説明

腐食検出装置及び腐食検出方法

【課題】 配管の腐食を精度良く検出する腐食検出装置及び腐食検出方法を提供する。
【解決手段】 腐食検出装置10は、コンピュータシステム12、抵抗部材を含んで構成されるセンサ14A、14B、センサの抵抗部材の抵抗値に対応した腐食量を表す信号を出力する腐食量出力装置16A、16B等を含んで構成され、センサ14A、14Bは、少なくとも一部の期間が重複されて配管32に取り付けられる。制御装置18は、センサ14Aを使用中は、腐食量出力装置16Aからの出力値を用いて腐食量を計算し、センサ14Bの取り付け後、腐食速度の高い初期の所定期間経過後に、使用するセンサをセンサ14Bに切り替え、腐食量出力装置16Bからの出力値を用いて腐食量を計算する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腐食検出装置及び腐食検出方法に係り、より詳しくは、建物の配管等の腐食を検出することが可能な腐食検出装置及び腐食検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば空調設備における冷水や温水を供給する配管の腐食量を検出する方法として分極抵抗法、電気抵抗法等が知られている。
【0003】
特許文献1及び特許文献2には、分極抵抗法を用いて配管の腐食を検出する装置が記載されているが、分極抵抗法を用いた装置では、リアルタイムで腐食速度を計測することができるが、配管内の電極の表面が錆びで覆われてしまった場合、正確に腐食速度を得るのが困難である、という問題があった。
【0004】
また、電気抵抗法は、金属の電気抵抗が長さ方向に一定である場合、その金属の断面積によって電気抵抗が定まるという原理を用いて腐食量を測定する方法である。具体的には、配管内にセンサを設置し、このセンサが腐食することによって抵抗値が増加するのを検出することにより、センサの腐食量を検出し、これを配管の腐食量とする方法である。
【0005】
本発明者らは、電気抵抗法及び重量減測定法により配管の腐食速度を測定し、これらの相関性について考察した。図6には、電気抵抗法及び重量減測定法の各々についての経過時間(日)と腐食速度(mm/年)との関係を実験により測定した結果を示した。図6における「連続系」とは、配管に常時通水した状態で測定した場合を示し、「発停系」とは、断続的に通水した場合を示す。また、「短寿命」、「長寿命」とは、電気抵抗法におけるセンサがそれぞれ短寿命、長寿命のものを用いた場合を示しており、「チューブ重量減より算出」とは、重量減測定法により測定した場合を示している。なお、重量減測定法は、実際と同様の環境により供試管を腐食させ、その重量減から腐食量を測定する方法であり、腐食量を精度良く測定することができる方法である。
【0006】
図6から明らかなように、電気抵抗法は、何れの場合も重量減測定法とほぼ同様の測定結果であり、両者の相関性は高く、電気抵抗法が配管の腐食を検出するのに有効であることが判った。
【特許文献1】特開2001−183346号公報
【特許文献2】特開平6−148142号公報
【特許文献3】特開2000−81419号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、電気抵抗法を用いた場合、配管の寿命よりもセンサの寿命の方が短いのが通常であるため、センサを定期的に交換しなければならない。図6からも明らかなように、配管及びセンサの腐食速度は、初期において高く、腐食の進行と共に表面が腐食生成物で覆われることにより徐々に低くなる。従って、センサを交換した場合、実際の配管の腐食速度は低く安定している状態にもかかわらず、センサの初期腐食速度が高いため、その分余計に腐食量を計算してしまう。図7(A)には、センサを寿命に応じて交換した場合の腐食量の積算値の変化を、同図(B)には、各センサの腐食量の変化を、同図(C)には、配管の腐食の測定場所P1におけるセンサの交換時期について模式的に示した。同図(C)に示すt1、t2の時点がセンサを交換した時点であり、同図(B)に示すように、センサを交換してから最初の所定期間は腐食量が急激に高くなるため、同図(A)に示すように、その分だけ腐食量を余分に積算してしまう。このため、電気抵抗法においては、配管の腐食検出の精度、すなわち配管の寿命推定の精度が低下する、という問題があった。
【0008】
ところで、近年では、省エネルギー性に加えて、環境保全や利便性、安全性の向上など様々なメリットが期待される冷暖房システムとして、地域冷暖房(DHC:District Heating and Cooling)システムが注目されている。この地域冷暖房システムは、都市ガス・電力等を熱源として、エネルギープラントで冷水、蒸気、温水などを製造して、地域配管・受入管・受入施設を介して需要家へ供給し、需要家で冷房・暖房・給湯などに用いるシステムであり、需要家で熱エネルギーを使用した後は、再びエネルギープラントに返送する循環方式をとっている。
【0009】
このような地域冷暖房システムでは、冷水や温水を供給する配管の腐食を精度良く検出する必要があるが、従来における電気抵抗法を用いて腐食を検出すると精度が低くなる、という問題があった。
【0010】
本発明は、上記事実に鑑みて成されたものであり、配管の腐食を精度良く検出することができる腐食検出装置及び腐食検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、配管の異なる部位に各々取り付けられると共に少なくとも一部期間において重複して取り付けられ、腐食量に応じて電気抵抗値が変化する抵抗部材が設けられた複数のセンサと、前記複数のセンサの各々に対応して設けられ、前記抵抗部材の電気抵抗値に応じた腐食量を表す信号を出力する複数の腐食量出力手段と、前記複数の腐食量出力手段のうち少なくとも一つの腐食量出力手段を選択する選択手段と、選択した腐食量出力手段の出力値に基づいて、前記配管の腐食量を求める演算手段と、前記腐食量出力手段を切り替える切替手段と、を備えたことを特徴とする。
【0012】
この発明によれば、配管の腐食を検出するためのセンサ及び腐食量出力手段の組を複数設けた構成であり、複数のセンサは、配管の異なる部位に各々取り付けられると共に少なくとも一部期間において重複して取り付けられる。また、各センサは、腐食量に応じて電気抵抗値が変化する抵抗部材が設けられた構成である。このセンサは、例えば配管に取り付けられてから最初の所定期間における腐食速度が速く、その後徐々に腐食速度が低下する性質を有するが、本発明に適用されるセンサは、このようなセンサに限られるものではない。
【0013】
腐食量出力手段は、センサの抵抗部材の電気抵抗値の変化を検出し、この電気抵抗値に応じた腐食量を表す信号を出力する。
【0014】
選択手段は、複数の腐食量出力手段のうち少なくとも一つの腐食量出力手段を選択する手段であり、自動で選択する構成でも手動で選択する構成でもよい。
【0015】
演算手段は、選択した腐食量出力手段の出力値に基づいて、前記配管の腐食量を求める。
【0016】
切替手段は、現在選択されている腐食量出力手段から他の腐食量出力手段に切り替える手段であり、自動で切り替える構成でも手動で切り替える構成でもよい。
【0017】
このように、複数のセンサの取り付け期間を重複させると共に交互に使用することができるので、取り付け直後に腐食量出力手段を切り替えるのではなく、初期腐食が影響する期間を経過してから切り替えることが可能となる。従って、腐食量を精度良く検出することができ、配管の寿命を精度よく予測することが可能となる。
【0018】
また、請求項2に記載したように、前記一部期間内における前記腐食量出力手段の切替時期を判断する切替時期判断手段をさらに備え、前記切替手段は、前記切替時期と判断された場合に、前記腐食量出力手段を切り替えるようにしてもよい。
【0019】
切替時期判断手段は、重複してセンサが取り付けられた一部期間内において、現在選択されている腐食量出力手段を、他の腐食量出力手段に切り替えるべき切替時期を判断する。この切替時期は、例えば、配管にすでに切り替え用として取り付けられている他の腐食量出力手段に対応したセンサの初期腐食が影響する期間を経過し、現在選択されている腐食量出力手段に対応したセンサの腐食速度と同等になっていると判断できる時期に設定される。
【0020】
切替手段は、切替時期判断手段により腐食量出力手段の切替時期と判断された場合に、現在選択されている腐食量出力手段から他の腐食量出力手段に切り替える。
【0021】
このように、複数のセンサの取り付け期間を重複させると共に交互に使用し、かつ取り付け直後に腐食量出力手段を切り替えるのではなく、初期腐食が影響する期間を経過してから切り替えるので、腐食量を精度良く検出することができ、配管の寿命を精度よく予測することが可能となる。また、自動的に腐食量出力手段を切り替えるため、より効率的に測定を行うことができる。
【0022】
また、請求項3に記載したように、前記切替時期判断手段は、切り替え用の腐食量出力手段に対応したセンサを取り付けてから第1の所定期間が経過した場合を切替時期と判断することができる。この場合、第1の所定期間は、切り替え用の腐食量出力手段に対応したセンサが配管に取り付けられてから、そのセンサの初期腐食が影響する期間を経過したと判断できる期間に設定される。
【0023】
また、請求項4に記載したように、前記切替時期判断手段は、切り替え用の腐食量出力手段の出力値に基づいて切替時期を判断するようにしてもよい。この場合、例えばすでに配管に取り付けられた切り替え用のセンサに対応した腐食量出力手段からの出力値に基づいて腐食速度を求め、この腐食速度が予め定められた所定閾値、すなわち初期腐食が影響する期間を経過したと判断できる所定閾値以下になった場合を切り替え時期と判断することができる。
【0024】
また、請求項5に記載したように、前記切替手段によって切り替えられる腐食量出力手段に対応したセンサの取付時期を判断する取付時期判断手段と、前記取付時期と判断された場合に報知する報知手段と、をさらに備えた構成とすることができる。
【0025】
これにより、容易にセンサの取付時期を把握することができる。なお、請求項6に記載したように、前記取付時期判断手段は、前記選択された腐食量出力手段に対応したセンサを取り付けてから第2の所定期間が経過した場合に取付時期と判断することができる。この場合、第2の所定期間は、現在選択されている腐食量出力手段に対応したセンサの寿命が近づいていると判断できる値に設定される。
【0026】
また、請求項7に記載したように、前記取付時期判断手段は、選択された腐食量出力手段の出力値に基づいて取付時期を判断するようにしてもよい。この場合、例えば現在選択されている腐食量出力手段からの出力値に基づいて腐食量の積算値を求め、この積算値が、現在選択されている腐食量出力手段に対応したセンサの寿命に対応して予め定められた所定閾値以上になった場合を取付時期と判断することができる。
【0027】
また、請求項8に記載したように、前記配管の腐食量が予め定めた所定値以上になった場合に警告する警告手段をさらに備えた構成としてもよい。これにより、配管の寿命が到来したことを容易に把握することができる。
【0028】
また、請求項9記載の発明の腐食検出方法は、配管の異なる部位に各々取り付けられると共に少なくとも一部期間において重複して取り付けられ、腐食量に応じて電気抵抗値が変化する抵抗部材が設けられた複数のセンサの各々に対応して設けられた、前記抵抗部材の電気抵抗値に応じた腐食量を表す信号を出力する複数の腐食量出力手段のうち少なくとも一つの腐食量出力手段を選択させ、選択した腐食量出力手段の出力値に基づいて、前記配管の腐食量を求め、前記腐食量出力手段を切り替えることを特徴とする。
【0029】
この方法によれば、複数のセンサの取り付け期間を重複させると共に交互に使用することができるので、取り付け直後に腐食量出力手段を切り替えるのではなく、初期腐食が影響する期間を経過してから切り替えることが可能となる。従って、腐食量を精度良く検出することができ、配管の寿命を精度よく予測することが可能となる。
【発明の効果】
【0030】
以上説明したように、本発明によれば、配管の腐食を精度良く検出することができる、という優れた効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態の一例について詳細に説明する。
【0032】
図1には、腐食検出装置10の概略構成を示した。図1に示すように、腐食検出装置10は、コンピュータシステム12、センサ14A、センサ14B、腐食量出力装置16A、16B等を含んで構成されている。
【0033】
コンピュータシステム12は、制御装置18、表示装置20、入力装置22、タイマ24、及びメモリ26を含んで構成されている。
【0034】
表示装置20は、例えば液晶ディスプレイやCRT等で構成され、センサ14A、14Bの腐食量(例えば腐食の厚み)のモニタリング結果や各種メッセージ等を表示するための装置である。
【0035】
入力装置22は、例えばキーボードやマウス等を含んで構成され、各種指示や各種データの入力等をするための装置である。
【0036】
タイマ24は、複数のカウンタを含んで構成され、各カウンタは、例えば制御装置18からカウント値が指示されるとカウントを開始し、指示されたカウント値のカウントが終了すると制御装置18に通知する。
【0037】
メモリ26は、例えばROMやRAMを含んで構成され、後述する制御プログラムや各種データが記憶される。
【0038】
図2(A)には、センサ14Aの上面図を、同図(B)には、同図(A)のA−A断面図を示した。なお、センサ14Bも同様の構成であるので、以下ではセンサ14Aについて説明し、センサ14Bの詳細な説明は省略する。
【0039】
センサ14Aは、円柱状の上面部28Aに抵抗部材30が略渦巻き状に埋め込まれた構成となっている。このようなセンサ14Aは、図1に示すように配管32の管内に上面部28Aが露出するように取り付けられる。センサ14Bも同様に、配管32の管内に上面部28Bが露出するように取り付けられる。なお、センサ14Aが取り付けられる場所P1とセンサ14Bが取り付けられる場所P2とは互いに近傍の位置に設定される。また、図1では、配管32の管内に各センサの上面部が露出するのを強調するために、センサの上面部が配管の内壁面よりも突出するように記載したが、各センサの上面部と、配管32の内壁面との位置が略一致するように各センサを設置することが好ましい。
【0040】
これにより、センサ14A、14Bの各抵抗部材30は、配管32の管内を流通する冷水や温水等に触れ、徐々に腐食していく。この結果、抵抗部材30の電気抵抗値(以下、単に抵抗値という)が徐々に大きくなるため、この抵抗値に基づいて腐食量を判断することが可能となる。
【0041】
なお、抵抗部材30は、配管32の材質と同一のものを使用することが好ましい。これにより、配管の寿命を精度よく検出することが可能となる。また、センサ14A、14Bの構成は一例であり、これに限定されるものではない。
【0042】
センサ14Aは、配線34、36を介して腐食量出力装置16Aと接続され、センサ14Bは、配線38、40を介して腐食量出力装置16Bと接続される。
【0043】
腐食量出力装置16Aは、例えば図示しない直流電圧電源及びホイートストンブリッジ等の回路を含んで構成され、抵抗部材30はホイートストンブリッジの一部を構成している。この場合、抵抗部材30の抵抗値の変化に対応して腐食量出力装置16Aの回路内を流れる電流の電流値が変化する。例えば、抵抗部材30の抵抗値が大きくなると腐食量出力装置16Aから出力される電流値は小さくなる。腐食量出力装置16Aでは、この電流の電流値を腐食量を表す信号として制御装置18に出力する。従って、制御装置では、腐食量出力装置16Aから出力される電流値が小さくなるほどセンサ14Aの腐食量が大きくなっていると判断することができる。
【0044】
なお、腐食量出力装置16Aは、電流値に限らず抵抗値そのものを表す信号を出力する構成としてもよいし、抵抗値に応じた電圧値を表す信号を出力する構成としてもよく、センサ14Aの腐食量、すなわち腐食量を示す信号を出力するものであればよい。
【0045】
次に、このような腐食検出装置10を前述した地域冷暖房システムの配管の腐食検出に適用する場合におけるセンサの設置場所について説明する。
【0046】
図3(A)には、所謂クローズ系と呼ばれる地域冷暖房システムについて、同図(B)には、所謂オープン系と呼ばれる地域冷暖房システムについて、概略的な構成を示した。
【0047】
図3(A)に示すクローズ系の地域冷暖房システム42は、蓄熱層46、熱交換機48、冷凍機50、ヘッダ52、54等を含んで構成され、蓄熱層46によって熱せられた温水が循環する配管56と、負荷58側、即ち需要家側に温水や冷水等が循環する配管60とが分離したシステムである。この場合、蓄熱層46によって熱せられた温水が配管56を循環し、この温水の熱が熱交換機48によって配管60を循環する水に熱交換されて温水となり、この温水又は冷凍機50によって冷やされた冷水が、これらを分配するヘッダ52、54を介して負荷58に供給される。このシステムの場合、負荷58側を低酸素状態にすることができるが、蓄熱層46側が高酸素となり配管56が腐食しやすくなる。このため、図3(A)に示すように、蓄熱層46側の配管56上の測定ポイント62にセンサを取り付けて配管の腐食を検出することが好ましい。
【0048】
一方、図3(B)に示すオープン系の地域冷暖房システム44は、蓄熱層64、冷凍機66、ヘッダ68、70等を含んで構成され、蓄熱層64によって熱せられた温水又は冷凍機66によって冷やされた冷水が、これらを分配するヘッダ68、70を介して負荷72に供給される。このシステムの場合、例えば図3(B)に示すように、蓄熱層64側の配管74上に測定ポイント76、78を設け、この位置にセンサを取り付けて配管の腐食を検出する。
【0049】
次に、本実施形態の作用として、制御装置18で実行される制御ルーチンの処理について、図4に示すフローチャートを参照して説明する。
【0050】
なお、本ルーチンは、通常はセンサ14A及びセンサ14Bのうち何れかのセンサが配管32に取り付けられた状態において実行される。
【0051】
まず、ステップ100では、腐食量出力装置16A及び腐食量出力装置16Bから出力される信号のうち腐食量の検出に用いる方の装置、すなわち配管32に取り付けられているセンサに対応した腐食量出力装置を選択する。使用する腐食量出力装置は、例えばオペレータの指示により選択させるようにしてもよいし、予め定めておいても良い。なお、以下では、最初に腐食量出力装置16Aが選択されたものとして説明する。
【0052】
ステップ102では、タイマ24のカウンタAにセンサ14Aに対応して予め定めた第1のカウント値をセットする。これにより、カウンタAがカウントを開始する。この第1のカウント値は、例えば予めメモリ26に記憶される。また、第1のカウント値は、使用中のセンサ(ここではセンサ14A)を配管32に取り付けてから、もう一方の新しいセンサ(ここではセンサ14B)を配管32に取り付けるべき時期に対応する値、すなわち使用中のセンサの寿命が近づいていると判断できる値に設定される。
【0053】
図5(A)には、腐食量の積算値を、図5(B)には、場所P1に取り付けられたセンサ14A、場所P2に取り付けられたセンサ14Bの腐食量を、同図(C)には場所P1、P2に取り付けられるセンサの取付時期及び切替時期の一例について概略的に示した。
【0054】
図5(C)に示すように、センサ14Aを場所P1にt1の時点で取り付けた場合には、センサ14Aがほぼ寿命となるt3の時点よりも所定期間前のt2の時点でセンサ14Bを場所P2に取り付けておく必要がある。従って、第1のカウンタ値は、t1〜t2の期間に対応した値に設定される。
【0055】
そして、ステップ104では、選択した腐食量出力装置16Aから出力信号、すなわち電流値を取り込み、この電流値に対応した腐食量を求めてメモリ26に記憶する。なお、電流値に対応する腐食量は、例えば電流値と腐食量(例えば腐食部分の厚み等)との対応関係を予めメモリ26に記憶しておき、この対応関係に基づいて求めることができる。
【0056】
ステップ106では、センサ14Bの取付時期か否かを判断する。これは、カウンタAがカウント終了したことをタイマ24から通知されたか否かを判断すればよい。なお、これに限らず、腐食量の積算値を計算し、この腐食量の積算値が、センサの寿命に対応する予め定めた所定閾値以上になったか否かを判断することにより取付時期か否かを判断するようにしてもよい。
【0057】
そして、取付時期と判断された場合には、ステップ108へ移行し、取付時期でないと判断された場合には、ステップ114へ移行する。
【0058】
ステップ108では、取付時期が到来したことを報知する処理を行う。具体的には、例えばセンサ14Bを取り付けるべき時期が到来したことを表すメッセージを表示装置20に表示させる等の処理を行う。これにより、オペレータは、取付時期が到来したことを容易に認識することができる。
【0059】
ステップ110では、センサ14Bの取り付けが終了したか否かを判断し、終了していない場合には、取り付けが終了されるまで待機し、取り付けが終了した場合には、ステップ112へ移行する。なお、取り付けの終了は、例えばオペレータの取付終了を示す操作による入力装置22からの入力により判断することができる。また、センサの取り付け開始直後は腐食速度が速いので、腐食量出力装置16Bからの出力信号に基づいて腐食速度を計算し、この腐食速度が予め定めた所定閾値以上の場合に取り付けが終了したと判断してもよい。
【0060】
ステップ112では、タイマ24のカウンタAに、センサ14Bに対応した第1のカウント値をセットすると共に、タイマ24のカウンタBに、センサ14Bに対応した第2のカウント値を設定する。これにより、カウンタA及びカウンタBがカウントを開始する。
【0061】
なお、この場合の第1のカウント値は、センサ14Bを配管32に取り付けてから寿命が近づいていると判断できる値、具体的には、図5(C)においてt2〜t4の期間に対応した値である、この第1のカウント値は、予めメモリ26に記憶される。
【0062】
また、第2のカウント値は、切り替え用のセンサ(ここではセンサ14B)を配管32に取り付けてから初期腐食が影響する期間、すなわち腐食速度が速い所定期間に対応した値に設定され、予めメモリ26に記憶される。具体的には、図5(C)において、t2〜t3の期間に設定される。
【0063】
ステップ114では、センサ14Aからセンサ14Bにセンサを切り替えるべき切替時期が到来したか否かを判断する。これは、カウンタBがカウント終了したことをタイマ24から通知されたか否かを判断すればよい。なお、これに限らず、ステップ104で求めた腐食量に基づいて腐食速度を計算し、この腐食速度に基づいて判断してもよい。例えば、腐食速度は最初高く、急激に低下した後、徐々に低下するので、例えば腐食速度の傾きが負の方向に大きい状態から急激に負の方向に小さくなった場合を腐食速度が安定したと判断し、切替時期と判断することができる。
【0064】
そして、切替時期が到来したと判断した場合には、ステップ116へ移行し、切替時期が到来していないと判断した場合には、ステップ120へ移行する。
【0065】
ステップ116では、出力信号を取り込む腐食量出力装置を腐食量出力装置16Aから腐食量出力装置16Bに切り替える。これにより、図5(C)のt3の時点において、使用するセンサがセンサ14Aからセンサ14Bに切り替えられる。
【0066】
ステップ118では、それまでに交換したセンサによって検出された腐食量を、腐食速度の速い所定期間の腐食量を除いて積算し、積算値をメモリ26に記憶する。この積算値が配管32の腐食量に相当することとなる。例えば図5(C)において、t6の時点においてセンサ14Aからセンサ14Bに切り替えられた場合、t1〜t3までの期間におけるセンサ14Aの腐食量と、t3〜t5までの期間におけるセンサ14Bの腐食量と、t5〜t6の期間におけるセンサ14Aの腐食量と、をメモリ26に記憶された各センサの各時点における腐食量から計算し、これらを積算する。なお、例えばt3〜t5までの期間におけるセンサ14Bの腐食量は、t3の時点において取り込まれた腐食量と、t5の時点において取り込まれた腐食量との差を求めればよい。そして、各センサの腐食量の積算値を配管32のトータルの腐食量としてメモリ26に記憶する。
【0067】
ステップ120では、配管32が寿命か否かを判断する。具体的には、ステップ118で計算した配管32の腐食量が予め定めた所定閾値以上か否かを判断する。そして、配管32の腐食量が所定閾値以上の場合には、配管32が寿命であると判断し、ステップ122へ移行する。一方、配管32の腐食量が所定閾値未満の場合には、配管32が寿命でないと判断し、ステップ104へ移行して上記と同様の処理を繰り返す。
【0068】
ステップ122では警告処理を行う。具体的には、例えば配管32が寿命であることを表すメッセージを表示装置20に表示させる等の処理を行う。これにより、オペレータは、配管32が寿命であることを容易に認識することができる。
【0069】
このように、複数のセンサの取り付け期間を重複させると共に交互に使用し、かつ取り付け直後に使用するセンサを切り替えるのではなく、初期腐食が影響する期間の経過後に使用するセンサを切り替える。図5(C)に示す例の場合、t1、t4の時点でセンサ14Aを取り付け、t2の時点でセンサ14Bを取り付けるが、センサ14Aからセンサ14Bへの切り替えはt3の時点で切り替え、センサ14Bからセンサ14Aへの切り替えはt5の時点で切り替える。
【0070】
これにより、図5(A)に示すように、初期腐食が影響するt2〜t3の期間、t4〜t5の期間における腐食量は除外されて腐食量が積算されるので、配管の腐食を精度よく検出することができ、配管の寿命を精度よく予測することが可能となる。
【0071】
また、従来では、図3(A)に示したようなクローズ系の地域冷暖房システム42における配管の腐食は、DO(Dissolved Oxygen:溶存酸素)計によって溶存酸素を測定することにより間接的に検出しており、図3(B)に示したようなオープン系の地域冷暖房システム44における配管の腐食は、DO計、pH計によって溶存酸素やpH値を測定したり、配管の電導度等を測定したりすることにより間接的に検出していた。このように、従来では間接的に配管の腐食を検出していたため、精度がよいとは言えなかったが、本発明を地域冷暖房システムに適用することにより、配管の腐食の検出を精度良く行うことができる。また、本発明は、地域冷暖房システムにおける配管に限らず、腐食が発生するような配管であればどのような配管にも適用可能であることはいうまでもない。
【0072】
また、本実施形態では、センサ及び腐食量出力装置を2組用いて配管の腐食を検出する場合について説明したが、これに限らず、センサ及び腐食量出力装置を3組以上用いて配管の腐食を検出するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】腐食検出装置の概略構成を示す図である。
【図2】(A)はセンサの上面図、(B)は(A)のA−A断面図である。
【図3】地域冷暖房システムの概略構成図である。
【図4】制御装置で実行される制御ルーチンのフローチャートである。
【図5】(A)は腐食速度を表す線図、(B)はセンサの使用期間を表すイメージ図である。
【図6】電気抵抗法及び重量減測定法の各々についての経過時間と腐食速度との関係を表すグラフである。
【図7】(A)は従来例に係るセンサの腐食速度を表す線図、(B)はセンサの使用期間を表すイメージ図である。
【符号の説明】
【0074】
10 腐食検出装置
12 コンピュータシステム
14A、14B センサ
16A、16B 腐食量出力装置
18 制御装置
20 表示装置
22 入力装置
24 タイマ
26 メモリ
30 抵抗部材
32 配管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配管の異なる部位に各々取り付けられると共に少なくとも一部期間において重複して取り付けられ、腐食量に応じて電気抵抗値が変化する抵抗部材が設けられた複数のセンサと、
前記複数のセンサの各々に対応して設けられ、前記抵抗部材の電気抵抗値に応じた腐食量を表す信号を出力する複数の腐食量出力手段と、
前記複数の腐食量出力手段のうち少なくとも一つの腐食量出力手段を選択する選択手段と、
選択した腐食量出力手段の出力値に基づいて、前記配管の腐食量を求める演算手段と、
前記腐食量出力手段を切り替える切替手段と、
を備えた腐食検出装置。
【請求項2】
前記一部期間内における前記腐食量出力手段の切替時期を判断する切替時期判断手段をさらに備え、
前記切替手段は、前記切替時期と判断された場合に、前記腐食量出力手段を切り替えることを特徴とする請求項1記載の腐食検出装置。
【請求項3】
前記切替時期判断手段は、切り替え用の腐食量出力手段に対応したセンサを取り付けてから第1の所定期間が経過した場合を切替時期と判断することを特徴とする請求項2記載の腐食検出装置。
【請求項4】
前記切替時期判断手段は、切り替え用の腐食量出力手段の出力値に基づいて切替時期を判断することを特徴とする請求項2記載の腐食検出装置。
【請求項5】
前記切替手段によって切り替えられる腐食量出力手段に対応したセンサの取付時期を判断する取付時期判断手段と、
前記取付時期と判断された場合に報知する報知手段と、
をさらに備えたことを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の腐食検出装置。
【請求項6】
前記取付時期判断手段は、前記選択された腐食量出力手段に対応したセンサを取り付けてから第2の所定期間が経過した場合に取付時期と判断することを特徴とする請求項5記載の腐食検出装置。
【請求項7】
前記取付時期判断手段は、選択された腐食量出力手段の出力値に基づいて取付時期を判断することを特徴とする請求項5記載の腐食検出装置。
【請求項8】
前記配管の腐食量が予め定めた所定値以上になった場合に警告する警告手段をさらに備えたことを特徴とする請求項1乃至請求項7の何れか1項に記載の腐食検出装置。
【請求項9】
配管の異なる部位に各々取り付けられると共に少なくとも一部期間において重複して取り付けられ、腐食量に応じて電気抵抗値が変化する抵抗部材が設けられた複数のセンサの各々に対応して設けられた、前記抵抗部材の電気抵抗値に応じた腐食量を表す信号を出力する複数の腐食量出力手段のうち少なくとも一つの腐食量出力手段を選択させ、
選択した腐食量出力手段の出力値に基づいて、前記配管の腐食量を求め、
前記腐食量出力手段を切り替える
腐食検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−162382(P2006−162382A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−352784(P2004−352784)
【出願日】平成16年12月6日(2004.12.6)
【出願人】(000003621)株式会社竹中工務店 (1,669)
【出願人】(000001063)栗田工業株式会社 (1,536)
【Fターム(参考)】