説明

脱臭装置

【課題】熱エネルギーや活性炭等の吸着物を使用せず、消耗品が少なく、設備の簡素化と低コスト化が実現でき、且つ二酸化炭素も大幅削減できる脱臭装置を提供する。
【解決手段】脱臭装置11において、水19を満たす混合水槽21を下部に備える気密構造の排気洗浄部本体17と、排気洗浄部本体17の内側に画成され排気洗浄部本体17に接続された給気口25から汚染排気27が供給されるとともに混合水槽21の水中に開放される給気室23と、排気洗浄部本体17の内側に給気室23と画成され混合水槽21の水中に開放されるとともに上方に排気口35を備える洗浄室33と、給気室23の給気室水面43と洗浄室33の洗浄室水面45とを仕切り水中に垂下する垂下板47と、洗浄室33の負圧によって給気室23から垂下板47を潜り洗浄室33に流入する汚染排気27を凹状曲面に沿って回転させて水19と撹拌する巻上R板49と、を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗装、印刷などの工程から排出される揮発性有機化合物を含有する汚染排気の脱臭を行う脱臭装置に関する。
【背景技術】
【0002】
塗装、印刷などの工程から排出される汚染排気には、揮発性有機化合物であるVOC(volatile organic compounds)や高濃度の悪臭成分などが含有されている。このような有害悪臭成分を除去するものに例えば特許文献1に開示される直燃式脱臭装置が知られている。この直燃式脱臭装置は、高対流燃焼混合室に導入される被処理ガスの流入口を直燃脱臭装置の長さ方向に対して直角に設けると共に、高対流燃焼混合室の側壁面に高速燃焼型バーナを配設し、バーナの燃焼ガスの噴出力により、被処理ガスと燃焼ガスが高対流燃焼混合室内で攪拌混合され渦巻状となって混合を促進することにより、悪臭などの有害悪臭成分の除去を可能としている。
【0003】
また、特許文献2に開示される脱臭装置は、排ガス中の芳香族化合物を吸着除去する吸着装置と、この吸着装置から芳香族化合物が吸着除去された排ガスの供給を受けて残存する揮発性有機化合物を生物分解する生物脱臭装置とを有することで、排ガスから揮発性有機化合物を高い効率で除去可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−116236号公報
【特許文献2】特開2010−214280号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示される燃焼法による直燃式脱臭装置は、燃料費などの運転コストが嵩むことや、燃料の燃焼により二酸化炭素が生じ二次的な環境負荷が大きいという問題がある。また、特許文献2に開示される吸着法と生物学的脱臭法とを組み合わせた脱臭法は、吸着物質である活性炭等の消耗品が多いとともに、微生物を固定化した担体の担体充填層の管理が煩雑となり、設備が複雑となり運転コストも高くなる問題がある。
【0006】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、その目的は、熱エネルギーや活性炭等の吸着物を使用せず、消耗品が少なく、設備の簡素化と低コスト化が実現でき、二酸化炭素も大幅に削減できる脱臭装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
次に、上記の課題を解決するための手段を、実施の形態に対応する図面を参照して説明する。
本発明の請求項1記載の脱臭装置11は、水19を満たす混合水槽21を下部に備える気密構造の排気洗浄部本体17と、
前記排気洗浄部本体17の内側に画成され該排気洗浄部本体17に接続された給気口25から汚染排気27が供給されるとともに前記混合水槽21の水中に開放される給気室23と、
前記排気洗浄部本体17の内側に前記給気室23と画成され前記混合水槽21の水中に開放されるとともに上方に排気口35を備える洗浄室33と、
前記給気室23の給気室水面43と前記洗浄室33の洗浄室水面45とを仕切り、水中に垂下する垂下板47と、
前記洗浄室33の負圧によって前記給気室23から前記垂下板47を潜り前記洗浄室33に流入する前記汚染排気27を凹状曲面に沿って回転させて前記水19と撹拌する巻上R板49と、
を具備することを特徴とする。
【0008】
この脱臭装置11では、給気室23に対して洗浄室33が負圧となり、給気室水面43が垂下板47の下縁付近となり、給気室23の汚染排気27が垂下板47を潜って洗浄室33へと流入する。流入した汚染排気27は、巻上R板49で水19と揉まれて混合する。汚染排気27が垂下板47を通過し、巻上R板49に衝突して、水19が飛沫状態となり、汚染排気中の微粒子や汚染粉塵が水19にキャッチされ、微粒子や汚染粉塵と混合撹拌状態となる。微粒子や汚染粉塵が除去された汚染排気27は、巻上R板49から洗浄室33を上昇し、臭気が軽減された状態となって排気口35から排気される。
【0009】
請求項2記載の脱臭装置11は、請求項1記載の脱臭装置11であって、
前記洗浄室33には、対向壁53から下向き傾斜で交互に邪魔板55を突出して屈曲流路57を形成し、衝突した上昇気流中から水分を水滴59にして除去する水分付着分離器51が設けられることを特徴とする。
【0010】
この脱臭装置11では、巻上R板49から排気口35に向かって上昇する汚染排気27が、邪魔板55によって形成された屈曲流路57を通過することで、水19の慣性力を利用して水滴59と空気41とに分離される。すなわち、汚染排気27が汚れた水滴59と空気41とに分けられ、汚染排気中のVOCが水滴59とともに汚水として除去される。
【0011】
請求項3記載の脱臭装置11は、請求項1又は2記載の脱臭装置11であって、
前記混合水槽21に、該混合水槽21の水19から電気分解によってスラッジ67を析出する汚水電解部15が接続されていることを特徴とする。
【0012】
この脱臭装置11では、混合水槽21からの汚れた水19が汚水電解部15に送られ、水19が電極セット81を上昇して酸化・還元作用と、陽極から溶出する水酸化アルミの凝集作用等とにより、清浄な水19と固形物となったスラッジ67とに分離される。
【0013】
請求項4記載の脱臭装置11は、請求項3記載の脱臭装置11であって、
前記汚水電解部15と前記混合水槽21とが、前記スラッジ67の除去された前記汚水電解部15のスラッジ除去水99を前記混合水槽21に戻す還管97にて接続されていることを特徴とする。
【0014】
この脱臭装置11では、混合水槽21の汚れた水19からスラッジ67が除去され、清浄なスラッジ除去水99となって再び混合水槽21に戻される。これにより、混合水槽21の水19が一定の清浄度に保たれ、汚染排気27の脱臭能力が一定に保持可能となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る請求項1記載の脱臭装置によれば、熱エネルギーを使用せず、活性炭等の吸着物も使用しないので、消耗品が少なく、設備の簡素化と低コスト化が実現でき、設備コストと運転コストの双方を低減できる脱臭装置が得られる。また、燃焼法に比べ二酸化炭素も大幅に削減できる。
【0016】
請求項2記載の脱臭装置によれば、水と混合されて上昇する汚染排気中の水分を、斜め傾斜の邪魔板により付着させて水滴として大きくし、落下させて除去できる。
【0017】
請求項3記載の脱臭装置によれば、混合水槽の水中に混ざった汚染排気からの汚染物質をスラッジとして除去できる。
【0018】
請求項4記載の脱臭装置によれば、混合水槽の水が汚水電解部にてスラッジを除去した後に還流されるので、混合水槽の水を再び清浄なスラッジ除去水として再使用でき、運転コストを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る脱臭装置の構成図である。
【図2】(a)は図1に示した排気洗浄部本体の正面図、(b)はその側面図である。
【図3】図2に示した排気洗浄部本体の拡大図である。
【図4】図3に示した巻上R板近傍の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図1は本発明に係る脱臭装置の構成図である。
本実施の形態に係る脱臭装置11は、排気洗浄部13と、汚水電解部15とに大別して構成される。排気洗浄部13は、排気洗浄部本体17を有する。
【0021】
図2(a)は図1に示した排気洗浄部本体17の正面図、(b)はその側面図である。
排気洗浄部本体17は、水19を満たす混合水槽21を下部に備え、気密構造で形成される。排気洗浄部本体17の内側には給気室23が画成される。給気室23は、排気洗浄部本体17に接続された給気口25から汚染排気27が供給されるとともに、混合水槽21の水中にて開放される。
【0022】
本実施の形態では、混合水槽21には、水位バランス還管29を介して汚水回収槽31が通じている。汚水回収槽31には後述する洗浄室33で汚染排気27から分離された汚れた水19が回収される。混合水槽21と汚水回収槽31とは単一の構成としてもよい。
【0023】
図3は図2に示した排気洗浄部本体17の拡大図である。
排気洗浄部本体17の内側には、給気室23と画成され混合水槽21の水中に開放される洗浄室33が設けられる。洗浄室33は上方に排気口35を備える。排気洗浄部本体17の上方にはフィルター部37が設けられる。また、排気洗浄部本体17の上方には排気ファン39が設けられ、排気ファン39は洗浄室33の空気41を排気口35から排出する。すなわち、洗浄室33は、排気ファン39が駆動されることにより、空気41がフィルター部37を通過して吸い上げられ、排気口35から排出される。このフィルター部37は、上昇する汚染排気中の水分を除去するものである。排気ファン39としては例えば50〜100m3 /min程度の風量が確保可能なものを用いる。
【0024】
給気室23と洗浄室33の間には、給気室23の給気室水面43と洗浄室33の洗浄室水面45とを仕切り水中に垂下する垂下板47が設けられている。したがって、混合水槽21に水19が入った状態では給気室23と洗浄室33とは通じていない。一方、排気ファン39が駆動されて洗浄室33が負圧になると、給気室水面43が下がり、給気室23の汚染排気27が垂下板47を潜って洗浄室33へと流入するようになる。
【0025】
図示は省略するが垂下板47は、下縁が鋸歯状(ギザギザ)に形成されており、鋸歯の半分から上あたりが、排気ファン39の稼動時、給気室水面43となるよう配置設定されている。
【0026】
図4は図3に示した巻上R板近傍の拡大図である。
洗浄室33の混合水槽21には、垂下板47の近傍に巻上R板49が設けられている。巻上R板49は、洗浄室33の負圧によって給気室23から垂下板47を潜り洗浄室33に流入する汚染排気27を、凹状曲面に沿って回転させて水19と撹拌するように働く。つまり、垂下板47と巻上R板49とで、水19と汚染排気27とが揉まれて混合する。
【0027】
洗浄室33には、水分付着分離器51が設けられている。水分付着分離器51は、対向壁53から下向き傾斜で交互に邪魔板55を突出して屈曲流路57を形成し、衝突した上昇気流中から水分を水滴59にして除去する。この水分付着分離器51は、所謂エリミネーター(eliminator)的な作用を有し、空気41の流れに随伴する水19の飛散を防ぎ、水19の慣性力を利用して水分を除去する。
【0028】
巻上R板49から排気口35に向かって上昇する汚染排気27は、水19を霧(ミスト)状にして含む。このミストには汚染排気中の揮発性有機化合物が混入・付着している。水分付着分離器51では、この霧状となった水19を含んだ汚染排気27が、邪魔板55によって形成された屈曲流路57を通過することで、水19の慣性力を利用して水滴59と空気41とに分離される。すなわち、汚染排気27が汚れた水滴59と清浄な空気41とに分けられ、汚染排気中の揮発性有機化合物が水滴59とともに汚水として除去される。このように、洗浄室33では、混合水槽21内の水19と混合されて上昇する汚染排気中の水分を、斜め傾斜の邪魔板55により付着させて水滴59として大きくし、落下させて除去できる。これにより、汚染排気27の臭気を大幅に低減可能としている。
【0029】
洗浄室33には洗浄シャワーパイプ61が設けられてもよい。洗浄シャワーパイプ61は、邪魔板55の基端側に取り付けられ、屈曲流路57に向かって水19を噴射する。洗浄シャワーパイプ61への水19の供給は、混合水槽21にシャワーポンプ63を接続し、シャワーフィルター65を介して混合水槽21内の水19を供給することによって行うことができる。洗浄シャワーパイプ61を設けることにより、洗浄室33において上昇する汚染排気27から揮発性有機化合物の付着した微粒子や汚染粉塵を分離させる作用をより高めることができる。
【0030】
混合水槽21は、汚水回収槽31と少なくとも上層が分離されていることが好ましい。揮発性有機化合物の付着した水滴59が落下するためである。本実施の形態のように、落下した水滴59を汚水回収槽31に流入させることで、垂下板47と巻上R板49との間の混合部で、落下直後の水滴59に含まれる揮発性有機化合物が再び水19に混合してミストに付着することを防止できる。
【0031】
図1に示したように、脱臭装置11は、排気洗浄部13に、汚水電解部15が接続されることが好ましい。汚水電解部15は、汚水回収槽31より送られる汚水から電気分解によってスラッジ67を析出する。汚水電解部15は、そのための電解槽69を有する。電解槽69の下方には、汚水回収槽31からの汚水が汚水供給ポンプ71によって供給される。汚水供給ポンプ71と電解槽69との間には供給バルブ73が設けられ、汚水回収槽31と電解槽69とは流量制御及び遮断可能となっている。また、電解槽69の下方にはドレンバルブ75が設けられ、このドレンバルブ75の開放によって電解槽69の底に溜まった沈殿物の回収が行えるようになっている。
【0032】
電解槽69には複数枚の平行な陽極アルミ77と陰極ステンレス79とを交互に離間配置してなる電極セット81が設けられる。電解槽69は、電極セット81に直流電流が印加されることにより、汚水が同時に酸化・還元されて電解される。混合水槽21からの汚れた水19は、汚水電解部15に送られ、電極セット間を上昇して酸化・還元される作用と、陽極から溶出する水酸化アルミの凝集作用等とにより、清浄な水19とスラッジ67とに分離される。すなわち、混合水槽21の水中に混ざった汚染排気27からの汚染物質がスラッジ67として除去できるようになっている。
【0033】
電解槽69の上部にはスクレーバー83が流体圧シリンダー85によって電解槽水面に沿う方向で移動されるようになっている。スクレーバー83が移動されることで、電解槽水面に浮上したスラッジ67が掻き寄せられ、水切り濾過布87を備えた浮上スラッジ回収槽89に回収される。浮上スラッジ回収槽89の下方には水抜きバルブ91が設けられ、スラッジ67から脱水された水19がドレン水となって排水されるようになっている。このドレン水は、揮発性有機化合物の付着したスラッジ67が除去されているので、臭気が少ないため、混合水槽21に還流することも可能となる。
【0034】
また、電解槽69の上部には戻り槽93が取り付けられ、戻り槽93にはスラッジ67の浮上する電解槽水面よりも下方のスラッジ67を含まない水19が流入するようになっている。この戻り槽93には水面調整板95が取り付けられている。水面調整板95の外側には還管97が接続され、還管97は混合水槽21へと通じている。すなわち、混合水槽21の汚水からスラッジ67が除去され、清浄なスラッジ除去水99となって再び混合水槽21に戻される。
【0035】
これにより、混合水槽21の水19が一定の清浄度に保たれ、汚染排気27の脱臭能力が一定に保持可能となる。このようにして、混合水槽21の水19が汚水電解部15にてスラッジ67を除去した後に還流されるので、混合水槽21の水19を再び清浄なスラッジ除去水99として再使用でき、運転コストが低減できるようになっている。
【0036】
次に、上記構成を有する脱臭装置11の作用を説明する。
脱臭装置11では、排気ファン39が駆動されると、給気室23が大気圧〜正圧で、洗浄室33が負圧となる。これにより、給気室水面43が下がり、給気室水面43が垂下板47の下縁付近となる。給気口25から取り込まれた汚染排気27は、給気室23で減速され、図4に示すように、給気室水面43から巻上R板49によって水19と共に洗浄室33に巻き込まれる。垂下板47の通過風速は例えば20〜40m/sに設定される。
【0037】
巻上R板49では、垂下板47の鋸歯部分を通過直後、すなわち洗浄室33に吸い上げられる直後に、凹曲面のR面に当たるようになっていることで、衝突となり、狭小部分通過とR面衝突の衝撃で水分は飛沫状態となって、汚染排気中の微粒子・汚染粉塵を効率的にキャッチする混合撹拌状態となる。
【0038】
この際、巻上R板49の上方が下向き面になっていることで、汚染排気27と水19とがより効率的に撹拌される。粉体と水19とを混ぜるのに掻き回さなければならないのと同じ理屈となる。このような鋸歯部分の通過と巻上R板49との組合せに、洗浄室33の負圧が作用し、巻上R板49の上方にて汚染排気27が水19と混合状態となり引き上げられる。この位置(混合部)においても洗浄されることになる。混合された水19と汚染排気27とは、洗浄室33に吸い上げられる。この水19は揮発性有機化合物をキャッチした状態のものとなる。混合部で上昇に至らなかった汚水は、混合水槽21内に沈むことになる。この沈んだ汚水(粉じん等)は、所定運転時間毎などで、混合水槽21内(底部)から回収される。
【0039】
汚染排気27は、水分付着分離器51にて汚れた水滴59と空気41とに分けられる。すなわち、水滴59は、水分付着分離器51の邪魔板55により付着させて水滴59として大きくし、落下により除去される。これに加え、洗浄シャワーパイプ61により、洗浄室33において上昇する汚染排気27から揮発性有機化合物の付着した微粒子や汚染粉塵を分離させる作用がより高められる。洗浄室33で浄化された空気41は、フィルター部37を経由して排気ファン39により屋外に排出される。このフィルター部37では、空気41中に残る水滴などの水分をさらに取り除くためである。本実施の形態では、汚染排気27を洗浄した水19は、汚水回収槽31に常時戻されることになる。
【0040】
邪魔板55から落下して汚水回収槽31に戻った汚水は、汚水供給ポンプ71により、供給バルブ73で流量調整されて、電解槽69の下部に送られる。汚水は、電極セット81(陽極アルミ77、陰極ステンレス79)間を上昇して酸化・還元作用と、陽極から溶出する水酸化アルミの凝集作用等により清浄な水19と固形物に分離される。その時の陽極側の酸化作用によりトルエン、キシレン等の有機溶剤の側鎖が酸化され、トルエン、キシレンは無害な安息香酸に変わる。安息香酸は弱酸ではあるが、陽極から溶出するアルミイオン(両性類)により、中和されるため液中のpHは変化しない。以上の物はスラッジ67と水酸化アルミに固定され、汚れた水19の中から排出される。
【0041】
電解時に発生する気泡に付着した固形物はスラッジ67として電解槽水面に浮上する。浮上したスラッジ67は、流体圧シリンダー85に連結されたスクレーバー83により定時的に浮上スラッジ回収槽89に掻き落とされる。水分の含まれたスラッジ67は、水切り濾過布87で水分が抜かれ濃縮される。
【0042】
電解槽69の上方から7分目の位置、すなわち、電極セット81の直上から、浄化された電解水がスラッジ除去水99となって多少の水酸化アルミを含みながら、戻り槽93から還管97を通り混合水槽21に戻される。水面調整板95は、浮上スラッジを排出しやすい電解槽水面を調整する。以上の事を繰り返しながら汚染排気27は浄化され続ける。
【0043】
上記の脱臭装置11では、給気室23に対して洗浄室33が負圧となり、給気室水面43が垂下板47の下縁付近となり、給気室23の汚染排気27が垂下板47を潜って洗浄室33へと流入する。流入した汚染排気27は、巻上R板49で水19と揉まれて混合する。汚染排気27が垂下板47を通過し、巻上R板49に衝突して、水19が飛沫状態となり、汚染排気中の微粒子や汚染粉塵が水19にキャッチされ、微粒子や汚染粉塵と混合撹拌状態となる。微粒子や汚染粉塵が除去された汚染排気27は、巻上R板49から洗浄室33を上昇し、臭気が軽減された状態となって排気口35から排気される。
【0044】
このように、脱臭装置11では、熱エネルギーも使用せず、活性炭等の吸着物も使用しないため、消耗品は少なく、設備の簡素化と低コスト化が達成でき、ランニングコストの低減で二酸化炭素の削減にも寄与する。
【0045】
したがって、本実施の形態による脱臭装置11によれば、揮発性有機化合物の付着した微粒子や汚染粉塵が含まれた汚染排気27を水酸化アルミの混合された電解水で洗浄して、微粒子や汚染粉塵の混ざった汚水を汚水電解部15に送り、電極間で酸化・還元作用により微粒子や汚染粉塵に付着した揮発性有機化合物等を無害化し除去できる。この結果、熱エネルギーを使用せず、活性炭等の吸着物も使用しないので、消耗品が少なく、設備の簡素化と低コスト化が実現でき、設備コストと運転コストの双方を低減できる。また、燃焼法に比べ二酸化炭素も大幅に削減できる。
【符号の説明】
【0046】
11…脱臭装置
15…汚水電解部
17…排気洗浄部本体
19…水
21…混合水槽
23…給気室
25…給気口
27…汚染排気
29…水位バランス還管
33…洗浄室
35…排気口
43…給気室水面
45…洗浄室水面
47…垂下板
49…巻上R板
51…水分付着分離器
53…対向壁
55…邪魔板
57…屈曲流路
59…水滴
67…スラッジ
97…還管
99…スラッジ除去水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水を満たす混合水槽を下部に備える気密構造の排気洗浄部本体と、
前記排気洗浄部本体の内側に画成され該排気洗浄部本体に接続された給気口から汚染排気が供給されるとともに前記混合水槽の水中に開放される給気室と、
前記排気洗浄部本体の内側に前記給気室と画成され前記混合水槽の水中に開放されるとともに上方に排気口を備える洗浄室と、
前記給気室の給気室水面と前記洗浄室の洗浄室水面とを仕切り、水中に垂下する垂下板と、
前記洗浄室の負圧によって前記給気室から前記垂下板を潜り前記洗浄室に流入する前記汚染排気を凹状曲面に沿って回転させて前記水と撹拌する巻上R板と、
を具備することを特徴とする脱臭装置。
【請求項2】
請求項1記載の脱臭装置であって、
前記洗浄室には、対向壁から下向き傾斜で交互に邪魔板を突出して屈曲流路を形成し、衝突した上昇気流中から水分を水滴にして除去する水分付着分離器が設けられることを特徴とする脱臭装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の脱臭装置であって、
前記混合水槽に、該混合水槽の水から電気分解によってスラッジを析出する汚水電解部が接続されていることを特徴とする脱臭装置。
【請求項4】
請求項3記載の脱臭装置であって、
前記汚水電解部と前記混合水槽とが、前記スラッジの除去された前記汚水電解部のスラッジ除去水を前記混合水槽に戻す還管にて接続されていることを特徴とする脱臭装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−125720(P2012−125720A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−280634(P2010−280634)
【出願日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【出願人】(300019098)
【出願人】(510332420)
【Fターム(参考)】