説明

腸溶コーティングに適したパンクレアチンマイクロペレットコア

本願発明で記載されているのは、パンクレアチンマイクロペレットコアの製造方法と使用方法であり、そして、その実質的に合成油不含の製造方法によって、パンクレアチンマイクロペレットコアが得られる。さらに記載されているのは、腸溶コーティングされたパンクレアチンマイクロペレットである。ある実施態様では、ほ乳類の腸の上部へパンクレアチンを運び、そこで放出するようにデザインされた腸溶コーティングされたパンクレアチンマイクロペレットを含む医薬組成物が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
パンクレアチンを含有する薬剤の製造方法と使用方法が本願発明においては記載されている。より特定して、実質的に合成油不含のパンクレアチンマイクロペレットコアの製造方法と、その方法によって得られるパンクレアチンマイクロペレットコアが記載されている。また本願発明では、腸溶コーティングされたパンクレアチンマイクロペレットコアである、パンクレアチンマイクロペレットが記載されている。
【0002】
パンクレアチンマイクロスフェアは、ヒト等のほ乳類の消化酵素欠乏によって引き起こされる疾病又は疾患の治療に選ばれた処置である。これは、CreonTMのような高性能なパンクレアチンマイクロスフェア製品が、治療に有効な量の活性酵素を与えると同時に、消化酵素活性が必要とされる消化管、特に腸上部中で、最適な場所を標的にすることができる適当な大きさのマイクロスフェアを提供している事実のためである。
【0003】
近年、健康当局は、とりわけパンクレアチン含有製品の配合において今まで使用されているある特定の医薬品賦形剤の適合性の再評価を始めている。その結果、鉱油のような特定の医薬品賦形剤について忠告する健康当局もある(例えば、米国連邦規則集21CFR201.302参照)。今日、鉱油を妊婦及び/又は幼児にむやみに与えないことが推奨されている。従って、健康当局の現行の忠告に遵守した鉱油のような合成油を含まないパンクレアチンマイクロペレット製品を患者に与える必要がある。
【0004】
パラフィンのような合成油、例えば流動パラフィン(鉱油)、特に高級流動パラフィン(軽鉱油)は、押出しとそれに続いて押出物の丸みつけをすることよって、パンクレアチンマイクロペレット製品を製造するための必須賦形剤であることが、以前から理解されている。文献EP0583726(米国特許第5378462)では一例が記載されており、該文献はパンクレアチンマイクロペレットと、押出しとそれに引き続く丸みつけによって、ポリエチレングリコール4000、パラフィン、低級アルコールを用いてパンクレアチンマイクロペレットを製造することを開示している。
【0005】
米国特許出願第2004/0101562(Maio)は、高い安定性の膵酵素のマイクロスフェアとそれの生産法を開示している。一種以上の膵酵素と、一種以上の親水性低融点ポリマーとほかの賦形剤を含む固体混合物を、攪拌しながら、前記親水性低融点ポリマーの溶融温度又はそれ以上の温度で加熱する。しかしながら、Maioは、そこに記載される方法の基本的特徴が、水も他の有機溶媒もいかなる溶媒も用いないということである旨、強調している。
【0006】
米国特許出願第2002/0061302では、糖尿病の治療方法において、それを必要とする患者に脂肪分解活性、タンパク質分解活性及び糖分解活性を有する生理学的に認容性の酵素混合物を投与することによる、糖尿病の治療方法が記載されている。
【0007】
米国特許出願第2004/0213847は、プロトンポンプ阻害剤を含有する遅効性の医薬組成物に関する。
【0008】
米国特許第4786505は経口用医薬調剤を教示している。
【0009】
パンクレアチン及び腸溶コーティングを含む更なる医薬調剤は、例えばDE19907764;EP0021129(米国特許第4280971);EP0035780;米国特許第5225202;米国特許第5750148;U.S.6224910;米国特許出願第2002/0146451又はWO02/40045の文献から知られている。
【0010】
従って、本願発明に開示される1つの実施態様は、実質的に合成油不含のパンクレアチンマイクロペレットコアの製造方法と使用方法である。もう一つの実施態様は腸溶コーティングされたパンクレアチンマイクロペレットコアである実質的に合成油不含のパンクレアチンマイクロペレットを提供している。
【0011】
もう一つの実施態様は本願発明において記載されている方法によって得られるパンクレアチンマイクロペレットコア及び/又はパンクレアチンマイクロペレットを用いることによって、膵臓の外分泌腺の機能不全、膵臓炎、嚢胞性線維症 、1型糖尿病及び2型糖尿病のようなさまざまな症状を治療する方法を提供している。
【0012】
もう一つの実施態様は、本願発明において記載されている方法によって製造されたパンクレアチンマイクロペレットコア及び/又はパンクレアチンマイクロペレットの形でパンクレアチンを薬理学的な有効量を含有する経口剤形の医薬組成物を提供している。
【0013】
さらに、そのパンクレアチンマイクロペレットコア、パンクレアチンマイクロペレット及び/又はそれらの医薬組成物は、カプセル、小袋、ブリスター容器又は瓶から選択される少なくとも1つの外包装に入れることができる。
【0014】
パンクレアチンは、ほ乳類の膵臓腺由来の種々の生理活性のある内因性成分の混合物であり、リパーゼ、アミラーゼ及びプロテアーゼのようなさまざまな異なる消化酵素から構成される。ほ乳類の膵臓のリパーゼは、膵臓の外分泌線の機能不全のようなさまざまな症状の治療のための有用な消化酵素補給剤である。しかしながら、膵臓のプロテアーゼ及びアミラーゼもまた、パンクレアチンの治療学的な価値をもたらす。製剤用のパンクレアチンは一般的にウシ又はブタ由来のものであるが、ブタのパンクレアチンが好ましい。
【0015】
目下、驚くべきことに、腸溶コーティングに適した、酵素活性の高い、例えば高級流動パラフィンといったパラフィンのような合成油を実質的に不含のパンクレアチンマイクロペレットコアが、本願発明において記載されている方法によって製造できることが判明した。さらに本願発明において記載されている製造方法が鉱油を使用する公知の方法、又は、例えばパンクレアチンマイクロペレットコアを製造するのにより多くの方法工程を必要とする公知の製造方法と比べて、改善されることが判明した。
【0016】
特に、本願発明に記載される方法によって、10〜95質量%のパンクレアチンと、5〜90質量%の少なくとも1種の製剤学的に認容性の結合剤及び0〜10質量%の少なくとも1種の製剤学的に認容性の賦形剤とを含むパンクレアチンマイクロペレットを製造できる。より特定すると、本願発明に記載される方法によって、70〜90質量%のパンクレアチンと、10〜30質量%の少なくとも1種の製剤学的に認容性の結合剤及び0〜5質量%の少なくとも1種の製剤学的に認容性の賦形剤とを含むパンクレアチンマイクロペレットを製造できる。1つの実施態様において、70〜90質量%のパンクレアチン、及び10〜30質量%の少なくとも1種の製剤学的に認容性の結合剤とを含むパンクレアチンマイクロペレットを製造でき、その際、前述の全ての成分はそれぞれの場合に足して100質量%となるものと解される。
【0017】
本発明の開示のために、マイクロペレット又はマイクロスフェアを記載するために使われる接頭辞の"マイクロ"は直径又は個々の寸法(長さ・高さ・幅)が5ミリメートルに等しいかそれ未満であることを意味する。ほぼ球状であって、0.5〜2.0ミリメートルの直径を有するパンクレアチンマイクロペレットコアを製造することが好ましい。
【0018】
"合成油"という用語は、鹸化不可能な炭化水素又は炭化水素の混合物を意味し、例えば流動パラフィン及び固形パラフィン、特に流動パラフィン(鉱油)、さらにとりわけ高級流動パラフィン(軽鉱油)を含む。
【0019】
"実質的に合成油不含の"という語句は、本願発明において記載されているパンクレアチンマイクロペレットコア及び/又はパンクレアチンマイクロペレットの製造に使用される製造方法が一種以上の合成油を賦形剤として含有しないが合成油は本願発明において記載されているパンクレアチンマイクロペレットコア及び/又はパンクレアチンマイクロペレットを製造するのに使用される結合剤、腸溶コーティング成分、酵素に優しい有機溶媒、及び/又は賦形剤の中で製剤学的に認容性の微少量の不純物として存在することがあるということを意味する。
【0020】
本願発明において記載されている一つの実施態様は、パンクレアチンマイクロペレットコアの製造方法において、以下の工程;
a.下記のi〜ivを含む押出可能な混合物を調製する工程:
i.10〜95%パンクレアチン;
ii.5〜90%の少なくとも1種の製剤学的に認容性の結合剤;
iii.0〜10%の少なくとも1種の製剤学的に認容性の賦形剤;
iv.押出可能な混合物を形成するのに十分な量の1種以上の酵素に優しい有機溶媒;
その際、成分の割合はパンクレアチンマイクロペレットコアの質量に対する質量であり、それらの成分i)、ii)及びiii)(存在すれば)は足して100質量%となる;
b.前記押し出し可能な混合物からパンクレアチンマイクロペレットコアを作製する工程;
c. 該パンクレアチンマイクロペレットを追加の酵素に優しい有機溶媒の存在下で成形して、ほぼ球状又は楕円の形状にする工程;及び
d.そのパンクレアチンマイクロペレットコアが前記一種以上の酵素に優しい有機溶媒を実質的に含まなくなるように、パンクレアチンマイクロペレットコアから1種以上の酵素に優しい有機溶媒を除去する工程;
を含む、実質的に合成油不含のパンクレアチンマイクロペレットコアの製造方法である。
【0021】
製造工程a.)で使用される製剤学的に認容性の結合剤の例は、
ポリエチレングリコール1500、ポリエチレングリコール2000、ポリエチレングリコール3000,ポリエチレングリコール4000、ポリエチレングリコール6000、ポリエチレングリコール8000、ポリエチレングリコール10000、ヒドロプロピルメチルセルロース、ポリオキシエチレン、ポリオキシエチレンーポリオキシプロピレンコポリマー及び上記有機高分子化合物の混合物を含む。前述の製剤学的に認容性の結合剤の一覧が全てではなく、単に説明を目的とするものであって、当業者には他の多くの製剤学的に認容性の結合剤又は結合剤の混合物も使用できると理解される。ポリエチレングリコール4000は好ましい製剤学的に認容性の結合剤である。本発明の開示のために、合成油は製剤学的に認容性の結合剤としてみなされるべきではない。
【0022】
適した製剤学的に認容性の賦形剤の例は、ステアリン酸マグネシウム又はステアリン酸カルシウム、ステアリン酸、滑石及び/又は澱粉のような滑沢剤;リン酸カルシウム、コーンスターチ、デキストラン、デキストリン、水和二酸化ケイ素、微結晶性セルロース、陶土、乳糖、マンニトール、ポリビニルピロリドン、沈降炭酸カルシウム、ソルビトール及び/又は滑石のような充填剤;AerosilTM(ケイ酸)、アルギン酸、アミロース、アルギン酸カルシウム、炭酸カルシウム、ホルムアルデヒドゼラチン、ペクチン炭酸塩、サゴデンプン、炭酸水素ナトリウム及び/又は澱粉のような崩壊剤;及び/又はグリセロール及び/又は澱粉のような湿潤剤を含む。前述の製剤学的に認容性の賦形剤の一覧が全てではなく、単に説明を目的とするものであって、当業者には他の多くの製剤学的に認容性の賦形剤又はその混合物も使用できると理解される。本発明の開示のために、合成油は好適な製剤学的に認容性の賦形剤とはみなされない。1つの実施態様において、パンクレアチンマイクロペレットコアは製剤学的に認容性の賦形剤は含有せずに、場合により、より高い負荷量又は用量のパンクレアチンを含有することができる。
【0023】
製剤的に認容性の賦形剤の量が0%である変法が好ましい。
【0024】
酵素に優しい有機溶媒は混合及び他の処理工程を容易にし、その後例えば乾燥によって取り除くことができる。一般的に酵素に優しい有機溶媒の除去の後、一定量の溶媒はパンクレアチンマイクロペレットコアの中に残る。マイクロペレットコアに残った溶媒は、酵素に優しい有機溶媒、水、又は酵素に優しい有機溶媒と水の混合物を含んでよい。溶媒として水が存在するならば、これは一般的に出発材料として使用されたパンクレアチンの中に存在したものである。酵素に優しい有機溶媒の除去の後にパンクレアチンマイクロペレットコアの中にある溶媒の量はパンクレアチンマイクロペレットコアの質量に対して、一般的に5%未満の量、そして通常3%未満の量である。
【0025】
適した酵素に優しい有機溶媒の例は、アセトン、クロロホルム、ジクロロメタン又は直鎖又は分岐のC1−4−アルコール、特にメタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、2−ブタノール、tーブタノール又は上記溶媒の混合物である。2−プロパノールは、好ましい酵素に優しい有機溶媒である。本発明の開示のために、合成油は適した酵素に優しい有機溶媒とはみなされない。酵素に優しい有機溶媒は、使用されているパンクレアチンの量に対して、一般的に15〜30質量%の量で、好ましくは20〜30質量%の量で使用される。前述の適した酵素に優しい有機溶媒の一覧が全てではなく、単に説明を目的とするものであって、当業者には他の多くの有機溶媒又は溶媒の組み合わせも使用できると理解される。
【0026】
パンクレアチン、製剤学的に認容性の結合剤、製剤学的に認容性の賦形剤及び/又は酵素に優しい有機溶媒の量は、当業者によって本願発明で示される好ましい組成と特性を有するパンクレアチンマイクロペレットコアに至るように変更されうる。
【0027】
「酵素に優しい有機溶媒を実質的に含まない」という用語は、パンクレアチンマイクロペレットコアの中に存在する酵素に優しい有機溶媒の量がパンクレアチンマイクロペレットコアの質量に対して5%未満であることを意味する。
【0028】
方法工程d.)における、パンクレアチンマイクロペレットコアからの1種以上の酵素に優しい有機溶媒の除去は、該パンクレアチンマイクロペレットコアが酵素に優しい有機溶媒を実質的に含まなくなる条件に供することを意味する。酵素に優しい有機溶媒の除去は、当業者に公知の任意の方法によって可能である。好ましい方法は乾燥によるものである。乾燥は、例えば25〜75℃の温度で、好ましくは30〜55℃の温度で、例えば6時間〜18時間の期間にわたり実施してよい。加えて、一般的に1種以上の酵素に優しい有機溶媒の除去により、パンクレアチンマイクロペレットコアの質量に対して5%未満の量の、そして一般的には3%未満の量の水を含有するパンクレアチンマイクロペレットコアが得られる。
【0029】
開示されたパンクレアチンマイクロペレットコアの製造方法の、より好ましい実施態様においては、パンクレアチンマイクロペレットコアは方法工程b.)において押し出しによって作製される。特記すべきことは、押し出し可能な混合物は、たとえ該混合物が実質的に合成油不含でも得られる。方法工程b.)において、この押し出し可能な混合物からのマイクロペレットコアの作製が押し出し方法によって達成されるのであれば、その温度は押し出しの間、好ましくは70℃を超えず、より好ましくはその温度は50℃を超えない。また、押し出しの時には、0.5〜2.0mm、好ましくは0.7〜1.5mm、例えば0.8mmの孔径を有する多孔ダイが好んで使用される。押し出し可能な混合物を押し出すのであれば、その押し出し物の断片は成形に適した長さにされる。このことは、例えば押出プレスの下流に配置された切断装置によって当業者に公知の方法で行うことができる。方法工程c.)における成形は、例えば慣習上の丸み付け装置によって行うことができる。丸み付け装置においては、方法工程a.)で用いられた酵素に優しい有機溶媒と同一又は異なってよい、追加の酵素に優しい有機溶媒存在下で、押し出し物の断片が、ほぼ球状又はほぼ楕円形状に成形される。
【0030】
本願発明に記載されるように製造する場合に(実質的に合成油不含)、丸み付け装置における押し出し物の断片の加工性は、他の公知の方法に対して改善されている。例えば、パンクレアチンマイクロペレットコアをほぼ球状又はほぼ楕円形状に成形する場合に、添加する必要がある酵素に優しい有機溶媒は、より少ない量であり、かつ、その方法を押し出しや丸み付け装置で行う場合に、丸み付け装置の部品にくっつく押し出し物の断片がより少ない。
【0031】
さらなる実施態様は、腸溶コーティングされたパンクレアチンマイクロペレットコアであるパンクレアチンマイクロペレットを含む。腸溶コーティングのためには、パンクレアチンマイクロペレットコアを腸上部へ送達するのに適しており、かつパンクレアチンマイクロペレットコアと適合性である、いかなる腸溶コーティングも使用できる。例えば、米国特許第5378462から公知の腸溶コーティング又はEudragitTMポリマーのような商業上入手可能な腸溶コーティングである。好ましい腸溶コーティングは合成油の存在を必要としないものである。
【0032】
本願発明に開示される方法に従って、合成油を使用せずに製造されるパンクレアチンマイクロペレットコア及びパンクレアチンマイクロペレットは、意外なことに米国特許第5378462に開示される方法のように、鉱油を使用するが公知の方法によって製造されたパンクレアチンマイクロペレットコア及びパンクレアチンマイクロペレットとほとんど同じ特性を示すということが判明した。特に、合成油を用いずに製造されるパンクレアチンマイクロペレットコア及びパンクレアチンマイクロペレットは、合成油を用いる方法によって製造されるパンクレアチンマイクロペレットコア及びパンクレアチンマイクロペレットと同様の粒度分布、嵩密度を示し、同様の収率で得られる。さらに、合成油を用いずに製造されたパンクレアチンマイクロペレットコアは、合成油を用いた同様のパンクレアチンマイクロペレットと比べて、腸溶コーティングで被覆して、パンクレアチンマイクロペレットを得た際、同様の表面構造における外観と性能を示す。
【0033】
もう一つの実施態様において、パンクレアチンマイクロペレットコア上の腸溶コーティングは次のものを含む:
i)少なくとも一種の皮膜形成剤;
ii)少なくとも一種の可塑剤;及び
iii)場合により少なくとも一種の任意の粘着防止剤。
【0034】
1つの実施態様においては、腸溶コーティングは、パンクレアチンマイクロペレットの混合物全体に対して20〜30質量%、より好ましくは22〜26質量%、なおいっそう好ましくは22.5〜25質量%を含む。
【0035】
腸溶コーティングの調製のために使用される皮膜形成剤、可塑剤及び粘着防止剤(存在すれば)は、以下で一般的に"非溶媒コーティング成分"と呼称される。
【0036】
適当な皮膜形成剤はアガー、CarbopolTM(カルボマー)ポリマー(すなわち高分子質量の、架橋した、アクリル酸系ポリマー)、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルエチルセルロース、カラゲニン、セルロースアセテートフタレート、セルロースアセテートスクシネート、セルロースアセテートトリメリエート、キチン、コーンプロテインエキス、エチルセルロース、アラビアゴム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルアセテートスクシネート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、メタクリル酸−エチルメタクリレート−コポリマー、メチルセルロース、ペクチン、ポリビニルアセテートフタレート、ポリビニルアルコール、セラック、アルギン酸ナトリウム、スターチアセテートフタレート及び/又はスチレン/マレイン酸コポリマー又は上記皮膜形成剤ポリマーの混合物を含む。セルロースアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート及び/又はメタクリル酸−エチルメタクリレート−コポリマーは好ましい皮膜形成剤である。もっとも好ましいのはヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、例えばHP55又はHPMCP HP−50である。合成油は好ましい皮膜形成剤とみなされない。前述の皮膜形成剤の一覧が全てではなく、単に説明を目的とするものであって、当業者には他の多くの皮膜形成剤又は皮膜形成剤の混合物も使用できると理解される。
【0037】
可塑剤は、一般的に皮膜形成剤に対して1.5質量%より多い量で存在し、一般的に2〜20質量%の量で存在する。可塑剤は、12〜30個の炭素原子を有する飽和の直鎖状一価アルコールを含んで良い。より特定して、許容される可塑剤はラウリルアルコール、トリデシルアルコール、ミリスチルアルコール、ペンタデシルアルコール、セチルアルコール、ヘプタデシルアルコール、ステアリルアルコール、ノナデシルアルコール、アラキンアルコール、ベヘニルアルコール、カルナウビルアルコール、セリルアルコール、コリアニルアルコール、メリシルアルコール、アセチルトリブチルシトレート、ジブチルセバケート、グリセロールの脂肪酸エステル、グリセロール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ソルビタン脂肪酸、トリアセチン、トリエチルシトレート及び上述の可塑剤の混合物を含む。好ましい可塑剤はセチルアルコール、ステアリルアルコール、トリエチルシトレート及びそれらの混合物である。もっとも好ましい可塑剤は、トリエチルシトレート、セチルアルコール及びトリエチルシトレートとセチルアルコールの混合物からなるグループから選ばれる。セチルアルコールを単一の可塑剤として使用する場合、それは皮膜形成剤に対して、1.5質量%より多くの量で、一般的には2〜15質量%の量で、好ましくは2〜10質量%の量で存在してよい。トリエチルシトレートを単一の可塑剤として使用する場合、それは皮膜形成剤に対して、5〜20質量%の量で、好ましくは12〜15質量%の量で存在してよい。合成油は好ましい可塑剤としてはみなされない。前述の可塑剤の一覧が全てではなく、単に説明を目的とするものであって、当業者には他の多くの可塑剤又は可塑剤の混合物も使用できると理解される。
【0038】
1つの実施態様では、可塑剤は、セチルアルコール及びトリエチルシトレートから構成され、それらはまとめて皮膜形成剤に対して、3質量%より多くの量で、一般に4〜20質量%の量で、特に6〜15質量%の量で、より好ましくは7〜10質量%の量である。前述のセチルアルコールとトリエチルシトレートの混合物中のトリエチルシトレートに対するセチルアルコールの質量比は、0.05:1〜1:1であり、例えば、0.1:1、0.2:1、0.3:1、0.4:1、0.5:1、0.6:1、0.7:1、0.8:1又は0.9:1である。特に、前述のセチルアルコールとトリエチルシトレート混合物中のトリエチルシトレートに対するセチルアルコールの質量比は0.25:1〜0.5:1であってよく、好ましくは0.3:1〜0.45:1であってよく、より好ましくは0.35:1〜0.4:1であってよく、とりわけ好ましくは0.38:1から0.4:1(w/w)であってよい。
【0039】
腸溶コーティングは、場合により粘着防止剤を含む。適した粘着防止剤はジメチコーン及びヒシマ油を含む。ジメチコーン、特にジメチコーン1000は好ましい粘着防止剤である。粘着防止剤は通常皮膜形成剤に対して、1.5〜3質量%の量で腸溶コーティング中に存在する。合成油は好ましい粘着防止剤としてみなされない。前述の粘着防止剤の一覧が全てではなく、単に説明を目的とするものであって、当業者には他の多くの粘着防止剤又は粘着防止剤の混合物も使用できると理解される。
【0040】
もうひとつの実施態様は、パンクレアチンマイクロペレットの製造方法において、以下の工程;
aa. 実質的に合成油不含のパンクレアチンマイクロペレットコアを提供する工程;
bb.以下のi)〜iv)を含む腸溶コーティング溶媒を提供する工程
i.少なくとも1種の皮膜形成剤;
ii.少なくとも1種の皮膜形成剤に対して、1.5質量%より多い量の可塑剤;及び
iii.場合により、少なくとも1種の粘着防止剤、及び
iv.1種以上の酵素に優しい有機溶媒;
cc.腸溶コーティング溶液でパンクレアチンマイクロペレットコアをコーティングする工程、その際コーティングの間のパンクレアチンマイクロペレットコアの生成物温度を腸溶コーティング溶液を適用するのに適した温度に保つ;及び
dd.コーティングされたパンクレアチンマイクロペレットコアを乾燥する工程。
を含む方法を提供する。
【0041】
前述のパンクレアチンマイクロペレットの製造方法において、皮膜形成剤、可塑剤、粘着防止剤及び酵素に優しい有機溶媒は一般的に前記の意味を有する。好ましくは、方法工程aa.)で提供される、実質的に合成油不含のパンクレアチンマイクロペレットコアは、前記のパンクレアチンマイクロペレットコアの製造方法によって製造される。
【0042】
パンクレアチンマイクロペレットの製造方法、すなわち、本願発明において記載されているコーティング方法のため、腸溶コーティング溶液に存在する製剤学的に認容性の酵素に優しい有機溶媒の残余量は、乾燥後にパンクレアチンマイクロペレットにまだ存在することがある。このことは、酵素に優しい有機溶媒の製剤学的に認容性の残余量を含むパンクレアチンマイクロペレットは本発明の範囲内であると理解されている。
【0043】
方法工程bb.)は15〜60℃の温度で実施できる。方法工程bb.)を室温(すなわち、室温、およそ20〜30℃)で行われるのが好ましい。適当な酵素に優しい有機溶媒の例には、アセトン、2−ブタノール、t−ブタノール、クロロホルム、ジクロロメタン、エタノール、メタノール、1−プロパノール、2−プロパノール及び上記溶媒の混合物を含む。アセトン、エタノール及び2−プロパノール又はこれらの混合物は酵素に優しい有機溶媒として好ましい。アセトンは最も好ましい。方法工程bb.)における酵素に優しい有機溶媒の一覧が全てではなく、単に説明を目的とするものであって、当業者には他の多くの酵素に優しい有機溶媒又は酵素に優しい有機溶媒の混合物も使用できると理解される。
【0044】
酵素に優しい有機溶媒は、本発明によりパンクレアチンマイクロペレットを製造するのに使用される非溶媒コーティング成分の質量の普通6〜10倍の量で、好ましくは7〜8倍の量で使用される。例えば、非溶媒コーティング成分が全質量1.5gまでを成すならば、酵素に優しい有機溶媒は9〜15gを方法工程aa.)で使用できる。
【0045】
方法工程cc.)において、パンクレアチンマイクロペレットコア生成物の温度は、1つの実施態様においては、普通、コーティングの間は30〜60℃の間で保たれ、好ましくは32〜55℃に、より好ましくは35〜50℃に、もっとも好ましくは37〜49℃に保たれる。方法工程cc.)で、セチルアルコール又はセチルアルコールとトリエチルシトレートの混合物が用いられる場合には、パンクレアチンマイクロペレットコアの生成物温度は40〜46℃(範囲限度を含めた)の間で好んで保持される。コーティングの間に好ましい温度範囲にパンクレアチンマイクロペレットコアの生成物温度を保持することは、特に腸溶コーティングが可塑剤としてセチルアルコールとトリエチルシトレートの混合物を含む場合には、胃酸耐性が向上されたパンクレアチンマイクロペレットをもたらす。方法工程cc.)におけるコーティングは、当業者に公知のいかなる工程又は方法によっても達成できる。スプレーコーティングが好ましい。一般的に、方法工程cc.)は、腸溶コーティングがパンクレアチンマイクロペレットの全組成の質量に対して20〜30質量%、好ましくは22〜26質量%及びより好ましくは22.5〜25質量%含む方法で行われる。望ましい腸溶コーティングに達するための方法工程cc.)において利用されるための正確なパラメーターは、使用されるコーティング技術に依存する。当業者であれば、種々のコーティング技術を使用した場合に、望ましい厚さのコーティングフィルムをどのように達成するかを理解している。
【0046】
工程段階dd.)における、腸溶コーティングされたパンクレアチンマイクロペレットコアの乾燥は、一般的に30〜75℃で、好ましくは30〜55℃で、より好ましくは35〜50℃で、6〜60時間の期間にわたり、好ましくは10〜36時間の期間にわたり行われる。
【0047】
本発明によるパンクレアチンマイクロペレットは、パンクレアチンとその消化酵素成分をヒトのようなほ乳類の腸上部へ、特に小腸へ、一般的には十二指腸へ送達するのに特に適している。それゆえ、本発明によるパンクレアチンマイクロペレットは、消化不良のような異なる起源の膵臓の外分泌不全を含むさまざまな病状及び消化疾患の予防及び/又は治療、及び/又はヒト等のほ乳類のすい炎、嚢胞性線維症 、1型糖尿病及び/又は2型糖尿病の予防及び/又は治療に有用である。ヒトのようなほ乳類における、消化不良は通常は消化酵素の欠乏、特にプロテアーゼ及び/又はアミラーゼについてもそうであるが、特に内因性リパーゼの欠乏に基づく。そのような消化酵素欠乏の原因はしばしば膵臓の機能不全(例えば、通常、膵臓の外分泌不全として知られる膵機能不全)であり、膵臓は極めて多量の消化酵素を、最も重要なことには、内因性の消化酵素を産生する。膵機能不全が病理学的であれば、それは、先天的又は後天的でありうる。後天的な慢性の膵機能不全は、例えば、アルコール中毒から生ずることがある。先天的な膵機能不全は、例えば、嚢胞性線維症のような疾病から生ずることがある。消化酵素欠乏症の結果、重症の栄養不足及び栄養失調となることがあり、それは二次的な病気への感受性の増大を招くことがある。1つの実施態様においては、本発明によるパンクレアチンマイクロペレットは、それゆえ、特にいかなる起源の膵臓の外分泌不全の治療にも適している。
【0048】
もう一つの実施態様において、パンクレアチンマイクロペレットは、上述のとおり、消化疾患、膵臓の外分泌不全、すい炎、嚢胞性線維症 、1型糖尿病及び/又は2型糖尿病のような病状の治療のための薬剤の製造のために提供される。
【0049】
さらにもう一つ別の実施態様では、消化疾患、膵臓の外分泌不全、すい炎、嚢胞性線維症 、1型糖尿病及び/又は2型糖尿病のような症状の治療方法において、かかる治療の必要とする、ほ乳動物被験体に、前述のパンクレアチンマイクロペレットの治療上有効な量を投与することによる治療方法が提供される。
【0050】
さらなる実施態様は、本願発明において記載されている方法によって製造されたパンクレアチンマイクロペレットの形で、前記の薬理学上有効な量のパンクレアチンを含む経口の投与に適した剤形における医薬組成物を含む。
【0051】
パンクレアチンのような酸に不安定な薬をヒトのようなほ乳類の腸上部へ適切に送達するために、腸溶コーティングが例えばpH5.5にまで胃酸耐性があることが必要である。その後、その酸に不安定な薬は腸上部へ放出される必要があり、それは、腸溶コーティングが酸に不安定な薬を、例えばpH5.5又はそれより高いpH、特にpH6といった、酸性が低い環境で放出せねばならないことを意味する。本願発明に記載されているパンクレアチンマイクロペレットは、優れた胃酸耐性と保護特性を有し、例えばpH1及び/又はpH5で優れた保護特性を有する。本発明によるパンクレアチンマイクロペレットであって、可塑剤が、上記で述べたようにセチルアルコールとトリエチルシトレートの混合物(CA/TE組成物)であるものが、この点で好ましい。さらに、一般にCA/TE組成物は、他の可塑剤が使われる他のパンクレアチンマイクロペレットと比較して、より高いリパーゼ含有率を保持し、そして通常、より低い含水率を有する。そのうえ、CA/TE組成物は、現在販売されているパンクレアチン含有医薬、例えば商品名CreonTMとして公知の薬剤に匹敵する好ましい溶解プロフィールを示す。
【0052】
本発明の他の実施態様において、本願発明において記載されているパンクレアチンマイクロペレットが充填された1つ以上の容器を含む、医療パッケージ又はキットが提供される。そのような容器に付随するのは、ヒト又は獣医学の投与用の製造、使用又は販売の機関による認可を反映する注意書きである、医薬製品の製造、使用、又は販売が規制する政府機関によって指定された形で書かれた、取扱説明書、又は注意書き等のさまざまな書面であってよい。
【0053】
実施例
下記の実施例は説明を意図するものであって、本発明の開示を意図するものではない。他の適した変更及び適合は、当業者が普通に遭遇する多様性のためであり、それらは完全に本発明の趣旨及び範囲内である。
【0054】
A.パンクレアチンマイクロペレットコア及びパンクレアチンマイクロペレットの調製
1.コーティングされていないパンクレアチンマイクロペレットコアの調製
パンクレアチン15.9kgを、3.975kgのポリエチレングリコール4000と市販の高せん断混合機中で混合し、そして3.975kgの2−プロパノールで完全に湿潤させた。得られた混合物を、0.8mm内径を有する穴あけダイが備え付けられ、下流に切断装置が備え付けられた、市販の押出プレスによって押し出した。その温度は、加圧しながら50℃未満であった。押出された材料を、切断装置によって、約5mmの長さの押出し物断片に切断した。
【0055】
得られた14.64kgの押し出し断片を、ほぼ等寸法で4つに分けて、市販の丸み付け装置に移送し、丸み付けをして、ほぼ楕円形又はほぼ球形のマイクロペレットコアが得られた。丸み付けの間に、135gの2−プロパノールを添加した。
【0056】
市販の連続真空乾燥機(Voetsch 型)において12時間35〜50℃の範囲の温度で乾燥させた後、パンクレアチンマイクロペレットを、まず3.15mmふるいで(3.15mmより大粒のふるいわけ)、次いで0.7mmふるいで(0.7mmより小粒のふるいわけ)、その後1.25mmふるいで(1.25mmより大粒のふるいわけ)で分級し、80%のパンクレアチン含有率を含み、0.67g/mlの嵩密度を有する、11.98kgのパンクレアチンマイクロペレットコアが得られた。
【0057】
2.パンクレアチンマイクロペレットコアの腸溶コーティング
コーティング溶液を1623.2gのヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HP55)、90.2gのトリエチルシトレート、34.3gのセチルアルコール及び38.9gのジメチコーン1000を14030gのアセトンに室温で攪拌しながら添加することにより調製した。
【0058】
5025gのパンクレアチンマイクロペレットコア(本願発明において記載されている方法と同様に調製した)を市販の流動層被膜機中に提供し、噴露速度97〜101kg/h及び気圧1.7バールで上記で調製されたコーティング溶液中で、所望の皮膜厚さに達するまでスプレーコートした。パンクレアチンマイクロペレットコアの生成物温度はを監視し、コーティングの間37〜43℃の範囲で維持した。得られたパンクレアチンマイクロペレットを次いで、市販の真空乾燥機(Voetsch 型)で12時間35〜50℃の温度範囲で乾燥させた。乾燥させたパンクレアチンマイクロペレットを、まず0.7mmふるいで(0.7mmより小粒のふるいわけ)、次いで1.6mmのふるいで(1.6mmより大粒のふるいわけ)分級し、腸溶コーティングされたパンクレアチンマイクロペレットに対して60%のパンクレアチン含有率を有する、6532gのパンクレアチンマイクロペレットが得られた。そのパンクレアチンマイクロペレットの嵩密度は0.69g/mlであった。
【0059】
さらなるパンクレアチンマイクロペレットを、上記方法により調製し、種々のコーティングを前記のコーティング法と同様に適応して、追加のマイクロペレットが得られた。追加のパンクレアチンマイクロペレットの組成及びそのコーティング法のある特定の工程パラメータを以下の表1にしめす。組成物Gは米国特許第5378462に記載された方法によって製造できる。比較組成物Hは前記の方法にわずかに変更を加えたものによって製造した(すなわち、ジブチルフタレートをコーティング中の可塑剤として使用した)。全てのバッチは、特に示されない限り、実験室規模で製造された。
【0060】
表1:(腸溶コーティングされた)パンクレアチンマイクロペレットの組成及び該当する工程パラメータ
【表1】

PEG=ポリエチレングリコール;TEC=トリエチルシトレート;CA=セチルアルコール;HP55=ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート; DBP=ジブチルフタレート;=製品段階;n.a;有効ではないデータ。
【0061】
組成物Gは現在入手できる、パンクレアチンと軽鉱油を含む高品質の医薬組成物である。
【0062】
組成物番号6、10、13、14及び15は、好ましいCA/TEC組成物の例である。
【0063】
組成物番号3は単独の可塑剤として、セチルアルコールを含む好ましい組成物の一例である。
【0064】
B.pH1及びpH5における腸溶コーティングされたパンクレアチンマイクロペレットの胃酸耐性の測定
パンクレアチンマイクロペレットの胃酸耐性を測定した(上記表1参照)。
【0065】
表1からの種々のパンクレアチンマイクロペレットの胃液(pH1)の耐性は、ヨーロッパの薬局法(Ph.Eur.)による崩壊試験機において0.1mol/lの塩酸中で2時間パンクレリパーゼマイクロペレットを浸すことにより測定した。次いで、それらのペレットの未溶解部分はその溶液から分離し、その残りのリパーゼ活性をPh.Eur./国際薬学連盟(FIP)、私書箱84200;2508AEハーグ;オランダ;のリパーゼアッセイによって測定した。腸溶コーティングの胃酸耐性のこれらの試験の結果を表2に示す("pH1での安定性")。
【0066】
さらに、pH5での同様の試験を先の段落で概説したのと同じ条件を用いるが、但し、pH5のリン酸バッファー(1リットルあたり2.0gの塩化ナトリウムと9.2gのリン酸二水素ナトリウム一水和物をpH5.0に調製した)を0.1mol/l塩酸の代わり溶媒として使用して行った。これらの胃酸耐性の試験結果も、下記の表2に示す("pH5での安定性")。
【0067】
表1からのパンクレアチンマイクロペレットの胃酸耐性(上記参照)は、それぞれ表2において、インキュベーション前に試験された試料の実際の脂質分解活性に対する、インキュベーション後の、残留脂質分解活性の割合として与えられる(相対胃酸耐性)。脂質分解活性は、単行本United State Pharmacopoeia(USP)「パンクレリパーゼ遅延放出カプセル」に記載される、リパーゼアッセイによって測定される。原則として、いかなる標準化され特徴づけられたパンクレアチン試料もリパーゼ参照標準として使用してよい。例えば、事前に測定された脂質分解活性標準は、「国際薬学連盟」(FIP)、PO Box 84200;2508AEハーグ;オランダから入手してよい。本発明の目的のためには、パンクレアチン内部標準は、Solvay Pharmaceuticals GmbH,Hans-Boeckler-Alee 20,30173ハノーファー、ドイツからの要求により入手された物を用いた。
【0068】
表2:pH1とpH5におけるパンクレアチンマイクロペレットの相対胃酸耐性(安定性)
【表2】

【0069】
好ましいパンクレアチンマイクロペレットはpH1で、事前に測定されたパンクレアチン脂質分解活性標準と比べて、少なくとも75%、特に少なくとも85%の、好ましくは少なくとも90%の、より好ましくは少なくとも95%の胃酸耐性(安定性)を有する。
【0070】
本願発明において開示した他の好ましいパンクレアチンマイクロペレットは、pH5で、事前に測定されたパンクレアチン脂質分解活性標準と比べて、少なくとも75%、特に少なくとも85%の、好ましくは少なくとも90%の、より好ましくは少なくとも95%の胃酸耐性(安定性)を有する。
【0071】
最も好ましいパンクレアチンマイクロペレットは、pH1で、事前に測定されたパンクレアチン脂質分解活性標準と比べて、少なくとも90%の胃酸耐性を有し、加えて、pH5でも少なくとも90%の胃酸耐性を有する。
【0072】
C.腸溶コーティングされたパンクレアチンマイクロペレットの溶解プロフィールの決定
表1(上記参照)からの種々の腸溶コーティングされたパンクレアチンマイクロペレットの溶解プロフィールとは、単行本UnitedStatesPharmacopoeia(USP)「パンクレリパーゼ遅延放出性カプセル」に記載された試験方法によって、胃酸耐性段階の増加に伴って、決定した。
【0073】
胃酸分泌液に対する耐性の測定は、標準状態(37℃、100rpm)で二時間、溶解装置(かご形装置USP)の中で、USPによる酵素のない胃酸液を用いて実施した。次いで、腸溶コーティングされたパンクレアチンマイクロペレットの未溶解の部分を、溶液から分離し、pH6.0におけるリン酸バッファー溶液で満たされたUSPによるパドル装置の中に移送して、酵素の溶解性を測定した。腸溶コーティングされたパンクレアチンマイクロペレットを、標準状態下で通常90分間(正確な時点は下記表3参照)37℃及び50rpmで溶解試験機の中で攪拌した。
【0074】
リパーゼ活性を、選択された時点(表3参照)後に、単行本USP「パンクレリパーゼ遅延放出性カプセル」で記載されたリパーゼアッセイに従って測定した。
【0075】
溶解プロフィール試験の結果は、実際のリパーゼ活性の残留のリパーゼ活性の%として、下に示す(表3参照)。
表3:リン酸バッファー中の腸溶コーティングされたパンクレアチンマイクロペレットの溶解プロフィール(n.a.:有効ではないデータ)
【表3】

【0076】
表3に示される溶解プロフィール試験結果について、組成物"G"と"H"の比較を行った。前述の比較は、同等性係数(f2)を計算することによる、業界向けガイダンス"Guidance for industry"、SUPC-MR、放出性調整固形内服剤(1997年9月)に基づく。二本の比較される同等性を決定するための2つの許容限界は(i)係数(f2)>50であること、(ii)任意の溶解試料採取点での平均偏差が15%より大きくなるべきではないということであった。
【0077】
同等性を決定するための上述の許容限界を適用する場合に(f2=71.8)、パンクレアチンマイクロペレット組成物"H"(表1参照)の溶解プロフィールは、参照パンクレアチンマイクロペレット組成物"G"(表1参照)の溶解プロフィールと類似していると考えられることが判明した。
【0078】
本明細書で引用される、刊行物、特許出願及び特許を含む全ての参考文献は、参照をもって、個別にかつ明確に参照をもって開示されたものとして指摘された当該各参考文献がその全体において本明細書に述べられているのと同じ程度で開示されたものとする。
【0079】
本明細書の開示において数値は範囲として示されるが、一般に、特に表現上示されない限りは、それぞれの範囲の限界を含み、所定の範囲の部分であることを指している。
【0080】
本明細書の開示における(特に特許請求の範囲の開示における)単数を表す語句と先行する語句を指す語句及び同様の参照の使用は、本明細書に特に記載がないか又は明らかに文脈と矛盾しない限りは、単数と複数の両者を含むと解釈されるべきである。本明細書に記載される全ての方法は、本明細書に特に記載がないか又は明らかに文脈と矛盾しない限りは、任意の順序で実施することができる。本明細書で与えられる任意の全ての実施例又は例示的言い回し(例えば、好ましい、好ましくはなどの言い回し)は、当該開示内容を更に説明することを意図しているにすぎず、本発明の範囲に制限を与えるものではない。本明細書中のいかなる言い回しも、特許請求の範囲に記載されていない任意の構成要素を本発明の実施に必須なものとして示すものと解釈されるべきではない。
【0081】
従って、本発明は、適用可能な法律により許容される限りでは、本明細書に付帯する特許請求の範囲に列挙される対象物の全ての変更態様及び均等物を含む。更に、前記の構成要素の全ての可能な様々なあらゆる組合せも、本明細書に特に記載がないか又は明らかに文脈と矛盾しない限りは、本発明によって包含される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パンクレアチンマイクロペレットコアの製造方法において、次の工程:
a. 以下のi〜ivを含む押し出し可能な混合物の調製をする工程:
i. パンクレアチン10〜95%;
ii.少なくとも一種の製剤学的に認容性の結合剤5〜90%;
iii.少なくとも一種の製剤学的に認容性の賦形剤0〜10%;及び
iv.押出し可能な混合物を形作るのに十分な量の、一種以上の酵素に優しい有機溶媒;
その際、構成成分の割合は、パンクレアチンマイクロペレットコアの質量に対する質量であり、それらの構成成分i),ii)及びiii)は足して、100質量%となる。
b. 前記押出可能な混合物を押し出して、パンクレアチンマイクロペレットコアを製造する工程;
c. 追加の酵素に優しい有機溶媒存在下で、パンクレアチンマイクロペレットコアをほぼ球形又はほぼ楕円形に成形する工程;及び
d. その一種以上の酵素に優しい有機溶媒をパンクレアチンマイクロペレットコアから除去して、パンクレアチンマイクロペレットコアを実質的に一種以上の酵素に優しい有機溶媒不含にする工程;
を含み、該パンクレアチンマイクロペレットが実質的に合成油不含である、パンクレアチンマイクロペレットコアの製造方法。
【請求項2】
パンクレアチンマイクロペレットコアの質量に対する質量で、パンクレアチンが70〜90%で存在し、結合剤が10〜30%存在する請求項1記載の方法。
【請求項3】
製剤学的に認容性の賦形剤が存在しない、請求項1記載の方法。
【請求項4】
結合剤が、ポリエチレングリコール1500、ポリエチレングリコール2000、ポリエチレングリコール3000、ポリエチレングリコール4000、ポリエチレングリコール6000、ポリエチレングリコール8000、ポリエチレングリコール10000、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリオキシエチレン、 ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンコポリマー及び上記有機ポリマーの混合物
からなる群から選択される、請求項1記載の方法。
【請求項5】
結合剤がポリエチレングリコール4000である、請求項1記載の方法。
【請求項6】
請求項1記載の方法で得られるパンクレアチンマイクロペレットコア。
【請求項7】
請求項7記載のパンクレアチンマイクロペレットコアと腸溶コーティングを含むパンクレアチンマイクロペレット。
【請求項8】
腸溶コーティングが合成油を含まない、請求項7記載のパンクレアチンマイクロペレット。
【請求項9】
腸溶コーティングが、
aa. アガー、カルボマーポリマー、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルエチルセルロース、カラゲニン、セルロースアセテートフタレート、セルロースアセテートスクシネート、セルロースアセテートトリメリエート、キチン、コーンプロテインエキス、エチルセルロース、アラビアゴム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルアセテートスクシネート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、メタクリル酸−エチルメタクリエート−コポリマー、メチルセルロース、ペクチン、ポリビニルアセテートフタレート、ポリビニルアルコール、シェラック、アルギン酸ナトリウム、スターチアセテートフタレート、スチレン/マレイン酸コポリマー及び上記皮膜形成剤の混合物
からなるグループから選択される少なくとも1種の皮膜形成剤;
bb. 少なくとも1種の皮膜形成剤に対して1.5質量%より多い量の、トリエチルシトレート、セチルアルコール及びトリエチルシトレートとセチルアルコールの混合物からなるグループから選択される可塑剤;及び
cc. 場合により、少なくとも一種の粘着防止剤;
を含む、請求項8記載のパンクレアチンマイクロペレット。
【請求項10】
皮膜形成剤がヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートである、請求項9記載のパンクレアチンマイクロペレット。
【請求項11】
可塑剤が、セチルアルコールとトリエチルシトレートとから構成され、それらが皮膜形成剤に対して、合わせて3質量%より多い量で存在する、請求項9記載のパンクレアチンマイクロペレット。
【請求項12】
可塑剤が、皮膜形成剤に対して1.5質量%より多い量で存在するセチルアルコールである、請求項9記載のパンクレアチンマイクロペレット。
【請求項13】
パンクレアチンマイクロペレットの製造方法において、以下の工程:
aa. 請求項6記載のパンクレアチンマイクロペレットコアを提供する工程;
bb. 以下のi〜ivを含む腸溶コーティング溶液を提供する工程
i. アガー、カルボマーポリマー、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルエチルセルロース、カラゲニン、セルロースアセテートフタレート、セルロースアセテートスクシネート、セルロースアセテートトリメリエート、キチン、コーンプロテインエキス、エチルセルロース、アラビアゴム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルアセテートスクシネート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、メタクリル酸−エチルメタクリエート−コポリマー、メチルセルロース、ペクチン、ポリビニルアセテートフタレート、ポリビニルアルコール、シェラック、アルギン酸ナトリウム、スターチアセテートフタレート、スチレン/マレイン酸コポリマー及び上記皮膜形成剤の混合物
からなるグループから選択される少なくとも1種の皮膜形成剤;
ii.少なくとも1種の皮膜形成剤に対して1.5質量%より多い量の、トリエチルシトレート、セチルアルコール及びトリエチルシトレートとセチルアルコールの混合物からなるグループから選択される可塑剤;及び
iii.場合により、少なくとも1種の粘着防止剤、及び
iv.1種以上の酵素に優しい有機溶媒;
cc. コーティング中、パンクレアチンマイクロペレットコアの生成物温度を、腸溶コーティング溶液を適用するのに適した温度に保ち、パンクレアチンマイクロペレットコアを腸溶コーティング溶液でコーティングする工程;及び
dd. コーティングされたパンクレアチンマイクロペレットコアを乾燥させる工程;
を含むパンクレアチンマイクロペレットの製造方法。
【請求項14】
請求項6記載のパンクレアチンマイクロペレットコア又は請求項7記載のパンクレアチンマイクロペレットの薬理学上の有効量を含む医薬組成物。
【請求項15】
パンクレアチンマイクロペレットコア又はパンクレアチンマイクロペレットが経口投与に適した剤形である、請求項14記載の医薬組成物。
【請求項16】
パンクレアチンマイクロペレットコア、パンクレアチンマイクロペレット及び/又は各経口剤形が、さらに、カプセル、小袋、ブリスター包装又は瓶から選択される少なくとも一つの外包装に導入されている、請求項14又は15記載の医薬組成物。
【請求項17】
消化疾患、膵臓の外分泌不全、膵臓炎、嚢胞性線維症 、1型糖尿病及び/又は2型糖尿病の治療薬の製造のための、請求項6記載のパンクレアチンマイクロペレットコア又は請求項7記載のパンクレアチンマイクロペレットの使用。

【公表番号】特表2009−504710(P2009−504710A)
【公表日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−526493(P2008−526493)
【出願日】平成18年8月15日(2006.8.15)
【国際出願番号】PCT/EP2006/065313
【国際公開番号】WO2007/020260
【国際公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【出願人】(391027619)ゾルファイ ファーマスーティカルズ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (46)
【氏名又は名称原語表記】Solvay Pharmaceuticals GmbH
【住所又は居所原語表記】Hans−Boeckler−Allee 20, D−30173 Hannover,Germany
【Fターム(参考)】