説明

脱酸素装置および脱酸素システム

【課題】 脱酸素能力の低下を起こすことなく、省電力を実現する。
【解決手段】 処理槽2内へ被処理水を散布する散布手段3と、この散布手段3からの散布量を切り替える散布量切替手段4と、この散布量切替手段4へ被処理水を供給する第一ポンプ5と、前記処理槽2内から取り出した処理水を蒸気ボイラ26へ供給する第二ポンプ6と、前記両ポンプ5,6の回転数を出力周波数に応じてそれぞれ可変させる第一インバータ7および第二インバータ8とを備え、前記蒸気ボイラ26における処理水の要求量に基づいて、前記散布量切替手段4および前記各インバータ7,8を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、液体中の溶存酸素を低減する脱酸素装置および脱酸素システムに関する。
【背景技術】
【0002】
蒸気ボイラ,排ガスボイラ,冷却器などに代表される冷熱機器への給水系統では、前記冷熱機器の接水部分が給水中の溶存酸素により腐食し、前記冷熱機器が破損することを防止する目的で脱酸素装置が使用されている。また、この脱酸素装置は、ビル,マンションなどの建造物内に配設された給水系統において、給水配管内が給水中の溶存酸素により腐食し、赤水が発生することを防止する目的でも使用されている。さらに、前記脱酸素装置は、半導体製造工場の部品洗浄設備の供給系統において、超音波洗浄の効率を高める目的でも使用されている。
【0003】
前記脱酸素装置としては、一般に、膜式脱酸素装置,真空式脱酸素装置,窒素置換式脱酸素装置などが知られている。前記膜式脱酸素装置は、酸素は透過するが液体は透過しない特性を有する中空糸状の高分子膜の多数本を束ねてハウジング内に収容し、これらの各高分子膜の両端部を樹脂剤で封止した構造の脱酸素モジュールを使用する。そして、前記各高分子膜の一側へ被処理液を供給し、前記各高分子膜の他側を減圧することにより、被処理液に含まれる溶存酸素を低減させる構成の装置である。
【0004】
また、前記真空式脱酸素装置は、まず被処理液を加圧ポンプにより処理槽の上部に設けられたノズルへ供給し、被処理液を前記処理槽内の上部から下部へ向かって散布する。そして、前記処理槽内を真空吸引することにより、被処理液に含まれる溶存酸素を低減させた後、処理液を送水ポンプにより前記処理槽内から取り出し、負荷機器へ供給する構成の装置である(特許文献1)。
【0005】
さらに、前記窒素置換式脱酸素装置は、まず被処理液を加圧ポンプにより処理槽の上部に設けられたノズルへ供給し、被処理液を前記処理槽内の上部から下部へ向かって散布する。そして、前記処理槽内へ窒素ガスを供給し、被処理液に含まれる溶存酸素を窒素と置換して低減させた後、処理液を送水ポンプにより前記処理槽内から取り出し、負荷機器へ供給する構成の装置である(特許文献2)。
【0006】
ところで、前記膜式脱酸素装置は、前記各高分子膜の熱劣化や閉塞の問題から、被処理液が高温,あるいは懸濁物質を多く含む場合、使用することができない。一方、前記真空式脱酸素装置や前記窒素置換式脱酸素装置は、被処理液が高温,あるいは懸濁物質を多く含む場合でも、熱劣化や閉塞の問題を回避でき、取扱い可能な被処理液の性状が幅広いというメリットを有している。たとえば、前記蒸気ボイラの給水系統においては、蒸気が凝縮した復水(蒸気ドレン)を補給水が貯留される給水タンク内へ回収し、補給水と復水とが混合された給水を前記蒸気ボイラへ供給する場合がある。復水は、通常、高温,かつ蒸気配管や復水配管などからの溶出物を含むため、補給水と復水とが混合された給水の脱酸素処理には、前記真空式脱酸素装置や前記窒素置換式脱酸素装置が使用される。
【0007】
さて、前記真空式脱酸素装置や前記窒素置換式脱酸素装置は、通常、前記負荷機器における処理液の要求量とは関係なく、最大処理量を維持するように運転されている。たとえば、処理液の要求量が少ない場合、単純に処理量を低下させると、前記ノズルからの散布量が少なくなり、散布された被処理液の液滴が大きくなる。この場合、前記処理槽内における各液滴の表面積の合計が少なくなるため、液相部と気相部との接触率が低下し、脱酸素能力が大幅に低下する。この結果、処理液の溶存酸素濃度を所望の値まで低減できなく
なる。
【0008】
そこで、前記真空式脱酸素装置や前記窒素置換式脱酸素装置では、前記加圧ポンプおよび前記給水ポンプを常時一定の回転数で駆動させ、前記処理槽内へ供給する被処理液の量と、前記処理槽内から取り出す処理液の量とが、それぞれ最大処理量と一致するように運転されている。そして、前記負荷機器における処理液の要求量が少ない場合、最大処理量から要求量を差し引いた過剰量分の処理液を前記処理槽の上流側に設けたタンクへ還流させるようにしている(特許文献3)。したがって、従来の前記真空式脱酸素装置や前記窒素置換式脱酸素装置は、脱酸素能力を維持するための過剰運転により消費電力が大きく、ランニングコストの増大を招きやすい。
【0009】
【特許文献1】特開平8−108005号公報
【特許文献2】特開2000−176436号公報
【特許文献3】特開2003−300062号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
この発明が解決しようとする課題は、脱酸素能力の低下を起こすことなく、省電力を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明は、前記課題を解決するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、処理槽内へ被処理液を散布する散布手段と、この散布手段からの散布量を切り替える散布量切替手段と、この散布量切替手段へ被処理液を供給する第一ポンプと、前記処理槽内から取り出した処理液を負荷機器へ供給する第二ポンプと、前記両二ポンプの回転数を出力周波数に応じてそれぞれ可変させるインバータとを備え、前記負荷機器における処理液の要求量に基づいて、前記散布量切替手段および前記インバータを制御することを特徴としている。
【0012】
請求項1に記載の発明によれば、前記負荷機器における処理液の要求量に基づいて、前記散布量切替手段および前記インバータが制御される。この制御により、前記第一ポンプの回転数が調整されるとともに、前記散布手段からの散布量が切り替えられる。この結果、被処理液の散布量を増減させた場合でも、前記処理槽内での液滴の大きさが所定範囲に維持される。同時に、前記第二ポンプの回転数が前記インバータにより調整され、前記処理槽内の脱酸素処理空間が所定高さになるように維持されつつ、処理液が前記処理槽内から取り出される。そして、この処理液は、前記負荷機器へ供給される。
機器へ供給される。
【0013】
さらに、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の脱酸素装置を複数台設置し、これらの各脱酸素装置からの処理液を負荷機器へ供給する脱酸素システムであって、前記負荷機器における処理液の要求量に基づいて、前記各脱酸素装置の作動を制御することを特徴としている。
【0014】
請求項2に記載の発明によれば、前記負荷機器における処理液の要求量の増加にともなって、前記各脱酸素装置の処理量を増加させるように、それぞれの作動を制御するとともに、前記各脱酸素装置の作動台数を増加させる制御を行う。一方、前記負荷機器における処理液の要求量の減少にともなって、前記各脱酸素装置の処理量を減少させるように、それぞれの作動を制御するとともに、前記各脱酸素装置の作動台数を減少させる制御を行う。
【発明の効果】
【0015】
この発明によれば、脱酸素能力の低下を起こすことなく、省電力を実現することができる。この結果、冷熱機器や給水配管などに生じる腐食を抑制し,あるいは超音波洗浄などの効率を高めつつ、ランニングコストの低減を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
つぎに、この発明の実施の形態について説明する。この発明は、蒸気ボイラ,排ガスボイラ,冷却器などの冷熱機器における腐食の抑制,ビル,マンションなどの給水配管における赤水発生の防止,あるいは半導体製造工場の部品洗浄設備における超音波洗浄の効率化などの目的で使用される脱酸素装置において好適に実施される。
【0017】
(第一実施形態)
まず、この発明に係る脱酸素装置の第一実施形態について説明する。第一実施形態に係る脱酸素装置は、処理槽,散布手段,散布量切替手段,第一ポンプ,第二ポンプ,第一インバータおよび第二インバータを主に備えている。
【0018】
前記処理槽は、密閉容器であって、上部空間が被処理液が散布される処理部となっており、下部空間が処理液が貯留される貯留部となっている。ここで、前記処理部には、脱酸素処理の効率を高めるため、ラヒシリングやネットリングなどによる充填層が設けられていてもよい。
【0019】
被処理液を減圧によって脱酸素処理する場合、前記処理槽の上部には、排気経路が接続され、この排気経路に真空ポンプが設けられる。すなわち、前記処理部の気相を真空ポンプで吸引するとともに、前記排気経路を介して系外へ排気し、前記処理槽内を減圧状態に維持することができるように構成される。また、被処理液を窒素置換によって脱酸素処理する場合、前記処理槽の上部には、前記排気経路が接続され、前記処理槽の下方には、窒素ガス供給経路が接続される。すなわち、前記処理槽内へ前記窒素ガス供給経路を介して窒素ガスを供給し、液相と窒素ガスとを接触させるとともに、前記排気経路を介して酸素と窒素の混合ガスを系外へ排気し、前記処理槽内を窒素雰囲気状態に維持することができるように構成される。
【0020】
第一実施形態において、前記散布手段および前記散布量切替手段は、一体的に構成されている。前記散布手段は、一端側が閉鎖され、側壁に複数個の散布孔が設けられた筒体で構成されており、この筒体が前記処理槽内の上部に配置されている。前記各散布孔は、前記筒体の軸芯方向に沿って所定間隔で設けられており、被処理液を前記処理槽内の上部から下部へ向かって、所定の角度(たとえば、30〜90°)および形状(たとえば、コーン形など)で散布できるように設定されている。
【0021】
前記散布量切替手段は、前記筒体の開口する他端側から挿入され、この筒体内を軸芯方向に沿ってスライド可能なピストンと、このピストンの端部に連結されたリンク機構部と、このリンク機構部を駆動するモータとから構成されている。すなわち、前記散布量切替手段は、前記モータで前記リンク機構部を駆動させ、前記ピストンを前記筒体内でスライドさせることにより、前記各散布孔の任意の個数を開状態とすることができるようになっている。前記モータは、制御部と接続され、この制御部からの指令信号により作動する。
【0022】
前記筒体,すなわち前記散布手段は、被処理液供給経路と接続されており、この被処理液供給経路には、前記第一ポンプが設けられている。前記第一ポンプは、被処理液を前記被処理液供給経路を介して前記処理部へ供給するためのものであって、その回転数は、前記第一インバータからの出力周波数に応じて可変するように構成されている。前記第一インバータは、前記制御部と接続され、この制御部からの指令信号により作動する。
【0023】
前記処理槽の底部は、負荷機器と処理液供給経路で接続されており、この処理液供給経路には、前記第二ポンプが設けられている。前記第二ポンプは、前記貯留部から処理液を取出し、この処理液を前記処理液供給経路を介して前記負荷機器へ供給するためのものであって、その回転数は、前記第二インバータからの出力周波数に応じて可変するように構成されている。前記第二インバータは、前記制御部と接続され、この制御部からの指令信号により作動する。
【0024】
ここにおいて、前記第一ポンプおよび前記第二ポンプは、それぞれの回転数を単一のインバータからの出力周波数に応じて可変するように構成することもできる。
【0025】
さて、前記制御部には、前記負荷機器における処理液の要求量を把握するための信号,すなわち負荷量検出信号が入力されるようになっている。この負荷量検出信号は、前記散布量切替手段および前記各インバータへの指令信号の生成に用いられる。負荷量検出信号は、たとえば前記負荷機器の二次側に設けられた流量検出手段(たとえば、水の流量計や蒸気の流量計など)からの信号を利用することができる。また、前記負荷機器が蒸気ボイラの場合、燃料供給バルブの開閉信号を利用することもできる。因みに、この燃料供給バルブの開閉信号を利用する場合、たとえば単位時間あたりの蒸発量が100%となる高燃焼状態,蒸発量が50%となる低燃焼状態および蒸発量が0%となる待機状態をそれぞれ識別可能であり、処理液の要求量の変化を容易に把握することができる。
【0026】
以下、第一実施形態に係る前記脱酸素装置の作用について説明する。まず、前記負荷機器の稼働中において、前記制御部へ負荷量検出信号が入力される。前記制御部では、前記負荷機器における処理液の要求量に基づいて、指令信号が生成され、この指令信号が前記散布量切替手段および前記各インバータへそれぞれ出力される。前記第一インバータでは、前記制御部からの指令信号に基づいて、出力周波数が調整され、前記第一ポンプの回転数が変更される。この結果、前記負荷機器における処理液の要求量を満足する吐出量で前記第一ポンプが駆動され、被処理液が前記被処理液供給経路を介して前記散布手段へ供給される。
【0027】
つぎに、前記散布量切替手段では、前記制御部からの指令信号に基づいて、前記モータが作動され、前記ピストンの位置が変更される。具体的には、前記第一ポンプの吐出量に応じて、所定個数の前記各散布孔を開状態とし、前記処理槽内における液滴の大きさが所定の範囲になるように調節される。この結果、被処理液は、液滴の大きさが所定の範囲に維持されながら、前記各散布孔を介して前記処理槽内の上部から下部へ向かって散布される。
【0028】
前記処理槽内では、前記処理部において被処理液が減圧されることにより,あるいは窒素ガスと接触されることにより脱酸素処理が進行し、被処理液に含まれる溶存酸素が低減される。そして、被処理液から除去された溶存酸素は、前記排気経路を介して系外へ排気される。一方、溶存酸素が低減された処理水は、前記貯留部に貯留される。
【0029】
前記第二インバータでは、前記制御部からの指令信号に基づいて、出力周波数が調整され、前記第二ポンプの回転数が変更される。この結果、前記負荷機器における処理液の要求量を満足する吐出量で前記第二ポンプが駆動され、処理液が前記処理液供給経路を介して前記負荷機器へ供給される。同時に、前記散布手段から前記貯留部の液面までの高さが所定範囲に維持される。
【0030】
前記の構成において、前記処理液供給経路に流量検出手段,たとえば流量計を設け、この流量検出手段からの流量検知信号を前記各インバータの制御にフィードバックさせるよ
うにしてもよい。具体的には、前記各インバータのPID制御機能(P制御:比例制御,I制御:積分制御,D制御:微分制御)を使用し、前記流量検出手段で検出される処理量が目標値,すなわち前記負荷機器の要求量と一致するように、前記各インバータの出力周波数を制御する。また、前記第一ポンプおよび前記第二ポンプの吐出量は、被処理液または処理液の温度により変わる(すなわち、液体の粘性が温度で変化する。)ので、被処理液または処理液の温度を検出し、前記各インバータからの出力周波数を補正するように構成することもできる。
【0031】
(第二実施形態)
つぎに、この発明に係る脱酸素装置の第二実施形態について説明する。第二実施形態に係る脱酸素装置は、前記第一実施形態と同様、処理槽,散布手段,散布量切替手段,第一ポンプ,第二ポンプ,第一インバータおよび第二インバータを主に備えている。ここでは、前記第一実施形態と同じ構成については詳細な説明を省略し、異なる構成についてのみ説明する。
【0032】
第二実施形態において、前記脱酸素装置は、複数の散布手段を備えており、これらの各散布手段が前記処理槽内の上部に所定間隔で配置されている。前記各散布手段は、いわゆるノズルであって、被処理液の供給口と散布口とを有している。そして、前記散布口の部分は、被処理液を前記処理槽内の上部から下部へ向かって、所定の角度(たとえば、30〜90°)および形状(たとえば、コーン形など)で散布できるような形状に設定されている。
【0033】
前記散布量切替手段は、ハウジング部と、ピストンと、このピストンの端部に連結されたリンク機構部と、このリンク機構部を駆動するモータとから構成されている。前記ハウジング部には、一端側が外部へ開口する柱状の内部空間が形成されており、この内部空間の開口部から前記ピストンが軸芯方向に沿ってスライド可能に挿入されている。また、前記ハウジング部の側壁には、前記内部空間と外部とを連通する複数の内部流路が形成されている。この構成において、前記散布量切替手段は、前記モータで前記リンク機構部を駆動させ、前記ピストンを前記内部空間内でスライドさせることにより、前記内部流路の任意の数を流通状態とすることができるようになっている。前記モータは、前記制御部と接続され、この制御部からの指令信号により作動する。
【0034】
さて、前記各内部流路の数は、前記各散布手段の数と対応するように設定されており、前記各内部流路は、それぞれ前記各散布手段と接続されている。また、前記ハウジング部は、前記被処理液供給経路と接続されており、前記内部空間内へ被処理液を供給できるように構成されている。
【0035】
以下、第二実施形態に係る前記脱酸素装置の作用について説明する。まず、前記負荷機器の稼働中において、前記制御部へ負荷量検出信号が入力される。前記制御部では、前記負荷機器における処理液の要求量に基づいて、指令信号が生成され、この指令信号が前記散布量切替手段および前記各インバータへそれぞれ出力される。前記第一インバータでは、前記制御部からの指令信号に基づいて、出力周波数が調整され、前記第一ポンプの回転数が変更される。この結果、前記負荷機器における処理液の要求量を満足する吐出量で前記第一ポンプが駆動され、被処理液が前記被処理液供給経路を介して前記各散布手段へ供給される。
【0036】
前記散布量切替手段では、前記制御部からの指令信号に基づいて、前記モータが作動され、前記ピストンの位置が変更される。具体的には、前記第一ポンプの吐出量に応じて、所定個数の前記各内部流路を流通状態とし、前記処理槽内における液滴の大きさが所定の範囲になるように調節される。この結果、被処理液は、液滴の大きさが所定の範囲に維持
されながら、前記各散布手段を介して前記処理槽内の上部から下部へ向かって散布される。
【0037】
前記処理槽内では、前記処理部において被処理液が減圧されることにより,あるいは窒素ガスと接触されることにより脱酸素処理が進行し、被処理液に含まれる溶存酸素が低減される。そして、被処理液から除去された溶存酸素は、前記排気経路を介して系外へ排気される。一方、溶存酸素が低減された処理液は、前記貯留部に貯留される。
【0038】
前記第二インバータでは、前記制御部からの指令信号に基づいて、出力周波数が調整され、前記第二ポンプの回転数が変更される。この結果、前記負荷機器における処理液の要求量を満足する吐出量で前記第二ポンプが駆動され、処理液が前記処理液供給経路を介して前記負荷機器へ供給される。同時に、前記散布手段から前記貯留部の液面までの高さが所定範囲に維持される。
【0039】
(第三実施形態)
つぎに、この発明に係る脱酸素装置の第三実施形態について説明する。第三実施形態に係る脱酸素装置は、前記第一実施形態および前記第二実施形態と同様、処理槽,散布手段,散布量切替手段,第一ポンプ,第二ポンプ,第一インバータおよび第二インバータを主に備えている。ここでは、前記第一実施形態および前記第二実施形態と同じ構成については詳細な説明を省略し、異なる構成についてのみ説明する。
【0040】
第三実施形態において、前記脱酸素装置は、前記第二実施形態と同様、複数の散布手段を備えており、これらの各散布手段が前記処理槽内の上部に所定間隔で配置されている。前記各散布手段は、それぞれ前記被処理液供給経路から分岐する散布水供給経路と接続されており、これらの各散布水供給経路には、前記散布量切替手段としてそれぞれ開閉弁が設けられている。この構成において、前記散布量切替手段は、前記各開閉弁を選択的に開状態とすることにより、前記各散布水供給経路の任意の数を流通状態とすることができるようになっている。前記各開閉弁は、前記制御部と接続され、この制御部からの指令信号により作動する。
【0041】
以下、第三実施形態に係る前記脱酸素装置の作用について説明する。まず、前記負荷機器の稼働中において、前記制御部へ負荷量検出信号が入力される。前記制御部では、前記負荷機器における処理液の要求量に基づいて、指令信号が生成され、この指令信号が前記散布量切替手段および前記各インバータへそれぞれ出力される。前記第一インバータでは、前記制御部からの指令信号に基づいて、出力周波数が調整され、前記第一ポンプの回転数が変更される。この結果、前記負荷機器における処理液の要求量を満足する吐出量で前記第一ポンプが駆動され、被処理液が前記被処理液供給経路を介して前記散布手段へ供給される。
【0042】
前記散布量切替手段では、前記制御部からの指令信号に基づいて、前記各開閉弁の開状態と閉状態とが切り替えられる。具体的には、前記第一ポンプの吐出量に応じて、所定の数の前記各散布水供給経路を流通状態とし、前記処理槽内における液滴の大きさが所定の範囲になるように調節される。この結果、被処理液は、液滴の大きさが所定の範囲に維持されながら、前記各散布手段を介して前記処理槽内の上部から下部へ向かって散布される。
【0043】
前記処理槽内では、前記処理部において被処理液が減圧されることにより,あるいは窒素ガスと接触されることにより脱酸素処理が進行し、被処理液に含まれる溶存酸素が低減される。そして、被処理液から除去された溶存酸素は、前記排気経路を介して系外へ排気される。一方、溶存酸素が低減された処理液は、前記貯留部に貯留される。
【0044】
前記第二インバータでは、前記制御部からの指令信号に基づいて、出力周波数が調整され、前記第二ポンプの回転数が変更される。この結果、前記負荷機器における処理液の要求量を満足する吐出量で前記第二ポンプが駆動され、処理液が前記処理液供給経路を介して前記負荷機器へ供給される。同時に、前記散布手段から前記貯留部の液面までの高さが所定範囲に維持される。
【0045】
(第四実施形態)
つぎに、この発明に係る脱酸素システムの第四実施形態について説明する。第四実施形態に係る脱酸素システムは、前記第一実施形態,前記第二実施形態または前記第三実施形態に記載した脱酸素装置を複数台設置し、これらの各脱酸素装置からの処理液を負荷機器へ供給する構成となっている。すなわち、この第四実施形態は、大容量の処理液を必要とする前記負荷機器,たとえば多缶設置された蒸気ボイラなどに対応するための形態である。
【0046】
前記脱酸素システムにおいて、前記各処理槽へ被処理液を供給する前記各被処理液供給経路は、前記各第一ポンプの上流側で集合されており、この集合部が被処理液の供給源と接続されている。一方、前記各処理槽の底部と接続された前記各処理液供給経路は、前記各第二ポンプの下流側で合流し、この合流経路が前記負荷機器と接続されている。
【0047】
前記の構成において、前記各脱酸素装置は、それぞれ前記制御部に入力される負荷量検出信号に対して、運転の優先順位が設定されている。すなわち、前記各脱酸素装置は、前記負荷機器の要求量に基づいて、それぞれの作動と停止を切り替えるように制御される。
【0048】
以下、第四実施形態に係る前記脱酸素システムの作用について、前記脱酸素装置を3台設置した場合を例にとって説明する。まず、前記負荷機器の要求量が第一脱酸素装置の最大処理量未満のときは、この第一脱酸素装置のみが作動し、処理液の供給を行う。この際、前記第一脱酸素装置では、前記したように、前記負荷機器の要求量に基づいて、前記散布量切替手段および前記各インバータが制御される。また、第二脱酸素装置および第三脱酸素装置は、停止を継続する。
【0049】
前記負荷機器の要求量が前記第一脱酸素装置の最大処理量を超えたときは、前記第二脱酸素装置が作動を開始し、不足分の処理液の供給を行う。この際、前記第一脱酸素装置では、最大処理量での作動が継続され、前記第三脱酸素装置は、停止を継続する。一方、前記第二脱酸素装置では、前記負荷機器の要求量から前記第一脱酸素装置の最大処理量を差し引いた量に基づいて、前記散布量切替手段および前記各インバータが制御される。
【0050】
前記負荷機器の要求量が前記第一脱酸素装置の最大処理量および前記第二脱酸素装置の最大処理量の合計を超えたときは、前記第三脱酸素装置が作動を開始し、さらに不足分の処理液の供給を行う。この際、前記第一脱酸素装置および前記第二脱酸素装置では、それぞれ最大処理量での作動が継続される。一方、前記第三脱酸素装置では、前記負荷機器の要求量から前記第一脱酸素装置の最大処理量および前記第二脱酸素装置の最大処理量の合計を差し引いた量に基づいて、前記散布量切替手段および前記各インバータが制御される。
【0051】
つぎに、前記負荷機器の要求量が前記第一脱酸素装置の最大処理量および前記第二脱酸素装置の最大処理量の合計未満となったときは、前記第三脱酸素装置が停止する。この際、前記第一脱酸素装置では、最大処理量での作動が継続される。一方、前記第二脱酸素装置では、前記負荷機器の要求量から前記第一脱酸素装置の最大処理量を差し引いた量に基づいて、前記散布量切替手段および前記各インバータが制御される。
【0052】
前記負荷機器の要求量が前記第一脱酸素装置の最大処理量未満となったときは、前記第二脱酸素装置が停止する。この際、前記第一脱酸素装置では、前記負荷機器の要求量に基づいて、前記散布量切替手段および前記各インバータが制御される。また、前記第二脱酸素装置および前記第三脱酸素装置は、停止を継続する。
【0053】
第四実施形態では、前記脱酸素装置を3台設置した場合の作用について説明したが、4台を超えて前記脱酸素装置を設置した場合においても同様に実施することができる。また、前記各脱酸素装置の最大処理量は、必ずしも同一に設定する必要はなく、異なる最大処理量のものを複数台設置することも可能である。
【0054】
以上、説明したように、前記各実施形態によれば、脱酸素能力の低下を起こすことなく、省電力を実現することができる。この結果、冷熱機器や給水配管などに生じる腐食を抑制し,あるいは超音波洗浄などの効率を高めつつ、ランニングコストの低減を図ることができる。
【実施例】
【0055】
(第一実施例)
以下、この発明の第一実施例を図面に基づいて詳細に説明する。図1は、第一実施例に係る脱酸素装置の概略構成図を示している。第一実施例に係る脱酸素装置は、蒸気ボイラの給水系統に設置され、蒸気が凝縮した復水(蒸気ドレン)を補給水が貯留される給水タンク内へ回収し、補給水と復水とが混合された被処理水を脱酸素処理した後、前記蒸気ボイラへ供給する場合に適用される。図1において、脱酸素装置1は、処理槽2と、散布手段3と、散布量切替手段4と、第一ポンプ5と、第二ポンプ6と、第一インバータ7と、第二インバータ8とを備えている。
【0056】
前記処理槽2は、密閉容器であって、上部空間が被処理水が散布される処理部9に設定されているとともに、下部空間が処理水が貯留される貯留部10に設定されている。ここで、前記貯留部10には、処理水の上限水位を検出する第一水位センサ11と、処理水の下限水位を検出する第二水位センサ12とが設けられており、これらの各水位センサ11,12の検出信号は、制御部13へ入力されるように構成されている。また、前記処理槽2の上部には、前記処理部9を真空吸引するための排気経路14が接続されており、この排気経路14には、前記処理槽2側から順に逆止弁15と真空ポンプ16とが設けられている。
【0057】
第一実施例において、前記散布手段3は、一端側が閉鎖され、側壁に4個の散布孔17,17,…が形成された筒体18で構成されており、この筒体18が前記処理部9の上部に軸芯が水平となるように配置されている。前記各散布孔17は、前記筒体18の軸芯方向と並行する同一線上に所定間隔で設けられており、被処理水を前記処理部9の上部から下部へ向かって散布できるように、前記各散布孔17が下向きに配置されている。また、前記各散布孔17の形状は、前記筒体18内に供給された被処理水を所定の角度(たとえば、30〜90°)および形状(たとえば、コーン形など)で散布できるように形成されている。
【0058】
前記散布量切替手段4は、前記筒体18の開口する他端側から挿入され、この筒体18内を軸芯方向に沿ってスライド可能なピストン19と、このピストン19の端部に連結されたリンク機構部20と、このリンク機構部20を駆動するモータ21とから構成されている。すなわち、前記散布量切替手段4では、前記モータ21で前記リンク機構部20を駆動させ、前記ピストン19を前記筒体18内でスライドさせることにより、開状態となる前記各散布孔17の個数が切り替えられる。前記モータ21は、前記制御部13からの
指令信号により作動し、前記ピストン19が所定の距離をスライドするように前記リンク機構20を駆動させる。
【0059】
前記散布手段3において、前記筒体18の閉鎖された一端側は、被処理水が貯留される給水タンク22と被処理水供給経路23(被処理液供給経路)と接続されており、この被処理水供給経路23には、前記第一ポンプ5が設けられている。前記第一ポンプ5は、被処理水を前記被処理水供給経路23を介して前記処理部9へ供給する加圧ポンプであって、その回転数は、前記第一インバータ7からの出力周波数に応じて可変される。前記第一インバータ7は、前記制御部13と接続され、この制御部13からの指令信号により作動する。
【0060】
前記給水タンク22の上流側には、補給水供給経路24が接続されており、この補給水供給経路24には、軟水装置25が設けられている。この軟水装置25は、水道水,工業用水,地下水などの原水から硬度成分(カルシウムイオンやマグネシウムイオン)を陽イオン交換樹脂を使用して除去し、後述する蒸気ボイラ内におけるスケール生成を防止するための水処理機器である。そして、原水から硬度成分が除去された水,すなわち軟水は、補給水として補給水供給経路24を介して前記給水タンク22へ供給されるように構成されている。
【0061】
前記処理槽2の底部は、蒸気ボイラ26(負荷機器)と処理水供給経路27(処理液供給経路)で接続されており、この処理水供給経路27には、前記第二ポンプ6が設けられている。前記第二ポンプ6は、前記貯留部10から処理水を排出し、この処理水を前記処理水供給経路27を介して前記蒸気ボイラ26へ供給するための送水ポンプであって、その回転数は、前記第二インバータ8からの出力周波数に応じて可変される。前記第二インバータ8は、前記制御部13と接続され、この制御部13からの指令信号により作動する。
【0062】
前記蒸気ボイラ26は、暖房機器,乾燥機器,生産機器などの蒸気使用機器28と給蒸経路29で接続されている。すなわち、前記蒸気ボイラ26で生成させた蒸気を前記給蒸経路29を介して前記蒸気使用機器28へ供給するように構成されている。ここで、前記蒸気使用機器28において熱交換された蒸気は、その潜熱の一部が奪われると凝縮水へと変化するが、この凝縮水を復水として回収し、その潜熱を有効利用するため、前記蒸気使用機器28は、前記給水タンク22と復水回収経路30で接続されている。
【0063】
さて、前記制御部13には、前記蒸気ボイラ26における処理水の要求量を把握するための信号,すなわち負荷量検出信号が入力されている。この負荷量検出信号は、前記散布量切替手段4および前記各インバータ7,8への指令信号の生成に用いられる。この第一実施例において、負荷量検出信号は、前記蒸気ボイラ26に備えられた燃料供給バルブ(図示省略)の開閉信号が利用されている。
【0064】
たとえば、前記蒸気ボイラ26は、2個の前記燃料供給バルブを備えており、燃焼状態に応じて開状態とする個数を切り替えるように制御されている。具体的には、高燃焼状態(単位時間あたりの蒸発量が100%の状態)では、前記各燃料供給バルブのうち2個を開状態とし、また低燃焼状態(単位時間あたりの蒸発量が50%の状態)では、前記各燃料供給バルブのうち1個を開状態とし、さらに待機状態(単位時間あたりの蒸発量が0%の状態)では、前記各燃料供給バルブを2個とも閉状態とするように制御される。ここにおいて、前記蒸気ボイラ26における単位時間当たりの蒸発量は、単位時間当たりに必要な処理水の量とほぼ等しいため、前記各燃料供給バルブの開閉信号を利用することにより、処理水の要求量を3段階で識別することが可能となる。また、前記蒸気ボイラ26が2台設置されている場合には、前記各蒸気ボイラ26における前記各燃料供給バルブの開閉
信号をそれぞれ利用することにより、処理水の要求量の合計を5段階(具体的には、0%,25%,50%,75%,100%)で識別することが可能となる。さらに、前記各蒸気ボイラ26が3台以上設置されている場合には、前記各蒸気ボイラ26における前記各燃料供給バルブの開閉信号をそれぞれ利用することにより、処理水の要求量の合計をより多段階で識別することが可能となる。
【0065】
以下、第一実施例に係る前記脱酸素装置1の作用について説明する。まず、補給水供給経路24を流れる原水は、前記軟水装置25において、イオン交換により軟水化処理される。この軟水は、補給水として前記給水タンク22へ供給される。また、前記給水タンク22では、前記復水回収経路30を介して復水が回収された後、この復水が補給水と混合され、被処理水として貯留される。
【0066】
前記蒸気ボイラ26の稼働中において、前記制御部13へは、負荷量検出信号,すなわち前記燃料供給バルブの開閉信号が入力される。前記制御部13では、前記蒸気ボイラ26における処理水の要求量に基づいて、指令信号が生成され、この指令信号が前記散布量切替手段4および前記各インバータ7,8へそれぞれ出力される。前記第一インバータ7では、前記制御部13からの指令信号に基づいて、出力周波数が調整され、処理水の要求量を満足する吐出量が得られるように前記第一ポンプ5の回転数が変更される。そして、前記第一ポンプ5の作動により、被処理水が前記被処理水供給経路23を介して前記給水タンク22から前記散布手段3へ供給される。
【0067】
前記散布量切替手段4では、前記制御部13からの指令信号に基づいて、前記モータ21が作動され、前記ピストン19の位置が変更される。すなわち、前記第一ポンプ5の吐出量に応じた個数の前記各散布孔17を開状態とし、前記処理部9における水滴の大きさが所定の範囲になるように調節する。具体的には、処理水の要求量が100%のときは、前記各散布孔17のうち4個を開状態にし、また処理水の要求量が75%のときは、前記各散布孔17のうち3個を開状態にし、処理水の要求量が50%のときは、前記各散布孔17のうち2個を開状態にし、さらに処理水の要求量が25%のときは、前記各散布孔17のうち1個を開状態にするように前記ピストン19をスライドさせる。そして、被処理水は、前記各散布孔17を介して前記処理部9の上部から下部へ向かって散布される。
【0068】
前記処理部9では、前記真空ポンプ16を作動させることにより、散布された水滴が減圧され、被処理水に含まれる溶存酸素が低減される。そして、被処理液から除去された溶存酸素は、前記排気経路16を介して系外へ排気される。一方、溶存酸素が低減された処理水は、前記貯留部10に貯留される。
【0069】
前記第二インバータ8では、前記制御部13からの指令信号に基づいて、出力周波数が調整され、処理水の要求量を満足する吐出量が得られるように前記第二ポンプ6の回転数が変更される。そして、前記第二ポンプ6の作動により、処理水が前記処理水供給経路27を介して前記貯留部10から前記蒸気ボイラ26へ供給される。
【0070】
前記蒸気ボイラ26内に貯留された処理水は、加熱されることによって蒸気となるが、処理水が脱酸素処理されているため、水管部(図示省略)や管寄せ部(図示省略)などを形成している非不働態化金属体の溶存酸素による腐食が効果的に抑制される。前記蒸気ボイラ26で生成された蒸気は、前記給蒸経路29を介して前記蒸気使用機器28へ供給された後、熱交換により凝縮水へと変化する。そして、この凝縮水は、復水として前記復水回収経路30を介して前記給水タンク22へ還流される。
【0071】
ところで、前記脱酸素装置1では、所定濃度まで溶存酸素が低減された処理水を継続して得るため、前記処理部9の空間高さを所定範囲に維持し、散布された水滴の滞留時間を
確保する必要がある。そこで、前記制御部13では、負荷量検出信号が入力されているとき、前記各水位センサ11,12からの入力信号に基づいて、つぎのような制御を行う。
【0072】
まず、前記貯留部10内の処理水の水位が前記第一水位センサ11の位置を超えたときは、前記第一インバータ7への指令信号を遮断し、前記第一ポンプ5を停止させことにより、被処理水の供給および散布を中断する。つぎに、前記貯留部10内の処理水の水位が前記第一水位センサ11の位置未満,かつ前記第二水位センサ12の位置を超えているときは、前記したように、負荷量検出信号に基づいて、前記前記第一インバータ7へ指令信号を出力し、前記第一ポンプ5の回転数を変更させる。以上のような制御により、前記処理部9の空間高さが所定範囲に維持され、散布された水滴の滞留時間が確保される。さらに、前記貯留部10内の処理水の水位が前記第二水位センサ12の位置未満となったときは、処理水が不足するおそれがある。このため、前記負荷量検出信号とは関係なく、処理水の要求量以上の被処理水を脱酸素処理するように、前記散布量切替手段4および前記第一インバータ7へ指令信号を出力する。
【0073】
(第二実施例)
つぎに、この発明の第二実施例を図面に基づいて詳細に説明する。図2は、第二実施例に係る脱酸素装置の概略構成図を示している。図2において、前記第一実施例と同一の符号は、同一の部材を示しており、その詳細な説明は省略する。
【0074】
第二実施例において、脱酸素装置1は、4個の散布手段3,3,…を備えており、これらの各散布手段3が前記処理槽2内の上部に所定間隔で配置されている。前記各散布手段3は、いわゆるノズルであって、それぞれ被処理水の供給口31と散布口32とを有している。そして、被処理水を前記処理部9の上部から下部へ向かって散布できるように、前記各散布口32が下向きに配置されている。また、前記各散布口32の形状は、前記供給口31から供給された被処理水を所定の角度(たとえば、30〜90°)および形状(たとえば、コーン形など)で散布できるように形成されている。
【0075】
前記散布量切替手段4は、ハウジング部33と、前記ピストン19と、このピストン19の端部に連結された前記リンク機構部20と、このリンク機構部20を駆動する前記モータ21とから構成されている。前記ハウジング部33には、一端側が外部へ開口する柱状の内部空間34が形成されており、この内部空間34の開口部から前記ピストン19が軸芯方向に沿ってスライド可能に挿入されている。また、前記ハウジング部33の側壁には、前記内部空間34と外部,すなわち前記各供給口31とを連通する複数の内部流路35が形成されている。この構成において、前記散布量切替手段4では、前記モータ21で前記リンク機構部20を駆動させ、前記ピストン19を前記内部空間34内でスライドさせることにより、流通状態となる前記各内部流路35の数が切り替えられる。前記モータ21は、前記制御部13からの指令信号により作動し、前記ピストン19が所定の距離をスライドするように前記リンク機構20を駆動させる。
【0076】
前記各内部流路35の数は、前記各散布手段3の数と対応するように設定されており、前記各内部流路35は、それぞれ前記各供給口31と散布水供給経路36で接続されている。また、前記ハウジング部33は、前記内部空間34の他端側と連通するように前記被処理水供給経路23と接続されている。
【0077】
以下、第二実施例に係る前記脱酸素装置1の作用について説明する。まず、補給水供給経路24を流れる原水は、前記軟水装置25において、イオン交換により軟水化処理される。この軟水は、補給水として前記給水タンク22へ供給される。また、前記給水タンク22では、前記復水回収経路30を介して復水が回収された後、この復水が補給水と混合され、被処理水として貯留される。
【0078】
前記蒸気ボイラ26の稼働中において、前記制御部13へは、負荷量検出信号,すなわち前記燃料供給バルブ(図示省略)の開閉信号が入力される。前記制御部13では、前記蒸気ボイラ26における処理水の要求量に基づいて、指令信号が生成され、この指令信号が前記散布量切替手段4および前記各インバータ7,8へそれぞれ出力される。前記第一インバータ7では、前記制御部13からの指令信号に基づいて、出力周波数が調整され、処理水の要求量を満足する吐出量が得られるように前記第一ポンプ5の回転数が変更される。そして、前記第一ポンプ5の作動により、被処理水が前記被処理水供給経路23を介して前記給水タンク22から前記各散布手段3へ供給される。
【0079】
前記散布量切替手段4では、前記制御部13からの指令信号に基づいて、前記モータ21が作動され、前記ピストン19の位置が変更される。すなわち、前記第一ポンプ5の吐出量に応じた数の前記各内部流路35を開状態とし、前記処理部9における水滴の大きさが所定の範囲になるように調節する。具体的には、処理水の要求量が100%のときは、前記各内部流路35のうち4つを流通状態にし、また処理水の要求量が75%のときは、前記各内部流路35のうち3つを流通状態にし、処理水の要求量が50%のときは、前記各内部流路35のうち2つを流通状態にし、さらに処理水の要求量が25%のときは、前記各内部流路35のうち1つを流通状態にするように前記ピストン19をスライドさせる。そして、被処理水は、前記各散布水供給経路36を介して前記各散布手段3へ供給され、前記各散布口32を介して前記処理部9の上部から下部へ向かって散布される。
【0080】
前記処理部9では、前記真空ポンプ16を作動させることにより、散布された水滴が減圧され、被処理水に含まれる溶存酸素が低減される。そして、被処理液から除去された溶存酸素は、前記排気経路16を介して系外へ排気される。一方、溶存酸素が低減された処理水は、前記貯留部10に貯留される。
【0081】
前記第二インバータ8では、前記制御部13からの指令信号に基づいて、出力周波数が調整され、処理水の要求量を満足する吐出量が得られるように前記第二ポンプ6の回転数が変更される。そして、前記第二ポンプ6の作動により、処理水が前記処理水供給経路27を介して前記貯留部10から前記蒸気ボイラ26へ供給される。
【0082】
前記蒸気ボイラ26内に貯留された処理水は、加熱されることによって蒸気となるが、処理水が脱酸素処理されているため、水管部(図示省略)や管寄せ部(図示省略)などを形成している非不働態化金属体の溶存酸素による腐食が効果的に抑制される。前記蒸気ボイラ26で生成された蒸気は、前記給蒸経路29を介して前記蒸気使用機器28へ供給された後、熱交換により凝縮水へと変化する。そして、この凝縮水は、復水として前記復水回収経路30を介して前記給水タンク22へ還流される。
【0083】
以上の作用において、前記各水位センサ11,12からの入力信号に基づく前記貯留部10の水位制御は、前記第一実施例と同様に行われる。
【0084】
(第三実施例)
つぎに、この発明の第三実施例を図面に基づいて詳細に説明する。図3は、第三実施例に係る脱酸素装置の概略構成図を示している。図3において、前記第一実施例および第二実施例と同一の符号は、同一の部材を示しており、その詳細な説明は省略する。
【0085】
第三実施例において、脱酸素装置1は、前記第二実施例と同様、4個の前記散布手段3,3,…(すなわち,ノズル)を備えており、これらの各散布手段3が前記処理槽2内の上部に所定間隔で配置されている。前記各散布手段3において、前記各供給口31は、それぞれ前記被処理水供給経路23から分岐する前記散布水供給経路36と接続されており
、これらの各散布水供給経路36には、前記散布量切替手段4としてそれぞれ電磁弁37,37,…が設けられている。この構成において、前記散布量切替手段4では、前記各電磁弁37を選択的に開状態とすることにより、流通状態となる前記各散布水供給経路36の数が切り替えられる。前記各電磁弁37は、前記制御部13からの指令信号により作動し、それぞれが開状態または閉状態のいずれかとなるように制御される。
【0086】
以下、第三実施例に係る前記脱酸素装置1の作用について説明する。まず、補給水供給経路24を流れる原水は、前記軟水装置25において、イオン交換により軟水化処理される。この軟水は、補給水として前記給水タンク22へ供給される。また、前記給水タンク22では、前記復水回収経路30を介して復水が回収された後、この復水が補給水と混合され、被処理水として貯留される。
【0087】
前記蒸気ボイラ26の稼働中において、前記制御部13へは、負荷量検出信号,すなわち前記燃料供給バルブ(図示省略)の開閉信号が入力される。前記制御部13では、前記蒸気ボイラ26における処理水の要求量に基づいて、指令信号が生成され、この指令信号が前記散布量切替手段4および前記各インバータ7,8へそれぞれ出力される。前記第一インバータ7では、前記制御部13からの指令信号に基づいて、出力周波数が調整され、処理水の要求量を満足する吐出量が得られるように前記第一ポンプ5の回転数が変更される。そして、前記第一ポンプ5の作動により、被処理水が前記被処理水供給経路23を介して前記給水タンク22から前記各散布手段3へ供給される。
【0088】
前記散布量切替手段4では、前記制御部13からの指令信号に基づいて、前記各電磁弁37が作動され、開状態となる数が変更される。すなわち、前記第一ポンプ5の吐出量に応じた数の前記各電磁弁37を開状態とし、前記処理部9における水滴の大きさが所定の範囲になるように調節する。具体的には、処理水の要求量が100%のときは、前記各電磁弁37のうち4個を開状態にし、また処理水の要求量が75%のときは、前記各電磁弁37のうち3個を開状態にし、処理水の要求量が50%のときは、前記各電磁弁37のうち2個を開状態にし、さらに処理水の要求量が25%のときは、前記各電磁弁37のうち1個を開状態にするように作動させる。そして、被処理水は、前記各散布水供給経路36を介して前記各散布手段3へ供給され、前記各散布口32を介して前記処理部9の上部から下部へ向かって散布される。
【0089】
前記処理部9では、前記真空ポンプ16を作動させることにより、散布された水滴が減圧され、被処理水に含まれる溶存酸素が低減される。そして、被処理液から除去された溶存酸素は、前記排気経路16を介して系外へ排気される。一方、溶存酸素が低減された処理水は、前記貯留部10に貯留される。
【0090】
前記第二インバータ8では、前記制御部13からの指令信号に基づいて、出力周波数が調整され、処理水の要求量を満足する吐出量が得られるように前記第二ポンプ6の回転数が変更される。そして、前記第二ポンプ6の作動により、処理水が前記処理水供給経路27を介して前記貯留部10から前記蒸気ボイラ26へ供給される。
【0091】
前記蒸気ボイラ26内に貯留された処理水は、加熱されることによって蒸気となるが、処理水が脱酸素処理されているため、水管部(図示省略)や管寄せ部(図示省略)などを形成している非不働態化金属体の溶存酸素による腐食が効果的に抑制される。前記蒸気ボイラ26で生成された蒸気は、前記給蒸経路29を介して前記蒸気使用機器28へ供給された後、熱交換により凝縮水へと変化する。そして、この凝縮水は、復水として前記復水回収経路30を介して前記給水タンク22へ還流される。
【0092】
以上の作用において、前記各水位センサ11,12からの入力信号に基づく前記貯留部
10の水位制御は、前記第一実施例および前記第二実施例と同様に行われる。
【0093】
(第四実施例)
つぎに、この発明に係る脱酸素システムの実施例について説明する。第四実施例に係る脱酸素システムは、前記第一実施例,前記第二実施例または前記第三実施例に記載した脱酸素装置を複数台備えており、これらの各脱酸素装置からの処理水を多缶設置された各蒸気ボイラへ供給するシステムである。図4は、第四実施例に係る脱酸素システムの概略構成図を示している。図4において、前記第一実施例,第二実施例および第三実施例と同一の符号は、同一の部材を示しており、その詳細な説明は省略する。
【0094】
第四実施例に係る脱酸素システム38は、第一脱酸素装置39と第二脱酸素装置40とを備えている。前記各処理槽2へ被処理水を供給する前記各被処理水供給経路23は、前記各第一ポンプ5の上流側で集合されており、この集合部41が前記給水タンク22と前記被処理水供給経路23で接続されている。一方、前記各処理槽2の底部と接続された前記各処理水供給経路27は、前記各第二ポンプ6の下流側で合流し、この合流経路42が複数の蒸気ボイラ26,26,…と接続されている。
【0095】
前記各蒸気ボイラ26からの前記各給蒸経路29は、スチームヘッダ43と接続され、このスチームヘッダ43は、さらに蒸気使用機器28と前記給蒸経路29で接続されている。また、前記蒸気使用機器28は、前記給水タンク22と復水回収経路30で接続されている。
【0096】
前記の構成において、前記各脱酸素装置39,40は、それぞれ前記制御部13に入力される負荷量検出信号,すなわち前記各蒸気ボイラ26の前記各燃料供給バルブ(図示省略)の開閉信号に応じて、運転の優先順位が設定されている。すなわち、前記各脱酸素装置39,40は、前記各蒸気ボイラ26における処理水の要求量の合計に基づいて、それぞれの作動と停止を切り替えるように制御される。
【0097】
以下、第四実施形態に係る前記脱酸素システムの作用について説明する。まず、補給水供給経路24を流れる原水は、前記軟水装置25において、イオン交換により軟水化処理される。この軟水は、補給水として前記給水タンク22へ供給される。また、前記給水タンク22では、前記復水回収経路30を介して復水が回収された後、この復水が補給水と混合され、被処理水として貯留される。
【0098】
前記各蒸気ボイラ26の稼働中において、前記制御部13へは、負荷量検出信号,すなわち前記各燃料供給バルブの開閉信号が入力され、この負荷量検出信号に基づいて、前記各蒸気ボイラ26における処理水の要求量の合計が計算される。
【0099】
ここで、前記各脱酸素装置39,40の切替運転について具体的に説明する。まず、処理水の要求量の合計が前記第一脱酸素装置39の最大処理量未満のときは、この第一脱酸素装置39のみが作動し、処理水を供給する。この際、前記第一脱酸素装置39では、前記第一実施例,前記第二実施例および前記第三実施例で説明した作用と同様に、処理水の要求量の合計に基づいて、前記散布量切替手段4および前記各インバータ7,8がそれぞれ制御される。この状態において、前記第二脱酸素装置40は、停止を継続する。
【0100】
処理水の要求量の合計が前記第一脱酸素装置39の最大処理量を超えたときは、前記第二脱酸素装置40が作動を開始し、不足分の処理水を供給する。この際、前記第一脱酸素装置39では、最大処理量で処理水を供給するように作動する。一方、前記第二脱酸素装置40では、処理水の要求量の合計から前記第一脱酸素装置39の最大処理量を差し引いた量に基づいて、前記散布量切替手段4および前記各インバータ7,8がそれぞれ制御さ
れる。
【0101】
そして、再び処理水の要求量の合計が前記第一脱酸素装置39の最大処理量未満となったときは、前記第二脱酸素装置40が停止する。この際、前記第一脱酸素装置39では、処理水の要求量の合計に基づいて、前記散布量切替手段4および前記各インバータ7,8がそれぞれ制御される。
【0102】
(第五実施例)
前記各実施例では、補給水と復水とが混合された処理水を脱酸素処理するように、前記各脱酸素装置1,39,40を前記給水タンク22の下流側に接続しているが、復水を回収しない場合には、他の位置に接続してもよい。たとえば、前記各脱酸素装置1,39,40を前記軟水装置25および前記給水タンク22の間に接続し、軟水化された被処理水を直接脱酸素処理した後、処理水を前記給水タンク22へ供給するように構成することもできる。また、この構成では、前記給水タンク22の水位変化を多段階に検出し、この水位変化を負荷量検出信号として利用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】この発明の第一実施例に係る脱酸素装置の概略構成図。
【図2】この発明の第二実施例に係る脱酸素装置の概略構成図。
【図3】この発明の第三実施例に係る脱酸素装置の概略構成図。
【図4】この発明の第四実施例に係る脱酸素システムの概略構成図。
【符号の説明】
【0104】
1 脱酸素装置
2 処理槽
3 散布手段
4 散布量切替手段
5 第一ポンプ
6 第二ポンプ
7 第一インバータ
8 第二インバータ
26 蒸気ボイラ(負荷機器)
38 脱酸素システム
39 第一脱酸素装置
40 第二脱酸素装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理槽内へ被処理液を散布する散布手段と、
この散布手段からの散布量を切り替える散布量切替手段と、
この散布量切替手段へ被処理液を供給する第一ポンプと、
前記処理槽内から取り出した処理液を負荷機器へ供給する第二ポンプと、
前記両ポンプの回転数を出力周波数に応じてそれぞれ可変させるインバータとを備え、
前記負荷機器における処理液の要求量に基づいて、前記散布量切替手段および前記インバータを制御することを特徴とする脱酸素装置。
【請求項2】
請求項1に記載の脱酸素装置を複数台設置し、これらの各脱酸素装置からの処理液を負荷機器へ供給する脱酸素システムであって、
前記負荷機器における処理液の要求量に基づいて、前記各脱酸素装置の作動を制御することを特徴とする脱酸素システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−281004(P2006−281004A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−100343(P2005−100343)
【出願日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(000175272)三浦工業株式会社 (1,055)
【出願人】(504143522)株式会社三浦プロテック (488)
【Fターム(参考)】