミノ−2−プロパンスルホン基(またはそれらの塩)、ビニルスルホン基(またはそれらの塩)、4−ビニルビリジン、2−ビニルピリジン、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミドなどが挙げられる。
【0014】
上記モノマーと共重合し、得られる樹脂を内部架橋させる架橋性モノマーとしては、例えば、ジビニルベンゼン、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、ジメタクリル酸エチレングリコール、ジメタクリル酸−1,3−ブチレングリコール、その他3〜4官能性(メタ)アクリレート類などが挙げられる。特に水系でミクロゲルを調製するためにはジビニルベンゼンが好ましい。これらの架橋性モノマーを使用する場合は、該架橋性モノマーは、ポリマーを構成する前記モノマー100質量部に対して0.1〜20質量部、好ましくは0.5〜10質量部の範囲で使用する。
【0015】
その他共重合可能なモノマーとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコール(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ポリプロピレングリコールなどの(メタ)アクリル酸エステル誘導体、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミドなどの(メタ)アクリルアミド誘導体、アクリロニトリル、酢酸ビニルなどが挙げられる。
【0016】
本発明で使用するミクロゲルは、合成時の直径が0.01〜100μmの範囲、好ましくは0.02〜5μmの範囲である架橋されたスフェア(球状体)ポリマーである。ミクロゲルの直径が0.01μm未満の場合では、ミクロゲルに孔の形成が困難であり、一方、ミクロゲルの直径が100μmを超えると、ミクロゲルを分散媒体中に分散し塗布する際に、ミクロゲルが沈降してしまい、ミクロゲルの塗布工程が複雑となる。
【0017】
本発明で使用するミクロゲルは、アニオン性ミクロゲルとカチオン性ミクロゲルとに分けられ、アニオン性ミクロゲルは、スルホン基、カルボキシル基、硫酸エステル基、燐酸エステル基などのアニオン性基、好ましくはスルホン基、カルボキシル基を有する。一方、カチオン性ミクロゲルは、1〜3級アミノ基、4級アンモニウム基或いは4級ピリジニウム基などのカチオン性基を有する。なお、イオン性でないミクロゲルを作製後に、アミノ化および4級アンモニウム化、加水分解、スルホン化、硫酸エステル化などの化学修飾処理によってイオン性ミクロゲルを作製してもよい。
【0018】
スルホン基を有するミクロゲルは、従来公知の種々の方法、例えば、ソープフリー重合法で直径が約200nmのポリスチレン−ジビニルベンゼン共重合体の微粒子を調製後、乾燥して、スルホン化することによって得られる。この際のスルホン化量は、スルホン化方法、例えば、濃硫酸或いは濃硫酸と発煙硫酸の混合物を用いる方法や上記微粒子を三酸化硫黄ガスでスルホン化する方法においてスルホン化の条件を選択して調整できる。
【0019】
カルボキシル基を有するミクロゲルの代表例としては、特開2003−178797公報で開示した方法があり、この方法を用いれば、多量のカルボキシル基をミクロゲル中に導入できるので好ましい。再述すると、疎水性のアクリル酸メチルと架橋剤であるジビニルベンゼンとを水系でスチレンスルホン酸ソーダを用いて重合し、重合後にメチルエステル基を加水分解によってカルボキシル基の塩を生成させ、続いて酸性にしてミクロゲル中にカルボキシル基を導入することができる。この方法によれば、ミクロゲル表面にスルホン基を、ミクロゲル内部には多量にカルボキシル基を導入できる。
【0020】
カチオン性基を有する代表的ミクロゲルとしては、例えば、4−ビニルピリジン或いは2−ビニルピリジンとジビニルベンゼンとの共重合体微粒子を4級化してなるミクロゲルが挙げられる。4−ビニルピリジン或いは2−ビニルピリジンは両親媒性モノマーであり、このモノマーを水溶性の重合開始剤で共重合すると200〜600nmの微粒子ができる。次いで得られた微粒子をメチルアルコールに分散させ、該分散液にヨウ化メチルを添加し、さらに、塩酸或いは過剰のNaCl、KClなどで塩交換を行い、粒子径約360nmのカチオン性ミクロゲルを得ることができる。
【0021】
スチレンユニットを有するミクロゲルに導入されたイオン性基の量は、イオン性基がスルホン基の場合には、スチレンユニット当たり0.01〜1.1個の置換の範囲である。好ましくは0.5〜1.0個の範囲である。スルホン基が0.01個未満では、得られるミクロゲルによる脱臭効果が小さく、一方、スルホン基を1.1個を超えて導入することは困難である。
【0022】
イオン性基がカルボキシル基の場合は、アクリル酸ユニット換算で15〜99.5モル%の範囲であり、カルボキシル基が15モル%未満では、得られるミクロゲルの脱臭効果が小さく、一方、カルボキシル基が99.5モル%を超えると架橋構造が少なく、得られるミクロゲルの強度が弱く、該ミクロゲルの取扱中にミクロゲルが壊れる可能性がある。
【0023】
カチオン基を有するビニルピリジン系ミクロゲルの場合は、ピリジンユニット換算で15〜99.5モル%の範囲であり、4級ピリジニウム基が15モル%未満では、得られるミクロゲルの脱臭効果が小さく、一方、4級ピリジニウム基が99.5モル%を超えると、架橋構造が少なく、得られるミクロゲルの強度が弱く、該ミクロゲルの取扱中にミクロゲルが壊れる可能性がある。
【0024】
上記の重合に使用する重合開始剤としては、2,2′−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジハイドロクロリド、2,2−アゾビス(2−メチルプロピノアミジノ)ジハイドロクロライド、2,2′−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジアセテート、2,2′−アゾビス(N,N′−ジメチレンイソブチルアミジン)ジハイドロクロリド、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウムなどの水溶性の重合開始剤や、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル、2,2′−アゾビス(メチルイソブチレート)、2,2′−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、1,1′−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、クメンハイドロパーオキシド、ジクミルパーオキシド、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウリルなどの油溶性の重合開始剤が挙げられる。
【0025】
本発明の脱臭性シートは、以上の如きミクロゲルを基材シート表面または基材シート内部に含むことを特徴としている。ここで使用する基材シートとしては、透水性を有する紙、合成紙、織布、不織布などが挙げられ、特に本発明では、透水性を有する紙を使用する場合、アンモニア、メルカプタンなどの悪臭成分の脱臭に優れた脱臭性シートが提供される。
【0026】
以上の如きミクロゲルを基材シート上または基材シート内に均一に含有させる好ましい方法は、上記の如きミクロゲルを
(1)セルロース系繊維の水性分散体に混合して抄紙する方法(内添式)、
(2)ミクロゲルを水または有機溶剤中に分散させ、該分散液を基材シートの表面に塗布および乾燥させる方法などがある。上記内添式では、ミクロゲルの水性分散体とパルプなどのセルロース繊維の水性分散体とを混合して抄紙するか、セルロース繊維の水性分散体へ粉末或いはペースト状でミクロゲルを添加混合して抄紙する。
【0027】
本発明のミクロゲルを内添或いは塗布した紙には、必要に応じて種々の添加剤を加えることができ、添加剤としては、例えは、粘度調節剤、分散安定剤、顔料などが挙げられる。
【0028】
本発明において用いられる繊維は、水中で均一に分散しやすいものであればよい。例えば、セルロース繊維で代表される天然繊維、ガラス繊維や岩綿などの無機繊維、ポリビニルアルコール繊維、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、ポリプロピレン繊維、ポリアクリロニトリル繊維、ケブラーなどの芳香族ポリアミド繊維、セラミック繊維などの合成繊維が単独または組み合わせて使用できる。特に好ましいのはセルロース繊維であって、さらに詳しくは木材パルプ、木綿繊維、綿花、植物パルプ、回収古紙などのセルロース繊維である。繊維の長さや径については特に制限はないが、通常、長さが0.5〜100mm、太さが5〜70μm程度のものが用いられる。
【0029】
本発明のミクロゲルを内添或いは塗布した紙においては、パルプ100質量部に対するミクロゲル含有量は0.6〜100質量部、好ましくは1〜40質量部である。ミクロゲルの含有量が0.6質量部より小さい場合は紙の脱臭性が不十分である。また、ミクロゲルの含有量が100質量部より大きい場合は、紙の強度が十分でなく、抄紙時のミクロゲルの損失が大きく、さらに抄紙排水の汚染がひどくなる。本発明で用いるミクロゲルは水性溶媒への分散性に優れ、かつ得られる紙の強度も大きいので、特に助剤を添加しなくても容易に抄紙することができる。
【0030】
抄紙時に必要に応じて通常使用される各種の助剤を使用することができる。例えば、タルク、珪藻土、シリカ、二酸化チタン、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、硝酸アルミニウム、炭酸マグネシウム、ミョウバンなどの無機物質や、有機重合体の水性分散体、さらには酸化防止剤、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロースなどのセルロース誘導体、染料、着色顔料、澱粉、澱粉誘導体、ワックス、アクリルアミド共重合体およびその誘導体、メラミンフォルムアルデヒド樹脂、尿素アルデヒド樹脂、エポキシ化合物などの架橋剤や定着剤、ポリエチレンイミン、ロジンなどの各種サイズ剤、カチオン性、アニオン性またはノニオン性界面活性剤など、単独または2種以上併用することができる。これらはそのまま、または水性分散体またはエマルジョンの状態で使用することができる。
【0031】
塗布方法に使用するミクロゲル分散体は、上記の如きミクロゲルを単体或いはミクロゲルとバインダー樹脂との複合体を、水或いは水と有機溶剤との混合媒体中または有機媒体単独中に分散させることによって得られる。水と混合して使用する有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、これらの酢酸エステル或いは低級アルコールエーテル、ジオキサン、ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ホルムアミド、ジメチルスルホキシドなどが挙げられる。また、有機溶剤単独で使用する媒体としては、シクロヘキサン、メチルエチルケトン、トルエンなどが挙げられる。水および/または有機溶剤中のミクロゲルの固形分は通常1〜10質量%であり、好ましくは3〜5質量%である。
【0032】
本発明で使用するバインダー樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、その他、従来の水性の各種塗料や印刷インキに使用されているバインダー樹脂はいずれも使用できる。上記バインダー樹脂の添加濃度はいずれでもよいが、ミクロゲル分散体中に一般的には10〜50質量%程度が好ましい。これらのバインダー樹脂は、水性媒体中に溶解した状態でもよいし、分散や乳化した状態でもよい。
【0033】
上記水性媒体中へのミクロゲルの分散方法としては、従来顔料分野で使用されているようなボールミル、スピードラインミル、サンドミル、ロールミル、ペイントシェーカーなどがいずれも使用することができる。分散体のミクロゲル成分の濃度は特に限定されないが、一般的には5〜50質量%程度が好ましい。
【0034】
また、ミクロゲルの分散に際しては、分散剤或いは界面活性剤を使用することが好ましく、界面活性剤としては、ノニオン系の界面活性剤を分散体中で0.5〜10質量%を占める程度の濃度で使用するのが好ましい。本発明において、このような従来公知のバインダー樹脂を含むベヒクル中に上記の分散体を、ミクロゲルが、約10〜30質量%の濃度になるように溶解または分散させることが好ましい。また、上記の如き本発明のミクロゲル分散体中には染料や顔料などの着色剤を加えることができる。
【0035】
さらにこの分散溶液中には、炭酸カルシウム、シリカなどの体質顔料、酸化チタンなどの白色顔料、着色剤、抗菌・防カビ剤などの公知の添加剤を添加することができる。ミクロゲル層の形成には、基材シートとの接着性を高めるために、必要に応じてバインダー樹脂を使用することができる。バインダー樹脂は多量に使用するとミクロゲル層への透水性および通気性が低下するので、ミクロゲル100質量部当たり10質量部以下、好ましくは1質量部以下である。本発明で使用するバインダー樹脂としては、疎水性或いは水溶性の樹脂を使用することができる。
【0036】
特に好ましいバインダー樹脂としては、例えば、水溶性樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシドなどが挙げられ、疎水性樹脂としては、例えば、ポリブタジエンゴム、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ブタジエン−アクリルニトリル共重合ゴム、スチレン−ブタジエン共重合ゴムおよびこれらの水素添加物、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、生ゴム、ウレタンゴム、アクリルゴム、エチレン−酢酸ビニル共重合体ゴムおよびその塩素化物などの単独または混合物のいずれもが使用でき、これらの共重合体はブロック型、ランダム型、グラフト型などいずれの結合方式でもよい。
【0037】
また、本発明で使用する基材シートとしては、例えば、ポリプロピレン系またはポリエチレン系繊維からなる織布、不織布または多孔質フィルムが好ましい。さらに上記繊維も使用できる。上記織布または不織布の目付量は10〜300g/m2の範囲が好ましい。目付量が10g/m2未満ではミクロゲルが脱落し、一方、目付量が300g/m2を超えるとミクロゲル分散液が基材シート中に入りにくい。上記不織布または織布を構成する繊維の太さは1〜10μmが好ましい。
【0038】
これらの基材シートは親水化処理をしてもしなくてもよいが、一般的には親水化処理した方が好ましい。親水化の例としては、スルホン化処理、コロナ放電処理、カルボキシル基や水酸基を有する樹脂の液を塗布する方法、織布または不織布に親水性繊維を一部織り込む方法が挙げられる。特にアンモニア脱臭効果を上げるため有効な処理としてスルホン化処理が挙げられる。スルホン化処理量は、織布または不織布が0.1〜5質量%のスルホン基を有するようになる処理量である。織布または不織布中のスルホン基の量が0.1質量%未満では、織布または不織布の親水性が弱く、ミクロゲルの水分散液の含浸性が不十分であり、5質量%を超えると織布または不織布からのスルホン基の脱落が多くなり、織布または不織布の強度が低下する。
【0039】
前記基材シート面に対する上記ミクロゲル分散体の塗工方法としては、例えば、ロールコーティング、ブレードコーティング、ナイフコーティング、スクイズコーティング、エアドクターコーティング、グラビアコーティング、ロッドコーティング、スプレーコーティング、含浸など、従来公知の塗工方法が挙げられ、塗工後乾燥することによってミクロゲル層が形成される。かかるミクロゲル層の塗布量が少なすぎるとアニオンまたはカチオン吸着性などが不足し、一方、多すぎると透水性と通気性などが低下しかつ不経済であるので、好ましい塗布量は1〜80g/m2程度である。
【実施例】
【0040】
次に実施例および比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。尚、文中、部または%とあるのは質量基準である。
【0041】
〔実施例〕
ミクロゲルの製造例
(1)ミクロゲル−1、2の製造
スチレン125部、スチレンスルホン酸ソーダ13.75部、ジビニルベンゼン(純分55%)15.78部、過硫酸カリウム2.32部および水1,500部をフラスコに仕込み、窒素気流下、80℃で8時間重合した。得られた重合体の平均粒子径は約100nmであった。上記粒状重合体を濾過、乾燥および粉砕して白色重合体を得た。得られた重合体微粒子の粒径は動的光散乱法で測定したところ200nmであった。次いで下記の2通りの方法(ガス法および硫酸処理法)によりスルホン基を有するミクロゲルを合成した。
【0042】
(ガス処理法)
(1)の粉末状のポリスチレン(平均粒径0.020μm)100部を乾燥機にて105℃で1時間予備乾燥し、これを反応容器に入れ、硫黄を燃焼させて生成させた二酸化硫黄ガスを接触酸化して得られた三酸化硫黄ガスを80〜110℃に加熱し、乾燥空気に対して8%の濃度となるように、前記反応容器に導入し、2時間スルホン化させた。その後、冷却し、スルホン化されたポリスチレンをイオン交換水中に投入して攪拌した後、濾過し、pHが一定になるまで水洗した。その後、80℃で24時間乾燥し、スルホン化されたポリスチレン(ミクロゲル−1)が得られた。このミクロゲルは、赤外線吸収スペクトルおよびイオンクロマトグラフィーなどの分析によって、芳香環にほぼ1個のスルホン基が導入されていることが確認できた。該ミクロゲルの硫黄含有量10%であり、S/C比率で90であった。
【0043】
(硫酸処理法)
(1)の粉末状のポリスチレン100部を、650部の95%濃硫酸に徐々に添加し、50℃で24時間、次いで80℃で3時間撹拌した。その後、冷却し、反応混合液を大量の氷水に投入した。その後、濾液が中性になるまで解膠・濾過・水洗し、十分水洗した。その後、80℃で24時間乾燥し、スルホン化されたポリスチレン(ミクロゲル−2)が得られた。このミクロゲルは、赤外線吸収スペクトルおよびイオンクロマトグラフィーなどの分析によって、芳香環にほぼ1個のスルホン基が導入されていることが確認できた。該ミクロゲルの硫黄含有量は10%であり、S/C比率で85であった。
【0044】
(2)ミクロゲル−3の製造
70部のメチルアクリレート、3部のスチレンスルホン酸ソーダ、3.66部のジビニルベンゼン(純分55%)、1.5部の過硫酸カリウムおよび550部の脱イオン水を反応容器に入れ、窒素気流下、80℃で6時間重合した。該重合液中の共重合体の粒径は動的光散乱法で測定したところ300〜500nmであった。次いで10%の水酸化カリウム水溶液を作製し、この中に上記アクリル酸エステル系樹脂を添加し、70℃で4時間反応した。その後、アクリル酸カリウム換算にして1.2倍モルの塩酸を加え室温で1時間撹拌した。さらに濾液が中性になるまで濾過・解膠・洗浄し、ミクロゲル−3(カルボキシル基含有微粒子)を得た。得られたミクロゲル−3は、赤外線吸収スペクトルおよびイオンクロマトグラフィーなどの分析によって、エステル基がカルボキシル基に変換されていることを確認した。
【0045】
(3)ミクロゲル−4(4−ビニルピリジニウム系微粒子)の製造
反応容器に500部の脱イオン水、10部の4−ビニルピリジン、0.1部のジビニルベンゼン、0.1部のアクリルアミドおよび0.2部の2,2−アゾビス(2−メチルプロピノアミジノ)ジハイドロクロライド(和光純薬社製 V−50)を仕込み、窒素ガス流入下に80℃で5時間重合させ、乳化状物を得た。これをセルロース製の透析膜を用いて透析し、脱イオン水で精製した。走査型電子顕微鏡で観察した結果、平均粒径が200nmの均質な球状微粒子であることが確認された。さらにこの粒子をヨウ化メチルとメタノールの入った密封容器に入れて球状微粒子および連続相中のビニルピリジンを4級化させ、ミクロゲル−4を得た。
【0046】
(4)脱臭性シートの製造例
(内添方法)
脱臭シートの作成(内添方法)は、ミクロゲルを紙に抄く方法で行った。具体的には、撹拌下所定量のパルプ分散水溶液中に、実施例のミクロゲルを添加し、さらに順次凝集剤、中和剤を添加し原質液とする。この原質液に水を加え、さらに有機系定着剤(歩留まり向上材)を添加し紙料液とした。これを手抄きし、金網から紙を剥離し、プレス圧縮脱水した後、風乾し、実施例のミクロゲル添加紙を得た。ミクロゲルの添加量は表1、3に記載の通りとした。なお、ミクロゲル−1についてはさらに添加量40%および80%のものも作成した。
【0047】
(5)脱臭性シートの製造例
(塗布方法)
実施例のミクロゲルを、質量比が水:IPA=7/3からなる混合溶媒100部に、5部添加し、撹拌により1時間分散処理して、ミクロゲル分散体を調製し、100mm×200mmのろ紙(No2(東洋ろ紙株式会社製))、ポリプロピレン不織布およびスルホン化ポリプロピレン不織布に、バーコーターにより塗布した後、乾燥し、表2、4に記載の塗布量の実施例のミクロゲル塗布紙およびミクロゲル塗布不織布を得た。
【0048】
〔比較例〕
消臭剤の比較例として、脱臭用途用活性炭、合成ゼオライト(モレキュラーシーブ)、および紙用消臭剤を用いて、それぞれを上記ミクロゲルと同様にパルプに内添或いは塗布し、内添量20%の各脱臭紙を作成した。上記実施例および比較例で得られた脱臭紙を下記の評価方法で評価した。
【0049】
[脱臭性能測定試験方法]
アンモニア脱臭試験1
300ml容三角フラスコ内に4%アンモニア水溶液3μlを入れ、口をパラフィルムでシールし、完全にガス化させた。その後、前記各脱臭紙を50mm×50mmに切断し、前述容器に投入して25℃に保存し、一定時間経過後のフラスコ内のアンモニア濃度を北川式ガス検知器でフラスコ内のアンモニア残存濃度を測定した。各脱臭性シートの脱臭性は表1〜2の通りであった。
【0050】

【0051】
アンモニア脱臭試験2(塗布方法)
前記各脱臭性紙および不織布を上記と同様に測定し、結果は下記の通りであった。
【0052】

【0053】
硫化水素の脱臭試験
300ml容三角フラスコ内に700ppmの硫化ナトリウム水溶液1mlおよび1規定の硫酸0.1mlを入れ、次いで前記各脱臭紙、或いは脱臭性不織布を50mm×50mmに切断し、前述容器に投入し、口をパラフィルムでシールし、硫化水素を完全にガス化させた。その後、25℃に保存し、一定時間経過後のフラスコ内の硫化水素を北川式ガス検知器で測定した結果は下記表3、4の通りであった。
【0054】

【0055】

【0056】
本発明により製造されたミクロゲルおよびそれから作成したシートは生理用品、オムツなどの素材として適宜の形態に加工して使用することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
上記本発明のミクロゲルは、ミクロゲル単体或いはミクロゲルとバインダー樹脂との複合体を水性媒体中に分散させることによって、散布場所を汚染することなく、また、化粧板用原紙、脱臭性織布、壁紙用原反などの調製に好ましく使用することができ、さらに各種悪臭中のアンモニア臭および硫化水素臭の脱臭に有効的であり、おむつなどの衛生生理用品用途に提供できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アニオン性および/またはカチオン性基を有するミクロゲル型樹脂からなることを特徴とする脱臭性材料。
【請求項2】
ミクロゲル型樹脂の平均粒子径が、0.01μm〜100μmである請求項1に記載の脱臭性材料。
【請求項3】
ミクロゲル型樹脂のアニオン性基が、スルホン基、硫酸エステル基、燐酸エステル基、およびカルボキシル基から選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載の脱臭性材料。
【請求項4】
ミクロゲル型樹脂のカチオン性基が、4級ピリジニウム基、4級アンモニウム基および1〜3級アミノ基から選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載の脱臭性材料。
【請求項5】
アニオン性および/またはカチオン性基を有するミクロゲル型樹脂を基材表面または基材内に含むことを特徴とする脱臭性シート。
【請求項6】
ミクロゲル型樹脂の含有割合が、基材シート100質量部あたり0.6〜100質量部である請求項5に記載の脱臭性シート。
【請求項7】
基材が、セルロース紙、織布或いは不織布である請求項6に記載の脱臭性シート。
【請求項8】
不織布が、スルホン化ポリプロピレン不織布である請求項7に記載の脱臭性シート。
【請求項9】
分散媒体中に分散されたアニオン性および/またはカチオン性基を有するミクロゲル型樹脂を紙抄き法により繊維質基材シート中に担持させることを特徴とする脱臭性シートの製造方法。
【請求項10】
アニオン性および/またはカチオン性基を有するミクロゲル型樹脂を分散媒体中に分散させた分散液を塗布法により基材シートに担持させることを特徴とする脱臭性シートの製造方法。
【請求項11】
さらに吸水性樹脂粉末を混合する請求項9または10に記載の脱臭性シートの製造方法。

【公開番号】特開2007−75131(P2007−75131A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−262658(P2005−262658)
【出願日】平成17年9月9日(2005.9.9)
【出願人】(000002820)大日精化工業株式会社 (387)
【Fターム(参考)】