説明

腫瘍特異的P450蛋白質

【課題】CYP1B1蛋白質は組織発生タイプの異なる幅広いヒト癌において検出可能であるが、非癌様組織では検出されないという発見により、マーカーとしてのこの蛋白質に基づく腫瘍検出のための診断法、及びこの蛋白質が関係する腫瘍治療法の可能性を提供する。
【解決手段】 診断法には以下の段階が含まれうる:(a)癌細胞の有無を試験すべき組織試料を患者から得る段階、(b)試料調製段階において調製試料を作製する段階、(c)調製試料をヒトCYP1B1蛋白質と反応する抗体と接触させる段階、および(d)調製試料中のCYP1B1蛋白質と抗体との結合を検出する段階。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、腫瘍の診断および治療法、ならびにその材料および利用法に関する。
より詳しく述べると、本発明は、チトクロームP450型、特に幅広い範囲の腫瘍においてそれぞれのタイプに高頻度で発現されているCYP1B1の同定に基づき、腫瘍マーカーとして、および薬物のデザイン、例えばCYP1B1の作用によって細胞障害型へと活性化される薬物のデザインを含む、選択的治療アプローチに基づいて、この酵素の利用を提案する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
癌化学療法の主な目標は、広範囲の癌に対して有効で、かつ正常組織には毒性効果を及ぼさない抗癌剤の開発である。そのような薬物の標的は、腫瘍細胞でのみ発現され、正常細胞では発現されないものでなければならない。しかし、今日まで、全てのタイプの癌に対して普遍的なそのような腫瘍特異的標的は同定されていない。
【0003】
チトクロームP450は、構成的および誘導可能な酵素の多遺伝子ファミリーで、これは、幅広い範囲の生体異物(2-4)と、アラキドン酸(5)、ステロイドホルモン(6)および脂肪酸(7)を含む、細胞制御ならびに細胞シグナル伝達において活性を示すいくつかのグループの内因性化合物との双方の酸化的代謝活性化および解毒において中心的な役割を果たしている。生体異物代謝に関係するP450の主なファミリーは、それぞれ、異なる制御メカニズムおよび基質特異性を有するいくつかの個々の型を含む(2)。個々のP450型は、小腸、腎臓および肺を含む特殊な肝臓外組織(8)においても発現されているが、P450の大部分は主に肝臓で発現されている(2)。
【0004】
生体異物代謝に関係する主なP450ファミリーの一つであるヒトCYP1遺伝子ファミリー(個々のP450型は、現在のP450命名法(3)に従って接頭辞CYPによって確認される)は、現在では2つのサブファミリーに分類される3つの個々の型を含むことが知られている。CYP1Aサブファミリーは、非常に相同で、よく特徴付けがなされているが、性質が異なる2つのメンバー、CYP1A1(9)およびCYP1A2(10)を含む。CYP1A1は、主として肝臓外組織において発現される誘導可能なP450であるが(11)、CYP1A2は、肝臓において構成的に発現されている主な型のP450である(12)。最近、第二のヒトCYP1サブファミリーが確認され、今日では一つのメンバー、CYP1B1(1)が含まれる。このP450はダイオキシン誘発可能で、CYP1B1の配列分析では、CYP1A1およびCYP1A2の双方に対して40%の相同性が示される。CYP1B1はその配列に基づきCYP1ファミリーに分類されているが、構造的には、CYP1A1およびCYP1A2のいずれとも異なると考えられる。
【0005】
いくつかの型のP450は、発癌物質および変異原物質となりうる多くの物質を代謝することが可能であるため、それらは腫瘍の発生において重要な役割を果たしていると考えられる(13)。その上、P450活性は、抗癌剤に対する確立された腫瘍の反応に影響を及ぼす可能性があり、いくつかの癌化学療法剤はこの酵素系によって活性化されるか、解毒されるかのいずれかとなりうる(14)。P450による抗癌剤の腫瘍内代謝が起こり得るか否か、そしてその結果これらの薬物に対する腫瘍の反応に影響を及ぼすか否かを明らかにするために、これまで乳癌(15)、肺癌(16)、大腸癌(17)および頭頸部癌(18)を含む異なるタイプの癌においてP450の個々の型の有無が調べられてきた。これらの試験では概して、調査したP450型のレベルが、腫瘍発生部位に隣接する正常組織と比較して、腫瘍では有意に減少しているかまたは存在しないことが示された。しかし、乳癌、食道癌、および軟組織肉腫を含むいくつかの異なるタイプの癌(19)に関するわれわれの最近の研究により、P450のCYP1型の腫瘍特異的発現が存在する可能性があることが示された。
【0006】
CYP1B1 mRNAはこれまでに、いくつかのヒト正常組織においてノザン・ブロッティングによって同定されているが(1)、CYP1B1蛋白質そのものの存在は証明されていない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
発明の概要
本発明は、CYP1B1がP450の腫瘍特異型で、幅広い範囲の悪性腫瘍に存在し、正常組織には検出されない、という発見に基づく。したがって、本発明の第一の局面は、その方法が、例えばCYP1B1蛋白質を認識する抗体のような認識剤を用いて、組織、細胞、血液もしくは生体産物の試料、またはそれに由来する試料と接触させ、陽性反応をスクリーニングすることを含む腫瘍細胞の同定法を提供することである。陽性反応は例えば、凝集反応によって、または色の変化もしくは蛍光、例えば免疫染色のような可視化変化によって、または放射免疫学的方法もしくは酵素結合抗体法を利用するなどの定量的方法によって示されうる。
【0008】
したがって、本方法には典型的に、以下の段階が含まれる:(a)癌細胞の有無を試験すべき組織試料を患者から得る段階、(b)試料調製段階において調製試料を作製する段階、(c)調製試料を、ヒトCYP1B1蛋白質と反応する抗体のような認識剤と接触させる段階、および(d)調製試料中に存在する場合に、CYP1B1蛋白質に対する認識剤との結合を検出する段階。ヒト組織試料は例えば、膀胱、脳、乳房、結腸、結合組織、腎臓、肺、リンパ節、食道、卵巣、皮膚、胃、睾丸、および子宮から得ることができる。
【0009】
好ましい試料調製段階は、組織の固定および薄切片の作製を含む。次に、この薄切片に免疫組織化学的分析を行って、認識剤とCYP1B1蛋白質との結合を検出することができる。好ましくは免疫組織化学的分析は、結合酵素標識法を含む。好ましい薄切片調製法は、ホルマリン固定およびワックス包埋を含む。もう一つの試料調製段階は、組織のホモジナイズを含み、好ましくはミクロソーム単離を含む。試料調製が組織のホモジナイズを含む場合、抗体とCYP1B1蛋白質との結合の好ましい検出法はウェスタン・ブロット分析である。または、イムノアッセイを用いて、抗体とCYP1B1との結合を検出することができる。イムノアッセイの例は、抗体捕獲アッセイ、2抗体サンドイッチアッセイ、および抗原捕獲アッセイである。好ましくはイムノアッセイは固相支持に基づくイムノアッセイである。ウェスタン・ブロット分析またはイムノアッセイを用いる場合、好ましくは結合酵素標識法を含む。
【0010】
認識剤は抗体であることが都合がよいが、その他の認識剤も知られており、または利用可能となる可能性があり、本発明において用いることができる。例えば、Fab断片のような抗体の抗原結合ドメイン断片を用いることができる。同様に、いわゆるRNAアプタマーを用いてもよい(36,37)。したがって、文脈中で特に別記しない限り、本明細書で用いられる「抗体」という用語は、他の認識剤を含むものとする。抗体を用いる場合、それらはポリクローナルであってもモノクローナルであってもよい。選択的に、抗体は、それが該CYP1B1蛋白質の予め選択されたエピトープを認識するような方法によって産生することができる。
【0011】
本発明の第二の局面は、CYP1B1蛋白質が腫瘍、例えば、腎腫瘍に選択的に存在するが、正常な腎組織には存在しないことと共に、正常な肝臓にはCYP1B1蛋白質が発現されておらず、その結果、腫瘍におけるCYP1B1代謝に基づく抗癌剤の選択的ターゲティングのためのメカニズムが得られることにある。腫瘍におけるCYP1B1による特異的代謝のために薬物をデザインまたはスクリーニングすることができ、それによってこの代謝が非毒性部分を毒性部分に変換させ、それが腫瘍を殺傷もしくは阻害し、または他の薬物に対する感受性をより向上させる。
【0012】
本発明の第三の局面は、完全なCYP1B1蛋白質そのものの一部としてであるかMHC蛋白質に結合した細胞の表面上での提示の際のようにいくつかの分解型であるかを問わず、腫瘍細胞の表面上のCYP1B1エピトープの認識により、細胞傷害剤もしくは他の治療剤のターゲティング、または造影剤のターゲティングを提供する。
【0013】
本発明のもう一つの局面は、例えば、腫瘍に対する細胞媒介、または液性免疫反応を行うためにCYP1B1エピトープを認識する細胞障害性またはヘルパーT細胞の活性化によって、癌患者の免疫系の刺激を提供する。免疫系の活性化は、CYP1B1配列による免疫によって達成される。
【0014】
CYP1B1の発現は多くの異なるタイプの腫瘍で非常に共通しているため、この酵素は、例えば2-メトキシエストラジオールのような内因性抗腫瘍化合物の不活性化によって、腫瘍細胞にとって必須の機能を担っている可能性がある。その結果、本発明のもう一つの局面は、例えば、自殺阻害剤の利用、または蛋白質の合成を停止させるアンチセンスRNA法の使用による、腫瘍細胞におけるCYP1B1レベルの減少である。CYP1B1プロモーターのダウンレギュレーションによってもまた、CYP1B1レベルの減少が得られる。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の詳細な説明
広範囲の異なる解剖学的部位において発症したタイプの異なる癌(膀胱、乳房、結腸、腎臓、肺、食道、卵巣、皮膚、胃、子宮、骨および結合組織、リンパ節、脳ならびに睾丸)において、CYP1B1の発現を調べた。これらの組織の原発性悪性腫瘍は、それぞれが異なる生物学的挙動を示す異なる組織発生タイプ(癌、リンパ腫、肉腫、神経上皮腫瘍、および生殖細胞腫瘍)を構成する。これらの腫瘍はまた、一般的なタイプおよびあまり一般的でないタイプの癌の双方の範囲を表す。CYP1B1の有無はまた、多様な正常組織において調べられている。
【0016】
CYP1B1の免疫組織化学により、異なるタイプの全ての腫瘍に、CYP1B1に対する強い免疫反応性が存在することが示された。CYP1B1免疫反応性は特に腫瘍細胞に局在した。腫瘍の切片に存在する間質細胞、炎症細胞、および内皮細胞を含む非腫瘍細胞は、CYP1B1に対する免疫反応性を示さなかった。CYP1B1免疫反応性に有意な腫瘍内不均一性はなく、CYP1B1が検出されなかったのは腫瘍133例中5例にすぎなかった。肝臓、腎臓、小腸および肺を含む、調査したいかなる正常組織においてもCYP1B1に対する免疫反応性は認められなかった。
【0017】
ヒト癌のほとんどの試験(15〜18)では、個々の型のP450が存在しないかまたはレベルが低いため、齧歯類の肝臓発癌試験からの推定と併せて(25)、腫瘍細胞は有意にP450を発現していないと一般的に考えられるようになった。しかし、本発明者らは今では、CYP1B1が異なる組織発生タイプの多様な悪性腫瘍には発現されているが、正常組織には存在しないことを示しており、このことから、このP450がP450の腫瘍特異的型であることが示されている。腫瘍は、様々な比率の腫瘍細胞と非腫瘍細胞とから成る。一つの蛋白質が腫瘍特異的であることを確認するためには、この蛋白質が腫瘍細胞にのみ局在することを証明することが重要である。免疫組織化学により、腫瘍細胞の直接的な可視化が可能となり、腫瘍細胞を非腫瘍細胞と分離する空間的分離が得られる。さらに、正常組織試料では腫瘍試料と比較して蛋白質の分解に差がないことを示すことが重要であり、β-アクチン(陽性対照蛋白質として)に対するイムノブロッティングから、あらゆる正常試料および腫瘍試料に蛋白質が存在することが示され、それにより蛋白質の分解が起きてないことが示された。さらに、ポリアクリルアミドゲルのクーマシー・ブルー染色から、蛋白質分解の証拠がないことが示された。その上、腫瘍試料の免疫組織化学から、腫瘍切片が非腫瘍細胞を含むため、自身の内部対照が提供される。
【0018】
多くのタイプの腫瘍にCYP1B1が存在することから、このP450が腫瘍細胞において重要な内因性機能を有する可能性があること、およびCYP1B1が多くのタイプの腫瘍において認められる薬物耐性に関与する可能性があることが示唆される。CYP1B1はまた、腫瘍の発生および進行において重要である可能性がある。異なる組織発生型の多様な範囲の癌において同定され、かつ正常組織に存在しないことから、CYP1B1は悪性物における遺伝子産物の一般的変化の一つとなるように思われる(26)。
【0019】
これまでの研究(1)で、正常組織においてmRNAが発見された。いくつかの腫瘍では、正常と比較してmRNAの増加(2〜4倍増加)が認められた。これは、低酸素症誘発可能因子によって媒介される転写の増加による可能性がある。これは、低酸素症によって誘発される新規のヘテロダイマー転写因子であり、この場合の刺激は、腫瘍に存在しうる低酸素的微小環境であってもよく、この因子はその成分の一つとしてAh受容体核転移体を有していてもよい(27)。しかし、他の型のP450の制御は複雑で(2,28)、腫瘍におけるCYP1B1の制御もまた、複雑で、関係する転写因子および転写後因子を含む多数のメカニズムがある可能性がある。
【0020】
CYP1B1の腫瘍特異的発現は、癌の診断および治療の双方にとって重要な意義を有する。癌細胞におけるCYP1B1の存在に基づく新しい診断技術を開発することができる一方で、腫瘍細胞におけるCYP1B1の発現により、腫瘍細胞においてCYP1B1によって選択的に活性化される新規抗癌剤の開発に対する分子的標的が提供される。CYP1B1は広い範囲の腫瘍に認められるため、そのような薬物は多くの異なるタイプの癌の治療に有効となると予想される。重要な特徴は、CYP1B1は正常組織、特に薬物代謝に関係する主な組織である肝臓、小腸、および腎臓には存在しないため、これらの薬物が、現在の抗癌剤の使用を制限する全身毒性に関連しないと予想される点である。したがって、P450によるその選択的活性化に基づいて抗癌剤を腫瘍へと指向させる際の主な問題は、薬物の肝臓における著しいP450代謝であり、その結果、生物学的利用能の減少および/または過度の毒性が起こる。肝臓にCYP1B1蛋白質が存在しなければこの問題は克服される。
【0021】
腫瘍の診断に関しては、生物学的試料において、CYP1B1を含む抗体を用いた特異的蛋白質を検出するための無数の方法が知られており、本発明において用いることができる。様々な抗体法のいずれも、本発明の実践に際し、単独で用いることができる。必要に応じて、互いを補うために2つ以上の方法を用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明において用いられる好ましい方法は、免疫組織化学分析である。免疫組織化学分析は、比較的少数の癌細胞が正常細胞の中心に存在する場合、希釈効果を避ける上で有利である。免疫組織化学分析の初期段階は、組織の固定であり、蛋白質を細胞内のその場に留める。これは、異なる細胞との蛋白質の実質的な混合を防止する。結果として、周囲の正常細胞は、CYP1B1含有癌細胞の検出能を減損しない。これは、組織のホモジナイズを含むアッセイ法とは対照的である。組織のホモジナイズの際には、癌細胞からのCYP1B1蛋白質は、組織試料に存在する周囲の正常細胞からの蛋白質と混合される。従って、CYP1B1蛋白質濃度は調製試料中で減少し、検出限界以下となりうる。免疫組織化学分析は他に少なくとも3つの利点を有する。まず、ウェスタン・ブロット分析またはイムノアッセイのような代用法で必要とされる量より組織量が少ない。第二に、本法は、免疫反応性材料の細胞内局在および分布に関する情報を提供する。第三に、CYP1B1蛋白質の有無に関する試験に用いたものと同じ薄切片から、細胞形態学に関する情報を得ることができる。免疫組織化学分析を本発明の実践において用いる場合には、好ましくは、各組織試料からいくつかの薄切片を調製し分析する。これにより、小さい腫瘍を発見する可能性が増大する。
【0023】
本発明において用いられるもう一つの好ましい抗体法は、ウェスタン・ブロット分析、すなわち、ドデシル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)を行った後に、イムノブロッティングを行うという方法である。ウェスタン・ブロット分析用の試料調製には、組織のホモジナイズ、および選択的にミクロソームの単離が含まれる。ウェスタン・ブロット分析は、(見かけの)分子量によって高分解能で分離された蛋白質上の免疫反応性を検出するという利点を有する。
【0024】
抗体捕獲アッセイ、2抗体サンドイッチアッセイ、および抗原捕獲アッセイのようなイムノアッセイも、本発明において用いることができる。イムノアッセイ用の試料調製は、組織のホモジナイズ、および選択的にミクロソームの単離を含む。イムノアッセイは数多くの試料を比較的速やかに調べることができるという利点を有し、それにより定量的正確性が提供される。
【0025】
免疫組織化学、ウェスタン・ブロット分析、およびイムノアッセイの原理および実践は周知である。本発明の実施に当たって、当業者は、適当なプロトコルを選択し、免疫組織化学分析、ウェスタン・ブロット分析、またはイムノアッセイを行うことができる(30)。
【0026】
実験の詳細
1. 抗体の調製
すでに記したように、本発明の診断面はヒトCYP1B1を認識する抗体を都合よく利用することができる。CYP1B1蛋白質に対する抗体特異性が好ましいが必要ではない。好ましくは、抗体によって認識されるいかなる非CYP1B1蛋白質も、例えば、ウェスタン・ブロットにおける見かけの分子量に従って、CYP1B1から容易に識別される。当技術分野の範囲内にある適当なアッセイプロトコルを選択すれば、本発明は、ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体によって実践することができる。
【0027】
本発明での使用に適したポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体は、従来の方法に従って得ることができる(30)。CYP1B1蛋白質と反応する抗体の調製は公知である(31)。ヒトCYP1B1蛋白質と反応する抗体を得る方法は、ヒト以外のCYP1B1蛋白質、例えば、マウスCYP1B1蛋白質の調製物を用いて実施することができる。本発明において有用な抗体を誘発するのに適したCYP1B1蛋白質調製物は、記述の方法(31)を含む様々な方法に従って得ることができる。
【0028】
本発明において有用な抗体は、完全なCYP1B1蛋白質を含む調製物で動物を免疫することによって得られる。または、有用な抗体は、CYP1B1蛋白質の1つ以上のエピトープに対応するポリペプチドまたはオリゴペプチドで動物を免疫することによって得られる。
【0029】
調製
後者のアプローチに従って抗体を調製するため、ヒトCYP1B1蛋白質上のエピトープに対応する15個のペプチド2本を合成した。それぞれが、CYP1B1酵素の異なる仮の表面ループ領域に対応していた。最初のペプチド(217Aと命名)は、14個のアミノ酸、すなわちESLRPGAAPR DMMD(配列番号:1)を含んでいた。ペプチド217Aは、推定アミノ酸配列のアミノ酸位312〜325を表した。結合反応において用いるためにC末端システインを含めた。第二のペプチド(218Aと命名)は、14個のアミノ酸、すなわちEKKAAGDSHG GGAR(配列番号:2)からなった。ペプチド218Aは、推定アミノ酸配列の332〜345位を表した。結合反応において用いるためC末端システインを加えた。これらのペプチドのそれぞれがKLHと直接結合した。
【0030】
217Aペプチド結合物または218Aペプチド結合物100 μgを用いて、雄性ニュージーランドウサギを数カ所の解剖学的部位で免疫した。フロイント完全アジュバント300 μLと混合したPBS 300 μLに、結合物を溶解した。初回免疫の3週間後、ウサギを50 μgの各結合物(フロイント不完全アジュバント300 μLと混合したPBS 300 μL中に含まれ、数カ所の部位に注射)で追加免疫した。1週間後(初回注射から4週間後)、同じプロトコルを用いてウサギを再度追加免疫した。2回目の追加免疫の1週間後、最初の血清試料を回収した。続いてウサギを追加免疫し、血清試料を週毎に回収した。大腸菌で発現させたヒトCYP1B1-マルトース結合融合蛋白質、およびCOS-1細胞で発現させたヒトCYP1B1蛋白質に対するウェスタン・ブロッティングによって、抗CYP1B1抗体価および特異性に関して血清試料をスクリーニングした。
【0031】
抗CYP1B1 IgGは、免疫アフィニティークロマトグラフィーによって精製した。クロマトグラフィーは、市販の誘導体化したクロスリンクアガロースゲルビーズ支持体(AffiGel 10;バイオラド、リッチモンド、CA)のN-ヒドロキシサクシンアミドエステルに直接結合させた適当なCYP1B1ペプチドを用いて実施した。結合とクロマトグラフィーは、販売元の推奨プロトコルに従って実施した。
【0032】
2. CYP1B1蛋白質とそのmRNAの検出
一般的に以下の実験では、悪性疾患のために手術を受ける患者から除去された組織標本から正常組織の試料を得た。正常な肝臓、胃および小腸も同様に、臓器移植ドナーから得た。組織試料は全て、蛋白質またはmRNAのいかなる分解も防止し、組織形態学での悪化がないように切除後直ちに処置した。本発明者らは以前に、このようにして得られたヒト肝臓が個々の型の肝P450の喪失または分解を示さないことを示した(20)。免疫組織化学用の組織ブロックは10%中性緩衝ホルマリンで24時間固定し、ワックスに包埋する一方、イムノブロッティングおよびmRNA分析用の組織試料は液体窒素中で急速凍結し、使用するまで80℃で保存した。
【0033】
組織試料中のCYP1B1蛋白質の有無は、免疫組織化学(21)およびイムノブロッティングと組み合わせたドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)(22)によって調べた。免疫組織化学は、CYP1B1を含む特殊なタイプの細胞の同定を確実に行い、腫瘍は様々な比率の腫瘍細胞と非腫瘍細胞とからなるため、腫瘍細胞におけるCYP1B1の有無を調べるためには理想的な方法である。
【0034】
免疫組織化学は、CYP1B1の細胞内局在および分布を明らかにするために用い、CYP1B1を認識する2つの抗体を用いて、ホルマリン固定したワックス包埋切片上で実施した。免疫反応部位は、アルカリフォスファターゼ抗アルカリフォスファターゼ(APAAP)法(21)を用いて検出した。腫瘍および正常組織の試料を10%中性緩衝ホルマリンで24時間固定し、次にワックス中に包埋した。スライドガラス上で切片を切断して、腫瘍および正常組織の免疫組織化学切片では、キシレン中でワックスを除去し、アルコール中で再度水和し、次に冷水および0.15 M塩化ナトリウムを含む0.05 Mトリス塩酸(pH 7.6)(TBS)で連続的に洗浄した。次に切片をCYP1B1抗体で免疫染色した。その後、モノクローナルマウス抗ウサギ免疫グロブリン(1/100、Dako Ltd、High Wycombe、バックス;イギリス)、ウサギ抗マウス免疫グロブリン(1/100、Dako)およびマウスモノクローナルAPAAP(1/100、Dako)を30分毎に連続的に組織切片に加えた。次の抗体を加えるまでの間に、切片をTBSで洗浄し、非結合抗体を除去した。結合したアルカリフォスファターゼ部位は、ブロモ-クロロ-インドリルリン酸およびニトロブルー・テトラゾリウムを酵素基質として用いて同定した。切片を室温で30分インキュベートした後、冷水道水で切片を洗浄して反応を停止させた。次にスライドを空気乾燥させ、グリセリンゼリー中に固定した。免疫染色の有無およびその分布を確立するため、視野の明るい光学顕微鏡を用いて切片を調べた。
【0035】
SDS-PAGEおよびイムノブロッティングを行った後に、下記のように増強ケミルミネッセンス(ECL)法を行った。イムノブロッティングはまた、腫瘍および正常試料における陽性対照蛋白質の存在を示すため、β-アクチンに対するモノクローナル抗体(クローン番号AC-15、シグマ、プール、ドーセット、イギリス)を用いても実施し、いずれの組織試料にも蛋白質分解の証拠が認められないことが示された。
【0036】
免疫組織化学でCYP1B1を示した各腫瘍にCYP1B1が存在すること、および正常組織において検出可能なCYP1B1が存在しないことは、ウェスタン・ブロット分析によって確認した。ウェスタン・ブロット分析に供する蛋白質は単離ミクロソーム調製物から得た。
【0037】
ミクロソームは本質的に記述されているようにして調製した(32)。組織試料は、ウルトラチュラックスホモジナイザー(タイプTP 18/2:Janke & Kunkel AG、Staifem Breisgau、ドイツ)を用いて、0.25 M蔗糖、15%グリセロールを含む0.01 Mトリス塩酸緩衝液、pH 7.4でホモジナイズする前に、1.15%KClを含む25 mlの0.01 Mトリス塩酸緩衝液、pH 7.4中で融解した。15,000×gで20分遠心した後、上清を除去し、116,000×gで50分再度遠心した。沈殿物を最初に、15%グリセロール、1 mM EDTAを含む0.1 Mトリス塩酸緩衝液、pH 7.4に再懸濁し、116,000×gで50分再度遠心した。沈殿物を2回目にトリス塩酸-グリセロール-EDTA緩衝液に再懸濁した。ミクロソーム蛋白質の濃度を測定した(34)。
【0038】
記述の(33)不連続ポリアクリルアミドゲルシステムに改変を加えたもの(32)を、ミクロソームにおける蛋白質の分離に用いた。正常試料の1 mg/ml調製物20 μLおよび腫瘍試料の0.5 mg/ml調製物40 μLの、2.35%(w/v)ドデシル硫酸ナトリウム、5%(v/v)2-メルカプトエタノール、および0.005%ブロモフェノールブルー追跡色素を含む0.125 Mトリス塩酸、pH 6.8溶液をゲルに乗せた。ヒト肝ミクロソームの1 mg/ml調製物10 μLを陽性対照として用いた。試料は10%非勾配ゲル上で30 mAで流した。
【0039】
SDS-PAGEの後、記述(35)のように、分離した蛋白質をニトロセルロース膜(Schleicher & Schuell; Dassel、ドイツ)上に一晩ブロットした。非特異的結合部位は2%(w/v)脱脂牛乳、0.05%(v/v)ツィーン20(登録商標)を含むPBSで、絶えず攪拌しながら室温で30分ブロックした。この緩衝液はまた、洗浄段階でも使用した。次に、ニトロセルロース膜をCYP1B1特異的抗体(1:1000)と共に90分インキュベートし、ヤギ抗ウサギ免疫グロブリンホースラディッシュペルオキシダーゼ結合物(1:2000、Bio-Rad Laboratories、Hemel Hempstead、ハーツ、UK)と共に60分インキュベートした。各インキュベート後、膜を連続して15分間3回洗浄し、60分間で1回洗浄して、非結合抗体を除去した。次に、結合したホースラディッシュペルオキシダーゼを増強ケミルミネッセンス(ECL)キット(Amersham International、アイルズベリー、バックス、UK)で可視化した。検出は、ECLプロトコルの記述通りに、X線フィルム(Hyperfilm-ECL;アマシャム)を30秒露出して実施した。
【実施例1】
【0040】
正常な腎臓および腎腫瘍におけるCYP1B1の発現を調べた。
原発性腎細胞癌から切除した腎摘出標本(n=10)を用いた。試料または正常腎臓は、各腫瘍の端から少なくとも数センチメートル離して採取し、肉眼的に見える腫瘍のみを採取した。正常なヒト肝臓(n=5)は、腎臓移植ドナーから得て、使用するまで-80℃で保存した。
【0041】
正常腎臓、腎腫瘍、および正常肝臓のミクロソームを調製し、抗CYP1ポリクローナル抗体を用いた増強ケミルミネッセンス技術を用いて、SDS-PAGEおよびイムノブロッティング法に供した。ヒトCYP1B1の認識は、大腸菌で発現させたマルトース結合組換えCYP1B1融合蛋白質を用いて証明した。発現されたCYP1A1およびCYP1A2は、アメリカ、マサチューセッツ州のゲンテスト・コーポレーション(Gentest Corp.)のC L クレスピ(Crespi)博士より提供された。結果を図1に示す:レーン1はヒト肝臓、レーン2は発現された組換えCYP1B1蛋白質、レーン3、5、7、9、11は正常腎試料、レーン4、6、8、10、12は腎腫瘍に対応する。同量のミクロソーム蛋白質(30 μg)を各レーンに加えると、腎臓試料と肝臓試料との直接比較が可能となる。
【0042】
図1に示すように、腎腫瘍および発現されたCYP1B1は、発現されたCYP1B1の分子量に相当する60 kDaに単一の免疫反応性バンドを示す。正常腎臓では、いずれの試料も60 kDaでの免疫反応バンドを示さなかった。さらに、腎腫瘍または正常腎試料のいずれにもCYP1A1の存在は示されなかった。
【0043】
肝臓試料のイムノブロッティングは、CYP1A2の分子量に相当する54 kDaでの免疫反応性バンドが示された。54 kDaでのバンドの強度は、肝臓間での変動が示されたが、いずれの肝臓試料においても60 kDaでCYP1B1免疫反応性バンドは認められなかった。
【実施例2】
【0044】
CYP1B1の発現も同様に、イムノブロッティングを用いて乳癌において調べた。
原発性乳癌または非新生物性乳房疾患のいずれかの手術を受ける患者から、乳房組織試料を得た。イムノブロッティングは、患者6人(年齢範囲45〜67歳;非喫煙者3人、患者3人については情報が入手できていない)から得た乳癌について実施し、これらの腫瘍は全て組織学的に見て特殊なタイプではない癌であった。組織試料を液体窒素中で凍結し、分析するまで-80℃で保存した。
【0045】
SDS-PAGEおよびイムノブロッティングは、既に記述したように実施した。CYP1B1は、上記の抗-CYP1ポリクローナル抗体を用いて検出した。結果を図2に示す:レーン1はヒト肝臓、レーン2は、発現されたCYP1B1、レーン3〜8は、乳房腫瘍である。図からわかるように、発現されたCYP1B1蛋白質の分子量に相当する分子量60 kDaの単一の蛋白質バンドが確認された。前述のように、CYP1B1は肝臓試料では検出されなかったが、CYP1A2は検出された。
【実施例3】
【0046】
免疫組織化学を用いて、特に多様な正常および腫瘍組織におけるCYP1B1の存在を証明した。結果を表1および図3に示す。
【0047】
CYP1B1の免疫組織学的局在は、侵食性乳線癌、子宮内膜腺癌、膀胱の移行上皮癌、びまん性高グレード悪性リンパ腫、脳の高グレード星状細胞腫、軟組織肉腫(悪性繊維性組織球腫)、正常肝臓、正常腎臓、正常小腸からの腫瘍および正常組織において調べた。用いた抗体は上記の218A抗-CYP1B1ポリクローナル抗体であった。
【0048】
図3は、異なるタイプの腫瘍および正常組織におけるCYP1B1のイムノブロットを示す。レーン1は、正常結腸、レーン2は結腸腺癌、レーン3は正常腎臓、レーン4は腎臓癌、レーン5は正常乳房、レーン6は乳癌、レーン7は正常空腸、レーン8は正常胃、レーン9は正常肝臓、レーン10は悪性混合ミューラー腫瘍、レーン11は子宮内膜腺癌、レーン12は卵巣癌、レーン13はびまん性B細胞リンパ腫、レーン14は移行上皮癌、レーン15は肺癌、レーン16は陽性対照(ダイオキシン誘発ACHN腎腫瘍細胞(パネルAのみ))であった。パネルBでは、同じシリーズの組織試料を、正常および腫瘍試料の全てに存在するβ-アクチンに対してイムノブロットした。同じシリーズの組織試料をクーマシーブルー染色したポリアクリルアミドゲルでは、蛋白質分解の証拠は示されなかった。結果は、このP450が腫瘍細胞に特に局在していること、および正常組織にはCYP1B1免疫反応性が存在しないことを証明した。
【表1】

【実施例4】
【0049】
様々な腫瘍および正常組織におけるCYP1B1 RNAを検出するために実験を行った。
CYP1B1 mRNAを検出するための逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)実験を、マッケイら(McKay)(23)が記述したように実施した。組織試料からRNAを抽出し、オリゴ(dT)を用いて単離RNAからcDNAを合成した。CYP1B1プライマーは以下の配列を有し:フォワード5'-AAC TCT CCA TCA GGT GAG GT-3'(ヌクレオチド2104〜2123);リバース5'-TAA GGA AGT ATA CCA GAA GGC-3'(ヌクレオチド2573〜3593)、489 bpのPCR産物を得た。β-アクチンは、各試料にmRNAが存在し完全であることを確認するために、陽性対照として用い、ストラタジーン社(Stratagene)(ケンブリッジ、UK)から購入したβ-アクチンプライマーは、以下の配列を有していた:フォワード5'-TGA CGG GGT CAC CCA CAC TGT GCC CAT CTA-3'(ヌクレオチ1067〜1105);リバース5'-CTA GAA GCA TTT GCG GTG GAC GAT GGA GGG-3'(ヌクレオチド1876〜1905)。CYP1B1およびβ-アクチンの双方について増幅35サイクルのPCRを記述(23)のように実施した。CYP1B1の陽性対照は2.78 kbのCYP1B1 cDNAで、陰性対照はcDNAの代わりに滅菌水とした。PCR後、PCR産物10 μLを0.007% w/vエチジウムブロマイドを含む1.5%アガロースゲル上で電気泳動し、UV照明によって可視化した。精製後、製造元のプロトコルに従って、T7シークエンシングキット(Pharmacia、ミルトン・ケインズ、UK)を用いた直接ジデオキシシークエンシング法によってCYP1B1 PCR産物をシークエンシングした。正常および腫瘍組織におけるCYP1B1 mRNAの相対量をさらに調べるために、cDNAの連続希釈を用いて、正常および腫瘍腎試料の半定量的RT-PCRを実施した(24)。β-アクチンmRNAを内部対照として用いた(29)。
【0050】
図4は、RT-PCRによって検出された、正常(AおよびB)および対応する腫瘍(CおよびD)の試料におけるCYP1B1およびβ-アクチンmRNAを示す。レーン1は腎臓、レーン2は結腸、レーン3は皮膚、レーン4は食道、レーン5は胃、レーン6はリンパ節、レーン7は乳房である。
【0051】
RT-PCRによる腫瘍の分析により、CYP1B1が同定された全ての腫瘍試料がCYP1B1 mRNAを含むことが示された。PCR産物は、アガロースゲル電気泳動によって分析すると、予想された分子サイズであった。PCR産物のシークエンシングは、CYP1B1によって同一性が確認された。
【0052】
結論の辞
ヒト癌のほとんどの試験(15〜18)では、個々の型のP450が存在しないかまたはレベルが低いため、齧歯類肝臓発癌試験(25)からの推定と併せて、腫瘍細胞はP450を有意に発現しないと一般的に考えられるようになった。しかし、本発明者らは今では、CYP1B1が組織発生タイプの異なる多様な悪性腫瘍において発現され、正常組織には存在しないことを示し、それによりこのP450がP450の腫瘍特異型であることを示している。腫瘍は、様々な比率の腫瘍細胞と非腫瘍細胞とから成る。一つの蛋白質が腫瘍特異的であることを確認するためには、その蛋白質が腫瘍細胞のみに局在することを証明することが重要である。免疫組織化学により、腫瘍細胞の直接可視化が可能となり、腫瘍細胞と非腫瘍細胞とを分離する空間的分離が得られる。さらに、正常組織試料では腫瘍試料と比較して蛋白質の分解に差がないことを示すことが重要で、β-アクチン(陽性対照蛋白質として)に対するイムノブロッティングから、あらゆる正常および腫瘍試料にそれが存在することが示され、それにより蛋白質分解が起きていないことが示される。さらに、ポリアクリルアミドゲルのクーマシーブルー染色で、蛋白質分解の証拠がないことが示された。その上、腫瘍試料の免疫組織化学により、腫瘍切片が非腫瘍細胞を含むため、自身の内部対照が提供される。
参考文献


【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】図1は、正常腎組織および腫瘍様腎組織ならびに正常肝組織におけるCYP1B1蛋白質を調べるために、抗CYP1B1抗体を用いたSDS-PAGEおよびイムノブロッティング法を示す。
【図2】図2は、乳癌組織および正常肝組織におけるCYP1B1蛋白質の検出のためのSDS-PAGEおよびイムノブロッティングを示す。
【図3】図3は、異なるタイプの腫瘍組織および正常組織におけるCYP1B1のイムノブロットを示す。
【図4】図4は、正常試料(AおよびB)ならびに対応する腫瘍試料(CおよびD)におけるRT-PCRによって検出されるCYP1B1およびβ-アクチンmRNAを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者からの組織試料をCYP1B1に対する認識剤と接触させ、組織試料中の癌細胞の存在の指標として、調製試料中のCYP1B1蛋白質と認識剤との結合を検出することを含む、ヒト患者の組織試料中に癌細胞が存在する場合にそれを検出する方法。
【請求項2】
癌細胞の有無を試験すべき組織試料を患者から得る段階、およびヒトCYP1B1蛋白質と反応する認識剤と調製試料を接触させる前に、試料調製段階において調製試料を作製する段階を含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
認識剤と試料中のCYP1B1蛋白質との結合が免疫組織化学的分析によって検出される、請求項2記載の方法。
【請求項4】
試料調製段階が、組織を固定剤と接触させ、免疫組織化学的分析に適当な薄切片を作製することを含む、請求項3記載の方法。
【請求項5】
固定剤がホルマリンである、請求項4記載の方法。
【請求項6】
薄切片がワックス包埋されている、請求項4または5記載の方法。
【請求項7】
免疫組織化学的分析が結合酵素標識法を含む、請求項3〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
試料調製段階が組織のホモジナイズを含む、請求項2記載の方法。
【請求項9】
試料調製段階がミクロソームの単離をさらに含む、請求項8記載の方法。
【請求項10】
調製試料中のCYP1B1蛋白質と認識剤との結合がウェスタン・ブロット分析によって検出される、請求項8または9記載の方法。
【請求項11】
ウェスタン・ブロット分析が結合酵素標識法を含む、請求項10記載の方法。
【請求項12】
調製試料中の認識剤とCYP1B1蛋白質との結合がイムノアッセイによって検出される、請求項8記載の方法。
【請求項13】
イムノアッセイが、抗体捕獲アッセイ、2抗体サンドイッチアッセイ、および抗原捕獲アッセイから選択される、請求項12記載の方法。
【請求項14】
イムノアッセイが固相支持に基づくイムノアッセイである、請求項12記載の方法。
【請求項15】
イムノアッセイが結合酵素標識法を含む、請求項12、13、および14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
認識剤がポリクローナル抗体である、前述の請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
認識剤がモノクローナル抗体である、請求項1〜15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
認識剤がCYP1B1蛋白質の予め選択されたエピトープを認識する、前述の請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
認識剤がCYP1B1蛋白質に特異的である、請求項1〜17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
組織試料が、膀胱、脳、乳房、結腸、結合組織、腎臓、肺、リンパ節、食道、卵巣、皮膚、胃、睾丸、および子宮から選択される、前述の請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
CYP1B1による特異的代謝を受けやすい物質のスクリーニングまたは選択を含み、その物質をCYP1B1代謝によって、CYP1B1を発現している腫瘍細胞を殺傷もしくは阻害する、または他の薬物に対する感受性をより向上させる毒性部分に転換することが可能な非毒性部分に基づいて用いることを含む、癌療法に用いられる可能性がある薬物を得る方法。
【請求項22】
完全なCYP1B1蛋白質そのものの一部であるかMHC蛋白質に結合した細胞表面上の提示の際のように何らかの分解型であるかを問わず、腫瘍細胞の表面上のCYP1B1エピトープ認識の手段と共に、薬物、治療剤、または造影剤を提供することを含む、腫瘍の診断または治療において、細胞障害剤もしくは他の治療剤のターゲティング、または造影剤のターゲティングを提供する方法。
【請求項23】
CYP1B1が発現されている細胞に対する細胞媒介または液性免疫反応を実行するために、CYP1B1エピトープを認識する細胞障害性またはヘルパーT細胞を活性化することによってヒト免疫系を刺激することが可能な生物学的活性物質。
【請求項24】
少なくとも1つのCYP1B1アミノ酸配列で免疫することによって免疫系を活性化させる、請求項23記載の生物学的活性物質。
【請求項25】
自殺阻害剤、またはCYP1B1の合成を減少させるためにアンチセンスRNAを作製する手段を含む、腫瘍細胞においてCYP1B1レベルを低下させるために用いる物質。
【請求項26】
CYP1B1プロモーターのダウンレギュレーションによって機能する、請求項25記載の物質
【特許請求の範囲】
【請求項1】
CYP1B1が発現されている細胞に対する細胞媒介または液性免疫反応を実行するための、薬物調製における、ヒトチトクロームP450 CYP1B1エピトープを認識するT細胞を活性化することによってヒト免疫系を刺激することが可能なチトクロームP450 CYP1B1配列の使用。
【請求項2】
チトクロームP450 CYP1B1配列が、チトクロームP450 CYP1B1アミノ酸配列である、請求項1記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−34290(P2006−34290A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−193412(P2005−193412)
【出願日】平成17年7月1日(2005.7.1)
【分割の表示】特願平9−513217の分割
【原出願日】平成8年9月25日(1996.9.25)
【出願人】(505252104)ユニバーシティー オブ アバーディーン (1)
【出願人】(399093869)ユニバーシティー オブ マサチューセッツ (19)
【Fターム(参考)】