説明

腎腫瘍の分子サブ分類および新規診断マーカーの発見

腎細胞癌のサブタイプ中に示差的に発現される遺伝子をそのポリペプチド産物として開示する。本情報を利用して核酸および抗体プローブおよびこれらの遺伝子およびその産物に特異的なこのようなプローブのセットを作成する。ハイブリダイゼーションおよび免疫学的方法を包含するこれらのプローブを用いた方法を用いて、癌のサブタイプに特徴的なこのような遺伝子の示差的な発現に基づいて対象に由来する腎細胞腫瘍試料のサブタイプを決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
分子生物学および医学分野における本発明は、例えば腎臓癌の特定の型の遺伝子発現プロファイリング、および、例えば患者における診断マーカーを発見するためのプロファイルの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
腎細胞癌(RCC)は成人の腎臓の最も一般的な悪性疾患であり、全悪性疾患の2%および癌関連死亡例の2%に相当する。RCCの発生率は増大しており、その増大は腹部画像化操作法のみの使用の増大により説明することはできない(Clow et al.,JAMA 1999;281(17):1628−31)。
【0003】
RCCは臨床病理学的には非均質な疾患であり、伝統的には、WHOのInternational Histological Classification of Kidney Tumors(Mostif,FK et al.,1998)に従った形態学的特徴に基づいて、明細胞、顆粒細胞、乳頭状、嫌色素性、紡錘細胞、嚢胞性、および集合管癌腫に細分される。明細胞RCC(CC−RCC)は最も一般的な成人の腎新生物であり、全腎新生物の70%に相当し、近位の細管に原発すると考えられている。乳頭状RCCは10〜15%、嫌色素性RCCは4〜6%、集合管癌腫は<1%、そして未分類はRCCの4〜5%に相当する。紡錘細胞RCCは肉腫様RCCとも称され、顕著な紡錘細胞の外観を特徴とし、サブグループのハイグレードの端部を示すと考えられている。顆粒細胞RCCは現在の分類系ではサブタイプとはもはや考えられておらず、世界中で多くの病理学者によりなお使用されている。むしろ顆粒RCCは他のサブタイプに再分類される場合が多い(Storkel et al.,Cancer 1997;80:987−9)。
【0004】
最近の分子遺伝子学の進歩により、RCCのサブタイプは異なる遺伝子的異常に関連付けられている。この関連はRCCの分子診断の提案をもたらした(Burgert et al.,Am.J.Pathol.1996;149:2081−2088)。例えば明細胞RCCの大部分は染色体3の消失およびVHL遺伝子の不活性化突然変異を有するのに対し、乳頭状RCCはしばしば染色体3q、7、12、16、17および20のトリソミーおよびY染色体の消失に関連付けられている。これらの部分はまたMET突然変異も有している。顕著な乳頭の非存在下であっても、これらの異常な染色体の特徴は乳頭状RCCの診断の根拠となっている。逆に、これらの遺伝子的特徴を有さない腎臓癌は乳頭状の構造が顕著である場合も乳頭状RCCとは記載しない(Storkel et al.,1997、前出)。性染色体、染色体1および14の頻繁な消失は腺房状配置大型好酸球よりなる稀に転移する実体である腎膨大細胞腫において検出されている(Presti et al.,Genes Chromosomes Cancer 1996;17:199−204)。腎腫瘍の正確なサブタイプ決定は予後および患者の治療方法の策定のために重要である。
【0005】
マイクロアレイ手法は癌の多くの型の伏在する分子機序に洞察を与える。マイクロアレイ手法により得られる遺伝子発現のプロファイルは癌の分子シグニチャーとして機能でき、そして組織学的サブタイプの判別並びに臨床パラメーターに相関する新しい異なるサブタイプの発見のために使用してよい。このような判別は例えば形質転換の機序、細胞型または腫瘍間での攻撃性における非均質性を反映している。例えば、約100遺伝子が漿液性卵巣癌において粘液性癌腫と比較して示差的に発現されているものとして発見されている(Ono et al.,Cancer Res 2000;60(18):5007−11)。他の試験によれば、急性骨髄性白血病と急性リンパ芽球白血病との間(Golub et al.,Science 1999;286:531−537)、BRCA1とBRCA2突然変異を有する遺伝性の乳癌の間(Hedenfalk et al.,N.Engl.J.Med 2001;344:539−548)、B型肝炎とC型肝炎の陽性肝細胞癌との間(Okabe et al.,Cancer Res 2001;61:2129−37)および良好と不良の予後を有する瀰漫性大細胞Bリンパ腫との間を判別する異なる遺伝子セットが発見されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般的にRCCの診断は組織学的分析により現在は行われている。身体画像化方法、例えば超音波診断法、CTスキャンおよびX線もまた使用されている。これらの治療様式種々の型のRCCを十分判別する能力を欠いており、そして、場合によっては時間と労力を要する。RCCの顕著な非均質性は診断および治療に多大な困難をもたらしている。これが予後を複雑化し、そしてもっとも適切な治療法の選択を妨害している。RCCの型の示差のための使用可能な診断方法を細くすることができる別の方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(発明の説明)
本発明は特定のサブタイプのRCC、例えばCC−RCC、乳頭状RCC、嫌色素性RCC/膨大細胞腫、肉腫様RCC、TCCまたはウィルムス腫(WT)の大部分においてベースライン値と比較して発現がアップレギュレートされる遺伝子および遺伝子産物(分子マーカー)の発見に関する。本明細書においては「ベースライン値」という用語は例えばRCCからの試料と同時に、または遺伝子データベースから入手可能な、同一の対象から、または、正常対象の「プール」から得られるもの等の、RCCまたは正常な腎臓組織の他の型における発現を包含する。例えば、約30の分子マーカーが、試験した他のサブタイプまたは正常な腎臓組織よりもCC−RCCにおいて有意により高度に発現されるものとして本明細書においては発見され;約30のそのような分子マーカーが乳頭状RCCにおいて発見され;約30のそのような分子マーカーが嫌色素性RCC/膨大細胞腫RCCにおいて発見され;約29のそのような分子マーカーが肉腫様RCCにおいて発見され;約74のそのような分子マーカーがTCCにおいて発見され;そして約2のそのような分子マーカーがウィルムス腫において発見される。
【0008】
これらの分子マーカー(分子シグニチャー)はRCCのこれらのサブタイプの間の判別のための診断的試験のための根拠として機能する。例えば、発現された遺伝子および/またはそれによりコードされるタンパク質に特異的な抗体の1つ以上に相当する核酸プローブを用いて腎腫瘍の試料を分析することにより、どのサブタイプに腫瘍が属するかを決定することができる。この種の試験は特定の選択された遺伝子、発現された配列タグ(EST)、遺伝子フラグメント、mRNAおよび本明細書に記載した他のポリヌクレオチドの示差的発現を検出することができる。好ましい実施形態においては、試料は組織(例えばパラフィン包埋ブロックの切片)または組織抽出液(例えば核酸および/またはタンパク質の調製物)である。過剰発現された遺伝子および遺伝子産物はまた治療標的、例えば腎癌のサブタイプの1つにおいて共通して過剰発現される遺伝子または活性が増強されるタンパク質を発見する機能も有する。例えば(1)遺伝子の発現を促進する細胞経路に対して作用することによるなどしてアップレギュレーションを抑制するか、(2)タンパク質産物に対して直接作用するか、または、(3)その遺伝子の産物により媒介される細胞経路における工程をバイパスする薬剤の開発に着目することができる。過剰発現された遺伝子はまた腎腫瘍の異なるサブタイプにより示されることなる代謝過程を説明するための根拠を与え、そして研究用ツールとして使用できる。
【0009】
本発明の1つの特徴は、
(a)表1の配列番号1〜30により表されるセットに属する単離された核酸少なくとも1、2、5または10、またはこれらのフラグメントであって、その核酸がCC−RCCの大部分において過剰発現(アップレギュレート)される遺伝子の核酸に特異的にハイブリダイズするもの、および/または、
(b)表2の配列番号31〜60により表されるセットに属する単離された核酸少なくとも1、2、5または10、またはこれらのフラグメントであって、その核酸が乳頭状RCCの大部分において過剰発現(アップレギュレート)される遺伝子の核酸に特異的にハイブリダイズするもの、および/または、
(c)表3の配列番号61〜90により表されるセットに属する単離された核酸少なくとも1、2、5または10、またはこれらのフラグメントであって、その核酸が嫌色素性RCCの大部分において過剰発現(アップレギュレート)される遺伝子の核酸に特異的にハイブリダイズするもの、および/または、
(d)表5の配列番号91〜119により表されるセットに属する単離された核酸少なくとも1、2、5または10、またはこれらのフラグメントであって、その核酸が肉腫様RCCの大部分において過剰発現(アップレギュレート)される遺伝子の核酸に特異的にハイブリダイズするもの、および/または、
(e)表6の配列番号120〜193により表されるセットに属する単離された核酸少なくとも1、2、5または10、またはこれらのフラグメントであって、その核酸がTCCの大部分において過剰発現(アップレギュレート)される遺伝子の核酸に特異的にハイブリダイズするもの、および/または、
(f)配列番号194および195により表されるセットに属する単離された核酸1または2つ、またはこれらのフラグメントであって、その核酸がウィルムス腫の大部分において過剰発現(アップレギュレート)される遺伝子の核酸に特異的にハイブリダイズするもの;
である。
【0010】
本発明の1つの実施形態において、CC−RCC、乳頭状RCC、嫌色素性/膨大細胞腫RCC、肉腫様RCC、TCCまたはウィルムス腫において示差的に過剰発現されることが以前より報告されている遺伝子に相当する核酸配列は上記した組成物から除外される。
【0011】
上記した組成物中の前記の核酸フラグメントの各々の長さは好ましくは配列の少なくとも約8または少なくとも約15連続ヌクレオチドである。本明細書においては「好ましくは」という用語は「必須ではない」という意味とする。
【0012】
前記した核酸(配列番号で表される)は記載されたRCCサブタイプにおいて過剰発現されるポリヌクレオチドを発見(例えばハイブリダイゼーション試験による)するためのプローブとして使用できる。当業者は目的のポリヌクレオチドにやはり特異的にハイブリダイズする核酸の適当なフラグメントを選択することができる。
【0013】
記載したとおり、(a)、(b)、(c)、(d)または(e)は、核酸の記載されたセットの各々に属する(それぞれ表1、2、3、5および6に属する)例えば約5、8または10核酸の上記の組み合わせのいずれかを含んでよい。好ましくはこのようなセット即ち「サブグループ」内の核酸は共通のコア構造、共通の機能または別の特性を共有している。
【0014】
より詳細には、本発明の組成物の単離された核酸は下記配列群:
(a)配列番号1;配列番号2;配列番号3;配列番号5;および/または配列番号6(好ましくは核酸5つ全てが存在する);および/または、
(b)配列番号31;配列番号33;配列番号34;配列番号35;および/または配列番号36(好ましくは核酸5つ全てが存在する);および/または、
(c)配列番号61;配列番号62;配列番号64;配列番号65;および/または配列番号66(好ましくは核酸5つ全てが存在する);および/または、
(d)配列番号91;配列番号92;配列番号93;配列番号94;および/または配列番号95(好ましくは核酸5つ全てが存在する);および/または、
(e)配列番号120;配列番号121;配列番号122;配列番号123;および/または配列番号125(好ましくは核酸5つ全てが存在する);および/または、
(f)配列番号194および/または配列番号195の1つまたは2つ;
および/または上記した配列の何れか1つの少なくとも約8または少なくとも約15連続ヌクレオチドを含むフラグメント;
の各々により示される核酸の1つ、または2、3、4または5つの何れかの組み合わせを含んでよい。
【0015】
1つの実施形態において(e)における第5の核酸は配列番号124である。
【0016】
本明細書においては、特段の記載が無い限り単数の表記には複数も含まれるものとする。例えば「ある」フラグメントとは、本明細書においては、1つ以上のフラグメントを意味し、これは例えば2つの異なる核酸のフラグメントを包含することができる。
【0017】
別の特徴において本発明の組成物は核酸2つ以上のセット(例えばポリヌクレオチドプローブ)を含んでよく、その各々はCC−RCC、乳頭状RCC、嫌色素性/膨大細胞腫RCC、肉腫様RCC、TCCまたはウィルムス腫において、ベースライン値と比較してアップレギュレート(過剰発現)されるコーディング配列の部分または全部にハイブリダイズする。組成物は例えばこれらの核酸の少なくとも約5つのセット、またはこれらの核酸の少なくとも約10のセットを含んでよい。
【0018】
本発明の組成物の核酸において、螺旋構造の1つ以上のホスフェートは、例えばホスホロチオエート、ホスホリドチオエート、ホスホロアミドチオエート、ホスホロアミデート、ホスホロジイミデート、メチルホスホネート、アルキルホスホトリエステル、3’−アミノプロピル、ホルムアセタールまたはその類縁体のように修飾されていてよい。単離された核酸は哺乳類、好ましくはヒト起源のものであってよい。
【0019】
本発明の1つの実施形態はアレイ、好ましくはマイクロアレイの形態の分子(例えば核酸、タンパク質または抗体)を含む組成物である。アレイに関する詳細は後に記載する。核酸アレイは更にアレイの核酸1つ以上に結合した状態で発現された遺伝子を含む試料に由来するポリヌクレオチド1つ以上を含んでよい。試料は個体対象の腎臓腫瘍から、正常組織から、または両方から得たものであってよい。
1つの実施形態においては、アレイの核酸および発現された遺伝子の試料に由来するポリヌクレオチドは高ストリンジェンシーな条件下における核酸ハイブリダイゼーションに付されている(これにより、試料の特定のポリヌクレオチドに特異的なアレイの核酸がこれらのポリヌクレオチドに特異的にハイブリダイズするようにする)。
【0020】
「単離された」核酸(またはポリペプチド、または抗体)という用語は、本明細書においては、それが天然に存在する形態とは異なる、例えば、緩衝液中、希釈再調製用の乾燥形態、アレイ、キットまたは医薬組成物等の一部としての核酸(またはポリペプチド、または抗体)を意味する。遺伝子に「相当する」または遺伝子に「特異的な」配列とは、その遺伝子の2本鎖形態の鎖の一方と実質的に同様の(例えば高ストリンジェンシーな条件下でハイブリダイズする)配列を意味する。「特異的に」ハイブリダイズするとは、本明細書においては2成分、例えば発現された遺伝子またはポリヌクレオチドおよび核酸、例えばプローブが相互に選択的に結合し、結合を意図しない他の成分に対しては一般的に結合しないことを意味する。このような特異的な相互作用の条件は当業者が日常的に決定できるものである。
【0021】
本発明の別の実施形態は抗体または他の選択的結合相手により認識され、それに結合できる大きさおよび構造のものであるポリペプチドを含む組み合わせ(組成物)である。典型的には、組み合わせ(組成物)は下記成分:
(a)表1の配列番号1〜30により表されるセットに属する核酸により各々がコードされる単離されたポリペプチド少なくとも1、2、5または10、または該ポリペプチドの少なくとも約8または少なくとも約12連続アミノ酸を含む抗原性フラグメント、および/または、
(b)表2の配列番号31〜60により表されるセットに属する核酸により各々がコードされる単離されたポリペプチド少なくとも1、2、5または10、または該ポリペプチドの少なくとも約8または少なくとも約12連続アミノ酸を含む抗原性フラグメント、および/または、
(c)表3の配列番号61〜90により表されるセットに属する核酸により各々がコードされる単離されたポリペプチド少なくとも1、2、5または10、または該ポリペプチドの少なくとも約8または少なくとも約12連続アミノ酸を含む抗原性フラグメント、および/または、
(d)表5の配列番号91〜119により表されるセットに属する核酸により各々がコードされる単離されたポリペプチド少なくとも1、2、5または10、または該ポリペプチドの少なくとも約8または少なくとも約12連続アミノ酸を含む抗原性フラグメント、および/または、
(e)表6の配列番号120〜193により表されるセットに属する核酸により各々がコードされる単離されたポリペプチド少なくとも1、2、5または10、または該ポリペプチドの少なくとも約8または少なくとも約12連続アミノ酸を含む抗原性フラグメント、および/または、
(f)配列番号194および195により表されるセットに属する核酸により各々がコードされる単離されたポリペプチド少なくとも1または2つ、または該ポリペプチドの少なくとも約8または少なくとも約12連続アミノ酸を含む抗原性フラグメント;
を含む。
【0022】
上記した組み合わせ(a)、(b)、(c)、(d)または(e)は、ポリペプチドの記載したセットの各々に属する例えば何れかの約5、8または10ポリペプチドの何れかの組み合わせを含んでよい。好ましくは、このようなサブグループのポリペプチドは共通のコア構造、共通の機能または別の特性を共有している。
【0023】
より詳細には、本発明の組成物の単離されたポリペプチドは下記配列セット:
(a)配列番号1;配列番号2;配列番号3;配列番号5;および/または配列番号6(好ましくはポリペプチド5つ全てが存在する);および/または、
(b)配列番号31;配列番号33;配列番号34;配列番号35;および/または配列番号36(好ましくはポリペプチド5つ全てが存在する);および/または、
(c)配列番号61;配列番号62;配列番号64;配列番号65;および/または配列番号66(好ましくはポリペプチド5つ全てが存在する);および/または、
(d)配列番号91;配列番号92;配列番号93;配列番号94;および/または配列番号95(好ましくはポリペプチド5つ全てが存在する);および/または、
(e)配列番号120;配列番号121;配列番号122;配列番号123;および/または配列番号125(好ましくはポリペプチド5つ全てが存在する);および/または、
(f)配列番号194および/または配列番号195の1つまたは2つ;
および/または上記したポリペプチドの少なくとも約8または少なくとも約12連続アミノ酸を含む抗原フラグメント;
の各々により表される核酸によりコードされるポリペプチド1つ、または2、3、4または5つの何れかの組み合わせを含んでよい。
【0024】
1つの実施形態において(e)における第5のポリペプチドは配列番号124のORFによりコードされる。
【0025】
当業者は、上記した核酸の何れかのオープンリーディングフレームによりコードされるアミノ酸配列を容易に決定できる。
【0026】
例えば、本発明の1つの実施形態は下記ポリペプチド:
(a)表1の配列番号196〜220により表されるセットに属する単離されたポリペプチド少なくとも1、2、5または10、または該ポリペプチド配列の少なくとも約8または少なくとも約12連続アミノ酸を含む抗原性フラグメント、および/または、
(b)表2の配列番号221〜247により表されるセットに属する単離されたポリペプチド少なくとも1、2、5または10、または該ポリペプチド配列の少なくとも約8または少なくとも約12連続アミノ酸を含む抗原性フラグメント、および/または、
(c)表3の配列番号248〜270により表されるセットに属する単離されたポリペプチド少なくとも1、2、5または10、または該配列の少なくとも約8または少なくとも約12連続アミノ酸を含む抗原性フラグメント、および/または、
(d)表5の配列番号271〜296により表されるセットに属する単離されたポリペプチド少なくとも1、2、5または10、または該配列の少なくとも約8または少なくとも約12連続アミノ酸を含む抗原性フラグメント;
を含む組み合わせ(組成物)である。
【0027】
組成物はまた上記した核酸の1つによりコードされるものとして記載されるポリペプチド(例えばeまたはfのポリペプチド)の何れかを包含してよい。
【0028】
上記した(a)、(b)、(c)、(d)または(e)は、ポリペプチドの記載したセットの各々に属する例えば何れかの約5、8または10ポリペプチドの何れかの組み合わせを含んでよい。好ましくは(必須ではないが)、このようなサブグループのポリペプチドは共通のコア構造、共通の機能または別の特性を共有している。
【0029】
より詳細には、本発明の組成物の単離されたポリペプチドは下記配列セット:
(a)配列番号196;配列番号197;配列番号198;配列番号199または200;および/または配列番号201(好ましくはポリペプチド5つ全てが存在する);および/または、
(b)配列番号221;配列番号222;配列番号223;配列番号224;および/または配列番号225(好ましくはポリペプチド5つ全てが存在する);および/または、
(c)配列番号248;配列番号249;配列番号250;配列番号251;および/または配列番号252(好ましくはポリペプチド5つ全てが存在する);および/または、
(d)配列番号91(ユビキチンチオールエステラーゼ);配列番号271または272;配列番号273のORFによりコードされるポリペプチド;配列番号94(H.sapiensα−1(VI)コラーゲン);および/または配列番号274のORFによりコードされるポリペプチド(好ましくはポリペプチド5つ全てが存在する);および/または、
(e)配列番号120(ケラチン14);または配列番号121(コラーゲンVII型、α1);または配列番号122(ケラチン19);または配列番号123(プレキシンB3)および/または配列番号125(インテグリンβ4)のORFによりコードされるポリペプチド(好ましくはポリペプチド5つ全てが存在する)[1つの実施形態においては、ポリペプチドは配列番号124(ラットコラーゲンα1(XII)鎖と同様)のORFによりコードされる];および/または、
(f)配列番号194(ヘパリンスルフェートプロテオグリカン)および/または配列番号195(IGFII)によりコードされるポリペプチド;
により表されるポリペプチド、および/または、その抗原フラグメントの1、2、3、4または5つの何れかの組み合わせを含んでよい。このようなフラグメントは上記した配列の少なくとも約8または少なくとも約12連続アミノ酸を含んでよい。
【0030】
本発明の別の特徴はポリペプチドと同様の目的のために使用してよい本明細書に記載したポリペプチドに特異的な抗体または抗体の組み合わせを含む組成物である。本明細書においては、ポリペプチドに「特異的な」抗体は、ポリペプチドに選択的に結合し、結合を意図しない他のポリペプチドに対しては一般的に結合しない抗体を包含する。このような特異性のための条件は当業者が従来の方法を用いて日常的に決定できるものである。
【0031】
本発明の1つの特徴は特異的な相手であるポリペプチドへの自らの結合を可能にする形態におけるこのような抗体の選択された数を含む組成物である。このような組成物は下記成分:
(a)表1の配列番号1〜30により表される核酸によりコードされるポリペプチドに特異的な、またはその抗原性フラグメントに特異的な、単離された抗体少なくとも1、2、5または10、および/または、
(b)表2の配列番号31〜60により表される核酸によりコードされるポリペプチドに特異的な、またはその抗原性フラグメントに特異的な、単離された抗体少なくとも1、2、5または10、および/または、
(c)表3の配列番号61〜90により表される核酸によりコードされるポリペプチドに特異的な、またはその抗原性フラグメントに特異的な、単離された抗体少なくとも1、2、5または10、および/または、
(d)表5の配列番号91〜119により表される核酸によりコードされるポリペプチドに特異的な、またはその抗原性フラグメントに特異的な、単離された抗体少なくとも1、2、5または10、および/または、
(e)表6の配列番号120〜193により表される核酸によりコードされるポリペプチドに特異的な、またはその抗原性フラグメントに特異的な、単離された抗体少なくとも1、2、5または10、および/または、
(f)配列番号194−195により表される核酸によりコードされるポリペプチドに特異的な、またはその抗原性フラグメントに特異的な、単離された抗体1または2つ;
を含んでよい。ここでもまたフラグメントは好ましくはポリペプチドの少なくとも約8または約12連続アミノ酸残基を含む。
【0032】
上記した組成物の何れかにおける抗体(サブセットを含む)はマイクロアレイ等のアレイの形態で提供してよい。
【0033】
本発明はまたRCC腫瘍から得た試料等の試料中の、ポリヌクレオチドまたはこれらのポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチドの1つ以上を検出(例えば測定または定量)するための方法に関する。方法は、(a)試料への核酸の結合(例えば高ストリンジェンシー条件下のハイブリダイゼーション)または(b)試料ポリペプチドへの抗体の結合を可能にする条件化の本発明の核酸または抗体の組成物との試料の接触を含む。方法は更に、結合している試料ポリヌクレオチドまたは抗体を検出することを含む。好ましくは、ポリヌクレオチドまたはポリペプチドは試料中において過剰発現(アップレギュレート)され、RCCの特定のサブタイプを示すものである。即ちポリヌクレオチドまたはポリペプチドの検出によりRCCの特定のサブタイプが発見される。
【0034】
本発明は下記工程:
(a)対象の腎臓癌から得たポリヌクレオチド試料に高ストリンジェンシーな条件下で本発明の核酸組成物をハイブリダイズさせること(試料は組織フラグメントまたは抽出液の形態であってよい);および、
(b)ハイブリダイゼーションのベースラインと核酸1つ以上にハイブリダイズする試料ポリヌクレオチドの1つ以上の量を比較すること、
を含む対象におけるRCCのサブタイプを決定するための方法を提供する。
【0035】
ベースライン値は例えば同一の対象から、または、正常対象の「プール」から得られる正常腎臓組織に由来するポリヌクレオチドに高ストリンジェンシーな条件下で核酸組成物をハイブリダイゼーションすることにより得てよい。或は、ベースライン値はこのような値の既存のデータベースから得てよい。
【0036】
組成物中の核酸にハイブリダイズした試料ポリヌクレオチドの量は一般的には腎腫瘍中のポリヌクレオチドのレベル、即ち発現を反映している。
【0037】
別の実施形態は下記工程:
(a)核酸またはそのフラグメントの少なくとも1つまたは少なくとも2つに高ストリンジェンシーな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドの対象のRCC腫瘍組織における発現を調べること、ここで、核酸は本明細書においては腎腫瘍の特定の型において過剰発現またはアップレギュレートされるものとして記載されるものであること;
(b)工程(a)において記載した核酸に高ストリンジェンシーな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドの対象の正常腎組織中の発現を調べること;および、
(c)工程(a)における腫瘍組織における発現を工程(b)における正常組織における発現と比較すること;
を含む対象におけるRCCのサブタイプを決定するための方法である。
【0038】
腎細胞癌のサブタイプを決定するための上記方法の別の実施形態においては、腫瘍に由来する(および場合により正常組織に由来する)ポリヌクレオチドを蛍光標識等の検出可能な標識で標識される。
【0039】
上記した方法の他の実施形態はRCCサブタイプと診断される特定のDNA配列の発現の特定のレベル(例えばハイブリダイゼーションの特定のレベルにより表される)の間の関係に基づく。このような関係の例は、下記:
(i)配列1〜30により表される核酸へのハイブリダイゼーションにより測定される発現が正常腎組織と比較して腫瘍組織において例えば少なくとも5倍、アップレギュレートされている場合に、腎腫瘍はCC−RCCであり;
(ii)配列31〜60により表される核酸へのハイブリダイゼーションにより測定される発現が正常腎組織と比較して腫瘍組織において例えば少なくとも3倍、アップレギュレートされている場合に、腎腫瘍は乳頭状RCCであり;
(iii)配列61〜90により表される核酸ポリヌクレオチドへのハイブリダイゼーションにより測定される発現が正常腎組織と比較して腫瘍組織において例えば少なくとも5倍、アップレギュレートされている場合に、腎腫瘍は嫌色素性RCC/膨大細胞腫であり;
(iv)配列91〜119により表される核酸へのハイブリダイゼーションにより測定される発現が正常腎組織と比較して腫瘍組織においてアップレギュレートされている場合に、腎腫瘍は肉腫様RCCであり;
(v)配列120〜193により表される核酸へのハイブリダイゼーションにより測定される発現が正常腎組織と比較して腫瘍組織においてアップレギュレートされている場合に、腎腫瘍は移行上皮癌(TCC)であり;そして、
(vi)配列194〜195により表される核酸へのハイブリダイゼーションにより測定される発現が正常腎組織と比較して腫瘍組織においてアップレギュレートされている場合に、腎腫瘍はウィルムス腫(WT)である。
【0040】
本発明の別の特徴は、本明細書において論じるとおりRCCのサブタイプを有する対象の大多数において発現がアップレギュレートされるポリペプチド(タンパク質)産物の1つ以上を検出することを含む、対象におけるRCCのサブタイプを決定するための方法である。このような検出は、ポリペプチドの存在を決定すること、および/またはその量を測定することを包含する。
【0041】
本発明の別の特徴は下記工程:
(a)抗体の少なくとも1つがその特異的な相手であるポリペプチドに特異的に結合するために有効な条件下で、腎臓癌から得たポリペプチド試料に本発明の抗体組成物を接触させること;および、
(b)組成物中の抗体1つ以上への試料中のポリペプチド1つ以上の結合の量をベースライン値と比較すること;
を含む対象におけるRCCのサブタイプを決定するための方法である。試料は組織フラグメントまたは抽出液であってよい。
【0042】
ベースライン値は例えば同一の対象から、または、正常対象の「プール」から得られる正常腎臓組織に由来するポリペプチド試料に同様の条件下で抗体組成物を接触させることにより得てよい。
【0043】
抗体組成物中の特異的な抗体に結合した試料ポリペプチドの量は一般的には腎腫瘍中のポリペプチドのレベルを反映している。
【0044】
例えば、1つの実施形態は下記工程:
(a)RCC組織またはその抽出液を、下記:
(i)CC−RCC中において比較的過剰発現されるタンパク質に抗体が特異的に結合する条件下における、表1の配列番号1〜30により表される核酸によりコードされるポリペプチド1つに特異的な抗体、または、ポリペプチド2つ以上に特異的な抗体、または、ポリペプチドのフラグメントに特異的な抗体;および/または、
(ii)乳頭状RCC中において比較的過剰発現されるタンパク質に抗体が特異的に結合する条件下における、表2の配列番号31〜60により表される核酸によりコードされるポリペプチド1つに特異的な抗体、または、ポリペプチド2つ以上に特異的な抗体、または、ポリペプチドのフラグメントに特異的な抗体;および/または、
(iii)嫌色素性RCC/膨大細胞腫において比較的過剰発現されるタンパク質に抗体が特異的に結合する条件下における、表3の配列番号61〜90により表される核酸によりコードされるポリペプチド1つに特異的な抗体、または、ポリペプチド2つ以上に特異的な抗体、または、ポリペプチドのフラグメントに特異的な抗体;および/または、
(iv)肉腫様RCCにおいて比較的過剰発現されるタンパク質に抗体が特異的に結合する条件下における、配列番号92、93および/または103により表される核酸によりコードされるポリペプチド1つに特異的な抗体、または、ポリペプチド2つ以上に特異的な抗体、または、ポリペプチドのフラグメントに特異的な抗体;および/または、
(v)TCCにおいて比較的過剰発現されるタンパク質に抗体が特異的に結合する条件下における、配列番号120、121、122、125および/または126により表される核酸によりコードされるポリペプチド1つに特異的な抗体、または、ポリペプチド2つ以上に特異的な抗体、または、ポリペプチドのフラグメントに特異的な抗体;および/または、
(vi)ウィルムス腫において比較的過剰発現されるタンパク質に抗体が特異的に結合する条件下における、配列番号194−195により表される核酸によりコードされるポリペプチド1つまたは両方に特異的な抗体、または、ポリペプチドのフラグメントに特異的な抗体;
と接触させること;
(b)該組織または抽出液に結合した抗体を検出または測定すること;
(c)(a)(i)−(a)(vi)の該抗体の1つ以上に例えば該対象から、または正常腎臓組織のプールから得られた正常腎臓組織またはその抽出液を接触させること、
(d)該正常腎臓組織または抽出液に結合した抗体を検出または測定すること、および、
(e)工程(b)および(d)における結合の量を比較すること、
を包含する対象におけるRCCのサブタイプを決定するための方法である。
【0045】
別の実施形態においては、本明細書に記載した抗体組成物の何れか(例えば抗体のサブセット)は上記(a)(i)−(a)(vi)に記載した抗体と交換してよい。
【0046】
RCCサブタイプを決定するための上記方法のいずれかにおいて、組成物はマイクロアレイ等のアレイの形態であってよい。
【0047】
本発明の別の特徴は本発明の核酸の組成物(例えばアレイの形態)および場合により被験ポリヌクレオチドへの組成物中の核酸のハイブリダイゼーションを促進するか、または、被験ポリヌクレオチドの検出(例えば蛍光の検出)を促進する試薬1つ以上を含むキットである。キットは本発明の核酸のアレイ、目的の被験ポリヌクレオチドへのアレイ内の核酸のハイブリダイゼーションを実施するための手段、およびハイブリダイゼーションの結果を読み取るための手段を含んでよい。ハイブリダイゼーション結果は蛍光の単位であってよい。
【0048】
別のキットは本発明の抗体の組成物(例えばアレイの形態)および場合により被験ポリペプチドとの抗体の結合を促進するか、抗体結合の検出を促進する試薬1つ以上を含む。
【0049】
本発明のキットはハイブリダイゼーションまたは抗体結合を実施するための取扱説明書を含んでよい。
【0050】
本発明のキットの別の任意の要素は適当な緩衝剤、培地成分等;試験結果を保存および/または評価するためのコンピューターまたはコンピューター読み取り可能な媒体;容器;または包装材料を包含する。適当な対照実験を行うための試薬も包含してよい。キットの試薬は、例えば凍結乾燥された形態または安定化された液体として試薬が安定となる容器中に入れてよい。試薬はまた単回使用の形態、例えば診断用途のための単回反応形態であってよい。
【0051】
本明細書においては、「核酸」および「ポリヌクレオチド」という用語は、DNA(cDNAを含む)およびRNAの両方、並びにペプチド核酸(PNA)またはロックされた核酸(LNA)を指すものとする。核酸およびポリヌクレオチドという用語は特定の数のヌクレオチドに限定する意図はなく、従ってオリゴヌクレオチドと長さにおいて重複する。遺伝子発現分析のための核酸はリボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチド、双方または後述するそれらの類縁体を包含する。プローブは核酸であるか、または核酸を包含してよく、長さは限定されない。好ましい長さは後に記載する。本発明の核酸は2本鎖および部分または完全1本鎖の分子を包含する。好ましい実施形態においては、遺伝子発現のプローブは目的の遺伝子により発現されるmRNA標的に相補的な、または対向する鎖に相補的(例えばmRNAから発生した第1の鎖のcDNAに相補的な)な1本鎖核酸分子を包含する。
【0052】
本発明は組織試料またはその抽出液中の目的の標的遺伝子(より一般的にはポリヌクレオチドと称する)をプローブするため、そしてその相対的な発現を測定するために核酸を使用する。好ましい組織は腎腫瘍組織である。発現は腎腫瘍の異なる型または正常な腎組織中の同様の標的の発現と比較する。
【0053】
本発明の核酸を含む組成物は種々の形態のいずれをとることもできる。例えば単離された核酸の組成物は溶液(例えば水溶液)であることができ、そして目的の試料から得たポリヌクレオチドへの溶液中でのハイブリダイゼーションに付すことができる。溶液ハイブリダイゼーションの方法は当該分野でよく知られている。
【0054】
或は、核酸はアレイの形態であることができる。本明細書においては「アレイ」という用語は表面上に置かれたアドレスを有するアクセス可能な空間的に分かれた、そして、判別可能な分子の、順序付けられた(例えば幾何学的に順序付けられた)配置を意味する。マクロアレイまたはマイクロアレイとして一般的には記載されるアレイは、「マイクロアレイ」の場合の約5つから900以上もの多数のプローブにわたる何れかの数の個々のプローブの部位を含むことができる。マクロアレイは直径約300μm以上の試料スポットを含み、そして、既存のゲルおよびブロットスキャナーにより容易に画像化することができる。マイクロアレイ中の試料スポットの大きさは典型的には直径<200μmであり、これらのアレイは通常は数千個のスポットを含む。マイクロアレイは特殊なロボット光学および画像化装置を必要とし、これらは一般的には市販されており、当該分野でよく知られている。
【0055】
何れかの適当な適合性のある表面を本発明に関連して使用することができる。表面は通常は固体であり、種々の有機または無機の物質またはその組み合わせ、例えばプラスチック、例えばポリプロピレンまたはポリスチレン;セラミック;シリコン;(溶融)シリカ、石英またはガラスであって顕微鏡のスライドガラスまたはカバーガラスの厚みを有するもの;紙、例えば濾紙;ジアゾ化セルロース;ニトロセルロース;ナイロンメンブレン;またはポリアクリルアミドゲルパッドのいずれかにより作成できる。光に対して透過性である基体は光学検出方法と共に使用する場合に有用である。1つの実施形態においては、表面はマルチウェル、例えば組織培養ディッシュ、例えば96(またはこれより多い)ウェルのマイクロプレートのプラスチック表面である。表面の形状は重要ではない。例えば平板の正方形、長方形または円状の表面;曲面;または三次元の表面、例えばビーズ、粒子、鎖、沈殿物、管、球等であることができる。マイクロ液体装置もまた本発明に包含される。
【0056】
好ましい実施形態においては、核酸を含む組成物はマイクロアレイの形態である。マイクロアレイは空間的に分割された試料またはプローブ(例えば約15〜約2000ヌクレオチド長の既知配列のcDNAまたはオリゴヌクレオチド)の整列された配置であり、これにより大量の平行した遺伝子発現分析が可能となる(Lockhart DJ et al.,Nature(2000)405(6788):827−836)。プローブは好ましくは固体の基体に固定化されており、そして相補ポリヌクレオチド鎖とハイブリダイズするために使用できる(Phimister,Nature Genetics(1999)21(上出):1−60)。
【0057】
アレイハイブリダイズ分析の根拠となる概念はワトソンクリック塩基対形成の規則に従った塩基対形成(ハイブリダイゼーション)による。マイクロアレイ技術は、好ましくは蛍光標識による標識、そしてその後のマイクロアレイフォーマット中の固体支持体に固定化されたその相補物へのハイブリダイゼーションにより、分析対象となる試料中に存在する特定の実体および配列の核酸を分割する過程を自動化する。
【0058】
特定の用途のための物質は必ずしもキット形態において好都合に入手できるわけではない。本発明はRCC試料の分析および腎腫瘍のサブクラスの決定のために有用であるマイクロアレイを含むアレイを提供する。
【0059】
DNAマイクロアレイ(DNA「チップ」)は好ましくはガラス上で高速ロボット工学により作成する(ただしナイロンまたは他のプラスチックの基体も使用される)。単一のDNAチップを用いた実験により、数全の遺伝子に関して同時に情報が得られ、伝統的な方法と比較してスループットが劇的に増大する(Reichert et al.,(2000)Anal.Chem.72:6025−6029)。
【0060】
2つのDNAマイクロアレイフォーマットが好ましい。
【0061】
フォーマットI:cDNAプローブ(例えば500〜5000塩基)をロボットによるスポッティングを用いてガラス等の固体の表面に固定化し、個別にまたは混合物としての標的のセットに曝露する。この方法は伝統的には「DNAマイクロアレイ」と呼ばれている(Ekins,R et al.,Trends in Biotech(1999)17:217−218)。
【0062】
フォーマットII:「天然」のオリゴまたはポリヌクレオチド(20〜80塩基のオリゴマー)、オリゴヌクレオチド類縁体であって例えばホスホロチオエート、メチルホスホネート、ホスホロアミデートまたは3’−アミノプロピル骨格を有するもの、またはペプチド核酸(PNA)であるプローブのアレイ。プローブはインサイチュ(オンチップ)で、または従来の合成とその後のオンチップ固定化のいずれかにより合成してよい。
【0063】
アレイは(1)検出可能に標識された、好ましくは蛍光標識された試料核酸(典型的にはDNA)を含む分析対象に曝露し、(2)ハイブリダイズさせ、そして(3)相補配列の実体および/または遍在性を測定する。
【0064】
【表1】

本発明の1つの実施形態は、ピクセルの行がセット1つからの別個のプローブ1つの複製に相当するように、所定の順序で固体表面に固定化されたプローブのセット1つ以上からのcDNA少なくとも1つのマトリックスを含む、RCCのサブタイプの間の判別のために有用なマイクロアレイに関し、そのプローブは配列番号1〜30により表されるセット;配列番号31〜60により表されるセット;配列番号61〜90により表されるセット;配列番号91〜93により表されるセット;配列番号94〜98により表されるセットおよび/または配列番号99〜100により表されるセットのいずれかであり、
ここで、各セットのプローブは腎細胞癌(RCC)の異なるサブタイプにおいて示差的に発現される核酸配列に相補的であり、その核酸配列は高ストリンジェンシーな条件下でプローブにハイブリダイズする。
【0065】
原発腫瘍組織の標的核酸の分析のためには、本発明の好ましい分析対象は保存される前の組織生検材料から、または、標準的な培地中で保存および/または培養されてよい原発腫瘍の新鮮凍結腫瘍組織から単離される。発現試験のためには、ポリ(A)含有mRNAを市販のキット、例えばInvitrogen、OligotexまたはQiagenから入手できるものを用いて単離する。単離されたmRNAは直接試験されるか、好ましくは標識されたヌクレオチドの存在下にcDNAに逆転写する。蛍光cDNAは一般的には逆転写酵素(例えばGIBCO−BRLのSuperscriptII逆転写キット)および蛍光標識をコンジュゲートしたヌクレオチドを用いて合成される。好ましい蛍光標識はdUTPおよび/またはdCTPにコンジュゲートしたCy5(Amersham)である。PCRによる等、標的の増幅の他の任意の方法もまた本発明の方法に包含される。
【0066】
1つの実施形態において、本発明の方法は、約15塩基〜完全長cDNA、例えば約2000塩基の何れかの固定化されたcDNAプローブを使用する。好ましいプローブは約100塩基を有する。旨適なハイブリダイゼーション条件(温度、pH、イオンおよび塩濃度、および、インキュベート時間)は律速段階としての最短プローブの長さにより異なり、そして、当該分野で従来行われている通り、上記したパラメーターを変更することにより連続的に調節することができる。好ましい実施形態においては、本発明のプローブは高ストリンジェンシーな条件下で目的の標的ポリヌクレオチドに特異的にハイブリダイズする。本明細書においては、「高ストリンジェンシー条件」または「高ストリンジェントハイブリダイゼーション条件」とは、核酸(例えば目的のポリヌクレオチドと核酸プローブ)の間に少なくとも約95%、好ましくは約97〜100%のヌクレオチド相補性(同一性)が存在する場合に、ハイブリダイゼーションが起こる何れかの条件を意味する。しかしながら、所望の目的に応じて、より低い相補性、例えば約90%、85%、75%、50%等を必要とするハイブリダイゼーション条件を選択することもできる。適切なハイブリダイゼーション条件は、例えば、6XSSPE−T(0.9M NaCl、60mM NaHPO、6mM EDTAおよび0.05%TritonX−100)等の緩衝液中、約10分〜約少なくとも3時間(好ましい実施形態においては、少なくとも約15分)、約4℃〜約37℃の温度で行うハイブリダイゼーションを包含する。
【0067】
本明細書に記載した幾つかのプローブ配列は遺伝子または遺伝子フラグメントに相補的なcDNAであり;一部はESTである。当業者の知る通り、特定の遺伝子について選択されたプローブは完全長のコーディング配列またはその何れかのフラグメントであって少なくとも約8または少なくとも約15ヌクレオチドを有する。即ち、完全長の配列が既知である場合、医師がその配列の何れかの適切なフラグメントを選択できる。初回の結果が部分配列情報(例えばESTプローブ)を用いて得られた場合、そして、そのESTがフラグメントとなる完全長の配列が入手できる(例えばゲノムデータベース中)ようになった場合、当業者は長さが少なくとも約8または少なくとも約15ヌクレオチドである限り、初回のESTよりも長いフラグメントを選択できる。
【0068】
本発明のアレイは、発現を分析すべき遺伝子に対し、何れかの長さ(約15塩基〜完全なコーディング配列)のハイブリダイズ可能なフラグメントを有する核酸プローブ1つ以上を含む。分析の目的のためには、完全長の配列が既知である必要はなく、その理由は、当業者であれば、所定のESTの配列および既知のデータマイニング、バイオインフォマティクスおよびDNA配列決定方法を用いて特段の実験をすることなく完全長の配列を得る方法を知っているからである。
【0069】
本発明の核酸プローブはネイティブのDNAまたはRNA分子またはDNAまたはRNAの類縁体であってよい。本発明は何れかの特定のDNAまたはRNA類縁体の使用に限定されず;むしろ、何れのものも、それが被験試料中の相補DNA鎖(またはmRNA)に十分ハイブリダイズすることができ、ヌクレアーゼに対する十分な体制および使用するハイブリダイゼーションプロトコルにおいて安定性を有する限り、有用である。DNAまたはRNAはヌクレオシド間結合を修飾することにより(例えばメチルホスホネートまたはホスホロチオエート)、または、修飾されたヌクレオシドを取り込むことにより(例えば2’−O−メチルリボースまたは1’−α−アノマー)、後に記載するとおりインビボのヌクレアーゼ分解に対してより耐性としてよい。
【0070】
核酸は少なくとも1つの修飾された塩基の部分、例えば5−フルオロウラシル、5−ブロモウラシル、5−クロロウラシル、5−ヨードウラシル、ヒポキサンチン、キサンチン、4−アセチルシトシン、5−(カルボキシヒドロキシメチル)ウラシル、5−カルボキシメチルアミノメチル−ω−チオウリジン、5−カルボキシメチル−アミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、β−D−ガラクトシルケオシン、イノシン、N6−イソペンテニルアデニン、1−メチルグアニン、3−メチル−シトシン、5−メチルシトシン、N6−アデニン、7−メチルグアニン、5−メチルアミノメチルウラシル、5−メトキシアミノ−メチル−2−チオウラシル、β−D−マンノシルケオシン、5−メトキシ−カルボキシメチルウラシル、5−メトキシウラシル−2−メチルチオ−N6−イソペンテニルアデニン、ウラシル−5−オキシ酢酸、ブトキソシン、シュードウラシル、ケオシン、2−チオ−シトシン、5−メチル−2−チオウラシル、2−チオウラシル、4−チオウラシル、5−メチルウラシル、ウラシル−5−オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル−t−オキシ酢酸、5−メチル−2−チオウラシル、3(3−アミノ−3−N−2−カルボキシプロピル)ウラシルおよび2,6−ジアミノプリンを含んでよい。
【0071】
核酸は少なくとも1つの修飾された糖部分、例えばアラビノース、2−フルオロウラシル、キシルロースおよびヘキソースを含んでよい。
【0072】
更に別の実施形態においては、核酸プローブは例えば以下の構造:ホスホロチオエート、ホスホリドチオエート、ホスホロアミドチオエート、ホスホロアミデート、ホスホロジイミデート、メチルホスホネート、アルキルホスホトリエステル、3’−アミノプロピルおよびホルムアセタールまたはこれらの類縁体の1つを有するヌクレオチドから合成された修飾されたホスフェート骨格を含む。
【0073】
更に別の実施形態においては、核酸プローブは、通常のβ−単位とは逆に、鎖が相互に平行して走っている、相補RNAと特異的な2本鎖ハイブリッドを形成する、α−アノマーオリゴヌクレオチドである(Gautier et al.,1987,Nucl.Acid Res.15:6625−6641)。
【0074】
核酸プローブ(例えばオリゴヌクレオチド)は別の分子、例えばペプチド、ハイブリダイゼーショントリガー交差結合剤、ハイブリダイゼーショントリガー切断剤等にコンジュゲートしてよく、これらは全て当該分野でよく知られている。
【0075】
本発明の核酸プローブ(オリゴヌクレオチド)は例えば自動DNA合成装置(例えばBiosearch,Applied Biosystems等から入手できるもの)を用いることにより当該分野において知られた標準的な方法で合成してよい。実施例として、ホスホロチオエートオリゴヌクレオチドはStein et al.,Nucl.Acids Res.(1998)16:3209の方法により合成してよく、メチルホスホネートオリゴヌクレオチドは制御多孔性ガラス重合体支持体(Sarin et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1988)85:7448−7451)を用いることにより調製できる。
【0076】
本発明はまた目的のポリヌクレオチド標的に対して少なくとも約75%同一である、または少なくとも約80%、90%、95%または99%それに相補的なプローブ分子に関する。従来のアルゴリズムを用いて、例えばLipmann and Pearson(Proc.Natl.Acad.Sci.80:726−730,1983)またはMartinez/Needleman−Wunsch(Nucl.Acid.Research 11:4629−4634,1983)の記載の通り、%相補性を測定することができる。
【0077】
本発明の核酸は種々の従来の方法のいずれかにより検出してよい。好ましい検出可能な標識は、放射性核種、フルオレッサー、フロロゲン、発色団、クロモゲン、ホスホレッサー、ケミルミネッサーまたはバイオルミネッサーを包含する。フルオレッサーまたはフロロゲンの例は、フルオレセイン、ローダミン、ダンシル、フィコエリスリン、フィコシアニン、アロフィコシアニン、o−フタルデヒド、フルオレスカミン、フルオレセイン誘導体、オレゴングリーン、ローダミングリーン、ロドールグリーンまたはテキサスレッドである。
【0078】
一般的な蛍光標識は、フルオレセイン、ローダミン、ダンシル、フィコエリスリン、フィコシアニン、アロフィコシアニン、o−フタルデヒドおよびフルオレスカミンを包含する。最も好ましいものは、後の実施例において記載する標識である。
【0079】
蛍光団は蛍光を発するためには特定の波長の光により励起されなければならない。例えばHaugland,Handbook of Fluorescent Probes and Research Chemicals,Sixth Ed.,Molecular Probes,Eugene,OR,1996を参考にできる。
【0080】
フルオレセイン、フルオレセイン誘導体およびフルオレセイン様分子、例えばオレゴングリーンTMおよびその誘導体、ローダミングリーンTMおよびロドールグリーンTMは、イソチオシアネート、スクシンイミジルエステルまたはジクロロトリアジニル反応性基を用いてアミン基にカップリングする。同様に、蛍光団はマレイミド、ヨードアセトアミドおよびアジリジン反応性基を用いてチオールにカップリングしてもよい。窒素上の置換基を有する基本的にはローダミングリーンTM誘導体である長波長ローダミンは、とりわけ最も光安定性のある既知の蛍光標識試薬である。それらのスペクトルは4〜10のpHの変動により影響されず、多くの生物学的用途のためのフルオレセインにはない重要な利点である。このグループはテトラメチルローダミン、X−ローダミンおよびテキサスレッドTM誘導体を包含する。他の好ましい蛍光団は紫外線により励起されるものである。例としては、カスケードブルー、クマリン誘導体、ナフタレン(そのメンバーにはダンシルクロリドが含まれる)、ピレンおよびピリジルオキサゾール誘導体が挙げられる。
【0081】
本発明は腎臓癌の種々のサブタイプにおいて関与が示唆されている重要な経路を推定する場合のマイクロアレイ等のアレイおよび遺伝子発現のより広範な手法のための根拠となる。例えば、本明細書に記載した発現パターンは約70の腎腫瘍の分析に基づいている、追加の患者試料が分析されるにつれて、より大きいデータベースが発生し、これは種々の型の腎臓癌の間の代謝の相違に関する更に多くの情報を提供する。他の要因、例えば臨床転帰との相関は更なる理解を可能にする。
【0082】
本発明の別の特徴は、本明細書において考察するとおりRCCのサブタイプの1つに罹患した対象の大半においてその発現がアップレギュレートされるタンパク質産物の1つ以上の存在を検出すること、および/またはその量を定量することを含む、対象におけるRCCのサブタイプを決定するための方法に関する。「タンパク質」および「ポリペプチド」という用語は本明細書において互換的に使用する。
【0083】
このようなタンパク質の例は本発明のタンパク質含有組成物の成分として上記したものである。タンパク質は例えば分泌されたタンパク質、外皮である細胞を透過性とすることにより接触可能とした細胞内タンパク質または細胞表面発現タンパク質であることができる。体液中、または好ましくは対象の腎臓から得た組織または細胞の試料中のタンパク質産物の存在または量を測定する。タンパク質産物の量が、正常な対象の体液中、または対象の正常(非癌性)腎臓試料中、または比較対照用の正常値(例えば正常対象のプールより得たもの)と比較して上昇している場合、腎細胞癌の特定のサブタイプの存在が示されている。その過剰発現がRCCの特定のサブタイプを示すタンパク質については本明細書に記載するとおりである。
【0084】
腎臓試料等の患者試料の調製、および、それに含まれるタンパク質の検出および/または定量の方法は、従来通りであり、当該分野でよく知られている。このような方法の一部は本明細書において記載するとおりである。
【0085】
特定の好ましい方法においては、タンパク質は免疫学的方法、例えば免疫試験(EIA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、免疫蛍光顕微鏡または免疫組織学的方法により検出され、これらの試験方法の全ては全く従来通りである。
【0086】
種々の抗体のいずれかをこのような方法において使用できる。このような抗体は例えばポリクローナル、モノクローナル(mAb)、組み換え、ヒト化または部分ヒト化、1本鎖、Fabおよびこれらのフラグメントを包含する。抗体は何れかのアイソタイプ、例えばIgM、種々のIgGアイソタイプ、例えばIgG1’IgG2a等であることができ、そしてそれらは抗体を生成する何れかの動物種、例えばヤギ、ウサギ、マウス、ニワトリ等から得られる。ポリペプチドに「特異的な」抗体とは、抗体が、完全長ポリペプチド中、またはそのペプチドフラグメント中のいずれかに存在するアミノ酸またはエピトープの定義された配列を認識することを意味する。
【0087】
抗体はよく知られた従来の方法に従って調製できる。例えばGreen et al.,Production of Polyclonal Antisera,Immunochemical Protocols (Manson,ed),(Human Press 1992);Coligan et al.,Current Protocols in Immunology,Sec.2.4.1(1992);Kohler & Milstein,Nature 256:495(1975);Coligan et al.,sections 2.5.1−2.6.7;Harlow et al.,Antibodies:A Laboratory Manual,page726(Cold Spring Harbor Laboratory Pub.1988)を参考にすることができる。ヒト化または部分ヒト化抗体および抗体フラグメントの調製方法および抗体の精製方法は従来通りである。
【0088】
免疫組織化学的手法において使用するための抗体の旨適濃度の決定は標準的な方法、即ち適切な組織試料に対して被験抗体を力価測定することにより達成される。当該分野で知られる通り、抗体の調製物は、免疫組織化学においてはEIAおよび他のこのような免疫試験の場合よりも高濃度で使用されるのが一般的である。
【0089】
本明細書に記載する分子プロファイリング情報は、本明細書に記載した種々の腎臓癌サブタイプに特徴的な分子の改変または撹乱を是正またはバイパスする能力を有するものとして選択される薬剤の発見の目的のために適用することもできる。多くの方法が使用できる。
【0090】
1つの実施形態においては、RCC細胞系統を標準的な方法を用いて腫瘍から作成し、そして本方法を用いてプロファイリングする。好ましい細胞系統はそれらの由来元である原発腫瘍の発現プロファイルを維持したものである。1種または数種のRCC細胞系統を「一般的」パネルとして使用してよく;或は、または更に加えて、個体対象から得た細胞系統を作成して使用してよい。これらの細胞系統は選択された遺伝子の発現を改変するその能力に関して、好ましくは高スループットスクリーニング(HTS)により化合物をスクリーニングするために使用される。典型的には、種々の商業的入手元から得られる小分子ライブラリをHTSプロトコルにより試験する。
【0091】
細胞系統の細胞における分子の改変は本明細書に詳述する方法を適用しながらmRNAレベル(遺伝子発現)において測定できる。或は、選択された遺伝子のタンパク質産物を試験してよい。即ち、分泌された、または細胞表面のタンパク質の場合は、発現は免疫試験または他の免疫学的方法、例えば、酵素免疫試験(EIA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、免疫蛍光顕微鏡またはフローサイトメトリーを用いて評価することができる。EIAは幾つかの参考文献においてより詳細に説明されている(Butler,JE.Structure of Antigens,Vol.1,Van Regenmortel,M.,CRC Press,Boca Raton 1992,pp.209−259;Butler,JE,”ELISA”,van Oss,C.J.et al(eds),Immunochemistry,Marcel Dekker,Inc.,New York,1994,pp.759−803;Butler,JE(ed.),Immunochemistry of Solid−Phase Immunoassay,CRC Press,Boca Raton,1991)。RIAはKirkham and Hunter(eds),Radioimmune Assay Methods,E.&S.Livingstone,Edinburgh,1970において考察されている。
【0092】
別の方法においては、標的遺伝子の転写および/または翻訳を特異的に抑制するアンチセンスRNAまたはDNAを本発明の方法を用いて特異性および効力についてスクリーニングすることができる。アンチセンス組成物は特定の遺伝子(例えば表1、2、3、5および6中の遺伝子、またはウィルムス腫において発見される遺伝子)がアップレギュレートされる腫瘍を治療するために特に有用である。
【0093】
本明細書に記載した腎腫瘍の大部分の症例においてアップレギュレートされる遺伝子(表1、2、3、5および6およびウィルムス腫において発見される2遺伝子)のタンパク質産物は、タンパク質が一部の接触可能な体液または組織中において、何らかの試験手段、例えば免疫試験により検出できれば、診断試験の標的となる。
【0094】
診断標的の1つのクラスは身体内で測定可能な濃度にまで達する分泌タンパク質である。即ち、血漿、血清、尿、唾液、脳髄液等のような体液の試料をスクリーニングされる対象から得る。試料をタンパク質分析対象に関る何れかの既知の試験に付す。或は、その表面上にタンパク質を発現する細胞、例えば血球を、単純な従来の手段により得てよい。タンパク質が受容体または他の細胞表面構造である場合は、それはよく知られた方法、例えばフローサイトメトリー、免疫蛍光分析、免疫細胞化学または免疫組織化学的な方法等により検出し、定量することができる。
【0095】
好ましい実施形態において、診断は腎腫瘍から得た試料、例えば生検組織、新鮮凍結試料、または、最も好ましい実施形態においては、組織のパラフィン包埋ブロックの切片に対して実施される。これらの試料のタイプの全てを作成する方法は従来通りであり、当該分野でよく知られている。生検材料および新鮮凍結試料は従来の操作法により抽出し、その中に含まれるタンパク質またはポリペプチドを得ることができる。1つの実施形態においては、パラフィン包埋ブロックを切片化し、そしてこのような抽出を行うことなく直接分析する。このようなパラフィンブロックの免疫組織化学的分析を示す例は、実施例1および図3に示す通りである。
【0096】
好ましくは、検出するべき標的タンパク質に対する抗体または他のタンパク質またはペプチドのリガンドを使用する。遺伝子産物が受容体である別の実施形態においては、受容体に対するペプチド性または小分子のリガンドを検出および定量の根拠として知られた試験において使用してよい。
【0097】
タンパク質標的、好ましくは抗体に対する適切に標識された結合相手を用いたインビボの方法もまた例えば潜伏している転移病巣を画像化するための診断および予後のため、または、他の種類のインサイチュの評価のために用いてよい。これらの方法は種々のレントゲン、シンチグラフおよび当該分野で知られた他の画像化方法(MRI、PET等)を利用する。
【0098】
適当な検出可能な標識は、放射性、蛍光、フロロゲン、クロモゲンまたは他の化学標識を包含する。ガンマカウンター、シンチレーションカウンターまたはオートライオグラフィーで単純に検出される有用な放射性標識はH、125I、131I、35Sおよび14Cを包含する。
【0099】
一般的な蛍光標識はフルオレセイン、ローダミン、ダンシル、フィコエリスリン、フィコシアニン、アロフィコシアニン、o−フタルデヒドおよびフルオレスカミンを包含する。ダンシル基のような蛍光団は蛍光を発するためには特定の波長の光で励起しなければならない。例えばHaugland,Handbook of Fluorescent Probes and Research Chemicals,Sixth Ed.,Molecular Probes,Eugene,OR,1996を参考にできる。フルオレセイン、フルオレセイン誘導体およびフルオレセイン様分子、例えばオレゴングリーンTMおよびその誘導体、ローダミングリーンTMおよびロドールグリーンTMは、イソチオシアネート、スクシンイミジルエステルまたはジクロロトリアジニル反応性基を用いてアミン基にカップリングする。蛍光団はまたマレイミド、ヨードアセトアミドおよびアジリジン反応性基を用いてチオールにカップリングしてもよい。長波長ローダミンはテトラメチルローダミン、X−ローダミンおよびテキサスレッドTM誘導体を包含する。タンパク質結合相手を誘導するための他の好ましい蛍光団は紫外線により励起されるものである。例としては、カスケードブルー、クマリン誘導体、ナフタレン(そのメンバーにはダンシルクロリドが含まれる)、ピレンおよびピリジルオキサゾール誘導体が挙げられる。
【0100】
タンパク質(抗体または他のリガンド)はまた蛍光発射金属、例えば152Euまたはランタニド系列の他のものを用いて検出のために標識することができる。これらの金属は金属キレート化基、例えばジエチレントリアミン5酢酸(DTPA)またはエチレンジアミン4酢酸(EDTA)を用いてタンパク質に結合できる。
【0101】
インビボ診断のためには、放射性核種をタンパク質に直接、または、タンパク質に化学的にコンジュゲート、カップリングまたは結合(これらの用語は互換的に使用する)するDTPAおよびEDTAのようなキレート化剤を用いて間接的に結合してよい。キレート形成の化学は当該分野でよく知られている。カップリング化学の重要な制限要因は抗体またはリガンドが標的タンパク質に結合するその能力を保持していなければならない点である。多くの参考文献が、有用なキレート化剤の説明を含む大分子に対する金属の鎖体形成のための方法および組成物を開示している。金属は好ましくは検出可能な金属原子、例えば放射性核種であり、そして、タンパク質および他の分子と鎖体形成する。例えば米国特許5,627,286号、5,618,513号、5,567,408号、5,443,816号および5,561,220号を参照でき、これらは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0102】
診断性(治療価値)を有する何れかの放射性核種を使用できる。好ましい実施形態においては、放射性核種はγ線発射またはβ線発射の放射性核種、例えばランタニドまたはアクチニド系列の元素から選択されるものである。陽電子発射放射性核種、例えば68Gaまたは64Cuもまた使用してよい。適当なγ線発射放射性核種は診断用画像化用途に用いられるものを包含する。γ線発射放射性核種は好ましくは1時間〜40日間、好ましくは12時間〜3日間の半減期を有する。適当なγ線発射放射性核種には67Ga、111In、99mTc、169Ybおよび189Reが包含される。好ましい放射性核種には(原子番号順に)67Cu、67Ga、68Ca、72As、89Zr、90Y、97Ru、99Tc、111In、123I、125I、131I、169Yb、186Reおよび201Tlである。標識としての陽電子発射放射性金属に関しては研究は限定されているが、特定のタンパク質、例えばトランスフェリンおよびヒト血清アルブミンが68Gaで標識されている。
【0103】
MRIに有用な多くの金属(放射性同位体ではない)には、ガドリニウム、マンガン、銅、鉄、金およびユーロピウムが包含される。ガドリニウムが最も好ましい。用量は0.01mg/kg〜100mg/kgの範囲である。
【0104】
標識されたタンパク質のインサイチュの検出は対象から組織学的標本を採取し、それを標識検出に適する条件下に顕微鏡で観察することにより行ってよい。広範な種類の組織学的方法(例えば染色操作)のいずれかを変更することによりインサイチュ検出が行えることは当業者の知るとおりである。
【0105】
本発明の組成物は診断、予後または研究上の操作において、所望の動物種の適切な細胞、組織、臓器または生物学的試料と共に使用してよい。「生物学的試料」という用語は正常または罹患した対象の身体に由来する何れかの液体または他の物質を意図しており、例えば血液、血清、血漿、リンパ、尿、唾液、涙液、脳髄液、乳汁、羊水、胆汁、腹水、喀痰等を包含する。更にまた用語の意味としては臓器または組織の抽出液または対象から得た何れかの細胞または組織の調製物がインキュベートされていた培地も挙げられる。腎組織由来の試料が好ましい。
【0106】
別の診断方法は、RCCのサブタイプに関連する遺伝子に相補的であり、そのためそれがアップレギュレートされる細胞をこれらの細胞におけるmRNAとのインサイチュハイブリダイゼーションにより検出するcDNAを利用する。本発明はアップレギュレートされた遺伝子のmRNAにハイブリダイズする配列を有する標識されたcDNAプローブとの蛍光インサイチュハイブリダイゼーション(FISH)を用いた細胞中の標的mRNAを位置決めするための方法を提供する。FISHの原理は、調製された標本中のDNAまたはRNAが例えば蛍光染料、ビオチンまたはジゴキシゲニンにより非同位体的に標識されたプローブ核酸にハイブリダイズすることである。次にハイブリダイズしたシグナルを蛍光測定により、または、酵素的方法により、例えば蛍光顕微鏡または光学顕微鏡を用いて検出する。検出されたシグナルおよび画像は感光性フィルムに記録できる。
【0107】
蛍光プローブの利点はハイブリダイズした画像が強力共焦顕微鏡または電荷結合素子(CCD)カメラを有する適切な画像分析システムを用いて容易に分析できる。放射性の方法と比較してFISHは高い感度を可能にする。位置に関する情報に加えて、FISHは細胞または組織の形態のより良好な観察を可能にする。非放射性の方法であるため、FISHは特定の細胞または組織の型における特定のDNAまたはRNAの位置決めのために広範に用いられるようになった。
【0108】
本明細書において有用なインサイチュハイブリダイゼーション方法および調製物はWu,W.et al.,eds,Methods in Gene Biotechnology,CRC Press,1997,chapter 13,p.279−289に記載されている。本書籍はその引用文献も含めて参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。やはり参照により本明細書に組み込まれる種々のインサイチュハイブリダイゼーションの手法および用途を記載した多くの特許および論文としては、米国特許第5,912,165号;同第5,906,919号;同第5,885,531号;同第5,880,473号;同第5,871,932号;同第5,856,097号;同第5,837,443号;同第5,817,462号同第5,784,162号;同第5,783,387号;同第5,750,340号;同第5,759,781号;同第5,707,797号;同第5,677,130号;同第5,665,540号;同第5,571,673号;同第5,565,322号;同第5,545,524号;同第5,538,869号;同第5,501,945号;同第5,225,326号および同第4,888,278号である。他の関連の参考文献としては、Jowett,T,Methods Cell Biol;59:63−85(1999)Pinkel et al.,Cold Spring Harbor Symp.Quant.Biol.LI:151−157(1986);Pinkel,D.et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)83:2934−2938(1986);Gibson et al.,Nucl.Acids Res.15:6455−6467(1987);Urdea et al.,Nucl.Acids Res.16:4937−4956(1988);Cook et al.,Nucl.Acids Res.16:4077−4095(1988);Telser et al.,J.Am.Chem.Soc.111:6966−6967(1989);Allen et al.,Biochemistry 28:4601−4607(1989);Nederlof,P.M.et al.,Cytometry 10:20−27(1989); Nederlof,P.M.et al.,Cytometry 11:126−131(1990);Seibl,R.,et al.,Biol.Chem.Hoppe−Seyle 371:939−951(Oct.1990);Wiegant,J.et al.,Nucl.Acids Res.19:3237−3241(1991);McNeil JA et al.,Genet Anal Tech Appl 8:41−58(1991);Komminoth et al.,Diagnostic Molecular Biology 1:85−87(1992);Dauwerse,JG et al.,Hum.Mol.Genet.1:593−598(1992);Ried,T.et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)89:1388−1392(1992);Wiegant,J.et al.,Cytogenet.Cell Genet.63:73−76(1993);Glaser,V.,Genetic.Eng.News.,16:1,26(1996);Speicher,MR,Nature Genet.12:368−375(1996)が包含される。
【0109】
アップレギュレートされた遺伝子、例えばDNA配列「X」が発見されたがそのタンパク質産物「Y」は未知である場合、発現されたDNA配列Xを最初に調べることになる。完全長の遺伝子配列はCeleraのようなヒトゲノムデータベースにアクセスすることにより得てよい。いずれの場合にも、適切なモチーフのコーディング配列を調べることによりコードされたタンパク質Yが分泌タンパク質であるか膜貫通タンパク質であるかがわかる。タンパク質Yに対して特異的な抗体が既に入手可能な場合は、タンパク質化学および免疫学的な既知の原理を用いてタンパク質Yのペプチドを設計し、合成することができる。目的はタンパク質の表面エピトープに特異的な抗体を提示する免疫原性のペプチドのセットを創生することである。或は、コーディングDNAまたはそのタンパク質が発現クローニング可能であればそのポリペプチドまたはペプチドを生成できる。そのタンパク質またはペプチドを免疫原として用いることにより抗血清の生産のために動物を免疫化でき、または、mAbを調製できる。次にこれらのポリクローナル血清またはmAbを免疫試験、好ましくはEIAに付すことにより体液または細胞/組織試料中のタンパク質Yの存在を検出するか、その濃度を測定することができる。
【0110】
上記した薬品発見方法を手掛りに、何れかの特定の腎腫瘍サブタイプにおいて高度に予測可能な方法でアップレギュレートされる遺伝子の知識に基づいて腎腫瘍を治療するために本発明を利用することができる(表1〜3、5および6参照)。推定されたタンパク質産物の性質に基づいて、アップレギュレートされたタンパク質の作用を抑制するか、またはそれに対して、結合、ブロック、除去、或はそのほかにその存在や利用性を減少させる手段を考案することができる。細胞受容体の場合は、アップレギュレートされた受容体を拮抗剤、受容体の可溶性形態または受容体の「模型」のリガンド結合部位(リガンドと競合させるため)に曝露する(Gershoni JM et al.,Proc Natl Acad Sci USA,1988,85:4087−9;米国特許5,770,572号)。
【0111】
抗体は分泌されたタンパク質産物またはアップレギュレートされた遺伝子の発現細胞表面産物に結合し、これを不活性化(またはこれと競合)するために対象に投与してよい。
【0112】
他の治療方法は高度に特異的な態様でアップレギュレートされた遺伝子の遺伝子発現を抑制するアンチセンスオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドコンストラクトを使用することである。推定アンチセンス配列を選択し、試験し、そして旨適化するための方法は、適切な調節エレメント、例えば強力プロモーター、誘導強力プロモーター等のようなプロモーターに適切なアンチセンス配列を作動可能に連結するための方法のように、日常的なものである。誘導プロモーターは、例えばエストロゲン誘導系を包含する(Braselmann,S.et al.,Proc Natl Acad Sci USA(1993)90:1657−1661)。更にまた、従来の抗生物質であるテトラサイクリンにより駆動されるリプレッシブルな系も知られている(Gossen,M.et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:5547−5551(1992))。種々のアップレギュレートされた遺伝子に特異的なマルチアンチセンスコンストラクトを共に使用することができる。本明細書に記載したアップレギュレートされた遺伝子の配列を用いてアンチセンスオリゴヌクレオチドを設計することができる(Hambor,J.E.et al.,J.Exp.Med.168:1237−1245(1988);Holt,JT et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.83:4794−4798(1986);Izant,JG et al.,Cell 36:1007−1015(1984); Izant,JG et al.,Science 229:345−352(1985);De Benedetti,A.et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,84:658−662(1987))。アンチセンスオリゴヌクレオチドは約6〜約50ヌクレオチドの範囲であってよく、そして100または200ヌクレオチド以上もの大きいものであってもよい。オリゴヌクレオチドはDNAまたはRNAまたはそのキメラ混合物または誘導体または修飾されたバージョンで、1本鎖または2本鎖であることができる。オリゴヌクレオチドは塩基部分、糖部分、またはホスフェート骨格(上記)において修飾できる。オリゴヌクレオチドは他の付随する基、例えばペプチド、または細胞膜(例えばLetsinger et al.,1989,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84:684−652;PCT国際公開公報第88/09810(1988))または血液脳関門(例えばPCT国際公開公報第89/10134(1988)) を経由する輸送を促進する物質、ハイブリダイゼーショントリガー切断剤(例えばKrol et al.,1988,BioTechniques 6:958−976)またはインターカレーション剤(例えばZon,1988,Pharm.Res 5:539−549)も含んでよい。他の治療方法、例えば本発明の過剰発現遺伝子をコードする核酸を特異的に切断できるリボザイムの使用もまた本発明の意図するものである。このような方法は当該分野で日常的であり、種々の適切なリボザイムの何れかを作成し、使用する方法は当業者の知るとおりである。
【0113】
別の治療方法は小型干渉性RNA(RNAi)と呼ばれる2本鎖RNAを用いる。RNAi分子は従来の操作法を用いながら遺伝子発現を抑制するために遺伝子発現を抑制するために使用することができる。干渉性RNA分子を作成し、使用する典型的な方法は例えば米国特許6,506,559号に記載されている。
【0114】
アンチセンス分子またはリボザイムのようなオリゴヌクレオチドを腎腫瘍の細胞または組織または目的の他の組織または臓器に導入するか、または、本発明の過剰発現遺伝子の1つ以上の生成または活性を妨害するタンパク質をコードする核酸をそのように導入する遺伝子転移の方法を用いることができる。遺伝子転移およびターゲティングを必要とする治療方法はウィルス媒介遺伝子転移、例えばレトロウィルス(Nabel,E.G.et al.,Science 244:1342(1989))、レンチウィルス、組み換えアデノウィルス(Horowitz,M.S.,Virology,Fields,BN et al.,eds,Raven Press,New York,1990,p.1679,or current edition; Berkner,KL,Biotechniques 6:616 919,1988,Strauss,SE,The Adenoviruses,Ginsberg,HS,ed.,Plenum Press,New York,1984 or current edition)を使用する方法を含んでよく、アデノ関連ウィルス(AAV)もまたヒトの遺伝子療法のために有用である(Samulski,RJ et al.,EMBO J.10:3941(1991);(Lebkowski,JS,et al.,Mol.Cell.Biol.(1988)8:3988−3996;Kotin,RM et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1990)87:2211−2215);Hermonat,PL.et al.,J.Virol.(1984)51:329−339)。進歩した効率はプラスミドDNAコンストラクト中のプロモーターエンハンサーエレメントの使用により達成される(Philip,R.et al.,J.Biol.Chem.(1993)268:16087−16090)。
【0115】
インビボのウィルス媒介遺伝子転移のほかに、当該分野でよく知られた物理的手段、例えばプラスミドDNAの投与(Wolff et al.,1990,supra)および当初は植物組織の形質転換において報告された粒子衝突媒介遺伝子転移(Klein,TM et al.,Nature 327:70(1987);Christou,P.et al.,Trends Biotechnol.6:145(1990))を用いて遺伝子転移を指向することができ、また、インビボ、エクスビボまたはインビトロの哺乳類組織に適用される(Yang N.S.et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:9568(1990);Williams,RS et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:2726(1991);Zelenin,AV et al.,FEBS Lett.280:94(1991);Zelenin,AV et al.,FEBS Let.244:65(1989);Johnston,S.A.et al.,In Vitro Cell.Dev.Biol.27:11(1991))。更にまた、インビトロの細胞内に遺伝子を転移させるよく知られた手段であるエレクトロポレーションを用いてインビボの組織に本発明のDNA分子を転移することができる(Titomirov,AV et al.,Biochim.Biophys,Acta 1088:131(1991))。
【0116】
遺伝子転移はまた「担体媒介遺伝子転移」を用いて達成することもできる(Wu,CH et al.,J.Biol.Chem.264:16985(1989);Wu,GY et al.,J.Biol.Chem.263:14621(1988):Soriano,P et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 80:7128(1983);Wang,C−Y.et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84:7851(1982);Wilson,J.M.et al.,J.Biol.Chem.267:963(1992))。好ましい担体はターゲティングされたリポソーム(Nicolau,C.et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 80:1068(1983);Soriano et al.,上出)、例えばイムノリポソームであり、これは脂質2層(Wang et al.,上出)またはポリカチオン、例えばアシアログリコタンパク質/ポリリジン(Wu et al.,1989,上出)にアシル化されたモノクローナル抗体を取り込むことができる。リポソームは核酸およびウィルス粒子を含む細胞への種々の物質のカプセル化およびデリバリーのために使用されている(Faller,DV et al.,J.Virol.(1984)49:269−272)。
【0117】
合成のカチオン性脂質を含有する予備形成されたリポソームはポリアニオン製DNAと安定な複合体を形成する(Felgner,PL et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1987)84:7413−7417)。カチオン性リポソーム、即ち膜融合促進脂質ジオクタデシルジメチルアンモニウムブロミド(DDAB)を含有した一部のカチオン性脂質を含むリポソームは、真核細胞内に非相同性遺伝子を効率的に転移させている(Rose,JK et al.,Biotechniques(1991)10:520−525)。カチオン性リポソームは、トランスジーンまたはRNAを種々の培養細胞系統にデリバリーすることによりそれらの高レベルの細胞内発現を媒介できる(Malone,R.,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1989)86:6077−6081)。
【0118】
何れかの特定の腎腫瘍サブタイプにおいて高度に予測可能な態様でアップレギュレートされる遺伝子に関する知識に基づいて腎腫瘍の治療をモニタリングするために本発明を利用することもできる。対象の治療の過程の種々の段階で、本明細書に記載するとおり腎臓試料を採取し、分析用に調製し、そして、正常な腎組織中の量と比較した場合にその過剰発現が治療すべき腎腫瘍の型に相関するアップレギュレートされた遺伝子1つ以上の存在および/または量を分析する。治療の成功は正常腎組織により近づくように発現パターンが変化することにより反映される。
【0119】
本発明はまた、本発明の核酸またはポリペプチドの組み合わせを、物理的分子ではなく、これらの配列を列挙または他の態様で包含または表示するコンピューター実行型のデータベースにより表示したものに関する。例えば、本発明は本発明のポリヌクレオチド、ポリペプチド等を表示した情報の電子的形態、例えばコンピューター読み取り可能な媒体(例えば磁気的、光学的媒体等)を包含し、そこにこれらの情報を何れかの適当なフォーマット、例えばフラットファイルまたはヒエラルヒーファイルとして保存する。この情報は好ましくは完全長または部分的な配列および情報を操作、検索および共有する電子商取引手段を含む。例えば研究者は、目的の腎臓癌試料により示される発現プロファイルを、本発明の組成物を説明または表示する電子的または他のコンピューター読み取り可能な形態のデータと比較してよく、そしてこれにより評価すべき腎腫瘍のサブタイプを決定してよい。
【0120】
本発明を以上の通り一般的に説明したが、これは以下の実施例を参照することにより更に容易に理解することができ、そしてこれらは説明のために記載するものであり、特段の記載が無い限り本発明を限定する意図はない。
【実施例1】
【0121】
(対象および腫瘍試料)
合計69検体の凍結原発腎臓癌(39明細胞RCC、7乳頭状RCC、6顆粒細胞RCC、5嫌色素性RCC、肉腫様RCC、2膨大細胞腫、3TCCおよび5ウィルムス腫)、1検体の転移乳頭状RCCおよびマッチまたはアンマッチの非癌性腎組織をthe University of Tokushima,the University of Chicago,Spectrum Health Urologic Group and Cooperative Human Tissue Network(CHTN)より入手した。全組織には臨床結果の情報を伴うか伴わない病理学的報告書が付随していた。試料は解剖した後に試験に付した。各腫瘍試料の一部は術後即座に液体窒素中に凍結されたものであり、−80℃において保存されている。
【0122】
従来の方法を用いて核酸の単離および調製を行った。全RNAをISOGEN溶液(Nippon Gene,Toyama,Japan)またはTrizol試薬(Invitrogen,Carlsbad,CA)を用いて凍結組織から単離した。最初の45試料については、ポリ(A)+RNAをOligotex mRNA Mini Kit(Qiagen,Valencia,CA)を用いて全RNAから単離した。残りの25試料については、全RNAを終濃度2.5MのLiClで精製した。WHO International Histological Classification of Tumorsを用いて標本の組織学的評価を行った(Mostfi,1998上出)。UICC(Union Internationale Contre le Cancer)TNM分類およびステージグルーピングを用いた(Sobin et al.,editors,International Union Against Cancer.5th edition.New York:John Wiley& Sons,1997)。
【実施例2】
【0123】
(材料および方法)
(マイクロアレイ設計および操作法)
マイクロアレイは当該分野でよく知られている従来の方法および材料(Hegde et al.,Biotechniques 2000;29:548−556;Eisen et al.,Methods Enzymol(1999)303:179−205)に多少の変更を加えて作成した。Research Genetics,Inc.,より購入した細菌ライブラリを、直接PCR増幅した19,968cDNAの入手元とした。cDNAクローンをエタノール沈殿させ、384ウェルプレートに移し、これから、自家製のロボット型マイクロアレイ作成装置を用いてアミノシランコーティングスライドガラス上にそれらをプリントした(例えばウェブサイトmicroarrays .org/pdfs/PrintingArrays参照)。スライドをUV交差結合の後無水コハク酸を用いて化学的にブロックした。可能な場合は癌を患者マッチの非癌性腎組織に対してハイブリダイズさせた。該当するマッチした非癌性の腎組織が入手できない腫瘍に関しては、5検体の非癌性腎組織から得たRNAを混合してプールし、共通の比較対照とした。最初の45試料については、腫瘍および比較対照から得た2μgのポリ(A)+RNAをCy5−dCTPおよびCy3−dCTP(Amersham Pharmacia Biotech,Peapack,NJ)の存在下にオリゴ(dT)プライマーおよびSuperscriptII(Invitrogen,Carlsbad,CA)を用いて逆転写した。残りの25試料については、腫瘍および比較対照から得た全RNA50μgを逆転写に使用した。Cy5−およびCy3−標識cDNAプローブをホルムアミド含有プローブハイブリダイゼーション溶液と混合し、50℃で20時間予備加温(50℃)したスライドにハイブリダイズさせた。ハイブリダイゼーションの後、スライドを1XSSC、0.1%SDS中50℃で5分間、次いで0.2XSSC、0.1%SDS中室温(RT)で5分間、0.2XSSC中RTで5分間2回、そして0.1XSSC中RTで5分間洗浄した。スライドを遠心分離により即座に乾燥し、Scan Array Liteスキャナーを用いて532nmおよび635nmの波長でスキャニングした(GSI Lumonics,Billerica,CA)。
【0124】
(データ分析)
画像はソフトウエアGenepixPro3.0(Axon,Union City,CA)を用いて分析した。ローカルバックグラウンドを全スポットに着き差し引いた。Cy5またはCy3チャンネルのいずれかにおけるバックグラウンドを差し引いた強度が150未満であるスポットは分析から除外した。Cy5強度のCy3強度に対する比を各スポットにつき計算し、非癌性腎組織に対して相対的な腫瘍RNA発現を示すものとした。比は対数変換し(底2)、そしてメジアンの対数変換比がゼロ値となるように規格化した。以下の基準を満たす遺伝子(合計3560遺伝子)を包括的なクラスター分析のために選択した。即ち、1)腫瘍の少なくとも70%において存在する発現値;2)少なくとも2つもにおいて少なくとも2倍変動する発現比;および、3)最大比マイナス最小比の値が2倍より大きいものとした。遺伝子発現比は全試料に渡りメジアン統一した。遺伝子発現の値はCLUSTERandTREEVIEWソフトウエア(M.B.Eisen,URL rana.lbl.govを有するウェブサイトより入手可能)を用いて操作し、可視化した。相関距離は1−rとして計算し、ここでrはピアソンの順位付けの相関係数を示す(Eisen et al.,Proc Natl Acad.Sci USA 1998,95:14863−14868)。
【0125】
自家性のソフトウエアプログラムCITを用いて組織学的サブタイプおよび他のものとの間で示差的に発現(Studentのt検定を使用)される遺伝子を発見した(Rhodes et al.,Bioinformatics 2002,18:205−206)。有意に判別できる遺伝子を発見するために、2群に患者を無作為に割り付けることにより10000個のt統計値を計算した(Hedenfalk et al.,2001,上出)。99.9%の有意差の閾値(p<0.01)を用いて患者群vs無作為の患者グループの間の有意に判別することができる遺伝子を発見した。
【0126】
70腎腫瘍のクラスター分析は以下の通り表記した。即ち、患者のクラスタリング(ピアソン相関を用いる)をは3560の選択されたスポットのメジアン統一データよりなる包括的遺伝子発現プロファイルに基づくものとした。列は個々のcDNAを示し、行は個々の腫瘍試料を示す。各正方形の色は比較対照に対する腫瘍における遺伝子発現のメジアン統一された規格化された比を示す。メジアンより高値の発現レベルは異なる色で示した。色の飽和はメジアンとの相違の程度を示す。腫瘍は2つの概ねのグループにクラスタリングし、1つは原発明細胞RCC、もう1つは他の全ての腎腫瘍よりなるものとした。5嫌色素性RCCおよび2膨大細胞腫は近接してクラスタリングした。8乳頭状RCC、5ウィルムス腫または3TCCの各群は共にクラスタリングした。試験した腎腫瘍の全ての他の型と比較した場合の腫瘍の各サブタイプにおける最も高度に発現された遺伝子のセットを発見した。
【0127】
データはまた3次元(3D)腫瘍画像としてディスプレイした。腎腫瘍の種々のサブタイプは各々異なる色で表した。5嫌色素性RCCおよび2膨大細胞腫は共に近接させてクラスタリングした。8乳頭状RCC、5ウィルムス腫および3TCCの各群はそれぞれ共にクラスタリングした。一方の明細胞RCCはTreeViewによる2Dクラスタリングの場合よりも散乱が大きいように観察された。結果データが入手できたCC−RCCに着目しながら全ての腫瘍をディスプレイした。手術後5年より長く生存した患者、および、手術後5年以内に癌で死亡した患者は異なる色で表した。
【0128】
(免疫組織化学)
50腎組織試料、うち良性(n=10)、悪性(n=40)を免疫組織化学的に分析した。腎腫瘍の内訳は明細胞RCC(n=10)、乳頭状RCC(n=10)、嫌色素性RCC(n=10)、膨大細胞腫、(n=5)およびTCC(n=5)であった。各組織試料の切片をヘマトキシリンおよびエオシンで染色し、組織学的に評価した。以下のタンパク質、即ちGSTα、メチルアシルラセマーゼ(Corixa,Siattle,WA,USA)、炭酸脱水酵素IIおよびケラチン19(Dako,Carpinteria,CA,USA) に対する抗体を市販品として入手した。標準的なビオチンアビジン複合体の免疫組織化学的操作を行った。慨すれば、組織切片を一次抗体と共に30分間20℃でインキュベートした。次に、スライドをビオチニル化抗マウスIgGまたは抗ウサギIgG(Vector Laboratories,Burlingame,CA)と共に27℃で30分間インキュベートし、そして抗原抗体複合体をクロモゲンとしてのジアミノベンジジン(DAB)および逆染色剤としてのヘマトキシリンを用いながらアビジンビオチニル化セイヨウワサビパーオキシダーゼ系(Vector,Burlingame,CA,USA)により検出した。スライドは熟練した泌尿器科の病理学者によりネガまたはポジの何れかとして評価した。
【0129】
ヘマトキシリンおよびエオシン染色およびグルタチオンS−トランスフェラーゼ−α(GST−α、F−H)に関する免疫染色をディスプレイした。メチルアシルラセメート、炭酸脱水酵素II(CAII)は正常な腎皮質、明細胞RCC、乳頭状RCCおよび嫌色素性RCCにおいて示された。強力な免疫反応性は腎近位および遠位の細管に存在し、明細胞RCCのGST−α、乳頭状RCCのAMACRそして嫌色素性RCCのCAIIがみとめられた。
【実施例3】
【0130】
(ヒエラルヒークラスタリングによる腎腫瘍の分類)
ヒエラルヒークラスタリング(Eisen et al.,上出)を用いて実施例IIに記載したとおり選択された3560のcDNAセットの発現比を用いながらその遺伝子発現プロファイルに基づいて腎腫瘍を分類した。クラスタリングアルゴリズムは発現パターンの同様性により遺伝子および腫瘍の両方をグループ分けする。全3560cDNAの発現プロファイルに基づく患者の樹形図を図1に示す。樹形図のしたの遺伝子発現パターンは腫瘍の全ての他の型と比較した場合の各サブタイプにおいて統計学的に示差的に発現された1309遺伝子に基づいている。2つの概ねのクラスターが発生し、一方は35明細胞RCCおよび4顆粒細胞RCCよりなり、もう一方は腎腫瘍の他の全ての型プラス4明細胞RCCよりなるものであった。5嫌色素性RCCおよび2膨大細胞腫は共にクラスタリングされた。他のクラスターには8乳頭状RCC、5ウィルムス腫および3TTCが含まれていた。明細胞RCCの大きいクラスターには、2つのサブクラスターが存在し、即ち一方は癌で死亡した(E、図1)全患者(1人を除く)を含み、そして他方は転移の証拠のない癌の生存者(D、図1)であった。同じ患者に由来する2明細胞RCC、1原発腫瘍および転移リンパ節もまた調べた(明細胞40P、40M)。興味深いことに、同じ患者から得たこれらの2試料は同様の発現パターンを有しており、原発腫瘍と点いつもとの間の遺伝学的関連性を示すものであった(Haddad 2002)。試験した腎腫瘍の全ての他の型と比較して腫瘍の各サブタイプにおいてより高度に発現された遺伝子のセットは図1の未側の異なる色の側部バーにより示した(A:嫌色素性RCC、B:乳頭状RCC、C:ウィルム腫、D:良好な結果を示した明細胞RCC、E:明細胞RCC)。6顆粒細胞RCCは恐らくは「無作為の」態様で位置し、単一の実体ではないことが示唆された。これらの6例の診断はRCC診断のためのUICCおよびAJCCの作業グループの推奨より以前に日本において行われた。盲検的な組織学的再評価を熟練した泌尿器科の病理学者により可能な5例に対して実施した。明細胞RCC群にクラスタリングされた「顆粒細胞RCC1、3および4」は明細胞RCCとして再分類された。嫌色素性RCCおよび膨大細胞腫と近接してクラスタリングされた「顆粒細胞2」は嫌色素性RCCとして再分類された。異なる組織学的特徴を有していた「顆粒細胞5」は遺伝子発現プロファイルによれば何れのRCC群にもクラスタリングされず、RCCの新規なサブタイプを示していると考えられる。これらの所見は遺伝子発現により腎新生物をサブ分類することの正確さ、客観性および潜在的な臨床利用性を示すものである。
【0131】
次に多次元スケーリング(MDS)を用いることにより全ての腫瘍のプロファイルの間の関係を可視化した。MDSデータの3次元(3D)可視化によればどのようにして各RCCサブタイプが例えば嫌色素性RCC/膨大細胞腫、乳頭状RCC、ウィルム腫およびTCCにクラスタリングされたかが明らかにされた(図2A)。「顆粒細胞5」は攻撃的な型であり再分類できなかったが、肉腫様RCCの次に位置させた。最後に不良な結果を有していたCC−RCCの大部分が一方の側にクラスタリングされ、それらが同様の発現プロファイルを共有していたことを示唆していた(図2B)。
【実施例4】
【0132】
(腎腫瘍の6サブタイプにおける示差的に発現された遺伝子)
3560cDNAを用いた実施例IIIに示した包括的なクラスタリング分析では腎腫瘍の6サブタイプの各々が異なる分子シグニチャーを有することを示していた。本実施例においては、これらの判別に寄与する示差的に発現された遺伝子を発見する。
【0133】
(CC−RCC)
表1は本明細書において試験した腎腫瘍の他の型よりも明細胞RCCにおいてより高度に発現される約30遺伝子を示す。以下に示すものが一部の過剰発現された遺伝子である。
【0134】
パーオキシソーム増殖物質活性化受容体ガンマアンギオプロテイン関連(PGAR)はCC−RCCにおいて最も示差的に発現された(18.3倍過剰発現)。パーオキシソーム増殖物質活性化受容体ガンマ(PPARγ)は脂肪の分化および全身インスリンシグナリングを調節する。PGARはPPARγの標的遺伝子であることがわかっており、そしてPGARの発現は脂肪組織および胎盤に優勢に局在化する。更にまた、ホルモン依存性の脂肪細胞の分化はPGAR転写産物の早期の誘導と共に起こる(Yoon et al.,Mol.Cell Biol.2000;20:5343−5349)。本遺伝子および明細胞RCCに特異的な脂肪分化関連タンパク質をコードする遺伝子の過剰発現はこれらの細胞の原形質中のコレステロール、コレステロールエステルおよびリン脂質の遍在性に関連していると考えられる(Gonzalez et al.,Inverst Urol 1981;19:1−3)。
【0135】
血管内皮成長因子(VEGF)はCC−RCCにおいては高度に発現されるが他のRCCサブタイプにおいてはそうではないことがわかっている。
【0136】
グルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)−αは生体異物および癌原性物質の解毒を触媒することにより細胞を保護する機能を有する。以前の免疫組織化学的試験によれば、正常腎臓、特に近位の細管並びに腎臓癌において強力な発現が明らかにされている。本発明者等は本明細書において、その発現が明細胞RCCに特異的であり、そして他のRCCサブタイプとの識別におけるマーカーとして使用できることを示す。このことは免疫組織化学的染色により更に確認される(例えば図3および表4参照)。
【0137】
発現の増大がCC−RCCを示す好ましい5遺伝子は上記した通りである。
【0138】
(乳頭状RCC)
表2は本明細書において試験した腎腫瘍の他の型よりも乳頭状RCCにおいてより高度に発現される約30遺伝子を示す。過剰発現された遺伝子は以下に示す通りである。
【0139】
α−メチルアシル補酵素Aラセマーゼ(AMACR)。αメチルアシル補酵素Aラセマーゼ(AMACR)遺伝子によりコードされる酵素は分枝鎖脂肪酸分子のパーオキシソームβ酸化において重要な役割を果たす。AMACRは近年、マイクロアレイ実験による転写レベルおよびタンパク質レベルの両方において前立腺癌において過剰発現されることがわかった(Rubin et al.,JAMA 2002;287(13):1662−70;Luo et al.,Cancer Res 2002;62(8):2220−6)。免疫組織化学的な別の試験によれば、前立腺癌の症例の90%超においてAMACRタンパク質は上昇したが、良性の前立腺組織では異なり、AMACRが前立腺癌に関わる前立腺特異的抗原(PSA)よりも更に特異的なマーカーであることを示唆している(Rubin,2002,上出;Luo,2002,上出)。この遺伝子は乳頭状RCCにおいて5.3倍高値に発現された。更にまた免疫組織化学的分析は、乳頭状RCC症例の100%、RCCの他のサブタイプの10%未満における免疫反応性を示している(図3E−H)。
【0140】
【表1A】

CC−RCCにおける上位30の示差的に発現されるcDNAを列挙する。これらは過剰突然変異試験10000回により試験した腎腫瘍の全ての他の型と比較して明細胞RCCにおいて有意により高度に発現される。倍変化は、試験した腎腫瘍の全ての他の型と比較した場合にこの倍変化の比較的より高度の発現を明細胞RCCが有していることを示す。
【0141】
グアニンデアミナーゼ(GDA)はDNAターンオーバー酵素であり、GDAをコードする遺伝子は乳頭状RCCにおいて最も示差的に発現される遺伝子である。GDA活性はRCC (Durak et al.,Cancer Invest 1997;15(3):212−6)および胃癌(Durak et al.,上出)において上昇することがわかっている。GDAは乳頭状RCCに関する有用なマーカーである。
【0142】
乳頭状RCCにおいて過剰発現される別の遺伝子はクラウジン−4であり、これは細胞間の堅固な接合構造の必須成分である膜貫通組織特異的クラウジンタンパク質のより大きいファミリーのメンバーである。遺伝子はまた前立腺癌(Long et al.,Cancer Res 2001;61(21):7878−81)およびすい臓がん(Michl et al.,Gastroenterology 2001;121(3):678−84)においても過剰発現される。アルド−ケト還元酵素ファミリー1のメンバーC1(AKR1C1)およびC3(AK1RC3)である2種のヒトジヒドロジオールデヒドロゲナーゼもまた乳頭状RCCにおいて高度に発現されている。両者ともヒト前立腺および乳腺(Penning et al.,Mol.Cell Endocrinol 2001,171:137−149)および非小細胞肺癌(Hsu et al.,Cancer Res 2001,6I:2727−2731)においても過剰発現されているが、乳頭状RCCにおいては以前には報告されていない。
【0143】
増大した発現が乳頭状CC−RCCを示す好ましい5遺伝子は上述した通りである。
【0144】
【表2】

乳頭状RCCにおける上位30の示差的に発現されるcDNAを列挙する。これらは過剰突然変異試験10000回により試験した腎腫瘍の全ての他の型と比較して乳頭状RCCにおいて有意により高度に発現される。倍変化は試験した腎腫瘍の全ての他の型と比較した場合にこの倍変化の比較的より高度の発現を乳頭状RCCが有していることを示す。
【0145】
(嫌色素性RCCおよび膨大細胞腫)
表3は本明細書において試験した腎腫瘍の他の型よりも嫌色素性RCCおよび膨大細胞腫においてより高度に発現される約30遺伝子を示す。
【0146】
図1および2は5嫌色素性RCCおよび2膨大細胞腫が共に緊密してクラスタリングされ、これらの2サブタイプが同様の遺伝子発現パターンを有することを示唆している。嫌色素性RCCと膨大細胞腫との間の発現プロファイルの同様性は以前より報告されている(Young,2001,上出)。
【0147】
嫌色素性RCC/膨大細胞腫は豊富なミトコンドリアを含んでいることがわかっている。ミトコンドリア生物学および酸化的リン酸化に関わる遺伝子は本発明者等の試験において過剰発現されており、嫌色素性RCC/膨大細胞腫に対するこれらの遺伝子発現の高い特異性を示唆している。
【0148】
炭酸脱水酵素(CA)は亜鉛金属酵素のファミリーである。CAIXは腎臓癌における低酸素誘導性因子−1により厳密に調節されることがわかっている。CAIIヌルマウスは腎尿細管アシドーシス(Lewis et al.,Proc Natl Acad Sci USA 1988;85(6):1962−6)および尿酸性化不能(Brechue et al.,Biochim Biophys Acta1991;1066(2):201−7)を有することがわかっている。CAIIは外側髄質の尿細管細胞および皮質髄質接合部において発現されることがCAII欠損マウスへのCAII遺伝子デリバリーにより明らかにされている(Lai et al.,J Clin Invest 1998;101(7):1320−5)。本発明者等の免疫染色は正常腎において上記所見を確認しており、そして全ての嫌色素性RCC(10/10)および膨大細胞腫(5/5)において更に陽性結果を示した。このマーカーは他の腎腫瘍の小さいサブセットにおけるその発現のため、GST−αやAMACRよりも特異性は低い。
【0149】
増大した発現が嫌色素性RCC/膨大細胞腫を示す好ましい5遺伝子は上記したとおりである。
【0150】
表5は本明細書において試験した腎腫瘍の他の型よりも肉腫様においてより高度に発現される遺伝子を示す。
【0151】
本発明者等は3混合明細胞/肉腫様RCCおよび2肉腫様RCCを検討した。示差的に発現された遺伝子にはSPARC(酸性およびシステインリッチの分泌タンパク質)遺伝子が含まれており、その配列はゲンバンクにアクセッション番号AA436142(配列番号93)として記載されている。SPARCは細胞増殖および細胞外リモデリングの間の細胞マトリックス相互作用に関連している。血管新生、侵襲および癌転移においても、SPARCをコードする遺伝子が肉腫様成分を有するRCCにおいて高度に発現されることが関与しているとされている。
【0152】
フィブロネクチン(ゲンバンクのアクセッション番号R62612(配列番号92))およびコラーゲンVI(ゲンバンクのアクセッション番号H99676(配列番号103))のような細胞外マトリックス化合物をコードする遺伝子もまた本発明者等の試験においては肉腫瘍成分を有するRCCにおいて過剰発現されることがわかっている。VI型コラーゲンはRCCにおいて広範に分布していることがわかっており、そしてフィブロネクチンは特に低分化の癌において重要な間質成分である(Lohi et al.,Histol Histopathol 1998;13(3):785−96)。別の研究によれば、細胞外マトリックス成分、フィブロネクチンおよびコラーゲンIVの添加によりRCC細胞系統の侵襲が5〜10倍増大している。肉腫様成分を有するRCCにおけるこれらの遺伝子の過剰発現は、高い比率の転移および不良の予後を示す肉腫様RCCの挙動の根底をなすと考えられる。これらの所見は肉腫様RCCの侵襲および転移の機序を解明すると考えられる。
【0153】
(肉腫様RCC)
発現の増大が嫌色素性肉腫様RCCを示す好ましい5遺伝子は上記したとおりである。
【0154】
(他の型の腎腫瘍)
(移行上皮癌(TCC))
表6は本明細書において試験した腎腫瘍の他の型よりもTCCにおいてより高度に発現される遺伝子を示す。
【0155】
腎盂において生じるTCCは全腎臓に渡って侵襲する場合があり、そしてこのため、TCCをRCCから判別することは困難である。TCCの新しいマーカーを発見することはその診断に役立つものと考えられる。ケラチン14(ゲンバンクのアクセッション番号H44051(配列番号120))をコードする遺伝子は通常は扁平上皮細胞の基底細胞中に発現される。ケラチン14は扁平上皮癌の有用なマーカーであることが提案されている(Chu et al.,Histopathology 2001;39(1):9−16)。これはまた扁平上皮形態を有するTCCにおいて発現され、扁平上皮の分化の形態学的徴候を有さないTCCにおいても局所的に発現される(Harnden et al.,J.Clin Pathol 1997,50:1032)。ケラチン14は本発明者等の試験において最も示差的に発現された遺伝子であり、腎臓のTCCの有用なマーカーとして機能すると考えられる。TCCに高度に特異的な数種の遺伝子は皮膚に関連している。VII型コラーゲン(ゲンバンクのアクセッション番号AA598507(配列番号121))は例えば付着フィブリルの主要構成成分であり、皮膚の表皮上皮基底膜領域における基底層の下部に存在する(Sakai et al.,j Cell Biol 1986;103(4):1577−86)。ケラチン19(K19)(ゲンバンクのアクセッション番号AA464250(配列番号122))は発達中の表皮を封入する一過性の表面層である胎児表皮に発見されている(Van Muijen et al.,Exp Cell res 1987;171(2):331−45)。免疫組織化学によれば、本発明者等は一部の腎尿細管、良性の一過性の上皮およびTCCの5例の100%においてK19の発現を観察している(表4)。インテグリンβ−4(ゲンバンクのアクセッション番号AA485668(配列番号125))はヒト表皮において発現されており、基底膜領域とは反対に腹側表面に限局されている。インテグリンβ−4は重層の一過性の上皮において半接着斑と関連して検出されている(Jones et al.,Cell Regul 1991;2(6):427−38)。Ladinin(ゲンバンクのアクセッション番号T97710(配列番号126))は半接着斑の下部に位置する基底細胞に伴っている(Moll et al.,Virchows Arch 1998;432(6):487−504)。これより総括すれば、これらの皮膚病変関連遺伝子は腎臓のTCCの特異的マーカーであると考えられる。
【0156】
発現の増大がTCCを示す好ましい5遺伝子は上記したとおりである。
【0157】
【表3】

上位30の示差的に発現されるcDNAを列挙する。これらは過剰突然変異試験10000回により試験した腎腫瘍の全ての他の型と比較して嫌色素性RCC/膨大細胞腫において有意により高度に発現される。倍変化は試験した腎腫瘍の全ての他の型と比較した場合にこの倍変化の比較的より高度の発現を嫌色素性RCC/膨大細胞腫が有していることを示す。
【0158】
【表4】

【0159】
【表5】

【0160】
【表6−1】

【0161】
【表6−2】

(ウィルムス腫(WT))
インスリン様成長因子II(IGFII)遺伝子(ゲンバンクのアクセッション番号N74623(配列番号195))はWTにおいて示差的に発現される遺伝子の1つである。IGFIIは染色体11p15上に位置し、これは通常はインプリント」される(父方由来対立遺伝子においてのみ発現される)。WTの遺伝型であるBeckwith−Wiedeman疾患において、一部の患者では構成的にIGFIIのインプリンティングが消失する。一部の散在性のWTもまたIGFIIのインプリンティングを消失し、このことはWTにおけるIGFIIの高い発現をもたらすと考えられる。
【0162】
グリピカン3(ゲンバンクのアクセッション番号AA775872(配列番号194))はヘパランスルフェートプロテオグリカンであり、通常は胎児の中胚葉組織中に発現される。その破壊により巨人症または過剰成育が起こる。本試験においては、グリピカン3はWTにおいて最も示差的に発現される遺伝子であった。IGFIIおよびグリピカン3の高度の発現はWTに特異的な特徴であると考えられる。
【0163】
上記した説明から、当業者は本発明の本質的な特徴を容易に確認することができ、そしてその精神および範囲から外れることなく本発明を変更または改変して種々の用途および条件に適合することができる。
【0164】
更に検討を行うことなく、当業者は上記説明を用いて本発明をその完全な領域にまで利用することができる。上記において開示した好ましい特定の実施形態は単に説明を目的としており、本発明の範囲を限定する意図はない。
【0165】
上記において引用した全ての特許出願、特許および他の出版物の全体の開示および図面に含まれるものは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0166】
本出願は2002年10月4日に出願された米国出願60/415,775号の出願日の優先権を主張し、これは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分:
(a)配列番号1;配列番号2;配列番号3;配列番号5;および/または配列番号6により表される単離された核酸1、2、3、4または5つ(好ましくは核酸5つ全てが存在する);または該配列の少なくとも約10連続ヌクレオチドを含むこれらのフラグメント、および/または、
(b)配列番号31;配列番号33;配列番号34;配列番号35;および/または配列番号36により表される単離された核酸1、2、3、4または5つ;または該配列の少なくとも約10連続ヌクレオチドを含むこれらのフラグメント、および/または、
(c)配列番号61;配列番号62;配列番号64;配列番号65;および/または配列番号66により表される単離された核酸1、2、3、4または5つ;または該配列の少なくとも約10連続ヌクレオチドを含むこれらのフラグメント、および/または、
(d)配列番号91;配列番号92;配列番号93;配列番号94;および/または配列番号95により表される単離された核酸1、2、3、4または5つ(好ましくは核酸5つ全てが存在する);または該配列の少なくとも約10連続ヌクレオチドを含むこれらのフラグメント、および/または、
(e)配列番号120;配列番号121;配列番号122;配列番号123;および/または配列番号125により表される単離された核酸1、2、3、4または5つ;または該配列の少なくとも約10連続ヌクレオチドを含むこれらのフラグメント、および/または、
(f)配列番号194および/または配列番号195により表される単離された核酸1つまたは2つ;または該配列の少なくとも約10連続ヌクレオチドを含むこれらのフラグメント;
を含む、組成物。
【請求項2】
(a)、(b)、(c)、(d)および(e)の各々が記載された前記核酸の5つ全てを含み、そして、(f)が前記核酸の両方を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
水溶液の形態の請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
アレイの形態の請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
少なくとも約900の核酸を含む請求項5に記載のアレイ。
【請求項6】
核酸プローブ2つ以上のセットを含む組成物であって、その各々が明細胞腎細胞癌(CC−RCC)、乳頭状RCC、嫌色素性/膨大細胞腫RCC、肉腫様RCC、TCCまたはウィルムス腫において過剰発現されるコーディング配列の部分または全てにハイブリダイズし、その過剰発現がベースライン値との比較に基づくものである、組成物。
【請求項7】
前記ベースライン値が(i)腫瘍組織の採取元である対象、または、(ii)1または2の健常な個体、に由来する正常な腎組織中の前記コーディング配列の発現である、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
アレイの形態である請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記核酸1つ以上が、ホスホロチオエート、ホスホリドチオエート、ホスホロアミドチオエート、ホスホロアミデート、ホスホロジイミデート、メチルホスホネート、アルキルホスホトリエステル、3’−アミノプロピル、ホルムアセタールまたはその類縁体から選択される、修飾されたホスフェート骨格少なくとも1つを有するヌクレオチドを含む請求項1または6に記載の組成物。
【請求項10】
発現された遺伝子を示す試料に由来するポリヌクレオチド1つ以上をアレイの核酸1つ以上に結合させた状態で更に含む請求項5または8に記載のアレイであって、該試料が個体対象の腎臓腫瘍から、正常組織から、または、腫瘍および正常組織の両方に由来する、アレイ。
【請求項11】
前記アレイの核酸が発現された遺伝子を示す試料に由来するポリヌクレオチド1つ以上に高ストリンジェンシーな条件下にハイブリダイズしている、請求項5または8に記載のアレイであって、該試料が個体対象の腎臓腫瘍から、正常組織から、または、腫瘍および正常組織の両方に由来する、アレイ。
【請求項13】
前記単離された核酸が哺乳類起源のものである、請求項1または6に記載の組成物。
【請求項14】
前記単離された核酸がヒト起源のものである、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
下記成分:
(a)以下の単離されたポリペプチド:配列番号196;配列番号197;配列番号198;配列番号199または200;および/または配列番号201の1、2、3、4または5つ、または該ポリペプチドの抗原性フラグメント、および/または、
(b)以下の単離されたポリペプチド:配列番号221;配列番号222;配列番号223;配列番号224;および/または配列番号225の1、2、3、4または5つ、またはその抗原性フラグメント、および/または、
(c)以下の単離されたポリペプチド:配列番号248;配列番号249;配列番号250;配列番号251;および/または配列番号252の1、2、3、4または5つ、またはその抗原性フラグメント、および/または、
(d)以下の単離されたポリペプチド:(i)ヌクレオチド配列である配列番号91(ユビキチンチオエステラーゼ)を含むORFによりコードされるポリペプチド;(ii)配列番号271または272;(iii)配列番号273;(iv)配列番号94(H.sapiensα−1(VI)コラーゲン)のORFによりコードされるポリペプチド;および/または(v)配列番号274の1、2、3、4または5つ、または該ポリペプチドの抗原性フラグメント、および/または、
(e)以下の核酸:(i)配列番号120(ケラチン14);(ii)配列番号121(コラーゲンVII型、α1);(iii)配列番号122(ケラチン19);(iv)配列番号123(プレキシンB3);および(v)配列番号125(インテグリンβ4)を含むORFによりコードされるポリペプチドの1、2、3、4または5つ;またはその抗原性フラグメント、および/または、
(f)核酸である配列194(ヘパリンスルフェートプロテオグリカン)および/または配列番号195(IGFII)によりコードされる単離されたポリペプチド1つまたは2つ;またはその抗原性フラグメント;
を含む、組成物。
【請求項16】
(a)、(b)、(c)、(d)および(e)の各々が記載されたポリペプチドの5つ全てを含み、そして、(f)が前記ポリペプチドの両方を含む、請求項16に記載の組成物。
【請求項17】
請求項15に記載の組成物のポリペプチドまたはフラグメントに特異的な抗体を含む組成物。
【請求項18】
アレイの形態の請求項19に記載の組成物。
【請求項19】
下記工程:
(a)腎臓癌の試料のポリヌクレオチドに高ストリンジェンシーな条件下で請求項1に記載の組成物の核酸をハイブリダイズさせること;および、
(b)ベースライン値に対して該組成物の該核酸にハイブリダイズした該試料ポリヌクレオチドの量を比較すること;
を含み、ハイブリダイズした試料ポリヌクレオチドの量が該腎腫瘍中のポリヌクレオチドの発現のレベルを示すものである、対象における腎臓癌のサブタイプを決定するための方法。
【請求項20】
前記核酸組成物がアレイの形態である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
請求項19または20に記載の方法であって、
(a)表1に記載された核酸1つ以上へのそのハイブリダイゼーションにより決定した場合に、前記試料ポリヌクレオチドの発現が前記ベースライン値と比較してアップレギュレートされている場合に、腎腫瘍は明細胞RCCであり;
(b)表2に記載された核酸1つ以上へのそのハイブリダイゼーションにより決定した場合に、該試料ポリヌクレオチドの発現が前記ベースライン値と比較してアップレギュレートされている場合に、該腎腫瘍は乳頭状RCCであり;
(c)表3に記載された核酸1つ以上へのそのハイブリダイゼーションにより決定した場合に、該試料ポリヌクレオチドの発現が前記ベースライン値と比較してアップレギュレートされている場合に、該腎腫瘍は嫌色素性RCC/膨大細胞腫であり;
(d)表5に記載された核酸1つ以上へのそのハイブリダイゼーションにより決定した場合に、該試料ポリヌクレオチドの発現が前記ベースライン値と比較してアップレギュレートされている場合に、該腎腫瘍は肉腫様RCCであり;
(e)表6に記載された核酸1つ以上へのそのハイブリダイゼーションにより決定した場合に、該試料ポリヌクレオチドの発現が前記ベースライン値と比較してアップレギュレートされている場合に、該腎腫瘍は移行上皮癌であり;そして、
(f)配列番号194または配列番号195によって示された核酸1つ以上へのそのハイブリダイゼーションにより反映される、該試料ポリヌクレオチドの発現が前記ベースライン値と比較してアップレギュレートされている場合に、該腎腫瘍はウィルムス腫である;
方法。
【請求項22】
前記試料ポリヌクレオチドが検出可能な標識により標識されている、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
前記検出可能な標識が蛍光標識である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
下記工程:
(a)抗体がポリペプチドに特異的に結合するために有効な条件下で、腎臓癌から得たポリペプチド試料に請求項17の抗体組成物を接触させること;および、
(b)該結合の量をベースライン値と比較すること、
を含み、
該特異的抗体への該試料ポリペプチドの結合の量が該腎腫瘍におけるポリペプチドの発現のレベルを示すものであり、
該発現のレベルが腎臓癌のサブタイプに特徴的である、
対象における腎臓癌のサブタイプを決定するための、方法。
【請求項25】
下記成分:
(a)請求項1または6の核酸組成物;および、場合により、
(b)試料ポリヌクレオチドへの組成物の核酸のハイブリダイゼーションを促進し、および/または該ハイブリダイズしたポリヌクレオチドの検出を促進する試薬1つ以上;
を含む、腎臓癌のサブタイプを示す腎腫瘍試料中のポリヌクレオチドの存在および/または量を検出するための、キット。
【請求項26】
前記核酸組成物がアレイの形態である、請求項25に記載のキット。
【請求項27】
下記成分:
(a)請求項17に記載の抗体組成物;および、場合により、
(b)試料ポリペプチドへの組成物の抗体の結合を促進し、および/または該抗体結合の検出を促進する試薬1つ以上;
を含む、腎臓癌のサブタイプを示す腎腫瘍試料中のポリペプチドの存在および/または量を検出するための、キット。
【請求項28】
前記核酸組成物がアレイの形態である、請求項27に記載のキット。

【公表番号】特表2006−501849(P2006−501849A)
【公表日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−543157(P2004−543157)
【出願日】平成15年10月6日(2003.10.6)
【国際出願番号】PCT/US2003/031476
【国際公開番号】WO2004/032842
【国際公開日】平成16年4月22日(2004.4.22)
【出願人】(503004002)ヴァン アンデル リサーチ インスティチュート (1)
【Fターム(参考)】