説明

腐食電位センサ

【課題】寿命をさらに延ばすことができる腐食電位センサを提供する。
【解決手段】腐食電位センサ10は、電極キャップ11,電極固定体12,管状絶縁体15,管状金属筐体18,導線19を備えている。管状絶縁体15の両端部に、電極固定体12及び管状金属筐体18がそれぞれ接続される。導線19が、管状絶縁体15及び管状金属筐体18内を通り、電極固定体12の内面に接続される。電極固定体12の接液面を覆うように電極キャップ11を設置する。このような構成により、上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腐食電位センサに係り、特に、原子力プラント運転期間中に原子炉冷却水に接する金属材料の腐食電位を測定するのに好適な腐食電位センサに関する。
【背景技術】
【0002】
原子力プラントの稼働率向上の観点から、原子炉の炉内構造物及び圧力境界部材を構成する構造材料(ステンレス鋼,ニッケル基合金)及び配管を構成する材料(ステンレス鋼,低合金鋼,炭素鋼)の応力腐食割れや流動加速腐食を抑制することは、重要な課題である。
【0003】
応力腐食割れは、材料,応力及び腐食環境の3因子が特定の条件になった場合に発生するが、一因子を特定の条件から改善することにより抑制することができる。流動加速腐食も、材料及び腐食環境が特定の条件になった場合に発生し、一因子を特定の条件から改善することにより抑制することができる。
【0004】
応力腐食割れに対する腐食環境改善技術の従来技術の一例として、水素注入がある。原子炉内では、中性子やγ線により原子炉内の冷却水が放射線分解して、酸素及び過酸化水素が発生する。酸素及び過酸化水素を含んでいる冷却水が腐食環境を形成する。水素注入は、水素を注入した給水が原子炉内に供給されることによって、その水素を冷却水に含まれる酸素及び過酸化水素と反応させ、冷却水中の酸素及び過酸化水素の濃度を低減させる技術である。この水素注入は、原子炉の腐食環境を改善する技術である。一方、流動加速腐食に関する腐食環境改善技術の一例として酸素注入がある。給水中の酸素濃度が10μg/L以下になると、給水が流れる炭素鋼製の給水配管は給水による流動加速腐食により減肉する。酸素注入は給水に酸素を注入して、給水配管の流動加速腐食を抑制する技術である。
【0005】
腐食環境改善技術の改善効果の確認は、例えば、対象となる構造部材の腐食電位を測定することによって行われる。沸騰水型原子炉では、腐食電位を−0.23V(SHE)以下に低減すると、応力腐食割れの発生を抑制できることが報告されている(非特許文献1を参照)。また、酸素を注入して腐食電位を−0.2V(SHE)以上に増加させると流動加速腐食を抑制できることが報告されている(非特許文献2を参照)。なお、V(SHE)とは標準水素電極に対する電位である。
【0006】
腐食環境改善技術の改善効果の確認は運転サイクルを通して測定することが望まれる。プラントの流動条件がプラント運転中に変化して腐食電位が変動する可能性があるためである。従って、少なくとも1運転サイクルを通して腐食電位を測定することが望ましい。
【0007】
腐食電位センサは使用される環境下で一定の電位を発生し、更に電極が測定部位と電気的に絶縁されることが必要である。腐食電位は測定部位と腐食電位センサの電位差として電位計を用いて測定される。腐食電位を測定するために用いられる腐食電位センサは、例えば、特許文献1が挙げられる。特許文献1では、白金を電極として使用する腐食電位センサを記述している。この腐食電位センサは、白金表面で水素の酸化還元反応を生じさせることにより一定の電位を発生させる。
【0008】
腐食電位センサは電極と金属筐体の間に絶縁体を設置して、電極と金属筐体が電気的に絶縁される構造となっている。絶縁体としては、沸騰水型原子炉の高温環境,放射線環境に耐えられるセラミックスが用いられる。電極と絶縁体及び絶縁体と金属筐体の接続は、絶縁体の接続部表面に金属の薄膜を設置する処理(メタライズ処理と呼ぶ)を施してからろう付けされる。このろう付け部分の腐食を抑制する方法が、特許文献2や特許文献3に開示されている。特許文献2は、ろう付け部分にセラミックス層を設置して高温水が直接接触しないようにすることで、ろう付け部分の腐食を抑制する技術を開示している。また、特許文献3は、ろう付け部分に腐食し難い白金をめっきすることでろう付け部分の腐食を抑制する技術を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平3−17545号公報
【特許文献2】特開平11−148909号公報
【特許文献3】特開2002−116281公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】R.L. Cowan, et al.,“Experience with hydrogen water chemistry in boiling water reactors”,Water Chemistry of Nuclear Reactor Systems 4, Bournemouth, U.K., Oct. 13-17, 1986, Vol.1, p.29 (1986)
【非特許文献2】佐藤智徳 他、日本原子力学会「2005年秋の大会」、八戸工業大学、Aug.13−15,2005,p.458(2005)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
第1の課題として、白金を電極とするセンサは溶存酸素濃度に対する溶存水素濃度のモル比が2以上の環境でないと一定の電位とするのが困難であるということである。これは、白金上で生じる水素の酸化還元反応の他に、白金上生じる酸素の酸化還元反応による電位が重畳し、無視できなくなるためである。運転状況により水質は変化するため、腐食電位センサの電極は、溶存酸素濃度に対する溶存水素濃度に依存せずに一定電位を発生する金属が望ましい。
【0012】
第2の課題として、電極と金属筐体を電気的に絶縁して接続する絶縁材の接合部分が壊れやすいということである。電極と絶縁体及び絶縁体と金属筐体は、前述の通り、ろう付けされている。高温水中ではろう付け部分が腐食したり、電極と絶縁体又は絶縁体と金属筐体の熱膨張差による応力で接合が外れ、水が腐食センサ内に浸透すると機能しなくなる可能性がある。従って、腐食電位センサを用いて腐食電位を長時間に亘って測定するためには、高温水中ではろう付け部分の耐食性を向上させたり、電極と絶縁体又は絶縁体と金属筐体の熱膨張差による応力で接合が外れを抑制することが重要な課題である。特に、電極と絶縁体又は絶縁体と金属筐体の熱膨張差による応力で接合が外れることに対する対策の検討が重要となる。
【0013】
本発明は、溶存酸素濃度に対する溶存水素濃度に依存せずに一定電位を発生する金属を電極として、更に、ろう付け部分が腐食することに対する対策に加えて、電極と絶縁体又は絶縁体と金属筐体の熱膨張差による応力で接合が外れることに対する対策を施し、寿命をさらに延ばすことができる腐食電位センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
課題を解決するための第一の手段は、電極を固定するための導電性の電極固定体と、接続部位の電極固定体が外側になるように重複させて電極固定体と接続する絶縁性の管状絶縁体と、接続部位の管状絶縁体が内側になるように管状絶縁体と重複させて管状接続体と接続する管状金属筐体と、管状絶縁体と管状金属筐体を通って電極固定体に接続される導線を備え、電極固定体の接液面を覆うようにジルコニウムからなる金属キャップを設置することである。
【0015】
電極となる、電極固定体の接液面を覆うようにジルコニウムからなる金属キャップは電極固定体の接液面に加えて電極固定体と管状絶縁体の接続部の接液面を覆うように設置することが望ましい。これにより電極固定体と管状絶縁体の接続部の腐食も抑制できる。
【0016】
更に、金属キャップと管状絶縁体の間に隙間がある場合は、金属スペーサとしてジルコニウムからなる金属を隙間に入れることが望ましい。水が電極固定体と管状絶縁体の接続部の接液面に拡散することを抑制することにより、より電極固定体と管状絶縁体の接続部の腐食も抑制できる。加えて、金属キャップと金属スペーサを溶接により固定することにより金属キャップが金属固定体から脱離することも抑制できる。
【0017】
電極固定体の接液面,電極固定体と管状絶縁体の接続部の接液面に加えて管状絶縁体と金属筐体の接続部の接液面に中間層を被覆し、更に中間層の接液面に白金を被覆することが望ましい。これにより電極固定体と管状絶縁体の接続部,管状絶縁体と金属筐体の接続部ともに腐食を抑制できるようになるためより望ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、腐食電位センサの寿命をさらに延ばすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の好適な一実施例である実施例1の腐食電位センサの縦断面図である。
【図2】図1に示す腐食電位センサを取付けるBWRプラントの概略構成図である。
【図3】図1に示す腐食電位センサの、図2に示す再循環系配管への取付け状態を示す詳細構成図である。
【図4】本発明の実施例1の電極キャップにメネジ、電極固定体にオネジを設置した腐食電位センサの縦断面図である。
【図5】本発明の実施例1の変形例の腐食電位センサの縦断面図である。
【図6】本発明の実施例1の別の変形例の腐食電位センサの縦断面図である。
【図7】本発明の実施例1の別の変形例の腐食電位センサの縦断面図である。
【図8】本発明の好適な一実施例である実施例2の腐食電位センサの縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0021】
本発明の好適な一実施例である実施例1の腐食電位センサを、図1〜図3を用いて以下に説明する。本実施例の腐食電位センサ10は、例えば、沸騰水型原子炉(BWR)プラントに適用される。まず、腐食電位センサ10が適用されるBWRプラントの概略構成を、図2を用いて説明する。
【0022】
BWRプラントは、原子炉,給水系,再循環系,主蒸気系,タービン37,復水器38及び原子炉浄化系を備える。原子炉30は、原子炉圧力容器31(RPVという)を有し、炉心32がRPV31内に配置されている。複数の燃料集合体(図示せず)が炉心32内に装荷されている。給水系は復水器38とRPV31を連絡する給水配管39を有する。給水ポンプ40が給水配管39に設けられる。主蒸気系は、RPV31とタービン37を連絡する主蒸気配管36を有する。再循環系は、RPV31に連絡される再循環系配管34、及び再循環系配管34に設けられた再循環ポンプ35を有する。RPV31及び再循環系は原子炉格納容器46内に設置されている。原子炉浄化系は、再循環系配管34と給水配管39に接続される浄化系配管41、及び浄化系配管41に設けられた浄化系ポンプ42及び浄化装置43を有する。水素注入装置45が給水配管39に接続される。
【0023】
RPV31内の冷却水(炉水)は、炉心32内で燃料集合体に含まれる核燃料物質の核分裂によって発生する熱で加熱され、一部が蒸気になる。この蒸気は、RPV31から排出されて主蒸気配管36を通ってタービン37に供給され、タービン37を回転させる。タービン37に連結された発電機が回転されて電力が発生する。タービン37から排出された蒸気は、復水器38で凝縮されて水になる。この凝縮水である給水が、給水ポンプ40で昇圧され、給水配管39を通ってRPV31に供給される。水素が、水素注入装置45から給水配管39内を流れる給水に注入され、給水と共にRPV31内に導かれる。炉水はこの水素を含んでいる。
【0024】
蒸気にならなかった大部分の炉水は、RPV31内に設置された気水分離器(図示せず)によって蒸気から分離される。分離された炉水は、RPV31と炉心32の間に形成されるダウンカマ33内を下降して、再循環系配管34内に流入する。再循環ポンプ35は、この炉水を昇圧する。昇圧された炉水は、ダウンカマ33内に設置されたジェットポンプ(図示せず)内に噴出され、ダウンカマ33内の炉水をジェットポンプ内に吸い込む。ジェットポンプから吐出された炉水は、炉心32に供給される。給水配管39によって導かれた水素を含む給水は、気水分離器によって分離された炉水とダウンカマ33内で混合される。再循環系配管34内に流入した炉水の一部は、浄化系配管41に導かれ、浄化系配管41に設けられた浄化装置43によって浄化される。この浄化装置43から排出された炉水は、浄化系配管41及び給水配管39を通ってRPV31内に戻される。RPV31の底部に接続されたボトムドレン配管44が炉浄化系配管41に接続される。
【0025】
腐食電位センサ10は、再循環系配管34及びボトムドレン配管44にそれぞれ設置される。再循環系配管34に設置された腐食電位センサ10を腐食電位センサ10a,ボトムドレン配管44に設置された腐食電位センサ10を腐食電位センサ10bと称する。腐食電位センサ10a,10bは、それぞれ後述する腐食電位センサ10の構成を有する。
【0026】
本実施例の腐食電位センサ10の具体的な構成を、図1を用いて説明する。腐食電位センサ10は、電極キャップ11,電極固定体12,管状絶縁体15,管状金属筐体18,導線19を備えている。電極キャップ11は、金属ジルコニウムにより構成される。管状絶縁体15は、サファイアで構成される。安定化ジルコニアによって管状絶縁体15を構成することも可能である。管状金属筐体18は、Fe−29Ni−17Co合金によって構成されている。管状金属筐体18は、Fe−29Ni−17Co合金以外に、Fe−42Ni合金またはFe−36Ni合金によって構成しても良い。管状絶縁体15の両端部に、電極固定体12及び管状金属筐体18がそれぞれ接続される。管状絶縁体15の一端部の、電極固定体12との接合面には、メタライズ処理されたメタライズ処理部13が形成されている。管状絶縁体15の他端部の、管状金属筐体18との接合面にも、メタライズ処理されたメタライズ処理部17が形成されている。先端が封鎖されてキャップ状になっている電極固定体12は、その内面がメタライズ処理部13に接触した状態で、管状絶縁体15にろう付けにて接合される。14が電極固定体12と管状絶縁体15のろう付け部である。管状金属筐体18は、その内面がメタライズ処理部17に接触した状態で、管状絶縁体15にろう付けにて接合される。16が管状金属筐体18と管状絶縁体15のろう付け部である。導線19が、管状絶縁体15及び管状金属筐体18内を通り、電極固定体12の内面に接続される。封鎖部である導線引き出し治具20が、管状金属筐体18の他端部に取付けられて管状金属筐体18を封鎖する。導線19は導線引き出し治具20を貫通して管状金属筐体18の外部、すなわち、腐食電位センサ10の外部に取り出される。
【0027】
導線引き出し治具20として、MIケーブル(MIはMineral Insulatedの略)が使用される。管状金属筐体18は、管状絶縁体15との接合部がFe−29Ni−17Co合金,Fe−42Ni合金及びFe−36Ni合金のいずれかであれば、それ以外の部分をステンレス鋼としてもよい。この場合、管状金属筐体18は、Fe−29Ni−17Co合金,Fe−42Ni合金及びFe−36Ni合金のいずれかとステンレス鋼を接合して構成される。管状絶縁体15の両端部のメタライズ処理には、タングステン,チタン及びモリブデン−マンガンのいずれかが使用される。
【0028】
電極キャップ11は電極固定体12を覆うように設置される。図4に示すように、電極固定体12にメネジ、電極キャップ11にオネジ又は電極固定体12にオネジ、電極キャップ11にメネジを設置してネジ止めすると電極キャップ11が電極固定体12から脱落し難くなり望ましい。
【0029】
以上の構造により管状絶縁体と接続され腐食電位センサ内に水が入ることを防止する役割と一定電位を発生する役割を異なる部材で果たすことにより、より寿命の長い腐食電位センサとすることができる。
【0030】
腐食電位センサ10のBWRプラントへの取付け構造を、図3を用いて詳細に説明する。腐食電位センサ10a,10bの取付け構造は同じであるため、腐食電位センサ10aを用いて説明する。腐食電位センサ10aを設置する取付け管部47を、再循環系配管34の測定対象箇所に分岐管状に取付ける。腐食電位センサ10aは、電極21(本発明では電極キャップ11を被覆した電極固定体12)が再循環系配管34の中心軸を向くように配置されて取付け管部47内に挿入され、取付け管部47に取付けられる。取付け管部47の端部と腐食電位センサ10aの間は、再循環系配管34内を流れる炉水が漏洩しないように、シール部材にてシールされている。導線19は取付け管部47の外部に達し、エレクトロメータ27に接続される。エレクトロメータ27に接続される他のリード線48は再循環系配管34に接続される。電極21と再循環系配管34は電気的に接触されていない。腐食電位センサ10bは、ボトムドレン配管44に設けられた取付け管部47(図示せず)に、腐食電位センサ10aと同様に取付けられる。
【0031】
腐食電位センサ10aは、電極21と再循環系配管34の間で発生する電位差を検出する。この電位差はエレクトロメータ27により測定され、エレクトロメータ27は測定した電位差に基づいて電極21の近傍の再循環系配管34の腐食電位が求められる。
【0032】
ジルコニウムはジルコニウムが酸素、又は水により酸化ジルコニウムに腐食することにより電位を発生するため、水素の影響を受けない。従って、本実施例の腐食電位センサによれば、溶存酸素濃度に対する溶存水素濃度に依存せずに一定電位を発生できる。一方、ジルコニウムを電極として使用するときに、他の金属と接触させて接液した場合に、他の金属により生じる電位の影響を受けることがある。ジルコニウムは腐食して表面に酸化ジルコニウムの皮膜が生成すると腐食が抑制される。腐食速度の大きい金属と接合すると、腐食速度の大きい金属により生じる電位の影響を受ける。そのため、電極固定体が接液することを抑制する必要がある。
【0033】
電極固定体は、管状絶縁体と接続され腐食電位センサ内に水が入ることを防止する役割と、電極となる金属キャップと電極固定体および電極固定体と導線を電気的に接続する役割を有する。即ち、管状絶縁体と接続され腐食電位センサ内に水が入ることを防止する役割と一定電位を発生する役割が異なる部材で果たされる。従来技術では電極が管状絶縁体と直接接続され、腐食電位センサ内に水が入ることを防止する役割と一定の電位を発生する役割を同時に果たしており、本発明は従来技術と異なる。これにより、電極固定体として、管状絶縁体との接続に好適な材料を使用でき、接合部が熱膨張差による応力で外れることを抑制できる。
【0034】
実施例1の変形例として、実施例1では電極キャップ11が電極固定体12の接液面のみを被覆する形状となっているが、図5に示すように電極固定体12と管状絶縁材15の接続部である、ろう付け部14を覆う形状にする。ろう付け部14を覆うことでろう付け部14に接する水を停滞させて溶存酸素濃度を低下させることで、ろう付け部14の腐食を抑制することができるので、腐食電位センサ10の寿命をより長くするために好適である。
【0035】
更に、図6に示すように、電極キャップ11の開口部を機械的に圧縮して管状絶縁体15に接するようにすると、ろう付け部14への水の接液を抑制でき、ろう付け部14の腐食を抑制できるので腐食電位センサ10の寿命をより長くするために好適である。また、電極キャップ11の開口部を機械的に圧縮して管状絶縁体15に接するようにすると電極キャップ11の脱落防止にも好適である。
【0036】
実施例1の別の変形例として、実施例1では電極キャップ11が電極固定体12の接液面のみを被覆する形状となっているが、図7に示すように電極固定体12と管状絶縁材15の接続部である、ろう付け部14を覆う形状にし、更に、電極キャップ11と管状絶縁体15の隙間に金属キャップと同じ金属からなる金属スペーサ50を入れることによりろう付け部14に水が浸透し難くさせると、ろう付け部14の腐食を抑制でき腐食電位センサ10の寿命をより長くするために好適である。また電極キャップ11と金属スペーサ50を溶接して固定すると電極キャップ11の脱落防止にも好適である。
【実施例2】
【0037】
本発明の他の実施例である実施例2の腐食電位センサを、図8を用いて説明する(図7に記載の実施例1を代表として適用)。本実施例の腐食電位センサ10は、第1の実施例に加えて、ろう付け部16の接液面に中間層51を設置して、中間層51の接液面に白金層52が被覆された構造を有する。電極固定体12としてFe−29Ni−17Co合金又はFe−42Ni合金を使用する場合はチタンが好適である。中間層51や白金層52は化学気相成長法(CVD)やイオンプレーティング,イオンスパッタリングなどにより被覆すればよい。被覆層は0.5〜1μm程度あれば十分である。
【0038】
本実施例の服飾電位センサによれば、実施例1と同様の効果を得ることができる。
【0039】
本実施例の腐食電位センサによれば、管状絶縁体15と管状金属筐体18の接続部の腐食を抑制することができ、その部位から管状金属筐体18内部への水が入ることを防止することができるため、腐食電位センサ10の寿命をさらに長くすることができる。
【0040】
なお、以上に述べた実施例1及び実施例2の各腐食電位センサは、加圧水型原子力プラント,火力プラント及び化学プラントにも適用することができる。
【符号の説明】
【0041】
10,10a,10b 腐食電位センサ
11 電極キャップ
12 電極固定体
13,17 メタライズ処理部
14,16 ろう付け部
15 管状絶縁体
18 管状金属筐体
19 導線
20 導線引き出し治具
21 電極
31 原子炉圧力容器
32 炉心
33 ダウンカマ
34 再循環系配管
35 再循環ポンプ
36 主蒸気配管
37 タービン
38 復水器
39 給水配管
40 給水ポンプ
41 浄化系配管
42 浄化系ポンプ
43 浄化装置
44 ボトムドレン配管
45 水素注入装置
46 原子炉格納容器
50 金属スペーサ
51 中間層
52 白金層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極と、
前記電極を固定する導電性の電極固定体と、
接続部位の前記電極固定体が外側になるように重複させて電極固定体と接続する絶縁性の管状絶縁体と、
接続部位の管状絶縁体が内側になるように管状絶縁体と重複させて管状接続体と接続する管状金属筐体と、
管状絶縁体と管状金属筐体を通って電極固定体に接続される導線とを備え、
前記電極固定体の接液面を覆うようにジルコニウムからなる金属キャップを設置することを特徴とする腐食電位センサ。
【請求項2】
電極と、
前記電極を固定するための導電性の電極固定体と、
接続部位の電極固定体が外側になるように重複させて電極固定体と接続する絶縁性の管状絶縁体と、
接続部位の管状絶縁体が内側になるように管状絶縁体と重複させて管状接続体と接続する管状金属筐体と、
管状絶縁体と管状金属筐体を通って電極固定体に接続される導線とを備え、
前記電極固定体の接液面および前記電極固定体と前記管状絶縁体の接続部の接液面を覆う様にジルコニウムからなる金属キャップを設置することを特徴とする腐食電位センサ。
【請求項3】
前記金属キャップと前記管状絶縁体の隙間に、ジルコニウムからなる金属スペーサを設置することを特徴とする請求項2に記載の腐食電位センサ。
【請求項4】
前記金属キャップと前記金属スペーサを溶接により固定することを特徴とする請求項3に記載の腐食電位センサ。
【請求項5】
前記管状絶縁体と前記管状金属筐体の接続部の接液面に中間層を被覆し、更に中間層の接液面に白金を被覆することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の腐食電位センサ。
【請求項6】
前記中間層がチタンで構成されることを特徴とする請求項5に記載の腐食電位センサ。
【請求項7】
前記電極固定体と前記管状金属筐体の線膨張係数が、管状絶縁体の線膨張係数より小さいことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の腐食電位センサ。
【請求項8】
前記電極固定体および前記管状金属筐体が、Fe−29Ni−17Co合金又はFe−42Ni合金であることを特徴とする請求項7に記載の腐食電位センサ。
【請求項9】
前記管状絶縁体がサファイア又は安定化ジルコニアであることを特徴とする請求項7に記載の腐食電位センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−175416(P2010−175416A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−18947(P2009−18947)
【出願日】平成21年1月30日(2009.1.30)
【出願人】(507250427)日立GEニュークリア・エナジー株式会社 (858)
【Fターム(参考)】