説明

脱酸素装置

【課題】 脱酸素装置の再起動時における処理液のDO値の悪化を抑制するとともに、省電力を実現することである。
【解決手段】 処理槽16と、この処理槽16内へ被処理液を散布する散布手段17と、この散布手段17へ被処理液を供給する第一ポンプ18と、処理槽16内から取り出した処理液を負荷機器2へ供給する第二ポンプ19と、真空ポンプ16を含む処理槽16内の減圧手段21と、第一ポン18プ,第二ポンプ19および真空ポンプ26を制御する制御手段27とを備える脱酸素装置であって、制御手段27は、第一ポンプ18,第二ポンプ19および真空ポンプ16を第一制御状態で運転する通常運転と、第一制御状態よりも第一ポンプ18,第二ポンプ19および真空ポンプ16の使用電力量を削減するとともに、通常運転開始後、所定の脱酸素性能を得るまでの時間を短縮する第二制御状態で運転する待機運転とを行うように構成したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、液体中の溶存酸素を低減する脱酸素装置に関する。
【背景技術】
【0002】
蒸気ボイラ,排ガスボイラ,冷却器などに代表される冷熱機器への給水系統では、前記冷熱機器の接水部分が給水中の溶存酸素により腐食する。このため、前記冷熱機器が破損することを防止する目的で脱酸素装置が使用されている。また、この脱酸素装置は、ビル,マンションなどの建造物内に配設された給水系統において、給水配管内が給水中の溶存酸素により腐食し、赤水が発生することを防止する目的でも使用されている。さらに、前記脱酸素装置は、半導体製造工場の部品洗浄設備の供給系統において、超音波洗浄の効率を高める目的でも使用されている。
【0003】
前記脱酸素装置として、真空式脱酸素装置が知られている。この真空式脱酸素装置は、まず被処理液を加圧ポンプにより処理槽の上部に設けられたノズルへ供給し、被処理液を前記処理槽内の上部から下部へ向かって散布する。そして、前記処理槽内を真空吸引することにより、被処理液に含まれる溶存酸素を低減させた後、処理液を送水ポンプにより前記処理槽内から取り出し、負荷機器へ供給する構成の装置である。
【0004】
この脱酸素装置の開発過程において、この出願の発明者等は、脱酸素装置の運転台数を増加すべく停止中の脱酸素装置を運転開始(起動)する立上り時に、DO値(溶存酸素濃度)の高い処理液が負荷機器へ供給されてしまうという課題を見出した。
【0005】
この課題を解決するために、本来停止すべき脱酸素装置を停止せずに運転することが考えられる。そうすると、脱酸素装置に使用されているポンプなどの処理機器の使用電力が増加してしまう。
【0006】
【特許文献1】特開平11−5002号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この発明が解決しようとする課題は、脱酸素装置の再起動時における処理液のDO値の悪化を抑制するとともに、省電力を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、前記課題を解決するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、処理槽と、この処理槽内へ被処理液を散布する散布手段と、この散布手段へ被処理液を供給する第一ポンプと、前記処理槽内から取り出した処理液を負荷機器へ供給する第二ポンプと、真空ポンプを含む前記処理槽内の減圧手段と、前記第一ポンプ,前記第二ポンプおよび前記真空ポンプを制御する制御手段とを備える脱酸素装置であって、前記制御手段は、前記第一ポンプ,前記第二ポンプおよび前記真空ポンプを第一制御状態で運転する通常運転と、前記第一制御状態よりも前記第一ポンプ,前記第二ポンプおよび前記真空ポンプの使用電力量を削減するとともに、通常運転開始後、所定の脱酸素性能を得るまでの時間を短縮する第二制御状態で運転する待機運転とを行うように構成したことを特徴としている。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1において、前記第二制御状態が、前記第一ポンプ,前記第二ポンプおよび前記真空ポンプの全部または一部を間欠的に運転することにより行
われることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、脱酸素装置の再起動時におけるDO値の悪化を抑制することができるとともに、省電力を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
つぎに、この発明の実施の形態について説明する。この発明は、蒸気ボイラ,排ガスボイラ,冷却器などの冷熱機器における腐食の抑制,ビル,マンションなどの給水配管における赤水発生の防止,あるいは半導体製造工場の部品洗浄設備における超音波洗浄の効率化などの目的で使用される脱酸素装置において好適に実施される。この脱酸素装置は、脱気装置と称することもできる。
【0012】
この発明の実施形態は、処理槽と、この処理槽内へ被処理液を散布する散布手段と、この散布手段へ被処理液を供給する第一ポンプと、前記処理槽内から取り出した処理液を負荷機器へ供給する第二ポンプと、真空ポンプを含む前記処理槽内の減圧手段と、前記第一ポンプ,前記第二ポンプおよび前記真空ポンプを制御する制御手段とを備える脱酸素装置であって、前記制御手段は、前記第一ポンプ,前記第二ポンプおよび前記真空ポンプを第一制御状態で運転する通常運転と、前記第一制御状態よりも前記第一ポンプ,前記第二ポンプおよび前記真空ポンプの使用電力量を削減するとともに、通常運転開始後、所定の脱酸素性能を得るまでの時間を短縮する第二制御状態で運転する待機運転とを行うように構成したことを特徴とする脱酸素装置である。
【0013】
この脱酸素装置においては、前記負荷機器における処理水などの処理液の要求があると、前記脱酸素装置を前記第一制御状態による通常運転とし、処理液の要求が無くなると、前記脱酸素装置を前記第二制御状態による待機運転に切り替える。前記第二制御状態は、前記第一制御状態よりも前記第一ポンプ,前記第二ポンプおよび前記真空ポンプの使用電力量を削減するとともに、通常運転開始後、所定の脱酸素性能を得るまでの時間を短縮するように構成されているので、待機運転の脱酸素装置を通常運転とする再起動時、所定の脱酸素性能を得るまでの時間を短縮することができるとともに、DO値の高い処理液を前記負荷機器へ供給することが防止される。また、前記脱酸素装置を停止することなく、常時通常運転するものと比較して前記処理機器の使用電力を削減することもできる。
【0014】
この実施の形態の脱酸素装置を更に説明すると、真空式脱酸素装置と称されるもので、たとえば、特開平8−108005号公報に示されるように、被処理液を第一ポンプにより処理槽の上部に設けられたノズルへ供給し、被処理液を前記処理槽内の上部から下部へ向かって下向きに散布する。そして、前記処理槽内を真空ポンプにより真空吸引することにより、被処理液に含まれる溶存酸素を低減させた後、処理液を第二ポンプにより前記処理槽内から取り出し、負荷機器へ供給する構成の装置である。前記被処理液の散布方向は、前記処理槽内の下部から上部へ向って上向きとすることができる。
【0015】
前記通常運転とは、前記第一ポンプ,前記真空ポンプおよび前記第二ポンプを所定の能力で駆動する第一制御状態で運転することにより、所定の脱酸素性能を発揮させる運転である。
【0016】
また、前記待機運転とは、前記第一制御状態よりも前記各処理機器の使用電力量を削減するとともに、通常運転開始後、前記所定の脱酸素性能を得るまでの時間を完全停止(前記第一ポンプ,前記真空ポンプおよび前記第二ポンプを停止)の場合と比較して、短縮(零とする場合も含む。)する,換言すれば、通常運転への移行時、所定の脱酸素性能を速やかに得るように前記処理槽内の脱酸素の環境条件を保持する第二制御状態による運転で
ある。
【0017】
この第二制御状態は、典型的には、前記第一ポンプ,前記真空ポンプおよび前記第二ポンプの全てを間欠的に駆動する運転である。しかしながら、この第二制御状態には、前記第一ポンプおよび前記第二ポンプを停止して前記真空ポンプのみを連続的または間欠的に駆動する態様をも含む。要するに、真空式脱酸素装置の再起動時の立上り性能に影響を与える最も重要な条件は、前記処理槽内の真空度であり、前記第一ポンプ,前記真空ポンプおよび前記第二ポンプの使用電力を低減しつつ前記真空度をできるだけ低下しないように保持する運転が待機運転である。この待機運転は、前記負荷機器の負荷への追従性を高めるという意味で、追従運転と称することができる。
【0018】
前記間欠運転とは、前記処理機器の運転と停止とを交互に繰り返す運転を意味し、運転時間と停止時間とは、保持すべき真空度を設定したうえで、この設定値が保持可能なように予め実験により定める。
【0019】
前記負荷機器は、好ましくは、蒸気ボイラ,排ガスボイラ,冷却器などに代表される冷熱機器とするが、これに限定されるものではなく、ビル,マンションなどの建造物内に配設された給水設備や半導体製造工場の部品洗浄設備を含むものである。
【0020】
この発明は、前記の実施の形態に限定されるものではなく、つぎの脱酸素システム1〜4を含む。
【0021】
(脱酸素システム1)
処理槽と、この処理槽内へ被処理液を散布する散布手段と、この散布手段へ被処理液を供給する第一ポンプと、前記処理槽内から取り出した処理液を負荷機器へ供給する第二ポンプと、前記処理槽内の減圧手段と、前記第一ポンプ,前記第二ポンプおよび前記真空ポンプを制御する制御手段とを備える脱酸素装置を備えた脱酸素システムであって、前記制御手段は、前記第一ポンプ,前記第二ポンプおよび前記真空ポンプを第一制御状態で運転する通常運転と、前記第一制御状態よりも前記第一ポンプ,前記第二ポンプおよび前記真空ポンプの使用電力量を削減するとともに、通常運転開始後、所定の脱酸素性能を得るまでの時間を短縮する第二制御状態で運転する待機運転とを行うように構成し、前記処理槽へ処理液を供給する給液タンクを備え、前記待機運転中の前記処理槽からの処理液を前記給液タンクに戻すことを特徴とする脱酸素システム。
【0022】
この脱酸素システム1によれば、待機運転中の脱酸素装置からのDO値が高い処理液を前記負荷機器へ供給することによる供給処理液のDO値の悪化を防止することができる。また、前記脱酸素装置の処理液を捨てることなく、前記給液タンクに戻して利用することができる。
【0023】
(脱酸素システム2)
前記脱酸素システム1において、前記脱酸素装置と前記給液タンクとの間に予備タンクを備え、前記通常運転中の脱酸素装置からの処理液のうち前記負荷機器へ供給されない液を前記給液タンクに戻すことを特徴とする脱酸素システム。
【0024】
この脱酸素システム1によれば、前記予備タンクにDO値の低い処理液を溜めておくことができ、大量の処理液が必要となった時に、前記予備タンクの処理液を前記負荷機器へ供給することができる。
【0025】
(脱酸素システム3)
それぞれ処理槽と、この処理槽内へ被処理液を散布する散布手段と、この散布手段へ被
処理液を供給する第一ポンプと、前記処理槽内から取り出す第二ポンプと、前記処理槽内の減圧手段と、前記第一ポンプ,前記第二ポンプおよび前記真空ポンプを制御する制御手段とを備え、互いに並列に接続される複数台の脱酸素装置と、これらの脱酸素装置にて生成される処理液を使用する負荷機器と、この負荷機器における処理液の要求量に基づいて、前記脱酸素装置の通常運転対象の台数を制御する台数制御手段とを備える脱酸素システムであって、
前記脱酸素装置は、前記第一ポンプ,前記第二ポンプおよび前記真空ポンプを第一制御状態で運転する通常運転と、前記第一制御状態よりも前記第一ポンプ,前記第二ポンプおよび前記真空ポンプの使用電力量を削減するとともに、通常運転開始後、所定の脱酸素性能を得るまでの時間を短縮する第二制御状態で運転する待機運転とを行うように構成され、前記台数制御手段は、前記要求量に基づいて、前記通常運転対象の台数と、前記待機運転対象の台数を設定して実行することを特徴とする脱酸素システム。
【0026】
この脱酸素システム3によれば、脱酸素装置の台数増加時における脱酸素能力の低下を抑制することができるとともに、省電力を実現することができる。
【実施例1】
【0027】
以下、この発明の実施例1を図面に基づいて詳細に説明する。図1は、実施例1に係る脱酸素装置を1台用いたシステムの概略構成図であり、図2は、同実施例1の待機運転中のタイムチャートを示す図である。実施例1に係る脱酸素システムは、1台の脱酸素装置1と、この脱酸素装置1にて生成される処理水を使用する負荷機器としての4台の蒸気ボイラ2,2と、軟水器4にて処理された軟水を貯留する給水タンク5とを主要部として備える。
【0028】
前記脱酸素装置1と前記給水タンク5の底部とが被処理水ライン(以下、ラインは、経路または流路と称することができる。)6によって接続されている。前記蒸気ボイラは、前記脱酸素装置1と、前記脱酸素装置1から処理水を供給する第一処理水ライン7と第二処理水ライン8とによって接続されている。
【0029】
また、前記第二処理水ライン8は、処理水戻りラインとしての第四処理水ライン10により、予備タンク11を介して前記給水タンク5と接続されている。さらに、前記各蒸気ボイラ2は、互いに並列接続され、前記脱酸素装置1とは、前記脱酸素装置1から処理水を供給する第一処理水ライン7と第二処理水ライン8と第三処理水ライン9とによって接続されている。前記各蒸気ボイラ2は、第一蒸気ライン12、蒸気ヘッダ13と第二蒸気ライン14とにより蒸気使用設備15と接続されている。前記蒸気使用設備15は、ドレン回収ライン(図示省略)により前記給水タンク5と接続するように構成することができる。
【0030】
前記脱酸素装置1は、被処理水の脱気処理後の処理水を所定量貯留する処理槽16と、この処理槽16内へ被処理水をノズルにより噴霧して散布する散布手段17と、この散布手段17へ被処理水を加圧供給する第一ポンプ18と、前記処理槽16内の処理水を前記第一処理水供給ライン7を介して前記各蒸気ボイラ2へ供給する第二ポンプ19と、この第二ポンプ19からの処理水の流れを切り替える三方切替弁20と、前記処理槽16内を減圧する減圧手段21とを備えている。
【0031】
前記三方切替弁20は、処理水の流れを前記各蒸気ボイラ2側(処理水供給側)と戻りライン22側(処理水戻り側)とに選択的に切り替える機能を有している。前記戻りライン22は、前記給水タンク5と接続されている。
【0032】
前記減圧手段21は、一端が前記処理槽16の上部である気層部と接続され他端が大気
開放の減圧ライン24と、この減圧ライン24に設ける逆止弁25および真空ポンプ26とを含んで構成されている。前記逆止弁25は、前記処理槽16方向への流れを阻止する。
【0033】
前記処理槽16は、密閉容器であって、上部空間が被処理水を散布する処理部として機能し、下部空間が処理水を貯留する貯留部として機能するように構成されている。前記貯留部には、水位検出センサ(図示省略)により所定量の処理水が貯留されるように構成されている。
【0034】
また、前記脱酸素装置1は、前記第一ポンプ18,前記第二ポンプ19,前記真空ポンプ26および前記三方切替弁20を制御する脱酸素制御器27を備える。
【0035】
また、前記各蒸気ボイラ2は、高燃焼と低燃焼と運転停止との3位置に制御するボイラ制御器29をそれぞれ備え、各ボイラ制御器29は、ボイラの台数制御器30と接続されている。そして、前記台数制御器30は、前記蒸気使用設備15からの蒸気要求量に基づき、予め記憶した台数制御プログラムにより、前記蒸気ボイラ2,2の台数制御を行うように構成されている。この台数制御プログラムは周知のものとすることができ、たとえば、前記蒸気使用設備15の蒸気要求量を蒸気ヘッダ13の圧力により検出し、この検出圧力値に応じて前記蒸気ボイラ2,2の運転台数を設定するプログラムとすることができる。
【0036】
前記脱酸素制御器27は、前記脱酸素装置1を通常運転と待機運転とどちらの運転も行わない停止(完全停止)とに制御する。
【0037】
前記通常運転は、前記第一ポンプ18,前記第二ポンプ19および前記真空ポンプ26を第一制御状態で運転するものであるが、具体的にはつぎのようにして行われる。前記三方切替弁20を前記処理水供給側へ切り替えて、前記処理槽16内に所定量の処理水が貯留されていない状態では、前記第一ポンプ18,前記第二ポンプ19,前記真空ポンプ26を駆動して、脱気運転を行い、所定量の処理水が貯留されると、前記第一ポンプ18,前記第二ポンプ19,前記真空ポンプ26を停止して脱気運転を停止する。
【0038】
前記待機運転は、前記第一制御状態よりも前記第一ポンプ,前記第二ポンプおよび前記真空ポンプの使用電力量を削減するとともに、通常運転開始後、所定の脱酸素性能を得るまでの時間を短縮する第二制御状態で運転するものであるが、具体的にはつぎのようにして行われる。前記三方切替弁20を前記処理水戻り側へ切り替えて、図2に示すように、前記第一ポンプ18,前記第二ポンプ19,前記真空ポンプ26を第一設定時間T1(たとえば10分間)だけ運転(駆動)し、その後第二設定時間T2(たとえば110分間)だけ停止する運転である。この待機運転時の前記処理槽16の水位制御は、通常運転時と同様にして行うように構成することができる。
【0039】
以下、実施例1に係る脱酸素システムの動作について説明する。まず、原水は、前記軟水器4において、イオン交換により軟水化処理される。この軟水は、補給水として前記給水タンク5へ供給される。
【0040】
前記蒸気ボイラ2,2の稼働中において、前記脱酸素制御器27へは、前記台数制御器30から負荷量検出信号,すなわち前記蒸気ボイラ2,2の燃焼台数信号が入力される。前記脱酸素制御器27は、この燃焼台数に基づき、燃焼台数が1以上のときは、前記脱酸素装置1を通常運転とし、燃焼台数が0となると待機運転に切り替える制御を行う。
【0041】
前記脱酸素装置1の通常運転は、つぎのようにして行われる。前記第一ポンプ5の作動
により、被処理水が前記給水タンク5から前記散布手段17へ供給される。また、前記真空ポンプ26の作動により、散布された水滴が減圧され、被処理水に含まれる溶存酸素が低減される。そして、被処理水から除去された溶存酸素は、前記減圧ライン24を介して系外(大気)へ排気される。溶存酸素が低減された処理水は、前記処理槽16に貯留され、前記第二ポンプ19の作動により、前記三方切替弁20,前記第一処理水ライン7,前記第二処理水ライン8,前記第三処理水ライン9を介して前記各蒸気ボイラ2へ供給される。
【0042】
前記各蒸気ボイラ2へ供給された処理水は、加熱されることによって蒸気となるが、処理水が脱酸素処理されているため、前記各蒸気ボイラ2の水管部(図示省略)や管寄せ部(図示省略)などを形成している非不働態化金属体の溶存酸素による腐食が効果的に抑制される。前記各蒸気ボイラ2で生成された蒸気は、前記第一蒸気ライン12,前記蒸気ヘッダ13,前記第二蒸気ライン14を介して前記蒸気使用設備15へ供給される。
【0043】
この通常運転において、前記蒸気ボイラ2,2における処理水の使用量が減少すると、その減少分は、前記第四処理水ライン10,予備タンク11を介して前記給水タンク5へと循環して供給される。その結果、前記予備タンク11にDO値の低い処理水が貯留される。この貯留された処理水は、前記各蒸気ボイラ2の全ブロー(缶体内の缶水を全て排出する)後などに、多量の処理水が必要とされ、前記脱酸素装置1,1,…からの処理水の供給量が間に合わないときに、流出して前記各蒸気ボイラ2へ供給される。
【0044】
一方、前記脱酸素装置1の待機運転は、図2に示す如く間欠運転により行われる。すなわち、前記三方切替弁20が前記戻り側へ切り替えられ、処理機器である前記第一ポンプ18,前記第二ポンプ19,前記真空ポンプ26を第一設定時間T1だけ運転した後、第二設定時間T2停止し、再び前記第一設定時間T1の運転−前記第二設定時間T2の停止を順次繰り返す。
【0045】
この待機運転においては、前記処理機器の間欠運転のため処理水のDO値が通常運転時のそれよりも高いが、その処理水は、前記三方切替弁20の流路切替作用により、前記各蒸気ボイラ2へ供給されることなく、前記給水タンク5へ戻される。その結果、前記給水タンク5内のDO値を若干下げる作用をなす。
【0046】
そして、前記処理機器の間欠運転により前記処理槽16内の真空度は、所定の値に保持される。運転終了直後が最も真空度が高く(圧力が低く)、その後停止時間の経過と共に真空度が低く(圧力が高く)なる。
【0047】
この実施例1によれば、前記脱酸素装置1の再起動は、待機運転状態から行われるので短時間で通常運転の所定の脱酸素性能を発揮させることができる。その結果、再起動時にDO値の高い処理水を前記各蒸気ボイラ2へ供給することを防止することができる。
【0048】
また、前記脱酸素装置1を停止することなく、通常運転するシステムと比較して、前記処理機器の使用電力を大幅に削減できる。
【実施例2】
【0049】
つぎに、この発明を複数台の脱酸素装置1,1,…を用いた脱酸素システムに適用した実施例2を図面に基づいて詳細に説明する。図3は、実施例2に係る脱酸素システムの概略構成図であり、図4は、同実施例2の2台待機運転中のタイムチャートを示し、図5は、同実施例1の台数制御パターンを示す図である。実施例2に係る脱酸素システムは、互いに並列に接続される4台の脱酸素装置1,1,…と、この各脱酸素装置1にて生成される処理水を使用する負荷機器としての16台の蒸気ボイラ2,2,…と、この蒸気ボイラ
2,2,…からの処理液の要求量に基づいて、前記脱酸素装置1,1,…の通常運転対象の台数と待機運転対象の台数とを制御する台数制御器としての第一制御器3とを主要部として備える。前記各脱酸素装置1は、前記実施例1のそれと同様であるので、その説明を省略する。
【0050】
前記各脱酸素装置1は、互いに並列に接続され、軟水器4にて処理された軟水を貯留する給水タンク5の底部と被処理水ライン6,6,…によってそれぞれ接続されている。前記各蒸気ボイラ2は、互いに並列接続され、前記各脱酸素装置1とは、前記各脱酸素装置1から処理水を供給する第一処理水ライン7,7,…と第二処理水ライン8と第三処理水ライン9,9,…とによって接続されている。
【0051】
また、前記第二処理水ライン8は、処理水戻りラインとしての第四処理水ライン10により、予備タンク11を介して前記給水タンク5と接続されている。さらに、前記各蒸気ボイラ2は、それぞれ第一蒸気ライン12,12,…と、蒸気ヘッダ13と第二蒸気ライン14とにより蒸気使用設備15と接続されている。前記蒸気使用設備15は、ドレン回収ライン(図示省略)により前記給水タンク5と接続するように構成することができる。
【0052】
ここで、この実施例2の制御構成について説明する。前記各脱酸素装置1は、前記第一ポンプ18,前記第二ポンプ19,前記真空ポンプ26および前記三方切替弁20を制御する個別制御器としての第二制御器(前記脱酸素制御器に相当)27を備える。そして、前記第一制御器3からの指令に基づき、前記第二制御器27によって、前記各脱酸素装置1を前記実施例1と同様に、通常運転と、前記実施例1と同様の待機運転と、どちらの運転も行わない停止とに制御する。
【0053】
前記各第二制御器27は、前記第一制御器3と信号ライン(符号省略)により接続されている。そして、前記第一制御器3は、前記蒸気ボイラ2,2,…からの処理水要求量に基づき、予め記憶した第一台数制御プログラムにより、前記脱酸素装置1,1,…の台数制御を行うように構成されている。前記第一制御器3には、前記第一台数制御プログラムによる台数制御運転と前記各脱酸素装置1を手動で制御する手動切替運転との切替を行ったり、前記各脱酸素装置1を切り離して、個別に運転または停止を行う操作器28を備えている。
【0054】
また、前記各蒸気ボイラ2は、高燃焼と低燃焼と運転停止との3位置に制御する第三制御器(前記実施例1のボイラ制御器に相当)29をそれぞれ備え、各第三制御器29は、ボイラの台数制御を行う第四制御器(前記実施例1の台数制御器に相当)30と接続されている。そして、前記第四制御器30は、前記蒸気使用設備15からの蒸気要求量に基づき、予め記憶した第二台数制御プログラムにより、前記蒸気ボイラ2,2,…の台数制御を行うように構成されている。前記第二台数制御プログラムは周知のものとすることができ、たとえば、前記蒸気使用設備15の蒸気要求量を蒸気ヘッダ13の圧力により検出し、この検出圧力値に応じて前記蒸気ボイラ2,2,…の運転台数を設定するプログラムとすることができる。
【0055】
ここで、前記第一台数制御プログラムを図5に基づき説明する。図5は、各蒸発量が2.5t/hの前記蒸気ボイラ2を16台として総蒸発量を40t/hとした場合、100%負荷で処理能力が10t/hの前記脱酸素装置1を4台必要とし、40%負荷で2台の脱酸素装置1,1,…を必要とする例である。この第一台数制御プログラムは、図5に示すように、前記第四制御器29から前記蒸気ボイラ2,2,…の運転(燃焼)台数(低燃を1台,高燃を2台に換算)を検出(入力)して、この運転台数に応じて、前記脱酸素装置1,1,…の前記通常運転の台数と前記待機運転の台数とを設定する。
【0056】
具体的には、第一運転状態では、前記蒸気ボイラ2,2,…の燃焼台数1〜3台に対して、前記脱酸素装置1,1,…の通常運転台数を1台とする。待機運転台数を2台とし、第二運転状態では、前記燃焼台数4〜7台に対して、前記通常運転台数を2台とし、前記待機運転台数を2台とする。第三運転状態では、前記燃焼台数8〜11台に対して、前記通常運転台数を3台とし、前記待機運転台数を1台とする。第四運転状態では、前記燃焼台数12〜16台に対して、前記通常運転台数を4台とし、前記待機運転台数を0台とする。
【0057】
そして、前記第一台数制御プログラムにおいては、つぎの装置のローテーション機能を含ませている。前記待機運転台数が2台の場合は、図4に示すように、第一待機脱酸素装置1と第二待機脱酸素装置1とは運転間隔(運転周期と称することができる。)を互いに時間T3だけずらせている。そして、前記脱酸素装置2,2,…の通常運転台数を増加させる,たとえば第一運転状態から第二運転状態とする場合、第一待機脱酸素装置1および第二待機脱酸素装置1のうち、直近で運転が行われた脱酸素装置1を待機運転から通常運転へ切り替えるように構成している。今、前記第一制御器3が通常運転台数増加を判断した時点をt1とすると、前記第二待機脱酸素装置1が通常運転へ移行するように制御される。
【0058】
また、前記脱酸素装置1,1,…の通常運転台数を減少させる,たとえば第三運転状態から第二運転状態とする場合、通常運転状態にある3台の前記脱酸素装置1,1,…のうち、最も早く通常運転に入ったものを停止させる。この場合、停止対象台数が零で、停止できず待機運転としなければならない場合は、待機運転とする。
【0059】
さらに、前記第一台数制御プログラムにおいては、つぎの装置の異常判定および異常バックアップ機能を含ませている。前記第一制御器3は、前記第二処理水ライン8の溶存酸素濃度(DO値)を検出するセンサ31からの信号を入力して、その検出値が設定値以上となると、通常運転中の前記脱酸素装置1,1,…のいずれかが異常と判定して、前記脱酸素装置1,1,…の全数を通常運転状態とする。その後、通常運転状態にあった複数の脱酸素装置1,1,…を順次1台ずつ停止してゆく。そして、1台を停止したとき前記センサ31による検出値が正常値に戻れば、当該停止した脱酸素装置1を異常と判定し、前記操作器28に異常表示を行い、通常運転対象,待機運転対象から外す。
【0060】
以下、実施例2に係る前記脱酸素システムの動作について説明する。まず、原水は、前記軟水器4において、イオン交換により軟水化処理される。この軟水は、補給水として前記給水タンク5へ供給される。
【0061】
前記蒸気ボイラ2,2,…の稼働中において、前記第一制御器3へは、前記第四制御器30から負荷量検出信号,すなわち前記蒸気ボイラ2,2,…の燃焼台数信号が入力される。前記制御器3は、この燃焼台数に基づき、図5の制御パターンに基づいて、通常運転台数と待機運転台数とを設定し、この設定信号に基づき、前記各第二制御器27へ運転指令信号を送出する。
【0062】
今、図3の第一運転状態であるとすると、1台の前記脱酸素装置1が通常運転に、2台の前記脱酸素装置1,1が待機運転状態に制御される。前記各脱酸素装置1の通常運転については、前記実施例1と同様であるのでその説明を省略する。
【0063】
この第一運転状態において、前記蒸気ボイラ2,2,…における処理水の使用量が減少すると、その減少分は、前記第四処理水ライン10,予備タンク11を介して前記給水タンク5へと循環して供給される。その結果、前記予備タンク11にDO値の低い処理水が貯留される。この貯留された処理水は、前記各蒸気ボイラ2の全ブロー(缶体内の缶水を
全て排出する)後などに、多量の処理水が必要とされ、前記脱酸素装置1,1,…からの処理水の供給量が間に合わないときに、流出して前記各蒸気ボイラ2へ供給される。
【0064】
一方、待機運転状態の前記脱酸素装置1,1は、図4に示す如く間欠運転が行われる。すなわち、前記三方切替弁20が前記戻り側へ切り替えられ、処理機器である前記第一ポンプ18,前記第二ポンプ19,前記真空ポンプ26を第一設定時間T1だけ運転した後、第二設定時間T2停止し、再び前記第一設定時間T1の運転−前記第二設定時間T2の停止を順次繰り返す。そして、二つの前記脱酸素装置2,2は、図4に示すように、運転時期が第三設定時間T3だけずれて運転される。
【0065】
この待機運転においては、前記処理機器の間欠運転のため処理水のDO値が通常運転時のそれよりも高いが、その処理水は、前記各三方切替弁20の流路切替作用により、前記各蒸気ボイラ2へ供給されることなく、前記給水タンク5へ戻される。その結果、前記給水タンク5内のDO値を若干下げる作用をなす。
【0066】
そして、前記処理機器の間欠運転により前記処理槽16内の真空度は、所定の値に保持される。運転終了直後が最も真空度が高く(圧力が低く)、その後停止時間の経過と共に真空度が低く(圧力が高く)なる。
【0067】
処理水の要求量が増加すると、通常運転の台数が図5に示すように、1台から2台へと増加し、前記第一運転状態から前記第二運転状態と制御される。通常運転とされる前記脱酸素装置1は、前記第一運転状態から前記第二運転状態への切替時点前の直近において運転が行われた装置である。こうすることにより、通常運転に切り替えられた際に、通常運転において得られる所定の脱酸素性能を平均して短時間(たとえば、2〜3分程度)で出すことができ、切替時の処理水のDO値の悪化を防止することができる。
【0068】
図4において、さらに処理水の要求量が増加すると、第二運転状態から第三運転状態へ,さらに第四運転状態へと制御が切り替えられる。前記第三運転状態において、前記第二運転状態と異なるのは、通常運転台数が2台から3台となり、待機運転台数が2台から1台となる点だけである。また、前記第四運転状態において、前記第三運転状態と異なるのは、通常運転台数が3台から4台となり、待機運転台数が1台から0台となる点だけである。
【0069】
逆に、処理水の要求量が減少すると、運転状態は前記第四運転状態−前記第三運転状態−前記第二運転状態−前記第一運転状態へと順次制御が切り替えられ、運転台数を減少させる台数制御が行われる。通常運転台数の減少は、通常運転を行っている前記脱酸素装置2が複数台の存在する場合には、最初に通常運転に入った装置を停止する。これにより、特定の前記脱酸素装置1を連続的に長時間使用することを避けることができ、全体として脱酸素システムの長寿命化に貢献する。
【0070】
この実施例1によれば、待機運転状態の前記脱酸素装置1を設けているので、通常運転台数を増加する際に、待機運転状態の前記脱酸素装置1を通常運転に切り替えることで、短時間で通常運転の前記所定の脱酸素性能を発揮させることができる。その結果、通常運転台数を増加させる際にDO値の高い処理水を前記各蒸気ボイラ2へ供給することを防止することができる。
【0071】
また、全ての前記各脱酸素装置1を通常運転するシステムと比較して、前記処理機器の使用電力を大幅に削減できる。ちなみに、前記脱酸素装置1の1台の消費電力を5kWとすると、4台を常に通常運転としていた従来の諸費電力は、20kWとなるのに対して、平均負荷40%で通常運転2台,待機運転2台となり、消費電力は、5kW×2+5kW×5/6
0=10.4kWとなり、(20−10.4)/20×100=48%の省エネを実現することができる。
【実施例3】
【0072】
この発明は、前記実施例1に限定されるものではない。前記実施例1では、前記蒸気ボイラ2の燃焼台数を前記第四制御器30から得るように構成しているが、前記各蒸気ボイラ2から直接的に燃焼状態信号を得るように構成することができる。すなわち、図3の前記第四制御器30を省略して、前記各蒸気ボイラ2を相互に通信可能なネットワーク(図示省略)にて接続し、このネットワーク経由で、前記各蒸気ボイラ2の燃焼状態信号を入力して、燃焼台数を算出して、算出した燃焼台数に基づき前記脱酸素装置2の台数制御を行うように構成している。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】この発明の実施例1に係る脱酸素システムの概略構成図である。
【図2】同実施例1の待機運転を説明するタイムチャート図である。
【図3】この発明の実施例2に係る脱酸素システムの概略構成図である。
【図4】同実施例2の待機運転を説明するタイムチャート図である。
【図5】同実施例1の台数制御のパターンを説明する図である。
【符号の説明】
【0074】
1 脱酸素装置
2 蒸気ボイラ(負荷機器)
5 給水タンク
18 第一ポンプ
19 第二ポンプ
26 真空ポンプ
27 脱酸素制御器(制御手段)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理槽と、この処理槽内へ被処理液を散布する散布手段と、この散布手段へ被処理液を供給する第一ポンプと、前記処理槽内から取り出した処理液を負荷機器へ供給する第二ポンプと、真空ポンプを含む前記処理槽内の減圧手段と、前記第一ポンプ,前記第二ポンプおよび前記真空ポンプを制御する制御手段とを備える脱酸素装置であって、
前記制御手段は、前記第一ポンプ,前記第二ポンプおよび前記真空ポンプを第一制御状態で運転する通常運転と、
前記第一制御状態よりも前記第一ポンプ,前記第二ポンプおよび前記真空ポンプの使用電力量を削減するとともに、通常運転開始後、所定の脱酸素性能を得るまでの時間を短縮する第二制御状態で運転する待機運転とを行うように構成したことを特徴とする脱酸素装置。
【請求項2】
前記第二制御状態が、前記第一ポンプ,前記第二ポンプおよび前記真空ポンプの全部または一部を間欠的に運転することにより行われることを特徴とする請求項1に記載の脱酸素装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−313413(P2007−313413A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−144939(P2006−144939)
【出願日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【出願人】(000175272)三浦工業株式会社 (1,055)
【出願人】(504143522)株式会社三浦プロテック (488)
【Fターム(参考)】